説明

インクジェット印刷機

【課題】用紙端部に印刷する際に、インクの主滴の大きさを制御することで、インク滴の着弾精度を高くし、かつ、インクミストの発生を抑えたインクジェット印刷機を提供することを課題とする。
【解決手段】インクジェット印刷機は、インクジェットヘッドと、インクジェットヘッドからインクを吐出する際にインクジェットヘッドのインク主滴の寸法を制御する制御部とを備える。制御部は、合紙Lの印刷可能端部16内では印刷可能端18m、18sからの距離に応じてインク主滴の寸法を制御する制御部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドから吐出する主滴を制御するインクジェット印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数データ、または大量の印刷物を印刷する際、印刷機から排出された印刷物が積載されていくが、データ・枚数ごとの印刷物の区切りが分からない。そのため、従来、データとデータの区切りや枚数の区切りにオフセットされた合紙を入れることで印刷物の区切りを分かりやすくしている。また、合紙のオフセット部分に印字することで、区切られたデータが何であるかを分かるようにしている。
【0003】
ところで、インクジェットプリンタの構成上、合紙のオフセット部分は用紙端部になる。このため、合紙のオフセット部分に印刷すると、外乱の影響が大きく、主滴の着弾ずれやインクミストの発生要因になり印刷面や印刷機内の汚れの原因となる。
【0004】
この対策として、用紙端部にインクを吐出する際に、ドット径の小さいものの数を少なくすることで着弾ずれを抑えることが特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-022404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の提案では、用紙端部にインクを吐出する際、ドット径を大きなものだけを吐出することで、外乱からの着弾ずれを防止して画像形成の品質を向上させることは期待できるものの、ドット径の大きなものを吐出することによって生じるインクミストの発生量の増大を抑えることはできない。一方、インクミストの発生量を低減させるには主滴の寸法を小さくする必要があるが、小さくすると主滴の着弾ずれが大きくなってしまう。なお、このことは、通常の記録紙に印刷する場合であっても同様に生じることが考えられる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、用紙端部に印刷する際に、インクの主滴の大きさを制御することで、インク滴の着弾精度を高くし、かつ、インクミストの発生を抑えたインクジェット印刷機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷機の第1の特徴は、少なくとも1つのインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドからインクを吐出する際に、印刷用紙の印刷可能端部内では印刷可能端からの距離に応じてインク主滴の寸法を制御する制御手段と、を備えることにある。
【0009】
本発明に係るインクジェット印刷機の第2の特徴は、前記印刷用紙として合紙に印刷する場合の印刷条件が前記制御手段に入力されていることを特徴とすることにある。
【0010】
本発明に係るインクジェット印刷機の第3の特徴は、前記合紙の搬送速度に応じて前記制御手段がインク主滴の寸法を制御することにある。
【0011】
本発明に係るインクジェット印刷機の第4の特徴は、前記インクジェットヘッドと前記合紙とのヘッドギャップに応じて前記制御手段がインク主滴の寸法を制御することにある。
【0012】
本発明に係るインクジェット印刷機の第5の特徴は、互いに異なる色のインクが吐出可能なように前記インクジェットヘッドが複数設けられており、各合紙毎に色を異ならせて印刷する際に前記インクジェットヘッドから前記合紙へ吐出するインク種の数を最小にするように前記制御手段が制御することにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るインクジェット印刷機の第1の特徴によれば、外乱の影響が大きい印刷可能端の近くではインク主滴を大きくすることで着弾ずれを低減できると共に、印刷可能端から離れるに従ってインク主滴を小さくすることでインクミストの発生を低減させることができるので、インク滴の着弾精度を高くし、かつ、インクミストの発生を抑えたインクジェット印刷機とすることができる。
【0014】
本発明に係るインクジェット印刷機の第2の特徴によれば、合紙では印字の読み易さはあまり要求されないことを利用して、合紙への印字精度に問題が生じることなくインクミストの発生を効率的に抑えることが可能になる。
【0015】
本発明に係るインクジェット印刷機の第3の特徴によれば、搬送速度が速いほどインク主滴の寸法を大きくして外乱の影響を受け難くし、搬送速度が遅いほどインク主滴の寸法を小さくしてインクミストの発生を抑えることにより、インク主滴の着弾ずれを更に抑えながらインクミストの発生を更に低減させることができる。
【0016】
本発明に係るインクジェット印刷機の第4の特徴によれば、ヘッドギャップが大きいほどインク主滴の寸法を大きくし、ヘッドギャップが小さいほどインク主滴の寸法を小さくすることで、インク主滴の着弾ずれを更に抑えつつインクミストの発生を更に低減させることができる。
【0017】
本発明に係るインクジェット印刷機の第5の特徴によれば、吐出に使用するインクジェットヘッドの数を最小に設定することによって、吐出量が少ないヘッドが生じる可能性を低減させることで、主滴の着弾ずれを更に抑えつつミストの発生を更に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係るインクジェット印刷機の概略構成を示す説明図である。
【図2】第1実施形態に係るインクジェット印刷機の構成を説明するブロック図である。
【図3】第1実施形態に係るインクジェット印刷機で合紙のオフセット部分に印刷することを説明する平面図である。
【図4】第1実施形態に係るインクジェット印刷機から排出された記録紙の積載状態を示す斜視図である。
【図5】第1実施形態に係るインクジェット印刷機で合紙に印字する上で、印刷可能端部の各領域毎に印刷条件を変更することを説明する説明図である。
【図6】第1実施形態に係るインクジェット印刷機で合紙の印字可能領域の角部に印字する上で、各領域毎に印刷条件を変更することを説明する説明図である。
【図7】第2実施形態に係るインクジェット印刷機に記憶されている印刷条件をデータテーブルで説明する説明図である。
【図8】第3実施形態に係るインクジェット印刷機に記憶されている印刷条件をデータテーブルで説明する説明図である。
【図9】第4実施形態に係るインクジェット印刷機に記憶されている印刷条件をデータテーブルで説明する説明図である。
【図10】第5実施形態のインクジェット印刷機の動作を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、すでに説明したものと同一または類似の構成要素には同一または類似の符号を付し、その詳細な説明を適宜省略している。
【0020】
また、以下の説明では、合紙へ印刷する際にインクドロップ数を制御する例で説明するが、合紙に限らず通常の記録紙に印刷する場合であっても適用可能である。また、記録紙としてどのサイズの用紙であっても適用可能である。
【0021】
また、図面は模式的なものであり、寸法比などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法比などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0022】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための例示であって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。この発明の実施の形態は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0023】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。
【0024】
(全体構成)
図1は、本実施形態に係るインクジェット印刷機の概略構成を示す説明図である。図2は、本実施形態に係るインクジェット印刷機の構成を説明するブロック図である。図3は、本実施形態に係るインクジェット印刷で合紙のオフセット部分に印刷することを説明する平面図である。図4は、本実施形態に係るインクジェット印刷機から排出された記録紙の積載状態を示す斜視図である。図5は、本実施形態に係るインクジェット印刷機で合紙に印字する上で、印刷可能端部の各領域毎に印刷条件を変更することを説明する説明図である。図6は、本実施形態に係るインクジェット印刷機で合紙の印字可能領域の角部に印字する上で、各領域毎に印刷条件を変更することを説明する説明図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態のインクジェット印刷機101は、筐体100の内外に、給紙部(図示省略)と、プリンタ部102と、ベルトプラテン機構部104と、記録紙搬送部105(図2参照)と、制御部10と、排紙部(図示省略)と、を備えている。本実施形態のインクジェット印刷機101はライン型インクジェットプリンタである。
【0026】
この構成により、搬送されてきた記録紙Sはベルトプラテン機構部104のファンによって吸引搬送され、プリンタ部102で吐出されたインク滴によって画像が形成されるようになっている。
【0027】
そして、図4に示すように、排紙部で排出された通常の記録紙Sが積載されてなる印刷物Nが複数のデータから成りデータの区切りが判るように、または枚数の区切りが判るように、搬送方向に対して前後または左右にオフセットした合紙L(例えば図4の合紙L1や合紙L2)を挿入することで、印刷物Nのデータの区切りが分かるようにしている。また、挿入された合紙Lのオフセット部分に画像P(図3参照)を形成することで、区切られたデータ情報を知ることが出来るようになっている。
【0028】
(プリンタ部)
プリンタ部102は、給紙部の下流側で且つ記録紙循環搬送路部の上流側に設置されており、筐体100内の略中央部位に位置して筐体100に固定されている。
【0029】
このプリンタ部102では、複数色のインクと対応して複数のライン型インクジェットヘッド31(以下、単にヘッド31と記載)が上流側から下流側に向かってC(シアン)用,K(ブラック)用,M(マゼンタ)用,Y(イエロー)用の順に配置されている。すなわち、上流側から下流側に向かって、シアン用のヘッド31C、ブラック用のヘッド31K、マゼンタ用のヘッド31M、イエロー用のヘッド31Yがこの順に配置されている。
【0030】
各色のヘッド31は、ヘッドホルダ32に取り付けられて、ベルトプラテン機構部104による記録紙Sの搬送方向Xに等間隔をおいて配置されている。各ヘッド31には、下面側に吐出面31Fが形成されており、各吐出面から各色のインクが吐出するようになっている。
【0031】
ヘッドホルダ32には、ベルトプラテン機構部104を昇降可能に吊り下げ支持するヘッドギャップ調整ユニット33が設けられている。ヘッドギャップ調整ユニット33は、プーリ及びワイヤを有するヘッドギャップ調整機構と、モータとを備えている。そして、モータによりプーリを回転させワイヤの巻き取り、巻き出しを行うことで、ワイヤにつながれて吊り下げ支持されたベルトプラテン機構部104を昇降させるように構成されている。したがって、ベルトプラテン機構部104は、筐体100から構造的に分離されている。
【0032】
このヘッドギャップ調整ユニット33は、プリンタ部102の一部として制御部10に接続されており、制御部10の制御により駆動される。ヘッドギャップ調整ユニット33によるベルトプラテン機構部104の昇降は、例えば、記録紙Sの種類に応じた印刷モードの変更の際に行われる。その一例として、普通紙に比べると紙厚が大きいもの(例えば封筒)に印刷する印刷モードが選択された場合に、制御部10が、ベルトプラテン機構部104を降下させて、ヘッド31と、ベルトプラテン機構部104の後述の搬送ベルト41によって形成されるベルト搬送路41R(以下、単に搬送路41Rと記載)と、の間隔を通常よりも広げる場合が挙げられる。
【0033】
また、ヘッド31に設けた複数のノズル(図示省略)からインクを選択的に吐出させる場合に、インクジェット方式では、各ノズルと対応して設けられた各ピエゾ素子に駆動信号を印加して振動板を変位させてインク溜室内のインクをノズルから吐出させるピエゾ方式や、静電ギャップに駆動信号を印加して振動板を変位させてインク溜室内のインクをノズルから吐出させる静電方式や、インク溜室内の微小ヒータでインクを加熱して膜沸騰状態となって生じた気泡による圧力変化でインクをノズルから吐出させる膜沸騰インクジェット方式などがあり、本発明ではいずれの方式を用いても良いが、本実施形態では、構造が簡単であり且つ信頼性が良好なピエゾ方式を適用している。
【0034】
ヘッド31にピエゾ方式を適用した場合には、ヘッド31では、ノズルプレートに複数のノズルが例えば1インチ当たり300個の密度(300dpi)で主走査方向(Y軸方向)に沿って形成されており、且つ、各ノズルと対応してインクIKを一時的に貯溜するための各インク溜室が両側を隔壁で囲まれて形成されている。
【0035】
また、ノズルプレートと各インク溜室を隔てて対向した振動板上に複数のピエゾ素子が各ノズルごとに固着されている。
【0036】
従って、例えば図示左から2番目に配置した一のピエゾ素子に駆動信号を加えると、振動板が一のピエゾ素子と対応した一のノズルに向かって変位するので、一のピエゾ素子及び一のノズルと対応した一のインク溜室内で体積変化が生じることによりインクIKが一のノズルから吐出されるようになっている。
【0037】
(制御部)
図2に示すように、制御部10は、この内部に、演算部(CPU)13aと、インクジェット印刷機101の制御用ソフトなどを記憶したROM13bと、インクジェット印刷機101の動作時に変更可能な情報を一時的に格納するRAM13cと、インクジェット印刷機101内に設けた複数のヘッド31の情報を格納するテーブル13dとを有している。そして、制御部10が振動板の変位や変位速度などを調整することにより、ヘッド31から吐出されるインク滴(主滴)の径が調整されるようになっている。
【0038】
図5、図6に示すように、本実施形態では、合紙Lのオフセット部分に印刷する際、合紙Lの印刷可能端部16内で、印刷可能端18からの距離に応じてインク滴の大きさを制御部10が変化させることができるように、インクドロップ数を規定する印刷条件がテーブル13dに格納されている。
【0039】
具体的には、図5に示すように、搬送方向に平行なオフセット部分(以下、副走査方向オフセット部分22sという)に印字する場合、および、搬送方向に直交するオフセット部分(以下、主走査方向オフセット部分22mという)に印字する場合の印刷条件24msがテーブル13dに格納されている。また、図6に示すように、副走査方向オフセット部分22sと主走査方向オフセット部分22mとの交差部分(以下、合紙角部オフセット部分22eという)で印字する場合の印刷条件24eがテーブル13dに格納されている。
【0040】
本実施形態では、印刷可能端部16内に印刷する際、印刷条件24msでは、印刷可能端18(副走査方向オフセット部分22sに平行な印刷可能端18s、あるいは、主走査方向オフセット部分22mに平行な印刷可能端18m)からの距離が、0〜Aの領域ではドロップ数を6回とし、A〜A×2の領域ではドロップ数を5回とし、A×2〜A×3の領域ではドロップ数を4回とするように設定されている。そして、印刷条件24eは、後述するように、合紙角部オフセット部分22eにとって合理的な条件とされている。Aの値に関しては、合紙Lの種類やインクジェット印刷機101の仕様や印刷条件などに応じて予め設定しておく。
【0041】
ここで、吐出回数が多いほど主滴の寸法が大きくなる。従って、印刷条件24ms、24eにより、外乱の影響が大きい印刷可能端18の近くではインク滴を大きくすることで着弾ずれを低減できると共に、印刷可能端18から離れるに従ってインク滴を小さくすることで主滴によるインクミストの発生を低減できるようになっている。
【0042】
(ベルトプラテン機構部)
ベルトプラテン機構部104は、プリンタ部102と対向して複数のヘッド31の下方に配設されている。
【0043】
このベルトプラテン機構部104では、給紙部で給紙された未印刷の記録紙Sまたは後述する循環搬送路JRによって搬送された片面が印刷済みの記録紙Sを搭載しながら搬送するために複数の吸引孔(図示せず)を形成した無端帯状の搬送ベルト(ベルトプラテン)41が、モータにより回転駆動される駆動プーリ72と従動プーリ73との間に掛け渡されている。この搬送ベルト41によって搬送路41Rが形成されている。なお、この搬送路41Rは、後述の循環搬送路JRの一部を構成している。
【0044】
モータによる搬送ベルト41の移動速度、つまり、搬送ベルト41による記録紙Sの搬送速度は、エンコーダの出力により制御部10で検出することができる。駆動プーリ72と従動プーリ73との間には、記録紙Sを搬送ベルト41上にエア吸引する負圧を発生させるためのサクションファン74が設けられている。
【0045】
搬送ベルト41は、その裏側に配置された上述のサクションファン74に連通する複数の吸引孔(図示せず)を有している。この吸引孔には、サクションファン74が発生させる吸引力が供給される。したがって、搬送ベルト41上の記録紙Sには、記録紙Sが塞いだ吸引孔の負圧による搬送ベルト41側への吸引力が作用する。
【0046】
そして、ベルトプラテン機構部104では、帯状の搬送ベルト41上に記録紙Sを搭載したときに、この記録紙Sを搬送ベルト41上の吸引孔によりエアー吸引して、記録紙Sを搬送ベルト41上に固定した状態で搬送ベルト41の回転より記録紙Sを搬送方向X(副走査方向)に搬送する。搬送中の記録紙Sは、その通過経路の上方に配置されたプリンタ部102の複数のヘッド31により印刷画像がフルカラー印刷される。
【0047】
(作用、効果)
以下、本実施形態の作用、効果について述べる。インクジェット印刷機101は、印刷する際、合紙Lへの印刷の要否を判断し、合紙Lに印刷する必要がない場合には、通常の印刷制御を行う。合紙Lに印刷する必要がある場合には、印刷可能端部16に対しては各領域毎にインクドロップ数を制御して合紙Lへの印刷処理を行う。ここで、印刷可能端部16よりも紙面内側ではドロップ数は均一であり、印刷可能端部16とは印刷可能端18からドロップ数が徐々に変化している領域である。
【0048】
本実施形態では、合紙Lの印刷可能端部16の各領域毎に印刷条件24ms、24eの何れを適用するかを決定する。
【0049】
具体的には、上述したように、印刷可能端部16のうち副走査方向オフセット部分22sおよび主走査方向オフセット部分22mに印字する場合には、図5に示すように、何れも、印刷可能端18(印刷可能端18s、18m)からの距離が0〜Aの領域ではインクドロップ数を6回とし、印刷可能端18からの距離がA〜A×2の領域では5回とし、印刷可能端18からの距離がA×2〜A×3の領域では4回とする。
【0050】
印刷可能端部16のうち合紙角部オフセット部分22eに印字する場合には、印刷可能端18m、18sからの距離に対して以下のように規定する。図6に示すように、印刷可能端18mからの距離が0〜Aでかつ印刷可能端18sからの距離も0〜Aの領域では、ドロップ数を6回とする。印刷可能端18m、18sの一方からの距離が0〜Aでかつ他方からの距離がA〜A×2の領域では5回とする。印刷可能端18mからの距離がA〜A×2でかつ印刷可能端18sからの距離もA〜A×2の領域では4回とする。印刷可能端18m、18sの一方からの距離が0〜Aでかつ他方からの距離がA×2〜A×3の領域でも4回とする。印刷可能端18m、18sの一方からの距離がA〜A×2でかつ他方からの距離がA×2〜A×3の領域では3回とする。印刷可能端18mからの距離がA×2〜A×3でかつ印刷可能端18sからの距離もA×2〜A×3の領域では2回とする。
【0051】
このように、合紙Lの印刷可能端18m、18sからの距離に応じてインクドロップ数を考慮して、印刷条件24ms、24eを合紙Lの各領域に応じて設定することで、外乱の影響が大きい印刷可能端18の近くではドロップ数を増やしてインク主滴を大きくすることで着弾ずれを低減できると共に、印刷可能端18から離れるに従ってドロップ数を減らしてインク主滴を小さくすることでインクミストの発生を低減できるようになっている。従って、インク滴の着弾精度を高くし、かつ、インクミストの発生を抑えたインクジェット印刷機101とすることができ、印刷面や印刷機内の汚れが低減される。
【0052】
また、合紙Lでは、印字の読み易さはあまり要求されないので、本実施形態により、合紙Lへの印字精度に問題が生じることなく効率的にインクミストの発生を抑えることができる。
【0053】
なお、本実施形態では、C(シアン)、M(マゼンタ)、K(ブラック)、Y(イエロー)の4種類のインクを吐出する例で説明したが、1色(例えばK)で印字する場合にも適用可能であり、この場合、インクジェット印刷機101に設けられるヘッド31が1つであってもよい。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に比べ、合紙Lの搬送速度に応じて合紙Lへのインクドロップ数を制御することでインク主滴寸法を制御部10が更に制御する例である。図7は、本実施形態に係るインクジェット印刷機に記憶されているデータテーブルを示す説明図であり、記録紙Sの搬送速度とインクドロップ数との関係を示すものである。
【0055】
本実施形態では、制御部10のテーブル13dには、図5に示した印刷条件24ms、図6で示した印刷条件24e以外に、図7に示す印刷条件26も格納されている。そして、図7に示すように、記録紙Sの搬送速度が遅い場合にはドロップ数を最大で4回とし、記録紙Sの搬送速度が中程度の場合には最大で5回とし、記録紙Sの搬送速度が速い場合には最大で6回とするように制御部10で制御されている。なお、搬送速度が遅い場合は、例えば厚紙などの厚いものを搬送する場合であり、搬送速度が中程度の場合は、例えば封筒を搬送する場合であり、搬送速度が速い場合は、例えば薄紙などの薄いものを搬送する場合である。
【0056】
印字対象用紙である合紙Lの搬送速度が速い場合には、ヘッド31から吐出されたインク滴に対する外乱の影響が大きくなるため、インク滴の着弾ずれを低減させるにはインク滴の寸法を大きくする必要がある。一方、搬送速度が遅くて外乱の影響が小さいときには、インク主滴の寸法を小さくしても着弾精度がさほど落ちない。
【0057】
このため、本実施形態では、このように、搬送速度が速いほど、最大ドロップ数を増やしてインク主滴の寸法を大きくして外乱の影響を受け難くし、搬送速度が遅いほど、最大ドロップ数を減らしてインク主滴の寸法を小さくしてインクミストの発生を抑えている。従って、インク主滴の着弾ずれを更に抑えながらインクミストの発生を更に低減させることができる。
【0058】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に比べ、ヘッド31の吐出面と記録紙Sとの距離であるヘッドギャップGとインクドロップ数との関係を制御部10が更に制御する例である。図8は、本実施形態に係るインクジェット印刷機に記憶されているデータテーブルを示す説明図であり、ヘッドギャップとインクドロップ数との関係を示すものである。
【0059】
本実施形態では、制御部10のテーブル13dには、図5に示した印刷条件24ms、図6で示した印刷条件24e以外に、図8に示す印刷条件28も格納されている。
【0060】
記録紙Sの厚みによってヘッドギャップGは変化する。このヘッドギャップGが大きくなるほど、インク滴の飛行距離が大きくなり外乱の影響を受けやすくなる。
【0061】
本実施形態では、図8に示すように、ヘッドギャップGが大きいほどドロップ数を増やしてインク主滴の寸法を大きくし、ヘッドギャップGが小さいほどドロップ数を減らしてインク主滴の寸法を小さくすることで、インク主滴の着弾ずれを更に抑えつつインクミストの発生を更に低減させている。
【0062】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に比べ、印刷する上で互いに区別する必要のある合紙Lの枚数とインクドロップ数との関係を制御部10が更に制御する例である。本実施形態では、互いに区別する合紙Lの枚数は、印刷物Nに挿入する合紙Lの枚数である。図9は、本実施形態に係るインクジェット印刷機に記憶されている印刷条件をデータテーブルで説明する説明図であり、挿入される合紙Lの枚数と、合紙Lのオフセット部分に印字されるインクの色との関係をテーブルで示すものである。
【0063】
本実施形態では、制御部10のテーブル13dには、図5に示した印刷条件24ms、図6で示した印刷条件24e以外に、図9に示す印刷条件30も格納されている。
【0064】
ヘッド固有の色以外の画像を形成するためには各ヘッド31の吐出液を混ぜ合わせる必要がある。このため、吐出量が少ないヘッドが生じる可能性があり、このことは、主滴の着弾ずれやミストの発生を招く可能性がある。合紙Lに印字する場合、データの区切りが判りデータが何であるかが判れば良いため多彩な色を使用する必要性は小さい。このため、オフセット部分の印字は可能な限り単色吐出を行うことが好ましい。
【0065】
このため、本実施形態では、印刷する合紙Lの枚数に応じて吐出に使用するヘッド31の数を最小に設定している。すなわち、合紙Lが4枚までは、C(シアン)、M(マゼンタ)、K(ブラック)、Y(イエロー)の4種類のインクを単独で印字することで、色による区別を可能にし、5枚および6枚では、CとMなどによる2色の液を混合したもので印字することで、色による区別を可能にしている。従って、吐出量が少ないヘッドが生じる可能性を低減させることで、主滴の着弾ずれを更に抑えつつミストの発生を更に抑えることができる。なお、7枚以上の合紙Lを印刷する場合であっても同様に2色の液を混合したもので印字し、2色の液の組み合わせを全て用いた後、3色の液を混合したもので印字してもよい。
【0066】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態、第2実施形態、および、第4実施形態で説明したインクジェット印刷機の機能を全て有するインクジェット印刷機の例である。すなわち、本実施形態に係るインクジェット印刷機は、第1実施形態で説明したインクジェット印刷機101が有する機能に加え、第2実施形態で説明したように、記録紙Sの搬送速度とドロップ数との関係を制御する機能、および、第4実施形態で説明したように、印刷する合紙Lの枚数に応じて吐出に使用するヘッド31の数を最小にする機能、を更に有する。
【0067】
図10は、本実施形態のインクジェット印刷機の動作を説明するフローチャート図である。
【0068】
本実施形態では、制御部は、印刷する際、合紙Lへの印刷の要否を判断する(ステップS1)。合紙Lに印刷する必要がない場合には、通常の印刷制御を行う(ステップS2)。
【0069】
合紙Lに印刷する必要がある場合には、合紙Lへの印字物が単色か複数色かを判断する(ステップS3)。単色であると判断した場合、挿入する合紙Lの種類によって、吐出する色をテーブル13dの印刷条件(例えば印刷条件30。図9参照)に基づいて決定する(ステップS4)。
【0070】
そして、単色であっても複数色であっても、印刷対象物である合紙Lの搬送速度が高速、中速、低速の何れであるかを判断する(ステップS5)。そして、低速である場合には主滴寸法を小に設定し(ステップS6)、中速である場合には主滴寸法を中に設定し(ステップS7)、高速である場合には主滴寸法を大に設定する(ステップS8)。ステップS8では、例えば、テーブル13dの印刷条件26に基づいて決定する。何れの場合であっても、印字位置によるインクドロップ数を制御し(ステップS9)、印刷処理を行う(ステップS10)。ステップS9では、例えば、テーブル13dの印刷条件24ms、24e(図5、図6参照)に基づいて決定する。
【0071】
この後、次の印刷の有無を判断する(ステップS11)。次の印刷を行う必要がある場合にはステップS1に戻り、次の印刷を行う必要がない場合には印刷を終了する。
【0072】
本実施形態により、合紙Lの印刷可能端18m、18sからの距離に応じてインク主滴の寸法を制御する機能と、合紙Lの搬送速度に応じてインク主滴の寸法を制御する機能と、印刷する合紙Lの枚数に応じて使用するヘッド31の数を最小にする機能と、を全て有するインクジェット印刷機が実現される。
【0073】
なお、本実施形態では、第1実施形態と第2実施形態と第4実施形態とを組み合わせた例で説明したが、第3実施形態を組み合わせることももちろん可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 制御部(制御手段)
16 印刷可能端部
18 印刷可能端
18s 印刷可能端
18m 印刷可能端
24ms 印刷条件
24e 印刷条件
26 印刷条件
28 印刷条件
30 印刷条件
31 ヘッド(インクジェットヘッド)
31C ヘッド(インクジェットヘッド)
31K ヘッド(インクジェットヘッド)
31M ヘッド(インクジェットヘッド)
31Y ヘッド(インクジェットヘッド)
101 インクジェット印刷機
G ヘッドギャップ
L 合紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドからインクを吐出する際に、印刷用紙の印刷可能端部内では印刷可能端からの距離に応じてインク主滴の寸法を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット印刷機。
【請求項2】
前記印刷用紙として合紙に印刷する場合の印刷条件が前記制御手段に入力されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷機。
【請求項3】
前記合紙の搬送速度に応じて前記制御手段がインク主滴の寸法を制御することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット印刷機。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドと前記合紙とのヘッドギャップに応じて前記制御手段がインク主滴の寸法を制御することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット印刷機。
【請求項5】
互いに異なる色のインクが吐出可能なように前記インクジェットヘッドが複数設けられており、
各合紙毎に色を異ならせて印刷する際に前記インクジェットヘッドから前記合紙へ吐出するインク種の数を最小にするように前記制御手段が制御することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット印刷機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate