説明

インクジェット印刷用インク組成物

【課題】インクジェットプリンタにより印刷する際にノズルの詰まりや不安定な噴射が生じることがないので印字品質上好ましい印刷物が得られ、印字の適度な乾燥速度が得られ、また優れた色の発現が得られるインクジェット印刷用インク組成物を提供すること。
【解決手段】顔料、バインダー樹脂、顔料分散剤、溶媒及びベンゾトリアゾール系を除く酸化防止剤からなることを特徴とするインクジェット印刷用インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷用インク組成物に関し、より詳しくは、インクジェットプリンタにより印刷する際にノズルの詰まりや不安定な噴射が生じることがないので印字品質上好ましい印刷物が得られ、印字の適度な乾燥速度が得られ、また色の発現に優れているインクジェット印刷用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料、バインダー樹脂、顔料分散剤及び溶媒からなるインクジェット印刷用インク組成物で、種々の溶媒を用いたインクジェット印刷用顔料インク組成物が多数提案されている(例えば、特許文献1〜6参照)。
【0003】
従来の顔料インク組成物を用いてインクジェットプリンタにより印刷物を作成した場合に、インクジェットプリンタのノズルに詰まりや不安定な噴射が生じて印字品質上好ましくない印刷物が得られたり、またそのような顔料インク組成物を用いて印刷物を作成しても色の発現が必ずしも充分でなかったりすることがある。
【0004】
上記、ノズル詰まりや不安定な噴射が生じる原因として、一般的に、インク中のイオン性不純物や顔料及び樹脂成分の酸性基等がインクジェットプリンタヘッドを構成する金属部品を腐食させるためであると考えられており、金属の腐食を防ぐためにベンゾトリアゾール等の防錆剤を添加する方法がとられている。
【0005】
また、熱、酸素、光等により、高分子やエーテル等からラジカルや過酸化物が発生してしまうことが知られており、連鎖的な酸化劣化を防ぐためにラジカルを無効化する材料や過酸化物を分解する材料が用いられている。
【0006】
一方、特許文献6には、インク中にインクの経時的な酸化を防ぐために酸化防止剤を添加することが望ましいと示唆されているが、インクのどの組成物が酸化し、インクの吐出に影響を与えているか解明されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−044858号公報
【特許文献2】特開2001−342388号公報
【特許文献3】特開2002−338863号公報
【特許文献4】特開2006−056990号公報
【特許文献5】特開2006−056991号公報
【特許文献6】特開2007−291253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するために、或いは代替品を提供するためになされたものであり、インクジェットプリンタにより印刷する際にノズルの詰まりや不安定な噴射が生じることがないので印字品質上好ましい印刷物が得られ、印字の適度な乾燥速度が得られ、また色の発現に優れているインクジェット印刷用インク組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、インク中のバインダー樹脂や特にエーテル系の溶剤がラジカルや過酸化物を発生し、連鎖的に酸化劣化するためにインクジェットプリンタヘッドの金属部品を腐食し、更にノズル詰まりや不安定な噴射が生じることを発見した。また、インクによる連鎖的な酸化劣化によって、インクジェットプリンタヘッド表面にある撥水膜も、撥水膜中の共析金属(一般的にニッケル)が腐食したり、酸化劣化によって剥離したりすることを発見した。よって、特定の酸化防止剤を用いることにより、優れたインクジェット印刷用インク組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明に従って、顔料、バインダー樹脂、顔料分散剤、溶媒及びベンゾトリアゾール系を除く酸化防止剤からなることを特徴とするインクジェット印刷用インク組成物が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインクジェット印刷用インク組成物を用いることにより、インクジェットプリンタにより印刷する際にノズルの詰まりや不安定な噴射が生じることがないので印字品質上好ましい印刷物が得られ、印字の適度な乾燥速度が得られ、また優れた色の発現が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明のインクジェット印刷用インク組成物について具体的に説明する。
【0013】
本発明のインクジェット印刷用インク組成物においては、ベンゾトリアゾール系を除く酸化防止剤を用いることが必須である。
【0014】
本発明で用いる酸化防止剤としては、例えば、クエン酸及び誘導体、酒石酸、没食子酸及び誘導体、アスコルビン酸及び塩類、エリソルビン酸及び塩類、カテキン類、クロロゲン酸類、亜硫酸塩類等の抗酸化物質、ラジカル補足剤、過酸化物分解剤、紫外線吸収剤等が挙げられ、耐酸化性からはラジカル補足剤、過酸化物分解剤、紫外線吸収剤が好ましい。
【0015】
ラジカル補足剤として好ましくは、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4‘−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3−(3’,5‘−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トコフェロール類等のヒンダードフェノール系化合物、
アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−63、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−68、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87(いずれもADEKA社製)等のヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
【0016】
過酸化物分解剤として好ましくは、トリス(2,4‘−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト等のリン系化合物、
ジラウリル−3,3‘−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート等のイオウ系化合物が挙げられる。
【0017】
紫外線吸収剤として好ましくは、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2‘−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、
フェニルサリシレート、ρ−tert−ブチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系化合物、
2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’―ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3‘ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系化合物、
ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、ニッケル−ジブチルジチオカーバメイト等のニッケル系化合物が挙げられる。
【0018】
これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0019】
上記、酸化防止剤の配合量は、好ましくはインク組成物の0.002〜1質量%であり、より好ましくは0.01〜0.5質量%である。0.002質量%未満ではインク中の樹脂成分やグリコールエーテル化合物の酸化を抑制が困難である。また、1質量%を超えると、インク中の樹脂成分やグリコールエーテルの酸化抑制には支障がないが、インク膜の特性を低下させてしまう傾向がある。
【0020】
本発明で用いる溶媒としては、グリコールエーテル化合物を少なくとも1種を含むことが顔料分散液の安定性が良好であり、また、インクと基材との密着性が良好であることから好ましい。グリコールエーテル化合物としては、(ポリ)アルキレングリコール(ジ)アルキルエーテルが好ましく、より好ましくは、(ジ)エチレングリコール(ジ)アルキルエーテル、トリエチレングリコール(ジ)アルキルエーテル、及び(ジ)プロピレングリコール(ジ)アルキルエーテルが挙げられる。
【0021】
グリコールエーテル化合物として、例えば、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエチレングリコールエーテル類、
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類
及びそれらの混合物等を挙げることができる。中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルが更に好ましい。
【0022】
グリコールエーテル化合物以外の溶剤としては、アチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類;その他トルエン、キシレン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の複素環化合物、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等の含窒素化合物等が挙げられる。
【0023】
溶剤の配合量は、インク組成物の粘度、表面張力等を考慮して決定され、好ましくはインク組成物の15〜95質量%であり、より好ましく55〜90質量%である。
【0024】
本発明のインクジェット印刷用インク組成物は、通常のインクジェット印刷用インク組成物と同様にバインダー樹脂を含有する。本発明で用いるバインダー樹脂は通常のインクジェット印刷用インク組成物に普通に用いられているいかなるバインダー樹脂でもよく、特には限定されないが、本発明においてはそのようなバインダー樹脂として塩化ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂の何れかが好ましい。例えば基材が塩化ビニル系の場合は塩化ビニル共重合樹脂がインク付着性から好ましい。この場合、塩化ビニル共重合樹脂を単独で使用してもよいが、塩化ビニル共重合樹脂と他の樹脂とを併用することもできる。このバインダー樹脂の配合量は、インク付着性、インク組成物の粘度、表面張力等を考慮して決定され、好ましくはインク組成物の0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0025】
塩化ビニル共重合樹脂として、種々のものを使用することができ、例えば塩化ビニルと酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル、マレイン酸等の他のモノマーとの共重合樹脂を挙げることができる。好ましい塩化ビニル共重合樹脂として、塩化ビニルと酢酸ビニルとを共重合させた塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、特に分子量30,000以下の共重合樹脂を挙げることができる。
【0026】
上記の他の樹脂としては、特に制限はなく、通常のインクジェット印刷用インク組成物に用いられている樹脂は何れも使用することができる。例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ樹脂、ポリアミド樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ニトロセルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロース、トリチルセルロース、シアンエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボシキエチルセルロース、アミノエチルセルロース等のセルロースエーテル樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂等を挙げることができる。
【0027】
本発明のインクジェット印刷用インク組成物に使用される顔料は通常のインクジェット印刷用インク組成物に普通に用いられているいかなる顔料でもよく、例えば、
ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、42、53、55、74、83、86、93、109、110、117、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、166、168、180、181、184、185、
ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71、
ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、101、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254、
ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50、
ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、30、60、64、80、
ピグメントグリーン7、36、
ピグメントブラウン23、25、26、
ピグメントブラック1、7、26、27、28、
酸化チタン、酸化鉄、群青、黄鉛、硫化亜鉛、コバルトブルー、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を挙げることができる。顔料の配合量は、使用する顔料の種類等により任意に決定できるが、好ましくはインク組成物の0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0028】
本発明のインクジェット印刷用インク組成物に使用される顔料分散剤は、通常のインクジェット印刷用インク組成物に普通に用いられているいかなる顔料分散剤でもよいが、1分子中に2個以上のアミド基を有し且つ数平均分子量が2,000〜15,000であるポリエステルポリアミド樹脂が好ましい。このようなポリエステルポリアミド樹脂は、酸末端ポリエステル樹脂と1分子中に2個以上のアミノ基を有するポリアミン化合物とを反応させることにより製造される。このようなポリエステルポリアミド樹脂として、例えば、ソルスパース32000、ソルスパース32500、ソルスパース32600、ソルスパース33500、ソルスパース34750、ソルスパース35100、ソルスパース37500(以上、ルーブリゾール社製)、ディスパービック9077(ビックケミー社製)等を挙げることができる。この顔料分散剤の配合量は、使用する顔料の種類等により決定され、好ましくはインク組成物の0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0029】
なお、上記のようなポリエステルポリアミド樹脂において、アミド基が1分子中1個以下の場合には顔料分散性が不十分となる傾向があり、また、数平均分子量が2,000未満の場合には顔料分散安定性が不十分となる傾向があり、数平均分子量が15,000を超える場合にはインク組成物中への分散性が不十分となる傾向がある。
【0030】
また、本発明のインクジェット印刷用インク組成物は所望により電導度調整剤を含有することができる。そのような電導度調整剤の配合量は通常はインク組成物の0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0031】
また、本発明のインクジェット印刷用インク組成物は、通常のインクジェット印刷用インク組成物と同様にインクジェット印刷法に適応した特性を持っていることが必要であり、そのためにはインク組成物の粘度を1〜100mPa・s(20℃)、表面張力を20〜60mN/m、比重を0.8〜1.2の範囲にすることが望ましい。
【0032】
本発明のインクジェット印刷用インク組成物は、各成分を撹拌混合した後、使用するインクジェットプリンタのノズル径の約1/10以下のポアーサイズを持つフィルターで濾過し、精製することによって調製することができる。
【0033】
本発明のインクジェット印刷用インク組成物は、種々のタイプのインクジェットプリンタに使用することができる。このようなインクジェットプリンタとして、例えば、荷電制御方式や、インクオンデマンド方式によりインク組成物を噴射させる方式のもの等を挙げることができる。本発明のインクジェット印刷用インク組成物は、特にラージフォーマットを用いた大型インクジェットプリンタによる印刷、例えばサインディスプレイ等の屋外用物品に印刷することを目的としたインクジェットプリンタによる印刷に好適に適用できる。また、カラーグラフィック印字部分やビデオ録画の描画においてもコントラストが明瞭で、画像の再現性は著しく良好となる。
【0034】
インクジェット印刷した後の印刷面(インク組成物)を常温〜数百℃で乾燥することにより乾燥被膜を形成する。なお、本発明で印刷の対象となる基材については、印刷面(インク組成物)を乾燥する条件下で変形もしくは変質しないものであれば特に制限されることはない。そのような基材として、例えば、金属、ガラス及びプラスチック等の基材表面、表面を樹脂でコーティングした紙、オーバーヘッドプロジェクト用の透明シート、サインディスプレイ等の屋外用物品等を挙げることができる。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとする。
【0036】
<実施例1〜61及び比較例1〜9>
表1〜表6に示す成分と配合量(質量部)で含有する混合物をそれぞれサンドミルで3時間練合して、実施例1〜61及び比較例1〜9のインク組成物を調製した。
【0037】
使用した顔料は、黒顔料がカーボンブラック、マゼンタ顔料がピグメントレッド122、フタロシアニンブルーがピグメントブルー15:3、イエロー顔料がピグメントイエロー150、白顔料は二酸化チタンである。
【0038】
使用した樹脂は、塩化ビニル共重合樹脂がソルバインCL(日信化学社製、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、数平均分子量=25000、Tg=70℃)、ポリエステル樹脂がバイロンGK810(東洋紡社製、数平均分子量=6000、Tg=46℃、酸価=5mgKOH/g、水酸基価=19mgKOH/g)、アクリル樹脂がダイヤナールMB2660(三菱レーヨン社製、重量平均分子量=65000、Tg=52℃、酸価=3mgKOH/g)である。
【0039】
使用した酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系化合物として、ヨシノックスBHT(エーピーアイ社製、ジブチルシドロキシトルエン)、ヒンダードアミン系化合物として、チヌビン123(チバ社製、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ヒドリジニル)エステル)、リン系化合物として、アデカスタブ1178(ADEKA社製、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト)、イオウ系化合物として、シーノックスDL(シプロ化成社製、ジドデシルチオジプロピオネート)、ベンゾフェノン系化合物として、シーソーブ102(シプロ化成社製、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン)、サリチル酸系化合物として、フェニルサリシレート(和光純薬工業社製)、シアノアクリレート系化合物として、シーソーブ502(シプロ化成社製、2‘−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート)、ニッケル系化合物として、シーソーブ612NH(シプロ化成社製、[2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II))である。
【0040】
また、使用した腐蝕防止剤は、カルボキシベンゾトリアゾールである。
【0041】
得られた実施例1〜61及び比較例1〜9の各インク組成物に対して、粘度、平均粒子径、分散安定性、ノズル吐出安定性をそれぞれ下記の方法で試験、測定し、下記の基準で評価した。
【0042】
使用した顔料分散剤は、ポリエステルポリアミド樹脂Aがソルスパース32000(ルーブリゾール社製、固形分濃度100%、数平均分子量=1500)、ポリエステルポリアミド樹脂BがBYK9077(ビックケミー社製、固形分濃度99%、数平均分子量=1400)である。
【0043】
<粘度測定>
各インク組成物の粘度は、粘弾性測定装置(Anton Paar社製「Pysica MCR301」)を用い、20℃にて測定した。
【0044】
<平均粒子径測定>
各インク組成物の顔料の粒子径は、動的光散乱理論式粒度分布測定器(日機装社製「UPA−EX150」)を用いて平均粒子経(D50)を測定した。
【0045】
<分散安定性>
各インク組成物を密閉容器中で60℃・1ヶ月間保存した後、取り出しその粘度及び粒子径を上記のように測定し、試験前と試験後のそれぞれの変化を下記の基準で評価した。
◎:粘度及び粒子径の変化が、両方とも±5%以内。
○:粘度及び粒子径の変化が、少なくとも一方が±5%超±10%以内。
×:粘度及び粒子径の変化が、少なくとも一方が±10%超。
【0046】
<ノズル吐出安定性>
ラージフォーマット用インクジェットプリンタを用いて塩化ビニルの基材に画像を8時間連続して印刷し、その後温度40℃・湿度65%の環境下で1週間停止させ、再度1時間連続印刷して、その印字状態を目視で下記の基準で評価した。
◎:印字したドットの内、90%以上で所定の位置に正しく印字できる。
○:印字したドットの内、80%以上90%未満で所定の位置に正しく印字できる。
△:印字したドットの内、20%以上70%未満でドットの曲がりが発生。
×:印字したドットの内、70%以上でドットの曲がりが発生。
【0047】
それらの測定結果、評価結果は表1〜表6に示す通りであった。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

【0054】
表1〜表5に示すデータから明らかなように、本発明の実施例1〜61のインク組成物は、各試験項目について優れた評価結果が得られ、印字の良好なインクが得られた。
【0055】
一方、表6に示すデータから明らかなように、比較例1〜9のインク組成物はノズル詰まりが生じ、印字不良となった。金属等の腐食防止剤であるカルボキシベンゾトリアゾールのみを使用した比較例9は、分散安定性が不良となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、バインダー樹脂、顔料分散剤、溶媒及びベンゾトリアゾール系を除く酸化防止剤からなることを特徴とするインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項2】
上記酸化防止剤がインク組成物の0.002〜1質量%である請求項1に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項3】
上記酸化防止剤がラジカル補足剤である請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項4】
上記ラジカル補足剤が、ヒンダードアミン系化合物又はヒンダードフェノール系化合物である請求項3に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項5】
上記ヒンダードフェノール系化合物がジブチルシドロキシトルエンである請求項4に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項6】
上記酸化防止剤が過酸化物分解剤である請求項1又は2記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項7】
上記過酸化物分解剤が、リン系化合物又はイオウ系化合物である請求項6に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項8】
上記酸化防止剤が紫外線吸収剤である請求項1又は2記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項9】
上記紫外線吸収剤が、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸系化合物、シアノアクリレート系化合物及びニッケル系化合物ならなる群より選択される請求項8に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項10】
上記溶媒としてグリコールエーテル化合物の少なくとも1種を含む請求項1〜9の何れかに記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項11】
上記グリコールエーテル化合物が(ポリ)アルキレングリコール(ジ)アルキルエーテルである請求項10に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項12】
上記グリコールエーテル化合物が(ジ)エチレングリコール(ジ)アルキルエーテル、トリエチレングリコール(ジ)アルキルエーテル、又は(ジ)プロピレングリコール(ジ)アルキルエーテルである請求項11に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項13】
上記グリコールエーテル化合物がエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルである請求項12に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項14】
上記バインダー樹脂が塩化ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂の何れか1種類以上である請求項1〜13の何れかに記載のインクジェット印刷用インク組成物。

【公開番号】特開2010−235828(P2010−235828A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86550(P2009−86550)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】