説明

インクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インク

【課題】室温において低粘度であり、しかも硬化膜が柔軟性に優れる、高感度のインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インクを提供する。
【解決手段】(A)着色剤、(B)重合性モノマーとして、(b1)重合性不飽和結合を1分子中に3個以上有する化合物、(b2)アルキレングリコール系アクリレート化合物、(b3)重合性不飽和結合を1分子中に1個または2個有する前記(b2)以外の化合物、ならびに(C)下記式(2)で表される化合物を含有してなる光重合開始剤を含有することを特徴とするインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インク。


(式中、各R2およびR3は相互に独立に炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、活性エネルギー線を用いたインクジェット方式が活発に研究されている(例えば、特許文献1)。この方式は、液状のインクを紙、プラスチックなどに塗布した後、紫外線(UV)光により、硬化・架橋させる方式である。従来の熱で硬化・架橋させるインクジェット方式とは異なり、UVで硬化・架橋させるインクジェット方式では、速乾性、無溶剤、インクを吸収しない媒体への印刷が可能であるなどの利点があり、注目されている。
インクジェット方式での塗布媒体は多岐に渡り、伸縮性のある基材などへの需要が高まるにつれて、インクジェット印刷用インクに対しても、インク硬化膜の基板への追従性、インク硬化膜の可とう性などの柔軟性が求められるようになってきた。インク硬化膜に柔軟性を付与するためには、通常、粘度の高いポリマーや架橋剤などを使用する必要があるが、これらを使用すると得られるインクも高粘度となる。しかし、インクジェット印刷方式ではインク粘度が高いと、インクの連続吐出安定性が損なわれたり、ノズルヘッドの詰りを引き起こすおそれがある。一般に、インクジェット方式では、連続吐出安定性やノズルヘッドの詰りを防止する観点から、インクの粘度が室温で30mPa・s以下であることが望まれている。また、インク硬化膜に柔軟性を付与するためには、硬化剤として重合性不飽和結合を3個以上有する化合物を使用しない等の手法もあるが、重合性不飽和結合を1個または2個有する化合物のみでは十分な強度が得られず、インク硬化膜が脆く裂けやすいなどの問題がある。
そこで、インク硬化膜の十分な柔軟性を確保しつつ、かつインク硬化膜の強度も十分であり、しかも室温で30mPa・s以下の粘度となる、インクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インクが強く求められている。
【特許文献1】特表2004−526820
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、室温において低粘度であり、しかも硬化膜が柔軟性に優れる、高感度のインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、第一に、
(A)着色剤、(B)重合性モノマーとして、(b1)重合性不飽和結合を1分子中に3個以上有する化合物、(b2)下記式(1)で表される化合物および(b3)重合性不飽和結合を1分子中に1個または2個有する前記(b2)以外の化合物、ならびに(C)下記式(2)で表される化合物を含有してなる光重合開始剤を含有することを特徴とするインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インク、からなる。
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、nは0〜6の整数である。)
【0007】
【化2】

【0008】
(式中、各R2およびR3は相互に独立に炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。)
本発明でいう「放射線」とは、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、分子線、γ線、シンクロトロン放射線、プロトンビーム線等を含むものを意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インクは、低粘度かつ高感度で、しかも硬化膜が可とう性に優れており、高精細で高品質の印刷物を高い生産性で安定してもたらすことができる。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
(A)着色剤
本発明における着色剤は、色調が特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選定され、顔料、染料あるいは天然色素の何れでもよい。
本発明における着色剤としては、発色性が高く、かつ耐熱性の高い着色剤、特に耐熱分解性の高い着色剤が好ましく、通常、顔料、特に好ましくは有機顔料、カーボンブラックが用いられる。
前記有機顔料としては、例えば、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行) においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
【0011】
C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー31、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー60、C.I.ピグメントイエロー61、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー71、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントイエロー101、C.I.ピグメントイエロー104、C.I.ピグメントイエロー106、C.I.ピグメントイエロー108、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー113、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー116、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー119、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー126、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー152、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185;
【0012】
C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ14、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ46、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ63、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73;
C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット38;
【0013】
C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド14、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド30、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド37、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド40、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド42、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド50:1、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド57:2、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド90:1、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド101、
【0014】
C.I.ピグメントレッド102、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド105、C.I.ピグメントレッド106、C.I.ピグメントレッド108、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド113、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド151、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド174、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド243、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド265;
【0015】
C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60;
C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58;
C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25;
C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7。
また、これらの有機顔料は、例えば、硫酸再結晶法、溶剤洗浄法や、これらの組み合わせ等により精製して使用することができる。
【0016】
また、前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
本発明において、有機顔料および無機顔料は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、また有機顔料と無機顔料とを併用することができるが、画素を形成する際には、好ましくは1種以上の有機顔料が使用され、またブラックマトリックスを形成する際には、好ましくは2種以上の有機顔料および/またはカーボンブラックが使用される。
【0017】
本発明において、前記各顔料は、所望により、その粒子表面をポリマーで改質して使用することができる。顔料の粒子表面を改質するポリマーとしては、例えば、特開平8−259876号公報に記載されたポリマーや、市販の各種の顔料分散用のポリマーまたはオリゴマー等を挙げることができる。
【0018】
また、本発明における着色剤は、所望により、分散剤と共に使用することができる。
前記分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を挙げることができる。
前記界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレン n−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン n−ノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類;ポリエチレンイミン類等のほか、以下商品名で、KP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(共栄社化学(株)製)、エフトップ(トーケムプロダクツ社製)、メガファック(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラード(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード、サーフロン(以上、旭硝子(株)製)、Disperbyk(ビックケミー・ジャパン(株)製)、ソルスパース(セネカ(株)製)等を挙げることができる。
これらの界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
界面活性剤の使用量は、着色剤100重量部に対して、通常、50重量部以下、好ましくは0〜30重量部である。
【0019】
本発明において、インク中の着色剤の含有量は、通常、0.5〜10重量%、好ましくは1〜6重量%である。着色剤の含有量が少なすぎると、十分な色濃度が得られ難くなるおそれがあり、一方多すぎると、ノズルヘッドからの連続吐出安定性が低下する傾向がある。
【0020】
(B)重合性モノマー
本発明における(B)重合性モノマーは、(b1)重合性不飽和結合を1分子中に3個以上有する化合物(以下、「重合性モノマー(b1)」という。)、(b2)前記式(1)で表され化合物(以下、「重合性モノマー(b2)」という。)および(b3)重合性不飽和結合を1分子中に1個または2個有する前記(b2)以外の化合物(以下、「重合性モノマー(b3)」という。)からなる、活性エネルギー線の照射により重合しうるモノマーである。
【0021】
本発明において重合性モノマー(b1)の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性(トリス(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、下記式(3)で表される化合物等を挙げることができる。
これらの重合性モノマー(b1)のうち、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ぺンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性(トリス(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、下記式(3)で表される化合物等が好ましく、グリセリントリアクリレート、ぺンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ε−カプロラクトン変性(トリスアクリロキシエチル)イソシアヌレート等が特に好ましい。
【0022】
これらの重合性モノマー(b1)のうち、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド変性トリアクリレートはアロニックスM−313、M−320、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド変性トリアクリレートはアロニックスM−350、M−360、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド変性トリアクリレートはアロニックスM−315、ε−カプロラクトン変性(トリスアクリロキシエチル)イソシアヌレートはアロニックスM−325(以上、東亞合成社製)、下記式(3)で表される化合物はUA−31(東邦化学工業社製)の品名でそれぞれ市販されている。
【0023】
【化3】

【0024】
重合性モノマー(b2)は前記式(1)で表される化合物である。
式(1)において、nとしては、0〜4が好ましく、特に1〜3が好ましい。
重合性モノマー(b2)の具体例としては、ビニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
これらの重合性モノマー(b2)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
本発明において重合性モノマー(b3)の具体例としては、
エチレングリコールジ(メタ)アタリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレングリコール単位数が5〜12)、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(エチレングリコール単位数が5〜12)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート(エチレングリコール単位数が5〜12)、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート(エチレングリコール単位数が5〜12)等の(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート類;
【0026】
プロピレングリコールジ(メタ)アタリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレングリコール単位数が5〜9)、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート(プロピレングリコール単位数が5〜9)、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート(プロピレングリコール単位数が5〜9)、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート(プロピレングリコール単位数が5〜9)等の(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート類;
【0027】
1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、モノメチロールトリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の他の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;
【0028】
(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等の(メタ)アクリル酸の脂環式エステル類;
【0029】
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の前記以外の(メタ)アクリル酸エステル類;
【0030】
エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル等の(ポリ)エチレングリコールビニルエーテル類;
プロピレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールジビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル等の(ポリ)プロピレングリコールビニルエーテル類や、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム等を挙げることができる。
【0031】
これらの重合性モノマー(b3)のうち、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリル酸の脂環式エステル類、(ポリ)エチレングリコールビニルエーテル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム等が好ましい。また、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート類の中では、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレングリコール単位数が5〜9)等が好ましく、(メタ)アクリル酸の脂環式エステル類の中では、イソボルニル(メタ)アクリレート等が好ましく、(ポリ)エチレングリコールビニルエーテル類の中では、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が好ましい。
重合性モノマー(b3)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0032】
本発明において、(B)重合性モノマーの具体例としては、(b−1)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性(トリス(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレートおよび前記式(3)で表される化合物の群から選ばれる少なくとも1種と;ビニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレートおよびテトラエチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレートの群から選ばれる少なくとも1種と;(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリル酸の脂環式エステル類、(ポリ)エチレングリコールビニルエーテル類、N−ビニルピロリドンおよびN−ビニル−ε−カプロラクタムの群から選ばれる少なくとも1種とからなる混合物を挙げることができ、
【0033】
好ましい(B)重合性モノマーの具体例としては、(b−2)グリセリントリ(メタ)アクリレート、ぺンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性(トリス(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレートおよび前記式(3)で表される化合物の群から選ばれる少なくとも1種と;ビニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレートおよびテトラエチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレートの群から選ばれる少なくとも1種と;テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレングリコール単位数が5〜9)、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、N−ビニルピロリドンおよびN−ビニル−ε−カプロラクタムの群から選ばれる少なくとも1種とからなる混合物を挙げることができ、
【0034】
特に好ましい(B)重合性モノマーの具体例としては、(b−3)グリセリントリアクリレート、ぺンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびε−カプロラクトン変性(トリスアクリロキシエチル)イソシアヌレートの群から選ばれる少なくとも1種と;ビニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレートおよびテトラエチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレートの群から選ばれる少なくとも1種と;テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびN−ビニルピロリドン群から選ばれる少なくとも1種からなり、場合によりトリエチレングリコールジビニルエーテルまたはN−ビニル−ε−カプロラクタムをさらに含有する混合物を挙げることができる。
【0035】
本発明において、インク中の重合性モノマー(b1)の含有量は、通常、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜18重量%、特に好ましくは1.0〜15重量%である。この場合、重合性モノマー(b1)の含有量が少なすぎると、硬化膜の強度が不十分となるおそれがあり、一方多すぎると、硬化膜の可とう性が不十分となるおそれがある。
【0036】
本発明において、インク中の重合性モノマー(b2)の含有量は、通常、5〜80重量%、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%である。この場合、重合性モノマー(b2)の含有量が少なすぎると、インクとしたときの粘度が大きくなる傾向があり、一方多すぎると硬化膜の強度が不十分となるおそれがある。
【0037】
本発明において、インク中の重合性モノマー(b3)の含有量は、通常、5〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、特に好ましくは40〜70重量%である。この場合、その他のモノマーの使用割合が少なすぎると、インクとした時の膜強度が悪くなるなどの傾向があり、多すぎると硬化不良が起こる傾向がある。
【0038】
(C)光重合開始剤
本発明における(C)光重合開始剤は、前記式(2)で表される化合物(以下、「アセトフェノン系化合物(2)」という。)を含有してなり、活性エネルギー線の照射により、(B)重合性モノマー中の重合性不飽和結合の重合反応を生起する作用を有する成分である。アセトフェノン系化合物(2)は、感度が良好であるとともに、(B)重合性モノマーに対する溶解性に優れるため、(C)光重合開始剤として必須成分である。
【0039】
式(2)において、R2およびR3の炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基を挙げることができる。
これらのアルキル基のうち、メチル基、エチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0040】
好ましいアセトフェノン系化合物(1)の具体例としては、
2−(4−メチルベンジル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)エタン−1−オン、2−(4−エチルベンジル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)エタン−1−オン、2−(4−n−プロピルベンジル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)エタン−1−オン、2−(4−n−ブチルベンジル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)エタン−1−オン、
【0041】
2−(4−メチルベンジル)−2−(ジエチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)エタン−1−オン、2−(4−エチルベンジル)−2−(ジエチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)エタン−1−オン、2−(4−n−プロピルベンジル)−2−(ジエチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)エタン−1−オン、2−(4−n−ブチルベンジル)−2−(ジエチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)エタン−1−オン等を挙げることができる。
【0042】
本発明においては、アセトフェノン系化合物(2)として市販品を使用することができる。
2−(4−メチルベンジル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)エタン−1−オンの市販品としては、商品名で、例えば、イルガキュア379(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)等がある。
本発明において、アセトフェノン系化合物(2)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0043】
また、本発明においては、活性エネルギー線の照射時に発生する(C)光重合開始剤の分解物の臭気を低減する等の観点から、(C)光重合開始剤として、アセトフェノン系化合物(2)と共に、他の光重合開始剤を併用することが好ましい。
前記他の光重合開始剤としては、例えば、他のアセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、ホスフィン系化合物、トリアジン系化合物、O−アシルオキシム系化合物等を挙げることができる。
【0044】
前記他のアセトフェノン系化合物の具体例としては、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−メチル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−(4−モルフォリノフェニル)−2−ベンジル−2−ジメチルアミノブタン−1−オン、1−(2−ブロモ−4−モルフォリノフェニル)−2−ベンジル−2−ジメチルアミノブタン−1−オン、1−(4−モルフォリノフェニル)−2−(2−ブロモベンジル)−2−ジメチルアミノブタン−1−オン、1−(4−モルフォリノフェニル)−2−(4−ブロモベンジル)−2−ジメチルアミノブタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等を挙げることができる。
【0045】
また、前記ビイミダゾール系化合物の具体例としては、
2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等を挙げることができる。
【0046】
本発明においては、他の光重合開始剤としてビイミダゾール系化合物を併用する場合、下記する水素供与体を添加することが、感度をさらに改良することができる点で好ましい。
ここでいう「水素供与体」とは、露光によりビイミダゾール系化合物から発生したラジカルに対して、水素原子を供与することができる化合物を意味する。
このような水素供与体としては、下記で定義するメルカプタン系化合物、下記で定義するアミン系化合物等が好ましい。
前記メルカプタン系化合物は、ベンゼン環あるいは複素環を母核とし、該母核に直接結合したメルカプト基を1個以上、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個有する化合物(以下「メルカプタン系水素供与体」という。)からなる。
また、前記アミン系化合物は、ベンゼン環あるいは複素環を母核とし、該母核に直接結合したアミノ基を1個以上、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個有する化合物(以下「アミン系水素供与体」という。)からなる。
なお、これらの水素供与体は、メルカプト基とアミノ基とを同時に有することもできる。
【0047】
メルカプタン系水素供与体は、ベンゼン環あるいは複素環をそれぞれ1個以上有することができ、またベンゼン環と複素環との両者を有することができ、これらの環を2個以上有する場合、縮合環を形成しても形成しなくてもよい。
また、メルカプタン系水素供与体は、メルカプト基を2個以上有する場合、少なくとも1個の遊離メルカプト基が残存する限りでは、残りのメルカプト基の1個以上がアルキル、アラルキルまたはアリール基で置換されていてもよく、さらには少なくとも1個の遊離メルカプト基が残存する限りでは、2個の硫黄原子がアルキレン基等の2価の有機基を介在して結合した構造単位、あるいは2個の硫黄原子がジスルフィドの形で結合した構造単位を有することができる。
さらに、メルカプタン系水素供与体は、メルカプト基以外の箇所で、カルボキシル基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のフェノキシカルボニル基、ニトリル基等によって置換されていてもよい。
【0048】
このようなメルカプタン系水素供与体の具体例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−2,5−ジメチルアミノピリジン等が挙げることができる。
これらのメルカプタン系水素供与体のうち、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾールが好ましく、特に、2−メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0049】
アミン系水素供与体は、ベンゼン環あるいは複素環をそれぞれ1個以上有することができ、またベンゼン環と複素環との両者を有することができ、これらの環を2個以上有する場合、縮合環を形成しても形成しなくてもよい。
また、アミン系水素供与体は、アミノ基の1個以上がアルキル基または置換アルキル基で置換されてもよく、またアミノ基以外の箇所で、カルボキシル基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のフェノキシカルボニル基、ニトリル基等によって置換されていてもよい。
【0050】
このようなアミン系水素供与体の具体例としては、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸i−アミル、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノベンゾニトリル等が挙げることができる。
【0051】
本発明において、水素供与体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができるが、1種以上のメルカプタン系水素供与体と1種以上のアミン系水素供与体とを組み合わせて使用することが、露光後えられる硬化物が基板から脱落し難く、硬化物の強度および感度も高い点で好ましい。
メルカプタン系水素供与体とアミン系水素供与体との好ましい組み合わせの具体例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール/4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メルカプトベンゾチアゾール/4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メルカプトベンゾオキサゾール/4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メルカプトベンゾオキサゾール/4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等を挙げることができ、さらに好ましい組み合わせは、2−メルカプトベンゾチアゾール/4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メルカプトベンゾオキサゾール/4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンであり、特に好ましい組み合わせは、2−メルカプトベンゾチアゾール/4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンである。
メルカプタン系水素供与体とアミン系水素供与体との組み合わせにおけるメルカプタン系水素供与体とアミン系水素供与体との重量比は、通常、1:1〜1:4、好ましくは1:1〜1:3である。
【0052】
なお、本発明においては、他の光重合開始剤として他のアセトフェノン系化合物を併用する場合にも、前記水素供与体を1種以上添加することができる。
【0053】
また、前記ベンゾフェノン系化合物の具体例としては、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等を挙げることができる。
また、前記ベンゾイン系化合物の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート等を挙げることができる。
また、前記α−ジケトン系化合物の具体例としては、ジアセチル、ジベンゾイル、メチルベンゾイルホルメート等を挙げることができる。
また、前記多核キノン系化合物の具体例としては、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン等を挙げることができる。
また、前記キサントン系化合物の具体例としては、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン等を挙げることができる。
また、前記ホスフィン系化合物の具体例としては、ビス(2,4,6−トリメチル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0054】
また、前記トリアジン系化合物の具体例としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル基を有するトリアジン系化合物等を挙げることができる。
【0055】
また、前記O−アシルオキシム系化合物の具体例としては、1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−ヘプタン−1,2−ジオン 2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−オクタン−1,2−ジオン 2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−〔4−(ベンゾイル)フェニル〕−オクタン−1,2−ジオン 2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−エタノン 1−(O−アセチルオキシム)、1−[9−エチル−6−(3−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−エタノン 1−(O−アセチルオキシム)、1−(9−エチル−6−ベンゾイル−9H−カルバゾール−3−イル)−エタノン 1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)ベンゾイル}−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)等を挙げることができる。
前記他の光重合開始剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0056】
本発明における他の光重合開始剤としては、他のアセトフェノン系化合物、ホスフィン系化合物およびO−アシルオキシム系化合物の群から選ばれる少なくとも1種が、酸素による硬化不良を回避できたり、硬化時の感度がさらに改善される点で好ましい。
【0057】
本発明において、アセトフェノン系化合物(2)の使用割合は、(C)光重合開始剤全体に対して、通常、1〜100重量%、好ましくは5〜80重量%、特に好ましくは5〜60重量%である。この場合、アセトフェノン系化合物(2)の使用割合が少なすぎると、硬化が不十分となるおそれがある。
【0058】
本発明において、インク中の(C)光重合開始剤の含有量は、通常、1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、特に好ましくは3〜10重量%である。この場合、(C)光重合開始剤の含有量が少なすぎると、硬化が不十分となったり、硬化不良による膜表面のべたつきを生じたりするおそれがあり、一方多すぎると、膜深部方向への硬化反応が不十分となって膜強度が低下するおそれがある。
さらに、本発明においては、(C)光重合開始剤と共に、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤あるいは高分子光架橋・増感剤の1種以上を併用することもできる。
【0059】
他の配合成分
本発明のインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インクは、さらに、前記以外の成分として、例えば、
インクとしての保存安定性を高めるための重合禁止剤;
2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の酸化防止剤;
2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤;
銅フタロシアニン誘導体等の青色顔料誘導体や黄色顔料誘導体等の分散助剤;
ガラス、アルミナ等の充填剤;
ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ポリ(フロロアルキルアクリレート)類等の高分子化合物;
ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の界面活性剤;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の密着促進剤;
ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤;
1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等の熱ラジカル発生剤
等を配合することができる。
本発明のインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インクは、前記(A)〜(C)成分を必須成分とし、場合により前記他の配合成分をさらに含有し、基本的には溶媒を含有しないものであるが、必要に応じて溶媒を少量含有することもできる。ここで、溶媒とは、非反応性で室温で液状の化合物であり、前記(B)成分および他の配合成分を含まない。本発明において、インク中の溶媒の含有量は、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは2%以下である。この場合、溶媒の含有量が多すぎると硬化が不十分となったり、印刷後の臭気が生じたりするおそれがある。
【0060】
本発明のインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インクは、適宜の方法により調製することができ、例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分等を常法により混合して調製することができるが、(A)成分として顔料を配合する場合、該顔料を分散剤の存在下で、例えばビーズミル、ロールミル等を用いて、粉砕しつつ混合・分散して顔料分散液とし、これに(B)成分、(C)成分等を添加して、混合することにより調製することもできる。
【0061】
本発明のインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インクの粘度は、常温(25℃)で、30mPa・s以下、好ましくは5〜24mPa・sであることが望ましい。インクがこのような粘度を有することにより、ノズルヘッドから安定して連続吐出させることができ、また高精細な印刷物を安定して得ることができる。
【0062】
印刷方法
ここで、本発明のインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インク(以下、単に「本発明のインク」ともいう。)を用いる印刷方法について説明する。
この印刷方法は、基本的に、[I]本発明のインクをインクジェット方式により、被印刷材表面に印刷する工程、[II]エネルギー線を露光して、インキを架橋・硬化させる工程を経るものである。但し、本発明のインクは、スピンナーを用いる印刷方式など、インクジェット方式以外の各種の印刷にも広く適用できるものである。
【0063】
以下、前記各工程について説明する。
[I]工程
本発明のインクは、例えば、通常の非コート紙やコート紙のほか、プラスチック、ゴム、木質材、金属、ガラス、陶磁器等、インク吸収性の有無に関わりなく、また可とう性の有無に係わりなく、各種の被印刷材に適用可能である。
前記プラスチックとしては、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアセタール、OPS、OPP、ONy、TAC、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、耐衝撃性スチレン系樹脂(例えば、ABS樹脂等)、ポリビニルアルコール等を挙げることができ、これらのプラスチックは、熱収縮性があってもなくても使用することができる。
【0064】
また、前記ゴムとしては、例えば、オレフィン系ゴム(例えば、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、ブチルゴム等)、含ハロゲンゴム(例えば、塩素化ポリオレフィン系ゴム、ふっ素ゴム等)、スチレン系ブロック共重合体(例えば、スチレン−ブタジエン系、スチレン−ブタジエン−スチレン系、スチレン−イソプレン系、スチレン−イソプレン−スチレン系等)、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等を挙げることができ、これらのゴムは加硫ないし架橋されていてもされていなくても使用することができる。
【0065】
被印刷材表面に印刷する際には、安定した連続吐出が可能となるように、インクおよびノズルヘッドを、例えば、通常、10〜100℃、好ましくは15〜60℃の一定温度に保持することが好ましい。
また、インクのノズルヘッドからの吐出量は、例えば、通常、2〜15ピコリットル/秒、好ましくは4〜12ピコリットル/秒である。
被印刷材への印刷に際して、インクの吐出量は、被印刷材の使用目的などによっても変わるが、硬化後の合計膜厚が、例えば、通常、1〜25μm、好ましくは3〜15μmとなる量とすることが望ましい。
【0066】
[II]工程
露光は、インクの着弾後、通常、0.001〜2.0秒、好ましくは0.001〜1.0秒の間に行うことが望ましい。高精細な印刷を行うためには、露光タイミングが早い方が適切である。
印刷に際しては、単層でも多層重ねに印刷してもよく、また単色でも多色に印刷してもよい。なお、多層重ねに印刷する場合は、各層の印刷後にその都度露光することが望ましい。
【0067】
露光に使用されるエネルギー線としては、例えば、紫外線、遠紫外線、可視光線、X線、電子線、分子線、γ線、シンクロトロン放射線、プロトンビーム線等を使用することができるが、通常、200〜500nm、好ましくは240〜420nmの波長を含む紫外線が望ましい。また、インクジェット方式に使用される光源の総消費電力は、従来1kW・hrを超えるものが一般的であったが、本発明のインクは、高感度であり、総消費電力が1kW・hr以下の光源、例えば、蛍光管、冷陰極管、発光ダイオード(LED)等も使用することができる。
露光量は、通常、1,000〜15,000J/m2、好ましくは3,000〜10,000J/m2である。
露光方法としては、例えば、特開昭60−132767号公報や米国特許第6145979号明細書に記載されている方法、より具体的にはシャトル方式や光ファイバー方式等を採用することができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。ここで、「部」は重量基準である。
【0069】
実施例1
(A)着色剤として、C.I.ピグメントブルー15:4を2.2部および分散剤としてソルスパースS24000を0.5部、(B)重合性モノマーとして、ペンタエリスリトールテトラアクリレートを2.5部、ジエチレングリコールモノビニルエーテルアクリレート32.7部、テトラエチレングリコールジアクリレート22.7部、イソボルニルアクリレート6部およびN−ビニルピロリドン24.6部、(C)光重合開始剤としてイルガキュア379を1.0部、2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製。)4.0部およびビス(2,4,6−トリメチル)フェニルホスフィンオキサイド(商品名イルガキュア819、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製。)3.7部を混合して、インクを調製した。
【0070】
次いで、得られたインクについて、下記の要領で評価を行った。
インクの粘度(25℃)を、東京計器(株)製ELD型粘度計(25℃)を用いて測定したところ、6.8mPa・sであった。
また、インクを、スピンナーによりポリカーボネート基材表面に塗布したのち、形成された塗膜にメタルハライドランプにより、1回の露光量を1,000J/m2として、指触にてタックが無くなるまで露光を繰り返し、タックが無くなくなるまでに要した合計露光量(必要露光量)を測定したところ、2,000J/m2であった。
【0071】
また、インクをキャスト法で塗布したのち、形成された塗膜にメタルハライドランプにより、10,000J/m2の露光量で露光して作製した厚さ30μmの硬化膜について、(株)安田精機製作所製の塗膜屈曲試験機を用いて折り曲げ試験(JIS K−5400)を行い、可能な折り曲げ回数を評価した結果、10回以上の折り曲げが可能であった。
以上の結果を表1に示す。
【0072】
また、インクジェット装置による吐出試験を、Nanoprinter−1500(マイクロジェット株式会社製)を使用して行った。インクおよびノズルヘッドを23℃に保持し、インク1滴あたり6ピコリットルとなる設定にて吐出試験を行った。インクを10000発吐出後、60sの間隔を取る工程を2回繰り返し、さらにインクを10000発吐出したが、最後までインクが詰まらなかった。
【0073】
実施例2〜9および比較例1〜3
各成分の種類と量を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして、インクを調製して評価を行った。
評価結果を表1に示す。
【0074】
表1における各成分は、下記のとおりである。
重合性モノマー
b1−1:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
b1−2:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
b1−3:前記式(3)で表される化合物(商品名UA−31、東邦化学社製)
b1−4:カプロラクトン変性(トリスアクリロキシエチル)イソシアヌレート(商品名M−325、東亞合成社製)
b2−1:ジエチレングリコールモノビニルエーテルアクリレート
b3−1:イソボルニルアクリレート
b3−2:テトラエチレングリコールジアクリレート
b3−3:N−ビニルピロリドン
b3−4:トリエチレングリコールジビニルエーテル
b3−5:ε-ビニルカプロラクタム
【0075】
光重合開始剤
C−1:2−(4−メチルベンジル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)エタン−1−オン(商品名イルガキュア379、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)
C−2:2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)
C−3:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(商品名イルガキュア819、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)
C−4:1−(4−モルフォリノフェニル)−2−ベンジル−2−ジメチルアミノブタン−1−オン(商品名イルガキュア369、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)
C−5:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)
C−6:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名DAROCURE TPO、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)
C−7:1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−エタノン 1−(O−アセチルオキシム)(商品名イルガキュアOXE02、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)
【0076】
顔料
A−1:C.I.ピグメントブルー15:4
A−2:C.I.ピグメントレッド202
A−3:C.I.ピグメントバイオレッド19
A−4:C.I.ピグメントイエロー180
A−5:C.I.ピグメントホワイト6
A−6:C.I.ピグメントブルー7
分散剤
a−1:ソルスパースS24000(商品名、セネカ(株)製)
a−2:ソルスパースS32000(商品名、セネカ(株)製)
【0077】
【表1】

【0078】
折り曲げ試験結果において、10回以上の折り曲げが可能なものを○、1回以上〜10回未満の折り曲げが可能なものを△、折り曲げ不可能で破断したものを×とした。
【0079】
表1から明らかなように、本発明インクは、粘度が低く、吐出性に優れるとともに少ない活性エネルギー線量で柔軟で良好な塗膜が形成できる。これに対し、(b2)式(1)の重合性モノマーを使用しない比較例1は、塗膜が折り曲げ不可能で破断し、かつ活性エネルギー線感度が低い。(C)光重合開始剤が式(2)の化合物を使用しない比較例2は、塗膜が折り曲げ性が悪く、かつ活性エネルギー線感度が低い。重合性モノマーとして(b1)を配合しない比較例3は、塗膜が折り曲げ不可能で破断し、かつ活性エネルギー線感度が低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)着色剤、(B)重合性モノマーとして、(b1)重合性不飽和結合を1分子中に3個以上有する化合物、(b2)下記式(1)で表される化合物および(b3)重合性不飽和結合を1分子中に1個または2個有する前記(b2)以外の化合物、ならびに(C)下記式(2)で表される化合物を含有してなる光重合開始剤を含有することを特徴とするインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インク。
【化1】

(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、nは0〜6の整数である。)
【化2】

(式中、各R2およびR3は相互に独立に炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。)
【請求項2】
インク中、前記(b1)成分の含有量が0.1〜20重量%、前記(b2)成分の含有量が5〜80重量%、前記(b3)成分の含有量が5〜90重量%である請求項1に記載のインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インク。
【請求項3】
インク中、溶媒の含有量が10重量%以下である請求項1または2に記載のインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インク。

【公開番号】特開2009−96910(P2009−96910A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271147(P2007−271147)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】