説明

インクジェット印刷装置

【課題】搬送される印刷用紙を押圧する用紙押えローラへのインクミストの付着を防止しつつ、インクジェットヘッドに接触しないように、適切に印刷用紙を搬送する。
【解決手段】印刷用紙Wを搬送する用紙搬送ユニット133と、ライン状に配置されたインクを吐出するインクジェットヘッドユニット31と、搬送される印刷用紙Wを搬送路面側へ吸引するサクションファン131と、搬送路面の上方に設けられ、印刷用紙Wを搬送路面に押圧する用紙押えローラ139と、を備え、用紙搬送ユニット133は、搬送路面を貫通する貫通孔142と、貫通孔142それぞれの周囲であってインクジェットヘッドユニット31側の表面に、貫通孔142の位置から印刷用紙Wの搬送方向下流側にある用紙押えローラ139の直下の位置まで開口されて設けられた空気室143とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクのインク色毎にそれぞれ複数配置したライン型のインクジェットユニットを備えたインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、搬送路面上を搬送される印刷用紙の搬送方向と直交する方向に、インクを吐出する複数のインクジェットヘッドを備えたインクジェット印刷装置が良く知られている。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドの下方に、吸引ファンにより印刷用紙を吸引しながら搬送するベルトプラテンが設けられ、また、ベルトプラテンにより搬送される印刷用紙がインクジェットヘッドに接触しないように、ベルトプラテン側に印刷用紙を押さえつける用紙押えローラが設けられている場合が多い。
【0004】
また、インクジェットヘッドから吐出されたインクのミストが印刷用紙に付着することを防止するため、発生したミストを吸引するファンが設けられたインクジェット印刷装置もよく知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、印刷用紙の搬送方向下流側からインクジェットヘッドから吐出されたインクのミストを吸引するファンが設けられたインクジェット記録装置が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、各インクジェットヘッドの上部に設けられた排気ファンにより、インクのミストを吸引する液体吐出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−110987号公報
【特許文献2】特開2009−220499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、搬送方向下流側からインクのミストを吸引するので、この技術を用紙押えローラを備えるインクジェット印刷装置に適用した場合、ミストが用紙押えローラに付着し、この付着したインクが印刷用紙を汚すという課題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術では、各インクジェットヘッドの上部に設けられた排気ファンにより、インクのミストを吸引するので、ベルトプラテン側へ印刷用紙を吸引しながら搬送することが困難であった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、搬送される印刷用紙を押圧する用紙押圧手段へのインクミストの付着を防止しつつ、インクジェットヘッドに接触しないように、適切に印刷用紙を搬送するインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴は、印刷用紙を吸引搬送する吸引搬送手段と、前記吸引搬送手段の上方に設けられ、前記吸引搬送手段による印刷用紙の搬送方向と直交する方向に、ライン状に複数列配置されたインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記吸引搬送手段の上方で、且つ、前記各インクジェットヘッドに対し印刷用紙の搬送方向上流側に設けられ、印刷用紙の浮き上がりを押さえる用紙押え手段と、備え、前記吸引搬送手段は、上下に貫通して設けられた第1の貫通孔と、前記第1の貫通孔の周囲であって前記インクジェットヘッド側の表面に、前記第1の貫通孔の位置から印刷用紙の搬送方向下流側にある前記用紙押え手段の直下の位置まで開口されて設けられた空気室とを有するプラテン部と、上下に貫通する第2の貫通孔が設けられ、前記プラテン部上を前記搬送方向に移動するベルトと、前記プラテン部の下方に設けられ、前記第1の貫通孔、前記空気室、及び前記第2の貫通孔を介して前記ベルト上方の空気を吸引することにより、前記ベルトに印刷用紙を吸着する吸引ファンと、を有することにある。
【0012】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴は、前記プラテン部は、前記第1の貫通孔を複数有すると共に、前記複数の第1の貫通孔それぞれの周囲に対応して前記空気室を複数有しており、前記複数の空気室は、それぞれ開口面積が略同一であることにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴によれば、空気室は、貫通孔の位置から印刷用紙の搬送方向下流側にある用紙押え手段の直下の位置まで開口されて設けられているので、搬送される印刷用紙を押圧する用紙押え手段へのインクミストの付着を防止しつつ、インクジェットヘッドに接触しないように、適切に印刷用紙を搬送することができる。
【0014】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴によれば、複数の空気室は、開口面積がそれぞれ略同一であるので、印刷用紙を均一に搬送手段側に吸引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置が備える用紙搬送ユニットを一部切り欠いて示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置が備える用紙搬送ユニットの平面図である。
【図4】本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置が備えるプラテンプレートの一部を拡大した拡大平面図である。※プラテンプレート
【図5】本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置が備える用紙搬送ユニットの側面図である。
【図6】本発明の実施例2であるインクジェット印刷装置が備えるプラテンプレートの一部を拡大した拡大平面図である。
【図7】本発明の実施例3であるインクジェット印刷装置が備えるプラテンプレートの一部を拡大した拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1では、多数のノズルが形成されたインクジェットヘッドを複数本備え、それぞれのインクジェットヘッドから黒またはカラーのインクを吐出してライン単位で印刷用紙に印刷を行うライン型の画像形成装置を例に挙げて説明する。
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
<インクジェット印刷装置の全体構成>
本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1の構成について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1の構成を示す構成図である。
【0021】
図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50とを備えている。
【0022】
サイド給紙部10は、印刷用紙Wが積層される給紙台11と、この給紙台11から最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部12と、この1次給紙部12によって搬送された印刷用紙Wを循環搬送路CR上へ搬送する2次給紙部14とを備えている。
【0023】
内部給紙部20は、印刷用紙Wが積層される給紙台21aと、この給紙台21aから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22aと、印刷用紙Wが積層される給紙台21bと、この給紙台21bから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22bと、印刷用紙Wが積層される給紙台21cと、この給紙台21cから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22cと、印刷用紙Wが積層される給紙台21dと、この給紙台21dから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22dとを備えている。
【0024】
このように、2次給紙部14には、サイド給紙部10及び内部給紙部20から印刷用紙Wが搬送され、さらに、後述する反転部50からも印刷用紙Wが搬送される。
【0025】
そのため、搬送方向における2次給紙部14の手前には、給紙された印刷用紙Wの搬送経路と、一方の面が印刷された用紙が循環して搬送されてくる経路とが合流する合流地点が存在する。この合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙搬送路FRと称し、それ以外の経路を循環搬送路CRと称している。
【0026】
印刷部30は、循環搬送路CR上で印刷用紙Wを搬送する用紙搬送ユニット133と、この用紙搬送ユニット133の上部に設けられ、複数のインクジェットヘッドが組み込まれたインクジェットヘッドユニット31とを備える。
【0027】
用紙搬送ユニット133は、環状のプラテンベルト132を備えており、2次給紙部14により給紙された印刷用紙Wは、プラテンベルト132内に設置された後述するサクションファン131によってプラテンベルト132上に吸引され、搬送路上を所定の搬送速度で搬送されながら、インクジェットヘッドユニット31から吐出されたインクにより印刷用紙Wに印刷される。
【0028】
印刷部30により印刷された印刷用紙Wは、循環搬送路CR上に配置された搬送ローラ等によって筐体内を循環搬送路CR上を搬送される。循環搬送路CR上には、循環搬送路CR上を搬送された印刷用紙Wを排紙部40へ誘導するか、又は循環搬送路CR上を再循環させるかを切り替える切り替え機構43が備えられている。
【0029】
切り替え機構43は、印刷用紙Wを、後述する排紙部40又は反転部50のいずれか1方へ誘導するために、切り替える。
【0030】
排紙部40は、インクジェット印刷装置1の筐体から突出したトレイ形状をした排紙台41と、排紙台41に印刷用紙Wを誘導する一対の排紙ローラ42とを有している。そして、切り替え機構43により排紙部40に誘導された印刷用紙Wは、排紙ローラ42により排紙台41に搬送され、排紙台41に印刷面を下にして積載される。
【0031】
反転部50は、印刷用紙Wを反転させる反転台51と、循環搬送路CRから反転台51へ印刷用紙Wを搬送し、又は反転台51から循環搬送路CR上へ印刷用紙Wを搬送する反転ローラ52とを備えている。
【0032】
切り替え機構43により反転部50に誘導された印刷用紙Wは、反転ローラ52により循環搬送路CRから反転台51に搬送され、所定時間経過後、反転台51から循環搬送路CRへ搬送されることにより、循環搬送路CRに対して表裏が反転する。そして、表裏が反転された印刷用紙Wは、循環搬送路CR上に設けられた搬送ローラ53等の複数のローラにより循環搬送路CR上を印刷部30へ向かって搬送される。
【0033】
図2は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1が備える用紙搬送ユニット133を一部切り欠いて示す斜視図である。
【0034】
図2に示すように、用紙搬送ユニット133には、印刷用紙Wを搬送するプラテンベルト132と、プラテンベルト132を支持するプラテンプレート134と、プラテンプレート134の下面において吸引圧を一定にする風量平均板135と、後述するサクションファン131からプラテンベルト132上に設けられたベルト穴へ至る吸気流路を気密状態で囲繞するチャンバー部136が備えられている。
【0035】
プラテンベルト132は、印刷用紙Wを吸着させるベルト穴141を一定間隔で多数有する無端状のベルト部材である。このプラテンベルト132は、プラテンプレート134に支持され、印刷用紙Wの搬送方向に直交させて配置された一対の駆動ローラ137及び従動ローラ138間に掛け回されて、搬送方向に周回され、プラテンプレート134の上面において摺動される。
【0036】
プラテンプレート134は、ベルト穴141が通過する箇所に貫通された貫通孔142を多数有する板状のプレート部材である。
【0037】
このプラテンプレート134の下方には、貫通孔142及びベルト穴141を通じて、プラテンプレート134上面の印刷用紙Wを吸着するための負圧を発生させる吸引手段であるサクションファン131が設けられている。
【0038】
このサクションファン131は、インクジェット印刷装置1内において、風量平均板135の下面に複数個有している。
【0039】
チャンバー部136は、サクションファン131からベルト穴141へ至る吸気経路を気密状態で囲繞する仕切部材である。チャンバー部136は、各サクションファン131にそれぞれ配置されており、プラテンベルト132の上流側端部から下方へ傾斜する斜面を有している。
【0040】
図3は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1が備える用紙搬送ユニット133の平面図である。
【0041】
図3に示すように、この用紙搬送ユニット133の上部には、インクジェットヘッドユニット31が設けられている。
【0042】
インクジェットヘッドユニット31は、印刷用紙Wの搬送方向に直交する方向に、ライン状、ここでは千鳥状に配列された複数のインクジェットヘッド列32〜39を有する。
【0043】
インクジェットヘッド列32は、シアン(C)のインクを吐出するインクジェットヘッド321〜323を備え、インクジェットヘッド列33は、シアン(C)のインクを吐出するインクジェットヘッド331〜333を備えており、これらのインクジェットヘッド321〜323,331〜333は、千鳥状に配列されている。例えば、印刷用紙Wの搬送方向に対して、インクジェットヘッド321及び322に一部重なり合うようにインクジェットヘッド331が配置されており、インクジェットヘッド322及び323に一部重なり合うようにインクジェットヘッド332が配置されており、インクジェットヘッド323に一部重なり合うようにインクジェットヘッド333が配置されている。これにより、インクジェットヘッド列32〜33は、シアン(C)のインクを印刷用紙Wの搬送方向に直交する方向に隙間なく印字することができる。
【0044】
また、インクジェットヘッド列32〜33と同様に、インクジェットヘッド列34〜35、インクジェットヘッド列36〜37、インクジェットヘッド列38〜39は、それぞれブラック(K)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)のインクを印刷用紙Wに吐出するインクジェットヘッドであり、千鳥状に配列されている。
【0045】
このように配置されたインクジェットヘッドユニット31の下方を、印刷用紙Wは、用紙搬送ユニット133のプラテンベルト132上面に吸着されながら、搬送される。
【0046】
また、プラテンベルト132上には、搬送される印刷用紙Wがインクジェットヘッドユニット31に接触しないように、印刷用紙Wの搬送方向におけるインクジェットヘッド列それぞれの印刷用紙W搬送方向における上流側に用紙押えローラ139が設けられている。
【0047】
この用紙押えローラ139は、プラテンベルト132に接して配置されており、プラテンベルト132の回転に従動して回転駆動することで、プラテンベルト132側に印刷用紙Wを押圧する。
【0048】
図4は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1が備えるプラテンプレート134の一部を拡大した拡大平面図である。なお、ここでは、インクジェットヘッド列35の1つであるインクジェットヘッド352近傍のプラテンプレート134を示して説明するが、インクジェットヘッドユニット31が備える他のインクジェットヘッドにおいても、同様である。
【0049】
図4に示すように、用紙搬送ユニット133のプラテンプレート134は、プラテンプレート134を上下方向に貫通する複数の貫通孔142を有している。
【0050】
この貫通孔142は、プラテンプレート134上を搬送される印刷用紙Wをプラテンベルト132上で均一に吸引するように、上流側の用紙押えローラ139と下流側の用紙押えローラ139との間に、千鳥状に配列されている。例えば、図4に示すように、印刷用紙Wの搬送方向に対して、上流側の用紙押えローラ139d側の貫通孔142aと、下流側の用紙押えローラ139e側の貫通孔142bとが交互になるように設けられている。
【0051】
そして、この貫通孔142の周囲には、貫通孔142それぞれに対応して空気室143が設けられている。
【0052】
図4に示した例では、インクジェットヘッド352側の貫通孔142aの周囲には空気室143aが設けられている。この空気室143aは、印刷用紙Wの搬送方向に、インクジェットヘッド352の手前の位置から用紙押えローラ139eの直下の位置まで開口されて設けられている。
【0053】
また、印刷用紙Wの搬送方向に対して、貫通孔142bの周囲には空気室143bが設けられている。この空気室143bは、印刷用紙Wの搬送方向に、インクジェットヘッド352直下の位置から用紙押えローラ139eを超えた位置まで開口されて設けられている。
【0054】
このように、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1では、全ての空気室143について、貫通孔142それぞれの周囲であってインクジェットヘッド側の表面に、印刷用紙Wの搬送方向における、少なくとも貫通孔142の位置から印刷用紙W方向下流側にある用紙押えローラ139の直下の位置まで開口されて設けられている。
【0055】
図5は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1が備える用紙搬送ユニット133の側面図である。
【0056】
図5に示すように、プラテンプレート134には、貫通孔142aと、この貫通孔142aの周囲のインクジェットヘッド352側に、印刷用紙Wの搬送方向におけるインクジェットヘッド352の手前から用紙押えローラ139eの直下まで開口されて設けられた空気室143aが貫通孔142aに対応して設けられている。
【0057】
ここで、直下とは、プラテンプレート134からの距離が最も短くなる位置であり、円筒形状を有する用紙押えローラ139eでは、ローラ最下点の位置が直下の位置となる。また、直方体を有するインクジェットヘッドでは、インク吐出面である下面のいずれかの位置が直下の位置となる。
【0058】
そして、プラテンベルト132がプラテンプレート134上を搬送方向に移動すると、それに伴って、プラテンベルト132上に吸引された印刷用紙Wも搬送される。
【0059】
印刷用紙Wの搬送方向における位置が、インクジェットヘッド352の直下を超えた場合、サクションファン131の吸引により生じるエアーフローAFは、図5に示すように、印刷用紙Wの先端を回り込むようにプラテンベルト132のベルト穴141を通過する。ここで、エアーフローAFは、インクジェットヘッド352から吐出されたインクのミストが含まれている場合がある。
【0060】
このときにも、空気室143aが用紙押えローラ139e直下まで開口されて設けられているので、ベルト穴141を通過したエアーフローAFは、空気室143aと貫通孔142aとを経由して、風量平均板135を通過するような流れを形成する。
【0061】
さらに、印刷用紙Wが搬送されて、印刷用紙Wの先端が用紙押えローラ139eを超えた場合、印刷用紙Wと用紙押えローラ139eとの空隙がなくなるので、インクジェットヘッド352の直下ではエアーフローAFがなくなり、インクジェットヘッド352から吐出されたミストはインクジェットヘッド352近傍で滞留する。これにより、ミストが用紙押えローラ139e方向に吸引されて用紙押えローラ139eに付着することがないので、印刷用紙Wのミストによる汚れを防止することができる。
【0062】
以上のように、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1によれば、プラテンプレート134を貫通する複数の貫通孔142と、この貫通孔142の周囲であって、インクジェットヘッドユニット31側に、印刷用紙Wの搬送方向における少なくとも貫通孔142の位置から、印刷用紙W方向下流側にある用紙押えローラ139の直下の位置まで開口されて空気室143とが設けられたプラテンプレート134を備えるので、用紙押えローラ139へのインクミストの付着を防止しつつ、インクジェットヘッドユニット31に接触しないように、適切に印刷用紙Wを搬送することができる。
【実施例2】
【0063】
本発明の実施例1では、印刷用紙Wの搬送方向に、インクジェットヘッド352の手前の位置から用紙押えローラ139eの直下の位置まで開口された空気室143aと、印刷用紙Wの搬送方向に、インクジェットヘッド352の直下の位置から用紙押えローラ139eを超えた位置まで開口された空気室143bとが設けられたプラテンプレート134を備えるインクジェット印刷装置1を例に挙げて説明したが、さらに、空気室143の開口面積を全て同一としてもよい。
【0064】
図6は、本発明の実施例2であるインクジェット印刷装置1が備えるプラテンプレート134の一部を拡大した拡大平面図である。
【0065】
図6に示すように、用紙搬送ユニット133のプラテンプレート134は、プラテンプレート134を貫通する複数の貫通孔142を有している。
【0066】
貫通孔142は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1が備えるプラテンプレート134の貫通孔142と同様に、印刷用紙Wの搬送方向に対して、上流側の用紙押えローラ139d側の貫通孔142aと、下流側の用紙押えローラ139e側の貫通孔142bとが交互に、即ち、千鳥状に配列されるように設けられている。
【0067】
そして、この貫通孔142aの周囲のインクジェットヘッドユニット31側であって、印刷用紙Wの搬送方向に、インクジェットヘッド352の手前の位置から用紙押えローラ139eの直下の位置まで開口されて設けられた空気室143aと、貫通孔142bの周囲のインクジェットヘッドユニット31側であって、印刷用紙Wの搬送方向に、用紙押えローラ139dの直下の位置から用紙押えローラ139eを超えた位置まで開口されて設けられた空気室143cとを備えている。この空気室143aと空気室143cとは、図6に示すように、搬送方向における開口の長さが全て同じ、即ち、空気室143aと空気室143cとの開口面積は同一となるように設けられている。
【0068】
これにより、空気室143a及び空気室143c上での流速はほぼ等しくなるので、印刷用紙Wを吸引する吸引力もほぼ等しくなり、印刷用紙Wを均一にプラテンベルト132側に吸引することができる。
【0069】
以上のように、本発明の実施例2であるインクジェット印刷装置1によれば、空気室143aと空気室143cとの開口面積が同一となるように設けられているので、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1の効果に加えて、印刷用紙Wの搬送方向に直行する方向において、プラテンプレート134上を搬送される印刷用紙Wをプラテンベルト132上で、より均一に吸引することができるので、印刷用紙Wがシワになり難いという効果を奏する。
【0070】
なお、空気室143aと空気室143cとの開口面積は必ずしも同一と限らず、流速にほとんど変化がない範囲内で、開口面積の大きさのズレはある程度許容される。
【実施例3】
【0071】
本発明の実施例1では、印刷用紙Wの搬送方向に、インクジェットヘッド352の手前の位置から用紙押えローラ139eの直下の位置まで開口された空気室143aと、印刷用紙Wの搬送方向に、インクジェットヘッド352の直下の位置から用紙押えローラ139eを超えた位置まで開口された空気室143bとが設けられたプラテンプレート134を備えるインクジェット印刷装置1を例に挙げて説明したが、印刷用紙Wの搬送方向における空気室の位置を全て同じ位置としてもよい。
【0072】
図7は、本発明の実施例3であるインクジェット印刷装置1が備えるプラテンプレート134の一部を拡大した拡大平面図である。
【0073】
図7に示すように、用紙搬送ユニット133のプラテンプレート134は、プラテンプレート134を貫通する複数の貫通孔142を有している。
【0074】
貫通孔142は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1が備えるプラテンプレート134の貫通孔142と同様に、印刷用紙Wの搬送方向に対して、上流側の用紙押えローラ139d側の貫通孔142aと、下流側の用紙押えローラ139e側の貫通孔142bとが交互に、即ち、千鳥状に配列されるように設けられている。
【0075】
そして、この貫通孔142aの周囲のインクジェットヘッドユニット31側であって、印刷用紙Wの搬送方向に、用紙押えローラ139dの直下の位置から用紙押えローラ139eの直下の位置まで開口されて設けられた空気室143eが設けられている。
【0076】
この空気室143eは、図7に示すように、搬送方向における位置及び開口面積が同一となるように設けられている。
【0077】
これにより、全ての空気室143eでの流速はほぼ等しくなるので、印刷用紙Wを吸引する吸引力もほぼ等しくなり、印刷用紙Wを均一にプラテンベルト132側に吸引することができる。
【0078】
以上のように、本発明の実施例3であるインクジェット印刷装置1によれば、空気室143eが、それぞれ搬送方向における位置及び開口面積が同一となるように設けられているので、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1の効果に加えて、印刷用紙Wの搬送方向に直行する方向において、プラテンプレート134上を搬送される印刷用紙Wをプラテンベルト132上で、より均一に吸引することができるので、印刷用紙Wがシワになり難いという効果を奏する。
【符号の説明】
【0079】
1…インクジェット印刷装置
10…サイド給紙部
20…内部給紙部
30…印刷部
31…インクジェットヘッドユニット
32〜39…インクジェットヘッド列
40…排紙部
50…反転部
131…サクションファン(吸引ファン)
132…プラテンベルト(吸引搬送手段)
133…用紙搬送ユニット
134…プラテンプレート(プラテン部)
135…風量平均板
136…チャンバー部
137…駆動ローラ
138…従動ローラ
139,139d,139e…用紙押えローラ(用紙押え手段)
141…ベルト穴
142…貫通孔
143…空気室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用紙を吸引搬送する吸引搬送手段と、
前記吸引搬送手段の上方に設けられ、前記吸引搬送手段による印刷用紙の搬送方向と直交する方向に、ライン状に複数列配置されたインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記吸引搬送手段の上方で、且つ、前記各インクジェットヘッドに対し印刷用紙の搬送方向上流側に設けられ、印刷用紙の浮き上がりを押さえる用紙押え手段と、備え、
前記吸引搬送手段は、
上下に貫通して設けられた第1の貫通孔と、前記第1の貫通孔の周囲であって前記インクジェットヘッド側の表面に、前記第1の貫通孔の位置から印刷用紙の搬送方向下流側にある前記用紙押え手段の直下の位置まで開口されて設けられた空気室とを有するプラテン部と、
上下に貫通する第2の貫通孔が設けられ、前記プラテン部上を前記搬送方向に移動するベルトと、
前記プラテン部の下方に設けられ、前記第1の貫通孔、前記空気室、及び前記第2の貫通孔を介して前記ベルト上方の空気を吸引することにより、前記ベルトに印刷用紙を吸着する吸引ファンと、
を有することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記プラテン部は、
前記第1の貫通孔を複数有すると共に、前記複数の第1の貫通孔それぞれの周囲に対応して前記空気室を複数有しており、
前記複数の空気室は、それぞれ開口面積が略同一である
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−240294(P2012−240294A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112183(P2011−112183)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】