インクジェット印刷
吸収性被印刷物上に印刷する方法が開示される。ある態様では、本方法は被印刷物コックルによる画像歪みを軽減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット印刷に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷では、インクは、狭いオリフィスから被印刷物(substrate)の方向に吐出される。ドロップオンデマンド印刷と呼ばれる種類のインクジェット印刷では、インクは、一連の液滴として吐出される。液滴は、多数のオリフィスを有する圧電インクジェットヘッドを使用して生成され制御される。各オリフィスは、インクを画像の所望の位置すなわち画素に選択的に吐出するように別々に制御可能である。たとえば、インクジェットヘッドは、1インチ当たり少なくとも100画素(ドット)(dpi)の印刷解像度に相当する間隔を有する256個のオリフィスを有し、場合によってはそれよりずっと多くのオリフィスを有することがある。この密なオリフィスアレイは、複雑で非常に正確な画像を生成するのを可能にする。高性能印刷ヘッドでは、ノズル開口部は通常、直径が50ミクロン以下(たとえば、約25ミクロン)であり、25〜300ノズル/インチのピッチで分離され、解像度が100〜3000dpi以上であり、約1〜70ピコリットル(pl)以下の液滴サイズを形成する。液滴吐出周波数は通常、10kHz以上である。ドロップオンデマンド圧電印刷ヘッドは、引用によって内容全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,825,227号に記載されている。
【0003】
「コックル(cockle)」または「コックリング(cockling)」は、被印刷物がインクと相互作用することによって起こる被印刷物のある領域の形態的な変化(たとえば、寸法の変化)を指す。被印刷物コックルは、画質に悪影響を及ぼすことがある。コックルに関係する画像歪み作用を防止するためにオフィスプリンタ分野で使用されている1つの手法では、後で起こるコックリングによる被印刷物の歪みを最小限に抑えるように被印刷物上に配置されるインクの被覆率(the coverage of ink)が制限される。しかし、この手法は、特に高解像度フルカラー画像を必要とする用途で制限を受けることがある。コックル歪みの問題に対する他の手法では、コーテッドペーパー(coated papers)または処理された被印刷物が使用される。このような被印刷物は通常、粘土、シリカ、光沢紙を作製するための他の材料などの添加物を含み、体積を変化させるインクとの相互作用を抑制し、それによってコックリングを防止する。コーテッドペーパーは一般に、たとえば、6インチ×4インチ以上の面積にわたって高解像度フルカラー画像を生成する市販のフォトインクジェットプリンタで使用される。
【0004】
商業的な印刷は一般に、多色連続ウェッブ印刷機で行われる。巻取紙として与えられるウェッブは、各色ごとの別々のステーションを含む用紙経路に沿って送られる。ウェッブは次に、シートに切断され積み重ねられる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般に、第1の態様では、本発明は、被印刷物と、インク液滴が被印刷物上に順次付着させられる複数の印刷領域を含む印刷ゾーンを設けることと、被印刷物がコックリングによってかなり歪められないうちに以後の液滴が付着されるように、被印刷物と印刷ゾーンを互いに対して、相対運動速度を制御しつつ、移動させることとを含む印刷方法を特徴とする。
【0006】
この方法の実施態様は、以下の特徴および/または他の態様の特徴のうちの1つまたは2つ以上を含んでよい。
【0007】
この方法は、前の液滴が被印刷物内にかなり滲みこむ前に後の液滴が付着させられるように被印刷物と印刷ゾーンを互いに対して移動させることをさらに含んでよい。印刷ゾーンは4つの印刷領域を含んでよく、各印刷領域は、被印刷物上に異なる色のインクを付着させるように構成することができる。被印刷物は、普通紙(plain paper)被印刷物(たとえば、新聞用紙)であってよい。インクは、溶媒(たとえば、水や有機溶媒)と溶媒に混合された顔料とを含んでよい。
【0008】
コックリングによる被印刷物の歪みのための液滴配置誤差は、長さが約2画素未満(たとえば、約1画素、0.5画素未満)であってよい。印刷ゾーン内の最大コックリング量は約1ミリメートル(たとえば、約1ミリメートル、500ミクロン、300ミクロン、200ミクロン未満)であってよい。相対運動速度は毎秒約1mを超えて(たとえば、毎秒約2m、3m、4m、5mを超えて)よい。被印刷物の面積に対するインク被覆率は約50%を超えて(たとえば、約100%、150%、200%、250%を超えて)よい。後続の液滴は、最初の液滴が付着してから約2秒以内(たとえば、約1秒、0.5秒、0.3秒、0.2秒以内)に付着させてよい。
【0009】
各印刷領域は、1つまたは2つ以上の印刷ヘッドを含んでよく、相対運動速度は、被印刷物がコックリングによってかなり歪められた場合に、被印刷物がどの印刷ヘッドにも接触しなくなるような速度であってよい。
【0010】
一般に、他の態様では、本発明は、被印刷物と印刷ゾーンが互いに対して移動するにつれてインク液滴が被印刷物上に順次付着する複数の印刷領域を有する印刷ゾーンを含み、相対移動速度が関係ν≧L/τc(Lは印刷ゾーン長であり、τcはコックリング時定数である)を満たす印刷システムを特徴とする。
【0011】
印刷システムの各実施態様は、以下の特徴および/または他の態様の特徴の1つまたは2つ以上を含んでよい。
【0012】
τcは、印刷ゾーン内の最大コックリング量が、被覆率が約30%以上であるときの被印刷物平面度(substrate planarity)からの約0.5mm以下の逸脱であるような定数であってよい。インク液滴は、水性インクで形成することができ、被印刷物は普通紙であってよい。被印刷物は連続ウェッブであってよく、印刷領域は、ウェッブ経路に沿って順次配置された印刷ステーションを含んでよい。インク液滴は圧電インクジェット印刷ヘッドによって生成することができる。相対運動速度は関係ν≦l/τw(lは互いに隣接する印刷領域間の距離であり、τwはウィッキング('wicking)時定数である)を満たしてもよい。
一般に、他の態様では、本発明は、被印刷物と、インク液滴が被印刷物上に順次付着させられる複数の印刷領域を含む印刷ゾーンを設けることと、以後の液滴がインクと被印刷物との相互作用に特有の時間内に付着させられるように被印刷物と印刷ゾーンを互いに対して、相対運動速度を制御しつつ移動させることを含み、前記時間の後のインクの付着によって画像が歪む印刷方法を特徴とする。
【0013】
この方法の実施態様は、以下の特徴および/または他の態様の特徴のうちの1つまたは2つ以上を含んでよい。
【0014】
相互作用は被印刷物のコックリングであってよい。相互作用は、被印刷物の表面エネルギーの変化であってよい。歪んだ画像は、約0.5画素より多い(たとえば、約1画素より多い)ドット配置誤差を有してよい。
【0015】
本発明の各実施態様は以下の利点の1つまたは2つ以上を含んでよい。
【0016】
各実施態様は、吸収性被印刷物上に印刷する際、たとえば、非処理紙上に水性インクを順次印刷する際に、被印刷物コックルによる画像歪みを軽減することができる。このように歪みを軽減すると、吸収性被印刷物を使用し、たとえば新聞用紙上で水性インクを使用したカラー画像の高被覆率印刷を行うことができる。新聞用紙および水性インクは、処理紙を使用する場合と比べてコストを節約することができる。さらに、新聞用紙は消費者にとって見た目がよい。特に新聞読者は新聞用紙の感触を心地よく感じる。水性インクの化学的性質も望ましい。たとえば、水性インクは広く入手可能であり、溶媒ベースのインクに関連する環境問題を解消することができる。
【0017】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
様々な図面内の同じ参照符号は同じ部材を示している。
【0019】
図1を参照すると、連続ウェッブ印刷機レイアウト10は、可動ウェッブ14上にそれぞれの異なる色を印刷する一連のステーション、すなわち印刷タワー12を含んでいる。ウェッブ14は、台16上の供給ロール15から、順次印刷ステーション12に至る用紙経路上に駆動される。4つの印刷ステーションは、インクが被印刷物に付着させられる印刷ゾーン18を形成している。最終の印刷ステーションの後に乾燥機17を任意に配置してよい。印刷後に、ウェッブは、ステーション19に積み重ねられるシートへと切断される。新聞用紙などの幅広のフォーマットの印刷ウェッブの場合、印刷ステーションは通常、約25〜30インチ以上のウェッブ幅に対処する。さらに、インクジェット印刷用に変更することのできるオフセットリソグラフィック印刷用の一般的なレイアウトが、引用によって内容全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,365,843号に記載されている。
【0020】
図2も参照すると、各印刷ステーションは印刷バー24を含んでいる。印刷バー24は、アレイ状に配置され、インクがウェッブ14上に所望の画像を形成するように吐出される印刷ヘッド30用の取付け構造である。印刷ヘッド30は、インクが吐出される印刷ヘッドの面(図2には示されていない)が印刷バー24の下面から露出されるように印刷バーリセプタクル21に取り付けられている。印刷ヘッド30は、印刷解像度または印刷速度を高めるために各ノズル開口部をずらすようにアレイ状に配置することができる。印刷状態では、印刷バー24は、ウェッブ経路の上方に配置され、印刷ヘッド30とウェッブ14とを適切に位置合わせし、印刷ヘッド30とウェッブ14との間に一様な離隔距離を形成する。
【0021】
印刷ヘッド30は、微小な間隔をおいて配置された小さいノズル開口部のアレイを有する圧電ドロップオンデマンドインクジェット印刷ヘッドを含む様々な種類の印刷ヘッドであってよい。圧電インクジェット印刷ヘッドは、引用によって内容全体が本明細書に組み込まれる、Hoisingtonの米国特許第5,265,315号、Fishbeck等の米国特許第4,825,227号、およびHineの米国特許第4,937,598号に記載されている。たとえば、インクの加熱を用いて吐出が行われるサーマルインクジェット印刷ヘッドのような他の種類の印刷ヘッドを使用してよい。連続したインク液滴流の偏向に依存する連続インクジェットヘッドを使用してもよい。代表的な構成では、ウェッブ経路と印刷バーとの離隔距離は約0.5mmから1mmの間である。
【0022】
図3Aおよび3Bを参照すると、システムコントローラ400は、相当なコックリングが起こる前に被印刷物上にインクが噴射されるようにコックル歪みの率および/または量にしたがって印刷プロセスを制御する。ウェッブ上の誤った液滴配置によって起こる相当な画像誤差が軽減されるかまたは解消される。特に図3Aを参照すると、システムコントローラ400は、ヘッドデータ経路401、エンコーダ402、ウェッブコントローラ403、RIP(ラスタ画像プロセッサ)システム404、ヘッド駆動回路407、およびインタフェース405を含んでいる。ヘッドデータ経路は、印刷ステーションの所の印刷ヘッド406(1つのヘッドが示されている)に吐出命令を出し、ウェッブ上に所望の画像を形成する。吐出命令は、所望の画像色、液滴離隔距離、ハーフトーン、ウェッブ速度などに基づいて吐出命令を出力するRIPシステム404で作成される。エンコーダ402は、ウェッブの移動を制御するウェッブコントローラ403と各吐出命令を調整する。エンコーダは、印刷ヘッド406に駆動電圧波形を送るヘッド駆動回路407も制御する。ヘッドデータ経路401からの吐出命令は、ヘッドドライブ回路407からの波形を適切に制御することによって、画像の各ラスタ線についてどのジェットがオンでどのジェットがオフであるかを決定する。インタフェース405はシステムとの通信を可能にする。インタフェースの例としては、たとえばユーザ端末を有するコンピュータ、通信網、あるいはたとえばウェッブ速度選択および/またはウェッブおよびインクの種類用の手動制御装置が挙げられる。各実施形態では、画像発信側(たとえば、デスクトップパブリッシャ)は、画像をシステムに送信する前に画像にRIPを施す。このような場合、RIPシステム404は、必要に応じて印刷条件に基づいて画像データに再びRIPを施す。
【0023】
特に図3Bを参照すると、動作時には、インタフェースを通じてシステムコントローラ400に被印刷物・インクタイプ情報が供給される(410)。システムコントローラは、画像誤差が減るようにコックル歪みの率および/または量に応じて適切な条件を決定する(420)。いくつかの実施形態では、システムコントローラへの入力はウェッブの種類、インクの種類、および/またはインク被覆率である。システムコントローラは、コックル歪みによる相当な画像誤差なしに画像を印刷することのできるウェッブ送り速度を、コックル歪み率に基づいて示す参照テーブルを参照する。RIPシステムは、各印刷行についてどのジェットを吐出すべきかを指定する吐出命令を生成する(430)。吐出命令は、ヘッドデータ経路を介して印刷ヘッドにトリガ信号を送信するエンコーダによって制御される。エンコーダは、エンコーダが直接測定するウェッブ運動に基づいて吐出命令に対するトリガ信号を生成する。トリガリング信号の周波数は、吐出命令が印刷時に印刷ヘッドに送信される周波数に相当する(440)。
【0024】
図4A〜4Dを参照すると、被印刷物がインクに接触した瞬間に波立つことはない。その代わり、用紙がインクで濡れてインクが用紙に滲み込んでいくことと、その後、コックル歪みとして現れる体積の変化とに関連する被印刷物310とインク液滴320の相互作用に関する時定数τcが存在する。理論に制限されずに考えると、インク液滴320は、被印刷物表面311に接触すると(図3A)、被印刷物310を実質的に貫通せずに表面311に接触して表面311を濡らす(図3B)と考えられる。インクと被印刷物繊維の相互作用のために、インクは被印刷物310の本体312に滲みこむ(図3C)。この段階で、インクは用紙繊維を実質的に貫通せずに被覆し、したがって、体積はほとんど変化せず、顕著なコックリングは起こらない。しかし、コーテッドペーパー繊維はその後インクを吸収し、体積312を増やし、被印刷物を波立たせる(図3D)。
【0025】
図5、すなわち、印刷ゾーン18の拡大図を参照すると、各印刷ステーション12は、各々がノズル13を有する一連の印刷ヘッド30を含んでいる(単一のノズルを有する単一の印刷ヘッドが各印刷ステーションごとに示されている)。印刷ゾーン長Lは、用紙経路に沿った第1の印刷ステーション内の第1のノズルと用紙経路に沿った最後の印刷ステーション内の最後のノズルとの間の距離である。コックル時定数τcの場合、ウェッブ送り速度νは関係ν≧L/τc(Lは印刷ゾーン長である)を満たす。これによって、すべての印刷ステーションからの印刷が、用紙が印刷に応じて波立つのにかかる時間より短い期間内に確実に完了する。あるいはまたはこれに加えて、印刷ゾーンの長さを前記の関係を満たすように調整することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、コックル時定数およびウェッブ送り速度は、ウェッブが、印刷ステーションの、他の場合にはウェッブによる影響を受ける部分を、用紙が波立つ前に離れるようなコックル時定数およびウェッブ送り速度である。たとえば、印刷ヘッド表面がウェッブの近くに(たとえば、ウェッブから1mm未満の距離に)位置している場合、ウェッブが印刷ゾーンから現れた後に起こるコックルによって、ウェッブは、印刷ヘッドのウェッブに沿った部分に当たる。したがって、ウェッブ送り速度と印刷ステーションの配置は、かなりのコックルがウェッブに近い印刷ヘッド部分から離れた後にしか起こらないように構成すべきである。
【0027】
各印刷ステーションが用紙に対する異なる相互作用時定数を持つインクを噴射するある実施形態では、より長い時定数を持つインクが比較的短い時定数を持つインクの前に噴射されるように印刷ステーションを配置することができる。
【0028】
ウェッブ送り速度とインク−被印刷物相互作用時間とのこの関係は、ウェッブを十分な速度で走行させ、および/または印刷ゾーン長を短くすることによって、被印刷物コックルの悪影響に対処するものである。しかし、濡れたインクが用紙に滲みこむ前に印刷を行った場合も、印刷上の悪影響(たとえば、異なる色間のブリード)が生じる恐れがある。ウイック時定数τwを、インク液滴が用紙に滲みこむのにかかる時間に関連付けることができる。ウェッブ速度は、ν≦l/τw(lは、互いに隣接する印刷ステーション間の距離である)を満たすように選択される。したがって、lおよびLが一定である、図1に示されているようなウェッブベースの印刷ラインの場合、インクと用紙の相互作用によって、コックリングと濡れたインク上への印刷との影響を軽減する(たとえば、最小限に抑える)ことのできるウェッブ速度の窓が得られる。
【0029】
インク−被印刷物相互作用時間は、インクの種類、被印刷物の種類、およびインク被覆率に依存する。インクは、溶媒ベースのインク、熱溶融インク、または水性インクを含む様々な種類のものであってよい。水性インクは、相当な量(5重量%以上)の水を含む担体中に浮遊させた顔料または染料を含む。通常、水性インク中の担体は、80〜90%以上のような約35%より多い水を含む。水性インクの担体が相当な量のグリコール(たとえば、50%以上のような約5重量%より多い量)を含むことも少なくない。水性インクは、コストが安く、有機溶媒の使用量を減らすかまたは無くすので望ましい。被印刷物の種類はコート紙であっても、コーテッドペーパーであっても、非コーテッドペーパーであってもよい。新聞用紙などの非コーテッドペーパーまたは普通紙は、粘土添加物やシリカ添加物をほとんど含まず、低コストで入手することができる。
【0030】
インク被覆率は、各ステーションで与えることのできるインクの最大量に対する各ステーションで与えるインクの部分を指す。たとえば、50%のインク被覆率は、1つのステーションからのインクを用紙の範囲の一方の側の範囲における利用可能な画素の2分の1に印刷することに相当する。したがって、図1に示されている印刷機などの4ステーション印刷機の場合、最大被覆率は400%であるが、実用上被覆率が300%を超えることはめったにない。これは、ウェッブの両面に印刷する際には2倍になる。コックリングの悪影響が現れ始める被覆率は、画素当たりインク液滴量のみならず、用紙およびインクの種類に依存する。新聞用紙タイプの用紙に水性インクを印刷すると、著しい画像歪が、約30%の低い被覆率の場合に現れることがある。しかし、フルカラー画像では、30%を超える(たとえば、約200%から300%の間)インク被覆率を利用することが少なくない。したがって、コックリングが起こる前に印刷を行うと、標準的な新聞用紙上へのフルカラー画像の連続したウェッブベース印刷を、画像歪みを最小限に抑えながら行うことができる。
【0031】
使用されるインクおよび/または用紙の種類は、それらのコックル時定数に応じて選択することができる。コックル時定数は、所与のインク被覆率についてのコックル歪みの率および量を観測することによって求めることができる。最大許容コックリング量は、所望の画質およびその他のプロセス特性に基づいて求めることができる。たとえば、ヘッドを損傷させ、その後画像歪みを生じさせることがある、ウェッブと印刷ヘッドとの間の接触を避けるには、印刷ゾーンの最大コックリング量を被印刷物ガイドと印刷ヘッドノズルとの間の離隔空間以下にすべきである。たとえば圧電印刷ヘッドを使用した高解像度インクジェット印刷の場合、離隔距離は通常、1mm以下、たとえば約0.5mmである。最大コックリング量は、たとえば、離隔距離の50%以下、20%以下、10%以下、または5%以下であってよい。最大コックリング量は、ウェッブ平面度からの逸脱に基づいて求めることもできる。たとえば、平面度からの最大逸脱は約0.7mm以下、0.5mm以下、または0.1mm以下であってよい。最大コックリング量を画像誤差に基づいて与えることもできる。各実施形態では、コックル時定数は約0.1秒より長くてよい(たとえば、0.5秒以上、1秒以上、2秒以上、3秒以上)。最大コックリング量は、目視検査または量的ドット配置誤差によって求めることのできる画像誤差によって求めることもできる。ドット配置誤差は、被印刷物上の目標位置から噴射された液滴位置までの距離を指す。ドット配置誤差は画素単位で測定することができる。通常、ドット配置誤差は長さが約1画素から約2画素の間のときにはっきりと現れるが、長さが約0.5画素と小さいドット配置誤差の場合、印刷システムおよび画像に応じて、誤差が明らかになる。液滴配置誤差は、試験目標上に印刷された画像を顕微鏡で検査することによって判定することができる。このような検査は、市販のまたは特注の画像分析技術を用いて実質的に自動化することができる。あるいは、またはこれに加えて、完成した画像を目視検査することによってドット配置誤差を判定することができる。相当な用紙コックリングが起こる前に印刷を完了することによって、高いインク被覆率(たとえば、約50%、75%、100%、150%、200%を超える)を有する画像を、液滴配置誤差を、コックリングによる誤差の場合の0.5画素長のような約2未満に抑えて、吸収性被印刷物上に印刷することができる。
【0032】
あるいは、またはこれに加えて、使用されるインクおよび/または用紙の種類は、ウイック時定数がコックル時定数に対して比較的短くなるように選択することができる。たとえば、ウイック時定数のコックル時定数との比は約0.2未満(たとえば、約0.1、0.05未満)であってよい。いくつかの実施形態では、ウイック時定数は約0.5秒未満(たとえば、0.1秒以下、0.05秒以下、0.01秒以下)であってよい。この速度窓を詳しく例示するために、Lが1.5mで、lが0.5mである例を考える。コックル時定数τc〜0.5秒およびウイック時定数τw〜0.05秒と仮定すると、速度窓は毎秒3m(ν≧1.5/0.5)から毎秒10m(ν≦0.5/0.05)までである。
【0033】
いくつかの実施形態では、インク液滴が被印刷物に滲みこんでから被印刷物が波立つまでの間に印刷を完了するために、ウェッブ速度は毎秒約1mから毎秒約5mの間(たとえば、毎秒約2mから毎秒約3mの間)であってよい。
【0034】
印刷ライン用の速度窓は、インクと用紙の使用すべき組合せの時定数を測定することによって求めることができる。あるいはまたはこれに加えて、速度窓を印刷運転の前のセットアップ段階中に経験的に求めることができる。適切なウェッブ速度(または速度範囲)を求めるために、ラインオペレータは、印刷運転の予想される最大被覆率に対応する被覆率を有する試験画像を印刷するいくつかの異なる速度でラインを動作させることができる。オペレータは、その後試験画像を調べるときに、最良の画像に対応するウェッブ速度を選択することができる。
【0035】
前記の説明は被印刷物コックルによる画像歪みを回避する技術を扱ったものであるが、本明細書に開示された方法は、化学相互作用および物理化学相互作用を含む、インクと被印刷物との間の他の相互作用に適用することができる。特に、開示された方法は、固有の相互作用時間を有し、かつ相当な画像歪みを生じさせずに被印刷物の同じ領域上に追加のインクを付着させることのできる時間窓を生じる、インクと被印刷物との間の相互作用に適用することができる。たとえば、インクは被印刷物と相互作用して被印刷物の表面エネルギーを変化させることがある。表面エネルギーが変化すると、その後のインク液滴によって、望ましくない画像歪みが生じるように表面が濡れることがある。固有の時定数を有するこのような相互作用が起こった場合、この時定数によって定まる期間内に追加のインクを付着させることによって相当な画像歪みを無くすことができる。
【0036】
例
以下の研究は、Heidelberger Druckmaschinen AG(ドイツHeidelberg)から市販されているUPM Norm C45g/m2新聞用紙と、65wt.%の1,2−プロパネジオール(ジョージア州SuwaneeのFisher Scientificから供給されているAcos Organicsによる)、0.25wt.%のBYK−333表面活性剤(コネクチカット州WallingfordのBYK Chemieから市販されている)と35wt.%の脱イオン水との水性流体混合物とを使用して行われた。
【0037】
例1:新聞用紙の水性インク被覆によるコックリングの観察
1.ドローダウンコーター(英国HertsのRK Print Coat Instruments Ltd.から入手したRK Print−Coat Instrument)を使用して新聞用紙サンプルに水性流体を被覆した。被覆用に#0バーを選択し、コーター速度設定値を10に設定した。コーティングター製造業者の較正表によれば、このバーおよび速度では約6〜8ミクロンの被覆厚さが得られた。新聞用紙の頂部上に配置された被覆バー上に少量の流体(たとえば、2〜3cm3)をピペットで移した。作動時に、コーターは、濡れた被覆バーを新聞用紙の領域を横切って引き、この領域に流体のコーティングを付着させた。被覆された新聞用紙を目視観察すると、被覆を1秒する間に用紙が著しく歪んでいることが分かった。この時間は、まず、バーがその被覆サイクルを完了するための時間を測定し、次にサイクルの終了時に用紙を観察することによって求められた。
【0038】
例2:スプレー被覆時のコックリングのビデオによる観察
Spraying Systems Co.(イリノイ州Wheaton)から入手したエーロゾルスプレーノズル(モデル番号1/4JCO−SS−SV13A−SS)を使用して新聞用紙サンプルの4インチ×5インチの表面積上に水性流体を噴霧した。プレキシガラスを使用して4×5インチ窓を除いて各サンプルをマスクした。用紙と同じ位置にMettler Toledo PB303秤(Fisher Scientificから入手した)を配置し、等量の噴霧された液体の重量を測定することによって求められる、約10〜12ミクロンの被覆厚さが得られるようにエーロゾルの空気圧および液体圧力を調整した。2つの光ファイバランプ(イリノイ州Vermon HillsのCole Parmerから入手したFiberLite Model PL800)を用紙表面の上方約1インチ上で、露出された用紙から8インチ離れた位置に位置させ、それによって互いに約90°の角度をなすように向けられた2つのライトで、露出された用紙部分を斜めに照明した。用紙のすぐ上にビデオカメラ(Sony製)を位置させた。エーロゾル被覆中に、ビデオカメラによって、露出された表面の画像を記録しつつ、露出された表面を光ファイバランプで照明した。カメラのフレームレートは約30Hzであった。記録されたビデオ全長についてフレームごとに視覚分析を行い、用紙の歪みのためにランプからの光が遮断されることによって形成される影の範囲によって用紙形態の変化を判定した。
【0039】
フレームごとの分析によって、被覆してから最初の300ミリ秒間は用紙がほとんど変化しないことが分かった。被覆後500ミリ秒以内に著しい変化が起こり、被覆後1秒経過するまでに顕著な変化が観測された。
【0040】
他の実施形態は特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】連続ウェッブ印刷機の概略図である。
【図2】連続ウェッブ上に印刷する複数の印刷ヘッドを収納する印刷バーの図である。
【図3A】システムコントローラのブロック図である。
【図3B】制御方法の流れ図である。
【図4A】インクの被印刷物との相互作用の一段階を示す概略図である。
【図4B】インクの被印刷物との相互作用の一段階を示す概略図である。
【図4C】インクの被印刷物との相互作用の一段階を示す概略図である。
【図4D】インクの被印刷物との相互作用の一段階を示す概略図である。
【図5】印刷領域の拡大図である。
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット印刷に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷では、インクは、狭いオリフィスから被印刷物(substrate)の方向に吐出される。ドロップオンデマンド印刷と呼ばれる種類のインクジェット印刷では、インクは、一連の液滴として吐出される。液滴は、多数のオリフィスを有する圧電インクジェットヘッドを使用して生成され制御される。各オリフィスは、インクを画像の所望の位置すなわち画素に選択的に吐出するように別々に制御可能である。たとえば、インクジェットヘッドは、1インチ当たり少なくとも100画素(ドット)(dpi)の印刷解像度に相当する間隔を有する256個のオリフィスを有し、場合によってはそれよりずっと多くのオリフィスを有することがある。この密なオリフィスアレイは、複雑で非常に正確な画像を生成するのを可能にする。高性能印刷ヘッドでは、ノズル開口部は通常、直径が50ミクロン以下(たとえば、約25ミクロン)であり、25〜300ノズル/インチのピッチで分離され、解像度が100〜3000dpi以上であり、約1〜70ピコリットル(pl)以下の液滴サイズを形成する。液滴吐出周波数は通常、10kHz以上である。ドロップオンデマンド圧電印刷ヘッドは、引用によって内容全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,825,227号に記載されている。
【0003】
「コックル(cockle)」または「コックリング(cockling)」は、被印刷物がインクと相互作用することによって起こる被印刷物のある領域の形態的な変化(たとえば、寸法の変化)を指す。被印刷物コックルは、画質に悪影響を及ぼすことがある。コックルに関係する画像歪み作用を防止するためにオフィスプリンタ分野で使用されている1つの手法では、後で起こるコックリングによる被印刷物の歪みを最小限に抑えるように被印刷物上に配置されるインクの被覆率(the coverage of ink)が制限される。しかし、この手法は、特に高解像度フルカラー画像を必要とする用途で制限を受けることがある。コックル歪みの問題に対する他の手法では、コーテッドペーパー(coated papers)または処理された被印刷物が使用される。このような被印刷物は通常、粘土、シリカ、光沢紙を作製するための他の材料などの添加物を含み、体積を変化させるインクとの相互作用を抑制し、それによってコックリングを防止する。コーテッドペーパーは一般に、たとえば、6インチ×4インチ以上の面積にわたって高解像度フルカラー画像を生成する市販のフォトインクジェットプリンタで使用される。
【0004】
商業的な印刷は一般に、多色連続ウェッブ印刷機で行われる。巻取紙として与えられるウェッブは、各色ごとの別々のステーションを含む用紙経路に沿って送られる。ウェッブは次に、シートに切断され積み重ねられる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般に、第1の態様では、本発明は、被印刷物と、インク液滴が被印刷物上に順次付着させられる複数の印刷領域を含む印刷ゾーンを設けることと、被印刷物がコックリングによってかなり歪められないうちに以後の液滴が付着されるように、被印刷物と印刷ゾーンを互いに対して、相対運動速度を制御しつつ、移動させることとを含む印刷方法を特徴とする。
【0006】
この方法の実施態様は、以下の特徴および/または他の態様の特徴のうちの1つまたは2つ以上を含んでよい。
【0007】
この方法は、前の液滴が被印刷物内にかなり滲みこむ前に後の液滴が付着させられるように被印刷物と印刷ゾーンを互いに対して移動させることをさらに含んでよい。印刷ゾーンは4つの印刷領域を含んでよく、各印刷領域は、被印刷物上に異なる色のインクを付着させるように構成することができる。被印刷物は、普通紙(plain paper)被印刷物(たとえば、新聞用紙)であってよい。インクは、溶媒(たとえば、水や有機溶媒)と溶媒に混合された顔料とを含んでよい。
【0008】
コックリングによる被印刷物の歪みのための液滴配置誤差は、長さが約2画素未満(たとえば、約1画素、0.5画素未満)であってよい。印刷ゾーン内の最大コックリング量は約1ミリメートル(たとえば、約1ミリメートル、500ミクロン、300ミクロン、200ミクロン未満)であってよい。相対運動速度は毎秒約1mを超えて(たとえば、毎秒約2m、3m、4m、5mを超えて)よい。被印刷物の面積に対するインク被覆率は約50%を超えて(たとえば、約100%、150%、200%、250%を超えて)よい。後続の液滴は、最初の液滴が付着してから約2秒以内(たとえば、約1秒、0.5秒、0.3秒、0.2秒以内)に付着させてよい。
【0009】
各印刷領域は、1つまたは2つ以上の印刷ヘッドを含んでよく、相対運動速度は、被印刷物がコックリングによってかなり歪められた場合に、被印刷物がどの印刷ヘッドにも接触しなくなるような速度であってよい。
【0010】
一般に、他の態様では、本発明は、被印刷物と印刷ゾーンが互いに対して移動するにつれてインク液滴が被印刷物上に順次付着する複数の印刷領域を有する印刷ゾーンを含み、相対移動速度が関係ν≧L/τc(Lは印刷ゾーン長であり、τcはコックリング時定数である)を満たす印刷システムを特徴とする。
【0011】
印刷システムの各実施態様は、以下の特徴および/または他の態様の特徴の1つまたは2つ以上を含んでよい。
【0012】
τcは、印刷ゾーン内の最大コックリング量が、被覆率が約30%以上であるときの被印刷物平面度(substrate planarity)からの約0.5mm以下の逸脱であるような定数であってよい。インク液滴は、水性インクで形成することができ、被印刷物は普通紙であってよい。被印刷物は連続ウェッブであってよく、印刷領域は、ウェッブ経路に沿って順次配置された印刷ステーションを含んでよい。インク液滴は圧電インクジェット印刷ヘッドによって生成することができる。相対運動速度は関係ν≦l/τw(lは互いに隣接する印刷領域間の距離であり、τwはウィッキング('wicking)時定数である)を満たしてもよい。
一般に、他の態様では、本発明は、被印刷物と、インク液滴が被印刷物上に順次付着させられる複数の印刷領域を含む印刷ゾーンを設けることと、以後の液滴がインクと被印刷物との相互作用に特有の時間内に付着させられるように被印刷物と印刷ゾーンを互いに対して、相対運動速度を制御しつつ移動させることを含み、前記時間の後のインクの付着によって画像が歪む印刷方法を特徴とする。
【0013】
この方法の実施態様は、以下の特徴および/または他の態様の特徴のうちの1つまたは2つ以上を含んでよい。
【0014】
相互作用は被印刷物のコックリングであってよい。相互作用は、被印刷物の表面エネルギーの変化であってよい。歪んだ画像は、約0.5画素より多い(たとえば、約1画素より多い)ドット配置誤差を有してよい。
【0015】
本発明の各実施態様は以下の利点の1つまたは2つ以上を含んでよい。
【0016】
各実施態様は、吸収性被印刷物上に印刷する際、たとえば、非処理紙上に水性インクを順次印刷する際に、被印刷物コックルによる画像歪みを軽減することができる。このように歪みを軽減すると、吸収性被印刷物を使用し、たとえば新聞用紙上で水性インクを使用したカラー画像の高被覆率印刷を行うことができる。新聞用紙および水性インクは、処理紙を使用する場合と比べてコストを節約することができる。さらに、新聞用紙は消費者にとって見た目がよい。特に新聞読者は新聞用紙の感触を心地よく感じる。水性インクの化学的性質も望ましい。たとえば、水性インクは広く入手可能であり、溶媒ベースのインクに関連する環境問題を解消することができる。
【0017】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
様々な図面内の同じ参照符号は同じ部材を示している。
【0019】
図1を参照すると、連続ウェッブ印刷機レイアウト10は、可動ウェッブ14上にそれぞれの異なる色を印刷する一連のステーション、すなわち印刷タワー12を含んでいる。ウェッブ14は、台16上の供給ロール15から、順次印刷ステーション12に至る用紙経路上に駆動される。4つの印刷ステーションは、インクが被印刷物に付着させられる印刷ゾーン18を形成している。最終の印刷ステーションの後に乾燥機17を任意に配置してよい。印刷後に、ウェッブは、ステーション19に積み重ねられるシートへと切断される。新聞用紙などの幅広のフォーマットの印刷ウェッブの場合、印刷ステーションは通常、約25〜30インチ以上のウェッブ幅に対処する。さらに、インクジェット印刷用に変更することのできるオフセットリソグラフィック印刷用の一般的なレイアウトが、引用によって内容全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,365,843号に記載されている。
【0020】
図2も参照すると、各印刷ステーションは印刷バー24を含んでいる。印刷バー24は、アレイ状に配置され、インクがウェッブ14上に所望の画像を形成するように吐出される印刷ヘッド30用の取付け構造である。印刷ヘッド30は、インクが吐出される印刷ヘッドの面(図2には示されていない)が印刷バー24の下面から露出されるように印刷バーリセプタクル21に取り付けられている。印刷ヘッド30は、印刷解像度または印刷速度を高めるために各ノズル開口部をずらすようにアレイ状に配置することができる。印刷状態では、印刷バー24は、ウェッブ経路の上方に配置され、印刷ヘッド30とウェッブ14とを適切に位置合わせし、印刷ヘッド30とウェッブ14との間に一様な離隔距離を形成する。
【0021】
印刷ヘッド30は、微小な間隔をおいて配置された小さいノズル開口部のアレイを有する圧電ドロップオンデマンドインクジェット印刷ヘッドを含む様々な種類の印刷ヘッドであってよい。圧電インクジェット印刷ヘッドは、引用によって内容全体が本明細書に組み込まれる、Hoisingtonの米国特許第5,265,315号、Fishbeck等の米国特許第4,825,227号、およびHineの米国特許第4,937,598号に記載されている。たとえば、インクの加熱を用いて吐出が行われるサーマルインクジェット印刷ヘッドのような他の種類の印刷ヘッドを使用してよい。連続したインク液滴流の偏向に依存する連続インクジェットヘッドを使用してもよい。代表的な構成では、ウェッブ経路と印刷バーとの離隔距離は約0.5mmから1mmの間である。
【0022】
図3Aおよび3Bを参照すると、システムコントローラ400は、相当なコックリングが起こる前に被印刷物上にインクが噴射されるようにコックル歪みの率および/または量にしたがって印刷プロセスを制御する。ウェッブ上の誤った液滴配置によって起こる相当な画像誤差が軽減されるかまたは解消される。特に図3Aを参照すると、システムコントローラ400は、ヘッドデータ経路401、エンコーダ402、ウェッブコントローラ403、RIP(ラスタ画像プロセッサ)システム404、ヘッド駆動回路407、およびインタフェース405を含んでいる。ヘッドデータ経路は、印刷ステーションの所の印刷ヘッド406(1つのヘッドが示されている)に吐出命令を出し、ウェッブ上に所望の画像を形成する。吐出命令は、所望の画像色、液滴離隔距離、ハーフトーン、ウェッブ速度などに基づいて吐出命令を出力するRIPシステム404で作成される。エンコーダ402は、ウェッブの移動を制御するウェッブコントローラ403と各吐出命令を調整する。エンコーダは、印刷ヘッド406に駆動電圧波形を送るヘッド駆動回路407も制御する。ヘッドデータ経路401からの吐出命令は、ヘッドドライブ回路407からの波形を適切に制御することによって、画像の各ラスタ線についてどのジェットがオンでどのジェットがオフであるかを決定する。インタフェース405はシステムとの通信を可能にする。インタフェースの例としては、たとえばユーザ端末を有するコンピュータ、通信網、あるいはたとえばウェッブ速度選択および/またはウェッブおよびインクの種類用の手動制御装置が挙げられる。各実施形態では、画像発信側(たとえば、デスクトップパブリッシャ)は、画像をシステムに送信する前に画像にRIPを施す。このような場合、RIPシステム404は、必要に応じて印刷条件に基づいて画像データに再びRIPを施す。
【0023】
特に図3Bを参照すると、動作時には、インタフェースを通じてシステムコントローラ400に被印刷物・インクタイプ情報が供給される(410)。システムコントローラは、画像誤差が減るようにコックル歪みの率および/または量に応じて適切な条件を決定する(420)。いくつかの実施形態では、システムコントローラへの入力はウェッブの種類、インクの種類、および/またはインク被覆率である。システムコントローラは、コックル歪みによる相当な画像誤差なしに画像を印刷することのできるウェッブ送り速度を、コックル歪み率に基づいて示す参照テーブルを参照する。RIPシステムは、各印刷行についてどのジェットを吐出すべきかを指定する吐出命令を生成する(430)。吐出命令は、ヘッドデータ経路を介して印刷ヘッドにトリガ信号を送信するエンコーダによって制御される。エンコーダは、エンコーダが直接測定するウェッブ運動に基づいて吐出命令に対するトリガ信号を生成する。トリガリング信号の周波数は、吐出命令が印刷時に印刷ヘッドに送信される周波数に相当する(440)。
【0024】
図4A〜4Dを参照すると、被印刷物がインクに接触した瞬間に波立つことはない。その代わり、用紙がインクで濡れてインクが用紙に滲み込んでいくことと、その後、コックル歪みとして現れる体積の変化とに関連する被印刷物310とインク液滴320の相互作用に関する時定数τcが存在する。理論に制限されずに考えると、インク液滴320は、被印刷物表面311に接触すると(図3A)、被印刷物310を実質的に貫通せずに表面311に接触して表面311を濡らす(図3B)と考えられる。インクと被印刷物繊維の相互作用のために、インクは被印刷物310の本体312に滲みこむ(図3C)。この段階で、インクは用紙繊維を実質的に貫通せずに被覆し、したがって、体積はほとんど変化せず、顕著なコックリングは起こらない。しかし、コーテッドペーパー繊維はその後インクを吸収し、体積312を増やし、被印刷物を波立たせる(図3D)。
【0025】
図5、すなわち、印刷ゾーン18の拡大図を参照すると、各印刷ステーション12は、各々がノズル13を有する一連の印刷ヘッド30を含んでいる(単一のノズルを有する単一の印刷ヘッドが各印刷ステーションごとに示されている)。印刷ゾーン長Lは、用紙経路に沿った第1の印刷ステーション内の第1のノズルと用紙経路に沿った最後の印刷ステーション内の最後のノズルとの間の距離である。コックル時定数τcの場合、ウェッブ送り速度νは関係ν≧L/τc(Lは印刷ゾーン長である)を満たす。これによって、すべての印刷ステーションからの印刷が、用紙が印刷に応じて波立つのにかかる時間より短い期間内に確実に完了する。あるいはまたはこれに加えて、印刷ゾーンの長さを前記の関係を満たすように調整することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、コックル時定数およびウェッブ送り速度は、ウェッブが、印刷ステーションの、他の場合にはウェッブによる影響を受ける部分を、用紙が波立つ前に離れるようなコックル時定数およびウェッブ送り速度である。たとえば、印刷ヘッド表面がウェッブの近くに(たとえば、ウェッブから1mm未満の距離に)位置している場合、ウェッブが印刷ゾーンから現れた後に起こるコックルによって、ウェッブは、印刷ヘッドのウェッブに沿った部分に当たる。したがって、ウェッブ送り速度と印刷ステーションの配置は、かなりのコックルがウェッブに近い印刷ヘッド部分から離れた後にしか起こらないように構成すべきである。
【0027】
各印刷ステーションが用紙に対する異なる相互作用時定数を持つインクを噴射するある実施形態では、より長い時定数を持つインクが比較的短い時定数を持つインクの前に噴射されるように印刷ステーションを配置することができる。
【0028】
ウェッブ送り速度とインク−被印刷物相互作用時間とのこの関係は、ウェッブを十分な速度で走行させ、および/または印刷ゾーン長を短くすることによって、被印刷物コックルの悪影響に対処するものである。しかし、濡れたインクが用紙に滲みこむ前に印刷を行った場合も、印刷上の悪影響(たとえば、異なる色間のブリード)が生じる恐れがある。ウイック時定数τwを、インク液滴が用紙に滲みこむのにかかる時間に関連付けることができる。ウェッブ速度は、ν≦l/τw(lは、互いに隣接する印刷ステーション間の距離である)を満たすように選択される。したがって、lおよびLが一定である、図1に示されているようなウェッブベースの印刷ラインの場合、インクと用紙の相互作用によって、コックリングと濡れたインク上への印刷との影響を軽減する(たとえば、最小限に抑える)ことのできるウェッブ速度の窓が得られる。
【0029】
インク−被印刷物相互作用時間は、インクの種類、被印刷物の種類、およびインク被覆率に依存する。インクは、溶媒ベースのインク、熱溶融インク、または水性インクを含む様々な種類のものであってよい。水性インクは、相当な量(5重量%以上)の水を含む担体中に浮遊させた顔料または染料を含む。通常、水性インク中の担体は、80〜90%以上のような約35%より多い水を含む。水性インクの担体が相当な量のグリコール(たとえば、50%以上のような約5重量%より多い量)を含むことも少なくない。水性インクは、コストが安く、有機溶媒の使用量を減らすかまたは無くすので望ましい。被印刷物の種類はコート紙であっても、コーテッドペーパーであっても、非コーテッドペーパーであってもよい。新聞用紙などの非コーテッドペーパーまたは普通紙は、粘土添加物やシリカ添加物をほとんど含まず、低コストで入手することができる。
【0030】
インク被覆率は、各ステーションで与えることのできるインクの最大量に対する各ステーションで与えるインクの部分を指す。たとえば、50%のインク被覆率は、1つのステーションからのインクを用紙の範囲の一方の側の範囲における利用可能な画素の2分の1に印刷することに相当する。したがって、図1に示されている印刷機などの4ステーション印刷機の場合、最大被覆率は400%であるが、実用上被覆率が300%を超えることはめったにない。これは、ウェッブの両面に印刷する際には2倍になる。コックリングの悪影響が現れ始める被覆率は、画素当たりインク液滴量のみならず、用紙およびインクの種類に依存する。新聞用紙タイプの用紙に水性インクを印刷すると、著しい画像歪が、約30%の低い被覆率の場合に現れることがある。しかし、フルカラー画像では、30%を超える(たとえば、約200%から300%の間)インク被覆率を利用することが少なくない。したがって、コックリングが起こる前に印刷を行うと、標準的な新聞用紙上へのフルカラー画像の連続したウェッブベース印刷を、画像歪みを最小限に抑えながら行うことができる。
【0031】
使用されるインクおよび/または用紙の種類は、それらのコックル時定数に応じて選択することができる。コックル時定数は、所与のインク被覆率についてのコックル歪みの率および量を観測することによって求めることができる。最大許容コックリング量は、所望の画質およびその他のプロセス特性に基づいて求めることができる。たとえば、ヘッドを損傷させ、その後画像歪みを生じさせることがある、ウェッブと印刷ヘッドとの間の接触を避けるには、印刷ゾーンの最大コックリング量を被印刷物ガイドと印刷ヘッドノズルとの間の離隔空間以下にすべきである。たとえば圧電印刷ヘッドを使用した高解像度インクジェット印刷の場合、離隔距離は通常、1mm以下、たとえば約0.5mmである。最大コックリング量は、たとえば、離隔距離の50%以下、20%以下、10%以下、または5%以下であってよい。最大コックリング量は、ウェッブ平面度からの逸脱に基づいて求めることもできる。たとえば、平面度からの最大逸脱は約0.7mm以下、0.5mm以下、または0.1mm以下であってよい。最大コックリング量を画像誤差に基づいて与えることもできる。各実施形態では、コックル時定数は約0.1秒より長くてよい(たとえば、0.5秒以上、1秒以上、2秒以上、3秒以上)。最大コックリング量は、目視検査または量的ドット配置誤差によって求めることのできる画像誤差によって求めることもできる。ドット配置誤差は、被印刷物上の目標位置から噴射された液滴位置までの距離を指す。ドット配置誤差は画素単位で測定することができる。通常、ドット配置誤差は長さが約1画素から約2画素の間のときにはっきりと現れるが、長さが約0.5画素と小さいドット配置誤差の場合、印刷システムおよび画像に応じて、誤差が明らかになる。液滴配置誤差は、試験目標上に印刷された画像を顕微鏡で検査することによって判定することができる。このような検査は、市販のまたは特注の画像分析技術を用いて実質的に自動化することができる。あるいは、またはこれに加えて、完成した画像を目視検査することによってドット配置誤差を判定することができる。相当な用紙コックリングが起こる前に印刷を完了することによって、高いインク被覆率(たとえば、約50%、75%、100%、150%、200%を超える)を有する画像を、液滴配置誤差を、コックリングによる誤差の場合の0.5画素長のような約2未満に抑えて、吸収性被印刷物上に印刷することができる。
【0032】
あるいは、またはこれに加えて、使用されるインクおよび/または用紙の種類は、ウイック時定数がコックル時定数に対して比較的短くなるように選択することができる。たとえば、ウイック時定数のコックル時定数との比は約0.2未満(たとえば、約0.1、0.05未満)であってよい。いくつかの実施形態では、ウイック時定数は約0.5秒未満(たとえば、0.1秒以下、0.05秒以下、0.01秒以下)であってよい。この速度窓を詳しく例示するために、Lが1.5mで、lが0.5mである例を考える。コックル時定数τc〜0.5秒およびウイック時定数τw〜0.05秒と仮定すると、速度窓は毎秒3m(ν≧1.5/0.5)から毎秒10m(ν≦0.5/0.05)までである。
【0033】
いくつかの実施形態では、インク液滴が被印刷物に滲みこんでから被印刷物が波立つまでの間に印刷を完了するために、ウェッブ速度は毎秒約1mから毎秒約5mの間(たとえば、毎秒約2mから毎秒約3mの間)であってよい。
【0034】
印刷ライン用の速度窓は、インクと用紙の使用すべき組合せの時定数を測定することによって求めることができる。あるいはまたはこれに加えて、速度窓を印刷運転の前のセットアップ段階中に経験的に求めることができる。適切なウェッブ速度(または速度範囲)を求めるために、ラインオペレータは、印刷運転の予想される最大被覆率に対応する被覆率を有する試験画像を印刷するいくつかの異なる速度でラインを動作させることができる。オペレータは、その後試験画像を調べるときに、最良の画像に対応するウェッブ速度を選択することができる。
【0035】
前記の説明は被印刷物コックルによる画像歪みを回避する技術を扱ったものであるが、本明細書に開示された方法は、化学相互作用および物理化学相互作用を含む、インクと被印刷物との間の他の相互作用に適用することができる。特に、開示された方法は、固有の相互作用時間を有し、かつ相当な画像歪みを生じさせずに被印刷物の同じ領域上に追加のインクを付着させることのできる時間窓を生じる、インクと被印刷物との間の相互作用に適用することができる。たとえば、インクは被印刷物と相互作用して被印刷物の表面エネルギーを変化させることがある。表面エネルギーが変化すると、その後のインク液滴によって、望ましくない画像歪みが生じるように表面が濡れることがある。固有の時定数を有するこのような相互作用が起こった場合、この時定数によって定まる期間内に追加のインクを付着させることによって相当な画像歪みを無くすことができる。
【0036】
例
以下の研究は、Heidelberger Druckmaschinen AG(ドイツHeidelberg)から市販されているUPM Norm C45g/m2新聞用紙と、65wt.%の1,2−プロパネジオール(ジョージア州SuwaneeのFisher Scientificから供給されているAcos Organicsによる)、0.25wt.%のBYK−333表面活性剤(コネクチカット州WallingfordのBYK Chemieから市販されている)と35wt.%の脱イオン水との水性流体混合物とを使用して行われた。
【0037】
例1:新聞用紙の水性インク被覆によるコックリングの観察
1.ドローダウンコーター(英国HertsのRK Print Coat Instruments Ltd.から入手したRK Print−Coat Instrument)を使用して新聞用紙サンプルに水性流体を被覆した。被覆用に#0バーを選択し、コーター速度設定値を10に設定した。コーティングター製造業者の較正表によれば、このバーおよび速度では約6〜8ミクロンの被覆厚さが得られた。新聞用紙の頂部上に配置された被覆バー上に少量の流体(たとえば、2〜3cm3)をピペットで移した。作動時に、コーターは、濡れた被覆バーを新聞用紙の領域を横切って引き、この領域に流体のコーティングを付着させた。被覆された新聞用紙を目視観察すると、被覆を1秒する間に用紙が著しく歪んでいることが分かった。この時間は、まず、バーがその被覆サイクルを完了するための時間を測定し、次にサイクルの終了時に用紙を観察することによって求められた。
【0038】
例2:スプレー被覆時のコックリングのビデオによる観察
Spraying Systems Co.(イリノイ州Wheaton)から入手したエーロゾルスプレーノズル(モデル番号1/4JCO−SS−SV13A−SS)を使用して新聞用紙サンプルの4インチ×5インチの表面積上に水性流体を噴霧した。プレキシガラスを使用して4×5インチ窓を除いて各サンプルをマスクした。用紙と同じ位置にMettler Toledo PB303秤(Fisher Scientificから入手した)を配置し、等量の噴霧された液体の重量を測定することによって求められる、約10〜12ミクロンの被覆厚さが得られるようにエーロゾルの空気圧および液体圧力を調整した。2つの光ファイバランプ(イリノイ州Vermon HillsのCole Parmerから入手したFiberLite Model PL800)を用紙表面の上方約1インチ上で、露出された用紙から8インチ離れた位置に位置させ、それによって互いに約90°の角度をなすように向けられた2つのライトで、露出された用紙部分を斜めに照明した。用紙のすぐ上にビデオカメラ(Sony製)を位置させた。エーロゾル被覆中に、ビデオカメラによって、露出された表面の画像を記録しつつ、露出された表面を光ファイバランプで照明した。カメラのフレームレートは約30Hzであった。記録されたビデオ全長についてフレームごとに視覚分析を行い、用紙の歪みのためにランプからの光が遮断されることによって形成される影の範囲によって用紙形態の変化を判定した。
【0039】
フレームごとの分析によって、被覆してから最初の300ミリ秒間は用紙がほとんど変化しないことが分かった。被覆後500ミリ秒以内に著しい変化が起こり、被覆後1秒経過するまでに顕著な変化が観測された。
【0040】
他の実施形態は特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】連続ウェッブ印刷機の概略図である。
【図2】連続ウェッブ上に印刷する複数の印刷ヘッドを収納する印刷バーの図である。
【図3A】システムコントローラのブロック図である。
【図3B】制御方法の流れ図である。
【図4A】インクの被印刷物との相互作用の一段階を示す概略図である。
【図4B】インクの被印刷物との相互作用の一段階を示す概略図である。
【図4C】インクの被印刷物との相互作用の一段階を示す概略図である。
【図4D】インクの被印刷物との相互作用の一段階を示す概略図である。
【図5】印刷領域の拡大図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷方法であって、
被印刷物と、インク液滴が前記被印刷物上に順次付着させられる複数の印刷領域を含む印刷ゾーンを設けることと、
前記被印刷物がコックリングによってかなり歪められないうちに以後の液滴が付着されるように、前記被印刷物と前記印刷ゾーンを互いに対して、相対運動速度を制御しつつ、移動させることと
を有する印刷方法。
【請求項2】
前の液滴が前記被印刷物内にかなり滲みこむ前に後の液滴が付着させられるように前記被印刷物と前記印刷ゾーンを互いに対して移動させることを含む、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記印刷ゾーンは4つの印刷領域を含む、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項4】
各印刷領域は、前記被印刷物上に異なる色のインクを付着させるように構成されている、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記被印刷物は、普通紙被印刷物である、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項6】
被印刷物は新聞用紙を含む、請求項5に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記インクは、溶媒と、該溶媒に混合された顔料とを含む、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記溶媒は水を含む、請求項7に記載の印刷方法。
【請求項9】
前記溶媒は有機溶媒である、請求項7に記載の印刷方法。
【請求項10】
コックリングによる前記被印刷物の歪みによる液滴配置誤差は、長さが約2画素未満である、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項11】
前記印刷ゾーン内の前記最大コックリング量は約1ミリメートルである、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項12】
前記相対運動速度は毎秒約1mよりも大きい、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項13】
前記被印刷物の面積に対するインク被覆率は約50%よりも大きい、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項14】
後続の液滴は、最初の液滴が付着してから2秒以内に付着させられる、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項15】
後続の液滴は、最初の液滴が付着させられてから1秒以内に付着させられる、請求項14に記載の印刷方法。
【請求項16】
各印刷領域は1つまたは2つ以上の印刷ヘッドを有し、前記相対運動速度は、前記被印刷物がコックリングによってかなり歪められた場合に、前記被印刷物がどの印刷ヘッドにも接触しなくなるような速度である、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項17】
印刷システムであって、
被印刷物と印刷ゾーンが互いに対して移動するにつれてインク液滴が前記被印刷物上に順次付着させられる複数の印刷領域を含む印刷ゾーンを有し、
相対移動速度が関係ν≧L/τc(Lは印刷ゾーン長であり、τcはコックリング時定数である)を満たす
印刷システム。
【請求項18】
τcは、前記印刷ゾーン内の最大コックリング量が、被覆率が約30%以上であるときの被印刷物平面度からの約0.5mm以下ずれているような定数である、請求項17に記載の印刷システム。
【請求項19】
前記インク液滴は水性インクで形成され、前記被印刷物は普通紙である、請求項18に記載の印刷システム。
【請求項20】
前記被印刷物は連続したウェッブであり、前記印刷領域は、ウェッブ経路に沿って順次配置された複数の印刷ステーションを有する、請求項19に記載の印刷システム。
【請求項21】
前記インク液滴は圧電インクジェット印刷ヘッドによって生成される、請求項20に記載の印刷システム。
【請求項22】
前記相対運動速度は関係ν≦l/τw(lは互いに隣接する印刷領域間の距離であり、τwはウィッキング時定数である)も満たす、請求項17に記載の印刷システム。
【請求項23】
印刷方法であって、
被印刷物と、インク液滴が被印刷物上に順次付着させられる複数の印刷領域を含む印刷ゾーンを設けることと、
以後の液滴が前記インクと前記被印刷物との相互作用に特有の時間内に付着させられるように前記被印刷物と前記印刷ゾーンを互いに対して、相対運動速度を制御しつつ移動させることを含み、前記時間の後のインクの付着によって画像が歪む
印刷方法。
【請求項24】
前記相互作用は前記被印刷物のコックリングである、請求項23に記載の印刷方法。
【請求項25】
前記相互作用は、前記被印刷物の表面エネルギーの変化である、請求項23に記載の印刷方法。
【請求項26】
歪んだ画像は、0.5画素より大きい配置誤差を有する、請求項23に記載の印刷方法。
【請求項27】
歪んだ画像は、1画素より大きいドット配置誤差を有する、請求項26に記載の印刷方法。
【請求項1】
印刷方法であって、
被印刷物と、インク液滴が前記被印刷物上に順次付着させられる複数の印刷領域を含む印刷ゾーンを設けることと、
前記被印刷物がコックリングによってかなり歪められないうちに以後の液滴が付着されるように、前記被印刷物と前記印刷ゾーンを互いに対して、相対運動速度を制御しつつ、移動させることと
を有する印刷方法。
【請求項2】
前の液滴が前記被印刷物内にかなり滲みこむ前に後の液滴が付着させられるように前記被印刷物と前記印刷ゾーンを互いに対して移動させることを含む、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記印刷ゾーンは4つの印刷領域を含む、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項4】
各印刷領域は、前記被印刷物上に異なる色のインクを付着させるように構成されている、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記被印刷物は、普通紙被印刷物である、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項6】
被印刷物は新聞用紙を含む、請求項5に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記インクは、溶媒と、該溶媒に混合された顔料とを含む、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記溶媒は水を含む、請求項7に記載の印刷方法。
【請求項9】
前記溶媒は有機溶媒である、請求項7に記載の印刷方法。
【請求項10】
コックリングによる前記被印刷物の歪みによる液滴配置誤差は、長さが約2画素未満である、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項11】
前記印刷ゾーン内の前記最大コックリング量は約1ミリメートルである、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項12】
前記相対運動速度は毎秒約1mよりも大きい、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項13】
前記被印刷物の面積に対するインク被覆率は約50%よりも大きい、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項14】
後続の液滴は、最初の液滴が付着してから2秒以内に付着させられる、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項15】
後続の液滴は、最初の液滴が付着させられてから1秒以内に付着させられる、請求項14に記載の印刷方法。
【請求項16】
各印刷領域は1つまたは2つ以上の印刷ヘッドを有し、前記相対運動速度は、前記被印刷物がコックリングによってかなり歪められた場合に、前記被印刷物がどの印刷ヘッドにも接触しなくなるような速度である、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項17】
印刷システムであって、
被印刷物と印刷ゾーンが互いに対して移動するにつれてインク液滴が前記被印刷物上に順次付着させられる複数の印刷領域を含む印刷ゾーンを有し、
相対移動速度が関係ν≧L/τc(Lは印刷ゾーン長であり、τcはコックリング時定数である)を満たす
印刷システム。
【請求項18】
τcは、前記印刷ゾーン内の最大コックリング量が、被覆率が約30%以上であるときの被印刷物平面度からの約0.5mm以下ずれているような定数である、請求項17に記載の印刷システム。
【請求項19】
前記インク液滴は水性インクで形成され、前記被印刷物は普通紙である、請求項18に記載の印刷システム。
【請求項20】
前記被印刷物は連続したウェッブであり、前記印刷領域は、ウェッブ経路に沿って順次配置された複数の印刷ステーションを有する、請求項19に記載の印刷システム。
【請求項21】
前記インク液滴は圧電インクジェット印刷ヘッドによって生成される、請求項20に記載の印刷システム。
【請求項22】
前記相対運動速度は関係ν≦l/τw(lは互いに隣接する印刷領域間の距離であり、τwはウィッキング時定数である)も満たす、請求項17に記載の印刷システム。
【請求項23】
印刷方法であって、
被印刷物と、インク液滴が被印刷物上に順次付着させられる複数の印刷領域を含む印刷ゾーンを設けることと、
以後の液滴が前記インクと前記被印刷物との相互作用に特有の時間内に付着させられるように前記被印刷物と前記印刷ゾーンを互いに対して、相対運動速度を制御しつつ移動させることを含み、前記時間の後のインクの付着によって画像が歪む
印刷方法。
【請求項24】
前記相互作用は前記被印刷物のコックリングである、請求項23に記載の印刷方法。
【請求項25】
前記相互作用は、前記被印刷物の表面エネルギーの変化である、請求項23に記載の印刷方法。
【請求項26】
歪んだ画像は、0.5画素より大きい配置誤差を有する、請求項23に記載の印刷方法。
【請求項27】
歪んだ画像は、1画素より大きいドット配置誤差を有する、請求項26に記載の印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【公表番号】特表2007−500634(P2007−500634A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533711(P2006−533711)
【出願日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2004/018555
【国際公開番号】WO2004/110772
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505456458)フジフィルム ディマティックス,インコーポレイテッド (33)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2004/018555
【国際公開番号】WO2004/110772
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505456458)フジフィルム ディマティックス,インコーポレイテッド (33)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】
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