説明

インクジェット式記録装置

【課題】インクカートリッジ交換の際の無用なインク消費を防止したインクジェット式記録装置の提供を目的とする。
【解決手段】インク残量判定手段69がインクカートリッジ51,52,53,54のいずれかのインクエンドまたはインクニアエンドを検知した際に、そのインクカートリッジを交換した後の吸引手段22による吸引動作を含むインクカートリッジ交換動作実施後に、新たにインクエンドまたはインクニアエンドとなるインクカートリッジがないかをインク残量判定手段69により予め検知して、先にインクエンドまたはインクニアエンドと判定されたインクカートリッジと同時にインクエンドまたはインクニアエンドを表示させるインク量管理手段67を備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録ヘッドのノズル孔からインクを吐出し、記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット式記録装置に関し、より詳しくはそのインクカートリッジの交換技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ等に接続されるプリンタ、複写機、ファクシミリ等の記録装置は、画像情報に基づいて紙やプラスチック薄板等の記録媒体に画像を形成していくように構成されたものであり、その方式により、インクジェット式、ワイヤードット式、サーマル式、レーザービーム式、ペンプロット式等に分類される。
【0003】
その中で、インクジェット式の記録装置に用いられる記録ヘッドは、電気熱エネルギ変換体によって印加される熱エネルギによって形成される膜沸騰による気泡の発生、およびこの気泡の収縮によって生じる圧力変化を利用して、記録媒体へインクを吐出飛翔させて記録を行うように構成されているものや、ピエゾ素子などの電気機械変換体によりインク室の容積を変化させ記録媒体へインクを吐出飛翔させて記録を行うように構成されているものなどがある。
【0004】
このようなインクジェット式記録装置の記録に用いられるインクは、ある一定量を装置に対して十分に小さい容器内に収容したインクカートリッジから記録ヘッドへ供給されており、インクカートリッジ内のインクがなくなった際に交換する必要がある。
【0005】
従来のインクジェット式記録装置は、インク消費量確認を行う際、ひとつのインクカートリッジに対してのみ行い、そのインクカートリッジがインクエンドまたはインクニアエンドの場合、すぐにインクエンドまたはインクニアエンド表示を行うようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−181045号公報(第3−8頁、第9図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記インクジェット式記録装置のインクカートリッジ交換においては、インクカートリッジ内のインク量を管理して、なるべく多くのインクを消費した状態で交換できるようにする必要がある。
【0008】
インクカートリッジ内のインクが消費される動作としては、記録ヘッドからインクを吐出して記録を行う処理の他に、記録ヘッドへのインクの充填処理や、インク溶媒の蒸発による目詰まりを防止するために記録ヘッドからインクを強制的に吸引排出する処理があり、これらの処理によって消費されたインク量をカウントして残留しているインク量の管理を行う。
【0009】
記録処理や記録ヘッドのメンテナンスに関わる処理によるインク消費によってインクカートリッジが空になった場合、インク量管理手段によりインク残量の低下が検知されると、インクジェット式記録装置上の表示装置やインクジェット式記録装置が接続されたコンピュータのディスプレイにインクカートリッジの交換が必要なこと表示して、ユーザに通知する。インクカートリッジの交換が必要なことを知ったユーザが該当するインクカートリッジを交換すると、インクジェット式記録装置は該当するインクカートリッジが使用可能となるようにインクカートリッジ交換動作を行う。
【0010】
インクカートリッジ交換動作は、インクカートリッジと記録ヘッドの接続部から混入した空気を、記録ヘッドのノズル孔から吸引ポンプを使用して排出する作業、吸引ポンプを使用してインクカートリッジからインクを引き出し、記録ヘッドの流路に充填する作業や、インクカートリッジからインクを引き出すことによりインクカートリッジ内の背圧を安定させる作業などからなる。これらの作業は、インクカートリッジの交換後、インクカートリッジ交換用開口の蓋を閉めることにより自動的に開始されるものや、ユーザのボタン操作により開始されるもの等がある。
【0011】
しかしながら、このインクカートリッジ交換動作を行うことにより、交換されたインクカートリッジのインクのみならず、まだ記録処理に耐えうる残量があるインクカートリッジについても一律にインクが吸引されてしまう。
【0012】
さらに、このインクカートリッジ交換動作のインク吸引により空になるインクカートリッジが発生する恐れがある。この場合、新たに空になったインクカートリッジに対して交換要求が出されるが、このインクカートリッジの交換により再びインクカートリッジ交換動作が行われ、交換したインクカートリッジ以外からもインクが吸引されることになる。これにより、新品なはずのインクカートリッジにもかかわらず、インクカートリッジ交換動作が繰り返し行われることにより、記録処理を開始する前に大量のインクを消費してしまう可能性がある。
【0013】
そこで、本発明においては、インクカートリッジ交換の際の無用なインク消費を防止したインクジェット式記録装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明のインクジェット式記録装置は、ある一つのインクカートリッジがインクエンドまたはインクニアエンドとなった場合に、インクカートリッジ交換要求を出す前にその他のインクカートリッジのインク残量を検出して、インクカートリッジ交換動作を実施することにより新たにインクエンドまたはインクニアエンドになるインクカートリッジがあるかを検知し、そのようなインクカートリッジが検出された場合はそのインクカートリッジに対してもインクカートリッジ交換要求を出すように構成したものである。
【0015】
本発明によれば、無用なインク消費を防止したインクジェット式記録装置が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、記録データに対応してインク滴を吐出するインクジェット式の記録ヘッドと、同記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジと、記録ヘッドからインクを吸引する吸引手段と、吸引手段による吸引処理を制御する吸引制御手段と、インクカートリッジのインク量を管理するインク量管理手段と、同インク量管理手段からのデータを記憶するインク消費量記憶手段と、インク量管理手段に管理されたデータに基づいてインクカートリッジのインク量が今後の記録処理に耐えうる量残っているのかを判定するインク残量判定手段とを備え、インク量管理手段は、インク残量判定手段がインクカートリッジのいずれかのインクエンドまたはインクニアエンドを検知した際に、そのインクカートリッジを交換した後の吸引手段による吸引動作を含むインクカートリッジ交換動作実施後に、新たにインクエンドまたはインクニアエンドとなるインクカートリッジがないかをインク残量判定手段により予め検知して、先にインクエンドまたはインクニアエンドと判定されたインクカートリッジと同時にインクエンドまたはインクニアエンドを表示させるものであることを特徴とするインクジェット式記録装置であり、あるインクカートリッジのインクエンドまたはインクニアエンドが検知された際、そのインクカートリッジを交換した後の吸引動作を含むインクカートリッジ交換動作実施後に、新たにインクエンドまたはインクニアエンドとなるインクカートリッジがないか予め検知され、先にインクエンドまたはインクニアエンドと判定されたインクカートリッジと同時にインクエンドまたはインクニアエンドが表示されるという作用を有する。
【0017】
請求項2に記載の発明は、インク残量判定手段からの情報をインクジェット式記録装置本体に表示させるものであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット式記録装置であり、インク残量判定手段からの情報がインクジェット式記録装置本体に表示されるという作用を有する。
【0018】
請求項3に記載の発明は、インク量管理手段は、インク残量判定手段からの情報をインクジェット式記録装置が接続された外部装置に表示させるものであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット式記録装置であり、インク残量判定手段からの情報がインクジェット式記録装置が接続されたコンピュータ等の外部装置に表示されるという作用を有する。
【0019】
請求項4に記載の発明は、インク消費量記憶手段をインクジェット式記録装置本体側に有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット式記録装置であり、インク消費量をインクジェット式記録装置本体側に記憶することができるという作用を有する。
【0020】
請求項5に記載の発明は、インク消費量記憶手段をインクカートリッジ側に有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット式記録装置であり、インク消費量をインクカートリッジ側に記憶することができるという作用を有する。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態におけるインクジェット式記録装置の主要部を示す斜視図である。
【0023】
このインクジェット式記録装置は、ブラック色のインクを吐出するノズル(図示せず)、イエロー色のインクを吐出するノズル(図示せず)、マゼンタ色のインクを吐出するノズル(図示せず)、および、シアン色のインクを吐出するノズル(図示せず)を備えた記録ヘッド1が、それぞれブラック色のインクカートリッジ51、イエロー色のインクカートリッジ52、マゼンタ色のインクカートリッジ53およびシアン色のインクカートリッジ54からインクの供給を受けて、記録媒体としての記録用紙41に向かってインクを吐出することにより、記録用紙41上に単色もしくはカラー記録を行う。
【0024】
また、図1において、31は記録ヘッド1を支持するキャリッジ、2は記録ヘッド1に形成された各ノズルを清掃する清掃手段である。また、キャリッジ31には、インクカートリッジ51,52,53,54の着脱によりそれぞれオンオフするスイッチ35,36,37,38が配置されている。
【0025】
キャリッジ31は、走査機構3によって走査方向(図1に示すX方向)に往復動する。このキャリッジ31により、記録ヘッド1が走査方向に往復動する。走査機構3は、キャリッジ31をガイドするキャリッジ軸32と、キャリッジ31の往復動の駆動源であるキャリッジ駆動モータ33と、キャリッジ31を搬送するキャリッジ駆動ベルト34とによって構成されている。
【0026】
キャリッジ軸32は、その軸が走査方向に対して平行となるように配設されており、キャリッジ31が外挿される。このため、キャリッジ31は、キャリッジ軸32にガイドされ、キャリッジ軸32に沿って移動する。
【0027】
キャリッジ駆動ベルト34は、走査方向に互いに離して配設された駆動側プーリ34aと従動側プーリ34bとの間に掛け渡される。
【0028】
キャリッジ駆動モータ33は、走査方向の一方の側に配設されており、その回転軸には駆動側プーリ34aが取り付けられている。このキャリッジ駆動モータ33を回転駆動させれば、駆動側プーリ34aが回転し、この駆動側プーリ34aの回転に伴ってキャリッジ駆動ベルト34が駆動側プーリ34aと従動側プーリ34bとの間で駆動する。
【0029】
また、キャリッジ31には、キャリッジ駆動ベルト34に対して係合する係合部31aが形成されている。キャリッジ駆動ベルト34が駆動すれば、この係合部31aがキャリッジ駆動ベルト34によって搬送される。したがって、キャリッジ駆動モータ33の回転軸を正転または逆転方向に回転駆動することによって、キャリッジ31が走査方向に往復動する。
【0030】
なお、同図において二点鎖線で示すキャリッジ31の位置は、待機時にキャリッジ31が位置するホーム位置である。
【0031】
記録用紙41は、搬送機構4によって走査方向に直交する搬送方向(図1に示すY方向)に搬送される。
【0032】
搬送機構4は、記録用紙41の搬送の駆動源である搬送モータ42と、記録用紙41を挟み込んで搬送する搬送ローラ43および押圧ローラ44とによって構成されている。
【0033】
搬送ローラ43は、その回転軸が走査方向に対して平行となるように配設されており、搬送モータ42の回転軸に対して複数個のギヤ45を介して連結されている。このため、搬送ローラ43は、搬送モータ42の回転軸の回転駆動によって、その軸芯周りに回転する。
【0034】
押圧ローラ44は、搬送ローラ43に相対向して配設されており、搬送ローラ43側に記録用紙41を押圧する。したがって、搬送モータ42を回転駆動させれば、搬送ローラ43と押圧ローラ44とに挟まれた記録用紙41が搬送方向に搬送される。
【0035】
なお、キャリッジ駆動モータ33および搬送モータ42の回転軸には、それぞれ回転検出盤33a,42aが取り付けられている。またこれらの各回転検出盤33a,42aに相対向して各回転検出盤33a,42aの回転角度を検出する回転角度検出センサ33b,42bが設けられている。キャリッジ駆動モータ33および搬送モータ42は、それぞれ回転角度検出センサ33b,42bによって検出されたキャリッジ駆動モータ33および搬送モータ42の回転軸の回転角度に基づき、電気回路(図示せず)によってその回転駆動の制御が行われる。このようなキャリッジ駆動モータ33および搬送モータ42の回転駆動の制御によって、キャリッジ31の位置および記録用紙41の位置はそれぞれ制御される。
【0036】
清掃手段2は、走査方向の他方の側であるキャリッジ31のホーム位置側に配設されている。
【0037】
清掃手段2は、記録ヘッド1の全てのノズルの外側開口を覆うように記録ヘッド1に対して密着するキャップ21と、キャップ21が記録ヘッド1に密着することによって形成される密閉空間21aに連通した吸引手段22とを備えている。
【0038】
キャップ21は、平面視で略矩形状であって、その周囲に起立壁が形成されている。このキャップ21が記録ヘッド1に密着すれば、記録ヘッド1に形成された全てのノズルの外側開口が覆われる。なお、キャップ21は、記録ヘッド1に密着した際、キャップ21とインクジェットヘッドとによって形成された密閉空間21aが密閉状態となるようにゴム等の弾性体によって形成されている。
【0039】
そして、キャップ21は、カム23およびカム23を回転させる駆動モータ24によってZ方向に移動可能に構成されている。これにより、キャップ21は、ホーム位置に位置した記録ヘッド1に対して密着した密着位置と、記録ヘッド1から退避した退避位置とに相互に位置変更する。
【0040】
また、キャップ21には、密閉空間21aと連通するようにインク排出チューブ25の一端が接続されている。インク排出チューブ25は、キャップ21から一旦キャリッジ31の走査方向とほぼ同じ向きに延ばされ、その他端は廃インク容器26に接続されている。
【0041】
吸引手段22は、インク排出チューブ25の途中位置に配設されている。この吸引手段22を作動させれば、キャップ21によって覆われたノズル付近のインクまたはインク塊に対し、記録ヘッド1の外部方向(インク吐出方向)への力(吸引力)が作用し、ノズル付近のインク等がノズル付近から除去される。この吸引されたインク等は、インク排出チューブ25を通って廃インク容器26に排出される。
【0042】
なお、吸引手段22の駆動は、専用の駆動源であるポンプモータ28により行う。
【0043】
また、キャップ21に隣接して、記録ヘッド1のノズルが形成された壁部の外表面(ノズル面)を払拭するゴム等の弾性体で形成されたワイパー27が配設されている。ワイパー27は、図示省略のカムおよびキャップ21をZ方向に移動させる駆動源である駆動モータ24によって、キャップ21とは別個にZ方向に移動可能に構成されている。これにより、ワイパー27は、記録ヘッド1のノズル面に対して圧着した圧着位置と、記録ヘッド1から退避した退避位置とに相互に位置変更する。
【0044】
そして、このワイパー27を記録ヘッド1のノズル面に圧接させた状態でキャリッジ31を走査方向に移動させると、ノズル面に対してワイパー27が相対的に移動し、ノズル面が払拭される。
【0045】
図2は本発明の実施の形態におけるインクジェット式記録装置の機能ブロック図である。
【0046】
図2において、記録制御手段61は、ホスト(図示せず)からの記録データに基づいてビットマップデータを作成し、このビットマップデータに基づいてヘッド駆動手段62を制御する。ヘッド駆動手段62は、この記録制御手段61の制御により記録ヘッド1へ駆動信号を発生し、記録ヘッド1からインク滴を吐出させる。
【0047】
インクカートリッジ着脱検出手段63は、キャリッジ31に配置された各スイッチ35〜38の信号変化により、インクカートリッジ51〜54それぞれの着脱を検出するものである。
【0048】
吸引駆動手段64は、吸引動作を実行するものである。吸引制御手段65は、外部から操作可能なメンテナンススイッチ66からの信号が入力された場合や、インクカートリッジ51〜54が新しく装着された場合等に、記録ヘッド1をキャップ21により封止した状態で吸引駆動手段64に信号を出力し、吸引手段22を所定のモードで作動させるものである。
【0049】
インク量管理手段67は、電源投入時に、後述するインク消費量記憶手段68に格納されているインク消費量を呼び出し、記録動作や予備吐出動作が行われた場合にはインク量をカウントし、また、吸引制御手段65により吸引駆動手段64に吸引指令が出力された段階で、吸引量を予め加算して消費されたインク量を算出するものである。一方、電源オフが検出された場合には、インク量管理手段67は、演算したインク消費量をインク消費量記憶手段68に格納する。また、インク量管理手段67は、インクカートリッジ着脱検出手段63によりインクカートリッジ51〜54の交換が検出された場合には、演算結果(インク消費量)をクリアする。
【0050】
インク残量判定手段69は、各インクカートリッジ51〜54に収容されているインク量と、インク量管理手段67により算出されたインク消費量との差分を算出し、この差分が段階的に定められた複数の水準を下回る毎に、表示手段70に信号を出力するものである。なお、表示手段70は、本インクジェット式記録装置本体に備えた表示装置、または、本インクジェット式記録装置が接続されたコンピュータ等の外部装置である。
【0051】
次に、上記構成のインクジェット式記録装置の動作について、図3〜図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0052】
図3は本発明の実施の形態におけるインクジェット式記録装置の全体動作を示すフローチャート。
【0053】
図3に示すように、電源スイッチが投入(電源ON)されると、まず、初期化処理(ステップS101)を実行し、待機状態(ステップS102)に入る。この待機状態とは、キャリッジ31をホーム位置に位置付け、かつキャップ21をノズル面の外側開口を覆うように密着位置に移動させた状態である。
【0054】
次いで、インクカートリッジ着脱検出手段63からの信号に基づいてインクカートリッジ(I/C)51〜54の交換が行われたか否かを検出(ステップS103)し、交換が行われた場合にはインクカートリッジ交換処理(ステップS104)を実行する。
【0055】
一方、インクカートリッジ51〜54の交換が行われなかったか、あるいはインクカートリッジ51〜54の交換が完了した状態で、メンテナンススイッチ66が押圧(ON)された場合(ステップS105)には、メンテナンス処理(ステップS106)を実行する。
【0056】
そして、メンテナンス処理が必要でなくなった状態で記録データの入力を待ち(ステップS107)、記録データが入力されるまでは上記ステップS102からステップS107の工程を繰り返し、記録データが入力された段階で、記録処理(ステップS108)に入る。
【0057】
最後に、動作が終了して電源スイッチがオフ(電源OFF)されると、インク消費量記憶手段68にインク消費量を格納(ステップS109)して動作を停止する。
【0058】
図4は図3の初期化処理(ステップS101)の詳細を示すフローチャートである。
【0059】
図4に示すように、図3のステップS101の初期化処理の動作は、まずインク消費量記憶手段68に格納されているインク消費量のデータを読み込み(ステップS110)、また記録準備のためのキャリッジ31の位置や紙送りのための初期化(ステップS111)を実行する。
【0060】
そして、記録準備が整った段階で、インクカートリッジ着脱検出手段63からの信号に基づいてインクカートリッジ51〜54の有無を検出(ステップS112)し、装着されていない場合には表示手段70によりエラー表示を行って(ステップS113)、インクカートリッジ51〜54が装着されるのを待つ。
【0061】
一方、インクカートリッジ51〜54が正常に装着されていることが確認できた段階で、インク消費量の確認処理(ステップS114)を実行する。
【0062】
なお、本実施の形態におけるインクジェット式記録装置では、流通過程においても使用時と同様の条件に維持するため、記録ヘッド1内に初期充填液を充填して乾燥や塵埃の侵入を防止している。このため、新品状態からの使用開始に先立って、記録ヘッド1に充填された初期充填液を完全に排除しインクと入れ換える、初期充填処理を必要とする。図5はこの初期充填処理の詳細を示すフローチャートである。
【0063】
初期充填処理は、まず、第1の吸引で排出する第1の吸引量を予めインク消費量記憶手段68に加算(ステップS115)し、加算が終了した段階で第1の吸引(ステップS116)を実行する。
【0064】
続いて、第2の吸引で排出する第2の吸引量を予めインク消費量記憶手段68に加算(ステップS117)し、加算が終了した段階で第2の吸引(ステップS118)を実行する。
【0065】
図6は図3のインクカートリッジ交換処理(ステップS104)の詳細を示すフローチャートである。
【0066】
図6に示すように、インクカートリッジ交換処理は、インクカートリッジ着脱検出手段63により、キャリッジ31に装着されている古いインクカートリッジ51〜54のいずれかが取り外されて、新しいインクカートリッジが装着されたことが検出されると、インク量管理手段67は、インク消費量記憶手段68に記憶された、この交換されたインクカートリッジに該当するインク消費量をリセット(ステップS119)する。その後、インク量管理手段67は、この交換されたインクカートリッジ内のインクを記録ヘッド1内に引き込むのに必要な吸引量をインク消費量記憶手段68に加算(ステップS120)して、加算が終了した段階で吸引制御手段65による吸引処理(ステップS121)を実行する。
【0067】
図7は図3のメンテナンス処理(ステップS106)の詳細を示すフローチャートである。
【0068】
図7に示すように、メンテナンス処理は、インク量確認処理(ステップS122)によりインク残量を確認し、インク残量がメンテナンス処理による吸引動作を行ってもインクエンドまたはインクニアエンドとならない量であれば、インク量管理手段67は予め吸引するインク量をインク消費量記憶手段68に加算(ステップS123)してから、吸引制御手段65により吸引処理(ステップS124)を実行する。一方、インク残量がメンテナンス処理による吸引動作を行うことによりインクエンドまたはインクニアエンドとなる場合は、表示手段70にインク交換表示(ステップS125)を行う。
【0069】
図8は図3の記録処理(ステップS108)の詳細を示すフローチャートである。
【0070】
図8に示すように記録処理は、インク量管理手段67が、記録モードとして、記録に使用する記録ヘッド1上のノズル(インク)の種類と、記録に使用する記録ヘッド1が記録および予備吐出の際に吐出する1ドット当たりのインク量とを確認(ステップS126)し、吐出する1ドット当たりのインク量をインク消費量記憶手段68にセットする(ステップS127)。そして、インク量管理手段67は、記録の前に行う予備吐出によるインク消費量を予めインク消費量記憶手段68に加算(ステップS128)してから、予備吐出(ステップS129)を行う。
【0071】
記録制御手段61により記録が開始(ステップS130)されると、インク量管理手段67は、1パスで記録されるドット数をカウント(ステップS131)し、1パス分の記録に消費されるインク量をインク消費量記憶手段68に加算(ステップS132)して、記録制御手段61による1パス分の記録(ステップS133)を実行する。
【0072】
ここで、記録動作が所定時間継続、あるいは次の1パス分の記録動作の途中で所定時間を迎えるタイミングであることが判定(ステップS134)されると、インク量管理手段67は、予備吐出により消費するインク量を、インク消費量記憶手段68に加算(ステップS135)し、キャリッジ31をメンテナンス位置に移動させて、予備吐出(ステップS136)を行う。
【0073】
予備吐出後記録データが存在する場合(ステップS137)は、前述のステップS130〜ステップS137を繰り返し実行する。
【0074】
すべての記録処理が終了すると、インク量管理手段67は、予備吐出で消費するインク量を予めインク消費量記憶手段68に加算(ステップS138)して、予備吐出(ステップS139)を行う。
【0075】
図9は図4および図7のインク消費量確認処理(ステップS114,S122)の詳細を示すフローチャートである。
【0076】
インク消費量確認処理は、インク量管理手段67が、インク残量と予め定められているインクエンド判定基準レベルとを比較(ステップS140)し、インクエンドである場合にはさらにそのインクエンドと判定されたインクカートリッジの他に、図6に示すインクカートリッジ交換処理の終了後にインクエンドとなるインクカートリッジがないかを判定(ステップS141)する。
【0077】
ここで、インクエンドにならないと判定されたインクカートリッジは、さらにステップS142で、図6に示すインクカートリッジ交換処理の終了後にインクエンドよりインク残量は多く多少の記録処理には耐えうるが、近いうちにインクエンドとなるものとして予め定められているインクニアエンド判定基準と比較され、インクニアエンドではないかを判定する。
【0078】
一方、ステップS140でインクエンドと判定されなかったインクカートリッジも、ステップS143でインクニアエンド判定基準と比較され、インクニアエンドである場合は、前述のステップS141〜ステップS142を繰り返し実行し、ステップS143でインクニアエンドと判定されたインクカートリッジ以外に、図6に示すインクカートリッジ交換処理の終了後にインクエンドまたはインクニアエンドとなるインクカートリッジがないかを判定する。
【0079】
以上のように、ステップS140〜ステップS143の過程を経て判定された結果は、表示手段70にインクエンドまたはインクニアエンドであるとして表示する(ステップS144)。
【0080】
(実施の形態2)
第1実施の形態では、インク消費量記憶手段68をインクジェット式記録装置本体に設けているが、このインク消費量記憶手段68はインクカートリッジ51〜54に設けてもよい。図10は第2実施の形態におけるインクジェット式記録装置のインクカートリッジ交換処理を示すフローチャートを示している。なお、ステップS220〜ステップS221は、図6のステップS120〜ステップS121と同じであるため、その説明は省略する。
【0081】
第2実施の形態におけるインクジェット式記録装置では、インクカートリッジ51〜54それぞれにインク消費量記憶手段68を搭載しているため、インク消費量記憶手段68には各インクカートリッジの個別の情報が記憶されている。そのため、図6のフローチャートにあるステップS119、すなわち、インクジェット式記録装置上に設けられたインク消費量記憶手段68をリセットする動作が不要となる。
【0082】
【発明の効果】
本発明のインクジェット式記録装置は、ある一つのインクカートリッジがインクエンドまたはインクニアエンドとなった場合に、インクカートリッジ交換要求を出す前にその他のインクカートリッジのインク残量を検出して、インクカートリッジ交換動作を実施することにより新たにインクエンドまたはインクニアエンドになるインクカートリッジがあるかを検知し、そのようなインクカートリッジが検出された場合はそのインクカートリッジに対してもインクカートリッジ交換要求を出すように構成したため、無駄なインク消費を防止することができるとともに、インクカートリッジ交換動作回数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるインクジェット式記録装置の主要部を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態におけるインクジェット式記録装置の機能ブロック図
【図3】本発明の実施の形態におけるインクジェット式記録装置の全体動作を示すフローチャート
【図4】図3の初期化処理の詳細を示すフローチャート
【図5】初期充填処理の詳細を示すフローチャート
【図6】図3のインクカートリッジ交換処理の詳細を示すフローチャート
【図7】図3のメンテナンス処理の詳細を示すフローチャート
【図8】図3の記録処理の詳細を示すフローチャート
【図9】図4および図7のインク消費量確認処理の詳細を示すフローチャート
【図10】第2実施の形態におけるインクジェット式記録装置のインクカートリッジ交換処理を示すフローチャート
【符号の説明】
1 記録ヘッド
2 清掃手段
3 走査機構
4 搬送機構
21 キャップ
22 吸引手段
24 駆動モータ
28 ポンプモータ
31 キャリッジ
35,36,37,38 スイッチ
41 記録用紙
51,52,53,54 インクカートリッジ
61 記録制御手段
62 ヘッド駆動手段
63 インクカートリッジ着脱検出手段
64 吸引駆動手段
65 吸引制御手段
66 メンテナンススイッチ
67 インク量管理手段
68 インク消費量記憶手段
69 インク残量判定手段
70 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録データに対応してインク滴を吐出するインクジェット式の記録ヘッドと、
同記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジと、
前記記録ヘッドからインクを吸引する吸引手段と、
前記吸引手段による吸引処理を制御する吸引制御手段と、
前記インクカートリッジのインク量を管理するインク量管理手段と、
同インク量管理手段からのデータを記憶するインク消費量記憶手段と、
前記インク量管理手段に管理されたデータに基づいて前記インクカートリッジのインク量が今後の記録処理に耐えうる量残っているのかを判定するインク残量判定手段とを備え、
前記インク量管理手段は、前記インク残量判定手段が前記インクカートリッジのいずれかのインクエンドまたはインクニアエンドを検知した際に、そのインクカートリッジを交換した後の前記吸引手段による吸引動作を含むインクカートリッジ交換動作実施後に、新たにインクエンドまたはインクニアエンドとなるインクカートリッジがないかを前記インク残量判定手段により予め検知して、先にインクエンドまたはインクニアエンドと判定されたインクカートリッジと同時にインクエンドまたはインクニアエンドを表示させるものであることを特徴とするインクジェット式記録装置。
【請求項2】
前記インク量管理手段は、前記インク残量判定手段からの情報をインクジェット式記録装置本体に表示させるものであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット式記録装置。
【請求項3】
前記インク量管理手段は、前記インク残量判定手段からの情報をインクジェット式記録装置が接続された外部装置に表示させるものであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット式記録装置。
【請求項4】
前記インク消費量記憶手段をインクジェット式記録装置本体側に有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
【請求項5】
前記インク消費量記憶手段をインクカートリッジ側に有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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