説明

インクジェット捺染用インク

【課題】
作業性に問題なく、着色布の品質(風合い、堅牢性)にも優れた、顔料によるインクジェット方法による繊維の着色方法を提供すること。
【解決手段】
(A)顔料、水溶性顔料分散剤及び親水性溶媒からなる平均粒子径が200nm以下且つ最大粒子径が500nm以下の顔料分散体、(B)水溶性固着剤、及び(C)架橋剤からなるインク組成物において、前記(A)の水溶性顔料分散剤が、特定のエマルジョン重合体を塩基性物質により中和したものであり、前記(B)の水溶性固着剤が架橋性官能基を有するものであり、及び前記(C)の架橋剤が、前記(A)の水溶性顔料分散剤の架橋性官能基及び前記(B)の水溶性固着剤の架橋性官能基と100℃以上の温度で架橋反応する官能基を持つもので構成されていることを特徴とする、繊維上で加熱により架橋し固着する特性を有するインクジェット捺染用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット捺染用インクに関するものである。更に詳しくは、インクジェット印刷機で所望のデザインを印刷する際には、繊細な図柄を安定して吐出でき、100℃以上の加熱をすることで繊維に顔料を強固に固着でき、風合い柔軟で堅牢性に優れた繊維の着色布が得られることが可能となる、インクジェット捺染用インクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維の着色には染料と顔料の何れかが用いられている。染料による着色は、繊維種により構造の異なる染料(着色剤)、即ち、綿、麻などのセルロース繊維には反応性染料または直接染料、ウールやシルクなどの動物繊維には酸性染料、ナイロン繊維には酸性染料または分散染料、ポリエステル繊維には分散染料、アクリル繊維にはカチオン染料などが使用され、繊維種に応じてこれらの染料を選択し、様々な染色法により染色される。
また、従来染料を使用して繊維に図柄を捺染する場合、水溶性糊料に適宜選択した染料を配合した捺染糊を、スクリーン型を使用し様々なデザインで捺染する。その後、乾燥、蒸し、水洗、ソーピング、乾燥などの処理を行い着色繊維とする方法が取られている。
一方、顔料を使用して繊維に図柄を捺染する場合、水可溶性のアニオン性又は非イオン性の界面活性剤、顔料、及び親水性溶媒を、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ、ステンレス球などを使用したミル機で湿式分散した顔料分散体を着色剤とし、該着色剤を、顔料固着用エマルジョン樹脂とレジューサーと共にスクリーン捺染して乾燥し、熱処理することにより、繊維上に図柄を着色することができる。
従って、顔料は、染料に比べて、繊維種による着色剤の選定を必要とせず、加工方法も単純であり、また蒸し工程や水洗・ソーピング工程も必要としないから、エネルギーコストがかからず、しかも、廃液が発生しないから、環境面において安全な加工方法である。
しかしながら、顔料による欠点は、洗濯堅牢度などの堅牢性を保持させるため大量の顔料固着用エマルジョン樹脂を必要とする。その結果、風合いが硬くなり、また、加工中の固着剤の乾燥により水に不溶性の膜が張り、目詰まりなどの問題を引き起こす。
従って、顔料による着色は、染料による着色に比べて、衣料としての品位に劣るものであった。
尚、上記のことは、従来の染料と顔料を用いた繊維の着色方法についてのものであるが、デザインを形成するにはスクリーン版を必要とする。
【0003】
近年、繊維への着色において、小ロット、多品種、短納期の着色が増加し、版を作るコストや期間、費用、手間が問題となり、無製版で印刷できるインクジェット方式による着色が開発され、染料による繊維への着色は普及している。
染料による繊維へのインクジェットによる着色は、予め、セルロース系糊料で前処理した布に染料液をインクジェットで印刷し、蒸し、水洗・ソーピング、乾燥を行い着色繊維とする方法が行われている。
また、紙に分散染料インクをインクジェットで印刷し、ポリエステル繊維に昇華転写する方法も行われている。
しかし、これらの方法は、何れも染料を着色剤として用いたものであるから、印刷後、乾燥、蒸し、水洗、ソーピング、乾燥を必要とする。また、特定の繊維のみの着色しかできないから、繊維種を選ばず、簡易な方法で繊維を着色できる顔料による繊維への着色が待たれている。
一方、インクジェット印刷において顔料を着色剤とするには、低粘度で顔料の長期保存安定性に優れ、インクジェットノズルが目詰まりしない等の吐出安定性が必要であるが、繊維に着色する場合には、加えて、風合いが柔軟であり、堅牢性に優れていることが必要である。
【0004】
上記の顔料を着色剤とする方法の問題の解決方法として、以下の(1)〜(9)の方法が挙げられる。
(1)インク成分として、顔料及び水溶性のポリエステルまたはポリアミド成分を含有するインクに架橋剤を加えて繊維に顔料を固着させる方法(特許文献1参照)。
(2)中和されたアニオン性基を有する有機高分子化合物で顔料分散した後、酸を加えて酸析し、顔料表面を有機高分子化合物で被覆し、その後、水と塩基を加えて可溶化したマイクロカプセル化顔料をインクジェット用着色剤とした長期保存安定性に優れた水性記録液(特許文献2参照)。
(3)溶剤中で重合されたアニオン性基を有する有機高分子化合物で顔料分散した後、溶剤の留去の後、酸を加えて酸析し、顔料表面を有機高分子化合物で被覆し、その後、水と塩基を加えて可溶化したマイクロカプセル化顔料にブロックイソシアネートを配合し、インクジェット印刷の後、加熱処理を行うことで印刷安定性、吐出安定性、保存安定性、洗濯堅牢度に優れたインクジェット捺染用顔料インク(特許文献3参照)。
(4)架橋構造を有する重合体で顔料を包含した着色剤と水溶性有機溶剤と水を含んだインクジェット用捺染インク(特許文献4参照)。
(5)インク組成物中に、少なくとも、顔料、カルボキシル基を有する樹脂、水溶性メラミン樹脂、1,2−アルキレングリコール、水を含有している事を特徴とするインクジェット捺染用インク(特許文献5参照)。
(6)顔料、水分散性樹脂、架橋剤としてのブロックイソシアネート、及び水からなる繊維に対する捺染インクジェット用インク(特許文献6参照)。
(7)水性担体媒質及び不溶性着色剤を含有するインクにおいて、水耐久度を改良する添加剤として、コアシェル又はテトラフルオロエチレンエマルジョンポリマーを含有させるインクジェットインキ(特許文献7参照)。
(8)架橋済みポリウレタン分散体を含有する織物上に印刷するのに特に適するインクジェットインキ(特許文献8参照)。
(9)予めポリ乳酸繊維上にインク受容層としてガラス転移点が−50〜−10℃の範囲の水性エマルジョン型アクリル系粘着剤と水溶性カチオンポリマーを主成分とするものを前処理しておき、画像鮮明性、耐水性、耐光性、及び、発色性に優れたインクジェット用被記録材(特許文献9参照)。
しかしながら、以下述べるように、上記の特許文献1〜9は、以下の問題点を有しており、満足できるものではない。
特許文献1は、顔料分散剤として水溶性のポリエステル樹脂またはポリアミド樹脂を用いるとしているが、顔料分散体の粘度がインクジェット方式のインクとしては高いものとなり、また、保存中に粘度が上昇するなどの問題を有し、安定したインクジェット印刷が行えるとはいえない。又、堅牢度、風合いの点から繊維としての品質が十分とはいえない。
特許文献2は、酸析後、塩基で可溶化すると、不溶化物の残渣により巨大粒子が存在しインクジェット方式では目詰まりが生じ、安定した長期のインクジェットによる印刷ができない。
特許文献3は、一旦溶剤系で顔料を微分散した後、酸析し顔料表面に有機高分子化合物を固着して、その後、塩基を配合して可溶化して着色剤にすると言う複雑な工程が必要となること、この着色剤にブロックイソシアネートを配合して繊維に着色し、加熱処理を行った場合においても、繊維への固着力が弱く堅牢性に不足が生ずることが予想され満足できる堅牢性が得られないこと、顔料を酸析後、塩基で可溶化する工程において顔料凝集を引き起こす可能性があり、長期保管中でのインクの安定性が悪くなること、これらの顔料分散剤によって顔料分散された顔料分散体の粘度が高く、高濃度に顔料分散するとインク粘度が高くインクジェット方式による着色インクとしては高濃度のインクが得られないこと、等の種々の欠点がある。
特許文献4、5は、特許文献2、3と同じく酸析または転相により顔料表面を樹脂で被覆した顔料を用いるため、上記で記した問題点を有することは同じであり、また、被覆した顔料を架橋剤により架橋する工程を取るため、特許文献2、3と同じく、インクジェット用インクとしての目詰まりや、吐出安定性、長期保存安定性に優れた発明であるとはいえないし、また、特許文献5は、カルボキシル基を有する樹脂を水溶性メラミン樹脂で架橋すると言う方法で繊維に顔料を固着するものであるが、水溶性メラミン樹脂は、有害なホルムアルデヒドが発生するため、環境上優れた方法であるとはいえないし、インクの一液化が困難である。
特許文献6は、顔料分散剤を兼ねた固着用水分散性樹脂を使用しているが、水分散性樹脂を顔料分散剤として用いると顔料分散粘度が高くなり、インクジェット用インクとして適した低粘度の顔料分散体が得られないし、また、水分散性樹脂は、乾燥すると水不溶性の皮膜を形成することから、インクジェットで印刷後、経時的な安定した吐出性が得られずノズル先端での目詰まりを生ずる事が予想され、インクジェット印刷にふさわしいインクとはいえない。
特許文献7、8は、コアシェルエマルジョンポリマー、テトラフルオロエチレンエマルジョンポリマー又は架橋済みポリウレタン分散体を使用しているが、これらの樹脂エマルジョンや分散体は、乾燥すると水不溶性の皮膜を形成することから、上記特許文献6と同様の理由により、インクジェット印刷に相応したインクとはいえない。
最後に、特許文献9は、予め、水性エマルジョン型アクリル系粘着剤と水溶性カチオンポリマーを主成分とするものを前処理することで、繊維表面の全面に樹脂膜が被覆されることから、風合いが硬く、通気性を阻害する、インクがはじき鮮明な画像が得られないなどが予想され、繊維の着色方法として満足できるものが得られない。
以上のように、インクジェットによる繊維の着色において、染料によるものは着色布の品質(風合い、堅牢性)に優れているが、繊維種による染料の選定が必要であり、工程効率や設備、資源消費などに問題があり、廃液が生じ環境上の問題も有する。
一方、顔料による着色は、繊維種による着色剤の選定が不要で工程も簡便なものであるが、顔料インクの長期保存安定性、吐出安定性、ノズルの目詰まり、及び、着色布の品質(風合い、堅牢性)に劣るものが多いという問題を抱えている。
よって、作業性に問題なく、着色布の品質(風合い、堅牢性)にも優れた、顔料によるインクジェット方法による繊維の着色方法の開発が待たれている。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−231787号公報
【特許文献2】特開平11−172180号公報
【特許文献3】特開2003−268271号公報
【特許文献4】特開2002−338859号公報
【特許文献5】特開2004−67807号公報
【特許文献6】特開2009−215506号公報
【特許文献7】特表平10−195362号公報
【特許文献8】特表2007−522285号公報
【特許文献9】特開2006−218791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、作業性に問題なく、着色布の品質(風合い、堅牢性)にも優れた、顔料によるインクジェット方法による繊維の着色方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねたところ、顔料による繊維の着色において、顔料分散に本発明の特定の構造を有する水溶性顔料分散剤を用いることでインクジェット用顔料としてふさわしい粒子径である、平均粒子径が200nm以下且つ最大粒子径が500nm以下に微粒化したとしても低粘度の顔料分散体が得られ、且つ長期に亘り凝集や沈降のない安定した顔料分散体が得られることを知った。
また、本発明の顔料分散体に架橋性官能基を有する水溶性固着剤、及び100℃以上の加熱により反応性を有する基を2つ以上もつ架橋剤を配合しインクジェット捺染用インクとして、100℃以上に加熱することで水溶性顔料分散剤、水溶性固着剤及び架橋剤との間で架橋反応が生起し、水溶性であった高分子型顔料分散剤、及び水溶性固着剤が水不溶性となり、顔料固着剤として作用することを知った。
即ち、本発明は、熱処理前のインクの状態は水可溶性であり吐出安定性に優れ、印刷後の加熱で水不溶性の顔料固着剤として作用することで耐水堅牢性が得られる、相反する問題を克服した発明である。
更に、本発明のインクジェット捺染用インクは、ピエゾ型インクジェット印刷機で所望のデザインを印刷する際には、繊細な図柄を安定して吐出でき、100℃以上の加熱をすることで繊維に顔料を強固に固着でき、風合い柔軟で堅牢性に優れた繊維の着色布が得られることが可能となる。
以上、更に研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の発明から構成されるものである。
1.(A)顔料、水溶性顔料分散剤及び親水性溶媒からなる平均粒子径が200nm以下且つ最大粒子径が500nm以下の顔料分散体、(B)水溶性固着剤、及び(C)架橋剤からなるインク組成物において、前記(A)の水溶性顔料分散剤が、(1)CH=CR−COOR(Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数2〜8のアルキル基を表す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体20〜80部、(2)カルボキシル基を有する脂肪族ビニル単量体80〜20部、並びに(3)非カルボキシル基系の架橋性官能基を有する脂肪族ビニル単量体0〜20部からなる分子量2,000〜20,000のエマルジョン重合体を塩基性物質により中和したものであり、前記(B)の水溶性固着剤が架橋性官能基を有するものであり、及び前記(C)の架橋剤が、前記(A)の水溶性顔料分散剤の架橋性官能基及び前記(B)の水溶性固着剤の架橋性官能基と100℃以上の温度で架橋反応する官能基を持つもので構成されていることを特徴とする、繊維上で加熱により架橋し固着する特性を有するインクジェット捺染用インク。
2.(A)の水溶性顔料分散剤に用いるエマルジョン重合体が、反応性界面活性剤の存在下で重合されたものである上記1記載のインクジェット捺染用インク。
3.(A)の水溶性顔料分散剤の(2)のカルボキシル基を有する脂肪族ビニル単量体が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸から選ばれる少なくとも1種である上記1又は2記載のインクジェット捺染用インク。
4.(A)の水溶性顔料分散剤を構成する分子量2,000〜20,000のエマルジョン重合体を中和する塩基性物質として、第二級アミン又は第三級アミンを用いる上記1、2又は3記載のインクジェット捺染用インク。
5.(A)の水溶性顔料分散剤の配合量が、顔料の表面積1m 当たり5〜40mgである上記1〜4の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
6.(A)の水溶性顔料分散剤の分散能補助として、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩又はポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を用いる上記1〜5の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
7.(A)の顔料と水溶性顔料分散体の配合量が、顔料1に対して水溶性顔料分散体0.1〜2.0である上記1〜6の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
8.(B)の水溶性固着剤が、水溶性ウレタン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性アクリル樹脂及び変性ポリビニルアルコール(PVA)から選ばれる少なくとも1種である上記1〜7の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
9.(B)の水溶性固着剤のガラス転移点(Tg)が、−60〜20℃の範囲である上記8記載のインクジェット捺染用インク。
10.(B)の水溶性固着剤の水溶性ウレタン樹脂が、架橋性官能基及び親水性基を兼ねるカルボン酸基及びヒドロキシル基を有し、酸価が20〜90mgKOH/g且つ水酸基価が20〜70mgKOH/gである上記8記載のインクジェット捺染用インク。
11.(B)の水溶性固着剤の固着能補助として、最大粒子径が、500nm以下のホットメルト性樹脂を用いる上記1〜10の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
12.(C)の架橋剤として、水溶性又は自己乳化性のものを用いることにより、再分散性に優れた特性を有するものとした上記1〜11の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
13.(C)の架橋剤が、イソシアネートとして、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、H6XDI(水添キシリレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)又はH12MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)のTMP(トリメチロールプロパン)アダクト体又はイソシアヌレート体をブロックしたブロック化イソシアネート系化合物である上記1〜12の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
14.(C)の架橋剤が、ブロック剤として、DEM(マロン酸ジエチル)、DIPA(ジイソプロピルアミン)、TRIA(1,2,4−トリアゾール)、DMP(3,5−ジメチルピラゾール)又はMEKO(2−ブタノンオキシム)でブロックされたブロック化イソシアネート系化合物である上記13のインクジェット捺染用インク。
15.粘度が20℃において3〜15mPa・sの範囲である上記1〜14の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
16.表面張力が27〜38mN/mの範囲である上記1〜15の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
17.フィルター又は遠心分離により500nm以上の粗大顔料粒子を濾別、分離したものである上記1〜16の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
18.上記1〜17記載のインクジェット捺染用インクを用いてインクジェット方式により繊維に印捺し、繊維を100℃以上の加熱処理をするインクジェット捺染方法。
19.繊維が、予めカチオン化化合物をパディング法、コーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法又はインクジェット法により前処理したものである上記18記載のインクジェット捺染方法。
20.繊維が、カチオン化化合物に加えて、ウレタン樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン又は架橋剤から選ばれる少なくとも1種と併せて前処理したものである上記19記載のインクジェット捺染方法。
21.上記18〜20の何れかに記載のインクジェット捺染方法により捺染された繊維に、後処理剤をパディング法、コーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法又はインクジェット法により処理するインクジェット捺染方法。
22.後処理剤が、アクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、シリコンオイル、可塑剤又は架橋剤から選ばれる少なくとも1種である上記21記載のインクジェット捺染方法。
23.上記18〜22の何れかに記載のインクジェット捺染方法により捺染された繊維。
【0009】
本発明は、以下の知見に基づいてなされたものである。
1)従来技術の問題点
従来の顔料によるインクジェット印刷方式による繊維の着色は、背景技術に述べたように非イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤を顔料分散剤とし、それに水、湿潤剤などの親水性溶媒、固着剤としてのエマルジョン型樹脂などを配合してインク化の後、繊維に所望の図柄を印刷して着色する。或いは、予めカチオン性ポリマーとアクリル系エマルジョン樹脂(粘着剤)で前処理した布に印刷する。或いは、被覆顔料として、溶剤中で重合されたアニオン性基を有する有機高分子化合物で顔料分散した後、溶剤を留去し、その後、酸を加えて酸析し、顔料表面を有機高分子化合物で被覆し、その後、水と塩基を加えて可溶化したマイクロカプセル化顔料にブロックイソシアネートを配合したインクをインクジェット方式で印刷して、加熱処理を行い繊維に着色する。また、別の方法として、顔料を水分散性樹脂で分散し、架橋剤としてのブロックイソシアネートを加え加熱することで繊維に着色する等があるが、下記に記す問題点を有していた。
(問題点1)
従来の顔料分散剤としての非イオン性界面活性剤、或いは、陰イオン性界面活性剤は、分散能が高くインクの長期安定性に優れた顔料分散体とすることができインクジェット用顔料分散体としては適している。しかし、着色時には繊維との親和性の悪さから顔料の固着を阻害し、また、繊維に残った界面活性剤はその水溶性のため繊維布の洗濯堅牢性、摩擦堅牢性などを悪化させる。
(問題点2)
アニオン性基を有する有機高分子化合物で顔料分散し、酸析、塩基で再溶解させたマイクロカプセル化顔料は、顔料表面を有機高分子で被覆し耐水性は向上させることができるが、極めて複雑な製造工程を必要とすることから生産性が悪い。また、分散後、酸析、塩基による再溶解を必要とすることから、一部の顔料が凝集を起こし、長期保管中に着色濃度が低下する、分離沈降する、増粘する、ノズル詰まりが起こるなど問題がある。また、固着剤を兼ねた水分散性樹脂による顔料分散体は、水分散性であることから親油性が強く、顔料分散時の粘度が高くなる。また、溶媒としての水が揮散すると水不溶性となり、ノズル先端での目詰まりが生ずる問題を有していた。また別の方法として、水溶性のポリエステル樹脂またはポリアミド樹脂を顔料分散剤として用い、その官能基を架橋剤により架橋させ繊維に顔料を固着する事もなされているが、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂の架橋体は耐水性には優れるものの、顔料分散剤としては、分散安定性が悪く、初期粘度も高いことから高濃度の着色インクが得られないと言う問題を有していた。
(問題点3)
顔料を繊維に固着させるため繊維表面に予めカチオン性ポリマーとアクリル系エマルジョン樹脂を塗工し、その表面にインクジェット印刷することで顔料を繊維上に固着する方法では、固着された顔料はイオン的に表面固着しているのみであり、十分な堅牢性を保持できるものではなかった。また、カチオン系ポリマーにアクリル系樹脂(粘着剤)が併用されているが、乾燥した樹脂膜のため、樹脂表面に顔料が表面接着しているだけとなり繊維としての堅牢度を保持するには不足している。また、前処理剤は繊維全体に塗工されることから、風合いや触感を悪くし、また、通気性を阻害する場合がある。
また、前処理なしに顔料を繊維表面に固着させるには、インク中に固着用エマルジョン樹脂を大量に配合し印刷されるが、固着用エマルジョン樹脂は、顔料を強固に繊維に接着することができる反面、乾燥すると水不溶性の皮膜を形成することから大量に配合するとインクジェットノズルを目詰まりさせ、風合いも硬くなる。
また、固着剤と顔料分散剤を兼ねた水分散性樹脂であっても同じ問題が生ずる。
(問題点4)
問題点3の大量のエマルジョン樹脂の配合による吐出性の問題解決策として、多量の湿潤剤を配合し乾燥を遅らせる策がとられているが、多量の湿潤剤の配合は堅牢性を極めて低下させることから作業性の問題を解決できるには至っていないし、湿潤剤を多量に配合したとしてもノズル先端の目詰まりは完全に解消できない。
(問題点5)
カルボキシル基を有する有機高分子化合物で被覆した顔料にブロックイソシアネートと水を加えてインクジェット印刷を行い、その後加熱して繊維を着色する方法は、カルボキシル基とイソシアネート基の反応により、繊維表面で顔料を水不溶化することができるが、被覆顔料はその複雑な製造工程ゆえにインクジェットインクとしての長期保存安定性に問題がある。また、カルボキシル基とイソシアネート基の反応のみでは、繊維としての堅牢性が十分とは言えない。
【0010】
2)解決法
上記の問題点は、以下の方法により解決することがわかった。
(解決法1)
CH=CR−COOR(Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数2〜8のアルキル基を表す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体20〜80部、カルボキシル基を有する非芳香族ビニル単量体80〜20部、架橋性官能基を有する脂肪族ビニル単量体0〜20部からなる分子量2,000〜20,000のエマルジョン重合体を塩基性物質により中和したものを水溶性顔料分散剤として用いて、顔料をミル機により微分散することで、低粘度且つ高濃度に長期に安定した顔料分散体が得られ、インクジェットカートリッジ中でのインクの長期保管性に優れ、印刷作業に優れ、着色力の高いインクジェット用の顔料分散体とすることが可能となった。
また、水溶性顔料分散剤の中和を第二級アミン又は第三級アミンで行うことで、再溶解性に優れ、ノズル先端の目詰まりを防止することができる。
(解決法2)
解決法1の顔料分散体に架橋性官能基を有する水溶性固着剤、及び100℃以上の加熱により反応性有する基を2つ以上もつ架橋剤を配合しインクジェット捺染用インクとして、100℃以上に加熱することで水溶性顔料分散剤、水溶性固着剤及び架橋剤との間で架橋反応が生起し、水溶性であった高分子型顔料分散剤、及び水溶性固着剤が水不溶性となり、顔料固着剤として機能することで、インクジェット方式で繊維上にノズル先端が目詰まりすることなく安定して印刷することができ、しかも印刷された着色繊維は風合いを損ねることなく堅牢性の良い繊維布となる。
また、最大粒子径が500nm以下のホットメルト性樹脂を固着助剤として併用することにより、繊維としての堅牢性をより向上させることができる。
(解決法3)
本発明のインクジェット捺染用インクは、従来の顔料分散体を用いたインクジェット用着色インクのようにエマルジョン樹脂やディスバージョン樹脂を用いることなく顔料を繊維に固着することができる。その結果、インクジェットノズルを目詰まりさせることなく安定した吐出性能があり、繊維布の堅牢性を確保したまま繊維布の風合いを阻害することもなく、通気性のある染料で着色されたものと遜色のない優れた品質の着色布を得ることができる。
(解決法4)
本発明で用いる架橋剤は、100℃以上の加熱で反応性が生起するものであるから、保管中、即ち、日常温度雰囲気下では反応性がなく、インクカートリッジ中の長期保管において安定性を保つことができる。従って、長期に亘って安定なインクとすることができる。
(解決法5)
本発明のインクジェット捺染用インクは、熱処理を加えなければ水溶性の状態を保持したものである。従って、本インクが印刷中にノズル先端で水分が蒸発し乾燥したとしても、本インクは水溶性であるから、インク自体により再分散可能であり、ノズルを目詰まりさせることなく、連続したインクジェット印刷ができる。又、印刷を休止状態から再開する際も、親水性溶媒やアルカリ水によるクリーニング操作により、印刷可能状態に容易に戻すことができる。
(解決法6)
本発明の水溶性顔料分散剤と顔料、親水性溶媒を混合し、ビーズミルなどで湿式分散することのみで、インクジェット印刷に適した平均粒子径が200nm以下且つ最大粒子径が500nm以下の顔料分散体とすることができるため、従来の顔料を耐水化するための酸析や、塩基による再溶解などの複雑な工程を経ることなく、容易に安定性に優れた顔料分散体を得ることができる。
(解決法7)
顔料分散剤の組成中に芳香環を有すると、耐水性は向上するが顔料分散時の粘度が上昇し、高濃度の顔料分散体を得ることが困難となるため、本発明では、芳香環を有さない単量体により得られた水溶性顔料分散剤とすることで、低粘度、高濃度に微分散顔料が得られ、インクジェット捺染用インクに用いるにふさわしい顔料分散体を得ることが可能となる。
(解決法8)
本発明のインクジェット捺染用インクを印刷する前に、予め繊維をパディング法、コーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、インクジェット法などにより、カチオン化化合物などを前処理することにより、より印刷が鮮明、且つ高濃度となり、繊維としての堅牢性も向上させることができる。
(解決法9)
本発明のインクジェット捺染用インクを繊維に捺染後、パディング法、コーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、インクジェット法などにより、アクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、シリコンオイル、可塑剤等を後処理することで、より繊維としての堅牢性が向上させることができる。また、前処理と後処理の両方を行うことで更に堅牢性を向上させることができる。
【0011】
以上の解決法に基づいた、本発明のインクジェット用着色組成物は、従来のインクジェット印刷の無製版で印刷するがゆえの利点である小ロット、多品種、短納期で製版代を必要とせず極めて効率的な印刷を行うことができる点に加え、水溶性顔料分散剤と水溶性固着剤を印刷後に架橋剤で架橋させて顔料固着剤として利用することで、印刷時には吐出安定性に優れ、印刷後には繊維上で顔料を強固に固着できるという、今までにない合理的な手段を採用することにより、インクの長期保存性や連続印刷特性に問題が無く、風合い、堅牢性に優れた高品質の着色繊維製品の製造を可能にしたものである。
インクジェット捺染用インクは、特定の水溶性顔料分散剤を用いた顔料分散体、特定の水溶性固着剤及び特定の架橋剤を必須成分とすることで、印刷後の加熱で水溶性顔料分散剤と架橋剤の反応、水溶性固着剤の架橋性官能基と架橋剤の反応、架橋剤自身の縮合化反応による相乗的効果がもたらされ、何れが欠けても本発明の目的が達成できないことからして、本発明の構成の選択には格別の意味があることがわかる。
【0012】
以下、本発明の構成要件について説明する。
1.インクジェット捺染用インクの成分
本発明のインクジェット捺染用インクは、(A)顔料、水溶性顔料分散剤及び親水性溶媒からなる平均粒子径が200nm以下且つ最大粒子径が500nm以下の顔料分散体、(B)水溶性固着剤及び(C)架橋剤を含む。以下に、このインクジェット捺染用インクの各成分を詳細に説明する。
【0013】
(A)顔料、水溶性顔料分散剤及び親水性溶媒からなる平均粒子径が200nm以下且つ最大粒子径が500nm以下の顔料分散体
本発明の顔料分散体は、(A1)顔料、(A2)水溶性顔料分散剤、(A3)親水性溶媒を含み、(A5)ミル機による湿式分散を行うことで顔料分散体が得られる。又、必要に応じて分散能補助として(A4)分散助剤を用いることもできる。
【0014】
(A1)顔料
本発明の顔料としては、有機顔料、無機顔料を問わず、繊維製品の着色材として用いることができる顔料であれば何れのものも使用することができる。
例えば、黒色顔料としてのカーボンブラック、酸化鉄黒顔料など、赤色顔料としてのアゾ系顔料、キナクリドン系顔料、クロモフタル系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アンスラキノン系顔料など、黄色顔料としてのアゾ系顔料、イミダゾロン系顔料、チタン黄色顔料など、オレンジ顔料としてのインダンスレン系顔料、アゾ系顔料など、青色、緑色顔料としてのフタロシアニン系顔料、紫色顔料としてのジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料など、白色顔料としての酸化チタン、アルミニウムシリケート、酸化ケイ素などを用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0015】
(A2)水溶性顔料分散剤
本発明の水溶性顔料分散剤は、(A2−a)(メタ)アクリル酸エステル単量体、(A2−b)カルボキシル基を有する脂肪族ビニル単量体、(A2−c)架橋性官能基を有する脂肪族ビニル単量体からなる(A2−d)エマルジョン重合体を(A2−e)塩基性物質により中和したものである。
【0016】
(A2−a)(メタ)アクリル酸エステル単量体
本発明の(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH=CR−COOR(Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数2〜8のアルキル基を表す)で表され、Rが水素原子又は炭素数1であれば耐水性がなく、Rが炭素数9以上であれば分散性が悪くなり、Rに芳香環があれば粘度が高くなり、経日粘度安定性も悪くなる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシルなどが挙げられ、1種のみ、又は2種以上を併用しても良い。
【0017】
(A2−b)カルボキシル基を有する脂肪族ビニル単量体
本発明のカルボキシル基を有する脂肪族ビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられ、1種のみ、又は2種以上を併用しても良い。
芳香族ビニル単量体は、分散粘度の上昇、安定性の点から用いることはできない。
【0018】
(A2−c)非カルボキシル系の架橋性官能基を有する脂肪族ビニル単量体
本発明の非カルボキシル系の架橋性官能基を有する脂肪族ビニル単量体は、前記の(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能なカルボキシル基を除く架橋性官能基を有する脂肪族ビニル単量体であれば限定されるものではなく、例えば、(メタ)ヒドロキシアクリレート、(メタ)アクリロニトリル、アクリルアミド、水酸基を伴うウレタン基含有ビニル単量体、エポキシ基含有ビニル単量体、高カルボン酸とポリアルコール等の単量体から形成されるエステル基含有ビニル単量体、オルガノシロキサンなどから形成されるシリコーン基含有ビニル単量体、ビニルスルフォン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシアルキルの硫酸エステル、ビニルホスフォン酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのリン酸エステル、(メタ)アクリル酸アルキルホスフォン酸、ビニルアルコール、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。
【0019】
(A2−d)エマルジョン重合体
重合操作としては、通常の乳化重合法によりビニル重合することが可能であり、具体的には重合触媒と(A2−d1)乳化分散剤、及び(A2−d2)連鎖移動剤の存在下50〜90℃で4〜10時間程度の反応で、本発明の濃度20〜50%のエマルジョン重合体が得られる。
本発明に適した(メタ)アクリル酸エステル単量体の比率は、全単量体100部に対し20〜80部であり、より好ましくは30〜70部の範囲が良く、更に好ましくは40〜60部の範囲が堅牢度の点から好ましい。20部より少ないと架橋後の耐水性が得られず、80部より多いと塩基性物質で中和しても水溶性にならない。
カルボキシル基を有する脂肪族ビニル単量体の比率は、全単量体100部に対し80〜20部が適するが、より好ましくは70〜30部、更に好ましくは60〜40部の範囲が顔料分散時の低粘度化、経時粘度安定性の点から好ましい。80部より多いと架橋後の耐水性が得られず、20部より少ないと水溶性とならない。
非カルボキシル系の架橋性官能基を有する脂肪族ビニル単量体の比率は、全単量体100部に対し0〜20部の範囲が適するが、より好ましくは0〜15部の範囲が良い。20部より多いと顔料分散性が悪くなり、モノマー種よっては水溶性とならない。
重合後の分子量は2,000〜20,000が適するが、より好ましくは3,000〜10,000の範囲が良い。20,000を超えると分散粘度が高くなり、顔料分散性も悪くなる。2,000より小さいと顔料の固着性が悪くなる。
【0020】
(A2−d1)乳化分散剤
乳化分散剤としては、非イオン又はアニオン性界面活性剤を用いることができるが、重合時に単量体と共重合可能な反応性界面活性剤を用いることで耐水性が向上する。
反応性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルなどが挙げられるが必ずしもこれらに限定するものでなく、これらを1種のみ、又は2種以上を併用しても良い。
【0021】
(A2−d2)連鎖移動剤
連鎖移動剤は、エマルジョン重合体の分子量を2,000〜20,000に調整するものであり、メルカプト系、四塩化炭素、アルファーメチルスチレンダイマーなどが挙げられるが、中でもn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、3メルカプトプロピオネート、3,3’チオジプロピオン酸、チオグリコール酸などのメルカプト系連鎖移動剤を用いることが分子量を制御するのに適している。
分散剤として適した分子量とするために、通常乳化重合に用いる連鎖移動剤の量に比べて多く用いることで低分子量としている。
配合量は、全単量体1.0に対して連続移動剤0.02〜0.1の範囲が好ましく、更に好ましくは0.04〜0.08の範囲が好ましい。
【0022】
(A2−e)塩基性物質
塩基性物質は、エマルジョン重合体の中和剤として用いるものであり、塩基性物質であれば限定するものでなく、アンモニア、塩基性金属塩、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物、第三級アミン化合物など用いることが出来るが、中でも顔料分散体の再溶解性からして、第二級又は第三級アミン化合物による中和を行うことが好ましく、これらの塩基性化合物によりエマルジョン重合体を中和し、pHを6〜9に調製して水溶性顔料分散剤とする。
中和剤としては、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、n−プロピルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらを1種のみ、又は2種以上を併用しても良い。
【0023】
(A3)親水性溶媒
親水性溶媒としては、水や水溶性有機溶剤などを用いることができる。
水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどが挙げられるが、必ずしもこれ等に限定されるものものでなく、1種のみ、又は2種以上を併用しても良い。
【0024】
(A4)分散助剤
分散助剤としては、アニオン性界面活性剤を前記水溶性顔料分散剤の分散能補助として用いることにより、分散効率向上、顔料粒子の微細化、保存中の分離や増粘等の経時安定性が得られる。
分散助剤としてのアニオン性界面活性剤は、アニオン性界面活性剤であれば何れのものを用いることができるが、好ましくは、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩又はポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩のHLBが10〜16のものが堅牢性に与える影響が少なく、長期安定性に優れた顔料分散体を得ることができる。
【0025】
(A5)ミル機による湿式分散
本発明の顔料分散体は、上記(A1)顔料、(A2)水溶性顔料分散剤、(A3)親水性溶媒、及び必要に応じて(A4)分散助剤を混合し、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズなどと共にミル機を用いて湿式分散することで本発明の平均粒子径が200nm以下且つ最大粒子径が500nm以下の顔料分散体が得られる。
顔料と水溶性顔料分散剤との配合割合(重量)は、顔料1.0に対して水溶性顔料分散剤が0.1〜2.0の範囲が好ましく、水溶性顔料分散剤が0.1より少ないと分散粘度が高くなり、2.0より多いと経時粘度安定性が悪くなる。
水溶性顔料分散剤の配合量は、顔料の表面積1m あたり5〜40mgが好ましく、5以下であれば分散粘度が高くなり、40より多いと経時粘度安定性が悪くなる。
分散助剤を用いる場合の配合割合(重量)は、顔料1.0に対して分散助剤が0.3以下とするのが好ましい。分散助剤が0.3より多いと耐水性の低下が起こるので好ましくない。
【0026】
(B)水溶性固着剤
本発明の水溶性固着剤は、(A2)水溶性顔料分散剤と共に(C)架橋剤により架橋反応し、繊維上に固着するためのものである。又、必要に応じて固着能補助として(B1)ホットメルト性樹脂を用いることもできる。
本発明の水溶性固着剤は、架橋剤との架橋反応する架橋性官能基を有することが必須であり、架橋性官能基として、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、アミド基などの親水性を伴う水溶性ウレタン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性アクリル樹脂、変性PVAなどを用いることができる。中でも、酸価が20〜90mgKOH/g且つ水酸基価が20〜70mgKOH/gの範囲である水溶性ウレタン樹脂が好適に用いることができ、より好ましくは、酸価が50〜70mgKOH/g且つ水酸基価が30〜60mgKOH/gの範囲とするのが良い。この酸価と水酸基価の範囲を外れた水溶性ウレタン樹脂は水溶性とはならない、耐水堅牢性が得られない等の問題が生じるため好ましくない。
水溶性固着剤は、酸性を呈するカルボキシル基やスルホン酸基を塩基性物質により中和することで水溶性になる。
塩基性物質としては、塩基性物質であれば限定するものでなくアンモニア、塩基性金属塩、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物、第三級アミン化合物など用いることが出来るが、中でも再溶解性からして塩基性金属塩、第二級又は第三級アミン化合物による中和を行うことが好ましい。
本発明の水溶性固着剤は、顔料を繊維上に固着するためのものであるが、配合量が多いと堅牢性は向上するが繊維の風合いが硬くなる、従って、本発明のインクジェット捺染用インク100部に対し20部以下が好ましく、より好ましくは10部以下、更に好ましくは5部以下とするのが良い。
又、繊維の風合いを柔軟なものとするため、水溶性固着剤のガラス転移点(Tg)は、−60〜20℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは−40〜0℃の範囲のものを用いるのが好ましく、更に好ましくは、−30℃〜−10℃の範囲のものである。
【0027】
(B−1)ホットメルト性樹脂
本発明のホットメルト性樹脂は、固着能補助として水溶性固着剤と併用して用いるものであり、最大粒子径が500nm以下でなければならない。
又、ホットメルト性樹脂は、常温乾燥では成膜せず、融点以上の熱により成膜し固着剤として機能するものである。従って、インクジェット印刷中にノズルの目詰まり等の問題を起こすことがない。
ホットメルト性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などを乳化重合、懸濁重合、パール重合、強制乳化法などの操作で作成したものを用いることができる。又、これらの樹脂を有機金属塩などでアイオノマー型としたものも用いることができる。
ホットメルト性樹脂の配合量が多いと堅牢性は向上するが繊維の風合いが硬くなる、従って、インクジェット捺染用インク100部に対し10部以下が好ましく、より好ましくは5部以下、更に好ましくは2部以下とするのが良い。
【0028】
(C)架橋剤
架橋剤は、水溶性顔料分散剤及び水溶性固着剤の架橋性官能基と100℃以上の加熱により反応性を有する基を2つ以上持つものであり、繊維上で加熱により水溶性顔料分散剤及び水溶性固着剤を架橋し固着するものであり、さらには架橋剤自体が縮合して繊維上に固着するものがより好ましい。
架橋剤としては、ブロック化イソシアネート系化合物、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド化合物などが挙げられるが、中でも、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、H6XDI(水添キシリレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、又はH12MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)のTMPアダクト体又はイソシアヌレート体をブロック剤によりブロックしたブロック化イソシアネート系化合物が好ましく、ブロック剤は、その解離温度から、DEM(マロン酸ジエチル)、DIPA(ジイソプロピルアミン)、TRIA(1,2,4−トリアゾール)、DMP(3,5−ジメチルピラゾール)、MEKO(ブタノンオキシム)が好適に用いることが出来る。 尚、これ等のブロック化イソシアネート系化合物は、そのイソシアネート基の一部をポリオール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルなどと反応させたオリゴマーとして用いることもできる。
又、架橋剤は、親水基を付与することで、水溶性や自己乳化性があるものとしてインクジェット捺染用インクに配合するのが好ましい。この状態であれば、配合したインク粘度を低粘度とすることができ、再分散性に優れたものとすることができる。
本発明のインクジェット捺染用インクへの配合量としては、反応する水溶性顔料分散剤及び水溶性固着剤の架橋性官能基の数に見合う量を配合する必要があり、インクジェット捺染用インク100部に対し、20部以下が好ましく、より好ましくは10部以下、更に好ましくは5部以下が良い。配合量が多いと繊維の風合いが堅くなり、少なければ堅牢性が悪くなる。
【0029】
2.インクジェット捺染用インクの調整
本発明のインクジェット捺染用インクは、上記(A)顔料、水溶性顔料分散剤及び親水性溶媒からなる平均粒子径が200nm以下且つ最大粒子径が500nm以下の顔料分散体、(B)水溶性固着剤及び(C)架橋剤を含み、再分散性に優れたものである。
本発明での再分散性とは、常温で3日間或いは40℃で1時間の条件により、インク中の揮発成分(その多くは水分)を揮発させ、残った不揮発分に水、アルカリ水、又はインクを加えた際に、解れて再分散し凝集物を生じないことをいう。
インクジェット捺染用インクの調整は、顔料固形分を2〜30%とした顔料分散体に、水溶性固着剤、架橋剤、及び親水性溶媒を配合して得られる。
親水性溶媒としては、主として水を用いるが、湿潤剤としてのグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール溶剤、また表面張力調製、溶解性調整、乾燥速度調整としてのエチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなどの親水性溶剤を用いることができる。
又、インクジェット捺染用インクには、上記以外の成分として、増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、ワックス、消泡剤、沈降防止剤、可塑剤、架橋触媒、キレート剤等を配合することができる。
これ等の成分を配合したインクジェット捺染用インクは、親水性溶媒の種類や量により、粘度を20℃において3〜15mPa・s、表面張力を27〜38mN/mの範囲に調製することで、インクジェット印刷により適したインクとすることができる。
又、フィルター又は遠心分離により、500nm以上の粗大顔料粒子を濾別、分離することで、インクジェット印刷により適したインクとすることができる。
【0030】
3.インクジェット捺染方法
本発明のインクジェット捺染方法は、インクジェット捺染用インクをインクジェット印刷機でインクジェット方式により、繊維に画像を形成することで印捺し、印捺後に繊維を100℃以上の加熱処理を行い、繊維上に固着する捺染方法である。
加熱処理の加熱温度、時間は、繊維の耐熱性に鑑みて行われるが、十分な架橋を行うため架橋剤の反応温度以上が必要である。通常の加熱処理では、100〜220℃、1〜20分、好適には100〜150℃、3〜10分、更に好ましくは120〜150℃、3〜5分である。
インキジェット用印刷機は、特に限定されるものではないが、ピエゾ型のノズルヘッドを搭載した印刷機が好ましい。サーマル型の場合は、インク中の架橋剤が長時間使用した場合に熱解裂して、重合反応が進行する可能性がある。ピエゾ型では、このような問題はなく、長時間安定的に吐出することができる。
このような印刷機としては、EPSON PX−V700、EPSON PM−40000PX、ミマキ社TX−1600S、FUJIFILM DMP−2831、MASTERMIND MMP8130などが挙げられるが、必ずしも、これ等に限定されるものでなく、ピエゾ型インキジェット印刷機であれば、何れのものも使用することができる。
インクジェット方式により印捺する前に、予め繊維をカチオン化化合物により前処理しておくことで、インクジェット捺染用インクの滲みや浸透を防止し、高濃度の印捺をすることができ、又、インクとカチオン化化合物との間でのイオンコンプレックスによる堅牢性の向上がもたらされる。カチオン化化合物としては、カチオン性化合物であれば特に限定されるものでないが、堅牢性の向上からしてカチオン性のウレタン樹脂エマルジョン又はアクリル樹脂エマルジョンが好ましい。又、よりイオン性をつけるためにポリアミドエピクロロヒドリン又は分子末端に第4級アンモニウム塩を有するビニル樹脂などと共に用いることもできる。又、カチオン化化合物に加えて、架橋剤を前処理することで、より堅牢性のよい印刷ができる。その他にも、架橋触媒、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、消泡剤、親水性溶剤、乾燥防止剤、シリカ、アルミナ等を配合して前処理することができる。前処理方法としては、パディング法、コーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法又はインクジェット法がある。
本発明のインクジェット捺染方法により印捺された繊維に、後処理剤により後処理することで、風合い向上、堅牢性向上、スベリ性向上、帯電防止、変色防止等の効果がもたらされる。後処理剤としては、アクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、架橋剤、シリコンオイル、可塑剤等が挙げられ、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、乾燥防止剤等を配合することができる。後処理方法としては、パディング法、コーティング法、スクリーン印刷法又はスプレー法があり、インクジェット法により処理することもできる。
【0031】
4.繊維
本発明のインクジェット捺染用インクを用いた捺染方法により印捺される繊維は、合成繊維、半合成繊維、天然繊維及び無機繊維に至るあらゆる布帛に捺染することができる。 又、これらの混紡繊維にも適用でき、編み物や織物、不織布、起毛布等の繊維形態も問わずに捺染可能であり、生地、製品等の形状を問わずに捺染できる。
具体的な繊維種としては、ナイロン、ポリエステル、アクリル、乳酸繊維、アセテート、レーヨン、綿、絹、毛、麻、硝子繊維等が挙げられる。
印捺された繊維を用いた衣料品としては、シャツ、トレーナー、ジャージ、パンツ、ワンピース、ブラウス、靴下、靴、ハンカチ等が挙げられ、衣料品以外では、寝具、シーツ、カーテン、カーシート、車内装、バック、旗等が挙げられる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のインクジェット捺染インクは、従来のインクジェット印刷の無製版で印刷するがゆえの利点である小ロット、多品種、短納期で製版代を必要とせず、極めて効率的な印刷を行うことができる点に加え、水溶性顔料分散剤を印刷後に、架橋剤とで架橋させて顔料固着剤として利用することで、印刷時には吐出安定性に優れ、印刷後には顔料を強固に固着できるという、今までにない合理的な手段を採用することにより、インクの長期保存性や連続印刷特性に問題が無く、風合い、堅牢性に優れた高品質の着色繊維製品の製造を可能にしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これ等に限定されるものでない。尚、実施例等に言う「部」は特に断らない限り「重量部」を意味する。
【0034】
(実施例1)
<水溶性顔料分散剤1>
1リットルガラス製フラスコに攪拌装置、温度計、滴下漏斗の3つをセットし、水442部、アクアロンKH−10(反応性界面活性剤:第一工業製薬(株)製)15部を入れ、攪拌を行いながら窒素置換し60℃に昇温する。一つ目の滴下漏斗からブチルアクリレート100部、エチルアクリレート20部、2−エチルヘキシルアクリレート30部、メタクリル酸150部、チオカルコール20(連鎖移動剤:(株)花王製)21部、二つ目の滴下漏斗から過硫酸アンモニウム3部と蒸留水108部の水溶液、及び三つ目の滴下漏斗から亜硫酸水素ナトリウム3部と蒸留水108部の水溶液を3つ同時に4時間かけて滴下する。滴下終了後、60℃で1時間反応を続けた。その後、反応合成物を20℃まで自然冷却した後、金網等で濾過し、固形分34%のエマルジョン重合体を得た。得られたエマルジョン重合体にトリエチルアミンを加え、PH8.2、分子量が8,000の水溶性顔料分散剤1を得た。
【0035】
<顔料分散体1>
顔料20部、「水溶性顔料分散剤1」6.5部、水50部、エチレングリコール20部、尿素3部、SNディフォーマー777(消泡剤:サンノプコ(株)製)0.5部を混合し、0.3mmのジルコニアビーズと共にミル機にかけ1時間分散を行った。その後、ジルコニアビーズを取り除き、0.5μmのメンブランフィルターでろ過した。
尚、顔料は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックに対応するもので、それぞれC.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントイエロー17、カーボンブラックを用い、それぞれ顔料分散体1―C、1−M、1−Y、1−Kとする。
顔料分散体1の各色について、粒度分布計(マイクロトラック UPA−EX150:日機装((株)製)を用いて測定したところ、その全てにおいて、平均粒子径が200nm以下であり、最大粒子径が500nm以上の粗大粒子も測定されなかった。
又、得られた顔料分散体1の各色について、60℃で1週間の経時安定性を確認したが、何ら粘度、粒子径に変化はなく安定なものであった。
【0036】
<インクジェット捺染用インク1>
「顔料分散体1」20部、グリセリン18部、エクセパールRS−2117(水溶性固着剤:変性PVA:(株)クラレ製)5部、水43部、フィクサーN(ブロック化イソシアネート系化合物:(株)松井色素化学工業所製)9部、SNディフォーマー777 0.5部、エマルゲンA−60(非イオン界面活性剤:(株)花王製)0.5部を攪拌混合し、水又はエチレングリコール4部を加えて、粘度が20℃において6mPa・s、表面張力が31mN/mになるよう調整し、インクジェット捺染用インク1を得た。
顔料分散体1の各色を用いたインクジェット捺染用インク1は、それぞれインクジェット捺染用インク1−C、1−M、1−Y、1−Kとする。
【0037】
<乾燥再分散性試験>
インクジェット捺染用インク1の各色C、M、Y、Kをシャーレ上に5gとり、室温で3日放置後、アルカリ水を垂らして乾燥再分散性試験を行った。インクは完全に解き離れ、凝集物もなかった。
【0038】
<印捺評価試験>
インクジェット捺染用インク1の各色C、M、Y、Kを、脱気パックした後に、(株)マスターマインド社製インクジェット印刷試験機MMP813BTに充填した。各々のインクを綿ブロード布、ポリエステルポンジ布、T/Cブロード布に印捺後、60℃、10分間乾燥させ、150℃、3分間の加熱処理を行った。印捺物を目視した結果いずれも良好な品質であった。
【0039】
<印捺安定性試験>
インクジェット捺染用インク1の各色C、M、Y、Kを脱気パックした後に、(株)マスターマインド社製インクジェット印刷試験機MMP813BTに充填し、綿ブロード布に10分間連続して印捺した。ドット抜け、吐出曲がりのためのよれ、インクの飛び散りはなく、良好な印奈安定性を示した。その後、停止させ、温度40℃の環境下で1週間放置後、ヘッドクリーニングを行い、放置前と同等の品質が得られるかを試験した。全てのインクについて完全に復帰し、吐出安定性も良好な特性を示した。
【0040】
<洗濯堅牢性試験>
インクジェット捺染用インク1の各色C、M、Y、Kを脱気パックした後に、(株)マスターマインド社製インクジェット印刷試験機MMP813BTに充填し、綿ブロード布、ポリエステルポンジ布、T/Cブロード布に印捺し、60℃、10分間乾燥させ、150℃、3分間の加熱処理を行った。その後、各々の印捺物を洗濯堅牢性試験JIS L−0217 103法×5回を行った。綿ブロード布、T/Cブロード布が4級、ポリエステルポンジ布が3−4級と良好な耐洗濯堅牢性を示した。
【0041】
(実施例2)
<水溶性顔料分散剤2>
実施例1のモノマー種をブチルアクリレート140部、エチルアクリレート20部、2−エチルヘキシルアクリレート30部、メタクリル酸80部、アクリル酸10部、ヒドロキシエチルアクリレート20部とした以外は、水溶性顔料分散剤1と同一の操作によって、PH8.2、分子量が7,000の水溶性顔料分散剤2を得た。
【0042】
<顔料分散体2>
顔料20部、「水溶性顔料分散剤2」8部、水48.5部、ジエチレングリコール20部、尿素3部、SNディフォーマー777 0.5部を混合し、0.3mmのジルコニアビーズと共にミル機にかけ、1時間分散を行った。その後、ジルコニアビーズを取り除き、0.5μmのメンブランフィルターでろ過した。顔料は、実施例1の顔料分散体1と同一のものを用いて、それぞれ顔料分散体2−C、2−M、2−Y、2−Kとする。
顔料分散体2の各色についても、平均粒子径が200nm以下であり、最大粒子径が500nm以上の粗大粒子も測定されなかった。
又、得られた顔料分散体2の各色について、60℃で1週間の経時安定性を確認したが、何ら粘度、粒子径に変化はなく安定なものであった。
【0043】
<インクジェット捺染用インク2>
「顔料分散体2」20部、グリセリン18部、WS−101(水溶性固着剤:水溶性ウレタン樹脂:日本ポリウレタン工業(株)製)20部、水28部、フィクサーN 9部、SNディフォーマー777 0.5部、エマルゲンA−60 0.5部を攪拌混合し、水又はプロピレングリコール4部を加えて、粘度が20℃において、4mPa・s、表面張力が31mN/mになるよう調整し、インクジェット捺染用インク2を得た。
顔料分散体2の各色を用いたインクジェット捺染用インク2は、それぞれインクジェット捺染用インク2−C、2−M、2−Y、2−Kとする。
【0044】
<乾燥再分散性試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク2の各色2−C、2−M、2−Y、2−Kの乾燥再分散性試験を行った。インクは完全に解き離れ、凝集物もなかった。
【0045】
<印捺評価試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク2の印捺評価試験を行った。印捺物を目視した結果いずれも良好な品質であった。
【0046】
<印捺安定性試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク2の印捺安定性試験を行った。良好な印捺安定性を示し、吐出安定性も良好な特性を示した。
【0047】
<洗濯堅牢性試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク2の洗濯堅牢性試験を行った。綿ブロード布、T/Cブロード布が3−4級、ポリエステルポンジ布が3級と良好な耐洗濯堅牢性を示した。
【0048】
(実施例3)
<インクジェット捺染用インク3>
実施例1の「顔料分散体1」20部、グリセリン18部、WS−101AV1(水溶性固着剤:水溶性ウレタン樹脂:日本ポリウレタン工業(株)製)15部、水33部、フィクサーN 9部、SNディフォーマー777 0.5部、エマルゲンA−60 0.5部を攪拌混合し、水又はプロピレングリコール4部を加えて、粘度が20℃において、4mPa・s、表面張力が33mN/mになるよう調整し、インクジェット捺染用インク3を得た。
顔料分散体1の各色を用いたインクジェット捺染用インク3は、それぞれインクジェット捺染用インク3−C、3−M、3−Y、3−Kとする。
【0049】
<乾燥再分散性試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク3の各色3−C、3−M、3−Y、3−Kの乾燥再分散性試験を行った。インクは、完全に解き離れ、凝集物もなかった。
【0050】
<印捺評価試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク3の印捺評価試験を行った。印捺物を目視した結果、いずれも良好な品質であった。
【0051】
<印捺安定性試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク3の印捺安定性試験を行った。良好な印捺安定性を示し、吐出安定性も良好な特性を示した。
【0052】
<洗濯堅牢性試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク3の洗濯堅牢性試験を行った。綿ブロード布、T/Cブロード布が4級、ポリエステルポンジ布が、3−4級と良好な耐洗濯堅牢性を示した。
【0053】
(実施例4)
<顔料分散体3>
顔料20部、実施例2の「水溶性顔料分散剤2」6.5部、ハイテノールNF13(分散助剤:アニオン性界面活性剤:第一工業製薬(株))8部、水42部、ジエチレングリコール20部、尿素3部、SNディフォーマー777 0.5部を混合し、0.3mmのジルコニアビーズと共にミル機にかけ1時間分散を行った。その後、ジルコニアビーズを取り除き、0.5μmのメンブランフィルターでろ過した。顔料は、顔料分散体1と同一のものを用いて、それぞれ顔料分散体3―C、3−M、3−Y、3−Kとする。
顔料分散体3の各色についても、平均粒子径が200nm以下であり、最大粒子径が500nm以上の粗大粒子も測定されなかった。
又、得られた顔料分散体3の各色について、60℃で1週間の経時安定性を確認したが、何ら粘度、粒子径に変化はなく安定なものであった。
【0054】
<インクジェット捺染用インク4>
「顔料分散体3」20部、グリセリン18部、WS−105(水溶性固着剤:水溶性ウレタン樹脂:日本ポリウレタン工業(株)製)20部、水28部、AQB−102(ブロック化イソシアネート系化合物:日本ポリウレタン工業(株)製)9部、SNディフォーマー777 0.5部、エマルゲンA−60 0.5部を攪拌混合し、水又はプロピレングリコール4部を加えて、粘度が20℃において、4mPa・s、表面張力が33mN/mになるよう調整し、インクジェット捺染用インク4を得た。
顔料分散体3の各色を用いたインクジェット捺染用インク4は、それぞれインクジェット捺染用インク4−C、4−M、4−Y、4−Kとする。
【0055】
<乾燥再分散性試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク4の各色4−C、4−M、4−Y、4−Kの乾燥再分散性試験を行った。インクは完全に解き離れ、凝集物もなかった。
【0056】
<印捺評価試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク4の印捺評価試験を行った。印捺物を目視した結果いずれも良好な品質であった。
【0057】
<印捺安定性試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク4の印捺安定性試験を行った。良好な印捺安定性を示し、吐出安定性も良好な特性を示した。
【0058】
<洗濯堅牢性試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク4の洗濯堅牢性試験を行った。綿ブロード布、T/Cブロード布が3−4級、ポリエステルポンジ布が3級と良好な耐洗濯堅牢性を示した。
【0059】
(実施例5)
<インクジェット捺染用インク5>
実施例4の「顔料分散体3」20部、グリセリン18部、WS−101AV1 15部、ケミパールS−120(固着助剤:ホットメルト性樹脂:三井化学(株)製)5部、水28部、AQB−102 9部、SNディフォーマー777 0.5部、エマルゲンA−60 0.5部を攪拌混合し、水又はプロピレングリコール4部を加えて、粘度が20℃において、4mPa・s、表面張力が33mN/mになるよう調整し、インクジェット捺染用インク5を得た。
顔料分散体3の各色を用いたインクジェット捺染用インク5は、それぞれインクジェット捺染用インク5−C、5−M、5−Y、5−Kとする。
【0060】
<乾燥再分散性試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク5の各色5−C、5−M、5−Y、5−Kの乾燥再分散性試験を行った。インクは、完全に解き離れ、凝集物もなかった。
【0061】
<印捺評価試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク5の印捺評価試験を行った。印捺物を目視した結果、いずれも良好な品質であった。
【0062】
<印捺安定性試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク5の印捺安定性試験を行った。良好な印捺安定性を示し、吐出安定性も良好な特性を示した。
【0063】
<洗濯堅牢性試験>
実施例1と同様に、インクジェット捺染用インク5の洗濯堅牢性試験を行った。綿ブロード布、T/Cブロード布が3−4級、ポリエステルポンジ布が、3級と良好な耐洗濯堅牢性を示した。
【0064】
(実施例6)
<前処理>
予め、綿ブロード布をサフトマーST−3300(カチオン性アクリル樹脂:三菱化学(株)製)15部、水71部、エチレングリコール10部、エマルゲンA−60(非イオン性界面活性剤:(株)花王製)1部、フィクサーN 3部からなる前処理剤を絞り率60%でパディングした後、60℃、10分間乾燥した。
得られた前処理布に対して、実施例1〜5のインクジェット捺染用インクを用いて<印捺評価試験>に従って評価したところ、非前処理布に比べて高発色でシャープな印捺品質であった。又、<洗濯堅牢性試験>に従って洗濯堅牢性を評価したところ、非前処理布に比べて半級程度堅牢性が向上した。
【0065】
(実施例7)
<後処理>
実施例1〜5の印捺物に対して、フィクサーN(ブロックイソシアネート化合物:(株)松井色素化学工業所製)10部、ファスターXA(アクリル樹脂エマルジョン:(株)松井色素化学工業所製)3部、アブレ−ションXF(シリコーン系柔軟剤:(株)松井色素化学工業所製)5部、水82部からなる後処理剤を絞り率65%でパディング処理した後、60℃、10分間乾燥し、150℃、3分間の熱処理を行った。得られた後処理布に対して<洗濯堅牢性試験>に従って評価したところ、後処理していない印捺布に比べて半級程度洗濯堅牢性が向上した。
【0066】
(比較例1)
<水溶性顔料分散剤H1>
モノマー種を、ブチルアクリレート130部、エチルアクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート100部、メタクリル酸20部、アクリル酸20部とした以外は、水溶性顔料分散剤1と同一の操作によって固形分34%のエマルジョン重合体を得た。得られたエマルジョン重合体に、トリエチルアミンを加えPH9.2にしても、水溶性とはならず、白濁した状態であり、本発明で求める水溶性顔料分散剤とはならなかった。
【0067】
(比較例2)
<水溶性顔料分散剤H2>
モノマー種を、ブチルアクリレート50部、メタクリル酸250部とした以外は、実施例1の水溶性顔料分散剤1と同一の操作によって、PH8.1、分子量が7,500の水溶性顔料分散剤H2を得た。
【0068】
<顔料分散体H1>
実施例1の「水溶性顔料分散剤1」を「水溶性顔料分散剤H2」とした以外は、実施例1の「顔料分散体1」と同一の操作で分散を行ったが、得られた顔料分散体は高粘度であり、本発明で求める顔料分散体としては使えないものであった。又、60℃で1週間の経時安定性についても徐々に粘度が上昇し、粗大粒子が測定された。
【0069】
(比較例3)
<水溶性顔料分散剤H3>
モノマー種を、ブチルアクリレート100部、エチルアクリレート10部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、メタクリル酸100部、アクリル酸10部、スチレン70部とした以外は、実施例1の水溶性顔料分散剤1と同一の操作によって、PH8.3、分子量が8,100の水溶性顔料分散剤H3を得た。
【0070】
<顔料分散体H2>
実施例1の「水溶性顔料分散剤1」を「水溶性顔料分散剤H3」とした以外は、実施例1の「顔料分散体1」と同一の操作で分散を行ったが、得られた顔料分散体は、高粘度であり、本発明で求める顔料分散体としては使えないものであった。又、60℃で1週間の経時安定性についても徐々に粘度が上昇し、粗大粒子が測定された。
【0071】
(比較例4)
<顔料分散体H3>
顔料20部、エマルゲン108(非イオン性界面活性剤:花王(株)製)7部、水49.5部、エチレングリコール20部、尿素3部、SNディフォーマー777(消泡剤:サンノプコ(株)製)0.5部を混合し、0.3mmのジルコニアビーズと共にミル機にかけ1時間分散を行った。その後、ジルコニアビーズを取り除き、0.5μmのメンブランフィルターでろ過した。
【0072】
<インクジェット捺染用インクH1>
実施例1の「顔料分散体1」を「顔料分散体H3」とした以外は、実施例1の「インクジェット捺染用インク1」と同一の操作でインクジェット捺染用インクH1を得た。
インクジェット捺染用インクH1について、<洗濯堅牢性試験>に従って洗濯堅牢性を評価したところ、綿ブロード布、T/Cブロード布が2級、ポリエステルポンジ布が1−2級であり、洗濯堅牢性に劣るものであった。
【0073】
(比較例5)
<インクジェット捺染用インクH2>
実施例2の「インクジェット捺染用インク2」のWS−101を、リカボンド491(アクリル樹脂エマルジョン:中央理化(株)製)とした以外は、同一の操作でインクジェット捺染用インクH2を得た。
インクジェット捺染用インクH2について、<乾燥再分散性試験>に従って評価したところ、インクが被膜化してしまい、分散性はないものであった。
又、<印捺安定性試験>に従って評価したところ、乾燥によるドット抜け、スジが見られ印捺安定性が不良であった。又、温度40℃での1週間放置後では、ヘッドクリーニングを行っても復帰できず吐出安定性も不良であった。
【0074】
(比較例6)
<インクジェット捺染用インクH3>
実施例1の「インクジェット捺染用インク1」のフィクサーNを水とした以外は、同一の操作でインクジェット捺染用インクH3を得た。
インクジェット捺染用インクH3について、<洗濯堅牢性試験>に従って評価したところ、綿ブロード布、T/Cブロード布が1−2級、ポリエステルポンジ布が1級であり、極めて洗濯堅牢性に劣るものであった。
【0075】
(比較例7)
<顔料分散体H4>
実施例1の「顔料分散体1」の0.3mmのジルコニアビーズを0.6mmのガラスビーズに変え、ミル機で1時間分散を行った。その後、ガラスビーズを取り除き、フィルターろ過を行わなかった。
顔料分散体H4の各色について、粒度分布計を用いて測定したところ、その全てにおいて、平均粒子径が200nm以上であり、最大粒子径が500nm以上の粗大粒子が測定された。
【0076】
<インクジェット捺染用インクH4>
実施例1の「インクジェット捺染用インク1」の顔料分散体1を顔料分散体H4とした以外は、同一の操作でインクジェット捺染用インクH4を得た。
<印捺評価試験>に従って試験したところ、色の鮮明性に欠け、又、目詰まりによるドット抜け、スジが見られ、印捺不良であった。
上記の実施例及び比較例の結果から、本発明の(A)水溶性顔料分散剤、(B)水溶性固着剤、及び(C)架橋剤の各規定には格別の意義があることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
インクジェット捺染用インクは、特定の水溶性顔料分散剤を用いた顔料分散体、特定の水溶性固着剤及び特定の架橋剤を必須成分とすることで、印刷後の加熱で水溶性顔料分散剤と架橋剤の反応、水溶性固着剤の架橋性官能基と架橋剤の反応、架橋剤自身の縮合化反応による相乗的効果がもたらされる点において、産業上の利用可能性が極めて高い。
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)顔料、水溶性顔料分散剤及び親水性溶媒からなる平均粒子径が200nm以下且つ最大粒子径が500nm以下の顔料分散体、(B)水溶性固着剤、及び(C)架橋剤からなるインク組成物において、前記(A)の水溶性顔料分散剤が、(1)CH=CR−COOR(Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数2〜8のアルキル基を表す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体20〜80部、(2)カルボキシル基を有する脂肪族ビニル単量体80〜20部、並びに(3)非カルボキシル基系の架橋性官能基を有する脂肪族ビニル単量体0〜20部からなる分子量2,000〜20,000のエマルジョン重合体を塩基性物質により中和したものであり、前記(B)の水溶性固着剤が架橋性官能基を有するものであり、及び前記(C)の架橋剤が、前記(A)の水溶性顔料分散剤の架橋性官能基及び前記(B)の水溶性固着剤の架橋性官能基と100℃以上の温度で架橋反応する官能基を持つもので構成されていることを特徴とする、繊維上で加熱により架橋し固着する特性を有するインクジェット捺染用インク。
【請求項2】
(A)の水溶性顔料分散剤に用いるエマルジョン重合体が、反応性界面活性剤の存在下で重合されたものである請求項1記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項3】
(A)の水溶性顔料分散剤の(2)のカルボキシル基を有する脂肪族ビニル単量体が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項4】
(A)の水溶性顔料分散剤を構成する分子量2,000〜20,000のエマルジョン重合体を中和する塩基性物質として、第二級アミン又は第三級アミンを用いる請求項1、2又は3記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項5】
(A)の水溶性顔料分散剤の配合量が、顔料の表面積1m 当たり5〜40mgである請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項6】
(A)の水溶性顔料分散剤の分散能補助として、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩又はポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を用いる請求項1〜5の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項7】
(A)の顔料と水溶性顔料分散体の配合量が、顔料1に対して水溶性顔料分散体0.1〜2.0である請求項1〜6の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項8】
(B)の水溶性固着剤が、水溶性ウレタン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性アクリル樹脂及び変性ポリビニルアルコール(PVA)から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項9】
(B)の水溶性固着剤のガラス転移点(Tg)が、−60〜20℃の範囲である請求項8記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項10】
(B)の水溶性固着剤の水溶性ウレタン樹脂が、架橋性官能基及び親水性基を兼ねるカルボン酸基及びヒドロキシル基を有し、酸価が20〜90mgKOH/g且つ水酸基価が20〜70mgKOH/gである請求項8記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項11】
(B)の水溶性固着剤の固着能補助として、最大粒子径が、500nm以下のホットメルト性樹脂を用いる請求項1〜10の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項12】
(C)の架橋剤として、水溶性又は自己乳化性のものを用いることにより、再分散性に優れた特性を有するものとした請求項1〜11の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項13】
(C)の架橋剤が、イソシアネートとして、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、H6XDI(水添キシリレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)又はH12MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)のTMP(トリメチロールプロパン)アダクト体又はイソシアヌレート体をブロックしたブロック化イソシアネート系化合物である請求項1〜12の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項14】
(C)の架橋剤が、ブロック剤として、DEM(マロン酸ジエチル)、DIPA(ジイソプロピルアミン)、TRIA(1,2,4−トリアゾール)、DMP(3,5−ジメチルピラゾール)又はMEKO(2−ブタノンオキシム)でブロックされたブロック化イソシアネート系化合物である請求項13記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項15】
粘度が20℃において3〜15mPa・sの範囲である請求項1〜14の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項16】
表面張力が27〜38mN/mの範囲である請求項1〜15の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項17】
フィルター又は遠心分離により500nm以上の粗大顔料粒子を濾別、分離したものである請求項1〜16の何れかに記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項18】
請求項1〜17記載のインクジェット捺染用インクを用いてインクジェット方式により繊維に印捺し、繊維を100℃以上の加熱処理をするインクジェット捺染方法。
【請求項19】
繊維が、予めカチオン化化合物をパディング法、コーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法又はインクジェット法により前処理したものである請求項18記載のインクジェット捺染方法。
【請求項20】
繊維が、カチオン化化合物に加えて、ウレタン樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン又は架橋剤から選ばれる少なくとも1種と併せて前処理したものである請求項19記載のインクジェット捺染方法。
【請求項21】
請求項18〜20の何れかに記載のインクジェット捺染方法により捺染された繊維に、後処理剤をパディング法、コーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法又はインクジェット法により処理するインクジェット捺染方法。
【請求項22】
後処理剤が、アクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、シリコンオイル、可塑剤又は架橋剤から選ばれる少なくとも1種である請求項21記載のインクジェット捺染方法。
【請求項23】
請求項18〜22の何れかに記載のインクジェット捺染方法により捺染された繊維。







【公開番号】特開2012−251062(P2012−251062A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124036(P2011−124036)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(390039583)株式会社松井色素化学工業所 (13)
【Fターム(参考)】