インクジェット方式画像形成方法及びインクジェット方式画像形成装置
【課題】異なるタイミングで吐出されたインク滴によって形成された画素のサイズを均一にできるインクジェット方式画像形成方法を提供する。
【解決手段】第n回目に吐出されたインク滴の副滴sに、これに続いて第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mが重なった場合、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mが滲んでm2とM2(二点鎖線で示す領域)の合計のサイズ(広さ)をもつ画素が形成される。しかし、一つのノズルから第n回目に吐出されたインク滴の量よりも、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の量は少ない。従って、第n回目に吐出されたインク滴が形成する画素のサイズと同じサイズの画素が、第(n+1)回目に吐出されたインク滴によって形成される。
【解決手段】第n回目に吐出されたインク滴の副滴sに、これに続いて第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mが重なった場合、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mが滲んでm2とM2(二点鎖線で示す領域)の合計のサイズ(広さ)をもつ画素が形成される。しかし、一つのノズルから第n回目に吐出されたインク滴の量よりも、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の量は少ない。従って、第n回目に吐出されたインク滴が形成する画素のサイズと同じサイズの画素が、第(n+1)回目に吐出されたインク滴によって形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッド(印字ヘッド)に形成された複数のノズルからインクを吐出して記録媒体に着弾させることにより画像を形成するインクジェット方式画像形成方法及びインクジェット方式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドに形成された複数のノズルから記録媒体にインク(インク滴)を吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置(インクジェットプリンタ)が広く使用されている。ノズルからインク滴を吐出させる技術として、駆動パルスに応じた熱エネルギをノズル内のインクに供給して膜沸騰による気泡を形成させ、この気泡によってノズルからインク滴を吐出させる技術が知られている。形成する画像に応じた多数のインク滴がノズルから記録媒体に吐出されることにより画像が形成される。
【0003】
上記の技術を採用したインクジェットプリンタのなかには、画像記録速度(画像形成速度)を向上させるために、インク吐出口及びインク流路等からなる複数のノズルを集積したマルチノズルヘッドを記録媒体の搬送方向に多数配列させたラインヘッドを有し、記録媒体の搬送に合わせて複数のノズルのインク吐出口から同時にインクを吐出させるタイプのもの(ラインプリンタ)がある。
【0004】
画像形成装置には、一般に、高画像品位で高解像度の画像を高速で形成することが求められるが、上記のラインプリンタをはじめとするインクジェットプリンタを使用することによりこれらの要求を満足させることができる。また、インクジェットプリンタは、画像形成時(画像記録時)に記録ヘッドと記録媒体とが非接触であるので、非常に安定した画像記録を行うことができるという利点も有している。
【0005】
しかし、一方で、インクジェットプリンタの場合、流体であるインクを扱うので、流体力学的な種々の不都合が記録ヘッドで発生する。また、インクは液体であるので、環境温度や放置時間等によって粘性が随時変わっていく。このような粘性の変化は画像記録に大きな影響を及ぼす。また、ノズルから吐出するインク滴の特性として、ノズルから吐出した一つのインク滴が主滴と副滴(サテライト)に分離する(別れる)ことが知られている。主滴は副滴よりも先にノズルのインク吐出口から離れ、主滴に続いて副滴がインク吐出口から離れる。
【0006】
ところで、産業用のインクジェットプリンタとコンシューマープリンタ(家庭用のインクジェットプリンタ)とを比較した場合、産業用のインクジェットプリンタではコンシューマープリンタよりも、印刷速度(記録媒体の搬送速度)や印字デュティー(記録媒体の単位面積当たりに着弾したインク滴の数)が格段に増加している。記録媒体の搬送速度を速めた(例えば、約150m/分)場合、ノズルから吐出した一つのインク滴の主滴が記録媒体に着弾する位置(着弾位置)と、副滴が記録媒体に着弾する着弾位置とがずれることがある。このように、一つのインク滴を構成する主滴と副滴の着弾位置がずれた場合、一つのインク滴が別々の位置に着弾することとなるので画像品位が低下することがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−144570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように主滴と副滴の着弾位置がずれる場合、副滴の着弾位置が、次に吐出されるインク滴の主滴の着弾位置に着弾することがある。この場合、前に吐出されたインク滴の副滴と次に吐出されるインク滴の主滴とが重なることとなるので、次に吐出されるインク滴の主滴によって形成される画素は、前に吐出されたインク滴の主滴による画素よりも大きくなる。このように異なるタイミングで吐出されたインク滴によって形成された画素のサイズが相違することは画質低下の原因となる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、異なるタイミングで吐出されたインク滴によって形成された画素のサイズを均一にできるインクジェット方式画像形成方法及びインクジェット方式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のインクジェット方式画像形成方法は、記録ヘッドに形成されたノズルからインク滴を吐出して記録媒体に着弾させて画像を形成するインクジェット方式画像形成方法において、
(1)前記ノズルから吐出された一つのインク滴が記録媒体に着弾することにより形成される一つの画素のサイズ、及び前記一つの画素に連続して形成される次の一つの画素のサイズ双方が所定範囲内のサイズになるように、前記ノズルから連続してインク滴を吐出することを特徴とするものである。
【0010】
ここで、
(2)前記ノズルからインク滴を吐出させる際に、該ノズル内のインクを加熱し粘性を低下させてインク吐出効率を高めるために予備的に該インクを温める予備加熱時間T1、この予備加熱時間T1による熱を前記ノズル内のインクに拡散させる休止拡散時間T2、及び膜沸騰を生じさせてインク滴を吐出させるために前記インクを加熱する、休止拡散時間T2に続く発泡加熱時間T3の3段階に別けて前記ノズル中のインクを加熱してもよい。
【0011】
また、
(3)前記一つの画素のサイズ及び前記次の一つの画素のサイズ双方が前記所定範囲内のサイズになるように前記予備加熱時間T1及び前記休止拡散時間T2のいずれか一方又は双方を変更してもよい。
【0012】
さらに、
(4)前記一つの画素を形成するために前記ノズルから前記一つのインク滴を吐出するときの前記予備加熱時間T1よりも、前記次の一つの画素を形成するために前記ノズルから一つのインク滴を吐出するときの前記予備加熱時間T1を短くしてもよい。
【0013】
さらにまた、
(5)前記一つの画素を形成するために前記ノズルから前記一つのインク滴を吐出するときの前記休止拡散時間T2よりも、前記次の一つの画素を形成するために前記ノズルから一つのインク滴を吐出するときの前記休止拡散時間T2を短くしてもよい。
【0014】
さらにまた、
(6)前記ノズル内のインクの温度に基づいて、前記予備加熱時間T1又は前記休止拡散時間T2を変更してもよい。
【0015】
さらにまた、
(7)前記一つの画素を形成するインク滴の主滴のサイズよりも、前記次の一つの画素を形成するインク滴の主滴のサイズが小さくなるように、前記ノズルから連続してインク滴を吐出してもよい。
【0016】
さらにまた、
(8)前記記録ヘッドは、記録媒体が搬送される記録媒体搬送方向に直交する記録媒体幅方向に並んだ複数のノズルが形成されたものであり、
(9)前記複数のノズルごとに、それぞれのノズル内のインクの温度に基づいて、前記予備加熱時間T1又は前記休止拡散時間T2を変更してもよい。
【0017】
さらにまた、
(10)前記複数のノズルから同時にインク滴を吐出することにより前記記録媒体幅方向に並んだ複数の画素を形成してもよい。
【0018】
ここでいう画素とは、画像の最小単位をいう。また、画素領域とは、インクが着弾する前の画素に相当する領域をいう。さらに、ラスターとは、画素が横方向に(ここでは、搬送方向に直交する方向に)一列に並んだものをいう。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ノズルから吐出された一つのインク滴が記録媒体に着弾することにより形成される一つの画素のサイズ、及びこの一つの画素に連続して形成される次の一つの画素のサイズ双方が所定範囲内のサイズになるように、ノズルから連続してインク滴を吐出するので、異なるタイミングで吐出されたインク滴によって形成された画素のサイズを均一にでき、画質の低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置に実現された。
【実施例1】
【0021】
図1を参照して、本発明のインクジェット方式画像形成方法が採用されたプリンタの一例を説明する。
【0022】
図1は、本発明のインクジェット方式画像形成方法が採用されたプリンタの一例を模式的に示す正面図である。
【0023】
プリンタ10は、バーコードを含む画像を形成できるタイプのものであり、このプリンタ10に画像情報を送るホストPC(パソコン)12に接続されている。プリンタ10には、4つ(4本)の記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4が記録媒体(ここではロ−ル紙)Pの搬送方向(矢印A方向)に並んで配置されている。4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4からはそれぞれ黒のインクが吐出される。これら4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4は、所謂ラインヘッドであり、図1の紙面に直交する方向(矢印A方向に直交する方向)に延びている。これら4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4の長さは、プリンタ10で印字できる記録媒体のうち最大の幅(図1の紙面に直交する方向の長さ)よりもやや長い。また、これら4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4は、画像形成中は固定されて動かない(不動状態である)。
【0024】
4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4から安定してインクを吐出できるように、プリンタ10には回復ユニット40が組み込まれている。この回復ユニット40によって、記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4からのインク吐出状態は初期のインク吐出状態に回復する。回復ユニット40には、回復動作のときに4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4のインク吐出口形成面22K1S、22K2S、22K3S、22K4Sからインクを除去するキャッピング機構50が備えられている。キャッピング機構50は各記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4に独立して設けられており、図1の例では6色分け(即ち、6つのキャッピング機構50)が示されているが、このうち2色分は記録ヘッド追加時の予備的な機構である。キャッピング機構50は、周知のブレード、インク除去部材、ブレード保持部材、キャップ等から構成されている。
【0025】
ロ−ル紙Pはロール紙供給ユニット24から供給され、プリンタ10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロ−ル紙Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。
【0026】
ロ−ル紙Pに画像を形成する際には、搬送中のロ−ル紙Pの記録開始位置がブラックの記録ヘッド22K1の下に到達した後に、記録データ(画像情報)に基づいて記録ヘッド22K1からブラックインクを選択的に吐出する。同様に記録ヘッド22K2、記録ヘッド22K3、記録ヘッド22K4の順にインクを吐出してロ−ル紙Pに画像を形成する。プリンタ10には、上記の部品・部材の他、各記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4に供給されるインクを貯めておくメインタンク28Kや、記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4にインクを供給したり回復動作をしたりするための各種ポンプ(図示せず)などが備えられている。
【0027】
図2を参照して、プリンタ10の電気的な系統を説明する。
【0028】
図2は、図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。
【0029】
ホストPC12から送信された記録データ(画像データ)やコマンドはインターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、プリンタ10の記録データの受信、記録動作、ロ−ル紙Pのハンドリング等全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU100では、受信したコマンドを解析した後に、記録データの成分のうちイメージデータ126及びバーコードデータ125それぞれをビットマップ展開してラスター分割し、各記録ヘッドで描画するデータとして画像メモリ106に割り当てる。
【0030】
記録前の動作処理としては、出力ポート114、モータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4をキャッピング機構50(図1参照)から離して記録位置(画像形成位置)に移動させる。
【0031】
続いて、出力ポート114、モータ駆動部116を介してロ−ル紙Pを繰り出すロールモータ(図示せず)、及び低速度でロ−ル紙Pを搬送する搬送モータ120等を駆動してロ−ル紙Pを記録位置に搬送する。一定速度で搬送されるロ−ル紙Pにインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するための先端検知センサ(図示せず)でロ−ル紙Pの先端位置を検出する。その後、ロ−ル紙Pの搬送に同期して、CPU100は画像メモリ106から対応する記録ヘッドの記録データを順次に読み出し、この読み出したデータ(バーコードデータ125及びイメージデータ126)を、記録ヘッド制御回路112を経由して(介して)各記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4に転送する。
【0032】
CPU100の動作はプログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM108を使用する。各記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4のクリーニングや回復動作時に、CPU100は、出力ポート114、モータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動し、インクの加圧、吸引等の制御を行う。
【0033】
上記した4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4にはそれぞれ、搬送方向(図1の矢印A方向)に直交する記録媒体幅方向に並んだ複数のノズルが形成されている。これら複数のノズルから同時にインク滴を吐出することにより記録媒体幅方向に並んだ複数の画素を形成できる。各ノズルの構造は同じであるので、記録ヘッド22K1に形成された一つのノズル22K1nの構造について、図3を参照して説明する。
【0034】
図3は、ノズルとその周辺部を示す断面図である。図3には、1つのノズル22K1nを示すが、記録ヘッド22K1には多数のノズルが記録ヘッド長手方向(記録媒体幅方向)に一列に並んで形成されている。
【0035】
記録ヘッド22K1には、インクを吐出する多数のノズル22K1nが、図3の紙面の垂直方向に並んで形成されている。多数のノズル22K1nは、インクが貯められた共通液室150につながっている(連通している)。この共通液室150はサブタンク(図示せず)につながっており、サブタンクから共通液室150にインクが供給される。
【0036】
ノズル22K1nには、このノズル22K1n内のインク中で発泡させる発熱体152が配置されている。発熱体152を発熱させることによりノズル22K1n内のインク中で泡が発生し、ノズル22K1nの出口(インク吐出口154)からインクが押し出されて吐出される。発熱体152は、シリコン素子基板156上に周知の技術で形成されている。このシリコン素子基板156には、後述するメニスカスMの近傍においてインクの濡れ性を均一化させるためにシリコン天板158とノズルl160が形成されており、これらシリコン天板158とノズルl160はノズル22K1nの内壁に面している。シリコン天板158とノズルl160は樹脂で被覆されている。ノズルl160はノズル22K1nのインク吐出口154の近傍の内壁に形成されて、ノズル22K1nを狭めるものである。
【0037】
上記した共通液室150もシリコン素子基板156に形成されている。また、発熱体152による発泡時にエネルギーを効率良くインク吐出方向(矢印D方向)に向かわせる弁162や、シリコン天板158からノズル22K1n内部に向かって垂直方向に延びる流路壁164もシリコン素子基板156に形成されている。ノズルl160は、多数のノズル22K1n等を作製する場合においてシリコン天板158を切断するときに欠け(チッピング)を生じさせないためのものである。シリコン素子基板156のうち共通液室150に面する部分にはサブヒータ166が形成されており、このサブヒータ166は、記録ヘッド22K内のインクの温度を一定に保って粘性を安定させることによりインクの安定吐出範囲内で印字させることを目的としている。
【0038】
発熱体152は電気抵抗層及び配線をパタ−ンニングして形成されたものである。この配線を経由して電気抵抗層に電圧を印加して電流を流すことにより発熱体152が発熱する。この発熱によって発熱体152の周辺のインク中に泡を発生させ、インク吐出口154からインクを押し出して吐出させている。また、シリコン素子基板156と発熱体152に蓄積された熱の温度(蓄熱温度)を検知するためのDiセンサ(図示せず)がシリコン素子基板156に配置されており、このDiセンサが検知した検知温度に応じて記録ヘッド22K1の駆動条件が決定される。この駆動条件については後述する。
【0039】
上記したノズル22K1nから吐出された一つのインク滴が主滴と副滴に別れてロール紙Pに着弾する原理について、図4を参照して説明する。
【0040】
図4(a)は、発熱体を発熱させる前の待機状態を示す模式図であり、(b)は、発熱体が発熱してインク中に泡が発生すると同時にインク吐出口からインクが押し出された状態を示す模式図であり、(c)は、消泡すると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離した状態を示す模式図であり、(d)は、主滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図であり、(e)は、主滴に遅れて副滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図である。図4では、図3に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
【0041】
発熱体を発熱させる前の待機状態では、ノズル22K1n内のインクには水頭差に相当する負圧が作用しており、このため、(a)に示すように、インク吐出口154にはメニスカスMが形成されている。この待機状態のときに、ホストPC12(図1参照)から記録データがプリンタ10へ送られ、この記録データが記録ヘッド22K1にヒート信号として送られる。このヒート信号に基づいて発熱体152が発熱して、(b)に示すように、発熱体152の界面からインク中に泡Bが生じる(発泡する)と同時にインク吐出口154の近傍のインクがインク吐出口154から押し出される。
【0042】
続いて、発熱体152の発熱が終了すると共に、生じた泡Bは消滅し(消泡し)、同時に、(c)に示すように、メニスカスMはノズル22K1nの奥の位置まで後退する。一方、吐出されたインク滴Idは、主滴mと副滴(サテライト)sに分離する。サテライトsは、(c)に示すようなメニスカスMの後退の影響を受けて、インク吐出方向(矢印D方向)とは反対方向のベクトルの力(発熱体152上の泡の消泡と水頭差によって生じた負圧とによるベクトルの合成)を受けるので、主滴mよりも吐出速度が遅くなる。インク吐出口154からインク滴Idが吐出した後、後退したメニスカスMの位置は、ノズル22K1nの毛細管力(リフィル)によって、(d)に示すように待機状態まで復帰する。一方、吐出したインク滴Idの主滴mは、搬送中のロール紙P上に着弾する。
【0043】
主滴mがロール紙Pに着弾した後、サテライトsがこのロール紙Pに着弾するまでの間、ロール紙Pは矢印A方向(搬送方向)に搬送される(移動する)ので、(e)に示すように、ロール紙Pの主滴m(ロール紙Pに吸収されている)が着弾した位置よりも矢印A方向上流側に副滴sが着弾する。この結果、主滴mと副滴sでは、着弾位置にずれLが発生する。このずれLの距離(間隔)は、ロール紙Pの搬送速度が速くなるほど長くなる(大きくなる)。このように一つのインク滴の主滴mと副滴sの着弾位置(ロール紙P上の位置)がずれる場合、一つのノズル22K1nから吐出された一つのインク滴(第n回目に吐出されたインク滴)の副滴sの着弾位置と、一つのノズル22K1nから吐出された次の一つのインク滴(第(n+1)回目に吐出されたインク滴)の主滴mの着弾位置とが重なることがある。このように一つのインク滴の主滴mと次の一つのインク滴の副滴sが重なった場合、ロール紙Pに滲むインクの量が多くなるので、一つのインク滴の主滴mだけから形成される一つの画素のサイズ(大きさ)に比べて画素のサイズが大きくなる。画像を構成する複数の画素のサイズが異なる場合は画質が低下する。
【0044】
そこで、本発明では、ノズルから吐出された一つのインク滴(第n回目に吐出されたインク滴)が記録媒体に着弾することにより形成される一つの画素のサイズ、及びノズル(上記のノズルと同じ場合もあるし、異なるノズルの場合もある)から一つのインク滴に続いて吐出された次の一つのインク滴(第(n+1)回目に吐出されたインク滴)が記録媒体に着弾して形成される次の一つの画素のサイズ双方が所定範囲内のサイズになるように、ノズルから連続してインク滴を吐出するようにした。このようにインク滴を吐出してロール紙Pに着弾させて画像を形成する方法を説明する。先ず、発熱体152を発熱させてインク滴を吐出するタイミングについて、図5を参照して説明する。
【0045】
図5は、発熱体を発熱させるタイミングを示す説明図である。
【0046】
図4を参照して説明したように発熱体152を発熱させてインク吐出口154(図4等参照)からインク滴を吐出させるためには、予備加熱時間T1(図5のプレヒート信号PHがONで、メインヒート信号MHがOFFの時間)、休止拡散時間T2(プレヒート信号PH及びメインヒート信号MHともにOFFの時間)、発泡加熱時間T3(図5のメインヒート信号MHがONで、プレヒート信号PHがOFFの時間)からなる3つの段階を経る。図5のPHの右側に示す折れ線のうち高い部分(OFFで示す直線)は、発熱体152に通電されていないことを表し、折れ線のうち低い部分(ONで示す直線)は、予備加熱のために発熱体152に通電されていることを表している。また、図5のMHの右側に示す折れ線のうち高い部分(OFFで示す直線)は、発熱体152に通電されていないことを表し、折れ線のうち低い部分(ONで示す直線)は、発泡加熱のために発熱体152に通電されていることを表している。
【0047】
インク吐出口154(図4等参照)からインクを吐出するに際しては、プレヒート信号PHがONである時間(T1)内にノズル22Kn内のインクを温めることによりこのインクの粘度を低めてインク吐出効率を上げる。予備加熱時間T1が経過した後、休止拡散時間T2だけ発熱体152をOFFにする(発熱体152に通電しない)。休止拡散時間T2が経過した後、発泡加熱時間T3だけ発熱体152をONにする(発熱体152に通電する)。メインヒート信号MHがONである時間(T3)内に発熱体152(図3等参照)の表面で膜沸騰を起こさせてインクを吐出させる(図4の説明を参照)。
【0048】
プレヒート信号PHがONの時間帯とメインヒート信号MHがONの時間帯の間に時間差(休止拡散時間T2)が存在する理由は、プレヒート信号PHがONのときの加熱による熱をノズル内のインクに拡散させることにより、インク吐出の効率を高めているからである。本発明では、休止拡散時間T2(又は予備加熱時間T1)の長短によって、インク吐出口154(図4等参照)から吐出されるインク滴の量(容積)が変化することに着目して、このインク滴量を制御している。但し、休止拡散時間T2を極端に長くしてしまうと、外気温度の影響を受けてノズル内のインクの温度が低下してしまう。このため、本実施例では、休止拡散時間T2の時間の増減(長短)に伴って、ノズルから吐出された各インク滴による画素が所定範囲内のサイズになるように一つのインク滴の量が変動する範囲内で休止拡散時間T2を制御している。ここでいう所定範囲内のサイズとは、第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾することにより形成される一つの画素のサイズ、及び第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾して形成される次の一つの画素のサイズ双方が所定範囲内におさまるサイズをいう。また、一つのインク滴の量は、プリンタ10(図1等参照)で使用するインクの種類、プリンタ10の外部環境(温度や湿度)、ノズル内のインクの温度のうちの少なくともいずれか一つに基づいて変える。一つのインク滴の量が多いほどその主滴と副滴の量も多くなるので、そのインク滴によって形成される画素も大きく、この逆に、一つのインク滴の量が少ないほどその主滴と副滴の量も少なくなるので、そのインク滴によって形成される画素は小さい。
【0049】
ここで、第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾することにより形成される一つの画素のサイズと、第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾して形成される次の一つの画素のサイズとを所定範囲内(画質の低下にならない程度の範囲内)のサイズにさせる技術を説明する。ここでは、第(n−1)回目にインク滴が吐出されないとした場合、第n回目に吐出されたインク滴ではその主滴のみが画素を形成し、第(n+1)回目に吐出されたインク滴ではその主滴と第n回目に吐出されたインク滴の副滴とが画素を形成するものとする(2つの着弾位置が重なる)。この場合、第n回目のインク滴の主滴がロール紙Pで滲む(広がる)量が、第n回目のインク滴の副滴と第(n+1)回目のインク滴の主滴とがロール紙Pで滲む量に等しくなればよいので、第(n+1)回目のインク滴の量が減少するように休止拡散時間T2を減少させる。なお、第(n+1)回目のインク滴の量を減少させるために、休止拡散時間T2は一定値に固定しておき予備加熱時間T1を増減してもよく、または、予備加熱時間T1及び休止拡散時間T2を同時に増減してもよい。
【0050】
上記の第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾することにより形成される一つの画素のサイズと、第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾して形成される次の一つの画素のサイズとが所定範囲外になる比較例について、図6を参照して説明する。
【0051】
図6は、第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズ(インク滴が記録媒体に充分には滲んでいないときのサイズ)と、第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズ(インク滴が記録媒体に充分には滲んでいないときのサイズ)とを模式的に示す平面図である。m1は、第n回目に吐出されたインク滴の主滴mがロール紙Pに着弾したときのサイズを示し、s1は、第n回目に吐出されたインク滴の副滴sがロール紙Pに着弾したときのサイズを示し、m2は、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mがロール紙Pに着弾したときのサイズを示し、s2は、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の副滴sがロール紙Pに着弾したときのサイズを示す。
【0052】
図6に示す場合は、一つのノズル(例えばノズル22K1n(図4参照))から第n回目と第(n+1)回目に吐出されたインク滴の容量は等しいものとし、この一つのノズルから第(n−1)回目にはインクが吐出されていないとする。図6に示すように、第n回目に吐出されたインク滴の副滴sに、これに続いて第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mが重なった場合、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mが広く滲んでm2とM2(二点鎖線で示す領域)の合計のサイズ(広さ)をもつ画素が形成される。即ち、第n回目に吐出されたインク滴が形成する画素よりもサイズの大きな画素が、第(n+1)回目に吐出されたインク滴によって形成される。上記した一つのノズルから第(n+2)回目にインクが吐出されずに第(n+3)回目と第(n+4)回目にインクがされた場合は、第(n+4)回目に吐出されたインク滴によって形成される画素も第(n+1)回目と同様に大きなサイズとなる。
【0053】
このようにノズルから吐出された複数のインク滴によって形成される複数の画素のサイズが変動した場合、これら複数の画素から構成される画像の品質が低下する。このような画像品質の低下を防止するために、上記の例では、第(n+1)回目に吐出されるインク滴の量を、第n回目に吐出されるインク滴の量よりも少なくした。このようにして第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾して滲むことにより形成される一つの画素のサイズと、第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾して滲むことにより形成される次の一つの画素のサイズとが所定範囲内になる例について、図7を参照して説明する。
【0054】
図7は、第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズ(インク滴が記録媒体に充分には滲んでいないときのサイズ)と、第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズ(インク滴が記録媒体に充分には滲んでいないときのサイズ)とを模式的に示す平面図である。m1は、第n回目に吐出されたインク滴の主滴mがロール紙Pに着弾したときのサイズを示し、s1は、第n回目に吐出されたインク滴の副滴sがロール紙Pに着弾したときのサイズを示し、m2は、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mがロール紙Pに着弾したときのサイズを示し、s2は、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の副滴sがロール紙Pに着弾したときのサイズを示す。
【0055】
図7に示す場合は、図6の場合とは違って、ノズル(例えばノズル22K1n(図4参照))から第n回目と第(n+1)回目に吐出されたインク滴の容量は等しくなく、このノズルから第(n−1)回目にはインクが吐出されていないとする。図7に示すように、第n回目に吐出されたインク滴の副滴sに、これに続いて第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mが重なった場合、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mが滲んでm2とM2(二点鎖線で示す領域)の合計のサイズ(広さ)をもつ画素が形成される。しかし、一つのノズルから第n回目に吐出されたインク滴の量よりも、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の量は少ない。この少ない程度は後述する。従って、第n回目に吐出されたインク滴が形成する画素のサイズと同じサイズの画素が、第(n+1)回目に吐出されたインク滴によって形成される。上記した一つのノズルから第(n+2)回目にインクが吐出されずに第(n+3)回目と第(n+4)回目にインクがされた場合も、第(n+4)回目に吐出されたインク滴によって形成される画素も第(n+1)回目と同様のサイズとなる。このように一つのノズルから吐出された複数のインク滴によって形成される複数の画素のサイズが同一となる場合、これら複数の画素から構成される画像の品質は向上する。
【0056】
上記のようにして画質の向上した画像の例としてバーコードをラスタ分割で形成する例について、図8を参照して説明する。ただし、上記した例では、一つのノズルから異なるタイミングで吐出されたインク滴によって形成される画素についての例を挙げたが、図8では、異なるノズルの場合を例に挙げる。
【0057】
図8(a)は、固定された4つの記録ヘッドの下をロール紙Pが搬送方向(矢印A方向)に搬送されている状態を示す模式図であり、(b)は、ロール紙Pにバーコードを印字する際に4つの記録ヘッドから吐出されたインク滴と各画素を対応させた説明図である。
【0058】
図1に示すプリンタ10では、図8(a)に示すように4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4がロール紙Pの搬送方向(矢印A方向)に並んでおり、各記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4は、搬送方向に直交する方向(図8の紙面に垂直な方向であり、記録ヘッド長手方向という)に延びている。
【0059】
ロール紙Pに印字(形成)される画像を担持した画像データ(印字データ)は、ラスター分割される。ここでいうラスターとは、無数の画素から構成された画像をいい、特に、その画素が横方向に(ここでは、記録媒体の搬送方向に直交する方向(記録ヘッド長手方向)に)一列に並んだものをいう。また、ラスター分割とは、このラスターを構成する複数の画素を一つの記録ヘッドからのインク吐出によって形成するために、画像を構成する複数のラスターそれぞれをいずれかの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4に対応させるように分割することをいう。図2を参照して説明した例では、CPU100でラスター分割を実行し、4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4で描画するデータとして画像メモリ106に割り当てる。なお、ホストPC12からプリンタ10に画像データを送る際に、ホストPC12のドライバー(図示せず)等でラスター分割した画像データをプリンタ10に送るように構成してもよい。
【0060】
図8(b)に示すバーコード(一点鎖線の領域内のもの)をラスター分割で形成する場合を説明する。
【0061】
一点鎖線の領域内のバーコードは、太い線B1、やや太い線B2、細い線B3から構成されている。太い線B1は、5つのラスターL1、L2、L3、L4、L5から構成される。やや太い線B2は、4つのラスターL7、L8、L9、L10から構成される。細い線B3は、3つのラスターL13、L14、L15から構成される。太い線B1とやや太い線B2の間には、ラスターL6に相当するが、ここは印字データが無い部分である。また、やや太い線B2と細い線B3の間には、2つのラスターL11、12に相当するが、ここも印字データが無い部分である。
【0062】
ラスターL1は、記録ヘッド22K1からのインク吐出によって形成される。即ち、ロール紙PのうちラスターL1に相当する部分が記録ヘッド22K1の下方に位置したときに記録ヘッド22K1の全ノズルからインクを吐出することにより、ラスターL1に相当する画像が形成される。ラスターL2は、記録ヘッド22K2からのインク吐出によって形成される。即ち、ロール紙PのうちラスターL2に相当する部分が記録ヘッド22K2の下方に位置したときに記録ヘッド22K2の全ノズルからインクを吐出することにより、ラスターL2に相当する画像が形成される。以下同様に、ラスターL3は、記録ヘッド22K3からのインク吐出によって形成され、ラスターL4は、記録ヘッド22K4からのインク吐出によって形成される。ラスターL5は、再び記録ヘッド22K1からのインク吐出によって形成されることとなる。また、ラスターL6に相当する部分は印字データが無い部分であるので、この部分には、記録ヘッド22K2からインクを吐出しない。ラスターL7は、記録ヘッド22K3からのインク吐出によって形成され、ラスターL8は、記録ヘッド22K4からのインク吐出によって形成される。
【0063】
上述したように、4つの記録ヘッド22K1〜22K4を順次に複数のラスターL1〜L15に対応させて太い線B1、やや太い線B2、細い線B3からなるバーコードを形成する。各線の太さや印字データが無い部分の幅に変更等が生じたときは、4つの記録ヘッド22K1〜22K4を適宜に制御して対応させる。
【0064】
上記のラスター分割の例では、例えば、ラスターL1に相当する画像(線分を表す画像)を形成するときに記録ヘッド22K1から吐出された一つのインク滴が形成する画素のサイズは、ラスターL2に相当する画像を形成するとき記録ヘッド22K2から吐出された一つのインク滴が形成する画素のサイズと同じである。同様に、例えば、ラスターL4に相当する画像(線分を表す画像)を形成するときに記録ヘッド22K4から吐出された一つのインク滴が形成する画素のサイズは、ラスターL5に相当する画像を形成するとき記録ヘッド22K1から吐出された一つのインク滴が形成する画素のサイズと同じである。このようにインクを吐出することにより、画質の高いバーコードが形成されることとなる。
【0065】
上記のように連続して形成される画素を同じサイズにするためには、これらの連続した画素を形成するインク滴を吐出するノズルが同じでも異なっていても、上述するように予備加熱時間T1及び休止拡散時間T2の少なくともいずれか一方を変更する。この例について、図9を参照して説明する。
【0066】
図9は、休止拡散時間T2を変更することにより、記録媒体搬送方向に連続して形成される画素を同じサイズにする技術を示す説明図であり、(a)の縦軸は、ノズルから吐出されるインク滴の容量を示し、横軸は、記録ヘッドの温度(記録ヘッド内のインクの温度)を示し、(b)は、休止拡散時間T2を徐々に短くした例を示し、図5と同様のグラフである。
【0067】
プリンタ10(図1等参照)を連続して使用している場合、記録ヘッド22K1〜22K4内のインクの温度(ヘッド温度)は徐々に上昇する。このようにヘッド温度が上昇した場合であっても、画質低下を防止するために各記録ヘッド22K1〜22K4のノズルからは一定範囲内の容量(図9では、Vd_a1以下Vd_a2以上の範囲内の容量(単位はng))のインク滴が吐出される。図9(a)に示すようにヘッド温度がTempAの場合は休止拡散時間T2aであるが、ヘッド温度の上昇に伴って、ノズルから吐出されるインク滴の量はVd_a2からVd_a1に向けて増加する。ヘッド温度がTempAよりも高いTempBになった場合、ノズルから吐出されるインク滴の量はVd_a1を超えてしまい、この場合は、吐出されるインク滴の量が多すぎることとなる。このため、休止拡散時間T2を、休止拡散時間T2aよりも短い休止拡散時間T2bとする。これにより、ヘッド温度がTempBであっても、ノズルから吐出されるインク滴の量はVd_a2以上Vd_a1以下の範囲内となる。
【0068】
ヘッド温度がTempBの場合は休止拡散時間T2bであるが、ヘッド温度の上昇に伴って、ノズルから吐出されるインク滴の量はVd_a2からVd_a1に向けて増加する。ヘッド温度がTempBよりも高いTempCになった場合、ノズルから吐出されるインク滴の量はVd_a1を超えてしまい、この場合は、吐出されるインク滴の量が多すぎることとなるので、休止拡散時間T2を、休止拡散時間T2bよりも短い休止拡散時間T2cとする。これにより、ヘッド温度がTempCであっても、ノズルから吐出されるインク滴の量はVd_a2以上Vd_a1以下の範囲内となる。
【0069】
上記のように休止拡散時間T2をヘッド温度に応じて変更する(具体的には、ヘッド温度の上昇に伴って休止拡散時間T2を短くする)ことによりノズルから吐出されるインク滴の量は一定範囲内になるので、インク滴の量の変動に起因する画質の低下は防止される。
【0070】
ところで、図8を参照して説明したように、各記録ヘッド22K1〜22K4に形成された複数のノズルのうち矢印A方向に並んだ一列のノズルからインクを吐出させる場合、各画素のサイズが相違したときは画質の低下となる。この場合、上述したように休止拡散時間T2を変更することにより、各画素のサイズが一定範囲内(画質低下とならない範囲内であり、プリンタの機種によってこの範囲は相違する)になるようにするが、ヘッド温度の上昇も考慮して休止拡散時間T2を決定する必要がある。そこで、例えば、ラスターL1に相当する画像(線分を表す画像)を形成するときに記録ヘッド22K1からインク滴を吐出させるときの休止拡散時間T2はT2aにするが、ラスターL2に相当する画像を形成するときに記録ヘッド22K2からインク滴を吐出させるときの休止拡散時間T2はT2bにする。このように休止拡散時間T2を制御しながらバーコードを形成する他の例について、図10と表1を参照して説明する。
【0071】
図10は、休止拡散時間T2を制御しながらバーコードを形成する手順を示すフロー図である。このフローに従ってバーコードを形成するに際しては、表1に示す駆動テーブルAと駆動テーブルBを選択的に用いる。表1に示すT1、T2、及びT3は、図5を参照して説明した予備加熱時間T1、休止拡散時間T2、及び発泡加熱時間T3を表す。また、駆動テーブルAと駆動テーブルBは、記録ヘッドK1〜K4の温度に応じた予備加熱時間T1、休止拡散時間T2、及び発泡加熱時間T3を示す。
【0072】
このフローは、プリンタ10(図1参照)本体に電源が投入されることにより起動する。先ず、印刷データ(バーコード情報)の有無が確認され(S1001)、印刷データがある場合は、この印刷データをラスター毎に分割して記録ヘッドK1〜K3に割り振る(S1002)。続いて、各ラスター毎にデータの有無を確認し(S1003)、(n−1)ラスターに印刷データがある場合は、駆動テーブルBを選択し(S1006)、印刷を開始する(S1007)。駆動テーブルBを選択する理由は、駆動テーブルBでは同じヘッド温度のときは駆動テーブルAに比べて休止拡散時間T2が0.5μsec短くなっているので、n回目に吐出されるインク滴の量は、(n−1)回目に吐出されるインク滴の量よりも少なくなり、この結果、n回目に吐出されたインク滴によって形成される画素のサイズは、(n−1)回目に吐出されたインク滴によって形成される画素のサイズと同じになるからである。S1003において(n−1)ラスターに印刷データが無いと判定された場合は、そのラスター(nラスター)のみ、予め割り振られた記録ヘッド(K1、K2、K3のいずれか)ではなく、記録ヘッドK4に変更して(S1004)、駆動テーブルAを選択して(S1005)、印刷を開始する(S1007)。S1005で駆動テーブルAを選択した理由は、(n−1)ラスターに印刷データが無いので、n回目に吐出されたインク滴によって形成される画素のサイズは、(n−1)回目に吐出されたインク滴に影響されないからである。印刷終了するまで上記駆動条件で印刷を行う(S1008)。
【0073】
ラスターが連続する場合も、S1003のステップのように、印刷しようとする画素の前にデータが有るか無いかを判断して駆動テーブルA又はBを選択して印刷を続けていく。これにより、一つ前の画素を形成したインク滴に影響されない同じサイズの画素を形成できる。
【表1】
【0074】
上記した例では、ヘッド温度も加味して休止拡散時間T2を変更したが、休止拡散時間T2を変更せずに予備加熱時間T1を変更してもよい。この場合の例を表2に示す。表2に示す例では、休止拡散時間T2を3μsecに固定しておき、ヘッド温度の上昇に伴って予備加熱時間T1を短くしたものである。このように、休止拡散時間T2を固定して予備加熱時間T1を変更しても、連続して形成される画素のサイズを等しくできる。なお、表2では、ヘッド温度の上昇に伴って発泡加熱時間T3が短くなっている。この理由は、発熱体152(図3等参照)の耐久性を向上させるために発泡の開始温度を一定にしているので、ヘッド温度が高いほど発泡加熱時間T3が短くなるからである。発泡加熱時間T3の長短は、吐出されるインク滴の量には影響しない。
【表2】
【0075】
上記した表2と同様の設定で、予備加熱時間T1を変更せずに休止拡散時間T2を変更した例を表3に示す。表3に示す例では、予備加熱時間T1を1.24μsecに固定しておき、ヘッド温度の上昇に伴って休止拡散時間T2を短くしたものである。このように予備加熱時間T1を固定して休止拡散時間T2を変更しても、上述したように連続して形成される画素のサイズを等しくできる。なお、表3において、ヘッド温度の上昇に伴って発泡加熱時間T3が短くなっている理由は、表2と同じである。
【表3】
【0076】
インク滴の吐出量と休止拡散時間T2の関係について、図11と表4を参照して説明する。
【0077】
図11は、インク滴の吐出量と休止拡散時間T2の関係を示すグラフである。
【0078】
図11のグラフに示すように、予備加熱時間T1と発泡加熱時間T3を固定した場合、休止拡散時間T2が短い間(0から5μsecまでの間)は、表4に示すように休止拡散時間T2が短くなるに伴ってインク滴の吐出量も減少する。例えば、休止拡散時間T2が4μsecのときのインク滴の吐出量は18ngであるのに対し、休止拡散時間T2が1μsecのときのインク滴の吐出量は17.06ngとなる。
【表4】
【0079】
プリンタ10(図1参照)では、通常、休止拡散時間T2は5μsec未満であるので、休止拡散時間T2が短くなるに伴ってインク滴の吐出量は減ってくる。従って、予備加熱時間T1と発泡加熱時間T3を固定しておき、休止拡散時間T2を短くすることによりインク滴の吐出量を減少できるので、上述したように連続して形成される画素のサイズを等しくできることとなる。なお、複数のノズルが形成された一つの記録ヘッドの各ノズルごとに、それぞれのノズル内のインクの温度に基づいて、予備加熱時間T1又は休止拡散時間T2を変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明のインクジェット方式画像形成方法が採用されたプリンタの一例を模式的に示す正面図である。
【図2】図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。
【図3】ノズルとその周辺部を示す断面図である。
【図4】(a)は、発熱体を発熱させる前の待機状態を示す模式図であり、(b)は、発熱体が発熱してインク中に泡が発生すると同時にインク吐出口からインクが押し出された状態を示す模式図であり、(c)は、消泡すると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離した状態を示す模式図であり、(d)は、主滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図であり、(e)は、主滴に遅れて副滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図である。
【図5】発熱体を発熱させるタイミングを示す説明図である。
【図6】第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズと、第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズとを模式的に示す平面図である。
【図7】第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズと、第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズとを模式的に示す平面図である。
【図8】(a)は、固定された4つの記録ヘッドの下をロール紙Pが搬送方向(矢印A方向)に搬送されている状態を示す模式図であり、(b)は、ロール紙Pにバーコードを印字する際に4つの記録ヘッドから吐出されたインク滴と各画素を対応させた説明図である。
【図9】休止拡散時間T2を変更することにより、記録媒体搬送方向に連続して形成される画素を同じサイズにする技術を示す説明図であり、(a)の縦軸は、ノズルから吐出されるインク滴の容量を示し、横軸は、記録ヘッドの温度(記録ヘッド内のインクの温度)を示し、(b)は、休止拡散時間T2を徐々に短くした例を示し、図5と同様のグラフである。
【図10】休止拡散時間T2を制御しながらバーコードを形成する手順を示すフロー図である。
【図11】インク滴の吐出量と休止拡散時間T2の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0081】
10 プリンタ
22K1、22K2、22K3、22K4 記録ヘッド
22K1n ノズル
100 CPU
152 発熱体
m 主滴
s 副滴
T1 予備加熱時間
T2 休止拡散時間
T3 発泡加熱時間
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッド(印字ヘッド)に形成された複数のノズルからインクを吐出して記録媒体に着弾させることにより画像を形成するインクジェット方式画像形成方法及びインクジェット方式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドに形成された複数のノズルから記録媒体にインク(インク滴)を吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置(インクジェットプリンタ)が広く使用されている。ノズルからインク滴を吐出させる技術として、駆動パルスに応じた熱エネルギをノズル内のインクに供給して膜沸騰による気泡を形成させ、この気泡によってノズルからインク滴を吐出させる技術が知られている。形成する画像に応じた多数のインク滴がノズルから記録媒体に吐出されることにより画像が形成される。
【0003】
上記の技術を採用したインクジェットプリンタのなかには、画像記録速度(画像形成速度)を向上させるために、インク吐出口及びインク流路等からなる複数のノズルを集積したマルチノズルヘッドを記録媒体の搬送方向に多数配列させたラインヘッドを有し、記録媒体の搬送に合わせて複数のノズルのインク吐出口から同時にインクを吐出させるタイプのもの(ラインプリンタ)がある。
【0004】
画像形成装置には、一般に、高画像品位で高解像度の画像を高速で形成することが求められるが、上記のラインプリンタをはじめとするインクジェットプリンタを使用することによりこれらの要求を満足させることができる。また、インクジェットプリンタは、画像形成時(画像記録時)に記録ヘッドと記録媒体とが非接触であるので、非常に安定した画像記録を行うことができるという利点も有している。
【0005】
しかし、一方で、インクジェットプリンタの場合、流体であるインクを扱うので、流体力学的な種々の不都合が記録ヘッドで発生する。また、インクは液体であるので、環境温度や放置時間等によって粘性が随時変わっていく。このような粘性の変化は画像記録に大きな影響を及ぼす。また、ノズルから吐出するインク滴の特性として、ノズルから吐出した一つのインク滴が主滴と副滴(サテライト)に分離する(別れる)ことが知られている。主滴は副滴よりも先にノズルのインク吐出口から離れ、主滴に続いて副滴がインク吐出口から離れる。
【0006】
ところで、産業用のインクジェットプリンタとコンシューマープリンタ(家庭用のインクジェットプリンタ)とを比較した場合、産業用のインクジェットプリンタではコンシューマープリンタよりも、印刷速度(記録媒体の搬送速度)や印字デュティー(記録媒体の単位面積当たりに着弾したインク滴の数)が格段に増加している。記録媒体の搬送速度を速めた(例えば、約150m/分)場合、ノズルから吐出した一つのインク滴の主滴が記録媒体に着弾する位置(着弾位置)と、副滴が記録媒体に着弾する着弾位置とがずれることがある。このように、一つのインク滴を構成する主滴と副滴の着弾位置がずれた場合、一つのインク滴が別々の位置に着弾することとなるので画像品位が低下することがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−144570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように主滴と副滴の着弾位置がずれる場合、副滴の着弾位置が、次に吐出されるインク滴の主滴の着弾位置に着弾することがある。この場合、前に吐出されたインク滴の副滴と次に吐出されるインク滴の主滴とが重なることとなるので、次に吐出されるインク滴の主滴によって形成される画素は、前に吐出されたインク滴の主滴による画素よりも大きくなる。このように異なるタイミングで吐出されたインク滴によって形成された画素のサイズが相違することは画質低下の原因となる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、異なるタイミングで吐出されたインク滴によって形成された画素のサイズを均一にできるインクジェット方式画像形成方法及びインクジェット方式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のインクジェット方式画像形成方法は、記録ヘッドに形成されたノズルからインク滴を吐出して記録媒体に着弾させて画像を形成するインクジェット方式画像形成方法において、
(1)前記ノズルから吐出された一つのインク滴が記録媒体に着弾することにより形成される一つの画素のサイズ、及び前記一つの画素に連続して形成される次の一つの画素のサイズ双方が所定範囲内のサイズになるように、前記ノズルから連続してインク滴を吐出することを特徴とするものである。
【0010】
ここで、
(2)前記ノズルからインク滴を吐出させる際に、該ノズル内のインクを加熱し粘性を低下させてインク吐出効率を高めるために予備的に該インクを温める予備加熱時間T1、この予備加熱時間T1による熱を前記ノズル内のインクに拡散させる休止拡散時間T2、及び膜沸騰を生じさせてインク滴を吐出させるために前記インクを加熱する、休止拡散時間T2に続く発泡加熱時間T3の3段階に別けて前記ノズル中のインクを加熱してもよい。
【0011】
また、
(3)前記一つの画素のサイズ及び前記次の一つの画素のサイズ双方が前記所定範囲内のサイズになるように前記予備加熱時間T1及び前記休止拡散時間T2のいずれか一方又は双方を変更してもよい。
【0012】
さらに、
(4)前記一つの画素を形成するために前記ノズルから前記一つのインク滴を吐出するときの前記予備加熱時間T1よりも、前記次の一つの画素を形成するために前記ノズルから一つのインク滴を吐出するときの前記予備加熱時間T1を短くしてもよい。
【0013】
さらにまた、
(5)前記一つの画素を形成するために前記ノズルから前記一つのインク滴を吐出するときの前記休止拡散時間T2よりも、前記次の一つの画素を形成するために前記ノズルから一つのインク滴を吐出するときの前記休止拡散時間T2を短くしてもよい。
【0014】
さらにまた、
(6)前記ノズル内のインクの温度に基づいて、前記予備加熱時間T1又は前記休止拡散時間T2を変更してもよい。
【0015】
さらにまた、
(7)前記一つの画素を形成するインク滴の主滴のサイズよりも、前記次の一つの画素を形成するインク滴の主滴のサイズが小さくなるように、前記ノズルから連続してインク滴を吐出してもよい。
【0016】
さらにまた、
(8)前記記録ヘッドは、記録媒体が搬送される記録媒体搬送方向に直交する記録媒体幅方向に並んだ複数のノズルが形成されたものであり、
(9)前記複数のノズルごとに、それぞれのノズル内のインクの温度に基づいて、前記予備加熱時間T1又は前記休止拡散時間T2を変更してもよい。
【0017】
さらにまた、
(10)前記複数のノズルから同時にインク滴を吐出することにより前記記録媒体幅方向に並んだ複数の画素を形成してもよい。
【0018】
ここでいう画素とは、画像の最小単位をいう。また、画素領域とは、インクが着弾する前の画素に相当する領域をいう。さらに、ラスターとは、画素が横方向に(ここでは、搬送方向に直交する方向に)一列に並んだものをいう。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ノズルから吐出された一つのインク滴が記録媒体に着弾することにより形成される一つの画素のサイズ、及びこの一つの画素に連続して形成される次の一つの画素のサイズ双方が所定範囲内のサイズになるように、ノズルから連続してインク滴を吐出するので、異なるタイミングで吐出されたインク滴によって形成された画素のサイズを均一にでき、画質の低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置に実現された。
【実施例1】
【0021】
図1を参照して、本発明のインクジェット方式画像形成方法が採用されたプリンタの一例を説明する。
【0022】
図1は、本発明のインクジェット方式画像形成方法が採用されたプリンタの一例を模式的に示す正面図である。
【0023】
プリンタ10は、バーコードを含む画像を形成できるタイプのものであり、このプリンタ10に画像情報を送るホストPC(パソコン)12に接続されている。プリンタ10には、4つ(4本)の記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4が記録媒体(ここではロ−ル紙)Pの搬送方向(矢印A方向)に並んで配置されている。4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4からはそれぞれ黒のインクが吐出される。これら4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4は、所謂ラインヘッドであり、図1の紙面に直交する方向(矢印A方向に直交する方向)に延びている。これら4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4の長さは、プリンタ10で印字できる記録媒体のうち最大の幅(図1の紙面に直交する方向の長さ)よりもやや長い。また、これら4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4は、画像形成中は固定されて動かない(不動状態である)。
【0024】
4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4から安定してインクを吐出できるように、プリンタ10には回復ユニット40が組み込まれている。この回復ユニット40によって、記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4からのインク吐出状態は初期のインク吐出状態に回復する。回復ユニット40には、回復動作のときに4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4のインク吐出口形成面22K1S、22K2S、22K3S、22K4Sからインクを除去するキャッピング機構50が備えられている。キャッピング機構50は各記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4に独立して設けられており、図1の例では6色分け(即ち、6つのキャッピング機構50)が示されているが、このうち2色分は記録ヘッド追加時の予備的な機構である。キャッピング機構50は、周知のブレード、インク除去部材、ブレード保持部材、キャップ等から構成されている。
【0025】
ロ−ル紙Pはロール紙供給ユニット24から供給され、プリンタ10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロ−ル紙Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。
【0026】
ロ−ル紙Pに画像を形成する際には、搬送中のロ−ル紙Pの記録開始位置がブラックの記録ヘッド22K1の下に到達した後に、記録データ(画像情報)に基づいて記録ヘッド22K1からブラックインクを選択的に吐出する。同様に記録ヘッド22K2、記録ヘッド22K3、記録ヘッド22K4の順にインクを吐出してロ−ル紙Pに画像を形成する。プリンタ10には、上記の部品・部材の他、各記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4に供給されるインクを貯めておくメインタンク28Kや、記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4にインクを供給したり回復動作をしたりするための各種ポンプ(図示せず)などが備えられている。
【0027】
図2を参照して、プリンタ10の電気的な系統を説明する。
【0028】
図2は、図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。
【0029】
ホストPC12から送信された記録データ(画像データ)やコマンドはインターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、プリンタ10の記録データの受信、記録動作、ロ−ル紙Pのハンドリング等全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU100では、受信したコマンドを解析した後に、記録データの成分のうちイメージデータ126及びバーコードデータ125それぞれをビットマップ展開してラスター分割し、各記録ヘッドで描画するデータとして画像メモリ106に割り当てる。
【0030】
記録前の動作処理としては、出力ポート114、モータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4をキャッピング機構50(図1参照)から離して記録位置(画像形成位置)に移動させる。
【0031】
続いて、出力ポート114、モータ駆動部116を介してロ−ル紙Pを繰り出すロールモータ(図示せず)、及び低速度でロ−ル紙Pを搬送する搬送モータ120等を駆動してロ−ル紙Pを記録位置に搬送する。一定速度で搬送されるロ−ル紙Pにインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するための先端検知センサ(図示せず)でロ−ル紙Pの先端位置を検出する。その後、ロ−ル紙Pの搬送に同期して、CPU100は画像メモリ106から対応する記録ヘッドの記録データを順次に読み出し、この読み出したデータ(バーコードデータ125及びイメージデータ126)を、記録ヘッド制御回路112を経由して(介して)各記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4に転送する。
【0032】
CPU100の動作はプログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM108を使用する。各記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4のクリーニングや回復動作時に、CPU100は、出力ポート114、モータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動し、インクの加圧、吸引等の制御を行う。
【0033】
上記した4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4にはそれぞれ、搬送方向(図1の矢印A方向)に直交する記録媒体幅方向に並んだ複数のノズルが形成されている。これら複数のノズルから同時にインク滴を吐出することにより記録媒体幅方向に並んだ複数の画素を形成できる。各ノズルの構造は同じであるので、記録ヘッド22K1に形成された一つのノズル22K1nの構造について、図3を参照して説明する。
【0034】
図3は、ノズルとその周辺部を示す断面図である。図3には、1つのノズル22K1nを示すが、記録ヘッド22K1には多数のノズルが記録ヘッド長手方向(記録媒体幅方向)に一列に並んで形成されている。
【0035】
記録ヘッド22K1には、インクを吐出する多数のノズル22K1nが、図3の紙面の垂直方向に並んで形成されている。多数のノズル22K1nは、インクが貯められた共通液室150につながっている(連通している)。この共通液室150はサブタンク(図示せず)につながっており、サブタンクから共通液室150にインクが供給される。
【0036】
ノズル22K1nには、このノズル22K1n内のインク中で発泡させる発熱体152が配置されている。発熱体152を発熱させることによりノズル22K1n内のインク中で泡が発生し、ノズル22K1nの出口(インク吐出口154)からインクが押し出されて吐出される。発熱体152は、シリコン素子基板156上に周知の技術で形成されている。このシリコン素子基板156には、後述するメニスカスMの近傍においてインクの濡れ性を均一化させるためにシリコン天板158とノズルl160が形成されており、これらシリコン天板158とノズルl160はノズル22K1nの内壁に面している。シリコン天板158とノズルl160は樹脂で被覆されている。ノズルl160はノズル22K1nのインク吐出口154の近傍の内壁に形成されて、ノズル22K1nを狭めるものである。
【0037】
上記した共通液室150もシリコン素子基板156に形成されている。また、発熱体152による発泡時にエネルギーを効率良くインク吐出方向(矢印D方向)に向かわせる弁162や、シリコン天板158からノズル22K1n内部に向かって垂直方向に延びる流路壁164もシリコン素子基板156に形成されている。ノズルl160は、多数のノズル22K1n等を作製する場合においてシリコン天板158を切断するときに欠け(チッピング)を生じさせないためのものである。シリコン素子基板156のうち共通液室150に面する部分にはサブヒータ166が形成されており、このサブヒータ166は、記録ヘッド22K内のインクの温度を一定に保って粘性を安定させることによりインクの安定吐出範囲内で印字させることを目的としている。
【0038】
発熱体152は電気抵抗層及び配線をパタ−ンニングして形成されたものである。この配線を経由して電気抵抗層に電圧を印加して電流を流すことにより発熱体152が発熱する。この発熱によって発熱体152の周辺のインク中に泡を発生させ、インク吐出口154からインクを押し出して吐出させている。また、シリコン素子基板156と発熱体152に蓄積された熱の温度(蓄熱温度)を検知するためのDiセンサ(図示せず)がシリコン素子基板156に配置されており、このDiセンサが検知した検知温度に応じて記録ヘッド22K1の駆動条件が決定される。この駆動条件については後述する。
【0039】
上記したノズル22K1nから吐出された一つのインク滴が主滴と副滴に別れてロール紙Pに着弾する原理について、図4を参照して説明する。
【0040】
図4(a)は、発熱体を発熱させる前の待機状態を示す模式図であり、(b)は、発熱体が発熱してインク中に泡が発生すると同時にインク吐出口からインクが押し出された状態を示す模式図であり、(c)は、消泡すると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離した状態を示す模式図であり、(d)は、主滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図であり、(e)は、主滴に遅れて副滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図である。図4では、図3に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
【0041】
発熱体を発熱させる前の待機状態では、ノズル22K1n内のインクには水頭差に相当する負圧が作用しており、このため、(a)に示すように、インク吐出口154にはメニスカスMが形成されている。この待機状態のときに、ホストPC12(図1参照)から記録データがプリンタ10へ送られ、この記録データが記録ヘッド22K1にヒート信号として送られる。このヒート信号に基づいて発熱体152が発熱して、(b)に示すように、発熱体152の界面からインク中に泡Bが生じる(発泡する)と同時にインク吐出口154の近傍のインクがインク吐出口154から押し出される。
【0042】
続いて、発熱体152の発熱が終了すると共に、生じた泡Bは消滅し(消泡し)、同時に、(c)に示すように、メニスカスMはノズル22K1nの奥の位置まで後退する。一方、吐出されたインク滴Idは、主滴mと副滴(サテライト)sに分離する。サテライトsは、(c)に示すようなメニスカスMの後退の影響を受けて、インク吐出方向(矢印D方向)とは反対方向のベクトルの力(発熱体152上の泡の消泡と水頭差によって生じた負圧とによるベクトルの合成)を受けるので、主滴mよりも吐出速度が遅くなる。インク吐出口154からインク滴Idが吐出した後、後退したメニスカスMの位置は、ノズル22K1nの毛細管力(リフィル)によって、(d)に示すように待機状態まで復帰する。一方、吐出したインク滴Idの主滴mは、搬送中のロール紙P上に着弾する。
【0043】
主滴mがロール紙Pに着弾した後、サテライトsがこのロール紙Pに着弾するまでの間、ロール紙Pは矢印A方向(搬送方向)に搬送される(移動する)ので、(e)に示すように、ロール紙Pの主滴m(ロール紙Pに吸収されている)が着弾した位置よりも矢印A方向上流側に副滴sが着弾する。この結果、主滴mと副滴sでは、着弾位置にずれLが発生する。このずれLの距離(間隔)は、ロール紙Pの搬送速度が速くなるほど長くなる(大きくなる)。このように一つのインク滴の主滴mと副滴sの着弾位置(ロール紙P上の位置)がずれる場合、一つのノズル22K1nから吐出された一つのインク滴(第n回目に吐出されたインク滴)の副滴sの着弾位置と、一つのノズル22K1nから吐出された次の一つのインク滴(第(n+1)回目に吐出されたインク滴)の主滴mの着弾位置とが重なることがある。このように一つのインク滴の主滴mと次の一つのインク滴の副滴sが重なった場合、ロール紙Pに滲むインクの量が多くなるので、一つのインク滴の主滴mだけから形成される一つの画素のサイズ(大きさ)に比べて画素のサイズが大きくなる。画像を構成する複数の画素のサイズが異なる場合は画質が低下する。
【0044】
そこで、本発明では、ノズルから吐出された一つのインク滴(第n回目に吐出されたインク滴)が記録媒体に着弾することにより形成される一つの画素のサイズ、及びノズル(上記のノズルと同じ場合もあるし、異なるノズルの場合もある)から一つのインク滴に続いて吐出された次の一つのインク滴(第(n+1)回目に吐出されたインク滴)が記録媒体に着弾して形成される次の一つの画素のサイズ双方が所定範囲内のサイズになるように、ノズルから連続してインク滴を吐出するようにした。このようにインク滴を吐出してロール紙Pに着弾させて画像を形成する方法を説明する。先ず、発熱体152を発熱させてインク滴を吐出するタイミングについて、図5を参照して説明する。
【0045】
図5は、発熱体を発熱させるタイミングを示す説明図である。
【0046】
図4を参照して説明したように発熱体152を発熱させてインク吐出口154(図4等参照)からインク滴を吐出させるためには、予備加熱時間T1(図5のプレヒート信号PHがONで、メインヒート信号MHがOFFの時間)、休止拡散時間T2(プレヒート信号PH及びメインヒート信号MHともにOFFの時間)、発泡加熱時間T3(図5のメインヒート信号MHがONで、プレヒート信号PHがOFFの時間)からなる3つの段階を経る。図5のPHの右側に示す折れ線のうち高い部分(OFFで示す直線)は、発熱体152に通電されていないことを表し、折れ線のうち低い部分(ONで示す直線)は、予備加熱のために発熱体152に通電されていることを表している。また、図5のMHの右側に示す折れ線のうち高い部分(OFFで示す直線)は、発熱体152に通電されていないことを表し、折れ線のうち低い部分(ONで示す直線)は、発泡加熱のために発熱体152に通電されていることを表している。
【0047】
インク吐出口154(図4等参照)からインクを吐出するに際しては、プレヒート信号PHがONである時間(T1)内にノズル22Kn内のインクを温めることによりこのインクの粘度を低めてインク吐出効率を上げる。予備加熱時間T1が経過した後、休止拡散時間T2だけ発熱体152をOFFにする(発熱体152に通電しない)。休止拡散時間T2が経過した後、発泡加熱時間T3だけ発熱体152をONにする(発熱体152に通電する)。メインヒート信号MHがONである時間(T3)内に発熱体152(図3等参照)の表面で膜沸騰を起こさせてインクを吐出させる(図4の説明を参照)。
【0048】
プレヒート信号PHがONの時間帯とメインヒート信号MHがONの時間帯の間に時間差(休止拡散時間T2)が存在する理由は、プレヒート信号PHがONのときの加熱による熱をノズル内のインクに拡散させることにより、インク吐出の効率を高めているからである。本発明では、休止拡散時間T2(又は予備加熱時間T1)の長短によって、インク吐出口154(図4等参照)から吐出されるインク滴の量(容積)が変化することに着目して、このインク滴量を制御している。但し、休止拡散時間T2を極端に長くしてしまうと、外気温度の影響を受けてノズル内のインクの温度が低下してしまう。このため、本実施例では、休止拡散時間T2の時間の増減(長短)に伴って、ノズルから吐出された各インク滴による画素が所定範囲内のサイズになるように一つのインク滴の量が変動する範囲内で休止拡散時間T2を制御している。ここでいう所定範囲内のサイズとは、第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾することにより形成される一つの画素のサイズ、及び第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾して形成される次の一つの画素のサイズ双方が所定範囲内におさまるサイズをいう。また、一つのインク滴の量は、プリンタ10(図1等参照)で使用するインクの種類、プリンタ10の外部環境(温度や湿度)、ノズル内のインクの温度のうちの少なくともいずれか一つに基づいて変える。一つのインク滴の量が多いほどその主滴と副滴の量も多くなるので、そのインク滴によって形成される画素も大きく、この逆に、一つのインク滴の量が少ないほどその主滴と副滴の量も少なくなるので、そのインク滴によって形成される画素は小さい。
【0049】
ここで、第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾することにより形成される一つの画素のサイズと、第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾して形成される次の一つの画素のサイズとを所定範囲内(画質の低下にならない程度の範囲内)のサイズにさせる技術を説明する。ここでは、第(n−1)回目にインク滴が吐出されないとした場合、第n回目に吐出されたインク滴ではその主滴のみが画素を形成し、第(n+1)回目に吐出されたインク滴ではその主滴と第n回目に吐出されたインク滴の副滴とが画素を形成するものとする(2つの着弾位置が重なる)。この場合、第n回目のインク滴の主滴がロール紙Pで滲む(広がる)量が、第n回目のインク滴の副滴と第(n+1)回目のインク滴の主滴とがロール紙Pで滲む量に等しくなればよいので、第(n+1)回目のインク滴の量が減少するように休止拡散時間T2を減少させる。なお、第(n+1)回目のインク滴の量を減少させるために、休止拡散時間T2は一定値に固定しておき予備加熱時間T1を増減してもよく、または、予備加熱時間T1及び休止拡散時間T2を同時に増減してもよい。
【0050】
上記の第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾することにより形成される一つの画素のサイズと、第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾して形成される次の一つの画素のサイズとが所定範囲外になる比較例について、図6を参照して説明する。
【0051】
図6は、第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズ(インク滴が記録媒体に充分には滲んでいないときのサイズ)と、第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズ(インク滴が記録媒体に充分には滲んでいないときのサイズ)とを模式的に示す平面図である。m1は、第n回目に吐出されたインク滴の主滴mがロール紙Pに着弾したときのサイズを示し、s1は、第n回目に吐出されたインク滴の副滴sがロール紙Pに着弾したときのサイズを示し、m2は、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mがロール紙Pに着弾したときのサイズを示し、s2は、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の副滴sがロール紙Pに着弾したときのサイズを示す。
【0052】
図6に示す場合は、一つのノズル(例えばノズル22K1n(図4参照))から第n回目と第(n+1)回目に吐出されたインク滴の容量は等しいものとし、この一つのノズルから第(n−1)回目にはインクが吐出されていないとする。図6に示すように、第n回目に吐出されたインク滴の副滴sに、これに続いて第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mが重なった場合、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mが広く滲んでm2とM2(二点鎖線で示す領域)の合計のサイズ(広さ)をもつ画素が形成される。即ち、第n回目に吐出されたインク滴が形成する画素よりもサイズの大きな画素が、第(n+1)回目に吐出されたインク滴によって形成される。上記した一つのノズルから第(n+2)回目にインクが吐出されずに第(n+3)回目と第(n+4)回目にインクがされた場合は、第(n+4)回目に吐出されたインク滴によって形成される画素も第(n+1)回目と同様に大きなサイズとなる。
【0053】
このようにノズルから吐出された複数のインク滴によって形成される複数の画素のサイズが変動した場合、これら複数の画素から構成される画像の品質が低下する。このような画像品質の低下を防止するために、上記の例では、第(n+1)回目に吐出されるインク滴の量を、第n回目に吐出されるインク滴の量よりも少なくした。このようにして第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾して滲むことにより形成される一つの画素のサイズと、第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾して滲むことにより形成される次の一つの画素のサイズとが所定範囲内になる例について、図7を参照して説明する。
【0054】
図7は、第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズ(インク滴が記録媒体に充分には滲んでいないときのサイズ)と、第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズ(インク滴が記録媒体に充分には滲んでいないときのサイズ)とを模式的に示す平面図である。m1は、第n回目に吐出されたインク滴の主滴mがロール紙Pに着弾したときのサイズを示し、s1は、第n回目に吐出されたインク滴の副滴sがロール紙Pに着弾したときのサイズを示し、m2は、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mがロール紙Pに着弾したときのサイズを示し、s2は、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の副滴sがロール紙Pに着弾したときのサイズを示す。
【0055】
図7に示す場合は、図6の場合とは違って、ノズル(例えばノズル22K1n(図4参照))から第n回目と第(n+1)回目に吐出されたインク滴の容量は等しくなく、このノズルから第(n−1)回目にはインクが吐出されていないとする。図7に示すように、第n回目に吐出されたインク滴の副滴sに、これに続いて第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mが重なった場合、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の主滴mが滲んでm2とM2(二点鎖線で示す領域)の合計のサイズ(広さ)をもつ画素が形成される。しかし、一つのノズルから第n回目に吐出されたインク滴の量よりも、第(n+1)回目に吐出されたインク滴の量は少ない。この少ない程度は後述する。従って、第n回目に吐出されたインク滴が形成する画素のサイズと同じサイズの画素が、第(n+1)回目に吐出されたインク滴によって形成される。上記した一つのノズルから第(n+2)回目にインクが吐出されずに第(n+3)回目と第(n+4)回目にインクがされた場合も、第(n+4)回目に吐出されたインク滴によって形成される画素も第(n+1)回目と同様のサイズとなる。このように一つのノズルから吐出された複数のインク滴によって形成される複数の画素のサイズが同一となる場合、これら複数の画素から構成される画像の品質は向上する。
【0056】
上記のようにして画質の向上した画像の例としてバーコードをラスタ分割で形成する例について、図8を参照して説明する。ただし、上記した例では、一つのノズルから異なるタイミングで吐出されたインク滴によって形成される画素についての例を挙げたが、図8では、異なるノズルの場合を例に挙げる。
【0057】
図8(a)は、固定された4つの記録ヘッドの下をロール紙Pが搬送方向(矢印A方向)に搬送されている状態を示す模式図であり、(b)は、ロール紙Pにバーコードを印字する際に4つの記録ヘッドから吐出されたインク滴と各画素を対応させた説明図である。
【0058】
図1に示すプリンタ10では、図8(a)に示すように4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4がロール紙Pの搬送方向(矢印A方向)に並んでおり、各記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4は、搬送方向に直交する方向(図8の紙面に垂直な方向であり、記録ヘッド長手方向という)に延びている。
【0059】
ロール紙Pに印字(形成)される画像を担持した画像データ(印字データ)は、ラスター分割される。ここでいうラスターとは、無数の画素から構成された画像をいい、特に、その画素が横方向に(ここでは、記録媒体の搬送方向に直交する方向(記録ヘッド長手方向)に)一列に並んだものをいう。また、ラスター分割とは、このラスターを構成する複数の画素を一つの記録ヘッドからのインク吐出によって形成するために、画像を構成する複数のラスターそれぞれをいずれかの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4に対応させるように分割することをいう。図2を参照して説明した例では、CPU100でラスター分割を実行し、4つの記録ヘッド22K1、22K2、22K3、22K4で描画するデータとして画像メモリ106に割り当てる。なお、ホストPC12からプリンタ10に画像データを送る際に、ホストPC12のドライバー(図示せず)等でラスター分割した画像データをプリンタ10に送るように構成してもよい。
【0060】
図8(b)に示すバーコード(一点鎖線の領域内のもの)をラスター分割で形成する場合を説明する。
【0061】
一点鎖線の領域内のバーコードは、太い線B1、やや太い線B2、細い線B3から構成されている。太い線B1は、5つのラスターL1、L2、L3、L4、L5から構成される。やや太い線B2は、4つのラスターL7、L8、L9、L10から構成される。細い線B3は、3つのラスターL13、L14、L15から構成される。太い線B1とやや太い線B2の間には、ラスターL6に相当するが、ここは印字データが無い部分である。また、やや太い線B2と細い線B3の間には、2つのラスターL11、12に相当するが、ここも印字データが無い部分である。
【0062】
ラスターL1は、記録ヘッド22K1からのインク吐出によって形成される。即ち、ロール紙PのうちラスターL1に相当する部分が記録ヘッド22K1の下方に位置したときに記録ヘッド22K1の全ノズルからインクを吐出することにより、ラスターL1に相当する画像が形成される。ラスターL2は、記録ヘッド22K2からのインク吐出によって形成される。即ち、ロール紙PのうちラスターL2に相当する部分が記録ヘッド22K2の下方に位置したときに記録ヘッド22K2の全ノズルからインクを吐出することにより、ラスターL2に相当する画像が形成される。以下同様に、ラスターL3は、記録ヘッド22K3からのインク吐出によって形成され、ラスターL4は、記録ヘッド22K4からのインク吐出によって形成される。ラスターL5は、再び記録ヘッド22K1からのインク吐出によって形成されることとなる。また、ラスターL6に相当する部分は印字データが無い部分であるので、この部分には、記録ヘッド22K2からインクを吐出しない。ラスターL7は、記録ヘッド22K3からのインク吐出によって形成され、ラスターL8は、記録ヘッド22K4からのインク吐出によって形成される。
【0063】
上述したように、4つの記録ヘッド22K1〜22K4を順次に複数のラスターL1〜L15に対応させて太い線B1、やや太い線B2、細い線B3からなるバーコードを形成する。各線の太さや印字データが無い部分の幅に変更等が生じたときは、4つの記録ヘッド22K1〜22K4を適宜に制御して対応させる。
【0064】
上記のラスター分割の例では、例えば、ラスターL1に相当する画像(線分を表す画像)を形成するときに記録ヘッド22K1から吐出された一つのインク滴が形成する画素のサイズは、ラスターL2に相当する画像を形成するとき記録ヘッド22K2から吐出された一つのインク滴が形成する画素のサイズと同じである。同様に、例えば、ラスターL4に相当する画像(線分を表す画像)を形成するときに記録ヘッド22K4から吐出された一つのインク滴が形成する画素のサイズは、ラスターL5に相当する画像を形成するとき記録ヘッド22K1から吐出された一つのインク滴が形成する画素のサイズと同じである。このようにインクを吐出することにより、画質の高いバーコードが形成されることとなる。
【0065】
上記のように連続して形成される画素を同じサイズにするためには、これらの連続した画素を形成するインク滴を吐出するノズルが同じでも異なっていても、上述するように予備加熱時間T1及び休止拡散時間T2の少なくともいずれか一方を変更する。この例について、図9を参照して説明する。
【0066】
図9は、休止拡散時間T2を変更することにより、記録媒体搬送方向に連続して形成される画素を同じサイズにする技術を示す説明図であり、(a)の縦軸は、ノズルから吐出されるインク滴の容量を示し、横軸は、記録ヘッドの温度(記録ヘッド内のインクの温度)を示し、(b)は、休止拡散時間T2を徐々に短くした例を示し、図5と同様のグラフである。
【0067】
プリンタ10(図1等参照)を連続して使用している場合、記録ヘッド22K1〜22K4内のインクの温度(ヘッド温度)は徐々に上昇する。このようにヘッド温度が上昇した場合であっても、画質低下を防止するために各記録ヘッド22K1〜22K4のノズルからは一定範囲内の容量(図9では、Vd_a1以下Vd_a2以上の範囲内の容量(単位はng))のインク滴が吐出される。図9(a)に示すようにヘッド温度がTempAの場合は休止拡散時間T2aであるが、ヘッド温度の上昇に伴って、ノズルから吐出されるインク滴の量はVd_a2からVd_a1に向けて増加する。ヘッド温度がTempAよりも高いTempBになった場合、ノズルから吐出されるインク滴の量はVd_a1を超えてしまい、この場合は、吐出されるインク滴の量が多すぎることとなる。このため、休止拡散時間T2を、休止拡散時間T2aよりも短い休止拡散時間T2bとする。これにより、ヘッド温度がTempBであっても、ノズルから吐出されるインク滴の量はVd_a2以上Vd_a1以下の範囲内となる。
【0068】
ヘッド温度がTempBの場合は休止拡散時間T2bであるが、ヘッド温度の上昇に伴って、ノズルから吐出されるインク滴の量はVd_a2からVd_a1に向けて増加する。ヘッド温度がTempBよりも高いTempCになった場合、ノズルから吐出されるインク滴の量はVd_a1を超えてしまい、この場合は、吐出されるインク滴の量が多すぎることとなるので、休止拡散時間T2を、休止拡散時間T2bよりも短い休止拡散時間T2cとする。これにより、ヘッド温度がTempCであっても、ノズルから吐出されるインク滴の量はVd_a2以上Vd_a1以下の範囲内となる。
【0069】
上記のように休止拡散時間T2をヘッド温度に応じて変更する(具体的には、ヘッド温度の上昇に伴って休止拡散時間T2を短くする)ことによりノズルから吐出されるインク滴の量は一定範囲内になるので、インク滴の量の変動に起因する画質の低下は防止される。
【0070】
ところで、図8を参照して説明したように、各記録ヘッド22K1〜22K4に形成された複数のノズルのうち矢印A方向に並んだ一列のノズルからインクを吐出させる場合、各画素のサイズが相違したときは画質の低下となる。この場合、上述したように休止拡散時間T2を変更することにより、各画素のサイズが一定範囲内(画質低下とならない範囲内であり、プリンタの機種によってこの範囲は相違する)になるようにするが、ヘッド温度の上昇も考慮して休止拡散時間T2を決定する必要がある。そこで、例えば、ラスターL1に相当する画像(線分を表す画像)を形成するときに記録ヘッド22K1からインク滴を吐出させるときの休止拡散時間T2はT2aにするが、ラスターL2に相当する画像を形成するときに記録ヘッド22K2からインク滴を吐出させるときの休止拡散時間T2はT2bにする。このように休止拡散時間T2を制御しながらバーコードを形成する他の例について、図10と表1を参照して説明する。
【0071】
図10は、休止拡散時間T2を制御しながらバーコードを形成する手順を示すフロー図である。このフローに従ってバーコードを形成するに際しては、表1に示す駆動テーブルAと駆動テーブルBを選択的に用いる。表1に示すT1、T2、及びT3は、図5を参照して説明した予備加熱時間T1、休止拡散時間T2、及び発泡加熱時間T3を表す。また、駆動テーブルAと駆動テーブルBは、記録ヘッドK1〜K4の温度に応じた予備加熱時間T1、休止拡散時間T2、及び発泡加熱時間T3を示す。
【0072】
このフローは、プリンタ10(図1参照)本体に電源が投入されることにより起動する。先ず、印刷データ(バーコード情報)の有無が確認され(S1001)、印刷データがある場合は、この印刷データをラスター毎に分割して記録ヘッドK1〜K3に割り振る(S1002)。続いて、各ラスター毎にデータの有無を確認し(S1003)、(n−1)ラスターに印刷データがある場合は、駆動テーブルBを選択し(S1006)、印刷を開始する(S1007)。駆動テーブルBを選択する理由は、駆動テーブルBでは同じヘッド温度のときは駆動テーブルAに比べて休止拡散時間T2が0.5μsec短くなっているので、n回目に吐出されるインク滴の量は、(n−1)回目に吐出されるインク滴の量よりも少なくなり、この結果、n回目に吐出されたインク滴によって形成される画素のサイズは、(n−1)回目に吐出されたインク滴によって形成される画素のサイズと同じになるからである。S1003において(n−1)ラスターに印刷データが無いと判定された場合は、そのラスター(nラスター)のみ、予め割り振られた記録ヘッド(K1、K2、K3のいずれか)ではなく、記録ヘッドK4に変更して(S1004)、駆動テーブルAを選択して(S1005)、印刷を開始する(S1007)。S1005で駆動テーブルAを選択した理由は、(n−1)ラスターに印刷データが無いので、n回目に吐出されたインク滴によって形成される画素のサイズは、(n−1)回目に吐出されたインク滴に影響されないからである。印刷終了するまで上記駆動条件で印刷を行う(S1008)。
【0073】
ラスターが連続する場合も、S1003のステップのように、印刷しようとする画素の前にデータが有るか無いかを判断して駆動テーブルA又はBを選択して印刷を続けていく。これにより、一つ前の画素を形成したインク滴に影響されない同じサイズの画素を形成できる。
【表1】
【0074】
上記した例では、ヘッド温度も加味して休止拡散時間T2を変更したが、休止拡散時間T2を変更せずに予備加熱時間T1を変更してもよい。この場合の例を表2に示す。表2に示す例では、休止拡散時間T2を3μsecに固定しておき、ヘッド温度の上昇に伴って予備加熱時間T1を短くしたものである。このように、休止拡散時間T2を固定して予備加熱時間T1を変更しても、連続して形成される画素のサイズを等しくできる。なお、表2では、ヘッド温度の上昇に伴って発泡加熱時間T3が短くなっている。この理由は、発熱体152(図3等参照)の耐久性を向上させるために発泡の開始温度を一定にしているので、ヘッド温度が高いほど発泡加熱時間T3が短くなるからである。発泡加熱時間T3の長短は、吐出されるインク滴の量には影響しない。
【表2】
【0075】
上記した表2と同様の設定で、予備加熱時間T1を変更せずに休止拡散時間T2を変更した例を表3に示す。表3に示す例では、予備加熱時間T1を1.24μsecに固定しておき、ヘッド温度の上昇に伴って休止拡散時間T2を短くしたものである。このように予備加熱時間T1を固定して休止拡散時間T2を変更しても、上述したように連続して形成される画素のサイズを等しくできる。なお、表3において、ヘッド温度の上昇に伴って発泡加熱時間T3が短くなっている理由は、表2と同じである。
【表3】
【0076】
インク滴の吐出量と休止拡散時間T2の関係について、図11と表4を参照して説明する。
【0077】
図11は、インク滴の吐出量と休止拡散時間T2の関係を示すグラフである。
【0078】
図11のグラフに示すように、予備加熱時間T1と発泡加熱時間T3を固定した場合、休止拡散時間T2が短い間(0から5μsecまでの間)は、表4に示すように休止拡散時間T2が短くなるに伴ってインク滴の吐出量も減少する。例えば、休止拡散時間T2が4μsecのときのインク滴の吐出量は18ngであるのに対し、休止拡散時間T2が1μsecのときのインク滴の吐出量は17.06ngとなる。
【表4】
【0079】
プリンタ10(図1参照)では、通常、休止拡散時間T2は5μsec未満であるので、休止拡散時間T2が短くなるに伴ってインク滴の吐出量は減ってくる。従って、予備加熱時間T1と発泡加熱時間T3を固定しておき、休止拡散時間T2を短くすることによりインク滴の吐出量を減少できるので、上述したように連続して形成される画素のサイズを等しくできることとなる。なお、複数のノズルが形成された一つの記録ヘッドの各ノズルごとに、それぞれのノズル内のインクの温度に基づいて、予備加熱時間T1又は休止拡散時間T2を変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明のインクジェット方式画像形成方法が採用されたプリンタの一例を模式的に示す正面図である。
【図2】図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。
【図3】ノズルとその周辺部を示す断面図である。
【図4】(a)は、発熱体を発熱させる前の待機状態を示す模式図であり、(b)は、発熱体が発熱してインク中に泡が発生すると同時にインク吐出口からインクが押し出された状態を示す模式図であり、(c)は、消泡すると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離した状態を示す模式図であり、(d)は、主滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図であり、(e)は、主滴に遅れて副滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図である。
【図5】発熱体を発熱させるタイミングを示す説明図である。
【図6】第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズと、第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズとを模式的に示す平面図である。
【図7】第n回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズと、第(n+1)回目に吐出されたインク滴が記録媒体に着弾したときのサイズとを模式的に示す平面図である。
【図8】(a)は、固定された4つの記録ヘッドの下をロール紙Pが搬送方向(矢印A方向)に搬送されている状態を示す模式図であり、(b)は、ロール紙Pにバーコードを印字する際に4つの記録ヘッドから吐出されたインク滴と各画素を対応させた説明図である。
【図9】休止拡散時間T2を変更することにより、記録媒体搬送方向に連続して形成される画素を同じサイズにする技術を示す説明図であり、(a)の縦軸は、ノズルから吐出されるインク滴の容量を示し、横軸は、記録ヘッドの温度(記録ヘッド内のインクの温度)を示し、(b)は、休止拡散時間T2を徐々に短くした例を示し、図5と同様のグラフである。
【図10】休止拡散時間T2を制御しながらバーコードを形成する手順を示すフロー図である。
【図11】インク滴の吐出量と休止拡散時間T2の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0081】
10 プリンタ
22K1、22K2、22K3、22K4 記録ヘッド
22K1n ノズル
100 CPU
152 発熱体
m 主滴
s 副滴
T1 予備加熱時間
T2 休止拡散時間
T3 発泡加熱時間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドに形成されたノズルからインク滴を吐出して記録媒体に着弾させて画像を形成するインクジェット方式画像形成方法において、
前記ノズルから吐出された一つのインク滴が記録媒体に着弾することにより形成される一つの画素のサイズ、及び前記一つの画素に連続して形成される次の一つの画素のサイズ双方が所定範囲内のサイズになるように、前記ノズルから連続してインク滴を吐出することを特徴とするインクジェット方式画像形成方法。
【請求項2】
前記ノズルからインク滴を吐出させる際に、該ノズル内のインクを加熱し粘性を低下させてインク吐出効率を高めるために予備的に該インクを温める予備加熱時間T1、この予備加熱時間T1による熱を前記ノズル内のインクに拡散させる休止拡散時間T2、及び膜沸騰を生じさせてインク滴を吐出させるために前記インクを加熱する、休止拡散時間T2に続く発泡加熱時間T3の3段階に別けて前記ノズル中のインクを加熱することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項3】
前記一つの画素のサイズ及び前記次の一つの画素のサイズ双方が前記所定範囲内のサイズになるように前記予備加熱時間T1及び前記休止拡散時間T2のいずれか一方又は双方を変更することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項4】
前記一つの画素を形成するために前記ノズルから前記一つのインク滴を吐出するときの前記予備加熱時間T1よりも、前記次の一つの画素を形成するために前記ノズルから一つのインク滴を吐出するときの前記予備加熱時間T1を短くすることを特徴とする請求項2又は3に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項5】
前記一つの画素を形成するために前記ノズルから前記一つのインク滴を吐出するときの前記休止拡散時間T2よりも、前記次の一つの画素を形成するために前記ノズルから一つのインク滴を吐出するときの前記休止拡散時間T2を短くすることを特徴とする請求項2、3、又は4に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項6】
前記ノズル内のインクの温度に基づいて、前記予備加熱時間T1又は前記休止拡散時間T2を変更することを特徴とする請求項4又は5に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項7】
前記一つの画素を形成するインク滴の主滴のサイズよりも、前記次の一つの画素を形成するインク滴の主滴のサイズが小さくなるように、前記ノズルから連続してインク滴を吐出することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項8】
前記記録ヘッドは、記録媒体が搬送される記録媒体搬送方向に直交する記録媒体幅方向に並んだ複数のノズルが形成されたものであり、
前記複数のノズルごとに、それぞれのノズル内のインクの温度に基づいて、前記予備加熱時間T1又は前記休止拡散時間T2を変更することを特徴とする請求項6又は7に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項9】
前記複数のノズルから同時にインク滴を吐出することにより前記記録媒体幅方向に並んだ複数の画素を形成することを特徴とする請求項8に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項10】
前記請求項1から9までのうちのいずれか一項に記載のインクジェット方式画像形成方法によって画像を形成することを特徴とするインクジェット方式画像形成装置。
【請求項1】
記録ヘッドに形成されたノズルからインク滴を吐出して記録媒体に着弾させて画像を形成するインクジェット方式画像形成方法において、
前記ノズルから吐出された一つのインク滴が記録媒体に着弾することにより形成される一つの画素のサイズ、及び前記一つの画素に連続して形成される次の一つの画素のサイズ双方が所定範囲内のサイズになるように、前記ノズルから連続してインク滴を吐出することを特徴とするインクジェット方式画像形成方法。
【請求項2】
前記ノズルからインク滴を吐出させる際に、該ノズル内のインクを加熱し粘性を低下させてインク吐出効率を高めるために予備的に該インクを温める予備加熱時間T1、この予備加熱時間T1による熱を前記ノズル内のインクに拡散させる休止拡散時間T2、及び膜沸騰を生じさせてインク滴を吐出させるために前記インクを加熱する、休止拡散時間T2に続く発泡加熱時間T3の3段階に別けて前記ノズル中のインクを加熱することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項3】
前記一つの画素のサイズ及び前記次の一つの画素のサイズ双方が前記所定範囲内のサイズになるように前記予備加熱時間T1及び前記休止拡散時間T2のいずれか一方又は双方を変更することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項4】
前記一つの画素を形成するために前記ノズルから前記一つのインク滴を吐出するときの前記予備加熱時間T1よりも、前記次の一つの画素を形成するために前記ノズルから一つのインク滴を吐出するときの前記予備加熱時間T1を短くすることを特徴とする請求項2又は3に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項5】
前記一つの画素を形成するために前記ノズルから前記一つのインク滴を吐出するときの前記休止拡散時間T2よりも、前記次の一つの画素を形成するために前記ノズルから一つのインク滴を吐出するときの前記休止拡散時間T2を短くすることを特徴とする請求項2、3、又は4に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項6】
前記ノズル内のインクの温度に基づいて、前記予備加熱時間T1又は前記休止拡散時間T2を変更することを特徴とする請求項4又は5に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項7】
前記一つの画素を形成するインク滴の主滴のサイズよりも、前記次の一つの画素を形成するインク滴の主滴のサイズが小さくなるように、前記ノズルから連続してインク滴を吐出することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項8】
前記記録ヘッドは、記録媒体が搬送される記録媒体搬送方向に直交する記録媒体幅方向に並んだ複数のノズルが形成されたものであり、
前記複数のノズルごとに、それぞれのノズル内のインクの温度に基づいて、前記予備加熱時間T1又は前記休止拡散時間T2を変更することを特徴とする請求項6又は7に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項9】
前記複数のノズルから同時にインク滴を吐出することにより前記記録媒体幅方向に並んだ複数の画素を形成することを特徴とする請求項8に記載のインクジェット方式画像形成方法。
【請求項10】
前記請求項1から9までのうちのいずれか一項に記載のインクジェット方式画像形成方法によって画像を形成することを特徴とするインクジェット方式画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−320281(P2007−320281A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155870(P2006−155870)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
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