説明

インクジェット方式画像形成装置

【課題】インクジェット方式の画像形成装置において、ミストの発生による影響を抑えつつ、低温時における印刷開始時間を早める。
【解決手段】印刷ジョブに基づく印刷動作を制御する印刷ジョブ制御手段と、駆動信号に基づいてインクを吐出する多数のノズルを備えたインク吐出手段と、前記駆動信号を出力するインク吐出駆動手段と、インク温度計測手段とを備え、インク温度計測値が第1基準温度以上の場合に、インク吐出駆動手段は、第1電圧値の前記駆動信号を出力し、インク温度計測値が第1基準温度よりも低い第2基準温度以上、第1基準温度未満の場合に、印刷ジョブ制御手段は、印刷ジョブにおける印刷枚数を算出し、印刷枚数が所定枚数以下であれば印刷動作を実行し、インク吐出駆動手段は、印刷動作を実行する場合には、第1電圧値よりも大きい第2電圧値の前記駆動信号を出力する画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の画像形成装置に係り、特に、ミストの発生による影響を抑えつつ、低温時における印刷開始時間を早めることができる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印字ヘッドから印刷用紙にインクを吐出することで画像形成を行なうインクジェット方式のプリンタが広く用いられている。インクジェットプリンタの印字ヘッドは、圧電素子等のインク吐出機構に駆動電圧を印加することでインクの吐出を行なっている。インクジェットプリンタで用いられるインクは、一般に低温環境時で粘度が増大するという特性を有しており、通常の駆動電圧では適正な吐出量の確保が難しくなる。このため、低温時では、ヒータでインクを温め、インクが適切な温度になるまで印刷を行なわないようにしている。このため、低温環境時に印刷開始時間が遅くなるという問題がある。特に、インク循環経路を備えたインク循環型のプリンタでは加熱すべきインク量が多いため、この問題はより顕著となる。
【0003】
また、インクジェットプリンタには、低温環境時のインク粘度増加による印刷開始時間の遅れとは別に、特許文献1に記載されているように、インク吐出時に発生する不要な微小インク滴であるミストが印刷用紙やプリンタ筐体内に付着して印刷品質を低下させてしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2007−296754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低温環境時に印刷開始時間を早めるために、インク吐出機構に印加する駆動電圧を大きくして適正なインク吐出量を確保することが考えられる。しかしながら駆動電圧を大きくすると、インクの吐出速度が増加し、発生するミスト量が増加してしまう。発生するミスト量が増加すると、プリンタ筐体内に付着するミストも増え、飛散したミストやプリンタ筐体内に蓄積したミストが印刷用紙を汚して印刷品質が低下するという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、インクジェット方式の画像形成装置において、ミストの発生による影響を抑えつつ、低温時における印刷開始時間を早めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である画像形成装置は、受け付けた印刷ジョブに基づく印刷動作を制御する印刷ジョブ制御手段と、駆動信号に基づいてインクを吐出する多数のノズルを備えたインク吐出手段と、前記印刷ジョブに基づく前記駆動信号を出力するインク吐出駆動手段と、インク温度を計測するインク温度計測手段とを備え、前記インク温度計測手段のインク温度計測値が第1基準温度以上の場合に、前記インク吐出駆動手段は、第1電圧値の前記駆動信号を出力し、前記インク温度計測手段のインク温度計測値が第1基準温度よりも低い第2基準温度以上、第1基準温度未満の場合に、前記印刷ジョブ制御手段は、印刷ジョブにおける印刷枚数を算出し、印刷枚数が所定枚数以下であれば印刷動作を実行し、前記インク吐出駆動手段は、印刷動作を実行する場合には、第1電圧値よりも大きい第2電圧値の前記駆動信号を出力することを特徴とする。
【0007】
本発明では、インク低温時において通常よりも大きい電圧値の駆動信号を出力することにより、適正なインク吐出量を確保することができるため、低温時における印刷開始時間を早めることができる。このとき、印刷枚数が所定枚数以下の印刷ジョブを実行することにより、ミスト発生量増加の影響を少なくしている。このため、本発明では、ミストの発生による影響を抑えつつ、低温時における印刷開始時間を早めることができる。
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様である画像形成装置は、受け付けた印刷ジョブに基づく印刷動作を制御する印刷ジョブ制御手段と、駆動信号に基づいてインクを吐出するインク吐出手段を備えたインク吐出手段と、前記印刷ジョブに基づく前記駆動信号を出力するインク吐出駆動手段と、前記印字手段の対向面に配置され、印刷用紙を搬送する用紙搬送手段と、インク温度を計測するインク温度計測手段とを備え、前記インク温度計測手段のインク温度計測値が第1基準温度以上の場合に、前記インク吐出駆動手段は、第1電圧値の前記駆動信号を出力し、前記インク温度計測手段のインク温度計測値が第1基準温度よりも低い第2基準温度以上、第1基準温度未満の場合に、前記印刷ジョブ制御手段は、印刷ジョブにおける画像形成領域を算出し、画像形成領域が印刷用紙の周辺部の所定領域を含まないものであれば印刷動作を実行し、前記インク吐出駆動手段は、印刷動作を実行する場合には、第1電圧値よりも大きい第2電圧値の前記駆動信号を出力することを特徴とする。
【0009】
本発明では、インク低温時において通常よりも大きい電圧値の駆動信号を出力することにより、適正なインク吐出量を確保することができるため、低温時における印刷開始時間を早めることができる。このとき、画像形成領域が印刷用紙の周辺部の所定領域を含まない印刷ジョブを実行することで、ミスト発生量増加の影響を少なくしている。このため、本発明では、ミストの発生による影響を抑えつつ、低温時における印刷開始時間を早めることができる。
【0010】
本発明は、前記用紙搬送手段が、無端の搬送帯と、当該搬送帯内側に配置された吸引手段とを備え、前記用紙搬送手段が、印刷用紙を、前記搬送帯に設けられた多数の通気孔を介して吸着して搬送する場合に特に効果的に適用することができる。
【0011】
このとき、印刷用紙の搬送方向に発生する風の影響を考慮して、前記印刷用紙の周辺部の所定領域は、搬送方向の周辺部の幅が、搬送方向に交わる方向の周辺部の幅よりも広く定められていることが望ましい。
【0012】
また、いずれの態様においても、インク貯蔵手段を経路中に含み、前記インク吐出手段にインクを供給し、吐出されなかったインクを前記インク貯蔵手段に戻すインク循環経路をさらに備えている場合は、インク量が多いため、本発明を効果的に適用することができる。
【0013】
このとき、前記インク循環経路中にインクを加熱するインク加熱手段を設け、前記インク加熱手段は、前記インク温度計測手段のインク温度計測値が第1基準温度未満の場合に、インクを加熱し、インク温度計測値が第1基準温度以上になると加熱を停止することが望ましい。
【0014】
また、いずれの態様においても、前記インク温度計測手段のインク温度計測値が第1基準温度よりも低い第2基準温度以上、第1基準温度未満の場合に、前記印刷ジョブ制御手段は、複数の印刷ジョブを受け付けている場合は、印刷動作を実行可能な印刷ジョブを優先して実行することが望ましい。これにより、低温時に、印刷ジョブ全体としての印刷開始待ち時間を短くすることができる。
【0015】
さらに、ユーザから第1基準温度未満での印刷を行なわない旨の指示を受け付けた場合には、前記インク温度計測手段のインク温度計測値が第1基準温度よりも低い第2基準温度以上、第1基準温度未満の場合に、前記インク吐出駆動手段および前記搬送制御手段は前記の動作は行なわず、前記インク吐出手段によるインク吐出は行なわないようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インクジェット方式の画像形成装置において、ミストの発生による影響を抑えつつ、低温時における印刷開始時間を早めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ100の概要を示す図である。本図では特に印刷用紙搬送経路を中心に示している。本図に示すようにインクジェットプリンタ100は、印刷用紙の供給を行なう給紙機構として、筐体側面の外部に露出したサイド給紙台320と、筐体内部に設けられた複数の給紙トレイ(330a、330b、330c、330d)とを備えている。また、印刷済の印刷用紙を排出する排紙機構として排紙口340を備えている。
【0018】
インクジェットプリンタ100は、インクジェット方式のラインカラープリンタである。インクジェット方式のラインカラープリンタは、印字機構として、用紙搬送方向に直交する方向に伸び、多数のノズルが形成されたインクジェットヘッドを複数本備え、それぞれのインクジェットヘッドから黒またはカラーのインクを吐出してライン単位で画像形成を行なう。
【0019】
また、インクジェットプリンタ100は、CPU、メモリ等が配置されたコントローラ基板等で構成される制御部200、メニューを表示したりユーザからの操作を受け付けたりする操作パネル400、および、その他の機能部(不図示)を備えている。
【0020】
サイド給紙台320および給紙トレイ330のいずれかの給紙機構から1枚ずつ給紙された印刷用紙は、ローラ等の駆動機構によって筐体内の給紙系搬送路(図中の黒太線)に沿って搬送され、レジスト部Rgに導かれる。ここでレジスト部Rgは、印刷用紙の先端の位置あわせと斜行修正を行なうために設けられており、1対のレジストローラ350を備えて構成される。給紙された印刷用紙はレジスト部Rgで一時停止し、所定のタイミングで印字機構方向に搬送される。
【0021】
レジスト部Rgのさらに搬送方向側には、複数本のインクジェットヘッド130が設けられている。本実施形態では、レジスト部Rgから近い順に、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の順に4本並んでいるものとする。印刷用紙は、インクジェットヘッド130の対向面に設けられた環状の搬送ベルト360によって印刷条件により定められる速度で搬送されながら、各インクジェットヘッド130から吐出されたインクによりライン単位で画像形成される。搬送ベルト360の内側には吸引ファン370が設けられている。搬送ベルト360の表面には多数の通気孔が形成されており、吸引ファン370の回転によって生じる吸引力で、印刷用紙は搬送ベルト360に吸着されて搬送される。
【0022】
印刷済の印刷用紙は、さらに、ローラ等の駆動機構によって筐体内を搬送される。印刷用紙の片側の面のみに印刷を行なう片面印刷の場合は、そのまま排紙口340に導かれて排紙され、排紙口340の受台として設けられた排紙台345に印刷面を下にして積載されていく。排紙台345は、筐体から突出したトレイ形状をしており、ある程度の厚みを有している。排紙台345は傾斜しており、傾斜の下位置に形成された壁により、排紙口340から排紙され、傾斜に沿って滑落する印刷用紙が自然に整えられて重なっていくようになっている。
【0023】
印刷用紙の両面に印刷を行なう両面印刷の場合は、表面(最初に印刷される面を「表面」、次に印刷される面を「裏面」とする)印刷終了時には排紙口340に導かれずに、さらに筐体内を搬送される。このため、インクジェットプリンタ100は、裏面印刷用に搬送路を切り替えるための切替機構380を備えている。切替機構380によって排紙口340に導かれなかった印刷用紙は、スイッチバック経路SRに引き込まれ、スイッチバックを行ない、搬送路に対して表裏が反転する。そして、ローラ等の駆動機構によって再度レジスト部Rgに導かれ、一時停止する。その後、所定のタイミングで印字機構方向に搬送され、表面と同様の手順によって裏面の印刷が行なわれる。裏面の印刷が行なわれ、両面に画像が形成された印刷用紙は、排紙口340に導かれて排紙され、排紙口340の受台として設けられた排紙台345に積載されていく。
【0024】
インクジェットプリンタ100では、両面印刷時におけるスイッチバックを、排紙台345内に設けられた空間を利用して行なうようにしている。排紙台345内に設けられた空間は、スイッチバック時に印刷用紙が外部から取り出せないように覆われた構成となっている。これにより、利用者が誤ってスイッチバック動作中の印刷用紙を引き抜いてしまうことを防ぐことができる。また、排紙台345は、本来インクジェットプリンタ100に備えられているものであり、排紙台345内の空間を利用してスイッチバックを行なうことにより、インクジェットプリンタ100内に、別途スイッチバック用の空間を設ける必要がなくなる。したがって、筐体のサイズが増大してしまうことを防ぐことができる。さらには、排紙口とスイッチバック経路とを共用しないため、スイッチバック処理と他の用紙の排紙とを並行して行なうことができる。
【0025】
図2は、インクジェットプリンタ100のインク経路関連機構および制御部200の構成を説明するための図である。本図に示すようにインクジェットプリンタ100は、CMYK4色のインクを用いて印刷を行なうカラープリンタとしている。各インクは着脱可能なインクボトルから供給されるようになっており、シアンのインクを供給するインクボトル110C、マゼンタのインクを供給するインクボトル110M、イエローのインクを供給するインクボトル110Y、黒のインクを供給するインクボトル110Kが備えられている。なお、以下においてインク色にこだわらない場合にはインクボトル110で代表させて説明する。他の機能部についても同様である。
【0026】
インクボトル110から供給されたインクは、樹脂、金属等のパイプにより形成されたインク経路を通って、インクジェットヘッド130の下流側に設けられた下流タンクに一旦溜められる。このため、インクジェットプリンタ100には、シアンのインクを溜める下流タンク122C、マゼンタのインクを溜める下流タンク122M、イエローのインクを溜める下流タンク122Y、黒のインクを溜める下流タンク122Kが備えられている。
【0027】
下流タンク122に溜められたインクは、ポンプによりインクジェットヘッド130の上流側に設けられた上流タンクに送られる。このため、インクジェットプリンタ100には、ポンプ170C、ポンプ170M、ポンプ170Y、ポンプ170Kおよび上流タンク120C、上流タンク120M、上流タンク120Y、上流タンク120Kが備えられている。上流タンク120に送られたインクは、インクを吐出する多数のノズルが設けられているインクジェットヘッド130に送られて画像形成に用いられる。
【0028】
上述のようにインクジェットプリンタ100には、シアンのインクを吐出するインクジェットヘッド130C、マゼンタのインクを吐出するインクジェットヘッド130M、イエローのインクを吐出するインクジェットヘッド130Y、黒のインクを吐出するインクジェットヘッド130Kが備えられている。本実施形態では、ピエゾ素子を用いてインクを噴射させる方式のインクジェットヘッドが用いられているものとする。ただし、他の方式、例えば、発熱素子を用いてインクに熱を加えて気泡を発生させることでインクを噴射させる方式のインクジェットヘッドを用いてもよい。
【0029】
インクジェットヘッド130には、制御部200から送られるインク吐出データに基づいてピエゾ素子を駆動する駆動信号を出力するドライバ132(132C、132M、132Y、132K)が備えられている。なお、インクジェットプリンタ100は、インクを循環させる循環方式を採用しており、インクジェットヘッド130で画像形成の際に消費されなかったインクは下流タンク122に戻される。上流タンク120からインクジェットヘッド130を経由して下流タンク122へのインク帰還は、上流タンク120と下流タンク122との水頭差を利用している。
【0030】
インクは印刷品質が保証される温度範囲が定められており、環境温度が低く、インク温度が保証温度範囲を下回っているとインクを加熱する必要がある。このため、インク経路中にヒータ140が設けられている。一方、ドライバ132やピエゾ素子は動作することにより発熱する。これらの発熱やインク振動のジュール熱により、高温時におけるインク温度上昇の影響等を抑制するために、インクを冷やす冷却器160が設けられている。ヒータ140、冷却器160を通ったインクは上流タンク120に送られる。
【0031】
各インクジェットヘッド130には、インク温度を直接的あるいは間接的に測定する温度計134(134C、134M、134Y、134K)が備えられている。
【0032】
制御部200は、インクジェットプリンタ100における印刷ジョブ処理、インク温度制御、その他の処理を制御する機能部である。本実施形態において制御部200は、印刷ジョブ制御部210、画像処理部220、インク吐出制御部230、搬送制御部240、インク循環制御部250、インク温度調整部260を備えている。
【0033】
印刷ジョブ制御部210は、ユーザから受け付けた印刷ジョブの実行、中断、再開、エラー対処、ログ記録等を制御する。印刷から受け付ける印刷ジョブは、コンピュータから送られる印刷データに基づく印刷処理、画像読取装置から読み取った画像データに基づく複写処理、電話回線を通じて送られた画像データに基づくファクシミリ印刷処理等とすることができる。
【0034】
印刷ジョブ制御部210は、後述するようにインク温度低温時においては、印刷ジョブが所定の条件を満たす場合に印刷を実行する。ここで、所定の条件は、印刷枚数が所定枚数以下であること、あるいは、印刷領域が印刷用紙の周辺部の所定領域を含まないこととすることができる。これにより、ミストの発生量を抑えるようにする。このため、印刷ジョブ制御部210は、印刷枚数算出部211、印刷領域算出部212、印刷実行判定部213を備えている。ただし、印刷枚数算出部211、印刷領域算出部212は、いずれかを備えていれば足りる。
【0035】
印刷枚数算出部211は、処理対象の印刷ジョブを実行した場合に印刷される用紙の枚数を算出する。印刷される用紙の枚数は、例えば、ページ数×部数とすることができる。印刷領域算出部212は、処理対象の印刷ジョブを実行した場合に印刷用紙に画像形成される領域範囲を算出する。画像形成される領域範囲は、すなわち、インクが吐出される領域範囲である。複数ページを含む印刷ジョブであれば、ページ毎に領域範囲を算出する。
【0036】
印刷実行判定部213は、印刷枚数算出部211あるいは印刷領域算出部212の算出結果にしたがって処理対象の印刷ジョブを実行するかどうかを判定する。具体的には、インクが低温度の場合、印刷枚数が所定枚数以下の印刷ジョブあるいは印刷領域が印刷用紙の周辺部の所定領域を含まない印刷ジョブであれば印刷ジョブを実行して印刷動作を行なう。これらの条件を満たす印刷ジョブは、ミストの発生による影響を抑えることができる印刷ジョブである。
【0037】
また、印刷ジョブ制御部210は、温度低温時における早期印刷開始を実行するかどうかの選択をユーザから受け付けることができる。
【0038】
画像処理部220は、印刷ジョブの対象となっている画像データに対する画像処理を行なう。画像処理部220が行なう画像処理は、例えば、印刷データの展開処理、画像データの色変換処理、二値化処理、中間調処理等とすることができる。インク吐出制御部230は、画像処理後の画像データに基づいてドット毎のインク吐出量を算出し、インクジェットヘッド130のドライバ132に出力する。ここで、インクジェットヘッド130は、階調をインクのドロップ数で表わしており、画像のハイライト部分は少ないドロップ数で表現し、シャドウ部分は多くのドロップ数で表現する。
【0039】
搬送制御部240は、印刷用紙の搬送を行なうためにレジストローラ350や搬送ベルト360、その他搬送機構の動作を制御する。インク循環制御部250は、ポンプ170等の動作を制御することによって、インク循環経路内のインクを循環させる。インク温度調整部260は、インクジェットヘッド130内に設けられた温度計134の計測結果に応じてヒータ140または冷却器160を動作させることで、インク温度が適正温度範囲内に収まるように制御する。
【0040】
図3は、インクジェットヘッド130の構成を示すブロック図である。本図に示すように、インクジェットヘッド130は、インク循環経路の一部を構成するインク経路135を介してインクが供給され、インク経路135を流れるインクの温度を計測する温度計134を備えている。
【0041】
インク吐出制御部230が出力する画素毎のインクドロップ数を示す制御データはドライバ132に入力され、ドライバ132は制御データに基づいて、所定の電圧値の駆動信号をピエゾ素子群136に出力する。ピエゾ素子群136が駆動信号に応じて変形することにより、ノズル群137からインクが吐出される。したがって、ピエゾ素子群136とノズル群137はインク吐出手段として機能する。また、ドライバ132は、インク吐出駆動手段として機能し、インク温度が低いときに、通常よりも大きな電圧の駆動信号をピエゾ素子群136に出力する。
【0042】
次に、本実施形態における印刷実行処理について説明する。本実施形態では、インクの適正温度の下限値を第1基準温度としている。第1基準温度は、例えば、25℃とすることができる。このため、インク温度調整部260は、インク温度が25℃未満の場合には、ヒータ140を動作させてインクを加熱する。このとき、インク循環制御部250は、インクを循環させる。
【0043】
ここで、インク温度が25℃以上になるまで印刷が実行されないとすると、インク温度が低いときに印刷開始時間が遅くなってしまう。特に、本実施形態のインクジェットプリンタ100は、インク循環型であるため、加熱すべきインク量が多く、インク加熱時間が余計に必要となる。
【0044】
そこで、インク温度の第2基準温度を定め、ユーザが希望する場合には、インク温度が第2基準温度以上であれば印刷を実行する。ここで、第2基準温度は、第1基準温度よりも低い温度であり、例えば、20℃とすることができる。ただし、インク温度が第1基準温度よりも低い場合には、インクの粘度が増加して、適正なインク吐出量が確保できなくなる。そこで、ピエゾ素子群136に出力する駆動信号の電圧値を通常よりも大きくすることで適正なインク吐出量を確保する。
【0045】
しかしながら、駆動電圧を大きくすると、インクの吐出速度が増加し、発生するミスト量が増加してしまう。発生するミスト量が増加すると、プリンタ筐体内に付着するミストも増え、飛散したミストや筐体内に蓄積したミストが印刷用紙を汚して印刷品質が低下するという問題が生じる。そこで、本実施形態では、以下の実施例に示すような印刷実行処理を行なうことにより、ミストの発生による影響を抑えるものとする。なお、ここでは、簡単のため、インク温度が高温となり適正範囲を超えている場合は取り扱わないものとする。
【0046】
図4は、本発明の第1実施例の印刷実行処理を示すフローチャートである。第1実施例では、印刷枚数に注目して低温時の印刷実行を制御する。まず、インク温度の計測値が第1基準温度以上、例えば25℃以上であれば(S101:Yes)、適正温度範囲内であるとして通常の印刷処理を実行する(S112)。なお、インク加熱を行なっていた場合にはインク加熱を停止する(S111)。ここで、インク色毎に温度の計測値が異なる場合は、例えば、各インク温度の平均値で判断したり、最も低いインク温度を基準に判断したりすることができる。通常の印刷処理では、ドライバ132は、適正温度範囲内において適正な吐出量が確保できる通常の電圧値の駆動信号をピエゾ素子群136に出力する。
【0047】
一方、インク温度の計測値が第1基準温度未満、例えば25℃未満であれば(S101:No)、インク温度調整部260が、インク温度を適正温度に上昇させるためにヒータ140を動作させ、インクを加熱する(S102)。
【0048】
ユーザによって、インク低温時における早期印刷開始が指示されていない場合(S103:No)には、インク温度の計測値が第1基準温度以上になるまで印刷を行なわずに待機し、インク温度の計測値が第1基準温度以上になると(S101:Yes)、インク加熱を停止し(S111)、通常の印刷処理を実行する(S112)。
【0049】
ここで、ユーザは、インク低温時における早期印刷開始を望む場合には、例えば、印刷指示を行なうプリンタドライバで早期印刷開始の設定を行なうことができる。あるいは、インクジェットプリンタ100の操作パネル400を介して早期印刷開始の設定を行えるようにしてもよい。さらには、管理者が早期印刷開始を行なうか否かについてデフォルトの設定が行えるようにしてもよい。
【0050】
インク低温時における早期印刷開始が指示されている場合(S103:Yes)には、インク温度の計測値が第2基準温度以上、例えば20℃以上であるかどうかを判断する(S104)。その結果、インク温度の計測値が第2基準温度未満の場合(S104:No)は、インク温度の計測値が第2基準温度以上になるまで待機する。これは、第2基準温度未満の場合は、インクの粘度の増加が大きく、駆動信号の電圧を大きくしても適切なインク吐出量が確保できないからである。逆にいえば、駆動信号の電圧を大きくしても適正なインク吐出量が確保できない温度を第2基準温度として設定する。
【0051】
インク温度の計測値が第2基準温度以上の場合(S104:Yes)は、印刷枚数算出部211が、処理対象となっている印刷ジョブで印刷される印刷用紙の枚数を算出する(S105)。その結果、印刷枚数が所定の許容枚数以下であれば(S106:Yes)、印刷処理を実行する(S107)。このとき、適正なインク吐出量を確保するために、通常よりも大きな電圧値の駆動信号をピエゾ素子群136に出力する(S107)。
【0052】
図5は、ピエゾ素子群136に出力する駆動信号の例を示す図である。図5(a)は、通常時に出力する駆動信号を示し、図5(b)は低温時に出力する駆動信号を示している。ここで、駆動信号は、1ドロップについて、インク室を拡大させる負電圧パルスとインク室を収縮させる正電圧パルスを1セットとしてピエゾ素子に印加する。したがって、複数のドロップの画素に対しては、このパルスセットを複数回の繰り返し印加することになる。また、インクの吐出量を安定させるために最初のパルスセットの前にプリパルスと呼ばれる短いパルスを挿入している。
【0053】
本実施形態では、インク温度の計測値が第1基準温度以上の通常時には、図5(a)に示すように、電圧値V1の駆動信号をピエゾ素子に出力し、インク温度の計測値が第2基準温度以上第1基準温度未満の低温時には、図5(b)に示すように、V1よりも大きい電圧値V2の駆動信号をピエゾ素子に出力する。
【0054】
これによって、インク低温時においても適正なインク吐出量を確保するようにしているが、駆動電圧を大きくしたことに伴い、インク吐出速度が増加し、ミストの発生量が増加する。そこで、第1実施例では、ミストの発生による影響を抑えるために、印刷枚数が許容枚数以下の印刷ジョブであれば印刷動作を実行するようにしている。
【0055】
ここで、インク低温時に実行する印刷ジョブを、印刷枚数が許容枚数以下の印刷ジョブとする理由は、以下の通りである。すなわち、ミストの発生によってプリンタ筐体内にミストが蓄積していくが、駆動電圧を大きくすることによりミスト発生量が増加しても、多枚数でなければ1回の印刷ジョブで蓄積するミスト量がそれほどは多くはならない。このため、所定枚数内の印刷動作であれば許容できると考えられるからである。したがって、許容枚数は、単位枚数の印刷ジョブで蓄積するミスト量、平均印字率、プリンタ筐体内のメンテナンスが必要となるミスト蓄積量・印刷枚数等を考慮して、例えば、100枚等の枚数を実験的にあらかじめ定めておくことができる。
【0056】
その後、インク温度の計測値が第1基準温度以上になると(S108:Yes)、インク加熱を停止する(S109)。そして、通常よりも大きな電圧値の駆動信号での印刷を行なっていた場合は、通常の電圧値の駆動信号に変更して、印刷を継続する(S110)。この印刷動作は、通常の電圧値の駆動信号であるため、ミストの発生量は、大きな駆動電圧での印刷動作ほどは多くない。印刷枚数が許容枚数より多くて印刷を行なっていない場合には、通常の電圧値の駆動信号で印刷実行を開始する(S110)。
【0057】
以上の印刷動作を行なう結果、第1実施例では、図6に示すように、許容枚数以下の印刷ジョブであれば、インク温度の計測値が第2基準温度以下の場合、ヒータを動作させてインクを加熱し、インク温度が第2基準温度となった時刻t1から印刷動作を開始することができるようになる。従来は、駆動信号を通常のV1よりも大きなV2とすることによるミスト発生量増加の影響が大きく、インク温度が第1基準温度なる時刻t2まで印刷を開始することができなかったが、第1実施例では、印刷枚数が許容枚数の印刷ジョブを実行することで、ミスト発生量増加の影響を少なくしている。このため、本実施例では、ミストの発生による影響を抑えつつ、低温時における印刷開始時間を早めることができる。
【0058】
次に、第2実施例について説明する。図7は、本発明の第2実施例の印刷実行処理を示すフローチャートである。第2実施例では、印刷領域に注目して低温時の印刷実行を制御する。まず、インク温度の計測値が第1基準温度以上、例えば25℃以上であれば(S201:Yes)、適正温度範囲内であるとして通常の印刷処理を実行する(S212)。なお、インク加熱を行なっていた場合にはインク加熱を停止する(S211)。ここで、インク色毎に温度の計測値が異なる場合は、例えば、各インク温度の平均値で判断したり、最も低いインク温度を基準に判断したりすることができる。通常の印刷処理では、ドライバ132は、適正温度範囲内において適正な吐出量が確保できる通常の電圧値の駆動信号をピエゾ素子群136に出力する。
【0059】
一方、インク温度の計測値が第1基準温度未満、例えば25℃未満であれば(S201:No)、インク温度調整部260が、インク温度を適正温度に上昇させるためにヒータ240を動作させ、インクを加熱する(S202)。
【0060】
ユーザによって、インク低温時における早期印刷開始が指示されていない場合(S203:No)には、インク温度の計測値が第1基準温度以上になるまで印刷を行なわずに待機し、インク温度の計測値が第1基準温度以上になると(S201:Yes)、インク加熱を停止し(S211)、通常の印刷処理を実行する(S212)。
【0061】
インク低温時における早期印刷開始が指示されている場合(S203:Yes)には、インク温度の計測値が第2基準温度以上、例えば20℃以上であるかどうかを判断する(S204)。その結果、インク温度の計測値が第2基準温度未満の場合(S204:No)は、インク温度の計測値が第2基準温度以上になるまで待機する。
【0062】
インク温度の計測値が第2基準温度以上の場合(S204:Yes)は、処理対象となっている印刷ジョブで印刷用紙に画像形成される領域範囲を算出する(S205)。その結果、印刷領域が印刷用紙の周辺部の所定領域を含まなければ(S206:Yes)、印刷処理を実行する(S207)。印刷ジョブが複数のページを含む場合には、すべてのページにおいて印刷領域が印刷用紙の周辺部の所定領域を含まなければ印刷処理を実行する。このとき、適正なインク吐出量を確保するために、通常よりも大きな電圧値の駆動信号をピエゾ素子群136に出力する(S207)。
【0063】
ここで、インク低温時に実行する印刷ジョブを、印刷領域が印刷用紙の周辺部の所定領域を含まない印刷ジョブとする理由は、以下の通りである。すなわち、図8に示すように、印刷用紙は搬送ベルト360で搬送される。ここで、印刷用紙P1、P2、P3の順番で印刷が行なわれ、本図の状態では、レジストローラ350は、印刷用紙P3を一時停止させており、適切な用紙間隔となるタイミングで搬送ベルト360方向に印刷用紙P3を搬送させる。
【0064】
上述のように搬送ベルト360の表面には、通気孔が多数形成されており、吸引ファン370により発生する空気の流れによる吸引力で印刷用紙は搬送ベルト360に吸着される。この空気の流れは、図9に示すように、印刷用紙がない領域においては、インクジェットヘッド130方向から通気孔を通って吸引ファン370方向に導かれることになる。このため、印刷用紙の周辺では、印刷用紙の外側に向かう風の流れが生じていることになる。
【0065】
インクジェットヘッド130で発生したミストは、風の流れに乗って印刷用紙の周辺部に集中的に舞うことになり、結果として印刷用紙の周辺部でミストの影響が目立つことになる。また、印刷用紙が高速で搬送されると、印刷用紙の搬送方向に沿っても空気の流れが生じるため、ミストは、印刷用紙の搬送方向の端部においてより目立つことになる。
【0066】
したがって、印刷領域が印刷用紙の周辺部の所定領域を含まなければ、印刷用紙の周辺部で発生するミスト量が少なくなり、この結果、印刷用紙の周辺部に導かれるミスト量も少なくなるため、ミストの影響を減らすことができると考えられるからである。
【0067】
したがって、周辺部分の所定領域である4辺の幅Wa、Wb、Wc、Wd(図8)については、ミストの影響が目立たなくなる値を実験等によってあらかじめ定めておくことができる。
【0068】
その後、インク温度の計測値が第1基準温度以上になると(S208:Yes)、インク加熱を停止する(S209)。そして、通常よりも大きな電圧値の駆動信号での印刷を行なっていた場合は、通常の電圧値の駆動信号に変更して、印刷を継続する(S210)。この印刷動作は、通常の電圧値の駆動信号であるため、ミストの発生量は、大きな駆動電圧での印刷動作ほどは多くない。印刷領域が印刷用紙の周辺部の所定領域を含んでいて印刷を行なっていない場合には、通常の電圧値の駆動信号で印刷実行を開始する(S210)。このように、第2実施例では、第1実施例と同様に、ミストの影響を抑えつつ、低温時における印刷開始時間を早めることができる。
【0069】
次に、本実施形態の変形例として、インクジェットプリンタ100が複数の印刷ジョブを受け付けている場合の処理について図10のフローチャートを参照して説明する。印刷ジョブは、通常、受付順に処理されるため、最初に受け付けた印刷ジョブが、インク低温度時の印刷実行の条件を満たさないとすると、後続の印刷ジョブに印刷実行可能な印刷ジョブがあっても、インク温度が第1基準温度に達するまで印刷動作は開始されないことになる。そこで、本実施形態の変形例では、以下のような処理を行なうようにする。
【0070】
まず、印刷ジョブ制御部210の実行判定部213は、最初に受け付けた先頭の印刷ジョブを判定対象とする(S301)。そして、実施例1あるいは実施例2の判断基準にしたがって、判定対象となった印刷ジョブが実行可能であるかどうかを判断する(S302)。すなわち、実施例1の判断基準を用いる場合には、印刷枚数が許容枚数以下であるかどうかを判定し、実施例2の判断基準を用いる場合には、印刷領域が印刷用紙の周辺部の所定領域を含むかどうかを判定する。
【0071】
この判断を行なった結果、実行可能であった場合(S302:Yes)は、判定対象となった印刷ジョブを実行する(S303)。一方、実行可能でなかった場合(S302:No)は、その印刷ジョブは実行しない。
【0072】
そして、次の印刷ジョブを受け付けている場合(S304:Yes)は、次の印刷ジョブを判定対象として(S305)、印刷実行可能かどうかを判定する(S302)。判定の結果、実行可能であれば(S302:Yes)、判定対象の印刷ジョブを実行する(S303)。
【0073】
以上の処理を繰り返すことにより、印刷ジョブの受付順が遅い印刷ジョブであっても、印刷実行可能な印刷ジョブは、印刷実行可能でない印刷ジョブに優先して印刷が実行されることになる。このような制御を行なうことにより、印刷ジョブ全体としての印刷開始待ち時間を短くすることができるようになる。例えば、最初に受け付けた印刷ジョブが、インク低温度時の印刷実行の条件を満たさない場合であっても、後続の印刷ジョブに印刷実行可能な印刷ジョブがあれば、インク温度が第1基準温度に満たない第2基準温度以上の状態で印刷動作を開始することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概要を示す図である。
【図2】インクジェットプリンタのインク経路関連機構および制御部の構成を説明するための図である。
【図3】インクジェットヘッドの構成を示すブロック図である。
【図4】第1実施例の印刷実行処理を説明するフローチャートである。
【図5】電圧値を変化させた駆動信号の例を示す図である。
【図6】インク温度と印刷開始時間との関係を示す図である。
【図7】第2実施例の印刷実行処理を説明するフローチャートである。
【図8】搬送ベルトによる印刷用紙の搬送を示す図である。
【図9】吸引ファンによる風の流れを説明する図である。
【図10】インクジェットプリンタが複数の印刷ジョブを受け付けている場合の処理について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
100…インクジェットプリンタ、110…インクボトル、120…上流タンク、122…下流タンク、130…インクジェットヘッド、132…ドライバ、134…温度計、135…インク経路、136…ピエゾ素子群、137…ノズル群、140…ヒータ、160…冷却器、170…ポンプ、200…制御部、210…印刷ジョブ制御部、211…印刷枚数算出部、212…印刷領域算出部、213…印刷実行判定部、220…画像処理部、230…インク吐出制御部、240…搬送制御部、250…インク循環制御部、260…インク温度調整部、320…サイド給紙台、330…給紙トレイ、340…排紙口、345…排紙台、350…レジストローラ、360…搬送ベルト、370…吸引ファン、380…切替機構、400…操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け付けた印刷ジョブに基づく印刷動作を制御する印刷ジョブ制御手段と、
駆動信号に基づいてインクを吐出する多数のノズルを備えたインク吐出手段と、
前記印刷ジョブに基づく前記駆動信号を出力するインク吐出駆動手段と、
インク温度を計測するインク温度計測手段とを備え、
前記インク温度計測手段のインク温度計測値が第1基準温度以上の場合に、
前記インク吐出駆動手段は、第1電圧値の前記駆動信号を出力し、
前記インク温度計測手段のインク温度計測値が第1基準温度よりも低い第2基準温度以上、第1基準温度未満の場合に、
前記印刷ジョブ制御手段は、印刷ジョブにおける印刷枚数を算出し、印刷枚数が所定枚数以下であれば印刷動作を実行し、
前記インク吐出駆動手段は、印刷動作を実行する場合には、第1電圧値よりも大きい第2電圧値の前記駆動信号を出力することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
受け付けた印刷ジョブに基づく印刷動作を制御する印刷ジョブ制御手段と、
駆動信号に基づいてインクを吐出するインク吐出手段を備えたインク吐出手段と、
前記印刷ジョブに基づく前記駆動信号を出力するインク吐出駆動手段と、
前記印字手段の対向面に配置され、印刷用紙を搬送する用紙搬送手段と、
インク温度を計測するインク温度計測手段とを備え、
前記インク温度計測手段のインク温度計測値が第1基準温度以上の場合に、前記インク吐出駆動手段は、第1電圧値の前記駆動信号を出力し、
前記インク温度計測手段のインク温度計測値が第1基準温度よりも低い第2基準温度以上、第1基準温度未満の場合に、
前記印刷ジョブ制御手段は、印刷ジョブにおける画像形成領域を算出し、画像形成領域が印刷用紙の周辺部の所定領域を含まないものであれば印刷動作を実行し、
前記インク吐出駆動手段は、印刷動作を実行する場合には、第1電圧値よりも大きい第2電圧値の前記駆動信号を出力することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記用紙搬送手段は、無端の搬送帯と、当該搬送帯内側に配置された吸引手段とを備え、
前記用紙搬送手段は、印刷用紙を前記搬送帯に設けられた多数の通気孔を介して吸着して搬送することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置であって、
前記印刷用紙の周辺部の所定領域は、搬送方向の周辺部の幅が、搬送方向に交わる方向の周辺部の幅よりも広く定められていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の画像形成装置であって、
前記インク温度計測手段のインク温度計測値が第1基準温度よりも低い第2基準温度以上、第1基準温度未満の場合に、
前記印刷ジョブ制御手段は、複数の印刷ジョブを受け付けている場合は、印刷動作を実行可能な印刷ジョブを優先して実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
インク貯蔵手段を経路中に含み、前記インク吐出手段にインクを供給し、吐出されなかったインクを前記インク貯蔵手段に戻すインク循環経路をさらに備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置であって、
前記インク循環経路中にインクを加熱するインク加熱手段を設け、
前記インク加熱手段は、前記インク温度計測手段のインク温度計測値が第1基準温度未満の場合に、インクを加熱し、インク温度計測値が第1基準温度以上になると加熱を停止することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の画像形成装置であって、
ユーザから第1基準温度未満での印刷を行なわない旨の指示を受け付けた場合には、前記インク温度計測手段のインク温度計測値が第1基準温度よりも低い第2基準温度以上、第1基準温度未満の場合、前記印刷ジョブ制御手段は、印刷動作を実行しないことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−89391(P2010−89391A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262147(P2008−262147)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】