説明

インクジェット用インク組成物

水性キャリア媒体、界面活性剤、顔料、およびポリマーを含むインクジェット用インク組成物であって、前記ポリマーがメタクリル酸ベンジルを含みかつ前記顔料粒子と関連付けられてない、インクジェット用インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性キャリア媒体、着色剤、およびポリマーを含むインクジェット用水性インクであって、該ポリマーがメタクリル酸ベンジルを含みかつ顔料粒子と関連付けられてないインクジェット用水性インクに関する。該インクは、優れたプリント品質、画像安定性、水および油性物質に対する耐性、耐ひっかき性、並びに貯蔵安定性を有する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、デジタル信号に応答して基体(紙、透明フィルム、織物など)上にインク小滴を付着させることにより画像を生成させるノンインパクト法である。インクジェットプリンターは、工業製品のラベリングから事務文書や画像の簡単な印刷に至るまで市場全体にわたって幅広い用途を見出してきた。
【0003】
インクジェット記録法において、使用されるインクは、種々の性能要件を満たす必要がある。そのような性能要件は、他の液体インクの用途(例えば、万年筆、フェルトペンなどの筆記用具の用途)の要件よりも一般に厳しいものである。特に、以下の条件が、一般的に、インクジェット印刷法に使用されるインクに求められる。
【0004】
(1)インクは、印刷装置の噴射条件(例えば、圧電発振器の駆動電圧および駆動周波数、プリントヘッドオリフィスの形態および材料、オリフィスの径など)に適合する物性(例えば、粘度、表面張力、および電気伝導度)を有することが望ましい。
【0005】
(2)インクは、使用中にプリントヘッドオリフィスの目詰まりを起こすことなく長期間保存できることが望ましい。
【0006】
(3)インクは、得られるインクドットの輪郭が滑らかでありかつインクドットのにじみが最小限に抑えられるよう、記録媒体(例えば紙、フィルムなど)に速やかに定着できるものが望ましい。
【0007】
(4)印刷される画像は、高品質(例えば、鮮明な色調および高密度を有する)で、光沢が高くかつ色域が高いものであることが望ましい。
【0008】
(5)印刷される画像は、水に対する堅牢性(耐水性)および光に対する堅牢性(耐光性)を示すことが望ましい。
【0009】
(6)印刷される(インク)画像は、画像を受容する要素の表面に対して良好な接着力を有することが望ましく、かつ、物理的および機械的な引っかき傷または損傷に対して強くかつ抵抗性が高いことが望ましい。
【0010】
(7)インクは、周囲にある材料(例えば、インク貯蔵容器、プリントヘッド部品、オリフィス等)を化学的に攻撃、侵食または腐食するものでないことが望ましい。
【0011】
(8)インクは、不快な臭いのないものが望ましく、かつ、毒性でなく引火性でないものが望ましい。
【0012】
(9)インクは、泡立ちが低い特性および高いpH安定性を示すことが望ましい。
【0013】
種々のインクジェットプリンターに使用されるインクは、色素系または顔料系のいずれかに分類することができる。色素は、キャリア媒体によって分子的に分散または溶媒和された着色剤である。該キャリア媒体は、室温で液体または固体のものとすることができる。一般に使用されるキャリア媒体は、水または水と有機共溶媒との混合物である。それぞれの個々の色素分子は、キャリア媒体の分子に囲まれる。色素系インクにおいて、顕微鏡下で、粒子は観測できない。インクジェット用色素系インクの技術は最近多くの進歩が見られたにもかかわらず、該インクは、やはり欠点(例えば、無地の紙上で光学密度が低いことや耐光性に劣ること)がある。水をキャリア媒体として用いる場合、該インクは、一般的に、耐水性にも劣る。
【0014】
顔料系インクは、これらの制約に応える手段として支持を獲得してきたものである。顔料系インクにおいて、着色剤は個々の粒子として存在する。顔料粒子は、分散剤または安定剤として知られる助剤で通常処理されている。該分散剤または安定剤は、顔料粒子を凝集および/または沈殿から保護する役割を果たしている。
【0015】
顔料系インクには、色素系インクと異なる一連の欠点がある。一つの欠点として、顔料系インクは、特にコート紙およびフィルム(例えば、オーバーヘッドプロジェクションで用いる透明フィルム、並びに高品質の画像や絵の出力に使用される光沢紙および乳白色フィルム)に対する相互作用が異なっている。特に、顔料系インクは、コート紙およびフィルムの表面上に完全に在り、画像の乾湿付着特性が悪く、にじみやすい画像を生じる画像形成された領域を生じることが判っている。近年、インクジェット受容体は、高い光沢と高い多孔率の両方を有し、速乾性を示すものが開発されてきた。しかし、引っかき傷状の汚れは、光沢の高い受容体上でより目立ちやすい。インクジェット受容要素の表面上で、より耐久性が高くかつ汚れができにくい画像をもたらす顔料配合インク組成物の提供が求められている。
【0016】
オゾンは、一般的に海水位の大気において約10〜50ppbの濃度で存在する。特定の条件下においてのみ、オゾン濃度はこれらのレベルを上回る。しかし、そのような低いオゾン濃度においても、色素および顔料(例えば、インクジェット用の色素および顔料)は、大気浸透性が高い場合(例えば、多孔性で光沢のある受容体に印刷した場合)、非常に敏感であり得、顕著に退色し得る。
【0017】
屋外使用のために作られたインクジェット受容体は、顔料配合インクで印刷される場合、高い耐久性を有する傾向にあるが、高い空気透過性のためにオゾンにさらされると、やはり顕著に退色する。
【0018】
米国特許第5,716,436号および特開2000−290553号は、無地の紙に印刷されるインクジェット用インクに水分散性のポリマーを用いることを開示する。しかし、これらのインクで印刷された画像は、光学密度が低く、濡れたときの耐摩耗性が非常に悪いため、屋外使用に耐えるものではない。
【0019】
米国特許第6,087,416号は、ビニル基体上での使用のための、ポリマー分散剤と必要に応じて添加されるグラフト共重合体とを開示する。該ポリマー分散剤は、顔料と関連付けられるものである。該ポリマーとポリマー分散剤を製造するため開示されたプロセスは、非常に高価であり、困難で、時間がかかるものである。また、グラフトポリマーを添加する場合では、別途のポリマーが使用される。その欠点は、過剰のポリマーがインクに使用されると、特に熱インクジェットプリンターのヘッドにとって、インクの噴射特性が悪くなるということである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することであり、それにより、独創的なインク組成物で印刷して、画像の耐オゾン性、物理的耐久性(例えば、耐ひっかき性および耐よごれ性)を向上させることである。本発明のさらなる目的は、屋外用途にインクを使用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、水性キャリア媒体、界面活性剤、顔料、およびポリマーを含むインクジェット用インク組成物であって、該ポリマーがメタクリル酸ベンジルを含みかつ該顔料粒子と関連付けられてない、インクジェット用インク組成物を提供する。
【0022】
本明細書で使用する用語「関連付けられてない」は、ポリマーが、添加物として使用されたことを意味し、顔料と共に粉砕されなかった又は顔料と共に封入されなかったことを意味する。該ポリマーは一般的に結合剤とみなされる。
【0023】
本発明は、ポリマーの調製、顔料分散物の調製、およびインクの調製において従来技術のプロセスによって生じる困難性および高い費用を克服する。該インクは、耐オゾン性、物理的耐久性(例えば、耐ひっかき性および耐よごれ性)、および屋外耐久性が向上した画像をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に使用されるインク受容要素の支持体は、紙または樹脂コート紙、またはプラスチック(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)などのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、メタクリル樹脂、セロファン、アセテートプラスチック、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、塩化ビニル樹脂、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリエステルジアセテート)、種々のガラス材料などであることができる。本発明に使用される支持体の厚みは、12〜500μmとすることができ、75〜300μmが好ましい。
【0025】
好ましい態様では、インク受容層は、連続的でl同一の広がりを有する多孔性のインク受容層であり、無機粒子(例えば、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、粘土、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、または酸化亜鉛)を含む。他の好ましい態様では、多孔性のインク受容層は、約20%〜約95%の無機粒子と、約5%〜約80%のポリマー結合剤(例えば、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリジノン)またはポリ(酢酸ビニル)、およびそれらの共重合体)とを含む。また、多孔性のインク受容層は、米国特許第5,374,475号および第4,954,395号に示されるような無機充填剤粒子のないポリマーの微孔性構造物を含むことができる。
【0026】
多種多様の有機顔料および無機顔料を、単独でまたは組合せて、本発明での使用に選択することができる。有用な顔料には、例えば、米国特許第5,026,427号、第5,086,698号、第5,141,556号、第5,160,370号、および第5,169,436号に開示されるものがある。顔料の的確な選択は、特定の用途および性能要件(例えば、色の再現および画像の安定性)に応じて行われる。本発明での使用に適する顔料には、例えば、アゾ顔料、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾ顔料レーキ、β−ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジスアゾ縮合顔料、金属錯体顔料、イソインドリノンおよびイソインドリン顔料、多環式顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバントロン顔料、アンタントロン顔料、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、酸化チタン、酸化鉄、およびカーボンブラックがある。使用できる顔料の典型的な例には、カラーインデックス(Color Index)(C.I.)ピグメントイエロー(Pigment Yellow)1、2、3、5、6、10、12、13、14、16、17、62、65、73、74、75、81、83、87、90、93、94、95、97、98、99、100、101、104、106、108、109、110、111、113、114、116、117、120、121、123、124、126、127、128、129、130、133、136、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、183、184、185、187、188、190、191、192、193、194;C.I.ピグメントオレンジ(Pigment Orange)1、2、5、6、13、15、16、17、17:1、19、22、24、31、34、36、38、40、43、44、46、48、49、51、59、60、61、62、64、65、66、67、68、69;C.I.ピグメントレッド(Pigment Red)1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、21、22、23、31、32、38、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、49:3、50:1、51、52:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、66、67、68、81、95、112、114、119、122、136、144、146、147、148、149、150、151、164、166、168、169、170、171、172、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、192、194、200、202、204、206、207、210、211、212、213、214、216、220、222、237、238、239、240、242、243、245、247、248、251、252、253、254、255、256、258、261、264;C.I.ピグメントバイオレット(Pigment Violet)1、2、3、5:1、13、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、50;C.I.ピグメントブルー(Pigment Blue)1、2、9、10、14、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15、16、18、19、24:1、25、56、60、61、62、63、64、66;C.I.ピグメントグリーン(Pigment Green)1、2、4、7、8、10、36、45;C.I.ピグメントブラック(Pigment Black)1、7、20、31、32;並びにC.I.ピグメントブラウン(Pigment Brown)1、5、22、23、25、38、41、42がある。本発明の好ましい態様では、顔料は、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー74、ビス(フタロシアニルアルミノ)テトラフェニルジシロキサン、またはC.I.ピグメントブラック7である。
【0027】
インク組成物のための水性キャリア媒体は、水、または水と混和できる少なくとも一種の共溶媒と水の混合物である。適当な混合物の選択は、特定の用途の要件、例えば、所望の表面張力および粘度、選択した顔料、顔料配合インクジェット用インクの乾燥時間、および、インクが印刷される紙の種類に応じて行われる。水と混和できる選択可能な共溶媒の代表的例には、(1)アルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、フルフリルアルコール、およびテトラヒドロフルフリルアルコール);(2)ケトン類またはケトアルコール類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、およびジアセトンアルコール);(3)エーテル類(例えば、テトラヒドロフランおよびジオキサン);(4)エステル類(例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネート);(5)多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、およびチオグリコール);(6)アルキレングリコール類から誘導される低級アルキルモノ−またはジ−エーテル類(例えば、エチレングリコールモノ−メチル(または−エチル)エーテル、ジエチレングリコールモノ−メチル(または−エチル)エーテル、ジエチレングリコールモノ−ブチル(または−エチル)エーテル、プロピレングリコールモノ−メチル(または−エチル)エーテル、ポリ(エチレングリコール)ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−メチル(または−エチル)エーテル、およびジエチレングリコールジ−メチル(または−エチル)エーテル);(7)含窒素環式化合物(例えば、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン);並びに(8)含硫化合物(例えば、ジメチルスルホキシド、2,2’−チオジエタノール、およびテトラメチレンスルホン)がある。
【0028】
一般的に、顔料配合インクジェット用インクは、高濃度のミル粉砕物の形態で作ることが望ましく、それは、インクジェット印刷システムにおいて使用するため、適当な濃度に、その後希釈される。この技法は、装置から大量の顔料配合インクを調製することを可能にする。ミル粉砕物を溶媒中で作る場合、それは、水および必要に応じて他の溶媒で適当な濃度に希釈される。それが水中で作られる場合、それは、さらなる水または水と混和できる溶媒のいずれかで必要な濃度に希釈される。希釈によりインクは、特定の用途のため、所望の粘度、色彩、色相、飽和密度、および印刷面積被覆率に調整される。ミル粉砕物の調製法は、米国特許第5,679,138号、第5,670,139号、および第6,152,999号に開示されている。
【0029】
有機顔料の場合、多くのインクジェット印刷の用途に対し、インクは、インク組成物全体の最高約30重量%まで顔料を含むことができるが、インク組成物全体の約0.1〜10%の範囲の顔料を含むことが一般的であり、インク組成物全体の約0.1〜5%の範囲の顔料を含むことが好ましい。無機顔料を選択する場合、インクは、有機顔料を用いる類似のインクに比べて、より高い重量百分率の顔料を含む傾向にあり、約75%もの高い含量の場合もあり得る。というのも、無機顔料は一般的に有機顔料よりも高い比重を有するからである。
【0030】
水性キャリア媒体の量は、インクの総重量に基づいて、約70〜99重量%の範囲であり、約90〜98重量%の範囲が好ましい。水と多価アルコール(例えばジエチレングリコール)の混合物は、水性キャリア媒体として有用である。好ましい態様では、インクは、水と混和できる有機溶媒を5〜60重量%含有する。百分率は、水性キャリア媒体の総重量に基づいている。
【0031】
本発明に使用されるポリマーは、一般的に、疎水性単位および親水性単位の両方並びにメタクリル酸ベンジルモノマーを有する共重合体である。メタクリル酸ベンジルモノマーは、一般的に、疎水性の部分に含まれる。該ポリマーの親水性の部分は、1種または2種以上のモノマータイプを含むことができる。該ポリマーは、2,000〜500,000の数平均分子量を有することが好ましく、5,000〜100,000の数平均分子量を有することがさらに好ましい。
【0032】
メタクリル酸ベンジルは、ポリマーの総重量に基づいて、一般的に1重量%〜95重量%である。より好ましくは、メタクリル酸ベンジルは、ポリマー全体の40重量%〜80重量%である。疎水性の部分は、メタクリル酸ベンジルのみを含むことができる。あるいは、疎水性の部分は、メタクリル酸ベンジルと少なくとも一つの他のビニル系モノマーの重合から形成されるものであってもよい。例えば、ビニル系モノマーには、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニル複素環式化合物、スチレン類、オレフィン類およびハロゲン化オレフィン類、エチレン性不飽和カルボン酸類およびそれらから誘導されるエステル類、不飽和ニトリル類、ビニルアルコール類、アクリルアミド類およびメタクリルアミド類、ビニルケトン類、多官能モノマー、またはそれらのモノマーの種々の組合せから形成される共重合体がある。親水性ポリマーは、以下のものから選択することができる(アクリル酸、メタクリル酸、アクリルイミド、エタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、アリールオキシジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、アリールオキシピペリジン、およびN,N−ジメチルアクリルアミドアクリル酸、メタクリル酸、クロロメタクリル酸、マレイン酸、アリルアミン、N,N−ジエチルアリルアミン、ビニルスルホンアミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリルアミドプロパントリエチルアンモニウムクロリド、メタクリルアミドプロパントリエチルアンモニウムクロリド、ビニル−ピリジン塩酸塩、ビニルホスホン酸ナトリウムおよび1−メチルビニルホスホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、1−メチルビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、アクリルアミドプロパンスルホン酸ナトリウム、メタクリルアミドプロパンスルホン酸ナトリウム、およびビニルモルホリンスルホン酸ナトリウム、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ブテニル、アクリル酸ウンデセニル、メタクリル酸ウンデセニル、アクリル酸ビニル、およびメタクリル酸ビニル、ジエン類(例えば、ブタジエンおよびイソプレン)、飽和グリコールまたはジオールと不飽和モノカルボン酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、またはトリメチロールプロパントリメタクリレート))。
【0033】
例えば、スチレン/アクリルポリマーのためのモノマーは、以下のものから形成することができる(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシル、アクリル酸ヒドロキシオクタデシル、メタクリル酸ヒドロキシオクタデシル、メタクリル酸ヒドロキシラウリル、アクリル酸ヒドロキシラウリル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸6−フェニルへキシル、メタクリル酸6−フェニルヘキシル、アクリル酸フェニルラウリル、メタクリル酸フェニルラウリル、メタクリル酸3−ニトロフェニル−6−ヘキシル、アクリル酸3−ニトロフェニル−18−オクタデシル、エチレングリコールジシクロペンチルエーテルアクリレート、ビニルエチルケトン、ビニルプロピルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルオクチルケトン、ビニルブチルケトン、アクリル酸シクロヘキシル、3−メタクリロキシプロピル−ジメチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピル−メチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピル−ペンタメチルジシロキサン、3−メタクリロキシプロピルトリス−(トリメチルシロキシ)シラン、3−アクリロキシプロピル−ジメチルメトキシシラン、アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロメチルスチレン、アクリル酸トリフルオロメチル、メタクリル酸トリフルオロメチル、アクリル酸テトラフルオロプロピル、メタクリル酸テトラフルオロプロピル、メタクリル酸ヘプタフルオロブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、N,N−ジヘキシルアクリルアミド、N,N−ジオクチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ピペリジノ−N−エチルアクリレート、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ビニルブチルエーテル、およびビニルプロピルエーテルエチレン、スチレン、ビニルカルバゾール、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、メチルスチレン、ビニルビフェニル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、グリシジルプロピレン、2−メチル−2−ビニルオキシラン、ビニルピリジン、メタクリル酸アミノエチル、アクリル酸アミノエチルフェニル、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−ビニル−フタルイミド、およびN−ビニルマレイミドポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン、ビニル4−メチルピロリドン、ビニル4−フェニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニル4−メチルイミダゾール、ビニル4−フェニルイミダゾール、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、スチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ブタジエン、イソプレン、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、クロロメタクリル酸、マレイン酸、アリルアミン、N,N−ジエチルアリルアミン、ビニルスルホンアミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリルアミドプロパン−トリエチルアンモニウムクロリド、メタクリルアミドプロパン−トリエチルアンモニウムクロリド、ビニル−ピリジン塩酸塩、ビニルホスホン酸ナトリウムおよび1−メチルビニルホスホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、1−メチルビニル−スルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウムまたはスチレンスルホン酸ナトリウム)。
【0034】
使用される開始剤の種類に応じて、反応温度は約30℃〜約200℃範囲で変えることができる。反応温度は低くても40℃であることが好ましく、低くても50℃であることが最も好ましい。遊離のモノマーが存在しなくなるのを確実にするため、通常、モノマー添加後、反応をある時間続ける。また、反応の最終段階において、反応変換率を上げるため、さらなる開始剤をスカベンジャーとして添加する必要があるかもしれない。
【0035】
本発明の実施に有用な付加重合開始剤には、例えば、アゾおよびジアゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシル−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、およびジメチル−2,2’アゾビスイソ酪酸)、または過酸化物化合物(例えば、ブチルペルオキシド、プロピルペルオキシド、ブチリルペルオキシド、ベンゾイルイソブチリルペルオキシド、およびベンゾイルペルオキシド)、または水溶性開始剤(例えば、過硫酸ナトリウム、および過硫酸カリウム)、または任意のレドックス開始剤がある。好ましい開始剤は、油溶性開始剤である。特に適する開始剤の例には、アゾ開始剤、過酸化物、過硫酸塩、およびレドックス開始剤がある。開始剤は、モノマー全体の0.2〜4重量%の範囲の量またはそれより高い量で、用いることができる。また、連鎖移動剤(例えばブチルメルカプタン)を、形成されるポリマーの特性を調節するため使用してもよい。
【0036】
ポリマーは、溶液重合または塊状重合、そして、その後の乳化を経て調製することができる。本発明に使用されるポリマーは、一般的に、−50〜150℃のTg、好ましくは5〜100℃のTgを有する。
【0037】
本発明に使用されるポリマーは、インクジェット用インク中、一般に0.1重量%〜20重量%、好ましくは0.5重量%〜5重量%存在する。
【0038】
総じて、ポリマーが添加されたインクを用いることにより、インクを印刷した後の印刷領域における受容体表面の光沢度を増加させることができる。
【0039】
噴射速度、小滴の分離長さ、液滴サイズ、および流れ安定性は、インクの表面張力および粘度によって大きく影響される。インクジェット印刷システムとの使用に適する顔料配合インクジェット用インクは、20ダイン/cm〜60ダイン/cmの範囲の表面張力を有することが望ましく、20ダイン/cm〜50ダイン/cmの範囲の表面張力を有することがより好ましい。水性インクにおける表面張力の調節は、少量の界面活性剤を添加することにより行うことができる。使用する界面活性剤のレベルは、簡単な試行錯誤の実験により決定することができる。インクジェット用インクの技術において知られているものから、陰イオン界面活性剤および陽イオン界面活性剤を選択することができる。市販の界面活性剤には、エアプロダクツ(Air Products)からのSurfynols(商標)、デュポン(Dupont)からのZonyls(商標)、および3MからのFluorads(商標)がある。
【0040】
インクジェットプリントヘッドのオリフィスにおけるインクの乾燥やインクによる硬い皮膜の形成の防止を促進するため、プロセスに使用される組成物に湿潤剤が添加される。この目的で本発明に使用される組成物に有用な多価アルコール類には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、およびチオグリコールがある。湿潤剤は10〜50重量%の濃度で使用することができる。好ましい態様では、ジエチレングリコール、または、グリセロールとジエチレングリコールの混合物が、10〜20重量%の濃度で使用される。
【0041】
インクは、広範囲の噴出条件(すなわち、熱インクジェット印刷装置の駆動電圧およびパルス幅、ドロップ・オン・デマンド方式または連続方式のいずれかの装置のピエゾ素子の駆動周波数、およびノズルの形状およびサイズ)に適合する物性を有する。
【0042】
受容基体へのインクの浸透を促進するため(特に基体が高度に糊付け(サイズ添加)された紙である場合)、本発明のプロセスに使用される組成物に、浸透剤(0〜10重量%)を添加することもできる。本発明に使用されるインクに好ましい浸透剤は、1〜6重量%の最終濃度のn−プロパノールである。
【0043】
経時的にインクに発生し得る望ましくない微生物の増殖を防ぐため、殺生物剤(0.01〜1.0重量%)を添加することもできる。本発明に使用されるインクに好ましい殺生物剤は、0.05〜0.5重量%の濃度のProxel(商標)GXL(Zeneca Colours Co.)である。必要に応じてインクジェット用インクに存在し得るさらなる添加物には、増粘剤、伝導率向上剤、コーゲーション防止剤、乾燥剤、および消泡剤がある。
【0044】
本発明に使用されるポリマーを用いて調製されたインクジェット用インクは、インクジェット印刷に使用される。そこにおいて、液体のインク滴は、インクジェットプリンターのプリントヘッドにおいて複数のノズルまたはオリフィスから制御されたやり方で、インク小滴を噴射することにより、インク受容基体に塗布される。
【0045】
市販のインクジェットプリンターは、インク小滴の付着を制御するためいつくかの異なる方法を用いている。そのような方法は、一般的に二種類(連続ストリーム方式とドロップ・オン・デマンド方式)である。
【0046】
トロップ・オン・デマンド方式において、インクの小滴は、例えば、デジタルデータ信号に従って制御される圧電装置、アコースティックデバイス、または熱プロセスによって生じる圧力により、インク受容層上の位置に直接、オリフィスから噴射される。インク小滴は、必要でない限り、プリントヘッドのオリフィスを通って、生じることもなく、また、噴射されることもない。インクジェット印刷法および関連するプリンターは、市販されており、詳細に説明する必要はない。
【0047】
本発明のインク組成物は、多孔性表面および非多孔性表面を含む種々の基体上への印刷に適する。多孔性のインクジェット受容体は、液体の取り込みが大きいという利点を有し、これは、高い印刷速度をもたらす。本発明に使用できる非吸収性基体には、実質的に非多孔性の任意の基体が含まれる。通常、それらは、液体の吸収を増加させるための特別な処理を施されていない。従って、それらの材料は、非常に低い液体吸収力を有するかまたは液体吸収力がない。そのような非吸収性基体の例には、金属類(例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼および合金など)、プラスチック類(例えば、ビニル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、セルロース、並びに、他の基体(例えば、セラミックス、ガラス)がある。印刷速度を高めかつ耐久性を上げるため、本発明のインク組成物を印刷するプロセスにおいてさらなる加熱工程を加えることができる。この加熱工程は、印刷中または印刷後のいずれかにおいて用いることができる。加熱手段には種々の方式を用いることができ、例えば、光照射、熱風源、または電気ヒーターを用いることができる。印刷中の加熱工程のため、電気ヒーターまたは赤外線ランプが好ましい。印刷後の加熱工程のため、光照射(例えば赤外線ランプ)が好ましい。必要に応じて、赤外線ランプによる加熱を支援するため、本発明のインクに、赤外線吸収材料を用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下の実施例は本発明の利用を例示するものである。
【0049】
顔料分散物の調製
マゼンタ顔料分散物は、以下を含有する(300gのポリマービーズ(50μmの平均径(粉砕媒体))、30gのキナクリドンマゼンタ顔料(ピグメントレッド(Pigment Red)122(Sun Chemicals))、9gのオレオイルメチルタウリン、(OMT)カリウム塩、および208gの脱イオン水、並びに0.2gのProxel GXL(商標)(Zenecaの殺生物剤))。Morehouse−Cowles Hochmeyer製の高エネルギー媒体ミルを用いて、BYK−Gardnerから入手した2リットル二重壁容器において、上記成分を粉砕した。ミルは、室温で約8時間運転した。VWR Scientific Productsから入手した4〜8μmのKIMAX(商標)ブフナー漏斗でミル粉砕物をろ過することにより粉砕媒体から分散物を分離した。粉砕の最後に追加の水を分散物に添加することにより、顔料は、最終分散物全体の約10.0重量%となり、殺生物剤は、最終分散物全体の約230重量ppmとなる。Leeds&Northrup製のMICROTRAC II超微粒子分析器(UPA)で測定した粒径は約30nmである。
【0050】
ポリマーの調製
本発明のポリマー1(P−1)
100gのジエチレングリコールと0.25gのAIBNを、メカニカルスターラーおよび窒素注入口が設置された1リットル三つ口丸底フラスコに入れた。溶液を、窒素に20分間さらし、恒温浴において150℃に加熱した。100gのジエチレングリコール、0.25gのAIBN、32.5gのメタクリル酸ベンジル、および17.5gのメタクリル酸を撹拌し、よく混合した。次いで、混合物を、反応器に注ぎこみ、2時間以上置いた。重合を3時間続けた。温度を65〜70℃に下げ、t−ブチルヒドロペルオキシド(10%)とホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウム(10%)をそれぞれ1mlその後に添加した。
【0051】
最終溶液を、水酸化アンモニウムで中和し、約20%のポリマーと10%のジエチレングリコールを含むように、適当な量の水で希釈した。
【0052】
本発明のポリマー2(P−2)
100gのジエチレングリコールと0.20gのAIBNを、メカニカルスターラーおよび窒素注入口が設置された1リットル三つ口丸底フラスコに入れた。溶液を、窒素に20分間さらし、恒温浴において150℃に加熱した。100gのジエチレングリコール、0.20gのAIBN、32.5gのメタクリル酸ベンジル、および17.5gのメタクリル酸を撹拌し、よく混合した。次いで、混合物を、2時間にわたって反応器に注いだ。重合を3時間続けた。温度を65〜70℃に下げ、t−ブチルヒドロペルオキシド(10%)とホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウム(10%)をそれぞれ1mlその後に添加した。最終溶液を、水酸化アンモニウムで中和し、約20%のポリマーと10%のジエチレングリコールを含むように、適当な量の水で希釈した。
【0053】
溶液ポリマー(P−3)
100gのジエチレングリコールと0.10gのAIBNを、メカニカルスターラーおよび窒素注入口が設置された1リットル三つ口丸底フラスコに入れた。溶液を、窒素に20分間さらし、恒温浴において150℃に加熱した。100gのジエチレングリコール、0.10gのAIBN、32.5gのメタクリル酸ベンジル、および17.5gのメタクリル酸を撹拌し、よく混合した。次いで、混合物を、2時間にわたって反応器に注いだ。重合を3時間続けた。温度を65〜70℃に下げ、t−ブチルヒドロペルオキシド(10%)とホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウム(10%)をそれぞれ1mlその後に添加した。最終溶液を、水酸化アンモニウムで中和し、約20%のポリマーと10%のジエチレングリコールを含むように、適当な量の水で希釈した。
【0054】
ポリマーの特性
数平均分子量
三つのPolymer Laboratories Plgel(商標)ミニ混合Bカラムを用いて、テトラヒドロフラン中のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、試料を分析した。580〜2,300,000において狭い分子量分布のポリスチレン標品により、カラムセットを較正した。
【0055】
P−1は4,868の数平均分子量を有し、P−2は8280の数平均分子量を有し、P−3は11,260の数平均分子量を有する。
【0056】
比較用ポリマー1(PC−1:メタクリル酸ベンジル単位を含まないアクリルポリマー)の調製
25gのスチレンアクリルポリマーTrudot IJ−4655(商標)(Westvacoより)を67.8gの水および7.2gの29%水酸化アンモニウム溶液に添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、さらに、透明になるまでローラーミルで24時間混合した。最終のポリマー溶液は、25%のポリマーTrudot IJ−4655(商標)を含み、そのpHは8.97であった。最終のポリマー溶液を比較用ポリマー1(PC−1)とする。
【0057】
比較用ポリマー2(PC−2:メタクリル酸ベンジル単位を含まないアクリルポリマー)の調製
水溶性ポリマーJoncryl70(商標)を、Johnson Polymersから、30%固形分のスチレンアクリルポリマー溶液(アンモニアで中和)として得た。このポリマー溶液を比較用ポリマー2(PC−2)と呼んだ。
【0058】
インクの調製
本発明のインク1(I−1:ポリマーP−1を含むインク)
インク−1を調製するため、4.36gのマゼンタピグメント(Magenta Pigment)分散物(10%有効成分)、0.1gのZonyl−FSO(DuPont Corp.)、2.0gのジエチレングリコール、2.0gの2−ピロリドン、および2.18gのポリマー1(20%有効成分)を蒸留水とともに加え、インクの最終重量が20.0gとなるようにした。最終のインクは、2.18%のピグメントレッド(Pigment Red)122、0.5%のZonyl−FSO、10.0%のジエチレングリコール、10%のピロリドン、および2.18%のポリマーP−1を含んだ。その溶液を、1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターでろ過した。ポリマーP−1は、インク中、顔料分散剤としてではなく、結合剤として使用された。従って、ポリマーP−1は、顔料粒子と密接に関連付けられているのではなく、インク調製工程における添加成分として存在する。
【0059】
本発明のインク2(I−2:ポリマーP−2を含むインク)
ポリマー2(20%有効成分)の量、そして、最終のインクがインク全体に対して2.18重量%のポリマー2を含んだこと以外は、インク−1と同様にして本発明のインク−2を調製した。
【0060】
本発明のインク3(I−3:ポリマーP−3を含むインク)
ポリマー3(20%有効成分)の量、そして、最終のインクがインク全体に対して2.18重量%のポリマー3を含んだこと以外は、インク−1と同様にして本発明のインク−3を調製した。
【0061】
比較用インク1(C−1)
ポリマーP−1の代わりに2.18gの水を用いたこと以外は、本発明のインク−1と同様にして比較用インク1を調製した。最終のインクはポリマーを含まなかった。
【0062】
比較用インク2(C−2:ポリマーPC−1を結合剤として含むインク)
ポリマーP−1の代わりに1.74gの比較用ポリマーPC−1(25%有効成分)を用いたこと以外は、本発明のインク−1と同様にして比較用インク2を調製した。最終のインクは、2.18%の比較用ポリマーPC−1を含んだ。
【0063】
比較用インク3(C−3:ポリマーPC−2を結合剤として含むインク)
ポリマーP−1の代わりに1.45gの比較用ポリマーPC−2(30%有効成分)を用いたこと以外は、本発明のインク−1と同様にして比較用インク2を調製した。最終のインクは、2.18%の比較用ポリマーPC−2を含んだ。
【0064】
印刷試験
本発明のインクを、ENCAD顔料カートリッジに充填した。そして、上記インクを用いて、ENCAD VinylJet36ワイド方式熱インクジェットプリンターで印刷を行った。100%ドット被覆率でサイズが約25mm×25mmの斑点からなるテスト画像を使用し、市販の非吸収性ビニル基体(多目的インクジェット用キャストビニル(Arlon Inc.から入手したCat No Calon II 4500Gホワイトフィルム))上に、ENCAD Vinyljet36の推奨される設定(印刷中、圧盤加熱約65℃、IRランプ加熱設定65%)を用いて、印刷を行い、印刷試料を調製した。
【0065】
耐久試験
乾式摩擦耐性試験
印刷試料の100%ドット被覆率領域において、一定の圧力下、該試料を乾燥Q−チップで4回擦ることにより、乾式摩擦耐性試験を行った。処理された試料領域における色の損失、および、Qチップへの色の移りを目視により検査し、乾式摩擦耐性の評価を以下に示す0〜5の尺度で行った。
0:最も良い。色の損失がなくかつ/または色の移りがない
1:目に見える量の色の損失および/または色の移りがほとんどない
2:目に見える量の色の損失および/または色の移り
3:いくらかの色の損失および色の移り
4:多量の色の損失および色の移り
5:最も悪い。ほとんど完全な色の損失および色の移り
【0066】
湿式摩擦耐性試験
100%ドット被覆率の印刷試料領域に、約2.54cm径で水の液滴を5分間置き、その後、過剰の水を紙タオルでふき取ることにより、湿式摩擦耐性試験を行った。次に、以上のように処理された領域を乾いた紙タオルで3.5cm径の領域に対し一定の圧力下で4回擦った。処理された試料領域における色の損失および紙タオルへの色の移りを目視により検査し、湿式摩擦耐性の評価を、同様に上記の0〜5の尺度(0が最も良く、5が最も悪い)で行った。乾式および湿式の摩擦耐性試験の結果をともに表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
上記の表から明らかなとおり、ポリマー結合剤のないインクと比較すると、インクにポリマー結合剤が存在することにより、乾式および湿式の両方の条件下で、画像の耐久力が顕著に向上している。メタクリル酸ベンジルを含むポリマーが存在しない従来のインクに比べて、メタクリル酸ベンジルを含むポリマーが存在する本発明のインクは、画像の耐久力において一層有利である。
【0069】
本発明の特定の好ましい態様を特に参照して本発明の詳細な説明を行ってきたが、本発明の精神および範囲内において、種々の変更および修飾を行うことができることは当然のことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性キャリア媒体、界面活性剤、顔料、およびポリマーを含むインクジェット用インク組成物であって、前記ポリマーがメタクリル酸ベンジルを含みかつ前記顔料粒子と関連付けられてない、インクジェット用インク組成物。
【請求項2】
前記ポリマーが疎水性の部分および親水性の部分を含み、前記疎水性の部分が前記メタクリル酸ベンジルを含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーの前記疎水性の部分が、1種または2種以上のモノマータイプを含む、請求項2の組成物。
【請求項4】
前記顔料が、小分子の界面活性剤で分散されているかまたはポリマーの分散剤で分散されている、請求項1の組成物。
【請求項5】
メタクリル酸ベンジルが、ポリマー全体の1重量%〜95重量%である、請求項1の組成物。
【請求項6】
メタクリル酸ベンジルが、ポリマー全体の40重量%〜80重量%である、請求項1の組成物。
【請求項7】
前記ポリマーが、水中または水性インクキャリア媒体中に分散可能である、請求項1の組成物。
【請求項8】
前記ポリマーが、水または水性インクキャリア媒体に可溶性である、請求項1の組成物。
【請求項9】
前記ポリマーが、2,000〜500,000の数平均分子量を有する、請求項1の組成物。
【請求項10】
前記ポリマーが、5,000〜100,000の数平均分子量を有する、請求項1の組成物。
【請求項11】
前記ポリマーが、前記インク組成物の0.1重量%〜20重量%を含む、請求項1の組成物。
【請求項12】
前記ポリマーが、前記インク組成物の約0.5重量%〜約5重量%を含む、請求項1の組成物。
【請求項13】
前記顔料が、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー74、ビス(フタロシアニルアルミノ)テトラフェニルジシロキサン、C.I.ピグメントイエロー97、またはC.I.ピグメントブラック7である、請求項1の組成物。
【請求項14】
前記顔料が、前記インク組成物の重量に対して30重量%以下である、請求項1の組成物。
【請求項15】
前記顔料が、前記インク組成物の重量に対して0.1重量%〜10重量%である、請求項1の組成物。
【請求項16】
前記疎水性の部分が、メタクリル酸ベンジルのみ含む、請求項2の組成物。
【請求項17】
前記疎水性の部分が、メタクリル酸ベンジルと少なくとも一種の他のビニル系モノマーとの重合から形成されている、請求項2の組成物。
【請求項18】
前記ビニル系モノマーが、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニル複素環式化合物、スチレン類、オレフィン類およびハロゲン化オレフィン類、エチレン性不飽和カルボン酸類およびそれらから誘導されるエステル類、不飽和ニトリル類、ビニルアルコール類、アクリルアミド類およびメタクリルアミド類、ビニルケトン類、多官能モノマー、並びにそれらから形成される重合体を含む、請求項17の組成物。
【請求項19】
前記親水性の部分が、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルイミド、エタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、アリールオキシジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、アリールオキシピペリジン、およびN,N−ジメチルアクリルアミドアクリル酸、メタクリル酸、クロロメタクリル酸、マレイン酸、アリルアミン、N,N−ジエチルアリルアミン、ビニルスルホンアミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリルアミドプロパントリエチルアンモニウムクロリド、メタクリルアミドプロパントリエチルアンモニウムクロリド、ビニル−ピリジン塩酸塩、ビニルホスホン酸ナトリウムおよび1−メチルビニルホスホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、1−メチルビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、アクリルアミドプロパンスルホン酸ナトリウム、メタクリルアミドプロパンスルホン酸ナトリウム、およびビニルモルホリンスルホン酸ナトリウム、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ブテニル、アクリル酸ウンデセニル、メタクリル酸ウンデセニル、アクリル酸ビニル、およびメタクリル酸ビニル、ブタジエンおよびイソプレンのようなジエン類、飽和グリコールまたが、ジオールと不飽和モノカルボン酸とのエステル、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、またはトリメチロールプロパントリメタクリレートを含むモノマーを含む、請求項2の組成物。
【請求項20】
(A)デジタルデータ信号に応答するインクジェットプリンターを用意する工程、
(B)多孔性基体または非吸収性基体のいずれかである基体を含むインクジェット用記録要素を前記プリンターに装填する工程、
(C)水性キャリア媒体、界面活性剤、顔料、およびポリマーを含むインクジェット用インク組成物であって、前記ポリマーがメタクリル酸ベンジルを含みかつ前記顔料粒子と関連付けられてないインクジェット用インク組成物を、前記プリンターに装填する工程、および
(D)前記デジタルデータ信号に応答して前記インクジェット用インク組成物を使用して前記インクジェット用記録要素に印刷する工程
を含む、インクジェット印刷の方法。
【請求項21】
前記非吸収性基体が未コートのビニルである、請求項19の方法。
【請求項22】
印刷中および/または印刷後に加熱工程をさらに含む、請求項19の方法。

【公表番号】特表2007−519772(P2007−519772A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545422(P2006−545422)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/042229
【国際公開番号】WO2005/066290
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】