説明

インクジェット用光硬化性熱硬化性組成物及びこれを用いたプリント配線板

【課題】プリント配線板に形成されるソルダーレジスト等の樹脂絶縁層上にインクジェットプリンターを用いてパターンを直接描画するのに適している酸化チタンを含む光硬化性熱硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマーと、3官能以上のアクリレートモノマーと、酸化チタンと、熱硬化触媒と、光重合開始剤を含む光硬化性熱硬化性組成物であって、プリント配線板に形成される樹脂絶縁層上へのパターン描画に用いられることを特徴とするインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に形成されるソルダーレジスト等の樹脂絶縁層上に、インクジェットプリンターを用いてマーキングとしてのパターンを直接描画するのに適している酸化チタンを含む光硬化性熱硬化性組成物及びプリント配線板に形成される樹脂絶縁層上に、インクジェットプリンターを用いて上記光硬化性熱硬化性組成物のパターンを形成しこれを硬化させてなるマーキングパターンを有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターを用いたプリント配線板の製造方法としては、例えば、プラスチック基板上の金属箔にインクジェットプリンターを用いてエッチングレジストを形成し、エッチング処理を行なう導体回路の形成方法が存在する(特開昭56−66089号、特開昭56−157089号、特開昭58−50794号、特開平6−237063号参照)。この方法は、CADデータに従い、金属箔にパターンを直接描画するので、フォトマスクが必須となる感光性樹脂を使用した写真現像法によるパターニングや、レジストインキをスクリーン印刷法によりパターニングする場合に比較して、プリント配線板の製造工程にかかる手間や時間が大幅に短縮できると同時に、現像液、レジストインキ、洗浄溶剤等の消耗品も削減できるという利点を有する。
【0003】
また、プリント配線板に形成された導体回路を保護するソルダーレジストといった樹脂絶縁層や、当該樹脂絶縁層上に形成されるマーキングパターンについても、インクジェットプリンターを用いた形成方法は既に提案されている(特開平7−263845号、特開平9−18115号参照)。その形成方法は、上述したエッチングレジストを形成する方法と同様である。このインクジェット方法を用いた場合にも、写真現像法やスクリーン印刷法に比較して工程数、時間、消耗品を削減することができる。また更には、インクジェットプリンターのインクタンクを、例えばエッチングレジスト用インキ、ソルダーレジストインキ、マーキングインキ及びそれらの硬化剤のそれぞれに分けてインクジェットプリンターに備えることにより、一台のインクジェットプリンターで複数の工程を行うことができる方式も提案されている(特開平8−236902号参照)。
【0004】
しかし、インクジェットプリンターに用いるインクは、塗布時の粘度が約20mPa・s以下であることが必要となる。一方、スクリーン印刷に使用されるインクの粘度は20,000mPa・s前後であり、両者の粘度には大きな差異がある。従って、スクリーン印刷用のレジストインキやマーキングインキを大量の希釈剤で希釈した場合であっても、インクジェットプリンターに使用できる粘度にまでこれを低下させることは難しい。また、たとえ20mPa・sまで上記レジストインキの粘度を低下させることができたとしても、ソルダーレジストのような樹脂絶縁層に要求される耐熱性、耐薬品性等の物性は大きく低下してしまう。また、マーキングインキに要求される密着性等の特性も低下してしまう。更に、上記レジストインキを揮発性の溶剤で希釈した場合には不揮発分が非常に少なくなるため、これを基板に塗布する際の所定の膜厚の確保が難しくなる。そのため、プリント配線板の樹脂絶縁層やマーキングパターンの形成方法としては、前記インクジェット方式はアイデアの域を出ておらず、インクジェットプリンターで使用できる、実用的な樹脂絶縁層形成用のレジストインキ等の樹脂組成物は存在しなかった。
【0005】
また、近年は上記インクジェット方式に用いる白色のマーキングインキの需要が高まっているものの、白色顔料として適している酸化チタンを配合した場合、マーキングインキの粘度が上昇する。そしてその対応策として樹脂組成を低分子量化する手法をとることが一般的なためにマーキングパターンと樹脂絶縁層との密着性が低下してしまい、樹脂絶縁層からマーキングパターンがはがれてしまうという問題があった。そのため、インクジェットプリンターで使用できる、実用的な白色マーキングインキは存在しなかった。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題を解消するためになされたものであり、その主たる目的は、プリント配線板に形成されるソルダーレジスト等の樹脂絶縁層上に、インクジェットプリンターを用いてマーキングとしてのパターンを直接描画するのに適している酸化チタンを含む光硬化性熱硬化性組成物を提供することにある。
【0007】
また本発明の他の目的は、プリント配線板に形成される樹脂絶縁層上に、インクジェットプリンターを用いて上記光硬化性熱硬化性組成物のパターンを形成しこれを硬化させてなるマーキングパターンを有するプリント配線板を提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭56−66089号
【特許文献2】特開昭56−157089号
【特許文献3】特開昭58−50794号
【特許文献4】特開平6−237063号
【特許文献5】特開平7−263845号
【特許文献6】特開平9−18115号
【特許文献7】特開平8−236902号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、インクジェットプリンターに使用できる粘度であって、酸化チタンを配合してもプリント配線板上に形成される樹脂絶縁層との密着性がよいパターンを形成することができる光硬化性熱硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下のような特徴を有する。
即ち、本発明の特徴の一つは、分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマーと、3官能以上のアクリレートモノマーと、酸化チタンと、熱硬化触媒と、光重合開始剤を含む光硬化性熱硬化性組成物であって、プリント配線板に形成される樹脂絶縁層上へのパターン描画に用いられることを特徴とするインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物である。
【0011】
また本発明の他の特徴は、上記インクジェット用光硬化性熱硬化性組成物において、前記分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマーがグリシジルメタクリレート又は4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルであることを特徴とするインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物である。
【0012】
更に本発明の他の特徴は、上記インクジェット用光硬化性熱硬化性組成物において、前記分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマーを100質量部としたとき、前記3官能以上のアクリレートモノマーを40〜400質量部、好ましくは50〜300質量部、前記熱硬化触媒を0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜4質量部含有することである。
【0013】
ここで本明細書において、粘度とはJIS K2283に従って測定した粘度を指す。また、上記のインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物の粘度は常温(25℃)で150mPa・s以下である。上述のように、インクジェットプリンターに使用するインクの粘度は塗布時の温度において約20mPa・s以下であることが必要である。しかし、常温で150mPa・s以下の粘度であれば、塗布前、若しくは塗布時の加温によって上記条件を充足することができる。
【0014】
更に、本発明の他の特徴は、プリント配線板に形成された樹脂絶縁層上に、インクジェットプリンターを用いて上記インクジェット用光硬化性熱硬化性組成物をパターン描画し、これを硬化させてなるパターンを有することを特徴とするプリント配線板である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物は、分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマーと、3官能以上のアクリレートモノマーとを組み合わせることにより、白色顔料として酸化チタンを配合する場合でも、プリント配線板上に形成される樹脂絶縁層とマーキングパターンとの密着性を向上させることができる。特に、従来のインクジェット用樹脂組成物では、粘度の高い感光性モノマー(若しくは感光性熱硬化性モノマー)を使用しているため、これに白色顔料として酸化チタンを配合すると、当該組成物の粘度は更に上昇する。よって、当該組成物を上記所定の粘度(20mPa・s)に低下させるためには、多量の粘度の低い単官能の感光性モノマーを配合しなければならず、十分な密着性を有するマーキングパターンを形成することができなかった。一方、本発明では、感光性熱硬化性モノマーとして粘度の低い、分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマーを使用することにより、耐熱性、耐薬品性、及び密着性に優れる、粘度の高い3官能以上のアクリレートモノマーの配合が可能となり、組成物の粘度が実現するとともに、十分な密着性を有するマーキングパターンの形成が可能となった。
【0016】
また、本発明のインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物は、熱硬化触媒を配合することにより、プリント配線板を製造するときの加熱温度である170℃以下、望ましくは150℃以下で硬化させることができる。これにより、プリント配線板の特性に影響を与えることなく、マーキングパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を詳述する。尚、本発明が当該実施形態に限定されないことはもとよりである。
【0018】
上述のとおり、本発明のインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物は、プリント配線板に形成される樹脂絶縁層上に、インクジェットプリンターを用いて所定のマーキングパターンを直接描画することができ、またこれに活性エネルギー線を照射することによって一次硬化させ、その後更に加熱硬化することにより、耐熱性、耐薬品性、密着性等に優れたマーキングパターンを形成することができる。また、上記組成物は熱硬化触媒を含有していることにより、上記加熱硬化においてプリント配線板を製造するときの加熱温度の低温でも十分に硬化させることが可能となる。この場合、活性エネルギー線の照射条件は、100mJ/cm以上、好ましくは300mJ/cm〜2000mJ/cmとすることが望ましい。また、加熱硬化の条件は、140〜170℃で20分以上、好ましくは150〜170℃で20〜60分とすることが望ましい。
【0019】
上記活性エネルギー線の照射は、インクジェットプリンターによるパターンの描画後に行なう方法と、当該パターン描画と平行して行なう方法とがあるが、時間や工程の短縮等から、後者の方法が好ましい。上記活性エネルギー線の照射をパターン描画と平行して行なう方法としては、例えばパターン描画時に基板の側部や底部等から活性エネルギー線を照射する方法等がある。活性エネルギー線の照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等を利用することができる。その他、電子線、α線、β線、γ線、X線、中性子線等も利用できる。
【0020】
以下、本発明のインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物について説明する。
【0021】
上記分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマーとしては、例えばグリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられ、市販品としては日油製ブレンマーG、共栄社化学製ライトエステルG等がある。尚、本明細書において、(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基及びメタアクリロイル基を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様とする。
【0022】
上記3官能以上のアクリレートモノマーとしては、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート等のポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリアクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、あるいはこれらのシルセスキオキサン変性物等に代表される多官能アクリレート、あるいはこれらに対応するメタアクリレートモノマー、3官能メタクリレートエステル、ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。当該3官能以上のアクリレートモノマーの配合量は、分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマーを100質量部としたとき、15〜400質量部、好ましくは20〜300質量部である。
【0023】
上記酸化チタンとしては、アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンのどちらも用いることができる。マーキングパターンの光劣化を抑制できる点から、特にルチル型酸化チタンを用いることが好ましい。アナターゼ型酸化チタンはルチル型酸化チタンと比較して紫外線領域と可視光領域の境界付近の反射率が高いため、白色度と反射率の点では、アナターゼ酸化チタンの方が白色顔料としては望ましい。しかし、アナターゼ型酸化チタンは光触媒活性を有するため、この光活性により光硬化熱硬化性組成物に含まれる樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対して、ルチル型酸化チタンはアナターゼ型酸化チタンと比較して白色度は若干劣るものの、光触媒活性を殆ど有さないため、上記樹脂の劣化を抑えることができ、安定したマーキングパターンを得ることができる。
【0024】
上記ルチル型酸化チタンとしては、具体的には、タイペークR−820、タイペークR−830、タイペークR−930、タイペークR−550、タイペークR−630、タイペークR−670、タイペークR−680、タイペークR−780、タイペークR−850、タイペークCR−50、タイペークCR−57、タイペークCR−80、タイペークCR−90、タイペークCR−93、タイペークCR−95、タイペークCR−97、タイペークCR−60、タイペークCR−63、タイペークCR−67、タイペークCR−58、タイペークCR−85、タイペークUT771(以上、石原産業(株)製)、タイピュアR−100、タイピュアR−101、タイピュアR−102、タイピュアR−103、タイピュアR−104、タイピュアR−105、タイピュアR−108、タイピュアR−900、タイピュアR−902、タイピュアR−960、タイピュアR−706、タイピュアR−931(以上、デュポン(株)製)、TITON R−25、TITON R−21、TITON R−32、TITON R−7E、TITON R−5N、TITON R−61N、TITON R−62N、TITON R−42、TITON R−45M、TITON R−44、TITON R−49S、TITON GTR−100、TITON GTR−300、TITON D−918、TITON TCR−29、TITON TCR−52、TITON FTR−700(以上、堺化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0025】
また、上記アナターゼ型酸化チタンとしては、TA−100、TA−200、TA−300、TA−400、TA−500(以上、富士チタン工業(株)製)、タイペークA−100、タイペークA−220、タイペークW−10(以上、石原産業(株)製)、TITANIX JA−1、TITANIX JA−3、TITANIX JA−4、TITANIX JA−5(以上、テイカ(株)製)、KRONOS KA−10、KRONOS KA−15、KRONOS KA−20、KRONOS KA−30(以上、チタン工業(株)製)、A−100、A−100、A−100、SA−1、SA−1L(以上、堺化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0026】
酸化チタンの配合量は、全組成物の合計量に対して好ましくは3〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部である。酸化チタンの配合量が上記合計量に対して30質量部を超えると、本発明の光硬化性熱硬化性組成物の粘度が高くなるとともに、光硬化性が低下し、硬化深度が低くなるので好ましくない。一方、酸化チタンの配合量が上記合計量に対して3質量部未満であると、当該光硬化性熱硬化性組成物の隠ぺい力が小さくなり、白色のマーキングパターンを得ることができない。
【0027】
上記熱硬化触媒としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。市販されている熱硬化触媒としては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。当該熱硬化触媒の配合量は、分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマーを100質量部としたとき0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜4質量部である。
【0028】
上記光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0029】
光ラジカル重合開始剤としては、光、レーザー、電子線等によりラジカルを発生し、ラジカル重合反応を開始する化合物であれば全て用いることができる。当該光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6−トリス−s−トリアジン、2,2,2−トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0030】
上記光ラジカル重合開始剤は、単独で又は複数種を混合して使用することができる。また更に、これらに加え、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類等の光開始助剤を使用することができる。また、可視光領域に吸収のあるCGI−784等(BASFジャパン社製)のチタノセン化合物等も、光反応を促進するために光ラジカル重合開始剤に添加することもできる。尚、光ラジカル重合開始剤に添加する成分はこれらに限られるものではなく、紫外光もしくは可視光領域で光を吸収し、(メタ)アクリロイル基等の不飽和基をラジカル重合させるものであれば、光重合開始剤、光開始助剤に限らず、単独であるいは複数併用して使用できる。
【0031】
上記光カチオン重合開始剤としては、光、レーザー、電子線等によりカチオン重合反応を開始する化合物であれば用いることができる。光によりカチオン種を発生する光カチオン重合開始剤としては、例えばジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、ブロモニウム塩、クロロニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩;トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン及びその誘導体等のハロゲン化化合物;スルホン酸の2−ニトロベンジルエステル;イミノスルホナート;1−オキソ−2−ジアゾナフトキノン−4−スルホナート誘導体;N−ヒドロキシイミド=スルホナート;トリ(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン誘導体;ビススルホニルジアゾメタン類;スルホニルカルボニルアルカン類;スルホニルカルボニルジアゾメタン類;ジスルホン化合物等が挙げられる。市販されている光カチオン重合開始剤としては、サイラキュアUVI−6970、UVI−6974、UVI−6990、UVI−6950(以上、UCC社製の商品名)、イルガキュア261(BASFジャパン社製の商品名)、SP−150、SP−152、SP−170(以上、旭電化工業(株)製の商品名)、DAICATII(ダイセル化学工業(株)製の商品名)、UVAC1591(ダイセル・サイテック(株)製の商品名)、CI−2734、CI−2855、CI−2823、CI−2758(以上、日本曹達(株)製の商品名)、PI−2074(ローヌプーラン(株)製の商品名)、FFC509(3M(株)製の商品名)、ロードシル フォトイニシエーター2074(ローディア(株)製の商品名)、BBI−102、BBI−101(ミドリ化学(株)製の商品名)、CD−1012(サートマー(株)製の商品名)等が挙げられる。
【0032】
本発明のインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物は、粘度の調整を目的として、希釈溶剤を添加することもできる。希釈溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤類等が挙げられる。
【0033】
更に本発明の光硬化性熱硬化性組成物は、必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の公知慣用の重合禁止剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤等の添加剤類を配合することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。尚、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味する。
【0035】
実施例1〜5及び比較例1〜8について、表1に示す割合で各成分を配合し、これをディゾルバーで攪拌し、更に1μmのディスクフィルターでろ過を行い、各組成物を得た。
【0036】
【表1】

【0037】
<分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマー>
GMA:グリシジルメタクリレート(粘度2mPa・s(25℃))
4HBAGE:4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(粘度7mPa・s(25℃))
<「分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマー」以外のモノマー>
EA−1010N:ビスフェノールA型エポキシ樹脂の片方のエポキシ基にアクリル酸を付加させた化合物 新中村化学工業社製(粘度22,000mPa・s(25℃))
AGE:アリルグリシジルエーテル アリル基とグリシジル基を持つ(粘度1mPa・s(25℃))
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート(粘度10mPa・s(25℃))
DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート(粘度12 mPa・s(25℃))
M−100:3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート メタクロイルと脂環式エポキシ基を持つ化合物 ダイセル化学工業製(粘度10mPa・s(25℃))
<3官能以上のアクリレートモノマー>
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
SR9011:3官能メタクリレートエステル サートマー社製
M327:ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成社製)
<酸化チタン>
CR−95:石原産業製酸化チタン
<硫酸バリウム>
B−30:堺化学製硫酸バリウム
<熱硬化触媒>
2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール
<光重合開始剤>
IRG819:BASF社製 イルガキュア819
【0038】
上記各組成物について以下に示す特性試験を行った。その結果を表2に示す。
【0039】
<塗布性>
富士フィルム製インクジェットプリンターDimatix Materials Printer DMP−2831を用い、インクジェットプリンター用フィルム(サンハヤト PF−10R−A4)に、上記各組成物でアルファベットのA〜Zを2mm角の大きさで印刷した。各文字について、ルーペで観察して文字の形状を以下のとおり評価した。
○:文字にかすれやよれがなく、余計な部分への飛び出しがない。
×:文字が確認できない、又は文字にかすれやよれが発生、若しくは余計な部分への飛び出しがある。
【0040】
<光硬化性>
プリント配線板用銅張積層板(FR−4 厚み1.6mm 大きさ150×95mm)に対し、太陽インキ製造(株)製ソルダーレジストPSR−4000G24を、乾燥塗膜が20μmになるようにスクリーン印刷にてベタ印刷した。そしてこれを80℃で30分乾燥し、塗膜を上記積層板に全面残すパターンで300mJ/cmで露光した。露光後の積層板を30℃1wt%NaCOで現像して水洗した。更にこれを150℃で30分間硬化させて、試験用基板を作製した。そして、富士フィルム製インクジェットプリンターDimatix Materials Printer DMP−2831を用いて、当該各試験用基板に上記各組成物で10×20mmの大きさの長方形のパターンを印刷した。更に印刷直後の各試験用基板を高圧水銀灯を用いて300mJ/cmの積算光量でUV照射した。
上記長方形パターンについて、UV照射後の硬化状態について以下のとおり評価した。
○:硬化しており、形状保持している。
×:硬化せず。
【0041】
<密着性>
上記光硬化性試験に記載した方法と同様の方法で各試験用基板を作製した。そして、富士フィルム製インクジェットプリンターDimatix Materials Printer DMP−2831を用い、上記各試験用基板に、上記各組成物で、10×20mmの大きさの長方形のパターンを膜厚が15μmになるように印刷した。印刷直後の各試験用基板を高圧水銀灯を用いて300mJ/cmの積算光量でUV照射した。次いで、UV照射後の各試験用基板を熱風循環式乾燥炉にて150℃30分加熱して熱硬化させ、各試験片を得た。その後、各試験片の長方形パターンにカッターナイフで縦横に1本ずつ切り込みをいれてからセロハンテープでピーリングを行い、はがれについて以下のとおり評価を行った。
○:ほとんどはがれが見られない。
×:セロテープ(登録商標)に大きく転写するはがれがある。
【0042】
<耐薬品性>
上記各組成物について、上記密着性試験に記載した方法と同様の方法で各試験片を作製した。当該各試験片について、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに室温で30分浸漬させ、これを取り出した後に乾燥させた。乾燥後の各試験片について、塗膜の状態を目視にて以下のとおり評価した。
○:塗膜の状態に変化なし
×:塗膜に浮き、はがれがある
【0043】
<耐熱性>
上記各組成物について、上記密着性試験に記載した方法と同様の方法で各試験片を作製した。当該各試験片について、ロジン系フラックスを塗布して、260℃のはんだ槽に10秒間浸漬し、これを取り出して自然冷却した。この試験を3回繰返した後、各試験片の塗膜の状態を目視にて以下のとおり評価した。
○:塗膜の状態に変化なし
×:塗膜に浮き、はがれがある
【0044】
<視認性>
上記光硬化性試験に記載した方法と同様の方法で各試験用基板を作製した。そして、当該各試験用基板に、富士フィルム製インクジェットプリンターDimatix Materials Printer DMP−2831を用いて、上記各組成物でアルファベットのA〜Eを3mm角の大きさで印刷した。各文字について、目視で下地とのコントラストについて以下のとおり評価した。
○:コントラストが大きく文字がはっきり視認できる。
×:コントラストが小さく下地と文字の区別が曖昧である。
【0045】
【表2】

【0046】
以上から、本発明のインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物は、プリント配線板に形成された樹脂絶縁層にインクジェットプリンターを用いて直接パターンを描画することができ、また塗布性に問題なく、密着性、耐薬品性、耐熱性に優れたマーキングパターンを形成することができる。特に、上記樹脂絶縁層と密着性の高いマーキングパターンを形成することができる。そして当該光硬化性熱硬化性組成物は、プリント配線板をはじめ、過酷な特性を要求されるマーキング用組成物として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマーと、
3官能以上のアクリレートモノマーと、
酸化チタンと、
熱硬化触媒と、
光重合開始剤を含む光硬化性熱硬化性組成物であって、プリント配線板に形成される樹脂絶縁層上へのパターン描画に用いられることを特徴とするインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物。
【請求項2】
前記分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマーがグリシジルメタクリレート又は4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物。
【請求項3】
前記3官能以上のアクリレートモノマーの配合量が前記分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマー100質量部に対して15〜400質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物。
【請求項4】
前記熱硬化触媒の配合量が前記分子内に(メタ)アクリロイル基とグリシジル基を有し25℃での粘度が10mPa・s以下のモノマー100質量部に対して0.1〜5質量部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物。
【請求項5】
プリント配線板に形成された樹脂絶縁層上に、インクジェットプリンターを用いて請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット用光硬化性熱硬化性組成物をパターン描画し、これを硬化させてなるパターンを有することを特徴とするプリント配線板。

【公開番号】特開2012−214534(P2012−214534A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78845(P2011−78845)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】