説明

インクジェット用顔料分散液の製造方法

【課題】画像濃度が高く、吐出安定性や液安定性にも優れた顔料分散液及び該顔料分散並びそれを用いたインクジェット用インクに関連した技術を提供すること。
【解決手段】少なくともカーボンブラックと分散剤、水からなり、前記カーボンブラックがチャンネルブラック及び又はガスブラックであり、製造方法がビーズミル分散であり、該ビーズ径は0.05mmφ以下であることを特徴とするインクジェット用顔料分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用顔料分散液の製造方法及び該製造方法によって得られた顔料分散液とそれを用いたインクジェット用インクに関するものであり、顔料分散液の保存安定性に優れ、さらにはそれを用いたインク液の吐出安定性、インク液保存安定性に優れたインクジェット用インクに関するものである。更に詳しくは、インクジェットヘッドの目詰まりが改良され、高い画像濃度が得られ、かつインク液保存安定性の優れたインクジェット用黒色インクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は他の記録方式に比べてプロセスが簡単であるためフルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても高解像度の画像が得られる利点がある。
インクジェット用インクとしては各種の水溶性染料を水、又は水と有機溶剤との混合液に溶解させた染料系インクが使用されているが、染料系インクは色調の鮮明性は優れているものの耐光性に劣る欠点があった。一方、カーボンブラックや各種の有機顔料を分散させた顔料系インクは染料系インクと比較して耐光性に優れるため盛んに研究されている。
しかし、顔料系インクは染料系インクと比べてノズルの目詰まりが生じやすい傾向がある。
顔料インクは、一般に水やアルコール類等の水性溶媒中に色材及び分散剤を予備分散させた分散物を調整したのち、該分散物をサンドミル等のメディア型分散機を用いて所定の程度まで分散させる分散工程を行ない、次いで所定の濃度に希釈することにより調整されている。
【0003】
顔料系の水系インクでは疎水性の顔料を分散させるために界面活性剤や水溶性樹脂を使用しているのが一般的であるが、得られる画像の信頼性は極めて悪い。そこで、画質向上を目的として造膜性の樹脂微粒子をインク液に添加する技術が開示されているが、複数の成分を微細に安定に長期分散させるのは困難で、これらの微粒子を安定に分散させるために界面活性剤などの分散剤を多く使用すると、インクタンク、ヘッド内での気泡の発生、画質の劣化などの問題も起こってしまう。また、分散性を向上させる目的で顔料の表面を親水基に変える方法や親水基を含有した樹脂などを用いることが検討されているが、それぞれ単独では安定であっても異なる種類を混ぜた場合、分散が不安定になり保存安定性が悪化するという問題があった。
【0004】
分散を安定化する目的で、分子内にカルボキシル基とノニオン親水基を有する水分散性樹脂を水に分散させる方法(特開平5−239392号公報…特許文献1)、水溶性高分子と界面活性剤を同じ極性にするかノニオンを添加する方法(特開平8−283633号公報…特許文献2)、水系記録液において着色イオン性含有ポリエステル樹脂と着色剤の親水基の極性を同じにする方法(特開2000−63727号公報…特許文献3)、顔料と樹脂微粒子の分散極性を同じにする方法(特開2001−81366号公報…特許文献4)、が開示されている。
【0005】
また、分散液中の粒子の少なくとも70%が0.1μm未満の直径を有し、当該分散液中の他の粒子が0.1μmに等しいか又はそれ以下の直径を有する粒度分布を有する顔料粒子を含む顔料分散液、アルデヒドナフタレンスルホネート分散剤、及び/又は少なくとも一つのスルホン溶媒を含む水性インクジェットインク組成物(特開平08−333531号公報…特許文献5)、また、特開昭56−147871号公報(特許文献6)においては、顔料、高分子分散剤および非イオン性界面活性剤を含有する水性媒体からなる記録液が開示されている。また、米国特許第5085698号明細書(特許文献7)、米国特許第5221334号明細書(特許文献8)においては、ABあるいはBABブロックコポリマーを、顔料の分散剤として用いることが開示されている。さらに、米国特許第5172133号明細書(特許文献9)においては、特定の顔料、水溶性樹脂、溶媒を用いることが開示されている。
【0006】
一方、分散剤を用いない顔料分散方法として、カーボンブラックに水可溶化基を含む置換基を導入する方法が米国特許第5571311号明細書(特許文献10)に、水溶性モノマー等をカーボンブラック表面に重合させる方法が特開平8−81646号公報(特許文献11)に、カーボンブラックを酸化処理する方法が特開平8−3498号公報(特許文献12)に開示されている。また、酸化処理を施したカーボンブラックおよびアクリル酸、スチレン、αメチルスチレンからなる3元重合体を含むインクによって耐水性と吐出安定性を確保する方法が、特開平9−194775号公報(特許文献13)に開示されている。
また、インクジェット記録液における分散粒子の体積平均粒子径が、30〜200nmであることを特徴とするインクジェット記録液(特開2000−144028号公報…特許文献14)が開示されている。
しかし、上記従来のインク液ではカラー顔料インクに関しては高い画像濃度は得られるものの黒色顔料インクに関してはいまだ十分ではなく満足するものではなかった。
【0007】
また、ビーズミル分散に使用するビーズ径は0.05mmから1.0mm程度のものを使用した例が開示されているが(特開2005−281691号公報…特許文献15、特開2005−314528号公報…特許文献16、特開2006−188626号公報…特許文献17)、いずれも分散安定性の面では十分ではない。
また、特許第3625595号公報(特許文献18)では分散剤にアニオン系界面活性剤が使用されているが、分子量は1000≦m≦30000の範囲が好ましいとされているが、いずれも分散安定性の面では十分ではなく、分散時における強い衝撃に弱い顔料種は分散後の安定性に欠け、インク液での吐出安定性等課題となっていた。
【0008】
【特許文献1】特開平5−239392号公報
【特許文献2】特開平8−283633号公報
【特許文献3】特開2000−63727号公報
【特許文献4】特開2001−81366号公報
【特許文献5】特開平08−333531号公報
【特許文献6】特開昭56−147871号公報
【特許文献7】米国特許第5085698号明細書
【特許文献8】米国特許第5221334号明細書
【特許文献9】米国特許第5172133号明細書
【特許文献10】米国特許第5571311号明細書
【特許文献11】特開平8−81646号公報
【特許文献12】特開平8−3498号公報
【特許文献13】特開平9−194775号公報
【特許文献14】特開2000−144028号公報
【特許文献15】特開2005−281691号公報
【特許文献16】特開2005−314528号公報
【特許文献17】特開2006−188626号公報
【特許文献18】特許第3625595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような事情に鑑みなされたもので、画像濃度が高く、吐出安定性や液安定性にも優れた顔料分散液及び該顔料分散並びそれを用いたインクジェット用インクに関連した技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、カーボンブラックの製造方法における分散液の製造方法がビーズミル分散であり、そのビーズ径は0.05mm以下であり、また、製造一次粒子径及びにBET表面積の範囲の特定、さらには分散剤としてのナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナフタレンスルホン酸縮合度の範囲を特定することにより上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。
【0011】
即ち、上記課題は本件発明の(1)〜(18)によって解決される。
(1)「少なくともカーボンブラックと分散剤、水からなり、前記カーボンブラックがチャンネルブラック及び又はガスブラックであり、製造方法がビーズミル分散であり、該ビーズ径は0.05mmφ以下であることを特徴とするインクジェット用顔料分散液の製造方法」、
(2)「前記分散剤がナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物であることを特徴とする前記第(1)項に記載のインクジェット用顔料分散液の製造方法」、
(3)「前記分散剤のナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物のナフタレンスルホン酸の2量体、3量体、4量体の合計含有量が20%から80%であることを特徴とする前記第(2)項に記載のインクジェット用顔料分散液の製造方法」、
(4)「前記カーボンブラックのBET比表面積が100m/gから400m/gであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載のインクジェット用顔料分散液の製造方法」、
(5)「前記カーボンブラックの平均一次粒子径が10nm〜30nmであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載のインクジェット用顔料分散液の製造方法」、
(6)「前記カーボンブラックは顔料分散液中で平均粒子径(D50)が70nmから180nmであり、粒度分布の粒子径標準偏差が平均粒子径の1/2以下であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の顔料分散液の製造方法」、
(7)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の分散剤が重量基準で前記カーボンブラック1に対し0.1以上2以下の割合で含まれることを特徴とするインクジェット用顔料分散液の製造方法」、
(8)「カーボンブラックの含有量が5重量%から50重量%であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載のインクジェット用顔料分散液の製造方法」、
(9)「前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の方法で製造されたことを特徴とするインクジェット用顔料分散液」、
(10)「前記第(9)項に記載のインクジェット用顔料分散液を使用することを特徴とするインクジェット用インク」、
(11)「前記第(10)項に記載のインクジェット用インクのカーボンブラックの含有量が1重量%から20重量%であることを特徴とするインクジェット用インク」、
(12)「前記第(10)項又は第(11)項に記載のインクジェットインクを収容したことを特徴とするインクカートリッジ」、
(13)「前記第(10)項又は第(11)項に記載のインクジェット用インクを画像支持体上に吐出させ記録を行なうことを特徴とするインクジェットプリント装置」、
(14)「前記第(13)項に記載のインクジェットプリント装置がピエゾ方式であることを特徴とするインクジェットプリント装置」、
(15)「前記第(14)項に記載のインクジェットプリント装置がサーマル方式であることを特徴とするインクジェットプリント装置」、
(16)「前記第(10)項又は第(11)項に記載のインクジェット用インクを用いてインクジェット方式プリント装置で印字することを特徴とする画像形成方法」、
(17)「前記第(10)項又は第(11)項に記載のインクジェット用インクを用いてインクジェットプリント装置で印字されたことを特徴とする画像形成物」、
(18)「前記第(17)項に記載の画像形成物の画像支持体が紙であることを特徴とする画像形成物」。
【発明の効果】
【0012】
本件発明の顔料分散液を用いたインクジェット用インクは高い画像濃度であり、吐出安定性、インク液保存安定性においても従来のものより優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明は少なくともカーボンブラックと分散剤、水からなり、前記カーボンブラックがチャンネルブラック及び又はガスブラックであり、製造方法がビーズミル分散であり、そのビーズ径は0.05mmφ以下であることを特徴とするインクジェット用顔料分散液の製造方法である。
【0014】
本発明で使用するビーズは通常セラミックビーズであり、一般的にはジルコニアボールが使用される。ビーズ径は0.05mmφ以下が好ましく、さらに好ましくは0.03mmφ以下である。
カーボンブラックの製造方法はガスブラック方式であり、得られたカーボンブラッの平均一次粒子径は10.0nm〜30.0nmで、BET表面積は100m/g〜400m/gである。
好ましくはカーボンブラックの平均一次粒子径は15.0nm〜20.0nmで、BET表面積は150m/g〜300m/gである。
本発明のカーボンブラックは平均一次粒子径が小さく、ハイストラクチャーである為、分散時の衝撃に弱く、ビーズ径が0.05mmを超えるようなビーズであるとビーズ同士の衝突エネルギーが強くストラキチャーの破壊が発生し、その結果得られたカーボンブラック分散液の安定性が損なわれる。
したがって、ビーズ径は0.05mm以下が好ましい。
【0015】
また、本発明の顔料分散液は分散剤が重量基準としてカーボンブラック1に対し0.1以上2以下の割合で含まれることが好ましい。さらに好ましくは、前記割合はカーボンブラック1に対し0.25〜1である。このような分散剤の使用量を採用することにより、本発明の分散液のカーボンブラック平均粒子径(D50)が70nm以上180nm以下で、該カーボンブラック粒度分布に於ける粒子径標準偏差が平均粒子径の1/2以下にすることができ、これにより高い画像濃度、吐出安定性、液安定性が良い顔料分散液を提供することができる。
本発明で好適裡に用いることができるガスブラックは、一般的にはカーボンの1類である。後述の実施例及び比較例の結果からも理解されるように、ファーネスブラックに比べ小粒子でストラクチャーが大きく画像濃度の点で特にインクジェットに向いており、特にその中でもインクの安定性、信頼性等を考慮すると、一次粒子径、BET比表面積、等も重要と思われ、また、分散方式もこの範囲のカーボンにおいては微小ビーズ分散が適していると思われる。さらに、本発明のカーボンブラックとの相性の点で前記第(2)項記載の分散剤は、少なくとも各種分散剤について可能な範囲で検討した結果によれば、最適のものであった。
なお、前記分散剤の使用量が0.1未満では前記効果が達成されにくいことのほか、顔料分散液及びインクの保存安定性が劣り、その結果ノズルの目詰まりが発生しやすい傾向があり、2より大きいと顔料分散液およびインクの粘度が高すぎてインクジェット方式での印字が困難になる傾向がある。
【0016】
本発明に於いて分散剤のナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物のナフタレンスルホン酸の2量体、3量体、4量体の合計含有率が20%未満だと分散性が悪くなり顔料分散液及びインクの保存安定性が劣り、その結果ノズルの目詰まりが発生しやすい。
また、ナフタレンスルホン酸の2量体から4量体の含有率が80%を超えると粘度が高くなり、分散が困難になる。
【0017】
本発明の顔料分散において顔料濃度は分散液全量に対して5重量%以上50重量%以下が好ましい。5重量%未満では生産性が劣り、50重量%より多いと顔料分散液の粘度が高すぎて分散が困難になる傾向がある。
【0018】
また、本発明の顔料分散液には、水の他に各種添加剤を配合することができる。例えば、水溶性有機媒体としてメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン等のピロリドン誘導体、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等、またノニオン、アニオン、カチオン、両性の各種の界面活性剤、防腐剤等が挙げられる。
【0019】
本発明のカーボンブラック分散液は、前記カーボンブラック、分散剤、水、必要に応じて各種添加剤をサンドミル、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、等の公知の分散機で分散することによって得られる。
このとき、分散剤の使用量を前記のように重量基準として顔料1に対し0.1以上2以下の割合にするとともに、湿式分散処理を採用するのが好適である。なお、本発明で言う湿式分散処理とは顔料、分散剤、水、必要に応じて水溶性有機溶剤の混合物を前記サンドミル、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、等により、いわゆる湿式分散方式で微粉砕・分散する処理のことである。
また、前記分散機の前工程でホモジナイザー等で粗大粒子を前処理することにより、寄りいっそう粒度分布をシャープにすることができ、画像濃度、吐出安定性等の改善に繋がる。
【0020】
このようにして得られた本発明の顔料分散液は、特に顔料系インクジェット用インクとして好適に使用することができる。
顔料系インクジェット用インクは公知の方法、例えば本発明の顔料分散液、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤等を攪拌混合し、フィルター、遠心分離装置等で粗大粒子をろ過し、必要に応じて脱気することによって得られる。なお、インクに於けるカーボンブラックの濃度は全量に対して1重量%以上20重量%以下が好ましい。1重量%未満では画像濃度が低いため印字の鮮明さに欠け、20重量%より多いとインクの粘度が高くなる傾向があるばかりでなくノズルの目詰まりが発生しやすくなる。またインクには前記顔料分散液への添加剤で記した材料と同等の材料を必要に応じて配合することができる。
たとえば水溶性有機溶剤の含有量としては、インク全量に対して0重量%以上50重量%以下、好ましくは5重量%〜40重量%、さらに好ましくは10重量%〜35重量である。
【0021】
このようにして得られた本発明の顔料系インクジェット用インクは、これを収容するインクカートリッジに好適に用いることができる。また本発明の顔料系インクジェットインクは、これを例えば紙のような画像支持体に吐出させ記録(印字)を行なって画像形成するインクジェットプリント装置により、画像形成することができる。
印字する方法としては連続噴射型あるいはオンデマンド型が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明はこれらの例に限
定されるものではない。なお実施例中の部は重量基準である。
【0023】
(実施例1)
・処方1
カーボンブラック NIPEX160-IQ(degussa社製:ガスブラック) 150部
ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物 38部
(パイオニンA-45-PN竹本油脂(株))
(ナフタレンスルホン酸2量体、3量体、4量体の合計含有量:49%)
蒸留水 812部
上記の混合物をプレミックス後ビーズミル分散機(寿工業社製 UAM-015)を用い0.05mmジルコニアビーズ(密度6.03×10−6g/m)で周速10m/s、液温32℃で12分間分散した後、遠心分離機(久保田商事(株)製Model-3600)で粗大粒子を遠心分離し、カーボンブラック分散液の平均粒子径121.4nm、標準偏差48.3nmの表1の分散液(A)を得た。
【0024】
(実施例2,3,4)
実施例1のカーボンブラックを順次、NIPEX150、(degussa社製:ガスブラック)、COLOR BLACK S170、color Black FW18、(degussa社製:チャンネルブラック)、にする以外は同様にして顔料分散液(B)、(C)、(D)を得た。
【0025】
(実施例5,6)
実施例1のナフタレンスルホン酸2量体、3量体、4量体の合計含有量を変え、更にジルコニアビーズ径を0.03mmにし、分散時間を8分にする以外は同様にして表1の顔料分散液(E)、(F)を得た。
【0026】
(実施例7)
実施例1のジルコニアビーズ径を0.03mmにし分散時間を5分にする以外は同様にして表1の顔料分散液(G)を得た。
【0027】
(比較例1,2,3)
実施例1のカーボンブラックを順次、Printex95、Printex85、Printex75、(degussa社製:ファーネスブラック)、にし、ジルコニアビーズ径を0.1mmにする以外は同様にして各顔料分散液を表1の顔料分散液(H)、(I)、(J)を得た。
【0028】
(比較例4,5)
実施例1のカーボンブラックを順次、#850、#44(三菱化学社製:ファーネスブラック)にし、ジルコニアビーズ径を0.3mmする以外は同様にして表1の顔料分散液(K)、(L)を得た。
【0029】
上記の方法で得られた顔料分散液(A)〜(L)を用いて下記インク処方1によりインク液を調整し、30分攪拌後孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過、真空脱気して(a)〜(l)の実施例及び比較例のインク液を得た。
・インク処方1
顔料分散液(顔料濃度15%) 100.0部
グリセリン 7.5部
ジエチレングリコール 22.5部
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 3.0部
2−ピロリドン 3.0部
ポリオキシエチレン(3)アルキル(C13)エーテル酢酸ナトリウム 0.45部
蒸留水 13.55部
上記のインク液(a)〜(l)に含まれる顔料の平均粒径を測定した。またEPSON社製インクジェットプリンタMJ−930Cでゼロックス(株)社製PPC用紙4024に印字し、吐出安定性及び印字画像をXrite濃度計にて測定した。また、インク液保存性についても下記試験法により評価した。結果を表1に示す。
なお、表1中のカーボンブラックのBET比表面積、及び平均一次粒子径はメーカー保証値(カタログ値)である。また、分散液、インクの平均粒子径(D50)、標準偏差値測定法はつぎのとおりである。
[分散液、インク液粒径測定条件]
測定器:日機装株式会社製 粒度分布計UPA150
測定条件
1)測定液固形分濃度 :0.1重量%水溶媒
2)Trasparent Paricles :Yes
3)Spherical Paricles :No
4)Part.Refractive Index :1.86
5)Part.Density :1.86(gm/cm
6)Fluid :Default Fluid
7)Fluid Refractive Index :1.33
8)Viscosity High 30℃ :0.797cp
9)Viscosity Low 20℃ :1.002cp
10)表示形式 :体積分布
表1には、以上の条件下で測定した結果得られた平均粒子径(D50)と標準偏差(sd)が記載される。
【0030】
【表1】

【0031】
<ナフタレンスルホン酸縮合物 HPLC分析>
装置:LC-10vp(島津製作所)
カラム:ZORBAX BP-ODS(4.6id.×150mm)GLサイエンス)
ガードカラム:ZORBAX BP-ODS(4.0id.×10mm)GLサイエンス)
検出機:UV(237nm)
移動相:CHCN/0.005M PIC水溶液=25/75
流速:1mL/min
サンプル調整:200ppm soln
注入量:20μL
<画像濃度>
画像濃度は画像サンプルのベタ画像の測色をXrite濃度計にて測定を行なう。
<吐出安定性>
吐出安定性については、印刷物を印刷した後、プリンタヘッドにキャップした状態でプリンタを40℃の環境下で1ヶ月放置した。放置後のプリンタの吐出状態が初期の吐出状態に回復するか否かを下記のクリーニング動作回数によって評価した。
○:1回の動作により回復した。
△:2回〜3回の動作により回復した。
×:3回以上の動作によっても回復がみられなかった。
<インク保存性>
各インクをポリエチレン容器に入れ密封し、70℃3週間保存した後の粒径、表面張力、粘度を測定し初期物性との変化率により下記の様に評価した。
◎:粒径、表面張力、粘度の全て項目で変化率が5%未満である。
○:粒径、表面張力、粘度の全て項目で変化率が10%未満である。
△:粒径、表面張力、粘度の全て項目で変化率が30%未満である。
×:粒径、表面張力、粘度の少なくとも一つの項目で変化率が30%以上である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともカーボンブラックと分散剤、水からなり、前記カーボンブラックがチャンネルブラック及び又はガスブラックであり、製造方法がビーズミル分散であり、該ビーズ径は0.05mmφ以下であることを特徴とするインクジェット用顔料分散液の製造方法。
【請求項2】
前記分散剤がナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用顔料分散液の製造方法。
【請求項3】
前記分散剤のナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物のナフタレンスルホン酸の2量体、3量体、4量体の合計含有量が20%から80%であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット用顔料分散液の製造方法。
【請求項4】
前記カーボンブラックのBET比表面積が100m/gから400m/gであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット用顔料分散液の製造方法。
【請求項5】
前記カーボンブラックの平均一次粒子径が10nm〜30nmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット用顔料分散液の製造方法。
【請求項6】
前記カーボンブラックは顔料分散液中で平均粒子径(D50)が70nmから180nmであり、粒度分布の粒子径標準偏差が平均粒子径の1/2以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の分散剤が重量基準で前記カーボンブラック1に対し0.1以上2以下の割合で含まれることを特徴とするインクジェット用顔料分散液の製造方法。
【請求項8】
カーボンブラックの含有量が5重量%から50重量%であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のインクジェット用顔料分散液の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の方法で製造されたことを特徴とするインクジェット用顔料分散液。
【請求項10】
請求項9に記載のインクジェット用顔料分散液を使用することを特徴とするインクジェット用インク。
【請求項11】
請求項10に記載のインクジェット用インクのカーボンブラックの含有量が1重量%から20重量%であることを特徴とするインクジェット用インク。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のインクジェットインクを収容したことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項13】
請求項10又は11に記載のインクジェット用インクを画像支持体上に吐出させ記録を行なうことを特徴とするインクジェットプリント装置。
【請求項14】
請求項13に記載のインクジェットプリント装置がピエゾ方式であることを特徴とするインクジェットプリント装置。
【請求項15】
請求項14に記載のインクジェットプリント装置がサーマル方式であることを特徴とするインクジェットプリント装置。
【請求項16】
請求項10又は11に記載のインクジェット用インクを用いてインクジェット方式プリント装置で印字することを特徴とする画像形成方法。
【請求項17】
請求項10又は11に記載のインクジェット用インクを用いてインクジェットプリント装置で印字されたことを特徴とする画像形成物。
【請求項18】
請求項17に記載の画像形成物の画像支持体が紙であることを特徴とする画像形成物。

【公開番号】特開2008−260920(P2008−260920A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63443(P2008−63443)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】