説明

インクジェット記録ヘッド

【課題】インク供給ノズルに接続される外部のインク供給チューブ同士の干渉を防ぎつつ、小型化が図れるインクジェット記録ヘッドを提供する。
【解決手段】ヘッドハウジング3上で第1のインク供給ノズル2aの隣に第2のインク供給ノズル2bが立設され、第1のインク供給ノズル2aに挿入して形成されるインク供給チューブ6aのチューブ膨らみ部8aと、第2のインク供給ノズル2bに挿入して形成されるインク供給チューブ6bのチューブ膨らみ部8bが互いに干渉しないように、第1のインク供給ノズル2aのテーパ段付部7aの位置と、第2のインク供給ノズル2bのテーパ段付部7bの位置を、インク供給ノズル高さ方向において互いにずらしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録ヘッドに係り、特にヘッドハウジングの所定の箇所に複数本のインク供給ノズルを接近して配置する構成のインクジェット記録ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録ヘッドによる印刷は、民生用途はもとより、産業用途についても高画質出力が要求されるようになっており、大型の看板やポスター印刷分野でもオンデマンド印刷の要求が多く、オンデマンド型インクジェット記録装置が多く用いられるようになっている。
【0003】
それらの用途のインクジェット記録装置においても、装置の小型化、低コスト化が要求されるようになっており、インクジェット記録ヘッドについては、オリフィス(インク吐出ノズル)の実装密度、すなわちオリフィス列におけるオリフィス間隔の縮小、および複数のオリフィス列の列間距離の縮小による、インクジェット記録ヘッドの小型化、および多オリフィス化が要求されている。
【0004】
さらに、近年、液晶ディスプレイや配線パターニングの形成方法として、インクジェット記録ヘッドを用いて、特殊溶液を吐出する形成方法での用途が高まりつつある。このようなパターニングには、高精度でかつ被着表面のバラツキを抑えるために1回の塗布で済ませることが要求され、より高密度のオリフィス実装が要求されてきている。
【0005】
ここで、インクジェット記録ヘッドをインクジェット記録装置に実装する場合、インクジェット記録ヘッドには外部のインク供給チューブとの接続のため、短管状のインク供給ノズルを配置した例があり、多色のインクを1個のインクジェット記録ヘッドにて吐出させる場合には、複数のインク供給ノズルを配置する必要がある。
【0006】
図11は従来のインクジェット記録ヘッドの一部平面図、図12はそのインクジェット記録ヘッドの側面図、図13はそのインクジェット記録ヘッドの一部拡大側面図である。
【0007】
図示していないがヘッドハウジング3の内側には、オリフィスプレート、圧力室プレート、リストリクタプレート、ダイヤフラムプレート、圧電振動子などの各種インク滴吐出部材が収納されている。
【0008】
この例のインクジェット記録ヘッドは4色(Y,M,C,K)のインクに対応しており、図11に示すように、各色に応じた短管状のインク供給ノズル2(2a,2b,2c,2d)がヘッドハウジング3の片側に4本略列状に立設されている。各インク供給ノズル2の高さ方向の略中間位置には、インク供給ノズル2に挿入されるインク供給チューブ(図示せず)がインク圧によって外れ難いようにテーパ段付部7が設けられている。
【0009】
また、図13に示すように、各インク供給ノズル2(2a,2b,2c,2d)とヘッドハウジング3の接合部には、インク漏れを防止するために接着剤14が塗布されている。
【0010】
なお、インクジェット記録ヘッドに複数のインク供給ノズルを密集配置して、それぞれのインク供給ノズルに互いに異なる色のインクを供給する場合で、そのインクの混色を防止した構成が、例えば特開2004−268454号公報(特許文献1)に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のインクジェット記録ヘッドは、ヘッドハウジング3の予め決められた箇所、例えばヘッドハウジング3の片側に、複数本のインク供給ノズル2(2a,2b,2c,2d)をまとめて設置する場合、図12に示すように、高さ(長さ)の等しい複数本のインク供給ノズル2(2a,2b,2c,2d)を用い、それらをヘッドハウジング3の同一上面から垂直に立設していた。
【0012】
従って、各インク供給ノズル2(2a,2b,2c,2d)に設けられているテーパ段付部7は、互いに同じ高さの位置にある。また、図示していないが、各インク供給ノズル2にインク供給チューブを挿入すると、それの一部に前記テーパ段付部7を覆って外周に向けて突出したチューブ膨らみ部が形成されるが、これらチューブ膨らみ部も互いに同じ高さの位置にある。
【0013】
前述のように複数のオリフィス列を高密度に配置したいインクジェット記録ヘッドにおいて、複数のインク供給ノズルを接近して配置したい場合、隣のインク供給ノズル同士、およびそのインク供給ノズルに接続された外部のインク供給チューブ(特にチューブ膨らみ部)同士の干渉を防ぐために、隣のインク供給ノズル、例えばインク供給ノズル2a,2bの穴中心間距離eを行方向(X方向)9またはそれと直交する桁方向(Y方向)に十分とる必要があり、そのためにインクジェット記録ヘッドの小型化に障害になるという問題があった。
【0014】
また、従来のインクジェット記録ヘッドでは図13に示すように、インク供給ノズル2とヘッドハウジング3の接合面13を封止するために接着剤14を塗布するが、そのヘッドハウジング3の接合面13がフラットであるため、接着剤14がインク供給ノズル2の周囲から漏れ出して、インク供給ノズル2周囲の接着剤14が不足し、十分な封止効果が得られないことがある。
【0015】
さらに、接着剤14による封止作業中、ヘッドハウジング3の側面など他の面に接着剤14が付着しないように、注意して作業する必要があり、作業能率が悪いという問題もあった。
【0016】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、インク供給ノズルに接続される外部のインク供給チューブ同士の干渉を防ぎつつ、小型化が図れるインクジェット記録ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、
多数のオリフィスを列設したオリフィスプレートと、
前記オリフィスと連通して内部にインクを貯留する圧力室を有する圧力室プレートと、
前記圧力室内のインクに瞬間的に圧力を加えて、前記オリフィスからインク滴を吐出する例えば圧電振動子などの圧力発生源と、
前記オリフィスプレート、圧力室プレートならびに圧力発生源などを支持、収納したヘッドハウジングと、
高さ方向の途中にテーパ段付部が設けられて、前記ヘッドハウジング外周の定められた箇所にまとめて設置された複数本のインク供給ノズルと、
前記各インク供給ノズルに挿入して前記テーパ段付部を覆うことによりチューブ膨らみ部が形成されて該インク供給ノズルに個別に固定される複数本のインク供給チューブを備えたインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記ヘッドハウジング上で第1のインク供給ノズルの隣に第2のインク供給ノズルが立設されており、
前記第1のインク供給ノズルに挿入して形成される前記インク供給チューブのチューブ膨らみ部と、前記第2のインク供給ノズルに挿入して形成される前記インク供給チューブのチューブ膨らみ部が互いに干渉しないように、
前記第1のインク供給ノズルのテーパ段付部の位置と、前記第2のインク供給ノズルのテーパ段付部の位置を、インク供給ノズル高さ方向において互いにずらしたことを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第2の手段は、
多数のオリフィスを列設したオリフィスプレートと、
前記オリフィスと連通して内部にインクを貯留する圧力室を有する圧力室プレートと、
前記圧力室内のインクに瞬間的に圧力を加えて、前記オリフィスからインク滴を吐出する圧力発生源と、
前記オリフィスプレート、圧力室プレートならびに圧力発生源などを支持、収納したヘッドハウジングと、
高さ方向の途中にテーパ段付部が設けられて、前記ヘッドハウジング外周の定められた箇所にまとめて立設された複数本のインク供給ノズルと、
前記各インク供給ノズルに挿入して前記テーパ段付部を覆うことにより該インク供給ノズルに個別に固定される複数本のインク供給チューブを備えたインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記ヘッドハウジング上で第1のインク供給ノズルの隣に第2のインク供給ノズルが立設されており、
前記第1のインク供給ノズルに挿入して形成される前記インク供給チューブのチューブ膨らみ部と、前記第2のインク供給ノズルに挿入して形成される前記インク供給チューブのチューブ膨らみ部が互いに干渉しないように、
前記第2のインク供給ノズルのテーパ段付部に対して前記第1のインク供給ノズルのテーパ段付部が離れる方向に、当該第1のインク供給ノズルが前記ヘッドハウジングから傾斜して立設していることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の第3の手段は前記第1または第2の手段において、
前記複数本のインク供給ノズルが前記ヘッドハウジング上に所定の間隔をおいて非直線状に配列されていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第4の手段は前記第1の手段において、
前記複数本のインク供給ノズルが前記ヘッドハウジング上に配列されており、そのインク供給ノズル列の片側端部あるいは両側端部にあるインク供給ノズルが前記第1のインク供給ノズルであり、前記インク供給ノズル列の前記第1のインク供給ノズルの内側にあるインク供給ノズルが前記第2のインク供給ノズルであり、
その第2のインク供給ノズルのテーパ段付部に対して前記第1のインク供給ノズルのテーパ段付部が、インク供給ノズル高さ方向上側あるいは下側にずれていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の第5の手段は前記第1または第4の手段において、
全体の長さならびにインク供給ノズル上での前記テーパ段付部の位置が同じ複数本のインク供給ノズルを用い、
前記ヘッドハウジングの前記第1のインク供給ノズルが立設する位置には座ぐり部が形成され、前記第2のインク供給ノズルが立設する位置には座ぐり部は形成されておらず、
前記ヘッドハウジングの各位置に前記インク供給ノズルを立設することにより、第2のインク供給ノズルのテーパ段付部に対して前記第1のインク供給ノズルのテーパ段付部を、インク供給ノズル高さ方向下側にずらすことを特徴とするものである。
【0022】
本発明の第6の手段は前記第2の手段において、
前記複数本のインク供給ノズルが前記ヘッドハウジング上に配列されており、そのインク供給ノズル列の片側端部あるいは両側端部にあるインク供給ノズルが前記第1のインク供給ノズルであり、前記インク供給ノズル列の前記第1のインク供給ノズルの内側にあるインク供給ノズルが前記第2のインク供給ノズルであり、
その第2のインク供給ノズルが前記ヘッドハウジング上に垂直に立設されており、
前記第1のインク供給ノズルが前記第2のインク供給ノズルに対してインク供給ノズル列方向外側に向けて傾斜していることを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第7の手段は前記第1ないし第6のいずれかの手段において、
前記ヘッドハウジングの第1のインク供給ノズルが立設する位置に座ぐり部が形成され、その座ぐり部が前記ヘッドハウジングと第1のインク供給ノズルの接合部を封止する接着剤の接着剤溜めになっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は前述のような構成になっており、インク供給ノズルに接続される外部のインク供給チューブ同士の干渉を防ぎつつ、小型化が図れるインクジェット記録ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係るインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【図2】そのインクジェット記録ヘッドの一部平面図である。
【図3】そのインクジェット記録ヘッドの側面図である。
【図4】そのインクジェット記録ヘッドの一部拡大側面図である。
【図5】そのインクジェット記録ヘッドのインク供給ノズルにインク供給チューブを接続した状態を示す一部拡大側面図である。
【図6】そのインクジェット記録ヘッドに用いるオンデマンド型ヘッド部の分解斜視図である。
【図7】そのオンデマンド型ヘッド部の縦断面図である。
【図8】本発明の実施例2に係るインクジェット記録ヘッドの一部平面図である。
【図9】そのインクジェット記録ヘッドの側面図である。
【図10】そのインクジェット記録ヘッドのインク供給ノズルにインク供給チューブを接続した状態を示す一部拡大側面図である。
【図11】従来のインクジェット記録ヘッドの一部平面図である。
【図12】そのインクジェット記録ヘッドの側面図である。
【図13】そのインクジェット記録ヘッドの一部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明の各実施例を図面とともに説明する。
(実施例1)
図1は本発明の実施例1に係るインクジェット記録ヘッドの斜視図、図2はそのインクジェット記録ヘッドの一部平面図、図3はそのインクジェット記録ヘッドの側面図、図4はそのインクジェット記録ヘッドの一部拡大側面図、図5はそのインクジェット記録ヘッドのインク供給ノズルにインク供給チューブを接続した状態を示す一部拡大側面図、図6はそのインクジェット記録ヘッドに用いるオンデマンド型ヘッド部の分解斜視図、図7はそのオンデマンド型ヘッド部の縦断面図である。
【0027】
先ず、このインクジェット記録ヘッドに用いるオンデマンド型ヘッド部の構成ならびに動作原理について、図6ならびに図7を用いて説明する。
【0028】
図6ならびに図7において、符号71はオリフィス、72はオリフィスプレート、73は圧力室、74は圧力室プレート、75はリストリクタ、76はリストリクタプレート、77はダイヤフラム、78はフィルタ、79はダイヤフラムプレート、80は穴部、81はサポートフレーム、82は共通液通路、83は筐体、84は接着剤、85は圧電アクチュエータ、86は圧電振動子、87は外部電極、88は導電性接着剤、89は支持基板、90は個別電極、91は共通電極、92はスルーホール、93は液導入パイプである。
【0029】
このオンデマンド型ヘッド部は図6に示すように、オリフィスプレート72、圧力室プレート74、リストリクタプレート76、ダイヤフラムプレート79、サポートフレーム81、筐体83、圧電アクチュエータ85などから主に構成されている。
【0030】
1列あるいは複数列に多数のオリフィス71を形成したオリフィスプレート72は、ニッケル材の電鋳加工法、ステンレス鋼材などの精密プレス加工法またはレーザ加工法などによって製作される。圧力室プレート74には、前記オリフィス71に対応した個数の圧力室73が形成され、前記オリフィス71と連通している。前記リストリクタプレート76は図7に示すように共通液通路82と圧力室73を連通し、圧力室73への液流入量を制御するリストリクタ75が形成されている。圧力室プレート74とリストリクタプレート76は、ステンレス鋼材のエッチング加工法または精密プレス加工、ニッケル材の電鋳加工法などによって製作される。
【0031】
ダイヤフラムプレート79には圧電振動子86の圧力を効率よく圧力室73に伝達するためのダイヤフラム77と、共通液通路82からリストリクタ75に流入する液中のゴミなどを除くフィルタ78が形成されている。ダイヤフラムプレート79は、ステンレス鋼材のエッチング加工法またはニッケル材の電鋳加工法などによって製作される。
【0032】
サポートフレーム81はダイヤフラム77と圧電振動子86を接着剤84で固定するとき、ダイヤフラム77の振動系固定端の位置を規制し、かつ接着箇所からはみ出した接着剤がダイヤフラム77の上で広がるのを規制する穴部80が形成されている。サポートフレーム81は、ステンレス鋼材のエッチング加工法または精密プレス加工、ニッケル材の電鋳加工法などによって製作される。金属または合成樹脂で製作される筐体83には共通液通路82が設けられており、この共通液通路82に液導入パイプ93が接続されている。
【0033】
液導入パイプ93から供給されたインクは、ヘッド部の共通液通路82の途中でフィルタ78を通過して、リストリクタ75、圧力室73、オリフィス71へと順に流れる。個別電極90と共通電極91との間に所定のパルス電圧を印加することにより、圧電振動子86が伸縮し、パルス電圧の印加を止めると圧電振動子86は伸縮前の状態に戻る。このような圧電振動子86の変形により圧力室73内に貯留されているインクに瞬間的に圧力が加わり、オリフィス71からインクが液滴となって紙などの被記録媒体上に着弾して画像を形成する。
【0034】
前述のオリフィスプレート72、圧力室プレート74、リストリクタプレート76、ダイヤフラムプレート79、圧電振動子86などの各種インク滴吐出用部材が、図1などに示すヘッドハウジング3内に収納されている。
【0035】
この実施例に係るインクジェット記録ヘッド1は4色(Y,M,C,K)のインクに対応しており、図1に示すように、各色別に短管状のインク供給ノズル2(2a,2b,2c,2d)がヘッドハウジング3の外周部の片側に4本略列状に立設されている。各インク供給ノズル2の高さ方向の略中間位置(途中)には、インク供給ノズル2に挿入されたインク供給チューブ6がインク圧によって外れ難いようにテーパ段付部7が形成されている。
【0036】
各インク供給ノズル2は、流路(図示せず)を介して図6に示す液導入パイプ93に接続されている。図1中の符号15はフラットケーブルであり、図6に示す個別電極90や共通電極91に接続されている。
【0037】
前記4本のインク供給ノズル2(2a,2b,2c,2d)は、インク供給ノズル2とヘッドハウジング3との接合面4において、平面から見てそれぞれ千鳥配列あるいは「く」の字状に近い配列など非直線状に所定の間隔をおいて配列されており、隣接するインク供給ノズル2、例えば図2に示すインク供給ノズル2aとインク供給ノズル2bの穴中心間距離aを極力確保した配置となっている。
【0038】
更に、この4本のインク供給ノズル2のうち外側に位置している2本のインク供給ノズル2aとインク供給ノズル2dは、ヘッドハウジング3側に座ぐり部5が形成されて、ヘッドハウジング3との接合面4をヘッドハウジング深さ方向にオフセットbした、すなわち段落ちした配置になっている。従って図3に示すように、インク供給ノズル2aとインク供給ノズル2bのテーパ段付部7の位置は上下関係にあり、また、インク供給ノズル2cとインク供給ノズル2dも同様にテーパ段付部7の位置が上下関係にある。
【0039】
図5は、インク供給ノズル2aとインク供給ノズル2bにそれぞれインク供給チューブ6a,6bを装着(接続)した状態を示した図である。インク供給チューブ6a,6bは柔軟性を有しており、この図に示されているように、テーパ段付部7を設けたインク供給ノズル2にインク供給チューブ6を装着すると、インク供給チューブ6のテーパ段付部7を覆った部分にチューブ膨らみ部8が形成される。
【0040】
前述のようにインク供給ノズル2aとインク供給ノズル2bのテーパ段付部7a,7bの位置は上下関係にあるため、テーパ段付部7a,7bによって形成されるチューブ膨らみ部8a,8bも上下方向にずれており、チューブ膨らみ部8a,8bが互いに干渉することはない。これはインク供給ノズル2cとインク供給ノズル2dにおいても同様であり、チューブ膨らみ部8の互いの干渉を回避することができる。
従って本実施例において、インク供給ノズル2のオフセットb量(下げ幅)は、隣接するチューブ膨らみ部8が互いに干渉しない程度の寸法である。
【0041】
図4に示すように、各インク供給ノズル2のヘッドハウジング3との接合部は、接着剤14によって液密にシールされている。
【0042】
この実施例では、全体の高さ(長さ)が等しく、しかもインク供給ノズル2上でのテーパ段付部7が同じ位置のインク供給ノズル2を複数本使用し、特定のインク供給ノズル2が設置されるヘッドハウジング3の位置に座ぐり部5を形成して、その座ぐり部5に特定のインク供給ノズル2を設置することにより、その特定のインク供給ノズル2のテーパ段付部7の位置を他のインク供給ノズル2のテーパ段付部7よりも低くしたが、特定のインク供給ノズル2の高さ(長さ)を他のインク供給ノズル2よりも低くして、座ぐり部5を形成しない通常のヘッドハウジング3上にそれぞれインク供給ノズル2を立設し、インク供給ノズル2の高さ(長さ)の違いによりテーパ段付部7に上下差を付けることも可能である。
【0043】
(実施例2)
図8は本発明の実施例2に係るインクジェット記録ヘッドの一部平面図、図9はそのインクジェット記録ヘッドの側面図である。
【0044】
この実施例に係るインクジェット記録ヘッドも実施例1と同様に4色(Y,M,C,K)のインクに対応しており、図8に示すように、各色別に短管状のインク供給ノズル2(2a,2b,2c,2d)がヘッドハウジング3の外周部の片側に4本略列状に立設されている。各インク供給ノズル2の高さ方向の略中間位置には、テーパ段付部7が形成されている。
【0045】
また前記4本のインク供給ノズル2(2a,2b,2c,2d)は、インク供給ノズル2とヘッドハウジング3との接合面4において、平面から見てそれぞれ千鳥配列あるいは「く」の字状に近い配列など非直線状に所定の間隔をおいて配列されている。
【0046】
図9に示すように、内側の2本のインク供給ノズル2b,2cは、ヘッドハウジング3の接合面13に対して垂直に立設している。これに対して外側(両側)の2本のインク供給ノズル2a(2d)は、その上端部が隣のインク供給ノズル2b(2c)の上端部から離れるように、内側のインク供給ノズル2b(2c)とは反対の外側に所定の角度dだけ傾斜して設けられている。
【0047】
このようにインク供給ノズル2a(2d)の上端部をインク供給ノズル2b(2c)の上端部から離れるように、外側に向けて傾斜するように設置することにより、例えば図8に示すインク供給ノズル2aの上端部とインク供給ノズル2bの上端部の穴中心間距離cを十分に確保することができる。
【0048】
図9に示すように、インク供給ノズル2a(インク供給ノズル2dも同様)をヘッドハウジング3上に所定角度dだけ傾斜して設けるために、ヘッドハウジング3に若干傾斜した座ぐり部12を形成する。また、インク供給ノズル2aを傾斜して設けるのに伴って、ヘッドハウジング3内のインク供給ノズル挿入穴11も傾斜している。
【0049】
図10は、インク供給ノズル2aとインク供給ノズル2bにそれぞれインク供給チューブ6a,6bを装着した状態を示した図である。この図に示されているように、テーパ段付部7を設けたインク供給ノズル2にインク供給チューブ6を装着すると、インク供給チューブ6のテーパ段付部7を覆った部分にチューブ膨らみ部8が形成される。
【0050】
前述のようにインク供給ノズル2aの上端部はインク供給ノズル2bの上端部から離れる方向に傾斜しているから、テーパ段付部7a,7bによって形成されるチューブ膨らみ部8a,8bも離れており、両者が互いに干渉することはない。これはインク供給ノズル2cとインク供給ノズル2dにおいても同様であり、チューブ膨らみ部8の干渉を回避することができる。
従って本実施例において、インク供給ノズル2b(インク供給ノズル2c)に対するインク供給ノズル2a(インク供給ノズルd)の外側への傾斜角度dは、隣接するチューブ膨らみ部8が互いに干渉しない程度の角度となる。
【0051】
前記実施例1および2において、インク供給ノズル2およびヘッドハウジング3はステンレス鋼材の機械加工品で構成されており、両者の接合部は例えばエポキシ系接着剤等の接着剤14によって液密的に接着固定されている。この構成により、水性インク、油性インクはもとより、UVインク、更にはパターニング用特殊溶液の使用にも耐えられるようにしている。
【0052】
このインク供給ノズル2とヘッドハウジング3の接合部においてインク漏れを防止するために、ヘッドハウジング3のインク供給ノズル挿入穴11(例えば図9参照)に挿入したインク供給ノズル2の周囲を接着剤14で封止する必要がある。
【0053】
前記実施例1および2では図3や図9に示すように、ヘッドハウジング3に座ぐり部5,12、すなわち凹部を形成し、その座ぐり部5,12にインク供給ノズル2を埋め込んで接着固定する構造になっている。この構造において前記座ぐり部5,12(凹部)が接着剤溜めの機能を有すことで、接着剤のインク供給ノズル2周囲からの漏れ出しを抑制する効果がある。また、座ぐり部5,12(凹部)が接着剤溜めの機能を有することで、インク供給ノズル2とヘッドハウジング3の接着強度が向上する。
【符号の説明】
【0054】
1:インクジェット記録ヘッド、2,2a〜2d:インク供給ノズル、3:ヘッドハウジング、4:接合面、5:座ぐり部、6,6a,6b:インク供給チューブ、7,7a,7b:テーパ段付部、8,8a,8b:チューブ膨らみ部、11:インク供給ノズル挿入穴、12:座ぐり部、13:接合面、14:接着剤、71:オリフィス、72:オリフィスプレート、73:圧力室、74:圧力室プレート、75:リストリクタ、76:リストリクタプレート、77:ダイヤフラム、79:ダイヤフラムプレート、82:共通液通路、85:圧電アクチュエータ、86:圧電振動子、93:液導入パイプ、a:穴中心間距離、b:オフセット、c:穴中心間距離、d:傾斜角度。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2004−268454号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のオリフィスを列設したオリフィスプレートと、
前記オリフィスと連通して内部にインクを貯留する圧力室を有する圧力室プレートと、
前記圧力室内のインクに瞬間的に圧力を加えて、前記オリフィスからインク滴を吐出する圧力発生源と、
前記オリフィスプレート、圧力室プレートならびに圧力発生源などを支持、収納したヘッドハウジングと、
高さ方向の途中にテーパ段付部が設けられて、前記ヘッドハウジング外周の定められた箇所にまとめて設置された複数本のインク供給ノズルと、
前記各インク供給ノズルに挿入して前記テーパ段付部を覆うことによりチューブ膨らみ部が形成されて該インク供給ノズルに個別に固定される複数本のインク供給チューブを備えたインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記ヘッドハウジング上で第1のインク供給ノズルの隣に第2のインク供給ノズルが立設されており、
前記第1のインク供給ノズルに挿入して形成される前記インク供給チューブのチューブ膨らみ部と、前記第2のインク供給ノズルに挿入して形成される前記インク供給チューブのチューブ膨らみ部が互いに干渉しないように、
前記第1のインク供給ノズルのテーパ段付部の位置と、前記第2のインク供給ノズルのテーパ段付部の位置を、インク供給ノズル高さ方向において互いにずらしたことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項2】
多数のオリフィスを列設したオリフィスプレートと、
前記オリフィスと連通して内部にインクを貯留する圧力室を有する圧力室プレートと、
前記圧力室内のインクに瞬間的に圧力を加えて、前記オリフィスからインク滴を吐出する圧力発生源と、
前記オリフィスプレート、圧力室プレートならびに圧力発生源などを支持、収納したヘッドハウジングと、
高さ方向の途中にテーパ段付部が設けられて、前記ヘッドハウジング外周の定められた箇所にまとめて立設された複数本のインク供給ノズルと、
前記各インク供給ノズルに挿入して前記テーパ段付部を覆うことにより該インク供給ノズルに個別に固定される複数本のインク供給チューブを備えたインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記ヘッドハウジング上で第1のインク供給ノズルの隣に第2のインク供給ノズルが立設されており、
前記第1のインク供給ノズルに挿入して形成される前記インク供給チューブのチューブ膨らみ部と、前記第2のインク供給ノズルに挿入して形成される前記インク供給チューブのチューブ膨らみ部が互いに干渉しないように、
前記第2のインク供給ノズルのテーパ段付部に対して前記第1のインク供給ノズルのテーパ段付部が離れる方向に、当該第1のインク供給ノズルが前記ヘッドハウジングから傾斜して立設していることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記複数本のインク供給ノズルが前記ヘッドハウジング上に所定の間隔をおいて非直線状に配列されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項4】
請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記複数本のインク供給ノズルが前記ヘッドハウジング上に配列されており、そのインク供給ノズル列の片側端部あるいは両側端部にあるインク供給ノズルが前記第1のインク供給ノズルであり、前記インク供給ノズル列の前記第1のインク供給ノズルの内側にあるインク供給ノズルが前記第2のインク供給ノズルであり、
その第2のインク供給ノズルのテーパ段付部に対して前記第1のインク供給ノズルのテーパ段付部が、インク供給ノズル高さ方向上側あるいは下側にずれていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項5】
請求項1または4に記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、
全体の長さならびにインク供給ノズル上での前記テーパ段付部の位置が同じ複数本のインク供給ノズルを用い、
前記ヘッドハウジングの前記第1のインク供給ノズルが立設する位置には座ぐり部が形成され、前記第2のインク供給ノズルが立設する位置には座ぐり部は形成されておらず、
前記ヘッドハウジングの各位置に前記インク供給ノズルを立設することにより、第2のインク供給ノズルのテーパ段付部に対して前記第1のインク供給ノズルのテーパ段付部を、インク供給ノズル高さ方向下側にずらすことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項6】
請求項2に記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記複数本のインク供給ノズルが前記ヘッドハウジング上に配列されており、そのインク供給ノズル列の片側端部あるいは両側端部にあるインク供給ノズルが前記第1のインク供給ノズルであり、前記インク供給ノズル列の前記第1のインク供給ノズルの内側にあるインク供給ノズルが前記第2のインク供給ノズルであり、
その第2のインク供給ノズルが前記ヘッドハウジング上に垂直に立設されており、
前記第1のインク供給ノズルが前記第2のインク供給ノズルに対してインク供給ノズル列方向外側に向けて傾斜していることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記ヘッドハウジングの第1のインク供給ノズルが立設する位置に座ぐり部が形成され、その座ぐり部が前記ヘッドハウジングと第1のインク供給ノズルの接合部を封止する接着剤の接着剤溜めになっていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−43376(P2013−43376A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182976(P2011−182976)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】