説明

インクジェット記録用インク、インクカートリッジ、インクジェット記録装置、判定方法およびインクジェット記録方法

【課題】 特別な設備を要することなく、簡便にインクジェット記録物の記録に使用されたか否かを判定可能なインクジェット記録用インクを提供する。
【解決手段】 本発明のインクジェット記録用インクは、酸化により発光する発光性標識剤を含むことを特徴とする。本発明のインクジェット記録用インクでは、特別な設備を要することなく、酸化による発光の評価という簡便な方法で、インクジェット記録物の記録に使用されたか否かを判定可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インク、インクカートリッジ、インクジェット記録装置、判定方法およびインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット記録物に蛍光発光マークを付与するために、紫外線を吸収して蛍光を発する蛍光体を配合したインクジェット記録用インクが汎用されている。また、波長が400nm〜600nmの可視光線をほとんど吸収せず、波長が650nm〜900nmの近赤外線を吸収して蛍光を発する蛍光体を含むインクジェット記録用インクが提案されている(特許文献1)。前記インクが記録に使用されたインクジェット記録物は、可視光線が照射された場合にはほとんど発光せず、近赤外線を照射した場合に蛍光発光する。前記蛍光体は、商品券、葉書、封筒、小切手、身分証明書、切符および証書等のインクジェット記録物の偽造防止を目的とした標識剤として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−227817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記インクジェット記録物の記録に前記蛍光体を含むインクが使用されたか否かの判定には、紫外線ランプや赤外線発光ダイオード、電源装置等の設備が必要である。
【0005】
そこで、本発明は、特別な設備を要することなく、簡便にインクジェット記録物の記録に使用されたか否かを判定可能なインクジェット記録用インクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のインクジェット記録用インクは、酸化により発光する発光性標識剤を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のインクジェット記録用インクでは、インクジェット記録物の記録に使用されたか否かの判定に、酸化により発光する発光性標識剤を用いる。このため、本発明のインクジェット記録用インクでは、特別な設備を要することなく、酸化による発光の評価という簡便な方法で、インクジェット記録物の記録に使用されたか否かを判定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明のインクジェット記録装置の構成の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、本発明における判定部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のインクジェット記録用インクにおいて、前記発光性標識剤が、ルミノールおよびルシゲニンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0010】
本発明のインクジェット記録用インクにおいて、前記発光性標識剤の配合割合が、前記インク全量に対し、0.01重量%〜0.5重量%であることが好ましい。
【0011】
本発明のインクジェット記録用インクにおいて、前記インクのpHが、8以上であることが好ましい。
【0012】
本発明のインクジェット記録用インクは、着色剤を含まない透明インクであってもよい。
【0013】
本発明のインクジェット記録用インクは、着色剤を含む有色インクであってもよい。
【0014】
本発明のインクジェット記録用インクにおいて、前記着色剤が、染料であることが好ましい。
【0015】
本発明のインクジェット記録用インクは、水および水溶性有機溶剤を含む水性インクであることが好ましい。
【0016】
本発明のインクカートリッジは、インクジェット記録用インクを含むインクカートリッジであって、前記インクが、本発明のインクジェット記録用インクであることを特徴とする。
【0017】
本発明のインクジェット記録装置は、インク収容部およびインク吐出手段を含み、前記インク収容部に収容されたインクを前記インク吐出手段によって吐出するインクジェット記録装置であって、前記インク収容部に、本発明のインクカートリッジが収容されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の第1の判定方法は、インクジェット記録物の記録に使用されたインクジェット記録用インクの判定方法であって、
前記判定は、前記インクが、本発明のインクジェット記録用インクか否かを判断する判定であり、
前記インクジェット記録物の記録部の全部または一部を酸化させ、
前記酸化によって発光した場合は、前記インクが本発明のインクジェット記録用インクであると判定し、
前記酸化によって発光しなかった場合は、前記インクが本発明のインクジェット記録用インクではないと判定する、判定方法である。
【0019】
本発明の第1の判定方法において、本発明のインクジェット記録用インクの発光性標識剤が、ルミノールおよびルシゲニンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0020】
本発明のインクジェット記録方法は、被記録媒体に対し、インクジェット方式によりインクを吐出して記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、本発明の透明インクを含み、
前記被記録媒体の記録部とは別の部位に、前記透明インクを吐出して判定部を形成することを特徴とする。
【0021】
本発明の第2の判定方法は、インクジェット記録物の記録に使用されたインクジェット記録用インクの判定方法であって、
前記判定は、本発明のインクジェット記録方法により記録された被記録媒体の前記判定部の形成に使用された前記透明インクが、本発明の透明インクか否かを判断する判定であり、
前記被記録媒体の前記判定部の全部または一部を酸化させ、
前記酸化によって発光した場合は、前記透明インクが本発明の透明インクであると判定し、
前記酸化によって発光しなかった場合は、前記透明インクが本発明の透明インクではないと判定する、判定方法である。
【0022】
本発明の第2の判定方法において、本発明の透明インクの発光性標識剤が、ルミノールおよびルシゲニンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0023】
本発明の第1および第2の判定方法において、前記酸化が、酸化剤を用いた酸化であることが好ましい。
【0024】
本発明の第1および第2の判定方法において、前記酸化剤が、次亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素の少なくとも一方であることが好ましい。
【0025】
つぎに、本発明のインクジェット記録用インクについて説明する。本発明のインクジェット記録用インク(以下、単に「インク」と言うことがある)は、酸化により発光する発光性標識剤(以下、単に「発光性標識剤」と言うことがある)を含む。本発明のインクジェット記録用インクは、前記発光性標識剤を含むものであれば、その組成は制限されない。本発明のインクジェット記録用インクとしては、例えば、水性インク、油性インク等があげられる。前述のとおり、本発明のインクジェット記録用インクは、水および水溶性有機溶剤を含む水性インクであることが好ましい。
【0026】
前記水は、イオン交換水または純水であることが好ましい。前記インク全量に対する前記水の配合割合は、例えば、10重量%〜90重量%であり、好ましくは、40重量%〜80重量%である。前記水の配合割合は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
【0027】
前記水溶性有機溶剤は、例えば、インクジェットヘッドの先端部におけるインクの乾燥を防止する湿潤剤および被記録媒体上での乾燥速度を調整する浸透剤に分類される。
【0028】
前記湿潤剤は、特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の低級アルコール;1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペンタントリオール、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール等の多価アルコール;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン;アセトン等のケトン;ジアセトンアルコール等のケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;2−ピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン;N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物;等があげられる。前記アルキレングリコールは、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール等があげられる。前記ポリアルキレングリコールは、特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等があげられる。これらの中でも、グリセリン、アルキレングリコール等の多価アルコールが好適である。前記湿潤剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
前記インク全量に対する前記湿潤剤の配合割合(湿潤剤割合)は、特に限定されず、例えば、0重量%〜95重量%であり、好ましくは、10重量%〜80重量%であり、より好ましくは、10重量%〜50重量%である。
【0030】
前記浸透剤は、特に限定されず、例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等があげられる。前記浸透剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
前記インク全量に対する前記浸透剤の配合割合(浸透剤割合)は、特に限定されず、例えば、0重量%〜20重量%である。前記浸透剤割合を前記範囲とすることで、前記水性インクの記録紙等の被記録媒体への浸透性を、より好適なものとできる。前記浸透剤割合は、好ましくは、0.1重量%〜15重量%であり、より好ましくは、0.5重量%〜10重量%である。
【0032】
前記発光性標識剤は、特に限定されず、例えば、ルミノール(5−アミノ−2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン、化学式(1))、ルシゲニン(ビス−N−メチルアクリジニウム硝酸塩(I)、化学式(2))等があげられる。前記発光性標識剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0033】
【化1】

【0034】
前記発光性標識剤の配合割合は、発光強度、発光性標識剤のインクへの溶解性等を考慮すると、前記インク全量に対し、0.01重量%〜0.5重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.05重量%〜0.2重量%であり、さらに好ましくは、0.1重量%〜0.2重量%である。
【0035】
本発明のインクジェット記録用インクのpHは、7〜12であることが好ましく、より好ましくは、8〜10である。特に、前記発光性標識剤のインクへの溶解性を考慮した場合、前記インクのpHは、8以上であることが好ましい。pHを前述のような所望の範囲に調整するために、本発明のインクジェット記録用インクは、pH調整剤を含んでもよい。前記pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン等の低級アルカノールアミン;水酸化アンモニウム;りん酸二水素カリウム;等があげられる。前記pH調整剤の配合量は、所望のインクのpHに応じて、適宜調整すればよい。
【0036】
前述のとおり、本発明のインクジェット記録用インクは、着色剤を含まない透明インクであってもよく、着色剤を含む有色インクであってもよい。前記有色インクに含ませる着色剤は、凝集を生じることがなく、発光を確認しやすいことから染料であることが好ましいが、これに限定されず、顔料であってもよい。また、前記着色剤として、染料および顔料を混合して用いてもよい。
【0037】
前記染料は、特に限定されず、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料等があげられる。前記染料の具体例としては、例えば、C.I.ダイレクトブラック、C.I.ダイレクトブルー、C.I.ダイレクトレッド、C.I.ダイレクトイエロー、C.I.ダイレクトオレンジ、C.I.ダイレクトバイオレット、C.I.ダイレクトブラウン、C.I.ダイレクトグリーン、C.I.アシッドブラック、C.I.アシッドブルー、C.I.アシッドレッド、C.I.アシッドイエロー、C.I.アシッドオレンジ、C.I.アシッドバイオレット、C.I.ベーシックブラック、C.I.ベーシックブルー、C.I.ベーシックレッド、C.I.ベーシックバイオレットおよびC.I.フードブラック等があげられる。前記C.I.ダイレクトブラックとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラック17、19、32、51、71、108、146、154および168等があげられる。前記C.I.ダイレクトブルーとしては、例えば、C.I.ダイレクトブルー6、22、25、71、86、90、106および199等があげられる。前記C.I.ダイレクトレッドとしては、例えば、C.I.ダイレクトレッド1、4、17、28、83および227等があげられる。前記C.I.ダイレクトイエローとしては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー12、24、26、86、98、132、142および173等があげられる。前記C.I.ダイレクトオレンジとしては、例えば、C.I.ダイレクトオレンジ34、39、44、46および60等があげられる。前記C.I.ダイレクトバイオレットとしては、例えば、C.Iダイレクトバイオレット47および48等があげられる。前記C.I.ダイレクトブラウンとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラウン109等があげられる。前記C.I.ダイレクトグリーンとしては、例えば、C.I.ダイレクトグリーン59等があげられる。前記C.I.アシッドブラックとしては、例えば、C.I.アシッドブラック2、7、24、26、31、52、63、112および118等があげられる。前記C.I.アシッドブルーとしては、例えば、C.I.アシッドブルー9、22、40、59、93、102、104、117、120、167、229および234等があげられる。前記C.I.アシッドレッドとしては、例えば、C.I.アシッドレッド1、6、32、37、51、52、80、85、87、92、94、115、180、256、289、315および317等があげられる。前記C.I.アシッドイエローとしては、例えば、C.I.アシッドイエロー11、17、23、25、29、42、61および71等があげられる。前記C.I.アシッドオレンジとしては、例えば、C.I.アシッドオレンジ7および19等があげられる。前記C.I.アシッドバイオレットとしては、例えば、C.I.アシッドバイオレット49等があげられる。前記C.I.ベーシックブラックとしては、例えば、C.I.ベーシックブラック2等があげられる。前記C.I.ベーシックブルーとしては、例えば、C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、9、24、25、26、28および29等があげられる。前記C.I.ベーシックレッドとしては、例えば、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14および37等があげられる。前記C.I.ベーシックバイオレットとしては、例えば、C.I.ベーシックバイオレット7、14および27等があげられる。前記C.I.フードブラックとしては、例えば、C.I.フードブラック1および2等があげられる。これらの染料は、例えば、鮮明性、水溶性および安定性等の特性に優れる。
【0038】
前記インク全量に対する前記染料の配合割合(染料割合)は、特に限定されず、例えば、0.1重量%〜20重量%である。前記インクジェット記録用インクが安定で、且つ、前記インク中に沈殿物を生じることがなければ、前記染料割合を20重量%以上としてもよい。前記染料は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
前記顔料は、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、無機顔料および有機顔料等が使用できる。前記カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等があげられる。前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料およびカーボンブラック系無機顔料等があげられる。前記有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ顔料、酸性染料型レーキ顔料等の染料レーキ顔料;ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック昼光蛍光顔料等があげられる。また、その他の顔料であっても水相に分散可能なものであれば使用できる。これら顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、6および7;C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、15、16、17、55、73、74、75、83、93、94、95、97、98、114、128、129、138、150、151、154、180、185および194;C.I.ピグメントオレンジ31および43;C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、12、15、16、48、48:1、53:1、57、57:1、112、122、123、139、144、146、149、166、168、175、176、177、178、184、185、190、202、221、222、224および238;C.I.ピグメントバイオレット196;C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、22および60;C.I.ピグメントグリーン7および36等があげられる。
【0040】
前記インク全量に対する前記顔料の配合割合(顔料割合)は、特に限定されず、例えば、所望の印字濃度または色彩等により、適宜決定できる。前記顔料割合は、例えば、0.5重量%〜20重量%であり、好ましくは、0.5重量%〜15重量%である。特に、発光の確認のしやすさを考慮した場合、前記顔料割合は、好ましくは、0.5重量%〜10重量%であり、より好ましくは、0.5重量%〜3重量%である。前記顔料は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
本発明のインクジェット記録用インクが前記顔料を含む場合、必要に応じて、前記インクに分散剤を添加してもよい。前記分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子量ポリウレタン;ポリエステル;カルボニル基またはアミノ基等の顔料に対して強い親和性を示す官能基を含む高分子共重合体;等が好適である。
【0042】
本発明のインクジェット記録用インクは、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、界面活性剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防黴剤等があげられる。前記粘度調整剤は、特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、水溶性樹脂等があげられる。
【0043】
本発明のインクジェット記録用インクは、例えば、発光性標識剤と他の添加成分とを、従来公知の方法で均一に混合し、フィルタ等で不溶解物を除去することにより製造できる。本発明の水性インクの製造方法は、例えば、下記のとおりである。
【0044】
本発明のインクジェット記録用インクの製造方法は、例えば、前記発光性標識剤を含む水溶液のpHを8以上に調整し、前記水溶液にインクの構成成分を添加して混合するという方法である。前記構成成分としては、前述のように、例えば、前記水溶性有機溶剤、前記着色剤等があげられる。前記pHを8以上にする方法としては、例えば、アルカリ性物質を添加する方法があげられる。前記アルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムおよびこれらの水溶液等があげられる。また、pH8を以上の状態を安定にするには、緩衝剤もしくは緩衝液を使用することが好ましい。前記緩衝剤および前記緩衝液としては、従来公知のものが使用可能であり、例えば、トリエタノールアミンが好適である。その他の条件は、前記インクジェット記録用インクの箇所で説明したのと同様である。このように、前記発光性標識剤を含む水溶液のpHを8以上にすることにより、前記発光性標識剤が溶解しやすくなり、また、pH低下に伴う前記発光性標識剤の酸化による発光を防止可能となる。
【0045】
前述のとおり、本発明のインクジェット記録用インクでは、インクジェット記録物の記録に使用されたか否かの判定に、前記発光性標識剤を用いる。前記発光性標識剤の酸化による発光は、温度変化の影響を受けにくい。このため、本発明のインクジェット記録用インクでは、標識剤として、酵素反応により発光する化合物を用いた場合とは異なり、温度変化によって判定が行えなくなるようなことがない。
【0046】
つぎに、本発明のインクカートリッジについて説明する。前述のとおり、本発明のインクカートリッジは、インクジェット記録用インクを含むインクカートリッジであって、前記インクが、本発明のインクジェット記録用インクであることを特徴とする。本発明のインクカートリッジの本体としては、例えば、従来公知のものを使用できる。
【0047】
つぎに、本発明のインクジェット記録装置について説明する。本発明のインクジェット記録装置は、インク収容部およびインク吐出手段を含み、前記インク収容部に収容されたインクを前記インク吐出手段により吐出するインクジェット記録装置であって、前記インク収容部に、本発明のインクカートリッジが収容されていることを特徴とする。これを除き、本発明のインクジェット記録装置の構成は、例えば、従来公知のインクジェット記録装置と同様であってもよい。
【0048】
図1に、本発明のインクジェット記録装置の構成の一例を示す。図示のとおり、このインクジェット記録装置1は、5つのインクカートリッジ2と、インクジェットヘッド3と、ヘッドユニット4と、キャリッジ5と、駆動ユニット6と、プラテンローラ7と、パージ装置8とを主要な構成部材として含む。インクジェット記録装置1において、前記インクジェットヘッド3が、前記インク吐出手段である。
【0049】
前記5つのインクカートリッジ2は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の有色インクおよび透明インクを、それぞれ1つずつ含む。前記5つのインクの少なくとも1つが、本発明のインクジェット記録用インクである。前記インクジェットヘッド3は、記録紙等の被記録媒体Pに記録を行う。前記ヘッドユニット4は、前記インクジェットヘッド3を備えている。前記キャリッジ5には、前記5つのインクカートリッジ2および前記ヘッドユニット4が搭載される。前記駆動ユニット6は、前記キャリッジ5を直線方向に往復移動させる。前記プラテンローラ7は、前記キャリッジ5の往復方向に延び、前記インクジェットヘッド3と対向して配置されている。
【0050】
前記駆動ユニット6は、キャリッジ軸9と、ガイド板10と、2つのプーリ11および12と、エンドレスベルト13とを含む。前記キャリッジ軸9は、前記キャリッジ5の下端部に配置され、前記プラテンローラ7と平行に延びている。前記ガイド板10は、前記キャリッジ5の上端部に配置され、前記キャリッジ軸9と平行に延びている。前記2つのプーリ11および12は、前記キャリッジ軸9と前記ガイド板10との間であって、前記キャリッジ軸9の両端部に配置されている。前記エンドレスベルト13は、前記2つのプーリ11および12の間に掛け渡されている。
【0051】
このインクジェット記録装置1において、前記プーリ11がキャリッジモータ101の駆動により正逆回転されると、前記プーリ11の正逆回転に伴って、前記エンドレスベルト13に接合されている前記キャリッジ5が、前記キャリッジ軸9および前記ガイド板10に沿って、直線方向に往復移動する。
【0052】
前記被記録媒体Pは、このインクジェット記録装置1の側方又は下方に設けられた給紙カセット(図示せず)から給紙される。前記被記録媒体Pは、前記インクジェットヘッド3と、前記プラテンローラ7との間に導入される。すると、前記被記録媒体Pに、前記インクジェットヘッド3から吐出されるインクにより所定の記録がなされる。例えば、前記ブラックインクが、本発明のインクジェット記録用インクである場合、黒色の記録部に本発明のインクジェット記録用インクが使用される。一方、例えば、前記透明インクが、本発明のインクジェット記録用インクである場合、前記記録部とは別の部位に、前記透明インクを吐出して判定部を形成してもよく、前記記録部に前記透明インクを重ね打ちして前記判定部を形成してもよい。前記判定部の形成箇所は、特に限定されないが、予め定めた所定の箇所に形成することが好ましい。前記判定部は、前記所定の箇所に自動的に形成されるようにしてもよい。前記判定部の形状は、特に限定されず、四角、円、楕円、三角等、任意の形状でよい。図2に、前記判定部の構成例を示す。例えば、図2(A)に示すように、前記判定部21は、前記被記録媒体Pの隅に、四角として形成してもよい。また、例えば、図2(B)に示すように、前記判定部21は、前記被記録媒体Pの頁番号の記録箇所のすぐ下に、円として形成してもよい。さらに、例えば、図2(C)に示すように、前記判定部21は、文字や図形として記録される記録部22の周囲に形成してもよい。前記被記録媒体Pは、その後、前記インクジェット記録装置1から排紙される。図1においては、前記被記録媒体Pの給紙機構及び排紙機構の図示を省略している。
【0053】
前記パージ装置8は、前記プラテンローラ7の側方に設けられ、前記ヘッドユニット4がリセット位置(この例においては、前記パージ装置8の上部)にある時に、前記インクジェットヘッド3と対向するように配置されている。前記パージ装置8は、パージキャップ14と、ポンプ15およびカム16と、インク貯留部17とを含む。前記パージキャップ14は、前記ヘッドユニット4が前記リセット位置にある時に、前記インクジェットヘッド3の複数のノズル(図示せず)を覆う。前記ポンプ15は、前記カム16の駆動により前記インクジェットヘッド3の内部に溜まる気泡等を含んだ不良インクを吸引する。これにより、前記インクジェットヘッド3の回復が図られる。前記吸引された不良インクは、前記インク貯留部17に貯蔵される。
【0054】
前記パージ装置8の前記プラテンローラ7側の位置には、前記パージ装置8に隣接してワイパ部材20が配設されている。前記ワイパ部材20は、へら状に形成されており、前記キャリッジ5の移動に伴って、前記インクジェットヘッド3のノズル形成面を拭うものである。図1において、キャップ18は、インクの乾燥を防止するため、記録が終了すると前記リセット位置に戻される前記インクジェットヘッド3の複数のノズルを覆うものである。
【0055】
この例のインクジェット記録装置1においては、前記5つのインクカートリッジ2は、1個のキャリッジ5に搭載されている。ただし、本発明は、これに限定されない。本発明のインクジェット記録装置において、前記5つのインクカートリッジは、複数のキャリッジに搭載されていてもよい。また、前記インクカートリッジは、前記キャリッジには搭載されず、インクジェット記録装置内に配置、固定されていてもよい。この態様においては、例えば、前記インクカートリッジと、前記キャリッジに搭載された前記ヘッドユニットとが、チューブ等により連結され、前記インクカートリッジから前記ヘッドユニットに前記インクが供給される。
【0056】
つぎに、本発明の第1の判定方法について説明する。前述のとおり、本発明の第1の判定方法は、インクジェット記録物の記録に使用されたインクジェット記録用インクの判定方法である。前記判定は、前記インクが、本発明のインクジェット記録用インクか否かを判断する判定であり、前記インクジェット記録物の記録部の全部または一部(以下、単に「記録部」と言うことがある)を酸化させ、前記酸化によって発光した場合は、前記インクが本発明のインクジェット記録用インクであると判定し、前記酸化によって発光しなかった場合は、前記インクが本発明のインクジェット記録用インクではないと判定する。
【0057】
前記記録部の一部としては、特に限定されず、例えば、文字や図形の全部または一部、頁番号の数字を記録した部分、ヘッダー部またはフッター部の全部または一部等があげられる。
【0058】
前記発光の評価方法としては、特に限定されず、例えば、目視による評価、光学的測定機器による評価等があげられる。
【0059】
前記目視による評価では、例えば、外光を遮断できる暗室の中で、前記記録部を酸化させ、前記発光を目視評価する。
【0060】
前記目視による評価のその他の例は、つぎのとおりである。すなわち、まず、前記記録物を、光非透過性の基板の上に置く。ついで、前記記録部を覆うように内径が数cm程度の遮光筒を被せ、外光の影響を受けにくい状態とする。つぎに、前記記録部を酸化させ、前記遮光筒の上部から前記発光を目視評価する。
【0061】
前記光学的測定機器による評価では、例えば、前記記録部を酸化させ、CCD(Charge Coupled Device)、光電子増倍管、フォトセンサ、感光フィルム等の光学的測定機器により、前記発光を自動評価する。本発明によれば、前記記録部の発光を、光学的測定機器により自動評価する記録物判定方法が提供される。これにより、ごく微弱な発光であっても、外光の影響に関係なく自動評価することが可能である。
【0062】
前述のとおり、本発明の第1の判定方法において、さらに、前記記録部が酸化済みか否かの判定を含み、酸化済みの場合は、本発明のインクジェット記録用インクか否かは判定済みと判定し、未酸化の場合は、本発明のインクジェット記録用インクか否かは未判定と判定することが好ましい。前記記録部は、一度酸化させてしまえば、もはや前記酸化によって発光することはない。そこで、前記酸化済みの場合は、本発明のインクジェット記録用インクか否かは判定済みと判定することで、無駄に判定を繰り返さずに済み、効率的に判定を行うことができる。例えば、前記記録部が後述の酸化剤を含む水溶液で濡れている場合に、前記酸化済みと判定することができる。また、本発明の判定方法では、標識剤として、紫外線または赤外線照射により発光する蛍光体を用いた場合と異なり、前記記録部を一度発光させてしまえば、第三者が勝手にインクジェット記録物の記録に使用されたインクが、本発明のインクジェット記録用インクか否かの判定を行うことはできない。
【0063】
前述のとおり、本発明の第1の判定方法において、本発明のインクジェット記録用インクの発光性標識剤が、ルミノールおよびルシゲニンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0064】
前述のとおり、本発明の第1の判定方法において、前記酸化が、酸化剤を用いた酸化であることが好ましい。前記酸化剤としては、特に限定されず、前記発光性標識剤の種類等に応じて適宜選択できるが、取り扱いおよび入手の容易性等の点から、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素が好適に用いられる。前記酸化剤を用いた酸化の方法としては、例えば、前記記録部に前記酸化剤を含む水溶液をスポイトで滴下する方法、前記酸化剤を含む水溶液を含浸させた綿棒で前記記録部に前記水溶液を塗布する方法が好適である。前記酸化剤を含む水溶液における前記酸化剤の濃度は、前記記録部を酸化させ、前記発光性標識剤を発光させることができれば、特に限定されず、例えば、5w/v%〜30w/v%である。
【0065】
本発明の第1の判定方法のその他の条件は、本発明のインクジェット記録用インクと同様である。
【0066】
前述のとおり、本発明の第1の判定方法では、前記記録部を酸化させた場合に発光するか否かにより、前記インクジェット記録物の記録に使用されたインクが、本発明のインクジェット記録用インクか否かを判定する。このため、本発明の第1の判定方法では、前記インクそのものを酸化させた場合に発光するか否かで判定を行う場合と比べ、発光の確認が容易である。また、本発明の第1の判定方法では、例えば、記録を行った場所とは異なる場所で判定を行う場合に、前記インクそのものを持ち出さずとも、持ち運びの容易な前記インクジェット記録物を持ち出すだけで済む。
【0067】
また、本発明の第1の判定方法では、発光の有無により、インクジェット記録物の記録に使用されたインクが、本発明のインクジェット記録用インクか否かを判定する。このため、本発明の第1の判定方法では、記録部の変色による判定と異なり、何色に変わるか等の情報を必要とすることなく判定を実施できる。
【0068】
つぎに、本発明のインクジェット記録方法について説明する。前述のとおり、本発明のインクジェット記録方法は、被記録媒体に対し、インクジェット記録方式によりインクを吐出して記録するインクジェット記録方法であって、前記インクが、本発明の透明インクを含み、前記被記録媒体の記録部とは別の部位に、前記透明インクを吐出して判定部を形成することを特徴とする。前記判定部については、前述のとおりである。
【0069】
つぎに、本発明の第2の判定方法について説明する。前述のとおり、本発明の第2の判定方法は、インクジェット記録物の記録に使用されたインクジェット記録用インクの判定方法である。前記判定は、本発明のインクジェット記録方法により記録された被記録媒体の前記判定部の形成に使用された透明インクが、本発明の透明インクか否かを判断する判定であり、前記被記録媒体の前記判定部の全部または一部(以下、単に「判定部」と言うことがある)を酸化させ、前記酸化によって発光した場合は、前記透明インクが本発明の透明インクであると判定し、前記酸化によって発光しなかった場合は、前記透明インクが本発明の透明インクではないと判定する。
【0070】
本発明の第2の判定方法によれば、前記判定部の形成に透明インクを使用することで、第三者に知られることなく、前記判定部の形成に使用されたインクが、前記インクジェット記録用インクか否かを判定できる。また、本発明の第2の判定方法では、前記判定において、前記被記録媒体の記録部とは別の部位に形成された前記判定部を酸化させればよく、前記記録部にダメージを与えることがない。
【0071】
本発明の第2の判定方法のその他の条件は、本発明のインクジェット記録用インクおよび第1の判定方法と同様である。
【実施例】
【0072】
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例によって限定および制限されない。
【0073】
[実施例1〜7およびコントロール1〜3]
着色剤として染料を含む実施例1〜5およびコントロール1〜3のインクジェット記録用インク、並びに着色剤を含まない実施例7のインクジェット記録用インク(透明インク)を下記のようにして得た。すなわち、まず、インク組成成分(表1)を、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製の親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)タイプメンブレンフィルタ(孔径0.2μm)を用いて濾過することで前記インクを得た。また、着色剤として顔料を含む実施例6のインクジェット記録用インクを、下記のようにして得た。すなわち、まず、インク組成成分(表1)を、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製のセルロースアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径1.0μm)で濾過することで、前記インクを得た。
【0074】
実施例およびコントロールのインクについて、発光評価を、下記の方法により行った。
(発光評価)
実施例およびコントロールのインクを、インクカートリッジに充填した。ついで、前記インクカートリッジを、ブラザー工業(株)製のインクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP−330Cに装着した。つぎに、キヤノン(株)製の普通紙PB PAPERにベタ印刷を行うことで、発光評価用の記録部を形成した。つぎに、暗室において、綿棒で、前記記録部に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(次亜塩素酸ナトリウム濃度5w/v%)または過酸化水素水(過酸化水素濃度5w/v%)を塗布した時の発光を、下記評価基準に従って目視評価した。
発光評価 評価基準
AA:前記記録部分が極めて強く発光した。
A:前記記録部が強く発光した。
B:前記記録部が発光した。
C:前記記録部が発光しなかった。
【0075】
実施例およびコントロールのインク組成、インクのpHおよび発光評価結果を、表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示すとおり、実施例1〜3のインクおよび着色剤を含まない実施例7のインク(透明インク)は、発光評価の結果が良好であった。pHが7.7である実施例4のインクは、発光評価の結果が実施例1〜3のインクに比べ若干劣っていたが、実用上問題ないレベルであった。前記発光性標識剤(ルミノール)の配合量が0.05重量%である実施例5のインクは、発光評価の結果が実施例1〜3のインクに比べ若干劣っていたが、実用上問題ないレベルであった。着色剤として顔料を含む実施例6のインクは、発光評価の結果が実施例1〜3のインクに比べ若干劣っていたが、実用上問題のないレベルであった。一方、前記発光性標識剤を配合せずに、紫外線照射により発光する蛍光体(4,4’−ビス(2−メトキシスチリル)ビフェニル)を配合したコントロール1のインク、退色防止剤(1,4−ジアザビシクロ−2,2,2−オクタン)を配合したコントロール2のインク、およびそれらを配合しなかったコントロール3のインクは、前記記録部を酸化させても全く発光しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように、本発明のインクジェット記録用インクは、特別な設備を要することなく、酸化による発光の評価という簡便な方法で、インクジェット記録物の記録に使用されたか否かを判定可能なものある。本発明のインクジェット記録用インクの用途は、特に限定されず、各種のインクジェット記録に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 インクジェット記録装置
2 インクカートリッジ
3 インクジェットヘッド
4 ヘッドユニット
5 キャリッジ
6 駆動ユニット
7 プラテンローラ
8 パージ装置
9 キャリッジ軸
10 ガイド板
21 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録用インクであって、酸化により発光する発光性標識剤を含むことを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項2】
前記発光性標識剤が、ルミノールおよびルシゲニンの少なくとも一方を含む請求項1記載のインクジェット記録用インク。
【請求項3】
前記発光性標識剤の配合割合が、前記インク全量に対し、0.01重量%〜0.5重量%である請求項1または2記載のインクジェット記録用インク。
【請求項4】
前記インクのpHが、8以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項5】
着色剤を含まない透明インクである請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項6】
着色剤を含む有色インクである請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項7】
前記着色剤が、染料である請求項6記載のインクジェット記録用インク。
【請求項8】
水および水溶性有機溶剤を含む水性インクである請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項9】
インクジェット記録用インクを含むインクカートリッジであって、前記インクが、請求項1〜8のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項10】
インク収容部およびインク吐出手段を含み、前記インク収容部に収容されたインクを前記インク吐出手段により吐出するインクジェット記録装置であって、前記インク収容部に、請求項9記載のインクカートリッジが収容されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
インクジェット記録物の記録に使用されたインクジェット記録用インクの判定方法であって、
前記判定は、前記インクが、請求項1記載のインクジェット記録用インクか否かを判断する判定であり、
前記インクジェット記録物の記録部の全部または一部を酸化させ、
前記酸化によって発光した場合は、前記インクが請求項1記載のインクジェット記録用インクであると判定し、
前記酸化によって発光しなかった場合は、前記インクが請求項1記載のインクジェット記録用インクではないと判定する、判定方法。
【請求項12】
請求項1記載のインクジェット記録用インクの発光性標識剤が、ルミノールおよびルシゲニンの少なくとも一方を含む請求項11記載の判定方法。
【請求項13】
前記酸化が、酸化剤を用いた酸化である請求項11または12記載の判定方法。
【請求項14】
前記酸化剤が、次亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素の少なくとも一方である請求項13記載の判定方法。
【請求項15】
被記録媒体に対し、インクジェット方式によりインクを吐出して記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、請求項5記載の透明インクを含み、
前記被記録媒体の記録部とは別の部位に、前記透明インクを吐出して判定部を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項16】
インクジェット記録物の記録に使用されたインクジェット記録用インクの判定方法であって、
前記判定は、請求項15記載のインクジェット記録方法により記録された被記録媒体の前記判定部の形成に使用された前記透明インクが、請求項5記載の透明インクか否かを判断する判定であり、
前記被記録媒体の前記判定部の全部または一部を酸化させ、
前記酸化によって発光した場合は、前記透明インクが請求項5記載の透明インクであると判定し、
前記酸化によって発光しなかった場合は、前記透明インクが請求項5記載の透明インクではないと判定する、判定方法。
【請求項17】
請求項5記載の透明インクの前記発光性標識剤が、ルミノールおよびルシゲニンの少なくとも一方を含む請求項16記載の判定方法。
【請求項18】
前記酸化が、酸化剤を用いた酸化である請求項16または17記載の判定方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−197224(P2009−197224A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10652(P2009−10652)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】