説明

インクジェット記録用インク組成物、及びカラーフィルター基板

【課題】
顔料を高濃度にて微細分散して含有すると同時に、インクジェット法により基板上の所望の位置に安定して吐出させることのできる物性(低粘度化など)、カラーフィルタとしての耐性(耐熱性/耐溶剤性など)を有するインク組成物を提供すること。
【解決手段】
樹脂型分散剤(F)、顔料(P)、熱反応性化合物(G)、および有機溶剤(H)を含んでなるインクジェット記録用インク組成物において、樹脂型分散剤(F)が、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)のヒドロキシル基と、ジイソシアネート(B)のイソシアネート基と、を反応してなる、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(E)のイソシアネート基と、 少なくともポリアミン(C)を含むアミン化合物の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応させてなる 樹脂型分散剤(F1)であるインクジェット記録用インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インク組成物、及びカラーフィルター基板に関する。本発明のインクジェット記録用インク組成物は、例えば、液晶ディスプレイパネルのカラーフィルター基板の製造に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
薄型テレビジョンなどに利用されている液晶ディスプレイパネルには、主要な構成要素として、カラーフィルター基板と、液晶セル基板と、バックライトユニットとが含まれている。バックライトユニットは、液晶セル基板の裏面に設けた光源である。液晶セル基板の液晶は、TFT(薄膜トランジスタ)アレイ基板とカラーフィルター基板との間に充填されている。カラーフィルター基板には、3原色(赤・青・緑;RGB)の繰り返しパターンが、TFTアレイ基板の各画素に対向する位置に形成されている。カラーフィルター基板の全面には透明電極が設けられており、TFTアレイ基板の画素電極との電圧によって液晶の方向が制御され、透過する光量がコントロールされる。
【0003】
前記カラーフィルター基板は、具体的には、ガラス等の透明な基板の表面に3種以上の異なる色相の微細なストライプ状のフィルターセグメントを平行又は交差して配置したもの、あるいは微細なモザイク状のフィルターセグメントを縦横一定の配列に配置したものからなっている。そして、フィルターセグメント間には、カラーフィルター基板の表示コントラストを高めるために、一定の幅を持つ遮光領域(ブラックマトリックス)が設けられる。カラーフィルター基板を構成するストライプの幅及びモザイクの一辺の長さは、約70μmと微細であり、しかも色相毎に所定の順序で整然と配列されている。また、通常のカラーフィルター基板の膜厚は0.8〜1.5μmであり、顔料がフィルターセグメント中の25〜45重量%を占めている。
【0004】
従来、カラーフィルター基板の製造は、顔料が分散されたフォトレジスト液を透明基板上に塗布してから、乾燥、露光、現像、及び硬化などの工程を繰り返すことによって行われていた。そのため、生産性が低く、コスト低減の要求が高くなっている。特に、液晶ディスプレイパネルの大型化に伴って、フォトレジストに替わる技術が求められてきた。 こうした要求に従い、製造方法や製造設備の見直しが行われ、インクジェット法によるカラーフィルター基板の製造が注目されている。インクジェット法は、特に製造装置の小型化が容易で、生産性の高い点で有利である。更に、近年は、プリンタヘッドやインクに関する技術の進歩により、インクジェット法にも顔料系インクが使用され始め、その結果、耐光性や堅牢性も改良されている。この点からも、カラーフィルター基板用途にインクジェット法を適用することが有利である、種々の提案が行われている(例えば、特許文献1〜3)。
【0005】
インクジェット法によるフィルターセグメントの形成は、予め透明基板上にブラックマトリックスを設け、ブラックマトリックスで区分けされた領域内にインクジェット法によりインクを充填することによって実施する。しかしながら、従来の一般的なインクジェットインクは、吐出安定性などを確保する目的で低粘度にする必要があるため、顔料の含有量が5重量%前後と少ない。このようなインクを用いて、カラーフィルター基板の通常の膜厚のフィルターセグメントを形成しても、カラーフィルター基板として必要な濃度を提供することはできない。
【0006】
一方、所望の濃度のフィルターセグメントを形成するためには、ブラックマトリックスで区分けされた領域内に充填するインク量を増やす方法や、インクジェットインクの顔料含有量を多くする方法がある。しかしながら、ブラックマトリックスで区分けされた領域内に充填するインク量を増やすと、ブラックマトリックスを越えてインクが溢れて、隣接する領域にインクが混入し、フィルターセグメントの色相を損なうことがある。また、インクジェットインクの顔料含有量を多くすると、インクの粘度が高くなりすぎ、インクジェットインクとして吐出させることが困難になる。
【0007】
従って、インクジェット法によるフィルターセグメントの形成におけるインキとしては、顔料を高濃度で微細分散して含有すると同時に、インクジェット法により基板上の所望の位置に安定して吐出させることのできる物性(低粘度)である事が求められる。更にカラーフィルター用インキとしては、近年表示性能の向上の為、高コントラスト比(ON状態とOFF状態における表示装置上の輝度の比)化が求められており、微細顔料を微細に分散する事も併せて求められる。
顔料の高濃度化/微細分散化/低粘度化を併せ持つ方法としては、顔料分散剤の利用が考えられる。顔料分散剤は、顔料に吸着する部位と、分散媒である溶剤と親和性の高い部位との構造を併せ持ち、この2つの機能の部位のバランスで性能が決まる。顔料分散剤は、被分散物である顔料の表面状態に合わせて種々のものが使用されているが、酸性に偏った表面を有する顔料には、静電的吸着を有する塩基性官能基を有する分散剤が使用されるのが一般的である。この場合、塩基性官能基が顔料の吸着部位となる。塩基性の官能基としてアミノ基を有する塩基性顔料分散剤をカラーフィルタ用着色組成物に使用した例は、例えば特許文献4〜8などに記載されている。
【0008】
特許文献4〜6に開示の顔料分散剤の一部は分散媒である溶剤と親和性の高い部位がポリエステルまたはポリエーテルであり、前記透明電極および配向膜形成時にかかる熱(200℃以上、好ましくは230℃以上)で分解し、分解物揮発による膜厚の減少、加熱装置への分解物汚れの付着などがある場合があり、溶剤と親和性の高い部位はポリエステルまたはポリエーテル以外で構成されることが好ましかった。
溶剤と親和性の高い部位がポリエステルまたはポリエーテルではなくビニル重合体の顔料分散剤の例として、特許文献4、7および8に開示されている。しかし、これらはある程度の分散能力は有するものの、微細化顔料をカラーフィルタ着色組成物として分散安定化させることはできなかった。これは、溶剤と親和性の高い部位がポリエステルまたはポリエーテルを有する特許文献4〜6に開示の前記顔料分散剤でも同様で、超微細化処理された顔料をカラーフィルタ着色組成物として分散安定化させることができないことに変わりはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平1−217302号公報
【特許文献2】特開平7−174915号公報
【特許文献3】特開平8−75916号公報
【特許文献4】特開平09−176511号公報
【特許文献5】特開平10−213898号公報
【特許文献6】特開2001−240780号公報
【特許文献7】特開2002−31713号公報
【特許文献8】特開2004−54213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、顔料を高濃度にて微細分散して含有すると同時に、インクジェット法により基板上の所望の位置に安定して吐出させることのできる物性(低粘度化など)、カラーフィルタとしての耐性(耐熱性/耐溶剤性など)を有するインク組成物を提供することにある。また、本発明の課題は、上記インクを用いてインクジェット法により形成されるカラーフィルター基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題は、樹脂型分散剤(F)、顔料(P)、熱反応性化合物(G)、および有機溶剤(H)を含んでなるインクジェット記録用インク組成物において、
樹脂型分散剤(F)が、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)のヒドロキシル基と、ジイソシアネート(B)のイソシアネート基と、を反応してなる、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(E)のイソシアネート基と、 少なくともポリアミン(C)を含むアミン化合物の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応させてなる樹脂型分散剤(F)であるインクジェット記録用インク組成物によって解決することができる。
【0012】
本発明によるインク組成物の好ましい態様においては、前記樹脂型分散剤(F)の重量平均分子量は、1,000〜100,000であり、かつ、前記樹脂型分散剤のアミン価は、1〜100mgKOH/gである。
【0013】
又、本発明によるインク組成物の更に別の好ましい態様においては、前記熱反応性化合物(G)が、メラミン化合物、ベンゾグアナミン化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール化合物、ベンゾオキサジン、ブロック化カルボン酸化合物、ブロック化イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、アクリレート系モノマー、又はシランカップリング剤からなる群から選ばれる化合物1種若しくは2種以上である。
【0014】
又、本発明によるインク組成物の更に別の好ましい態様においては、更に、バインダー樹脂(I)を含み、特には、前記バインダー樹脂が、熱可塑性樹脂である。
【0015】
又、本発明によるインク組成物の更に別の好ましい態様においては、更に酸性官能基を有する色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、酸性官能基を有するアクリドン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる誘導体を少なくとも一種を含む。
【0016】
又、本発明によるインク組成物の更に別の好ましい態様においては、カラーフィルター基板用である。
【0017】
さらに、本発明は、前記インクジェット記録用インク組成物による印刷層を担持するカラーフィルター基板にも関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、顔料分散性に優れた前記樹脂型分散剤を含有しており、耐熱、耐薬品性が良好で、更に顔料濃度が高いにもかかわらず、低粘度、経時粘度安定性かつ吐出安定性が良好であり、充分な耐性と印字濃度の印刷層を提供することができる。また本発明のインクジェット記録用インク組成物を利用してカラーフィルター基板を製造する場合に、従来の方法と比較してはるかに効率よく高性能なカラーフィルターを生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(1)樹脂型分散剤(F)
まず、本発明で用いる樹脂型分散剤(F)について説明する。
本発明のカラーフィルター用着色組成物に用いられる顔料分散剤は、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)のヒドロキシル基と、及びジイソシアネート(B)のイソシアネート基と、を反応してなる、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(E)のイソシアネート基と、少なくともポリアミン(C)を含むアミン化合物の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応させることによって合成される。
【0020】
本発明の最大の特徴はこの顔料分散剤を使用することであり、従来公知の顔料分散剤では課題の解決が困難である。
【0021】
本発明のカラーフィルター用着色組成物に用いられる顔料分散剤におけるビニル重合体(A)由来のビニル重合体部位は、それを構成しているビニル単量体を選択することにより、広範囲にわたる顔料担体及び分散媒との親和性に優れ、溶剤親和性部位として機能する。一方、該ビニル重合体部位の片末端領域に導入されたアミノ基および、ウレア結合部位が、酸性に偏った顔料表面の吸着基として機能する。
【0022】
本発明のカラーフィルター用着色組成物に用いられる顔料分散剤の各構成要素について説明する。
【0023】
<片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)>
本発明で用いられる顔料分散剤を構成する片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)(以下、ビニル重合体(A)と略記する場合がある。)は、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(a2)をラジカル重合することで得ることが好ましい。ビニル重合体(A)のビニル重合体部位は、バインダー樹脂等の顔料担体及び分散媒である溶剤に親和性の高い部位であり、下記一般式(1)で表される。
【0024】
一般式(1):
【0025】
【化1】

【0026】
[一般式(1)中、
1は、化合物(a1)からヒドロキシル基とチオール基とを除く残基であり、
2は、エチレン性不飽和単量体(a2)から二重結合部位及びR3を除く残基であり、
3は、水素原子又はメチル基であり、
nは、2以上の整数、好ましくは3〜200の整数である。
【0027】
ここで−R(−OH)2の領域がビニル重合体(A)でいう、末端領域となる。]
【0028】
〈分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)〉
分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)(以下、化合物(a1)と表記する場合がある。)としては、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物であれば特に限定されず、例えば、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。これらのうち、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールが好ましい。
【0029】
目的とする片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)の分子量にあわせて、化合物(a1)とエチレン性不飽和単量体(a2)と、任意に重合開始剤とを混合して加熱することでビニル重合体(A)を得ることができる。化合物(a1)は、エチレン性不飽和単量体(a2)100重量部に対して、0.5〜30重量部用いて、塊状重合又は溶液重合により得ることが好ましく、より好ましくは1〜20重量部、更に好ましくは2〜15重量部、特に好ましくは2〜10重量部である。反応温度は、40〜150℃、好ましくは50〜110℃である。0.5重量部未満であると、ビニル重合体部位の分子量が高すぎて、顔料担体及び溶剤に対する親和性部位として、その絶対量が増えてしまい、分散性の効果自体が低下する場合があり、30重量%を超えると、ビニル重合体部(C)の分子量が低すぎて、顔料担体及び溶剤に対する親和性部位として、その立体反発の効果がなくなると共に、顔料の凝集を抑えることが困難になる。
【0030】
〈重合開始剤〉
重合の際、エチレン性不飽和単量体(a2)100重量部に対して、任意に0.001〜5重量部の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、アゾ系化合物及び有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス
(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、及び2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、及びジアセチルパーオキシド等があげられる。これらの重合開始剤は、単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
〈重合溶剤〉
溶液重合の場合には、重合溶媒として、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メトキシプロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジエチルエーテル等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良いが、最終用途で使用する溶剤であることが好ましい。
【0032】
〈エチレン性不飽和単量体(a2)〉
エチレン性不飽和単量体(a2)としては、例えば、 メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート類; シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類; テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及び3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート類; ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類; トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、及びテトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロキシ変性ポリジメチルシロキサン(シリコーンマクロマー)類; 2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコールモノステアリルエーテル(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート類; N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基を有する(メタ)アクリレート類; (メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、及びアクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;;並びに、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類等が挙げられる 又、上記アクリル系単量体と併用できる単量体として、 スチレン、及びα−メチルスチレン等のスチレン類; エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;並びに、 酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類等が挙げられる。
【0033】
又、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を併用することもできる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及びω-カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等が挙げられる。以上挙げた、エチレン性不飽和単量体の中から、1種又は2種以上を選択することができる。
【0034】
〈重合条件等〉
本発明で用いられる顔料分散剤においては、上記に例示したエチレン性不飽和単量体(a2)の中でも、分散性及び耐性の観点から、少なくともメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、およびt−ブチル(メタ)アクリレートから選択されるエチレン性不飽和単量体が一部用いられるのが好ましい。
【0035】
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、カラーフィルタとなった場合の耐性の点から−50〜200℃が好ましく、−30〜150℃がより好ましい。
【0036】
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)のTgは、下記のFoxの式で算出した値を用いた。なお、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)由来の骨格もビニル重合体(A)中に存在するが、ガラス転移温度を計算する以下の計算から除くものとする。
【0037】
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
W1からWnは、使用している各単量体の重量分率を示し、Tg1からTgnは、各単量体から得られるそれぞれのホモポリマーのガラス転移温度(単位は絶対温度「K」)を示す。
【0038】
算出に使用する主なホモポリマーのTgを下記に例示する。
メチルメタクリレート:105℃(378K)
ブチルメタクリレート:20℃(293K)
t−ブチルメタクリレート:107℃(380K)
ラウリルメタクリレート:−65℃(208K)
2−エチルヘキシルメタクリレート:−10℃(263K)
シクロヘキシルメタクリレート:66℃(339K)
ブチルアクリレート:−45℃(228K)
エチルアクリレート:−20℃(253K)
ベンジルメタクリレート:54℃(327K)
スチレン:100℃(373K)
<ジイソシアネート(B)>
本発明で用いられる顔料分散剤を構成するジイソシアネート(B)としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、芳香族系ジイソシアネート(b1)、脂肪族系ジイソシアネート(b2)、芳香−脂肪族系ジイソシアネート(b3)、脂環族系ジイソシアネート(b4)等が挙げられる。
【0039】
芳香族系ジイソシアネート(b1)としては、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0040】
脂肪族系ジイソシアネート(b2)としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0041】
芳香−脂肪族系ジイソシアネート(b3)としては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0042】
脂環族系ジイソシアネート(b4)としては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、及びメチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0043】
以上、列挙したジイソシアネート(B)は、必ずしもこれらに限定されるものではなく、2種類以上を併用して使用することもできる。
【0044】
本発明に用いられるジイソシアネート(B)としては、難黄変性の観点から、脂肪族系ジイソシアネート(b2)、芳香−脂肪族系ジイソシアネート(b3)、脂環族系ジイソシアネート(b4)が好ましく、さらには脂環族系ジイソシアネート(b4)が好ましく、最も好ましくは3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート、IPDI)である。
【0045】
また、上記ジイソシアネート以外に、顔料分散剤製造時にゲル化しない範囲内で、イソシアネート基が一分子中に3個以上あるポリイソシアネートも一部使用することができる。これらは、例えば、上記に列挙したジイソシアネート(B)のイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンアダクト型、ビウレット型が挙げられる。
【0046】
<ポリアミン(C)>
本発明で用いられる顔料分散剤を構成するポリアミン(C)としては、少なくとも2つの一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、イソシアネート基と反応しウレア結合を生成するために用いられる。このようなアミンとして、まずはジアミン(c1)が挙げられる。
【0047】
ジアミン(c1)としては、二つの一級アミノ基有するジアミン(c1−1)、二つの二級アミノ基を有するジアミン(c1−2)、一級及び二級アミノ基を有するジアミン(c1−3)が挙げられる。
【0048】
二つの一級アミノ基有するジアミン(c1−1)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、 エチレンジアミン、プロピレンジアミン[別名:1,2−ジアミノプロパン又は1,2−プロパンジアミン]、トリメチレンジアミン[別名:1,3−ジアミノプロパン又は1,3−プロパンジアミン]、テトラメチレンジアミン[別名:1,4−ジアミノブタン]、2−メチル−1,3−プロパンジアミン、ペンタメチレンジアミン[別名:1,5−ジアミノペンタン]、ヘキサメチレンジアミン[別名:1,6−ジアミノヘキサン]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、及びトリレンジアミン等の脂肪族ジアミン; イソホロンジアミン、及びジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ジアミン;並びに、 フェニレンジアミン、及びキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等を挙げることができる。
【0049】
又、二つの二級アミノ基を有するジアミン(c1−2)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、 N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、及びN,N’−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン等を挙げることができる。
【0050】
又、一級及び二級アミノ基を有するジアミン(c1−3)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、 N−メチルエチレンジアミン[別名:メチルアミノエチルアミン]、N−エチルエチレンジアミン[別名:エチルアミノエチルアミン]、N−メチル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−メチル−1,3−ジアミノプロパン又はメチルアミノプロピルアミン]、N,2−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン[別名:イソプロピルアミノエチルアミン]、N−イソプロピル−1,3−ジアミノプロパン[別名:N−イソプロピル−1,3−プロパンジアミン又はイソプロピルアミノプロピルアミン]、及びN−ラウリル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−ラウリル−1,3−ジアミノプロパン又はラウリルアミノプロピルアミン]等挙げることができる。
【0051】
本発明で用いられる顔料分散剤を構成するポリアミンは少なくとも2つの一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、一級及び/又は二級アミンがイソシアネート基と反応してウレア基を生成する、このウレア基が顔料吸着部位になるが、ポリアミン(C)が、両末端に2つの一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有する化合物である場合には、酸性顔料に対しての吸着性が上がるため、特に好ましい。
【0052】
このようなポリアミン(C)としては、以下の様な両末端に2つの一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有するポリアミン(c2)が挙げられる。
【0053】
ポリアミン(c2)としては、両末端以外に二級アミノ基を有するポリアミン(c2−1)と、両末端以外に三級アミノ基を有するポリアミン(c2−2)とが挙げられる。
【0054】
両末端以外に二級アミノ基を有するポリアミン(c2−1)としては、例えば、イミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミン〕、N,N‘−ビスアミノプロピル−1,3−プロピレンジアミン、及びN,N‘−ビスアミノプロピル−1,4−ブチレンジアミン等を挙げることがでる。
【0055】
両末端以外に三級アミノ基を有するポリアミン(c2−2)としては、例えば、メチルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン〕、ラウリルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)ラウリルアミン〕等を挙げることがでる。
【0056】
本発明で用いられる顔料分散剤を構成するポリアミン(C)としては、2つ以上の一級及び/又は二級アミノ基を有し、分子量分布のある重合体(c3)も使用することができる。
【0057】
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(c3)としては、一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、ビニルアミンやアリルアミンの単独重合体(いわゆるポリビニルアミンやポリアリルアミン)、あるいはそれらと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体、及び、エチレンイミンの開環重合体や塩化エチレンとエチレンジアミンとの重縮合体やオキサゾリドン−2の開環重合体(いわゆるポリエチレンイミン)から選ばれることが好ましい。
【0058】
上記ポリアミン(C)として例示した(c1)、(c2)、および(c3)のうち、合成の制御の点から(c1)、(c2)が好ましく、さらに分散性能の点から(c2)が好ましく、最も好ましくは両末端以外に二級アミノ基を有するポリアミン(c2−1)である。
【0059】
<モノアミン(D)>
本発明で用いられる顔料分散剤を構成するアミン化合物としては、ポリアミン(C)の他に、さらにモノアミン(D)も使用することができる。モノアミン(D)としては、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基を1個有するモノアミン化合物であり、モノアミン(D)は、ジイソシアネート(B)とポリアミン(C)の反応において高分子量化しすぎるのを抑えるため、反応停止剤として使用される。モノアミン(D)は、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基以外の他の極性官能基を有しても良い。このような極性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、ニトロキシル基等が挙げられる。
【0060】
モノアミン(D)としては、従来公知のものが使用でき、具体的には、 アミノメタン、アミノエタン、1−アミノプロパン、2−アミノプロパン、1−アミノブタン、2−アミノブタン、1−アミノペンタン、2−アミノペンタン、3−アミノペンタン、イソアミルアミン、N−エチルイソアミルアミン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、2−アミノヘプタン、2−オクチルアミン、1−アミノノナン、1−アミノデカン、1−アミノドデカン、1−アミノトリデカン、1−アミノヘキサデカン、ステアリルアミン、アミノシクロプロパン、アミノシクロブタン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘキサン、アミノシクロドデカン、1−アミノ−2−エチルヘキサン、1−アミノ−2−メチルプロパン、2−アミノ−2−メチルプロパン、3−アミノ−1−プロペン、3−アミノメチルヘプタン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−イソブトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシロキシプロピルアミン、3−デシロキシプロピルアミン、3−ラウリロキシプロピルアミン、3−ミリスチロキシプロピルアミン、2−アミノメチルテトラヒドロフラン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミ
ン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリニックアシッド、イソニペコチックアシッド、メチルイソニペコテート、エチルイソニペコテート、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンブチリックアシッド塩酸塩、4−ピペリジノール、ピロリジン、3−アミノピロリジン、3−ピロリジノール、インドリン、アニリン、N−ブチルアニリン、o−アミノトルエン、m−アミノトルエン、p−アミノトルエン、o−ベンジルアニリン、p−ベンジルアニリン、1−アニリノナフタレン、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、5−アミノイソキノリン、o−アミノジフェニル、4−アミノジフェニルエーテル、β−アミノエチルベンゼン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、o−アミノアセトフェノン、m−アミノアセトフェノン、p−アミノアセトフェノン、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、3−ベンジルアミノプロピオニックアシッドエチルエーテル、4−ベンジルピペリジン、α−フェニルエチルアミン、フェネシルアミン、p−メトキシフェネシルアミン、フルフリルアミン、p−アミノアゾベンゼン、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、アリルアミン、及びジフェニルアミン等が挙げられる。
【0061】
中でも、剛直性のない脂肪族アミンで第二級アミノ基のみを有するモノアミン化合物は、分散性も良好であり好ましい。
【0062】
第二級アミノ基のみを有する脂肪族モノアミン化合物としては、 ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジノール、ピロリジン、3−アミノピロリジン、及び3−ピロリジノール等が挙げられる。
【0063】
又、三級アミノ基は、イソシアネート基と反応する活性水素を有していないため、一級又は二級アミノ基と、三級アミノ基とを有するジアミン(D’)は、本発明で用いられる顔料分散剤を構成するモノアミン(D)として使用することができ、本発明に分散剤の重合体末端に、顔料吸着能を向上させる効果がある三級アミノ基を導入することができる。
【0064】
一級又は二級アミノ基と、三級アミノ基とを有するジアミン(D’)としては、 N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、及びN,N,2,2−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン等の一級アミノ基と三級アミノ基とを有するジアミン;並びに、 N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン等の二級アミノ基と三級アミノ基とを有するジアミンを挙げることができる。
【0065】
これらのモノアミン(D)は、一種類又は二種類以上混合して用いてもよい。なお、一級アミン基とイソシアネート基が反応した後のウレア結合の活性水素は、反応性が低く、本発明の分散剤の重合条件では、それ以上イソシアネート基と反応し、分子量が大きくなることはない。
【0066】
<ウレタンプレポリマー(E)>
ウレタンプレポリマー(E)は片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)のヒドロキシル基と、ジイソシアネート(B)のイソシアネート基と、を反応して得られたものを言う。
【0067】
例えば、ビニル重合体(A)のモル数をα、ジイソシアネート(B)のモル数をβとした場合、α/β=α/(α+1)の時、理論上、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが得られる。αを正の整数とすると、αが大きくなるほど分子量が高くなる。
【0068】
〈合成触媒〉
ウレタンプレポリマー(E)の合成時には、公知の合成触媒を使用することができ、例えば三級アミン系化合物、及び有機金属系化合物等を挙げることができる。
【0069】
三級アミン系化合物としては、例えば、 トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、及びジアザビシクロウンデセン(DBU)等を挙げることができる。
【0070】
有機金属系化合物としては錫系化合物、及び非錫系化合物を挙げることができる。
【0071】
錫系化合物としては、例えば、
ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、及び2−エチルヘキサン酸錫等を挙げることができる。
【0072】
非錫系化合物としては、例えば、
ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系、オレイン酸鉛;
2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、及びナフテン酸鉛等の鉛系;
2−エチルヘキサン酸鉄、及び鉄アセチルアセトネート等の鉄系;
安息香酸コバルト、及び2−エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系;
ナフテン酸亜鉛、及び2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系;並びに、
ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム系を挙げることができる。
【0073】
上記触媒の中で、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、及び2−エチルヘキサン酸錫等が反応性や衛生性の点で好ましい。
【0074】
上記3級アミン系化合物、及び有機金属系化合物等の触媒は、場合によっては単独でも使用できるが、併用することもでる。
【0075】
ウレタンプレポリマー(E)合成時に用いる有機金属化合物触媒は、後述のアミンとの更なる反応においても、該反応を著しく促進する。
〈合成溶剤〉
本発明においてウレタンプレポリマー(E)の合成時には公知の溶剤が好適に使用される。溶剤の使用は反応制御を容易にする役割を果たす。
【0076】
かかる目的で使用される溶剤としては、例えば、
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メトキシプロピルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテル等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。
【0077】
又、溶剤を使用した場合のウレタンプレポリマー反応系内の濃度は、ウレタンプレポリマーの固形分濃度に換算して、反応制御の観点から、好ましくは30〜95重量%であり、粘度制御の観点から、さらに好ましくは40〜90重量%である。30重量%未満では、反応が遅くなり、未反応物が残ることがあるため好ましくない。95重量%を超えると、反応が部分的に急激に進む場合があり、分子量等のコントロールが難しくなるため好ましくない。
【0078】
〈合成条件〉
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)のヒドロキシル基とジイソシアネート(B)のイソシアネート基とを反応させてウレタンプレポリマー(E)をつくるウレタン化反応は、種々の方法が可能である。1)全量仕込みで反応する場合と、2)片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)及び必要に応じて、溶剤をフラスコに仕込み、ジイソシアネート(B)を滴下した後必要に応じて触媒を添加する方法に大別されるが、反応を精密に制御する場合は2)が好ましい。ウレタンプレポリマー(E)を得る反応の温度は120℃以下が好ましい。更に好ましくは50〜110℃である。110℃より高くなると反応速度の制御が困難になり、所定の分子量と構造を有するウレタンプレポリマーが得られなくなる。ウレタン化反応は、触媒の存在下、50〜110℃で1〜20時間行うのが好ましい。
【0079】
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)に対するジイソシアネート(B)の配合モル比は、ウレタンプレポリマーの生産性の観点から、1.01〜3.00が好ましく、最終合成物である分散剤の設計(顔料吸着部位と溶剤親和性部位のバランス)の観点から、1.30〜2.30がより好ましく、最終合成物である分散剤を使った顔料分散体の分散安定性の観点から、1.50〜2.00が最も好ましい。前記配合モル比が小さすぎると、最終製品である分散剤が高分子量になり、それを用いた顔料分散体、さらにそれを用いた塗料やインキの粘度が高くなり実用上問題がある。又、前述通り、前記配合モル比が3.00より大きいと、ビニル重合体(A)由来のビニル重合部を持たないジイソシアネート(B)及びそれ由来のウレタン部位が増え、最終製品である分散剤の性能が悪化する場合がある。
【0080】
<顔料分散剤の製造方法及び合成条件等>
本発明で用いられる顔料分散剤は、
分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)の存在下、エチレン性不飽和単量体(a2)をラジカル重合してなる、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)を製造する第一の工程と、 前記片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)のヒドロキシル基とジイソシアネート(B)のイソシアネート基とを反応してなる両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(E)を製造する第二の工程と、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(E)のイソシアネート基とポリアミン(C)及びモノアミン(D)の一級及び/又は二級アミノ基とを反応させる第三の工程と、により製造することが好ましい。
【0081】
本発明において、ウレタンプレポリマー(E)、ポリアミン(C)、及びモノアミン(D)、からウレタンウレア樹脂、又は末端に一級又は二級のアミノ基を有するポリウレタンウレアを得るためのウレア反応は、1)ウレタンプレポリマー(E)溶液をフラスコに仕込み、ポリアミン(C)、及びモノアミン(D)を滴下する方法、2)ポリアミン(C)、及びモノアミン(D)、及び必要に応じて溶剤からなる溶液をフラスコに仕込み、ウレタンプレポリマー(E)溶液を滴下する方法に大別される。どちらの方法を使用しても構わないが、2)の方法が合成される顔料分散剤の分散性能の点で好ましい。本発明のウレア反応の温度は、100℃以下が好ましい。更に好ましくは70℃以下である。70℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。100℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の分子量と構造を有するウレタンウレア樹脂を得ることは難しい。
【0082】
又、ウレタンプレポリマー(E)、及びポリアミン(C)、さらに必要に応じてモノアミン(D)との配合比は、特に限定されず、顔料種により任意に選択される。
【0083】
反応の終点は、滴定に因るイソシアネート%測定またはIR測定によるイソシアネートピークの消失により判断することができる。
得られた樹脂型分散剤の重量平均分子量は、好ましくは、1,000〜100,000で、より好ましくは、1,500〜50,000、特に好ましくは1,500〜20,000である。重量平均分子量が1,000未満であれば顔料組成物の安定性が低下する場合があり、100,000を超えると樹脂間の相互作用が強くなり、顔料組成物の増粘が起きる場合がある。また、得られた樹脂型分散剤のアミン価は、1〜100mgKOH/gが好ましい。さらに好ましくは、2〜80mgKOH/gであり、特に好ましくは、3〜60mgKOH/gである。アミン価が1mgKOH/g未満では、顔料吸着能が低下し顔料分散性に問題がでる場合があり、100mgKOH/gを超えると、顔料同士の凝集が起こり、粘度安定性効果の不足や塗膜外観に不具合を生じさせる場合がある。
【0084】
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、顔料と樹脂型分散剤(F)の重量比は、100:3〜100:200、であることが、好ましい。
本発明のインクジェット記録用インク組成物では、前記樹脂型分散剤(F)と一緒に公知の樹脂型分散剤(F‘)を併用して用いることができる。公知の樹脂型分散剤(F‘)を併用する事により、顔料の分散性が更に向上し、インキの低粘度化、インキの経時粘度安定性の向上、更にはインクジェットインキとしての吐出性の向上に繋がる。
前記樹脂型分散剤(F)と併用することの出来る公知の樹脂型分散剤(F‘)としては、以下の市販の分散樹脂が挙げられる。
BYK Chemie社製 Anti−Terra−U、U100、203、204、205、Disperbyk−101、102、106、107、110、111、130、140、142、170、171、174、180、2001、BYK−P104、P105、9076。
アビシア社製 ソルスパーズ3000、13940、17000、21000、24000、26000、366000、41000、41090、53095。
Efka CHEMICALS社製 エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766、エフカポリマー100、150、400、401、402、403、450、451、452、453。
共栄社化学社製 フローレン TG−710、フローノンSH−290、SP−1000、ポリフローNo.50E、No.300、楠本化成社製 ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150、#7004、日光ケミカル社製 ニッコールT106、MYS−IEX、Hexagline 4−0。
また、前記樹脂型分散剤(F)と併用することの出来る公知の別の樹脂型分散剤(F‘)としては、一般式(2)〜(4)で示される構造のうち1つもしくは2つ以上を有する樹脂型分散剤が挙げられる。
【0085】
一般式(2):
−[−R31−COO−]n31− (2)
〔R31は、ヒドロキシカルボン酸残基及び又はラクトン残基であり、n31は、1〜50の整数である。〕
一般式(3):
【0086】
【化2】

【0087】
〔一般式(3)中、
31〜A34のうちの2つが−COOHであって、他の2つがビニル結合、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、から選ばれる結合を有する重合体残基である組合せであるか、A31〜A34のうちの2つが−COOHであって、他の1つが水素原子か−COOR32(但し、R32は、炭素原子数1〜18のアルキル基である)で、他の1つがビニル結合、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合から選ばれる結合を有する重合体残基である組合せであり、k32は1又は2である〕
一般式(4):
【0088】
【化3】

【0089】
〔一般式(4)中、
35〜A38のうちの2つが−COOHであって、他の2つがビニル結合、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、から選ばれる結合を有する重合体残基である組合せであるか、A35〜A38のうちの2つが−COOHであって、他の1つが水素原子か−COOR34(但し、R34は、炭素原子数1〜18のアルキル基である)で、他の1つがビニル結合、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合から選ばれる結合を有する重合体残基である組合せであり、
33は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCHCHOCO−、−SO−、−C(CF−、一般式(5)で表される基、又は一般式(6)で表される基である。]
一般式(5):
【0090】
【化4】

【0091】
一般式(6):
【0092】
【化5】

【0093】
(2)顔料(P)
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、顔料(P)を含有している。
【0094】
顔料(P)としては、有機顔料、無機顔料、又はアセチレンブラック、チャンネルブラック、若しくはファーネスブラック等のカーボンブラックを用いることができ、顔料(P)は2種以上を混合して用いてもよい。
【0095】
有機顔料としては、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、若しくはポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン、若しくは無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、若しくはビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、又は金属錯体系顔料等を挙げることができる。
【0096】
無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、又はコバルトバイオレット等を挙げることができる。
【0097】
また、以下に、本発明によるインク組成物に使用可能な顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示す。
【0098】
赤色着色組成物には、例えば、C.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272等の赤色顔料を用いることができる。赤色着色組成物には、黄色顔料、及び/又はオレンジ顔料を併用することができる。
【0099】
イエロー色着色組成物には、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199等の黄色顔料を用いることができる。
【0100】
オレンジ色着色組成物には、例えば、C.I.Pigment orange 36、43、51、55、59、61等のオレンジ色顔料を用いることができる。 緑色着色組成物には、例えば、C.I.Pigment Green 7、10、36、37、58等の緑色顔料を用いることができる。緑色着色組成物には黄色顔料を併用することができる。
【0101】
青色着色組成物には、例えば、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64等の青色顔料を用いることができる。青色着色組成物には、例えば、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等の紫色顔料を併用することができる。
【0102】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、前記顔料を、1種単独で含有するか、あるいは2種以上を混合して含有することができる。
【0103】
顔料の粒子径は、可視光の吸収係数(スペクトルの適正さ)及び透明性の点から、可視光の波長に対して充分小さいことが好ましい。すなわち、顔料は、平均一次粒子径が0.01μm以上0.3μm以下、特に0.01μm以上0.1μm以下であることが好ましい。なお、一次粒子径とは、最小単位の顔料粒子の直径をいい、電子顕微鏡で測定される。顔料の一次粒子径は、サンドミル、ニーダー、又は2本ロール等の既知の分散装置を用いて適正な範囲内に制御することができる。
【0104】
(3)熱反応性化合物(G)
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、熱反応性化合物(G)を含有している。本発明のインク組成物に用いることのできる前記熱反応性化合物(G)は、常温下では非反応性であるが、例えば、100℃以上(好ましくは150℃以上)の温度で、架橋反応、重合反応、重縮合反応、又は重付加反応を示す化合物である。本発明のインク組成物に用いることのできる前記熱反応性化合物の分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは50〜2,000、より好ましくは100〜1,000である。
【0105】
前記熱反応性化合物(G)としては、例えば、メラミン化合物、ベンゾグアナミン化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール化合物、ベンゾオキサジン、ブロック化カルボン酸化合物、ブロック化イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、アクリレート系モノマー、又はシランカップリング剤を用いることができる。更に、前記熱反応性化合物として、少なくともメラミン化合物及び/又はベンゾグアナミン化合物を含む事が好ましい。メラミン化合物若しくはベンゾグアナミン化合物は、加熱処理後の変色が極めて小さく、少ない添加量で高い耐性を付与できる為に、熱反応性化合物の添加量を低減する事が可能となり、インキの高顔料濃度化や経時安定性の向上に繋がる。
また、メラミン化合物及び/又はベンゾグアナミン化合物は、顔料の酸性度の硬化の影響が顕著で、さらにバインダー樹脂が無くても、自己縮合により高耐性の硬化物を提供することができる。
【0106】
メラミン化合物又はベンゾグアナミン化合物としては、例えば、イミノ基、メチロール基、又はアルコキシメチル基を有するものが挙げられる。その中でも、アルコキシアルキル基を含有するメラミン化合物又はベンゾグアナミン化合物が特に好ましい。アルコキシアルキル基を含有するメラミン化合物又はベンゾグアナミン化合物を用いた場合、本発明の着色樹脂組成物を含有する塗料又はインキの保存安定性が著しく向上する。
アルコキシアルキル基を含有するメラミン化合物又はベンゾグアナミン化合物としては、例えば、ヘキサメトキシメチロールメラミン、ヘキサブトキシメチロールメラミン、テトラメトキシメチロールベンゾグアナミン、又はテトラブトキシメチロールベンゾグアナミン等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
メラミン化合物の市販品の具体例としては以下のものが挙げられる。但し、必ずしもこれらに限定されるものではない。
日本カーバイド社製ニカラックMW−30M、MW−30、MW−22、MS−21、MS−11、MW−24X、MS−001、MX−002、MX−730、MX750、MX−708、MX−706、MX−042、MX−035、MX−45、MX−500、MX−520、MX−43、MX−417、MX−410、MX−302、日本サイテックスインダストリー社製サイメル300、301、303、350、370、325、327、703、712、01、285、232、235、236、238、211、254、204、202、207、マイコート506、508、212、715等が挙げられる。
その中でも好適なのは、アルコキシアルキル基含有のメラミン化合物である、日本カーバイド社製ニカラックMW−30M、MW−30、MW−22、MS−21、MX−45、MX−500、MX−520、MX−43、MX−302、日本サイテックスインダストリー社製サイメル300、301、303、350、285、232、235、236、238、マイコート506である。
【0107】
ベンゾグアナミン化合物の市販品の具体例としては、例えば、日本カーバイド社製ニカラックBX−4000、SB−401、BX−37、SB−355、SB−303、SB301、BL−60、SB−255、SB−203、SB−201、日本サイテックスインダストリー社製サイメル1123、マイコート105、106、1128等が挙げられる。
その中でも好適なのは、アルコキシアルキル基含有のベンゾグアナミン化合物である、日本カーバイド社製ニカラックBX−4000、SB−401、日本サイテックスインダストリー社製サイメル1123である。
【0108】
その他、有効な熱反応性化合物について、以下に挙げるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、ジグリシジルo−フタレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、又はポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のポリオールのグリシジルエーテル、又はポリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
オキセタン化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス[〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル]ベンゼン、ビス〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシ)メチルオキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、オキセタニルシリケート、フェノールノボラックオキセタン、1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、1,4−ビス[〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル]ビフェニル、1−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート、又はベンゼン−1,4−ジカルボン酸ビス〔1−エチル(3−オキセタニル)メチル〕エステル等を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0109】
フェノール化合物としては、例えば、フェノール類とアルデヒド類を酸性触媒下で反応させたノボラック型フェノール化合物、塩基性触媒下で反応させたレゾール型フェノール化合物どちらも用いることができる。フェノール類としては、例えば、オルトクレゾール、パラクレゾール、パラフェニルフェノール、パラノニルフェノール、2,3−キシレノール、フェノール、メタクレゾール、3,5−キシレノール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールH、又はビスフェノールS等を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、又はアセトアルデヒドを挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。フェノール類とアルデヒド類は、それぞれ1種を単独で、又は2種以上を混合して用いられる。
ベンゾオキサジン化合物の市販品の具体例としては、例えば、四国化成工業社製ベンゾオキサジンP−d型、ベンゾオキサジンF−a型等を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0110】
ブロック化カルボン酸化合物としては、以下のカルボン酸化合物とブロック剤の組み合わせを挙げることができる。
カルボン酸化合物としては、例えば、1,2−フタル酸、1,3−フタル酸、1,4−フタル酸、1,2,4−トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、C1−CIC酸、CIC酸、C3−CIC酸、又はBis−CIC酸等を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
ブロック剤としては、例えば、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、又は2−エチルヘキシルビニルエーテル等を挙げることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、1種を単独で、あるいは2種以上を併用して用いられる。
【0111】
ブロック化イソシアネート化合物としては、以下のイソシアネート化合物とブロック剤の組み合わせを挙げることができる。
ブロック化イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート化合物として例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、又はテトラメチルキシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート、これらジイソシアネートのイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンアダクト型、ビウレット型、又はイソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)及びイソシアネート残基を有するウレトジオン等を挙げることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
ブロック剤としては、例えば、フェノール(解離温度180℃以上)、ε−カプロラクタム(解離温度160〜180℃)、オキシム(解離温度130〜160℃)、又は活性メチレン(100〜120℃)等を挙げることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、1種を単独で、あるいは2種以上を併用して用いられる。
カルボジイミド化合物の市販品の具体例としては、例えば、日清紡社製カルボジライトV−01、V−03、V−05等を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0112】
アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、又はウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、又はアクリロニトリル等を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0113】
アクリレートモノマーを用いる場合には、更に硬化性を向上させる目的で、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、加熱時に硬化性を向上させる目的で熱重合開始剤を用いてもよい。熱重合開始剤としては、有機過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤等を挙げることができる。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、又はビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、又はγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、又はN−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、又はγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類等を挙げることができる。
【0114】
これらの熱反応性化合物(G)のうち、メラミン化合物又はベンゾグアナミン化合物が、本発明のインク組成物中に1重量%〜40重量%の量で含有されていることが好ましい。また、エポキシ化合物、フェノール化合物、ブロック化イソシアネート化合物、又はアクリレートモノマー類等については本発明のインク組成物中に1重量%〜40重量%の量で含有されていることが好ましい。また、シランカップリング剤は本発明のインク組成物中に0.1重量%〜40重量%の量で含有されていることが好ましい。含有量が不足すると、耐熱性、又は耐薬品性に劣る場合がある。また、含有量が40%より多くなると、粘度の増加、又は保存安定性の低下が生じる場合がある。
【0115】
(4)有機溶剤(H)
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、有機溶剤(H)を含有している。
【0116】
本発明では、インクジェット記録用インク組成物において通常使用されている有機溶剤(H)を用いることができる。一般に、インクジェット記録用インク組成物に用いられる有機溶剤(H)は、樹脂に対して高い溶解性を有するとともに、インクジェットプリンターからインクを吐出する際に、インクと接するプリンタ部材に対して膨潤作用が少なく、溶剤の粘度がなるべく低いものが好ましい。有機溶剤は、樹脂に対する溶解性、及びプリンタ部材に対する膨潤作用、粘度、及びノズルにおけるインクの乾燥性の点から選択され、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、エステル系溶剤、及び/又はケトン系溶剤等の1種類を単独で、又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0117】
アルコール系溶剤としては、例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、およびアミルアルコール等を挙げることができる。
【0118】
グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリアセチン、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、ブチレングリコールジアセテート、ブチレングリコールジアセテート、ペンタンジオールジアセテート、ヘキサンジオールジアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ブチレングリコールジメチルエーテル、ブチレングリコールジメチルエーテル、ペンタンジオールジメチルエーテル、ヘキサンジオールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ブチレングリコールジエチルエーテル、ブチレングリコールジエチルエーテル、ペンタンジオールジエチルエーテル、ヘキサンジオールジエチルエーテル、および1−ブトキシエトキシプロパノール等を挙げることができる。
【0119】
エステル系溶剤としては、例えば、乳酸エチル、乳酸プロパン、および乳酸ブチル等を挙げることができる。
【0120】
ケトン系溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、イソホロン、メチルシクロヘキサノン、およびアセトフェノン等を挙げることができる。
【0121】
(5)顔料誘導体(D)
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、更に顔料誘導体(D)を含有することができる。
本発明で使用する酸性官能基を有する誘導体について説明する。本発明で使用する酸性置換基を有する誘導体は、下記一般式(7)、下記一般式(8)、及び下記一般式(9)で表される誘導体の群から選ばれる少なくとも一種類以上の誘導体を使用することができる。酸性置換基を有する誘導体は、下記一般式(4)で表される電荷を有さない誘導体、並びに下記一般式(8)及び(9)で表される電荷を有する誘導体に分けられる。
【0122】
一般式(7):
P−Z1
【0123】
(一般式(7)中、Pは、有機色素残基、置換基を有していても良い複素環残基、又は置換基を有していても良い芳香族残基であり、Z1は、スルホン酸基又はカルボキシル基である。)
一般式(8):
(P−Z2)[N+(R5,R6,R7,R8)]
(一般式(8)中、Pは、有機色素残基、置換基を有していても良い複素環残基、又は置換基を有していても良い芳香族残基であり、R5は、炭素数5〜20のアルキル基であり、R6,R7,及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であり、Z2は、SO3-又はCOO-である。)
【0124】
一般式(9):
(P−Z2xy+
(一般式(9)中、Pは、有機色素残基、置換基を有していても良い複素環残基、又は置換基を有していても良い芳香族残基であり、My+は、金属イオン、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、またはアルミニウムのイオンであり、yはイオンの価数であり、xはx=y÷(Z2の個数)の式で求められる値であり、Z2は、SO3-又はCOO-である。)
【0125】
一般式(7)〜(9)のPで表される有機色素残基としては、例えばジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、及び金属錯体系色素等が挙げられる。
【0126】
又、一般式(7)〜(9)のPで表される複素環残基及び芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン、及びアクリドン等が挙げられる。これらの複素環残基及び芳香族環残基は、アルキル基(メチル基、エチル基、及びブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、及びジブチルアミノ基等)、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、及びブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素、及びフッ素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、及びハロゲン等で置換されていてもよい)、並びに、フェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、及びハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい。
【0127】
一般式(7)〜(9)で示される顔料誘導体中のPは、着色樹脂組成物に使用する顔料の化学構造と、上記有機色素残基の化学構造は必ずしも一致しなければいけないものではないが、最終的に製造されるインキ等の色相を考慮すれば、緑系の分散に使用する際には青系、緑系、または黄色系の顔料誘導体、および黄色系顔料の分散に使用する際には黄色系の顔料誘導体、赤系顔料の分散に使用する際には赤系、オレンジ系または黄色系の顔料誘導体、青系顔料の分散に使用する際には青系または紫系の顔料誘導体、のように分散する顔料の色相に近いもの、もしくは無色のものを使用した方が色相的に優れた顔料分散体を製造することができる。
【0128】
一般式(7)のZ1は、一般式(7)のPに対して、0.5〜8.0個の範囲で存在して良く、好ましくは0.7〜3.0個である。
【0129】
一般式(8)のZ2は、一般式(8)のPに対して、0.5〜8.0個の範囲で存在して良く、好ましくは0.7〜3.0個である。同時にZ2の個数に応じて[N+(R5,R6,R7,R8)]も同数存在してよい。
【0130】
一般式(9)のZ2は、一般式(9)のPに対して、0.5〜8.0個の範囲で存在して良く、好ましくは0.7〜3.0個である。同時にZ2の個数とMのイオン価数yにあわせてxの数は適宜変わってよい。
【0131】
前記顔料誘導体(D)のうち特に好ましくは、酸性官能基を有する色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、酸性官能基を有するアクリドン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる誘導体を少なくとも一種を含むことである。酸性官能基を有する顔料誘導体を用いることにより、特に塩基性基を有する樹脂成分との吸着性が著しく向上し、本発明のインクジェットインクが低粘度化するとともに、経時安定性が向上する。
【0132】
(6)バインダー樹脂
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、更にバインダー樹脂を含有することができる。バインダー樹脂は、前記熱反応性化合物の反応温度においても、非反応性の樹脂であり、熱可塑性樹脂であることが好ましい。前記樹脂型分散剤(F)、樹脂型分散剤(F)と併用することの出来る公知の別の樹脂型分散剤(F‘)もバインダー樹脂(I)として使用することができる。その他、バインダー樹脂(I)として、以下に挙げる樹脂が使用できる。
【0133】
バインダー樹脂の例としては、石油系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、又はブチラール樹脂などを用いることができる。
【0134】
バインダー樹脂として、架橋可能な官能基を有するものを用いることもできる。架橋可能な官能基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、又はアルコキシル基等を挙げることができる。
【0135】
架橋可能な官能基を有する樹脂としては、エステル化反応により樹脂が緩やかに架橋するため、水酸基又はカルボキシル基を有するアクリル樹脂が好ましい。
【0136】
水酸基又はカルボキシル基を有するアクリル樹脂は、水酸基を有するモノマー又はカルボキシル基を有するモノマーと、水酸基及びカルボキシル基を有しないアクリルモノマーとを共重合することにより得られる樹脂である。
【0137】
水酸基を有するモノマー、カルボキシル基を有するモノマーとしては、前記リン酸基を有する分散樹脂で用いることの出来るモノマーを挙げることができる。
水酸基及びカルボキシル基を有しないアクリルモノマーとしては、一般的なアクリルモノマーを用いる事が出来る。
【0138】
(7)顔料の被覆処理
顔料の被覆処理は、前記顔料(P)、前記樹脂型分散剤(F)、および前記有機溶剤、並びに、必要に応じて、前記バインダー樹脂(I)、および顔料誘導体(D)、が、均一になるように予め混合してから、分散機を用いて混練することにより行うことができる。有機溶剤の配合量は、混合物の機械特性に応じて調節することが好ましい。顔料の被覆処理に用いる分散機としては、ニーダー、ロールミル、ボールミル、バンバリーミキサー、ローラーミル、石臼式ミル等が挙げられるが、2本ロールミルは一つの装置で混合及び混練ができるので好ましい。
【0139】
顔料を被覆処理する際の原料の配合量は、顔料(P)100重量部に対して、顔料誘導体(D)1〜30重量部、樹脂型分散剤(F)とバインダー樹脂(I)とを合計した樹脂成分(以下、樹脂成分と略記する。)20〜200重量部、及び有機溶剤4〜200重量部の範囲であることが好ましい。顔料誘導体(D)の配合量が1重量部未満の場合は、アンカー効果が少ないためインクを低粘度化させる効果が小さく、30重量部を越える場合は、顔料誘導体(D)が過剰となり未吸着の顔料誘導体(D)同士が凝集するためインクが増粘する。また、樹脂成分の配合量が20重量部未満の場合は、充分に顔料(P)の表面を被覆できず、顔料(P)の分散安定性が低くなり、200重量部を越える場合は、顔料(P)に吸着しない遊離の樹脂成分によりインクの粘度が上昇する。また、有機溶剤の配合量が4重量部未満の場合は、顔料誘導体(D)及び樹脂成分の顔料(P)に対する初期の濡れが不充分で充分に顔料(P)を被覆しないため、インクの粘度が安定しないことがあり、200重量部を越える場合は、顔料(P)の被覆処理が困難となる。
【0140】
顔料(P)の被覆処理は、具体的には、下記の2段階の工程により行われる。
第1工程は、顔料(P)、樹脂成分、及び有機溶剤等を含む組成物を20回程度2本ロールに通すことにより顔料への樹脂成分の濡れと吸着を進行させるチップ化工程である。この工程で、配合した有機溶剤のうち約80重量%程度が揮発する。
第2工程は、チップ化により前記樹脂成分が顔料(P)に吸着した混練物の加熱、混練を続けて顔料粒子表面に被覆層を形成する被覆処理工程である。混練物の粘度が高く、機械上、混練できない場合は、適量の有機溶剤を追加し、混練を助ける。
【0141】
樹脂成分が架橋可能な官能基を有する場合には、被覆処理工程で樹脂成分の架橋が生じ、一部に樹脂切断も見られる。この反応は、過度な機械的な加圧と磨砕、更には加熱の結果によるものでメカノケミカルな反応であり、顔料(P)と樹脂成分のみでは樹脂成分の架橋反応は生じにくい。顔料と樹脂成分とを混練する際に顔料誘導体(D)を用いることにより、顔料誘導体(D)と樹脂成分とが顔料(P)表面に強固に吸着し、更に加熱と加圧混練を行うことにより樹脂成分の架橋が生じると推定される。加熱温度は80℃〜120℃の範囲であることが好ましい。80℃未満の温度では樹脂成分が十分に架橋しない場合があり、120℃を越える温度では、樹脂成分の劣化が生じる場合がある。
【0142】
顔料(P)表面に吸着しなかった余剰の樹脂成分は、インクの粘度等の物性に影響を及ぼす場合には、洗浄やろ過等により除去することが好ましい。また、被覆処理顔料は、乾燥しても凝集しない場合には、洗浄後に乾燥しても良いが、被覆処理時に用いた有機溶剤がインクジェットインクの液状媒体として使用可能な有機溶剤(H)であればあえて乾燥する必要がない。
【0143】
(8)物性など
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、固形分含有量は、インク組成物全重量に対して、好ましくは3〜60重量%、より好ましくは4〜40重量%である。固形分含有量が、3重量%未満になるとインク皮膜の濃度や耐性が不足し、60重量%を超えるとインクの粘度が上昇し、経時安定性が低下することがある。
【0144】
本発明のインクジェット記録用インク組成物の粘度としては、2mPa・s以上40mPa・s以下が好ましく、3mPa・s以上30mPa・s以下、更には4mPa・s以上20mPa・s以下がより好ましい。粘度が大きすぎると、連続して吐出する場合に、安定した吐出ができない。
【0145】
本発明のインクジェット記録用インク組成物の平均分散粒子径としては、5nm以上200nm以下が好ましく、10nm以上150nm以下がより好ましい。平均分散粒子径が大きすぎるとヘッドが目詰まりを起こしやすく、安定した吐出ができない。また平均分散粒子径が小さすぎると、再凝集を引き起こし易くなり、経時安定性が悪化する。
【0146】
本発明のインクジェット記録用インク組成物の表面張力としては、20mN/m以上40mN/m以下が好ましく、24mN/m以上35mN/m以下がより好ましい。表面張力が高すぎるとヘッドからインクが安定して吐出することができず、逆に表面張力が低すぎるとヘッドから吐出後インクが液滴を形成することができなくなる。
【0147】
本発明のインクジェット記録用インク組成物の製造は、前記顔料(P)、前記樹脂型分散剤(F)、前記熱反応性化合物(G)、及び前記有機溶剤(H)、並びに必要に応じて前記バインダー樹脂(I)及び/又は顔料誘導体(D)、場合によってのその他の添加剤を通常の分散機に投入し、所望の平均粒子径・粒度分布になるまで分散することにより行うことができる。インク組成物の原料は、一括して混合・分散してもよいし、それぞれの原料の特性や経済性を考慮して別々に混合・分散してもよい。インク組成物の粘度が高過ぎ、希釈が必要な場合には、インク原液に希釈用の液状媒体を加えて均一に攪拌し、インク組成物を調製することもできる。
【0148】
分散機としては、サンドミル、ビーズミル、アジテータミル、ダイノミル、又はコボルミルなどが好適である。それぞれの分散機において、顔料分散に適切な粘度領域がある場合には、各種樹脂成分と顔料との比率を変えて粘度を調整することができる。インクジェット記録用インク組成物は、分散機で分散後に、粗大粒子や異物除去を目的にフィルタや遠心法により濾過することが好ましい。
【0149】
インクジェット記録用インク組成物を製造する際には、更に、界面活性剤型分散剤や、アントラキノン誘導体、及び/又はトリアジン誘導体を用いることができる。界面活性剤型顔料分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、又はステアリルアミンアセテート等を挙げることができる。
【0150】
インクジェット記録用インク組成物には、インク組成物の粘度が25℃で3〜50mPa・sとなる範囲で、種々の添加剤を含有させることができる。例えば、インクの基板への濡れ性を制御するために、界面活性剤(レベリング剤、消泡剤など)を含有させることができる。界面活性剤を選択する際には、その他のインク構成成分との相溶性を考慮する必要がある。界面活性剤には、アニオン性、カチオン性、両性、又は非イオン性のものがあり、好適なものを選択すればよい。
【0151】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、高い顔料濃度でありながら低粘度であるため吐出安定性に優れ、顔料含有量が通常のインクジェットインクに比べ多いために吐出量を少なくすることができることから、カラーフィルター基板用をはじめ、高い印字濃度が望まれている印刷物の生産性及び品位を向上させることができる。特に、本発明のインクジェット記録用インク組成物は、高い生産性及び品位が求められるカラーフィルター基板の製造に好適である。
【0152】
また、本発明のインクジェット記録用インク組成物は、顔料が高濃度に分散されているので、インク組成物が深さ方向に浸透する紙や横方向への濡れ広がるプラスティック、ガラス及び金属であっても、印字濃度を高くできる。更に、吐出量を抑えることができるので、受容層のインク受容量を越えるためインクが流出して混色したり、ドット形状が真円とならなかったことも回避することができるので、従来のインクジェット印刷では制限された用途にも用いることができる。
【0153】
(9)カラーフィルター基板
本発明のインクジェット記録用インク組成物を用いて、インクジェット法により、カラーフィルター基板を製造することができる。カラーフィルター基板は、例えば、薄型テレビジョンなどに利用されている液晶ディスプレイパネルに利用することができる。
【0154】
カラーフィルター基板は所望の色相のフィルターセグメントを具備するものであり、フィルターセグメントは、ブラックマトリックスが形成された基板のブラックマトリックスで区分けされた領域内に、インクジェット法によりカラーフィルター用インクジェットインクを吐出することに形成される。
【0155】
基板としては、ガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂板を用いることができる。ブラックマトリックスは、例えば、ラジカル重合型のブラックレジストを塗布し、露光、そして現像してパターニングするフォトリソグラフィー法、黒色インクを印刷する印刷法、又は金属を蒸着したのちエッチングする蒸着法等により基板上に形成することができる。
【0156】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。以下の実施例及び比較例中、部及び%は、重量部及び重量%を表す。また、樹脂の重量平均分子量は、GPCを用いて測定し、ポリスチレン換算で求めた。 実施例及び比較例で用いた顔料、顔料誘導体、溶剤及び樹脂溶液を以下に示す。また、実施例及び比較例における最終的なインク組成を表1〜3に示す。
【0157】
[1]顔料(P):
(1)レッド顔料A:C.I.Pigment Red 254
(2)レッド顔料B:C.I.Pigment Red 177
(3)グリーン顔料A:C.I.Pigment Green 36
(4)グリーン顔料B:C.I.Pigment Green 58
(5)イエロー顔料A:C.I.Pigment Yellow 138
(6)イエロー顔料B:C.I.Pigment Yellow 150
(7)ブルー顔料:C.I.Pigment Blue 15:6
(8)バイオレット顔料:C.I.Pigment Violet 23
[2]顔料誘導体(D):
顔料誘導体〔D−1〕
一般式(10):
【0158】
【化6】

【0159】
顔料誘導体〔D−2〕
一般式(11):
【0160】
【化7】

【0161】
顔料誘導体〔D−3〕
一般式(12):
【0162】
【化8】

【0163】
顔料誘導体〔D−4〕
一般式(13):
【0164】
【化9】

【0165】
顔料誘導体〔D−5〕
一般式(14):
【0166】
【化10】

【0167】
顔料誘導体〔D−6〕
一般式(15):
【0168】
【化11】

【0169】
[3]溶剤(H)
CBAc:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
BuCBAc:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
PGMAc:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
DPMA:ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
13BGDA:1,3−ブチレングリコールジアセテート
【0170】
[4]樹脂型分散剤(F)およびバインダー樹脂(I)
本発明に使用する樹脂型分散剤(F)、および、バインダー樹脂(I)の製造例について説明する。
【0171】
(ビニル重合体(A)の製造例1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート500部、チオグリセロール11部と、メトキシプロピルアセテート511部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を90℃に加熱して、AIBN 0.50部を添加した後7時間反応した。不揮発分測定により95%が反応したことを確認後、室温まで冷却して、重量平均分子量9,500の、片末端領域に2つの遊離ヒドロキシル基を有するビニル重合体(A−1)の不揮発分50%溶液を得た。
【0172】
(ビニル重合体(A)の製造例2〜5)
表1に記載した原料と仕込み量を用いた以外は上記ビニル重合体(A−1)合成と同様に合成を行い、片末端領域に2つの遊離ヒドロキシル基を有するビニル重合体(A−2〜5)の不揮発分50%溶液を得た。
【0173】
【表1】

【0174】
表1中の略称は以下に示す通りである。
MMA:メチルメタクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
EA:エチルアクリレート
nBA:ブチルアクリレート
AIBN:2,2‘−アゾビス(イソブチロニトリル)
【0175】
《製造例6 樹脂型分散剤F1》
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器1に、ビニル重合体(A−1)の不揮発分50%溶液 1022部と、イソホロンジイソシアネート 45.2部と、メトキシプロピルアセテート45.1部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.11部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、3時間反応した後、40℃まで冷却し、イソシアネート基を有するプレポリマー溶液を得た。ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器2にメチルイミノビスプロピルアミン11.1部、ジブチルアミン 6.6部、メトキシプロピルアセテート304.6部を仕込み100℃に加熱した。そこへ前記プレポリマー溶液を30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、室温まで冷却して反応を終了した。ここへメトキシプロピルアセテートを追加して不揮発分を40%に調整し、顔料分散剤の淡黄色透明溶液を得た。重量平均分子量は43,200であり、アミン価9.0mg KOH/gであった。
【0176】
《樹脂型分散剤の製造例7〜11(F2〜F6)》
表2に記載した原料と仕込み量を用いた以外は製造例6と同様にして合成を行い、各種分散剤の溶液を得た。ただし、表2中のメトキシプロピルアセテートの重量は、顔料分散剤を製造するのにポリアミン と同時に反応容器2に仕込んだものと、反応終了後に不揮発分調整用に使用したとの合計量を表記してある。
【0177】
【表2】

【0178】
表2中の略称は、以下に示す通りである。
・IPDI:イソホロンジイソシアネート
・DBTDL:ジブチル錫ジラウレート
・MIBPA:メチルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン〕
・IBPA:イミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミン〕
・DBA:ジブチルアミン
【0179】
《製造例12 バインダー樹脂I》
ガス導入管、コンデンサ、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に溶剤(PGMAc)を60部仕込み110℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下槽から、メチルメタクリレート20部、イソブチルメタクリレート37.6、ラウリルメタクリレート30部、ベンジルメタクリレート10部、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製)2.4部、溶剤(PGMAc)40部、及びジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)6部を予め均一に混合した混合液を2時間かけて滴下し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け反応を終了した。このようにして、数平均分子量4900、一分子中の水酸基の平均個数1.0個のビニル系樹脂中間体を得た。
ガス導入管、コンデンサ、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に上記ビニル系樹脂中間体を固形分で100部、無水トリメリット酸を3.9部、ジメチルベンジルアミンを0.1部仕込み、100℃で6時間反応させ、バインダー樹脂(I)を得た。バインダー樹脂(I)中の固形分比率は50%、重量平均分子量(Mw)は8,000であった。
【0180】
〈比較顔料分散剤1〉
味の素ファインテクノ社製:商品名 アジスパー PB−821 をメトキシプロピルアセテートで不揮発分を40%に調整したもの。
〈比較顔料分散剤2〉
日本ルーブリゾール社製:商品名Solsperse 24000GR をメトキシプロピルアセテートで不揮発分を40%に調整したもの。
〈比較顔料分散剤3〉
BYK Chemie社製:Disperbyk−163をメトキシプロピルアセテートで不揮発分を40%に調整したもの。
〈比較顔料分散剤4〉
BYK Chemie社製:Disperbyk−2000(不揮発分40%)。
〈比較顔料分散剤5〉
BYK Chemie社製:Disperbyk−2001をメトキシプロピルアセテートで不揮発分を40%に調整したもの。
〈比較顔料分散剤6〉
幹ポリマー部がジメチルアミノメチル化グリシジルメタアクリレート−メタアクリル酸エステル化グリシジルメタアクリレート共重合体、枝ポリマー部がポリメタアクリル酸メチルからなる塩基性基当量が48mgKOH/gのカチオン性櫛形グラフトポリマーの不揮発分40%メトキシプロピルアセテート溶液(特開平9−176511号公報:実施例6に説明の顔料分散剤)。
〈比較顔料分散剤7〉
幹ポリマー部がジメチルアミノエチルメタアクリレート−メタアクリル酸エステル化グリシジルメタアクリレート共重合体、枝ポリマー部がポリメタアクリル酸メチルからなるアミン価が44mgKOH/gのカチオン性櫛形グラフトポリマーの不揮発分40%メトキシプロピルアセテート溶液(特開平9−176511号公報の実施例7に説明の顔料分散剤)。
【0181】
[5]熱反応性化合物(G)
(1)三和ケミカル社製アルコキシアルキル基含有メラミン化合物 ニカラックMX−43
(2)三和ケミカル社製イミノ基・メチロール基含有メラミン化合物 ニカラックMX−417
(3)三和ケミカル社製アルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物 ニカラックSB−401
(4)三和ケミカル社製イミノ基・メチロール基含有ベンゾグアナミン化合物 ニカラックBL−60
(5)日本化薬社製アクリルモノマー DPCA−60
(6)バイエル社製イソシアネート化合物 デスモジュールBL−4265
(7)日本化薬社製エポキシ化合物EPPN―201
(8)東亞合成社製アクリルモノマー アロニックスM−400
【0182】
《実施例1》
レッド顔料A 90部、顔料誘導体(RD−1)10部、樹脂型分散剤(F6)溶液30部、バインダー樹脂(I)溶液104部を均一に撹拌し、混合物を得た。60℃に加温した2本ロールに、混合物を入れて10分間練肉したところ、溶剤が揮発してシート状となった。更に、溶剤(PGMAc)52部を加え、2本ロールを80℃に加熱して混練を行った。分散途中で溶剤が揮発し、加熱混練物は弾性をもつ固形物となった。得られた固形物を冷却後、粉砕し、被覆処理顔料を得た。
【0183】
被覆処理顔料167部、溶剤(CBAc)562部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行い、更にメラミン化合物(MX−43)20部、アクリルモノマー(アロニックスM−400)20部、を加え混合した。ゴミや粗大物をフィルタ濾過し、顔料濃度12%のインクジェットインクを得た。
実施例1と同様にして、表3〜5 の組成表内の実施例2〜10 、比較例1〜8 の組成になるように分散、調液を行いインクジェットインクを得た。
【0184】
《実施例11》
グリーン顔料A 72部、イエロー顔料A 18部、顔料誘導体(D−3)10部、樹脂型分散剤(C6)溶液92部、樹脂型分散剤(C12)溶液40部、溶剤(13BGDA)242部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行い、分散体を得た。更にメラミン化合物(MX−43)20部、アクリルモノマー(アロニックスM−400)、溶剤(13BGDA)173部を加えホモディスパにて混合した。ゴミや粗大物をフィルタ濾過し、顔料濃度14%のインクジェットインクを得た。
実施例11と同様にして、表3〜5の組成表内の実施例12〜14 、比較例9、10 の組成になるように分散、調液を行いインクジェットインクを得た。
【0185】
実施例1〜14及び比較例1〜10で得られたインクの粘度及び流動性、保存安定性を下記の方法で評価した。
またKonica社製KM512ヘッド(公称42pl/1drop)を有するインクジェットプリンターで吐出し、下記の方法で吐出安定性、印字濃度を評価した。
また下記カーボンブラックレジスト、パターン形成方法、インクジェット吐出によるカラーフィルタ製造方法により得られたカラーフィルタ基板を用い、下記方法で耐薬品性、耐熱性を評価した。
また顔料分散性を評価するため、下記方法によりカラーフィルタの代表値であるコントラスト比の評価を行った。結果を、表6〜8に示す。
【0186】
[粘度]
動的粘弾性測定装置により、ずり速度100(1/s)の粘度(η:mPa・s)を測定した。
[流動性]
動的粘弾性測定装置により、ずり速度10(1/s)の粘度(ηa:mPa・s)を測定し、先に測定したずり速度100(1/s)の粘度(η:mPa・s)との比ηa/ηを求め、下記の基準で流動性を評価した。
○:0.9≦ηa/η<1.5
×:1.5≦ηa/η
【0187】
[保存安定性]
45℃のオーブンで、7日間加熱後粘度を測定した。
○:加熱前の粘度と比して増粘率10%以内
×:加熱前の粘度と比して増粘率10%以上
[吐出安定性]
印字状態を目視で観察し、下記の基準で吐出安定性を評価した。
○:間欠15分後ノズル抜けが5%以下である。
△:間欠15分後ノズル抜けが10%以下である。
×:間欠15分後ノズル抜けが50%以上である。
[印字濃度]
段ボールにベタ印刷を行い、乾燥後OD値を測定した。
○:OD値1.2以上
×:OD値1.2未満
【0188】
[カーボンブラックレジストの調整]
カーボンブラック分散体を60部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製「NKエステルATMPT」)4.3部、光重合開始剤2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバガイギー社製「イルガキュア369」)2部、増感剤(保土ヶ谷化学社製「EAB-F」)0.4部、及びシクロヘキサノン21.6部、撥インキ剤(東洋インキ製造株式会社製「フルシェードFSA−RCS001」)0.9部の混合物を均一に攪拌混合した後、1μmのフィルターで濾過して感光性黒色組成物を調製した。
【0189】
[パターン形成]
感光性黒色組成物をスピンコート法により10cm×10cmのガラス基板に塗工した後、70℃で15分の乾燥により乾燥膜厚2μmの塗膜を作成した。その後、超高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して紫外線を200mJ/cm露光した。次いで、炭酸ナトリウム水溶液を用いて未露光部をスプレー現像した後、イオン交換水で洗浄し未露光部を取り除き、230℃、30分のポストベークを行い作成した。得られたBMは、およそ縦100μm、横300μmの開口部を有していた。
【0190】
[インクジェット吐出によるカラーフィルタ製造]
得られたインキをKonica社製KM512ヘッド(公称42pl/1drop)に充填し、電圧25VでBM開口部に1滴ずつ吐出回数を増やしながらピクセルをインキで充填し、所望の濃度になるまでインキを充填したピクセルを作成した。その後、このガラス基板を振動や風圧でインキがこぼれない様に100℃で5分乾燥させ、さらに230℃で30分焼き付けを行い、着色層を備えたカラーフィルタを作製した。
[耐薬品性]
カラーフィルタ基板をN−メチルピロリドンに浸漬し、浸漬前後の塗膜の色変化△Eを測定した。
○:△E≦2
△:2<△E≦4
×:△E>4
【0191】
[耐熱性]
カラーフィルタ基板を240℃のオーブン中に90分置き、その前後の塗膜の膜厚変化率Δt = {(耐熱試験前膜厚−耐熱試験後膜厚)/ 耐熱試験前膜厚} を測定した。
○:Δt ≦ 10%
×:Δt > 10%
[コントラスト比]
目標色度のインキが塗工されたガラス基板を得るために、適した回転速度においてスピンコーターでガラスに塗工したのち、100℃で5分乾燥させ、さらに230℃で30分焼き付け工程を行い、コントラスト測定用のガラス基板を得た。
コントラスト比は、コントラスト計(CT−1:壷坂電機社製)により、ハロゲン光源を用いて測定を行った。また、測定の条件は、偏光板が完全に平行になった時の輝度を1000になるように光源電圧を調整し最大輝度とし、また、輝度が0.1となる、殆ど90°近くに偏光板を交差させたときを最小輝度として、
コントラスト比=最大輝度/最小輝度がブランク状態で10000になるように調整した状態で、偏光板の間に前記の通りに準備したガラス基板を挟み測定した。
【0192】
【表3】

【0193】
【表4】

【0194】
【表5】

【0195】
【表6】

【0196】
【表7】

【0197】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、耐熱性、耐薬品性が良好で、更に顔料濃度が高いにもかかわらず、低粘度、経時粘度安定性かつ吐出安定性が良好である。また従来の方法と比較して、はるかに効率よく高性能なカラーフィルター、パッケージ、又は屋外看板などを生産することができる。
【0199】
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂型分散剤(F)、顔料(P)、熱反応性化合物(G)、および有機溶剤(H)を含んでなるインクジェット記録用インク組成物において、樹脂型分散剤(F)が、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)のヒドロキシル基と、ジイソシアネート(B)のイソシアネート基と、を反応してなる、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(E)のイソシアネート基と、 少なくともポリアミン(C)を含むアミン化合物の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応させてなる樹脂型分散剤であるインクジェット記録用インク組成物。
【請求項2】
樹脂型分散剤(F)が、重量平均分子量1,000〜100,000 であり、かつ、アミン価1〜100mgKOH/gである請求項1記載のインク組成物。
【請求項3】
熱反応性化合物(G)が、メラミン化合物、ベンゾグアナミン化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール化合物、ベンゾオキサジン、ブロック化カルボン酸化合物、ブロック化イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、アクリレート系モノマー、又はシランカップリング剤からなる群から選ばれる化合物1種若しくは2種以上である、請求項1または2記載のインク組成物。
【請求項4】
更に、酸性官能基を有する色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、酸性官能基を有するアクリドン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種類以上の酸性官能基を有する誘導体を少なくとも一種を含む請求項1〜3いずれか記載のインク組成物。
【請求項5】
カラーフィルター基板用である請求項1〜4いずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか一項に記載のインクジェット記録用インク組成物による印刷層を担持するカラーフィルター基板。






【公開番号】特開2011−148910(P2011−148910A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11522(P2010−11522)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】