説明

インクジェット記録用シートの製造方法

【課題】光沢性、インク吸収性のいずれもが優れている上に、表面強度ならびにC型給紙傷に優れたインクジェット記録用シートの製造方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、少なくとも1層の顔料を主成分とするインク受容層を有するインクジェット記録用シートの製造方法において、インク受容層上に少なくともオキサゾリン基を含有するポリマーを含有する処理液を塗工することを特徴とするインクジェット記録用シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方式に適用する記録用シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性インクを微細なノズルから記録用シートに向かって噴出し、該シートの記録面上に画像を形成させるインクジェット記録方式は、記録時の騒音が少ないこと、フルカラー画像の形成が容易であること、高速記録が可能であること、および、他の印刷装置より記録コストが安価であることなどの理由により、端末プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、あるいは帳票印刷等で広く利用されている。
【0003】
インクジェット記録方式に適する記録用シートとしては、インク受容層を有するインクジェット記録用シートが広く使用されている。このインクジェット記録用シートにおいては、プリンタの急速な普及と、高精細・高速化と、さらにはデジタルカメラの登場とにより特性の高度化が要求されている。例えば、インク吸収性、銀塩方式の写真に匹敵する画質および光沢を有するインクジェット記録用シートが強く求められている。
【0004】
これを実現するために、インク受容層に微粒子を用いることにより高いインク吸収速度と光沢を得、且つインク受容層の塗膜のひび割れを制御することにより、ドットの真円性を再現する必要がある。
【0005】
特許文献1、2には、上記要求を満たすためのインクジェット記録用シートの製造方法が提案されている。インク受容層に平均一次粒子径20nm以下の無機顔料微粒子と水溶性樹脂にポリビニルアルコールを含んで構成されているインクジェット記録シートが提案されている。これは、ホウ砂又はホウ酸とポリビニルアルコールの架橋反応を利用して、該記録層が減率乾燥部になる前に塗料をゲル化させて、塗膜のひび割れを抑制しながら高い塗工量を付与することができる。
特許文献2には、支持体とインク記録層との間の支持体上に、ホウ酸またはホウ素化合物が支持体の一方の表面あたり0.1g/m2以上塗工されており、記録層中のポリビニルアルコールは下塗りのホウ酸またはホウ素化合物により架橋されて、該記録層が減率乾燥部になる前に塗料がゲル化して、塗膜のひび割れを抑制している。
また、特許文献3には、まず、支持体上に微粒子および水溶性樹脂を含む下塗り形成用塗液を塗工して下塗り層を形成し、その下塗り層上に、ホウ砂を1.4質量%以下の濃度で含む架橋剤含有塗液を塗工する。そして、塗工した架橋剤含有塗液が乾燥しないうちに、その上に、微粒子および水溶性樹脂を含むインク受容層形成用塗液を塗工してインク受容層を形成する。この方法によれば、架橋剤含有塗液中のホウ砂によって下塗り層およびインク吸収層の水溶性樹脂を架橋して塗膜強度を高くできる。その結果、下塗り層およびインク受容層を厚くでき、インク保持量を多くできるため、画質を高くできる。しかも、微粒子を含む下塗り層によりインク吸収性を高めることもできる。
【0006】
さらに高い光沢性を付与する方法として、インク受容層の表層がキャスト加工されたインクジェット記録用シートが提案されている(例えば、特許文献4参照。)
【0007】
このようにして得られたインクジェット記録用シートは、高い光沢性と平滑性を有する点で優れるが、その光沢性や平滑性が高いが故に、断裁、印刷、包装等の2次加工時の取り扱いの際に、インク受容層の表面に傷が発生し、光沢性や平滑性が損なわれたり、場合によっては、画質の低下に繋がることもある。
【0008】
近年、一般家庭ユーザへの普及に伴い、狭い室内への設置を容易にするため、プリンタ設置に必要な面積を狭くすることが求められており、その解決策のひとつとして、記録用シートをプリンタ下部の給紙トレイに印刷面を下向きにセットし、プリンタ内部で記録体を回転させて印刷面を上向きにしてから印刷する給紙方法を採用するインクジェットプリンタが増加している。この給紙方法は、記録体がプリンタ内部で回転する様子をアルファベットの「C」の字に例えてC型給紙等と呼ばれることがあり、従来のプリンタ背面からの給紙方法(C型給紙に対して、こちらはJ型給紙等と呼称される。)と区別されている。
C型給紙では、記録用シートをプリンタ内部の狭い給紙経路内で回転させる際、インク受容層の表面が当たり、傷が発生する現象(以下、C型給紙傷ともいう)が生じやすい。
【0009】
特許文献1、2、3、4に記載の製造方法で製造されたインクジェット記録用シートは、光沢、画質、インク吸収性に優れるものの、断裁、印刷、包装等の2次加工時の取り扱いの際に、インク受容層の表面に傷が発生しやすく、また、C型給紙傷が発生しやすかった。
【0010】
一方、フィルムなどのコーティングの架橋・密着性の向上を図る目的でオキサゾリン基含有ポリマーが利用されている。オキサゾリン基含有ポリマーを用いた技術としては、特許文献5に、インク受理層中のオキサゾリン基含有ポリマーが、インク受理層と繊維基布中の繊維との密着性とインク受理層の被膜強度の向上により、繊維基布内の繊維を互いに接着して、基布の強度を向上させることが出来るとの提案があり、また、特許文献6には、ゼラチンなどを用いた膨潤タイプのインク受容層上に、親水性成分および疎水性成分の両者を有するポリマーから成るオーバーコート層が、オキサゾリン機能性ポリマーで硬化されていることにより、高湿の条件下でも、優れたインク乾燥時間を示すとの提案がある。前者は、支持体として紙ではなく繊維基布を用いたインクジェット記録体の有する技術課題を解決するものである。後者はゼラチンなどの樹脂を主成分とし、顔料などを実質的に含まない膨潤タイプのインクジェット記録体の有する技術課題を解決するものであり、いずれも、顔料を主成分とするインクジェット記録体の有する断裁、印刷、包装等の2次加工時の取り扱いの際のインク受容層の表面における傷の発生の制御や、C型給紙傷の発生の制御についての技術的課題には着目しておらず、またそのような課題を解決すする手段について開示するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−115308号公報
【特許文献2】特開2001−246832号公報
【特許文献3】特開2004−74576号公報
【特許文献4】特開2001−10220号公報
【特許文献5】特開2005−335119号公報
【特許文献6】特開2002−200844号公報
【特許文献7】特表2002−532310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、インクジェット記録用シートに関し、断裁、印刷、包装等の2次加工時の取り扱いの際に発生しやすい、インク受容層表面の傷を抑えるとともに、C型給紙傷の発生を抑え、更に、インクジェット記録適性を損なわないインクジェット記録用シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らが、前記課題を解決するために検討した結果、インク受容層表面の傷を抑えるために、インク受容層の表面強度向上を目的として、インク受容層中、或いは光沢層中の接着剤の増量等を検討したが、インクジェット記録用シートのインク吸収性が低下して、十分なインクジェット記録適性が得られなかった。そこで、鋭意研究を行なった結果、インク受容層上にオキサゾリン基含有ポリマーを含有する処理液を塗工することにより、オキサゾリン基含有ポリマーと水性アクリル樹脂または水性ウレタン樹脂との間に緩やかな架橋効果が発生し、インクジェット記録用シートのインク吸収性を損なわずに表面強度を向上することが出来ることを見出した。
そして、それらの知見に基づいて、以下のインクジェット記録用シートの製造方法を発明した。
[1]支持体上に、少なくとも1層の顔料を主成分とするインク受容層を有するインクジェット記録用シートの製造方法において、インク受容層上に少なくともオキサゾリン基を含有するポリマーを含有する処理液を塗工することを特徴とするインクジェット記録用シートの製造方法。
[2]オキサゾリン基を含有するポリマーを含有する処理液中、或いはインク受容層中に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を少なくとも1種以上含有する[1]記載のインクジェット記録用シートの製造方法。
[3]オキサゾリン基を含有するポリマーを含有する処理液を塗工、乾燥後、巻取り、35℃以上の状態で24時間以上保持することを特徴とするインクジェット記録用シートの製造方法。
[4]オキサゾリン基を含有するポリマーを含有する処理液にコロイダルシリカを含有する[1]〜[3]のいずれか一項に記載のインクジェット記録用シートの製造方法。
[5]処理液を塗工した後、キャスト仕上げを施す[4]記載のインクジェット記録用シートの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のインクジェット記録用シートの製造方法によれば、断裁、印刷、包装等の2次加工時の取り扱いの際に発生しやすい、インク受容層表面の傷を抑えるとともに、C型給紙傷の発生を抑え、更に、インクジェット記録適性を損なわないインクジェット記録用シートを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「支持体」
支持体としては、インクジェット記録体として公知の支持体が使用できる。例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙、箔紙、クラフト紙、バライタ紙、含浸紙、蒸着紙、ファンシーペーパー、板紙等の紙類、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル等のフィルム類、紙類の表面にポリオレフィン等の樹脂を被覆した樹脂被覆紙、金属フォイル、合成紙、不織布などのシート類が例示される。また、CDやDVDのレーベル面など、インクジェット記録が行われる面も含まれる。
中でも、透気性支持体は、インク受容層形成用塗液等を均一に塗工し易く、記録用シートとして取り扱いし易いため、好ましい。また、キャスト仕上げを施すインクジェット記録用シートを製造する場合は、透気性支持体を使用することが特に好ましく用いられる。一方、キャスト仕上げを施すことなく、写真調のインクジェット記録用シートにするためには、アート紙、コート紙、バライタ紙、印画紙原紙、合成紙、ポリオレフィン樹脂被覆紙を用いることが好ましい。中でも、合成紙、ポリエチレン樹脂被覆紙が好ましく、ポリエチレン樹脂被覆紙が特に好ましく用いられる。
【0016】
[透気性支持体]
透気性支持体としては、透気性を有するものであれば特に限定するものではなく、一般の塗工紙等に使用される酸性紙、あるいは中性紙等の透気性支持体が適宜使用される。透気性支持体を構成する木材パルプとしては、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)等の機械パルプ、或いは楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材パルプ、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。また、パルプとして、塩素、二酸化塩素、酸素、オゾン、過酸化水素、次亜塩素酸等各種漂白法を組み合わせて漂白したパルプを使用すると、高白色度を得るために好ましい。中でも、ECF漂白やTCF漂白等された塩素フリーパルプは、インクジェット記録用シートを長期間保存しても黄変を起こし難いので好ましい。これらのパルプは、単独でも、二種以上併用しても良い。
【0017】
これらのパルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。パルプの叩解度(フリーネス)は特に限定しないが、一般に250〜550ml(CSF:JIS−P−8121)程度である。平滑性を高めるためには叩解度を進めるほうが望ましいが、インクジェット記録用シートに記録した場合にインク中の水分によって起こる用紙のボコツキや記録画像のにじみは、叩解を進めないほうが良好な結果を得る場合が多い。従ってフリーネスは300〜500ml程度が好ましい。
【0018】
透気性支持体には、抄紙の際に、助剤としてサイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等を添加することができる。さらに、抄紙機のサイズプレス工程において、デンプン、ポリビニルアルコール類、カチオン樹脂等を塗工・含浸させ、表面強度、サイズ度等を調整できる。ステキヒトサイズ度(100g/m2の紙として)は1〜300秒程度が好ましい。サイズ度が低いと、塗工時に皺が発生する等操業上問題となる場合があり、高いとインク吸収性が低下したり、印字後のカールやコックリングが著しくなる場合がある。より好ましいサイズ度の範囲は4〜200秒である。透気性支持体の坪量は、特に限定されないが、20〜400g/m2程度、好ましくは60〜350g/m2である。坪量が小さすぎると、インクジェット記録を行った際に、カールやコックリングが著しくなったり、不透明度が得られ難い傾向にある。また、大きすぎると、光沢性が劣る傾向にある。
【0019】
なお、キャスト仕上げを行なう場合、透気性支持体の透気性は、王研式透気度が10〜1000秒/100cc程度が好ましく、より好ましくは10〜800秒/100cc程度、特に好ましくは10〜500秒/100ccである。因みに、透気度が大きくなると、光沢性が劣る傾向にある。これは、湿潤状態の最表層を、加熱された鏡面ドラムを用いて乾燥するため、塗液の水分は透気性支持体を通して蒸発されることになるが、透気度が高くなると乾燥が不十分であったり、必要以上に加熱されるため、光沢性が劣る結果になると考えられる。なお、更に透気度が大きくなるとキャスト仕上げする際の操業性が劣ってくる。一方、10秒/100ccに満たないような透気性支持体の場合もまた、光沢性が低下する傾向にある。これは、インク受容層を形成する際に、塗液中の接着剤の多くが透気性支持体に浸透してしまい、インク受容層中の接着剤量が減ってしまい、この結果、光沢性が劣る傾向になると考えられる。
【0020】
抄紙装置としては特に限定するものではなく、公知の長網抄紙機、円筒抄紙機、ヤンキー抄紙機、ツインワイヤーフォーマー、傾斜ワイヤーフォーナーなど、ドライヤーとしては、ヤンキードライヤー、多筒式ドライヤーなどが各種公知の抄紙機が使用できる。カレンダー処理など、公知の処理も可能である。
【0021】
[ポリエチレン樹脂被覆紙]
キャスト仕上げを施すことなく、写真調のインクジェット記録用シートにするためには、平滑な面と、光沢性を有するポリオレフィン樹脂被覆紙の使用が好ましい。中でも、酸化チタンを練り込んだポリエチレン樹脂被覆紙、所謂RC紙からなる支持体は、仕上がった外観が写真印画紙と同等であるため、特に好ましく用いられる。また、ゼラチンが塗工された支持体も好ましい。
【0022】
ポリエチレン樹脂被覆紙では、ポリエチレン層の厚みは3〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。ポリエチレン層の厚みが3μm未満であると、樹脂被覆時にポリエチレンの穴等の欠陥が多くなりやすく、厚みのコントロールが困難になる場合が多く、平滑性も得にくくなる。一方、50μmを超えると、コストが増加する割には、得られる効果が小さく、不経済である。
【0023】
「インク受容層」
本発明は、インク受容層の表面強度を高めるために、上記支持体上にインク受容層を形成した後に、オキサゾリン基含有ポリマーを含有した処理液を塗工させるものである。
【0024】
[顔料]
インク受容層形成用塗液に含まれる顔料としては、例えば、非晶質シリカ(湿式法および乾式法によって製造される合成非晶質シリカ、およびアルミナ等によるカチオン変性シリカを含む)、非晶質シリカとカチオン性化合物を混合し凝集させることによって得られる非晶質シリカ−カチオン性化合物凝集体粒子、シランカップリング剤によって表面処理された非晶質シリカ、カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化スズ、二酸化チタン、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミノシリケート、アルミナ、アルミナ水和物、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、スメクタイト、ゼオライト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメントなどが挙げられる。
これらの中でも、得られるインクジェット記録用シートの光沢、インク吸収性のバランスが取り易いことから、非晶質シリカ、アルミノシリケート、アルミナ、アルミナ水和物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。インク受容層形成用塗液に含まれる微粒子においても、微粒子の平均二次粒子径は、特に光沢の観点から、0.7μm以下であることが好ましい。こここでいう平均二次粒子径は、顔料の水分散液を、濃度1%に調整し、25℃の条件で、動的光散乱法により求めた数平均二次粒子径である。本発明では、測定装置は、濃厚系粒径アナライザー FPAR−1000(大塚電子株式会社製)を使用した。
【0025】
本発明のインクジェット記録用シートにおいてインク受容層は顔料を主成分とするものであり、顔料含有量は、インク受容層の全固形分質量に対して、30〜95質量%が好ましく、40〜90質量%がより好ましい。
【0026】
[接着剤]
インク受容層に使用する接着剤は、上記顔料を基材上に保持するために配合される。インクジェット記録用シート用の公知の接着剤を使用することができ、水分散系接着剤、水溶性接着剤を単独、併用とも可能である。水分散系接着剤としては、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、スチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等、その他一般に塗工紙分野で公知公用の各種接着剤が挙げられる。この中で、後述するオキサゾリン基含有ポリマーを含有した処理液との架橋効果によって得られるインク受容層の表面強度の面ならびに得られる塗膜のインク吸収性および透明性の面で、水性アクリル樹脂および水性ウレタン樹脂が特に好ましい。これらの水分散系接着剤は、単独で用いても、または2種以上の併用であっても良い。
【0027】
水溶性接着剤としては、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、カルボキシルメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体等、その他一般に塗工紙分野で公知公用の各種接着剤が挙げられる。この中でも得られる塗膜の表面強度の点からポリビニルアルコールを用いることが好ましい。インク受容層に用いられるポリビニルアルコールは、そのケン化度の相違により性状が異なり、目的に応じてそのケン化度を選択することが好ましい。ケン化度が95%以上、より好ましくは98%以上のポリビニルアルコールを使用すると、塗工層の強度が強くなるとともに、塗液調製時に泡立ちなどもおこらず、製造時の作業性が非常に良好である。また、ケン化度が75〜90%の部分ケン化ポリビニルアルコールを使用すると、塗工層の可撓性に優れ、その折り割れ防止に非常に効果的である。これらケン化度の異なるポリビニルアルコールは、その目的に応じて、それぞれ単独で用いても、併用して用いても良い。
【0028】
また、上記ポリビニルアルコールは、その重合度が1000〜5000であることが特に好ましい。重合度が1000未満であると、インク受容層の強度が弱いと共に、ひび割れが発生しやすく、かつ断裁時に紙粉が発生するおそれがあり、5000を超えると、十分なインク吸収性が得られにくいとともに、溶液粘度が高く塗液調整におけるハンドリング面が困難となるおそれがあり、好ましくない。
【0029】
インク受容層に媒染剤を配合する場合、接着剤としてはカチオン性若しくはノニオン性のものが塗工用組成物の安定性が良いため好ましい。接着剤の配合量は顔料100質量部に対し1〜200質量部、より好ましくは5〜100質量部の範囲で調節される。ここで接着剤の量が少ないと、インク受容層の表面強度が弱くなり、さらに、インク受容層上に形成される光沢層の表面が傷つきやすくなったり、粉落ちが発生する場合がある。逆に接着剤の量が多いと、インク吸収性が低下し、所望のインクジェット記録適性が得られなくなる場合がある。
【0030】
[媒染剤]
本発明では、インク耐水性及び定着性の向上を図るために、インク受容層形成用塗液に媒染剤が含有されるのが好ましい。媒染剤は、有機媒染剤と無機媒染剤が挙げられる。有機媒染剤及び無機媒染剤はそれぞれ単独種で使用しても良いし、有機媒染剤及び無機媒染剤を併用してもよい。
【0031】
有機媒染剤は、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が挙げられる。これら媒染剤は、色材受容層のインク吸収性良化の観点から、平均分子量が500〜500000の化合物が好ましい。無機媒染剤としては、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスロプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属の塩又は錯体が挙げられる。中でも、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、元素周期律表第IIIB族シリーズの金属化合物(塩又は錯体)が好ましい。
【0032】
媒染剤含有量は、インク受容層の全固形分質量に対して、1〜20質量%が好ましく、2〜18質量%がより好ましい。
【0033】
[架橋剤]
インク受容層のインク吸収性を高めるたせるためには、極力バインダー成分を抑えた方が好ましいが、バインダー成分が少ないと、インク受容層を形成するために塗液を塗工する際に、塗工層にひび割れを生じやすい。本発明のインク受容層はひび割れを有していてもよいが、そのひび割れが記録シートの品質を損なう場合は、例えば、接着剤との架橋性を有する化合物を用い、塗工層を乾燥初期に増粘又はゲル化させることで乾燥時の熱風による塗工層のひび割れを防ぐことができる。ポリビニルアルコールに対する架橋性を有する化合物としては、グリオキザールなどのアルデヒド系架橋剤、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ系架橋剤、ビスビニルスルホニルメチルエーテルなどのビニル系架橋剤、ホウ酸およびホウ砂などのホウ素含有化合物、グリシジル化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、クロム化合物、アルコキシアミノシランなどのシランカップリング剤等などが例示できる。中でも、ホウ素含有化合は、増粘またはゲル化が早く生じるので特に好ましい。
【0034】
ホウ素含有化合物としては、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことである。具体例としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。中でも、オルトホウ酸と四ホウ酸二ナトリウムが、塗液を適度に増粘させる効果があるために好ましく用いられる。ホウ素化合物の含有量は、ホウ素化合物及びポリビニルアルコールの重合度にもよるが、基材の片面に0.01〜2.0g/m2含有されることが好ましい。含有量が2.0g/m2以下であることにより、水溶性接着剤との架橋密度が高くなりすぎず、塗膜強度を良好なものにできる。一方、含有量が0.01g/m2以上であることにより、水溶性接着剤との架橋が強まり、塗液のゲル化を促進して塗膜がひび割れしにくいものとなる。
【0035】
[その他の成分]
また、インク受容層形成用塗液には、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤のいずれであってもよい。上記界面活性剤の中でも、インクジェットプリンタのインクとの親和性が高いことから、ノニオン系界面活性剤が好ましく、さらには、ノニオン系界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系、アルキルエーテル系界面活性剤が好ましい。
【0036】
さらに、インク受容層形成用塗液には、各種分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤、蛍光染料、有色顔料等の各種助剤が含まれていてもよい。
【0037】
[塗工方法]
インク受容層形成用塗液の塗工方法としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スライドビードコーター等が挙げられる。また、架橋剤を使用する場合は、(1)架橋剤を予め支持体表面に塗工・含浸させておき、インク受容層形成用塗液を塗工する、または、(2)インク受容層形成用塗液に架橋剤を配合しておき塗工する、または、(3)架橋剤を活性化する物質を支持体表面に塗工・含浸し、この上に、架橋剤を不活性な状態で配合したインク受容層形成用塗液を塗工する、または、(4)インク受容層形成用塗液を塗工後、架橋剤を塗工する等の方法により製造される。中でも、(2)架橋剤または(3)架橋剤を活性化する物質を予め塗工しておくことにより、増粘またはゲル化を均一に起こすことができるため好ましい。また、(3)架橋剤を活性化して増粘またはゲル化する方法は、インク受容層中に架橋剤が過剰に存在することを防げるため、塗工層が固く脆くなるおそれが少なく、折り割れ等に対する悪影響が少ないため、更に好ましい。
例えば、予め塗工しておく架橋剤を活性化する物質として、アルカリ性物質を用い、インク受容層の接着剤としてポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤としてホウ酸を使用する。塗液の状態では、ホウ酸は不活性な状態であり、架橋やゲル化は進まない。アルカリ性物質の塗工面にインク受容層用塗液を塗布すると、予め塗工したアルカリ性物質が溶解、浸透し、ホウ酸は架橋剤として活性化され、架橋やゲル化が進み、塗工層を乾燥することにより、ひび割れの無いインク受容層を形成することができる。
この方法の場合、架橋剤の量は塗工前に調整できるため、必要以上の架橋点によってインク受容層が求める以上に硬く脆くなることはなく、折り割れを防ぐことができると推察できる。なお、架橋剤を活性化する物質は、特に限定するものではないが、ホウ酸の場合、アルカリ性物質が最適である。アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のエチルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン類等が例示される。これらはすべて、不活性な架橋剤を活性化させる効果を持つが、保存性、安全性等の観点から、エタノールアミン類が最も好ましい。
【0038】
インク受容層形成用塗液の塗工量は、支持体が透気性支持体の場合には、インク受容層の塗工量が3〜25g/m2になる量であることが好ましく、非透気性支持体の場合には、10〜40g/m2になる量であることが好ましい。塗工量が前記下限値以上であれば、充分なインク吸収性および画質を確保することができ、前記上限値以下であれば、インク受容層のひび割れを抑制できる。また、塗工量が前記範囲であれば、銀塩写真に匹敵する画質を得ることができる。
【0039】
「オキサゾリン基含有ポリマーを含有した処理液」
本発明では、インク受容層の表面強度を高めるために、インク受容層上に、オキサゾリン基含有ポリマーを含有した処理液を塗工させるものである。
【0040】
オキサゾリン基含有ポリマーとしては、ポリマー主鎖にオキサゾリン基が含まれた水溶性またはエマルジョンで、例えば、水溶性樹脂であれば、エポクロスWS−300、エポクロスWS−700(共に、日本触媒社製)、エマルジョンであれば、エポクロスK2010E、エポクロスK2020E(共に、日本触媒社製)等が挙げられる。オキサゾリン基含有ポリマーの配合量はインク受容層中に含まれる水分散系接着剤100質量部に対し1〜50質量部、より好ましくは3〜30質量部の範囲で調節される。ここでオキサゾリン基含有ポリマーの量が少ないと、オキサゾリン基含有ポリマーとインク受容層中の水分散系接着剤である水性アクリル樹脂および水性ウレタン樹脂との架橋効果が十分に得られず、インク受容層の表面強度が弱くなり、表面が傷つきやすくなる。逆にオキサゾリン基含有ポリマーの量が多いと、インク吸収性が低下し、所望のインクジェット記録適性が得られなくなる場合がある。
【0041】
さらに、オキサゾリン基含有ポリマーを含有した処理液には、各種分散剤、増粘剤、界面活性剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤、蛍光染料、有色顔料等の各種助剤が含まれていてもよい。
【0042】
[塗工方法]
オキサゾリン基含有ポリマーを含有した処理液の塗工方法としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スライドビードコーター等が挙げられる。
好ましくは、オキサゾリン基を含有するポリマーを含有する処理液を塗工、乾燥後、巻取り、35℃以上の状態で24時間以上保持する。
【0043】
「光沢層」
本発明では、光沢を高めるために、オキサゾリン基含有ポリマーを含有した処理液に、微粒子ならびに接着剤を含有してもよい。この場合、オキサゾリン基含有ポリマーを含有した処理液に、光沢発現機能が付与されるため、光沢層と呼ぶ。
【0044】
[微粒子]
光沢層中の微粒子としては特に限定されないが、コロイダルシリカ、気相法シリカ、アルミナ酸化物は、優れた光沢が得られるので好ましい。
光沢層は、光沢発現を主目的とするため、インク定着機能は必ずしも必要とするものではないが、カチオン性の微粒子を選択することにより、定着性を高めることができる。カチオン性の微粒子としては、カチオン変性されたコロイダルシリカや気相法シリカ、またはアルミナ酸化物等が好ましい。アルミナ酸化物の中では、気相法(フュームド)アルミナ酸化物がより好ましい。
【0045】
微粒子の形態は、コロイド状であることが好ましい。単分散体であっても凝集粒子分散体であってもよいが、高印字濃度、高光沢を得るために単分散体、もしくは凝集粒子分散体のなかでも粒子径の小さいものが主に好ましく用いられる。具体的には、平均一次粒子径3〜100nm、平均(二次)粒子径700nm以下の粒子から選択することが好ましい。なお、ここでいう平均(二次)粒子径は、顔料の水分散液を、濃度1%に調整し、25℃の条件で、動的光散乱法により求めた数平均二次粒子径である。
【0046】
[接着剤]
光沢層は、インク吸収性を阻害しない限り、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂などの前記水分散性接着剤やゼラチン、セルロース類、デンプン、ポリビニルアルコールなどの前記水溶性接着剤を適宜含有してもよい。これらのうち、オキサゾリン基含有ポリマーとの架橋効果によって得られるインク受容層の表面強度の面ならびに得られる塗膜のインク吸収性および透明性の面で、水性アクリル樹脂および水性ウレタン樹脂が特に好ましい。接着剤の配合量は微粒子100質量部に対し1〜50質量部、より好ましくは5〜40質量部の範囲で調節される。
【0047】
また、必要に応じて、前記媒染剤を含有することもできる。さらに、各種分散剤、増粘剤、界面活性剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤、蛍光染料、有色顔料等の各種助剤が含まれていてもよい。
【0048】
光沢層の形成方法としては、例えば、インク受容層上に、微粒子、接着剤、オキサゾリン基含有ポリマーとを含有する光沢層形成用塗液を塗工する、或いはインク受容層形成用塗液と光沢層形成用塗液を同時多層塗工するとよい。
また、透気性支持体を用いている場合、光沢層形成用塗液が湿潤状態にある間に、加熱された鏡面ドラムに圧着、乾燥して得る、所謂キャスト法により仕上げることもできる。この場合、鏡面ドラムから剥離しやすくするために、光沢層形成用塗液中に各種離型剤を適宜添加してもよい。離型剤の添加量は微粒子100質量部に対して0.5〜10質量部程度が好ましい。
なお、支持体が非透気性支持体や低透気性支持体の場合、光沢層形成用塗液を塗工後すぐ、或いは塗工しながら鏡面ドラムに押し当て(例えば、WO03/039881号公報に示されるようにニップする)、後工程の乾燥装置で乾燥することもできる。
【0049】
光沢層形成用塗液の固形分塗工量は、0.1〜10g/m2の範囲が好ましく、0.2〜5g/m2がより好ましく、0.3〜3g/m2がさらに好ましい。塗工量が少なすぎると、塗膜が薄くなり光による干渉色が生じやすく、一方、塗工量が多すぎると、インク吸収速度が著しく低下し、また、透明性が低下するおそれがある。
【0050】
[その他の塗工層]
本発明は、透気性支持体のカールや搬送性などを改良する目的で裏面層を設けることが可能である。また、写真の風合いを出すために裏面層にポリエチレン被覆層を設けても良い。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は勿論これらに限定されるものではない。また、例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%のことである。
【0052】
(支持体A)
木材パルプ(LBKP:フリーネス=450mlCSF,Ze−E−P−Dの4段シーケンスで製造した塩素フリーパルプ)100部に、填料(炭酸カルシウムとタルクを7:3で混合したもの)を7部、市販サイズ剤0.04部、硫酸バンド0.45部、澱粉1.00部、歩留向上剤少々よりなる製紙材料を使用し、長網抄紙機にて坪量175g/m2の上質紙を得た後、ドライヤー、サイズプレス、100kg/cmの線圧でスーパーカレンダー処理を施し、紙支持体とした。上記サイズプレス工程にはカルボキシル変性ポリビニルアルコールとデンプン(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)を4:1で混合溶解させたもの6.5%、外添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(商品名:SPK−287、荒川化学工業社製)0.5%を含むサイズプレス液を使用した。得られた紙支持体の灰分は5%、厚さは200μmであった。
【0053】
(支持体B)
上記支持体Aの両面にコロナ放電処理を施した後、バンバリーミキサーで混合分散した下記ポリオレフィン樹脂組成物1を、支持体Aのフェルト面側に、塗工量25g/m2となるようにT型ダイを有する溶融押出し機(溶融温度320℃)により塗工した。また、下記ポリオレフィン樹脂組成物2を、支持体Aのワイヤー側に、塗工量20g/m2となるように上記溶融押出し機で塗工した。その後、フェルト面側を鏡面のクーリングロール、ワイヤー面側を粗面のクーリングロールで冷却固化して、平滑度(王研式、J.TAPPI No.5)が6000秒、不透明度(JIS P8138)が93%の樹脂被覆した支持体Bを得た。
【0054】
[ポリオレフィン樹脂組成物1]
直鎖型低密度ポリエチレン(密度0.926g/cm3、メルトインデックス20g/10分)35部、低密度ポリエチレン(密度0.919g/cm3、メルトインデックス2g/10分)50部、アナターゼ型二酸化チタン(商品名:A−220、石原産業社製)15部、ステアリン酸亜鉛0.1部、酸化防止剤(商品名:Irganox 1010、チバスペシャルティケミカルズ社製)0.03部、群青(商品名:青口群青NO.2000、第一化成社製)0.09部、蛍光増白剤(商品名:UVITEX OB、チバスペシャルティケミカルズ社製)0.3部を混合して、ポリオレフィン樹脂組成物1を得た。
【0055】
[ポリオレフィン樹脂組成物2]
高密度ポリエチレン(密度0.954g/cm3、メルトインデックス20g/10分)65部、低密度ポリエチレン(密度0.919g/cm3、メルトインデックス2g/10分)35部を溶融混合して、ポリオレフィン樹脂組成物2を得た。
【0056】
(シリカゾルA)
市販ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:シャロールDC902P、第一工業製薬社製)10部に、市販気相法シリカ(日本アエロジル社製、商品名:アエロジルA300、比表面積300m2/g)100部を添加し、サンドグラインダーにより分散した後、圧力式ホモジナイザーで更に分散し、平均粒子径が0.08μmになるまでサンドグラインダーと圧力式ホモジナイザーの分散操作を繰り返し、18%の水分散液を調製した。
【0057】
(シリカゾルB)
市販ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:ユニセンスCP−103、センカ社製)10部に、市販沈降法シリカ(トクヤマ社製、商品名:ファインシールX45、粒子径4μm)100部を添加し、ホモミキサーで分散し、18%の水分散液を調製した。
【0058】
比較例1
支持体A上に、下記アルカリ水溶液Aを、メイヤーバーを用いて塗工量が1.0g/m2となるように塗工、乾燥後、下記インク受容層形成用塗液Aをダイコーターで塗工量が15g/m2となるように塗工、乾燥してインクジェット記録用シート1を得た。
(アルカリ水溶液A)
市販ジエタノールアミン(商品名:ジエタノールアミン80、日本触媒社製)100部を水で希釈後、市販界面活性剤(商品名:オルフィンE1004、日信化学工業社製、)0.1部を添加して12%のアルカリ水溶液Aを調製した。
(インク受容層形成用塗液Aの形成)
シリカゾルA100部に、市販ほう酸(商品名:ほう酸、関東化学社製)を3部、市販ポリビニルアルコール(商品名:PVA−135、重合度:3500、ケン化度:98%、クラレ社製)18部、市販ウレタン樹脂(商品名:スーパーフレックス620、第一工業製薬社製)10部を混合し、インク受容層形成用塗液Aとした。
【0059】
実施例1
比較例1において、得られたインクジェット記録用シート1のインク受容層上に下記光沢層形成用塗液Aを塗工した。そして、湿潤状態にあるうちに、塗工面を、表面温度100℃としたクロム鍍金仕上げの鏡面ドラムに線圧2000N/cmで圧接して光沢層を形成、乾燥してインクジェット記録用シート2を得た。光沢層の厚みは2μmであった。
(光沢層形成用塗液Aの形成)
市販コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスOL、日産化学工業社製)100部に市販アクリル樹脂(商品名:アクアブリッド903、ダイセル化学工業社製)を15部、離型剤(商品名:ノプコートPEM−17、サンノプコ社製)を3部加えて混合した。さらに、オキサゾリン基含有ポリマーA(日本触媒社製、商品名:エポクロスWS300、オキサゾリン基量7.7mmol/g,solid)を1.5部加えて、5%の光沢層形成用塗液Aを調製した。
【0060】
実施例2
実施例1において、光沢層形成用塗液Aで用いたオキサゾリン基含有ポリマーAの添加量を3部とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シート3を得た。
【0061】
実施例3
実施例1において、光沢層形成用塗液Aで用いたオキサゾリン基含有ポリマーAの代わりに、オキサゾリン基含有ポリマーB(日本触媒社製、商品名:エポクロスWS700、オキサゾリン基量4.5mmol/g,solid)とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シート4を得た。
【0062】
実施例4
実施例1において、光沢層形成用塗液Aで用いたアクリル樹脂の代わりに、市販ウレタン樹脂(商品名:ハイドランAP−40、DIC社製)とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シート5を得た。
【0063】
実施例5
比較例1で得られたインクジェット記録用シート1のインク受容層上に、下記オキサゾリン基含有ポリマー水溶液Aを、メイヤーバーを用いて塗工量が0.1g/m2となるように塗工、乾燥してインクジェット記録用シート6を得た。
(オキサゾリン基含有ポリマー水溶液A)
オキサゾリン基含有ポリマーA(日本触媒社製、商品名:エポクロスWS300、オキサゾリン基量7.7mmol/g,solid)100部を水で希釈後、市販界面活性剤(商品名:オルフィンE1004、日信化学工業社製、)0.1部を添加して1%のオキサゾリン基含有ポリマー水溶液Aを調製した。
【0064】
比較例2
比較例1において、インク受容層形成用塗液Aの代わりに、下記インク受容層形成用塗液Bを、メイヤーバーを用いて塗工量が7g/m2となるように塗工、乾燥してインクジェット記録用シート7を得た。
(インク受容層形成用塗液Bの形成)
シリカゾルB100部に、シリル変性ポリビニルアルコール(商品名:R−1130、クラレ社製)20部、市販アクリル樹脂(商品名:ビニブラン2641、日信化学工業社製)10部を混合し、インク受容層形成用塗液Bとした。
【0065】
実施例6
比較例2で得られたインクジェット記録用シート7のインク受容層上に、実施例5と同様にオキサゾリン基含有ポリマー水溶液Aを、メイヤーバーを用いて塗工量が0.1g/m2となるように塗工、乾燥してインクジェット記録用シート8を得た。
【0066】
実施例7
実施例5において、支持体Aの代わりに、支持体Bとし、インク受容層形成用塗液Aの塗工量を15gから20gとした以外は、実施例5と同様にしてインクジェット記録用シート9を得た。
【0067】
実施例8
実施例1において、得られたインクジェット記録用シート2を40℃に設定した乾燥機に入れて、24時間保持し、インクジェット記録用シート10を得た。
【0068】
比較例3
実施例1において、光沢層形成用塗液Aで用いたオキサゾリン基含有ポリマーAを添加せずに、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シート11を得た。
【0069】
比較例4
実施例4において、光沢層形成用塗液Aで用いたオキサゾリン基含有ポリマーA添加せずに、実施例4と同様にしてインクジェット記録用シート12を得た。
【0070】
比較例5
実施例1において、光沢層形成用塗液Aで用いた市販アクリル樹脂の添加量を15部から50部に変更し、更にオキサゾリン基含有ポリマーAを添加せずに、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シート13を得た。
【0071】
(評価方法)
上述した実施例および比較例のインクジェット記録用シートにおける表面強度および75度表面光沢度、インク吸収性、C型給紙傷を以下のように評価した。その結果を表1に示す。
【0072】
(表面強度)
摩擦試験機(スガ試験機社製)に、市販黒画用紙(日清紡社製)、荷重200gの重りをセットし、インクジェット記録用シートの表面を20往復擦って、表面傷の程度を目視により評価した。
5:表面傷が全く見られず、良好な状態。
4:表面傷は若干見えるが、実用上問題ないレベル。
3:表面傷がやや多いが、殆ど問題にはならないレベル。
2:表面傷が全体的に見え、実用上問題のあるレベル。
1:表面傷が全体的に見え、脱落した塗工層が黒画用紙に付着する。実用不可。
【0073】
(75度表面光沢度)
JIS−P8142に記載の方法により、インクジェット記録用シートのインク受容層表面の75度光沢度を測定した。
【0074】
(インク吸収性)
インクジェットプリンターPIXUS iP4300(キヤノン社製)により、グリーンベタ印字を行い、ベタ印字部のインク吸収の程度を目視により評価した。印字モードは、光沢紙、きれいモード、インクカートリッジとしては、キヤノン社製BCI−7Bk、BCI−7C、BCI−7M、BCI−7YおよびBCI−3eBkを用いた。
5:ベタ印字部にムラが見られず、良好な状態。
4:ベタ印字部に若干ムラが見られるが、実用上問題ないレベル。
3:ベタ印字部にムラがやや多いが、殆ど問題にはならないレベル。
2:ベタ印字部にムラが多く、実用上問題のあるレベル。
1:ベタ印字部にムラが非常に多く見られ、実用上問題のあるレベル。
【0075】
(C型給紙傷)
インクジェット記録用シートをインクジェットプリンターPIXUS iP4300下部の給紙トレイに印刷面を下向きにセットし、プリンター内部で記録体を回転させて印刷面を上向きにしてから印刷する給紙方法(C型給紙)により、記録体全面に、ブラックベタ印字を行った後、印字部表面の傷を目視で観察した。
5:表面傷が全く見られず、良好な状態。
4:表面傷は若干見えるが、実用上問題ないレベル。
3:表面傷がやや多いが、殆ど問題にはならないレベル。
2:表面傷が多く、実用上問題のあるレベル。
1:表面傷が非常に多く、実用上問題のあるレベル。
【0076】
【表1】

【0077】
表1の結果からも明らかなように、本発明によって、得られたインクジェット記録用シートは、光沢性、インク吸収性が良好な上に、表面強度ならびにC型給紙傷が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、インク受容層上にオキサゾリン基含有ポリマーを含有する処理液を塗工することにより、オキサゾリン基含有ポリマーと水性アクリル樹脂または水性ウレタン樹脂との間に緩やかな架橋効果が発生し、インクジェット記録用シートの光沢性、インク吸収性が良好な上に、表面強度ならびにC型給紙傷が優れたインクジェット記録用シートの製造方法を提供するものであり、本発明により製造されたインクジェット記録用シートは、断裁、印刷、包装等の2次加工時の取り扱いの際に発生しやすい、インク受容層表面の傷を抑えるとともに、C型給紙傷の発生を抑えることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくとも1層の顔料を主成分とするインク受容層を有するインクジェット記録用シートの製造方法において、インク受容層上に少なくともオキサゾリン基を含有するポリマーを含有する処理液を塗工することを特徴とするインクジェット記録用シートの製造方法。
【請求項2】
オキサゾリン基を含有するポリマーを含有する処理液中、或いはインク受容層中に、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂を少なくとも1種以上含有する請求項1記載のインクジェット記録用シートの製造方法。
【請求項3】
オキサゾリン基を含有するポリマーを含有する処理液を塗工、乾燥後、巻取り、35℃以上の状態で24時間以上保持することを特徴とするインクジェット記録用シートの製造方法。
【請求項4】
オキサゾリン基を含有するポリマーを含有する処理液にコロイダルシリカを含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録用シートの製造方法。
【請求項5】
処理液を塗工した後、キャスト仕上げを施す請求項4記載のインクジェット記録用シートの製造方法。

【公開番号】特開2012−126085(P2012−126085A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281652(P2010−281652)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】