説明

インクジェット記録用中間転写無端ベルト及び記録装置

【課題】本発明によれば、剛性及び離型性に優れ、表面平滑性の優れた画像が形成されるインクジェット記録用中間転写ベルト、及び、これを用いた記録装置を提供することができる。
【解決手段】少なくとも、ポリイミド樹脂基材100と、ポリイミド樹脂基材100の外周面に形成された弾性層102と、弾性層102の外周面に形成された表面離型層104とを有するインクジェット記録用中間転写無端ベルト12である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用中間転写無端ベルト及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを利用した画像やデータ等を記録の一つとして、インクジェット記録方式がある。インクジェット記録方式の原理は、ノズル、スリット、或いは多孔質フィルム等から液体或いは溶融固体インクを吐出し、紙、布、フィルム等に記録を行うものである。インクを吐出する方法については、静電誘引力を利用してインクを吐出させる、いわゆる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用してインクを吐出させる、いわゆるドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、高熱により気泡を形成、成長させることにより生じる圧力を利用してインクを吐出させる、いわゆる熱インクジェット方式等、各種の方式が提案されており、これらの方式により、極めて高精細の画像やデータの記録物を得ることができる。
【0003】
このインクジェット記録方式も含め、インクを利用した記録方式では、浸透媒体や非浸透媒体などの多様な記録媒体に対し高画質で記録を行うために、中間転写体に記録した後、記録媒体に転写する方式が提案されている。また、そのような方式において用いられる中間転写体としては、様々な材料の中間転写ベルトが開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、膨潤可能でかつ液滴の粘度を上昇させ剥離可能な粉末の層を中間転写体上に形成し、その上にインクを噴射した後、記録媒体に転写する方式が提案されている。また中間転写体としては、シリコーンゴム等を用いた中間転写ベルトが開示されている。
【0005】
特許文献2には、中間転写体表面にケミカルセット剤を塗布し、その上にインクを噴射した後、記録媒体に転写し、未使用のケミカルセット剤を取り除く方式が提案されている。また中間転写体としては、ポリエチレンテレフタレート等を用いた中間転写ベルトが開示されている。
【0006】
特許文献3には、液滴により溶解膨潤可能でかつ液滴の粘度を上昇させる材料を中間転写体上に予め形成し、その上にインクを噴射した後、記録媒体に転写し、転写後に中間転写体上に残存する材料を全て付着除去する方式が提案されている。また中間転写体としては、フッ素系樹脂で構成される中間転写ベルトが開示されている。
【0007】
特許文献4には、中間転写体表面にインク受容性粒子層を形成し、さらにインクを付与した後、記録媒体に転写する方式が提案されている。また中間転写体としては、ポリイミド等を用いた中間転写ベルトが開示されている。
【0008】
これらの中間転写ベルトは、インクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録用中間転写ベルトであり、電子写真方式の画像形成装置に用いられる中間転写ベルトとは本質的に用途及び機能が異なることから、両者は異なる設計思想に基づいて作製される。具体的には、電子写真方式の画像形成装置では、感光体等に形成されたトナー像が、まず中間転写ベルトに転写され、さらに記録媒体等に転写されるものである。一方、インクジェット記録装置においては、インク画像が、直接中間転写ベルトに形成され、その後に記録媒体等に転写される点で異なる。
【特許文献1】特開平11−188858号公報
【特許文献2】特開2000−158636号公報
【特許文献3】特開2001−010224号公報
【特許文献4】特開2006−347085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、剛性及び離型性に優れ、表面平滑性の優れた画像が形成されるインクジェット記録用中間転写ベルト、及び、これを用いた記録装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
少なくとも、
ポリイミド樹脂基材と、
前記ポリイミド樹脂基材の外周面上に形成された弾性層と、
前記弾性層の外周面上に形成された表面離型層と、を有するインクジェット記録用中間転写無端ベルトである。
【0011】
請求項2に係る発明は、
前記表面離型層の外周面に対するインクの接触角は、20度以上80度以下である請求項1に記載のインクジェット記録用中間転写無端ベルトである。
【0012】
請求項3に係る発明は、
ベルト全体の体積抵抗率は、1011Ω・cm以上1013Ω・cm以下である請求項1又は2に記載のインクジェット記録用中間転写無端ベルトである。
【0013】
請求項4に係る発明は、
前記弾性層の膜厚は、5μm以上500μm以下である請求項1から3までのいずれか1項に記載のインクジェット記録用中間転写無端ベルトである。
【0014】
請求項5に係る発明は、
表面硬度は、30度以上90度以下である請求項1から4までのいずれか1項に記載のインクジェット記録用中間転写無端ベルトである。
【0015】
請求項6に係る発明は、
請求項1から5までのいずれか1項に記載のインクジェット記録用中間転写無端ベルトと、
インクを受容するインク受容層を前記インクジェット記録用中間転写無端ベルト表面上に形成するインク受容層形成手段と、
前記インク受容層にインクを吐出するインク吐出手段と、
前記インクが吐出された前記インク受容層を前記インクジェット記録用中間転写無端ベルトから記録媒体に転写する転写手段と、を有する記録装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、剛性及び離型性に優れ、表面平滑性の優れた画像が形成されるといった効果を奏する。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、より離型性に優れ、中間転写体外周面のインク汚れが抑制されるといった効果を奏する。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、インク受容層を静電的に中間転写体外周面へ形成できるといった効果を奏する。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、より表面平滑性の優れた画像が形成されるといった効果を奏する。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、表面平滑性の優れた画像が形成されるといった効果を奏する。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、画像ずれ及び画像欠陥が抑制され、表面平滑性の優れた画像が形成されるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同じ機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るインクジェット記録用中間転写無端ベルト(以下、「中間転写ベルト」と称する場合がある)の断面図である。
【0024】
第1実施形態に係る中間転写ベルト12は、図1に示すように、ポリイミド樹脂を含む基材100と、基材100の外周面に形成された弾性層102と、弾性層102の外周面に形成された表面離型層104と、を有する無端状のベルトである。
【0025】
中間転写ベルト12が上記構成であることにより、剛性及び離型性に優れ、表面平滑性の優れた画像が形成されるといった効果を奏する。
【0026】
具体的には、基材100がポリイミド樹脂を含むことにより、中間転写ベルト12の剛性が得られる。剛性の高い中間転写ベルト12を用いると、剛性の低い中間転写ベルト(例えば、フッ素系材料のみにより構成された中間転写ベルト)を用いた場合に比べ、例えば、インクの吐出時に起因する中間転写ベルト12の振動、うねり、たわみ、浮き等が抑制され、中間転写ベルト12とインクジェット記録ヘッドの拒離の変化が抑制される。そのため、前記振動等に伴う画像表面の凹凸や画像のずれが抑制され、画像の表面平滑性及び画質が向上する。
【0027】
またポリイミド樹脂は耐熱性を有するため、他の層にも耐熱性を有する材料を用いることにより、中間転写ベルト12全体の耐熱性が得られる。耐熱性を有する中間転写ベルト12は、中間転写ベルト12上に形成された画像を記録媒体に転写する転写工程において同時に加熱による画像定着を行う形態においても、劣化しにくいという利点がある。
【0028】
さらに弾性層102が有する弾性により、転写時において記録媒体の凹凸に伴う圧力に応じて中間転写ベルト12の表面形状が変形するため、表面平滑性の優れた画像が形成される。また中間転写ベルト12表面のクリーニングを行う際にも、中間転写ベルト12の表面に接触するクリーニング部材の接触圧力に応じて中間転写ベルト12の表面形状が変形する。そのため、中間転写ベルト12上に残留したインク等がクリーニング装置により除去され易くなると共に、クリーニング装置のクリーニング部材及び中間転写ベルト12の表面の摩耗が抑制される。
【0029】
さらに、中間転写ベルト12の最外層として表面離型層104が形成されていることにより、中間転写ベルト12の表面離型性が付与され、転写工程において中間転写ベルト12の外周面に形成された画像(画像が形成されたインク受容層)が中間転写ベルト12の表面に残留することなく記録媒体に転写される。そのため、画像欠陥が抑制され、転写後の画像の表面、すなわち、転写前において中間転写ベルト12の外周面に接していた面の表面平滑性が得られる。
【0030】
また、表面離型層104の表面離型性により、中間転写ベルト12の外周面にインク等の汚染物質が付着しても、クリーニング装置等により汚染物質が除去されやすくなる。
【0031】
まず基材100について説明する。
基材100は、上記の通り、ポリイミド樹脂を含む。
ポリイミド樹脂としては、カルボン酸とジアミン成分であれば制限されないが、特に芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とを有機溶媒中で反応させて得られるものが好ましく用いられる。
【0032】
前記芳香族テトラカルボン酸成分としては、ピロメリット酸、ナフタレン−1,4,5,8テトラカルボン酸、2,2’,3,3’ビフェニルテトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、2,3,5,6−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−アゾベンゼンテトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニルメタン)、ビス(3,4ジカルボキシフェニルプロパン)、ビス(3,4ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
前記芳香族ジアミン成分としては特に制限なく、m−フェニルジアミン、p−フェニルジアミン、2,4−アミノトルエン、2,6−アミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナルタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4’−ジアミノナフタレンビフェニル、ベンジジン、3,3−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノフェニルスルホン、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビスーアミノフェニルプロパン等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
前記有機溶媒として例えば,N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアイミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルトリアミド等が挙げられる。必要に応じて、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ヘキサンベンゼン、トルエン等の炭化水素類を混合してもよい。また、これらを単独で用いても、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0035】
基材100は、導電性材料を含んでもよい。
導電性材料としては、カーボンブラック、グラファイト、Al、Ni、銅等のほか、酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸K、酸化錫−酸化In、酸化Sbなどの複合酸化物が挙げられる。また、イオン導電性材料としては、アンモニウム塩、スルホン酸塩、カチオン、ノニオン、アニオン系の界面活性材が挙げられる。これらの中でも、導電性材料としては、カーボンブラックが望ましい。
【0036】
上記導電性材料を用いることにより、基材100の体積抵抗値が制御される。基材100の体積抵抗値としては、例えば、1010から1014Ω・cmの範囲が挙げられる。
導電性材料の含有量は、所望の体積抵抗値に応じて、例えば、基材100中に1乃至50質量%含まれるように調整される。
なお、基材100の体積抵抗値は、中間転写ベルト12全体の体積抵抗値が望ましい値となるように制御されることが望ましい。中間転写ベルト12全体の体積抵抗値については後述する。
【0037】
体積抵抗率は、23℃、55%RHの環境下で、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「HRSプローブ」)を用い測定することができる。測定条件としては、例えば、荷重1.0kg、電圧1000V、チャージ時間10秒とする。以下、体積抵抗率及び表面抵抗率の測定については、同様である。
【0038】
基材100の厚みは、15μm以上100μm以下が望ましい。基材100の厚みが上記範囲であることにより、中間転写ベルト12の剛性及び柔軟性が得られる。
【0039】
基材100は、例えば、押出成形により作製される。押出成形で基材100を形成することで、膜厚均一性に優れ,成形時の残留歪みを低減させ、抵抗バラツキや軸方向での配向によるベルト強靭性の付与することができる。この場合の押出成型の条件としては、例えば90mm1軸エクストルーダーを用いて,1m/secの押し出しスピードで、クロスヘッド成形して均一な膜厚を保持したベルトとすることが好ましい。
【0040】
次に、弾性層102について説明する。
弾性層102は、図1に示すように、基材100の外周面に形成され、基材100及び表面離型層104の間の中間層となっている。
【0041】
弾性層102の膜厚は、5μm以上500μm以下が望ましく、10μm以上300μm以下がより望ましく、30μm以上150μm以下がさらに望ましい。
【0042】
弾性層102の膜厚を上記範囲とすることにより、さらに中間転写ベルト12上に残留したインク等がクリーニング装置により除去され易くなると共に、クリーニング装置のクリーニング部材及び中間転写ベルト12の表面の摩耗が抑制される。
また弾性層102の膜厚が上記範囲であることにより、転写工程において画像(インク受容層)が剥離する際に起こりやすい弾性層102の伸びが抑制され、さらに表面平滑性の優れた画像が形成される。
【0043】
弾性層102に用いられるゴム材料としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、エチレンープロピレンージエン共重合ゴム(EPDM),クロロプレンゴム(CR)、フッソゴム(FKM)、シリコーンゴム、エピクリロロヒドリンゴム(ECO)、多硫化ゴム、ウレタンゴム(UR),アクリロニトリルーブタジエンゴムの水素化物(H−NBR)、スチレンブタジエン共重合ゴムの水素化物(H−SBR)、ブチルゴム(IIR)等があげられる。上記材料は単体で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。また、メルカプタン変性、キサントゲン変性、硫黄変性等の変性ゴムを用いてもよい。これらの中でも、ゴム材料としては、シリコーンゴム、エチレンープロピレンージエン共重合ゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴムが望ましい。
【0044】
弾性層102は、耐熱性を有することが望ましい。耐熱性の観点から、弾性層102の材料としては、シリコーンゴム素材が望ましい。具体的には、例えば、ジフェニルポリシロキサン,ジメチルポリシロキサン等のオルガノシロキサンで成形されたシリコーンゴム,液状シリコーンゴム,付加型シリコーンゴム等が挙げられる。
【0045】
弾性層102のJIS−A硬度は、10度以上100度以下が望ましい。弾性層102のJIS−A硬度が上記範囲であることにより、基材100の剛性を適度に緩和するため、高解像度の画像が形成される。
【0046】
弾性層102は、例えば、予めベルト形状に成形した弾性ベルトを基材100に装着することにより形成してもよいし、基材100にゴム組成物等を直接コーティングすることにより形成してもよい。
【0047】
上記弾性ベルトの作製方法としては、例えば、各種材料を混合したゴム組成物等を、射出成形、鋳型成形等することによってベルト形状に成形する方法が挙げられる。この場合、成形温度は例えば120乃至180℃に設定され、成形と同時に加硫が行われることが好ましい。
【0048】
基材100にゴム組成物等を直接コーティングする方法としては、例えば、スプレー塗布法、ディップ塗布法、フローコート塗布法等が挙げられる。
【0049】
上記ゴム組成物の作製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、所望の量のゴム組成物等を、2本または3本ロール、加圧ニーダー、及びバンバリミキサー等を用いてゴム混練し、各種充填材やフィラーなどをさらに混合してニーダーやバンバリミキサーで予備混練し、成形使用時に添加材・加硫剤等の配合薬品をロールにより混合する方法が挙げられる。
【0050】
次に、表面離型層104について説明する。
表面離型層104は、図1に示すように、弾性層102の外周面に形成され、最外層に位置している。
【0051】
表面離型層104の膜厚は、1μm以上100μm以下が望ましく、3μm以上50μm以下がより望ましく、ベルト弾性の維持と表面耐磨耗性を考慮し,3μm以上30μm以下がさらに望ましい。
【0052】
表面離型層104の膜厚を上記範囲とすることにより、中間転写ベルト12が表面離型性を有すると共に、クリーニング性及び画像平滑性が阻害されない。
【0053】
表面離型層104に用いられる材料としては、例えば、フッ素系樹脂材料が挙げられる。フッ素系樹脂材料は難燃性を有するため、表面離型層104の材料として望ましい。また、表面離型層104の材料としてフッ素系樹脂材料(特に、体積抵抗率が1013Ω・cmよりも大きい材料)を用いることにより、表面離型層104が表面絶縁層として機能するため、別途表面絶縁層や裏面導電層を設ける必要がない。
【0054】
フッ素系樹脂材料としては、具体的には、例えば、フッソ樹脂、フッソ変性ウレタン及びシリコーン樹脂、共重合フッソゴム、フッソ樹脂−共重合ビニルエーテル、PFA(4フッ化エチレンパーフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合塗料)などの粉体塗料または樹脂チューブ、PTFE(4フッ化エチレン)塗料、PTFE分散ウレタン塗料、さらにETFE(ポリテトラフルオロエチレン)チューブ、PVdF(ポリビニリデンフルオライド)、PHV(ポリテトラフルオロビニリデン)樹脂材料等が挙げられる。
【0055】
表面離型層104に対するインクの接触角は、20度以上80度以下であることが望ましく、30度以上70度以下であることがより望ましく、クリーニング性及びインクの画像への展開(表面自由エネルギーなど)を考慮すると30度以上60度以下であることがさらに望ましい。
【0056】
表面離型層104に対するインクの接触角を上記範囲とすることにより、中間転写ベルト12表面に付着したインク等の除去がさらに容易となる。
【0057】
表面離型層104に対するインクの接触角は、例えば、ゴニオメータ等を用いて測定される。具体的には、22℃55%RHの環境下で、中間転写ベルト12表面に直径約1.5mmのインクを滴下し、10秒間放置した後の水滴の接触角の測定を行う。なお、測定場所を変更して、3回測定したときの平均値を、表面離型層104に対するインクの接触角とする。
【0058】
表面離型層104は、耐熱性を有することが望ましい。具体的には、例えば、表面離型層104のガラス転移温度が100℃以上200℃以下であることが望ましい。
【0059】
表面離型層104のガラス転移温度を上記範囲とすることにより、中間転写ベルト12上に形成された画像を記録媒体に転写する転写工程において同時に加熱による画像定着を行う形態においても、中間転写ベルト12の変形や汚染等による画像乱れが抑制される。
【0060】
表面離型層104のガラス転移温度は、示差走査熱量計(島津製作所製のDSC−50)を用い、JIS 7121−1987に準拠して測定する。この装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との混合物の融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。試料はアルミニウム製パンに入れ、サンプルの入ったアルミニウム製パンと対照用の空のアルミニウム製パンとをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行う。測定により得られたDSC曲線の吸熱部におけるベースラインと立ち上がりラインとの延長線の交点の温度をもってガラス転移温度とする。
【0061】
表面離型層104は、例えば、予めチューブ形状に成形したフッ素系樹脂チューブ等を基材100及び弾性層102に装着することにより形成してもよいし、基材100及び弾性層102にフッ素系樹脂組成物等を直接コーティングすることにより形成してもよい。
【0062】
フッ素系樹脂チューブの作製方法としては、例えば、フッ素系樹脂組成物等を混合したものを、射出成形、鋳型成形等することによってチューブ形状に成形する方法が挙げられる。
【0063】
基材100及び弾性層102にフッ素系樹脂組成物等を直接コーティングする方法としては、例えば、スプレー塗布法、ディップ塗布法、フローコート塗布法、静電コート塗布法、ブレードコート塗布法、ローラコート塗布法等が挙げられる。
【0064】
中間転写ベルト12は、表面硬度が30度以上90度以下であることが望ましく、30度以上80度以下であることがより望ましく、表面光沢の向上と転写効率を考慮すると30度以上70度以下であることがさらに望ましい。
【0065】
中間転写ベルト12の表面硬度が上記範囲であることにより、中間転写ベルト12表面のクリーニング性が向上し、中間転写ベルト12及びクリーニング部材の摩耗が抑制され、表面平滑性の優れた画像が形成される。
【0066】
中間転写ベルト12の表面硬度は、以下のようにして測定する。
具体的には、測定対象となる試料を切り出してサンプルを作製し、当該サンプルの厚み方向における硬度について、マイクロゴム硬度計(高分子計器社製、MD−1)を用いて測定する。原理的にはJIS K6253に記載のタイプAデュロメータに準じたものであり、押針をスプリングの力で試料の表面に押しつけて変形を与え、試料の抵抗力とスプリングの力とがバランスした状態での押針の押し込み深さを基に測定するものである。
【0067】
上記押針の径は0.16mmであり、非測定時(押針の変位が0mmの状態)での加圧面からの突き出し量を0.5mmとし、押針はスプリングにより22mNの力で押されている。この時のマイクロ硬度を0°とする。そして、押針の押し込み深さが0mm(変位0.5mm)の時、スプリングにより押針は330mNの力で押されている。この時のマイクロ硬度を100°とする。そしてこれらの間を等間隔で目盛り、マイクロ硬度の測定スケールとする。マイクロゴム硬度計の加圧面は外径4mmで、中心に前記押針を通す直径1.5mmの孔が設けてある。
【0068】
以上のような構成の測定機により、試料に押針を押し当て、バランスがとれた状態での値を読み取りマイクロ硬度とする。
なお、マイクロ硬度Hm(°)と押針先端荷重F(mN)との関係は下記式に示すとおりである。
式:F=22+3.1Hm
【0069】
次に、中間転写ベルト12の特性について説明する。
【0070】
中間転写ベルト12全体の体積抵抗率は、1011Ω・cm以上1013Ω・cm以下が望ましく、1011Ω・cm以上1012Ω・cm以下がより望ましく、1011Ω・cm以上1011.5Ω・cm以下がさらに望ましい。ここで「中間転写ベルト12全体の体積抵抗率」とは、基材100、弾性層102、及び表面離型層104を含めた中間転写ベルト12全体における膜厚方向の体積抵抗率のことを意味し、基材100、弾性層102、又は表面離型層104の各層における個別の体積抵抗率のことを意味するのではない。
【0071】
中間転写ベルト12全体の体積抵抗率が上記範囲であることにより、インク受容層を静電的に中間転写ベルト12外周面へ形成できる。また中間転写ベルト12全体の体積抵抗率が上記範囲であることにより、中間転写ベルト12を連続使用した場合においても、電荷の蓄積が抑制される。
【0072】
また中間転写ベルト12全体の表面抵抗率は、1013Ω/□以上1016Ω/□以下が望ましく1013Ω/□以上1015Ω/□以下がより望ましく、高速転写するためや回復時の表面電荷蓄積を抑制するためには1013Ω/□以上1014Ω/□以下がさらに望ましい。
【0073】
中間転写ベルト12全体の表面抵抗率が上記範囲であることにより、よりインク受容層を静電的に中間転写ベルト12外周面へ形成しやすい。
【0074】
第1実施形態に係る中間転写ベルトは、上記の通り、基材100、弾性層102、及び表面離型層104の三層構成となっているが、必要に応じて、基材100の内周面側、基材100と弾性層102との間、弾性層102と表面離型層104との間に、その他の層をさらに有してもよい。
【0075】
具体的には、例えば、「基材100と弾性層102との間」及び「弾性層102と表面離型層104との間」のいずれか一方又は両方に、接着層を形成することにより、層間の密着性を向上させてもよい。
【0076】
また、例えば、接着層を形成する代わりに、各層の接着させる面(例えば、基材100の外周面、弾性層102の外周面等)を表面処理することにより、層間の密着性を向上させてもよい。上記表面処理としては、具体的には、例えば、アルカリ溶液により表面に凹凸を設けアンカー効果により密着性を向上させる処理等が挙げられる。
【0077】
第1実施形態においては、上記の通り、中間転写ベルト12全体の体積抵抗率の制御を、基材100に導電性材料を含有させることにより行っているが、弾性層102、表面離型層104、又はその他の層に導電性材料を含有させることにより行ってもよい。
また、中間転写ベルト12全体の体積抵抗率の制御をするために、導電性材料を含有させる層は、上記層のうちいずれか一層でもよいし、複数の層でもよい。
【0078】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る記録装置の構成図である。第2実施形態に係る記録装置は、第1実施形態に係る中間転写ベルト12を用いた形態である。
【0079】
第2実施形態に係る記録装置11は、図2に示すように、無端ベルト状の中間転写ベルト12(中間転写無端ベルト)、中間転写ベルト12表面を帯電させる帯電装置28、中間転写ベルト12上の帯電された領域にインク受容性粒子16を付着させインク受容性粒子層16A(インク受容層)を形成する粒子塗布装置18(インク受容層形成手段)、インク受容性粒子層16Aにインク滴20A(インク)を吐出し画像を形成するインクジェット記録ヘッド20(インク吐出手段)、記録媒体8を中間転写ベルト12と重ね合わせ、圧力及び熱を加える事により記録媒体8上にインク受容性粒子層16Aを転写する転写装置23(転写手段)、及び記録媒体8上にインク受容性粒子層16Aを定着する定着装置25(定着手段)が備えられている。
【0080】
中間転写ベルト12は、駆動ロール30、従動ロール31、及び加圧ロール23Bにより張架されており、駆動ロール30により矢印方向に回転する。
【0081】
帯電装置28は、中間転写ベルト12の外周面側の従動ロール31に対向する位置に配設されている。また、帯電装置28にはDC電源(不図示)が接続され、従動ロール31はフレームグランドに電気的に接続されている。帯電装置28は、従動ロール31との間で中間転写ベルト12を挟みつつ従動し、押圧位置では、接地された従動ロール31との間に所定の電位差が生じるため、中間転写ベルト12の表面に電荷を与えることができる。ここでは帯電装置28により中間転写ベルト12表面に例えば電圧1kvを印加し、中間転写ベルト12表面を帯電させる。
【0082】
帯電装置28としては、例えば、ステンレスを材料とする棒状の基材の外周面に、導電性付与材を分散させた弾性層(発泡ウレタン樹脂)を形成し、体積抵抗率10Ω・cm以上10Ω・cm以下程度に調整したロール形状の部材が用いられる。帯電装置28としては、例えば、上記部材の弾性層の表面をさらに厚さ5μm以上100μm以下の撥水撥油性スキン層(PFA)で被覆したものを用いてもよい。また、帯電装置28をコロトロンやブラシで構成してもよい。
【0083】
粒子塗布装置18は、中間転写ベルト12表面にインク受容性粒子16を供給し、インク受容性粒子層16Aを形成する。具体的には、粒子塗布装置18は、インク受容性粒子16が収容される容器18Cの中間転写ベルト12と向き合う部分に供給ローラ18Aが配され、供給ローラ18Aに押圧するように帯電ブレード18Bが配される。
【0084】
帯電ブレード18B(導電性ブレード)は、供給ローラ18A(導電性ロール)表面に付着したインク受容性粒子16を、中間転写ベルト12表面の電荷と逆極性である負に帯電(例えば、摩擦帯電)するとともに、供給ローラ18A上におけるインク受容性粒子16の層厚を規制する。帯電ブレード18Bはドクター方式で供給ローラ18Aと接する。
【0085】
供給ローラ18Aとしては、例えば、アルミ製の中実ロールが用いられる。また、帯電ブレード18Bは、圧力をかけるために、例えば、ウレタンゴムが獲り付けられた金属板(SUSなど)が用いられる。
【0086】
粒子塗布装置18には、供給管19Aを介してインク受容性粒子収納カートリッジ19が脱着されるように連結されている。
【0087】
インクジェット記録ヘッド20は、例えば、中間転写ベルト12の回転方向上流側から、ブラックインクを吐出するためのインクジェット記録ヘッド20Kと、シアンインクを吐出するためのインクジェット記録ヘッド20Cと、マゼンタインクを吐出するためのインクジェット記録ヘッド20Mと、イエローインクを吐出するためのインクジェット記録ヘッド20Yと、の各色のインクジェット記録ヘッドを含んで構成されている。無論、インクジェット記録ヘッド20の構成は上記構成に限られず、例えば、インクジェット記録ヘッド20Kのみで構成してもよいし、インクジェット記録ヘッド20C、インクジェット記録ヘッド20M、及びインクジェット記録ヘッド20Yのみで構成してもよい。
【0088】
各インクジェット記録ヘッド20は、例えば、記録媒体8の幅と同等又はそれ以上の幅を持つライン型インクジェット記録ヘッドが望ましいが、従来のスキャン型のインクジェット記録ヘッドを用いてもよい。各インクジェット記録ヘッド20のインク吐出方式は、圧電素子駆動型、発熱素子駆動型等、インク吐出可能な方式であれば制限はない。
【0089】
インクジェット記録ヘッド20は、所定の画像情報に基づき、インク受容性粒子層16Aの所定の位置にインク滴20Aを付与する。インク受容性粒子16及びインクの詳細については後述する。
【0090】
転写装置23は、加熱源を内蔵する加熱ロール23Aと、中間転写ベルト12を挟んで対向する加圧ロール23Bとから構成され、加熱ロール23A及び加圧ロール23Bは接して接触部を形成する。
加熱ロール23A及び加圧ロール23Bとしては、例えば、アルミコアの外表面にシリコーンゴムを被覆し、更にその上をPFAチューブにて被覆された物が使用される。
【0091】
転写装置23により記録媒体8と中間転写ベルト12が挟み込まれ、インク受容性粒子層16Aに圧力と熱が加わる事で、記録媒体8上にインク受容性粒子層16Aが転写される。
【0092】
転写装置23の下流には、中間転写ベルト12表面に残留しているインク受容性粒子(残留粒子16D)やその他の異物(記録媒体8の紙粉等)等の中間転写体付着物を除去するためのクリーニング装置24が配置されている。
【0093】
また必要に応じて、中間転写ベルト12表面に残留する電荷を除去する為の除電装置29を、クリーニング装置24のさらに下流に配置してもよい。例えば、除電装置29として導電性ロールを使用し、従動ロール31(接地)と挟み込んで、中間転写ベルト12表面に±3kV、500Hz程度の電圧を印加して中間転写ベルト12表面を除電する。
【0094】
定着装置25は、加熱源を内蔵する加熱ロール25Aと、中間転写ベルト12を挟んで対向する加圧ロール25Bとから構成され、加熱ロール25A及び加圧ロール25Bは接して接触部を形成する。
加熱ロール25A及び加圧ロール25Bとしては、例えば、上記加熱ロール23A及び加圧ロール23Bと同様のものを使用することができる。
【0095】
定着装置25により記録媒体8を挟み込んで、インク受容性粒子層16Aに圧力と熱を加える事で、記録媒体8上にインク受容性粒子層16Aが定着される。
【0096】
クリーニング装置24としては、中間転写ベルト12上の残留粒子16D等を除去するものであれば、特に限られず、例えば、ブレードクリーニング方式を採用したもの等が挙げられる。また、クリーニング装置24を使用しない態様もありえる。
【0097】
以下、第2実施形態に係る記録装置の画像形成のプロセスをより詳細に説明する。第2実施形態に係る記録装置では、図2に示すように、まず、帯電装置28にて中間転写ベルト12の表面を、インク受容性粒子16と逆の極性に帯電させる。これにより、粒子塗布装置18の供給ローラ18Aにて供給されるインク受容性粒子16を静電的に吸着させ、中間転写ベルト12の表面にインク受容性粒子層16Aを形成することができる。
【0098】
次いで中間転写ベルト12の表面に粒子塗布装置18の供給ローラ18Aにてインク受容性粒子16を塗布し、インク受容性粒子層16Aを形成する。インク受容性粒子層16Aは、例えば、インク受容性粒子16が3層程度重なった厚みと成るように形成される。すなわち、上記のように帯電ブレード18Bと供給ローラ18Aの空隙によってインク受容性粒子層16Aを所望の厚さに制御することで、記録媒体8に転写されるインク受容性粒子層16Aの厚さが制御される。また、インク受容性粒子層16Aの厚さは、供給ローラ18Aと中間転写ベルト12の周速比によって制御してもよい。
【0099】
形成されたインク受容性粒子層16A上に、圧電式(ピエゾ)、サーマル式などにより駆動される各色のインクジェット記録ヘッド20によってインク滴20Aが吐出され、インク受容性粒子層16Aに画像層が形成される。
【0100】
次いで画像層が形成されたインク受容性粒子層16Aを中間転写ベルト12から記録媒体8上に転写することにより、記録媒体8上にカラー画像が形成される。
【0101】
さらに記録媒体8上に転写されたインク受容性粒子層16Aは、ヒータなどの加熱手段にて加熱された定着装置(定着ローラ)25によって、加熱・加圧され記録媒体8上に定着される。
【0102】
インク受容性粒子層16Aが剥離した後の中間転写ベルト12表面に残った残留粒子16Dはクリーニング装置24にて回収され、中間転写ベルト12の表面は再度帯電装置28にて帯電され、インク受容性粒子16が供給されインク受容性粒子層16Aが形成される。
【0103】
上記の工程を経て、画像形成が終了する。上記の通り、中間転写ベルト12については、インク受容性粒子16を記録媒体8に転写した後、中間転写ベルト12上に残留した残留粒子16Dや、記録媒体8から離脱した紙粉の如き異物が、クリーニング装置24により除去される。
【0104】
また除電装置29をクリーニング装置24の下流に配置した場合は、除電装置29により中間転写ベルト12に残留する電荷が除去される。
【0105】
以下、本実施形態におけるインク受容性粒子16について詳細に説明する。以下、符号は省略して説明する。
【0106】
インク受容性粒子は、インクが当該粒子と接触したとき、インク成分を受容するものであれば、特に限られず、公知のものを用いられる。ここで、インク受容性とは、インク成分の少なくとも一部(少なくとも液体成分)を保持することを示す。
【0107】
以下、インク受容性粒子の一例として、親水性のインク受容性粒子(以下、単に「インク受容性粒子」と称する)について説明する。インク受容性粒子は、例えば、全単量体成分に対して極性基を持つ極性単量体の比率が10mol%以上90mol%以下の有機樹脂を含んで構成される粒子が挙げられる。具体的には、インク受容性粒子は、例えば、上記有機樹脂を含んで構成される粒子(以下、親水性有機粒子と称する。)を有する構成が挙げられる(以下、この親水性有機粒子を含んで構成される粒子を「母粒子」と称する)。
【0108】
インク受容性粒子は、母粒子を親水性有機粒子単独の粒子(一次粒子)で構成した形態でもよいし、母粒子を少なくとも親水性有機粒子が集合した複合体粒子で構成した形態であってもよい。
【0109】
ここで、母粒子を親水性有機粒子単独の粒子(一次粒子)で構成した形態の場合、インク受容性粒子がインクを受容する際、インクがインク受容性粒子に付着すると、少なくともインクの液体成分を親水性有機粒子によってインク液体成分が吸液される。
【0110】
このようにして、インク受容性粒子はインクを受容する。そして、インクを受容したインク受容性粒子を記録媒体に転写することで、記録が行われる。
【0111】
他方、母粒子を少なくとも親水性有機粒子が集合した複合体粒子で構成した形態の場合、インク受容性粒子がインクを受容する際、まず、インクがインク受容性粒子に付着すると、少なくともインクの液体成分を複合体粒子を構成する粒子(少なくとも親水性有機粒子)間の間隙(以下、粒子間間隙(空隙)をトラップ構造と称する場合がある)により捕獲(トラップ)する。このとき、インクの成分のうち記録材は、インク受容性粒子表面に付着又はトラップ構造により捕獲(トラップ)される。このようにして、インク受容性粒子はインクを受容する。そして、インクを受容したインク受容性粒子を記録媒体に転写することで、記録が行われる。
【0112】
このトラップ構造によるインク液体成分の捕獲(トラップ)は、粒子間の間隙(物理的な粒子壁構造)による物理的及び/又は化学的な捕獲である。
【0113】
そして、母粒子を少なくとも親水性有機粒子が集合した複合体粒子で構成した形態を適用することで、当該複合体粒子を構成する粒子間の間隙(物理的な粒子壁構造)による捕獲(トラップ)に加え、親水性有機粒子によってインク液体成分が吸液・保持される。
また、親水性有機粒子によってもインク液体成分が吸収、保持される。
【0114】
また、インク受容性粒子の転写後、インク受容性粒子を構成する親水性有機粒子の成分は、インクに含まれる記録材の結着樹脂や被覆樹脂としても機能する。さらに、インク受容性粒子が複合体粒子の場合、そのトラップ構造に記録材をトラップする。特に、インク受容性粒子を構成する親水性有機粒子の成分として、透明樹脂を適用することが望ましい。
【0115】
なお、記録材として顔料等の不溶成分、分散粒子状物を用いたインク(例えば顔料インク)の定着性(耐擦性)を改善するためにはインクに多量の樹脂添加が必要だが、インク(その処理液含む)中に多量のポリマーを添加すると、インク吐出手段のノズル目詰り等の信頼性が悪化してしまう。これに対し、上記構成では、インク受容性粒子を構成する有機樹脂成分が当該樹脂の機能を果たすことも可能である。
【0116】
ここで、「前記複合体粒子を構成する粒子間の間隙」、即ち「トラップ構造」は、少なくとも液体を捕獲し得る物理的な粒子壁構造である。そして、この間隙の大きさは、最大口径で、0.1から5μmであることが望ましく、より望ましくは0.3から1μmである。特に、間隙の大きさは、記録材、特に例えば体積平均粒径100nmの顔料をトラップし得る大きさであることがよい。なお、最大開口径が50nm未満の微細孔が存在してもよい。また、空隙や毛細管は粒子内部で通じていることがよい。
【0117】
この間隙の大きさは、次のようにして求める。粒子表面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置に読み取り、2値化処理により間隙を検出し、間隙の大きさ、及び、分布を解析することで求めることが可能である。
【0118】
このように、トラップ構造は、インクの成分のうち液体成分のみならず、記録材もトラップすることがよい。インク液体成分と共に記録材、特に顔料をトラップ構造に捕獲(トラップ)させると、インク受容性粒子内部に記録材が偏在することなく保持・固定される。なお、インクの液体成分は、主にインク溶媒や分散媒(ビヒクル液体)である。
【0119】
以下、インク受容性粒子についてさらに詳細に説明する。インク受容性粒子は、上述のように母粒子を親水性有機粒子単独の粒子(一次粒子)で構成した形態であってもよく、母粒子を少なくとも親水性有機粒子が集合した複合体粒子で構成した形態あってもよい。そして、複合体粒子を構成する親水性有機粒子以外の粒子としては無機粒子や多孔質粒子などが挙げられる。無論、母粒子は複数の親水性有機粒子のみが集合した複合体粒子で構成してもよい。また、母粒子表面に付着させる粒子としては、疎水性有機粒子以外にも例えば無機粒子が挙げられる。
【0120】
インク受容性粒子の具体的な構成としては、例えば、図3に示すように、親水性有機粒子201A単独の粒子(一次粒子)で構成した母粒子201と、母粒子201に付着された無機粒子202と、を有するインク受容性粒子200の形態が挙げられる。また、図4に示すように、親水性有機粒子201Aと無機粒子201Bとが複合化された複合体粒子の母粒子201と、母粒子201に付着された無機粒子202と、を有するインク受容性粒子210の形態も挙げられる。なお、この複合体粒子の母粒子は各粒子間の間隙により空隙構造が形成される。
【0121】
ここで、母粒子を複合体粒子で構成する場合、親水性有機粒子と他の粒子との質量比率(親水性有機粒子:他の粒子)は、例えば、他の粒子が無機粒子の場合、5:1から1:10の範囲であることが挙げられる。
【0122】
また、母粒子の粒径は、球換算平均粒径が例えば0.1から50μm(望ましくは0.5μmから25μm、より望ましくは1μmから10μm)の範囲が挙げられる。
【0123】
また、母粒子を複合体粒子で構成する場合、そのBET比表面積(N)が例えば1から750m/gの範囲であることが挙げられる。
【0124】
そして、母粒子を複合体粒子で構成する場合、複合体粒子は、例えば、粒子が半焼結状態で造粒されることで得られる。半焼結状態とは、粒子形状がある程度の残っており、当該粒子間で空隙を保持している状態を示す。なお、複合体粒子は、トラップ構造にインク液体成分がトラップされたとき、粒子の少なくとも一部が解離する、即ち複合体粒子が解体され、これを構成する粒子がばらけてもよい。
【0125】
次に、親水性有機粒子について説明する。親水性有機粒子は、例えば、全単量体成分に対する極性単量体の比率が10mol%以上90mol%以下であり、望ましくは15mol%以上85mol%以下であり、さらに望ましくは30mol%以上80mol%以下である有機樹脂を含んで構成されている。具体的には、親水性有機粒子は、上記極性単量体の比率の有機樹脂(以下、吸水性樹脂と称する)を含んで構成されることがよい。
【0126】
ここで、極性単量体とは、極性基としてエチレンオキサイド基、カルボン酸、スルホン酸、置換若しくは未置換のアミノ基、水酸基、アンモニウム基及びこれらの塩を含む単量体である。例えば、正帯電性付与の場合、例えば(置換)アミノ基、アンモニウム基、(置換)ピリジン基やそのアミン塩、4級アンモニウム塩等の造塩化構造の単量体であることが望ましい。負帯電付与の場合、カルボン酸(塩)、スルホン酸(塩)等の有機酸(塩)構造の単量体であることが望ましい。このように、極性単量体には、アニオン性の極性基(例えば、カルボン酸基、スルホン酸基等)を含む形態、カチオン性の極性基(例えば、アミノ基、アンモニウム基等)を含む形態がある。
【0127】
なお、極性単量体の比率は、次のようにして求める。まず質量分析、NMR,IRなどの分析手法から有機成分の構成を特定する。その後、JIS K0070又はJIS K2501に準拠して、有機成分の酸価、塩基価を測定する。有機成分の構成、及び、酸価/塩基価から極性単量体の比率を計算で求めることができる。以下同様である。
【0128】
親水性有機粒子は例えば吸液性樹脂で構成される。吸液したインク液体成分(例えば水、水性溶媒)が樹脂(ポリマー)の可塑剤として作用するため、軟化して定着性に寄与することが可能である
【0129】
吸液性樹脂は弱吸液性樹脂であることが好適である。この弱吸液性樹脂とは、例えば液体として水を吸収する場合、樹脂質量に対して数%(≒5%)から数百%(≒500%)、望ましくは5%から150%程度の吸液が可能な親液性樹脂を意味する。
【0130】
吸液性樹脂は、例えば、親水性単量体の単独重合体、或いは親水性単量体と疎水性単量体との両単量体から構成された共重合体で構成することができるが、弱吸水性樹脂とするためには当該共重合体が望ましい。なお、単量体だけでなく、ポリマー/オリゴマー構造などのユニットをスタートに他のユニットを共重合させるグラフト共重合体やブロック共重合体でもよい。
【0131】
ここで、親水性単量体としては、−OH、−EOユニット(エチレンオキサイド基)、−COOM(Mは例えば水素、Na、Li、K等のアルカリ金属、アンモニア、有機アミン類等である。)、−SOM(Mは例えば水素、Na、Li、K等のアルカリ金属、アンモニア、有機アミン類等)、−NR(Rは例えば、H、アルキル、フェニル等である。)、−NRX(Rは例えば、H、アルキル、フェニル等であり、Xは例えば、ハロゲン、硫酸根、カルボン酸等の酸アニオン類、BF、等々である。)等を含む単量体が挙げられる。具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、不飽和カルボン酸、クロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。また、親水性ユニットもしくは単量体としては、セルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、でんぷん誘導体、単糖類・多糖類誘導体、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、等の重合性カルボン酸類やこれらの(部分)中和塩類、ビニルアルコール類、ビニルピロリドン、ビニルピリジンやアミノ(メタ)アクリレート及びジメチルアミノ(メタ)アクリレートの如き誘導体、更にはこれらのオニウム塩類、アクリルアミドやイソプロピルアクリルアミド等のアミド類、ポリエチレンオキサイド鎖含有ビニル化合物類、水酸基含有ビニル化合物類、多官能カルボン酸と多価アルコールから構成されるポリエステル類、特にトリメリット酸の如き3官能以上の酸を構成成分として含有し末端カルボン酸や水酸基を多く含む分岐ポリエステル、ポリエチレングリコール構造を含むポリエステル、等も挙げられる。
【0132】
疎水性単量体としては、疎水性基を有する単量体が挙げられ、具体的には、例えばオレフィン(エチレン、ブタジエン等)、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられる。疎水性ユニットもしくは単量体としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等、及びこれらの誘導体も挙げられる。
【0133】
この親水性単量体と疎水性単量体との共重合体である吸液性樹脂として、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン/(メタ)アクリル酸/(無水)マレイン酸類共重合体、エチレン/プロピレン等のオレフィン系ポリマー(又はこの変性体、又は共重合によるカルボン酸ユニット導入物)、トリメリット酸等で酸価を向上した分岐ポリエステル、ポリアミド等が好適に挙げられる。
【0134】
吸液性樹脂には、例えば、中和塩構造(例えばカルボン酸など)を含むことが挙げられる。このカルボン酸などの中和塩構造は、カチオン(例えばNa,Li等の一価金属カチオン等)を含むインクを吸液したとき、当該カチオンとの相互作用で、アイオノマーを形成する。
【0135】
吸液性樹脂には、置換或いは未置換アミノ基や、置換或いは未置換ピリジン基を含むことも望ましい。当該基は、殺菌効果や、アニオン基を有する記録材(例えば顔料や染料)との相互作用を及ぼす。
【0136】
ここで、吸液性樹脂において、親水性ユニット(親水性単量体)と疎水性ユニット(親水性単量体)とのモル比(親水性単量体:疎水性単量体)は、例えば5:95から70:30が挙げられる。
【0137】
また、吸収性樹脂は、インクから供給されるイオンによりイオン架橋してもよい。具体的には、吸水性樹脂中が(メタ)アクリル酸やマレイン酸等のカルボン酸を含む共重合体やカルボン酸を有する(分岐)ポリエステル等、樹脂中にカルボン酸を含むユニットを存在させることができる。樹脂中のカルボン酸と水性インク等の液体から供給されるアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、有機アミン・オニウムカチオン等とでイオン架橋や酸・塩基相互作用等が生じる。
【0138】
吸液性樹脂及び疎水性有機粒子を構成する非吸液性樹脂(以下、まとめて有機樹脂と称する)の共通の特性について説明する。
【0139】
吸液性樹脂は、直鎖構造でもよいが、分嵯構造がよい。また、吸液性樹脂は、非架橋もしくは低架橋であることが望ましい。また、吸液性樹脂は直鎖構造のランダム共重合体やブロック共重合体でもよいが、分岐構造の重合体(分岐構造のランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を含む)が更に好適に使用できる。例えば、重縮合で合成されるポリエステルの場合、分岐構造で末端基を増加させることができる。この分岐構造は、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリレート類等のいわゆる架橋剤を合成時に添加したり(例えば1%未満の添加)、架橋剤と共に開始剤を多量添加することで合成することが一般的な手法の一つである。
【0140】
吸液性樹脂には、更には低分子の4級アンモニウム塩類や有機ホウ酸塩類、サリチル酸誘導体の造塩化合物類等、電子写真トナー用帯電制御剤を吸液性樹脂に添加してもよい。導電性の制御は酸化スズや酸化チタン等の導電性(ここで、導電性とは例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する。以下、他も特記がない限り同様である。)、半導電性(ここで、半導電性とは例えば体積抵抗率が10から1013Ωcmを意味する。以下、他も特記がない限り同様である。)の無機物質添加が有効である。
【0141】
吸液性樹脂は、非結晶樹脂であることがよく、そのガラス転移温度(Tg)は、例えば40℃から90℃が挙げられる。ガラス転移温度(及び融点)は、ASTMD3418−8に準拠して測定された主体極大ピークより求めた。主体極大ピークの測定には、パーキンエルマー社製のDSC−7を用いることができる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行った。
【0142】
吸液性樹脂の重量平均分子量は、例えば3000から30万が挙げられる。重量平均分子量は、以下の条件で行ったものである。例えば、GPCは「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)装置」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、IR検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
【0143】
吸液性樹脂の酸価は、例えばカルボン酸基(−COOH)換算で50から777mgKOH/gが挙げられる。このカルボン酸基(−COOH)換算での酸価の測定は次のように行った。
【0144】
酸価は、JIS K0070に従って行い、中和滴定法を用いた測定で行った。即ち、適当量の試料を分取し、溶剤(ジエチルエーテル/エタノール混合液)100ml、及び、指示薬(フェノールフタレイン溶液)数滴を加え、水浴上で試料が溶けるまで充分に振り混ぜる。これに、0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の紅色が30秒間続いた時を終点とした。酸価をA、試料量をS(g)、滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液をB(ml)、fを0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクターとした時、A=(B×f×5.611)/Sとして算出した。
【0145】
以上説明した吸液性樹脂は、いずれの形態であっても極性単量体の比率を上記範囲に制御して使用される。
【0146】
親水性有機粒子の粒径は、その一次粒子を母粒子とする場合、球換算平均粒径が例えば0.1から50μm(望ましくは0.5μmから25μm、より望ましくは1μmから10μm)の範囲が挙げられる。一方、複合体粒子を構成する場合、例えば球換算平均粒径で10nmから30μm(望ましくは50nmから10μm、より望ましくは0.1μmから5μm)の範囲が挙げられる。
【0147】
親水性有機粒子のインク受容性粒子全体に対する比率は、例えば質量比で75%以上望ましくは85%以上であり、より望ましくは90から99%)の範囲が挙げられる。
【0148】
次に、親水性有機粒子と共に複合粒子を構成する無機粒子、及び母粒子に付着させる無機粒子について説明する。無機粒子としては、非多孔質粒子、多孔質粒子のいずれも使用することができる。無機粒子としては、無色、淡色或いは白色の粒子(例えば、コロイダル・シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ等)が挙げられる。これら無機粒子は、表面処理(部分疎水化処理、特定官能基導入処理等)を施されてもよい。例えば、シリカの場合には、シリカの水酸基をトリメチルクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシランなどのシリル化剤で処理してアルキル基を導入する。シリル化剤によって脱塩酸が生じ、反応が進む。この際、アミンを添加すると塩酸を塩酸塩にして反応を促進することもできる。疎水性基としてアルキル基やフェニル基を有するシランカップリング剤やチタネート系、ジルコネート系等のカップリング剤の処理量や処理条件を制御することでコントロールできる。また、脂肪族アルコール類や高級脂肪酸及び同誘導体類での表面処理も可能である。また、(置換)アミノ基や四級アンモニウム塩構造を有するシランカップリング剤等のカチオン性官能基を有するカップリング剤類、フルオロシランの様なフッ素系官能基を有するカップリング剤、その他カルボン酸等のアニオン性官能基を有するカップリング剤類での表面処理も可能である。なお、これらの無機粒子は、親水性有機粒子内部に含まれる、所謂内添されていてもよい。
【0149】
また、複合体粒子を構成する無機粒子の粒径は、例えば球換算平均粒径で10nmから30μm(望ましくは50nmから10μm、より望ましくは0.1μmから5μm)の範囲が挙げられる。一方、母粒子に付着させる無機粒子の粒径は、例えば球換算平均粒径で10nmから1μm(望ましくは10nmから0.1μm、より望ましくは10nmから0.05μm)の範囲が挙げられる。
【0150】
次に、インク受容性粒子のその他添加剤について説明する。まず、インク受容性粒子には、インクの成分を凝集又は増粘させる成分を含むことが望ましい。
【0151】
この機能を有する成分は、上記吸液性樹脂粒子を構成する樹脂(樹脂吸水性樹脂)の官能基として含んでもよいし、化合物として含んでもよい。当該官能基としては、例えば、カルボン酸、多価金属カチオン、ポリアミン類等などが挙げられる。
【0152】
また、当該化合物としては、無機電解質、有機酸、無機酸、有機アミンなどの凝集剤が好適に挙げられる。
【0153】
無機電解質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン及び、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、及び、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
【0154】
具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸カリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム等のアルカリ金属類の塩、及び、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等の多価金属類の塩等が挙げられる。
【0155】
有機酸としては、具体的にはアルギニン酸、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、システイン、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、マレイン酸、マロン酸、リシン、リンゴ酸、及び、一般式(1)で表される化合物、これら化合物の誘導体などが挙げられる。
【0156】
【化1】

【0157】
ここで、式中、Xは、O、CO、NH、NR、S、又はSOを表す。Rはアルキル基を表し、Rとして望ましくは、CH,C、COHである。Rはアルキル基を表し、Rとして望ましくは、CH,C、COHである。なお、Rは式中に含んでいてもよいし、含んでいなくても構わない。Xとして望ましくは、CO、NH、NR、Oであり、より望ましくは、CO、NH、Oである。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアミン類を表す。Mとして望ましくは、H、Li、Na、K、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等であり、より望ましくは、H、Na,Kであり、更に望ましくは、水素原子である。nは、3から7の整数である。nとして望ましくは、複素環が6員環又は5員環となる場合であり、より望ましくは、5員環の場合である。mは、1又は2である。一般式(1)で表される化合物は、複素環であれば、飽和環であっても不飽和環であってもよい。lは、1から5の整数である。
【0158】
一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、フラン、ピロール、ピロリン、ピロリドン、ピロン、ピロール、チオフェン、インドール、ピリジン、キノリン構造を有し、更に官能基としてカルボキシル基を有する化合物が挙げられる。具体的には、2−ピロリドン−5−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−カルボン酸、フランカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2,5−ジメチル−3−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、4−ブタノリド−3−カルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、2−ピロン−6−カルボン酸、4−ピロン−2−カルボン酸、5−ヒドロキシ−4−ピロン−5−カルボン酸、4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、チオフェンカルボン酸、2−ピロールカルボン酸、2,3−ジメチルピロール−4−カルボン酸、2,4,5−トリメチルピロール−3−プロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−インドールカルボン酸、2,5−ジオキソ−4−メチル−3−ピロリン−3−プロピオン酸、2−ピロリジンカルボン酸、4−ヒドロキシプロリン、1−メチルピロリジン−2−カルボン酸、5−カルボキシ−1−メチルピロリジン−2−酢酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジントリカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸、1,2,5,6−テトラヒドロ−1−メチルニコチン酸、2−キノリンカルボン酸、4−キノリンカルボン酸、2−フェニル−4−キノリンカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、6−メトキシ−4−キノリンカルボン酸等の化合物が挙げられる。
【0159】
有機酸としては、望ましくは、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、フタル酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。より望ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。さらに望ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、フランカルボン酸、クマリン酸、若しくは、これらの化合物誘導体、又は、これらの塩である。
【0160】
有機アミン化合物としては、1級、2級、3級及び4級アミン及びそれらの塩のいずれであっても構わない。具体例としては、テトラアルキルアンモニウム、アルキルアミン、ベンザルコニウム、アルキルピリジウム、イミダゾリウム、ポリアミン、及び、それらの誘導体、又は、塩等が挙げられる。具体的には、アミルアミン、ブチルアミン、プロパノールアミン、プロピルアミン、エタノールアミン、エチルエタノールアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチルメチルアミン、エチルベンジルアミン、エチレンジアミン、オクチルアミン、オレイルアミン、シクロオクチルアミン、シクロブチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、ジ2−エチルヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジプロピルアミン、ジヘキシルアミン、ジペンチルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルエチレンジアミン、ジメチルオクチルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ジメチルヘキシルアミン、アミノ−ブタノール、アミノ−プロパノール、アミノ−プロパンジオール、N−アセチルアミノエタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)−エタノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチルアミン、セチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリイソペンチルアミン、トリエタノールアミン、トリオクチルアミン、トリチルアミン、ビス(2−アミノエチル)1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ビス(トリメチルシリル)アミン、ブチルアミン、ブチルイソプロピルアミン、プロパンジアミン、プロピルジアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、2−メチル−シクロヘキシルアミン、メチル−プロピルアミン、メチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、ラウリルアミン、ノニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレシジアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムク口ライド、ステアラミドメチルビリジウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体等が挙げられる。
【0161】
より望ましくは、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、エタノールアミン、プロパンジアミン、プロピルアミンなどが使用される。
【0162】
これら凝集剤の中でも、多価金属塩(Ca(NO)、Mg(NO)、Al(OH)、ポリ塩化アルミニウム等)が好適に用いられる。
【0163】
凝集剤は単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。また、凝集剤の含有量としては、0.01質量%以上30質量%以下であることが望ましい。より望ましくは、0.1質量%以上15質量%以下であり、更に望ましくは、1質量%以上15質量%以下である。
【0164】
インク受容性粒子には、離型剤が含まれていることがよい。離型剤は、上記吸液性樹脂に含ませてもよいし、親水性有機樹脂粒子と共に離型剤の粒子を複合化して含ませてもよい。
【0165】
この離型剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス;及びそれらの変性物などが挙げられる。これらの中でも結晶性化合物を適用することがよい。
【0166】
以下、上記実施形態で適用されるインクについて詳細に説明する。上記実施形態においては、親水性のインク受容性粒子を用いているため、インクは水性インクが使用される。水性インク(以下、単にインクと称する)は、記録材に加え、インク溶媒(例えば、水、水溶性有機溶媒)を含んでいる。また、必要に応じて、その他、添加剤を含んでいてもよい。
【0167】
まず、記録材について説明する。記録材としては、主に色材が挙げられる。色材としては、染料、顔料のいずれも用いることができるが、顔料であることがよい。顔料としては有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料ではファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用してもよい。また、本発明のために、新規に合成した顔料でも構わない。
【0168】
また、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等を顔料として使用することも可能である。
【0169】
黒色顔料の具体例としては、Raven7000,Raven5750,Raven5250,Raven5000 ULTRAII,Raven 3500,Raven2000,Raven1500,Raven1250,Raven1200,Raven1190 ULTRAII,Raven1170,Raven1255,Raven1080,Raven1060(以上コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R,Regal330R,Regal660R,Mogul L,Black Pearls L,Monarch 700,Monarch 800,Monarch 880,Monarch 900,Monarch 1000,Monarch 1100,Monarch 1300,Monarch 1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black 18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex35,Printex U,Printex V,Printex140U,Printex140V,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black4(以上デグッサ社製)、No.25,No.33,No.40,No.47,No.52,No.900,No.2300,MCF−88,MA600,MA7,MA8,MA100(以上三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0170】
シアン色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Blue−1,−2,−3,−15,−15:1,−15:2,−15:3,−15:4,−16,−22,−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0171】
マゼンタ色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red−5,−7,−12,−48,−48:1,−57,−112,−122,−123,−146,−168,−177,−184,−202, C.I.Pigment Violet −19等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0172】
黄色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Yellow−1,−2,−3,−12,−13,−14,−16,−17,−73,−74,−75,−83,−93,−95,−97,−98,−114,−128,−129,−138,−151,−154,−180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0173】
ここで、色材として顔料を使用した場合には、併せて顔料分散剤を用いることが望ましい。使用可能な顔料分散剤としては、高分子分散剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0174】
高分子分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体が好適に用いられる。親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体としては、縮合系重合体と付加重合体とが使用できる。縮合系重合体としては、公知のポリエステル系分散剤が挙げられる。付加重合体としては、α,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の付加重合体が挙げられる。親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体と疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体を組み合わせて共重合することにより目的の高分子分散剤が得られる。また、親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の単独重合体も用いることができる。
【0175】
親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、りん酸基等を有する単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロオキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0176】
疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
【0177】
高分子分散剤として用いられる、望ましい共重合体の例としては、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。また、これらの重合体に、ポリオキシエチレン基、水酸基を有する単量体を共重合させてもよい。
【0178】
上記高分子分散剤としては、例えば重量平均分子量で2000から50000のものが挙げられる。
【0179】
これら顔料分散剤は、単独で用いても、二種類以上を併用しても構わない。顔料分散剤の添加量は、顔料により大きく異なるため一概には言えないが、一般に顔料に対し、合計で0.1から100質量%が挙げられる。
【0180】
色材として水に自己分散可能な顔料を用いることもできる。水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤が存在しなくとも水中で分散する顔料のことを指す。具体的には、通常のいわゆる顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより、水に自己分散可能な顔料が得られる。
【0181】
また、水に自己分散可能な顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−300、IJX−157、IJX−253、IJX−266、IJX−273、IJX−444、IJX−55、Cabot260、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2等の市販の自己分散顔料等も使用できる。
【0182】
自己分散顔料としては、その表面に官能基として少なくともスルホン酸、スルホン酸塩、カルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料であることが望ましい。より望ましくは、表面に官能基として少なくともカルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料である。
【0183】
更に、樹脂により被覆された顔料等を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販のマイクロカプセル顔料だけでなく、本発明のために試作されたマイクロカプセル顔料等を使用することもできる。
【0184】
また、高分子物質を上記顔料に物理的に吸着又は化学的に結合させた樹脂分散型顔料を用いることもできる。
【0185】
記録材としては、その他、親水性のアニオン染料、直接染料、カチオン染料、反応性染料、高分子染料等や油溶性染料等の染料類、染料で着色したワックス粉・樹脂粉類やエマルション類、蛍光染料や蛍光顔料、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フェライトやマグネタイトに代表される強磁性体等の磁性体類、酸化チタン、酸化亜鉛に代表される半導体や光触媒類、その他有機、無機の電子材料粒子類などが挙げられる。
【0186】
記録材の含有量(濃度)は、例えばインクに対して5から30質量%が挙げられる。
【0187】
記録材の体積平均粒径は、例えば10nm以上1000nm以下であることが挙げられる。
【0188】
記録材の体積平均粒径とは、記録材そのものの粒径、又は記録材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒径をいう。体積平均粒径の測定装置には、マイクロトラックUPA粒度分析計 9340 ( Leeds&Northrup社製 )を用いた。その測定は、インク4mlを測定セルに入れ、所定の測定法に従って行った。なお、測定時の入力値として、粘度にはインクの粘度を、分散粒子の密度は記録材の密度とした。
【0189】
次に、水溶性有機溶媒について説明する。水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
【0190】
水溶性有機溶媒の具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2−へキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、キシリトールなどの糖アルコール類、キシロース、グルコース、ガラクトースなどの糖類等が挙げられる。
【0191】
多価アルコール類誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0192】
含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0193】
水溶性有機溶媒としては、その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0194】
水溶性有機溶媒は、少なくとも1種類以上使用してもよい。水溶性有機溶媒の含有量としては、例えば1質量%以上70質量%以下が挙げられる。
【0195】
次に、水について説明する。水としては、特に不純物が混入することを防止するため、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水を使用することが望ましい。
【0196】
次に、その他の添加剤について説明する。インクには、界面活性剤を添加することができる。
【0197】
これら界面活性剤の種類としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、望ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が用いられる。
【0198】
以下、界面活性剤の具体例を列挙する。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が使用でき、望ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等が用いられる。
【0199】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアルカノールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物等が挙げられ、望ましくは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物が用いられる。
【0200】
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用できる。
【0201】
これらの界面活性剤は単独で使用しても混合して使用してもよい。また界面活性剤の親水性/疎水性バランス(HLB)は、溶解性等を考慮すると3から20の範囲であることが望ましい。
【0202】
これらの界面活性剤の添加量は、0.001から5質量%が望ましく、0.01から3質量%が特に望ましい。
【0203】
また、インクには、その他、浸透性を調整する目的で浸透剤、インク吐出性改善等の特性制御を目的でポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等や、導電率、pHを調整するために水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属類の化合物等、その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤等も添加することができる。
【0204】
次に、インクの好適な特性について説明する。まず、インクの表面張力は、20から45mN/mであることが挙げられる。
【0205】
ここで、表面張力としては、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値を採用した。
【0206】
インクの粘度は、1.5から30mPa・sであることが挙げられる。
【0207】
ここで、粘度としては、レオマット115(Contraves製)を測定装置として用いて、測定温度は23℃、せん断速度は1400s−1の条件で測定した値を採用した。
【0208】
なお、インクは、上記構成に限定されるものではない。記録材以外に、例えば、液晶材料、電子材料など機能性材料を含むものであってもよい。
【0209】
本実施形態においては、親水性のインク受容性粒子及び水性インクを用いているが、疎水性のインク受容性粒子及び油性インクを用いる形態としてもよい。
【0210】
油性インクは、記録材及び油性溶媒を含むものであり、油性溶媒としては、具体的には、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、グリコール類、含窒素溶媒、植物油等が挙げられる。上記油性溶媒は、単独で用いても良いし、二種以上併用しても良い。
【0211】
第2実施形態に係る記録装置11においては、転写工程において加熱する形態となっているが、これに限られず、転写工程において加熱を行わない形態でもよい。
【0212】
第2実施形態に係る記録装置11においては、転写装置23と定着装置25を用いる形態となっているが、これに限られず、転写機能と定着機能の両方を兼ね備えた転写定着装置を用いる形態としてもよい。
【0213】
第2実施形態に係る記録装置11は、さらに中間転写ベルト12表面の離型性を向上させるため、例えば、中間転写ベルト12表面に予め離型剤を塗布し離型層を形成する離型剤塗布装置を、帯電装置28の上流側に配置しても差し支えない。
離型剤及び離型剤塗布装置としては、公知のものを用いることができる。
離型剤塗布装置を用いる場合は、連続的に画像形成を行う目的で、離型剤塗布装置を中間転写ベルト12に連続的に接触させてもよいし、中間転写ベルト12から離間した構成としてもよい。
【0214】
第2実施形態に係る記録装置11は、インク受容層としてインク受容性粒子層16Aを用いているが、これに限られず、例えば、インク受容性の液層(例えば、シリコーンオイル、アクリル変性アルキルシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等)やインク受容性の樹脂層(例えば、ポリアルキル、ポリエーテルウレタン樹脂層等)等をインク受容層として用いる形態であってもよい。
【0215】
第2実施形態に係る記録装置11は、インク受容層やインク等の特性に応じて、適宜構成を変更してもよい。具体的には、例えば、インク受容層を中間転写ベルト12表面に静電的に付着させず、物理的に吸着させる場合(例えば、インク受容性の液層を用いる場合)においては、帯電装置28を用いない形態もありうる。
【実施例】
【0216】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0217】
<中間転写ベルト1の作製>
ポリイミド(宇部興産性U−plex)100質量部に導電性カーボンブラック(FW200)を22質量部分散させ配合してNMP(N−メチルー2ピロリドン)500質量部に溶解させた混合分散液を用いて、内径300mmφ、長さ500mmのSUS製円筒マンドレルにフローコートによる塗布を行い、膜厚76μmの導電性ポリイミド膜を製膜した。
【0218】
その後、120℃の条件で1時間乾燥を行い、その後390℃の条件で3時間焼成することにより、基材ポリイミドベルトを得た。
【0219】
次いで、東レ・ダウ製LSR(硬度40度)シリコーンゴムを酢酸ブチルで希釈して20重量%に調整し、上記基材ポリイミドベルトの表面にスプレーコートし、80℃の条件で30分乾燥することにより、133μmの弾性層を形成した。
【0220】
これに表面層としてPFA収縮チューブ(グンゼ製)を被覆後、130℃の条件で30分加熱し、上記弾性層の表面に33μmの表面離型層を形成することにより、中間転写ベルト1を得た。中間転写ベルト1の表面離型層に対するインクの接触角、並びに、中間転写ベルト1全体の体積抵抗率、表面抵抗率、及び表面硬度について表1に示す。なお、上記インクの接触角は、後述する画像形成評価に用いたインクの接触角である。
【0221】
<中間転写ベルト2乃至14の作製>
カーボンブラック含有量、弾性層の膜厚、表面離型層の材料を表1のようにした以外は、中間転写ベルト1と同様にして、中間転写ベルト2乃至14を得た。中間転写ベルト2乃至14の表面離型層に対するインクの接触角、並びに、中間転写ベルト2乃至14全体の体積抵抗率、表面抵抗率、及び表面硬度について表1に示す。また、中間転写ベルト8から11においては、PVdF収縮チューブ(潤工社製)を用いて中間転写ベルト1と同様に被覆し30μmの表面離型層を形成した。
【0222】
【表1】

【0223】
<インク受容性粒子の作製>
・スチレン/n−ブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体粒子(極性単量体比率33%):100質量部
・非晶質シリカ(Aerosil TT600 / Degussa社):2質量部
上記成分を攪拌混合し、球換算平均径10μmの粒子を作製し、インク受容性粒子を得た。
【0224】
<インクの作製>
・C.I.Pigment Blue 15:3 : 5質量部
・スチレン/n−ブチルメタクリレート/メタクリル酸:2質量部
・グリセリン:20質量部
・トリエチレングリコール:5質量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:2質量部
・オルフィンE1010 (日信化学社製):0.75質量部
・水:残部
上記材料を混合し、インクを得た。このインクの表面張力は32mN/mであった。
【0225】
<画像形成評価>
上記において作製した中間転写ベルト(中間転写ベルト1乃至14)を、上記実施形態2で説明したインクジェット画像形成装置に装着し、画像形成を行った。具体的な画像形成の条件は、以下の通りである。
【0226】
帯電装置の印加電圧:1kV
インクジェット記録ヘッド:ピエゾ方式、解像度600dpi(dpi:1インチあたりのドット数)
クリーニング装置:ブレードクリーニング方式
記録媒体:アート紙(OK金藤)
【0227】
―転写前における画像の画像ずれ評価―
上記条件において、画像エリアカバレッジ45%のハイライト画像を、中間転写ベルト上に形成し、記録媒体に転写する前に目視にて画像ずれの有無を観察した。評価基準は以下の通りであり、G1からG3であれば実用上問題ない。評価結果を表2に示す。
【0228】
G1:転写前画像の濃度ずれが、全く見られない。
G2:転写前画像の濃度ずれが若干見られるが、実用上問題ないレベル。
G3:転写前画像の濃度ずれが所々見られるが、実用上問題ないレベル。
G4:転写前画像の濃度ずれが著しく見られ、実用上問題となるレベル。
【0229】
―濃度ムラの評価―
上記条件において、画像エリアカバレッジ45%のハイライト画像を形成し、目視にて濃度ムラの有無を観察した。評価基準は以下の通りであり、G1からG3であれば実用上問題ない。評価結果を表2に示す。
【0230】
G1:ハイライト画像の濃度ムラが、全く見られない。
G2:ハイライト画像の濃度ムラが若干見られるが、実用上問題ないレベル。
G3:ハイライト画像の濃度ムラが所々見られるが、実用上問題ないレベル。
G4:ハイライト画像の濃度ムラが著しく見られ、実用上問題となるレベル。
【0231】
―画像かすれの評価―
上記条件において、画像エリアカバレッジ45%のハイライト画像を形成し、目視にて画像かすれの有無を観察した。評価基準は以下の通りであり、G1からG3であれば実用上問題ない。評価結果を表2に示す。
【0232】
G1:ハイライト画像の画像かすれが、全く見られない。
G2:ハイライト画像の画像かすれが若干見られるが、実用上問題ないレベル。
G3:ハイライト画像の画像かすれが所々見られるが、実用上問題ないレベル。
G4:ハイライト画像の画像かすれが著しく見られ、実用上問題となるレベル。
【0233】
―画像の表面平滑性の評価―
上記ハイライト画像の光沢度を、BYK−Gardner製のグロスメーター「micro−TRI−gloss」を用い、サンプルへの入射光角度を75度とする条件で測定した。光沢度が80%以上であれば実用上問題はない。結果を表2に示す。
【0234】
―細線の再現性の評価―
上記条件において、画像エリアカバレッジ5%相当の1point格子状ライン像を形成し、目視にて濃度ムラの有無を観察した。評価基準は以下の通りであり、G1からG3であれば実用上問題ない。評価結果を表2に示す。
【0235】
G1:ライン像の濃度ムラが、全く見られない。
G2:ライン像の濃度ムラが若干見られるが、実用上問題ないレベル。
G3:ライン像の濃度ムラが所々見られるが、実用上問題ないレベル。
G4:ライン像の濃度ムラが著しく見られ、実用上問題となるレベル。
【0236】
―転写効率(%)の評価―
転写効率(%)の評価は重量換算で行い、具体的な測定方法は以下の通りである。
単位面積あたりのベルトに塗布量または展開量に対する、用紙転写後の単位面積あたりの定着(硬化)重量より求めた転写率を転写効率とした。転写効率(%)は、88%以上であれば実用上問題ない。評価結果を表2に示す。
【0237】
―中間転写ベルトクリーニング性の評価―
上記条件において、ハイライト画像形成した後中間転写ベルトを取り出し、目視にて表面の残留汚染物質の有無を観察した。評価基準は以下の通りであり、G1からG3であれば実用上問題ない。評価結果を表2に示す。
【0238】
G1:残留汚染物質が、全く見られない。
G2:残留汚染物質が若干見られるが、実用上問題ないレベル。
G3:残留汚染物質が所々見られるが、実用上問題ないレベル。
G4:残留汚染物質が著しく見られ、実用上問題となるレベル。
【0239】
―中間転写ベルト摩耗耐久性の評価―
上記条件において、ハイライト画像を10万枚形成した後中間転写ベルトを取り出し、目視にて表面摩耗の有無を観察した。評価基準は以下の通りであり、G1からG3であれば実用上問題ない。評価結果を表2に示す。
【0240】
G1:表面摩耗が、全く見られない。
G2:表面摩耗が若干見られるが、実用上問題ないレベル。
G3:表面摩耗が所々見られるが、実用上問題ないレベル。
G4:表面摩耗が著しく見られ、実用上問題となるレベル。
【0241】
【表2】

【0242】
表2の結果から、実施例1から実施例13によれば、比較例1に比べて、転写前の画像ずれが抑制され、定着画像の濃度ムラが抑制され、定着画像の光沢度(表面平滑度)、細線の再現性、及び転写効率が優れ、中間転写ベルトのクリーニング性及び摩耗耐久性にも優れることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1】本発明の第1実施形態に係る中間転写ベルトの層構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る記録装置を示す概略構成図である。
【図3】実施形態に係るインク受容性粒子の一例を示す概念図である。
【図4】実施形態に係るインク受容性粒子の他の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0244】
8 記録媒体
11 記録装置
12 中間転写ベルト(中間転写無端ベルト)
16 インク受容性粒子(インク受容層)
18 粒子塗布装置(インク受容層形成手段)
20 インクジェット記録ヘッド(インク吐出手段)
23 転写装置(転写手段)
24 クリーニング装置
25 定着装置(定着手段)
28 帯電装置
100 基材(ポリイミド樹脂基材)
102 弾性層
104 表面離型層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
ポリイミド樹脂基材と、
前記ポリイミド樹脂基材の外周面上に形成された弾性層と、
前記弾性層の外周面上に形成された表面離型層と、を有するインクジェット記録用中間転写無端ベルト。
【請求項2】
前記表面離型層の外周面に対するインクの接触角は、20度以上80度以下である請求項1に記載のインクジェット記録用中間転写無端ベルト。
【請求項3】
ベルト全体の体積抵抗率は、1011Ω・cm以上1013Ω・cm以下である請求項1又は2に記載のインクジェット記録用中間転写無端ベルト。
【請求項4】
前記弾性層の膜厚は、5μm以上500μm以下である請求項1から3までのいずれか1項に記載のインクジェット記録用中間転写無端ベルト。
【請求項5】
表面硬度は、30度以上90度以下である請求項1から4までのいずれか1項に記載のインクジェット記録用中間転写無端ベルト。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載のインクジェット記録用中間転写無端ベルトと、
インクを受容するインク受容層を前記インクジェット記録用中間転写無端ベルト表面上に形成するインク受容層形成手段と、
前記インク受容層にインクを吐出するインク吐出手段と、
前記インクが吐出された前記インク受容層を前記インクジェット記録用中間転写無端ベルトから記録媒体に転写する転写手段と、を有する記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−148908(P2009−148908A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326347(P2007−326347)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】