説明

インクジェット記録用紙

【課題】インクジェット記録方式による印刷時において、コックリングが少なく、また、多層塗工した際において、塗工面に生じる泡が少なく表面が荒れないインクジェット記録用紙を提供することを課題とする。
【解決手段】インクジェット記録用紙において、その支持体について樹脂含浸を行い、その樹脂の含浸率を支持体に対して5〜20質量%とすることにより、上記の課題を解決する。さらに、樹脂の含浸率は支持体に対して11〜20質量%になるように含浸すると、より好ましい記録用紙となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用紙に関するものである。詳しくは、低坪量の記録用紙であってもインクジェット記録方式による印刷時にコックリングの発生が少なく、さらにはインク受容層を多層塗工した場合でも塗工面において泡の発生が少ないインクジェット記録用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、近年の目覚しいプリンター技術の発達、プリンター本体価格の低下、メンテナンスの簡便さ等の理由により、家庭用、商業用、工業用等において様々な用途に使用されている。さらに、デジタルカメラの普及と共にその画像データの出力手段としてインクジェットプリンターが多く使用されており、それに伴い、高画質化が要求される等、インクジェット記録用紙に要求される性能はますます高度化している。
【0003】
商業用途においてはインクジェット記録用紙にオフセット印刷が施されることが多いが、そこで使用される印刷用のインクには顔料が使用されているため、印字面の画質がオフセット印刷により近い顔料インクを用いたインクジェットプリンターが近年汎用されている。特に最近ではオフセット印刷のプルーフを作成する際にインクジェット記録方式が取られるようになり、オフセット印刷との再現性が求められるケースが増えている。ここでいうプルーフとは色校正刷りのことを意味する。ところで、インクジェット記録方式およびインクジェット用インクは、その用途に応じて多岐にわたる種類が存在しており、それに伴いプルーフ用の記録用紙も品種を増やす必要性がある。特に大判プロッターによる印刷を行う際には、プルーフとして使用されるインクジェット記録用紙が大量のインクジェット用インクの水分を吸収することで生じるシワ(コックリング)が少ないことが要求される。コックリングが発生すると、外観上の問題のみならず、シワによる凹凸の発生によって、インクジェット記録用紙の印字面とインクジェット用インクのヘッド部分とのギャップが狭くなることから、場合によってはヘッド部分に印字面が接触することで擦れの発生が問題となる。この現象は基材となる紙が低坪量であるほど影響が大きくなるが、記録用紙が広告や雑誌等のプルーフとして使用される場合は基材となる紙が低坪量となることが多く、そのため問題となっていた。
【0004】
特に近年のインクジェット出力に関する技術の発展は目覚しく、出力解像度については各ハードメーカーが均衡している状態である。さらに、出力速度について高速化が図られており出力される紙を中心とするメディアに対する要望も大きくなっている。ここで重要となるのがコックリングの度合いである。理想的にはコックリングが無いことであるが、紙を使用している以上は皆無にすることは非常に難しく、この問題を解決しようと取り組んでいるメディアメーカーは少なくない。
【0005】
コックリングが生じる主原因として以下のように推定される。インクジェット記録用紙の基紙を抄紙機で製造する際に、パルプ繊維は抄紙機の流れ方向に配列している。そのため、インクジェット用インクが記録用紙に吸収されてパルプ繊維が膨潤する際に、パルプ繊維の膨潤の度合いが抄紙機の流れ方向と幅方向で異なると考えられる。その結果、支持体である基紙に凹凸の波打ちが発生し、コックリングが生じる。
【0006】
特許文献1では、コックリング防止策として多孔質顔料を含有するインク受容層を設けたインクジェット記録媒体において、少なくとも2枚の紙シートの間に合成フィルムを挟み、ニップロールを用いて一体化した支持体を使用する方法が提案されている。しかし、このようなフィルムを挟んだ用紙は、バリアー性のあるフィルムが中間層にあるため、インクジェット吸収層を設ける際に印字面に泡が生じる可能性があった。さらに、フィルムを使用するため、リサイクル性に乏しいという問題もあった。
【0007】
特許文献2では、パルプを使用せずに合成繊維から成る不織布を使用し、ガラス転移温度が−20℃以上の樹脂を含浸させ、その一方の面にインク受理成分を塗設し、反対面にガラス転移温度が−20℃以下である樹脂からなる樹脂層、バックシートを順次積層したインクジェット記録シートが提案されている。このように不織布を使用した場合、基材によるインクの吸収性がないためにコックリングに関しては非常によい効果を生じる。しかしながら、インクの吸収性が全くないために、インクジェット吸収層を非常に多く設けなければならないというコストデメリットが問題となっていた。
【0008】
コックリングの発生を防止する目的として特許文献3では、形状記憶樹脂0.1〜10重量%および繊維状物を含有する基材からなるインクジェット記録用紙が提案されている。しかし、この発明では基材に含まれる樹脂の量が充分でない場合があり、近年のインクジェット出力速度の高速化を考慮すると、コックリングへの対応が不十分であった。さらには、その高速化によってヘッドとインクジェット記録用紙間の擦れが発生する可能性があり、大判プロッターでの印刷への対応が困難であるといった問題があった。
【0009】
支持体がパルプ繊維を主体とする場合のコックリング対策としては、支持体上にバリアー層を塗設することで、パルプ繊維への水分の移行を抑える方法が一般的に取られている。例えば、樹脂を塗設した支持体を使用している写真画質用の印画紙タイプのインクジェット記録用紙が挙げられる。しかし、このタイプのインクジェット記録用紙は、インク受容層塗工時に樹脂層と反対の面からのみ水分を揮発させて乾燥しなければならないため、生産効率の向上を図ることが難しいという欠点があった。また、バリアー層を塗工した際に、一度乾燥したインク受容層の上に更なる塗工層を設けようとすると、乾燥時に発生する水蒸気の逃げ道が、バリアー層が下層にあるために上部へと逃げるしかなく、その結果、気泡となって塗工面に出てきて塗工面が荒れてしまうといった欠点も有していた。
【0010】
【特許文献1】特開平11−180037号公報
【特許文献2】特開2000−203150号公報
【特許文献3】特開2002−219851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、低坪量であってもインクジェット記録方式による印刷時にコックリングの発生が少なく、さらにはインク受容層を多層塗工した場合でも塗工面に発生する泡が少ないインクジェット記録用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも一方の面にインク受容層を設けたインクジェット記録用紙において、支持体が樹脂含浸され、その樹脂含浸率が支持体に対して5〜20質量%であることを特徴とするインクジェット記録用紙である。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、支持体に対する樹脂含浸率が11〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、支持体となる基紙に樹脂を含浸して繊維を樹脂処理することで、コックリングの発生を抑え、多層塗工を施しても乾燥時に発生する気泡による面の荒れが発生しにくい、オフセット印刷用プルーフとして好適に使用できるインクジェット記録用紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明はインクジェット記録用紙において、支持体を樹脂含浸することにより、インクジェットプリンターでの画像形成時に支持体の主成分であるパルプ繊維が水分を吸収することを抑制し、且つ、支持体内でパルプ繊維同士が点接着している箇所を樹脂で補強することによってパルプ繊維の膨潤を抑えることで、コックリングを防止するものである。本発明における含浸紙をインクジェット記録用紙の支持体として使用することにより、前記した問題を解決することができ、さらには、製造時において塗料が支持体上に付与されたときに生じるシワの発生を抑えたり、支持体上に下層としてバリアー層を設けた場合と比べて塗料の乾燥速度を上げることが可能となるため、生産効率を向上させることができるという効果もある。
【0016】
本発明においては、支持体に含浸する樹脂は、含浸率が支持体に対して5〜20質量%の範囲で含浸させることが必要である。これにより、コックリングおよび泡の発生を抑制することが可能となる。含浸率が5質量%未満では樹脂による補強が完全でないため、コックリングを防止することが困難である。また、含浸率が20質量%を超えると、多層塗工時に泡が発生し易くなる。また、樹脂の含浸率を11〜20質量%の範囲で調整すると、インクジェット出力速度の高速化に対応できるので好ましい。ここでいう含浸率とは下記の式により算出される。
含浸率(質量%)=100×(含浸された樹脂の質量)/(含浸前の支持体の質量)
【0017】
本発明で使用する支持体に用いる材料としては、製紙用として一般に用いられる木材パルプ、例えば針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等を単独もしくは混合物を主体にして、これに必要に応じて麻、竹、藁、ケナフ等の非木材パルプやカチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ、ミクロフィブリル化パルプ、レーヨン、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリエステル等の再生繊維、半合成繊維、合成繊維を適宜混合して用いることができる。
【0018】
本発明で使用する支持体を形成する際には、不透明性、白色度の向上等を目的として一般的に製紙原料として使用される填料を使用することができる。填料の種類として、例えばクレー、カオリン、タルク、二酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、合成非晶質シリカ、ゼオライト等の無機系填料やスチレン系あるいはアクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、合成樹脂等の有機系填料が挙げられる。さらに、填料以外にも製紙用補助剤として、歩留り向上剤、耐水化剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、着色剤、定着剤等を必要に応じて適宜添加することができ、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機、あるいはこれらのコンビネーション抄紙機等、既存の抄紙機を用いることで支持体が得られる。
【0019】
本発明で用いられる支持体の坪量については特に限定はないが、オフセット印刷用のプルーフとして利用する場合は塗工後の坪量で60〜250g/mになることが好ましい。このように、塗工後の坪量が60〜90g/mといった低坪量のものであっても本発明の効果が得られる。塗工後の坪量が60g/m未満のものは製造効率が著しく悪くなり、適さない。
【0020】
本発明において支持体を樹脂含浸する方法としては、オンマシンまたはオフマシンのいずれの方式であってもかまわない。オンマシンとは、抄紙工程中に樹脂含浸できる装置を組み込むことで抄紙工程中に樹脂含浸ができるものである。一方、オフマシンとは一旦抄紙されたシートを巻取り、抄紙工程中ではなく別の設備にて樹脂を含浸するものである。
【0021】
本発明で使用できる含浸剤としては、SBR、MBR等の合成ゴムエマルジョン、塩化ビニルエマルジョン、塩化ビニリデンエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン等の単独エマルジョンまたはこれらの共重合エマルジョンを単独で、あるいは必要に応じて1種類以上をこれに混合して使用できる。このとき、モノマーの種類については限定されるものでなく、含浸適性があればいずれのエマルジョンであってもかまわない。
【0022】
前記含浸剤には、必要に応じて不透明性、白色度の向上等を目的として、一般的に使用される填料を使用することができる。填料の種類として、例えば二酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム、ゼオライト等の無機系填料やスチレン系あるいはアクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、合成樹脂等の有機系填料が挙げられる。
【0023】
前記含浸剤には、必要に応じてその他の助剤、例えば耐水化剤、架橋剤、粘度調整剤、染料、顔料等を適宜添加して使用することができる。
【0024】
本発明で用いられるインク受容層は特に指定はなく、一般的なインクジェット適性を有するものが適用できる。例えばインク受容層に用いられる填料としては、クレー、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタン、タルク、コロイダルシリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホワイト、合成非晶質シリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ゼオライト等の填料が単独、もしくはこれに必要に応じて1種類以上を組み合わせて用いられる。またインク受容層に用いられるバインダーとしては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性ビニル樹脂、デンプン、酸化デンプン、変性デンプン等の澱粉あるいは澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カゼイン、大豆タンパク、ゼラチン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、SBR、MBR、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、無水マレイン酸樹脂、アクリル酸エステル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、架橋ポリメタクリル酸メチル等が単独、もしくは組み合わせて用いられる。
【0025】
またインク受容層には性能を損なわない範囲で、一般的な製紙用加工薬品を使用することができる。例えば、消泡剤、抑泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、分散剤、蛍光増白剤、耐水化剤、防腐剤、染料、顔料等の助剤が必要に応じて使用でき、これらはインク受容層に添加してもよく、別の層として設けてもよい。
【0026】
本発明では、インク受容層を単層で設けてもよく、または2層以上設けてもかまわない。またインク受容層は片面のみに限定されず、両面に設けてもよい。
【0027】
インク受容層を支持体へ塗工する方法としては、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、ロールコーター、カーテンコーター等の一般的な塗工方式を適宜使用できる。
【実施例】
【0028】
[含浸用原紙の作成]
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)70質量部、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)30質量部をダブルディスクリファイナーにて叩解し、カナディアンスタンダードフリーネスによる叩解度が540mLからなるパルプスラリーを調製した。パルプスラリー100質量部に対してクレー(商品名「HTカオリン」、エンゲルハード社製造)9質量部、酸化チタン(商品名「R−820」、チタン工業(株)製造)3.5質量部を混合した。さらに、湿潤紙力増強剤(商品名「WS4024」、星光PMC(株)製造)を対パルプ質量当たり固形分濃度で1.0質量部、ポリアクリルアミド系紙力剤(商品名「DA4112」、星光PMC(株)製造)を対パルプ質量当たり固形分濃度で0.1質量部添加して原料スラリーを調製した。この原料スラリーを長網抄紙機により常法にて坪量55g/mになるように抄紙し、含浸用原紙を得た。
【0029】
〔塗工液Aの調製〕
コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスOXS」、日産化学工業(株)製造)70質量部、合成非晶質シリカ(商品名「ファインシールX37」、(株)トクヤマ製造)30質量部、ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールPVA−235」、(株)クラレ製造)6質量部、カチオンアクリル樹脂(商品名「SS2704」、星光PMC(株)製造)2質量部、さらに助剤を適宜加えて塗工液Aを調製した。
【0030】
〔塗工液Bの調製〕
コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスOXS」、日産化学工業(株)製造)100質量部、ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールPVA−235」、(株)クラレ製造)6質量部、カチオンアクリル樹脂(商品名「SS2704」、星光PMC(株)製造)2質量部、さらに助剤を適宜加えて塗工液Bを調製した。
【0031】
〔バックコート液の調製〕
カオリン(商品名「UW−90」、エンゲルハード社製造)100質量部、尿素リン酸エステル化デンプン(商品名「MS−4600」、日本食品化工(株)製造)10質量部、スチレン・ブタジエン系共重合ラテックス(商品名「スマーテックス750」、日本エイアンドエル(株)製造)30質量部添加し、さらに助剤を適宜加えてバックコート液を調製した。
【0032】
[実施例1]
得られた含浸用原紙にアクリル樹脂(商品名「ボンロンS1293」、三井化学(株)製造)を含浸率が15質量%になるように含浸し、乾燥して支持体を得た(以下、「支持体A」と記載)。この支持体Aの表面にインクジェット用のインク受容層として塗工液Aと塗工液Bとを、エアーナイフコーターを用いて以下のように塗工した。はじめに塗工液Aを固形分で15g/mになるように塗工し、さらにその表面に塗工液Bを固形分で8g/mになるように塗工した。またカール対策として、支持体Aの裏面に水を塗工して、インクジェット記録用紙を得た。
【0033】
[実施例2]
実施例1で得られた支持体Aの表面に、インクジェット用のインク受容層として塗工液Bを固形分で17g/mになるように塗工した。さらにその表面に塗工液Bを固形分で8g/mになるように塗工した。またカール対策として、支持体Aの裏面に水を塗工して、インクジェット記録用紙を得た。
【0034】
[実施例3]
実施例1で得られた支持体Aに、インクジェット用のインク受容層として塗工液Bを固形分で17g/mになるように塗工した。さらにその表面に塗工液Bを固形分で8g/mになるように塗工した。またカール対策として、支持体の裏面にバックコート液を固形分で4g/mになるように塗工し、インクジェット記録用紙を得た。
【0035】
[実施例4]
含浸用原紙にSBRラテックス(商品名「スマーテックスPA−1013」、三井化学(株)製造)を含浸率が15質量%になるように含浸して支持体を作成した以外は実施例1と同様の操作を行って、インクジェット記録用紙を得た。
【0036】
[実施例5]
含浸率が5質量%になるように含浸した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0037】
[実施例6]
含浸用原紙と同様の方法で作成した坪量30g/mの原紙に、アクリル樹脂(商品名「ボンロンS1293」、三井化学(株)製造)を含浸率が15質量%になるように含浸し、乾燥して支持体を得た。この支持体の表面にインクジェット用のインク受容層として塗工液Bを固形分で17g/mになるように塗工した。さらにその表面に塗工液Bを固形分で9g/mになるように塗工した。またカール対策として、支持体の裏面に水を塗工して、坪量60g/mのインクジェット記録用紙を得た。
【0038】
[比較例1]
前述で得られた含浸用原紙に対して、含浸率が3質量%になるように含浸した以外は実施例1と同様と同様の操作を行って、インクジェット記録用紙を得た。
【0039】
[比較例2]
前述で得られた含浸用原紙に対して、含浸率が25質量%になるように含浸した以外は実施例1と同様の操作を行って、インクジェット記録用紙を得た。
【0040】
上記の実施例1〜6および比較例1、2で得られたインクジェット記録用紙のインクジェット印刷適性、コックリング、泡の発生について評価を行い、結果を表1に示す。各サンプルの性能評価をそれぞれ下記の方法で行った。
【0041】
[インクジェット印刷適性]
インクジェット印刷適性については、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色のグラデーションパターンおよび線、写真画像を含んだ印刷評価パターンを用いて、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターMC−5000を使用して、印刷の設定はMC光沢紙、きれいモードにて印刷した。印刷した後に、各色の発色および線幅、写真画像のにじみ等について評価をした。上記評価項目について、総合的に判断して、含浸していない通常の基材として使用される用紙と差異が無いものか否かを目視で判断した。
【0042】
[コックリング]
コックリングの評価は、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターMC−5000を使用して、ソフトRIPを使用してインク吐出量が300%になるように調整し、黒のベタ印刷を行った際における波打ちの程度を観察し、実使用上問題ないレベルか否かを目視で判断した。コックリングの発生がないものを○とし、わずかに発生したものを△、明らかに発生したものを×とし、○と△を合格とした。
【0043】
[塗工層表面における泡の発生]
泡の発生についての試験は、塗工液を塗工する前の支持体について試験を行った。例えば実施例1であれば、塗工液Aを塗工する前の段階である支持体Aについて当該試験を行った。以下、当該試験の説明を行う。各支持体に塗工液Aをワイヤーバーを用いて固形分で20g/mになるように塗工層を設けて、オーブンで乾燥した。その塗工液Aの塗工面上に塗工液Bを同様にワイヤーバーで固形分で10g/mになるように塗工し、乾燥する前に泡の発生状態を観察した。さらにオーブンにて乾燥し、乾燥後の塗工面に泡状の表面の荒れが存在するか否かを目視で確認した。泡の発生がオーブンで乾燥する前後で存在しないものを○とし、いずれかでも発生したものを×とした。
【0044】
【表1】

【0045】
本発明における実施例1〜5は、コックリングや塗工層表面における泡の発生もなく、良好なインクジェット印刷適性を得ることができ、オフセット印刷におけるプルーフとして好適に使用できることが確認された。これに対して比較例1では支持体における樹脂の含浸率が少ないためインク中の水分の吸収によって紙層間が膨潤し、コックリングが発生していることがわかる。また、比較例2では樹脂の含浸率が多すぎてインクジェット受理層の塗工面の乾燥時に泡が発生し、インクジェット印刷適性に悪影響を及ぼしていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によるインクジェット記録用紙はコックリングが非常に少ないことから、大判プロッターに使用した際にもヘッドとインクジェット記録用紙間の擦れが発生しないため、良好な印刷が可能である。さらに、低坪量のインクジェット記録用紙においてもコックリングや塗工面の泡の発生を抑えることができるため、広告やパンフレット等に使用する薄物の印刷用紙においても、オフセット印刷用のプルーフとして好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面にインク受容層を設けたインクジェット記録用紙において、支持体が樹脂含浸され、その樹脂含浸率が支持体に対して5〜20質量%であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【請求項2】
支持体に対する樹脂含浸率が11〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙。



【公開番号】特開2007−296649(P2007−296649A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124002(P2006−124002)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000225049)特種製紙株式会社 (45)
【Fターム(参考)】