説明

インクジェット記録装置、インクジェット記録方法

【課題】 記録ヘッドからインクを吐出したときに発生するサテライトやインクミストによる画像品質の低下を低減させる。
【解決手段】 記録ヘッドのフェース面とプラテンとの間に風送り機構において発生させた風を送り、サテライトやインクミストを記録領域外に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置、及びインクジェット記録装置を用いたインクジェット記録方法に関し、特に、記録ヘッドからインクを吐出する際に発生するサテライトやミストを回収する手段を有するインクジェット記録装置、及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及にともないプリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有する記録装置が、オフィスや一般家庭等でコンピュータやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーションの出力機器として広く接続されている。前記の記録装置としては、電子写真方式、インクジェット方式、サーマル方式等が普及しているが、中でもインクジェット方式は、紙やOHP用シート、フィルムだけでなく、布、段ボール、陶器、金属等といった媒体にも記録することが可能である。更に平面の媒体だけでなく、凹凸がある媒体や曲面、エッジ部にも印刷可能であることから、一般的に使用されているプリンタとしてだけでなく、業務用プリンタとしても幅広く活用されている。なお、インクジェット方式の記録装置は、電気熱変換素子や電気機械変換素子を利用してノズルから液滴を吐出することで画像を形成する。
【0003】
特にインクジェット方式の記録装置においては、記録ヘッドの小型化が容易であること、ノンインパクト方式であるため騒音が少ないこと、多色のインクを使用してカラー画像を記録することが容易であること、ランニングコストが安いこと、高精細な画像を高速で記録することができること等の利点を有している。さらに、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式の記録ヘッドは、エッチング蒸着、スパッタリング等の半導体製造プロセスを経て、基板上に製膜された電気熱変換体、電極、液路壁、天板等を形成することにより、高密度の液路配置(吐出口配置)を有するものを製造することができ、一層のコンパクト化(小型化)を図ることができる。
【0004】
インクジェット方式の記録装置は、記録ヘッドからインク滴を吐出する際に、主滴の他に主滴よりも小さい液滴が同時に吐出される。主滴と同時に吐出された小さい液滴が記録媒体上に着弾すると、記録媒体上に着弾した主滴の近くに、主滴よりも小さいサイズのドットが形成される。主滴近くに着弾するドットとなる、主滴と同時に吐出された小さい液滴のことをサテライトと称する。主滴以外の箇所にサテライトが着弾することにより、画像品位は低下してしまう。また、サテライトとなるインク滴よりもさらに小さく霧状のインク滴が発生することもある。この霧状のインク滴をインクミストと称する。インクミストは、インク吐出に伴う記録ヘッド付近の気流に流されて、装置内を漂うことで装置内が汚れたり、記録媒体に付着することで画像品位が低下してしまうことがある。記録媒体にサテライトやインクミストが着弾すると、画像にノイズが発生したり、ハーフトーン画像においては濃度ムラや色味が変化してしまうなどの課題となる。これらのサテライトやインクミストによる画像品位の低下を抑制させるためには、サテライトやインクミストを画像領域外に運び、記録媒体に付着することを低減させる必要がある。
【0005】
サテライトやインクミストが記録媒体に付着することを低減させる方法として、記録ヘッドや記録媒体の近くにサテライトやインクミストを回収、分散させるための負圧手段を設ける構成が考案されている(例えば、特許文献1〜4)。特許文献1には、キャリッジの記録媒体と対向しない位置に、キャリッジの移動に伴ってインク吐出口近傍の気圧よりも低い気圧を発生させる手段を設けることで、インク吐出口の近傍からキャリッジの低い気圧の場所への気流の発生させ、記録ヘッド面とプラテン間に浮遊したサテライトやインクミストを画像領域外に流す構成が開示されている。また、特許文献2には、キャリッジにサテライトやインクミストを吸引、回収するためのファンとフィルターを設け、キャリッジの主走査方向の動作を利用してキャリッジと平行な方向へ大気を循環させることでインクミストを回収する構成が開示されている。特許文献3には、記録媒体と記録ヘッドの吐出部との間に送風するファンをキャリッジに設け、発生したサテライトやインクミストをファンにより未記録領域に分散させる構成が開示されている。さらに、特許文献4には、インクの吐出速度に応じて、記録ヘッドと記録媒体との近傍に設けられたファンの駆動の有無を制御する構成が開示されている。
【特許文献1】特開2001−113733号公報
【特許文献2】特開平07−025007号公報
【特許文献3】特開平06−166173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載された技術は、キャリッジの移動に伴い発生する気圧差により記録ヘッドとプラテン間に浮遊したサテライトやインクミストを画像領域外に運ぶものであるが、その機能は十分ではなく、完全に除去することはできない。そのため、特に白地の部分に浮遊したサテライトやインクミストによる画像ノイズが発生したり、ハーフトーン画像においては、濃度ムラや色味に変化をもたらす等の課題がある。更に使用頻度が増えると気圧差により吸い出したサテライトやインクミストが流路の外壁に付着することで、その機能が低下するといった問題点もある。また、特許文献2に記載された技術は、インクミスト回収には効果があるもののキャリッジの双方向印刷には対応しておらず、高速印刷を達成することができないという問題点がある。更に特許文献3に記載された技術は、サテライトやインクミストを送風して、回収することで画像ムラは改善するものの、インクジェット記録装置の設置された環境温度によってインク温度が変動することにより、発生するサテライトやインクミストの量は異なるため、それぞれの条件に適した風を送る必要があるが、なされていない。
【0007】
本発明は上記の観点に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、キャリッジに設けられた風送り機構より得られた風速あるいは風量を記録ヘッドフェース面とプラテン間にキャリッジ移動方向に対して垂直方向に流すことで画像品質低下の主要因であるサテライトやインクミストを画像領域外に運ぶことである。特にサテライトやインクミストが大量に発生する、インクジェット記録装置の設置された環境温度が高い場合には、風送り機構からの風の風速あるいは風量を高めに切り替え、サテライトやインクミスとの発生が比較的少ない、インクジェット記録装置の設置された環境温度が低い場合には、風送り機構からの風速あるいは風量を低く切り換えたり、停止することで画像ノイズや濃度ムラによる画像品質低下を防止する。特にサテライトやインクミスト発生量が同程度の環境温度の場合には、切り換えない場合もある。また、風送り機構から排出される風を回収する回収手段によりサテライトやインクミストを回収することで、機内の外壁やキャリッジ周辺部材にサテライトやインクミストが付着することはなく、使用頻度が増えた場合でも、その機能は低下せず、安定して高品位な画像を高速に形成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、記録ヘッドの吐出口から複数のインク滴を吐出して、キャリッジの往復運動時に記録を行うインクジェット記録装置において、前記キャリッジに具備された記録ヘッドフェース面とプラテンの間に風を送る風送り機構と、前記インクジェット記録装置が設置されている環境温度を検知する手段とを有し、前記検知した環境温度によって、前記風送り機構から排出される風の風速あるいは風量が切り替わることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、サテライトやインクミストが発生する状況に応じて制御する送風手段から排出された風により、流されたサテライトやインクミストを回収手段で回収するため、装置内の外壁やキャリッジ周辺部材にサテライトやインクミストが付着することはなく、装置の使用頻度が増えた場合でも回収機能が低下せず、安定して高品位な画像を高速に形成することができる。特に、インクジェット記録装置の設置された環境温度によって、サテライトやインクミストの発生量が異なるため、環境温度に応じて送風手段の駆動条件を切り替えることにより、画像品質が格段に向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係わるインクジェット記録装置を示す上面図である。
【0012】
図1において、2は紙搬送系ユニットを含む装置本体を示し、本装置は比較的大判の記録用紙(記録媒体)に記録を行うものである。1はキャリッジを示し、12個の記録ヘッド5を搭載して移動し、これにより、記録ヘッド5の記録用紙に対する走査が可能となる。すなわち、キャリジ1は、ガイド軸33によりこれに沿って移動可能に案内支持されており、また、ベルト34を介して伝達される駆動力によって往復移動できるものである。なお、使用インクとしては、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの他に、更に粒状間の低減を目的とした淡シアン、淡マゼンタを加えた計6色が採用されており、また、記録スピードの向上を目的として、1色のインクに対して2個の記録ヘッドが使用されている。
【0013】
30A、30B、30Cおよび30Dは、キャップを備えて各記録ヘッド5の不図示のポンプを駆動源として吸引動作を行い、また、記録ヘッドの不使用時に記録ヘッドを保護する回復機構を示す。31は各記録ヘッド5の予備吐出動作によって吐出されるインクを受容する予備吐出インク受領箱、32は各記録ヘッド5の吐出口面のワイピング動作を行うためのワイピング機構をそれぞれ示す。
【0014】
以上の装置構成において、キャリッジ1は、ホスト装置から記録データを受け取ると、図示しない紙搬送ユニットによって送られる記録用紙に記録すべく、ガイド軸33に沿った方向(主走査方向)に移動するように制御され、これにより、各記録ヘッド5の走査が行なわれ記録用紙に1バンド分の画像などが記録される。そして、記録用紙はキャリッジ1と直交する方向(副走査方向)に1バンド分、紙搬送ユニットによって搬送される。キャリッジ1の移動経路にそってそのキャリッジの移動位置を検出するためのエンコーダフィルム35が配設されており、キャリッジ1に搭載されたエンコーダセンサがこれを検出する信号に基づいてキャリッジの位置を知ることができる。また、このエンコーダの位置検出に基づいてキャリッジ1のホームポジションへの移動が制御される。
【0015】
なお、図示していないが、それぞれの記録ヘッド5には、上記の副走査方向に1200dpi(ドット/インチ)の密度で、1296個の吐出口が配列されており、各吐出口に連通したインク液路内には、インクを局所的に加熱して膜沸騰を起こさせ、その圧力によってインクを吐出させるための電気熱変換体が設けられている。
【0016】
図2は、この実施形態における制御系回路の構成を示すブロック図である。この実施形態において、300は主制御部であり、この主制御部300は演算、制御、判別、設定などの処理動作を実行するCPU301と、このCPU301によって実行すべき制御プログラム等を格納するROM302と、記録データのバッファやCPU301による処理のワークエリア等として用いられるRAM303、及び入出力ポート304などを備えるものとなっている。
【0017】
そして、前記入出力ポート304には、前述の搬送モータ(LFモータ)312、キャリッジモータ(CRモータ)313、及び記録ヘッド5などの各駆動回路305,306,307が接続されると共に、記録ヘッドの温度を検出するヘッド温度センサ(ヘッド温度検出手段)314、キャリッジ1のホームポジションを検出するホームポジションセンサ310及び、インクジェット記録装置が設置された環境温度を検出する環境温度センサ315などのセンサ類が接続されている。さらに、前記主制御部300はインターフェース回路311を介して不図時のホストコンピュータに接続されている。
【0018】
環境温度センサ315で検出された環境温度は、その検出値を入出力ポート304に送り、各駆動回路に信号がいくときに風送り機構6であるキャリッジ5に搭載された排出ファン7の駆動回路308が排出ファン7の風速及び風量を制御して所定の風を記録ヘッド5のフェース面15とプラテン9の間に送る。印刷を完了すると入出力ポート304から信号を受け、駆動回路308は排出ファン7を停止する。更に主制御部300から印刷に関する制御が入出力ポート304に入り、各駆動回路に信号がいくときに回収手段10に搭載された回収ファン12の駆動回路309が回収ファン12を制御して記録ヘッド5のフェース面15とプラテン9を通過した風を回収する。印刷を完了すると入出力ポート304から信号を受け、駆動回路309は回収ファン12を停止する。
【0019】
(キャリッジ構成)
図3は、本発明の実施形態である風送り機構6を具えたキャリッジ1の斜視図である。キャリッジ1には記録ヘッド5が2つ搭載されているツインヘッド構成になっている。キャリッジ1に設けられた風送り機構6には、回転エネルギーを風力に変換するための排出ファン7が搭載されており、ダクト8を介して送られる。
【0020】
更に風送り機構6に関して、図4を用いて詳細に説明する。図4は風送り機構のダクト部分を中心とした断面図である。風送り機構6から排出された風は、ダクト8を介して記録ヘッド5のフェース面15とプラテン9の間に送られる。送られる風向きは、キャリッジの移動方向に対して垂直方向に送られる構成になっている。また、送られる風速は、0.5m/secから7m/secが好ましい。更に風送り機構6から排出される風の風速あるいは風量を調整するために排出ファン7に印加する電圧値は、環境温度センサ315で検出された環境温度によって制御される。
【0021】
風送り機構に用いられる排出ファン7は、図5のようなシロッコファンや図6のような軸流ファンでも問題なく機能する。特に排出ファン7の回転数が低い状況下においてサテライトやインクミストを移動させる時には、必要な風速を安定して形成できるシロッコファンを使用することが好ましい。
【0022】
このように風送り機構6よりダクト8を介して記録ヘッド5のフェース面15とプラテン9の間に送られた風は、画像を形成する主滴の着弾精度には悪影響を与えず、画像品質を低下させる主要因であるサテライトやインクミストのみを画像領域外に吹き飛ばすことが可能となる。
【0023】
(回収手段(1))
図7は風送り機構6よりダクト8を介して記録ヘッド5のフェース面15とプラテン9の間に送られた風を回収する回収手段10の断面図である。記録ヘッド5のフェース面15とプラテン9の間に浮遊したサテライトやインクミストは、風送り機構6より排出された風によって回収手段10の開口部11へと運ばれる。回収手段10は、回転エネルギーを変換して風を吸引する構成を取っており、回収ファン12によって、矢印14の方向へと風が流れる気流を形成している。そのため回収手段10の開口部11へと運ばれたサテライトやインクミストは、回収手段10の気流にのって矢印14の方向へと運ばれ、途中に設けられたフィルタ13によって回収される。
【0024】
回収ファン12には、図5のようなシロッコファンや図6のような軸流ファンでも問題なく機能する。特に回収ファン12の回転数が低い状況下でサテライトやインクミストを回収する時には、必要な風速を安定して形成できるシロッコファンを使用することが好ましい。
【0025】
以下に実施例をあげて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されるものではない。
【0026】
実施例における画像の評価方法に関して以下に簡単に記す。
【0027】
画像の評価方法は、出力する画像のデューティ比を10%から100%まで可変して出力し、ミストやサテライトによる画像ムラの発生度合いを次のように目視評価する。
【0028】
画像ムラ
○:画像ムラのない良好な画質
○から△:ごく僅かに画像ムラが観察される
△:僅かな画像ムラが観察される
×:画像全体に画像ムラが観察される
××:画像全体にひどい画像ムラが観察される
画像ムラに関しては、○レベルや○から△レベル以上の画像であるならば、市場で一般的に出力される画像において、ムラがあるかどうか観察することが困難なレベルであり、十分に満足できる画像が出力できる。
【0029】
(実施例条件)
キャリッジ線速:50(inch/sec)
キャリッジ片道移動距離:36(inch)
画像形成方法:1パス往復方向印刷
比較例1では、環境温度15℃、23℃及び30℃の3環境において、キャリッジ1に搭載されている排出ファン7の電源をOFFした状態において、印刷する画像デューティを10%から100%まで変化させた時の画像ムラ度合いを評価した。表1は、比較例1における画像ムラの評価結果である。環境温度15℃では、画像デューティ10%、90%、100%の画像を出力した場合は、画像ムラのない良好な画質である○レベルであり、画像デューティ20%、80%の画像を出力した場合は、ごく僅かに画像ムラが観察される○から△レベルであり、画像デューティ30%の画像を出力した場合は、僅かな画像ムラが観察される△レベルであり、画像デューティ40%、70%の画像を出力した場合は、画像全体に画像ムラが観察される×レベルであり、画像デューティ50%、60%の画像を出力した場合は、画像全体にひどい画像ムラが観察される××レベルであり排出ファン7を駆動させない場合の画像品質は非常に悪く市場に受け入れられる状況ではない。
【0030】
環境温度23℃では、画像デューティ100%の画像を出力した場合は、画像ムラのない良好な画質である○レベルであり、画像デューティ10%、80%、90%の画像を出力した場合は、ごく僅かに画像ムラが観察される○から△レベルであり、画像デューティ20%の画像を出力した場合は、僅かな画像ムラが観察される△レベルであり、画像デューティ30%、70%の画像を出力した場合は、画像全体に画像ムラが観察される×レベルであり、画像デューティ40%、50%、60%の画像を出力した場合は、画像全体にひどい画像ムラが観察される××レベルであり環境温度15℃に対して、画像品質が悪化する傾向がある。
【0031】
また、環境温度30℃において同様の評価を実施したところ、画像デューティ100%の画像を出力した場合は、ごく僅かに画像ムラが観察される○から△レベルであり、画像デューティ10%、80%、90%の画像を出力した場合は、僅かな画像ムラが観察される△レベルであり、画像デューティ20%、30%の画像を出力した場合は、画像全体に画像ムラが観察される×レベルであり、画像デューティ40%、50%、60%、70%の画像を出力した場合は、画像全体にひどい画像ムラが観察される××レベルであり、環境温度15℃及び23℃に対して、画像品質が悪化する傾向がある。
【0032】
【表1】

比較例2では、環境温度15℃、23℃及び30℃の3環境において、キャリッジ1に搭載されている排出ファン7の電源に8V電圧を印加することで、風速2.0m/secを記録ヘッドフェース面15とプラテン9の間に流し、印刷する画像デューティを10%から100%まで変化させた時の画像ムラ度合いを評価した。表2は、比較例2における画像ムラの評価結果である。環境温度15℃では、画像デューティ10%、20%、30%、40%、70%、80%、90%、100%の画像を出力した場合は、画像ムラのない良好な画質である○レベルであり、画像デューティ50%、60%の画像を出力した場合は、ごく僅かに画像ムラが観察される○から△レベルであり、排出ファン7を駆動させることで画像品質が格段に向上する。
【0033】
また、環境温度23℃において同様の評価を実施したところ、画像デューティ10%、20%、30%、70%、80%、90%、100%の画像を出力した場合は、画像ムラのない良好な画質である○レベルであり、画像デューティ40%、50%、60%の画像を出力した場合は、ごく僅かに画像ムラが観察される○から△レベルであり、排出ファン7を駆動させることで画像品質が格段に向上するものの、環境温度15℃に対して、画像品質が若干悪化する傾向がある。
【0034】
更に、環境温度30℃において同様の評価を実施したところ、画像デューティ10%、20%、30%、80%、90%、100%の画像を出力した場合は、画像ムラのない良好な画質である○レベルであり、画像デューティ40%、70%の画像を出力した場合は、ごく僅かに画像ムラが観察される○から△レベルであり、画像デューティ50%、60%の画像を出力した場合は、僅かな画像ムラが観察される△レベルであり、排出ファン7を駆動させることで画像品質が格段に向上するものの、環境温度15℃及び23℃に対して、画像品質が悪化する傾向があり、市場で一般的に出力される画像においても、満足できる画像が出力できないレベルとなってしまう。
【0035】
【表2】

実施例では、環境温度が15℃以下の範囲内ではキャリッジ1に搭載されている排出ファン7の電源に8V電圧を印加することで風速2.0m/secを記録ヘッドフェース面15とプラテン9の間に流す。また、環境温度が15℃より大きく、且つ30℃より小さい範囲内では排出ファン7の電源に10V電圧を印加することで風速2.5m/secを記録ヘッドフェース面15とプラテン9の間に流す。更に、環境温度が30℃以上の範囲内では12V電圧を印加することで風速3.0m/secを記録ヘッドフェース面15とプラテン9の間に流す。この設定条件において、印刷する画像デューティを10%から100%まで変化させた時の画像ムラ度合いを環境温度15℃、23℃及び30℃の3環境において評価した。表3は、実施例1における画像ムラの評価結果である。3環境全てにおいて画像デューティ10%、20%、30%、40%、70%、80%、90%、100%の画像を出力した場合は、画像ムラのない良好な画質である○レベルであり、画像デューティ50%、60%の画像を出力した場合は、ごく僅かに画像ムラが観察される○から△レベルであり、排出ファン7を駆動させることで画像品質が格段に向上する。
【0036】
【表3】

なお、以上の実施例1、比較例1及び比較例2の説明から明らかなように、複数のインク吐出口を備える記録ヘッドを有するインクジェット記録装置であれば、同一又は異なる色彩のインクを用いて記録するカラー記録装置、あるいは同一色彩で異なる濃度で記録する階調記録装置、さらには、これらを組み合わせた記録装置の場合にも、同様に本発明を適用することができ、同様の効果を達成し得るものである。さらに、本発明は、記録手段とインクタンクを一体化した交換可能なインクジェットカートリッジを用いる構成、記録手段とインクタンクを別体にし、その間をインク供給用のチューブ等で接続する構成など、記録手段とインクタンクの配置構成がどのような場合にも同様に適用することができ、同様の効果が得られるものである。
【0037】
また、本発明は、特にインクジェット記録方式の中でも、熱エネルギーを利用してインクを吐出する方式の記録手段を使用するインクジェット記録装置において優れた効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係わるインクジェット記録装置を示す上面図である。
【図2】本発明の実施形態に係わる制御系回路の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係わる風送り機構を具えたキャリッジの斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係わる風送り機構を具えたキャリッジの断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係わる風送り機構に備えられるシロッコファンの斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係わる風送り機構に備えられる軸流ファンの斜視図である。
【図7】風送り機構よりダクトを介して記録ヘッドのフェース面とプラテンの間に送られた風を回収する回収手段の断面図。
【符号の説明】
【0039】
1 キャリッジ
2 装置本体(搬送系ユニットを含む)
5 記録ヘッド
6 風送り機構
7 排出ファン
8 ダクト
9 プラテン
10 回収手段
11 回収手段の開口部
12 回収ファン
13 フィルタ
14 回収手段の風の流れの方向
15 記録ヘッドフェース面
30A、30B、30C、30D 回復機構
31 予備吐出インク受領箱
32 ワイピング機構
33 ガイド軸
34 ベルト
35 エンコーダフィルム
300 主制御部
301 CPU
302 ROM
303 RAM
304 入出力ポート
305 LFモータの駆動回路
306 CRモータの駆動回路
307 記録ヘッドの駆動回路
308 排出ファンの駆動回路
309 回収ファンの駆動回路
310 ホームポジションセンサ
311 インターフェース回路
312 LFモータ
313 CRモータ
314 ヘッド温度センサ
315 環境温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドの吐出口から複数のインク滴を吐出して、キャリッジの往復運動時に記録を行うインクジェット記録装置において、前記キャリッジに具備された記録ヘッドフェース面とプラテンの間に風を送る風送り機構と、前記インクジェット記録装置が設置されている環境温度を検知する手段とを有し、前記検知した環境温度によって、前記風送り機構から排出される風の風速あるいは風量が切り替わることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
記録ヘッドの吐出口から複数のインク滴を吐出して、キャリッジの往復運動時に記録を行うインクジェット記録装置において、検知した環境温度が規定値以上においては、前記風送り機構から排出される風の風速あるいは風量を強め、規定値より小さい場合においては、弱めるあるいは停止することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記風送り機構から排出される風向きが、前記キャリッジの移動方向に対して垂直方向であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記検知した環境温度の規定値を複数設定することを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記複数設定した規定値は、15℃以上〜30℃以下の範囲の値を少なくとも1つ以上含むことを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記風送り機構から排出される風を回収するための回収手段を設けることを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記風送り機構から排出される風を発生させる手段が、回転エネルギーから風力に変換させる機構であることを特徴とする請求項1ないし6いずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記記録手段が、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換体を備えているインクジェット記録手段であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記記録手段は前記電気熱変換体によって印加さえる熱エネルギーにより、インクに生ずる膜沸騰を利用して吐出口よりインクを吐出させることを特徴とする請求項8記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
記録ヘッドの吐出口から複数のインク滴を吐出して、キャリッジの往復運動時に記録を行うインクジェット記録装置を用いて画像を形成するインクジェット記録方法において、請求項1ないし9のいずれかに記載のインクジェット記録装置を用いて画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−7704(P2006−7704A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191288(P2004−191288)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】