説明

インクジェット記録装置、インク供給機構及びインク供給方法

【課題】循環ポンプとタンクの内圧の調整により、循環流量やノズル近傍の圧力を適正値に調節することを可能とする。
【解決手段】本発明の一形態は、ノズル、ノズルに対向する圧力室、前記圧力室と連通する上流ポート及び下流ポートを有するインクジェットヘッドと、前記上流ポートを介して前記インクジェットヘッドと連通し、インクを貯留可能な上流側タンクと、前記下流ポートを介して前記インクジェットヘッドと連通し、インクを貯留可能な下流側タンクと、前記下流側タンクから上流側タンクへインクを戻す循環ポンプと、を連通して構成される循環系を備え、少なくとも前記下流側タンク液面を大気圧に開閉可能な開放弁を持ち、開放弁を閉じて循環ポンプを駆動し、下流側タンク液面を負圧にするとともに帰還流路を介して下流側タンクから上流側タンクへインクを戻してインクを循環させるインク供給機構である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを循環させながら、インクジェットヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置、インク供給機構及びインク供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置において、インクを循環させながらインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出させる技術が、開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。このようなインクジェット記録装置は、例えば、上流側タンク、インクジェットヘッド及び下流側タンクが導管によって接続されて構成されている。上流側タンクの液面及び下流側タンクの液面は一定に保たれている。上流側タンクのインクは上流側流路を経由してインクジェットヘッドに流入し、さらに下流側流路を経由して下流側タンクに流れ込むように循環する。
【0003】
このようなインクジェット記録装置において、気泡混入やインク漏洩などの不具合を防ぎ、良好な印刷特性を確保するには、適正な循環流量を維持することが求められる。上記技術では、循環流量は、上流側タンクから、上流側流路、インクジェットヘッド、及び下流側流路を介して下流側タンクに至る流路抵抗と、上流側タンクと下流側タンクの高さの差で決まる。したがって、流量を調節するためには、上流側タンク、下流側タンク、インクジェットヘッド等の位置により調整する必要がある。すなわち、例えば流量を増やすためには、流側タンクの高さと下流側タンクの高さの差を大きくする必要があるので、上流側タンクを上げ、下流側タンクを下げなくてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−533247号公報
【特許文献2】米国特許第2002/0118256号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常、タンクの配置には物理的な制約がある場合が多く、高さの調節は困難であり、また、高さの差を変えるとこれに伴って流路抵抗が変化するため、所望の流量を確保することが困難である。
【0006】
一方、インクジェットヘッドにおいて、良好な印刷特性を確保するためには、ノズル近傍のインク圧力は非常に重要であり、ノズル近傍のインク圧力を適正な範囲に保つ必要がある。しかしながら、上記の技術では非吐出又は吐出量が少ない時のノズル近傍のインク圧力は上流側タンクから上流側流路を介してインクジェットヘッド内のノズルに至る流路抵抗、インクジェットヘッド内のノズルから下流側流路を介して下流側タンクに至る流路抵抗、及び上流側タンクと下流側タンクの液面高さに依存する。したがって、適切なノズル位置のインク圧力を得るには上流側タンクと下流側タンクの高さを調整する必要がある。
【0007】
したがって、タンクの配置に関する物理的な制約や流路長さの変化により、調整が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態は、ノズル、ノズルに対向する圧力室、前記圧力室と連通する上流ポート及び下流ポートを有するインクジェットヘッドと、前記上流ポートを介して前記インクジェットヘッドと連通し、インクを貯留する上流側タンクと、前記下流ポートを介して前記インクジェットヘッドと連通し、インクを貯留する下流側タンクと、前記下流側タンクから上流側タンクへインクを戻す循環ポンプと、を連通して構成される循環系を備え、少なくとも前記下流側タンクの空気を大気圧に開閉するバルブを持ち、前記バルブ及び前記循環ポンプに接続されるとともに、前記循環ポンプ及びバルブの開閉動作を制御し、少なくとも前記インクジェットヘッドによる印刷動作中に、前記バルブを閉じ前記循環ポンプを駆動することで、前記下流側タンクを負圧にし、帰還流路を介して前記下流側タンクから前記上流側タンクへインクを戻してインクを循環させる制御装置を備える、ことを特徴とするインク供給機構に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、循環ポンプとタンクの内圧の調整により、循環流量やノズル近傍の圧力を適正値に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願発明の第1実施形態におけるインクジェット記録装置の全体の構成を概略的に示す図。
【図2】同実施形態におけるインクジェットヘッドのノズル周辺の構造を示す部分断面図。
【図3】本願発明の第2実施形態におけるインクジェット記録装置の全体の構成を概略的に示す図。
【図4】本願発明の第2実施形態におけるインクジェット記録装置の動作を示す図。
【図5】本願発明の第2実施形態におけるインクジェット記録装置の動作を示す図。
【図6】本願発明の第2実施形態におけるインクジェット記録装置の動作を示す図。
【図7】本願発明の第2実施形態におけるインクジェット記録装置の動作を示す図。
【図8】同実施形態におけるノズル周辺でのインクの滴下条件を示す断面図。
【図9】同実施形態におけるノズル周辺でのインクの滴下条件を示す断面図。
【図10】同実施形態におけるノズル周辺でのインクの滴下条件を示す断面図。
【図11】本願発明の第3実施形態におけるインクジェット記録装置の全体の構成を概略的に示す図。
【図12】本願発明の第3実施形態におけるインクジェット記録装置の循環流量とノズル圧力の関係を示す図。
【図13】本願発明の第3実施形態におけるインクジェット記録装置の循環流量とノズル圧力の関係を示す図。
【図14】本願発明の第3実施形態におけるインクジェット記録装置の循環流量とノズル圧力の関係を示す図。
【図15】本願発明の第3実施形態におけるインクジェット記録装置の循環流量とノズル圧力の関係を示す図。
【図16】本願発明の第3実施形態におけるインクジェット記録装置の循環流量とノズル圧力の関係を示す図。
【図17】本願発明の第1実施形態の変形例にかかるインクジェットヘッドの構造を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下に本発明の一実施形態にかかるインクジェット記録装置およびインク供給方法について、図1及び図2を参照して説明する。なお、各図において適宜構成を拡大、縮小、省略して概略的に示している。インクジェット記録装置1は、インクを循環させつつインクジェットヘッド11のノズル17から図示しない記録媒体にインクを吐出して画像を形成するものであり、インク供給機構10を備えている。このインク供給機構10は、インクジェットヘッド11、インク供給源としての上流側タンク25、インクを貯留する下流側タンク30、これらを接続するとともにインクの循環路を構成する第1導管41、第2導管42、第3導管43、及びインクを循環させるインク送り機構としての循環ポンプ35(インク送り機構)、フィルタ36等を備えている。
【0012】
図2に示されるインクジェットヘッド11は、ノズル17を有するオリフィスプレート18を備えている。このオリフィスプレート18の背面側にノズル17に対向する圧力室19が形成されている。この圧力室19を経由してインク20が循環する。圧力室19は導管と連通する循環路よりも狭く構成されている。図2中のノズル17の対向面側に構成された圧力室19に、アクチュエータ22が設けられている。圧力室19において、このアクチュエータ22が駆動されることによって、ノズルからインク滴20aが吐出される。アクチュエータ22としては、例えばPZT等の圧電素子を用いて直接又は間接的に圧力室を変形させるものや、静電気でダイアフラムを駆動するもの、静電気で直接インクを移動させるもの、ヒーターでインクを加熱して気泡を生成し圧力を発生させるもの等が用いられるが、これらに限られない。インクジェットヘッド11は、上流ポート11aと下流ポート11bを有している。インクジェットヘッド11の上流ポート11aは、第1導管41を介して上流側タンク25に接続されている。下流ポート11bは、第2導管42を介して下流側タンク30に接続されている。このように構成されたインクジェットヘッド11において、インク20が、圧力室19を経由して、例えば図2中矢印で示すように、右から左へ循環する。
【0013】
図1に示すように、上流側タンク25は、インクジェットヘッド11よりも上方に配置され、インク流入口25aとインク流出口25bを有し、インクを補給するためのインク供給源としての機能を有する。上流側タンク25は、上部タンク26と下部タンク27とを備え、下部タンク27の液面は大気に開放されている。上流側タンク25は第1導管41を介してインクジェットヘッド11の上流ポート11aに接続されている。上部タンク26は、交換可能なボトルである。上部タンク26のインクがなくなった場合、ユーザは上部タンク26をインク充填済みの新しいボトルと交換する。上部タンク26と下部タンク27とは通気パイプ28及びインク補給パイプ29を介して接続されている。上記インクジェットヘッド11からインクが消費されると、これに伴い下部タンク27の液面が下がり、通気パイプ28の下端が下部タンク27の液面から離れる。このとき、下端が露出した通気パイプ28を伝って空気が上部タンク26へ導入される。上部タンク26においてこの空気に押し出されたインクが、インク補給パイプ29を通って下部タンク27へ落ちると、下部タンク27の液面が上昇する。この上昇により、下部タンク27の液面が通気パイプ28の下端まで達すると、通気パイプ28が閉塞されることにより上部タンク26への空気の流入は止まり、インクの補給が停止される。こうして、下部タンク27の液面が制御されつつインクの補給が行われる。
【0014】
なお、インクジェットヘッド11のインク室のノズル17近傍つまり圧力室19の適正圧力(但し、アクチュエータがインク吐出動作のために発生する高周波成分を除く平均値)の設定範囲に余裕がある場合には、液面の高さは厳密でなくてもよいため、断面積が大きく浅い容器を上流側タンク25として用いて、体積変化に対する液面高さ変化を抑えることができる。その場合には、ユーザは上流側タンク25のインクが減った場合に、上流側タンク25に直接インクを補給してもよく、交換可能なボトルの構成を省略できる。
【0015】
上流側タンク25のインクは第1導管41を介してインクジェットヘッド11の上流ポート11aへ供給される。第1導管41には、循環路を開閉可能なバルブV1(開閉機構)が設けられている。バルブV1はインクの供給を止める場合に閉じられるが、通常動作中は開放されている。
【0016】
下流側タンク30は、インク流入口30aとインク流出口30bを有するインクタンクであり、インクを貯留するとともに圧力源としての機能を有する。下流側タンク30は、インクジェットヘッド11よりも下方に配置されている。インク流入口30aは第2導管42を介してインクジェットヘッド11の下流ポート11bに接続されている。インク流出口30bは、循環ポンプ35及びフィルタ36を備える第3導管43を介して上流側タンク25に接続されている。循環ポンプ35は下流側タンク30のインクを吸い上げ、フィルタ36で濾過し、第3導管43を介して上流側タンク25にインクを汲み上げることで、インク20を循環させる機能を有する。循環ポンプ35は、例えばチューブポンプのように、停止時に閉じる構造である。ダイアフラムポンプと逆止バルブを直列にして同じ機能を実現しても良い。なお、循環ポンプ35の制御方法は例えばON/OFF制御や速度制御等により行われる。
【0017】
下流側タンク30は上部に空気層を有している。この空気層の上部に、開閉可能なバルブV2(圧力調整機構)を備えている。このバルブV2が制御部37により開閉されることで、選択的に、下流側タンク30の液面を大気圧に開放し、あるいは密閉することが可能となっている。さらに、下流側タンク30には二つの液面センサS1、S2(液面検出器)が設けられている。液面センサS1、S2は、タンク内のインクの液面がそれぞれ予め設定された第1水位および第2水位に達したか否かを検知する機能を有する。液面が第1水位の高さにあるとき、下流側タンク30の空気層の体積はVであり、液面が第2水位の高さにあるとき、下流側タンク30の空気層の体積はV+ΔVである。
【0018】
これら、上流側タンク25、下流側タンク30、第1導管41、第2導管42、第3導管43及び圧力室19の内部は互いに連通し、循環路40を形成している。さらに、各大気開放部には異物の混入を防ぐための図示しないエアフィルタが設けられている。
【0019】
インクが蒸発し易い場合には、各大気開放部に蒸発を防ぐ迷路などの機構を設けても良い。
【0020】
循環ポンプ35の流量は、例えば予定される最大循環流量の120%に設定されている。上流側タンク25の液面とインクジェットヘッド11のオリフィスプレート18の面の高低差はHu、下流側タンク30の液面とインクジェットヘッド11のオリフィスプレート18の面の高低差は、Hlである。
【0021】
上流側タンク25内における第1導管41の先端からインクジェットヘッド11のインク室のノズル17近傍までの流路抵抗、すなわち、上流側流路の流路抵抗をRuとする。また、インクジェットヘッド11のインク室のノズル17近傍から下流側タンク30内における第2導管42の先端までの流路抵抗、すなわち下流側流路の流路抵抗をRlとする。ここでRu、Rlは、以後の説明を簡単にするために、インクジェットヘッド11の内部の流路抵抗を含むものとする。
【0022】
なお、本実施形態では各タンク25,30の断面積が十分大きいので、それぞれのタンク内の液面から各導管41、42の接続点までの流路抵抗は普通無視できる。仮に無視できない場合は各々Ru、Rlに加算して考えれば良い。
【0023】
インクジェットヘッド11が内部の循環流路の中間点に分岐を持っていて分岐の先にノズル17を有する場合、Ruは上流側タンク25からこの分岐点までの流路抵抗、Rlは分岐点から下流側タンク30までの流路抵抗であると考えれば良い。
【0024】
Rl,Ruの値は流路の物理的形状で決まる定数とインクの粘度との積である。ここでは、インクは比重ρの不揮発性オイルインクであるものとする。重力加速度はg、大気圧はPatmとする。
【0025】
なお、ここでは吐出流量が循環流量に比べて十分小さいものとする。この場合、インク供給機構10やインクジェットヘッド11内の圧力損失の値は吐出流量よりも循環流量に大きく左右されることになる。各インクジェットヘッド11の下端のノズル17付近の循環流に起因する動圧は、一般には十分小さく、無視できる。また、このようなインク供給機構10ではレイノルズ数は普通、十分小さく、乱流の影響は無視できる。
【0026】
次にこのインクジェット記録装置1における初期充填の動作を説明する。
インクが上流側タンク25に供給された初期状態において、バルブV1を開状態とし、循環ポンプ35を停止させる。この状態でバルブV2を開状態とすると、インクは上流側タンク25から第1導管41、インクジェットヘッド11、第2導管42を経由して下流側タンク30に流入する。
【0027】
このとき、図示しない密閉キャップによってノズル17の先端を初期充填が終わるまで密閉することにより、インクがインクジェットヘッド11のノズル17から流出するのを防ぐことができる。また、圧力ρgHuが小さく、ノズル17の直径が小さく、かつオリフィスプレート18の表面にインクが付着していないという条件がそろっている場合には、キャップを使用しなくてもインクはノズル17から流出しないので、このような場合には密閉キャップを省略できる。
【0028】
インクが下流側タンク30に溜まり、液面センサS1により、液面が低水位基準である第1水位を超えたことを検知すると、この検知結果に応じた制御部37の制御により、循環ポンプ35が作動し、インクが下流側タンク30から上流側タンク25に向かって送られる。以後、液面が第1水位を超えている間は循環ポンプ35が作動する。なお、循環ポンプ35の作動によって上流側タンク25の液面は僅かに上昇するが、この変化は十分小さいため無視できる。
【0029】
この状態において、インクが、上流側タンク25から、第1導管41を含む上流側流路、インクジェットヘッド11、第2導管42を含む下流側流路、循環ポンプ35、フィルタ36、第3導管43で構成される帰還流路を介して、再び上流側タンク25に戻る循環流が生じている。循環ポンプ35は間欠的に作動している。この場合の循環流量はHu,Hl,Ru,Rlとρ,gによって定まり、その値をQ1とすれば、Q1=ρg(Hu+Hl)/(Ru+Rl)である。
【0030】
また、ノズル17近傍の圧力も、Hu,Hl,Ru,Rlとρ,gによって定まる。この値をPn1(ゲージ圧)とすれば、Pn1=ρgHu −ρg(Hu+Hl)(Ru/(Ru+Rl))である。
【0031】
このとき、Pn1は、例えばノズル17からインクが溢れないように、例えば−0.1kPa程度に設定される。また、Q1は、予定の循環流量よりも小さな値に設定される。この状態を低速循環状態とする。このときQ1が予定の循環流量よりも小さいので、下流側タンク30の位置をあまり下げなくてもよい。したがって、物理的な制約がある場合でもインクジェット記録装置1を容易に構成できる。
【0032】
次に、循環流量を大きくして、ノズル17近傍の圧力をインク吐出に適する値まで低くする(絶対値を大きくする)動作について説明する。
【0033】
下流側タンク30の空気層を大気圧に解放していたバルブV2を閉じ、下流側タンク30内の液面が、第2水位となるまで、循環ポンプ35を作動させる。液面センサS2によって、下流側タンク30の液面が第2水位を下回ったことが検知されたら、循環ポンプ35を停止させる。以後循環ポンプ35は液面が第2基準を超えている間だけ作動させる。このとき、下流側タンク30の液面はΔHlだけ低下し、上流側タンク25の液面はΔHuだけ上昇するがこれらの値はHl,Huと比べて十分小さい。ここで、ΔHl, ΔHu分のポテンシャルヘッドの変化は十分小さいため無視できる。
【0034】
バルブV2を閉じた時点では、下流側タンク30の空気層は体積Vであったが、この状態から液面を下げたので下流側タンク30の空気層はV+ΔVに増大した。したがって、下流側タンク30の空気層は減圧されている。この状態での下流側タンク30の空気層のゲージ圧をPL(負値)とすれば、PL=−ΔV(V+ΔV)Patmである。ここでPatmは大気圧である。
【0035】
このときの循環流量をQ2とすれば、Q2=(ρg(Hu+Hl)−PL)/(Ru+Rl)= Q1 + (−PL/(Ru+Rl))となる。すなわち、循環流量はQ1よりも(−PL/(Ru+Rl))だけ増大する。
【0036】
また、ノズル17近傍の圧力をPn2(ゲージ圧)とすれば、Pn2=ρgHu - (ρg(Hu+Hl)−PL)(Ru/(Ru+Rl)) = Pn1+PL(Ru/(Ru+Rl)となる。すなわち、ノズル17近傍の圧力はPn1よりも−PL(Ru/(Ru+Rl)の大きさだけ負圧側にシフトする。
【0037】
ここで、Q2を目標の適正循環流量に設定し、Pn2を適正なノズル17近傍の圧力に設定すれば良い。なお、循環流量の適正値は、例えば印刷時の最大流量の1倍〜20倍の範囲で設定する。また、ノズル近傍の圧力の適正値は例えば0以下、かつ−3kPa以上の範囲で設定する。
【0038】
なお、循環を停止し、かつ、ノズル17近傍の圧力を適正範囲内に保ったまま待機させる場合は次のように動作させる。まずバルブV2を開状態とし、循環ポンプ35の作動条件を液面センサS1に戻し、基準水位を第1水位とすることで、高速循環状態から低速循環状態に移行する。次にバルブV1をゆっくり閉じる。この結果、ノズル17近傍の圧力は徐々に低下する。このとき、ノズル17近傍の圧力は負圧なので絶対値は大きくなる。このときのノズル17近傍の圧力の収束値をPn3(ゲージ圧)とすれば、Pn3=−ρgHlとなる。Pn3は例えば−3kPaに設定される。
【0039】
本実施形態にかかるインクジェット記録装置1またはインク供給機構10は、以下に掲げる効果を奏する。すなわち、循環ポンプ35とタンクの内圧の調整により、循環流量やノズル近傍の圧力を適正値に調節することができる。したがって、インクジェットヘッド11やタンク25,30の配置に制約がある場合にも適正な流量や圧力を確保することが可能となる。すなわち、下流側タンク30の位置が変わってインクジェットヘッド11のオリフィスプレート18面に対する下流側タンク30の液面のポテンシャルヘッドが変わっても、これに応じて液面センサS1、S2の高さの差を変え、密閉時の下流側タンク30の空気層の圧力を調整することで、所望の循環量とノズル圧力を得ることができるため、下流側タンク30の位置を構造上有利な場所に配置し易い。
【0040】
また、仮に下流側タンク30がインクジェットヘッド11よりも上に位置したとしても、液面センサS1,S2の高さの差を大きく取り、下流側タンク30の空気層の負圧を適正な値に設定すれば、所望の循環量とノズル圧力を得ることが可能である。
【0041】
さらに、状況に応じて循環流量を調整し、低速循環状態と高速循環状態とを使い分け、かつ、ノズル近傍の圧力を適正に維持することにより、循環式システムの利益を享受することができる。すなわち、インクが滞留して沈殿する危険が少なく、システムの温度も安定させるとともに、又循環中にろ過や脱気、脱泡を行えば循環によってインクの性質をよりインクジェットの飛翔に適したものに改質でき、万が一どこかで気泡が発生しても下流側タンク30まで押し流して気泡を開放可能である程度に循環流量を大きくすることができる。また、一方で、循環流量が大きすぎないように設定することで、負圧部での空気の混入や気液界面での泡立ちを起こす恐れや、又混入してしまった気泡やパーティクル等がヘッドのノズル近くまで送られてしまうのを防ぎ、流路の狭い所をインクが通過する際にインクにシェアストレスが加わりインクの安定性に影響が出るのを防止することができる。
【0042】
[ 第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置2について図3乃至図10を参照して説明する。各図においては適宜構成を拡大、縮小、省略して概略的に示している。なお、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0043】
図3に示されるインクジェット記録装置2は、複数のインクジェットヘッド11〜16、インク供給源としての上流側タンク25、インクを貯留する下流側タンク30、上流側タンク25にインクを供給する供給タンク47等を備えている。
【0044】
複数(ここでは6個)のインクジェットヘッド11〜16は、上記第1実施形態のインクジェットヘッド11と同様に構成されている。
【0045】
上流側タンク25と供給タンク47とは、途中に循環路を開閉可能なバルブV3を有する第4導管44を介して接続されている。供給タンク47は上流側タンク25よりも上方に位置し、第4導管44は供給タンク47から上流側タンク25に向かって下方に傾斜して配されている。
【0046】
供給タンク47は第1実施形態における上部タンク26と同様に交換式のカートリッジであってもよいし、上部からインクを注ぐ形式のタンクであっても良い。供給タンク47の内部圧力は、大気圧に開放されている。供給タンク47のインクは第4導管を通って上流側タンク25へ注がれる。
【0047】
上流側タンク25は、上部に空気層を有している。この空気層の上部に、開閉可能なバルブV4を備えている。このバルブV4が制御部37により開閉されることで、選択的に、上流側タンク25の液面を大気圧に開放し、あるいは密閉することが可能となっている。
【0048】
さらに、上流側タンク25には液面センサS3が設けられており、タンク内のインクの液面が予め設定された第3水位に達しているか否かを検知する機能を有する。この液面センサS3の検知結果に応じた制御部37の制御により、上記バルブV3が開閉されることで、インクの流動状態を調節可能である。これにより、上流側タンク25の下部タンクの液面が一定に維持される。
【0049】
上流側タンク25の下方に鉛直に延びる第1導管41には、循環路を開閉可能なバルブV5が設けられている。このバルブV5よりも下方における第1導管41は、内径6mmx 長さ5mmの円柱管に構成されている。この円柱管状の第1導管41は、バルブV5よりも下方において、6本に分岐し、第5導管を構成している。この6本の第5導管45はそれぞれ6個のインクジェットヘッド11〜16の上流側ポート11a〜16aに接続されている。第5導管45は、分岐部分からインクジェットヘッド11〜16の上流側ポート11a〜16aに至るまで水平または緩やかに下るように形成されており、上昇する部分がないように構成されている。
【0050】
上流側タンク25と下流側タンク30とを接続する第2導管は、第1導管と同様に、内径6mmの円柱管状に構成されている。この第2導管にも、開閉可能なバルブV6が設けられている。さらに、第2導管は、このバルブV6の下方において6本の第6導管46に分岐している。この6本の第6導管46は、それぞれインクジェットヘッド11〜16の下流ポート11b〜16bに接続されている。第6導管46は、インクジェットヘッド11〜16の下流ポート11b〜16bから分岐部分に向かって水平に延び、または緩やかに上昇するように形成されており、下降する部分がないように構成されている。
【0051】
6台のインクジェットヘッド11〜16は各々50mmの幅を有している。したがって、6台全て使用すると300mm幅の印刷が可能である。6本の第5導管45の内径と長さは、最も円柱管に近いインクジェットヘッド11に接続されるものから、最も遠いインクジェットヘッド16に接続されるものの順に、φ3x100, φ3x155, φ3x210, φ3x265, φ3x320, φ3x375mmに構成されている。6本の第6導管46の内径と長さは、それぞれ、最も円柱管に近いインクジェットヘッド11に接続されるものから最も遠いインクジェットヘッド16に接続されるものの順に、φ3x106, φ3x160, φ3x214, φ3x267, φ3x321, φ3x375mmに構成されている。
【0052】
第2導管42において、バルブV6よりも上方は上流側タンク25の内部において上方に鉛直に向かって延び、その先端は空気層に開放されている。第2導管42において、分岐点よりも下方に、循環路を開閉可能なバルブV8が設けられている。バルブV8のさらに下方に位置する第2導管42の先端部分は、下流側タンク30の内部に開放されている。分岐点から下流側タンク30の内部の先端までの円柱管の長さは143mmである。
【0053】
下流側タンク30には二つの液面センサS4、S5が設けられている。液面センサS4、S5は、タンク内のインクの液面がそれぞれ予め設定された第4水位および第5水位に達しているか否かを検知する機能を有する。S4はS5より高い位置に設定されている。下流側タンク30は上部に空気層を有している。この空気層の上部に、開閉可能なバルブV7を備えている。このバルブV7が制御部37により開閉されることで、選択的に、下流側タンク30の液面を大気圧に開放し、あるいは密閉することが可能となっている。下流側タンク30の空気層の内圧は圧力センサ31によって測定されている。
【0054】
下流側タンク30は、例えば断面50mm 高さ10mmの寸胴の円筒形に構成されている。液面が第5水位にあるときには空気層体積は5mLとなる。
【0055】
下流側タンク30と上流側タンク25とを接続する第3導管43は循環ポンプ35およびフィルタ36を備えている。下流側タンク30内のインクは、この循環ポンプ35及びフィルタ36を介して上流側タンク25へ戻される。
【0056】
ここで、使用するインクは比重0.85、粘度10mPasの不揮発性油性インクである。各インクジェットヘッド11〜16は表面直径27μmの撥インク処理された636本のノズルを有している。各ノズルから周波数6240Hzで42pLのインクインク滴を吐出できる。一つのインクジェットヘッドの全ノズル636本が全て連続して吐出したときのインク流量は10mL/minである。
【0057】
各インクジェットヘッドの上流側ポート11a〜16aと下流側ポート11b〜16bの間の流路抵抗は3.85 x 10 Pa・s/mとする。また、オリフィスプレート18の表面から見た上流側の流路抵抗と下流側の流路抵抗の比は、1:0.96とする。
【0058】
上流側第5導管45の流路抵抗は、最も円柱管に近いインクジェットヘッド11から最も遠いインクジェットヘッド16に向かって順に、5.03 x 10 Pa・s/m、7.80 x 10 Pa・s/m、1.06 x 10 Pa・s/m、1.33 x 10 Pa・s/m、1.61 x 10 Pa・s/m、1.89 x 10 Pa・s/mとなる。
【0059】
下流側第6導管46の流路抵抗は、最も円柱管に近いインクジェットヘッド11から最も遠いインクジェットヘッド16に向かって順に、5.33 x 10 Pa・s/m、8.05 x 10 Pa・s/m、1.08 x 10 Pa・s/m、1.34 x 10 Pa・s/m、1.61 x 10 Pa・s/m、1.89 x 10 Pa・s/mとなる。
【0060】
バルブV5を含む上流側第1導管41の流路抵抗は、3.77 x 10 Pa・s/mであり、バルブV8を含む下流側第2導管42の分岐点から下流側タンク30の内部の先端までの流路抵抗は、4.72 x 10 Pa・s/m、である。
【0061】
上流側タンク25の液面はインクジェットヘッド11から16のオリフィスプレート18の表面よりも12mm高く位置している。これによる水頭圧は100Paである。下流側タンク30の液面はインクジェットヘッドのオリフィス面よりも120mm低く位置している。これによる水頭圧は1kPaである。
【0062】
次に、このインクジェット記録装置に初期状態からインクを充填する動作までについて説明する。なお、図3乃至図7において、インクが充填されている部分を斜線のハッチングで示している。図3に示す初期状態でインクは供給タンク47内に収容されている。この状態からバルブV4,V5,V6,V8を開き、次いでバルブV3を開くと、図4に示すように、インクは上部タンクから下部タンクへ降りてくる。この間V7は閉じておく。インクは図5に示すように、供給タンク47から第4導管44、上流側タンク25、第1導管41、インクジェットヘッド11〜16、第2導管42を通って下流側タンク30へと流れ落ちてくる。なお、液面センサS3において、上流側タンク25の液面が第3水位の高さを上回っている間にはバルブV3が閉じられ、液面が調節される。
【0063】
第2導管42のインクがバルブV6に達したらV6を閉じV7を開く。ここで、インクがバルブV6に達したかどうかの判断は供給開始からの時間で行うことも出来るが、下流側タンク30の圧力計31(圧力検出器)の値によっても判断できる。即ち圧力計31の読み値が下流側タンク30からバルブV6までの高さのインクのポテンシャル圧力と一致したらインクがほぼバルブV6の位置に達したと判断できる。この実施形態では第2導管42のインクがバルブV6を超えて上流側タンク25の空気層に溢れ出しても特に問題は無く、タイミングに関して高い精度は要求されない。
【0064】
循環ポンプ35は下流側タンク30の液面が第4水位の位置を上回ったら作動させるように設定される。図6に示すように、インクが下流側タンク30に溜まり、第4水位を超えると、設定しておいた条件が成立するので、循環ポンプ35が作動する。循環ポンプ35は、下流側タンク30のインクをフィルタ36と帰還流路を構成する第3導管43を介して上流側タンク25に汲み上げる。この際上流側タンク25のインクは第3水位よりも僅かに上がる場合があるが、循環系の圧力分布に与える影響は小さく、無視できる。この状態はインクがゆっくり循環する低速循環状態である。
【0065】
上記動作の間、インクジェットヘッド11〜16の各ノズル17にはまず正圧が与えられ、下流側にインクが充填されるに従ってその値は減少して行く。与えられる正圧の最大値は約100Paである。この正圧によってインクが垂れることを防ぐには、この間に、各インクジェットヘッド11〜16の各ノズル17を、図示しないキャップで密閉しておけば良い。他に、後で説明するように、適正なメニスカスを維持する条件を保つことで、キャップが無くても各インクジェットヘッド11〜16のノズル17からインクが垂れることを防ぐことができる。
【0066】
このときの循環流量を計算すると、6台のインクジェットヘッド11〜16の合計で62mL/minである。また、各インクジェットヘッド11〜16毎の循環流量は、円柱管に近いインクジェットヘッド11から順に、夫々13mL/min、12mL/min、11mL/min、10mL/min、9mL/min、8mL/minとなる。ノズル17近傍の圧力は全インクジェットヘッド11〜16でほぼ等しく−434Paである。この状態でも印刷は可能である。
【0067】
次に、前述したインク循環式の利点を享受するために、循環速度を6台のインクジェットヘッド11〜16の合計で180mL/minまで上げる手順について説明する。図7に示すように、バルブV7を閉じ、下流側タンク30を密閉するとともに、圧力計31が−2110Paになるまで循環ポンプ35を作動させる。圧力計31が−2110Paを下回っている間だけ循環ポンプ35を作動させるように設定しておく。このとき、下流側タンク30内の空気層は減圧によって膨張しているがその分の液面は0.2mm程度僅かに低下する。この液面変化によるポテンシャル圧力の変化は十分小さいため無視できる。なお、この実施形態の条件は、第1実施形態のように液面で管理するよりも、直接圧力を測定して管理する方が望ましいと言える。もちろん、液面を精度良く検出できる場合には、第1実施形態のように液面で管理しても良いし、下流側タンク30の形状が異なり、例えば空気層の体積がもっと大きければ圧力管理よりも液面管理の方が有利となる場合もあるため、どちらを用いても良い。この状態は、インクが180mL/minで循環する高速循環状態である。
【0068】
この時の各ヘッド11〜16毎の循環流量は、円柱管に近いインクジェットヘッド11から順に、夫々、38mL/min、34mL/min、31mL/min、28mL/min、26mL/min、24mL/minとなる。また、ノズル17近傍の圧力は、全ヘッド11〜16においてほぼ等しく−1.46kPaである。
【0069】
以上、各インクジェットヘッド11〜16がインクを吐出しない場合やごく僅かだけ吐出する場合について説明したが、インクの吐出を行うと上流側の流量が増大し、下流側の流量が減少するので、ノズル17近傍の圧力はより負圧側にシフトする。各インクジェットヘッド11〜16が最大吐出を行った場合には、ノズル17近傍の圧力(但し、アクチュエータがインク吐出動作のために発生する高周波成分を除く平均値)は最も負圧側に動く。その時の各ヘッド11〜16のノズル17近傍の圧力を計算すると、円柱管に近いヘッド11から順に、夫々−1.68kPa、−1.7kPa、−1.72kPa、−1.73kPa、−1.77kPa、−1.79kPaとなった。これらのノズル位置の圧力は、いずれも適正値の範囲内である。
【0070】
なお、以上説明した動作に液面センサs5は必ずしも必要でないが、このセンサは異常検出に用いることができる。ここで、液面センサS5を例えばS4の位置よりも1mm下に設定する。正常に動作している場合には、循環中に液面がS5を下回ることは無いはずであるから、もし下流側タンク30の液面が液面センサS5の高さを下回った場合には、異常として上流側タンク25からヘッドを経由して下流側タンク30に至るインクの通過経路のどこかにインク漏れがあることを検出できる。
【0071】
ここで、インク滴下防止の条件について説明する。一般に、循環供給系では、オリフィスプレート18の表面の高さから見た上流側のインク供給源の単位体積あたりエネルギー(上流側タンク25の液面の静圧とポテンシャル圧力の和)は、通常インクジェットヘッドのインク吐出に適した圧力P1よりも上流側流路抵抗×循環流量分だけ大きい。
【0072】
従って、循環中、メニスカスが図8(a)に示すような凹形状の状態にあったとしても、もし何らかの理由で循環が停止すると、メニスカスの負圧は減少し、正圧に転じて図8(b)に示すようにノズル先端から突出して盛り上がる。
【0073】
立ち上げ初期の循環を開始前の他、待機状態で電力を節約したり、緊急停止のために循環を止める場合などにこの様な状態になる。メニスカスの盛り上がり程度はノズル近傍のインク圧力に依存する。即ち本実施形態のような循環供給系では、上流側タンク25の液面とオリフィスプレート18の表面の水頭差に依存する。
【0074】
このノズル近傍の圧力が大きいと図8(b)の状態から、さらにメニスカスが盛り上がり、図8(c)状態となる。ノズル近傍の圧力がP2に達すると、ノズル17の先端面でインク滴が維持できなくなり、インク20が滴下し、あるいはノズル17の先端を越えてオリフィスプレート18に広がった後滴下する。
【0075】
待機時などの場合にインクが滴下することは、余計なインクを消費し、また周囲を汚すため好ましくない。従ってオリフィスプレート18の表面の高さから見た上流側のインク供給源の単位体積あたりエネルギー(上流側タンク25液面の静圧とポテンシャル圧力の和)はP2よりも小さくすると良い。例えば第2実施形態では、上流側タンク25の液面の静圧は0(大気圧)、ポテンシャル圧力は100Paなので、オリフィスプレート18の表面高さから見た上流側のインク供給源の単位体積あたりエネルギーは100Paである。一方P2は実測で約2kPa以上である。したがって、後述するようにオリフィスプレート18の表面状態を綺麗にしておけばインクの滴下が防止される。
【0076】
循環時のメニスカス圧力Pnを維持しつつ上流側インク供給源のオリフィスプレート18面の換算圧力を下げるには、上流側流路抵抗を小さくすれば良い。この為には上流側のインク供給源をインクジェットヘッド11になるべく近く設置すれば良く、第2実施形態の構造はそのように設定されている。
【0077】
ノズル17の近傍にインクの付着が無く綺麗にメンテナンスされているとき、インク20は図8(c)の状態になるまでノズル17から溢れ出て滴下することは無い。従って、インク充填動作などに先立ってノズル17の表面を綺麗にメンテナンスし、あるいはインクジェットヘッド11を乾燥させておくことで、インクの滴下を防ぎ、インクをノズル17から滴下させることなくP2までの静圧が許容される。
【0078】
一方、ノズル17近傍のインク圧力がP2よりも小さくても、例えばワイプ等により凸形状になった図8(b)のメニスカス21を壊してしまうと、図9(a)のようにオリフィスプレート18上にインクが広がり、図9(b)のようにP2より小さい圧力P3でインクが滴下する。
【0079】
また、図10(a)に示すように、ノズル17からノズルプレート端部までの距離が比較的近い場合は、圧力P3’でインク20はノズルプレート側面に回りこむ。また、図10(b)に示すように、オリフィスプレート18が表面にノズル17穴よりも大きい凹部を持つ形状ならば、圧力P3’’以上で普段インクが付着しないはずのオリフィスプレート18の最表段にインクが流れ出す。以上のようにインクが流れ出すことは、周囲を汚すため好ましくない。従って上流側インク供給源のノズル面換算圧力をP3、P3’又はP3’’以下に抑えておくことがより望ましい。P1,P2,P3の大きさはノズル周辺の形状、ノズル材料とインクの接触角、インクの表面張力によって決まり、計算または実験で求められる。ここで、P2>P3’’>P3, P3’>0>P1である。
【0080】
本実施形態においても上述した第1実施形態にかかるインクジェット記録装置1と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態にかかるインクジェット記録装置2では、インクジェットヘッドが複数の場合にも対応可能である。
【0081】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係るインクジェット記録装置について図11乃至図16を参照して説明する。上記第1実施形態または第2実施形態と同様の構成については説明を省略する。なお、各図において適宜構成を拡大、縮小、省略して概略的に示している。
【0082】
図11に示されるインクジェット記録装置3は、インクジェットヘッド11、インクジェットヘッド11に供給するインクを貯留する上流側タンク25、インクを貯留する下流側タンク30、下流側タンク30にインクを供給する供給タンク47、これらを接続するとともにインクの循環路を構成する導管41〜44、及びインクを循環させるインク送り機構としての循環ポンプ35を備えている。
【0083】
インクジェットヘッド11は、上記第1実施形態のインクジェットヘッド11と同様に構成されている。
【0084】
上流側タンク25及び下流側タンク30はいずれもインクジェットヘッド11よりも低く配置されている。上流側タンク25は第1導管41を介してインクジェットヘッド11の上流ポート11aと接続されている。下流側タンク30は第2導管42を介してインクジェットヘッド11の下流ポート11bと接続されている。上流側タンク25と下流側タンク30とは第3導管43を介して接続されている。この第3導管43は、インク送り機能を有する循環ポンプ35及びフィルタ36を備えている。下流側タンク30の内部は、第4導管44を介して、下流側タンク30に供給されるインクを保持する供給タンク47に接続されている。この第4導管44の途中には、インク送り機能を有する供給ポンプ38が備えられている。
【0085】
供給タンク47は交換式のカートリッジであってもよいし、上部からインクを注ぐ形式のタンクであっても良い。供給タンク47の内部圧力は、大気圧に開放されている。供給タンク47の内部のインクは供給ポンプ38を介して第4導管44を通って下流側タンク30へ注がれる。
【0086】
上流側タンク25は断面積変化のない円柱状に構成されている。上流側タンク25は、二つの液面センサS6、S7が設けられている。液面センサS6、S7は、タンク内のインクの液面がそれぞれ予め設定された第6水位および第7水位に達したか否かを検知する機能を有する。第7水位より上の空気層の高さはhauに構成されている。上流側タンク25の空気層は開閉可能なバルブV9を介して大気に接続されている。このバルブV9が制御部37により開閉されることで、選択的に、上流側タンク25の液面を大気圧に開放し、あるいは密閉することが可能となっている。さらに、上流側タンク25には、上流側タンク25の内部の空気層の圧力を測定可能な圧力計32が設けられている。
【0087】
下流側タンク30は断面積変化のない円柱状に構成されている。下流側タンク30は、二つの液面センサS8、S9が設けられている。液面センサS8、S9は、タンク内のインクの液面がそれぞれ予め設定された第8水位および第9水位に達したか否かを検知する機能を有する。液面センサS8より上の空気層の高さはhalに構成されている。下流側タンク30の空気層は開閉可能なバルブV10を介して大気に接続されている。このバルブV10が制御部37により開閉されることで、選択的に、下流側タンク30の液面を大気圧に開放し、あるいは密閉することが可能となっている。さらに、下流側タンク30には、下流側タンク30の内部の空気層の圧力を測定可能な圧力計31が設けられている。
【0088】
これらの複数のタンク25,30,47、ヘッド11及び導管41〜44によって、インクを循環できる循環系が構成されている。
【0089】
第7水位と第8水位は高さが同じで、ノズルより高さh下方に位置している。第9水位は第8水位よりも−Δhl(Δhlは負値)下方に位置している、第6水位は第7水位よりもΔhu上方に位置している。
【0090】
バルブV9と圧力計32、バルブV10と圧力計31に接続される部分の内部体積は十分小さいものとする。仮に上流側タンク25、下流側タンク30の上部に断面積変化があるか、もしくはバルブV9と圧力計32、バルブV10と圧力計31に接続される部分の内部体積が無視できない場合は、体積が同じで断面積変化のない円柱状のタンクに置き換えて考えて、hau、halを補正すればよい。
【0091】
循環ポンプ35、供給ポンプ38はともに、例えばチューブポンプのように、停止時に閉じる構造である。ダイアフラムポンプと逆止バルブを直列にして同じ機能を実現しても良い。なお、循環ポンプ35や供給ポンプ38の制御方法は例えばON/OFF制御や速度制御等により行われる。
【0092】
ここで、本実施形態におけるインクの比重は0.85、h=120mmである。上流側タンク25からオリフィスプレート18の表面までの流路抵抗Ruは、Ru = 4 x 10 Pa・s/mであり、らオリフィスプレート18の表面から下流側タンク30までの流路抵抗Rlは、Rl = 4 x 10 Pa・s/mである。hau=51mm, hal=49mm、Δhu=1mm, Δhl=−1mmとなっている。ここでは、上流側タンク25の断面積と下流側タンク30の断面積は等しい。大気圧は101kPaであり、重力加速度は9.8m/sである。
【0093】
次に、このインクジェット記録装置3に初期状態からインクを充填する動作までについて説明する。初期状態でインクは供給タンク47内に収容されている。ここで、バルブV10を開くとともに、供給ポンプ38を作動させると、インクが下流側タンクに送られ、下流側タンク30にインクが貯留される。ここで、バルブV9を開いて循環ポンプ35を作動させると、下流側タンク30のインクは、フィルタ36を介して上流側タンク25に流れ込む。このとき、各液面センサS6、S7、S8、S9を監視しながら循環ポンプ35と供給ポンプ38を適宜駆動することで、水位を調整することができる。ここで、上流側タンク25の液面を第7水位に、下流側タンク30の液面を第8水位となるよう調節する。この状態で、上流側タンク25の液面高さと下流側タンク30の液面高さは一致している。
【0094】
次にバルブV9とバルブV10を閉じて循環ポンプ35をゆっくり駆動する。これに伴い、インクは第1導管41、インクジェットヘッド11、第2導管42の順で流れ、循環系に充填される。
【0095】
この状態で、循環ポンプ35を停止させる。循環流が止まったら、バルブV9、バルブV10を開放する。ここで、第1導管41、インクジェットヘッド11及び第2導管42を含む循環系に充填した分だけインクの総量が減っているため、再度、各液面センサS6、S7、S8、S9を監視しながら適宜供給ポンプ38と循環ポンプ35を駆動して各液面を第7水位及び第8水位の位置に合わせる。
【0096】
この状態で、循環は停止しており、インクジェットヘッド11の液面は大気開放面よりもh=120mmだけ上に位置する。したがって、インクジェットヘッドのノズル近傍には−ρgh=−1kPaの負圧が印加されている。この負圧は、非吐出時のインク圧力としては適切な値である。
【0097】
次にインクを循環させる動作について説明する。上記インクが充填した状態において、バルブV9,V10を閉じ、上流側タンク25の液面が液面センサS6の位置になるまで循環ポンプ35を駆動する。その後は液面センサS6の位置を維持するように循環ポンプ35を制御する。このとき上流側タンク25の空気は圧縮されるため、圧力が上がる。また、下流側タンク30の空気は膨張するため、圧力が下がる。ここで、上流側タンク25の断面積は一様であるので、空気層の体積は空気層の高さに比例する。従って上流側タンク25の空気層のゲージ圧Pauは、Pau=Δhu/(hau−Δhu)x101kPa=1/(51−1)x101kPa=2.02kPaとなる。この時上流側タンク25内のインク量は、Δhuに上流側タンク25の断面積を掛けた体積だけ減少するが、ポンプ38が停止していれば循環経路内のインクの総量は変わらないので下流側タンク30のインク量はこれと同じだけ増大する。ここでは上流側タンク25と下流側タンク30の断面積が等しいので、Δhl=−Δhu=−1mmである。下流側タンク30の断面積が一様であるので、空気層の体積は空気層の高さに比例する。従って下流側タンク30の空気層のゲージ圧Palは、Pal=Δhl/(hal−Δhl)x101kPa=−1/(49+1)x101kPa=−2.02kPaである。
【0098】
上流側タンク25の液面は1mm上昇し、下流側タンク30の液面は1mm低下しているので、17Paのポテンシャル圧力が循環方向に働いている。上流側タンク25と下流側タンク30の差圧は4.04 kPaであるので、循環流量は、(4040+17 Pa) / 8 x 10 Pa・s/m x 100 x 60 = 30.4 mL/min である。ノズル17近傍の圧力Pnは,Pau−ρg(h−Δhu)と、Pal−ρg(h−Δhl)をRuとRlで分圧したものであるが、ここではRu=Rl, Δhu=−Δhlなので、Pn = −ρgh = −1 kPaとなる。これは、循環開始前と同一であり、適正値の範囲内である。
【0099】
また、インクジェットヘッド11がインクを吐出すると上流側の流量が増大し、下流側の流量が減少するので、Pnは−1kPaよりも負圧側に振れる。この圧力変化は、上流側流路抵抗と下流側流路抵抗を並列にして吐出流量のインクを流した場合の圧力損失と等価であると考えることができる。インクジェットヘッド11の最大吐出量Qiを第2実施形態と同じ10mL/minとすれば、圧力損失Plossは、Ploss = Ru*Rs/(Ru+Rs) * Qi = 2x10 Pa・s/m x 10mL/min x 1/(100x60) = 333 Paとなるので、ノズル17近傍の圧力(但し、アクチュエータがインク吐出動作のために発生する高周波成分を除く平均値)は最大吐出時に約−1.33kPaまで低下する。この値は適正値の範囲内である。
【0100】
ここで、流量がさらに大きく、吐出時のPnが負圧側に負圧側に振れすぎる場合には、RuとRlを小さくする。例えば、導管を太く又は短くすることによりRuとRlを小さくすることができる。インクジェットヘッド11が吐出を続けると循環系のインク総量が減少するので、供給ポンプ38を駆動してインクを補充する。例えば、下流側タンク30の液面が第9水位よりも下回ったら供給ポンプ38を駆動し、インクを補給すると良い。
【0101】
なお、本実施形態では液面センサS6、S7、S8、S9は+/−1mmの水位差を正しく検知する必要があるが、液面センサS6、S7、S8、S9の精度要求を緩和したい場合にはhau、hal、を本実施形態よりも大きく設定し、hau、hal、Δhu、Δhlの比率を合わせておけば良い。
【0102】
次に、インクジェット記録装置3において、液面センサS6を上げ、S9を下げて循環流量を0−100mL/分まで変化させたとき場合について、説明する。S6を上げ、同じだけS9を下げれば上流側タンクの圧力が上がり、下流側タンクの圧力が下がって循環流量は増大する。S6の高さを変えつつ同じだけS9の高さを逆方向へ移動し、循環流量を0−100mL/分まで変化させたときには、循環流量に対してノズル17近傍の圧力は図12のように変化する。即ち、循環流量が30mLよりも大きくなると、ノズル17近傍の圧力は正圧側に移動して行く。ここで、目標の循環流量が30mLより大きい場合は、hau、halの差、即ち循環開始前の上流側インクタンクと下流側インクタンクの空気層の高さの差を大きくすれば良い。例えばhau=52mm、hal=48mm、のとき、循環流量とノズル17近傍の圧力の関係は図13に示すように、より広い領域で平坦になる。
【0103】
さらに、上流側タンク25と下流側タンク30の空気層の高さを変える代わりに、上流側タンク25と下流側タンク30の断面積を変えても良い。例えば、hau=50mm、hal=50mm、のとき、上流側タンク25と下流側タンク30の断面積比が1:1の場合には図14に示すような関係となり流量の増大とともにノズル17近傍の圧力は増大してしまう。そこで
上流側タンク25と下流側タンク30の断面積比を1:0.9とすれば、循環流量とノズル17近傍の圧力の関係は図15に示すような関係となり、広い領域で平坦になる。
【0104】
以上説明した例では、循環流量に対してノズル17近傍のメニスカス圧力が凹形に変化するが、さらに下流側タンク30の形状を下の方の断面積が小さいすりばち状にするなどにより、循環流量が増加した時に下流側タンク30液面のポテンシャルヘッドが大きく下がるように構成すれば、循環流量が変わってもノズル17近傍の圧力が変化しないように設定することも可能である。
【0105】
ここで、循環ポンプ35の作動前後でノズル17近傍の圧力が変化しないような調整方法について説明する。上記各上流側タンク25の初期状態における空気層の体積をVu、下流側タンク30の初期状態における空気層体積をVl、下流側タンク30から上流側タンク25へ移動するインクの体積をΔV、上流側タンク25の液面が初期状態から上昇した高さをΔhu、下流側タンク30の液面が初期から下降した高さを−Δhl、上流側タンク25からオリフィスプレート18の表面までの流路抵抗をRu、下流側タンク30からオリフィスプレート18の表面までの流路抵抗をRl、インク比重をρ、重力加速度をg、大気圧をPatm、上流側タンク25の上昇した空気圧をPu(ゲージ圧)、下流側タンク30の下降した空気圧をPl(ゲージ圧)、オリフィスプレート18の表面の高さに対する下流側タンク30の初期液面高さをh、ノズル17近傍の圧力をPn、とする。
【0106】
初期状態では、Pn=ρghとし、循環ポンプ35を稼動させ、Δvのインクが移動したときPu=ΔV/(Vu−ΔV)Patm、PL=−ΔV/(Vl+ΔV)Patmとする。上流側タンク25の液面のポテンシャル圧力はρg(h+Δhu)となり、下流側タンク30の液面のポテンシャル圧力はρg(h+Δhl)となる。
【0107】
以下、計算を簡単にするためにRu=Rlの場合について説明すると、Pn=(1/2){Pu+ρg(h+Δhu)+PL+ρg(h+Δhl)}
=ρgh+(1/2)(Pu+Pl+ρghΔhu+ρgΔhl)
=ρgh+(1/2){ΔV(Vl−Vu)+2ΔV}/{(Vu−ΔV)(Vl+ΔV)Patm+(ρg/2)(Δhu+Δhl)である。
循環ポンプ35の作動前後でノズル17の近傍の圧力の変化がないようにするには、
{ΔV(Vl−Vu)+2ΔV}/{(Vu−ΔV)(Vl+ΔV)}Patm=ρg(Δhl+Δhu)−Δhl=(Patm/ρg){ΔV(Vl−Vu)+2ΔV}/{(Vu−ΔV)(Vl+ΔV)}+Δhuとすればよい。
【0108】
ここで、上流側タンク25を面積Suの円柱管状であるとすれば、ΔV=SuΔhuであり、かつ、−Δhu=ΔV/Suであるので、−Δhl=Patm/ρg{ΔV(Vl−Vu)+2ΔV}/{(Vu−ΔV)(Vl+ΔV)}+(ΔV/Su)となる(式1)。
【0109】
Vu=Vl=Vのときは−Δhl=2(Patm/ρg)(ΔV/V−ΔV)+ΔV/Suとなる(式2)。したがって、下流側タンク30の液面がΔhlを下ったとき、ΔVの体積変化となるように、下流側タンク30の断面積を式1又は式2が成立するように調整すればよい。
【0110】
また、空気層の高さや上流側タンク25と下流側タンク30の断面積比の代わりに、上流側流路と下流側流路の流路抵抗比を調整して流量に対するノズル17近傍の圧力変化特性を調整することもできる。例えば、hau=50mm、hal=50mm、に設定し、上流側タンク25と下流側タンク30の断面積比を1:1としたまま、上流側流路を長くするなどして流路抵抗を、Ru=4.4x10 Pa・s/m、Rl=4.0x10 Pa・s/mとすれば、循環流量とノズル17近傍の圧力は図16に示すような関係となり、図14よりも広い領域で平坦になる。
【0111】
本実施形態においても上述した第1実施形態にかかるインクジェット記録装置1と同様の効果が得られる。さらに、下流側タンクを密閉して下流側タンクの圧力を下げるだけでなく上流側タンクも密閉可能として上流側タンクの圧力を上げることができるので、各タンク25,30,50やインクジェットヘッド11の配置の自由度を向上することが可能となる。
【0112】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明を実施するにあたり、各構成部材の具体的な形状など、本発明の構成要素を発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更して実施できることは言うまでもない。例えば、上記各実施形態では循環ポンプ35は液面センサを検知して制御したが、一定流量で動作させても良い。また、上記各実施形態ではインクの補給は、液面センサ3を検知して制御したが、下流側タンク30の重量が一定になるように制御しても良い。
【0113】
供給タンク47からのインク補給は供給ポンプ38による構成でも、供給タンク47の液面高さと下流側タンク30の負圧とユーザータンクから下流側タンク30の流路抵抗とで決まる自然補給流量を利用してバルブで補給を制御する構成でもどちらでもよい。
【0114】
上記各実施形態では供給ポンプ38は液面センサを検知して制御したが、供給ポンプ38を正逆転可能とし、かつ圧力計31と圧力計32の値をRuとRlで分圧した値を計算し、これが0より小さいとき供給ポンプを正転してインクを補給し、0より大きいときは逆転してインクを供給タンク47に戻す制御を行うことで計算値が0になるように制御しても良い。このように制御するとhau,halが変わってもノズル近傍の圧力に対するの影響はポテンシャル圧力差分だけしか生じないので、hau,halをあまり厳密に合わせる必要が無いという利点がある。
【0115】
このように供給ポンプ38が正逆転可能であれば上流側タンク25及び下流側タンク30は必ずしもヘッドより下にある必要は無く、ヘッドよりも高いところに位置してバルブを閉じて供給ポンプを逆転させて負圧を生成しても良い。例えば、上流側タンク25と下流側タンク30の液面をノズルより上30mmの場所に設置する。hau=hal=50mmとする。この時バルブ1とバルブ2は開いておくので、ノズルからインクが滴下する恐れがあるが、実施例2で説明した方法によってこれを防いでおく。次いでバルブ1、バルブ2を閉じ、圧力計1と圧力計2の読みをRuとRlで分圧した値、即ちこの実施例ではRu=Rlなので圧力計31と圧力計32の読みの平均値Paveに従って、Paveが−1kPaより正圧側の時は供給ポンプを逆転させてインクを供給タンクに戻し、Paveが−1kPaより負圧側の時は供給ポンプを正転させてインクを補給すれば、ノズル圧力は−1kPaになる。この時上流側タンク25、下流側タンク30の液面は初期より低下している。次いで循環ポンプを30.4mL/minで駆動すると、上流側タンク25の液面は上昇し下流側タンク30の液面は低下する。この状態での上流側タンク25の液面と下流側タンク30の液面はバルブを閉じた時点、すなわちノズルより上30mmの位置を基準として、Δhu=0.38mm、Δhl=−1.67mmである。この液面高さ変化はノズル近傍の圧力に対する影響としては無視できる程度に小さい。この間もPave=−1kPaとなるように供給ポンプを適宜正転、逆転制御しておけば、ノズル近傍の圧力は循環起動前から循環中に亘りほぼ−1kPaに維持できる。
【0116】
使用しない冗長なセンサー類は省略することもできるが、省略せずに異常検出のために用いても良い。液面センサとポンプ流量の関係から異常を知ることができる。例えば、定流量で循環停止状態から循環ポンプを駆動した時は、上流側タンク25の液面センサの位置を検知するまでの時間を測定してもよい。時間が所定範囲よりも長ければ、循環ポンプから上流側タンク25までに異常があるか、ポンプの動作に異常がある。又圧力計は以下のように異常検出に利用できる。例えば上流ポートの接続が外れていれば、循環ポンプが作動しているにもかかわらず圧力計31の圧力が上がらないので、液面センサで判断するよりも早く異常を知ることができる。さらに、液面センサと圧力センサの読み値が予測と異なる場合にどこかに異常があると判断することもできる。循環ポンプ35を起動してから液面センサが所定位置に達する時間を計測して、所定の範囲に無い場合に異常を判断することもできる。例えば循環停止状態から循環ポンプを起動し、所定の時間内に上流側タンク25の液面が液面センサに到達しなければ、循環ポンプが送液できていないか、又は上流側流路から先にインク漏れがある。逆に所定の時間より短時間で液面センサに到達した場合は上流側タンク25の気密がとれていないと判断可能である。循環中の液面高さ変動や圧力変動が所定の範囲に収まっているかどうかで異常の有無を検知しても良い。
【0117】
上記各実施形態において、インクジェットヘッド11〜16の構成として図2に示すように、インクの圧力室19を介してインク20を循環させつつ吐出させる構成を例示したがこれに限られるものではない。例えば、図17で示すインクジェットヘッド50のように、インク貯留部52にインクを循環供給する方法も適用可能である。このインクジェットヘッド50は、複数のノズル51と、このノズル51に対応して形成された発熱素子51a、インク貯留部52、このインク貯留部52の上流側及び下流側に連通する流路53,54、等を備えている。この流路53、54が、それぞれ上記各実施形態のインク供給機構10における第4導管44、第5導管45に連通されることで、上記各実施形態と同様に機能するとともに上記各実施形態と同様の効果を得られる。この形態ではインク貯留部52から離間して、スリット52aを介して、圧力室52bとメニスカスが形成されるノズル51を備えており、インク貯留部52はインク循環部分とスリット52aを介した圧力室52b、ノズル51との分岐点であると考えることができる。このようなヘッドにインクを循環させた時、インク貯留部52とノズル51の表面の高さがほとんど違わないとすれば、非吐出時にはこの分岐点とノズルのメニスカス圧力はほぼ等しい。したがって、インク貯留部52のインク圧力をノズルのメニスカス圧力と考えて実施すればよい。又、吐出時は吐出流量に分岐点からノズルまでの流路抵抗を掛けた圧力だけノズルのメニスカス圧力が下がると考えればよい。
【0118】
さらには、このインクジェット装置に使用されるインクジェットヘッドは、循環経路の途中からフィルタを介してアクチュエータ、ノズルへ分岐しているタイプでも良い。この場合も、フィルタとノズル51の表面の高さがほとんど違わないとすれば、非吐出状態ではノズルの圧力はフィルタ1次側が循環経路と接する部分の圧力と同一と考えることが出来る。又吐出時は吐出流量にフィルタ1次側からノズルまでの流路抵抗を掛けた圧力だけノズルの圧力が下がると考えればよい。アクチュエータ22として、上記実施形態に示すもの以外にも、例えば、ピエゾ式、ピエゾシェアモード式、サーマルインクジェット式等も適用可能である。
【0119】
また、オリフィスプレート表面に複数のノズル開口があって各々の高さが異なる場合には、高さの違いに起因するノズル近傍の圧力の違いが適正なノズル近傍の圧力の範囲を超えない限りにおいて、各ノズルの高さの平均をオリフィスプレート表面の高さと考えれば良い。この時ヘッド内のインク循環流の方向を高さの低いノズルに近い方から高さの高いノズルに近い方に向かってとれば、高さの違いに起因するノズル近傍の圧力の違いを減らすことができるので、そのようにしても良い。
【0120】
また、上記第1実施形態では、循環ポンプ35を液面センサに従って作動させ下流側タンク30空気層のゲージ圧PLを得たが、液面センサを設ける代わりに下流側タンク30空気層のゲージ圧を測定する圧力センサを設け、測定結果がPL(負値)より大きい(絶対値が小さい)間だけ循環ポンプを作動させて直接圧力PLを維持する制御を行う方法もある。
【0121】
また、液面センサ又は圧力センサの出力を閾値判断してポンプをON/OFF制御する代わりに液面センサ又は圧力センサの出力をアナログ出力とし、かつ循環ポンプはON/OFF制御ではなく前記のアナログ出力値に従って流量を変化させる制御を行い、液面センサ又は圧力センサの出力が所定値の時に循環ポンプが目標流量に一致するようにしておけば、より脈動の少ないスムースな制御を実現できる。
【0122】
さらに、各実施形態の構成を別の実施形態の構成と組み合わせても良い。すなわち、第1実施形態や第3実施形態においてインクジェットヘッドを複数設けてもよく、第1実施形態や第2実施形態で供給ポンプ38を用いて供給タンク50をヘッドよりも下方に配置しても良い。この他、各構成部材の方向、材質、数、具体的な形状など、本発明の構成要素を発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更して実施できる。
【0123】
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0124】
(1)ノズル、ノズルに対向する圧力室、前記圧力室と連通する上流ポート及び下流ポートを有するインクジェットヘッドと、前記上流ポートを介して前記インクジェットヘッドと連通し、インクを貯留可能な上流側タンクと、前記下流ポートを介して前記インクジェットヘッドと連通し、インクを貯留可能な下流側タンクと、前記下流側タンクから上流側タンクへインクを戻す循環ポンプと、を連通して構成される循環系を備え、少なくとも前記下流側タンク液面を大気圧に開閉可能な開放弁を持ち、開放弁を閉じて循環ポンプを駆動し、下流側タンク液面を負圧にするとともに帰還流路を介して下流側タンクから上流側タンクへインクを戻してインクを循環させるインク供給機構。
【0125】
(2)前記上流側タンク及び前記下流側タンクのうち、少なくともいずれか一方の内部のインクの液面の高さを検知する液面検出器と、前記液面検出器で検出された液面高さに応じて前記ポンプ、及び前記バルブの開閉動作を制御する制御装置を備えたことを特徴とする請求項1記載のインク供給機構。
【0126】
(3)前記上流側タンク及び前記下流側タンクのうち、少なくともいずれか一方の内部の空気層の圧力を検知する圧力検出器と、前記圧力検出器で検出された圧力に応じて前記ポンプ、及び前記バルブの開閉動作を制御する制御装置を備えたことを特徴とする(1)記載のインク供給機構。
【0127】
(4)複数の前記インクジェットヘッドを備えたことを特徴とする(1)記載のインク供給機構。
【0128】
(5)前記上流側タンクの液面は、前記インクジェットヘッドのオリフィス面よりも上方に位置し、前記下流側タンクの液面は前記インクジェットヘッドのオリフィス面よりも下方に位置することを特徴とする(1)記載のインク供給機構。
【0129】
(6)前記上流側タンクの液面及び前記下流側タンクの液面は前記インクジェットヘッドのオリフィス面よりも下方に位置することを特徴とする(1)記載のインク供給機構。
【0130】
(7)前記上流側タンク液面を大気圧に開閉可能な開放弁を持ち、開放弁を閉じて循環ポンプを駆動し、上側流側タンク液面を正圧にすることを特徴とする(1)記載のインク供給機構。
【0131】
(8)循環系にインクを出入りさせる供給ポンプを有し、前記供給ポンプは、上流側タンク液面のインクの単位体積あたりエネルギー(ポテンシャル圧力と静圧の合計値)と前記下流側タンク液面のインクの単位体積あたりエネルギー(ポテンシャル圧力と静圧の合計値)を、上流側流路の流路抵抗と下流側流路の流路抵抗で分圧した値が適正なノズル圧力を維持するように制御されることを特徴とする(7)記載のインク供給機構。
【0132】
(9)前記下流側タンク液面には空気層を有し、前記上流側タンク液面にはこれより大きな体積の空気層を有することを特徴とする(7)記載のインク供給機構。
【0133】
(10)前記上流側タンクの断面積は前記下流側タンクの断面積よりも大きいことを特長とする(7)記載のインク供給機構。
【0134】
(11)前記インクジェットヘッドのノズルから前記上流側タンクまでの流路抵抗は、前記ノズルから前記下流側タンクまでの流路抵抗よりも大きいことを特長とする(7)記載のインク供給機構。
【0135】
(12)ノズル、ノズルに対向する圧力室、前記圧力室と連通する上流ポート及び下流ポートを有するインクジェットヘッドと、前記上流ポートを介して前記インクジェットヘッドと連通するとともにインクを貯留可能な上流側タンクと、前記下流ポートを介して前記インクジェットヘッドと連通するとともにインクを貯留可能な下流側タンクと、前記下流側タンクから上流側タンクへインクを戻す循環ポンプと、が連通されて構成される循環路において、下流側タンクを密閉して循環ポンプを駆動し、下流側タンクの液面を負圧に制御しつつインクを循環させることを特徴とするインク供給方法。
【0136】
(13)前記上流側タンクを閉じて循環ポンプを駆動し、上側流側タンク内空気層を正圧にすることを特徴とする(12)記載のインク供給方法。
【0137】
(14)前記ノズルの高さを基準とする上流側タンク液面のインクの単位体積あたりエネルギー(ポテンシャル圧力と静圧の合計値)は、前記ノズルから出たインクが滴下するに要する圧力よりも小さくなるように設定されることを特徴とする(12)記載のインク供給方法。
【0138】
(15)前記ノズルの高さを基準とする上流側タンク液面のインクの単位体積あたりエネルギー(ポテンシャル圧力と静圧の合計値)は、前記ノズルから出たインクが前記ノズルの形成されたオリフィスプレートの表面へ広がるのに要する圧力よりも小さくなるように設定されたことを特徴とする(12)記載のインク供給方法。
【0139】
(16)前記ノズル先端のインク圧力が0〜−3kPaの範囲内となるように調整されることを特徴とする(12)記載のインク供給方法。
【0140】
(17)前記循環路を循環するインクの流量が印刷時におけるインク循環量の1倍以上、20倍以下の範囲内となるように調整されることを特徴とする(12)記載のインク供給方法。
【0141】
(18)ノズル、ノズルに対向する圧力室、前記圧力室と連通する上流ポート及び下流ポートを有するインクジェットヘッドと、前記上流ポートを介して前記インクジェットヘッドと連通するとともにインクを貯留可能な上流側タンクと、前記下流ポートを介して前記インクジェットヘッドと連通するとともにインクを貯留可能な下流側タンクと、が連通されて構成される循環路において、インクを循環させる前に、ノズルが形成されたオリフィスプレートの表面をクリーニングすることにより、インクがノズルから滴下することを防ぐことを特徴とするインク供給方法。
【0142】
(19)前記ノズルの高さを基準とする上流側タンク液面のポテンシャル圧力は、前記ノズルから出たインクが滴下するに要する圧力よりも小さくなるように設定されることを特徴とする(12)記載のインク供給方法。
【0143】
(20)前記ノズルの高さを基準とする上流側タンク液面のポテンシャル圧力は、前記ノズルから出たインクが前記ノズルの形成されたオリフィスプレートの表面へ広がるのに要する圧力よりも小さくなるように設定されたことを特徴とする(12)記載のインク供給方法。
【符号の説明】
【0144】
1,2,3…インクジェット記録装置、V1〜V10…バルブ、
S1〜S9…液面センサ、10…インク供給機構、11〜16…インクジェットヘッド
17…ノズル、18…オリフィスプレート、19…圧力室、20…インク、
21…メニスカス、25…上流側タンク、28…通気パイプ、29…インク補給パイプ、
30…下流側タンク、35…循環ポンプ、37…制御部、38…供給ポンプ、
38…ポンプ、40…循環路、41〜46…導管、47…供給タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル、ノズルに対向する圧力室、前記圧力室と連通する上流ポート及び下流ポートを有するインクジェットヘッドと、
前記上流ポートを介して前記インクジェットヘッドと連通し、インクを貯留する上流側タンクと、
前記下流ポートを介して前記インクジェットヘッドと連通し、インクを貯留する下流側タンクと、
前記下流側タンクから上流側タンクへインクを戻す循環ポンプと、を連通して構成される循環系を備え、
少なくとも前記下流側タンクの空気を大気圧に開閉するバルブを持ち、
前記バルブ及び前記循環ポンプに接続されるとともに、前記循環ポンプ及びバルブの開閉動作を制御し、少なくとも前記インクジェットヘッドによる印刷動作中に、前記バルブを閉じ前記循環ポンプを駆動することで、前記下流側タンクを負圧にし、帰還流路を介して前記下流側タンクから前記上流側タンクへインクを戻してインクを循環させる制御装置を備える、ことを特徴とするインク供給機構。
【請求項2】
前記上流側タンク及び前記下流側タンクのうち、少なくともいずれか一方の内部のインクの液面の高さを検知する液面検出器を備え、
前記制御装置は、前記液面検出器で検出された液面高さに応じて前記循環ポンプを制御することを特徴とする請求項1記載のインク供給機構。
【請求項3】
前記上流側タンク及び前記下流側タンクのうち、少なくともいずれか一方の内部の空気層の圧力を検知する圧力検出器を備え、
前記制御装置は、前記圧力検出器で検出された圧力に応じて前記循環ポンプ、及び前記バルブの開閉動作を制御する制御装置を備えたことを特徴とする請求項1記載のインク供給機構。
【請求項4】
複数の前記インクジェットヘッドを備え、
前記上流側タンクが前記複数のヘッドに前記上流ポートを介してそれぞれ連通され、
前記下流側のタンクが前記複数のヘッドに前記下流ポートを介してそれぞれ連通されたことを特徴とする請求項1記載のインク供給機構。
【請求項5】
前記上流側タンクの液面は、前記インクジェットヘッドのオリフィス面よりも上方に位置し、
前記下流側タンクの液面は前記インクジェットヘッドのオリフィス面よりも下方に位置することを特徴とする請求項1記載のインク供給機構。
【請求項6】
前記上流側タンクの液面及び前記下流側タンクの液面は前記インクジェットヘッドのオリフィス面よりも下方に位置することを特徴とする請求項1記載のインク供給機構。
【請求項7】
前記上流側タンク液面を大気圧に開閉可能な開放弁を持ち、バルブを閉じて循環ポンプを駆動し、上側流側タンクの空気を正圧にすることを特徴とする請求項1記載のインク供給機構。
【請求項8】
前記循環系にインクを出入りさせる供給ポンプを有し、前記制御装置は、上流側タンク液面のインクの単位体積あたりエネルギー(ポテンシャル圧力と静圧の合計値)と前記下流側タンク液面のインクの単位体積あたりエネルギー(ポテンシャル圧力と静圧の合計値)を、上流側流路の流路抵抗と下流側流路の流路抵抗で分圧した値が適正なノズル圧力を維持するように、前記供給ポンプを制御することを特徴とする請求項7記載のインク供給機構。
【請求項9】
前記下流側タンク液面には空気層を有し、前記上流側タンク液面にはこれより大きな体積の空気層を有することを特徴とする請求項7記載のインク供給機構。
【請求項10】
前記上流側タンクの断面積は前記下流側タンクの断面積よりも大きいことを特長とする請求項7記載のインク供給機構。
【請求項11】
前記インクジェットヘッドのノズルから前記上流側タンクまでの流路抵抗は、前記ノズルから前記下流側タンクまでの流路抵抗よりも大きいことを特長とする請求項7記載のインク供給機構。
【請求項12】
前記下流側タンクは、循環流量に応じて変化する液面高さに対応して、断面積が異なる
ことを特長とする請求項7記載のインク供給機構。
【請求項13】
ノズル、ノズルに対向する圧力室、前記圧力室と連通する上流ポート及び下流ポートを有するインクジェットヘッドと、
前記上流ポートを介して前記インクジェットヘッドと連通するとともにインクを貯留する上流側タンクと、前記下流ポートを介して前記インクジェットヘッドと連通するとともにインクを貯留する下流側タンクと、前記下流側タンクから上流側タンクへインクを戻す循環ポンプと、が連通されて構成される循環路において、前記下流側タンクの空気を大気圧に開閉するバルブ及び前記循環ポンプを制御する制御装置により前記下流側タンクを密閉して前記循環ポンプを駆動し、前記下流側タンクの液面を負圧に制御しつつインクを循環させ、ノズル近傍の圧力をインク吐出に適した値とすることを特徴とするインク供給方法。
【請求項14】
前記制御装置により前記上流側タンクを閉じて循環ポンプを駆動し、上側流側タンク内空気層を正圧にすることを特徴とする請求項13記載のインク供給方法。
【請求項15】
前記ノズルの高さを基準とする上流側タンク液面のインクの単位体積あたりエネルギー(ポテンシャル圧力と静圧の合計値)は、前記ノズルから出たインクが滴下するに要する 圧力よりも小さくなるように設定されることを特徴とする請求項13記載のインク供給方法。
【請求項16】
前記ノズルの高さを基準とする上流側タンク液面のインクの単位体積あたりエネルギー(ポテンシャル圧力と静圧の合計値)は、前記ノズルから出たインクが前記ノズルの形成されたオリフィスプレートの表面へ広がるのに要する圧力よりも小さくなるように設定されたことを特徴とする請求項13記載のインク供給方法。
【請求項17】
前記インク吐出に適した値は、0〜−3kPaの範囲であることを特徴とする請求項13記載のインク供給方法。
【請求項18】
前記循環路を循環するインクの流量が印刷時における印刷時の最大流量の1倍以上、20倍以下の範囲内であることを特徴とする請求項13記載のインク供給方法。
【請求項19】
前記ノズルの高さを基準とする上流側タンク液面のポテンシャル圧力は、前記ノズルから出たインクが滴下するに要する圧力よりも小さいことを特徴とする請求項13記載のインク供給方法。
【請求項20】
前記ノズルの高さを基準とする上流側タンク液面のポテンシャル圧力は、前記ノズルから出たインクが前記ノズルの形成されたオリフィスプレートの表面へ広がるのに要する圧力よりも小さいことを特徴とする請求項13記載のインク供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−10366(P2013−10366A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231661(P2012−231661)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2012−28672(P2012−28672)の分割
【原出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】