説明

インクジェット記録装置および予備吐出方法

【課題】インクジェット記録装置において、キャップオープン時に予備吐出を行なう構成にあって、記録ヘッドの状態を適切に反映した予備吐出を行なうことが可能な
【解決手段】キャップクローズ時の記録ヘッドの温度Tが35℃以上で(S103)、キャップクローズ時間が6時間未満のときは(S104)、予備吐出4を実行し、吐出数を4000とする(S108)。すなわち、予備吐出4は、キャップクローズ時の記録ヘッドの温度Tが35℃より低いと判断され(S103)、キャップクローズ時間が同じ6時間未満の予備吐出1における吐出数より多い吐出数として行う。これにより、キャップクローズ時の記録ヘッドの温度が所定以上の比較的高い温度の場合には、そのときの記録ヘッドにおけるインクの増粘の程度をより正確に反映した予備吐出を行い、比較的短時間のキャップクローズで吐出不良が生じることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置および記録ヘッドの予備吐出方法に関し、詳しくは、記録ヘッドのキャッピング時間を考慮して予備吐出の内容を制御する技術に関するものである。なお、本発明のインクジェット記録装置は、インクジェットプリンタの他、インクジェット記録方式を用いたファクシミリ、複写機、複合機などに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、記録動作が行われない状態が続くときに、記録ヘッドのインクを吐出するノズルが配列された面にキャップを当接させてその面を覆う(以下、キャッピングともいう)ことが行なわれる。これにより、ノズルの開口やノズル内のインクの増粘、乾燥を防止することができる。また、このキャッピングの後、記録ヘッドについて記録に関与しないインク吐出である予備吐出を行うことにより、上記キャッピングの間に生じている可能性のある、比較的軽微な増粘インクを除去することも行われる。
【0003】
このキャッピング後の予備吐出では、キャッピングをしている(以下、キャップクローズ)時間に応じた、予備吐出の吐出数などで予備吐出を行う。これにより、キャップクローズの間に生じ得る増粘の程度に適切に対応した予備吐出を行うことが可能となる。
【0004】
また、一般に予備吐出を行う場合の条件として、特許文献1には、インクタンクにおけるインク残量、環境温度、湿度、気圧などに応じて、予備吐出の吐出回数、吐出周波数、吐出間隔、対象とするインクノズルを定める方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−202903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本願発明者等は、キャップクローズする前の記録ヘッドの温度が高い場合には、上述したキャップクローズの時間に応じて予備吐出の内容を制御しても、インクの吐出不良が生じることがあることを見出した。例えば、比較的長い時間連続的に記録動作を行った後キャップクローズを行い、その後、予備吐出を行って記録動作を再開したときに、吐出不良が生じることがある。すなわち、上記連続記録動作で記録ヘッドの温度が高温となって、これが記録ヘッドの吐出状態に影響を及ぼし、キャップクローズの時間だけに応じた予備吐出では、吐出不良が生じてしまうことがある。
【0007】
また、逆に、キャップクローズする前の記録ヘッドの温度によっては、キャップクローズの時間が比較的短い場合に、それに応じて定められた予備吐出の吐出回数が過剰になる場合もある。その結果、不必要なインク消費がなされてしまうという問題も派生する。
【0008】
以上のように、キャップクローズの時間に応じて予備吐出を行なう場合には、記録ヘッドの状態を適切に反映した予備吐出ができないという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、キャップオープン時に予備吐出を行なう構成にあって、記録ヘッドの状態を適切に反映した予備吐出を行なうことが可能なインクジェット記録装置および予備吐出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために本発明では、インクを吐出するためのノズルが設けられた吐出口面を有する記録ヘッドと、前記吐出口面をキャッピングするためのキャップと、該キャップを前記吐出口面から離間した後に前記記録ヘッドに予備吐出を行わせる予備吐出手段と、を備えるインクジェット記録装置において、前記吐出口面に前記キャップがキャッピングされている時間と、前記吐出口面に前記キャップがキャッピングされる前の前記記録ヘッドの温度とに基づいて、前記予備吐出手段を制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の構成によれば、キャップオープン時に予備吐出を行なう構成にあって、記録ヘッドの状態を適切に反映した予備吐出を行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の要部の機械的構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る記録ヘッドとインクタンクを示す斜視図である。
【図3】図1に示したインクジェット記録装置における制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る予備吐出処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る、キャップクローズ時間と、予備吐出における1ノズルあたりの吐出回数と、の関係を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかるキャップオープン時における予備吐出処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態にかかるキャップオープン時における予備吐出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(インクジェット記録装置の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の要部の機械的構成を示す斜視図である。図1において、記録装置の外装部材内に収納されたシャーシM3019は、複数の板状金属部材によって構成されて、記録装置の骨格を成すものであり、次のような各記録動作機構を保持する。自動給送部M3022は、用紙(記録媒体)を装置本体内へと自動的に給送する。搬送部M3029は、自動給送部M3022から1枚ずつ送出される用紙を所定の記録位置へと搬送するとともに、その記録位置から排出部M3030へと用紙を搬送する。この用紙の搬送方向(副走査方向)は図において矢印Yで示される。記録位置に搬送された用紙は、記録部によって所望の記録が行われる。この記録部に対しては、回復部M5000によって回復処理が行われる。M2015は紙間調整レバー、M3006は、LFローラM3001の軸受けをそれぞれ示す。記録部において、キャリッジM4001は、キャリッジ軸M4021によって矢印Xの主走査方向に移動可能に支持されている。このキャリッジM4001には、インクを吐出可能な記録ヘッドH1001が着脱自在に装着可能となっている。
【0014】
図2は、記録ヘッドH1001とインクタンクH1900を示す斜視図である。図2に示すように、記録ヘッドH1001は、インクを貯留するインクタンクH1900とともに、記録ヘッドカートリッジH1000を構成する。インクタンクH1900としては、写真調の高画質なカラー記録を可能とするために、例えば、顔料のブラック(Bk)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色独立のインクタンクが用意されている。これらのインクタンクH1900のそれぞれは、記録ヘッドH1001に対して着脱自在となっていても良い。また、記録ヘッドH1001は記録装置から記録データに基づいたヘッド駆動信号を得る。記録ヘッドH1001のインク吐出部H1002には、Bk、LC、LM、C、M、Yインクをそれぞれ吐出するためのノズル列が設けられており、各ノズルに対応して、その内部に電気熱変換素子が設けられている。この電気熱変換素子の発熱によってインクに膜沸騰を生じさせ、そのときの発泡エネルギーによって、対応するノズルからインクを吐出することができる。また、この記録ヘッドの吐出部H1002には、記録ヘッドの温度を検出するための温度検出素子が設けられている。
【0015】
回復部M5000は、記録ヘッドH1001における各色インクのノズル列が設けられた面(吐出口面)に当接するキャップ(図示せず)を備えている。このキャップには、その内部に負圧を導入可能な吸引ポンプを接続してもよい。その場合には、記録ヘッドH1001のインク吐出口(ノズル)を覆ったキャップ内に負圧を導入して、インク吐出口からインクを吸引排出させることにより、記録ヘッドH1001の良好なインク吐出状態を維持すべく回復処理をすることができる。また、後述の各実施形態で説明される、記録ヘッドの予備吐出がこのキャップ内に対して行なわれる。
【0016】
また、キャリッジM4001には、図1に示すように、キャリッジM4001上の所定の装着位置に記録ヘッドH1001を案内するためのキャリッジカバーM4002が設けられている。さらに、キャリッジM4001には、記録ヘッドH1001のタンクホルダーと係合して、記録ヘッドH1001を所定の装着位置にセットさせるヘッドセットレバーM4007が設けられている。ヘッドセットレバーM4007は、キャリッジM4001の上部に位置するヘッドセットレバー軸に対して回動可能に設けられており、記録ヘッドH1001と係合する係合部には、ばね付勢されるヘッドセットプレート(不図示)が備えられている。そのばね力によって、ヘッドセットレバーM4007は、記録ヘッドH1001を押圧しながらキャリッジM4001に装着する。
【0017】
図3は、図1に示したインクジェット記録装置における制御系の概略構成を示すブロック図である。図3において、CPU100は、本記録装置の動作の制御処理やデータ処理等を実行する。ROM101は、それらの処理手順等のプログラムを格納し、またRAM102は、それらの処理を実行するためのワークエリアなどとして用いられる。また、CPU100は、記録ヘッドの温度検出素子が検出する記録ヘッドの温度を用いて、図4、図6、図7で後述される予備吐出に関する処理のプログラムに従って制御、処理を実行する。
【0018】
記録ヘッドH1001からのインクの吐出は、CPU100が電気熱変換体などの駆動データ(記録データ)および駆動制御信号(ヒートパルス信号)をヘッドドライバH1001Aに供給することにより行われる。CPU100は、キャリッジM001を主走査方向に駆動するためのキャリッジモータ203をモータドライバ203Aを介して制御し、また用紙を副走査方向に搬送するためのP.Fモータ104を、モータドライバ104Aを介して制御する。
【0019】
以上のような構成のインクジェット記録装置によって記録を行う場合には、まず、ホスト装置200(図3参照)から外部I/Fを通して送出されてきた記録データをプリントバッファに一旦格納する。そして、キャリッジモータ103によってキャリッジM4001と共に記録ヘッドH1001を主走査方向させる。そして記録データに基づいて記録ヘッドH1001からインクを吐出させる記録動作と、P.Fモータ104によって用紙を副走査方向に所定量搬送する搬送動作と、を繰り返すことによって、用紙上に順次画像を記録する。
【0020】
以上説明したインクジェット記録装置における予備吐出による吐出回復処理の実施形態について以下に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図4は、本発明の第1の実施形態に係る予備吐出処理を示すフローチャートであり、記録ヘッドからキャップを離間したとき(キャップオープン)のときの処理を示している。インクジェット記録装置において、キャップクローズ(キャップを当接した)状態の後に所定の動作が起動すると、ステップS101で、キャップオープンシーケンスを開始する。この処理は、電源投入時や、キャッピングした待機状態で記録信号の入力があった場合に起動される。
【0022】
この処理では、先ず、ステップS102で、記録装置の機構部分のキャップオープン動作を開始する。次に、ステップS103で、本処理が起動される前のキャップクローズ時においてキャップクローズ状態となる直前に測定された記録ヘッドの温度測定を行い、所定のしきい値T℃、本例では33℃と比較する。
【0023】
比較の結果、所定温度T℃以下である場合は、ステップS105で、キャップクローズ時間(キャッピングしている時間)の時間測定の結果に応じて、予備吐出1、予備吐出2または予備吐出3のいずれかを選択し実行する。
【0024】
本例では、キャップクローズ時間に応じた、1ノズル当たりの予備吐出における吐出回数は次のとおりとなる。
予備吐出1:1000発/キャップクローズ時間が6時間未満
予備吐出2:5000発/キャップクローズ時間が6時間以上24時間未満
予備吐出3:10000発/キャップクローズ時間が24時間以上
ステップS103で、所定のしきい値T℃とヘッド温度の比較の結果、ヘッド温度が所定温度T℃より高いと判断した場合は、ステップS104へ進み、キャップクローズ時間が、t1、本例では8分<キャップクローズ時間<t2、本例では360分、という条件を満たすか否かを判断する。この条件を満たさない場合は、ステップS105へ進み、上述と同様、キャップクローズ時間に応じて、予備吐出1、予備吐出2または予備吐出3のいずれかを選択し実行する。
【0025】
そして、ステップS106で、記録ヘッドを待機位置に位置させて待機状態とし、ステップS107にて本処理を終了する。または、その後、記録動作を開始する。
【0026】
ステップS104の判断の結果、その条件、つまりキャップクローズ時間が8分から6時間未満を満たす場合は、ステップS108へ進み、予備吐出4を実行する。予備吐出4は、予備吐出1と比較して1ノズルあたりの吐出数が多い設定である。本例では、
予備吐出4:4000発/キャップクローズ時間が8分以上6時間未満
である。
【0027】
以上の予備吐出制御によって、キャップクローズ前の記録ヘッド温度が所定温度以上であった場合、比較的短時間でインク吐出に不具合をきたす問題に対応することができる。
【0028】
図5は、一例として、キャップクローズ時間と、予備吐出における1ノズルあたりの吐出回数と、の関係を示す図であり、キャップクローズ時間が6時間未満、つまり、上述した「予備吐出1」が選択され得る範囲での状態を示している。図5に示すように、例えば、キャップクローズ前の記録ヘッドの温度Tが35℃以上(35℃、45℃)の場合は、比較的短時間(約15分、約18分)で、回復に必要な吐出数が予備吐出1の吐出数である1000発となる。この点から、本実施形態は、キャップクローズ時の記録ヘッドの温度Tが35℃以上で(S103)、キャップクローズ時間が6時間未満のときは(S104)、予備吐出4を実行し、吐出数を4000とする(S108)。すなわち、予備吐出4は、キャップクローズ時の記録ヘッドの温度Tが35℃より低いと判断され(S103)、キャップクローズ時間が同じ6時間未満の予備吐出1における吐出数より多い吐出数として行われるものである。これにより、キャップクローズ時の記録ヘッドの温度が所定以上の高い温度の場合には、そのときの記録ヘッドにおけるインクの増粘の程度をより正確に反映した予備吐出を行い、比較的短時間のキャップクローズで吐出不良が生じることを防止することができる。
【0029】
また、仮に、予備吐出1において(1000より多い)比較的多い吐出数を設定した場合には、記録動作毎に吐出数の多い予備吐出を実施することになる。すなわち、6時間未満のキャップクローズ時間で、インクジェット記録装置を比較的頻繁に使用する使用者の使用状況では、記録動作毎に吐出数の多い予備吐出を実施することになり、不要なインクが消費される。これに対し、本実施形態では、適切な吐出数(1000)を設定することにより、インク吐出の不具合を防止しつつ予備吐出によるインク消費量を抑制ことが可能となる。
【0030】
なお、上例では、予備吐出の内容を定めるのに、記録ヘッドの温度しきい値Tを用いた比較による方法を説明したが、ヘッド温度ごと予備吐出の吐出数を定めたテーブルを用いてもよい。
【0031】
また、予備吐出の内容を異ならせる例として、吐出数を異ならせることを説明したが、例えば、予備吐出4におけるインク吐出時に電気熱変換素子に印可するパルスの電圧を、予備吐出1、2、3の場合より高くするようにしてもよい。これにより、予備吐出4での吐出エネルギーを増加させることによりノズル回復性を通常時の予備吐出1、2、3よりも高めることができる。例えば、
予備吐出1、2,3:駆動電圧24V
予備吐出4 :駆動電圧26.2V
とすることができる。
【0032】
また、予備吐出4における吐出時の電気熱変換素子に印可するパルスの印加時間(パルス幅)を、予備吐出1、2、3の場合よりも大きくすることもできる。例えば、
予備吐出1、2,3:電圧印加時間0.9μs
予備吐出4 :電圧印加時間0.98μs
とすることができる。
【0033】
さらには、予備吐出4における吐出周波数を、予備吐出1、2、3の場合より高くすることもできる。例えば、
予備吐出1、2,3:インク吐出周波数15kHz
予備吐出4 :インク吐出周波数20kHz
とすることができる。
【0034】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態にかかるキャップオープン時における予備吐出処理を示すフローチャートである。本実施形態は、キャップクローズ時における記録ヘッドの温度に加え、その時の環境温度も考慮して予備吐出の態様を定める形態に関するものである。
【0035】
図6において、ステップS1101〜S1103までの処理は第1実施形態に係る図4に示したステップS101〜S103の処理と同様であり、また、ステップS1103で否定判断の場合のステップS1106以降の処理も図4に示したステップS105以降の処理と同様である。
【0036】
ステップS1106におけるキャップクローズ時間に応じて選択される予備吐出1、予備吐出2、予備吐出3の内容は、第1実施形態と同じで以下のとおりである。
【0037】
予備吐出1:1000発/キャップクローズ時間6時間未満
予備吐出2:5000発/キャップクローズ時間6時間以上24時間未満
予備吐出3:10000発/キャップクローズ時間24時間以上
ステップS1103で、キャップクローズ時の記録へどの温度としきい値T℃、33℃との比較の結果、記録ヘッドの温度が所定温度T℃より高いと判断した場合は、ステップS1104で、キャップクローズ時の環境温度が所定のしきい値Te℃、例えば30℃より高いか否かを判断する。しきい値Te℃以下であると判断した場合は、ステップS1106へ進む。一方、しきい値Te℃より高いと判断した場合は、ステップS1105へ進み、キャップクローズ時間が、t1、本例では8分<キャップクローズ時間<t2、本例では360分、という条件を満たすか否かを判断する。この条件を満たさない場合は、ステップS1106へ進む。
【0038】
一方、ステップS1105の判定条件を満たす場合は、ステップS1109へ進み、予備吐出4を実行する。ここで、予備吐出4は、第1実施形態と同様、予備吐出1に対して多い吐出数の設定となっている。すなわち、
予備吐出4:4000発/キャップクローズ時間8分以上6時間未満
である。
【0039】
以上のとおり、本実施形態によれば、キャップクローズ前の記録ヘッドの温度が所定以上の高さで、さらにその時の環境温度も所定温度以上の場合には、そのときの記録ヘッドにおけるインクの増粘の程度をより正確に反映した予備吐出(予備吐出4)を行うことができる。その結果、比較的短時間のキャップクローズで吐出不良が生じることを防止することができる。
【0040】
なお、本実施形態においても、ヘッド温度と環境温度の組合せごとに予備吐出の吐出数を定めたテーブルを用いてもよい。
【0041】
また、第1実施形態に関して説明したのと同様に、予備吐出4について、電気熱変換素子に印可するパルスの電圧値またはパルス幅を大きくし、また、吐出周波数を高くしてもよい。
【0042】
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態にかかるキャップオープン時における予備吐出処理を示すフローチャートである。本実施形態は、キャップクローズ時における記録ヘッドの温度と環境温度に加え、その時の環境湿度も考慮して予備吐出の態様を定める形態に関するものである。
【0043】
図7において、ステップS1401〜S1404までの処理は第2実施形態に係る図6に示したステップS1101〜S1104の処理と同様であり、また、ステップS1403で否定判断の場合のステップS1407以降の処理も図6に示したステップS1106以降の処理と同様である。
【0044】
ステップS1407におけるキャップクローズ時間に応じて選択される予備吐出1、予備吐出2、予備吐出3の内容も、第1、第2実施形態と同じで以下のとおりである。
【0045】
予備吐出1:1000発/キャップクローズ時間6時間未満
予備吐出2:5000発/キャップクローズ時間6時間以上24時間未満
予備吐出3:10000発/キャップクローズ時間24時間以上
ステップS1403で、キャップクローズ時の記録へどの温度としきい値T℃、33℃との比較の結果、記録ヘッドの温度が所定温度T℃より高いと判断した場合は、ステップS1404で、キャップクローズ時の環境温度が規定のしきい値Teより高いか否かを判断する。しきい値Te以下である場合は、ステップS1407へ進み、第1、第2実施形態と同様の処理を実行する。
【0046】
ステップS1404で、キャップクローズ時の環境温度がしきい値Teより高いと判断した場合は、ステップS1405へ進み、キャップクローズ時の環境湿度が所定のしきい値He、例えば15%RHより低いか否かを判断する。このしきい値He以上である場合は、ステップS1407へ進み、第1、第2実施形態と同様の処理を実行する。
【0047】
キャップクローズ時の環境湿度が所定のしきい値Heより低いと判断した場合は、ステップS1406へ進み、キャップクローズ時間が、t1、本例では8分<キャップクローズ時間<t2、本例では360分、という条件を満たすか否かを判断する。この条件を満たさない場合は、ステップS1407へ進む。
【0048】
一方、ステップS1406の判定条件を満たす場合は、ステップS1410へ進み、予備吐出4を実行する。ここで、予備吐出4は、第1、第2実施形態と同様、予備吐出1に対して多い吐出数の設定となっている。すなわち、
予備吐出4:4000発/キャップクローズ時間8分以上6時間未満
である。
【0049】
以上のとおり、本実施形態によれば、キャップクローズ前の記録ヘッドの温度が所定以上の高さで、さらにその時の環境温度が所定温度より高く、かつ環境湿度が所定湿度より低い場合には、そのときの記録ヘッドにおけるインクの増粘の程度を、さらに正確に反映した予備吐出(予備吐出4)を行うことができる。その結果、比較的短時間のキャップクローズで吐出不良が生じることを防止することができる。
【0050】
なお、本実施形態においても、ヘッド温度、環境温度および環境湿度の組合せごとに予備吐出の吐出数を定めたテーブルを用いてもよい。
【0051】
また、第1実施形態に関して説明したのと同様に、予備吐出4について、電気熱変換素子に印可するパルスの電圧値またはパルス幅を大きくし、また、吐出周波数を高くしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
M5000 回復部
H1001 インクジェット記録ヘッド
H1002 インク吐出部
100 CPU
101 ROM
102 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するためのノズルが設けられた吐出口面を有する記録ヘッドと、前記吐出口面をキャッピングするためのキャップと、該キャップを前記吐出口面から離間した後に前記記録ヘッドに予備吐出を行わせる予備吐出手段と、を備えるインクジェット記録装置において、
前記吐出口面に前記キャップがキャッピングされている時間と、前記吐出口面に前記キャップがキャッピングされる前の前記記録ヘッドの温度とに基づいて、前記予備吐出手段を制御する制御手段を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記キャッピングされている時間が同じ場合は、前記記録ヘッドの温度が高いときに前記予備吐出手段に強い予備吐出を行わせることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記キャッピングされている時間と、前記記録ヘッドの温度と、前記吐出口面に前記キャップがキャッピングされる前の環境温度とに基づいて、前記予備吐出手段を制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記キャッピングされている時間と、前記記録ヘッドの温度と、前記環境温度と、前記吐出口面に前記キャップがキャッピングされる前の環境湿度に基づいて、前記予備吐出手段を制御することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
インクを吐出するためのノズルが設けられた吐出口面を有する記録ヘッドと、前記吐出口面をキャッピングするためのキャップと、該キャップを前記吐出口面から離間した後に前記記録ヘッドに予備吐出を行わせる予備吐出手段と、を備えるインクジェット記録装置における予備吐出方法であって、
前記吐出口面に前記キャップがキャッピングされる前に前記記録ヘッドの温度を測定する温度測定工程と、
前記吐出口面に前記キャップがキャッピングされている時間を測定する時間測定工程と、
前記温度測定工程において測定された前記記録ヘッドの温度と、前記時間測定工程において測定された前記キャッピングされている時間とに基づいて、前記予備吐出手段を制御する制御工程と、
を備えることを特徴とする予備吐出方法。
【請求項6】
前記制御工程は、前記キャッピングされている時間が同じ場合は、前記記録ヘッドの温度が高いときに前記予備吐出手段に強い予備吐出を行わせることを特徴とする請求項5に記載の予備吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−86441(P2013−86441A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231279(P2011−231279)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】