説明

インクジェット記録装置および記録方法、並びに記録システム

【課題】後続する記録領域におけるノズルの吐出状態を考慮して、インクの不要な消費を防ぐインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】記録ヘッドのノズルからインクを吐出して、所定の記録領域単位で記録媒体上に記録を行うインクジェット記録装置は、第1の記録領域に記録するための記録データを取得し、記録ヘッドの全てのノズルのうち記録データの記録において用いられるノズルを特定する。その特定されたノズルについて予備吐を行うための予備吐データを生成し、第1の記録領域に先行して記録が行われる第2の記録領域に対して、生成された予備吐データに基づき予備吐を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備吐を行うインクジェット記録装置および記録方法、並びに記録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置においては、インクの増粘等に起因して発生する吐出不良や印刷品位の低下を防止するために予備吐動作が広く行われている。一般的に行われるものとして一つは、一定期間の印刷後に印刷動作を一旦中断し、予備吐等の回復処理を行う場合がある。また、一つは、印刷動作と並行して記録媒体上に予備吐を行う紙面予備吐が行われる場合がある。紙面予備吐は、印刷動作を中断する必要がないので、印刷パフォーマンスを向上させることができるという長所がある。また、近年のノズルの微細化により、紙面予備吐によって形成されるドット径が小さくなり、孤立したドットが目立たなくなっていることから、紙面予備吐はますます有用となってきている。
【0003】
特許文献1には、各ノズルについて所定期間に1回でも吐出がされたか否かを検知し、1回でも吐出がなされたノズルについては所定期間に続く次の所定期間に紙面予備吐の対象から除外することで、不要な予備吐出を減少する画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−076247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の紙面予備吐は、次ページの印刷で吐出するノズルと吐出しないノズルを区別することなく予備吐している。従って、次ページの印刷で吐出しないノズルについても紙面予備吐を行うので、インクが余計に浪費されてしまう。
【0006】
本発明の目的は、このような従来の問題点を解決することにある。上記の点に鑑み、本発明は、紙面予備吐において、後続する記録領域におけるノズルの吐出状態を考慮して、インクの不要な消費を防ぐインクジェット記録装置および記録方法、並びに記録システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るインクジェット記録装置は、記録ヘッドのノズルからインクを吐出して、所定の記録領域単位で記録媒体上に記録を行うインクジェット記録装置であって、
第1の記録領域に記録するための記録データを取得する取得手段と、
前記記録ヘッドの全てのノズルのうち前記記録データの記録において用いられるノズルを特定するノズル特定手段と、
前記ノズル特定手段により特定されたノズルについて予備吐を行うための予備吐データを生成する生成手段と、
前記第1の記録領域に先行して記録が行われる第2の記録領域に対して、前記生成手段により生成された前記予備吐データに基づき予備吐を行う予備吐手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、後続する記録領域におけるノズルの吐出状態を考慮して、インクの不要な消費を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施例における記録システムの構成を示す図である。
【図2】待機時と印刷時の記録ヘッドの状態を示す図である。
【図3】ライン記録ヘッドによる印刷を行う様子を説明するための図である。
【図4】紙面予備吐を説明するための図である。
【図5】全てのノズルについて行う紙面予備吐パターンを説明するための図である。
【図6】インクジェット記録装置の内部構成を示すブロック図である。
【図7】本実施例における印刷処理の手順を示す図である。
【図8】画像使用ノズル検出処理と画像使用ノズル予備吐パターン生成処理の手順を示す図である。
【図9】画像使用ノズルについてのデータを説明するための図である。
【図10】第2の実施例における画像使用ノズル検出処理と画像使用ノズル予備吐パターン生成処理の手順を示す図である。
【図11】画像使用ノズル吐出量データを説明するための図である。
【図12】ドットカウントデータを説明するための図である。
【図13】ドットカウントデータの一例を示す図である。
【図14】第3の実施例における画像使用ノズル検出処理の手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例を詳しく説明する。尚、以下の実施例は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施例で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0011】
[第1の実施例]
図1は、本実施例における記録システムの構成を示す図である。図1に示すように、本システムはインクジェット記録装置101とホストコンピュータ102とを含み、それらはプリンタケーブル103で相互に通信可能に接続されている。インクジェット記録装置101の給送部104には、ロール上の連続紙(不図示)が設置されている。
【0012】
図2は、インクジェット記録装置101の待機モード時と印刷モード時のそれぞれの記録ヘッドの状態を示す図である。インクジェット記録装置101には、4インチのライン記録ヘッド203〜206が、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順にヘッドホルダ202に固定されている。図2(a)は、インクジェット記録装置101が印刷を行わない待機時における、回復ユニット207とライン記録ヘッド203〜206との位置関係を示している。図2(a)に示すように、回復ユニット207がライン記録ヘッド203〜206の吐出面を覆うことで、記録ヘッドのノズル(不図示)が大気に暴露してノズル内のインクが粘性が増すことを防いでいる。図2(b)は、インクジェット記録装置101が印刷を行う印刷時における、回復ユニット207とライン記録ヘッド203〜206の位置関係を示している。図2(b)に示す印刷時においては、ライン記録ヘッド203〜206は、用紙等の記録媒体208にインクを吐出して画像を形成することができる。
【0013】
給送部104に設置された記録媒体208は、インクジェット記録装置101の搬送部(不図示)により、記録ヘッドモジュール201の下方、図2(a)及び(b)中の矢印の方向に向かって搬送される。印刷時にはまず、回復ユニット207を搬送方向に移動してずらし、ヘッドホルダ202を回復ユニット207の隙間を通過させて記録媒体208近傍まで下降させる。印刷終了後は、図2(a)の退避状態に戻ってライン記録ヘッド203〜206が回復ユニット207に密着し、保管状態もしくは記録ヘッド回復動作可能状態となる。
【0014】
インクジェット記録装置101は、ライン記録ヘッドの各ノズルからインクを確実に吐出し続けられるよう定期的に回復動作を行う。前述したように、印刷時はライン記録ヘッドが大気中に暴露するので、ノズル内のインクの乾燥やノズル表面のゴミの付着により吐出不良を起こすことがある。従って、そのような吐出不良を防ぐために、定期的にインクの予備吐(予備吐回復ともいう)を行う。ここで、予備吐回復には、図2(a)の退避時の状態、即ち、ライン記録ヘッド203〜206が回復ユニット207に密着した状態での待機時に、回復ユニット207にインクを予備吐出する予備吐回復と、図2(b)の印刷時の状態で、印刷中に記録媒体上に予備吐出する紙面予備吐回復とがある。
【0015】
図3は、ライン記録ヘッドにより記録媒体に対して印刷を行う様子を説明するための図である。インクジェット記録装置101は、記録ヘッドモジュール201の4インチ幅のライン記録ヘッド203〜206を記録媒体の搬送方向と交差する方向(幅方向)に配置することで、最大4インチ幅の画像を印刷することができる。画像302は、横幅が4インチサイズの記録媒体301に印刷された文字を示す。
【0016】
図4は、紙面予備吐を説明するための図である。ライン記録ヘッド401は、2400dot分の記録のためのノズル403を備えており、ノズル403からインクが吐出されて記録媒体402に画像が記録される。記録画像405および406に示す黒丸は、ライン記録ヘッド401のノズルからインクが吐出されて記録媒体402に形成されたドットを示している。一方、白丸は、インクが吐出されずにドットが形成されなかった空白部分を示している。白丸で示される空白部分と黒丸で示される記録部分とにより画像が形成される。
【0017】
ドット407〜410は、紙面予備吐回復により記録媒体208に形成されたドット(紙面予備吐パターンともいう)を示す。紙面予備吐パターンは、記録画像405および406には関係なく、横1ラインにつき1ドットずつ規則的に吐出されることにより形成される。また、規則的に吐出することで予備吐パターンが目立ってしまう場合には、1ページ毎に各ラインに対して不規則に予備吐させても良い。なお、記録される画像(記録画像405および406)によっては、紙面予備吐パターンが記録画像に重なることがある。その場合には、記録画像405および406に重ならないように、紙面予備吐パターンを形成させるようにしても良い。
【0018】
図5は、記録ヘッドの全てのノズルについて紙面予備吐を行うためのパターンを説明する図である。図5(a)に示す紙面予備吐パターン501は、図4における説明と同様に、1ラインにつき1ドットの予備吐パターンを形成している。つまり、1ラインに1ドットを予備吐するので、ライン記録ヘッド203〜206それぞれのノズルについて2400ドットを予備吐するには、2400ラインが必要となる。また、図5(b)に示す紙面予備吐パターン502は、1ラインにつき2ドットの予備吐パターンを形成する。つまり、1ラインにつき2ドットを予備吐するので、ライン記録ヘッド203〜206それぞれのノズルについて2400ドットを予備吐するには、1200ラインが必要となる。このように、1ラインにつき複数ドットを予備吐するほど、全ノズルが紙面予備吐を実行するのに必要なライン数は少なくなる。しかしながら、1ラインにつき複数ドットの予備吐パターンが存在することになるので目立ちやすくなってしまう。従って、1ラインにおける予備吐のためのドット数は、記録後において目立たない数とするのが良い。
【0019】
図6は、インクジェット記録装置101の内部構成を示すブロック図である。制御部601は、CPU602を含み、ROM603に格納されている制御プログラムを実行して各ブロックを制御する。また、制御部601は、各種データ処理のワークエリアや受信バッファとして使用されるRAM604や、記録データを展開するイメージメモリ605を含んでいる。インクジェット記録装置101は、制御部601の他、各記録ヘッド609〜612や、記録ヘッドを印刷に最適な状態に保つためのクリーニング動作や印刷動作を制御するために用いられる各種モータ607も含んでいる。モータ607は、モータドライバ606により駆動される。記録ヘッド609〜612は、本実施例においてはライン記録ヘッドであり、記録ヘッド駆動回路613により駆動される。CPU602は、搬送部614に設置されたセンサ615により記録媒体を検出して印刷開始のタイミングを決定する。ASIC等の制御回路608は、ホストコンピュータ102からホストインターフェース609を介して受信した圧縮記録データを解凍してイメージメモリ605に格納する。RAM604は、画像使用ノズル領域617を含んでおり、後述する画像使用ノズル検出処理で検出された画像使用ノズルデータを一時的に格納する。
【0020】
図7は、本実施例において実行される印刷処理の手順を示すフローチャートである。図7に示す処理は、例えばインクジェット記録装置101のCPU602によって実行される。本印刷処理は、ホストインターフェース602を介してホストコンピュータ102から1ジョブ分の記録データを受信すると開始される(S701)。CPU602は、1ジョブ分の記録データの受信後、まずRAM604上に確保された画像使用ノズルデータ保存領域617を「全ノズル吐出」として初期化する(S702)。例えば、画像使用ノズルデータ保存領域617を全て「1」とすることにより初期化するようにしても良い。続けて、CPU602は、受信した記録データを解析する(S703)。CPU602は、ラスタ単位で受信した記録データを解析し、後述する画像使用ノズル検出処理を開始する(S704)。次に、CPU602は、対象ページ(1ページ目とする)の記録データを全てイメージメモリ605に展開すると(S705)、印刷動作を開始し、搬送部614を動作させて記録媒体を記録ヘッドまで搬送する(S706)。
【0021】
CPU602は、本印刷処理が1ジョブで1ページの印刷を行うかもしくは複数ページのうち最終ページの印刷を行う場合であるか、そうでないかを判定する(S707)。ここで、1ジョブで1ページの印刷であるかもしくは複数ページのうち最終ページの印刷を行う場合であると判定された場合には、S713に進む。その場合は、次ページに相当する記録データがないので、本実施例における「次ページの記録データを考慮した予備吐処理」を行う必要はない。一方、S707において、本印刷処理が1ジョブで1ページの印刷もしくは複数ページのうち最終ページの印刷を行う場合でないと判定された場合には、S708に進む。
【0022】
CPU602は、S708において、対象ページに後続する後続ページ(対象ページが1ページ目の場合には2ページ目)について画像使用ノズル検出処理が終了しているか否かを判定する(S708)。ここで、終了していると判定された場合には、CPU602は、対象ページの記録データと、後続ページの画像使用ノズル検出処理において生成された紙面予備吐パターンとを合成して、画像使用ノズル予備吐パターン合成処理を行う(S709)。つまり、本実施例においては、対象ページの記録データと、後続ページの記録データに用いられるノズルを対象とした予備吐パターンとの合成処理が行われる。その結果、後続ページにおいて記録に用いられないノズルについては予備吐が行われないので、インクを不要に消費することを防ぐことができる。一方、S708において後続ページの画像使用ノズル検出処理がデータの遅延等の原因で終了していない場合には、CPU602は、S702で画像使用ノズルデータ領域617が初期化されているので、全ノズルが紙面予備吐パターンの対象とされる(S711)。
【0023】
CPU602は、記録媒体の先端が記録ヘッドの下部の記録位置に到達したか否かを判定する(S710)。ここで、到達していないと判定された場合には、到達されたと判定されるまでS710の判定処理が繰り返される。一方、到達したと判定された場合には、CPU602は、記録ヘッドによる印刷を開始する(S712)。その際、記録開始タイミングは、搬送部614上に設置されたセンサ615が記録媒体の先端を検出してから記録媒体が記録ヘッド位置に到達するまでの距離に基づいてCPU602が記録開始タイミングを決定するようにしても良い。
【0024】
CPU713は、1ジョブに含まれるページ全てを印刷処理したか否かを判定する(S713)。ここで、全てのページを印刷処理していないと判定された場合には、S707に戻る。一方、全てのページを印刷処理したと判定された場合には、S714において本処理を終了する。
【0025】
図8(a)は、S704における画像使用ノズル検出処理の手順を示すフローチャートであり、図8(b)は、S709における画像使用ノズル予備吐パターン合成処理の手順を示すフローチャートである。CPU602は、まず、解析されたnページ目(前述の対象ページに後続する後続ページ)のラスタデータを検出したか否かを判定する(S801)。ここで、検出しなかったと判定された場合は、検出したと判定されるまでS801の処理を繰り返す。
【0026】
一方、検出したと判定された場合に、CPU602は、記録ヘッドのノズル数分のビットから構成される画像使用ノズルデータ領域617を「0」(吐出しない)にクリアする(S802)。CPU602は、「0」にクリアされた画像使用ノズルデータ領域617と先頭ラスタデータとの論理和を求める(S803)。CPU602は、例えば「y」をラスタを示す変数としてインクリメントしながら、S803の処理を本後続ページの最後尾のラスタデータまで行う(S804およびS805)。CPU602は、最後尾のラスタデータまでS803の処理が終了すると、本後続ページ(nページ)の画像使用ノズルデータとしてRAM604に格納する(S806)。
【0027】
次に、図8(b)に示す画像使用ノズル予備吐パターン合成処理について説明する。CPU602は、前述の後続ページの画像使用ノズルデータをRAM604から読み出す(S810)。次に、CPU602は、読み出した画像使用ノズルデータに従って、予備吐が必要なノズル位置を示す紙面予備吐パターンを生成する(S811)。ここで、紙面予備吐パターンの生成においては、読み出した画像使用ノズルデータと紙面予備吐パターンとについて対応するラスタ単位で論理積を求める。つまり、本実施例においては、図5(a)または図5(b)に示す全ノズルを対象とした紙面予備吐パターンからさらに、後続ページの記録データの記録に用いられるノズルを予備吐の対象として限定する。
【0028】
CPU602は、対象ページにおける記録データが展開されたか否かを判定する(S812)。ここで、展開されなかったと判定された場合には、CPU602は、展開されたと判定されるまでS812の処理を繰り返す。一方、展開されたと判定された場合には、CPU602は、S811において生成された紙面予備吐パターンと対象ページの記録データとの合成を行う(S813)。ここで、CPU602は、S811において生成された紙面予備吐パターンと対象ページの記録データとについて対応するラスタ同士で論理和を求めることにより合成を行う。
CPU602は、合成処理が対象ページについて最後尾のラスタデータまで終了したか否かを判定する(S814)。ここで、最後尾のラスタデータまで終了していないと判定された場合には、CPU602は、S814の処理を繰り返す。一方、最後尾のラスタデータまで終了したと判定された場合には、CPU602は、図7に示すS710の処理に進む。
【0029】
図9は、画像使用ノズルデータ領域617を説明するための図である。上述したように、画像使用ノズルデータは記録ヘッドのノズル数分のビットから構成される。本実施例で用いる記録ヘッドは2400個のノズルから構成されるので、1ページにつき2400ビット、つまり300バイトのデータで構成されている。その300バイトのデータから成る画像使用ノズルデータ領域617とホストコンピュータ102から順次転送されるラスタデータとの論理和を1ジョブの各ページについて求めることにより、先述の後続ページについての画像使用ノズルデータを生成する。後続ページについての画像使用ノズルデータはS811で対象ページについての紙面予備吐パターンが生成されるまで保持する必要がある。従って、続いてページデータが転送されても上書きされないように、画像使用ノズルデータ領域は、予め複数用意しておく。
【0030】
[第2の実施例]
第1の実施例では、後続ページの印刷に使用するノズル(画像使用ノズル)について対象ページに紙面予備吐を行う例を説明した。本実施例においては、後続ページの印刷で各ノズルが吐出する吐出量を考慮して、紙面予備吐を行うノズルをさらに限定する。
【0031】
図10(a)は、本実施例における画像使用ノズル検出処理の手順を示すフローチャートであり、図10(b)は、本実施例における画像使用ノズル予備吐パターン合成処理の手順を示すフローチャートである。CPU602は、まず、解析されたnページ目(後続ページ)のラスタデータを検出したか否かを判定する(S1001)。ここで、検出しなかったと判定された場合は、検出したと判定されるまでS1001の処理を繰り返す。一方、検出したと判定された場合に、CPU602は、記録ヘッドのノズル数分のビットから構成される画像使用ノズルデータ領域617を「0」(吐出しない)にクリアする(S1002)。CPU602は、「0」にクリアされた画像使用ノズルデータ領域617と先頭ラスタデータとの論理和を求める(S1003)。
【0032】
本実施例では、さらに記録ヘッドのノズル数分の配列から構成される画像使用ノズル吐出量データ配列を用いて、各ラスタのラスタデータを画像使用ノズル吐出量データの配列領域に加算していく(S1004)。CPU602は、例えば「y」をラスタを示す変数としてインクリメントしながら、S1003およびS1004の処理を本後続ページの最後尾のラスタデータまで行う(S1005およびS1006)。CPU602は、最後尾のラスタデータまでS1003およびS1004の処理が終了すると、本後続ページ(nページ)の画像使用ノズルデータおよび画像使用ノズル吐出量データとしてRAM604に格納する(S1007)。画像使用ノズル吐出量データについては後述する。
【0033】
次に、図10(b)に示す画像使用ノズル予備吐パターン合成処理について説明する。CPU602は、後続ページの画像使用ノズルデータをRAM604から読み出す(S1011)。本実施例では、CPU602は、さらにRAM604に格納された画像使用ノズル吐出量データを読み出す(S1012)。次に、CPU602は、予め定められたノズル単位の紙面予備吐量が、S1012において読み出した各ノズルの画像使用ノズル吐出量データより小さいか否かを判定する(S1013)。つまり、S1013においては、記録データによる印刷において予備吐量に相当する吐出が行われるか否かが判定される。
【0034】
ここで、予め定められたノズル単位の紙面予備吐量が、読み出した画像使用ノズル吐出量データより小さいと判定された場合には、記録データによる印刷において予備吐量に相当する吐出が十分に行われるということであるので、CPU602は、該当のノズルの紙面予備吐が無効となるような紙面予備吐パターンを生成する(S1014)。S1014においては、図8のS811における処理後に、該当のノズルの紙面予備吐を無効とするようにする。一方、予め定められたノズル単位の紙面予備吐量が、読み出した画像使用ノズル吐出量データより小さくないと判定された場合には、CPU602は、S1015に進む。S1015、S1016、S1017の処理については、図8のS812、S813、S814の各処理の説明と同じである。
【0035】
図11は、本実施例における画像使用ノズル吐出量データ領域について説明するための図である。画像使用ノズル吐出量データは、上述したように記録ヘッドのノズル数分の吐出量カウンタから構成されている。本実施例においては、記録ヘッドは2400個のノズルを有している。従って、1ページにつき2400カウンタ、1カウンタのサイズをワードサイズ(2バイト)とすると4800バイトのデータで構成されている。この4800バイトのデータを、ホストコンピュータ102から順次転送されるラスタデータを用いて加算していくことで、本実施例において説明している後続ページにおける画像使用ノズル吐出量データを生成することができる。
【0036】
例えば、図11に示される画像Aのデータを取得する場合には、4、5ドット目のカウンタが多く、2、7ドット目のカウンタが少なく検出される。この印刷で、1ノズルにおける1ページに吐出される予め定められた予備吐量が100ドットとすると、3〜6ドット目のノズルは通常の記録のみで必要分の予備吐を行うことになる。従って、本実施例では、その該当のノズルでは予備吐を実行しないようにして、不要な予備吐によるインクの浪費をさらに防ぐことができる。
【0037】
[第3の実施例]
第1および第2の実施例では、画像使用ノズルの検出は、ホストコンピュータ102から受信するラスタデータから解析している。本実施例においては、インクジェット記録装置101は、各ノズルの吐出数を示すドットカウントデータをホストコンピュータ102から記録データとともに受信する。図12は、本実施例において用いられるドットカウントデータを説明するための図である。本実施例では、記録ヘッドのノズル数が2400本、ノズル管理領域が50個の場合のドットカウントデータを説明する。しかしながら、記録ヘッドのノズル数やノズル管理領域の個数は、他の数であっても良い。
【0038】
図12(b)に示すように、ドットカウントデータは、ノズル管理領域と管理ノズルとを含んでいる。記録ヘッドのノズル数が2400本でノズルの管理領域が50個であるために、1つのノズル管理領域が管理するノズル数は48本になる。図12(a)は、記録データ1201と記録ヘッド1202とのノズル位置を示す図である。区切り1203は、ノズルの管理領域の概念を分かりやすくするためのものであり、図においては、記録データ1201および記録ヘッド1202を48ノズル単位で、実線で区切っている。図12(b)は、区切り1203の一部を拡大して、ノズル管理領域の管理ノズルの詳細を示す図である。図12(c)は、各ノズル管理領域が管理するノズルを示す図である。本実施例における1つのノズル管理領域は、連続に配置された48ノズルを管理する。図12(c)に示すように、ノズル管理領域1204からノズル管理領域1207までの50個のノズル管理領域それぞれは、48個のノズルを管理している。
【0039】
図13は、本実施例におけるドットカウントデータの一例を示す図である。また、本実施例においては、ホストコンピュータ102において、記録データのドットカウント値が各ノズル管理領域ごとに計測される。図13(a)に示す記録データ1301は各記録ヘッドを用いて記録が行われる。また、その画像は、図13(b)〜(e)のように、インク色毎の画像1302C〜1302Mに分けることができる。画像1302Cはシアン(C)インクによる記録画像を示し、画像1302Kはブラック(K)インクによる記録画像を示し、画像1302Yはイエロー(Y)インクによる記録画像を示し、画像1302Mはマゼンタ(M)インクによる記録画像を示している。図13(f)は、各色成分の記録画像を所定のノズル管理領域毎に分割し、それぞれのノズル管理領域毎にドット数を示す図である。各ノズル管理領域においてインク滴の吐出数が最大となるノズルの吐出数が図13(f)における各ノズル管理領域のドットカウントデータとして用いられる。図13(c)に示す画像1302Kには罫線が存在するので、図13(f)のドットカウントデータ1303に示すように、他のノズル管理領域に比べて集中してドットカウント値が高くなる傾向がある。
【0040】
本実施例は、画像使用ノズル検出処理において第1の実施例と異なる。図14は、本実施例における画像使用ノズル検出処理の手順の一例を示す図である。CPU602は、記録データとドットカウントデータをホストコンピュータ102から受信すると、その記録データを解析し、その後、画像使用ノズル検出処理を開始する。CPU602は、解析されたnページ目(後続ページ)に対応するドットカウントデータを検出したか否かを判定する(S1401)。ここで、検出していないと判定された場合には、検出されたと判定されるまで、CPU602は、S1401の処理を繰り返す。一方、検出したと判定された場合には、CPU602は、記録ヘッドのノズル数分のビットから構成される画像使用ノズルデータ領域を「0」(吐出しない)にクリアする(S1402)。CPU602は、ホストコンピュータ102から受信したドットカウントデータを参照して、本後続ページにおける各ノズル管理領域に対応するドットカウントデータが「0」(非吐出)であるか否かを、各ノズル管理領域1〜50について判定する(S1403)。ここで、ドットカウントデータが「0」であるとは、そのノズル管理領域におけるいずれのノズルもインクを吐出していないということである。S1403においてドットカウントデータが「0」であると判定された場合にCPU602は、後続ページの該当ノズル管理領域において記録データによるインクの吐出は行われないということであるので、該当ノズル管理領域の対象ページにおける紙面予備吐を無効とする(S1404)。本実施例においては、例えば、ノズル管理領域1のドットカウントデータが0である場合には、ノズル1〜48が後続ページにおいてインクが吐出されないので、ノズル1〜48の対象ページにおける紙面予備吐を「0」(非吐出)に設定する。S1403においてドットカウントデータが「0」でないと判定された場合には、S1405に進む。
【0041】
CPU602は、例えば、変数「X」をノズル管理領域の識別番号として、XをインクリメントしながらS1403及びS1404の処理を全てのノズル管理領域について行う(S1405、S1406)。S1403及びS1404の処理が全てのノズル管理領域1〜50まで実行された場合に、CPU602は、本後続ページの画像使用ノズルデータをRAM604に格納し(S1407)、本処理を終了する。
【0042】
本実施例においては、インクジェット記録装置101がラスタデータから画像使用ノズルデータを検出する必要がなく、またノズル管理領域という領域単位ごとに後続ページにおいてインクが吐出されない部分を特定するので、処理速度を向上させることができる。
【0043】
以上までの実施例において、ロール状の連続紙を扱うインクジェット記録装置を説明したが、名刺や葉書等のカット紙を搬送、記録可能な記録装置が用いられても良い。また、記録ヘッドとしてライン記録ヘッドを説明したが、ノズルが記録媒体搬送方向に設置された記録ヘッドをその搬送方向と交差する方向に走査するタイプの記録ヘッドが用いられても良い。その場合には、例えば、後続パス(後続ページに対応)の記録領域においてインクが吐出されないノズルについては、対象パス(対象ページに対応)における紙面予備吐を無効にするような予備吐パターンを生成する。予備吐パターンと記録データとの合成については、以上の実施例における説明と同じである。
【符号の説明】
【0044】
101 インクジェット記録装置
102 ホストコンピュータ
103 プリンタケーブル
104 給送部
201 記録ヘッドモジュール
202 ヘッドホルダ
203、204、205、206 ライン記録ヘッド
207 回復ユニット
208、301 記録媒体
601 制御部
602 CPU
603 ROM
604 RAM
605 イメージメモリ
606 モータドライバ
607 モータ
608 制御回路
609、610、611、612 記録ヘッド
613 記録ヘッド駆動回路
614 搬送部
615 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドのノズルからインクを吐出して所定の記録領域単位で記録媒体上に記録を行うインクジェット記録装置であって、
第1の記録領域に記録するための記録データを取得する取得手段と、
前記記録ヘッドの全てのノズルのうち、前記第1の記録領域に記録するための記録データに基づく記録において用いられるノズルを特定するノズル特定手段と、
前記ノズル特定手段により特定されたノズルについて予備吐を行うための予備吐データを生成する生成手段と、
前記第1の記録領域に先行して記録が行われる第2の記録領域に対して、前記生成手段により生成された前記予備吐データに基づき予備吐を行う予備吐手段と
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドの各ノズルについて、前記第1の記録領域に記録するための記録データに基づきインクが吐出される回数を計測する計測手段をさらに備え、
前記ノズル特定手段は、前記第1の記録領域に記録するための記録データに基づく記録において用いられるノズルのうち、前記計測手段により計測された回数が基準値より低いノズルをさらに特定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記録ヘッドはフルライン記録ヘッドであり、
前記記録領域はページであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
記録データを生成する情報処理装置と、記録ヘッドのノズルからインクを吐出して所定の記録領域単位で記録媒体上に記録を行うインクジェット記録装置とを含む記録システムであって、
前記情報処理装置は、
前記記録ヘッドの各ノズルについて、第1の記録領域に記録するための記録データに基づきインクが吐出される回数を計測する計測手段と、
前記記録ヘッドの全てのノズルを相隣接する複数のノズルがまとめられた複数のグループに分割し、前記複数のグループのうち、前記計測手段により計測された回数がゼロであるノズルのみを含むグループを特定するグループ特定手段と、
前記グループ特定手段により特定されたグループを示すデータを、前記第1の記録領域に記録するための記録データとともに前記インクジェット記録装置に送信する送信手段とを備え、
前記インクジェット記録装置は、
前記情報処理装置から、前記グループ特定手段により特定されたグループを示すデータと前記第1の記録領域に記録するための記録データとを受信する受信手段と、
前記記録ヘッドの全てのノズルから、前記複数のグループのうち前記グループ特定手段により特定されたグループ以外のグループに含まれるノズルを特定するノズル特定手段と、
前記ノズル特定手段により特定されたノズルについて予備吐を行うための予備吐データを生成する生成手段と、
前記第1の記録領域に先行して記録が行われる第2の記録領域に対して、前記生成手段により生成された前記予備吐データに基づき予備吐を行う予備吐手段とを備えることを特徴とする記録システム。
【請求項5】
記録ヘッドのノズルからインクを吐出して、所定の記録領域単位で記録媒体上に記録を行うインクジェット記録装置において実行される記録方法であって、
前記インクジェット記録装置の取得手段が、第1の記録領域に記録するための記録データを取得する取得工程と、
前記インクジェット記録装置のノズル特定手段が、前記記録ヘッドの全てのノズルのうち、前記第1の記録領域に記録するための記録データに基づく記録において用いられるノズルを特定するノズル特定工程と、
前記インクジェット記録装置の生成手段が、前記ノズル特定工程において特定されたノズルについて予備吐を行うための予備吐データを生成する生成工程と、
前記インクジェット記録装置の予備吐手段が、前記第1の記録領域に先行して記録が行われる第2の記録領域に対して、前記生成手段により生成された前記予備吐データに基づき予備吐を行う予備吐工程と
を有することを特徴とする記録方法。
【請求項6】
記録データを生成する情報処理装置と、記録ヘッドのノズルからインクを吐出して所定の記録領域単位で記録媒体上に記録を行うインクジェット記録装置とを含む記録システムにおいて実行される記録方法であって、
前記情報処理装置が、
前記記録ヘッドの各ノズルについて、第1の記録領域に記録するための記録データに基づきインクが吐出される回数を計測する計測工程と、
前記記録ヘッドの全てのノズルを相隣接する複数のノズルがまとめられた複数のグループに分割し、前記複数のグループのうち、前記計測工程において計測された回数がゼロであるノズルのみを含むグループを特定するグループ特定工程と、
前記グループ特定工程において特定されたグループを示すデータを、前記第1の記録領域に記録するための記録データとともに前記インクジェット記録装置に送信する送信工程と、
前記インクジェット記録装置が、
前記情報処理装置から、前記グループ特定工程において特定されたグループを示すデータと前記第1の記録領域に記録するための記録データとを受信する受信工程と、
前記記録ヘッドの全てのノズルから、前記複数のグループのうち前記グループ特定工程において特定されたグループ以外のグループに含まれるノズルを特定するノズル特定工程と、
前記ノズル特定工程において特定されたノズルについて予備吐を行うための予備吐データを生成する生成工程と、
前記第1の記録領域に先行して記録が行われる第2の記録領域に対して、前記生成工程において生成された前記予備吐データに基づき予備吐を行う予備吐工程と
を有することを特徴とする記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−240342(P2012−240342A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114098(P2011−114098)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】