説明

インクジェット記録装置及びその制御方法

【課題】インクジェット記録装置において、特定印字作業の終了時にインクジェット記録装置に記憶してある印字データを切り替える際、印字された個数をシリアル通信やインクジェット記録装置より出力される信号をカウントし規定個数に達したところで、シリアル通信、信号、手動のいずれかの手段でインクジェット記録装置に切替実行を実施していた。
【解決手段】インクジェット記録装置において、生産計画データおよび印字データ名をCSVファイルとして記憶するメモリ装置と、CSVファイルを読み込むためのUSBやフラッシュメモリ及びその入出力ポートと、読み込んだCSVファイルを解析し該当する印字データをインクジェット記録装置のメモリから読み出し印字を実施する印字制御プログラムと、CSVファイルで規定されている印字個数に到達した場合に、CSVファイルに従って該当する印字データへ切り替えるプログラムを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電制御方式のインクジェット記録装置において、生産計画に従って被印字物の種類毎に決められたインクジェット記録装置の印字内容、印字文字の高さ、印字文字のマトリクスなどの印字データ群に各々印字データ名称を付け、複数種類の印字データ群をあらかじめインクジェット記録装置に記憶させ、生産計画データに従って規定個数の印字を実行するインクジェット記録装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット記録装置においては、異なる被印字物の印字作業毎にインクジェット記録装置に記憶してある印字内容、印字文字の高さ、印字文字のマトリクスなどの印字データを切り替えるには、シリアル通信や信号入力などの外部入力装置を介して行い、またはインクジェット記録装置の操作パネルを用いて手動で行っており、印字された個数をカウントし規定個数に達したところで、次の印字作業の印字データに切り替えて印字を実行していた。
【0003】
また、特許文献1には、CSVファイルの利用に関して帳票データをデータベースから取り出し、グループ識別子に従って、そのうちの一部を1行分のCSVファイル列に変換し、表示あるいは印刷する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−183654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のインクジェット記録装置においては、印字作業の終了毎に一つの印字データから他の印字データに切り替える際には工数を要し、作業性が問題とされていた。
【0006】
本発明の目的は、インクジェット記録装置において、CSV形式で入力された1日、1週間、1ヶ月単位などの生産計画データに従って、印字内容や印字条件、印字マトリクス等の印字データを、設定された印字作業の完了にしたがって自動的に更新するインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数種類の被印字物を複数個印字するインクジェット記録装置であって、印字制御プログラムを実行する制御装置と、各印字作業毎の印字条件を規定した印字データと、外部から供給された生産計画データを記憶するメモリ装置と、前記被印字物を検知する被印字物センサと、前記インクジェット記録装置に対し印字実行を指示する入力装置を有するインクジェット記録装置において、前記生産計画データは、各印字作業に対応した印字データ群を示す印字データ名称と、前記被印字物への規定印字個数を含むCSV形式ファイルで構成されたことを特徴とする。
【0008】
また、インクジェット記録装置において、前記制御装置は前記被印字物センサ出力をカウントするカウント手段と、前記CSV形式の生産計画データにおける前記規定印字個数と前記カウント手段の出力を比較する印字個数比較手段と、前記カウント手段の出力が前記規定印字個数に達したときに印字データを切り替える印字データ切替手段を有し、前記インクジェット記録装置の前記規定印字個数の印字が完了した際に、前記印字データから新しい印字作業に対応した印字データ名称および関連する印字データを自動的に呼出して更新し印字作業をおこなうことを特徴とする。
【0009】
また、インクジェット記録装置において、前記CSV形式ファイルの生産計画データは、さらに前記インクジェット記録装置が印字を実行するか否かを定義する実行可否データを有し、前記制御装置は前記実行可否データにより同一印字データ名称の印字データでの印字が実施されたか、または未実施かを自動的に判別することを特徴とする。
【0010】
さらに、複数種類の被印字物を複数個印字するインクジェット記録装置であって、印字制御プログラムを実行する制御装置と、各印字作業毎の印字条件を規定した印字データと、外部から供給された生産計画データを記憶するメモリ装置と、前記被印字物を検知する被印字物センサと、前記インクジェット記録装置に対し印字実行を指示する入力装置を有するインクジェット記録装置の制御方法において、前記生産計画データを、CSV形式ファイルで外部からインクジェット記録装置に供給することを特徴とする。
【0011】
さらに、インクジェット記録装置の制御方法において、前記CSV形式ファイルの生産計画データにおける規定印字個数と前記カウント出力を比較し、前記カウント手段の出力が規定印字個数に達したときに印字データを切り替え、前記印字データから新しい印字作業に対応した印字データ名称および関連する印字データを呼出して自動的に更新し印字作業をおこなうことを特徴とする。
【0012】
さらに、インクジェット記録装置の制御方法において、前記CSV形式ファイルの生産計画データは、さらに前記インクジェット記録装置が印字を実行するか否かを定義する実行可否データを有し、該実行可否データにより同一印字データ名称の印字データでの印字が実施されたか、または未実施かを自動的に判別して印字作業を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、CSVファイルで作成された生産計画データをインクジェット記録装置に読み込み、与えられたユーザの生産計画に従ってインクジェット記録装置が印字データの切換えを自動的に更新するため、印字数のカウントや印字データを切換えるための外部入力装置などが不要となり、特別なハードウェアやプログラムを用意しなくても効率のよい印字作業を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の構成例を示したブロック図
【図2】本発明のCSVファイル例を示す説明図
【図3】本発明の印字データ読込みの概念を示す説明図
【図4】本発明の印字データ切替えの概念を示す説明図
【図5】本発明の制御装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を図面につき説明する。
【0016】
本発明の実施形態において、帯電制御方式のインクジェット記録装置において、各印字作業毎に用いる印字内容、印字文字の高さ、印字文字のマトリクスを含むデータ群に印字データ名称を付けてあらかじめインクジェット記録装置に記憶させ、一方で印字データ名称と、何回印字すべきか等の生産計画データをCVS形式ファイルに記述し、インクジェット記録装置に入力することにより、与えられた生産計画データに従って、自動的に被印字物の規定個数印字を実行する。
【0017】
本発明の実施形態では、各印字作業毎に用いられるインクジェット記録装置で印字する内容、印字のための条件、文字のマトリクスの設定等を含む、印字データ名称を持つ印字データ群を記憶するインクジェット記録装置内のメモリ装置と、CSV形式データ(以下CSVファイルという)の生産計画データをメモリ装置に読み込むためのUSBやフラッシュメモリ等の外部記憶装置の入出力ポートと、読み込んだCSVファイルを解析し、該当する印字データをインクジェット記録装置のメモリ装置から読み出して印字を実施し、CSVファイルで規定されている生産計画データの印字個数に到達した場合に、生産計画データに従って該当する印字データへ切り替えるプログラムを用いる制御装置を備える。
【0018】
以下、図1のブロック図を用いて、本発明におけるインクジェット記録装置1の実施の形態を説明する。
〔インクジェット記録装置の基本構成〕
図1において、インクジェット記録装置1は装置全体の制御を行う制御装置としてMPU(Micro Processing Unit)2を有する。MPU2はバスを介してプログラム格納装置3、メモリ4、表示装置5、タッチパネル6、入力装置8、RTC9、USBメモリポート10、被印字物検知装置11、偏向電圧発生装置12、印字用帯電電圧発生装置13、励振電圧発生装置14、供給ポンプ22、回収ポンプ23と接続している。
【0019】
プログラム格納装置3はROM等から構成され、MPU2において実行される印字制御プログラムと、インクジェット記録装置1を動作させるために必要な基本データ及び表示用データをあらかじめ記憶している。
【0020】
メモリ4はプログラム実行領域とデータ記憶領域に分割されて利用される。プログラム実行領域はMPU2により呼び出されたプログラム格納装置3に記憶されたプログラムを実行する領域であり、データ記憶領域はユーザが作成したデータを記憶する領域である。
【0021】
表示装置5はプログラム格納装置3に記憶された表示用データを、表示データ形式に変換して表示する。ユーザは表示装置5に表示された画面により、インクジェット記録装置1の状態などを認識する。
【0022】
タッチパネル6は表示装置5に重ねて設置されており、タッチした位置に対応した電圧値を出力する。MPU2はこの電圧値を読み取ることにより、タッチされた位置座標を検出する。ユーザがタッチパネル6を介して表示装置5に表示されたアイコンやボタンにタッチすることにより、MPU2はタッチした位置座標よりユーザの入力を判定し、対応したプログラムをプログラム格納装置3より呼び出して実行する。
【0023】
入力装置8はユーザがインクジェット記録装置1を操作する際に使用する操作部分であり、インクジェット記録装置1の電源のオン/オフを切り替える電源ボタン7を有する。図1では入力装置として電源ボタンのみを示しているが、これはボタンの数を限定するものではない。また必要に応じて数字や文字を入力するためのキーボードやテンキーを搭載することも可能である。
【0024】
インクタンク20は被印字物30への印字に用いるインク21を貯蔵する。インクタンク20内のインク21は、MPU2からの命令により作動する供給ポンプ22で加圧されることにより、インク供給用配管24を通りノズル25に供給される。
【0025】
ノズル25はインクタンク20より供給されるインク21を噴出する。またノズル25には電気的信号を機械的信号に変換する圧電素子16が取り付けられており、励振電圧発生装置14で発生された励振電圧信号を圧電素子16に印加することにより、ノズル25から噴出されるインク21を粒子化してインク粒子27にする。
【0026】
噴出されたインク粒子27は帯電電極17の間を通過する。帯電電極17には、印字用帯電電圧発生装置13で発生された印字する文字データに対応した帯電電圧が印加され、インク粒子27は帯電電極17の間を通過する際に帯電電圧により帯電される。更に帯電電極17の間を通過したインク粒子27は、偏向電極18の間を通過する。偏向電極18には、偏向電圧発生装置12で発生された偏向電圧が印加される。インク粒子27は偏向電圧により形成された偏向電界を通過する際に帯電量に応じて偏向され、被印字物30に印字される。
【0027】
インク回収口19は印字に使用しないインク粒子27を回収する。インク回収口19より回収されたインク粒子27は、MPU2からの命令により作動する回収ポンプ23で吸引され、インク回収用配管26を通りインクタンク20に戻される。
【0028】
被印字物搬送装置29は、インクジェット記録装置1が印字する被印字物30を所定の速度で搬送する。その搬送方向は前記インク粒子27の偏向方向と直交する方向となる。被印字物センサ28は前記被印字物搬送装置29で搬送される被印字物30を検知すると、被印字物検知装置11に被印字物検知信号を送信する。
【0029】
被印字物検知装置11は被印字物センサ28から送信された被印字物検知信号をMPU2に送信する。MPU2は被印字物検知信号を受信すると、被印字物30がインクジェット記録装置1の印字領域に到着したことを認識する。MPU2は被印字物30が印字領域に到達したことを検知すると、被印字物30への印字を行うための処理を開始すし、メモリ4に記憶されている印字文字列を印字用帯電電圧発生装置13にバスを介して送信する。同時にMPU2は帯電電極17に帯電電圧を印加するタイミング信号を送信する。
〔印字データの更新〕
次に、本発明の構成について説明する。本発明は、製造設備等における生産計画に従って、例えばベルトコンベア上を搬送される多数のかつ複数種類の被印字物に対し、印字すべき印字データ名称と、被印字物を何回又は何個印字するかに関する生産計画データを外部からインクジェット記録装置1に与え、MPU2上で作動する印字制御プログラムにより、自動的に印字を行わせる。
【0030】
ここで、印字データには文章、文字、数字、記号等の印字内容と、印字文字の高さ、マトリクス構成、書体等のデータを含み、これらはあらかじめインクジェット記録装置に記憶されている。或いは、これらの印字データと生産計画データをその都度外部記憶装置から読み込んでもよい。
【0031】
CSVファイルから成る生産計画データは、例えば図2に示す様に、各印字作業毎に番号、印字データ名称、印字個数、実行可否(印字実行可否)が与えられている。実行可否データは、インクジェット記録装置を使用し多品種の製品を生産し印字する場合において、当日すでに生産が終了している品種に対して追加で生産をする際に使用されるデータである。実際の生産計画データには上記よりもさらに多くの設定項目が含まれる。
【0032】
次に、図3に示す様に、USBメモリ15をインクジェット記録装置1のUSBメモリーポート10に装着する。MPU2はUSBメモリ15がUSBメモリポート10に装着されるとUSBメモリ15の装着を検知する。またMPU2はUSBメモリ15内に記憶されているCSVファイルから生産計画データを読み込み、メモリ4に記憶する。入力装置8より特定の印字データ名称による生産開始指示をユーザが入力すると、MPU2はメモリ4に記憶されたCSVファイルを解析し、同一名称の印字データをメモリ4より呼出す。印字データにはさらに印字に必要な印字内容や印字の仕様および印字マトリクスなどが記憶されている。
【0033】
次にMPU2は、被印字物センサ28で検知した各被印字物30に印字を行う度に印字完了回数を累積して更新し、該当するCSVファイルの印字個数と比較する。
【0034】
次いで、図4に示す様に、CSVファイルに規定されている印字個数の印字が完了すると一つの印字作業を完了し、MPU2は次の印字作業に関する生産計画データのCSVファイルをメモリ4から呼出して印字データ更新を行う。
【0035】
図5は、MPU2内で実行される印字制御プログラム上に設けられた各制御手段を示すブロック図である。図5において、メモリ4のCSVファイルは印字個数比較手段42と印字実行出力手段44に各々入力される。また、被印字物センサ28の出力はカウント手段41に入力される。次に、CSVファイル内の印字個数データと、カウント手段41の印字完了カウント数が印字個数比較手段42で比較され、累積カウント数がCSVファイルの規定印字個数に達すると印字データ切替手段43によりあらかじめプログラムされた手順に従って次の印字データ(印字作成条件)に切り替えられ、印字実行出力手段44により印字命令がインクジェット記録装置本体に出力され、被印字物への次の態様での印字が実行される。
【符号の説明】
【0036】
1・・・インクジェット記録装置
2・・・MPU
3・・・プログラム格納装置
4・・・メモリ
5・・・表示装置
6・・・タッチパネル
7・・・電源ボタン
8・・・入力装置
9・・・RTC
10・・・USBメモリポート
11・・・被印字物検知装置
15・・・USBメモリ
16・・・圧電素子
28・・・被印字物センサ
29・・・被印字物搬送装置
30・・・被印字物
41・・・カウント手段
42・・・印字個数比較手段
43・・・印字データ切替手段
44・・・印字実行出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の被印字物を複数個印字するインクジェット記録装置であって、印字制御プログラムを実行する制御装置と、各印字作業毎の印字条件を規定した印字データと、外部から供給された生産計画データを記憶するメモリ装置と、前記被印字物を検知する被印字物センサと、前記インクジェット記録装置に対し印字実行を指示する入力装置を有するインクジェット記録装置において、
前記生産計画データは、各印字作業に対応した印字データ群を示す印字データ名称と、前記被印字物への規定印字個数を含むCSV形式ファイルで構成されたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、前記制御装置は前記被印字物センサ出力をカウントするカウント手段と、前記CSV形式の生産計画データにおける前記規定印字個数と前記カウント手段の出力を比較する印字個数比較手段と、前記カウント手段の出力が前記規定印字個数に達したときに印字データを切り替える印字データ切替手段を有し、前記インクジェット記録装置の前記規定印字個数の印字が完了した際に、前記印字データから新しい印字作業に対応した印字データ名称および関連する印字データを自動的に呼出して更新し印字作業をおこなうことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、前記CSV形式ファイルの生産計画データは、さらに前記インクジェット記録装置が印字を実行するか否かを定義する実行可否データを有し、前記制御装置は前記実行可否データにより同一印字データ名称の印字データでの印字が実施されたか、または未実施かを自動的に判別することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
複数種類の被印字物を複数個印字するインクジェット記録装置であって、印字制御プログラムを実行する制御装置と、各印字作業毎の印字条件を規定した印字データと、外部から供給された生産計画データを記憶するメモリ装置と、前記被印字物を検知する被印字物センサと、前記インクジェット記録装置に対し印字実行を指示する入力装置を有するインクジェット記録装置の制御方法において、
前記生産計画データを、CSV形式ファイルで外部からインクジェット記録装置に供給することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載のインクジェット記録装置の制御方法において、前記CSV形式ファイルの生産計画データにおける規定印字個数と前記カウント出力を比較し、前記カウント手段の出力が規定印字個数に達したときに印字データを切り替え、前記印字データから新しい印字作業に対応した印字データ名称および関連する印字データを呼出して自動的に更新し印字作業をおこなうことを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載のインクジェット記録装置の制御方法において、前記CSV形式ファイルの生産計画データは、さらに前記インクジェット記録装置が印字を実行するか否かを定義する実行可否データを有し、該実行可否データにより同一印字データ名称の印字データでの印字が実施されたか、または未実施かを自動的に判別して印字作業を行うことを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−126063(P2012−126063A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281111(P2010−281111)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】