説明

インクジェット記録装置及びキャリッジ清掃方法

【課題】 装置本体を幅方向に大型化することなく、また記録ヘッドのフェイス面に損傷を与えることなく、キャリッジの保護部材に付着したインク汚れを拭き取ることができるキャリッジ清掃方法を提供する。
【解決手段】 キャリッジを主走査方向において搬送手段による用紙搬送領域の外側に移動させるステップと、予め折り目が付けられた清掃用紙を記録位置に搬送するステップと、高さ変動機構によってキャリッジを第1の高さ位置に移動させるステップと、キャリッジを用紙搬送領域の内側に移動させるステップと、高さ変動機構によってキャリッジを第2の高さ位置に移動させるステップと、搬送手段によって清掃用紙を搬送するステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドから被記録材にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置、及びインクジェット記録装置におけるキャリッジの清掃方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置において、鮮明で高品位な記録結果を得るために、被記録材と記録ヘッドとの間隔を小さくすることが重要となる。一方で、被記録材と記録ヘッドとの間隔を小さくすることによって、紙詰まり発生時に被記録材が記録ヘッドに当接する等によって記録ヘッドを損傷するおそれがある。したがって、記録ヘッドを搭載するキャリッジの、主走査方向における記録ヘッドの両側近傍に、記録ヘッドの端部を保護するヘッド保護部材が設けられたインクジェット記録装置がある。
【0003】
しかし、近年、インクジェット記録装置においては、被記録材へ吐出するインク滴の小液滴化、吐出口の高密度化に伴い、インク吐出時に発生したインクミストが被記録材へ到達せずに記録装置内を浮遊して記録装置内部を汚すという問題がある。また、インクミストによってヘッド保護部材が汚れ、ヘッド保護部材の汚れが被記録材を汚してしまう、という問題がある。
【0004】
特許文献1には、記録ヘッドのフェイス面を清掃するためのワイパ手段によって、キャリッジのヘッド保護部材の清掃も行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−192698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、以下に示す問題点があった。一般的に記録ヘッドのフェイス面を清掃するワイパ部材は、主走査方向(装置本体の幅方向)における被記録材の搬送領域の外側に配置されている。キャリッジを被記録材の搬送領域の内側から、ワイパ部材に対向する位置に移動させる場合には、記録ヘッドのフェイス面及びヘッド保護部材と、ワイパ部材との位置関係が以下のようになる。
【0007】
キャリッジが主走査方向に移動することで、まず、ワイパ部材に近い側のヘッド保護部材がワイパ部材と対向する位置に到達する。更にキャリッジが移動することで、記録ヘッドのフェイス面がワイパ部材と対向する位置に到達する。更にキャリッジを移動することによって、ワイパ部材から遠い側のヘッド保護部材が、ワイパ部材と対向する位置に到達する。このようにワイパ部材から遠い側のヘッド保護部材を清掃するためには、キャリッジを、記録ヘッドのフェイス面の清掃位置よりも更に装置本体の幅方向外側に移動させる必要がある。その結果、記録装置本体が幅方向に対して大きくなってしまうという問題があった。
【0008】
また、特許文献1に記載の構成では、ワイパ部材が、記録ヘッドのフェイス面及びヘッド保護部の清掃を行うので、ヘッド保護部の清掃性能も含めた耐久性を確保する必要が生じる、という問題があった。
【0009】
このような事情に鑑みて、本発明の目的は、装置本体を幅方向に大型化することなく、また記録ヘッドのフェイス面に損傷を与えることなく、キャリッジの保護部材に付着したインク汚れを拭き取ることができるキャリッジ清掃方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、インクを吐出して用紙に記録を行う記録ヘッドと、用紙を搬送する搬送手段と、前記記録ヘッドを搭載して用紙の搬送方向と交差する主走査方向に移動するキャリッジと、該キャリッジを高さ方向に移動させる高さ変動機構と、を備えるインクジェット記録装置において、前記搬送手段、前記キャリッジ、及び前記高さ変動機構を制御する制御部を備え、該制御部は、前記キャリッジを前記主走査方向において前記搬送手段による用紙搬送領域の外側に移動させた後に予め折り目が付けられた清掃用紙を記録位置に搬送し、その後、前記高さ変動機構により前記キャリッジを第1の高さ位置に移動させた後に前記キャリッジを前記用紙搬送領域の内側に移動させ、その後、前記高さ変動機構により前記キャリッジを前記第1の高さ位置よりも低い第2の高さ位置に移動させ、その後前記搬送手段により前記清掃用紙を搬送させるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置本体を幅方向に大型化することなく、また記録ヘッドのフェイス面に損傷を与えることなく、キャリッジの保護部材に付着したインク汚れを拭き取ることができるキャリッジ清掃方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態のインクジェット記録装置を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態のインクジェット記録装置を示す概略断面図である。
【図3】第1の実施形態のクリーニング部を示す概略斜視図である。
【図4】第1の実施形態のキャリッジ高さ変動機構を説明するための概略斜視図である。
【図5】第1の実施形態の制御部を説明するブロック図である。
【図6】第1の実施形態のキャリッジユニットをインク吐出面側から見た斜視図である。
【図7】第1の実施形態のキャリッジユニットを装置正面側から見た模式断面図である。
【図8】第1の実施形態において、湾曲された被記録材によってヘッド保護部を清掃する状態を示す断面図である。
【図9】第1の実施形態のヘッド保護部の清掃方法を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態のインクジェット記録装置を示す概略断面図である。
【図11】第2の実施形態の制御部を説明するブロック図である。
【図12】第2の実施形態のヘッド保護部の清掃方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、本実施形態に記載されている構成部品の形状及びそれらの相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
(給紙部)
図1は、第1の実施形態のインクジェット記録装置の斜視図である。図2は、インクジェット記録装置を示す概略断面図である。インクジェット記録装置1は、被記録材としての記録用紙14を給送する給送部2、記録用紙14を搬送する搬送部3、記録用紙14の搬送方向と直交する主走査方向に往復移動可能なキャリッジ部4、クリーニング部5、キャリッジ高さ変動機構6を有している。まず、給送部2について概略構成を説明する。図2に示すように、給送部2は、給送フレーム10、給送ローラ11、圧板12、分離ローラ13を有している。給送ローラ11は給送フレーム10に対して回動自在に軸支されている。圧板12は、給送フレーム10に軸支され、先端部が給送ローラ11に対して接触/離間する方向に回動可能に構成されている。分離ローラ13は、給送ローラ11の下方であって、圧板12の下流側に配置されている。分離ローラ13は、給送ローラ11に対して接触/離間する方向に揺動可能に構成されている。給送ローラ11は、圧板12に載置された記録用紙14の上層部を給送し、さらに給送ローラ11及び分離ローラ13の協働作用によって記録用紙14を1枚ずつ分離して搬送部3へ給送する。
【0015】
(搬送部)
次に、搬送部3について、図1及び図2を参照して概略構成を説明する。搬送部3は記録用紙14を搬送する搬送ローラ15と、搬送ローラ15に当接して従動回転するピンチローラ16とを有している。搬送ローラ15とピンチローラ16とは搬送ローラ対17を構成している。搬送ローラ対17の下流にはプラテン18が配置されている。搬送ローラ対17によって搬送された記録用紙14は、プラテン18の上面を搬送される。プラテン18の下流には、排紙ローラ19と、排紙ローラ19に当接して従動回転する拍車20が配置されている。排紙ローラ19と拍車20とは排紙ローラ対21を構成している。搬送ローラ対17によって搬送された記録用紙14は、その先端が排紙ローラ対21に到達すると、搬送ローラ対17及び排紙ローラ対21によって搬送される。ここで、搬送ローラ15と排紙ローラ19の搬送速度がほぼ同一になるように構成されており、記録用紙14の高精度に搬送することが可能な構成となっている。
【0016】
(キャリッジ部)
次に、キャリッジ部4について、図1及び図2を参照して概略構成を説明する。キャリッジ部4は、記録ヘッド22が着脱自在に取り付けられるキャリッジ23を有している。キャリッジ23は、キャリッジシャフト24に支持されている。キャリッジアッパシャフト25は、キャリッジ23の上部を保持しプラテン18に対するキャリッジ23の姿勢を規制する。キャリッジ23は、キャリッジシャフト24及びキャリッジアッパシャフト25に支持されている。キャリッジ23は、シャーシ部材26に取り付けられた不図示のキャリッジモータによってタイミングベルト27を介して駆動され、キャリッジシャフト24に沿って記録用紙14の搬送方向と交差する方向(主走査方向)に往復移動する。キャリッジ23には、キャリッジ基板28が取り付けられている。キャリッジ基板28には、キャリッジセンサ29が搭載されている。一方、シャーシ部材26には、リニアスケール30が取り付けられている。リニアスケール30には、複数のラインが印刷されている。リニアスケール30は、タイミングベルト27と略平行に配置されている。キャリッジ23が主走査方向に移動するときにキャリッジセンサ29がリニアスケール30の表面を検出可能なように、キャリッジ23、タイミングベルト27、及びリニアスケール30の位置が調整されている。そして、キャリッジセンサ29がリニアスケール30に印刷された複数のラインを検出することによって、キャリッジ23の主走査方向の位置を検出する。
【0017】
(クリーニング部)
次に、クリーニング部5について、図1及び図3を参照して概略構成を説明する。図3は、第1の実施形態のクリーニング部を示す概略斜視図である。クリーニング部5は、図1に示すように、装置本体の主走査方向(装置本体幅方向)で記録用紙14の搬送領域の外側、記録用紙14の排紙側(装置正面側)から見て装置本体の右側端部に配置されている。クリーニング部5は、キャリッジ23が主走査方向に移動してクリーニング部5に対向するクリーニング位置に到達したときに、記録ヘッド22のクリーニング動作を行う。クリーニング部5は、記録ヘッド22のノズルの乾燥を防ぐためのキャップ31と、記録ヘッド22のインクを吐出するフェイス面を清掃するためのワイパ部材32とを有している。ワイパ部材32は、記録用紙14の搬送方向(副走査方向)に往復運動するように構成されている。ワイパ部材32は、記録ヘッド22のフェイス面に接触した状態で副走査方向に移動することで、フェイス面に付着したインク汚れを拭き取る。なお、本実施形態においては、クリーニング位置が、キャリッジ23の可動領域の右側のほぼ可動限界位置である。そのため、キャリッジ23は、クリーニング位置から更に右側に向かって移動できないように構成されている。
【0018】
(キャリッジ高さ変動機構)
次に、キャリッジ高さ変動機構について、図1及び図4を参照して説明する。図4は、第1の実施形態のキャリッジ高さ変動機構を示す概略斜視図である。本実施形態のインクジェット記録装置は、様々な種類の記録用紙14に記録を行うために、記録ヘッド22とプラテン18との間隔を変更するようキャリッジ23の高さを変動できる構成である。
【0019】
図1に示すように、キャリッジ高さ変動機構6は、装置正面側から見て装置本体の右側端部に配置されている。また、図4に示すように、キャリッジ高さ変動機構6は、シャーシ部材26とサイドシャーシ部材33に取り付けられている。また、キャリッジ高さ変動機構6は、キャリッジシャフトカム34及びキャリッジシャフトカムセンサ35を有している。キャリッジシャフトカム34は、キャリッジシャフト24の端部に取り付けられており、ギア部34aを有している。ギア部34aは、図示しないキャリッジ高さ駆動モータに連結されたキャリッジ高さ変動ギア列36と噛みあっている。また、キャリッジシャフトカム34は、カム部34bを有している。カム部34bは、キャリッジ高さ調整板37と当接している。一方、サイドシャーシ部材33には、キャリッジシャフト24が貫通されている孔部33aが設けられている。孔部33aは、記録用紙14の搬送方向に対してキャリッジシャフト24が嵌合されている。また、孔部33aは、図4中の上下方向に対してキャリッジシャフト24が移動可能なように、上下方向に長径を有する長穴形状に形成されている。このため、キャリッジシャフトカム34が回転して、カム部34bとキャリッジ高さ調整板37との当接面が移動することで、キャリッジシャフトカム34に挿入されたキャリッジシャフト24が上下方向に移動する。また、キャリッジシャフトカム34は、センサ検出部34cを有している。キャリッジシャフトカム34が回転したときに、所定の回転位置でキャリッジシャフトカムセンサ35によってセンサ検出部34cが検出される。キャリッジシャフトカムセンサ35によってセンサ検出部34cを検出することで、記録装置はキャリッジシャフトカム34のカム部34bの回転基準位置を検出する。回転基準位置からのキャリッジ高さ駆動モータの駆動量を制御することで、カム部34bを所定の回転位置に回動させ、キャリッジシャフト24を所定の高さに移動させる。
【0020】
(制御部の構成)
次に、制御部の構成について、図5を参照して説明する。図5は、第1の実施形態の制御部を説明するブロック図である。
【0021】
制御部は、主制御基板41、操作部基板42、キャリッジ基板28、電源ユニット43から構成されている。操作部基板42は、図示しない装置本体の外装部に配置されており、操作ボタンや表示部に連結されたスイッチやLED(発光ダイオード)が実装されている。また、キャリッジ基板28は、前述のようにキャリッジ23に取り付けられており、主制御基板41からの命令に基づいて、記録ヘッド22のインク滴の吐出の制御を行う。また、キャリッジ基板28には、前述のようにキャリッジセンサ29が実装されている。
【0022】
主制御基板41は、ASIC44、ROM45、RAM46、キャリッジ高さ変動モータドライバ47、搬送モータドライバ48、キャリッジモータドライバ49、ホストインタフェース(ホストI/F)50を有している。ASIC44は、ROM45に格納されたプログラムに従って各種制御を行う。RAM46は、各種データの一時保存を行う。モータドライバ47、48、49は、キャリッジ高さ変動モータ、搬送モータ、キャリッジモータの駆動をそれぞれ制御する。モータドライバ47、48、49は、各モータの駆動に伴って、キャリッジ高さ変動機構6、搬送ローラ15及び排紙ローラ19、キャリッジ23を駆動させるように構成されている。また、モータドライバ47、48、49は、ホストI/F50に接続された図示しないホストコンピュータからの記録命令等の受信データに基づいて記録動作の制御を行うように構成されている。ASIC44には、キャリッジセンサ29や、キャリッジシャフトカムセンサ35の信号が送られる。これら各センサからの信号に基づいて、ASIC44は、モータドライバ47、48、49によって各モータの駆動を制御し、記録動作や各種メンテナンス動作及び表示部への表示等の動作を制御するように構成されている。
【0023】
(キャリッジのインク吐出面)
図6は、第1の実施形態のキャリッジユニットを記録ヘッド22のインク吐出面側から見た斜視図である。図6に示すように、記録ヘッド22は、インクを吐出するノズルが構成されたヒータボードからなるノズル面51と、キャリッジ基板28からの電気信号をヒータボードのヒータに伝えるFPC(フレキシブル回路基板)52と、を有している。ノズル面51及びFPC52によってフェイス面53が構成される。FPC52は、記録ヘッド22に接着によって固定されているため、その端部が剥がれ易くなっている。そのため、紙詰まり発生時に記録用紙14がFPC52の端部に引っ掛かった場合、FPC52が剥がれて記録ヘッド22の故障を引き起こすおそれがある。FPC52が剥がれることを防止するために、フェイス面53の主走査方向における両側近傍に、一対のヘッド保護部54が設けられている。
【0024】
図7は、第1の実施形態のキャリッジユニットを装置正面側から見た模式断面図である。図7に示すように、ヘッド保護部54は、ノズル面51よりも高さが低く、かつFPC52とはほぼ同一の高さになるように設けられている。このため、記録用紙14がノズル面51に接触してインク吐出性能に影響を及ぼすことを防ぐように構成されている。
【0025】
このように、ヘッド保護部54を記録ヘッド22のフェイス面53の近傍に設けることで、FPC端部が剥がれて記録ヘッド22の故障が発生することを防いでいる。しかし、ヘッド保護部54は、フェイス面53の近傍に配置されているので、インクミストが付着してしまう。
【0026】
(ヘッド保護部の清掃方法)
次に、図8を用いて、第1の実施形態におけるヘッド保護部の清掃方法を説明する。
【0027】
図8は、第1の実施形態において、湾曲された被記録材によってヘッド保護部を清掃する状態を示す断面図である。本実施形態では、ヘッド保護部の清掃を行う場合、予めに折り目55aを付けた清掃用紙55が用いられる。清掃用紙55は、搬送方向に直交する幅方向に沿った谷状の折り目55aを有している。清掃用紙55は、折り目55aがプラテン18の上部に位置するところまで搬送されると、折り目55aの搬送方向の前後にプラテン面から若干浮いた湾曲部55b、55cが形成される。
【0028】
湾曲部55b、55cは、弾性的に上方に膨らんだ部分であり、上方から軽く押されることで上方への膨らみが小さくなる程度に形成されている。この湾曲部55b、55cがヘッド保護部54に軽く接触した状態で清掃用紙55が搬送される。これによって、ヘッド保護部54に付着したインク汚れが湾曲部55b、55cに転写されて、ヘッド保護部54が清掃される。
【0029】
なお、湾曲部55b、55cの弾性力は小さいので、インク汚れは転写されるが、ヘッド保護部54やフェイス面53を損傷させることはない。また、前述のように、ノズル面51はヘッド保護部54よりも高い位置に配置されている。したがって、清掃用紙55によってヘッド保護部54の清掃が行われるときに、清掃用紙55がノズル面51に接触することはない。
【0030】
このように第1の実施形態におけるヘッド保護部清掃方法は、予め折り目が付けられた清掃用紙55を搬送することにより、折り目の前後に形成される湾曲部55b、55cをヘッド保護部54に接触させることで、ヘッド保護部54を清掃する。
【0031】
(ヘッド保護部の清掃方法のフローチャート)
次に、図9を用いて、第1の実施形態におけるヘッド保護部の清掃動作を説明する。図9は、第1の実施形態のヘッド保護部の清掃方法を示すフローチャートである。
【0032】
まずステップS01においてキャリッジ23を主走査方向における用紙搬送領域の外側に位置する、クリーニング位置に退避させる。このとき、キャリッジ23は、記録ヘッド22により記録用紙に記録を行うときの記録高さ位置にある。続いて、ステップS02において、予め折り目が付けられた清掃用紙55を、搬送ローラ対17によって搬送し、清掃用紙55の搬送方向の先端を排紙ローラ対21に到達させる。これによって、記録ヘッド22が用紙に記録を行う記録位置まで、清掃用紙55を確実に搬送する。次に、ステップS03において、キャリッジ高さ変動機構によって、フェイス面53及びヘッド保護部54を、清掃用紙55に接触しない高さ(第1の高さ位置)まで上昇させる。ここで、第1の高さ位置は、記録高さ位置よりも高い。
【0033】
次に、ステップS04において、キャリッジ23を主走査方向に移動させ、用紙搬送領域の内側に移動させる。ここで、キャリッジセンサ29の検出結果に基いて、フェイス面53が清掃用紙55の幅方向端部に対向することがないようにする。続いて、ステップS05において、キャリッジ高さ変動機構によって、ヘッド保護部54が清掃用紙55の湾曲部55b、55cに接触する高さ(第2の高さ位置)まで下降させる。ここで、第2の高さ位置は、第1の高さ位置よりも低い。また、第2の高さ位置は、記録高さ位置と同じであってもよい。
【0034】
次に、ステップS06において、搬送ローラ対17及び排紙ローラ対21によって、折り目の前後に湾曲部形成された清掃用紙55を搬送する。ここで、湾曲部55b、55cがヘッド保護部54に軽く接触した状態で清掃用紙55が搬送される。これによって、清掃用紙55によってヘッド保護部54のインク汚れが拭き取られる。このとき、清掃効果を高めるために搬送モータを正逆転させて、清掃用紙55を前後に往復移動させても良い。清掃用紙55が排紙ローラ対21によって装置外に排出されることで、ヘッド保護部54の清掃動作が終了する。
【0035】
キャリッジ23を用紙搬送領域の内側に移動させた後に、予め折り目が付けられた清掃用紙55を給送部から給送すると、清掃用紙55の先端がキャリッジユニットに接触して紙詰まり等を発生するおそれがある。キャリッジ23が第2の高さ位置にある状態であっても、紙詰り等が発生するおそれがある。したがって、第1の実施形態では、キャリッジ23をクリーニング位置に退避させた状態で、給送部から清掃用紙55を給送する。
【0036】
以上のように、第1の実施形態のキャリッジ清掃方法は、以下のステップを順番に有する。すなわち、キャリッジ23をクリーニング位置に退避させるステップと、予め折り目が付けられた清掃用紙55を記録位置に搬送するステップと、を有する。また、フェイス面53及びヘッド保護部54が、湾曲された清掃用紙55に接触しない高さ(第1の高さ位置)までキャリッジ23を上昇させるステップを有する。また、キャリッジ23を用紙搬送領域の内側に移動させるステップを有する。また、ヘッド保護部54が清掃用紙55の湾曲部55b、55cに接触する高さ(第2の高さ位置)までキャリッジ23を下降させるステップを有する。また、清掃用紙55の湾曲部55b、55cがヘッド保護部54に軽く接触した状態で清掃用紙55を搬送するステップを有する。これらのステップを有することで、ヘッド保護部54に付着したインク汚れが、清掃用紙55によって清掃される。
【0037】
本実施形態によれば、ワイパ部材32によってヘッド保護部54の清掃を行う必要がない。したがって、ワイパ部材32から遠い側のヘッド保護部54を清掃するために、装置本体を幅方向に大きくする必要がない。また、ワイパ部材32の耐久性の仕様を上げる必要がない。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態は予め折り目を付けた清掃用紙を給送することによって自動的に湾曲部を形成される構成であったが、第2の実施形態では折り目が付いていない清掃用紙を給送した後に装置本体により湾曲部を形成する構成である。図10は、第2の実施形態のインクジェット記録装置を示す概略断面図である。図11は、第2の実施形態の制御部を説明するブロック図である。
【0039】
図11に示すように、第2の実施形態は、搬送ローラ15を駆動する搬送モータと、排紙ローラ19を駆動する排紙モータを別個に有する。第2の実施形態は、搬送モータの駆動を制御する搬送モータドライバ57と、排紙モータの駆動を制御する排紙モータドライバ58を有している。
【0040】
図10において、折り目が付いていない清掃用紙56は、搬送ローラ対17及び排紙ローラ対21の両ローラ対に挟持される位置まで搬送される。搬送ローラ対17は、記録ヘッド22の上流側で用紙を搬送する搬送手段である。排紙ローラ対21は、記録ヘッド22の下流側で用紙を搬送する排紙手段である。ここで、排紙ローラ19を停止すると共に、搬送ローラ15を正転(記録用紙14を搬送する方向に回転)させることで、清掃用紙56に湾曲部56aを形成する。湾曲部56aを形成した後、搬送ローラ15と排紙ローラ19を同一の搬送速度で回転させ、湾曲部56aをヘッド保護部54に軽く接触させた状態で清掃用紙56を搬送する。これによって、ヘッド保護部54に付着したインク汚れを湾曲部56aで拭き取ることができる。
【0041】
次に、図12を用いて、第2の実施形態におけるヘッド保護部の清掃動作を説明する。図12は、第2の実施形態のヘッド保護部の清掃法を示すフローチャートである。
【0042】
まずステップS11において、キャリッジ23を主走査方向における用紙搬送領域の外側に位置する、クリーニング位置に退避させる。このとき、キャリッジ23は、記録ヘッド22により記録用紙に記録を行うときの記録高さ位置にある。続いて、ステップS12において、搬送ローラ対17によって清掃用紙56を搬送して、清掃用紙56の先端が排紙ローラ対21に確実に到達する記録位置まで搬送する。次に、ステップS13において、キャリッジ23を主走査方向に移動させ、用紙搬送領域の内側に移動させる。ここで、キャリッジセンサ29の検出結果に基づいて、フェイス面53が清掃用紙56の幅方向端部に対向することがないようにするここで、キャリッジ23は、記録高さ位置のままである。
【0043】
次に、ステップS14において、排紙ローラ19を停止させ、搬送ローラ15を正転させることにより、清掃用紙56に湾曲部56aを形成する。湾曲部56aは、ヘッド保護部54に軽く接触する構成となっている。次に、ステップS15において、搬送ローラ対17及び排紙ローラ対21によって、湾曲させた清掃用紙56を搬送する。ここで、湾曲部56aがヘッド保護部54に軽く接触した状態で清掃用紙56が搬送される。これによって、清掃用紙56によってヘッド保護部54のインク汚れが拭き取られる。清掃用紙56が排紙ローラ対21によって装置外に排出されることで、ヘッド保護部54の清掃動作が終了する。
【0044】
なお、清掃用紙56に湾曲部56aを形成するために、搬送ローラを停止した状態で排紙ローラを逆転する構成としてもよい。また、搬送ローラを正転すると共に排紙ローラを逆転する構成としてもよい。
【0045】
以上のように、第2の実施形態のキャリッジ清掃方法は、搬送ローラ15と排紙ローラ19を独立して駆動させ、搬送ローラ15と排紙ローラ19の各々の回転方向及び搬送速度の少なくともいずれか1つを制御する。これによって、清掃用紙56に湾曲部56aを形成する。湾曲部56aをヘッド保護部54に軽く接触させた状態で清掃用紙56を搬送することで、ヘッド保護部54に付着したインク汚れを拭き取る。第2の実施形態によれば、装置本体を幅方向に大きくする必要がない。また、ワイパ部材32の耐久性の仕様を上げる必要がない。また、本実施形態は、清掃用紙に予め折り目を付ける必要がなく、普通の記録用紙を清掃用紙として使用することができる。
【符号の説明】
【0046】
6 キャリッジ高さ変動機構
15 搬送ローラ
22 記録ヘッド
23 キャリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して用紙に記録を行う記録ヘッドと、用紙を搬送する搬送手段と、前記記録ヘッドを搭載して用紙の搬送方向と交差する主走査方向に移動するキャリッジと、該キャリッジを高さ方向に移動させる高さ変動機構と、を備えるインクジェット記録装置において、
前記搬送手段、前記キャリッジ、及び前記高さ変動機構を制御する制御部を備え、該制御部は、前記キャリッジを前記主走査方向において前記搬送手段による用紙搬送領域の外側に移動させた後に予め折り目が付けられた清掃用紙を記録位置に搬送し、その後、前記高さ変動機構により前記キャリッジを第1の高さに移動させた後に前記キャリッジを前記用紙搬送領域の内側に移動させ、その後、前記高さ変動機構により前記キャリッジを前記第1の高さ位置よりも低い第2の高さ位置に移動させ、その後前記搬送手段により前記清掃用紙を搬送させるように制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1の高さ位置は、前記記録ヘッドにより用紙に記録を行うときの記録高さ位置よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第2の高さ位置は、前記記録高さ位置と同じであることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記キャリッジは前記第2の高さ位置にあるときに、前記清掃用紙は前記キャリッジに接触することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記清掃用紙は前記折り目の前後に湾曲部が形成され、前記湾曲部が前記キャリッジに接触することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドはインクを吐出するノズルが構成されたノズル面を有し、前記キャリッジは前記ノズル面の近傍に前記ノズル面より低い位置にヘッド保護部を有し、前記湾曲部は前記ヘッド保護部に接触することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記湾曲部は前記ノズル面に接触しないことを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
インクを吐出して用紙に記録を行う記録ヘッドと、用紙を搬送する搬送手段と、前記記録ヘッドを搭載して用紙の搬送方向と交差する主走査方向に移動するキャリッジと、該キャリッジを高さ方向に移動させる高さ変動機構と、を備えるインクジェット記録装置におけるキャリッジ清掃方法は以下のステップを順番に含む:
前記キャリッジを前記主走査方向において前記搬送手段による用紙搬送領域の外側に移動させるステップと、
予め折り目が付けられた清掃用紙を記録位置に搬送するステップと、
前記高さ変動機構によって前記キャリッジを第1の高さ位置に移動させるステップと、
前記キャリッジを前記用紙搬送領域の内側に移動させるステップと、
前記高さ変動機構によって前記キャリッジを第2の高さ位置に移動させるステップと、
前記搬送手段によって前記清掃用紙を搬送するステップと、
を備えることを特徴とするキャリッジ清掃方法。
【請求項9】
インクを吐出して用紙に記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドの上流側で用紙を搬送する搬送手段と、前記記録ヘッドの下流側で用紙を搬送する排紙手段と、前記記録ヘッドを搭載して用紙の搬送方向と交差する主走査方向に移動するキャリッジと、を備えるインクジェット記録装置において、
前記搬送手段、前記排紙手段、及び前記キャリッジを制御する制御部を備え、該制御部は、前記搬送手段により記録位置に清掃用紙を搬送し、その後、前記搬送手段及び前記排紙手段の駆動を制御することにより前記清掃用紙に湾曲部を形成し、前記湾曲部が前記キャリッジに接触した状態で前記搬送手段及び前記排紙手段により前記清掃用紙を搬送させるように制御することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−99933(P2013−99933A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−199519(P2012−199519)
【出願日】平成24年9月11日(2012.9.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】