説明

インクジェット記録装置及び吐出不良ノズルの検出方法

【課題】1つのノズル列中の全ノズルに亘って光回折の影響を低減し、略同一の検出出力レベルを得ることができ、安定したノズルの検出を行うこと。
【解決手段】記録ヘッドのノズルから吐出されるインク滴の飛翔経路に交叉するように検出光を出射する発光手段と、検出光を受光することによりその光路中をインク滴が通過したか否かを検出する受光手段と、記録ヘッドの全てのノズルから検出光の光路に向けてインク滴を順次時系列的に吐出制御する吐出制御手段と、吐出制御手段によるインク滴の吐出のタイミングと受光手段によるインク滴の通過検出タイミングとに基づいてノズルからのインク滴の吐出状態を検知することで吐出不良ノズルを特定する吐出不良ノズル特定手段とを備え、吐出制御手段は、検出時に各ノズルから吐出するインク滴数を変更可能とすると共に、受光手段による出力レベルが検出光の光路上の全ノズルに亘って略同一になるように、受光手段側のノズルに比べて発光手段側のノズルの方を多く吐出制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドの各ノズルについて安定した吐出不良の検出を行うことのできるインクジェット記録装置及び吐出不良ノズルの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドに設けられたノズルからインク滴を記録媒体に吐出することによって画像を記録するインクジェット記録装置では、常に高画質、高品質の画像記録を行うことができるように、定期的に各ノズルからのインク滴の吐出の有無や飛翔速度を検出することによって、インクの吐出状態を検知し、吐出不良ノズルを検出することが行われる。
【0003】
このような検出方法としては、インク滴の飛翔経路に交叉するように検出光を出射する発光素子(LED)とこの検出光を受光する受光素子(フォトダイオード)を設け、その光路上をインク滴が通過した時の受光素子の光量変化を捉えることにより行う方法が一般的である。インク滴を吐出したタイミングと受光素子が光量変化を検出したタイミングとに基づくことによって、インク滴の通過の有無、すなわち欠ノズルの有無やインク滴の飛翔速度を検出することができる。
【0004】
発光素子と受光素子との距離は、記録ヘッドのノズル列中の全ノズルが、その間に形成される検出光の光路上に収まるようにするため、ノズル数が多くなる程長くなる。このため、発光素子と受光素子は、検出機構の省スペース化を図る観点から、その間にノズル列が収まる程度に可及的に近接して配置される。一方、発光素子から出射される検出光は発散光であるため、発光素子に近いノズルから吐出されたインク滴の影は光回折の影響を受け易い。
【0005】
これにより、受光素子からの検出出力は、ノズルの発光素子からの距離と光回折との相関関係から、ノズル位置が発光素子に近い程弱くなる傾向があり、図8の一点鎖線のグラフ(ア)で示すように、ノズル位置が発光素子に近づくにつれて次第に低下する。特に近年、ノズル数の増加からくるノズル列長の増大化により、検出光の光路長が長くなると共に、1滴のインク滴量も小さくなってきており、ノズル列中の受光素子側端のノズルから吐出されるインク滴による検出出力のレベルと、発光素子側端のノズルから吐出されるインク滴による検出出力のレベルとが大きく異なり、全ノズルに亘って均一な安定した検出が行えなくなる問題があった。
【0006】
このような問題に対処するため、特許文献1は、発光素子と受光素子との組を2組設け、互いの出射方向が逆向きとなるように検出光を平行に配置し、検出光毎に1つのノズル列中の発光素子に近い側の半分の各ノズルを休止し、図8に示すように、検出出力が所定の閾値thよりも高い受光素子に近い側の半分の各ノズルについてインク滴を吐出することにより、光回折に影響されない検出を行う方法を開示している。
【特許文献1】特開平10−119307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の方法では、1つのノズル列の全ノズルの検出を行うために、発光素子と受光素子との組を2組設けなくてはならず、検出機構が複雑化することによるコストアップの問題があるのみならず、検出光毎に検出レベルを合わせることが困難であり、特にインク滴の飛翔速度やインク滴量を求めるような場合には調整が必要であった。
【0008】
また、1本の検出光で1つのノズル列中の半分のノズルしか検出できないため、1つのノズル列中の全ノズルの検出を行うには、2本の検出光の間に亘って記録ヘッド自体を移動させなくてはならない。ノズル毎の検出自体は、インク滴の吐出制御という電気的制御のみの極めて短時間で済むのに対し、記録ヘッド自体の移動は、電気的制御に加えて記録ヘッドが搭載されたキャリッジの移動、光軸一致検出動作、停止といった機械的制御を繰り返し行う必要がある。この機械的制御は電気的制御によるノズルの検出時間に比べて遥かに時間が掛かるため、それだけ検出時間が増大化する問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、1つのノズル列中の全ノズルに亘って光回折の影響を低減し、略同一の検出出力レベルを得ることができるようにすることにより、安定したノズルの検出を行うことのできるインクジェット記録装置及び吐出不良ノズルの検出方法を提供することを課題とする。
【0010】
本発明の他の課題は以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0012】
請求項1記載の発明は、記録ヘッドに設けられた複数のノズルからインク滴を記録媒体に向けて吐出することにより記録を行うインクジェット記録装置において、前記インク滴の飛翔経路に交叉するように検出光を出射する発光手段と、前記検出光を受光することによりその光路中を前記インク滴が通過したか否かを検出する受光手段と、前記記録ヘッドの全てのノズルから前記検出光の光路に向けてインク滴を順次時系列的に吐出制御する吐出制御手段と、前記吐出制御手段によるインク滴の吐出のタイミングと前記受光手段によるインク滴の通過検出タイミングとに基づいて前記ノズルからのインク滴の吐出状態を検知することで吐出不良ノズルを特定する吐出不良ノズル特定手段とを備え、前記吐出制御手段は、検出時に各ノズルから吐出するインク滴数を変更可能とすると共に、前記受光手段による出力レベルが前記検出光の光路上の全ノズルに亘って略同一になるように、受光手段側のノズルに比べて発光手段側のノズルの方を多く吐出制御することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記検出光の光路上において、少なくとも前記受光手段の直前に、検出光の通過を制限するアパーチャーを配置したことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置である。
【0014】
請求項3記載の発明は、液滴の飛翔経路に交叉するように検出光を出射する発光手段と該検出光を受光することによりその光路中を前記液滴が通過したか否かを検出する受光手段とを備え、ヘッドに設けられた複数のノズルから吐出される液滴の吐出状態を検知することにより、吐出不良ノズルを検出する方法において、前記受光手段による出力レベルが前記検出光の光路上の全ノズルに亘って略同一になるように、検出時に各ノズルから吐出する液滴数を受光手段側のノズルに比べて発光手段側のノズルの方を多くして順次時系列的に吐出制御することにより、該液滴の吐出のタイミングと前記受光手段による液滴の通過検出タイミングとに基づいて前記ノズルからの液滴の吐出状態を検知することで吐出不良ノズルを特定することを特徴とする吐出不良ノズルの検出方法である。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記検出光の光路上において、少なくとも前記受光手段の直前に、検出光の通過を制限するアパーチャーを配置することを特徴とする請求項3記載の吐出不良ノズルの検出方法である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1及び3記載の発明によれば、1つのノズル列中の全ノズルに亘って光回折の影響を低減して、ノズル位置に対する検出出力のグラフの傾斜を寝かせることで、略同一の検出出力レベルを得ることができ、安定したノズルの検出を行うことができる。
【0017】
請求項2及び4記載の発明によれば、検出光が記録ヘッドのノズル面で反射した際の反射光の受光手段への入射を制限し、誤検出を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、吐出不良ノズルの検出を行うためのインクジェット記録装置の主要部の概略構成を示す斜視図、図2は主要部の構成を示すブロック図、図3は検出光の光路を示す平面図である。
【0020】
図中、1は記録ヘッドであり、ガイドレール及び主走査モータ等からなる移動手段(図示せず)によって主走査方向に沿って往復移動可能に設けられるキャリッジ(図示せず)に搭載されている。各記録ヘッド1の下面のノズル面11には、多数のノズル12が主走査方向と直交する方向に沿って配列されており、この多数のノズル12によって1列のノズル列を形成している。
【0021】
この記録ヘッド1は、移動手段によってキャリッジが主走査方向に沿って往復移動する過程で、図2に示すコントローラ(CPU)5によって所定の駆動条件(駆動電圧、駆動周波数)で駆動回路6が制御されることにより、記録ヘッド1の各ノズル12からそれぞれ所定のタイミングで微小液滴状のインク滴aを、図1における下方向に吐出することで、図示しない記録媒体上に所望の画像を記録する。
【0022】
2はLEDからなる発光素子であり、記録ヘッド1の各ノズル12から吐出されるインク滴aの通過を検出するための検出光Lを出射する。この発光素子2は、詳細については示していないが、図2に示すコントローラ5によって点灯・消灯が制御されるようになっている。
【0023】
3はフォトダイオードからなる受光素子であり、発光素子2から出射した検出光Lを受光する。
【0024】
検出光Lは、主走査方向と直交し且つ記録ヘッド1の各ノズル12の配列方向と平行であり、インク滴aの吐出方向に沿った高さ位置が記録ヘッド1のノズル面11の位置よりも低い位置に配置されるように形成されている。また、発光素子2と受光素子3とは、図1及び図3に示すように、記録ヘッド1の全ノズル12がその間の検出光Lの光路上に全て収まる距離で配置されている。これにより、記録ヘッド1のノズル列が検出光Lの光路上に位置したときに、各ノズル12から吐出されるインク滴aの進行経路は検出光Lと交叉する。
【0025】
4はインク受け皿であり、検出光Lの光路上に配置された記録ヘッド1のノズル面11に対向するにように設けられており、検出時に記録ヘッド1から吐出されたインク滴aを受け入れるようになっている。
【0026】
以上の発光素子2、受光素子3及びインク受け皿4は、記録ヘッド1が記録媒体に対して記録を行わない非記録領域に位置して設けられている。記録ヘッド1のノズル12の検出は、記録ヘッド1を搭載したキャリッジが移動手段によって主走査方向に沿ってこの非記録領域まで移動し、そのノズル列が検出光Lの光路上に位置して停止した時に、コントローラ5から出力される吐出開始信号(FIRE-M)によって駆動回路6を制御し、記録ヘッド1の各ノズル12からインク滴aを順次時系列的に吐出することにより、そのインク滴aが検出光Lを通過した際の影を受光素子3により光量変化として検出することによって行われる。
【0027】
受光素子3は、このようにしてインク滴aが検出光Lを通過したときの影を光量変化として検出し、この検出信号を図2に示す検出部7に送る。検出部7は、受光素子3の検出信号を増幅する電流増幅部71と、この電流増幅部71により増幅された検出信号の変動分のみを増幅する交流増幅部72と、この交流増幅部72からの出力信号を、該出力信号を低域フィルタ73を経て生成された基準信号と比較し、基準信号レベルを越える信号をdefect-out信号としてコントローラ5へ出力する比較器74とを有している。
【0028】
ここで、本発明では、コントローラ5が駆動回路6に出力する吐出開始信号の印加タイミングを適宜変更することによって、吐出不良ノズルの検出時に記録ヘッド1の各ノズル12からそれぞれ吐出するインク滴の数を変更制御することが可能である。そして、この検出時のインク滴の数を、検出対象となる検出光Lの光路上に位置する全ノズルに亘って同一ではなく、図8の一点鎖線のグラフ(ア)で示すように、光回折の影響から検出光Lの光路上のノズル位置によって受光素子3による検出出力のレベルが異なる点に鑑み、受光素子3による検出出力のレベルが検出光Lの光路上の全ノズル12に亘って略同一になるように、検出光Lの光路上において受光素子3側に位置するノズル12に比べて発光素子2側に位置するノズル12の方を多く吐出制御する。
【0029】
このときのインク滴は、インク滴数が各ノズル12毎に変更制御可能であることにより、1滴のインク滴aもしくは連続して吐出される2滴以上の複数のインク滴aからなる一塊のインク滴群Gの形態で各ノズル12から吐出される。
【0030】
図4(a)は、1つのノズル12から連続して吐出される3滴のインク滴aからなる一塊のインク滴群Gの様子を示している。ここでは検出の確実性を期すため、ノズル12からインク滴群G1、G2・・・という具合に、一塊のインク滴群Gを一定間隔をおいて連続して吐出している。
【0031】
一塊のインク滴群Gにおいて、各インク滴a同士の吐出間隔と連続する一塊のインク滴群G同士の吐出間隔との関係は、一塊のインク滴群Gにおいて隣接する各インク滴a同士の吐出間隔をα、先に吐出されたインク滴群G1と次に吐出されたインク滴群G2との吐出間隔(インク滴群G1の最後のインク滴aとインク滴群G2の最初のインク滴aとの間隔)をβとしたとき、α<βである。このとき、一塊のインク滴群Gにおける上記αの和を、受光素子3によって影が捉えられる範囲の垂直方向の距離よりも小さい値とすることがより好ましく、これによって受光素子3では、インク滴aの個々が極めて微小な液滴からなるものであっても、インク滴群Gとすることで1つの大きなまとまった信号として検出することができるようになる。
【0032】
また、1つのノズル12からのインク滴群Gの吐出が終了し、隣接するノズル12からの吐出に移行する際は、図4(b)に示すように、先のノズル12から吐出されたインク滴群G1と次のノズル12から吐出されたインク滴群G2との吐出間隔βを、一塊のインク滴群G中の隣接するインク滴a同士の間隔αとの関係で、上記同様にα<βとなるようにすれば、各ノズル12から連続して吐出する場合でもそれぞれのインク滴群Gを一塊とみなすことができる。
【0033】
検出光Lの光路上に位置する全ノズル12の中でインク滴数を変える具体的態様の一例としては、検出光Lの光路上にある全ノズル12を複数の組に分け、その組毎にインク滴数を変えることが挙げられる。図5は、全ノズル12を3つの組に分け、受光素子3に近い側の組の複数のノズル12からは3滴のインク滴aからなるインク滴群Gfを吐出するように制御し、中間に位置する組の複数のノズルからは4滴のインク滴aからなるインク滴群Gmを吐出するように制御し、発光素子2に近い側の組の複数のノズルからは6滴のインク滴aからなるインク滴群Gnを吐出するように制御する場合を示している。分けられる組は受光素子3による検出出力のレベルに応じて2以上とすれば任意であり、インク滴数もインク滴aの1滴の大きさと受光素子3による検出出力のレベルとに応じて適宜調整できる。
【0034】
検出光Lの光路上に位置する各ノズル12の検出時のインク滴数のデータは、ノズル12毎もしくは複数のノズル12の組毎に対応させて予めコントローラ5内の所定の領域に記憶しておき、吐出不良ノズルの検出時には、この記憶されたデータに基づいて、1つのノズル列中の各ノズル12のインク滴数を制御すればよい。
【0035】
このように検出光Lの光路上に位置するノズル12の発光素子2からの位置に応じてインク滴数を変更制御し、受光素子3側のノズル12に比べて発光素子2側のノズル12の方を多く吐出制御することで、受光素子3による出力レベルは、図8の実線のグラフ(イ)に示すように、検出光Lの光路上の全ノズルに亘って略同一にすることができる。
【0036】
次に、かかるインクジェット記録装置における吐出不良ノズルの検出フローについて図6に示すフロー図を用いて説明する。
【0037】
まず、コントローラ5は、発光素子2を点灯させた後(S1)、図示しない移動手段を駆動させることにより、記録ヘッド1の各ノズル列が検出光Lの光路上に一致する位置までキャリッジを主走査方向に移動させる(S2)。
【0038】
次いで、コントローラ5は、駆動回路6に吐出開始信号(FIRE-M)を出力し、正常なインク滴aの吐出対策として、その全ノズル12から連続して複数のインク滴aの吐出(予備吐出)を行う(S3)。
【0039】
この予備吐出後、コントローラ6は、記録ヘッド1の全ノズル12のうち、ノズル検出を行うためのインク滴aを吐出する最初のノズルを特定する(ここでは受光素子2に最も近いノズルとする。ノズルNo.n=1とする。)(S4)。そして、この最初のノズルNo.1のノズル(以下、これをNo.1ノズルという。)に対して吐出開始信号(FIRE-M)を出力し、検出のためのインク滴又はインク滴群の吐出を行う(S5)。このとき吐出されるインク滴数は、コントローラ5内に予め定められて記憶されているノズル毎のインク滴数のデータに基づいて決定される(S5)。ここでは連続して吐出される3滴のインク滴によって一塊のインク滴群を構成し、このインク滴群をNo.1ノズルから吐出したものとして説明する。
【0040】
ここで、No.1ノズルから正常にインク滴群が吐出され、そのインク滴群が検出光Lの光路を通過すると、受光素子3において入射光が一部遮られることにより光量信号が一時的に減少する。この光量信号の減少が所定レベルを越えると、当該ノズル12からインク滴群の通過が検出されたものとして、検出部7から図7に示すようなdefect-out信号が出力される。
【0041】
コントローラ5は、検出部7からのこのdefect-out信号の入力の有無を判断している。吐出開始信号(FIRE-M)を出力してNo.1ノズルから一塊のインク滴群を吐出した後、所定のタイムアウト時間、即ちインク滴群を吐出してからそのインク滴群が検出光Lの光路を横切るであろうと十分に推測される時間の経過を検出しており、このタイムアウト時間が経過してもdefect-out信号が検出部7から出力されない場合(図7において点線で示す。)は、No.1ノズルは目詰まり等の原因によりインク滴が吐出されない欠ノズルと判断され、そのノズル番号を所定の記憶領域に記憶する(S6)。これにより欠ノズルによる吐出不良ノズルを特定することができる。
【0042】
一方、コントローラ5は、No.1ノズルから正常にインク滴群が吐出されたことによって検出部7から所定のタイムアウト時間内にdefect-out信号の入力があると、インク滴群の吐出開始信号(FIRE-M)を出力したタイミングからdefect-out信号を検出したタイミングまでの時間(図7中のTn時間)を検出し、この検出時間と、予め判っている記録ヘッド1のノズル面11と検出光Lの光路との間の距離とに基づいてインク滴aの飛翔速度を算出し、それを所定の記憶領域に記憶する(S6)。このとき記憶された飛翔速度は、予め記憶されている飛翔速度の所定値と比較することで、速度異常を検出することができる。これにより飛翔速度異常による吐出不良ノズルを特定することができる。
【0043】
その後、コントローラ5は、続いてNo.2ノズル、No.3ノズル・・・という具合に、1つのノズル列において発光素子2に近づいていくノズル12について順次時系列的に上記同様の処理を繰り返す(S5〜S8)。このとき、ノズル位置が発光素子2に近くなるに従って光回折の影響を受け易くなることに鑑み、吐出されるインク滴数は、コントローラ5内に予め定められて記憶されているノズル毎のデータに基づいて多くなるように制御される。
【0044】
そして、1つのノズル列の全てのノズル12について検出が終了したら(S7においてYesの場合)、コントローラ5は発光素子2を消灯し(S9)、吐出不良の検出動作を終了する。
【0045】
このように、検出時に各ノズル12から吐出するインク滴数を変更制御し、受光素子3による検出出力のレベルが検出光Lの光路上の全ノズル12に亘って略同一になるように、受光素子3側のノズル12に比べて発光素子2側のノズル12の方を多く吐出制御することにより、検出光Lの光路上に位置する1つのノズル列中の全ノズル12に亘って光回折の影響を低減して、略同一の検出出力レベルを得ることができ、安定したノズル12の検出を行うことができる。
【0046】
ところで、図3に示すように、発光素子2から受光素子3に至る検出光Lの光路上には、検出光Lの通過を制限するアパーチャー8が介設されている。
【0047】
アパーチャー8の詳細を図9に示す。アパーチャー8には開口部81が形成されており、検出光Lの通過をこの開口部81に制限している。開口部81は、横長形状を呈しており、詳細には、記録ヘッド1のノズル面11と垂直な方向に沿う径(短径)d1に対してそれと直交する方向に沿う径(長径)d2が長く形成されている。一般に、開口部81は、記録ヘッドのノズル面と垂直な方向、即ちインク滴aの吐出方向に沿う幅が狭い方が、インク滴aの通過を検出する場合の検出精度を向上させることができる点で有利である。一方、これと直交する方向の幅を狭くすると、受光素子3により検出される信号の出力が低下すると共に、主走査方向への記録ヘッドの光軸ずれに対する余裕度の減少から、逆に安定な検出ができず検出誤差が大きくなるおそれがあるため、開口形状を横長形状とし、その短径d1が記録ヘッドのノズル面と垂直な方向に沿うように開設することで、インク滴aの検出精度の向上と検出誤差の低減化とを両立できるようにしている。この開口部81の形状の一例を挙げると、d1=1.5mm、d2=3mmである。
【0048】
なお、図9では、横長の略矩形状の開口部81とされているが、開口部81はd1<d2となるように形成された横長楕円形状であってもよい。
【0049】
アパーチャー8の位置は、図3に示すように、少なくとも受光素子3の直前に設けることが好ましい。受光素子3の直前にアパーチャー8を設けることによって、記録ヘッド1のノズル面11等で反射した検出光Lの反射光が受光素子3へ入射することによって誤検出を生じる問題を低減することができる。
【0050】
以上の説明では、発光素子2をLEDとしたが、これに限らず、本発明は検出光Lを出射する発光手段としてLD(レーザー)を用いる場合にも適用できる。
【0051】
また、ここでは、キャリッジに搭載される記録ヘッド1が移動手段によって主走査方向に沿って移動可能とされ、この記録ヘッド1が検出光Lまで移動してくる態様について説明したが、記録ヘッド1と検出光Lとは相対的に移動すればよい。従って、検出光L側を記録ヘッド1に向けて移動可能としてもよく、また、双方が互いに移動するようにしてもよい。
【0052】
更に、キャリッジに搭載される記録ヘッドの数は1つに限らず、例えばYMCK等のインク色毎に専用の複数の記録ヘッドをキャリッジに並設したものであってもよい。更に、ノズル12の高密度化を図るために、1つの記録ヘッドに2列以上の平行なノズル列を設けたものであってもよい。
【0053】
本発明に係る吐出不良ノズルの検出方法は、インク滴を吐出することによって記録紙やフィルム等の記録媒体上に文字や写真等の各種画像を記録するインクジェット記録装置に適用されるものに限らず、例えば、ノズルから布帛にインク滴を吐出することによって所望の図柄を形成するインクジェット捺染装置、ノズルから液滴状の発光材料を吐出することによって発光層を形成する有機EL素子の製造装置、ノズルからシルク印刷用のインク滴を吐出するシルク印刷装置等のように、多数のノズルが配列されたノズル列を有し、その各ノズルから液滴を吐出するヘッドを有する装置にも適用することで、上記同様に、安定した吐出不良ノズルの検出が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】インクジェット記録装置の主要部の概略構成を示す斜視図
【図2】インクジェット記録装置の主要部の構成を示すブロック図
【図3】検出光の光路を示す平面図
【図4】(a)(b)はそれぞれノズルから吐出される一塊のインク滴群の様子を示す図
【図5】ノズル位置によってインク滴群のインク滴数を変えた態様を示す図
【図6】吐出不良ノズルの検出フローを示すフロー図
【図7】吐出制御信号と検出信号を示す図
【図8】ノズル位置と検出出力との関係を示すグラフ
【図9】アパーチャーの正面図
【符号の説明】
【0055】
1:記録ヘッド
11:ノズル面
12:ノズル
2:発光素子
3:受光素子
4:インク受け皿
5:コントローラ
6:駆動回路
7:検出部
8:アパーチャー
81:開口部
L:検出光
G:インク滴群
a:インク滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドに設けられた複数のノズルからインク滴を記録媒体に向けて吐出することにより記録を行うインクジェット記録装置において、
前記インク滴の飛翔経路に交叉するように検出光を出射する発光手段と、
前記検出光を受光することによりその光路中を前記インク滴が通過したか否かを検出する受光手段と、
前記記録ヘッドの全てのノズルから前記検出光の光路に向けてインク滴を順次時系列的に吐出制御する吐出制御手段と、
前記吐出制御手段によるインク滴の吐出のタイミングと前記受光手段によるインク滴の通過検出タイミングとに基づいて前記ノズルからのインク滴の吐出状態を検知することで吐出不良ノズルを特定する吐出不良ノズル特定手段とを備え、
前記吐出制御手段は、検出時に各ノズルから吐出するインク滴数を変更可能とすると共に、前記受光手段による出力レベルが前記検出光の光路上の全ノズルに亘って略同一になるように、受光手段側のノズルに比べて発光手段側のノズルの方を多く吐出制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記検出光の光路上において、少なくとも前記受光手段の直前に、検出光の通過を制限するアパーチャーを配置したことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
液滴の飛翔経路に交叉するように検出光を出射する発光手段と該検出光を受光することによりその光路中を前記液滴が通過したか否かを検出する受光手段とを備え、ヘッドに設けられた複数のノズルから吐出される液滴の吐出状態を検知することにより、吐出不良ノズルを検出する方法において、
前記受光手段による出力レベルが前記検出光の光路上の全ノズルに亘って略同一になるように、検出時に各ノズルから吐出する液滴数を受光手段側のノズルに比べて発光手段側のノズルの方を多くして順次時系列的に吐出制御することにより、該液滴の吐出のタイミングと前記受光手段による液滴の通過検出タイミングとに基づいて前記ノズルからの液滴の吐出状態を検知することで吐出不良ノズルを特定することを特徴とする吐出不良ノズルの検出方法。
【請求項4】
前記検出光の光路上において、少なくとも前記受光手段の直前に、検出光の通過を制限するアパーチャーを配置することを特徴とする請求項3記載の吐出不良ノズルの検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−7447(P2006−7447A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184157(P2004−184157)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】