説明

インクジェット記録装置及び方法

【課題】良好な画質の画像を記録できるインクジェット記録装置及び方法を提供する。
【解決手段】記録用紙12の表裏両面に画像を記録するインクジェット記録装置10において、記録用紙12の表面側の領域にインクを打滴後、裏面側の対応領域にインクが打滴されるまでの時間をΔT1[sec]、記録用紙12の表面側の領域にインクを打滴後、その
領域が部材に接触するまでの時間をΔT2[sec]、インクの粘度をη[mPa・sec]としたと
き、次式:ΔT1<0.45×η…(1)、ΔT2>1…(2)を満足させる。これにより、裏面に打滴したインクの形状が真円から崩れるのを防止することができるとともに、表面に打滴されたインクが乾燥する前に部材に接触して、画質が劣化するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及び方法に係り、特に記録媒体の表裏両面に画像(文字等を含む)の記録が可能なインクジェット記録装置及び方法に関する。なお、本明細書では、二面ある記録媒体の記録面のうち最初に記録される面を「表面」とし、その裏側の面を「裏面」とする。
【背景技術】
【0002】
一般に両面記録機能を備えたインクジェット記録装置では、記録媒体の表面側に画像を記録した後、自動的に記録媒体を反転させて、記録媒体の裏面側に画像を記録する。
【0003】
ところで、このように記録媒体を反転させて、記録媒体の両面に画像を記録する場合、表面に打滴されたインクが完全に乾燥していないうちに裏面の記録を開始すると、表面に打滴されたインクが搬送面に転移して、搬送面が汚れたり、搬送面との間でインクが擦れて、画質が劣化したりするという問題がある。
【0004】
このため、インクジェット記録装置で両面記録を行う場合は、表面の記録完了後、待機時間を設け、インクを十分に乾燥させてから、裏面の記録を開始するようにしている。
【0005】
そして、従来のインクジェット記録装置では、記録用紙によって待機時間を変えたり(たとえば、特許文献1)、表面に打滴したインク量によって待機時間を変えたり(たとえば、特許文献2)して、待機時間を適切に設定するようにしている。
【特許文献1】特開平6−134982号公報
【特許文献2】特開2005−125750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、表面の記録完了後、待機時間を設定することで、搬送面の汚れや画質劣化を防止できるが、この待機時間を設定しただけでは、次の問題には対処することができない。すなわち、表面の記録完了後に待機時間を設けると、表面に打滴されたインクの溶媒成分が記録媒体中に浸透し、局所的にヨレが生じるという問題がある。そして、このように局所的にヨレが生じた記録媒体に対して裏面に画像を記録すると、そのヨレが生じた部分でインクの形状が真円から崩れ、画像が劣化するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、良好な画質の画像を記録できるインクジェット記録装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、記録媒体の表面側にインクを吐出して表面側への記録を開始した後、前記記録媒体の裏面側にインクを吐出して裏面側への記録を開始して、前記記録媒体の両面に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録媒体の表面側の領域にインクを打滴後、裏面側の対応領域にインクが打滴されるまでの時間をΔT1[sec]、前記記録媒体に吐出するインクの粘度をη[mPa・sec]としたとき、次式:ΔT1<0.45×η…(1)を満たすことを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、表面に打滴されたインクの溶媒成分が記録媒体中に浸透して、局所的にヨレが生じる前に裏面側の対応領域にインクが打滴されるので、インクの形状が真円から崩れるのを防止することができる。これにより、良好な画質の画像を記録することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記記録媒体の表面側の領域にインクを打滴後、その領域が部材に接触するまでの時間をΔT2[sec]としたとき、次式:ΔT2>1…(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置を提供する。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、表面に打滴されたインクが乾燥する前に部材に接触して、部材にインクが転写されたり、インクが擦れたりして、画質が劣化するのを防止することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、前記時間ΔT1[sec]を調整するΔT1調整手段と、前記記録媒体に吐出するインクの粘度η[mPa・sec]を検出するインク粘度検出手段と、を備え、前記インク粘度検出手段で検出された粘度η[mPa・sec]に基づいて、前記式(1)を満たすように、前記ΔT1調整手段で前記時間ΔT1[sec]を調整することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置を提供する。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、インク粘度検出手段で検出された粘度η[mPa・sec]に応じて、式(1)を満たすように、時間ΔT1[sec]がΔT1調整手段によって調整される。これにより、インクの粘度η[mPa・sec]が変化した場合であっても常に良好な画質の画像を記録することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、前記インク粘度検出手段は、前記記録媒体に吐出するインクの温度t[℃]を検出するインク温度検出手段と、前記インク温度検出部で検出されたインクの温度t[℃]から粘度η[mPa・sec]を算出する粘度算出手段と、からなることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置を提供する。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、インクの温度に基づいてインクの粘度η[mPa・sec]が検出される。
【0016】
請求項5に係る発明は、前記目的を達成するために、前記記録媒体に吐出するインクの粘度η[mPa・sec]を調整するインク粘度調整手段を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のインクジェット記録装置を提供する。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、時間ΔT1[sec]が式(1)を満たすように、インクの粘度η[mPa・sec]が調整される。
【0018】
請求項6に係る発明は、前記目的を達成するために、前記インク粘度調整手段は、前記記録媒体に吐出するインクの温度t[℃]を調整して、粘度η[mPa・sec]を調整することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置を提供する。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、インクの温度を調整して、インクの粘度を調整する。
【0020】
請求項7に係る発明は、前記目的を達成するために、記録媒体の表面側にインクを吐出して表面側への記録を開始した後、前記記録媒体の裏面側にインクを吐出して裏面側への記録を開始して、前記記録媒体の両面に画像を記録するインクジェット記録方法において、前記記録媒体の表面側の領域にインクを打滴後、裏面側の対応領域にインクが打滴されるまでの時間をΔT1[sec]、前記記録媒体に吐出するインクの粘度をη[mPa・sec]としたとき、次式:ΔT1<0.45×η…(1)を満たすように、前記記録媒体の両面に画像を記録することを特徴とするインクジェット記録方法を提供する。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、表面側への記録を開始した後、裏面側への記録を開始して、記録媒体の両面に画像を記録する場合において、上記式(1)を満たすようにして、記録媒体の両面に画像を記録することにより、表面に打滴されたインクの溶媒成分が記録媒体中に浸透して、局所的にヨレが生じる前に裏面側の対応領域にインクを打滴することができる。これにより、インクの形状が真円から崩れるのを防止することができ、良好な画質の画像を記録することができる。
【0022】
請求項8に係る発明は、前記目的を達成するために、前記記録媒体の表面側の領域にインクを打滴後、その領域が部材に接触するまでの時間をΔT2[sec]としたとき、次式:ΔT2>1…(2)を満たすように、前記記録媒体の両面に画像を記録することを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録方法を提供する。
【0023】
請求項8に係る発明によれば、上式(2)を満たすようにして、記録媒体の両面に画像を記録することにより、表面に打滴されたインクが乾燥する前に部材に接触するのを防止することができる。これにより、部材にインクが転写されたり、インクが擦れたりして、画質が劣化するのを防止できる。
【0024】
請求項9に係る発明は、前記目的を達成するために、前記記録媒体に吐出するインクの粘度η[mPa・sec]を検出し、検出された粘度η[mPa・sec]に基づいて、前記式(1)を満たすように、前記時間ΔT1[sec]を調整することを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録方法を提供する。
【0025】
請求項9に係る発明によれば、記録媒体に吐出するインクの粘度η[mPa・sec]を検出し、検出された粘度η[mPa・sec]に応じて、式(1)を満たすように、時間ΔT1[sec]が調整される。これにより、インクの粘度η[mPa・sec]が変化した場合であっても常に良好な画質の画像を記録することができる。
【0026】
請求項10に係る発明は、前記目的を達成するために、前記インクの粘度η[mPa・sec]は、前記記録媒体に吐出するインクの温度t[℃]を検出し、検出されたインクの温度t[℃]から算出することを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録方法を提供する。
【0027】
請求項10に係る発明によれば、記録媒体に吐出するインクの温度t[℃]を検出し、検出されたインクの温度t[℃]に基づいて、インクの粘度η[mPa・sec]が検出される。
【0028】
請求項11に係る発明は、前記目的を達成するために、前記記録媒体に吐出するインクの粘度η[mPa・sec]を調整して、前記式(1)を満たすように、前記記録媒体の両面に画像を記録することを特徴とする請求項7、8、9又は10に記載のインクジェット記録方法を提供する。
【0029】
請求項11に係る発明によれば、時間ΔT1[sec]が、式(1)を満たすように、インクの粘度η[mPa・sec]が調整される。
【0030】
請求項12に係る発明は、前記目的を達成するために、前記記録媒体に吐出するインクの温度t[℃]を調整して、記録媒体に吐出するインクの粘度η[mPa・sec]を調整することを特徴とする請求項11に記載のインクジェット記録方法を提供する。
【0031】
請求項12に係る発明によれば、記録媒体に吐出するインクの温度t[℃]を調整することにより、記録媒体に吐出するインクの粘度η[mPa・sec]が調整される。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係るインクジェット記録装置及び方法によれば、記録媒体に生じるヨレを防止して、良好な画質の画像を記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係るインクジェット記録装置及び方法を実施するための最良の形態について説明する。
【0034】
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の第1の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【0035】
このインクジェット記録装置10は、記録媒体の表裏両面に記録が可能なインクジェット記録装置であり、主として、記録媒体を搬送する記録用搬送部14と、その記録用搬送部14によって搬送される記録媒体にインクを吐出して画像を記録する記録部16と、記録媒体の表裏を反転する反転部18とで構成されている。
【0036】
記録用搬送部14は、記録媒体としての記録用紙(本実施の形態では普通紙)12を所定の記録用搬送経路に沿って水平に搬送する。この記録用搬送部14は、主として、記録用紙12を搬送する無端状の記録用搬送ベルト20と、その記録用搬送ベルト20が巻き掛けられる一対のガイドローラ22、22と、ガイドローラ22を回転駆動する搬送用モータ(不図示)とで構成されている。
【0037】
一対のガイドローラ22、22は、所定の間隔をもって水平に設置されている。無端状の記録用搬送ベルト20は、この一対のガイドローラ22、22に巻き掛けられることにより、所定位置に水平に設置され、その上面(搬送面)に水平な記録用搬送経路を形成する。
【0038】
搬送用モータは、正逆回転可能に構成されており、一方のガイドローラ22に連結されている。ガイドローラ22は、この搬送用モータに駆動されて、正方向又は逆方向に回転する。そして、このガイドローラ22が正方向又は逆方向に回転することにより、記録用搬送ベルト20が正方向(図1においてD1方向)又は逆方向(図1においてD2方向)に走行し、その記録用搬送ベルト20の搬送面上に載置された記録用紙12が、正方向(D1方向)又は逆方向(D2方向)に搬送される。
【0039】
なお、この記録用搬送部14には、図示しない給紙部から記録用紙12が給紙され、記録完了後の記録用紙12は、図示しない排紙部に排紙される。
【0040】
記録部16は、記録用搬送部14によって水平に搬送される記録用紙12に対して記録ヘッド26からインクを吐出させて、記録用紙12に画像を記録する。
【0041】
記録ヘッド26は、いわゆるフルライン型の記録ヘッドで構成されている。すなわち、記録用紙12と対向する面(吐出面)に記録用紙12の幅方向にわたって多数のノズルを有する記録ヘッドで構成されている。
【0042】
ノズルは、記録ヘッド26から吐出するインクの色ごとに設けられており、一色で記録する記録ヘッドの場合には、一色のノズルが設けられている。また、カラー記録する記録ヘッドの場合には、複数色(たとえば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色)のノズルが設けられている。
【0043】
記録用紙12は、この記録ヘッド26の下部を通過する過程で記録ヘッド26のノズルからインクが吐出されて、その記録面(上側を向いている面)に所定の画像が記録される。
【0044】
図2は、記録ヘッド26の要部の構成を示す縦断面図である。
【0045】
上記のように、記録ヘッド26は、フルライン型の記録ヘッドで構成されており、その吐出面には、記録用紙12の記録面上に形成される画像の最大記録幅に対応する長さに渡って多数の吐出口(ノズル)51が形成されている。
【0046】
図2に示すように、記録ヘッド26には、このノズル51に連通する圧力室52がノズル51ごとに設けられている。圧力室52の一端には、供給口54が形成されており、圧力室52は、供給口54を介して共通流路55に連通されている。共通流路55には、図示しないインクタンクが連通されており、このインクタンクから共通流路55にインクが供給される。そして、この共通流路55から圧力室52にインクが供給される。
【0047】
圧力室52の天井面は、振動板56で構成されており、振動板56上の圧力室52に対応する位置には圧電素子58が設けられている。圧電素子58の上面には、個別電極57が設けられている。なお、本実施の形態では、振動板56が導電材料で構成され、圧電素子58に対する共通電極を兼ねている。
【0048】
以上の構成により、圧電素子58に駆動電圧が印加されると、圧電素子58の変位に応じて圧力室52内のインクが加圧され、ノズル51から液滴が吐出される。吐出後、共通流路55から圧力室52にインクが供給される。
【0049】
なお、本実施の形態では、圧電素子58を利用して吐出を行う圧電方式の記録ヘッドを例示したが、本発明の実施に際しては、これに限定されず、たとえば、ヒータに代表される電気熱変換素子を利用して吐出を行うサーマル方式の記録ヘッドや、その他各種方式の記録ヘッドを用いることができる。
【0050】
なお、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、この記録ヘッド26が、記録用紙12の搬送方向に沿って移動可能に設けられている。すなわち、記録ヘッド26は、記録用紙12の搬送方向に沿って水平に配設された図示しない一対のガイドシャフトに摺動自在に支持されており、このガイドシャフトに沿って移動させることにより、その設置位置を所定の範囲内で任意に変えられるようにされている。
【0051】
この記録ヘッド26の移動は、図示しない駆動手段によって行われ、この駆動手段に駆動されることにより、記録ヘッド26は、記録用紙12の搬送方向に沿って水平に移動する。
【0052】
駆動手段の構成としては、たとえば、ガイドシャフトに沿ってネジ棒を配設するとともに、このネジ棒にナット部材を螺合させ、そのナット部材に記録ヘッド26を連結する。そして、ネジ棒をモータで回転させることにより、記録ヘッド26をガイドシャフトに沿って移動させる。また、たとえば、一対のプーリに駆動ベルトを巻き掛けて、駆動ベルトをガイドシャフトと平行に配設し、その駆動ベルトに記録ヘッド26を連結する。そして、モータでプーリを回転させることにより、駆動ベルトを走行させて、記録ヘッド26をガイドシャフトに沿って移動させる。
【0053】
このように、記録ヘッド26を記録用紙12の搬送方向に沿って移動可能にすることにより、記録用紙12の表面側の領域にインクを打滴後、裏面側の対応領域にインクが打滴されるまでの時間ΔT1[sec]を調整できる。
【0054】
反転部18は、記録部16で表面側の記録が完了した記録用紙12の表裏を反転させる。この反転部18は、記録用搬送部14に連続して設けられており、反転用の搬送経路を形成する無端状の反転用搬送ベルト28と、その反転用搬送ベルト28が巻き掛けられる反転用ガイドローラ30A〜30Cと、反転用搬送ベルト28によって搬送される記録用紙12を押さえる反転用押さえローラ32A〜32Dと、図示しない搬送ガイドと、反転用ガイドローラ30Cを回転駆動する反転用モータ(不図示)とで構成されている。
【0055】
反転用ガイドローラ30A〜30Bは、小径の第1反転用ガイドローラ30Aと、中径の第2反転用ガイドローラ30Bと、大径の第3反転用ガイドローラ30Cとで構成されており、それぞれ記録用搬送ベルト20の搬送面の延長線上に所定の間隔をもって配置されている。反転用搬送ベルト28は、この段階的に径が大きくなる反転用ガイドローラ30A〜30Bに巻き掛けられることにより、記録用搬送部14の水平な搬送経路に連続してループ状の反転用搬送経路を形成する。
【0056】
反転用押さえローラ32A〜32Dは、反転用搬送経路の入口部に設置される第1反転用押さえローラ32Aと、その第1反転用押さえローラ32Aの後段に設置される第2反転用押さえローラ32Bと、第2反転用押さえローラ32Bの後段に設置される第3反転用押さえローラ32Cと、第3反転用押さえローラ32Cの後段に設置される第4反転用押さえローラ32Dとで構成されている。
【0057】
第1反転用押さえローラ32Aは、反転用搬送ベルト28を挟んで第1反転用ガイドローラ30Aと対向する位置に配置されており、記録用搬送経路から送り出された記録用紙12を反転用搬送ベルト28に押さえつけて、反転用搬送経路上を搬送されるようにガイドする。
【0058】
第2反転用押さえローラ32Bは、反転用搬送ベルト28を挟んで第2反転用ガイドローラ30Bと対向する位置に配置されており、記録用紙12を反転用搬送ベルト28に押さえつけて、反転用搬送経路上を搬送されるようにガイドする。
【0059】
第3反転用押さえローラ32Cは、反転用搬送ベルト28を挟んで第3反転用ガイドローラ30Cと対向する位置に配置されており、記録用紙12を反転用搬送ベルト28に押さえつけて、反転用搬送経路上を搬送されるようにガイドする。
【0060】
第4反転用押さえローラ32Dは、反転用搬送ベルト28を挟んで第2反転用ガイドローラ30Bと対向する位置に配置されており、記録用紙12を反転用搬送ベルト28に押さえつけて、反転用搬送経路から記録用搬送経路に搬送されるようにガイドする。
【0061】
反転用モータは、第3反転用ガイドローラ30Cを回転駆動する。反転用搬送ベルト28は、この第3反転用ガイドローラ30Cが回転駆動されることにより、時計回りの方向に回転走行する。そして、この反転用搬送ベルト28が回転走行することにより、その反転用搬送ベルト28上に載置された記録用紙12が、ループ状の反転用搬送経路に沿って搬送され、その搬送過程で表裏が反転される。
【0062】
以上のように構成された本実施の形態のインクジェット記録装置10による画像記録の処理は次のように行われる。
【0063】
まず、図示しない搬送用モータと反転用モータとが駆動され、ガイドローラ22が正方向に回転駆動されるとともに、反転用ガイドローラ30Cが時計回りの方向に回転駆動される。これにより、記録用搬送ベルト20が正方向(図1においてD1方向)に回転走行するとともに、反転用搬送ベルト28が時計回りの方向に回転走行する。
【0064】
次に、図示しない給紙部から記録用搬送ベルト20上に記録用紙12が給紙される。記録用搬送ベルト20上に給紙された記録用紙12は、この正方向に走行する記録用搬送ベルト20によって正方向に所定の搬送速度で水平に搬送される。そして、その搬送過程で記録ヘッド26から記録面(この場合、記録用紙12の表面)にインクが吐出されて、表面に画像が記録される。すなわち、記録ヘッド26の下部を通過する際、記録ヘッド26の吐出面に設けられたノズルから記録面(表面)にインクが吐出されて、表面に画像が記録される。
【0065】
表面に画像が記録された記録用紙12は、そのまま搬送ベルト20によって水平に搬送されて、反転部18に導かれる。すなわち、第1反転用押さえローラ32Aと反転用搬送ベルト28との間に導かれる。
【0066】
第1反転用押さえローラ32Aと反転用搬送ベルト28との間に導かれた記録用紙12は、各反転用押さえローラ32A〜32Dによって表面側を押さえられながら、走行する反転用搬送ベルト28によって反転用搬送経路を所定の搬送速度で搬送される。そして、その反転用搬送経路を搬送される過程で表裏が反転され、再度、記録用搬送ベルト20の搬送面上に導かれる。
【0067】
ここで、この記録用搬送ベルト20は、記録用紙12が反転用搬送路を搬送されている間に走行方向が逆転される。すなわち、記録用紙12が反転用搬送路に完全に受け渡されると、搬送用モータによってガイドローラ22が逆方向に回転駆動され、この結果、走行方向が逆転して、逆方向(図1においてD2方向)に走行する。
【0068】
したがって、反転用搬送経路から記録用搬送ベルト20の搬送面上に導かれた記録用紙12は、そのまま記録用搬送ベルト20によって逆方向に所定の搬送速度で水平に搬送される。そして、その搬送過程で記録ヘッド26から記録面(この場合、記録用紙12の裏面)にインクが吐出されて、裏面に画像が記録される。すなわち、記録ヘッド26の下部を通過する際、記録ヘッド26の吐出面に設けられたノズルから記録面(裏面)にインクが吐出されて、裏面に画像が記録される。
【0069】
裏面に画像が記録された記録用紙12は、そのまま搬送ベルト20によって水平に搬送されて、図示しない排紙部に導かれ、排紙部から排紙される。
【0070】
このように、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、記録用紙12を自動的に反転することにより、記録用紙12の両面に画像を記録しているが、この際、次の条件を満たすように、両面記録を行っている。
【0071】
すなわち、記録用紙12の表面側の領域にインクが打滴されてから、裏面側の対応領域(換言すれば、表面側のある領域の真裏の領域)にインクが打滴されるまでの時間をΔT1[sec]、記録用紙12に吐出するインクの粘度をη[mPa・sec]としたとき、次式:ΔT1<0.45×η…(1)を満たすように、記録用紙12の両面に画像を記録している。
【0072】
このインクの打滴時間差の制御は、次のように行われる。すなわち、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、記録ヘッド26が記録用搬送経路に沿って移動可能に設けられていることから、表面の記録完了後、必要に応じて、記録ヘッド26を水平移動させ、上式(1)を満足するように、裏面側の記録を行う。たとえば、打滴時間差を短くする場合には、記録ヘッド26を位置P1に設定して、記録用紙12の表面側を記録し、表面側の記録完了後、記録ヘッド26を位置P2に移動させて、裏面側の記録を行う。これにより、打滴時間差を短くすることができる。
【0073】
このように、上式(1)を満足するように、インクの打滴時間差を制御して、両面記録を行うことにより、表面に打滴したインクの溶媒成分が、記録用紙12に浸透して、局所的にヨレが生じる前に裏面側の対応領域にインクを打滴することができるので、インクの形状が真円から崩れるのを防止することができ、記録用紙12の両面に良好な画質の画像を記録することができる。
【0074】
また、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、次の条件を満たすように、記録用紙12の両面に画像の記録を行っている。
【0075】
すなわち、記録用紙12の表面側の領域にインクを打滴後、その領域が何らかの部材に接触するまでの時間をΔT2[sec]としたとき、次式:ΔT2>1…(2)を満たすように、記録用紙12の両面に画像を記録している。
【0076】
本実施の形態のインクジェット記録装置10では、記録用紙12の表面側の領域にインクを打滴後、その領域が最初に接触する部材は、第1反転用押さえローラ32Aであるので、インク打滴後、この第1反転用押さえローラ32Aに接触するまでの時間ΔT2[sec]が1[sec]より長くなるように設定されている。
【0077】
ここで、この記録用紙12の表面に打滴されたインクが第1反転用押さえローラ32Aに接触するまでの時間の制御は、たとえば、次のように行われる。すなわち、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、記録ヘッド26が記録用搬送経路に沿って移動可能に設けられていることから、この記録ヘッド26の設置位置を調整することにより、インク打滴後の記録用紙12が第1反転用押さえローラ32Aに接触するまでの時間ΔT2[sec]を制御する。より詳しくは、記録ヘッド26のノズルから第1反転用押さえローラ32Aまでの距離をL2[cm]とし、記録用紙12の搬送速度をS[cm/sec]としたとき、L2/S>1を満たすように記録ヘッド26を設置する。
【0078】
これにより、記録用紙12の表面に打滴されたインクが完全に乾燥する前に第1反転用押さえローラ32Aに接触するのを防止できる。すなわち、打滴されたインクが完全に乾いてから第1反転用押さえローラ32Aに接触させることができる。この結果、記録用紙12の表面に打滴されたインクが第1反転用押さえローラ32Aに転写して、第1反転用押さえローラ32Aの表面が汚れたり、インクが擦れたりして、記録画像の画質が劣化するのを防止することができる。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、記録用紙12の両面に画像を記録するに際して、上式(1)、(2)を満足するように、インクの打滴時間差、及び、第1反転用押さえローラ32Aに接触するまでの時間を制御することにより、裏面記録時にインクの形状が真円から崩れるのを防止できるとともに、インクの擦れや接触部材へのインクの転写を防止でき、記録用紙12の両面に良好な画質の画像を記録することができる。
【0080】
なお、上記実施の形態では、インクの打滴時間差を制御する方法として、表面側の記録完了後、必要に応じて、記録ヘッド26を移動させる方法を採用しているが、インクの打滴時間差を制御する方法は、これに限定されるものではない。たとえば、この他、反転用搬送経路を搬送される記録用紙12の搬送速度を制御して、インクの打滴時間差を制御するようにしてもよい。
【0081】
また、上記実施の形態では、記録用紙12の表面に打滴されたインクが第1反転用押さえローラ32Aに接触するまでの時間を制御する方法として、記録ヘッド26の設置位置を変える方法を採用しているが、記録用紙12の表面に打滴されたインクが第1反転用押さえローラ32Aに接触するまでの時間を制御する方法は、これに限定されるものではない。たとえば、記録用搬送路を搬送される記録用紙12の搬送速度を調整して、記録用紙12の表面に打滴されたインクが第1反転用押さえローラ32Aに接触するまでの時間を制御するようにしてもよい。
【0082】
また、記録用紙12の表面側の記録の完了後、待機時間を設けて、第1反転用押さえローラ32Aに接触するまでの時間を制御してもよい。この場合、記録ヘッド26のノズルから第1反転用押さえローラ32Aまでの距離L2が、記録用紙12の搬送方向の長さHより長くなるように設定する(L2>H)。これにより、記録用紙12の表面側の記録完了後、記録用搬送ベルト20の走行を停止させて、待機時間を設けることができ、第1反転用押さえローラ32Aに接触するまでの時間を任意に調整することができる。
【0083】
したがって、好ましい態様としては、記録ヘッド26のノズルから第1反転用押さえローラ32Aまでの距離L2が、記録用紙12の搬送方向の長さHより長くなる位置に記録ヘッド26を設置して、表面側の記録を行い、その表面側の記録完了後、記録用搬送ベルト20の走行を停止させて、上式(2)を満足するまで、記録用紙12を待機させる。その後、記録用紙12を反転用搬送路に導き、記録用紙12の表裏を反転させる一方、必要に応じて記録ヘッド26を移動させて、上式(1)を満足するような打滴を行う。
【0084】
なお、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、第1反転用押さえローラ32Aが、表面記録後の記録用紙12に最初に接触する部材に相当するが、第1反転用押さえローラ32Aを次のように構成することにより、第2反転用押さえローラ32Bを最初に接触する部材にすることができる。すなわち、図3に示すように、第1反転用押さえローラ32Aが、記録用紙12の両端に設定された非記録領域(インクが打滴されない領域)にのみ接触する構成とする。これにより、第1反転用押さえローラ32Aは、表面記録後に最初に接触する部材ではなくなり、第2反転用押さえローラ32Bが最初に接触する部材になる。第2反転用押さえローラ32Bも同様な構成にすることにより、第3反転用押さえローラ32Cを最初に接触する部材にすることができる。
【0085】
このように、反転用押さえローラの構成を記録用紙12の非記録領域にのみ接触する構成とすることにより、記録用紙12の表面が最初に反転用押さえローラに接触する位置を調整することができる。そして、この最初に反転用押さえローラに接触する位置を調整することにより、表面記録後の記録用紙12の表面が、最初に反転用押さえローラに接触するまでの時間を調整することができる。
【0086】
また、反転用押さえローラ32A、32B等を交換可能な形態とし、搬送速度を可変とし、搬送速度によって、反転用押さえローラ32A、32Bなどを通常のローラ(記録用紙12の表面のインクが打滴された領域も接触するようなローラ)と、図3に示したような、非記録領域にのみ接触するローラのうち、適切な方を取り付けるという態様もある。通常のローラは、記録用紙12の主走査方向ほぼ全面と接触するため、記録用紙12の搬送安定性がよいという利点があるので、上記の態様を採った場合には、通常のローラを用いても上式(2)を満足する場合は、反転用ローラに通常のローラを使用し、上式(2)を満足しない場合にのみ、非記録領域にのみ接触するローラを使用することが可能になる。
【0087】
図4は、本発明に係るインクジェット記録装置の第2の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【0088】
本実施の形態のインクジェット記録装置100は、二つの記録ヘッドを用いて記録媒体の表裏両面に画像を記録する。すなわち、表面用記録ヘッド102Aによって記録用紙12の表面側に画像を記録し、裏面用記録ヘッド102Bによって記録用紙12の裏面側に画像を記録する。
【0089】
また、記録ヘッドの構成自体は上述した第1の実施の形態の記録ヘッドと同じである。したがって、その構成についての説明は省略する。
【0090】
記録用紙12は、複数のガイドローラ及び押さえローラで形成される所定の搬送経路104(図中破線部)に沿って搬送され、その搬送過程で表面用記録ヘッド102Aと裏面用記録ヘッド102Bによって、その表裏両面に画像が記録される。
【0091】
なお、図4は、主要なガイドローラ106A〜106Cのみ図示している。
【0092】
第1のガイドローラ(以下、第1ガイドローラという)106Aは、表面用記録ヘッド102Aに対向して設けられている。図示しない給紙部から給紙された記録用紙12は、この第1ガイドローラ106Aに巻き掛けられて搬送される過程で、その表面に表面用記録ヘッド102Aからインクが吐出されて、表面に画像が記録される。
【0093】
第2のガイドローラ(以下、第2ガイドローラという)106Bは、反転用のガイドローラである。表面用記録ヘッド102Aによって、その表面に画像が記録された記録用紙12は、この第2ガイドローラ106Bに巻き掛けられながら搬送されることにより、その表裏が反転される。
【0094】
なお、本実施の形態のインクジェット記録装置100では、この第2ガイドローラ106Bが、表面記録後の記録用紙12の表面に最初に接触する部材となる。
【0095】
第3のガイドローラ(以下、第3ガイドローラという)106Cは、裏面用記録ヘッド102Bに対向して設けられている。第2ガイドローラ106Bによって、表裏が反転された記録用紙12は、この第3ガイドローラ106Cに巻き掛けられて搬送される過程で、その裏面に裏面用記録ヘッド102Bからインクが吐出されて、裏面に画像が記録される。
【0096】
なお、裏面用記録ヘッド102Bは、第3ガイドローラ106Cの回転軸を中心として揺動可能に設けられており、そのインクの吐出位置を調整できるようにされている。すなわち、第3ガイドローラ106Cに巻き掛けられて搬送される記録用紙12の搬送面に沿って移動可能に設けられており、その設置位置を変えることにより、インクの吐出位置を調整できるようにされている。
【0097】
なお、このように裏面用記録ヘッド102Bを揺動可能に支持する方法としては、たとえば、第3ガイドローラ106Cの回転軸を中心として揺動自在に設けられたアームに支持させる方法を採ることができる。この場合、アームをモータやシリンダ等で駆動して揺動させることにより、所望の位置に裏面用記録ヘッド102Bを移動させる。
【0098】
裏面用記録ヘッド102Bによって裏面に画像が記録された記録用紙12は、そのまま図示しない排紙部に搬送されて、排紙部から排紙される。
【0099】
なお、各ガイドローラ106A〜106Cには、図示しないモータが連結されており、このモータを駆動することにより、各ガイドローラ106A〜106Cが回転(第1ガイドローラ106Aは時計回りの方向に回転、第2ガイドローラ106Bと第3ガイドローラ106Cは反時計回りの方向に回転)して、記録用紙12が搬送される。
【0100】
以上のように構成された本実施の形態のインクジェット記録装置100による画像記録の処理は次のように行われる。
【0101】
まず、図示しないモータが駆動されて、第1ガイドローラ106Aが時計回りの方向に回転駆動されとともに、第2ガイドローラ106Bと第3ガイドローラ106Cは反時計回りの方向に回転駆動される。
【0102】
次に、図示しない給紙部から搬送経路104上に記録用紙12が給紙される。記録用搬送ベルト20上に給紙された記録用紙12は、この搬送経路104上を搬送され、その搬送過程で表面用記録ヘッド102Aから記録面(この場合、記録用紙12の表面)にインクが吐出されて、表面に画像が記録される。すなわち、第1ガイドローラ104Aに巻き掛けられて、表面用記録ヘッド102Aの下部を通過する際、その表面用記録ヘッド102Aの吐出面に設けられたノズルから記録面(表面)にインクが吐出されて、表面に画像が記録される。
【0103】
表面に画像が記録された記録用紙12は、そのまま搬送経路104上を搬送されて、反転用の第2ガイドローラ106Bに導かれる。そして、その反転用の第2ガイドローラ106Bに巻き掛けられながら搬送されて、表裏が反転される。
【0104】
表裏が反転された記録用紙12は、そのまま搬送経路104上を搬送されて、第3ガイドローラ106Cに導かれる。そして、その第3ガイドローラ106Cに巻き掛けられて搬送される過程で裏面用記録ヘッド102Bの吐出面に設けられたノズルから記録面(裏面)にインクが吐出されて、裏面に画像が記録される。
【0105】
裏面に画像が記録された記録用紙12は、そのまま搬送経路104上を搬送されて、図示しない排紙部に導かれ、排紙部から排紙される。
【0106】
このように、本実施の形態のインクジェット記録装置100は、表面用記録ヘッド102Aと裏面用記録ヘッド102Bの二つの記録ヘッドを用いて記録用紙12の表裏両面に画像を形成するが、上記第1の実施の形態のインクジェット記録装置10と同様、所定の条件を満たすように、両面記録を行っている。
【0107】
すなわち、記録用紙12の表面側の領域にインクが打滴されてから、裏面側の対応領域にインクが打滴されるまでの時間をΔT1[sec]、記録用紙12に吐出するインクの粘度をη[mPa・sec]としたとき、次式:ΔT1<0.45×η…(1)を満たすように、記録用紙12の両面に画像を記録している。
【0108】
また、記録用紙12の表面側の領域にインクを打滴後、その領域が何らかの部材に接触するまでの時間をΔT2[sec]としたとき、次式:ΔT2>1…(2)を満たすように、
記録用紙12の両面に画像を記録している。
【0109】
ここで、上式(1)を満たすためのインクの打滴時間差の制御は、次のように行われる。
【0110】
すなわち、本実施の形態のインクジェット記録装置100では、裏面用記録ヘッド102Bが記録用紙12の搬送経路104に沿って移動可能に設けられていることから、記録用紙12を所定の搬送速度で搬送した際、上式(1)を満足する位置に裏面用記録ヘッド102Bを設置し、裏面側の記録を行う。たとえば、打滴時間差を短くする場合には、裏面用記録ヘッド102Bを記録用紙12の搬送方向上流側に移動させて、裏面側の記録を行う。逆に長くする場合は、裏面用記録ヘッド102Bを搬送方向下流側に移動させて、裏面側の記録を行う。これにより、打滴時間差を任意に調整することができる。
【0111】
このように、上式(1)を満足するように、インクの打滴時間差を制御して、両面記録を行うことにより、表面に打滴したインクの溶媒成分が、記録用紙12に浸透して、局所的にヨレが生じる前に裏面側の対応領域にインクを打滴することができるので、インクの形状が真円から崩れるのを防止することができ、記録用紙12の両面に良好な画質の画像を記録することができる。
【0112】
また、上式(2)を満たすための制御は、次のように行われる。
【0113】
すなわち、本実施の形態のインクジェット記録装置100では、記録用紙12の表面側の領域にインクを打滴後、その領域が最初に接触する部材は、第2ガイドローラ106Bであるので、インク打滴後、この第2ガイドローラ106Bに接触するまでの時間ΔT2[sec]が1[sec]より長くなるように設定されている。
【0114】
これは、たとえば、表面用記録ヘッド102Aのノズルから第2ガイドローラ106Bまでの距離をL2[cm]とし、記録用紙12の搬送速度をS[cm/sec]としたとき、L2/S>1を満たすように、表面用記録ヘッド102Aと第2ガイドローラ106Bを設置することにより行われる。あるいは、記録用紙12の搬送速度を調整することにより行われる。
【0115】
このように、上式(2)を満たすように、インク打滴後の表面に接触するまでの時間を制御することにより、記録用紙12の表面に打滴されたインクが完全に乾燥する前に第2ガイドローラ106Bに接触するのを防止できる。これにより、記録用紙12の表面に打滴されたインクが第2ガイドローラ106Bに転写して、第2ガイドローラ106Bの表面が汚れたり、インクが擦れたりして、記録画像の画質が劣化するのを防止することができる。
【0116】
以上説明したように、本実施の形態のインクジェット記録装置100では、記録用紙12の表裏両面に画像を記録するに際して、上式(1)、(2)を満足するように、インクの打滴時間差、及び、インク打滴後に第2ガイドローラ106Bに接触するまでの時間を制御することにより、裏面記録時にインクの形状が真円から崩れるのを防止できるとともに、インクの擦れや接触部材へのインクの転写を防止でき、記録用紙12の両面に良好な画質の画像を記録することができる。
【0117】
なお、上記実施の形態では、インクの打滴時間差を制御する方法として、裏面用記録ヘッド102Bの設置位置を調整する方法を採用しているが、インクの打滴時間差を制御する方法は、これに限定されるものではない。たとえば、この他、搬送経路104を搬送される記録用紙12の搬送速度を制御して、インクの打滴時間差を制御するようにしてもよい。
【0118】
また、上記実施の形態では、記録用紙12の表面に打滴されたインクが第2ガイドローラ106Bに接触するまでの時間を制御する方法として、表面用記録ヘッド102Aと第2ガイドローラ106Bとの間の距離を調整する方法を採用しているが、記録用紙12の表面に打滴されたインクが第2ガイドローラ106Bに接触するまでの時間を制御する方法は、これに限定されるものではない。たとえば、記録用搬送路を搬送される記録用紙12の搬送速度を調整して、記録用紙12の表面に打滴されたインクが第2ガイドローラ106Bに接触するまでの時間を制御するようにしてもよい。
【0119】
また、記録用紙12の表面側の記録の完了後、待機時間を設けて、第2ガイドローラ106Bに接触するまでの時間を制御してもよい。この場合、表面用記録ヘッド106のノズルから第2ガイドローラ106Bまでの距離L2が、記録用紙12の搬送方向の長さHより長くなるように、表面用記録ヘッド102Aと第2ガイドローラ106Bを設定する(L2>H)。これにより、記録用紙12の表面側の記録完了後、記録用紙12の搬送を停止させて、待機時間を設けることができ、第2ガイドローラ106Bに接触するまでの時間を任意に調整することができる。
【0120】
したがって、好ましい態様としては、表面用記録ヘッド102Aのノズルから第2ガイドローラ106Bまでの距離L2が、記録用紙12の搬送方向の長さHより長くなるように表面用記録ヘッド102Aと第2ガイドローラ106Bを設置して、表面側の記録を行い、その表面側の記録完了後、記録用紙12の搬送を停止させて、上式(2)を満足するまで、記録用紙12を待機させる。その後、記録用紙12を第2ガイドローラ106Bに導き、記録用紙12の表裏を反転させた後、裏面用記録ヘッド102Bで上式(1)を満足するような打滴を行う。
【0121】
なお、本実施の形態のインクジェット記録装置100では、第2ガイドローラ106Bが、表面記録後の記録用紙12に最初に接触する部材に相当するが、上記第1の実施の形態と同様、図3に示すような構成にすることにより、これを回避することができる。すなわち、第2ガイドローラ106Bが、記録用紙12の両端に設定された非記録領域にのみ接触するような構成とすることにより、次に記録用紙12の表面に接触する部材をインク打滴後最初に記録用紙12の表面に接触する部材にすることができる。
【0122】
また、反転用押さえローラ32A、32B等を交換可能な形態とし、搬送速度を可変とし、搬送速度によって、反転用押さえローラ32A、32Bなどを通常のローラ(記録用紙12の表面のインクが打滴された領域も接触するようなローラ)と、図3に示したような、非記録領域にのみ接触するローラのうち、適切な方を取り付けるという態様もある。通常のローラは、記録用紙12の主走査方向ほぼ全面と接触するため、記録用紙12の搬送安定性がよいという利点があるので、上記の態様を採った場合には、通常のローラを用いても上式(2)を満足する場合は、反転用ローラに通常のローラを使用し、上式(2)を満足しない場合にのみ、非記録領域にのみ接触するローラを使用することが可能になる。
【0123】
また、本実施の形態のインクジェット記録装置100では、二つの記録ヘッドを用いて記録用紙の両面に画像を記録しているが、二つの記録ヘッドを用いて記録用紙の両面に画像を記録する構成は、これに限定されるものではない。
【0124】
また、上記一連の実施の形態では、記録ヘッドにフルライン型の記録ヘッドを用いているが、いわゆるシャトル型の記録ヘッドを用いることもできる。
【0125】
シャトル型の記録ヘッドの場合、記録ヘッドが記録用紙の搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に往復動可能に設けられており、記録ヘッドの往復移動と、記録用紙の所定ピッチごとの搬送とを繰り返しながら、記録ヘッドから選択的にインクを吐出させて、記録用紙に画像を記録する。具体的には、次のようにして、画像の記録が行われる。
【0126】
図5に示すように、記録用紙12の描画領域をS1、S2、S3、…と分割して考える。
【0127】
まず、領域S1が、副走査方向において、記録ヘッドXの主走査方向走査場所(図の斜線部)S0まで搬送されると、記録用紙12の搬送が一旦停止される。そして、この停止した記録用紙12に対して記録ヘッドXが主走査方向に移動して、領域S1の記録が行われる。
【0128】
領域S1の記録が完了すると、再び記録用紙12が副走査方向に搬送され、次の領域S2が主走査方向走査場所S0まで搬送されると、再度、記録用紙12の搬送が一旦停止される。そして、この停止した記録用紙12に対して記録ヘッドXが主走査方向に移動して、領域S2の記録が行われる。
【0129】
以下、同様の動作を繰り返して、全領域の記録が行われる。
【0130】
ただし、インクを打滴する画素が存在しない領域(以下、空白領域という)については、その空白領域が主走査方向走査場所S0に搬送されても、記録用紙12の搬送は停止されず、次の描画領域が搬送されるまで記録用紙12が搬送される。図5に示す例では、領域S4が空白領域に相当し、この領域S4が主走査方向走査場所S0まで搬送されても、記録用紙12の搬送は停止せず、次の領域S5が主走査方向走査場所S0まで搬送されるまで、記録用紙12は搬送される。
【0131】
したがって、シャトル型の記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置の場合、ある領域(画素)を打滴してから、その領域が最初の接触部材(ローラ等)と接触するまでの時間ΔT2[sec]は、その後の打滴パターンに依ることとなる。すなわち、空白領域がない
ときに、ある領域を打滴してから、その領域が最初の接触部材に接触するまでの時間をΔT20[sec]とすると、空白領域が存在する場合には、ΔT2[sec]は、ΔT20[sec]よりも短くなる。
【0132】
したがって、そのような画像において、ΔT2<1となる場合には、記録用紙12が最初の接触部材と接する前に、搬送を一旦停止して待機し、ΔT2>1となるようにしてから、記録用紙12が最初の接触部材と接触するようにする。
【0133】
これにより、記録用紙12の表面に打滴されたインクが接触部材に転写して、接触部材の表面が汚れたり、インクが擦れたりして、記録画像の画質が劣化するのを防止することができる。
【0134】
なお、以上は、いわゆるシングリング無しの場合であるが、シングリングありの場合も同様に考えることができる。
【0135】
ここで、シングリングとは、次のような打滴を行う記録方式をいう。
【0136】
図6に示すように、まず、領域S1aが、副走査方向において、記録ヘッドXの主走査方向走査場所(図の斜線部)S0まで搬送されると、記録用紙12の搬送が一旦停止される。そして、この停止した記録用紙12に対して記録ヘッドXが主走査方向に移動して、領域S1aにおける斜線ドットの記録が行われる。
【0137】
領域S1aにおける斜線ドットの記録が完了すると、再び記録用紙12が副走査方向に搬送され、領域S1bが主走査方向走査場所S0まで搬送されると、再度、記録用紙12の搬送が一旦停止される。そして、この停止した記録用紙12に対して記録ヘッドXが主走査方向に移動して、領域S1bにおける黒塗りドットの記録が行われる。なお、斜線ドットと黒塗りドットは同一色である。
【0138】
領域S1bにおける黒塗りドットの記録が完了すると、再び記録用紙12が副走査方向に搬送され、領域S2aが主走査方向走査場所S0まで搬送されると、再度、記録用紙12の搬送が一旦停止される。そして、この停止した記録用紙12に対して記録ヘッドXが主走査方向に移動して、領域S2aにおける斜線ドットの記録が行われる。
【0139】
以下、同様の動作を繰り返して、全領域の記録が行われる。
【0140】
このような打滴を行うことをシングリングという。これにより、主走査方向同一領域のドットを異なる複数(上記の説明では2つ)のノズルで打滴することになり、各ノズルからの吐出方向不良に起因したスジムラを低減させることができる。
【0141】
このようなシングリングを行う場合も、空白領域については、記録動作は行われず、紙送りのみが行われる。すなわち、空白領域が存在する場合、その空白領域が記録ヘッドXの主走査方向走査場所S0に搬送されても、記録用紙12の搬送は停止されず、次の描画領域が搬送されるまで記録用紙12が搬送される。図6に示す例では、領域S3a、S4bが空白領域に相当し、この領域S3a、S4bが主走査方向走査場所S0まで搬送されても、記録用紙12の搬送は停止せず、次の領域S3b、S5aが主走査方向走査場所S0まで搬送されるまで、記録用紙12は搬送される。
【0142】
したがって、シングリングありの場合も、ある領域(画素)を打滴してから、その領域が最初の接触部材(ローラ等)と接触するまでの時間ΔT2[sec]は、その後の打滴パターンに依ることとなる。
【0143】
すなわち、空白領域がないときに、ある領域を打滴してから、その領域が最初の接触部材に接触するまでの時間をΔT20[sec]とすると、空白領域が存在する場合には、ΔT2[sec]は、ΔT20[sec]よりも短くなる。
【0144】
したがって、そのような画像において、ΔT2<1となる場合には、記録用紙12が最初の接触部材と接する前に、搬送を一旦停止して待機し、ΔT2>1となるようにしてから、記録用紙12が最初の接触部材と接触するようにする。
【0145】
これにより、記録用紙12の表面に打滴されたインクが接触部材に転写して、接触部材の表面が汚れたり、インクが擦れたりして、記録画像の画質が劣化するのを防止することができる。
【0146】
このように、本発明はフルライン型の記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置に限らず、シャトル型の記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置にも適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0147】
なお、本発明において、時間ΔT1[sec]は、吐出するインクの粘度η[mPa・sec]によって変化するが、インクの粘度η[mPa・sec]は、インクの温度t[℃]によって変化するので、このインクの温度t[℃]を検出することにより、正確な値を求めることができる。すなわち、インクの温度t[℃]を検出し、検出された温度t[℃]から所定の関数又はテーブルを用いて粘度η[mPa・sec]を算出することができる。
【0148】
この場合、吐出するインクの温度t[℃]は、たとえば、インクを貯留するインクタンクや記録ヘッドの圧力室に接触式の温度計(たとえば、測温抵抗体や熱電対)や非接触の温度計(たとえば、放射温度計)を設置することにより、検出することができる。
【0149】
なお、インクの粘度η[mPa・sec]を検出する手段は、上記のインクの温度t[℃]から算出するという形態の他に以下のような方法を用いてもよい。すなわち、用いるインクの粘度η[mPa・sec]を通常の粘度測定装置で測定し、その値をユーザが操作画面から入力するという態様や、インクカートリッジにICチップ等でインクの情報を記録し、ユーザがインクカートリッジを記録ヘッドに取り付けた際、記録装置がインクの情報から粘度の情報を読み取るという態様がある。
【0150】
また、このようにインクの粘度η[mPa・sec]は、インクの温度によって変化するので、インクの温度を調整することにより、粘度η[mPa・sec]を調整することができる。たとえば、インクの温度t[℃]を検出し、インク温度・粘度テーブルを参照して、所望のインクの粘度η[mPa・sec]となるようにインクの温度t[℃]を調整する。これにより、吐出するインクの粘度η[mPa・sec]を調整することができる。
【0151】
したがって、このインクの粘度η[mPa・sec]を調整することによっても、式(1)を満たすように、時間ΔT1[sec]を調整することができる。
【0152】
なお、インクの温度調整は、たとえば、インクタンクや圧力室にヒータ(たとえば、発熱体)を設置し、インクを加熱することにより調整することができる。この他、インクタンクや圧力室にペルチェ素子を設置し、インクを加熱、冷却することにより調整することができる。
【0153】
なお、インクの粘度η[mPa・sec]を調整する方法は、上記方法に限らず、インクの組成を変えることにより調整することもできる。たとえば、インク中に含有させるグリセリンの濃度(重量パーセント濃度)を変えることで粘度η[mPa・sec]を調整することもできるし、また、この他の材料(たとえば、ジエチレングリコールなど)の濃度を変えることで粘度η[mPa・sec]を調整することもできる。
【実施例】
【0154】
本発明の効果を確認するために以下の実験を行った。
【0155】
[実験A]
記録用紙の表面側の領域にインクを打滴後、裏面側の対応領域にインクが打滴されるまでの時間ΔT1[sec]と、記録媒体に吐出するインクの粘度η[mPa・sec]を変えて両面記録を行い、裏面に打滴されたインクの形状を調べた。
【0156】
なお、実験には、図7に示した構成のインクジェット記録装置を使用した。すなわち、水平な搬送経路104を形成し、その搬送経路104を挟んで上下に表面用記録ヘッド102Aと裏面用記録ヘッド102Bを設置した。この際、搬送経路104の搬送方向上流側に表面用記録ヘッド102Aを設置し、下流側に裏面用記録ヘッド102Bを設置して、裏面用記録ヘッド102Bを搬送経路104に沿って水平に移動可能に構成した。
【0157】
また、搬送速度V[cm/sec]と搬送距離(記録用紙の表面側の領域にインクを打滴後、裏面側の対応領域にインクが打滴されるまでに記録用紙が搬送される距離)L1[cm]を変えることにより、時間ΔT1[sec]を調整した。
【0158】
なお、搬送経路104は、たとえば、図8に示すように、平板110で構成し、その平板110に開口部112を形成することにより、平板110上を搬送される記録用紙12の両面にインクを吐出可能に構成した。
【0159】
本実験の搬送速度V[cm/sec]と搬送距離L1[cm]と時間ΔT1[sec]の関係を表1に示す。
【0160】
【表1】

【0161】
また、インクには、次の組成のものを使用した。
【0162】
・シアン顔料PB15:3(銅フタロシアニン):5重量%
・オルフィン:1重量%
・グリセリン:下記表2参照
・水:残量
なお、本実験では、グリセリンの重量%濃度を変えることにより、粘度η[mPa・sec]を調整した。
【0163】
【表2】

【0164】
また、記録媒体としての記録用紙には、日本製紙製NPI上質紙を使用した。
【0165】
裏面に打滴されたインクの形状は、ドットを顕微鏡で観察し、ドットの形状係数k(ここで、kは、ドットの周長をL、面積をSとした時、k=L2/4πSで定義され、円の時、最小値1をとる。そして、円から形状が崩れてくると、kの値は大きくなる)を算出して調べた。
【0166】
記録用紙の裏面に打滴されたドットの形状係数kが、片面記録時のドットの形状係数に対して、0.5以上大きくなった時を×、それ以外を○として評価した。この結果を下記の表3に示す。
【0167】
【表3】

【0168】
この実験結果から、記録用紙の表面側の領域にインクを打滴後、裏面側の対応領域にインクが打滴されるまでの時間ΔT1[sec]を大きくすると、紙面の微細な“よれ”(凹凸)が大きくなり、裏面のドットが真円から崩れることが確認できた。そして、この傾向はインクの粘度が小さくなるほど顕著になることが確認できた。
【0169】
そして、このようなドット形状の崩れを防止するためには、本発明で規定する条件、すなわち、ΔT1<0.45×ηを満たせばよいことが確認できた。
【0170】
[実験B]
記録媒体の表面側の領域にインクを打滴後、その領域が部材に接触するまでの時間ΔT2[sec]と、記録媒体に吐出するインクの粘度η[mPa・sec]を変えて両面記録を行い、表面に打滴されたインクの滲みを目視観察した。
【0171】
なお、実験には、上記実験Aと同様に図7に示した構成のインクジェット記録装置を使用し、搬送速度V[cm/sec]と、記録ヘッドからブレード108までの距離L2[cm]を変えることにより、時間ΔT2[sec]を調整した。
【0172】
本実験の搬送速度V[cm/sec]と搬送距離L2[cm]と時間ΔT2[sec]の関係を実験1と同じく表1に示す。
【0173】
また、インクも上記実験Aと同じ組成のものを使用し、グリセリンの重量%濃度を変えることにより、粘度η[mPa・sec]を調整した(表2参照)。
【0174】
また、記録媒体としての記録用紙には、上記実験Aと同じ日本製紙製NPI上質紙を使用した。
【0175】
また、吐出液滴量は、3ピコリットルとした。
【0176】
記録用紙の表面に打滴されたドットを顕微鏡で観察し、ドットが擦れているものを×、それ以外を○として評価した。この結果を下記の表4に示す。
【0177】
【表4】

【0178】
この実験の結果から、ドットの定着時間は、インクの粘度η[mPa・sec]に依らないことが確認できた。
【0179】
そして、このようなドットの擦れによる画質の劣化を防止するためには、本発明で規定する条件、すなわち、ΔT2>1を満たせばよいことが確認できた。
【0180】
実験Aと実験Bの結果をまとめたグラフを図9に示す。
【0181】
同図において、□印は、実験Aの結果が×で実験Bの結果が○の点を示しており、△印は、実験Aの結果が○で実験Bの結果が×の点を示している。そして、●印が、実験A、Bの結果がともに○の点を示している。
【0182】
このグラフから本発明で規定する二つの条件、すなわち、ΔT1<0.45×η、及び、ΔT2>1を満たすことにより、裏面記録時におけるドット形状の崩れ、及び、表面記録時におけるドットの擦れを防止でき、良好な画質の画像を記録することができることが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の第1の実施形態の概略構成を示す模式図
【図2】記録ヘッドの要部の構成を示す縦断面図
【図3】第1反転用押さえローラの他の実施の形態の構成を示す斜視図
【図4】本発明に係るインクジェット記録装置の第2の実施形態の概略構成を示す模式図
【図5】シャトル型の記録ヘッドを利用したインクジェット記録装置の記録方式の説明図(シングリングなしの場合)
【図6】シャトル型の記録ヘッドを利用したインクジェット記録装置の記録方式の説明図(シングリングありの場合)
【図7】本発明に係るインクジェット記録装置のその他の実施形態の概略構成を示す模式図
【図8】搬送経路の一例を示す平面図
【図9】実験A、Bの結果をまとめたグラフ
【符号の説明】
【0184】
10…インクジェット記録装置、12…記録用紙、14…記録用搬送部、16…記録部、18…反転部、20…記録用搬送ベルト、22…ガイドローラ、26…記録ヘッド、51…吐出口(ノズル)、52…圧力室、54…供給口、55…共通流路、56…振動板、58…圧電素子、28…反転用搬送ベルト、30A…第1反転用ガイドローラ、30B…第2反転用ガイドローラ、30C…第3反転用ガイドローラ、32A…第1反転用押さえローラ、32B…第2反転用押さえローラ、32C…第3反転用押さえローラ、32D…第4反転用押さえローラ、100…インクジェット記録装置、102A…表面用記録ヘッド、102B…裏面用記録ヘッド、104…搬送経路、106A…第1ガイドローラ、106B…第2ガイドローラ、106C…第3ガイドローラ、108…ブレード、110…平板、112…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の表面側にインクを吐出して表面側への記録を開始した後、前記記録媒体の裏面側にインクを吐出して裏面側への記録を開始して、前記記録媒体の両面に画像を記録するインクジェット記録装置において、
前記記録媒体の表面側の領域にインクを打滴後、裏面側の対応領域にインクが打滴されるまでの時間をΔT1[sec]、前記記録媒体に吐出するインクの粘度をη[mPa・sec]としたとき、次式:ΔT1<0.45×η…(1)を満たすことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記記録媒体の表面側の領域にインクを打滴後、その領域が部材に接触するまでの時間をΔT2[sec]としたとき、次式:ΔT2>1…(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記時間ΔT1[sec]を調整するΔT1調整手段と、
前記記録媒体に吐出するインクの粘度η[mPa・sec]を検出するインク粘度検出手段と、
を備え、前記インク粘度検出手段で検出された粘度η[mPa・sec]に基づいて、前記式(1)を満たすように、前記ΔT1調整手段で前記時間ΔT1[sec]を調整することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インク粘度検出手段は、
前記記録媒体に吐出するインクの温度t[℃]を検出するインク温度検出手段と、
前記インク温度検出部で検出されたインクの温度t[℃]から粘度η[mPa・sec]を算出する粘度算出手段と、
からなることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記記録媒体に吐出するインクの粘度η[mPa・sec]を調整するインク粘度調整手段を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記インク粘度調整手段は、前記記録媒体に吐出するインクの温度t[℃]を調整して、粘度η[mPa・sec]を調整することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
記録媒体の表面側にインクを吐出して表面側への記録を開始した後、前記記録媒体の裏面側にインクを吐出して裏面側への記録を開始して、前記記録媒体の両面に画像を記録するインクジェット記録方法において、
前記記録媒体の表面側の領域にインクを打滴後、裏面側の対応領域にインクが打滴されるまでの時間をΔT1[sec]、前記記録媒体に吐出するインクの粘度をη[mPa・sec]としたとき、次式:ΔT1<0.45×η…(1)を満たすように、前記記録媒体の両面に画像を記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記記録媒体の表面側の領域にインクを打滴後、その領域が部材に接触するまでの時間をΔT2[sec]としたとき、次式:ΔT2>1…(2)を満たすように、前記記録媒体の両面に画像を記録することを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記記録媒体に吐出するインクの粘度η[mPa・sec]を検出し、検出された粘度η[mPa・sec]に基づいて、前記式(1)を満たすように、前記時間ΔT1[sec]を調整することを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記インクの粘度η[mPa・sec]は、前記記録媒体に吐出するインクの温度t[℃]を検出し、検出されたインクの温度t[℃]から算出することを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記記録媒体に吐出するインクの粘度η[mPa・sec]を調整して、前記式(1)を満たすように、前記記録媒体の両面に画像を記録することを特徴とする請求項7、8、9又は10に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
前記記録媒体に吐出するインクの温度t[℃]を調整して、記録媒体に吐出するインクの粘度η[mPa・sec]を調整することを特徴とする請求項11に記載のインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−100506(P2008−100506A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196480(P2007−196480)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】