説明

インクジェット記録装置

【課題】簡単な構成で、しかも少量の洗浄液であっても確実に吐出ヘッドを洗浄することができるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】吐出ヘッド12、メインタンク14、供給サブタンク16、回収サブタンク18、洗浄液タンク20を用いてインクジェット記録装置10を構成する。洗浄液タンク20を供給サブタンク16よりも鉛直上方に配置する。開閉弁42を開放すると、洗浄液タンク20の洗浄液は洗浄液タンク20と供給サブタンク16の高低差により自然に供給サブタンク16に流入する。供給サブタンク16の洗浄液は、静圧方式により吐出ヘッド12の流入口12aから流入され、吐出ヘッド12の排出口12bから回収サブタンク18に回収され、廃液タンク22に排出される。洗浄液を供給するためのポンプが不要となり、簡単な装置構成にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出するための吐出ヘッドを有するインクジェット記録装置に関し、更に詳細には、吐出ヘッドを洗浄するための洗浄系を有するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
色材を含む微粒子をキャリア液に分散してなるインクに静電力を作用させて、インク液滴として吐出させて描画(画像記録)を行う、静電式のインクジェット記録装置が知られている。また、このような静電式のインクジェット記録装置の一種として、色材を含有し、かつ帯電した粒子をキャリア液に分散してなるインクを用い、静電力等による泳動で吐出部(ノズル)に色材粒子を移動して、インクを濃縮した状態でインク液滴を吐出する濃縮型の静電式インクジェット記録装置も知られている。
静電式のインクジェット記録装置では、通常、インクを貯留するメインのインクタンク(メインタンク)及び吐出ヘッドを含む所定のインク循環系でインクを循環することにより、吐出ヘッドにインクを供給して描画を行う。
【0003】
このような静電式のインクジェット記録装置に限らず、インクを循環して吐出ヘッドにインクを供給するインクジェット記録装置では、循環を停止して放置すると、インク(キャリア液)が蒸発することにより、吐出口(ノズル)や循環系でインクが乾燥して固着し、目詰まりや循環不良等を起こしてしまう場合がある。
そのためインクジェット記録装置における、このような不都合を回避するために、各種の提案がされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、インク循環系と洗浄液循環系を具えるとともに、吐出ノズル側に、インクと洗浄液を切り替えて供給する三方電磁弁と、不要粒子をガターで捕捉する側にインク洗浄液を切り替えて分別回収する三方電磁弁とを設け、供給側の三方電磁弁の切換え指令に対して、回収側の三方電磁弁の洗浄側ソレノイドを遅延駆動させて、インクタンクへの洗浄廃液の混入を防止させたインクジェットプリンタが開示されている。
【0005】
さらに、特許文献2には、同様のインク循環を行う静電式のインクジェット記録において、吐出口にインクを供給するインク送液系と、前記インク送液系にクリーニング液を供給するクリーニング液送液系と、クリーニング液を回収するクリーニング液回収系を有し、クリーニング時に、インクのメインタンクとインク送液系とを切り離してクリーニング液回収系を接続し、クリーニング液送液系からインク送液系にクリーニング液を供給してクリーニングを行うことにより、インク循環系の付着物の除去を好適に行うとともに、クリーニング液の混入による画像鮮明度の低下を防止した装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭56−144162号公報
【特許文献2】特開2002−1989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2に開示されている装置では、洗浄液を循環させるためのポンプが必要であり、装置構成が複雑となり装置の製造コストが高くなるという問題がある。また、洗浄液が通過する経路も長く、確実に洗浄するためには大量の洗浄液が必要とされる。
【0008】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、簡単な装置構成で吐出ヘッドを洗浄することができるインクジェット記録装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、少量の洗浄液であっても確実に吐出ヘッドを洗浄することができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、インクを吐出するための吐出ヘッドを有するインクジェット記録装置であって、鉛直方向において前記吐出ヘッドよりも上方に配置され、前記吐出ヘッドに付着したインクを除去するための洗浄液が貯留される洗浄液タンクと、前記洗浄液タンクに接続され、前記洗浄液を前記吐出ヘッドに供給するための洗浄液供給流路とを有し、前記吐出ヘッドを洗浄する際に、前記洗浄液タンクに貯留されている前記洗浄液を、その圧力ヘッドを利用して前記吐出ヘッドに供給するインクジェット記録装置を提供する。
【0010】
本発明のインクジェット記録装置は、更に、鉛直方向において前記吐出ヘッドよりも上方に配置され、前記吐出ヘッドに供給するインクが貯留される供給サブタンクと、前記供給サブタンク及び前記吐出ヘッドを接続するインク供給流路と、鉛直方向において前記吐出ヘッドよりも下方に配置され、前記吐出ヘッドから回収したインクを貯留する回収サブタンクと、前記回収サブタンク及び前記吐出ヘッドを接続するインク回収流路とを有し、前記供給サブタンク内と前記回収サブタンク内のインク液面高さの圧力ヘッド差を利用してインクを循環することが好ましく、この場合は、前記供給サブタンク及び前記回収サブタンクは、それぞれ、内部に、オーバーフロー管を有し、当該オーバーフロー管を通じて、過剰に供給されたインクを外部に排出してタンク内のインク液面の高さを一定に維持することが好ましい。
【0011】
また、この場合、前記洗浄液供給流路が前記供給サブタンクに接続されており、前記吐出ヘッドを洗浄する際に、前記洗浄液が前記供給サブタンクを介して前記吐出ヘッドに供給されることが好ましい。
又は、前記インク供給流路に前記洗浄液供給流路が接続されており、前記吐出ヘッドの洗浄時に、前記インク供給流路を通じて前記吐出ヘッドに前記洗浄液が供給されることが好ましい。
あるいは、更に、前記洗浄液供給流路に接続され、且つ、前記吐出ヘッドに装着されるキャップを備え、前記キャップは、前記洗浄液供給流路と接続される第1開口部と、前記吐出ヘッドに装着されたときに前記吐出ヘッドのインク吐出口と対向する位置に形成される第2開口部と、前記第1開口部及び第2開口部を結ぶ連通孔とを有し、前記吐出ヘッドを洗浄する際に、前記キャップが前記吐出ヘッドの先端に装着されて、前記吐出ヘッドのインク吐出側から前記洗浄液が注入されることが好ましい。
【0012】
本発明のインクジェット記録装置においては、前記回収サブタンク及び前記吐出ヘッドを接続する前記インク回収流路の途中に、前記インクの濃度を検出するためのインク濃度検出手段を有することが好ましい。
【0013】
また、前記インクは、少なくとも色材を含む帯電した微粒子を絶縁性の分散媒に分散してなるインクであり、前記吐出ヘッドは、静電力を利用して前記インクを吐出する静電式の吐出ヘッドであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有する本発明のインクジェット記録装置は、静圧方式により洗浄液を吐出ヘッドやインク循環系に供給することができるので、洗浄系の構造を従来よりも簡単にすることができる。特に、吐出ヘッドのインク流入口側から直接洗浄液を供給したり、吐出ヘッドの吐出口から洗浄液を注入することにより、少量の洗浄液で吐出ヘッドを洗浄することができるので、洗浄効率を従来よりも高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のインクジェット記録装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0016】
図1に、本発明のインクジェット記録装置のインク循環系の一構成例を概念的に示す。
図1に示したインクジェット記録装置(以下、記録装置10という)10は、色材を含む帯電した微粒子(以下、色材粒子とする)を絶縁性のキャリア液(分散媒)に分散してなるインクQを用い、このインクに静電力を作用させることによりインク液滴を吐出する静電式のインクジェット記録装置である。記録装置10は、図1に示すように、基本的に、吐出ヘッド(インクジェット記録ヘッド)12、メインタンク14、供給サブタンク16、回収サブタンク18、洗浄液タンク20及び廃液タンク22を有する。
【0017】
記録装置10のインク循環系は、主に、メインタンク14のインクQを吐出ヘッド12に供給するインク供給系と、吐出ヘッド12から吐出されなかったインクQを回収するインク回収系とから構成される。インク供給系は、メインタンク14内に配置されたインク循環ポンプ58、供給サブタンク16、インク循環ポンプ58と供給サブタンク16とを接続する第1供給流路30、供給サブタンク16と吐出ヘッド12のインク流入口12aとを接続する第2供給流路32、及び、供給サブタンク16内のオーバーフロー管62からオーバーフローしたインクQを回収する第3回収流路37から主に構成される。また、インク回収系は、回収サブタンク18、吐出ヘッド12のインク排出口12bと回収サブタンク18とを接続する第1回収流路34、回収サブタンク18内のオーバーフロー管64からオーバーフローしたインクを回収する第2回収流路36、及び、メインタンク14に接続された共通回収流路52から主に構成される。供給流路や回収流路は、例えば、パイプや可撓性を有するチューブなどから構成することができる。
【0018】
図1において、洗浄液タンク20は、洗浄液供給流路40を介して供給サブタンク16と接続され、洗浄液供給流路40の途中には開閉弁42が設けられている。洗浄液タンク20は、供給サブタンク16よりも鉛直方向において上方に配置されている。
また、回収サブタンク18の底面には排液流路44が接続されており、排液流路44の一方の端部は共通回収流路52と接続されている。排液流路44の途中に、廃液弁46が設けられている。
また、共通回収流路52とメインタンク14との間には切換弁38が設けられており、切換弁38は、更に、廃液タンク22と接続される廃液流路48と接続されている。切換弁38は、共通回収流路52から送出される液体を、メインタンク14側と廃液タンク22側のどちらか一方に切り替えることができる。また、廃液タンク22には、連通口22aが形成されており、これにより廃液タンク22の内部を大気圧環境にしている。
【0019】
なお、図1は、前述したように、インク循環系の一構成例であり、本発明の記録装置10は、図に示したインク循環系以外にも、例えば、吐出ヘッド12を駆動してインク液滴を吐出させるドライバ、吐出ヘッド12と対面する所定の経路で、後述するノズル列方向(行方向)と直交する方向に記録媒体Pを搬送(走査搬送)する走査搬送手段、吐出ヘッド12による画像記録に先立って記録媒体Pに所定のバイアス電圧を帯電させる帯電手段(あるいは吐出ヘッド12の制御電極に対する対向電極)、帯電した記録媒体Pを除電する除電手段、所定の経路で記録媒体Pを搬送する搬送手段、搬送される記録媒体Pを検出するセンサ、装置内に滞留するキャリア液等を排出する溶媒排出手段など、公知の静電式のインクジェット記録装置が有する各種の構成要素を有しているのは、もちろんのことである。
【0020】
また、本発明のインクジェット記録装置は、K(黒)のみなどの1色の画像記録を行うモノクロの記録装置であってもよく、また、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、およびKの4色のインクを用いて、記録媒体にフルカラー画像を描画する記録装置であってもよい。
また、吐出ヘッドは静電式のインクジェットヘッドに限定されず、サーマルインクジェットヘッド、ピエゾ素子やマイクロマシン等によってインク室の振動板振動することによりインクを吐出するいわゆるピエゾタイプのインクジェットヘッド等、各種のインクジェットヘッドを好適に利用可能である。
【0021】
また、図に示した記録装置10は、メインタンク14、供給サブタンク16、および回収サブタンク18、ならびに、これらを接続する各流路で構成されるインク循環系を有し、このインク循環系によってインクQを循環することにより、吐出ヘッド12(インク流路78)にインクを供給する静圧式のインクジェット記録装置である。しかしながら、本発明は、このような静圧式のインクジェット記録装置に限定されず、例えば、吐出ヘッド内にインクを溜めておくためのインク溜を有し、このインク溜に、ポンプなどを用いて直接インクを供給してインクを循環させるようなポンプ式のインク循環系を有するインクジェット記録装置であってもよい。
【0022】
メインタンク14は、記録装置10のインク循環系を循環するインクを主に貯留するための密閉型のインクタンクである。メインタンク14は、色材粒子の沈降/堆積を防止するための撹拌手段や、インク吐出の安定性を向上するための温度調節手段を有するのが好ましい。
メインタンク14内には、第1供給流路30から供給サブタンク16にインクQを送液するためのインク循環ポンプ58が配置される。循環ポンプ58による送液量は、供給サブタンク16から吐出ヘッド12へのインクQ供給量よりも多く設定される。
【0023】
図に示すように、供給サブタンク16には、第1供給流路30および第2供給流路32が接続され、鉛直方向において吐出ヘッド12よりも上方に配置される。供給サブタンク16の上面には大気と連通した連通口16aが形成されており、これにより、供給サブタンク16内を大気圧環境としている。供給サブタンク16に接続された第2供給流路32の他端は、吐出ヘッド12のインク流入口12aに接続されている。
供給サブタンク16には、第1供給流路30によってメインタンク14から供給されたインクQが貯留され、貯留されたインクQは第2供給流路32を介して吐出ヘッド12に供給される。
【0024】
また、供給サブタンク16内には、第3回収流路37に接続するオーバーフロー管62が配置され、かつ、第2供給流路32はオーバーフロー管62の上端よりも下方に接続される。図示例では、第2供給流路32との接続部を供給サブタンク16の底面に設けた構成としている。
【0025】
供給サブタンク16に貯留されたインクは、供給サブタンク16内のインク液面と回収サブタンク18内のインク液面の高低差により生じる水頭圧(圧力ヘッド)で、重力落下によって第2供給流路32から吐出ヘッド12に供給され、更に第1回収路34を介して回収サブタンク18に貯留される。したがって、吐出ヘッド12に供給されるインク流量は、吐出ヘッド12に接続される供給サブタンク16と回収サブタンク18の2つのサブタンクのインク液面に基づく圧力ヘッドによって決定され、それらサブタンクの中間に位置する吐出ヘッドの高さによって吐出ヘッドの内圧(メニスカスの高さ)が決定される。
また、供給サブタンク16では、循環ポンプ58により供給されたインクがオーバーフロー管62の高さを超えても、オーバーフロー管62からオーバーフローして排出されるので、タンク内の液面の高さは一定に保たれる。その結果、供給サブタンク16から吐出ヘッド12へのインクQの供給量および供給圧(圧力ヘッド)は一定に保たれ、いわゆる静圧系でのインク供給が行われる。
なお、オーバーフロー管62から排出されたインクQは、第3回収流路37から共通回収流路52、切換弁38を経て、メインタンク14に戻され、再度、循環に供される。
【0026】
回収サブタンク18は、第1回収流路34および第2回収流路36に接続されるインクタンクであり、吐出ヘッド12よりも鉛直方向において下方に配置される。回収サブタンク18の上面には、図に示すように、大気と連通する連通口18aが形成されており、これにより回収サブタンク18の内部を大気圧環境としている。前述のように、第1回収流路34の他端は、吐出ヘッド12のインク排出口12bに、第2回収流路36の他端はメインタンク14に、それぞれ接続される。
回収サブタンク18には、吐出ヘッド12から吐出されなかったインクQが第1回収流路34を通じて貯留される。回収サブタンク18に貯留されたインクQは第2回収流路36からメインタンク14に戻される。
【0027】
吐出ヘッド12から吐出されずに吐出ヘッド12のインク排出口12bから排出されたインクQは、供給サブタンク16内のインク液面と回収サブタンク18内のインク液面の高低差により生じる圧力ヘッドで、重力落下によって第1回収流路34から回収サブタンク18に供給される。回収サブタンク18において、オーバーフロー管64を超えたインクQは、第2回収流路36から、共通回収流路52、切換弁38を通ってメインタンク14に戻されて、再度、循環に供される。
また、回収サブタンク18のインク液面は、オーバーフロー管64によって一定に保たれる。これにより、吐出ヘッド12からのインク流入にも、回収サブタンク18の液面の高さに応じた一定の圧量がかかる。すなわち、吐出ヘッド12の排出口12bに、一定の静圧をかけることができる。
【0028】
記録装置10においては、このようにして、一定の圧力ヘッドで供給サブタンク16から吐出ヘッド12へインク供給するとともに、吐出ヘッド12から回収サブタンク18へのインク供給にも一定の圧力をかける。これにより、吐出ヘッド12の内部に形成されたインク流路に係る圧力、すなわち吐出ヘッド12へのインク供給および排出を完全に静圧にすることができ、後述する吐出ヘッド12の吐出口に形成されるインクQのメニスカス等を安定させることができる。
【0029】
本発明の記録装置10においては、供給サブタンク16および/または回収サブタンク18の高さを、適宜、設定することにより、吐出ヘッドの吐出口に形成されるインクQのメニスカスの高さを、高い自由度で選択することも可能である。従って、前記メニスカスの状態や高さをコントロール可能にするために、供給サブタンク16および/または回収サブタンク18の高さを調節するための高さ調節手段を有することが好ましい。
なお、高さ調節手段は、互いに螺合するネジ軸とナットによる方法、シリンダやアクチュエータを用いる方法、カムを用いる方法等、鉛直方向の高さ調整が可能な各種の方法が利用可能である。
【0030】
洗浄液タンク20は、インク循環系や吐出ヘッドを洗浄するための洗浄液を貯留するためのタンクであり、供給サブタンク16よりも鉛直方向において上方に配置されている。図1に示すように、洗浄液タンク20の底面には洗浄液供給流路40の一端が接続されており、洗浄液供給流路40の他方の端部は供給サブタンク16と接続されている。洗浄液供給流路40の途中には開閉弁42が設けられており、開閉弁42を開放することにより、洗浄液タンク20内の洗浄液を供給サブタンク16に供給することができる。
【0031】
ここで、記録装置10の運転時(記録時)のインク循環系の動作について説明する。まず、インク循環ポンプ58によって、メインタンク14から第1供給流路30を通じて供給サブタンク16にインクが送液され、供給サブタンク16にインクが貯留される。供給サブタンク16に貯留されたインクQは、供給サブタンク16と吐出ヘッド12の落差のために、第2供給流路32を通じて吐出ヘッド12のインク流入口12aに流入される。吐出ヘッド12において吐出に寄与しなかったインクQは、吐出ヘッド12と回収サブタンク18との落差のために、第1回収流路34を通じて回収サブタンク18に供給される。ここで、切換弁38のメインタンク14側を開放し、廃液タンク22側を閉塞しておくことにより、回収サブタンク18をオーバーフローしたインクQは、第2回収流路36、共通回収流路52、切換弁38を通じてメインタンク14に戻される。こうして、メインタンク14、供給サブタンク16、吐出ヘッド12、回収サブタンクをインクQが循環する。供給サブタンク16と回収サブタンク18にそれぞれ形成された連通口16a及び18aにより大気開放されているので、供給サブタンク16内のインクQは、回収サブタンク18まで自然に流れる。
なお、供給サブタンク37をオーバーフローしたインクQは、第3回収流路37、共通回収流路52、切換弁38を介してメインタンク14に戻される。
【0032】
つぎに、記録装置10の洗浄時の動作について説明する。
まず、インク循環ポンプ58を停止して、供給サブタンク16へのインクQの供給を停止する。そして、インク循環系内からすべてのインクを排出する。回収サブタンク18に接続されている排液流路44上の廃液弁46を開放すると、回収サブタンク18に貯留されているインクが、排液流路44、共通回収流路52、切換弁38を通じてメインタンク14に回収される。また、供給サブタンク16に貯留されているインクQは、吐出ヘッド12を介して回収サブタンク18に流入した後、上述と同様に、排液流路44、共通回収流路52、切換弁38を通じてメインタンク14に回収される。こうして、インク循環系内のすべてのインクがメインタンク14に回収される。
【0033】
次いで、切換弁38のメインタンク14側を閉塞し、廃液タンク22側を開放する。更に、廃液弁46を閉塞する。そして、洗浄液供給流路40上に設けられている開閉弁42を開放して、洗浄液21を供給サブタンク16に供給する。洗浄液タンク20は、回収サブタンク18よりも鉛直方向において上方に配置されているので、洗浄液21は、洗浄液タンクと供給サブタンク16の洗浄液面の高低差により生じる水頭圧(圧力ヘッド)で、重力落下により供給サブタンク16内に供給される。供給サブタンク16に供給された洗浄液は、第2供給流路40を介して吐出ヘッド12の流入口12aに一定の圧力で流入されるとともに、オーバーフロー管62の高さになるまで供給サブタンク16内に貯留される。オーバーフロー管62の高さを超えて、オーバーフロー管62から流出した洗浄液は、第3回収流路37、共通回収流路、切換弁38を介して、廃液タンク22に排出される。
【0034】
一方、第2供給流路32を通じて吐出ヘッド12の流入口12aに一定の圧力で流入した洗浄液は、吐出ヘッド12の内部のインク流路を通過した後、吐出ヘッド12の排出口12bから排出される。吐出ヘッド12の排出口12bから排出された洗浄液は、第1回収流路34を介して回収サブタンク18に流入した後、回収サブタンク18に貯留される。回収サブタンク18に貯留された洗浄液は、回収サブタンク18内のオーバーフロー管64から共通回収流路52及び切換弁38を経た後、廃液タンク22に排出される。こうして、吐出ヘッド12及びインク循環系に付着しているインクを洗浄液により除去する。
【0035】
上述したような洗浄動作を終えた後、洗浄液を、インク循環系内から排出する場合は、開閉弁42を閉めて洗浄液の供給を停止する。そして、前述したインクの廃液の場合と異なり、切換弁38のメインタンク14側を閉塞状態とし、廃液タンク22側を開放状態としたまま、廃液弁48を開放する。これにより、供給サブタンク16及び回収サブタンク18に貯留されている洗浄液が、排液流路44から共通回収流路52、切換弁38、廃液流路48を経て廃液タンク22に排出される。
【0036】
以上説明したように、本発明では、静圧方式により洗浄液を循環させるので、従来のような洗浄液を循環させるためのポンプなどが不要となり、極めて簡単な装置構成で吐出ヘッド又はインク循環系の洗浄を行うことができる。
【0037】
つぎに、本発明に従う記録装置の別の形態として、吐出ヘッドの吐出口から、静圧方式により洗浄液を注入させて洗浄する場合の構成例について説明する。図2に、吐出ヘッド12の吐出口12cから、静圧方式により洗浄液を注入させて吐出ヘッド12を洗浄する記録装置の一例を示す。
【0038】
本実施形態における記録装置は、キャップ部材54を有し、洗浄液タンク20に接続される洗浄液供給流路40がキャップ部材54に接続されている以外は、基本的には図1に示した記録装置と同様の構造を有する。ここでは、洗浄液タンク20は、吐出ヘッド12よりも鉛直方向において上方に配置される。キャップ部材54は、洗浄時に、吐出ヘッド12の先端部12cに装着される。キャップ部材54には、図2に示すように、吐出ヘッド12の先端部12cと嵌合するような凹部が形成されている。また、キャップ部材54には、側壁と凹部とを結ぶ連通孔54aが形成されている。連通孔54aの側壁側の開口部54bは、洗浄液が流入される流入口であり、凹部側の開口部54cは、開口部54bから流入した洗浄液を吐出ヘッド12の吐出口12cに注入するための注入口である。キャップ部材54の開口部54bは、同図に示すように、洗浄液供給流路40と接続される。ここで、この開口部54bは、図2に示した位置に限定されず、任意の位置に形成することができる。キャップ部材54の凹部に形成された注入口54cは、キャップ部材54を吐出ヘッド12の吐出口12cに嵌合したときに、吐出ヘッド12のインク吐出口と対向する位置に形成される。
【0039】
ここで、図2に示した構造を有する記録装置の洗浄時の動作について説明する。図1に示した記録装置の場合と同様に、洗浄液を供給する前には、インク循環系からインクをすべて排出しておく。そして、キャップ部材54を、図2に示すように、吐出ヘッド12の先端部12cに装着する。
【0040】
洗浄動作が開始されて開閉弁42が開放されると、洗浄液タンク20内の洗浄液は、重力により所定の圧力で洗浄液供給路40から排出され、洗浄液供給路40を通じてキャップ部材54の開口部54bに流入する。キャップ部材54に流入した洗浄液は、注入口54cから吐出ヘッド12の吐出口に注入される。吐出ヘッド12の排出口12bは、回収サブタンク18を介して大気と連通していることから、吐出ヘッド12の吐出口12cから注入された洗浄液は、吐出ヘッド12の内部のインク流路を通過した後、排出口12bから排出される。排出口12bから排出された洗浄液は、第1回収流路34を通じて回収サブタンク18に貯留された後、第2回収流路36、共通回収流路44、切換弁38を介して排出タンク48に排出される。こうして、浄液タンク20の洗浄液を、静圧方式により吐出ヘッド12の吐出口12c側から注入して、吐出ヘッド12の内部のインク流路が洗浄される。回収サブタンク18に貯留されている洗浄液及びは、前述した方法と同様の方法により、廃液タンク22に排出することができる。
【0041】
また、吐出ヘッド12の吐出口12cから注入された洗浄液は、吐出ヘッド12のインク流入口12aを通って第2供給流路32や供給サブタンク20にも流入する。これにより、第2供給流路32及び供給サブタンクも洗浄される。第2供給流路32及び供給サブタンク20に流入した洗浄液は、洗浄終了時に、洗浄液の排出動作によって廃液タンク22に排出される。
【0042】
このような構成の記録装置においては、洗浄液タンク20から吐出ヘッド12までの距離、すなわち、洗浄液供給路が短くて済むので、少ない洗浄液で吐出ヘッドを洗浄することができる。特に、図に示した構成では、吐出ヘッド12に汚れの少ない洗浄液を供給することができるので洗浄効率が良い。
また、このようなキャップ部材54は、記録装置12を駆動していないときに吐出ヘッド12に装着することで、吐出ヘッド12の吐出口12cにおけるインクの乾燥を抑制してインクが固着すること抑制することができる。それゆえ、インク循環系の洗浄頻度も大幅に低減することができる。
【0043】
このようなキャップ部材54は、静電式のインクジェット記録装置に限らず、各種のインクジェット記録装置で通常に使用されているものが各種利用可能である。また、キャップ部材54を付勢して吐出ヘッド12に押圧して吐出口を閉塞し、また、このキャップ部材54を吐出ヘッド12から離間して、所定の待機位置に移動するキャップ移動手段を備えていてもよい。
【0044】
ここで、キャップ部54は、前記キャップ移動手段が非稼動の状態(電源遮断状態)において、スプリングや弾性部材等の動力が不要な付勢部材によって吐出ヘッドに押圧されて、吐出口を密閉する構成とするのが好ましい。このような構成とすることにより、密閉中に停電が発生しても、吐出口の密閉状態を保つことができ、後述するインク循環の停止時における吐出ヘッドおよびインク循環系の密閉を確実に保つことができる。
【0045】
つぎに、上述した記録装置とは更に異なる構成例について図3を参照して説明する。図3に示した記録装置は、吐出ヘッド12のインク流入口から洗浄液を静圧方式で注入するタイプの記録装置であり、図1に示す記録装置の洗浄液タンク20の洗浄液供給流路40を、供給サブタンク16と吐出ヘッド12との間の第2供給流路40に接続した以外は、図1に示した記録装置と同様の構造を有する。また、ここでは、洗浄液タンク20は、吐出ヘッド12よりも鉛直方向において上方に配置される。
【0046】
インク循環系からすべてのインクが排出された後、洗浄動作に移行すると、洗浄液供給路40上に設けられている開閉弁42が開放される。洗浄液タンク20は、吐出ヘッド12よりも鉛直上方に位置づけられているので、洗浄液タンク20内の洗浄液21は、重力吐出ヘッド12の供給口12aに流入する。そして、吐出ヘッド12内のインク流路を通過した後、排出口12cから排出され、第1回収流路34を介して回収サブタンク18に貯留される。回収サブタンク18に貯留された洗浄液は、第2回収流路36、共通回収流路52、切換弁38及び廃液流路48を経て廃液タンク48に排出される。こうして静圧方式により吐出ヘッド12の洗浄が行われる。また、回収サブタンク18に貯留されている洗浄液は、前述した方法と同様の方法により、廃液タンク22に排出することができる。
【0047】
このような構成を有する記録装置においては、洗浄液タンク20の洗浄液は、供給サブタンク16を介さずに吐出ヘッド12に直接供給されるので、比較的汚れの少ない洗浄液を使って吐出ヘッド12を洗浄することができる。それゆえ、少ない洗浄液で吐出ヘッド12を洗浄することができ、洗浄効率が良い。
【0048】
本発明の記録装置においては、インク循環系を循環するインクの濃度を検出するための濃度検出部を設けても良い。濃度検出部で常にインク濃度を監視し、インク濃度が高く又は低くなった場合に、高濃度インクや希釈液をメインタンクに供給してインク濃度を最適化することにより、常に最適濃度で記録媒体に画像を形成することが可能となる。濃度検出部は、第1回収流路34上、すなわち、吐出ヘッド12と回収サブタンク18との間に配置されることが好ましい。この位置に濃度検出部を設けることで、図1〜3に示した記録装置のいずれの場合においても、洗浄液を濃度検出部に供給して確実に濃度検出部を洗浄することができる。濃度検出部に付着したインクを除去することにより、正確な濃度の検出が可能となる。
【0049】
また、図示例の記録装置10のように、静圧系のインク供給を行うインク循環系を有する記録装置においては、インクQの循環時には供給サブタンク16および回収サブタンク18を大気開放して大気圧とされる。このような静圧系のインク循環系以外の記録装置に本発明を適用する場合は、洗浄時に、吐出ヘッドの、吐出に寄与しないインクを排出するための排出口が大気開放されるように、吐出ヘッド12の排出口12b、又は、インク回収系を構成すればよい。
【0050】
つぎに、吐出ヘッド12の構造について図4〜6を参照して詳細に説明する。
吐出ヘッド12は、前述のようなインクに静電力を作用させてインク液滴として吐出する静電式のインクジェットヘッドである。
図示例において、吐出ヘッド12は、対応する記録媒体の幅(走査搬送方向と直交する方向のサイズ)に対して、全域に対応する吐出部の列(いわゆるノズル列)を有する、いわゆるラインヘッドであって、吐出部の列(後述する行方向)を記録媒体Pの幅方向に一致して、記録媒体の搬送方向(後述する列方向)に配列される。
なお、本発明のインクジェット記録装置は、このようなラインヘッドを用いるものに限定はされず、記録媒体Pを断続的に搬送しつつ、この搬送に同期して、記録ヘッドを搬送方向と直交方向する方向に走査する、いわゆるシャトルタイプの記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置であってもよい。
【0051】
図4に、吐出ヘッド12の概念図を示す。なお、図4において、(A)は一部断面斜視図を、(B)は断面図を、それぞれ示している。
記録装置10においては、負の高電圧に帯電(バイアス電圧を帯電)された記録媒体Pを吐出部の配列方向(後述する行方向)と直交する方向に走査搬送しつつ、記録画像すなわち供給された画像データに応じて吐出ヘッド12の各吐出部を変調駆動して吐出をon/offすることにより、インク液滴Rをオンデマンドで吐出して、記録媒体Pに目的とする画像を記録する。
【0052】
なお、吐出ヘッド12は、前述のように、記録媒体Pの幅に対応する吐出口の列を有するラインヘッドであり、図5に概念的に示すように、多数の吐出部を二次元的に配置したマルチチャンネル構造のインクジェットヘッドであるが、図4においては、構造を明瞭に示すために、吐出部の一部のみを示す。
【0053】
吐出ヘッド12は、色材粒子(色材を含み、かつ帯電した微粒子)をキャリア液に分散してなるインクQに、静電力を作用させてインク液滴Rとして吐出する静電式のインクジェットヘッドで、ヘッド基板72と、吐出基板74と、インクガイド76とを備えている。
吐出ヘッド12において、ヘッド基板72と吐出基板74は、互いに対面して所定の間隔離間して配置され、その間に、各吐出口96にインクQを供給するためのインク流路78が形成される。インクQは、前記インク循環系によってインク流路78を含む所定の経路で循環され、記録時には、インク流路78内を所定方向に所定の速度(例えば、200mm/sのインク流)で、例えば、図中矢印方向に流される。
【0054】
ヘッド基板72は、すべての吐出部に共通なシート状の絶縁性基板であり、その表面には、電気的にフローティング状態である浮遊導電板80が設けられている。
浮遊導電板80には、画像の記録時に、後述する第1制御電極82および第2制御電極84に印加される駆動電圧に応じて誘起される誘導電圧が発生する。また、誘導電圧の電圧値は稼動チャンネル数に応じて自動的に変化する。この誘導電圧により、インク流路78内のインクQに含まれる色材粒子は付勢されて吐出基板74側に泳動し、すなわち、後述する吐出口96のインクQの濃縮が、より好適に行われる。
【0055】
なお、浮遊導電板80は必須の構成要素ではなく、必要に応じて適宜設けるのが好ましい。また、浮遊導電板80は、インク流路78よりもヘッド基板72側に配置されていればよく、例えばヘッド基板72の内部に配置してもよい。また、浮遊導電板80は、吐出部が配置される位置よりもインク流路78の上流側に配置される方が好ましい。また、浮遊導電板80に所定の電圧を印加するようにしても良い。
【0056】
他方、吐出基板74は、ヘッド基板72と同様に全ての吐出部に共通なシート状の絶縁性基板であり、絶縁性基板86と、第1制御電極82と、第2制御電極84と、ガード電極88と、絶縁層90,92および94とを備えている。また、吐出基板74には、各インクガイド76に対応する位置に、インクの吐出口96が貫通して開口しており、インクガイドの先端部分98を吐出基板74の表面から突出してインクガイド76が挿通している。前述のように、ヘッド基板72と吐出基板74とは離間して配置され、その間にインク流路78が形成される。
吐出ヘッド12においては、互いに対応する第1制御電極82、第2制御電極84、吐出口96、およびインクガイド76等によって、1つのインクの吐出部が構成される。
【0057】
第1制御電極82および第2制御電極84は、それぞれ絶縁性基板86の図中上面および下面の表面に、各々に対応する吐出口96の周囲を囲むようにリング状に設けられた円形電極である(図5および図6参照)。絶縁性基板86および第1制御電極82の表面には、その表面を保護するとともに平坦化する絶縁層92が被覆され、同様に、絶縁性基板86および第2制御電極84の表面には、その表面を平坦化するための絶縁層90が被覆されている。さらに、絶縁層92の上には、ガード電極88が形成され、ガード電極88および絶縁層92の上には、その表面を平坦化するための絶縁層94が形成される。
なお、第1制御電極82および第2制御電極84はリング状の円形電極に限定されず、インクガイド76に臨むように配置される電極であれば、例えば略円形電極、分割円形電極、平行電極、略平行電極など、どのような形状であっても良い。
【0058】
図5および図6に示すように、吐出ヘッド12において、インクガイド76、第1制御電極82および第2制御電極84、吐出口96等で構成される各吐出部は、マトリクス状に2次元的に配置されている。ここで、図5(A)は、図4(A)において、ガード電極88を含み、絶縁性基板86と平行な面で切断した場合の平面図である。また、図5(B)は、図4(A)において、第1制御電極82を含み、絶縁性基板86と平行な面で切断した場合の平面図である。また、図5(C)は、図4(A)において、第2制御電極84を含み、絶縁性基板86と平行な面で切断した場合の平面図である。
【0059】
具体的には、吐出ヘッド12は、図5(B)および(C)に示すように、行方向(図5横方向)に配列された吐出部の列を、列方向(走査搬送方向(図5縦方向))に3行(A行、B行、C行)有する。なお、図5においては、行方向に5個(1列、2列、3列、4列、5列)の、計15個のマトリクス状に配置された吐出部を示している。
吐出ヘッド12は、ラインヘッドであり、この行方向に記録媒体Pのサイズ全域に対応する吐出部の列(ノズル列)を有している。従って、記録装置10においては、記録媒体Pは行方向(吐出部(吐出口96)の配列方向=ノズル列方向)と直交する列方向に走査搬送されつつ、静電式インクジェットによって描画される。
各行の吐出部は、列方向に対して所定の間隔離間して配置される。また、各行は、吐出部を行方向に互いに1/3ピッチずらして、自身の吐出部が他行の吐出部の間(行方向の間)に位置するように配置される。
【0060】
図5(A)に示すように、ガード電極88は、吐出口96および制御電極に対応する領域が円形に開口するシート状の電極である。すなわち、ガード電極88は、各制御電極の間に形成される。
また、図5(B)に示すように、同じ列に配置された吐出部の第1制御電極82は、相互に接続され、かつ、図5(C)に示すように、同じ行に配置された吐出部の第2制御電極84は、相互に接続されている。
さらに、図示は省略するが、第1制御電極82および第2制御電極84は、それぞれ、駆動電圧(パルス電圧)を印加して、各電極を変調駆動してインク液滴Rの吐出をon/offするための、パルス電源に接続されている。
【0061】
画像の記録時には、同一列に配置された第1制御電極82は同時かつ同一電圧レベルの駆動電圧が印加(on)される。同様に、同一行に配置された第2制御電極84は同時かつ同一電圧レベルに駆動電圧が印加(on)される。
また、記録媒体Pに記録される1行は、列方向に対して、第2制御電極84の行数に相当する3つのグループに分割され、A行、B行およびC行の各行によって、時分割で順次記録される。
例えば、図4に示す例の場合、第2制御電極84のA行目、B行目、C行目を所定のタイミングで順次onする。この駆動に対応して、第1制御電極82を画像データ(記録画像)に応じて変調駆動(on/off)することにより、時分割した3回の記録によって、記録媒体P上に1行分の描画が行われる。前述のように、記録媒体Pは、列方向に搬送されるので、行方向(副走査方向)に、各行の有する記録密度(吐出部密度)の3倍の記録密度の描画を行うことができる。
【0062】
なお、制御電極は、第1制御電極82および第2制御電極84の2層電極構造に限定されず、単層電極構造でもよいし、3層以上の電極構造としても良い。
【0063】
先にも述べたが、ガード電極88は、図5(A)に示すように、各吐出口96の周囲に形成された第1制御電極82および第2制御電極84に相当する部分がリング状に開口する、全ての吐出部に共通なシート状の電極である。すなわち、ガード電極88は、各制御電極間に配置される電極である。絶縁層92およびガード電極88の表面には、その表面を保護するとともに、平坦化する絶縁層94が被覆されている。
ガード電極88には所定の電圧が印加されており、隣接する吐出部のインクガイド76の間に生じる電界干渉を抑制する役割を果たす。
なお、ガード電極88は必須の構成要素ではない。また、吐出基板74には、第1制御電極82または第2制御電極84からのインク流路78方向への反発電界を遮蔽するために、第2制御電極84よりインク流路78側にシールド電極を設けても良い。
【0064】
インクガイド76は、凸状の先端部分98を持つ所定厚みのセラミック製平板である。図示例においては、同一行の吐出部のインクガイド76は、ヘッド基板72上の浮遊導電板80の上に配置された同じ支持体47の上に所定の間隔で配置される。インクガイド76は、吐出基板74に開孔された吐出口96を貫通し、先端部分98を吐出基板74の記録媒体P側の最表面(絶縁層94の図中上側の表面)よりも上部に突出している。
【0065】
インクガイド76の先端部分98は、記録媒体Pの保持手段17に向かって、漸次、細くなる略三角形状(ないしは台形状)に成形されている。
なお、先端部分98(最先端部)は、金属が蒸着されているのが好ましい。この先端部分98の金属蒸着は必須の要素ではないが、これにより、先端部分98の誘電率が実質的に大きくなり、強電界を生じさせ易くできるという効果がある。
【0066】
なお、インクガイド76の形状は、インクQ内の色材粒子を先端部分98に向けて泳動(すなわちインクQを濃縮)させることができれば、特に制限的ではなく、例えば先端部分98は凸状でなくても良い等、自由に変更してもよい。また、インクの濃縮を促進するために、毛細管現象によってインクQを先端部分98に集めるインク案内溝となる切り欠きを、インクガイド76の中央部分に図中上下方向に沿って形成しても良い。
【0067】
前述のように、第2制御電極84は、所定のタイミングで1行ずつ、順次、on(駆動(高電圧レベル(例えば、400〜600V)またはハイインピーダンス状態))され、残りのすべての第2制御電極84はoff(非駆動(接地レベル(接地状態))にされる。また、第1制御電極82は、すべての列が同時に、画像データ(記録画像)に応じて、列単位でon(高電圧レベルまたは接地レベルにされる。これにより、各々の吐出部におけるインクの吐出/非吐出(インク吐出のon/off)が制御される。
【0068】
すなわち、第2制御電極84がonで、かつ第1制御電極82がonの場合にはインクQがインク液滴Rとして吐出(吐出on)され、第1制御電極82および第2制御電極84の少なくとも一方がoffの場合にはインクは吐出されない(吐出off)。
そして、各々の吐出部から吐出されたインク液滴Rは、負のバイアス電圧を帯電された記録媒体Pに引き寄せられ、記録媒体Pの所定位置に付着して画像が形成される。
【0069】
上記のように、下層の第2制御電極84の行を順次onし、画像データに応じて上層の第1制御電極82をon/offした場合、第1制御電極82が画像データに応じてonされるため、列方向のそれぞれの吐出部を中心として、その両側の吐出部では、第1制御電極82が高電圧レベルまたは接地レベルに頻繁に変化する。この場合、画像の記録時にガード電極88を所定のガード電位、例えば接地レベル等にバイアスすることにより、隣接する吐出部の電界の影響を排除することができる。
【0070】
吐出ヘッド12では、第1制御電極82または第2制御電極84の一方、または両方で、インク吐出のon/offの制御を行うかは何ら制限的ではない。すなわち、制御電極側のインクon/offの時の電圧値と記録媒体P側の電圧値との差分が所定値よりも大きい場合にはインクが吐出され、所定値よりも小さい場合にはインクが吐出されないように、制御電極側および記録媒体P側の電圧を適宜設定すればよい。
【0071】
従って、吐出ヘッド12においては、図示例とは逆、すなわち第1制御電極82を1列毎に順次onし、画像データに応じて、第2制御電極84をonすることで、インク吐出をon/offすることも可能である。
この場合、列方向は第1制御電極82の1列毎にonされ、列方向のそれぞれの吐出部を中心として、その両側の列の吐出部の第1制御電極82は常に接地レベルになるため、この両側の列の吐出部の第1制御電極26がガード電極88の役割を果す。このように、上層の第1制御電極82で各列を順次オンし、画像データに応じて下層の第2制御電極84を駆動する場合には、ガード電極88を設けなくても、隣接する吐出部の影響を排除し、記録品質を向上させることができる。
【0072】
また、この態様では、インクQ中の色材粒子を正帯電させ、記録媒体側を負の高電圧に帯電させているが、これに限定されず、逆に、インク中の色材粒子を負に帯電させ、記録媒体P側を正の高電圧に帯電させても良い。このように、色材粒子の極性を本態様と逆にする場合には、対向電極、記録媒体Pの帯電ユニット、各々の吐出部の第1制御電極82および第2制御電極84への印加電圧極性等を上記の例と逆にすれば良い。
【0073】
前述のような色材粒子を含有するインクQを用いる静電式のインクジェットにおいては、従来のインクジェット方式のように、インク全体に力を作用させて、インクを記録媒体に向けて飛翔させるのではなく、主に、キャリア液に分散させた固形成分である色材粒子に力を作用させて、インクを飛翔させる。以下、吐出ヘッド12におけるインク液滴R吐出の作用を説明する。
なお、以下の例では、色材粒子は正荷電しており、従って、吐出onでは第1制御電極82および第2制御電極84には、正の駆動電圧が印加され、記録媒体Pには、負の高電圧(バイアス電圧)が帯電される。
【0074】
画像の記録時には、インクQは前述のインク循環系によって循環され、インク流路78内を図中右側から左側(図4中矢印方向)に向かって所定の速度で流れる。
また、前述のように、記録媒体Pは、負の高電圧に帯電されて、吐出ヘッド12に対面して走査搬送される。
記録媒体Pに帯電する負の高電圧は、静電式のインクジェットにおけるバイアス電圧として作用し、また、このバイアス電圧をする帯電された記録媒体Pは、吐出ヘッド12の制御電極に対する対向電極として作用するのは、前述のとおりである。
【0075】
記録媒体Pが所定の位置に搬送されると、吐出ヘッド12には、記録媒体Pの搬送タイミングおよび画像データに応じて駆動信号が供給され、各吐出ヘッド12は、これに応じて、各行の第2制御電極84を順次駆動し、かつ、各列の第1制御電極82を画像データに応じて変調駆動し、インク吐出を画像データに応じて変調してon/offする。
【0076】
ここで、第1制御電極82および第2制御電極84の少なくとも一方がoffであり、すなわちバイアス電圧のみが印加されている状態では、インクQには、バイアス電圧とインクQの色材粒子(荷電粒子)の荷電とのクーロン引力、色材粒子間のクーロン反発力、キャリア液の粘性、表面張力、誘電分極力等が作用し、これらが連成して、色材粒子やキャリア液が移動し、図4(B)に概念的に示すように、吐出口96から若干盛り上がったメニスカス状となってバランスが取れている。
また、このクーロン引力等によって、色材粒子は、いわゆる電気泳動でバイアス電圧が帯電された記録媒体Pに向かって移動する。すなわち、吐出口96のメニスカスにおいては、インクQが濃縮された状態となっている。
【0077】
この状態から、インク液滴Rを吐出するための駆動電圧(パルス電圧)が印加される。すなわち、図示例においては、第1制御電極82および第2制御電極84の両方がonされると、前記バイアス電圧に駆動電圧が重畳され、先の連成に、さらにこの駆動電圧の重畳によって連成された運動が起こり、静電力によって色材粒子およびキャリア液がバイアス電圧(対向電極)側すなわち記録媒体P側に引っ張られ、メニスカスが成長して、その上部から略円錐状のインク液柱いわゆるテーラーコーンが形成される。また、先と同様に、色材粒子は電気泳動によってメニスカスに移動しており、メニスカスのインクQは濃縮され、色材粒子を多数有する、ほぼ均一な高濃度状態となっている。
【0078】
駆動電圧の印加開始後、さらに有限な時間が経過すると、色材粒子の移動等により、電界強度の高いメニスカスの先端部分で、主に色材粒子とキャリア液の表面張力とのバランスが崩れ、メニスカスが急激に伸びて曳糸と呼ばれる直径数〜数十μm程度の細長いインク液柱が形成される。
さらに有限な時間が経過すると曳糸が成長し、この曳糸の成長、レイリー/ウエーバー不安定性によって発生する振動、メニスカス内における色材粒子の分布不均一、メニスカスにかかる静電界の分布不均一等の相互作用によって曳糸が分断され、インク液滴Rとなって吐出/飛翔し、かつ、バイアス電圧にも引っ張られて、記録媒体Pに着弾する。
曳糸の成長および分断は、さらにはメニスカス(曳糸)への色材粒子の移動は、駆動電圧の印加中は連続して発生する。また、駆動電圧の印加を終了(第1制御電極82および第2制御電極84の少なくとも一方をoff)した時点で、バイアス電圧のみが印加された図4(B)のメニスカスの状態に戻る。
記録媒体P上におけるインクの1ドットは、通常、この1回(1パルス)の駆動電圧の印加によるものであり、従って、1ドットは、この1回の駆動電圧の印加によって曳糸から分断して吐出した複数のインク液滴Rによって形成される。
【0079】
ここで、本発明の記録装置に用いられるインクについて説明する。
インクQは、色材粒子をキャリア液に分散することにより得られる。キャリア液は、高い電気抵抗率(109 Ω・cm以上、好ましくは1010Ω・cm以上)を有する誘電性の液体(非水溶媒)であるのが好ましい。キャリア液の電気抵抗が低いと、制御電極に印加される駆動電圧により、キャリア液自身が電荷注入を受けて帯電してしまい、色材粒子の濃縮がおこらない。また、電気抵抗の低いキャリア液は、隣接する制御電極間での電気的導通を生じさせる懸念もあるため不向きである。
【0080】
キャリア液として用いられる誘電性液体の比誘電率は、5以下が好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3.5以下である。このような比誘電率の範囲とすることによって、キャリア液中の色材粒子に有効に電界が作用し、泳動が起こりやすくなる。
なお、このようなキャリア液の固有電気抵抗の上限値は1016Ωcm程度であるのが望ましく、比誘電率の下限値は1.9程度であるのが望ましい。キャリア液の電気抵抗が上記範囲であるのが望ましい理由は、電気抵抗が低くなると、低電界下でのインクの吐出が悪くなるからであり、比誘電率が上記範囲であるのが望ましい理由は、誘電率が高くなると溶媒の分極により電界が緩和され、これにより形成されたドットの色が薄くなったり、滲みを生じたりするからである。
【0081】
キャリア液として用いられる誘電性液体としては、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素、および、これらの炭化水素のハロゲン置換体がある。例えば、へキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、シリコーンオイル(例えば、信越シリコーン社製KF−96L)等を単独あるいは混合して用いることができる。
【0082】
このようなキャリア液に分散される色材粒子は、色材自身を色材粒子としてキャリア液中に分散させてもよいが、好ましくは、定着性を向上させるための分散樹脂粒子を含有させる。分散樹脂粒子を含有させる場合、顔料などは分散樹脂粒子の樹脂材料で被覆して樹脂被覆粒子とする方法などが一般的であり、染料などは分散樹脂粒子を着色して着色粒子とする方法などが一般的である。
【0083】
色材としては、従来か流路クジェットインク組成物、印刷用(油性)インキ組成物、あるいは静電写真用液体現像剤に用いられている顔料および染料であればどれでも使用可能である。
色材として用いる顔料としては、無機顔料、有機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用することができる。具体的には、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、コバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ぺリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、等の従来公知の顔料を特に限定なく用いることができる。
色材として用いる染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、アニリン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ペンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料、等の油溶性染料が好ましく例示される。
【0084】
さらに、分散樹脂粒子としては、例えば、ロジン類、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコールのアセタール変性物、ポリカーボネート等を挙げられる。
これらのうち、粒子形成の容易さの観点から、重量平均分子量が2,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜5.0の範囲内であるポリマーが好ましい。さらに、前記定着の容易さの観点から、軟化点、ガラス転移点または、融点のいずれか1つが40℃〜120℃の範囲内にあるポリマーが好ましい。
【0085】
インクQにおいて、色材粒子の含有量(色材粒子あるいはさらに分散樹脂粒子の合計含有量)は、インク全体に対して0.5〜30重量%の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは1.5〜25重量%、さらに好ましくは3〜20重量%の範囲で含有されることが望ましい。色材粒子の含有量が少なくなると、印刷画像濃度が不足したり、インクQと記録媒体P表面との親和性が得られ難くなって強固な画像が得られなくなったりするなどの問題が生じ易くなり、一方、含有量が多くなると均−な分散液が得られにくくなったり、インクジェットヘッド等でのインクQの目詰まりが生じやすく、安定なインク吐出が得られにくいなどの問題が生じるからである。
【0086】
また、キャリア液に分散された色材粒子の平均粒径は、0.1〜5μmが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5μmであり、更に好ましくは0.4〜1.0μmである。この粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製商品名)により求めたものである。
【0087】
色材粒子をキャリア液に分散させた後(必要に応じて、分散剤を使用しても可)、荷電制御剤をキャリア液に添加することにより色材粒子を荷電して、荷電した色材粒子をキャリア液に分散してなるインクQとする。なお、色材粒子の分散時には、必要に応じて、分散媒を添加してもよい。
荷電制御剤は、一例として、電子写真液体現像剤に用いられている各種のものが利用可能である。また、「最近の電子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化」139〜148頁、電子写真学会編「電子写真技術の基礎と応用」497〜505頁(コロナ社、1988年刊)、原崎勇次「電子写真」16(No.2)、44頁(1977年)等に記載の各種の荷電制御剤も利用可能である。
【0088】
なお、色材粒子は、制御電極に印加される駆動電圧と同極性であれば、正電荷および負電荷のいずれに荷電したものであってもよい。
また、色材粒子の荷電量は、好ましくは5〜200μC/g、より好ましくは10〜150μC/g、さらに好ましくは15〜100μC/gの範囲である。
【0089】
また、荷電制御剤の添加によって誘電性溶媒の電気抵抗が変化することもあるため、下記に定義する分配率Pを、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上とする。
P=100×(σ1−σ2)/σ1
ここで、σ1は、インクQの電気伝導度、σ2は、インクQを遠心分離器にかけた上澄みの電気伝導度である。電気伝導度は、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)および液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5V、周波数1kHzの条件で測定を行った値である。また遠心分離は、小型高速冷却遠心機(トミー精工(株)社製SRX−201)を使用し、回転速度14500rpm、温度23℃の条件で30分間行った。
以上のようなインクQを用いることによって、荷電粒子の泳動が起こりやすくなり、濃縮しやすくなる。
【0090】
インクQの電気伝導度は、100〜3000pS/cmが好ましく、より好ましくは150〜2500pS/cm、さらに好ましくは200〜2000pS/cmである。以上のような電気伝導度の範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、隣接する記録電極間での電気的導通を生じさせる懸念もない。
また、インクQの表面張力は、15〜50mN/mの範囲が好ましく、より好ましくは15.5〜45mN/m、さらに好ましくは16〜40mN/mの範囲である。表面張力をこの範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、ヘッド周りにインクが漏れ広がり汚染することがない。
さらに、インクQの粘度は0.5〜5mPa・secが好ましく、より好ましくは0.6〜3.0mPa・sec、さらに好ましくは0.7〜2.0mPa・secである。
【0091】
このようなインクQは、一例として、色材粒子をキャリア液に分散して粒子化し、かつ、荷電調整剤を分散媒に添加して、色材粒子に荷電を生じさせることで、調製できる。具体的な方法としては、以下の方法が例示される。
(1)色材あるいはさらに分散樹脂粒子をあらかじめ混合(混練)した後、必要に応じて分散剤を用いてキャリア液に分散し、荷電調整剤を加える方法。
(2)色材、あるいはさらに分散樹脂粒子および分散剤を、キャリア液に同時に添加して、分散し、荷電調整剤を加える方法。
(3)色材および荷電調整剤、あるいはさらに分散樹脂粒子および分散剤を、同時にキャリア液に添加して、分散する方法。
【0092】
以上、本発明のインクジェット記録装置ついて、詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんのことである。
【0093】
例えば、以上の例は、本発明のインクジェット記録装置を、色材粒子(色材を含む荷電した粒子)をキャリア液に分散してなるインクを用いる濃縮タイプの静電式インクジェット記録装置に利用したものであるが、本発明は、これに限定はされず、荷電粒子を含有するインクを用いない、非濃縮タイプの静電式インクジェット記録装置にも好適に利用可能である。
【0094】
また、本発明の記録装置における吐出ヘッドは、静圧式の吐出ヘッドに限定されず、例えば、吐出ヘッド内に設けられたインク溜に、ポンプなどを用いて直接インクを供給するようなポンプ式の吐出ヘッドであってもよい。この場合は、洗浄時に、静圧方式により、供給された洗浄液が吐出ヘッドから排出されるように、洗浄時にのみ吐出ヘッドの排出部が大気と連通するような構成にすればよい。
【0095】
また、本発明においては、洗浄液タンクよりも鉛直方向下方に、洗浄液タンクと密閉状態で接続されるサブ洗浄液タンクを設け、サブ洗浄液タンクの洗浄液排出部を、図2に示すキャップ部材の開口部54bや、図3に示すような第2供給流路の途中に接続して構成してもよい。そして、洗浄液タンクから洗浄液をサブ洗浄液タンクに滴下してサブ洗浄液タンク内に洗浄液を貯留し、その洗浄液を吐出ヘッド又はインク洗浄系に供給する構成にしてもよい。このような滴下方式により洗浄液を供給する構成にすることにより、安定して洗浄液を吐出ヘッドに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明のインクジェット記録装置のインク循環系の一構成例の概念図である。
【図2】吐出ヘッドの吐出口側から直接洗浄液を注入するインクジェット記録装置の概略構成図である。
【図3】吐出ヘッドのインク流入口から洗浄液を注入するタイプのインクジェット記録装置の概略構成図である。
【図4】図1に示すインクジェット記録装置の吐出ヘッドの概念図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図5】(A)、(B)および(C)は、図2に示す吐出ヘッドを説明するための概略図である。
【図6】図4に示す吐出ヘッドを説明するための概略斜視図である。
【符号の説明】
【0097】
10 (インクジェット)記録装置
12 吐出ヘッド
14 メインタンク
16 供給サブタンク
18 回収サブタンク
20 洗浄液タンク
22 廃液タンク
30 第1供給流路
32 第2供給流路
34 第1回収流路
36 第2回収流路
37 第3回収流路
38 切換弁
40 洗浄液供給流路
42 開閉弁
44 排液流路
46 廃液弁
48 廃液流路
52 共通回収流路
54 キャップ部材
58 インク循環ポンプ
62、64 オーバーフロー管
72 ヘッド基板
74 吐出基板
76 インクガイド
78 インク流路
80 浮遊導電板
82 第1制御電極
84 第2制御電極
86 絶縁性基板
88 ガード電極
90,92,94 絶縁層
96 吐出口
98 先端部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するための吐出ヘッドを有するインクジェット記録装置であって、
鉛直方向において前記吐出ヘッドよりも上方に配置され、前記吐出ヘッドに付着したインクを除去するための洗浄液が貯留される洗浄液タンクと、
前記洗浄液タンクに接続され、前記洗浄液を前記吐出ヘッドに供給するための洗浄液供給流路とを有し、
前記吐出ヘッドを洗浄する際に、前記洗浄液タンクに貯留されている前記洗浄液を、その圧力ヘッドを利用して前記吐出ヘッドに供給するインクジェット記録装置。
【請求項2】
更に、鉛直方向において前記吐出ヘッドよりも上方に配置され、前記吐出ヘッドに供給するインクが貯留される供給サブタンクと、
前記供給サブタンク及び前記吐出ヘッドを接続するインク供給流路と、
鉛直方向において前記吐出ヘッドよりも下方に配置され、前記吐出ヘッドから回収したインクを貯留する回収サブタンクと、
前記回収サブタンク及び前記吐出ヘッドを接続するインク回収流路とを有し、
前記供給サブタンク内と前記回収サブタンク内のインク液面高さの圧力ヘッド差を利用してインクを循環する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記洗浄液供給流路が前記供給サブタンクに接続されており、前記吐出ヘッドを洗浄する際に、前記洗浄液が前記供給サブタンクを介して前記吐出ヘッドに供給される請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インク供給流路に前記洗浄液供給流路が接続されており、前記吐出ヘッドの洗浄時に、前記インク供給流路を通じて前記吐出ヘッドに前記洗浄液が供給される請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
更に、前記洗浄液供給流路に接続され、且つ、前記吐出ヘッドに装着されるキャップを備え、
前記キャップは、前記洗浄液供給流路と接続される第1開口部と、前記吐出ヘッドに装着されたときに前記吐出ヘッドのインク吐出口と対向する位置に形成される第2開口部と、前記第1開口部及び第2開口部を結ぶ連通孔とを有し、
前記吐出ヘッドを洗浄する際に、前記キャップが前記吐出ヘッドの先端に装着されて前記吐出ヘッドのインク吐出側から前記洗浄液が注入される請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記回収サブタンク及び前記吐出ヘッドを接続する前記インク回収流路の途中に、前記インクの濃度を検出するためのインク濃度検出手段を有する請求項2〜5のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記インクは、少なくとも色材を含む帯電した微粒子を絶縁性の分散媒に分散してなるインクであり、
前記吐出ヘッドは、静電力を利用して前記インクを吐出する静電式の吐出ヘッドである請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−15637(P2006−15637A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196687(P2004−196687)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】