説明

インクジェット記録装置

【課題】 記録ヘッドが記録可能状態に移行する機会を極力減らして、記録ヘッドの良好なインク吐出状態をより確実に維持することができるインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】 記録可能状態に移行させる記録ヘッド102の数を記録モードに応じて制限し、記録に用いられない記録ヘッド102は、回復ユニット3によって保護される保護状態とすることにより、記録ヘッド102が記録可能状態とされる機会を減らす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出可能な複数の記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の記録素子が配列された記録ヘッドを用いて記録を行なう記録装置が普及している。このような記録装置は、記録方式によってインクジェット式、ワイヤドット式、熱転写式等に分けることができる。これらの内、インクジェット式の記録装置は、記録素子を構成する吐出口から、記録媒体に向かってインク滴を吐出することによって記録を行なうものである。インク滴の吐出方法の1つとしては、吐出口近傍のインク路に熱エネルギー発生素子を設け、これを駆動してインク中に気泡を発生させ、この気泡に生成圧力によってインク滴を吐出させる、いわゆるバブルジェット方式がある。また、インク滴の吐出方法の他の1つとしては、吐出エネルギー発生素子としてピエゾ素子等を用い、この圧電素子が変形する際に発生する圧力を利用して、インクを吐出する方式がある。
【0003】
このようなインクジェット式の記録装置は、比較的微小のインクドットを記録媒体上に形成して、高精細な画像を記録することができ、また多色のインクを使用したカラー画像も簡単に記録することができるなどの利点を有しているため、近年、急速に普及している。
【0004】
さらに、フルカラーの画像を記録可能なインクジェット記録装置としては、各色のインクを吐出する複数の記録ヘッドを用いて、フルカラーの画像を記録するフルカラー記録モード(以下、「フルカラーモード」ともいう)と、それら複数の記録ヘッドの内のいずれかを用いてモノカラーの画像を記録するモノカラー記録モード(以下、「モノカラーモード」ともいう)を備えたものがある。モノカラーモードでは、フルカラーモードにおいて多色のインクを吐出する複数の記録ヘッドによって共有されていた画像メモリ空間を1色のインクを吐出する記録ヘッドのみによって占有できるため、フルカラーモードに比べ、より高速に記録動作を行なうことができる。特に、記録媒体の1枚毎に記録画像を変化させながら、記録動作を連続的に行なうオーバーレイ記録においては、高速記録によって高いパフォーマンスが実現できるという利点がある。
【0005】
しかしながら、上述のように、インクジェット記録装置は、微細な吐出口からインク滴を吐出して記録を行なうため、記録動作終了後に、吐出口を記録状態のまま、すなわち外気にさらされた状態のままに放置した場合には、吐出口付近のインクの成分が蒸発してインクが増粘したり、空気中の塵埃が付着するなどの事態が発生するおそれがある。このような事態が記録ヘッドに生じた場合には、記録動作時にインク滴の吐出方向がずれたり、適量のインクが吐出されなくなって、記録不良を引き起こすおそれがある。
【0006】
そこで、記録動作以外の非記録時に、吐出口部分を回復桶によって覆うことによって、記録ヘッドを乾燥や塵埃から保護するようになっている。さらに、既に記録ヘッドに付着した塵埃を取り除くために、画像の記録に寄与しないインクを吐出口から回復桶内に吸引排出させる等の回復処理を行なうものもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、モノカラーモードとフルカラーモードの選択可能な従来のインクジェト記録装置においては、モノカラーモードで記録動作を行なう場合に、複数の記録ヘッドの中に記録動作を行なわない記録ヘッドがあるにも拘らず、全ての記録ヘッドが記録状態に移行する構成となっていた。そのため、モノカラーモードにおいて記録に使用されない記録ヘッドは、記録動作が完了するまでの間、記録可能な状態のまま、つまりその吐出口が外気にさらされた状態のまま保護されず放置されることになる。そのため、その記録ヘッドの吐出口付近のインク中の成分が蒸発してインクが増粘したり、その吐出口に外気中の塵埃が付着するなどの事態が発生するおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、記録ヘッドが記録可能状態に移行する機会を極力減らして、記録ヘッドの良好なインク吐出状態をより確実に維持することができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出可能な複数の記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、複数の記録モードに応じて、前記複数の記録ヘッドを選択的に用いて記録を行う記録制御手段と、前記記録制御手段によって記録に用いられる前記記録ヘッドを記録可能状態とし、かつ前記記録制御手段によって記録に用いられない前記記録ヘッドを非記録可能状態とする状態変更手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録可能状態に移行させる記録ヘッドの数を記録モードに応じて制限して、記録に用いられない記録ヘッドは記録可能状態以外の非記録可能状態とすることにより、記録ヘッドが記録可能状態とされる機会を減らし、記録ヘッドの良好なインク吐出状態をより確実に維持して、記録画像の劣化を防止することができる。特に、記録ヘッドを保護する保護状態を非記録可能状態とすることにより、記録ヘッドにおけるインクの吐出性能の信頼性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の模式的な斜視図、図2は、その模式的な正面図である。
【0012】
インクジェット記録装置101において、給紙部103から給紙される記録媒体104(以下、「記録用紙」ともいう)は搬送部105によって搬送される。搬送部105の入り口センサ108による記録用紙の検出タイミングに基づいて、4つの記録ヘッド102が異なる色のインクを吐出することにより、記録用紙104に画像が記録される。画像が記録された記録用紙104は、積載部106に収納される。109は、記録ヘッド102および搬送部105を開閉するための上部カバーであり、また110は、記録ヘッド102に供給される吐出媒体としての液体インクを貯蓄するタンク部(不図示)を開閉するための前カバーである。107は、記録装置101における操作環境の設定を行なうための入力手段としての操作パネルである。
【0013】
記録ヘッド102は、シアン(C)インクを吐出する記録ヘッド102C、マゼンダ(M)インクを吐出する記録ヘッド102M、イエロー(Y)インクを吐出する記録ヘッド102Y、ブラック(K)インクを吐出する記録ヘッド102Kの4つである。記録ヘッド102は、チューブを介してインクタンク(不図示)に連結されており、このインクタンクからインクが供給される。記録ヘッド102における吐出口形成面302(図4(a),(b)参照)には、記録用紙104の搬送方向と交差する方向に列状に並ぶ複数の吐出口が形成されており、その吐出口列の長さが記録用紙104の幅に対応する。つまり、吐出口列は、記録用紙104における記録領域の幅方向の全域に渡って延在している。
【0014】
また記録ヘッド102は、チューブ(図示省略)、チューブコネクタ(図示省略)、およびチューブステーション(図示省略)に接続されている。インクタンク内のインクは、このチューブを介して記録ヘッド102に供給される。記録ヘッド102内部には、このチューブを介して供給されたインクを貯蔵する共通液室が形成されている。この共通液室は、インク路を経由して各吐出口に連通しており、通常、インクは吐出口およびインク路内に充填されている。インク路には、各吐出口に対応して発熱ヒータ(電気熱変換体)が備えられている。吐出口からのインクの吐出時は、その吐出口に対応する発熱ヒータを急激に加熱させることにより、インクに膜煮沸を生じさせて、瞬間的に気泡を発生させる。この気泡の生成圧力を利用して、吐出口からインク滴を吐出させる。なお、インク滴の吐出方式は、このようなバブルジェット方式のみに限らず、ピエゾ素子等の圧電素子を利用した方式などであってもよい。
【0015】
3は、非記録時に記録ヘッド102の吐出口を保護するための回復ユニットである。この回復ユニット3は、図3(a)に示すように、記録ヘッド102の吐出口形成面302を覆って吐出口を保護するキャップ部材としての回復桶301K〜301Yを備えている。回復桶301K〜301Yは、非記録時に、記録ヘッド102の吐出口形成面302の全体を覆って、吐出口が外気にさらされないようにする。これにより、吐出口内のインク成分の蒸発、および吐出口への塵埃の付着が防止される。以下においては、このような記録ヘッド102の吐出口が保護される状態を保護状態という。尚303K〜303Yは記録ヘッド102K〜102Yの吐出口形成面302をクリーニングするためのワイパブレードである。
【0016】
カラー記録時は、図3(b)に示すように、記録ヘッド102K〜102Yが一旦上昇し次に回復桶301K〜301Yが矢印図左方向にずれて、その後記録ヘッド102K〜102Yが記録位置に下がる。すなわち、まず、後述の記録ヘッドモータによって記録ヘッド102K〜102Yを昇降させるヘッド駆動系中の後述のクラッチを接続して、その記録ヘッドモータを正転駆動させることにより、記録ヘッド102K〜102Yが鉛直方向に持ち上がって回復桶301K〜301Yから上方に離脱する。一方、後述の回復桶モータによって後述のクラッチを接続して、その回復桶モータを正転駆動させることにより、回復桶301K〜301Yが矢印方向にスライドする。その後再び、記録ヘッドモータを逆転駆動させることにより、記録ヘッド102K〜102Yが下降して、図3(b)のように記録位置で静止する。記録媒体104は記録ヘッド下部を矢印P方向に搬送される。
【0017】
これに対してモノクロ記録時は、図3(c)に示すように、記録ヘッド102Kのみが一旦上昇し次に回復桶301Kが矢印図左方向にずれて、その後記録ヘッド102Kが記録位置に下がる。すなわち、まず、後述の記録ヘッドモータによって記録ヘッド102Kのみを昇降させるヘッド駆動系中の後述のクラッチを接続して、その記録ヘッドモータを正転駆動させることにより、記録ヘッド102Kが鉛直方向に持ち上がって回復桶301Kから上方に離脱する。一方、後述の回復桶モータによって後述のクラッチを接続して、その回復桶モータを正転駆動させることにより、回復桶301Kのみが矢印方向にスライドする。その後再び、記録ヘッドモータを逆転駆動させることにより、記録ヘッド102Kが下降して、図3(c)のように記録位置で静止する。記録媒体104は同じく矢印P方向に搬送される。
【0018】
図5は、インクジェット記録装置101における制御系のブロック構成図である。
図5において601は、記録装置全体を制御するメインコントローラであり、後述する入力データの格納手段、データ制御手段、および設定手段としての機能などを有する。このメインコントローラ601はホストコンピュータ(ホスト装置)600に接続されていて、互いに信号の授受を行なう。602Aは、メインコントローラ601に接続され、後述図7のフローに対応する制御プログラムなどを格納するROMである。メインコントローラ601は、それらのプログラムにしたがってRAM602Bを作業用メモリとして機能させる。604Dは、搬送部105における記録用紙搬送用のフィードモータ604を駆動するモータドライバである。605Dは、記録ヘッド102の回復系における回復系モータ605を駆動するモータドライバである。その回復系は、回復系モータ605によって、記録ヘッド102内に存在する増粘インクなどを吐出口から回復桶301内に吸引排出させる回復処理を実行する。吐出口からのインクの吸引排出は、記録ヘッド102の吐出口形成面302を覆った状態の回復桶301内に、負圧を導入することによって実行することができる。
【0019】
606Dは記録ヘッドモータ606を駆動するモータドライバであり、その記録ヘッドモータ606は、記録ヘッド102のそれぞれに対応する記録ヘッド駆動系における共通の駆動源である。記録ヘッド駆動系は、前述したように、対応する記録ヘッド102を昇降させる。608,609,610,611は、それぞれ記録ヘッド102(102Y,102M,102C,102K)に対応する記録ヘッド駆動系と記録ヘッドモータ606との間に備わるクラッチであり、これらのクラッチ608,609,610,611の接続状態に応じて、記録ヘッド102Y,102M,102C,102Kの内の1つ以上を選択的に昇降させることができる。607Dは回復桶モータ607を駆動するモータドライバであり、その回復桶モータ607は、記録ヘッド102のそれぞれに対応する回復桶駆動系における共通の駆動源である。回復桶駆動系は、前述したように、対応する回復桶301をスライドさせる。612,613,614,615は、それぞれ記録ヘッド102(102Y,102M,102C,102K)毎の回復桶301に対応する回復桶駆動系と回復桶モータ607との間に備わるクラッチであり、これらのクラッチ612,613,614,615の接続状態に応じて、記録ヘッド102Y,102M,102C,102Kに対応する回復桶301の内の1つ以上を選択的にスライドさせることができる。
【0020】
これらのクラッチ608〜615は、いずれもメインコントローラ601によって制御される。そして前述したように、記録ヘッド駆動系と回復桶駆動系の関連動作によって、記録ヘッド102のそれぞれを図3(a)のような保護状態または図3(b)のような記録可能状態に移行させることができる。
【0021】
616は、ホストコンピュータ600から送信されてきた画像データを格納するイメージバッファ(記録データ格納手段)であり、以降、VRAMともいう。618は、記録ヘッド102の発熱ヒータを駆動させる駆動回路である。メインコントローラ601に接続されたドライバコントローラ617は、イメージバッファ616に格納された画像データに基づいてヘッド駆動回路618を制御し、これにより記録用紙104に画像が記録される。
【0022】
図6(a)〜(g)は、ホストコンピュータ600から送信される制御コマンドの説明図である。
ホストコンピュータ600からの制御コマンドとしては、図6(a)のように、記録用紙104のサイズ等を設定する用紙設定コマンド201、同図(b)のように、記録データの基準となる設定が存在するフォーマットコマンド202、同図(c)のように文字の詳細情報を設定するデータコマンド203、同図(d)のようにイメージの詳細情報を設定するデータコマンド204、同図(e)のように記録モードを設定するモードコマンド205、同図(f)のように記録データの終了を示してジョブを開始するジョブ開始コマンド207が存在する。これらのコマンドは、同図(g)の記録コマンド転送208のように出力される。記録モードは、同図(e)のモードコマンドの記録モードデータ206により設定される。
【0023】
次に、図7にフローチャートにしたがって記録動作について説明する。
まず、ホストコンピュータ600から、前述した制御コマンドが送信される。メインコントローラ601は、ホストコンピュータ600から送られてきた記録モードデータ206(図6(e)参照)を獲得して解析する(ステップS1A)。その記録モードデータ206がフルカラーモードを示す場合には、ステップS1BからステップS1Cに進む。ステップS1Cにおいては、VRAM616を4つの領域に平等に分割して、それぞれを各色(K、C、M、Y)のインクに対応する記録ヘッド102(102K,102C,102M,102Y)に割り当て、そして、ホストコンピュータ600から送られてきた色毎の画像データを各々対応するVRAM616の領域に展開する。一方、記録モードデータ206がモノカラーモードを示す場合には、ステップS1BからステップS1Dに進み、ホストコンピュータ600から送信された画像データをVRAM616の全領域に展開する。記録モードがフルカラーモードまたはモノカラーモードのいずれであるかの情報は、RAM602Bの領域の一部に記憶される。
【0024】
このようにして、記録用紙104の1枚毎の画像データをVRAM616に展開する。そして、その展開が終了したときにステップS2からステップS3に進み、搬送部105を動作させる。さらに、回復ユニット3により保護されている記録ヘッド102の内から、記録に使用する記録ヘッド102を記録モードに基づいて判断し、その記録に使用する記録ヘッド102を図3(b)のような記録可能状態とする(ステップS4)。すなわち、記録に使用する記録ヘッド102に対応する記録ヘッド駆動系と、その記録ヘッド102の回復桶201に対応する回復桶駆動系を関連的に動作させることにより、前述したように、記録に使用する記録ヘッド102をそれに対応する回復桶201から離脱させて、それを所定の記録位置に移動させて記録可能状態とする。全ての記録ヘッド102(102K,102C,102M,102Y)を使用してフルカラーモードで記録を行なう場合には、図4(a)のように、それら全ての記録ヘッド102を記録可能状態とする。また、例えば、記録ヘッド102Kのみを使用してモノカラーモードで記録を行う場合には、その記録ヘッド102Kのみが記録可能状態となり、他の記録ヘッド102C,102M,102Yは図3(a)のような保護状態のままとなる。
【0025】
その後、給紙部103を動作させて、記録用紙104を一枚ずつ搬送部105へ送る(ステップS5)。記録可能状態とされた記録ヘッド102は、以下のようなタイミングでインクを吐出して記録を行なう(ステップS6)。
【0026】
まず、搬送部105に送られた記録用紙104は、搬送部105の動作にしたがって、一定の速さで搬送部105上を矢印q方向へ搬送される。フォトインタラプタである入り口センサ111は、記録ヘッド102よりも給紙部103寄りに配置されており、搬送されてくる記録用紙104の先端を検知したときに、その検知信号をメインコントローラ601へ送る。搬送部105は、この検知信号の出力時点から、搬送部105の駆動用パルスモータとしてのフィードモータ604(図5参照)の駆動パルス数をカウントし、そのカウント数に基づいて、記録可能状態の記録ヘッド102からインクを吐出させる。
【0027】
例えば、全ての記録ヘッド102(102K,102C,102M,102Y)を使用してフルカラーモードで記録を行なう場合には、フィードモータ604の駆動パルス数が所定数P1に達したときに、4つの記録ヘッド102の内、矢印q方向の最も上流側に配置されているブラックインク吐出用の記録ヘッド102Kと対峙する位置まで記録用紙104が搬送されてきたと判断し、その記録ヘッド102Kから、画像データに基づいてブラックのインク滴を吐出させる。その後、フィードモータ604の駆動パルス数が所定数P2に達したときに、シアンインク吐出用の記録ヘッド102Cと対峙する位置まで記録用紙104が搬送されてきたと判断し、その記録ヘッド102Cから、画像データに基づいてシアンのインク滴を吐出させる。その後、同様にして、フィードモータ604の駆動パル数が所定数に達したときに、記録ヘッド102Mおよび102Yと対峙する位置まで記録用紙104が搬送されてきたと判断し、それらの記録ヘッド102Mおよび102Yから、画像データに基づいてマゼンタおよびイエローのインク滴を吐出させる。このように、フルカラーモードの場合には、矢印q方向の上流側に配置された記録ヘッド102から順に、全ての記録ヘッド102(102K,102C,102M,102Y)を稼動させて、記録用紙104の全体にフルカラーの画像を記録する。
【0028】
また、例えば、記録ヘッド102Kのみを使用してモノカラーモードで記録を行なう場合には、フィードモータ604の駆動パルス数が所定数P1に達したときに、その記録ヘッド102Kと対峙する位置まで記録用紙104が搬送されてきたと判断する。そして、そのときから、画像データに基づいて記録ヘッド102Kからブラックのインク滴を吐出させる。これにより、ブラックインクのみによるモノカラーの画像が記録されることになる。他の記録ヘッド102C,102M,102Yのいずれかを用いてモノカラーの画像を記録する場合も同様である。
【0029】
その後、フィードモータ604の駆動パルスのカウント数が記録用紙104の矢印q方向の長さに対応する数となったとき、すなわち記録用紙104の1枚分に記録が完了したときに、使用する記録ヘッド102からのインクの吐出を終了する。そして、その記録ヘッドは、図3(b)のような記録可能状態のまま待機する。
【0030】
次に、図7中のステップS7において、さらに記録すべき画像データがVRAM616に展開されている場合、すなわち、次の記録用紙104に記録する画像データがある場合には、上述した記録ヘッド102による記録動作(ステップS6)を繰り返す。つまり、搬送部105が次の記録用紙104を所定位置に搬送し、入り口センサ111が検知信号を出力したときからフィードモータ604の駆動パルス数をカウントし始め、そのカウント数に応じて記録ヘッド102がインクの吐出動作を開始する。
【0031】
一方、VRAM616に展開された画像データがなく、さらにホストコンピュータ600から送信されてくる新しい画像データがない場合には、記録が全て終了したと判断してステップS8に進む。ステップS8においては、ステップS6の記録動作において使用した記録ヘッド102を図3(b)のような保護状態とする。結局、図4(b)のように、全ての記録ヘッド102が保護状態となる。その後、記録が完了した記録用紙104が積載部106に積載された時点において、搬送部105および給紙部103の動作を停止させて(ステップS9)、一連の記録動作を終了する。
【0032】
このように、記録モードとしてモノカラーモードが指定された場合には、記録に使用する記録ヘッドのみを記録状態に移行させ、使用しない記録ヘッドは保護状態のまま維持する。これにより、記録に使用されない記録ヘッドの保護状態を維持して、記録画像の品質の劣化を防ぐことができる。
【0033】
(他の実施形態)
第1の実施形態においては、ホストコンピュータから送信される制御コマンドに基づいて、記録モード(フルカラーモードまたはモノカラーモード)を識別したが、操作パネル107(図1参照)からユーザーにより入力される入力データに基づいて記録モードを判断してもよい。
【0034】
また、本発明は、第1の実施形態のようないわゆるフルラインタイプの記録装置のみならず、シリアルスキャンタイプの記録装置に対しても適用することができる。
【0035】
また、記録モードとしては、フルカラー記録モードおよびモノカラー記録モード以外に、使用する記録ヘッドが異なる種々の記録モードを含めることができる。また、モノカラー記録モードにおいては、同色のインクまたは異なる色のインクを吐出する複数の記録ヘッドを用いて、モノカラーの画像を記録してもよい。また、記録に用いる記録ヘッドは記録可能な記録可能状態とする必要があるものの、記録に用いられない記録ヘッドは、保護状態の他、記録可能状態以外の他の非記録可能状態とすることができる。その場合、その非記録可能状態は、少なくとも記録ヘッドが記録可能状態にあるときよりも記録ヘッドの良好なインク吐出性能が維持しやすい状態とする。
【0036】
また、記録ヘッドの保護状態は、回復桶のようなキャップ部材によって吐出口を覆う状態のみに特定されず、要は、記録ヘッドの吐出口を保護できる状態であればよい。キャップ部材として回復桶を用いた場合には、前述したように、記録ヘッドの吐出口から画像の記録に寄与しないインクを吸引排出させる吸引排出処理時に、その吸引排出したインクを回復桶内にて受容して排出することができる。また、その回復桶内に向かって、記録ヘッドの吐出口から画像の記録に寄与しないインクを吐出(予備吐出)させる回復処理させてもよく、その場合には、予備吐出したインクを回復桶内に受容して排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のインクジェト記録装置の構成例を説明するための概略斜視図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置の概略正面図である。
【図3】(a)は、図1における記録ヘッドの保護状態における要部の側面図、(b)は、その記録ヘッドによるカラー画像の記録可能状態における要部の側面図、(c)は、その記録ヘッドによる単色画像の記録可能状態における要部の側面図である。
【図4】(a)は、図1における記録ヘッドの全てが記録可能状態にあるときの要部の概略正面図、(b)は、それらの記録ヘッドの全てが保護状態にあるときの要部の概略正面図である。
【図5】図1のインクジェット記録装置における制御系のブロック構成図である。
【図6】(a)〜(g)は、図5におけるホストコンピュータから送信される制御コマンドの説明図である。
【図7】図1のインクジェット記録装置による一連の記録動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
3 回復ユニット
101 インクジェット記録装置
102 記録ヘッド
102K ブラックインク吐出用記録ヘッド
102C シアンインク吐出用記録ヘッド
102M マゼンダインク吐出用記録ヘッド
102Y イエローインク吐出用記録ヘッド
104 記録用紙(記録媒体)
105 搬送部
301 回復桶
302 吐出口形成面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出可能な複数の記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、
複数の記録モードに応じて、前記複数の記録ヘッドを選択的に用いて記録を行う記録制御手段と、
前記記録制御手段によって記録に用いられる前記記録ヘッドを記録可能状態とし、かつ前記記録制御手段によって記録に用いられない前記記録ヘッドを非記録可能状態とする状態変更手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記複数の記録ヘッドは、フルカラーの画像の記録が可能な異なるインクを吐出可能であり、
前記記録制御手段は、前記記録モードがフルカラー記録モードのときに前記複数の記録ヘッドの全てを用いてフルカラーの画像を記録し、前記記録モードがモノカラー記録モードのときに前記複数の記録ヘッドの内の少なくとも1つを用いてモノカラーの画像を記録する
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記録ヘッドの非記録可能状態は、該記録ヘッドのインク吐出口を保護する保護状態を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記状態変更手段は、前記記録制御手段によって記録に用いられない前記記録ヘッドを保護状態とするときに、該記録ヘッドのインク吐出口をキャップ部材によって覆うことを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドのインク吐出口から画像の記録に寄与しないインクを排出させる回復処理手段を備え、
前記キャップ部材は、前記記録ヘッドのインク吐出口から排出されるインクを受容可能な回復桶である
ことを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記記録制御手段は、前記複数の記録モードに対応するコマンドをホスト装置から受信することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記複数の記録モードに対応する情報を入力可能な入力手段を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記記録媒体を所定方向に搬送する搬送手段を備え、
前記記録ヘッドは、複数のインク吐出口を前記記録媒体の搬送方向と交差する方向に沿って列状に、かつ前記記録媒体における記録領域の幅方向の全域に渡って有する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−51715(P2006−51715A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235584(P2004−235584)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】