説明

インクジェット記録装置

【課題】装置全体の小型化を実現するとともに周辺に設置される機器を含めた設置スペースの省スペース化を実現し、操作性、メンテナンス性を向上させるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクを吐出するインクジェットヘッド12K,12C,12M,12Yと、インクジェットヘッドを主走査方向に走査させるキャリッジと、インクジェットヘッドの垂直方向下側に配置されインクジェット記録装置10の正面側から着脱可能な給紙部18と、給紙部18からインクジェットヘッドのインク吐出を受ける記録領域へ記録紙16を搬送する搬送ローラと、インクジェットヘッドに供給するインクが収容され、インクジェット記録装置10の正面側から着脱可能なインクカートリッジ14と、インクカートリッジ14からインクジェットヘッドへのインク供給路と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に係り、特に装置全体の小型化を実現するインクジェット記録装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラにより撮影された画像などを印刷記録する記録装置としてインクジェット記録装置(インクジェットプリンター)が普及している。インクジェット記録装置はヘッドに複数のノズルを備え、このノズルから記録媒体にインク液滴を吐出して記録媒体上に所望の画像が記録される。インクジェット記録装置はパソコン、スキャナー、デジタルカメラなどの他の機器と同じ机上に設置されることが多くなり、1つの机上に多数の機器をコンパクトに設置するためにこれらの機器を積み重ねて設置することがある。したがって、装置全体を小型化、薄型化することで設置スペースの省スペース化を図るとともに、電源オンオフなどの操作や給紙、インクの交換などのメンテナンスを行う面を共通化して操作性、メンテナンス性の向上を図っている。
【0003】
特許文献1に記載された発明は、必要なときのみインクカートリッジを記録ヘッドに接続し、インクを供給する方法を採用し、装置内のインク供給系の構造を簡素化して装置全体の小型化を実現している。
【0004】
また、特許文献2、3の発明は、装置の前面側からインク供給体の交換、給紙、排紙を行うことができる構造を有するインクジェット記録装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−338383号公報
【特許文献2】特開2003−200597号公報
【特許文献3】特開2003−200598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、給紙カセットが背面側に搭載されるので装置の奥行きのサイズを小さくすることが難しく、装置の背面側に給紙カセットを着脱するためのスペースが必要であり設置面積を省スペース化することができない。また、インクカートリッジを側面側から挿抜する構造であり、側面側にもインクカートリッジを挿抜するためにスペースが必要になる。
【0006】
また、特許文献2、3に記載された発明では、インクカートリッジをキャリッジに搭載する場合、キャリッジにインクカートリッジを搭載するスペースが必要になりキャリッジが大型化する。特許文献2の図16や特許文献3の図27のようなたて型のインクカートリッジを用いる態様では装置の高さ方向をコンパクトにすることが難しくなる。
【0007】
インクカートリッジをキャリッジに搭載しない場合には、インクカートリッジと記録ヘッド(キャリッジ)とをつなぐチューブが存在し、このチューブを装置内に収納するためのスペースが必要となる。このチューブの寸法は記録ヘッドの走査方向の寸法(幅方向)に対応する長さを有しているので、装置の幅方向の寸法を小さくすることが困難である。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、装置全体の小型化を実現するとともに周辺に設置される機器を含めた設置スペースの省スペース化を実現し、操作性、メンテナンス性を向上させるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明に係るインクジェット記録装置は、ノズルから記録媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを前記記録媒体の幅方向に走査させる走査手段と、前記インクジェットヘッドの垂直方向下側に配置され、装置正面側から着脱可能な前記記録媒体が収納される記録媒体供給手段と、前記記録媒体供給手段から前記インクジェットヘッドのインクの吐出を受ける記録領域へ前記記録媒体が搬送されるとともに、前記記録領域において前記走査方向と略直交方向に前記記録媒体を搬送する搬送手段と、前記インクジェットヘッドに供給するインクが収容され、装置の垂直方向における前記インクジェットヘッドと前記記録媒体供給手段との間に配置され、前記装置正面側から着脱可能なインクカートリッジと、前記インクカートリッジと前記インクジェットヘッドとの間に設けられるインク供給路と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、インクジェットヘッドの垂直方向下側に記録媒体供給手段を配置し、インクジェットヘッドに供給されるインクを収容するインクカートリッジを垂直方向のインクジェットヘッドと記録媒体供給手段との間(即ち、記録媒体の搬送スペース)に配置し、更に、記録媒体供給手段及びインクカートリッジを装置正面側から装置に着脱可能に構成するので、装置が小型化されるとともに、装置上面側をフリースペースにすることで他の機器を装置上面側に設置可能である。特に、記録媒体供給手段の装着方向となる奥行き方向の小型化に効果がある。
【0011】
インクジェットヘッドの垂直方向下側にインクカートリッジを備えることで、インクジェットヘッド(インクジェットヘッドインク吐出面)とインクカートリッジとの揚水高さ(水頭圧差)によりインクジェットヘッド内に負圧を発生させる。
【0012】
また、インクジェットヘッドのインク吐出面における内圧が大気圧に対して−100Pa〜−500Paとなるようにインクカートリッジの垂直方向の距離(高さ)が設定される。
【0013】
複数色のインクを用いる態様では、各色のインクカートリッジを備え、各色のインクカートリッジがインクジェットヘッドからの垂直方向の距離が略同一となるように、各色のインクカートリッジが配置される。装置正面とは、装置が設置されたときに使用者と向かい合う面であり、装置の上面及び底面を除く面である。この装置正面は略平面や略球面でもよいし、角(稜線)をはさむ2つの面から構成されてもよい。
【0014】
記録媒体には、インクジェットヘッドによって吐出されるインクを受ける媒体であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
【0015】
記録媒体を搬送する搬送手段には、記録媒体供給手段から取り出された記録媒体を垂直方向上側(垂直方向上側を含む方向)にインクジェットヘッドの記録領域と垂直方向の略同一面へ搬送する垂直搬送部と、インクジェットヘッドの記録領域へ記録媒体を水平に搬送する水平搬送部と、を備える態様がある。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のインクジェット記録装置の一態様に係り、前記インクジェットヘッドの走査領域の少なくとも一方の端部に設けられ、前記インクジェットヘッドと前記インク供給路とを連結及び離間させる連結部を備え、前記インクジェットヘッド内にインクを供給する場合には前記連結部において前記インクジェットヘッドと前記インク供給路とを連結させ、前記インクジェットヘッドの印字実行時には前記インクジェットヘッドと前記インク供給路とを離間させることを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、インクジェットヘッドとインク供給路とを連結及び離間可能に構成することで、装置内においてインク供給路を引き回す必要がなくなり、インク供給路をコンパクトに配置することができる。
【0018】
インクジェットヘッドとインク供給路が離間している状態では、連結部のインクジェットヘッド側及びインク供給路側とも閉じるように構成するために逆支弁構造などの開閉手段を備える態様が好ましい。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載のインクジェット記録装置の一態様に係り、前記連結部と、前記連結部と、前記インク供給路と、前記インクカートリッジを収納するインクカートリッジ収納部と、を有し、前記装置正面側から装置と着脱可能に構成されるとともに、前記装置正面側に前記インクカートリッジを挿入する挿入口を有し、前記インクジェットヘッドの走査領域の垂直方向下側に配置されるサブカートリッジを備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、インクジェット記録装置とインク供給系との連結部やインク供給系の構造をサブカートリッジ内にまとめることで、装置内のインク供給系が占有するスペースをコンパクトにまとめることができ、更に、サブカートリッジ及びインクカートリッジがともに装置正面側から操作可能であり、操作性が向上する。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載のインクジェット記録装置の一態様に係り、前前記インクジェットヘッドの回復処理を行う回復処理手段を備え、前記サブカートリッジは、前記回復処理手段による前記インクジェットヘッドの回復処理時に生じた廃インクが収容され、前記サブカートリッジと着脱可能な廃インク収容部を備えたことを特徴とする。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、インクジェットヘッドの回復処理時に出る廃インクの除去が容易になる。例えば、廃インクで一杯になった廃インク収容部のみを交換可能である。
【0023】
回復処理手段には、インクジェットヘッドのインク吐出面に密着させてインクジェットヘッド内のインクの乾燥を防止するとともに、予備吐出時のインク受けとなるキャップを備える態様がある。また、該キャップにポンプなどの吸引手段を接続してインクジェットヘッド内のインクを吸引する態様もある。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4記載のインクジェット記録装置の一態様に係り、前記サブカートリッジは、前記インクジェットヘッドの走査領域に対応する領域に、全面印字時において前記記録媒体の縁の外周に吐出されるインクを受容し、前記サブカートリッジと着脱可能なインク受容部を備えたことを特徴とする。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、インク受容部が汚れた場合にインク受容部のみを交換可能である。また、インク受容部を清掃する場合にもサブカートリッジから取り外すことで作業性の向上が見込まれる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載のインクジェット記録装置の一態様に係り、前記インク受容部は、前記記録媒体の前記印字領域における搬送ガイドと兼用されることを特徴とする。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、インクジェットヘッドの記録領域の構造を簡素化することができる。
【0028】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のうち何れか1項に記載のインクジェット記録装置の一態様に係り、前記インクジェットヘッド内のインク流路と連通し、第1の開閉部材を具備し前記連結口に連結されるインク供給口と、前記インクジェットヘッドと前記インク供給口との間に設けられ壁面の一部に弾性変形部材を有するサブタンクと、を有する負圧維持部を備え、前記負圧維持部は、前記インクジェットヘッドのインク供給時には前記インク供給路と連結されて前記インクジェットヘッドと前記インクカートリッジとの水頭圧差に前記インクジェットヘッドの内部圧力を維持し、前記インクジェットヘッドの印字実行時には前記第1の開閉部材を閉めて内部を密閉することを特徴とする。
【0029】
請求項7に記載の発明によれば、簡単な構造でインクジェットヘッドの内部圧力を維持することができるので、インクジェットヘッドとインク供給系を離間した場合にポンプなどを用いて負圧を維持する必要がなく、装置の構成をコンパクトにすることができる。
【0030】
インクジェットヘッド内のインクが減少するとインクジェットヘッド内の負圧が大きくなる(即ち、インクジェットヘッドの内部圧力が下がる)ので、インクジェットヘッドの内圧が所定のしきい値を下回るとインクジェットヘッドとインク供給路を連結させ、インクジェットヘッドの内部圧力をインクジェットヘッドとインクカートリッジとの水頭圧差に復帰させればよい。
【0031】
サブタンクを構成する面の1面以上に可塑性膜が設けられる態様が好ましい。可塑性膜が設けられる面は全体を可塑性膜で形成してもよいし、その一部に可塑性膜を設けてもよい。
【0032】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のうち何れか1に記載のインクジェット記録装置の一態様に係り、前記弾性変形部材の変形量によって前記サブタンクの容積変化を検出する容積検出手段と、前記検出手段に検出結果に基づいて前記インクジェットヘッド内部の圧力を判断し、前記インクジェットヘッド内部の圧力に応じて前記インクジェットヘッドと前記インク供給路との着脱を行うことを特徴とする。
【0033】
請求項8に記載の発明によれば、簡単な方法でインクジェットヘッド内の圧力を検出することができる。
【0034】
サブタンクの容積変化量を検出する一態様として弾性変形部材の変形量からサブタンクの容積変化を知る態様がある。即ち、容積検出手段は弾性変形部材(例えば、サブタンクの一壁面に設けられた可塑性膜)の変形によって移動するアクチュエータ(容積変換手段)と、該アクチュエータの移動位置を検出する検出素子とを備える態様がある。
【0035】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8記載のインクジェット記録装置の一態様に係り、前記負圧維持部は、前記負圧維持部は、前記サブタンクの上側に位置し、前記サブタンク内のインクから分離された気泡が滞留する気泡溜まり部と、前記気泡たまり部に滞留する気泡を排出する気泡排出口と、を有し、前記気泡排出口と前記負圧維持部の上部で連通する第2の開閉部材を具備する気泡排出路と、前記気泡排出路の前記気泡排出口と反対側の端部から前記負圧維持部内を吸引する吸引手段と、を備えたことを特徴とする。
【0036】
請求項9に記載の発明によれば、サブタンク及び気泡溜まり部を介してヘッド内に流入した気泡を外部に排出可能に構成されるので、ヘッド内への気泡混入による吐出異常を未然に防ぐことができる。
【0037】
吸引手段は、ポンプなどの吸引装置(吸引部材)と、該吸引装置を制御する吸引制御手段と、を備える態様がある。吸引制御手段を装置の制御系に含まれる他の制御系と兼用してもよい。
【0038】
第2の開閉部材(気泡排出路開閉部材)には、サブタンクから吸引手段の方向へのみ吸引可能とする一方向連通機構(例えば、逆支弁)を適用する態様が好ましい。第2の開閉部材の制御の一例を挙げると、印字実行時や印字待機時にはサブタンク(インクジェットヘッド)内の負圧を維持し(第2の開閉状態を閉状態とし)、気泡排出時には第2の開閉手段を開状態とすることでサブタンク内の気泡排出を排出する制御がある。
【0039】
請求項10に記載の発明は、請求項9記載のインクジェット記録装置の一態様に係り、前記吸引手段は、前記インクジェットヘッドのインク吐出面からインクジェットヘッド内部を吸引手段と兼用されることを特徴とする。
【0040】
請求項10に記載の発明によれば、気泡排出用の吸引手段を個別に持たずにインクジェットヘッド内の気泡排出を可能にし、装置の小型化、構成の簡略化を実現し、コストダウンに寄与する。
【0041】
サブタンクと連通する気泡排出路のサブタンク(気泡留め部)と反対側の端部をインクジェットヘッドのノズル形成面近傍に配置する態様が好ましい。
【0042】
請求項11に記載の発明は、請求項10記載のインクジェット記録装置の一態様に係り、前記吸引手段を用いて、前記負圧維持部の前記気泡排出口から吸引を行うか、或いは前記インクジェットヘッドのインク吐出面から吸引を行うかを切り換える吸引切換手段を備えたことを特徴とする。
【0043】
請求項11に記載の発明によれば、気泡排出口からの吸引とインク吐出面からの吸引を切換可能に構成することで、サブタンク内(インクジェットヘッド内)の気泡排除をインク吐出面から行うことなく実施できるので、ヘッドの内の気泡排除をインク吐出面から実行する従来の吸引に比べて、吸引による無駄なインクの消費量を抑えることができる。
【0044】
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至9のうち何れか1項に記載のインクジェット記録装置の一態様に係り、記インクカートリッジは、内部が大気と連通可能なインクカートリッジ容器と、前記インクカートリッジ容器内部に収納され、インク量の減少に伴い垂直方向に折りたたみ可能な折り目を有し、前記インクカートリッジ容器と相似形状の平面形状を持つインク収容部材と、を備えたことを特徴とする。
【0045】
請求項12に記載の発明によれば、インク収容部材の厚み(垂直方向の長さ)を検出することでインク収容部材内のインク残量を容易に知ることができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、インクジェットヘッドの垂直方向下側に記録媒体供給手段を配置し、インクジェットヘッドに供給されるインクを収容するインクカートリッジを垂直方向のインクジェットヘッドと記録媒体供給手段との間(即ち、記録媒体の搬送スペース)に配置し、更に、記録媒体供給手段及びインクカートリッジを装置正面側から装置に着脱可能に構成するので、装置が小型化されるとともに、装置上面側をフリースペースにすることで他の機器を装置上面側に設置可能である。特に、記録媒体供給手段の装着方向となる奥行き方向の小型化に効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0048】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド(インクジェットヘッド)12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインクカートリッジ14(14K,14C,14M,14Y)と、記録紙16を供給する給紙部18と、ガイドシャフト20に支持されながらガイド22に沿って印字部12を記録紙搬送方向と略直交する主走査方向に走査させるキャリッジ24と、印字部12が有する各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのそれぞれに連結され、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの内部に負圧を発生させる印字ヘッドと同数の負圧維持部26と、を備えている。
【0049】
給紙部18には、所定のサイズに切断されたカット紙が装填される給紙カセットを用いる方式が適用される。複数のサイズの記録紙16に印字を行う場合には、給紙部18に装着されている給紙カセットを取り出し、所望のサイズの記録紙16が装填された給紙カセットに交換する。なお、同一サイズの異なる紙種の記録紙16を装填したカセットを用意してもよい。
【0050】
このように、インクジェット記録装置10は複数種類の記録紙を利用可能に構成されており、給紙カセットには装填される記録紙16の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体が取り付けられ、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、インクジェット記録装置10は使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて装置内の各部が制御される。例えば、記録紙16の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行ってもよい。
【0051】
給紙部18に装填された記録紙16は、給紙ローラ30の回動によって搬送路32に送り出され、搬送路32に設けられた搬送ローラ34に沿って垂直方向上側に搬送されるとともに、搬送路32において表裏が反転されて(搬送路32内で1回ターンして)印字部12の直下へ送られる。記録紙16は、印字部12の直下において搬送ローラ36によって所定の平面性を維持されながら一定の搬送ピッチで水平面内の所定の搬送方向(副走査方向、矢印線で図示)に送られる。
【0052】
記録紙16が印字部12の直下の印字領域に到達すると、キャリッジ24を主走査方向に走査させながら、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの記録紙16と対向する面に設けられたノズルから各色インクを吐出させて主走査方向の印字を実行する。1回の主走査方向に印字が終わると、記録紙16は副走査方向に所定の距離だけ送られ、キャリッジを主走査方向に移動させながら主走査方向の印字が行われる。このようにして、副走査方向に記録紙16を一定ピッチずつ搬送方向へ送りながら主走査方向の印字を繰り返すことで、記録紙16の全面にわたって所望の画像が記録される。所望の画像が形成された記録紙16は、所定の搬送方向に送られて排紙部38から装置外部に排出される。
【0053】
各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのそれぞれに供給されるインクを貯蔵しておくインクカートリッジ14(Kインクに対応するKインクカートリッジ14K、Cインクに対応するCインクカートリッジ14C、Mインクに対応するMインクカートリッジ14M、Yインクに対応するYインクカートリッジ14Y、これらを総称してインクカートリッジ14と記載する。)は、装置本体と分離可能なサブカートリッジ140に設けられる挿入口(不図示)に装着される。インクカートリッジ14がサブカートリッジ140に装着されると、インクカートリッジ14はサブカートリッジ140の内部に設けられたインク供給路(図1には不図示、図5に符号146で模式的に図示)と連通する。
【0054】
本例に示すインクジェット記録装置10では、サブカートリッジ140はインクカートリッジ14を装置の前面側から着脱可能な構造を有し、装置本体はインクカートリッジ14が装着されるサブカートリッジ140を装置前面側から装置本体に着脱可能な構造を有している。
【0055】
即ち、装置本体にはサブカートリッジ140を挿入するサブカートリッジ挿入口が正面に設けられ、サブカートリッジにはインクカートリッジ14を挿入するインクカートリッジ挿入口(図1には不図示、図5に符号142K,142C,142M,142Yで図示)が前面(サブカートリッジ140を装置本体に装着したときの装置前面に対応する面)に設けられている。
【0056】
〔印字ヘッドの構造〕
次に、印字ヘッドの構造について詳説する。各色インクに対応する印字ヘッド12K,12C,12M,12Yは同一構造を有しているので、これらを符号50で表すことにする。
【0057】
図2には、ノズル51の配置例を示す。印字ヘッド50は、n個のノズル51(51-1〜51-n)を有し、このn個のノズルが2列に千鳥状に並べられている。このようにノズル51を千鳥配置することで、副走査方向における実質的なノズルピッチを小さくすることができる。図2に示すノズル配置における主走査方向の実質的なノズルピッチは隣接ノズル(例えば、ノズル51-1とノズル51-2)との副走査方向の距離hとなる。
【0058】
図3は、印字ヘッド50の立体構造を示す断面図である。ノズル51はインクが収容される加圧液室52と連通し、更に、各加圧液室52は複数の加圧液室52にインクを供給する共通流路55と連通する。
【0059】
また、加圧液室52の内部には、加圧液室52内のインクを加圧する加圧素子(ヒータ)58が設けられ、加圧素子58を駆動して加圧液室52内にバブルを発生させ、バブルの圧力によってノズル51からインクが吐出される。即ち、本例に示す印字ヘッド50には、ヒータの加熱エネルギーにより加圧液室に発生させたバブルの圧力をインクの吐出力に用いるサーマル方式が適用される。
【0060】
〔制御系の説明〕
図4は、インクジェット記録装置10のシステム制御系の構成を示すブロック図である。
【0061】
インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0062】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0063】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、ポンプドライバ75、モータドライバ76、バルブドライバ77、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0064】
ポンプドライバ75は、印字ヘッド50の回復処理部(図4の符号160)に設けられるポンプ292などのオンオフ制御や駆動方向の制御を行う制御ブロックである。
【0065】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバー(駆動回路)である。なお、図4には、複数のモータ及びこれらを駆動するモータドライバをモータドライバ76及びモータ88として図示したが、システムコントローラ72は複数のモータドライバ及びモータを制御している。
【0066】
一例を挙げると、図1に示す給紙ドラムを駆動するモータやキャリッジ24を動作させるモータ、記録紙16の搬送路に備えられる搬送ローラ34,36を駆動するモータなどがある。
【0067】
バルブドライバ77は、後述するインク供給系に備えられるバルブ288,290(図15参照)の開閉を行う制御ブロックである。
【0068】
また、ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがってのヒータ89を駆動するドライバーである。
【0069】
即ち、システムコントローラ72は、ポンプドライバ75、モータドライバ76、バルブドライバ77、ヒータドライバ78などの各部に制御信号を送出し、この制御信号に基づいてポンプドライバ75はポンプ292等のポンプを制御し、モータドライバ76はモータ88を制御し、バルブドライバ77はバルブ188,190を制御し、ヒータドライバ78はヒータ89を制御する。
【0070】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0071】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図3において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0072】
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド50に設けられた加圧素子58を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0073】
印字検出部94は、印字部12の印字結果を撮像するイメージセンサ(撮像素子、例えば、CCD)を含み、該イメージセンサによって読み取った読取結果からノズル51の目詰まりその他の吐出異常をチェックする手段として機能する。
【0074】
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部94から得られる情報に基づいて、印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
【0075】
印字ヘッド50は、印字ヘッド50内のインクの残量を検出する残量検出部を備えている。印字実行中には印字ヘッド50内のインク残量が定期的に検出され、インク残量が所定量を下回ると印字ヘッド50内にインクが補給される。
【0076】
また、図1に示すサブカートリッジ140には、インクカートリッジ14内のインク残量を検出する残量検出部92を備えている。残量検出部92から得られるインクカートリッジ14の残量情報は所定の表示手段により表示されるとともに、インクカートリッジ14内のインク残量が少なくなると報知手段によりその旨が報知される。
【0077】
〔サブカートリッジの説明〕
次に、サブカートリッジについて説明する。図5は、サブカートリッジ140の斜視図であり、図6はサブカートリッジ140を装置本体に装着した状態の装置上側から見た平面図である。図6では、印字ヘッド12K,12C,12M,12Y及びサブカートリッジ140以外の図示は省略されている。
【0078】
図5に示すように、サブカートリッジ140はその前面(正面)にインクカートリッジ14K,14C,14M,14Yが挿入されるインクカートリッジ挿入口142K,142C,142M,142Yが設けられている。インクカートリッジ挿入口142K,142C,142M,142Yを介してインクカートリッジ装着部144K,144C,144M,144Yにインクカートリッジ14K,14C,14M,14Yが装着されると、インクカートリッジ14K,14C,14M,14Yはサブカートリッジ140の内部に設けられたインク供給路146を介して、インク供給連結部148(148K,148C,148M,148Y)と連通する。図5にはインク供給路146を1本の線で模式的に図示したが、サブカートリッジ140の内部には各色のインクに対応するインク流路が個別に設けられている。
【0079】
インク供給連結部148は、サブカートリッジ140を装置本体に装着した状態における印字ヘッド50の走査領域の一方の端部に設けられる(図6参照)印字ヘッド50とサブカートリッジ140との連結部である。
【0080】
本例に示すインクジェット記録装置10は、印字ヘッド12K,12C,12M,12Yにインク充填が必要になると、印字ヘッド12K,12C,12M,12Yを搭載したキャリッジ24(図6参照)をインク供給連結部148が設けられる走査領域の一方の端部に移動させ、印字ヘッド12K,12C,12M,12Yが負圧維持部26を介してサブカートリッジ140と連結されるピットイン方式が採用される。
【0081】
サブカートリッジ140に設けられるインク供給連結部148はインク供給針204を含んで構成され、このインク供給針204は凸形状を有するとともに負圧維持部26のインク供給部149(図6に図示)と嵌合可能な形状を有している。なお、印字ヘッド50は、印字ヘッド50に接続される負圧維持部26を通じてサブカートリッジ140と連結されるが、本明細書では、印字ヘッド50が負圧維持部26を介してサブカートリッジ140と連結されることを、「印字ヘッド50がサブカートリッジ140と連結される」と記載することがある。
【0082】
印字ヘッド50がサブカートリッジ140に連結されると、インク供給路146及びインク供給連結部148、負圧維持部26(図1参照)を介して印字ヘッド50(12K,12C,12M,12Y)はインクカートリッジ14(14K,14C,14M,14Y)と連通する。本例に示すインクジェット記録装置10では、インクカートリッジ14は印字ヘッド50のノズル51の開口位置から鉛直方向の距離が10mm〜50mmとなるように配置される。
【0083】
即ち、印字ヘッド50とインクカートリッジ14との揚水高さにより、印字ヘッド50とインクカートリッジ14との間には水頭圧差が生じ、この水頭圧差は印字ヘッド50へインクを供給するときに印字ヘッド50内に発生させる負圧となる。
【0084】
印字実行時には、印字ヘッド50はサブカートリッジ140から離間し、負圧維持部26(図1参照)の機能によって印字ヘッド50の内部は所定の負圧が維持される。なお、負圧維持部26の詳細については後述する。
【0085】
印字ヘッド50とサブカートリッジ140が連結される印字ヘッド50の位置をホームポジションとし、記録待機中や印字処理開始時及び印字処理終了時、メンテナンス実行時には印字ヘッド50をホームポジションに移動させるようにキャリッジ24が制御される。
【0086】
サブカートリッジ140には、印字領域における記録紙16の搬送ガイドとなる搬送ガイド部150と、縁なし印字時の記録紙16の幅からはみ出したインクを受けるインク受容部152と、の機能を備えたガイド部材154を備えている。このガイド部材154は、その外縁部分に形成された凸部が印字領域における記録紙16の搬送ガイド部150となり、周囲を搬送ガイド部150(凸部)で囲まれた領域がインク受容部152となっている。
【0087】
このガイド部材154にインクなどの汚れが付着した場合には、ユーザがサブカートリッジ140から取り外して清掃または交換することができる。ガイド部材154には樹脂材料が好適に用いられる。インク受容部152に多孔質部材や不織布など液体を吸収する吸収部材を備え、インク受容部152が廃インクで一杯になるとガイド部材154から吸収部材のみを取り出すように構成すると、インク受容部152のメンテナンスが容易になる。
【0088】
サブカートリッジ140には、キャップ部(不図示)及びインク吸引部(不図示)を有する回復処理部160(図5には不図示、図6に図示)が配設される。回復処理部160は、印字ヘッド50がサブカートリッジ140に連結された状態(印字ヘッド50がホームポジションに位置する状態)で、印字ヘッド50のノズル51形成面直下に位置している。回復処理部160には、後述するキャップ282やバルブ288、ポンプ292(図15参照)を含む構成がある。
【0089】
印字処理開始前や印字待機中などの非印字時には、印字ヘッド50のノズル51形成面にキャップを密着させてノズル51内(印字ヘッド50内)のインクの乾燥を防止し、インクの粘度上昇による吐出異常を回避する。
【0090】
また、ノズル51内(印字ヘッド50内)に気泡が発生した場合やノズル51内の増粘インクをノズル51から除去する場合には、前記キャップをノズル51形成面に密着させてノズル51から印字ヘッド50内のすべてのインクを吸引し、印字ヘッド50にはインク供給部149側から新しいインクが供給される。
【0091】
サブカートリッジ140には、回復処理部160により吸引された廃インクを回収する廃インク回収部(廃インクタンク)162と、回復処理部160と廃インクタンク162とを連通させる廃インク流路164を備えている。
【0092】
廃インクタンク162は、サブカートリッジ140を装置本体から取り出した状態でサブカートリッジ140の下面側から取り外すことができる。したがって、廃インクカートリッジが廃インクで一杯になった場合には、サブカートリッジ140から取り外して新しい廃インクカートリッジに交換可能であり、廃インクタンク162のみを廃棄することができる。インク受容部152と廃インクタンク162とをチューブなどの流路部材を介して連通させ、インク受容部152に収容されるインクを廃インクタンク162に集めるように構成してもよい。
【0093】
上述したように、印字ヘッド12K,12C,12M,12Yへインクを供給するインク供給系と、インク受容部152や回復処理部160、廃インクタンク162から構成されるインク回収系と、をサブカートリッジ140内に集約して収納することでインクチューブの引き回しや廃インクのメンテナンスをユーザが容易に行うことができる。
【0094】
〔負圧維持部の説明〕
次に、負圧維持部26ついて詳説する。図7は、負圧維持部26の構造を示す概略構成図である。図7に示す負圧維持部26は、印字ヘッド50との連通口であるヘッド連通口170と、バルブ172を有しサブカートリッジ140のインク供給連結部148(図7には不図示)と連結されるインク供給部149と、印字ヘッド50へ供給されるインクが一旦貯留され、板バネ176及び可塑性膜178から構成される弾性変形部材を有し、その内部圧力の変化によって変形可能なサブタンク180と、負圧維持部26内の気体(例えば、印字ヘッド50から流入した気泡)が滞留する気泡溜まり部182と、を備えている。
【0095】
サブタンク180は、その内部圧力が大気圧力よりも小さい場合に少なくともその一部が弾性変形する構造を有し、サブタンク180の容積が収縮することで負圧を発生させる構造となっている。また、その内部圧力が大気圧力になった場合は、弾性変形の復元力でその容積は復元される。
【0096】
図7には、弾性変更部材として板バネ176と可塑性膜178を備えた態様を示す。図7に示す態様では、サブタンク180の少なくとも1つの壁面に板バネ176と可塑性膜178とを面同士で接着(溶着)させた弾性変形部材を備えている。なお、板バネ176と可塑性膜178との組み合わせによる弾性変形部材は上記構成以外にも、板バネ176と可塑性膜178とをサンドイッチ状にはさみ込んでこれらを溶着する構成でもよい。板バネ176の形状(弾性係数)は、弾性変形部材の変形量と変形時の発生圧力によって適宜設計される。
【0097】
上記構成によるサブタンク180は、その内部の圧力が大気圧の場合には板バネ176に変形力が作用しないが、印字ヘッド50(図7には不図示)側からインクを吸引して負圧を発生させると板バネ176はサブタンク180の容積を縮小する方向に変形し、サブタンク180の内部に負圧が発生するように構成されている。
【0098】
気泡溜まり部182は、排出口184を介して気泡流路186(気泡排出路)と連通し、気泡流路186にはバルブ188(第2の開閉部材)が設けられ、更に気泡流路186の排出口184(気泡排出口)と反対側の端部は気泡排出チャンバ(図15に符号280で図示)と連通している。
【0099】
図7に示すように、は印字ヘッド50から流入した気泡がその上部で滞留し、その気泡が引っかかることなく気泡の浮力にて上部の気泡溜まり部182に導かれる形状(例えば、半球形状)をなしている。
【0100】
図8(a),(b)には、バルブ188の構造例を示す。図8(a)に示すように、バルブ188は略球形状の逆支弁190と、負圧維持部26と連通する側(図8(a)における下側)に設けられる逆支弁190により封止可能な大きさの開口192と、気泡排出チャンバと連通する側(図8(a)における上側)に設けられ、逆支弁190の直径よりも大きな略円形状の内側に凸形状を有する(図8(b)参照、図8(b)は図8(a)の5b−5b線に沿う断面図)開口194と、を備えている。
【0101】
逆支弁190は、気泡排出チャンバ側のポンプ(図15に符号292で図示)により吸引されない状態では開口192と接触して開口192を封止し、気泡排出チャンバ側のポンプにより吸引される状態では開口194と接触し、逆支弁190と開口194の隙間から気泡が排出される。なお、図8(a),(b)に示すバルブ188の構造はあくまでも一例であり、逆支弁構造を有する他の構造を適用してもよい。
【0102】
図9(a),(b)には、負圧維持部26のインク供給部149に設けられるバルブ172(第1の開閉部材)の構造例を示す。図9(a)には、負圧維持部26とサブカートリッジ140が離間した状態を示し、図9(b)には、負圧維持部26とサブカートリッジ140が連結した状態を示す。
【0103】
図9(a)に示す負圧維持部26とサブカートリッジ140が離間した状態では、弾性変形部材(例えば、バネ)200により付勢された逆支弁202により、バルブ172のインク供給連結部148のインク供給針204が挿入される挿入口206は封止される。
【0104】
図9(b)に示す負圧維持部26とサブカートリッジ140が連結した状態では、挿入口206にインク供給針204が挿入されると、インク供給針204によって逆支弁202を弾性変形部材200の付勢方向と反対方向へ押し、インク供給連結部148から開口穴208を通ってインクがバルブ172の内部へ流入する。
【0105】
図9(a),(b)に示す逆支弁構造を有するバルブ172を介してサブカートリッジ140(インク供給系)と、負圧維持部26(印字ヘッド50)とを連通させる構造を有することで、図9(b)に示す連結状態では印字ヘッド50とインクカートリッジ14との水頭圧差により印字ヘッド50の内部に適正な負圧を発生させて、インク供給系から印字ヘッド50へ自動的にインクを供給することができ、図9(a)に示す離間状態では印字ヘッド50の内部に発生させた負圧は負圧維持部26内の密閉されたサブタンク180により適正に維持される。
【0106】
印字ヘッド50をサブカートリッジ140から切り離し、印字を実行して印字ヘッド50内のインクを消費すると、インクの消費に伴い負圧維持部26の内部圧力(負圧)は大きくなる。本例に示すインクジェット記録装置10では、負圧維持部26の内部圧力を検出し、負圧維持部26の内部圧力が規定値を超えると、負圧維持部26(印字ヘッド50)をサブカートリッジ140に連結してインクを負圧維持部26に供給する。
【0107】
前記規定値を前記水頭圧差に設定すると、負圧維持部26の内部圧力が前記水頭圧差よりも大きくなった状態で負圧維持部26がサブカートリッジ140に連結され、負圧維持部26へインクが容易に供給される。
【0108】
図10及び図11を用いて、負圧維持部26の内部圧力検出の一例を説明する。本例に示す負圧維持部26の内部圧力検出では、可塑性膜178の変形量から負圧維持部26の内部圧力の増加量が検出される。図10は、負圧維持部26の内部に設けられ、可塑性膜178を有するサブタンク180である。破線で示す可塑性膜178’はインクが供給された状態(インクが供給された直後の初期状態)を示し、実線で示す可塑性膜178は印字ヘッド50内のインクが減少するとともに負圧維持部26の内部圧力が大きくなり、インクの補充が必要になった状態である。
【0109】
図10に示すように、負圧維持部26のインクが一時貯留されるサブタンク180の一部を可塑性膜178で構成することで、負圧維持部26の内部圧力の変化量を可塑性膜178の変形量(負圧維持部26の容積変化量)に置き換え可能である。
【0110】
図11(a),(b)には、可塑性膜178の変形量を検出する検出部(負圧維持部26の内部圧力検出部)220の構成を示す。図11(a),(b)に示す可塑性膜178の変形量検出部220は、可塑性膜178の変形量に応じて回動するアクチュエータ222と、2つの光学式センサ224及びセンサ226を含んで構成される。
【0111】
センサ224は、可塑性膜178の初期状態に対応する位置に設けられ、負圧維持部26がサブカートリッジ140に連結された状態で印字ヘッド50とインクカートリッジ14との水頭圧差を検出する。センサ226は、プリント実行時における負圧維持部26の内部圧力の上限圧力を検出する。
【0112】
図11(a)は、負圧維持部26サブカートリッジ140が連結された状態であり、この状態における負圧維持部26の内部圧力は、−10mmHOである。また、図11(b)は、プリント実行時における負圧維持部26の内部圧力の上限状態(インク補充が必要な状態)であり、この状態における負圧維持部26の内部圧力は−70mmHOである。図11(a),(b)に示すアクチュエータ222に代わりストレンゲージ(ひずみ検出部材)を用いることも可能である。
【0113】
図11(a),(b)には、光学式センサを2つ備える態様を例示したが、2つのセンサのうちセンサ224は省略可能であり、少なくとも、可塑性膜178の変形量(サブタンク180の容積変化量)が所定量以上となったことを検出するセンサ(図11(a),(b)ではセンサ226)を備えていればよい。
【0114】
上述した負圧維持部26を設けることで、印字ヘッド50へインクを供給する際には、ポンプなどの圧力発生手段を設けることなく印字ヘッド50とインクカートリッジ14との水頭圧差によって自動的にインクを供給することができ、印字実行時には、印字ヘッド50の内部に適正な負圧を発生させるとともに、負圧維持部26の内部圧力の変化によって印字ヘッド50内のインク残量を判断でき、適切なタイミングで印字ヘッド50へインクを供給可能である。
【0115】
〔インクカートリッジの説明〕
次に、インクカートリッジ14について詳説する。なお、各色に対応したインクカートリッジ14(14K,14C,14M,14Y)は同一構造及び機能を有している。
【0116】
図12は、インクカートリッジ14の内部に収納され、各色インクが充填されるインク収納袋240の概観を示す斜視図である。図12に示すインク収納袋240は、内部のインクが少なくなると折りたためる折り目242を有し、その折りたたみ方向(矢印線で図示)と略直交する面244、246のそれぞれに対応した位置に、少なくとも一部が光透過性材料を有する光透過領域248が設けられている。図12に示す態様では、インクカートリッジの面244、246にそれぞれ2ヶ所の光透過領域を備えている。図12には、面244の光透過領域を実線で図示し、面246の光透過領域を破線で図示する。
【0117】
上述した2ヶ所の光透過領域248のうち、一方はインクカートリッジの略中央部を含む領域に設けられ、他方はインクカートリッジの長手方向の両端部の何れか一方の近傍(図12では接合部250の近傍側)に設けられている。
【0118】
また、インク収納袋240は、インクカートリッジ14がサブカートリッジ140のインクカートリッジ装着部44に挿入されると、サブカートリッジ140内のインク供給路146と接続される接合部250を有している。
【0119】
インク収納袋240は、折りたたみ方向に対して扁平形状であり、重力作用方向に対して略扁平方向になるように配置される。このようなインク収納袋240をインクカートリッジ14の内部に収納することで、インクカートリッジ14の着脱時(装填時)の操作性の向上が見込まれるとともに、扁平形状とすることで装置本体の高さ方向の寸法が小さくなる。
【0120】
次に、図13(a)〜(c)及び図14を用いてインクカートリッジ14のインク残量検出について説明する。図13(a)〜(c)はインクカートリッジ14の断面図であり、それぞれインクカートリッジ内がインクで満たされている状態(初期状態)、インクカートリッジ内のインク残量が略1/2の状態、インクカートリッジ内のインク残量がほとんどない(インクエンド近傍)状態を示している。また、図14はインク残量検出の制御の流れを示すフローチャートである。
【0121】
図13(a)〜(c)に示すように、インクカートリッジ14(インクカートリッジ容器260)には、インク収納袋240の光透過領域248(図12参照)に対応する部分に(インクカートリッジ容器260の上面260’及び底面260”に)開口部262〜265が設けられている。
【0122】
また、サブカートリッジ140のインクカートリッジ装着部144(144K,144C,144M,144Y)には、開口部262、開口部263に対応する位置(図13では、上面側)に第1の発光素子266及び第2の発光素子267が設けられるとともに、開口部264、開口部265に対応する位置(図13では、底面側)には第1の受光素子268及び第2の受光素子269が設けられている。
【0123】
図13(b),(c)に示すように、インク収納袋240の厚みがL、L’(L’<L)、L”(L”<L’)のように変化し、インク収納袋240内のインクが減少すると発光素子266から受光素子268へ到達する透過濃度が低くなるので、受光素子268が受容する透過濃度を検出することでインク収納袋240内のインク残量を検出することができる。
【0124】
図13(b)には、インク収納袋240内のインク残量が満充填時の略1/2(即ち、L’≒L/2)の状態を示し、図13(c)には、インク収納袋240内のインク残量がほとんどない(即ち、L” ≒)インクエンド近傍の状態を示している。
【0125】
インク収納袋240内の主たるインク残量検出は、中央部に設けられた受光素子269で検出される発光素子267の透過濃度に基づいて行われる。図13(a)〜(c)に示すように、光透過領域248を透過する透過濃度はインク収納袋240内のインク量(インクカートリッジ14がサブカートリッジ140に搭載された状態の垂直方向から検出されるインク量)に比例する関係を有している。
【0126】
即ち、透過濃度が1/2倍になればインク量は1/2となり、インク収納袋240の厚みもまた1/2となり、インク量が満充填状態に対して1/2と判断される。
【0127】
また、折り目242近傍(インク収納袋240の周囲部)に設けられた発光素子266及び受光素子268を用いてインクエンドを検出する。インク収納袋240内の残インクが少量になると、インク収納袋240の中央部近傍では折り目242近傍よりも先にインクがなくなる。一方、折り目242の近傍では、折り目242の剛性により最後までインクが残る。
【0128】
中央部に設けられた受光素子269によって検出される透過濃度が所定の閾値以下になると、折り目242近傍に設けられた受光素子268によって検出される透過濃度が監視され、受光素子268により検出される透過濃度が所定の閾値以下となる場合にはインクエンドと判断し、インク残量報知部(例えば、表示装置)によりインクエンドが報知される。
【0129】
図14に、インク残量検出の制御のフローチャートを示す。図14に示すように、プリントジョブが開始されると(ステップS100)、インク収納袋240の略中央部の透過濃度により、主たる残量検出が行われ(ステップS102)、ステップS104に進む。
【0130】
ステップS104では、インク収納袋240の略中央部の透過濃度と所定の閾値が比較され、インク収納袋240の略中央部の透過濃度が所定の閾値を超える場合(NO判定)、ステップS102に戻り主たる残量検出が継続され、インク収納袋240の略中央部の透過濃度が所定の閾値以下の場合には(YES判定)、ステップS106に進み、折り目242近傍の透過濃度の検出が行われる(ステップS106)。
【0131】
ステップS106において、折り目242近傍の透過濃度が所定の閾値を超える場合(NO判定)、プリントジョブが継続され(ステップS108)、折り目242近傍の透過濃度が所定の閾値以下の場合には(YES判定)、インクエンドを表示(報知)して(ステップS110)、当該プリントジョブを終了させる(ステップS112)。
【0132】
なお、インク収納袋240内のインクが減少するとインク収納袋240の厚みが小さくなるので、開口部262〜265を利用してインク収納袋240の厚みを直接的に検出してもよい。
【0133】
インクカートリッジ14のインクカートリッジ容器260には大気連通口270が設けられ、インク収納袋240が収納されるインクカートリッジ容器260の内部の圧力は大気圧に保たれる。
【0134】
〔インク充填制御の説明〕
次に、印字ヘッド50のインク充填制御について説明する。図15は、印字ヘッド50の周辺の概略構成を模式的に示した概略構成図である。図15中、これまでに説明した部分と同一または類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0135】
図15に示すように、負圧維持部26の排出口284はバルブ188を介して気泡排出チャンバ280に連通する。回復処理部160は、印字ヘッド50のノズルと密着するキャップ282と、気泡排出チャンバ280の排出口284と密着するキャップ286を有している。
【0136】
キャップ282及びキャップ286はそれぞれバルブ288及びバルブ290を介してポンプ292に接続される。
【0137】
不図示の上下機構を動作させて、印字ヘッド50のノズル形成面にキャップ282を密着させるとともに、気泡排出チャンバ280の排出口284にキャップ286を密着させて、バルブ288及びバルブ290を開き、ポンプ292を動作させることで、印字ヘッド50及び負圧維持部26内のインクを吸引して、印字ヘッド50及び負圧維持部26内の気泡を外部に排出する。また、印字ヘッド50にインクを充填する際にも印字ヘッド50のノズル形成面にキャップ282を密着させてノズル51からインクを吸引する。
【0138】
なお、キャップ282及びキャップ286はそれぞれ個別に上下機構を有してもよいし、キャップ282及びキャップ286の上下機構を共通化し、キャップ282及びキャップ286を一緒に上下させてもよい。図15に示す態様では、キャップ282及びキャップ286の上下機構は共通化されている。
【0139】
次に、インクが未充填の印字ヘッド50にインクを初期充填する際の制御について説明する。
【0140】
先ず、インクカートリッジ14を装置本体(サブカートリッジ140)に装填し、キャリッジ24を走査させて印字ヘッド50をホームポジションに移動させ、印字ヘッド50とサブカートリッジ140を連結する。
【0141】
次に、キャップ282及びキャップ286を上昇させて、キャップ282を印字ヘッド50のノズル形成面に密着させるとともに、キャップ286を気泡排出チャンバ280の排出口284が形成される面に密着させる。
【0142】
バルブ288を閉じるとともにバルブ290を開き、ポンプ292により負圧をかけてバルブ188を開き、負圧維持部26(サブタンク180)にインクを充填する。
【0143】
負圧維持部26へのインク充填が完了すると、バルブ290を閉じるとともにバルブ288を開き、ポンプ292により負圧をかけて印字ヘッド50内にインクを充填する。
【0144】
図16には、印字実行中のインク供給制御のフローチャートを示す。図16に示すように、プリントが実行されると(ステップS10)、ステップS12において負圧維持部26のセンサ226のオンを監視する。センサ226がオフと判断されると(NO判定)、プリントを続行し(ステップS14)、タイマーを用いてセンサ226のスキャンからの時間が計測され(ステップS16)、所定の時間おきにセンサ226のオンが監視される。
【0145】
一方、ステップS12においてセンサ226がオンと判断されると(YES判定)、印字ヘッド50はホームポジションに移動される(ステップS20)。
【0146】
印字ヘッド50がホームポジションに移動されると、負圧維持部26のインク供給部149はサブカートリッジ140のインク供給連結部148に連結され(ステップS22)、インクカートリッジ14から印字ヘッド50(負圧維持部26のサブタンク180)へインクが供給される(ステップS24)。
【0147】
ステップS24のインク供給中はセンサ224のオンが監視され(ステップS26)、センサ224がオフの場合には、タイマーを用いて前回のセンサ224のスキャンからの時間が計測され(ステップS28)、所定の時間おきにセンサ224のオンが監視される。
【0148】
一方、ステップS26においてセンサ224がオンと判断されると(YES判定)、負圧維持部26のインク供給部149とサブカートリッジ140のインク供給連結部148は離間し(ステップS30)、当該インク供給制御はステップS12に遷移する。
【0149】
上述したように、インクの初期充填時にバルブ290を開きバルブ288を閉じた状態で、サブタンク180の上側に設けられた排出口184を介して気泡流路186からサブタンク180内の気体を確実に排出することで、サブタンク180内をインクに置換することができる。
【0150】
また、プリントジョブ実行中におけるインク供給を繰り返すとインク供給部149から気泡が混入すると、負圧維持部26(図7参照)の上部にある気泡溜まり部182(図7参照)に該気泡が滞留する。負圧維持部26内の気泡が増加するとサブタンク180内の気泡も増加し、その結果、サブタンク180内に収容されるインク量が減少してしまう。このようにしてサブタンク180内のインク量が減少すると1回のインク供給で印字できるプリント数が減ってしまうので、インク供給のタイミングでバルブ290を開きバルブ288を閉じた状態で、適宜排出口184から負圧維持部26内の気泡を排出するように、制御する態様が好ましい。
【0151】
本インクジェット記録装置10は、メニスカスの乾燥によりノズル51(図2、3参照)内部のインクが増粘し予備吐出が不可能になった場合に、キャップ282を印字ヘッド50のノズル形成面に密着させ更にバルブ288を開き(バルブ290は閉じる)、ポンプ292を動作させてノズルから増粘インクを吸引することができる。このようにノズル51内の劣化インクを吸引することで、印字ヘッド50は吐出可能な状態になる。
【0152】
なお、図示は省略するが、印字ヘッド50のノズル51を複数のブロックに分け、キャップ282を該ノズルブロックごとに吸引可能な構造にすることで、吸引による無駄なインク消費を抑制することができる。
【0153】
上述したように、負圧維持部26の排出口184からの吸引手段とキャップ282からの吸引手段とを兼用し、2種類の吸引モード(吸引ルート)を切り換える切換手段(バルブ288及びバルブ290)を備える態様によれば、印字ヘッド50とサブカートリッジ140とを連結した状態で吸引モードを切り換えて動作させることで、気泡排除、ヘッドメニスカス部の増粘物排除、サブタンク180内へのインク供給、印字ヘッド50とインクカートリッジ14との水頭圧差による負圧発生、負圧維持を実施可能とする。
【0154】
また、サブタンク180内の気液分離機能でその上側に滞留する気泡を排除するための機能を有しているため、印字ヘッド50への気泡混入による吐出異常の可能性を低減し、且つ、気液分離された気泡のみを排除可能であり、インクの有効使用率の向上が見込まれる。
【0155】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10によれば、給紙部18(給紙カセット)から印字部12へ記録紙16を搬送する搬送路を記録紙16の表面と裏面とを反転させる構造とし、給紙部18とその上部に設けられる印字部12との間にインクカートリッジを備え、給紙カセット及びインクカートリッジ14の着脱操作を正面側(前面側)から行う構造を有するので、装置の奥行き方向の寸法を縮小することができ、更に、装置上面のフリースペース化が実現される。
【0156】
また、インクカートリッジ14を扁平形状とすることで、インクカートリッジ14の高さ方向の寸法を小さくすることが可能になり、装置全体の高さを低くすることが可能になる。
【0157】
インクカートリッジ14が装着されるサブカートリッジ140を備え、サブカートリッジ140内にインク供給系を収納し、更に、サブカートリッジ140は装置本体の正面側から装置本体と着脱可能に構成されるので、インク供給系をコンパクトにまとめることができ、装置内の構造が簡素化される。縁なし印字時や回復処理時に発生する廃インクが収容される廃インクタンク162をサブカートリッジ内に備え、廃インクタンク162をサブカートリッジ140と着脱可能に構成するので、メンテナンス性の向上が見込まれる。
【0158】
また、サブカートリッジ140には、印字部12直下の印字領域における記録紙16のガイドとなる搬送ガイド部150及び縁なし印字時の記録紙16の幅からはみ出したインクを受けるインク受容部152として機能するガイド部材154を備え、該ガイド部材154をサブカートリッジと着脱可能に構成されるので、印字領域における記録紙16の搬送上の不具合が防止され、縁なし印字時に発生する搬送ガイド部150の汚れのメンテナンスが容易になる。
【0159】
印字ヘッド50(12K,12C,12M,12Y)は、インク供給時にサブカートリッジ内に備えられるインク供給系と接続され、印字ヘッド50のノズル形成面とインクカートリッジとの水頭圧差によってインク供給系から印字ヘッド50へインクが供給される。また、印字ヘッド50には、印字中における印字ヘッド50内の負圧をコントロールする負圧維持部26が接続され、印字ヘッド50のノズル形成面とインクカートリッジとの水頭圧差を基準として印字ヘッド50の内部圧力(負圧)が制御されるので、印字ヘッド50の内部に負圧発生し維持するポンプ等の圧力発生源が不要である。
【0160】
上述したインクジェット記録装置10におけるインク供給方式では、印字ヘッド50の上部に負圧維持部26を備え、該負圧維持部26は弾性変形部材(板バネ176及び可塑性膜178、図7参照)により印字ヘッド50内に負圧を発生させこれを維持する方式であり、毛細管力を利用してヘッド内の負圧を発生させ維持する従来の吸収部材方式に比べて、インクカートリッジ14内に残留するインクの量が少なくなるので、インク使用率の向上が見込まれる。
【0161】
また、本インクジェット記録装置10は、印字ヘッド50側のサブタンク180(図7参照)内に気液分離機能を有する構成であり、従来のヘッドと分離される側に気液分離機能を有するインク吸収部材が設けられる構成におけるインク吸収部材に残留するインクがなく、無駄なインクが発生しない。
【0162】
上述したように、インク供給部に毛細管力を利用したインク吸収部材を介在させる従来方式では、インクの粘度上昇に伴い圧力損失が大きくなりインク供給の応答性が悪化するといった弊害が生じていた。特に低温時にはインクの粘度が高くなり、更に印字デューティが大きい場合にはインク供給の応答性が問題となった。
【0163】
本例では、インク供給部に毛細管力を用いたインク供給部材を備えていないので、上記従来方式に比べてインク供給の応答性が高くなり、インク供給時間が短縮される。また、インク供給の応答性がよいために印字ヘッド50内の一定の負圧維持が容易であり、プリント物の濃度変化などを防止する効果を奏している。
【0164】
上述した本発明の実施形態では、記録紙16上にインク液滴を吐出させて記録紙16上のカラー画像を形成するインクジェット記録装置10を示したが、本発明の適用範囲はインクジェット記録装置に限定されず、ヘッドに設けられた吐出孔(ノズル)から水、薬液、処理液等の液類を吐出させる液吐出装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の基本構成図
【図2】図1に示すインクジェットヘッドのノズル配置を示す平面図
【図3】図1に示すインクジェットヘッドの立体構造を示す断面図
【図4】図1に示すインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【図5】図1に示すインクジェット記録装置に装着されるサブカートリッジの概観を示す斜視図
【図6】図5に示すサブカートリッジの概略平面図
【図7】図1に示す印字ヘッドに接続される負圧維持部の構成を示す図
【図8】図7に示す気泡排出口に接続されるバルブの構造を説明する図
【図9】サブカートリッジ連結部及びインク供給連結部の構造を説明する図
【図10】図7に示すサブタンクの構造を説明する図
【図11】負圧維持部の圧力検出を説明する図
【図12】インク収納袋の概観を示す斜視図
【図13】インクカートリッジの残量検出を説明する図
【図14】インクカートリッジの残量検出の制御の流れを示すフローチャート
【図15】図1に示すインクジェット記録装置のインク供給を説明する図
【図16】図1に示すインクジェット記録装置の印字実行中のインク供給制御の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
【0166】
10…インクジェット記録装置、12…印字部、12K,12C,12M,12Y,50…印字ヘッド、14、14K,14C,14M,14Y…インクカートリッジ、18…給紙部、24…キャリッジ、26…負圧維持部、140…サブカートリッジ、146…インク供給路、148,148K,148C,148M,148Y…インク供給連結部、154…ガイド部材、160…回復処理部、162…廃インク回収部、172,188,288,290…バルブ、174…サブタンク連結部、176…板バネ、178…可塑性膜、180…サブタンク、184…排出口、186…気泡流路、190、202…逆支弁、224,223,224,225,226,227,228…センサ、240…インク収納袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから記録媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを前記記録媒体の幅方向に走査させる走査手段と、
前記インクジェットヘッドの垂直方向下側に配置され、装置正面側から着脱可能な前記記録媒体が収納される記録媒体供給手段と、
前記記録媒体供給手段から前記インクジェットヘッドのインクの吐出を受ける記録領域へ前記記録媒体が搬送されるとともに、前記記録領域において前記走査方向と略直交方向に前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記インクジェットヘッドに供給するインクが収容され、装置の垂直方向における前記インクジェットヘッドと前記記録媒体供給手段との間に配置され、前記装置正面側から着脱可能なインクカートリッジと、
前記インクカートリッジと前記インクジェットヘッドとの間に設けられるインク供給路と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドの走査領域の少なくとも一方の端部に設けられ、前記インクジェットヘッドと前記インク供給路とを連結及び離間させる連結部を備え、
前記インクジェットヘッド内にインクを供給する場合には前記連結部において前記インクジェットヘッドと前記インク供給路とを連結させ、前記インクジェットヘッドの印字実行時には前記インクジェットヘッドと前記インク供給路とを離間させることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記連結部と、前記インク供給路と、前記インクカートリッジを収納するインクカートリッジ収納部と、を有し、前記装置正面側から装置と着脱可能に構成されるとともに、前記装置正面側に前記インクカートリッジを挿入する挿入口を有し、前記インクジェットヘッドの走査領域の垂直方向下側に配置されるサブカートリッジを備えたことを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドの回復処理を行う回復処理手段を備え、
前記サブカートリッジは、前記回復処理手段による前記インクジェットヘッドの回復処理時に生じた廃インクが収容され、前記サブカートリッジと着脱可能な廃インク収容部を備えたことを特徴とする請求項3記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記サブカートリッジは、前記インクジェットヘッドの走査領域に対応する領域に、全面印字時において前記記録媒体の縁の外周に吐出されるインクを受容し、前記サブカートリッジと着脱可能なインク受容部を備えたことを特徴とする請求項3又は4記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記インク受容部は、前記記録媒体の前記印字領域における搬送ガイドと兼用されることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記インクジェットヘッド内のインク流路と連通し、第1の開閉部材を具備し前記連結口に連結されるインク供給口と、前記インクジェットヘッドと前記インク供給口との間に設けられ壁面の一部に弾性変形部材を有するサブタンクと、を有する負圧維持部を備え、
前記負圧維持部は、前記インクジェットヘッドのインク供給時には前記インク供給路と連結されて前記インクジェットヘッドと前記インクカートリッジとの水頭圧差に前記インクジェットヘッドの内部圧力を維持し、前記インクジェットヘッドの印字実行時には前記第1の開閉部材を閉めて内部を密閉することを特徴とする請求項1乃至6のうち何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記弾性変形部材の変形量によって前記サブタンクの容積変化を検出する容積検出手段と、
前記検出手段に検出結果に基づいて前記インクジェットヘッド内部の圧力を判断し、前記インクジェットヘッド内部の圧力に応じて前記インクジェットヘッドと前記インク供給路との着脱を行うことを特徴とする請求項7記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記負圧維持部は、前記サブタンクの上側に位置し、前記サブタンク内のインクから分離された気泡が滞留する気泡溜まり部と、
前記気泡たまり部に滞留する気泡を排出する気泡排出口と、
を有し、
前記気泡排出口と前記負圧維持部の上部で連通する第2の開閉部材を具備する気泡排出路と、
前記気泡排出路の前記気泡排出口と反対側の端部から前記負圧維持部内を吸引する吸引手段と、
を備えたことを特徴とする請求項7又は8記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記吸引手段は、前記インクジェットヘッドのインク吐出面からインクジェットヘッド内部を吸引手段と兼用されることを特徴とする請求項9記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記吸引手段を用いて、前記負圧維持部の前記気泡排出口から吸引を行うか、或いは前記インクジェットヘッドのインク吐出面から吸引を行うかを切り換える吸引切換手段を備えたことを特徴とする請求項10記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記インクカートリッジは、内部が大気と連通可能なインクカートリッジ容器と、
前記インクカートリッジ容器内部に収納され、インク量の減少に伴い垂直方向に折りたたみ可能な折り目を有し、前記インクカートリッジ容器と相似形状の平面形状を持つインク収容部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至11のうち何れか1項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−268972(P2007−268972A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100454(P2006−100454)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】