説明

インクジェット記録装置

【課題】エネルギー効率を向上させると共に、すばやい立ち上がりを実現するインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インク供給系に、メインタンクヒータH1、サブタンクヒータH2、第二供給ヒータH3、ヘッドヒータH4といった複数のヒータを設けられており、温度制御部201が、温度検出器30の検出結果に基づいて各ヒータのON/OFFを制御する。インク供給の下流にある部材に設置されたヒータの方が、より高い温度でも温度制御部201によってONとされる。つまり、例えばメインタンクヒータH1は、サブタンクヒータH2がONになる温度よりも温度が低くなった場合にしか、ONにならないようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を紙等の記録媒体に向けて吐出することで、記録媒体上に画像(文字、図、記号等を含む)を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクの温度は、インクの粘度を左右する重要な因子の一つである。また、プリンタ等のインクジェット記録装置において、インクの粘度が所定の適切な範囲からはずれると、記録ヘッドからのインク吐出に不具合が生じることがある。つまり、良好な画像記録には、インクの温度を適切な範囲に保つことが重要である。
【0003】
特許文献1では、インク供給系、すなわち、インクが貯留されるインクタンク、このインクを記録媒体上に吐出する記録ヘッド、及びインクタンクから記録ヘッドへインクを供給する供給路の温度を監視する温度監視手段を設けると共に、インク供給系を加熱するヒータを設けている。
【特許文献1】特開2003−220714号公報(2003年8月5日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、メインタンクにはヒータを設けていないので、冬季に長時間電源が切られていた後の立ち上げ時等では、インクが低温状態から使用時の許容温度範囲に達するまでの時間が長くなる。つまり、この間はインクジェット記録装置を使用することができず、待ち時間が長くなる。
【0005】
一方、メインタンクにもヒータを設けると、メインタンクはインク供給系の他の部分と比べてインク容量が大きいので、メインタンク内のインクが許容温度範囲に達するまでのヒータの消費電力が大きくなる。
【0006】
そこで、本発明は、消費エネルギーの増大を抑えると共に、すばやい立ち上がりを実現するインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のインクジェット記録装置は、インクにて記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録装置であって、インクが貯蔵されているメインタンク、上記インクを記録媒体へ吐出する記録ヘッド、及び上記メインタンク内のインクを上記記録ヘッドに供給する供給部を備えるインク供給系と、上記インク供給系のインク供給方向に沿って複数設けられ、インクを加熱可能な加熱部と、インクジェット記録装置内の温度を検出する温度検出部と、を備え、上記加熱部は、上記温度検出部の検出結果が所定温度未満になるとインクを加熱するようになっていると共に、個々の加熱部は、下流側に配置されたものほど、上記所定温度が高く設定されている。
【0008】
これによって、記録ヘッドに近い部分を加熱する加熱部の方が、遠い部分を加熱する加熱部よりも高い温度でもインクを加熱するようになっている。つまり、インク供給系全体を常に温めるのではなく、記録ヘッド近傍が優先的に温められる。そのため、消費エネルギーを増大させることなく、記録ヘッド周囲をすばやく画像形成可能な温度に高めることができる。
【0009】
また、請求項2に記載するように、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、上記加熱部のうち、上記インク供給方向において最下流に設けられた加熱部は、記録ヘッド内のインクを加熱するようになっていてもよい。
【0010】
また、請求項3に記載するように、請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置において、上記供給部は、上記メインタンクより小さく、上記メインタンクから記録ヘッドに向かうインクを一時的に貯留する補助タンクと、上記メインタンクと上記補助タンクとの間に設けられた第一流路と、上記補助タンクと上記記録ヘッドとの間に設けられた第二流路と、を備えてもよい。
【0011】
また、請求項4に記載するように、請求項3に記載のインクジェット記録装置において、上記加熱部は、上記メインタンク、第一流路、補助タンク、第二流路、及び記録ヘッドに、少なくとも一つずつ設けられてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインクジェット記録装置によると、インク供給系全体を常に温めるのではなく、記録ヘッド近傍が優先的に温められる。そのため、消費エネルギーを増大させることなく、記録ヘッド周囲をすばやく画像形成可能な温度に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のインクジェット記録装置について、その実施の形態を示すことで、具体的に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
【0014】
〔1〕インクジェットプリンタ
インクジェット記録装置として、以下、多数のノズルを備えるヘッドが設けられた、ライン式インクジェットプリンタを例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
ライン式インクジェットプリンタとしては、特開2006−123397号公報(2006年5月18日公開)に記載されている技術を好適に利用することができる。ライン式インクジェットプリンタの構造の一例を、図1、図2に示す。図1は、インクジェットプリンタの要部構成を示す正面図であり、図2は、インク吐出面側から見たヘッド周囲の構造を示す平面図である。なお、図2では説明の便宜上搬送ベルト111を点線で示す。
【0016】
図1に示すプリンタ100は、印刷用紙Pの搬送方向に沿って並べられた4つのヘッド12を有するラインヘッド型カラーインクジェットプリンタである。各ヘッド12は、同図において、用紙Pの搬送方向と直交する方向(図の紙面に直行する方向)に細長い矩形の外形を有している。プリンタ100には、設置姿勢において下方に給紙装置114が、上方に紙受け部116が、その中間に搬送ユニット120がそれぞれ設けられている。さらに、プリンタ100には、これらの動作を制御する制御装置200が備えられている。
【0017】
給紙装置114は、積層された複数の矩形の用紙Pを収容可能な用紙収容部115と、用紙収容部115内において最も上にある用紙Pを1枚ずつ搬送ユニット120に向けて送り出す給紙ローラ145とを有している。用紙収容部115内には、用紙Pがその長辺と平行な方向に給紙されるように収容されている。用紙収容部115と搬送ユニット120との間には、搬送経路に沿って複数の送りローラ118が適宜配置されている。給紙装置114から排出された印刷用紙Pは、その一方の短辺を先端として、送りローラ118によって搬送ユニット120へと送られる。
【0018】
搬送ユニット120は、エンドレスの搬送ベルト111と、搬送ベルト111が巻き掛けられた複数のベルトローラ106とを備えている。個々のベルトローラ106間に巻き掛けられた搬送ベルト111には所定の張力が発生するようになっている。また、搬送ベルト111の一方の面(搬送面127)には、粘着性のシリコンゴムによる処理が施されており、印刷用紙Pは搬送面127に確実に粘着させられる。若しくは、搬送ベルト111に小径の穴を多数開けておき、搬送ベルト111の印刷用紙Pが保持される面と逆の面側から空気を吸引するファンなどの吸引手段を設け、印刷用紙Pを空気の吸引力により搬送ベルト111に保持する構造としてもよい。また、搬送面127はヘッド12と対向するように配される。給紙装置114から送り出された印刷用紙Pは、その上面(印刷面)にヘッド12によって印刷が施されつつ搬送ベルト111により搬送されて、紙受け部116に到達する。紙受け部116では、印刷が施された複数の印刷用紙Pが重なり合うように載置される。
【0019】
4つのヘッド12は、用紙搬送方向に沿って互いに近接配置されている。4つのヘッド12の各底面(吐出面13)には、微小径を有する多数のノズル8が設けられている(図2参照)。ノズル8から吐出されるインク色は、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)、ブラック(K)のいずれかであって、同じヘッド12に属する多数のノズル8から吐出されるインク色は同じである。なおかつ、4つのヘッド12に属する多数のインク吐出口からは、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色から選択された互いに異なる色のインクが吐出される。
【0020】
吐出面13と搬送ベルト111の搬送面127との間には、僅かな隙間が形成されている。印刷用紙Pは、この隙間を矢印で示す搬送方向に沿って搬送される。吐出面13の下方を印刷用紙Pが順次通過する際、印刷用紙Pの上面に向けてノズル8からインクが画像データに応じて吐出されることで、印刷用紙P上に所望のカラー画像が形成される。
【0021】
用紙搬送方向における搬送ユニット120の下流には、剥離プレート140が設けられている。剥離プレート140は、その搬送ユニット120側端部が印刷用紙Pと搬送ベルト111との間に入り込むことによって、搬送ベルト111の搬送面127に粘着させられている印刷用紙Pを搬送面127から剥離する。
【0022】
搬送ユニット120と紙受け部116との間には、複数の送りローラ121が配置されている。搬送ユニット120から排出された印刷用紙Pは、送りローラ121によって紙受け部116へ送られる。
【0023】
搬送方向において最も上流側にあるヘッド12の上流には、搬送ベルト111上における印刷用紙Pの先端位置を検出するために、発光素子と受光素子とから構成される光学センサである紙面センサ133が配置されている。紙面センサ133からの出力信号によって印字用紙Pの先端が検出位置に到達したことが分かるので、それに合わせて制御装置200からヘッド12に吐出信号が供給される。こうして、印字用紙P上に、インクによって画像が形成される。この画像とは、文字、記号、図形等を含む。
【0024】
制御装置200は、図示しない操作盤等を介してユーザから受け付けた指示や各種センサの検知結果に応じて、プリンタ100の各部との間でデータ信号及び制御信号の送受信を行い、画像形成動作、後述のインク温度調整動作等を統括的に制御するものである。具体的には、制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等によって構成可能である。CPUは種々の演算を行い、プログラムを実行することがきる。ROMにはCPUによって行われる制御に関するプログラムや、プリンタ100内の各部の動作に関するプログラム等が格納されている。また、RAMは、CPUの作業領域として機能する他、ユーザの入力内容等を保持する領域等を有している。
【0025】
また、プリンタ100には、プリンタ100の装置内の温度を検知する温度検知器30が設けられている。温度検知部30は、インク温度調節動作に利用されるので、より正確なインク温度調整を実現するためには、後述のメインタンク21の近傍に設けられていることが好ましい。なお、本実施形態では、温度検出器30はプリンタ100内の気温を検出するものとしている。
【0026】
〔2〕インク供給系
本実施形態では、ヘッド12と、インクを貯留しておくメインタンク21と、メインタンク21とヘッド12との間に設けられるサブタンク22と、メインタンク21からサブタンクへインクを供給する第一供給路23と、サブタンク22からヘッド12にインクを供給するための第二供給路24と、供給路23に設けられ、メインタンク21からサブタンク22へとインクを送るポンプ25とが、インク供給系20を形成している。
【0027】
メインタンク21は、その内部のインクの減りに伴って外部から大気が流れ込むための通気孔31を備える。またプリンタ100に着脱可能に設けられている。図示しないインク残量センサによって、メインタンク21内のインクが少なくなったことが検知されると、制御部200は図示しない表示部によってユーザにタンク交換を促す。
【0028】
サブタンク22は、メインタンク21と同様に、内部のインクの減りに伴って外部から大気が流れ込むための通気孔32を備える。サブタンク22は、メインタンク21よりもインク容量が小さい。サブタンク22は、メインタンク21からのインクを溜め、サブタンク22内のインクの水頭とヘッド12内のインクの水頭との差、すなわち水頭差Dを適切に保つことで、ヘッド12へのインク供給量を調整することができる。また、サブタンク22には、サブタンク用のインク量センサ33が設けられており、インク量センサ33の検出結果は、制御装置200に送られる。
【0029】
また、インク供給系20には、インクを温めるためのヒータが設けられている。図3に示すように、本実施形態では、インク供給系20に、メインタンク21内のインクを温めるメインタンクヒータH1、サブタンク22内のインクを温めるサブタンクヒータH2、第二供給路24内のインクを温める第二供給路ヒータH3、ヘッド12内のインクを温めるヘッドヒータH4が設けられている。これらのヒータH1〜H4は、インク供給系20の各部の外面に熱を与えることで、各部内のインクを温めるようになっている。
【0030】
なお、第一供給路23内のインクを温める第一供給路ヒータをさらに設けてもよいが、第一供給路23内にはポンプ25が動作している間しかインクが流入しないので、ヒータを設ける必要はない。
【0031】
〔3〕インク温度調整
図4、図5に基づいて、プリンタ100のインク温度調整について具体的に説明する。図4は、インク温度調整動作時の信号の流れを示すブロック図であり、図5はインク温度調整動作のフローチャートである。
【0032】
図4に示すように、制御装置200は、特に温度制御部201、及び図示しない記憶部等を備える。この記憶部は、記憶部内に加熱時間テーブル202を記憶している。この他にも、制御装置200は、供給制御部等を備えてもよい。供給制御部は、サブタンクインク用のインク量センサ201の検出結果に基づいてポンプ25のモータを制御し、メインタンク21からサブタンク22にインクを供給することができる。
【0033】
温度制御部201は、温度検出器30の検出結果に基づいて、上述のヒータH1〜H4のON/OFFを制御することで、インク供給系20におけるインクの温度を適切な範囲に調整することができる。温度制御部201は、メインタンクヒータH1、サブタンクヒータH2、第二供給路ヒータH3、ヘッドヒータH4について、それぞれ個別に基準値L1〜L4を有している。そして、基準値L1<L2<L3<L4となっている。そして、温度検出器30の検出温度Tが、基準値L1〜L4のいずれかを下回ったときに、その基準値に対応するヒータをONにする。つまり、温度制御部201は、インク供給系20のインク供給方向(メインタンク21からヘッド12に向かう方向。図3中に矢印で示す)においてより上流に設けられたヒータは、より温度が低くならないとONにしない。そして、温度制御部201は、下流に設けられたヒータについては、比較的高い温度でもONにするようになっている。
【0034】
これらの基準値L1〜L4は、具体的な値に限定されるものではなく、プリンタ1の設置環境、プリンタ1の構成(ノズルの大きさ、液滴の吐出速度等)、インクの種類等によって適宜変更可能である。本実施形態では、L1を5℃、L2を10℃、L3を15℃、L4を20℃とする。
【0035】
また、インク温度の適切な範囲とは、インクの種類、プリンタ1の構成等によって異なるので、具体的な値に限定されるものではない。本実施形態では、仮に20℃〜50℃の範囲が適切な範囲であるとする。
【0036】
本実施形態では、プリンタ100に電源が投入されたとき、又は装置の消費電力を抑える低電力モードからの復帰時等に、制御装置100がこのインク調整動作行うものとする。但し、これ以外にも、温度検出器30の検出結果を常時モニターし、この検出結果に基づいて、インク温度調節動作を行ってもよい。
【0037】
本実施形態では、温度制御部201は、各ヒータ(H1〜H4)をONにしてから、所定時間が経過するとOFFにするようになっている。
【0038】
そこで、プリンタ100は、さらにタイマ群203を備える。タイマ群203に含まれる4つのタイマは、メインタンクヒータH1、サブタンクヒータH2、第二供給路ヒータH3、及びヘッドヒータH4のそれぞれに対応するように設けられる。ヒータ(H1〜H4のいずれか)がONになったときには、タイマ203群の対応する各タイマも制御部200によってONにされ、加熱時間のカウントが開始される。各タイマが、予め設定された所定時間をカウントすると、温度制御部201は、このタイマに対応するヒータをOFFに切り替える。
【0039】
この所定時間とは、加熱時間テーブル202に記録されている設定時間mである。加熱時間テーブル202は、プリンタ100内の温度Tと、インクの温度を適切範囲とするために要する設定時間mとを対応付けて示すものである。図6に加熱時間テーブルの具体例を示す。このテーブルは目標インク温度を20℃としており、温度が5℃であるときには、加熱を5分行えばインク温度が20℃に達することを示している。
【0040】
なお、この設定時間mは目標とするインク温度によって異なる。また、図6には、温度Tと設定時間mとが一対一で対応するテーブル202を示したが、これに限らず、複数の目標インク温度を有し、温度Tの1つの値に対して各目標温度に対応するように複数の設定時間mを有するものであってもよい。
【0041】
また、上述の記憶部(図示せず)は、タイマ群203の各タイマに対応する、すなわち各ヒータ(H1〜H4)に対応する、複数の加熱時間テーブル202を記憶する。そして、この加熱時間テーブル202はそれぞれ、異なる設定時間mを有する。言い換えると、ヒータ(H1〜H4)について、それぞれ異なる設定時間mが設定されている。
【0042】
ここで、メインタンクヒータH1に対応するタイマに対応する設定時間mは、メインタンク21内のインク量に応じて設定時間mが変更できるようになっていてもよい。この場合、温度制御部201は、メインタンク21内のインク量が大きいほど、設定時間mを長くするようになっていてもよい。
【0043】
また、ヒータ(H1〜H4)が加熱対象(メインタンク21等)の温度を規定値にまで上昇させる時間が同じになるように、各加熱対象を加温するヒータの熱容量を、それぞれ異ならせてもよい。すなわち、加熱対象の内容量が大きくなるほど、それを加温するヒータの熱容量を大きくなっていてもよい。こうすることで、2以上のヒータがONとされたときに、各ヒータを同時にOFFすることも可能である。なお、この場合は、タイマは一つでよい。
【0044】
特に、メインタンクヒータH1内のインク量は変動が大きいので、メインタンクヒータH1の熱容量は、メインタンク21内のインク量に応じて可変であることが好ましい。すなわち、メインタンクヒータH1の熱容量は、メインタンク21内のインク量が少なくなるほど、小さくすることができるようになっていることが好ましい。
【0045】
以下、温度調整動作の具体例について、図5を参照して説明する。
【0046】
まず、制御装置200は、温度検出器30の検出結果を読み込む(S1)。
【0047】
この検出結果Tが温度5℃(基準値L1)未満を示すと、温度制御部201はメインタンクヒータH1、サブタンクヒータH2、第二供給路ヒータH3、ヘッドヒータH4を全てONにする(S2でYes→S3)。このとき、タイマ203群を全てONにして、加熱時間が設定時間mに達するまで加熱を継続する(S4→S5でNo→S6)。加熱時間が設定時間mに達したところで、タイマ203群をクリアして、ヒータH1〜H4をOFFにし、動作を終了する(S5でYes→S7→S8)。その後は印刷可能であるので、ユーザからの印刷指示に従って、印刷を実行する。
【0048】
一方、温度Tが5℃(基準値L1)以上10℃(基準値L2)未満であるときは、メインタンクヒータH1のみをOFFとし、他の3つのヒータH2〜H4をONにする(S2でNo→S9でYes→S10)。そして、タイマ群203のうち、ONにしたヒータに対応するタイマによるカウントを開始する。後は、上述したように加熱時間が設定時間mに達するまで加熱を継続する。
【0049】
また、温度Tが10℃(基準値L2)以上15℃(基準値L3)未満であれば、メインタンクヒータH1及びサブタンクヒータH2をOFFにし、後の2つのヒータH3、H4をONにし、各ヒータの加熱時間が設定時間mに達するまで加熱を行う(S2及びS9でNo→S11でYes→S12)。
【0050】
また、温度Tが15℃(基準値L3)以上20℃(基準値L4)未満であれば、ヘッドヒータH4のみをONにし、ヘッドヒータH4の加熱時間が設定時間mに達するまで加熱を行う(S2、S9、S11でNo→S13でYes→S14)。
【0051】
また、温度Tが20℃以上であるときには、全てのヒータをOFFとしたまま、動作を終了する(S2、S9、S11、S13でNo→S8)
本実施形態では、加熱時間が設定時間mに達したところで加熱を止めるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、メインタンク21、サブタンク22にそれぞれ、内部のインクの温度を検知する温度センサを取り付けておき、温度制御部201は、この温度センサが所定温度(例えば20℃)以上を検知すれば加熱を止めるようになっていてもよい。他にも、第二供給路24、又はヘッド12自体の温度を測定する温度センサを設けて、温度制御部201は、この温度センサが所定温度(例えば20℃)以上を検知すると加熱を止めるようになっていてもよい。
【0052】
さらには、図5に示すフローにおいて、加熱時間が設定時間mに満たなくても、プリンタ100内の温度、又は、メインタンク21等の部材若しくはこれらの内部の温度が上限値(例えば45℃)を超えたら加熱を停止するように、温度制御部201が校正されていてもよい。
【0053】
特に、ライン式インクジェットプリンタでは、インクを細い流路に通す構造となっているので、ノズルが目詰まりを起こしたり、吐出された液滴のスピード又は向き等が変わったり、といった吐出不良が起こりやすい。
【0054】
インクジェット記録装置が吐出するインクは、水性、油性、色素が溶解した溶液、顔料等の粒子が分散した分散液等、その性質、構成共に特に限定されるものではない。特に、顔料が液体中に分散した分散液であるインクにおいては、高質な画像を得るために顔料濃度を高くしたいという要求がある。しかし、その一方で顔料濃度を高くすると粘度が高くなり、吐出不良が起こりやすい。
【0055】
液体の吐出不良の起こりやすいこれらの条件下においても、本実施形態の構成によれば、インク供給系20のヘッド12に近い部分のインクから優先的に温めることができるので、加熱時間を短縮しても、このような吐出不良がおこりにくい。
【0056】
以上、異なる欄に記載した事項は互いに適宜組み合わせることが可能であり、さらに公知の技術を組み合わせることも可能である。このようにして得られる技術についても、本発明に含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の一形態であるプリンタ100の要部構成を示す正面図である。
【図2】インク吐出面側から見たヘッド周囲の構造を示す平面図である。
【図3】インク供給系20とその周囲の構成を示す正面図である。
【図4】プリンタ100における温度調整動作時の信号の流れを示すブロック図である。
【図5】プリンタ100における温度調整動作時の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】加熱時間テーブルの一例を示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクにて記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
インクが貯蔵されているメインタンク、上記インクを記録媒体へ吐出する記録ヘッド、及び上記メインタンク内のインクを上記記録ヘッドに供給する供給部を備えるインク供給系と、
上記インク供給系のインク供給方向に沿って複数設けられ、インクを加熱可能な加熱部と、
インクジェット記録装置内の温度を検出する温度検出部と、を備え、
上記加熱部は、上記温度検出部の検出結果が所定温度未満になるとインクを加熱するようになっていると共に、
個々の加熱部は、下流側に配置されたものほど上記所定温度が高く設定されているインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記加熱部のうち、上記インク供給方向において最下流に設けられた加熱部は、記録ヘッド内のインクを加熱するようになっている請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記供給部は、
上記メインタンクより小さく、上記メインタンクから記録ヘッドに向かうインクを一時的に貯留する補助タンクと、
上記メインタンクと上記補助タンクとの間に設けられた第一流路と、
上記補助タンクと上記記録ヘッドとの間に設けられた第二流路と、
を備える請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
上記加熱部は、上記メインタンク、第一流路、補助タンク、第二流路、及び記録ヘッドに、少なくとも一つずつ設けられる請求項3に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−110588(P2008−110588A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296600(P2006−296600)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】