説明

インクジェット記録装置

【課題】従来技術のインク吐出検出器では、1ノズル毎にインクの吐出検出を行っておりノズルの高密度化等によりノズル数が増えた場合、インク吐出検出に時間がかかるだけでなく、ノズル密度が高くなる分センサ感度の高いインク吐出検出器が必要となってくるという課題があった。
【解決手段】印字媒体に対して相対的に往復移動できるように構成されたキャリッジと、前記キャリッジに設けられ、複数個のノズル列2を配し、そのノズル列からインク滴を吐出させる印字ヘッド1を有したインクジェット記録装置において、前記ノズル列の列方向に対して、ノズル列の中心を回転中心とし時計回り或いは反時計回りに所定の傾きθxをもって走査する1対の光検出手段3、4を有することにより、ノズルの高密度化等によりノズル数が増えた場合でも、センサ感度の高い吐出検出器を用いることなく、精度のよいインク吐出検出ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出させて記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置のインク滴の検出の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個のノズル列を配し、そのノズル列からインク滴を吐出させるヘッドを有したインクジェット記録装置において、ノズルの目詰まり或いはインク切れ等により、ノズルからインクが吐出されたかどうかを確認するための手段として、インク吐出検出器が用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−187881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のインク吐出検出器では、1ノズル毎にインクの吐出検出を行っており、ノズルの目詰まり等によりインク吐出検出不可の場合、その都度回復手段を用いてインク吐出の再開の準備を行う必要があった。インク切れ発生では、インクを補給してインク吐出の準備を行う必要があった。そのため全ノズル或いは任意のノズル列のインク吐出検出には、時間を要した。このように、1ノズル毎のインク吐出検出方法では、ノズルの高密度化等によりノズル数が増えた場合、インク吐出検出に時間がかかるだけでなく、ノズル密度が高くなる分センサ感度の高いインク吐出検出器が必要となってくるという課題があった。
【0005】
本発明ではこのような課題を解決するためになされたものであり、ノズルから吐出されたインクを精度よく検出することが可能なインクジェット記録装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のインクジェット記録装置は、請求項1で、印字媒体に対して相対的に往復移動できるように構成されたキャリッジと、前記キャリッジに設けられ、複数個のノズル列を配し、前記ノズル列からインク滴を吐出させるインクジェット記録装置において、前記ノズル列に対してノズル列の中心を回転中心とし、時計回り或いは反時計回りに所定の傾きをもって走査する1対の光検出手段を有することを特徴とし、請求項2で、請求項1記載のインクジェット記録装置において、前記光検前出手段は、前記ノズル列から吐出されるインク滴の通過によって光が散乱される位置に設けられた光センサであることを特徴とし、請求項3で、請求項1記載のインクジェット記録装置において、前記光検出手段は、前記ノズル列に対して前記光センサの感度領域をフルに活用するように所定の傾きをもって配置されたことを特徴とする。請求項4で、請求項1記載のインクジェット記録装置において、前記光検出手段の光軸がヘッドノズル面に対して所定の傾きをもったことを特徴とする。以上の構成によれば、インクジェット記録装置のインク吐出検出をノズル列毎に行い、目詰まり等によりインク吐出不可のノズルがそのノズル列に幾つかあった場合でも、1ノズル毎にインク吐出の回復手段を使う必要がなく、ノズル列毎にインク吐出の回復手段を用いるため、インク吐出不可を検出してから回復手段を使ってインク吐出準備を行うまでの時間を短時間で済ませることができる。
【0007】
また、本発明では、ノズル列に対してインク吐出検出器の光軸を所定の傾きをもって配置を行うので、インク吐出検出器のセンサの遮光面積が稼げるので、センサ感度の向上が図れるため、ノズル数が増えた場合でも、センサ感度のインク吐出検出器を用いることなく、精度の高いインク吐出検出ができる。
【0008】
また、本発明のインクジェット記録装置は、インク滴を吐出するための複数のノズルが列状に配置された記録ヘッドと、該記録ヘッドを、印字媒体に対して相対的に往復移動させるためのキャリッジと、前記ノズルの吐出状態を検出する吐出検出器を有するインクジェット記録装置において、前記吐出検出器は、発光素子と受光素子を備え、各素子を結ぶ光軸が、前記ノズルの列方向に対し、所定の傾きをもつように配置されていることを特徴とする。
【0009】
前記吐出検出器は、前記光軸周囲の所定幅内に吐出されたインク滴を検出可能な感度領域を有し、前記複数のノズルのうち、両端のノズルが前記感度領域内にはいるように、前記ノズルの列方向に対し、所定の傾きをもつように配置されていることが好ましい。
【0010】
また、前記吐出検出器は、前記記録ヘッドのホームポジションに配置されてもよいし、前記記録ヘッドもしくは、前記記録ヘッドを搭載するキャリッジに設けられてもよい。ホームポジションに配置される場合、前記ホームポジションは、前記ノズルの回復処理を行うための空吐出を行う位置を兼ねることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を用いて本発明を詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明を実施したインクジェット記録装置の全体図であり、以下、全体の構成について、説明する。
【0013】
インクジェットプリンタ100は、インクジェットヘッド1およびインクタンク40を搭載可能な箱形のキャリッジ17を備えている。インクジェットヘッド1およびインクタンク40は例えばカートリッジ式のものであり、キャリッジ4の上蓋41を開けて、その内部に着脱可能に装着される。キャリッジ17は、装置フレーム27の長辺方向(左右方向)に往復直線移動が可能である。キャリッジ17を移動させながら、そこに搭載されているインクジェットヘッド1を駆動して搬送されるカットシート16に印刷を施すようになっている。
【0014】
まず、キャリッジ17の往復移動機構を説明する。キャリッジ17は、その前側が、装置フレーム27の左右の側壁15、23の間に架け渡したガイド軸31によって摺動自在に支持され、後側が、同じく側壁15、23の間に架け渡したガイド板18の上面に摺動自在に乗っている。装置フレーム5の前壁29には、その両端に駆動側プーリ24、従動側プーリ25が取り付けられ、これらの間には、タイミングベルト30を架け渡してある。タイミングベルト30はキャリッジ17の前側部分に連結されている。駆動側プーリ24が、装置フレームの前壁29に取り付けられたキャリッジモータ26によって回転すると、タイミングベルト30に連結されているキャリッジ17は、ガイド軸31に沿って左右方向に移動する。
【0015】
尚、キャリッジ17の移動可能領域の最も右側の位置(ホームポジション)には、インクジェットヘッド1のノズルを覆うキャップ22が設けられ、記録を長時間行わないときは、キャリッジ17は、この位置に移動してノズルを密閉する。キャップ22は、不図示の管によりポンプ21に連通し、モータ20を駆動することによりポンプ21が作動して、ノズル内の増粘したインクが吸引される。モータ20は、またカット紙16を搬送するための駆動ローラが設けられた紙送り駆動軸19を駆動するための動力源としても用いられる。
【0016】
一方、キャリッジ17の移動可能領域の最も左側の位置には、インク吐出検出器14が設けられている。インク吐出検出器の下側には、ノズルを空吐出(リフレッシュ)した際、吐出されたインクを受けるためのインク受けが設けられている。後述するように、この位置で、インク滴を吐出することにより、インクの吐出状態が確認される。なお、インクの吐出状態を確認する位置をキャリッジの移動可能領域の右側に設けてもよい。この場合、空吐出のためのインク受けと、キャップ22を兼ねるようにすれば、空吐出、ノズル吸引によって排出される排インクの処理をキャップ22及びこれに連通する排インク吸収部材(不図示)等から構成される処理装置一つで行われるため、装置の構成をより簡略なものにすることができる。
【0017】
図2は本発明を実施したインクジェット記録装置の吐出検出器とヘッドの位置関係をヘッドノズル上面からみた概略図である。図3はヘッドノズル面を横からみた概略図である。図4は本発明を応用したインクジェット記録装置のインク吐出検出器を示す図である。
【0018】
図2における光検出手段14は、複数個のノズル列2を持つヘッド1とそのノズル列2を直線上に結んだ線に対して、ノズル列の中心を回転中心とし時計回り或いは反時計回りに所定の傾きをもって走査する1対の光センサ発光部3、光センサ受光部4とから構成されている。この光検出手段は、ヘッドのノズル列から吐出されるインク滴の通過によって光が散乱される位置に設けられており、本実施例では、A方向に移動する印字ヘッドの移動経路の一端のホームポジションと対抗する位置に設けてあるが、前述したようにホームポジションでもよく、印字ヘッドの移動経路の途中であってもよい。またこの光検出手段をヘッド側に取り付けてもよく、この場合、空吐出時のみならず印字中も含め常時インク滴の吐出検出の確認が可能となる。
【0019】
ノズル列2を直線上に結んだ線に対する光検出手段の光軸10の傾きθxは、あらかじめ光検出手段の光センサ感度領域5をフルに活用するように設定されている。つまり、光センサ感度領域5に対するインク滴の遮光面積が最大限に取れるよう設定される。
【0020】
ノズル列のノズル数が増えた場合は、現状に対してセンサ感度領域5をオーバーするノズルが発生し、特にノズル列の両端のノズルはその確率が高い。そこでこのような不具合を解消するため、前記光軸10の傾きθxを調整し、検出すべきノズル列がセンサ感度領域5にフルに入るように予め設定される。
【0021】
逆に現状に対してノズル列のノズル数が減った場合は、ノズル列に対してセンサ感度領域5が余るようになるため、前記光軸10の傾きθxを調整してノズル列の両端のノズルがセンサ感度領域5にフルに入るように予め設定される。
【0022】
上述の場合は、ノズル列のノズル数の増減に対して、ノズル列2を直線上に結んだ線に対する光検出手段の光軸10の傾きθxを調整することで光センサ感度領域5をフルに活用したが、図4の様にノズル面9に対する光検出手段の光軸10の傾きθyを調整して、光センサ感度領域5をフルに活用するようにしてもよい。
【0023】
また、ノズル列に対する光検出手段の光軸10の傾きθxとヘッドノズル面に対する光検出手段の光軸10の傾きθyの両者を調整して、光センサ感度領域5をフルに活用するようにしてもよい。
【0024】
次に、本発明の実施例における吐出検出方法と目詰まり解消について説明をする。印字媒体にインク滴を飛翔させて記録を行う前に、印字媒体から離れた位置においてノズルの目詰まりを検出する。
【0025】
光検出手段14では、光センサ発光部3から出力される検出光6は、光センサ受光部4に向かって発光されている。まず、インク滴の検出を行う前にノズル列2からインク滴を吐出させない状態で光センサ発光部3から出力された検出光6が光センサ受光部4によって検出できるかどうか確認しておく。その後ヘッド1のノズル面上、或いはエッジ上に配されたノズル8からインク滴7が、光センサ発光部3から出された検出光6を横切って飛翔していく。その際に検出光6はインク滴7によって散乱されることにより光センサ受光部4に届く光量が変化する。この時の変化を電気的信号により検出することでノズル8からインク滴が吐出されたかどうかが検出される。
【0026】
同様に他のノズル列に対しても、ヘッド1を適宜A方向に微小移動させ、同様の操作を繰り返して行うことによってノズル列2におけるどのノズルが目詰まりを起こしているか検出が行われる。
【0027】
その際に、目詰まりが検出された場合には、直ちにそのノズルの目詰まりを解消せずに、ノズル列2の最後のノズルの検出が終了するまで吐出検出を続け、ノズル2の吐出検出が終了した時点で目詰まりを起こしたノズルに対して、数回インク滴が吐出しているか検出を行いながら吐出させて目詰まりを解消させる。ある回数以上吐出させても目詰まりが解消されない場合には、キャップ22、ポンプ21による目詰まり解消の操作が自動的に行われる。
【0028】
目詰まり解消後、次の(若しくは隣り合う)ノズル列に対してどのノズルが目詰まりを起こしているか検出が行われ、目詰まり解消の操作が行われる。この様に本発明では、吐出検出および目詰まり解消はノズル列毎にが行われるが、ヘッドのノズル数が少ないヘッドに対しては、目詰まり解消を全ノズルの吐出検出が終了した後行ってもよいことはいうまでもない。
【0029】
以上述べたように本発明によれば、ヘッドノズル列に対してインク吐出検出器を所定の傾きをもって配置してセンサの遮光面積を稼いでいるため、センサの感度の向上が図れ、ノズル数或いはノズル密度が上がった場合にも対応でき、センサ感度の高い吐出検出器を用いることなく、安価なインク吐出検出器でノズルの目詰まりを検出することができるという効果がある。また、本発明ではインクジェット記録装置のインク吐出検出をノズル列毎に行うので、インク吐出不可のノズルがノズル列中に幾つかあった場合でも、1ノズル毎にインク吐出の回復手段を用いる場合とは異なり、ノズル列毎にインク吐出回復手段を用いるため、インク吐出回復までの時間が短時間で済む。特にノズル密度の高いヘッドに対しては効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を実施したインクジェット記録装置の全体図。
【図2】本発明におけるインクジェット記録装置のインク吐出検出器とヘッドの位置関係をヘッドノズル上面からみた図。
【図3】本発明におけるインクジェット記録装置のインク吐出検出器とヘッドの位置関係をヘッド断面からみた図。
【図4】本発明におけるインクジェット記録装置のインク吐出検出器の応用例を示す図。
【図5】従来技術のインクジェット記録装置におけるインク吐出検出器とヘッドの位置関係を示す図。
【符号の説明】
【0031】
1 ヘッド
2 ヘッドノズル列
3 光センサ発光部
4 光センサ受光部
5 光センサ感度領域
10 光軸
θx ノズル列に対する光検出手段の光軸の傾き
13 キャリッジ移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字媒体に対して相対的に往復移動できるように構成されたキャリッジと、前記キャリッジに設けられ、複数個のノズル列を配し、そのノズル列からインク滴を吐出させる印字ヘッドを有したインクジェット記録装置において、前記ノズル列の列方向に対して、ノズル列の中心を回転中心とし時計回り或いは反時計回りに所定の傾きをもって走査する1対の光検出手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1記載のインクジェット記録装置において、前記光検前出手段は、前記ノズル列から吐出されるインク滴の通過によって光が散乱される位置に設けられた光センサであることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1記載のインクジェット記録装置において、前記光検出手段は、前記ノズル列に対して前記光センサの感度領域をフルに活用するように所定の傾きをもって配置されたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項1記載のインクジェット記録装置において、前記光検出手段の光軸がヘッドノズル面に対して所定の傾きをもったことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
インク滴を吐出するための複数のノズルが列状に配置された記録ヘッドと、該記録ヘッドを、印字媒体に対して相対的に往復移動させるためのキャリッジと、前記ノズルの吐出状態を検出する吐出検出器を有するインクジェット記録装置において、前記吐出検出器は、発光素子と受光素子を備え、各素子を結ぶ光軸が、前記ノズルの列方向に対し、所定の傾きをもつように配置されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項5記載のインクジェット記録装置において、前記吐出検出器は、前記光軸周囲の所定幅内に吐出されたインク滴を検出可能な感度領域を有し、前記複数のノズルのうち、両端のノズルが前記感度領域内にはいるように、前記ノズルの列方向に対し、所定の傾きをもつように配置されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項5記載のインクジェット記録装置において、前記吐出検出器が、前記記録ヘッドのホームポジションに配置されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項7記載のインクジェット記録装置において、前記ホームポジションは、前記ノズルの回復処理を行うための空吐出を行う位置であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
請求項5記載のインクジェット記録装置において、前記吐出検出器が、前記記録ヘッドもしくは、前記記録ヘッドを搭載するキャリッジに設けられていることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−307903(P2008−307903A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249412(P2008−249412)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【分割の表示】特願平9−5015の分割
【原出願日】平成9年1月14日(1997.1.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】