説明

インクジェット記録装置

【課題】
安価な構成でインク粘度を短時間で調整でき、インク温度が変化してもインク噴出速度の変化を小さくするで良好な印字品質のインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】
メインインク容器内にインク粘度を制御するために単数あるいは複数個のインク調整剤を投入することにより、瞬時にインク粘度を変えることができ、インク温度または周囲温度に対応したインク粘度の制御に掛かる時間が短縮された。温度の変化があってもインク粘度をほぼ一定に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインク粒子作成に好適なインク粘度調整するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、連続的に噴出されたインクを粒子に変化させ、文字作成に必要な粒子に帯電、偏向させるインクジェット記録装置においては、印字に使用しない粒子には帯電、偏向を行わずにメインインク容器に戻され再利用することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−322558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノズルより噴出したインク粒子の均一性が印字品質に大きな影響を受ける。この印字品質の安定を図るために、メインインク容器に液量検知センサを設け、前記液量検知センサに対応した文字や画像の形成に費やされた分量の補充インクを補充するインク補充手段と、揮発した分量の補充補力液を補充する補力液補充手段による制御方式でインク濃度を一定に制御をしている。
【0005】
ところが、上記従来の技術においてはインク濃度を一定に制御する方法であり、印字品質に影響を及ぼすインク粘度の制御は出来ない。また、インク粘度はインク温度と相関があることに考慮がされておらず、インク温度が変化するとインク粘度も変化し、インク噴出速度の変化が大きく、インク粒子の均一性が崩れ、印字品質が悪くなる問題がある。本発明は簡単な構成で、インク温度に関係なくインク粘度をほぼ一定に制御することが出来、インク温度が変化してもインク噴出速度の変化を小さく抑え、良好な印字が出来るインク粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明ではメインインク容器にインク調整剤を投入出来る様に投入口を設け、樹脂、色材、添加剤だけを固形または粉末あるいは液体高濃縮インク化されたインク調整剤を単数または複数個入れることにより、安価な構成でインク粘度の調整が可能であり、インク温度が変化してもインク噴出速度の変化を小さく抑えるので良好な印字品質を提供でき達成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安価な構成でインク粘度を短時間で調整でき、インク温度が変化してもインク噴出速度の変化を小さくするで良好な印字品質を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
まず、図1から図3に本発明の一実施例に係わるインクジェット記録装置の概略配管図とメインインク容器の外観図、インク温度とインク粘度の関係を示す。
【0010】
メインインク容器1にはインク粘度調整剤28、29、30を投入出来るように調整剤投入口3を設け、容器キャップ27で開閉が出来るようにしておく。
【0011】
インク粘度調整剤の製造をするにあたっては、例えば、図4のフローチャートに示すように、まず、樹脂、色材、添加剤を、粉砕機を用いて粉砕する。これをインク組成に応じて粉体のまま配合して混合する。その後、所定量ずつ分けて包装、もしくは所定量ずつ押し固めてタブレット状に成型または、少量の溶媒で溶かして液体化させた高濃縮インクに製造するものである。
【0012】
メインインク容器1内にはインク2aを充填しておく。インク2aとインク供給弁4,供給ポンプ5,インクフィルター6,調圧弁7,ノズル本体8はインク供給管9で連通接続され、また、インク粒子10を回収するためのガター11,回収ポンプ12,メインインク容器1はインク回収管13で連通接続され、また、ノズル本体8からのインクを循環ポンプ14,粘度計16,メインインク容器1は、インク循環管15で連通接続される。
【0013】
サブインク容器17内にインク2bが充填されており、インク2bとインク補給弁18、インク供給弁4,供給ポンプ5は、インク補給管19で連通接続されている。補力液容器20には補力液21が充填されており、補力液21と補力ポンプ22,補力液補給弁23は、補力液補給管24で連通接続されている。また、メインインク容器1には液量検知センサ25(図示省略)と排気管26が接続されている。
【0014】
メインインク容器1内に充填されているインク2aを吸込んで加圧し、インク供給管9を通して供給弁4,供給ポンプ5,インクフィルター6,調圧弁7に供給する。調圧弁7は、供給された加圧インク2aを所定の圧力に調整し、圧力調整されたインク2aは、インク供給管9を通じてノズル本体8に供給される。
【0015】
ノズル本体8に供給され、加圧されたインク2aは、このノズル本体8の先端より噴出し、インクの表面張力によってインク粒子10になる。インク粒子10は、帯電電極(図示省略)により文字情報に応じた電荷量に帯電され、偏向電極(図示省略)により偏向されて被印字物(図示省略)に印字する。また、印字に使用されないインク粒子10は、ガター11で捕獲してインク回収管12を通してインク回収ポンプ11によりメインインク容器1に回収され、ノズル本体8から循環されたインク2aは粘度計16を用い測定され再利用するためにメインインク容器1に戻される。
【0016】
温度検知機(図示省略)により、インク温度または周囲温度を検知し、中温度範囲31の最下点34よりも低い低温度範囲32の場合は、補力液容器20内の補力液21を補力ポンプ22で補力弁23を開いてメインインク容器1内の低温時のインク粘度が印字特性に合う値に達するまで補給する。到達後はインク粘度が一定になるようにコントロールする。
【0017】
また、インク温度または周囲温度が中温度範囲31の最上点35よりも高い高温度範囲33の場合は、メインインク容器1にインク粘度が印字特性に合う値に達するまでインク調整剤29、30、31を調整剤投入口3から単数あるいは複数個投入する。到達後はインク粘度が一定になるようにコントロールする。粘度コントロール方法は従来と同様に、印字に使用したインクと同量のインクをサブインク容器17内のインク2bをメインインク容器1内に補給し、揮散した補力液分は、補力液容器20内の補力液21をメインインク容器1内に補給する。
【0018】
安定した文字を印字するためには、インク温度の変化に対してインクの噴出速度の変化を小さくすることである。なぜなら安定した文字を印字するためには好適なインク粒子の作成であり、この粒子の作成には粒子化定数が影響する。この粒子化定数はインクの噴出速度の関数にある。インク噴出速度はインクの粘度が低いと小さく粘度が高いと大きくなる。インク温度の変化に対してもインク粘度をほぼ一定になるように制御することは、インク噴出速度もほぼ一定になり、使用温度も広範囲で安定した文字を印字することが可能である。
また、図5に示すようにメインインク容器1、攪拌ポンプ36、インク攪拌弁37、は、インク攪拌管38で接続されている。インク粘度の調整時間を短縮する手段として、インク攪拌弁37を閉じてインク攪拌管38内の短い配管でインク循環を繰り返すことによりインク粘度調整材28、29、30をインク2aに混ぜ合わせ、粘度調整に掛かる時間を短くすることが出来る効果がある。
また、図6に示すように、メインインク容器1に回転子39、攪拌機40を備えることとしてもよい。かかる手段によっても使用環境温度も広範囲で安定した文字を印字することが出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るもので、インクジェット記録装置の全体概略配管図である。
【図2】本発明の実施形態に係るもので、メインインク容器の外観図である。
【図3】本発明の実施形態に係るもので、インク温度とインク粘度の関係である。
【図4】本発明の実施形態に係るもので、インク粘度調整剤の製造フローチャート図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るもので、短時間粘度制御の概略配管図である。
【図6】他の実施例1の概略配管図である。
【符号の説明】
【0020】
1…メインインク容器、2a,b…インク、3…調整剤投入口、4…インク供給弁、5…供給ポンプ、6…インクフィルター、7…調圧弁、8…ノズル本体、9…インク供給管、10…インク粒子、11…ガター、12…回収ポンプ、13…インク回収管、14…循環ポンプ、15…インク循環管、16…粘度計、17…サブインク容器、18…インク補給弁、19…インク補給管、20…補力液容器、21…補力液、22…補力ポンプ、23…補力弁、24…補力液補給管、25…液面検知センサ、26…排気管、27…容器キャップ、28…液体型インク粘度調整剤、29個体型インク粘度調整剤、30…粉体型インク粘度調整剤、31…中温度範囲、32…低温度範囲、33…高温度範囲、34…最下点、35…最上点、36…撹拌ポンプ、37…インク撹拌弁、38…インク撹拌管、39…回転子、40…撹拌機、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク粒子を噴出するノズル本体と、噴出されたインク粒子に文字や図形等の文字信号を帯電させる帯電電極と、帯電されたインク粒子を偏向させるための偏向電極と、文字や図形等の形状に供されないインク粒子を捕集するガターを備えたインクジェット記録装置において、
インク粘度を制御する手段として、前記ガターに捕らえられた文字や図形等の形状に供されないインク粒子及び、前記ノズル本体からの循環されたインクは粘度計を用い測定し、再利用するためのメインインク容器を設け、前記メインインク容器には液量検知センサを設け、前記液量検知センサに対応した制御をインク文字や画像の形成に費やされた分量の補充インクを前記メインインク容器に補充するインク補充手段と、揮発した分量の補充補力液を前記メインインク容器に補充する補力液補充手段を有し、前記メインインク容器内に溜まるインクに樹脂、色材、添加剤からなる固形または粉末あるいは液体高濃縮インクなどのインク粘度調整剤を投入してインク粘度を調整することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1において、前記インク粘度調整剤は使用するインクの構成成分の樹脂、色材、添加剤だけを固形または粉末あるいは液体高濃縮インクとすることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1において、インク粘度調整剤は溶解性を早めるために形状は小形にし、単数または複数個投入することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3において、メインインク容器と撹拌ポンプを連結させたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3において、メインインク容器内に撹拌機を配置したことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−179023(P2009−179023A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22260(P2008−22260)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】