説明

インクジェット記録装置

【課題】装置の大型化、部材点数やコストの増大を抑制し、乾燥に必要な電力を抑制すると共に、記録装置の高速化に対応して片面印刷においても記録媒体に吐出されたインクの十分な乾燥を行うことが可能なインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】プリンタ1の乾燥装置30には、インクが吐出された用紙Pを順次上方に搬入してストック可能な収容部31、分離送風部35、乾燥用送風部37a〜37f及び用紙排出部50が設けられており、収容部31においてインクが互いに付着しないように用紙Pをストックし、乾燥必要時間Ta経過後、最下方の用紙Pから印字間隔Tsで順次排出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリ、複写機、プリンタ等の記録装置において、用紙等の記録媒体にインクを吐出することによって記録を行うインクジェット記録装置におけるインクの乾燥に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ、複写機、プリンタ等の記録装置は、紙、布、OHP用シート等の記録媒体に画像を記録するように構成されているが、記録を行う方式により、インクジェット式、ワイヤドット式、サーマル式等に分類することができる。また、これらの記録方式はさらに、記録ヘッドが記録媒体上を走査しながら記録を行うシリアル型と、装置本体に固定された記録ヘッドにより記録を行うラインヘッド型に分類することができる。
【0003】
例えばラインヘッド型のインクジェット記録装置では、装置本体内に備えられた搬送ベルト等の搬送手段によって用紙等の記録媒体を高速で搬送しながら、記録媒体の幅以上の記録領域を有するラインヘッドの各インク吐出ノズルによりインクを吐出することによって記録媒体に画像を形成する。これにより、記録ヘッドが記録媒体の幅方向に往復動作するシリアル型インクジェットヘッドを採用したインクジェット記録装置に比べて高速印字が可能となる。
【0004】
このようなインクジェット式プリンタでは、記録部によって記録媒体に吐出されたインクを乾燥する手段が提案されている。例えば、特許文献1には、記録部によって画像が記録された記録媒体を順送りで搬送方向上流側へ送り戻す搬送手段と、送り戻し方向下流側に設けられ、搬送手段で送り戻された記録媒体の非記録面を吸着保持し、記録媒体を記録部へ反転して送り込む保持部を複数備えることにより、記録媒体の乾燥時間を確保しつつ、画像記録の高速性を維持する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2006−213480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、特許文献1では、複数の保持部で記録媒体を保持することにより乾燥時間を確保している。しかし、特許文献1の方法では、反転手段により乾燥時間を確保しているため、片面印刷時には、十分に乾燥時間を確保できないおそれがある。そのため、プリンタの高速化が益々進む現在において生じている、片面印刷時においても乾燥不足により排出ローラがインクで汚染されるという不具合には、十分に対応できないおそれがある。
【0006】
また、例えば60秒間に200ページを印刷可能な高速プリンタでは、1ページに要する印刷時間は約0.3秒である。かかるプリンタにおいて、インクが乾燥するのに5秒以上を要するとすれば、少なくとも5/約0.3=約17個の保持部を直列に備える必要があり、装置が大型化するおそれがある。また、部品点数が多くなり、コストも増加するおそれがある。さらに、記録速度が益々大きくなれば、それに比例して保持部の数量を増加させる必要があり、さらなる装置サイズの大型化、コストの増加を招くおそれがある。
【0007】
一方、乾燥能力を向上させるためには、加熱量や送風量を増加させることも考えられる。高消費電力とすることにより、例えば記録直後にリアルタイムで記録媒体を乾燥させるというように、より短時間で記録媒体を乾燥させることも可能となる。しかし、かかる場合には、プリント速度が増加するに従い、消費電力が益々増加することになる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、装置の大型化、部材点数やコストの増大を抑制し、乾燥に必要な電力を抑制すると共に、記録装置の高速化に対応して片面印刷においても記録媒体に吐出されたインクの十分な乾燥を行うことが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、記録媒体を搬送する搬送部と、該搬送部により搬送される記録媒体上にインクを吐出する記録部と、記録媒体上に吐出されたインクを乾燥する乾燥手段とを備えたインクジェット記録装置において、前記乾燥手段には、インクが吐出された記録媒体が順次搬入され、搬入された記録媒体を所定時間ストック可能な収容部と、該収容部に空気流を送り込み、前記収容部にストックされたストック記録媒体同士が接触しないようにすると共にインクを乾燥可能な送風部と、前記所定時間経過後、前記ストック記録媒体を最下方から1枚ずつ所定間隔で前記収容部から順次排出可能な排出部と、が設けられたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、前記送風部は、送風発生手段により発生する空気流を前記収容部に、記録媒体の搬入方向上流側から送り込み前記ストック記録媒体間を通過させる分離用送風部を、少なくとも有することを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、前記収容部は密閉可能な箱状部材から構成されており、前記収容部には、前記送風部から送り込まれた空気流を排出すると共に前記送風部に循環可能な排気部が設けられたことを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、前記送風部から送り込まれる空気流を加熱する加熱手段が設けられたことを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、前記排出部には、少なくとも駆動ローラと従動ローラとに張架された搬送ベルトと、前記ストック記録媒体のうち最下方の1枚を吸引し前記搬送ベルトに対して密着させる吸引手段と、が設けられたことを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、少なくとも1つが加熱ローラから成り、前記排出部により前記収容部から排出された記録媒体を通過させるニップを有するローラ対が設けられたことを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、前記所定時間は、インクが吐出された記録媒体を乾燥するのに必要な所定乾燥時間であり、1枚目の記録媒体が搬入されてから前記所定乾燥時間が経過するまでの間に前記収容部にストック可能な記録媒体の枚数を所定ストック枚数とするとき、前記記録部における記録媒体の総印字枚数が前記所定ストック枚数未満の場合、前記収容部に1枚目の記録媒体が搬入されてから前記所定乾燥時間が経過するまで待機した後に、前記所定ストック枚数以上の場合、前記ストック記録媒体が前記所定ストック枚数に達した後に、前記排出部により前記ストック記録媒体を前記所定間隔で1枚ずつ前記収容部から順次排出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の構成によれば、乾燥手段に、搬送部により記録部でインクが吐出された記録媒体が順次搬入され、搬入された記録媒体を所定時間ストック可能な収容部と、該収容部に空気流を送り込み、収容部にストックされたストック記録媒体同士が接触しないようにすると共にインクを乾燥可能な送風部と、所定時間経過後、収容部からストック記録媒体を最下方から1枚ずつ順次所定間隔で排出可能な排出部と、を設けることとした。
【0017】
これにより、複数の記録媒体を、互いにインクの付着を回避しつつインクが乾燥するまで収容部でストックできる。加えて、インクが乾燥した記録媒体から順次排出するのと入れ替わりに、引き続き印字される記録媒体を収容部に搬入することもできる。従って、装置の大型化、部材点数やコストの増大を抑制すると共に、記録装置の高速化に対応して片面印刷においても記録媒体に吐出されたインクの十分な乾燥を行うことができる。
【0018】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成のインクジェット記録装置において、送風部を、送風発生手段により発生する空気流を収容部に、記録媒体の搬入方向上流側から空気流を送り込みストック記録媒体間を通過させる分離用送風部を、少なくとも有する構成とすることにより、より効率的にストック記録媒体間に空気流を通過させて互いにインクの付着を回避すると共に、インクの乾燥効率も高めることができる。
【0019】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1または第2の構成のインクジェット記録装置において、収容部を密閉可能な箱状部材から構成し、収容部に、送風部から送り込まれた空気流を排出すると共に送風部に循環可能な排気部を設けることにより、空気流を有効利用してエネルギー効率を向上させ、乾燥効率を高めることができる。
【0020】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1〜第3のいずれかの構成のインクジェット記録装置において、送風部から送り込まれる空気流を加熱する加熱手段を設けることにより、インクの乾燥効率を高めることができる。
【0021】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1〜第4のいずれかの構成のインクジェット記録装置において、排出部に、少なくとも駆動ローラと従動ローラとに張架された搬送ベルトと、ストック記録媒体のうち最下方の1枚を吸引し搬送ベルトに対して密着させる吸引手段と、を設けることにより、ストック記録媒体の最下方の1枚のみを排出し易くすることができるため、より確実に所定間隔で順次排出することができる。
【0022】
また、本発明の第6の構成によれば、上記第1〜第5のいずれかの構成のインクジェット記録装置において、少なくとも1つが加熱ローラから成り、排出部により収容部から排出された記録媒体を通過させるニップを有するローラ対を設けることにより、乾燥した記録媒体のシワ等の発生を防止することができる。
【0023】
また、本発明の第7の構成によれば、上記第1〜第6のいずれかの構成のインクジェト記録装置において、記録部における記録媒体の総印字枚数が所定ストック枚数未満の場合、収容部に1枚目の記録媒体を搬入してから所定乾燥時間が経過するまで待機した後に、所定ストック枚数以上の場合、ストック記録媒体が所定ストック枚数に達した後に、排出部によりストック記録媒体を所定間隔で1枚ずつ収容部から順次排出することとした。
【0024】
これにより、総印字枚数が少ない場合であっても十分な乾燥時間を確保できると共に、総印字枚数が多い場合であっても、効率的に順次乾燥することができる。また、所定ストック枚数に達した後に印字される記録媒体を、排出されるストック記録媒体と入れ替わりに収容部に1枚ずつ順次搬入し、効率的に乾燥することも可能となる。従って、総印字枚数に応じてより適切な乾燥が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の一例であるインクジェット式プリンタの概略構造を示す正面断面図である。また、図2は、本実施形態のプリンタに用いられる搬送ユニット及び乾燥装置を示す斜視図であり、図3は、搬送ユニット及び乾燥装置の概略構造を示す正面断面図である。
【0026】
図1に示すように、プリンタ1の本体2の右側下方には、給紙カセット3が配置されている。給紙カセット3の内部には、用紙(記録媒体)Pが積まれて収容されている。給紙カセット3の用紙搬送方向下流部上方には、給紙装置4が配置されている。この給紙装置4により、用紙Pは図1において給紙カセット3の右上方に向けて送り出される。
【0027】
給紙カセット3の用紙搬送方向下流側には、用紙搬送路5、レジストローラ6、記録部7、及び搬送ユニット10が配置されている。給紙カセット3から送り出された用紙Pは、用紙搬送路5を通ってレジストローラ6に到達して一旦停止させられる。レジストローラ6は、用紙Pの斜め送りを矯正して再度用紙Pを送り出し、記録部7とレジストローラ6の間の用紙搬送路5に設けられた図示しない用紙先端検知部材による用紙Pの先端の検知に基づいたタイミングで、記録部7がインク吐出動作を実行する。なお、用紙搬送路5には、用紙Pを搬送するための搬送ローラ対を必要に応じて設けても良い。
【0028】
搬送ユニット10は、印字用駆動ローラ12、及び印字用従動ローラ13、及び印字用テンションローラ14に巻き掛けられた無端状の印字用搬送ベルト11を備えている。印字用搬送ベルト11は、印字用駆動ローラ12により、図1において反時計回りに回動する。印字用従動ローラ13の上方には、補助従動ローラ15が配置され、印字用従動ローラ13とニップ対を形成している。印字用駆動ローラ12は、搬送モータ74(図10参照)により駆動されるようになっている。
【0029】
レジストローラ6によって送り出された用紙Pは、この印字用搬送ベルト11の上面に載置され、図1において右側から左側へと搬送される。なお、印字用搬送ベルト11には、その両端部を互いに重ね合わせて接合しエンドレス形状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルト等が好適に用いられる。
【0030】
搬送ユニット10の内部であって、記録部7に対向する箇所には、図示しない印字用空気吸引ファンが設けられている。そして、搬送ユニット10は、印字用空気吸引ファンにより、その上面から下方に向かって空気を吸引することができる。また、印字用搬送ベルト11には、多数の空気吸引用の孔(図示せず)が設けられている。これにより、搬送ユニット10は、用紙Pを印字用搬送ベルト11の上面に吸着し、密着させながら搬送する。
【0031】
一方、プリンタ1は、後述する制御部20において外部コンピュータ(図示せず)から、文字や図形、模様などの画像データ信号を受信する。この画像データの情報は、搬送ユニット10と対向するようにその上方に配置された記録部7に送られる。記録部7は、記録ヘッド8のインク吐出ノズル(図示せず)の先端部が配置された底面と印字用搬送ベルト11の上面である用紙搬送面との間に微小間隔(例えば1mm)を設けて配置されている。
【0032】
記録部7は、各色に対応した3個の記録ヘッド8を4色分、合計12個備えている(図示せず)。記録ヘッド8は、各々用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向に向かって延び、図1に示すように、印字用搬送ベルト11の回動方向に沿って、回動方向上流側から下流側に向けて並べて配置されている。4色に対応した記録ヘッド8とは、上流側から順に、ブラック用の記録ヘッド8K、シアン用の記録ヘッド8C、マゼンタ用の記録ヘッド8M、及びイエロー用の記録ヘッド8Yである。
【0033】
各色の記録ヘッド8に対応して、搬送ユニット10の下方には、ここでは図示しない4台のインクタンク26(図10参照)が備えられており、各色のインクは、このインクタンク26から供給チューブ(図示せず)によって、記録ヘッド8に補給される。なお、以下の説明において、特に限定する必要がある場合を除き、「K」「C」「M」「Y」の識別記号は省略するものとする。
【0034】
なお、記録ヘッド8のインクの吐出方式としては、例えば、図示しないピエゾ素子を用いてインクを押し出すピエゾ方式や、発熱体によって気泡を発生させ、圧力をかけてインクを吐出するサーマルインクジェット方式など、各種方式を適用することができる。
【0035】
記録部7の各記録ヘッド8は、外部コンピュータから受信した画像データの情報に対応して、印字用搬送ベルト11表面に載置された用紙Pに向かって記録ヘッド8からインクを吐出する。そして、印字用搬送ベルト11の回転とともに、所定のタイミングで各記録ヘッド8から各色のインクが順次吐出されることにより、印字用搬送ベルト11表面上の用紙Pにはブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクが重ね合わされたカラーインク画像が形成、印刷される。
【0036】
また、必要に応じて4色の記録ヘッド8の上方に、加熱送風装置等を設けることもできる。また、給紙カセット3の下流側に、予備加熱用の加熱装置等を設けることもできる。
【0037】
搬送ユニット10の用紙搬送方向下流側(図の左側)には、乾燥装置(乾燥手段)30が配置されている。記録部7を通過した用紙Pは乾燥装置30へと排出され、用紙Pに吐出されたインクは、乾燥装置30により乾燥される。乾燥装置30の詳細については後述する。乾燥装置30により乾燥後、用紙Pは、搬送路61を通って排出トレイ65に排出される。
【0038】
一方、搬送ユニット10の下方には、搬送ユニット10の昇降装置(図示せず)を備えている。かかる昇降装置により、各記録ヘッド8のインク吐出ノズル(図示せず)の乾燥や目詰まりを防止するため、記録ヘッド8にキャップ(図示せず)を装着したり、印字用搬送ベルト11上で発生したジャム処理を行ったりするため、搬送ユニット10を昇降させる。
【0039】
そして、搬送ユニット10の下降により形成された作業空間を用い、キャップを図示しない垂直移動機構で昇降させ、記録ヘッド8に着脱することができる。また、キャップを脱離後、図示しない水平移動機構で水平移動させ、記録ヘッド8に着脱可能な位置と待機位置との間を移動できるようになっている。
【0040】
記録ヘッド8の乾燥や目詰まりの防止に関して、記録部7の長期間停止後の印刷開始時は全ての記録ヘッド8から、また印刷動作の合間にはインク吐出量が規定値以下の記録ヘッド8のノズルから、ノズル内の粘度が高くなったインクを吐出して、次の印刷動作に備える。このとき、記録ヘッド8にキャップを、微小距離をおいて近接させ、インクはキャップ内に吐出される。
【0041】
そして、図2及び図3に示すように、乾燥装置30には、収容部31と、収容部31に配設された給紙部33、分離用送風部(送風部、第1の送風部)35、乾燥用送風部(送風部、第2の送風部)37a、37b、37c、37d、37e及び37f、送風ファン(送風発生手段)41、排気部45及び用紙排出部(排出部)50と、を備えている。
【0042】
図4は、本実施形態のプリンタに用いられる乾燥装置の斜視図であり、図5は、図4の乾燥装置の上カバーを取り外した状態を示す斜視図であり、図6は、図5のAA’断面斜視図である。図1〜図3と共通する部分には共通する符号を付して説明を省略する。なお、図5において、実線矢印は収容部31に送り込まれる空気流を、破線矢印は収容部31から排出される空気流を示す。
【0043】
図4に示すように、収容部31は、略直方体の箱状部材から成り、インクが吐出された用紙Pが、収容部31の底面側から上方に順次配置され、所定時間ストックすることができるような大きさに形成されている。収容部31は、給紙部33、後述する分離用送風部35及び乾燥用送風部37a〜37fとの連結部以外は密閉されている。また、図5及び図6に示すように、収容部31には、用紙Pの搬送方向の移動を規制するためのカーソル38が設けられている。
【0044】
カーソル38は、用紙Pのサイズに応じて搬入された用紙Pの搬入方向の移動を規制可能に配置されている。図5では、収容部31の底面に設けられた所定の位置決め穴(図示せず)に嵌め込まれることにより、A3縦用紙(図2参照)の移動を規制するようになっているが、例えば位置決め穴39に嵌め込むことにより、A4縦用紙の移動を規制することもできる。
【0045】
給紙部33は、収容部31の記録媒体の搬送方向上流側(図6の右側)端部の上下方向略中央部から図の右上側に、搬送ユニット10に向かって突設されており(図3参照)、搬送ユニット10から搬送された用紙Pを収容部31へ案内するようになっている。
【0046】
図5に示すように、分離用送風部35は、給紙部33の下方において収容部31の幅方向通紙領域全域に送風可能に接続されると共に送風ファン41に接続されたダクトを有している。また、図6に示すように、分離送風部35の収容部31との連結部は、多数の小孔が設けられた板状部材から形成されており、空気流が分散して収容部31内に送られるようになっている。これにより、用紙Pの分離及び乾燥効率を高めることができる。
【0047】
また、送風ファン41の送風方向上流側には、配管44(破線部分)によって送風ファン41と接続された温風発生装置(加熱手段)43が配置されている。温風発生装置43で発生した温風が送風ファン41によって空気流とされ、該空気流は、分離用送風部35から収容部33へと送り込まれるようになっている(実線矢印)。また、温風発生装置43では、例えば約100℃の温風を発生することができる。
【0048】
また、分離用送風部35から送り込まれた空気流は、収容部31の底面と略平行(略水平)に送り込まれるようになっている(図9参照)。かかる空気流は、用紙Pが収容部31に順次搬入されると、収容部31にストックされたストック用紙P’(図9参照)間を空気流が通過し、用紙Pに作用する重力に抗してストック用紙P’間に隙間が形成されるような風量に設定されている。
【0049】
これにより、ストック用紙P’の間には空気流の通過による隙間が形成され、インクが乾燥する前に、次に搬送されたストック用紙P’の裏面に、先に搬入された用紙Pのインクが付着することを防止することができる。また、かかる付着を防止することにより、画質の低下等の不具合が発生することを防止できる。さらに、分離用送風部35からの空気流がインクと接触することにより、用紙Pに吐出されたインクを乾燥させることができる。
【0050】
乾燥用送風部37a〜37fは、送風ファン41と分離用送風部35との間に配置された配管42(破線部分)から分岐した図示しない配管に接続されており、送風ファン41で発生した空気流を、分離用送風部35とは異なる方向から収容部31に送ることができるようになっている(実線矢印)。
【0051】
乾燥用送風部37aは、給紙部33の上方に設けられ、給紙部33に沿って搬送方向上流側からストック用紙P’に空気流を送り込むことができる(図9参照)。乾燥用送風部37bは、収容部33の上面に設けられ、ストック用紙P’の上方から空気流を送り込むことができる(図9参照)。
【0052】
また、乾燥用送風部37c、37dは、収容部31の幅方向一方の側壁に搬送方向上流側から順に設けられ、乾燥用送風部37e、37fは、他方の側壁に乾燥用送風部37c、37dと対向して設けられており、これらによりストック用紙P’に対し幅方向外側から空気流を送風することができる。
【0053】
また、乾燥用送風部37a〜37fの収容部31との連結部は、多数の小孔が設けられた板状部材から形成されており、空気流が分散して収容部31内に送られるようになっている。これにより、ストック用紙P’の乾燥効率を高めることができる。なお、乾燥用送付部37a〜37fからの空気流により、ストック用紙P’間の分離を促進することもできる。
【0054】
このように、分離用送風部35に加え、乾燥用送風部37a〜37fを用いることにより、用紙Pを、より速く乾燥させることができ、乾燥効率を高めることができる。なお、乾燥用送風部37c〜37fを、収容部31の幅方向に移動可能に配置し、搬入される用紙Pに応じて、用紙Pの幅方向の移動を規制するためのカーソルとして用いることもできる。
【0055】
図5に示すように、排気部45は、収容部31の搬入方向下流側端部に配置されている。排気部45により、分離用送風部35及び乾燥用送風部37a〜37fから収容部31に送り込まれた空気流を排出することができ(破線矢印)、収容部31内部の空気を入れ替え、乾燥効率を向上させることができる。
【0056】
また、排気部45は、配管46(破線で示す)により温風発生部43に接続されており、排出した空気流を分離用送風部35及び乾燥用送風部37a〜37fに循環させ、再利用することができる。これにより、空気流を有効利用してエネルギー効率を向上させ、乾燥効率を高めることができる。
【0057】
また、図5に示すように、収容部31には、環境温度及び湿度を測定するための温湿度センサ71が設けられており、温湿度センサ71の検知結果は、後述する制御部20に送信されるようになっている。なお、ここでは温湿度検知センサ71を用いたが、温度センサや湿度センサを用いて温度若しくは湿度の検知結果により後述する乾燥必要時間Taを算出することもできる。
【0058】
図5及び図6に示すように、用紙排出部50は、分離用送風部35の下方に配置されており、収容部31内のストック用紙P’のうち、最下方の1枚のみを収容部31から排出できるようになっている。図7(a)は、本実施形態の乾燥装置に用いられる用紙排出部の斜視図であり、図7(b)は、図7(a)において排出用搬送ベルトを取り外した状態を示す斜視図であり、図8は、正面断面図である。図1と共通する部分には共通する符号を付して説明を省略する。
【0059】
用紙排出部50は、排出用駆動ローラ52、排出用搬送ローラ53、排出用従動ローラ54及び排出用テンションローラ55に架け渡された排出用搬送ベルト51を備えている。排出用駆動ローラ52の回転軸52aには駆動用ギア59が連結されており、駆動用ギア59が図示しないモータと連結されている。かかるモータにより駆動されることにより、排出用搬送ベルト51は、図(例えば図8)の時計回りに回動するようになっている。
【0060】
また、排出用搬送ローラ53を挟んで排出用駆動ローラ52と排出用従動ローラ54との間には、排出用搬送ベルト51と略密閉空間を形成する吸引ボックス(吸引手段)57が設けられている。吸引ボックス57は、図示しない排出用空気吸引ファンと接続されており、かかる排出用空気吸引ファンにより、吸引ボックス57内を吸引することができる。
【0061】
また、排出用搬送ベルト51には、多数の空気吸引用の孔51a(図7参照)が設けられており、上記排出用空気吸引ファンを作動させると、用紙Pを排出用搬送ベルト51上面の吸引領域S(図8の破線部分)に吸着し、これと密着させながら排出することができる。また、排出用搬送ローラ53には、周方向に複数の環状溝53aが設けられており、排出用搬送ローラ53による張架部分においても用紙Pを排出用搬送ベルト51上面に十分に吸着することができる。
【0062】
これにより、ストック用紙P’のうち最下方の1枚のみを、より排出し易くすることができるため、より確実に所定間隔で用紙Pを順次排出することができる。また、上記の通り環状溝53aを設けることにより、排出途中で用紙Pが排出用搬送ベルト51から外れることを回避することができる。用紙排出部50により排出された用紙Pは、上記した通り、搬送路61に設けられた排出ローラ63により排出トレイ65に排出される。
【0063】
次に、乾燥装置30の乾燥動作について説明する。図9は、用紙Pが乾燥されるときの乾燥装置周辺の状態を示す正面断面図である。図1〜図8と共通する部分には共通する符号を付して説明を省略する。図9に示すように、搬送ユニット10から用紙Pが搬送されると、給紙部33を通って収容部31に下方から順次搬入される。
【0064】
このとき、分離用送風部35により搬送方向上流側から空気流が略水平に送り込まれることにより、ストック用紙P’間を空気流が通過し、ストック用紙P’同士が接触しないようにすることができる。この非接触状態を保ちながら、分離用送風部35及び乾燥用送風部37a〜37fから送り込まれる空気流と所定時間接触することにより、収容部31内のストック用紙P’上のインクが乾燥される。乾燥後、用紙Pは、用紙排出部50により最下方から1枚ずつ順次排出される。
【0065】
より詳細には、次の通りである。記録部7及び搬送ユニット10により設定される所定の印字速度Ts(sec/枚)で印字動作が行われることとする。また、用紙Pの乾燥に必要な所定時間を乾燥必要時間(所定乾燥時間)Ta(sec)とする。このとき、収容部31には、1枚目の用紙Pが搬入されてから2枚目以降の用紙Pが、印字間隔Tsで順次搬入される。
【0066】
このため、用紙Pが収容部31に搬入されてから乾燥するまでには、Ta/Ts枚の用紙Pが収容部31に搬入される必要がある。すなわち、収容部31に合計{(Ta/Ts)+1}枚の用紙Pが搬入されるまで用紙Pをストックする必要がある。かかる乾燥に必要な用紙Pの枚数を乾燥ストック枚数(所定ストック枚数)N(Nは整数)とする。
【0067】
まず、ユーザ等により設定された総印字枚数J(Jは整数)が、乾燥ストック枚数N以上(J≧N)の場合を考える。かかる場合、1枚目〜N枚目の用紙P〜Pが収容部31に搬入されたときには、用紙Pのストック時間は乾燥必要時間Taを経過し乾燥しているため、用紙排出部50により用紙Pを収容部31から排出する。その後、用紙Pの排出から印字間隔(所定間隔)Tsで用紙P2、用紙P3・・・を順次排出すれば、各用紙Pのストック時間は、排出の際には乾燥必要時間Taを経過している。
【0068】
一方、N+1枚目以降も印字動作が継続していれば、用紙Pの搬入から印字間隔TsでN+1枚目の用紙PN+1が収容部31に搬入される。なお、用紙PN+1は、用紙Pが排出された後用紙Pが排出されるまでの間に搬入されるようになっている。さらに、引き続き印字されるN+2枚目、N+3枚目の用紙PN+2、PN+3は、それぞれ用紙P、Pの排出と入れ替わって搬入される。
【0069】
以降、N+m枚目(mは整数)まで、常にN枚のストック用紙P’が収容部31に存在する状態で、かかる排出及び搬入動作が繰り返される。そして、収容部31に搬入される用紙Pが総印字枚数Jに達した(すなわち、N+m=Jとなった)後は、収容部31に残ったN枚の用紙Pが、印字間隔Tsで順次排出される。
【0070】
このように、総印字枚数Jが乾燥ストック枚数N以上であれば、N枚の用紙Pが収容部31に搬入されたとき、最下方の用紙P(1枚目に搬入された用紙P)は収容部31に搬入されてから乾燥必要時間Taに達しているため、用紙排出部50により印字間隔と等しい所定時間間隔(所定間隔)Tsで順次排出する。また、用紙Pの排出と入れ替わりに、総印字枚数Jに達するまで用紙Pが所定時間間隔Tsで1枚ずつ搬入される。
【0071】
なお、総印字枚数JがNと等しい(J=N)場合には、用紙Pから用紙Pまで搬入した後、印字間隔Tsで用紙Pから順次排出される。しかし、N+1枚目以降の用紙Pは印字されないため、用紙Pはそれ以上収容部31には搬入されず、用紙P〜Pの排出のみが行われる。
【0072】
一方、総印字枚数Jが乾燥ストック枚数N未満の場合には、印字済みの用紙Pが全て収容部31に搬入されても、最初に搬入した用紙Pが収容部31にストックされる時間は乾燥必要時間Taに達しない。そこで、用紙Pが搬入されてから乾燥必要時間Taを経過するまで収容部31で待機することとし、乾燥必要時間Ta経過後、用紙Pを排出する。そして、用紙Pの排出に引き続き、全ての用紙Pを印字間隔Tsで排出する。このとき、上記した様に2枚目以降の各用紙Pのストック時間は、排出の際には乾燥必要時間Taを経過している。
【0073】
乾燥必要時間Taは、インクの種類や用紙Pの種類等によって影響を受けるおそれがある。また、乾燥必要時間Taは、乾燥し易い環境条件(高温低湿度)になる程短く、乾燥し難い環境条件(低温高湿度)になる程長くなる。また、温風発生装置43の加熱、送風ファン41の送風能力や装置の大きさ等による影響も受ける。さらに、乾燥必要時間Taが長くなれば乾燥ストック枚数Nが大きくなり、装置の大型化を招くおそれがある。従って、例えばこれらの観点を考慮して環境条件と乾燥必要時間Taとの関係を予備実験等により適宜設定することが必要である。
【0074】
また、印字間隔Tsは、記録部7の印字能力や搬送ユニット10の搬送能力等によっても影響するため、例えばこれらを考慮して印字間隔Tsを設定し、乾燥ストック枚数Nを設定することができる。また、印字間隔Tsは、例えば60秒間に所定枚数X(Xは整数)を印字する場合、60/Xで表されるが、かかる算出結果は、例えば小数点以下を切り上げ処理等して用いることができる。また、このようにして設定される乾燥ストック枚数Nは、例えば20枚とすることができる。
【0075】
図10は、第1実施形態のインクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。図1〜図9と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。プリンタ1には、制御部20が備えられており、制御部20には、RIP(プリンタコントローラ)22、FPGA(Field Programable Gate Array)23等が接続されており、RIP22は、FPGA23にも接続されている。
【0076】
FPGA23には、インクタンク26、エンコーダ28、記録ヘッド8K〜8Yが接続されている。また、制御部20には、ADコンバータ72、モータ制御IC73が接続されており、ADコンバータ72には温湿度センサ71が、モータ制御IC73には搬送モータ74が接続されている。また、制御部20及びFPGA23は、主電源69に接続されている。
【0077】
制御部20は、例えばCPUであり、後述する各種制御回路に制御信号を出力し、記録部7の記録動作、搬送ユニット10の搬送動作及び乾燥装置30の乾燥動作等を制御する。また、制御部20は、RIP22を介して受信された画像信号を画像データに変換し、FPGA23に送信して画像処理や加工を実行させる機能や、用紙Pの搬送速度を制御する機能を有している。
【0078】
また、制御部20は、図示しないRAMにアクセス可能であり、かかるRAMには、環境条件と乾燥必要時間Taとを関係付けたパラメータや、印字間隔Tsに関するパラメータ等が格納されている。また、制御部20は、乾燥装置30に設けられた温度センサ71の検知結果を、ADコンバータ72を介して受信し、上記RAM等に格納されたパラメータに基づき乾燥必要時間Taを算出する機能、乾燥必要時間Taと印字間隔Tsから乾燥ストック枚数Nを算出する機能を有している。
【0079】
また、制御部20は、タイマ及びカウンタ21を備えており、乾燥装置30の収容部31におけるストック時間や、印字枚数及び収容部31に搬送及びストックされる用紙Pの枚数等を計測する機能を有している。また、制御部20は、総印字枚数JがN以上か否かを判断する機能、用紙排出部50により所定のタイミング及び間隔で用紙Pを収容部31から順次排出させる機能、収容部31に搬入された用紙Pの枚数が総印字枚数Jに達したか否かを判断する機能等を有している。
【0080】
RIP22は、例えば、図示しないパソコン等のホスト装置とデータの送受信を行う。制御部20は、RIP22を介して受信された画像信号を、必要に応じてFPGA23により変倍処理或いは階調処理して画像データに変換する。
【0081】
FPGA23は、画像処理部24及びデータ加工部25を備えた回路であり、制御部20からの制御信号に基づき、制御部20から送信された画像データを変倍或いは階調処理等して、インクタンク26、エンコーダ28、記録ヘッド8K〜8Yに送信する。また、記録ヘッド8K〜8Yからのインクの吐出を制御する。かかる制御と、搬送モータ74によって駆動する搬送ベルト11による用紙の搬送の制御とにより、用紙への記録処理が行われる。
【0082】
インクタンク26には、設置時期や色等の情報を記憶するROM27が搭載されている。ROM27に記憶されたインク色情報は、FPGA23を介して制御部20に送信され、インク色等の仕様の判別に用いられる。
【0083】
エンコーダ28は、印字用駆動ローラ12に接続されており(図示せず)、印字用駆動ローラ12の回転軸の回転変位量に応じてパルス列を出力する。制御部20は、エンコーダ28からFPGA23を介して送信されるパルス数をカウントすることで回転量を算出し、用紙の送り量(用紙位置)を把握する。そして制御部20は、エンコーダ28からの信号に基づいて、印字用駆動ローラ12の駆動による用紙の送り量(用紙位置)が均一になるような補正信号をモータ制御IC73に出力する。
【0084】
モータ制御IC73は、制御部20からの出力信号により搬送モータ74を駆動する。搬送モータ74は駆動して印字用駆動ローラ12(図1参照)を回転させ、印字用搬送ベルト11を図1の反時計回りに回動させて用紙Pを乾燥装置30へと搬送する。
【0085】
次に、本実施形態のプリンタを用いた乾燥制御について説明する。図11及び図12は、第1実施形態のインクジェット記録装置を用いた乾燥制御の一例を示すフローチャートであり、図11は、総印字枚数が乾燥ストック枚数より小さいときのフローチャートであり、図12は、総印字枚数が乾燥ストック枚数以上のときのフローチャートである。図1〜図10と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
印字間隔Tsは、上記の通り予め設定されている。まず、ユーザ等により用紙サイズ、総印字枚数J等が設定され、スタートすると、制御部20は印字指令を受信し(ステップS1)、温風発生装置43、送風ファン41を作動させる(ステップS2)。また、温湿度検知センサ71による温湿度検知を行う(ステップS3)。
【0087】
制御部20は、温湿度検知センサ71の検知温湿度(検知結果)が所定範囲内か否かを判断し(ステップS4)、所定範囲内であれば、検知結果に基づき1枚の用紙Pを乾燥するのに必要な乾燥必要時間Taを算出する(ステップS5)。
【0088】
また、制御部20は、乾燥必要時間Taと印字間隔Tsとから、乾燥ストック枚数Nを算出する(ステップS6)。そして、総印字枚数Jが乾燥ストック枚数Nより小さいか否かが判断される(ステップS7)。総印字枚数Jが乾燥ストック枚数Nより小さい(J<N)と判断された場合には、印字動作を開始し(ステップS8)、記録部7で印字された1枚目の用紙PからJ枚目の用紙Pまでを収容部31に順次搬入する(ステップS9)。
【0089】
次に、最初の用紙Pが収容部31に搬入されてから、乾燥必要時間Taが経過するまで待機する(ステップS10)。かかる待機後、最下方の用紙Pから最上方の用紙Pまで、印字間隔Tsで順次排出する(ステップS11)。その後、温風発生装置43、送風ファン41の作動を停止し(ステップS12)、終了する。
【0090】
一方、ステップS7で、総印字枚数Jが乾燥ストック枚数N以上(J≧N)と判断された場合には(図11の(1))、図12に示すように、印字動作を開始し(ステップS13)、記録部7で印字された1枚目の用紙PからN枚目の用紙Pまで収容部31に順次搬入する(ステップS14)と、収容部31に搬入された用紙Pの枚数(乾燥必要枚数)Nが総印字枚数Jより小さいか否か(用紙Pが総印字枚数Jに達したか否か)が判断される(ステップS15)。
【0091】
JがNに達していない(N<J)と判断されれば、次の1枚(N+m枚目、ここではm=1に相当する、但しmは整数)を記録部7で印字する(ステップS16)。そして、収容部31から最下方の用紙P(用紙P、ここではm=1に相当する)を排出し(ステップS17)、用紙Pを排出した後、印字したN+m枚目の用紙PN+mを収容部31に搬入する(ステップS18)。そして、収容部31へ搬入された用紙Pの総搬入枚数(N+m)が総印字枚数Jに達したか否かが判断される(ステップS19)。
【0092】
総搬入枚数(N+m)がJに達した(N+m=J)場合には、収容部31内にストックされているN枚のストック用紙P’を、用紙排出部50により最下方のストック用紙P’から印字間隔Tsで順次排出する(ステップS20)。その後、温風発生装置43、送風ファン41の作動を停止し(ステップS21)、終了する。
【0093】
一方、ステップS15でJがNに達した(J=N)と判断された場合には、ステップS20に従い、収容部31にストックされているN枚のストック用紙P’を、用紙排出部50により印字間隔Tsで順次排出し、ステップS21を実行した後、終了する。なお、かかる場合、総印字枚数Jと乾燥ストック枚数Nが同じ場合に相当する。
【0094】
また、ステップS19でN+mがJに達していない(N+m<J)場合には、mをm+1とカウントアップした(ステップS22)後、N+m=JとなるまでステップS16〜S19を繰り返し、N+m=Jとなった場合には、ステップS20、S21を実行した後、終了する。
【0095】
上記の通り、乾燥装置30に、収容部31、分離用送風部35及び用紙排出部50を設けたため、複数の用紙Pを、互いにインクの付着を回避しつつインクが乾燥するまで収容部31でストックし、インクが乾燥したストック用紙P’から順次排出することができる。加えて、排出した用紙Pと入れ替わりに、引き続き印字される用紙Pを収容部31に搬入することができる。
【0096】
これにより、装置の大型化、部材点数やコストの増大を抑制すると共に、プリンタ1の高速化に対応して片面印刷においても用紙Pに吐出されたインクの十分な乾燥を行うことができる。
【0097】
また、本実施形態では、送風ファン41と、分離用送風部35と、を少なくとも設けたため、用紙搬入方向に逆らうことなく、より効率的にストック用紙P’間に空気流を通過させて互いにインクの付着を回避すると共に、インクの乾燥効率も高めることができる。また、ここでは分離用送風部35に加え、分離用送風部35とは異なる方向から空気流を送り込む乾燥用送風部37a〜37fを設けたため、ストック用紙P’の分離を促進すると共にインクの乾燥効率を一層高めることができる。しかし、送風ファン41は、分離用送風部35及び乾燥用送風部37a〜37fにそれぞれ一体に設けることもできる。また、乾燥用送風部37a〜37fを用いない構成とすることもできる。
【0098】
また、本実施形態では、収容部31を、密閉可能な箱状部材から構成すると共に、分離用送風部35及び乾燥用送風部37a〜37fから送り込まれた空気流を排出可能な排気部45を有することとし、排気部45から排出された空気流を、分離用送風部35及び乾燥用送風部37a〜37fに循環することにより、空気流を有効利用してエネルギー効率を向上させ、乾燥効率を高めることができる。
【0099】
また、本実施形態では、温風発生装置43を設けたため、インクの乾燥効率を高めることができる。また、本実施形態では、用紙排出部50に、排出用駆動ローラ52、排出用従動ローラ53等に張架された排出用搬送ベルト51と、吸引ボックス57と、を設けたため、ストック用紙P’の最下方の1枚のみを排出し易くすることができるため、より確実に所定間隔で用紙Pを順次排出することができる。
【0100】
また、本実施形態では、記録部7における用紙Pの総印字枚数Jが乾燥ストック枚数N未満の場合、収容部31に1枚目の用紙Pが搬入されてから乾燥必要時間Taが経過するまで待機した後に、総印字枚数Jが乾燥ストック枚数N以上の場合、ストック用紙P’が乾燥ストック枚数Nに達した後に、ストック用紙P’を用紙排出部50により印字間隔Tsで1枚ずつ収容部31から順次排出することとした。
【0101】
これにより、総印字枚数Jが少ない場合であっても十分な乾燥必要時間Taを確保できると共に、総印字枚数Jが多い場合には、効率的に順次乾燥することができる。また、乾燥ストック枚数Nに達した後に印字される用紙Pを、排出されるストック用紙P’と入れ替わりに収容部31に1枚ずつ順次搬入し、効率的に乾燥することも可能となる。従って、総印字枚数Jに応じてより適切な乾燥が可能となる。
【0102】
なお本実施形態では、用紙Pの表面のみ印字する(片面印刷)場合について説明したが、表面に続いて裏面も印字する(両面印刷)こともできる。かかる場合、例えば、用紙排出部51の下流側に、搬送路61から分岐し、レジストローラ6に連通する両面印刷用搬送路(図示せず)を設け、該両面印刷用搬送路の下流側に搬送路切り替え板(図示せず)を設けることにより、片面印刷する場合と、両面印刷する場合とで、搬送路61と両面印刷用搬送路とを切り替えることができ、それぞれ印刷に対応することができる。
【0103】
図13は、本発明の第2実施形態に係るプリンタの概略構造を示す正面断面図である。図13に示すように、搬送路61には、排出ローラ63の代わりに定着ローラ対(ローラ対)67が備えられおり、乾燥装置30から排出された用紙Pは、定着ローラ対67に挿通される。
【0104】
定着ローラ対67は、通常、電子写真法で用いられる定着ローラ対を適用することができ、例えば内部にハロゲンヒータ(図示せず)を有するヒートローラ(加熱ローラ)67aと、ヒートローラ67aを下方から圧接してニップを形成するプレスローラ67bとから構成することができる。
【0105】
そして、用紙Pが定着器67を通過することにより、加熱及び加圧され、用紙Pのシワを伸ばすことができる。定着ローラ対67を通った用紙Pは、排出トレイ65に排出される。このように定着ローラ対67を設けたため、乾燥した用紙Pのシワ等の発生を防止すると共にさらに十分に乾燥することができる。なお、ハロゲンヒータの加熱によるヒートローラ67aの表面温度は、該ローラにインクがオフセットせず、用紙Pのシワ等を防止可能な温度に設定することができ、例えば約200℃に設定することができる。
【0106】
その他、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、記録ヘッド8K〜8Yのノズルの個数やノズル間隔は装置の仕様に応じて適宜設定することができる。また、本実施形態ではインクジェットプリンタ1を用いたが、本発明はインクジェットプリンタ1以外の画像形成装置用の乾燥装置としても使用することができる。
【実施例】
【0107】
第1実施形態のプリンタ1を用い、所定のインク及び用紙Pを用い、カラー印刷を行ったときの温湿度センサ71の検知結果と乾燥必要時間Taとの関係を調べた。その結果、温度40℃以上、湿度20〜40%RHのとき、すなわちインクが乾燥しやすい条件では、乾燥必要時間Taを5秒とすることができた。また、温度10〜20℃、湿度60〜80%RHのとき、すなわちインクが乾燥し難い条件では、乾燥必要時間Taを10秒とすることができた。
【0108】
このように、インクが乾燥しやすい条件と乾燥し難い条件とにより乾燥必要時間Taを設定し、また、かかる条件の間で適宜、温度及び湿度を変化させて乾燥必要時間Taとの関係を予め設定しておくことにより、温湿度センサ71の検知結果に基づき乾燥必要時間Taを設定し、Taと予め設定した印字間隔Tsとから、乾燥ストック枚数Nを算出することができる。
【0109】
なお、上記乾燥必要時間Taは一例に過ぎず、収容部31の大きさや温風発生装置43での加熱温度や送風ファン41での送風量等に応じて乾燥必要時間Taを適宜設定することができ、上記よりも長くすることも短くすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、記録媒体を搬送する搬送部と、該搬送部により搬送される記録媒体上にインクを吐出する記録部と、記録媒体上に吐出されたインクを乾燥する乾燥手段とを備えたインクジェット記録装置において、前記乾燥手段には、インクが吐出された記録媒体が順次搬入され、搬入された記録媒体を所定時間ストック可能な収容部と、該収容部に空気流を送り込み、前記収容部にストックされたストック記録媒体同士が接触しないようにすると共にインクを乾燥可能な送風部と、前記所定時間経過後、前記ストック記録媒体を最下方から1枚ずつ所定間隔で前記収容部から順次排出可能な排出部と、が設けられたものである。
【0111】
これにより、複数の記録媒体を、互いにインクの付着を回避しつつインクが乾燥するまで収容部でストックでき、加えて、インクが乾燥した記録媒体から順次排出するのと入れ替わりに、引き続き印字される記録媒体を収容部に搬入することができるため、装置の大型化、部材点数やコストの増大を抑制すると共に、記録装置の高速化に対応して片面印刷においても記録媒体に吐出されたインクの十分な乾燥を行うことができる。
【0112】
また、送風部を、送風発生手段により発生する空気流を収容部に、記録媒体の搬入方向上流側から空気流を送り込みストック記録媒体間を通過させる分離用送風部を、少なくとも有する構成とすることにより、より効率的にストック記録媒体間に空気流を通過させて互いにインクの付着を回避すると共に、インクの乾燥効率も高めることができる。
【0113】
また、収容部を密閉可能な箱状部材から構成し、収容部に、送風部から送り込まれた空気流を排出すると共に送風部に循環可能な排気部を設けることにより、空気流を有効利用してエネルギー効率を向上させ、乾燥効率を高めることができる。また、送風部から送り込まれる空気流を加熱する加熱手段を設けることにより、インクの乾燥効率を高めることができる。
【0114】
また、排出部に、少なくとも駆動ローラと従動ローラとに張架された搬送ベルトと、ストック記録媒体のうち最下方の1枚を吸引し搬送ベルトに対して密着させる吸引手段と、を設けることにより、ストック記録媒体の最下方の1枚のみを排出し易くすることができるため、より確実に所定間隔で順次排出することができる。また、少なくとも1つが加熱ローラから成り、排出部により収容部から排出された記録媒体を通過させるニップを有するローラ対を設けることにより、乾燥した記録媒体のシワ等の発生を防止することができる。
【0115】
また、記録部における記録媒体の総印字枚数が所定ストック枚数未満の場合、収容部に1枚目の記録媒体を搬入してから所定乾燥時間が経過するまで待機した後に、所定ストック枚数以上の場合、ストック記録媒体が所定ストック枚数に達した後に、排出部によりストック記録媒体を所定間隔で1枚ずつ収容部から順次排出することにより、総印字枚数に応じてより適切な乾燥が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の一例であるインクジェット式プリンタの概略構造を示す正面断面図である。
【図2】は、本実施形態のプリンタに用いられる搬送ユニット及び乾燥装置を示す斜視図である。
【図3】は、搬送ユニット及び乾燥装置の概略構造を示す正面断面図である。
【図4】は、本実施形態のプリンタに用いられる乾燥装置の斜視図である。
【図5】は、図4の乾燥装置の上カバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【図6】は、図5のAA’断面斜視図である。
【図7】は、本実施形態の乾燥装置に用いられる用紙排出部を示す図であり、図7(a)は、斜視図であり、図7(b)は、図7(a)において排出用搬送ベルトを取り外した状態を示す斜視図である。
【図8】は、本実施形態の乾燥装置に用いられる用紙排出部の正面断面図である。
【図9】は、用紙Pが乾燥されるときの乾燥装置周辺の状態を示す正面断面図である。
【図10】は、本実施形態のインクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
【図11】は、本実施形態のインクジェット記録装置を用いた乾燥制御の一例を示す、総印字枚数が乾燥必要枚数より小さいときのフローチャートである。
【図12】は、本実施形態のインクジェット記録装置を用いた乾燥制御の一例を示す、総印字枚数が乾燥必要枚数以上のときのフローチャートである。
【図13】は、本発明の第2実施形態に係るプリンタの概略構造を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0117】
1 プリンタ(インクジェット記録装置)
2 本体
7 記録部
8 記録ヘッド
10 搬送ユニット
20 制御部
30 乾燥装置
31 収容部
35 分離用送風部(送風部)
37a〜37f 乾燥用送風部(送風部)
42 送風ファン(送風発生手段)
43 温風発生装置(加熱手段)
45 排気部
50 用紙排出部(排出部)
51 排出用搬送ベルト(搬送ベルト)
52 排出用駆動ローラ(駆動ローラ)
53 排出用搬送ローラ
54 排出用従動ローラ(従動ローラ)
55 排出用テンションローラ
57 吸引ボックス(吸引手段)
67 定着ローラ対(ローラ対)
67a ヒートローラ(加熱ローラ)
67b プレスローラ
71 温湿度センサ
P 用紙
P’ ストック用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送部と、該搬送部により搬送される記録媒体上にインクを吐出する記録部と、記録媒体上に吐出されたインクを乾燥する乾燥手段とを備えたインクジェット記録装置において、
前記乾燥手段には、
インクが吐出された記録媒体が順次搬入され、搬入された記録媒体を所定時間ストック可能な収容部と、
該収容部に空気流を送り込み、前記収容部にストックされたストック記録媒体同士が接触しないようにすると共にインクを乾燥可能な送風部と、
前記所定時間経過後、前記ストック記録媒体を最下方から1枚ずつ所定間隔で前記収容部から順次排出可能な排出部と、が設けられたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記送風部は、送風発生手段により発生する空気流を前記収容部に、記録媒体の搬入方向上流側から送り込み前記ストック記録媒体間を通過させる分離用送風部を、少なくとも有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記収容部は密閉可能な箱状部材から構成されており、前記収容部には、前記送風部から送り込まれた空気流を排出すると共に前記送風部に循環可能な排気部が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記送風部から送り込まれる空気流を加熱する加熱手段が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記排出部には、少なくとも駆動ローラと従動ローラとに張架された搬送ベルトと、前記ストック記録媒体のうち最下方の1枚を吸引し前記搬送ベルトに対して密着させる吸引手段と、が設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
少なくとも1つが加熱ローラから成り、前記排出部により前記収容部から排出された記録媒体を通過させるニップを有するローラ対が設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記所定時間は、インクが吐出された記録媒体を乾燥するのに必要な所定乾燥時間であり、
1枚目の記録媒体が搬入されてから前記所定乾燥時間が経過するまでの間に前記収容部にストック可能な記録媒体の枚数を所定ストック枚数とするとき、
前記記録部における記録媒体の総印字枚数が前記所定ストック枚数未満の場合、前記収容部に1枚目の記録媒体が搬入されてから前記所定乾燥時間が経過するまで待機した後に、
前記所定ストック枚数以上の場合、前記ストック記録媒体が前記所定ストック枚数に達した後に、
前記排出部により前記ストック記録媒体を前記所定間隔で1枚ずつ前記収容部から順次排出することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−36543(P2010−36543A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205085(P2008−205085)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】