説明

インクジェット記録装置

【課題】ワークの延在方向に対し直角に精度良く印刷を行うことができるインクジェット記録装置を提供することである。
【解決手段】本発明のインクジェット記録装置1は、リール・ツー・リール形式で除給材されたワークWに対し、インクジェットヘッド51を主走査方向および副走査方向に相対的に移動させながら、インクジェットヘッド51を駆動してワークWに印刷を行うインクジェット記録装置1であって、インクジェットヘッド51に対しワークWを副走査方向に相対的に移動させる副走査移動軸を有するX軸テーブル7と、ワークWに対しインクジェットヘッド51を主走査方向に相対的に移動させる主走査移動軸を有するY軸テーブル8と、主走査移動軸を、ワークWと平行な平面内において微小回転させるヘッド軸回転機構10と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール・ツー・リール形式で供給されるワークに印刷を行うインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の記録装置(インクジェット記録装置)として、いわゆるリール・ツー・リール形式で除給材されるワークに対し、インクジェット方式で印刷を行うものが知られている(特許文献1参照)。
この記録装置は、回転体に巻回された長尺の記録媒体を繰出す繰出し装置と、印刷済みの記録媒体を回転体に巻取る巻取り装置と、回転体から繰り出された記録媒体(ワーク)に印刷を行う複数の記録ヘッド(インクジェットヘッド)と、搬送方向に対する記録媒体の斜行角度の情報を取得する取得手段と、取得した斜行情報に基づいて記録ヘッドの吐出タイミングを制御する補正手段と、を備えている。
この場合、繰出し装置により繰出された記録媒体の斜行角度を取得手段により取得し、その取得情報に基づいて、吐出タイミングを補正して記録ヘッドにより描画処理を行う。そして、処理済みの記録媒体を巻取り装置で順次巻き取るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−155628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような記録装置では、タイミング補正により、傾斜した記録媒体の幅方向の余白、すなわち記録媒体の幅方向の印刷開始位置と印刷終了位置については精度良く印刷を行うことができるものの、基本的に、記録媒体の傾斜角分、記録媒体に対して斜めに印刷が行われてしまうという問題があった。特に、ラベル用の画像を連続的に印刷し、印刷後の記録媒体を切断してラベルとする場合、傾いた画像となってしまう。
【0005】
本発明は、ワークの延在方向に対し直角に精度良く印刷を行うことができるインクジェット記録装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェット記録装置は、リール・ツー・リール形式で除給材されたワークに対し、インクジェットヘッドを主走査方向および副走査方向に相対的に移動させながら、インクジェットヘッドを駆動してワークに印刷を行うインクジェット記録装置であって、給材されたワークがセットされるワークステージと、インクジェットヘッドおよびワークステージにセットされたワークを副走査方向に相対的に移動させる副走査移動軸を有する副走査移動テーブルと、インクジェットヘッドおよびワークステージにセットされたワークを主走査方向に相対的に移動させる主走査移動軸を有する主走査移動テーブルと、主走査移動軸を、ワークと平行な平面内において微小回転させる主走査側回転手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この場合、副走査移動軸は、インクジェットヘッドに対しワークを副走査方向に移動させ、主走査移動軸は、ワークに対しインクジェットヘッドを主走査方向に移動させることが、好ましい。
【0008】
これらの構成によれば、主走査側回転手段により、インクジェットヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動軸を、ワークと平行な平面内において微小回転させることができるため、ワークステージ上のワークが副走査移動軸に対し微妙に傾いていても、ワーク(の延在方向)に対し主走査移動軸を直角に角度調整することができる。これにより、ワークの延在方向に対し、直角(行方向または列方向)に精度良く印刷を行うことができる。なお、傾いたワークの延在方向における印刷は、インクジェットヘッドの吐出タイミングで調整(補正)することが好ましい。
【0009】
この場合、副走査移動軸の軸線に対する、副走査移動テーブルにセットされたワークにおける副走査方向の中心線の角度ずれを検出する検出手段と、検出手段の検出結果に基づいて、ワークの中心線に対し主走査移動軸の軸線が直交するように、主走査側回転手段を制御する制御手段と、を更に備えたことが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、ワークの延在方向に対し、主走査移動軸を直角に角度調整する動作を、自動で且つリアルタイムで実施することができる。
【0011】
この場合、主走査側回転手段は、主走査移動軸の両軸端部を支持する一対の軸移動機構を有し、各軸移動機構は、軸端部を、X軸方向、Y軸方向およびθ方向に微小移動させるX・Y・θテーブルで構成されていることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、主走査側回転手段を主走査移動軸の中心位置に配置することなく、主走査移動軸を微小回転させることができると共に、主走査移動軸の微小回転を可能とした状態で、主走査移動軸を両持ちで安定に支持することができる。また、主走査移動軸の副走査方向への平行移動も可能となり、副走査方向におけるインクジェットヘッドの位置調整も可能となる。
【0013】
この場合、ワークステージを支持すると共に、ワークステージをワークと平行な平面内において微小回転させる副走査側回転手段、を更に有していることが、好ましい。
【0014】
また、制御手段は、検出手段の検出結果に基づいて、ワークの中心線に対し副走査移動軸の軸線が平行となるように、副走査側回転手段を更に制御することが、好ましい。
【0015】
これらの構成によれば、ワークステージ上のワークが副走査移動軸に対し微妙に傾いていても、副走査側回転手段により、ワーク(の延在方向)に対し副走査移動軸を平行に角度調整することができる。これにより、ワークの延在方向に対し、平行(行方向または列方向)に精度良く印刷を行うことができる。すなわち、ワークの延在方向に対し、直角および平行に精度良く印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】インクジェット記録装置の(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図2】インクジェットヘッドの斜視図である。
【図3】ヘッド軸回転機構廻りの(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図4】主走査移動軸の角度調整方法についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。このインクジェット記録装置は、いわゆるリール・ツー・リール形式で除給材される薄いフィルム状のワークに対して、例えば紫外線硬化インク(UVインク)をインクジェットヘッドにより吐出することで、所望の画像等を印刷するものである。なお、以下の説明では、ワークの送り方向(ワークの長手方向)をX軸方向とし、X軸方向に直交する方向(インクジェットヘッドの移動方向)をY軸方向とし、さらにワークと平行な平面内における回転方向をθ方向とする。
【0018】
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、機台2と、ロール状に巻回された長尺のワークWを繰出す繰出し装置3と、印刷済みのワークWを巻取る巻取り装置4と、機台2上に配設され、給材されたワークWを吸着セットするワークステージ5と、ワークステージ5をθ方向に回転させるステージ回転機構(副走査側回転手段)6と、X軸方向に延在し、ステージ回転機構6およびワークステージ5を介してワークWをX軸方向に間欠送りするX軸テーブル(副走査移動テーブル)7と、X軸テーブル7を跨ぐようにY軸方向に架け渡されたY軸テーブル(主走査移動テーブル)8と、インクを吐出してワークWに印刷を行う複数のインクジェットヘッド51を有し、Y軸テーブル8に移動自在に搭載された複数のキャリッジユニット9と、主走査移動軸であるキャリッジユニット9の移動軸をワークWと平行な平面内において微小回転させるヘッド軸回転機構(主走査側回転手段)10と、を有している。
【0019】
このインクジェット記録装置1では、繰出し装置3により繰出されたワークWをワークステージ5で吸着した後、X軸テーブル7によりワークWをX軸方向に間欠送り(副走査)すると共に、キャリッジユニット9を往復動(主走査)させながらインクジェットヘッド51からインクを吐出して印刷処理を行う。また、ワークステージ5の大きさに対応する印刷領域に対して印刷している間、繰出し装置3および巻取り装置4により、ワークWを順次繰出すと共に、順次巻取るようになっている。なお、ワークWは、後述の繰出しリール21からワークステージ5の間、およびワークステージ5から後述の巻取りリール25の間において、バッファーを構成すべく上下方向に屈曲させた状態で送られる。
【0020】
また、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド51からインクを強制的に排出させる吸引ユニット14、および吸引後のノズル面57を払拭するワイピングユニット15からなる保守装置11と、ワークステージ5の延在方向に対するワークWの角度ずれ(斜めセット)を検出する検出装置(検出手段)12と、これら装置を統括制御する制御装置13と、を有している。保守装置11は、X軸テーブル7およびY軸テーブル8が交差する印刷領域からY軸方向に外れた保守領域に配設されており、保守領域に臨ませたインクジェットヘッド51の保守を行う。
【0021】
繰出し装置3は、機台2よりワークWの送り方向(X軸方向)上流側に配設されている。繰出し装置3は、ワークWをロール状に巻回した繰出しリール21と、繰出しリール21を繰出し回転させる繰出しモーター22と、繰出しリール21から繰出されたワークWをワークステージ5に送込む送込みローラー23と、繰出しリール21と送込みローラー23との間に配設した繰出し側ワークバッファー24と、を備えている。送込みローラー23は、ワークステージ5の端部に添設したニップローラーで構成されており、繰出し側ワークバッファー24にキープされたワークWを、1画像領域分ずつ送込む。繰出し側ワークバッファー24は、ワークWを上下方向に「V」字状に屈曲させると共に、ワークWに軽いバックテンションを付与する機構を有している。このバックテンションの機構は、常時ワークWにバックテンションを付与する他、後述するワークステージ5の角度調整の際に、ワークWの幅方向への撓みを許容する程度に、バックテンションを軽減できるようになっている。
【0022】
繰出し側ワークバッファー24にキープされるワークWの長さは、繰出しリール21と送込みローラー23との間の距離に、1画像領域分の長さとワークステージ5の移動距離とを加えた長さ以上に設定されている。すなわち、繰出し側ワークバッファー24には、このワークWの長さを維持できるように、ワークWの下屈曲部の位置を検出する上下一対のセンサー(図示省略)が設けられており、上限側センサーの検出により繰出しモーター22を駆動し、下限側センサーの検出により繰出しモーター22を停止させるようになっている。これにより、繰出しリール21のロール径に影響されることなく、必要量のワークWを繰出すことが可能となっている。
【0023】
巻取り装置4は、機台2よりワークWの送り方向(X軸方向)下流側に配設されている。巻取り装置4は、ワークWをロール状に巻取る巻取りリール25と、巻取りリール25を巻取り回転させる巻取りモーター26と、ワークステージ5からの印刷済みワークWを巻取りリール25に向って送出す送出しローラー27と、巻取りリール25と送出しローラー27との間に配設した巻取り側ワークバッファー28と、を備えている。送出しローラー27は、ワークステージ5の端部に添設したニップローラーで構成されており、上記の送込みローラー23に同期して回転し、ワークステージ5からワークを1画像領域分ずつ送出す。巻取り側ワークバッファー28は、ワークWを上下方向に「V」字状に屈曲させると共に、ワークWに軽いフォワードテンションを付与する機構を有している。上記と同様に、このフォワードテンションの機構は、後述するワークステージ5の角度調整の際に、ワークWの幅方向への撓みを許容する程度に、フォワードテンションを軽減できるようになっている。
【0024】
巻取り側ワークバッファー28にキープされるワークWの長さは、巻取りリール25と送出しローラー27との間の距離に、1画像領域分の長さとワークステージ5の移動距離とを加えた長さ以上に設定されている。すなわち、巻取り側ワークバッファー28には、このワークWの長を維持できるように、ワークWの下屈曲部の位置を検出する上下一対のセンサー(図示省略)が設けられており、下限側センサーの検出により巻取りモーター26を駆動し、上限側センサーの検出により巻取りモーター26を停止させるようになっている。これにより、巻取りリール25のロール径に影響されることなく、必要量のワークWを巻き取ることが可能となっている。
【0025】
ワークステージ5は、表面(セット面)に吸着孔(図示省略)が複数個形成されており、繰出し装置3から送られてきたワークWを吸着する。ワークステージ5は、ワークWを吸着した状態で、X軸テーブル7によりX軸方向(上流側から下流側)に間欠送りされる(副走査)。そして、1画像領域分の描画が終了する下流端位置(描画終了位置)に達すると、ワークWの吸着を解除し、且つ送込みローラー23および送出しローラー27のニップ状態を解いた後、X軸テーブル7により上流端位置(描画開始位置)に復帰移動する。
【0026】
ステージ回転機構6は、ワークステージ5を下面から支持すると共に、ワークステージ5をワークWのセット面と平行な面内においてθ方向に微小回転させる。具体的には、後述する副走査移動軸に対し、ワークステージ5上のワークWの中心線が傾いている場合、すなわちワークステージ5上に導入されたワークが傾いて吸着された場合に、ステージ回転機構6は、副走査移動軸の軸線に対しワークWの中心線が平行となるようにワークステージ5を微小回転(角度調整)させる。
【0027】
X軸テーブル7は、機台2上に配設され、X軸方向に延在する一対のX軸ガイドレール31と、ステージ回転機構6を介してワークステージ5をX軸方向にスライド自在に支持するモーター駆動のX軸スライダー32と、を有している。X軸テーブル7は、インクジェットヘッド51の往動(あるいは復動)時には停止し、次の復動(あるいは往動)までに、印刷幅分、ワークWをX軸方向の下流側に送る。すなわち、X軸テーブル7は、インクジェットヘッド51の往復動(主走査)と並行して、ワークWを間欠送り(副走査)する。なお、請求項にいう副走査移動軸は、一対のX軸ガイドレール31およびX軸スライダー32で構成されている。また、その駆動系は、リニアモーターや、モーターおよびリードねじ機構等で構成することが好ましい。
【0028】
Y軸テーブル8は、機台2をY軸方向に跨ぐように架け渡された門形のベースフレーム33と、ベースフレーム33上に配設され、Y軸方向に延在する一対のY軸ガイドレール34と、複数個のキャリッジユニット9を吊設したブリッジプレート35と、ブリッジプレート35をY軸方向にスライド自在に支持するモーター駆動のY軸スライダー36と、を有している。Y軸テーブル8は、各キャリッジユニット9を介して印刷時にインクジェットヘッド51をY軸方向に往復動させるほか、インクジェットヘッド51を保守装置11に臨ませる。なお、請求項にいう主走査移動軸は、一対のY軸ガイドレール34およびY軸スライダー36で構成されている。この場合も、その駆動系は、リニアモーターや、モーターおよびリードねじ機構等で構成することが好ましい。
【0029】
ベースフレーム33は、一対のY軸フレーム39および一対の連結フレーム40を四周枠組みした枠状フレーム37と、後述する一対の軸移動機構61を介して、枠状フレーム37を両持ちで支持する一対の支持ベース38と、を有している。一対のY軸フレーム39は、Y軸方向に向かって平行に架設されており、その上面には一対のY軸ガイドレール34が設けられている。また、一対のY軸フレーム39には、検出装置12が支持されている(図3参照)。
【0030】
検出装置12は、ワークステージ5上におけるワークWの上流側の縁端部を画像認識する上流側撮像カメラ41と、ワークステージ5におけるワークWの下流側の縁端部を画像認識する下流側撮像カメラ42と、から構成されている。上流側撮像カメラ41および下流側撮像カメラ42による離間した2箇所の撮像結果は、上記の制御装置13に送られ、副走査移動軸の軸線に対する、ワークWの傾斜角度が算出される。なお、本印刷に先立ち、ワークWの余白部分(最終的に不要となる部分)に直線を印刷し、この印刷結果を上流側撮像カメラ41および下流側撮像カメラ42で撮像するようにしてもよい。
【0031】
各キャリッジユニット9は、ブリッジプレート35に垂設したキャリッジ本体43と、キャリッジ本体43に垂設され、複数個のインクジェットヘッド51を有するヘッドユニット44と、を備えている。キャリッジ本体43には、ヘッドユニット44をθ補正(θ回転)する機構が組み込まれている。ヘッドユニット44は、複数個のインクジェットヘッド51を、ヘッドプレート(図示省略)に搭載して構成されており、ヘッドプレートのY軸方向両端部には、一対の紫外線ランプ45が搭載されている。
【0032】
図2に示すように、インクジェットヘッド51は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針55を有するインク導入部52と、インク導入部52に連なる2連のヘッド基板53と、インク導入部52の下方に連なり、内部にインクで満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体54と、を備えている。ヘッド本体54は、キャビティ(ピエゾ圧電素子)と、多数の吐出ノズル56が開口したノズル面57を有するノズルプレート58と、で構成されている。インクジェットヘッド51を吐出駆動すると(ピエゾ圧電素子に電圧が印加され)、キャビティのポンプ作用により、吐出ノズル56からインク滴が吐出される。なお、ノズル面57には、多数の吐出ノズル56からなる2つのノズル列59が相互に平行に形成されている。
【0033】
インクは、いわゆる紫外線硬化インクであり、紫外線ランプ45は、LEDなどで構成されている。実施形態のものでは、インクジェットヘッド51の主走査に同期して一対の紫外線ランプ45が点灯し、ワークWに着弾した紫外線硬化インクを硬化・定着させる。なお、一対の紫外線ランプ45を、インクジェットヘッド51の往復動(主走査)に対応して交互に点灯してもよい。すなわち、往動時には、インクジェットヘッド51を後追いする側の一方の紫外線ランプ45を点灯し、復動時には、インクジェットヘッド51を後追いする側の他方の紫外線ランプ45を点灯する。
【0034】
次に、図3を参照して、ヘッド軸回転機構10について説明する。ヘッド軸回転機構10は、ワークWと平行な面内において、上記の主走査移動軸をθ方向に微小回転させる。具体的には、ステージ回転機構6は、主走査移動軸(一対のY軸ガイドレール34)の軸線に対しワークWの中心線が直角となるように、枠状フレーム37を介して、一対のY軸ガイドレール34を微小回転(角度調整)させる。
【0035】
ヘッド軸回転機構10は、上記の一対の連結フレーム40の部分で、枠状フレーム37を両持ちで下側から支持する一対の軸移動機構61により構成されている。各軸移動機構61,61は、上記の支持ベース38上に固定したX・Y・θスライド機構(X・Y・θテーブル)62と、枠状フレーム37の端部をX軸方向に移動させるモーター駆動のフレーム移動機構63と、を備えている。X・Y・θスライド機構62は、支持ベース38上に固定したX軸スライド機構64と、X軸スライド機構64に搭載したY軸スライド機構65と、Y軸スライド機構65上に回転自在に立設されたピン状のθ機構66と、を有し、このθ機構66の上端部に枠状フレーム37が固定されている。
【0036】
例えば、枠状フレーム37を、一方の端部を中心に他方の端部をX軸方向に移動させて傾ける場合、フレーム移動機構63により枠状フレーム37の他方の端部をX軸方向に移動させると、枠状フレーム37の一方の端部とθ機構66とが相対回転しながらθ機構66(一方の端部)が、他方の端部を中心に円運動する。また、この円運動のX軸方向に成分分、X軸スライド機構64がスライドし、且つY軸方向に成分分、Y軸スライド機構65がスライドする。このようにして、枠状フレーム37が微小回転し、枠状フレーム37に固定されている一対のY軸ガイドレール34(主走査移動軸)の微小回転(角度調整)が行われる。
【0037】
フレーム移動機構63は、支持ベース38上に設けた調整モーター71と、調整モーター71の主軸に連結したボールねじ(リードねじ)72と、一端部にボールねじ72が螺合するボールナット部74を有し、他端部にθ機構66が係合する長孔75を有する作動アーム73と、を備えている。ボールナット部74は、図外のガイドによりX軸方向にスライド自在に支持されており、長孔75はY軸方向に長く形成されている。調整モーター71が正逆回転すると、ボールねじ72とボールナット部74から成るねじ機構により、作動アーム73がX軸方向に平行移動し、θ機構66を介して枠状フレーム37の端部をX軸方向に移動させる。このように、X・Y・θスライド機構62とフレーム移動機構63とが協働し、枠状フレーム37を介して一対のY軸ガイドレール34(主走査移動軸)の角度調整が実施される。
【0038】
次に、図4を参照して、ヘッド軸回転機構10による主走査移動軸の角度調整方法について説明する。図4(a)に示すように、繰出し装置3および巻取り装置4により、ワークステージ5にワークWが斜行した状態で導入(および吸着)された場合を想定する。ワークWがワークステージ5に吸着された状態で、上記の検出装置12と制御装置13と協働して、主走査移動軸に対するワークWの中心線が直角からどの程度角度ズレ(時計回りの微小回転ズレ)しているかを検出する。制御装置13は、この検出結果(ズレ量データ)に基づいて、例えばヘッド軸回転機構10の一方(図示下側)の軸移動機構61を停止とした状態で、他方(図示上側)の軸移動機構61を駆動し、主走査移動軸の軸線に対しワークWの中心線が直角となるように、主走査移動軸を時計回りに回転させる(図4(b)参照)。より好ましくは、両軸移動機構61を相互に逆方向に駆動し、主走査移動軸を時計回りに回転させる。なお、X軸方向における印刷開始位置等を調整する場合には、両軸移動機構61を同逆方向に駆動し、主走査移動軸を平行移動させることも可能である。
【0039】
このように、傾いた状態でワークステージ5にセットされたワークWに対し、主走査移動軸を直角に調整することにより、印刷の行方向(横書きの場合)は、ワークWの延在方向に直角となる。但し、ワークステージ5上のワークWの中心と、主走査移動軸の回転中心とが合致しない場合には、直角調整により、インクジェットヘッド51の位置とワークWの幅方向の位置がズレ、また上記の印刷開始位置の位置ズレが生ずる可能性がある。前者の位置ズレは、上記のズレ量データに基づいてインクジェットヘッド51の吐出タイミングを補正することで解消し、後者の位置ズレは、ズレ量データに基づく主走査移動軸の平行移動で解消する(X軸テーブル7でも解消可能)。
【0040】
一方、本実施形態では、上記前者の位置ズレおよび後者の位置ズレを、極力少なくすることも可能である。すなわち、制御装置13は、図4(b)の状態から、上記のズレ量データに基づいて、ステージ回転機構6を駆動し、副走査移動軸の軸線に対しワークWの中心線が平行になるように、ワークステージ5を反時計回りに回転させる(図4(c)参照)。言うまでもないが、このワークステージ5の回転に先立って、制御装置13は、繰出し側ワークバッファー24および巻取り側ワークバッファー28におけるワークテンションを弱めるよう、制御する。なお、このステージ回転機構6による調整では、ワークWへの印刷が終了した直後に、ワークステージ5を元の位置(ホーム位置)に自動復帰させ、ワークWの印刷済み部分の入れ替え送りを実施する。
【0041】
以上のように本実施形態によれば、ワークWが副走査移動軸に対して傾いて送られた場合であっても、ヘッド軸回転機構10(およびステージ回転機構6)により、ワークWに対し主走査移動軸を直角に角度調整することで、ワークWの延在方向に対して、直角に精度良く印刷を行うことができる。
【0042】
なお、本実施形態では、ワークWを副走査方向に移動させ、インクジェットヘッド51を主走査方向に移動しているが、ワークWを主走査方向に移動させ、インクジェットヘッド51を副走査方向に移動する構成にしてもよい。また、検出装置12は、上流側撮像カメラ41および下流側撮像カメラ42で構成されているが、アレイ状に構成した光センサーであってもよい(共に図示省略)。
【符号の説明】
【0043】
1…インクジェット記録装置 6…ステージ回転機構 7…X軸テーブル 8…Y軸テーブル 10…ヘッド軸回転機構 12…検出装置 13…制御装置 51…インクジェットヘッド 61…軸移動機構 62…X・Y・θスライド機構 63…フレーム移動機構 64…X軸スライド機構 65…Y軸スライド機構 66…θ機構 W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール・ツー・リール形式で除給材されたワークに対し、インクジェットヘッドを主走査方向および副走査方向に相対的に移動させながら、インクジェットヘッドを駆動して前記ワークに印刷を行うインクジェット記録装置であって、
給材された前記ワークがセットされるワークステージと、
前記インクジェットヘッドおよび前記ワークステージにセットされた前記ワークを副走査方向に相対的に移動させる副走査移動軸を有する副走査移動テーブルと、
前記インクジェットヘッドおよび前記ワークステージにセットされた前記ワークを主走査方向に相対的に移動させる主走査移動軸を有する主走査移動テーブルと、
前記主走査移動軸を、前記ワークと平行な平面内において微小回転させる主走査側回転手段と、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記副走査移動軸の軸線に対する、前記ワークステージ上における前記ワークの中心線の角度ずれを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記ワークの中心線に対し前記主走査移動軸の軸線が直交するように、前記主走査側回転手段を制御する制御手段と、を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
主走査側回転手段は、前記主走査移動軸の両軸端部を支持する一対の軸移動機構を有し、
前記各軸移動機構は、前記軸端部を、X軸方向、Y軸方向およびθ方向に微小移動させるX・Y・θテーブルで構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記ワークステージを支持すると共に、前記ワークステージをワークと平行な平面内において微小回転させる副走査側回転手段、を更に有していることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記ワークの中心線に対し前記副走査移動軸の軸線が平行となるように、前記副走査側回転手段を更に制御することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記副走査移動軸は、前記インクジェットヘッドに対し前記ワークを副走査方向に移動させ、
前記主走査移動軸は、前記ワークに対し前記インクジェットヘッドを主走査方向に移動させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−183590(P2011−183590A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48907(P2010−48907)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】