説明

インクジェット記録装置

【課題】同サイズのシートが異なる向きで収容された複数のトレイから、画像記録に要する時間が短くなるトレイを正確に選択できる可能性が高くなるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】短辺と長辺を有する記録用紙19が縦置きされる第1給紙トレイ20と、当該記録用紙19が横置きされる第2給紙トレイ22とを備えている。第1給紙トレイ20に保持されている記録用紙19に画像記録されるときにキャリッジ67の移動が繰り返される第1回数、及び第2給紙トレイ22に保持されている記録用紙19に画像記録されるときにキャリッジ67の移動が繰り返される第2回数を算出する(SA3)。第1回数が第2回数よりも少ない場合(SA5:No)、第1給紙トレイ20から記録用紙19を給送させ(SA17)、第2回数が第1回数よりも少ない場合(SA5:Yes)、第2給紙トレイ22から記録用紙19を給送させる(SA15)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに液滴を吐出することによって画像記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液滴を吐出してシートに画像記録を行うインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置によるシートへの画像記録は、以下のようにして実行される。つまり、複数のノズルが形成されたノズル面を有する記録部が、シートの搬送方向と交差する走査方向へ移動しながら、複数のノズルからシートへ液滴の一例であるインク滴を吐出する。
【0003】
また、インクジェット記録装置には、シートを積載して収容可能であり、シートをインクジェット記録装置内に形成された搬送路へ供給する給送トレイが設けられている。このような給送トレイがインクジェット記録装置に複数設けられ、且つ各給送トレイに異なるサイズのシートが収容されることにより、インクジェット記録装置は、種々のサイズのシートに画像を記録することができる。通常、複数の給送トレイを備えたインクジェット記録装置は、給送トレイをシートのサイズによって選択する機能を有している。以下、上記機能について詳述する。インクジェット記録装置は、各給送トレイに収容されたシートのサイズを、当該シートをセンサで検知することなどによって、予め把握しておく。インクジェット記録装置は、ユーザの操作によって指定されたシートのサイズに合致する給送トレイを選択する。そして、インクジェット記録装置によって選択された給送トレイからシートが給送される。
【0004】
また、インクジェット記録装置は、所定サイズのシートが縦置きされた給送トレイと、上記所定サイズのシートが横置きされた給送トレイとを備えていてもよい。この場合、各給送トレイに収容されたシートのサイズが同じであるため、インクジェット記録装置は、縦置きのシートが収容された給送トレイ及び横置きのシートが収容された給送トレイのいずれの給送トレイからシートを給送させても、画像を適正に記録することができる。
【0005】
しかし、通常、縦置きされたシートが給送されて画像記録される場合と、横置きされたシートが給送されて画像記録される場合とでは、画像記録に要する時間が異なる問題が発生する。つまり、それぞれ縦置き及び横置きのシートが収容された2つの給送トレイのうちの一方が選択された場合、他方が選択された場合よりも、シートへの画像記録に要する時間が余分にかかってしまう。
【0006】
このような問題を解決するために、特許文献1に記載された情報処理端末は、記録データの縦、横方向それぞれをラインで読んだ時に、ラインにデータが存在するライン数をカウントし、そのライン数が少ない方向を主走査方向として給紙方向を選択していた。これにより、情報処理端末は、それぞれ縦置き及び横置きのシートが収容された2つの給送トレイのうち、画像記録に要する時間が少ない給送トレイを選択することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−347964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、単に、データが存在するライン数の多少を判断するのみでは、シートへの画像記録に要する時間が短い給送トレイを正確に選択することができない場合がある。このような場合の一例について、以下に詳述する。
【0009】
記録部は、カラーの画像を記録する場合、主走査方向のうち一方の向き(例えば右向きであり、以下、右向きとして説明する。)へ移動する場合にのみ、インク滴(シアン、マゼンタ、イエローのインク滴)を吐出する。これにより、同一ドットに対する複数種類のインク滴の吐出順序の違いによる色相の違いの発生を防止することができる。一方、記録部は、黒の画像を記録する場合、画像記録の速度向上のために、主走査方向の一方(右向き)及び他方の向き(例えば、左向きであり、以下、左向きとして説明する。)へ移動しながら黒のインク滴を吐出する。一種類のインク滴が吐出される場合、同一ドットに対するインク滴の吐出順序の違いによる色相の違いは発生しないからである。
【0010】
よって、シートよりも右側に位置される記録部が当該シートにカラーの画像を記録する場合、記録部は、まずインク滴を吐出することなく左向きに移動する。これにより、記録部は、当該シートよりも左側に位置される。次に、記録部は、インク滴を吐出しながら右向きに移動する。つまり、記録部は、1ラインのカラーの画像を記録するために2回移動する必要がある。
【0011】
一方、シートよりも右側に位置される記録部が当該シートに黒の画像を記録する場合、記録部は、インク滴を吐出しながら左向きに移動する。つまり、記録部は、1ラインの黒の画像を記録するために1回移動すればよい。
【0012】
以上より、データが存在するライン数が少ない記録データが記録される場合であっても、当該記録データがカラーのデータである場合、記録部の移動回数は多くなる。一方、データが存在するライン数が多い記録データが記録される場合であっても、当該記録データが黒のデータである場合、記録部の移動回数は少なくなる。
【0013】
以上のような場合、データが存在するライン数の多少によって、画像記録に要する時間が短い給送トレイを正確に選択することができない。
【0014】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、同サイズのシートが異なる向きで収容された複数のトレイから、画像記録に要する時間が短くなるトレイを正確に選択できる可能性が高くなるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1) 本発明のインクジェット記録装置は、長方形のシートを搬送路に沿った第1向きへ搬送する搬送部と、シートが短辺を上記第1向きの下流端及び上流端として搬送可能に保持される第1トレイと、上記第1トレイに保持されているシートと同サイズのシートが長辺を上記第1向きの下流端及び上流端として搬送可能に保持される第2トレイと、上記第1トレイに保持されたシートを上記搬送路へ給送する第1給送部と、上記第2トレイに保持されたシートを上記搬送路へ給送する第2給送部と、上記搬送路の上側に設けられており、上記第1向きと直交し且つシートの画像記録面に沿った第2方向へ移動可能なキャリッジと、上記キャリッジに搭載されており、上記搬送路へ向けて液滴を吐出することによって上記搬送路を搬送されるシートに画像を記録する記録ヘッドと、上記第1向きに沿った順序でシートに画像を記録するための第1印刷データと、上記第2方向に沿った順序でシートに画像を記録するための第2印刷データと、を作成する作成手段と、上記搬送部にシートの搬送及び停止を交互に繰り返させる間欠搬送処理、及び上記間欠搬送処理においてシートが停止されている間に、上記キャリッジを往復移動させながら、上記第1印刷データまたは上記第2印刷データに基づいて、上記記録ヘッドに液滴を吐出させる記録処理を実行する制御手段と、上記第1トレイに保持されているシートに上記第1印刷データを記録するときに上記キャリッジの移動が繰り返される第1回数、及び上記第2トレイに保持されているシートに上記第2印刷データを記録するときに上記キャリッジの移動が繰り返される第2回数を算出する第1算出手段と、上記第1回数が上記第2回数よりも少ないことを条件として、上記第1給送部に上記第1トレイからシートを給送させ、上記第2回数が上記第1回数よりも少ないことを条件として、上記第2給送部に上記第2トレイからシートを給送させる第1トレイ選択手段と、を備えているインクジェット記録装置。
【0016】
本構成によれば、第1トレイ選択手段は、シートへの画像記録時にキャリッジが移動する回数(第1回数及び第2回数)に基づいて、シートを給送させるトレイを決定する。よって、上述したカラーの画像を記録するときのように、データが存在するライン数の多少の判断では、シートへの画像記録に要する時間が短い給送トレイを正確に選択することができない場合であっても、シートへの画像記録に要する時間が短い給送トレイを正確に選択できる可能性が高くなる。
【0017】
(2) 本発明のインクジェット記録装置は、上記第1トレイに保持されているシートに上記第1印刷データを記録するときの上記キャリッジの合計移動距離である第1移動距離、及び上記第2トレイに保持されているシートに上記第2印刷データを記録するときの上記キャリッジの合計移動距離である第2移動距離を算出する第2算出手段と、上記第1回数及び上記第2回数が同一であることを条件として実行される手段であって、上記第1移動距離が上記第2移動距離よりも短いことを条件として、上記第1給送部に上記第1トレイからシートを給送させ、上記第2移動距離が上記第1移動距離よりも短いことを条件として、上記第2給送部に上記第2トレイからシートを給送させる第2トレイ選択手段と、を更に備えている請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【0018】
シートへの画像記録時において、キャリッジが移動する距離が長い程、シートへの画像記録には多くの時間が必要となる可能性が高い。そして、本構成によれば、第1回数及び第2回数が同一である場合であっても、第2トレイ選択手段が、キャリッジの画像記録時における移動距離の合計に基づいて、シートを給送させるトレイを決定する。これにより、シートへの画像記録に要する時間が短い給送トレイを正確に選択できる可能性が高くなる。
【0019】
(3) 本発明のインクジェット記録装置は、上記第1トレイに保持されているシートが画像記録完了までに搬送される距離、及び当該シートの搬送速度に基づいて第1時間を算出し、上記第2トレイに保持されているシートが画像記録完了までに搬送される距離、及び当該シートの搬送速度に基づいて第2時間を算出する第3算出手段と、上記第1移動距離及び上記第2移動距離が同一であることを条件として実行される手段であって、上記第1時間が上記第2時間よりも短いことを条件として、上記第1給送部に上記第1トレイからシートを給送させ、上記第2時間が上記第1時間よりも短いことを条件として、上記第2給送部に上記第2トレイからシートを給送させる第3トレイ選択手段と、を更に備えている請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【0020】
シートは、搬送部によって第1トレイまたは第2トレイから記録ヘッドの直下へ搬送され、画像記録される。そして、シートが、第1トレイまたは第2トレイに収容されている時の位置から画像記録完了時の位置まで搬送される場合の時間が短い程、シートへの画像記録の完了までに要する時間が短くなる可能性が高い。そして、本構成によれば、第1回数及び第2回数が同一であり、且つ第1移動距離及び第2移動距離が同一である場合であっても、第3トレイ選択手段が、第1トレイに収容されたシートの搬送に要する第1時間、及び第2トレイに収容されたシートの搬送に要する第2時間に基づいて、シートを給送させるトレイを決定する。これにより、シートへの画像記録に要する時間が短い給送トレイを正確に選択できる可能性が高くなる。
【0021】
(4) 本発明のインクジェット記録装置は、長方形のシートを搬送路に沿った第1向きへ搬送する搬送部と、シートが短辺を上記第1向きの下流端及び上流端として搬送可能に保持される第1トレイと、上記第1トレイに保持されているシートと同サイズのシートが長辺を上記第1向きの下流端及び上流端として搬送可能に保持される第2トレイと、上記第1トレイに保持されたシートを上記搬送路へ給送する第1給送部と、上記第2トレイに保持されたシートを上記搬送路へ給送する第2給送部と、上記搬送路の上方に設けられており、上記第1向きと直交し且つシートの画像記録面に沿った第2方向へ移動可能なキャリッジと、上記キャリッジに搭載されており、上記搬送路へ向けて液滴を吐出することによって上記搬送路を搬送されるシートに画像を記録する記録ヘッドと、上記第1向きに沿った順序でシートに画像を記録するための第1印刷データと、上記第2方向に沿った順序でシートに画像を記録するための第2印刷データと、を作成する作成手段と、上記搬送部にシートの搬送及び停止を交互に繰り返させる間欠搬送処理、及び上記間欠搬送処理においてシートが停止されている間に、上記キャリッジを往復移動させながら、上記第1印刷データまたは上記第2印刷データに基づいて、上記記録ヘッドに液滴を吐出させる記録処理を実行する制御手段と、上記第1トレイに保持されているシートに上記第1印刷データを記録するときの上記キャリッジの合計移動距離である第1移動距離、及び上記第2トレイに保持されているシートに上記第2印刷データを記録するときの上記キャリッジの合計移動距離である第2移動距離を算出する第2算出手段と、上記第1移動距離が上記第2移動距離よりも短いことを条件として、上記第1給送部に上記第1トレイからシートを給送させ、上記第2移動距離が上記第1移動距離よりも短いことを条件として、上記第2給送部に上記第2トレイからシートを給送させる第4トレイ選択手段と、を備えているインクジェット記録装置。
【0022】
シートへの画像記録時において、キャリッジが移動する距離が長い程、シートへの画像記録には多くの時間が必要となる可能性が高い。そして、本構成によれば、第4トレイ選択手段が、キャリッジの画像記録時における移動距離の合計に基づいて、シートを給送させるトレイを決定する。これにより、シートへの画像記録に要する時間が短い給送トレイを正確に選択できる可能性が高くなる。
【0023】
(5) 本発明のインクジェット記録装置は、上記第1トレイに保持されているシートに上記第1印刷データを記録するときに上記キャリッジの移動が繰り返される第1回数、及び上記第2トレイに保持されているシートに上記第2印刷データを記録するときに上記キャリッジの移動が繰り返される第2回数を算出する第1算出手段と、上記第1移動距離及び上記第2移動距離が同一であることを条件として実行される手段であって、上記第1回数が上記第2回数よりも少ないことを条件として、上記第1給送部に上記第1トレイからシートを給送させ、上記第2回数が上記第1回数よりも少ないことを条件として、上記第2給送部に上記第2トレイからシートを給送させる第5トレイ選択手段と、を更に備えている請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【0024】
本構成によれば、第1移動距離及び第2移動距離が同一であっても、(1)と同様の理由で、シートへの画像記録に要する時間が短い給送トレイを正確に選択できる可能性が高くなる。
【0025】
(6) 本発明のインクジェット記録装置は、上記第1トレイに保持されているシートが画像記録完了までに搬送される距離、及び当該シートの搬送速度に基づいて第1時間を算出し、上記第2トレイに保持されているシートが画像記録完了までに搬送される距離、及び当該シートの搬送速度に基づいて第2時間を算出する第3算出手段と、上記第1回数及び上記第2回数が同一であることを条件として実行される手段であって、上記第1時間が上記第2時間よりも短いことを条件として、上記第1給送部に上記第1トレイからシートを給送させ、上記第2時間が上記第1時間よりも短いことを条件として、上記第2給送部に上記第2トレイからシートを給送させる第6トレイ選択手段と、を更に備えている請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【0026】
本構成によれば、第1回数及び第2回数が同一であっても、(3)と同様の理由で、シートへの画像記録に要する時間が短い給送トレイを正確に選択できる可能性が高くなる。
【0027】
(7) 本発明のインクジェット記録装置は、上記第1時間及び上記第2時間が同一であることを条件として実行される手段であって、上記第1トレイに保持されているシートが上記搬送路に沿って上記記録ヘッドの直下位置まで搬送されるときの第1搬送距離が、上記第2トレイに保持されているシートが上記搬送路に沿って上記直下位置まで搬送されるときの第2搬送距離よりも短いことを条件として、上記第1給送部に上記第1トレイからシートを給送させ、上記第2搬送距離が、上記第1搬送距離よりも短いことを条件として、上記第2給送部に上記第2トレイからシートを給送させる第7トレイ選択手段を更に備えている請求項3または6に記載のインクジェット記録装置。
【0028】
シートは、搬送部によって第1トレイまたは第2トレイから記録ヘッドの直下へ搬送され、画像記録される。そして、トレイから記録ヘッドまでのシートの搬送距離が長い程、シートへの画像記録の完了までに要する時間が長くなる可能性が高い。そして、本構成によれば、第7トレイ選択手段が、シートの各トレイから記録ヘッドの直下までの搬送距離に基づいて、シートを給送させるトレイを決定する。これにより、シートへの画像記録に要する時間が短い給送トレイを正確に選択できる可能性が高くなる。
【発明の効果】
【0029】
本発明においては、シートへの画像記録時にキャリッジが移動する回数(第1回数及び第2回数)に基づいて、シートを給送させるトレイが決定される。よって、同サイズのシートが異なる向きで収容された複数のトレイから、画像記録に要する時間が短くなるトレイを正確に選択できる可能性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例である複合機1の外観斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部2の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、記録ヘッド65の下面図である。
【図4】図4は、マイクロコンピュータ130の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、トレイ選択制御の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、第1回数及び第2回数の算出手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】図7は、第1移動距離及び第2移動距離の算出手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】図8は、第1時間及び第2時間の算出手順を説明するためのフローチャートである。
【図9】図9は、記録部24及び記録用紙19を模式的に示す平面図である。
【図10】図10は、変形例2におけるトレイ選択制御の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、ベクトルにおいて矢印を考慮して起点から終点に向かう進みが向きと表現され、ベクトルにおいて矢印を考慮せずに起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、以下の説明では、複合機1が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向14が定義され、操作パネル9が設けられている側を手前側(正面)として前後方向12が定義され、複合機1を手前側(正面)から見て左右方向13が定義される。
【0032】
[複合機1]
図1に示されるように、本発明のインクジェット記録装置の一例である複合機1は、下部に配設されたプリンタ部2と、プリンタ部2の上部に配設されたスキャナ部3などを一体的に備えた多機能装置である。複合機1は、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、及びファクシミリ機能などを有する。
【0033】
なお、本実施形態において、複合機1はプリンタ機能として片面画像記録機能のみ有しているが、複合機1は両面画像記録機能を有していてもよい。また、本発明を実現するうえで、ファクシミリ機能は任意の機能であり、例えば、本発明に係るインクジェット記録装置が、スキャナ機能及びプリンタ機能のみを有するプリンタとして実施されてもよい。
【0034】
複合機1は、主にコンピュータなどの外部情報機器(不図示)と接続された状態で使用される。複合機1の上面の前方側であって、スキャナ部3の正面側の上面には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル9が設けられている。操作パネル9は、各種操作ボタンや液晶表示部11から構成されている。複合機1は、操作パネル9からの指示情報、又は外部情報機器から送信される指示情報に基づいて、複合機1の動作を統括する後述されるマイクロコンピュータ130(図4参照)により動作される。
【0035】
[スキャナ部3]
図1に示されるように、スキャナ部3は、フラットベッドスキャナ(FBS:Flat Bed Scanner)として機能する原稿台35を備えている。原稿台35の上面には、原稿が載置されるプラテンガラス(不図示)が設けられている。スキャナ部3は、原稿台35の上側に配置された原稿カバー36を備えている。原稿カバー36は、プラテンガラスを覆うように原稿台35に対して開閉自在である。原稿カバー36は、原稿台35の背面側の蝶番(不図示)を介して原稿台35と連結されている。原稿台35の内部、つまりプラテンガラスの下側には、イメージセンサ(不図示)が設けられている。プラテンガラスに載置された原稿の画像は、イメージセンサによって読み取られる。
【0036】
プリンタ部2は、スキャナ部3で読み取られた原稿の印刷データに基づいて、記録用紙19(本発明のシートの一例)に画像を記録する。なお、プリンタ部2は、外部情報機器から受信した印刷データに基づいて、記録用紙19に画像を記録してもよい。この場合、印刷データは、公知の通信インタフェースを介して、マイクロコンピュータ130に入力される。
【0037】
原稿カバー36には、ADF(Auto Document Feeder)37が設けられている。ADF37は、原稿載置トレイ38、原稿搬送ローラ(不図示)、原稿搬送路(不図示)、及び原稿排出トレイ39を備えている。
【0038】
原稿載置トレイ38には、原稿が、画像が記録された面を上側にした状態で載置される。原稿載置トレイ38に載置された原稿は、原稿搬送ローラによって原稿搬送路に沿った向き(以下、原稿搬送向きと記される。)に搬送される。これにより、原稿は、イメージセンサによる画像の読取位置(不図示)へ搬送される。このとき、原稿の状態は、画像が記録された面を下側にした状態、つまり画像が記録された面とイメージセンサとが対向している状態である。原稿に記録された画像は、イメージセンサによって、原稿搬送向きの先端側から順に読み取られる。その後、原稿は、原稿排出トレイ39へ排出される。
【0039】
[プリンタ部2]
図1に示されるように、プリンタ部2は、正面に開口4が形成されたケーシング5を有する。ケーシング5内にプリンタ部2の各構成要素が配設されている。本実施形態において、各構成要素は、図2に示されるように、第1給紙トレイ20(本発明の第1トレイの一例)、第2給紙トレイ22(本発明の第2トレイの一例)、排紙トレイ21、第1給送部17(本発明の第1給送部の一例)、第2給送部18(本発明の第2給送部の一例)、搬送路23(本発明の搬送路の一例)、搬送ローラ対54(本発明の搬送部の一例)、排出ローラ対55(本発明の搬送部の一例)、及び記録部24などである。
【0040】
[給紙トレイ20、22及び排紙トレイ21]
図1に示されるように、開口4を通じて、第1給紙トレイ20、第2給紙トレイ22、及び排紙トレイ21(図2参照)が複合機1に装着される。なお、図1では、第1給紙トレイ20、第2給紙トレイ22、及び排紙トレイ21が省略されている。
【0041】
図2に示されるように、第1給紙トレイ20及び第2給紙トレイ22は、プリンタ部2に装着された状態において、記録部24の下方に配置されている。第1給紙トレイ20は、プリンタ部2に装着された状態において、第2給紙トレイ22の上側に重なるように配置されている。各給紙トレイ20、22は、平面視で矩形の皿状に概ね形成されている。各給紙トレイ20、22には、A4サイズやB5サイズ等の所望のサイズの記録用紙19が収容される。各給紙トレイ20、22がプリンタ部2に装着された状態において、各給紙トレイ20、22に収容された記録用紙19が搬送路23へ供給可能となる。
【0042】
本実施形態において、各給紙トレイ20、22に収容される記録用紙19は長方形である。また、本実施形態において、各給紙トレイ20、22には、同サイズの記録用紙19が収容される。第1給紙トレイ20には、記録用紙19が短辺を前後方向12の下流端及び上流端として、つまり複合機10の正面から見て縦置き状態で収容されている。換言すると、第1給紙トレイ20には、記録用紙19が短辺を後述する搬送向き15(図2参照、本発明の第1向きに相当)の下流端及び上流端として搬送可能に保持されている。また、第2の給紙トレイ22には、給紙トレイ20に収容されている記録用紙19と同サイズの記録用紙19が長辺を前後方向12の下流端及び上流端として、つまり複合機10の正面から見て横置き状態で収容されている。換言すると、第2の給紙トレイ22には、記録用紙19が長辺を搬送向き15の下流端及び上流端として搬送可能に保持されている。
【0043】
なお、記録用紙19は、第1給紙トレイ20に横置き状態で収容され、第2給紙トレイ22に縦置き状態で収容されてもよい。つまり、第1給紙トレイ20が本発明の第2トレイの一例であり、第2給紙トレイ22が本発明の第1トレイの一例であってもよい。
【0044】
排紙トレイ21には、記録部24によって画像が記録された記録用紙19が排出される。排紙トレイ21は、第1給紙トレイ20を覆うように設けられている。つまり、排紙トレイ21は、第1給紙トレイ20の上面に形成されている。
【0045】
[第1給送部17及び第2給送部18]
図2に示されるように、第1給紙トレイ20の上側には、第1給送部17が設けられている。第1給送部17は、第1給紙ローラ25、第1給紙アーム26、及び第1駆動伝達機構27を備えている。第1給紙ローラ25は、第1給紙トレイ20に接離可能に上下動する第1給紙アーム26の端部で軸支されている。第1給紙ローラ25は、複数のギアが噛合されてなる第1駆動伝達機構27によって、第1給紙モータ76(図4参照)の駆動力が伝達されて回転する。第1給紙ローラ25は、第1給紙トレイ20上の記録用紙19に圧接して、その状態で回転する。これにより、第1給紙トレイ20に保持された記録用紙19が、以下で説明される搬送路23へ給送される。
【0046】
第2給紙トレイ22の上側には、第2給送部18が設けられている。第2給送部18は、第2給紙ローラ125、第2給紙アーム126、及び第2駆動伝達機構127を備えており、上述した第1給送部17と同様に構成されている。第2給送部18は、第2給紙モータ77(図4参照)から駆動伝達されることにより、第2給紙トレイ22に保持された記録用紙19を、搬送路23へ給送する。
【0047】
なお、各給送部17、18は、共通の給紙モータから駆動伝達機構を介して駆動伝達されてもよい。この場合、例えば、駆動伝達機構は遊星ギヤを備えている。これにより、給紙モータからの駆動力は、遊星ギヤを介して各給送部17、18に選択的に伝達される。
【0048】
[搬送路23]
図2に示されるように、搬送路23は、給紙トレイ20の後側の端部から上方且つ複合機1の前側へ曲がって、複合機1(プリンタ部2)の背面側(後側)から正面側(前側)へ延出されている。搬送路23は、搬送ローラ対54による挟持位置、記録部24の下側、及び排出ローラ対55による挟持位置を通過して排紙トレイ21へ通じている。給紙トレイ20から給送された記録用紙19は、搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて記録部24に至る。記録用紙19は、記録部24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。搬送路23は、記録部24などが配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド部材29及び内側ガイド部材28によって形成されている。
【0049】
以下、記録用紙19が、搬送ローラ対54による挟持位置から記録部24の下方を通過して排紙トレイ21へ搬送される向き(図2に破線の矢印で示される向き)を、搬送向き15として説明を行う。
【0050】
[搬送ローラ対54及び排出ローラ対55]
図2に示されるように、記録部24よりも搬送向き15の上流側には、搬送ローラ対54が設けられている。搬送ローラ対54は、搬送ローラ47とピンチローラ48とが一体にユニット化されたものである。記録部24よりも搬送向き15の下流側には、排紙ローラ49と拍車50とを有する排出ローラ対55が設けられている。
【0051】
搬送ローラ47及び排紙ローラ49は、搬送モータ59(図4参照)から駆動伝達機構(不図示)を介して駆動力が伝達されて回転される。搬送ローラ47が正転駆動(図2における反時計回りに駆動)されることで、給紙トレイ20から給送された記録用紙19は、搬送ローラ対54により狭持されて、搬送向き15へ搬送される。排紙ローラ49が正転駆動されることで、記録部24による画像記録済みの記録用紙19は、排出ローラ対55により狭持されて、搬送向き15へ搬送される。
【0052】
図2に示されるように、搬送ローラ47の回転量を検出するロータリーエンコーダ68が設けられている。ロータリーエンコーダ68は、搬送ローラ47と同軸に設けられて搬送ローラ47と共に回転するエンコーダディスク51と光学センサ60とからなる。エンコーダディスク51には、その円周方向に一定間隔で光を透過する透過部と光を透過しない非透過部とが等ピッチで交互に配置されたパターンが形成されている。搬送ローラ47と共にエンコーダディスク51が回転すると、光学センサ60によってロータリーエンコーダ68のマークが検出される毎にパルス信号が生成される。パルス信号はマイクロコンピュータ130へと出力される。
【0053】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、搬送路23の上方に設けられている。記録部24は、搬送路23の下側から記録用紙19を支持するプラテン66と対向して搬送路23の上側に配置されたキャリッジ67(本発明のキャリッジの一例)と、キャリッジ67に搭載された記録ヘッド65(本発明の記録ヘッドの一例)と、インクカートリッジ(不図示)から供給されるインクを貯留する4つのサブタンク(不図示)とを備えている。
【0054】
キャリッジ67は、プリンタ部2のフレーム(不図示)に取り付けられた前後一対のガイドレール(不図示)に跨り、搬送向き15と直交し且つ記録用紙19の画像記録面に沿った左右方向13に沿って移動可能にガイドレールに支持されている。キャリッジ67は、キャリッジ駆動モータ103(図4参照)から駆動伝達されることにより、左右方向13(本発明の第2方向に相当)に移動される。
【0055】
ガイドレールには、リニアエンコーダ42(図4参照)のエンコーダストリップ(不図示)が配設されている。エンコーダストリップには、光を透過する透過部と、光を透過しない非透過部とが等ピッチで交互に配置されたパターンが形成されている。キャリッジ67には、エンコーダストリップのパターンを検出するための光学センサ(不図示)が搭載されている。光学センサによってエンコーダストリップのマークが検出される毎にパルス信号が生成される。パルス信号は、マイクロコンピュータ130へと出力される。
【0056】
記録ヘッド65は、下面からプラテン66に向けて配置された複数個のノズル30(図3参照)と、サブタンク及びノズル30を繋ぐインク流路(不図示)と、インク流路の一部を変形させることでノズル30からインク滴を吐出させる圧電素子44(図4参照)とを備えている。圧電素子44は、不図示のドライブ回路を介して後述するマイクロコンピュータ130により給電されることで動作する。
【0057】
各サブタンクには、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のインクの一つが貯留される。図3に示されるように、シアンのサブタンクに対して複数個のノズル30からなる第1ノズル列31が設けられている。第1ノズル列31は前後方向12に沿って延びている。第1ノズル列31と同様に、マゼンタ、イエロー、ブラックの各サブタンクに対応してそれぞれ第2ノズル列32、第3ノズル列33、第4ノズル列34が設けられている。
【0058】
記録部24は、後述するマイクロコンピュータ130に制御されることによって、搬送路23に向けてインク滴(本発明の液滴の一例)をノズル30から吐出する。これにより、記録用紙19に画像が記録される。
【0059】
[マイクロコンピュータ130]
以下、図4が参照されて、マイクロコンピュータ130の概略構成が説明される。マイクロコンピュータ130が後述するフローチャートにしたがってトレイ選択制御を行うことによって、本発明が実現される。マイクロコンピュータ130は、複合機1の全体動作を制御する。マイクロコンピュータ130は、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、ASIC135、及びこれらを相互に接続する内部バス137を備えている。
【0060】
ROM132には、CPU131が複合機1のトレイ選択制御を含む各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0061】
ASIC135には、第1給紙モータ76、第2給紙モータ77、キャリッジ駆動モータ103、搬送モータ59、及び圧電素子44が接続されている。ASIC135には、各モータを制御する駆動回路が組み込まれている。CPU131から所定のモータに応じた駆動回路に各モータを回転させるための駆動信号が入力されると、駆動信号に応じた駆動電流が駆動回路から対応するモータへ出力される。これにより、対応するモータが所定の回転速度で正転又は逆転する。つまり、マイクロコンピュータ130は、各モータ59、76、103を制御する。
【0062】
また、ASIC135には、ロータリーエンコーダ68の光学センサ60から出力されるパルス信号、及びリニアエンコーダ42の光学センサから出力されるパルス信号が入力される。マイクロコンピュータ130は、ロータリーエンコーダ68からのパルス信号に基づいて、搬送ローラ47の回転量を算出し、算出した回転量を目標回転量に一致するよう搬送モータ59を回転させる駆動回路に駆動信号を出力する。つまり、マイクロコンピュータ130は、ロータリーエンコーダ68からのパルス信号に基づいて、搬送ローラ47の回転量を制御する。また、マイクロコンピュータ130は、リニアエンコーダ42からのパルス信号に基づいて、キャリッジ67の速度及び位置を算出し、算出した速度または位置を目標速度または目標位置に一致するようキャリッジ駆動モータ103を回転させる駆動回路に駆動信号を出力する。つまり、マイクロコンピュータ130は、リニアエンコーダ42からのパルス信号に基づいて、キャリッジ67の移動を制御する。
【0063】
マイクロコンピュータ130は、記録用紙19に画像を記録する際、搬送モータ59を制御して、プラテン66上の記録用紙19に対して、搬送向き15へ所定の改行幅での搬送と、停止とを交互に繰り返させる。つまり、マイクロコンピュータ130は、搬送ローラ対54及び排出ローラ対55を制御して、記録用紙19の搬送及び停止を交互に繰り返させる間欠搬送処理(本発明の間欠搬送処理に相当)を実行する。そして、マイクロコンピュータ130は、記録用紙19の搬送が停止されている間に、片方向記録処理及び双方向記録処理を選択的に実行する。
【0064】
片方向記録処理は、キャリッジ67を右向きへ移動させつつノズル30からインク滴を吐出させ、かつキャリッジ67を左向きへ移動させるときにノズル30からインク滴を吐出させない処理である。以下に詳述する。マイクロコンピュータ130は、片方向記録処理を実行する際、リニアエンコーダ42からのパルス信号によって、キャリッジ67の現在位置を把握する。キャリッジ67の現在位置がこれから画像を記録しようとしている記録用紙19上の領域よりも右側である場合、マイクロコンピュータ130は、ノズル30からインク滴を吐出させることなく、キャリッジ67を左向きに移動させる。これにより、キャリッジ67は、当該領域よりも左側へ移動される。その後、マイクロコンピュータ130は、ノズル30からインク滴を吐出させながら、キャリッジ67を右向きに移動させる。一方、キャリッジ67の現在位置が、これから画像を記録しようとしている記録用紙19上の領域よりも左側である場合、マイクロコンピュータ130は、ノズル30からインク滴を吐出させながら、キャリッジ67を右向きに移動させる。
【0065】
双方向記録処理は、キャリッジ67を右向き及び左向きに移動させつつノズル30からインク滴を吐出させる処理である。以下に詳述する。マイクロコンピュータ130は、片方向記録処理を実行する際、リニアエンコーダ42からのパルス信号によって、キャリッジ67の現在位置を把握する。マイクロコンピュータ130は、キャリッジ67の現在位置がこれから画像を記録しようとしている記録用紙19上の領域よりも右側である場合、ノズル30からインク滴を吐出させながら、キャリッジ67を左向きに移動させる。一方、マイクロコンピュータ130は、キャリッジ67の現在位置が当該領域よりも左側である場合、ノズル30からインク滴を吐出させながら、キャリッジ67を右向きに移動させる。つまり、マイクロコンピュータ130は、キャリッジ67の移動向きが左右いずれの向きであっても、ノズル30からインク滴を吐出させながら、キャリッジ67を移動させる。
【0066】
図9に示されるように、キャリッジ67が、左右方向13に移動する間に、記録ヘッド65に形成されたノズル30(図9において複数の円で示されている。)は、記録用紙19の上方を破線で示されたライン80に沿って移動する。なお、図9には、搬送向き15の最下流に形成されたノズル30の移動経路としてのライン80のみが記されているが、実際には、全てのノズル30がライン80と平行な経路に沿って移動する。
【0067】
キャリッジ67が移動されるとき、各ノズル30からインク滴が吐出されることによって、記録用紙19の面上においてライン80に沿って画像が記録される。なお、ライン80は、図9には示されていないが、左右方向13に沿って一列に並んだドットの集まりである。例えば、キャリッジ68が移動されるときに全てのノズル30からインク滴が吐出された場合、記録用紙19に記録される画像のライン数は、記録ヘッド65のヘッド長に相当するノズル30の数(図3における前後方向12のノズル30の数)と同じとなる。
【0068】
マイクロコンピュータ130は、後述する第1印刷データまたは第2印刷データに基づいて、各ドットに4種類のインクのうち何種類のインクを吐出するかを決定する。そして、マイクロコンピュータ130は、記録ヘッド65の圧電素子44への給電を制御して、当該決定に従ったインクを吐出させる。これにより、記録用紙19には、ライン80に沿って画像が記録される。
【0069】
また、本実施形態において、マイクロコンピュータ130は、ノズル30から吐出されるインクが黒以外のカラーを所定割合未満のみ含む場合、双方向記録処理を実行し、ノズル30から吐出されるインクが黒以外のカラーを所定割合以上含む場合、片方向記録処理を実行する。
【0070】
以上より、マイクロコンピュータ130は、間欠搬送処理において記録用紙19が停止されている間に、キャリッジ67を往復移動させながら、第1印刷データまたは第2印刷データに基づいて、記録ヘッド65に液滴を吐出させる記録処理(本発明の記録処理に相当)を実行する。
【0071】
[トレイ選択制御]
上述の如く構成されたプリンタ部2においては、マイクロコンピュータ130によって、2つの給紙トレイ20、22から1つを選択するトレイ選択制御が実行される。以下、図5〜図8のフローチャートに基づいて、トレイ選択制御の処理手順が説明される。
【0072】
原稿載置トレイ38に原稿が載置され、操作パネル9から印刷指示が入力されると、原稿は、原稿搬送ローラによって読取位置まで搬送される。そして、原稿に記録されている画像が、イメージセンサによって読み取られることによって、第1印刷データ(本発明の第1印刷データに相当)がRAM133に記憶される。つまり、第1印刷データが作成される。なお、第1印刷データは、外部情報機器から受信されることによって、RAM133に記憶、つまり作成されてもよい。
【0073】
第1印刷データは、原稿に記録されている画像を、原稿搬送向きの先端から後端の順序で、記録用紙19に記録するためのデータである。ここで、記録用紙19は、搬送向き15の先端から後端の順序で、記録部24によって画像記録される。よって、第1印刷データは、搬送向き15に沿った順序で記録用紙19に画像を記録させるためのデータである。
【0074】
次に、マイクロコンピュータ130は、第1印刷データを第2印刷データ(本発明の第2印刷データに相当)に変換する(SA2)。つまり、マイクロコンピュータ130は、第2印刷データを作成する。作成された第2印刷データは、RAM133に記憶される。第2印刷データは、原稿に記録されている画像を、右端から左端の順序または左端から右端の順序、つまり左右方向13に沿った順序で、記録用紙19に記録するためのデータである。よって、第2印刷データによって記録用紙19に記録された画像は、第1印刷データによって記録用紙19に記録された画像を、90度だけ右回転または左回転させた画像となる。以上より、ステップSA2の処理は、本発明の作成手段に相当する。
【0075】
次に、マイクロコンピュータ130は、後述される図6のフローチャートに従った方法などによって、第1回数(本発明の第1回数に相当)及び第2回数(本発明の第2回数に相当)を算出する(SA3)。ステップSA3の処理は、本発明の第1算出手段に相当する。ここで、第1回数は、第1給紙トレイ20に保持されている記録用紙19に第1印刷データを記録するときにキャリッジ67の移動が繰り返される回数である。第2回数は、第2給紙トレイ22に保持されている記録用紙19に第2印刷データを記録するときにキャリッジ67の移動が繰り返される回数である。
【0076】
マイクロコンピュータ130は、算出した第1回数及び第2回数を比較する(SA4、SA5)。第1回数及び第2回数が等しい場合(SA4:Yes)、ステップSA6の処理が実行される。
【0077】
第2回数が第1回数よりも大きい場合(SA5:Yes)、マイクロコンピュータ130は、記録用紙19への画像記録を第2印刷データに基づいて行うことを決定する(SA14)。このとき、マイクロコンピュータ130は、RAM133に記憶されている第1印刷データを消去してもよい。また、マイクロコンピュータ130は、第2給紙モータ77を駆動することによって、第2給紙ローラ125に、第2給紙トレイ22から記録用紙19を給送させる(SA15)。
【0078】
第1回数が第2回数よりも大きい場合(SA5:No)、マイクロコンピュータ130は、記録用紙19の画像記録を第1印刷データに基づいて行うことを決定する(SA16)。このとき、マイクロコンピュータ130は、RAM133に記憶されている第2印刷データを消去してもよい。また、マイクロコンピュータ130は、第1給紙モータ76を駆動することによって、第1給紙ローラ25に、第1給紙トレイ20から記録用紙19を給送させる(SA17)。以上より、ステップSA5、SA14〜SA17の処理は、本発明の第1トレイ選択手段に相当する。
【0079】
ステップSA6において、マイクロコンピュータ130は、後述される図7のフローチャートに従った方法などによって、第1移動距離(本発明の第1移動距離に相当)及び第2移動距離(本発明の第2移動距離に相当)を算出する。ステップSA6の処理は、本発明の第2算出手段に相当する。ここで、第1移動距離は、第1給紙トレイ20に保持されている記録用紙19に第1印刷データを記録するときのキャリッジ67の合計移動距離である。第2移動距離は、第2給紙トレイ22に保持されている記録用紙19に第2印刷データを記録するときのキャリッジ67の合計移動距離である。
【0080】
マイクロコンピュータ130は、算出した第1移動距離及び第2移動距離を比較する(SA7、SA8)。第1移動距離数及び第2移動距離が等しい場合(SA7:Yes)、ステップSA9の処理が実行される。第2移動距離が第1移動距離よりも長い場合(SA8:Yes)、ステップSA14、SA15の処理が実行される。第1移動距離が第2移動距離よりも長い場合(SA8:No)、ステップSA16、SA17の処理が実行される。以上より、ステップSA8、SA14〜SA17の処理は、本発明の第2トレイ選択手段に相当する。
【0081】
ステップSA9において、マイクロコンピュータ130は、後述される図8のフローチャートに従った方法などによって、第1時間(本発明の第1時間に相当)及び第2時間(本発明の第2時間に相当)を算出する。ステップSA9の処理は、本発明の第3算出手段に相当する。
【0082】
ここで、第1時間は、第1給紙トレイ20に保持されている記録用紙19の画像記録完了までの搬送に要する時間である。但し、第1時間には、記録処理において記録用紙19が停止されている時間は含まれない。第1時間は、第1給紙トレイ20に保持されている記録用紙19が画像記録完了までに搬送される距離、及び当該記録用紙19の搬送速度に基づいて算出される。なお、記録用紙19の搬送距離は、ロータリーエンコーダ68の光学センサ60からのパルス信号に基づいて算出可能である。例えば、図2に示されるように、記録用紙19が第1給紙トレイ20に保持されている位置から画像記録開始時の位置までが区間A1(距離A1)であり、画像記録開始位置から画像記録完了位置までが区間A2(距離A2)であり、画像記録完了位置から排出位置までが区間A3(距離A3)であり、記録用紙19が区間A1、A3を搬送されるときの搬送速度が速度V1であり、記録用紙19が区間A2を搬送されるときの搬送速度が速度V2であるとする。このとき、第1時間T1は、T1=(A1/V1)+(A2/V2)+(A3/V1)の式によって算出される。
【0083】
第2時間は、第2給紙トレイ22に保持されている記録用紙19の画像記録完了までの搬送に要する時間である。但し、第2時間にも、第1時間と同様に、記録処理において記録用紙19が停止されている時間は含まれない。第2時間は、第2給紙トレイ22に保持されている記録用紙19が画像記録完了までに搬送される距離、及び当該記録用紙19の搬送速度に基づいて、第1時間と同様にして算出される。
【0084】
マイクロコンピュータ130は、算出した第1時間及び第2時間を比較する(SA10、SA11)。第1時間及び第2時間が等しい場合(SA10:Yes)、ステップSA12の処理が実行される。第1時間が第2時間よりも大きい場合(SA11:Yes)、ステップSA14、SA15の処理が実行される。第2時間が第1時間よりも大きい場合(SA11:No)、ステップSA16、SA17の処理が実行される。以上より、ステップSA11、SA14〜SA17の処理は、本発明の第3トレイ選択手段に相当する。
【0085】
第1時間及び第2時間が等しい場合(SA10:Yes)、マイクロコンピュータ130は、第1搬送距離(本発明の第1搬送距離に相当)及び第2搬送距離(本発明の第2搬送距離に相当)を算出し(SA12)、比較する(SA13)。ここで、第1搬送距離は、第1給紙トレイ20に保持されている記録用紙19が搬送路23に沿って記録ヘッド65の直下位置まで搬送されるときの距離である。第2搬送距離は、第2給紙トレイ22に保持されている記録用紙19が搬送路23に沿って記録ヘッド65の直下位置まで搬送されるときの距離である。第1搬送距離及び第2搬送距離は複合機1が設計される際に決定される寸法であり、例えば、第1搬送距離は、図2に示される搬送路23に沿った長さCであり、第2搬送距離は、図2に示される搬送路23に沿った長さDである。
【0086】
第1搬送距離が第2搬送距離よりも長い場合(SA13:Yes)、ステップSA14、SA15の処理が実行される。第2搬送距離が第1搬送距離よりも長い場合(SA13:No)、ステップSA16、SA17の処理が実行される。以上より、ステップSA13〜SA17の処理は、本発明の第7トレイ選択手段に相当する。
【0087】
マイクロコンピュータ130は、ステップSA15、SA17において給紙トレイ20、22から給送された記録用紙19に対して、上述した間欠搬送処理及び記録処理を実行する(SA18)。つまり、ステップSA18の処理は、本発明の制御手段に相当する。そして、マイクロコンピュータ130は、搬送モータ59を制御することによって、排紙ローラ49に、画像記録後の記録用紙19を排紙トレイ21に排出させる(SA19)。
【0088】
次に、図6のフローチャートに基づいて、マイクロコンピュータ130による第1回数及び第2回数の算出方法の一例が説明される。第1回数は第1印刷データに基づいて算出され、第2回数は第2印刷データに基づいて算出される。第1回数及び第2回数の算出は、基となる印刷データを除いて、同様の方法で算出されてよい。よって、以下においては、第1回数の算出が説明され、第2回数の算出の説明は省略される。
【0089】
マイクロコンピュータ130は、第1回数の算出において使用される各パラメータを初期化する(SB1)。各パラメータは、パス数M及びライン数Nである。
【0090】
パス数M(以下、Mパスとも称される。)は、記録用紙19に画像を記録する過程におけるパスの数である。ここで、パスとは、キャリッジ67が右向きまたは左向きに1回移動する間に、記録ヘッド65からインク滴が噴出されて画像記録される単位である。例えば、パス数Mが0の状態において、キャリッジ67が右向きに移動する間に画像記録されると、当該画像記録は1パスであり、次にキャリッジ67が左向きに移動する間に画像記録されると、当該画像記録は2パスである。図6のフローチャートにおける処理が終了したときのパス数Mが、第1回数である。
【0091】
ライン数N(以下、Nラインとも称される。)は、上述されたライン80(図9参照)の数である。
【0092】
マイクロコンピュータ130は、Nラインに対応する第1印刷データが空白データであるか否かを判定する(SB2)。ここで、空白データは、全てのドットにおいてインクが吐出されないことが示されたデータである。
【0093】
Nラインに対応する第1印刷データが空白データである場合(SB2:Yes)、マイクロコンピュータ130は、ライン数Nをインクリメントする(SB3)。次に、マイクロコンピュータ130は、ライン数Nが最終ライン、つまり頁全体のライン数(図9における前後方向12の範囲E)と等しいか否かを判定する(SB14)。ライン数Nが頁全体のライン数と等しい場合(SB14:Yes)、マイクロコンピュータ130は、その時点におけるパス数Mを第1回数として、一連の処理を終了する。
【0094】
Nラインに対応する第1印刷データが空白データでない場合(SB2:No)、マイクロコンピュータ130は、パス数Mをインクリメントする(SB4)。次に、マイクロコンピュータ130は、Nラインから前後方向12のノズル30の数(記録ヘッド65のヘッド長に相当するノズル30の数)に対応する第1印刷データのうち、Nラインを先頭とした第1区間内のカラードットの割合が予め設定された閾値よりも小さいか否かを判定する(SB5)。
【0095】
ここで、第1区間は、図9に示されるように、符号81で示される区間である。つまり、第1区間81は、左右方向13の長さがキャリッジ67の移動可能範囲に基づいて決定される記録ヘッド65による画像記録可能範囲G(図8では記録用紙19の左右方向13の長さ)であり、前後方向12の長さが範囲Fに対応するライン数(記録ヘッド65に形成されたノズル30の前後方向12の数)よりも少ないライン数に対応する範囲Hである領域である。なお、範囲Hに対応するライン数は、少なくとも1ラインである。また、図9においては、記録用紙19上の一部の第1区間81のみが示されている。
【0096】
また、閾値は、第1区間81がカラーが多い領域とカラーが少ない領域との何れの領域であるかを設定するための値である。本実施形態において、閾値の単位はパーセント(%)であり、具体的には、20(%)に設定されている。なお、第1閾値は、本実施形態において設定された単位及び値に限らない。
【0097】
ステップSB5において、第1区間81内のカラードットの割合が閾値より小さい場合(SB5:Yes)、ステップSB6が実行され、閾値以上の場合(SB5:No)、ステップSB7が実行される。
【0098】
ステップSB6において、マイクロコンピュータ130は、Nラインから第1区間81以降の第2区間内のカラードットの割合が予め設定された閾値よりも小さいか否かを判定する(SB6)。
【0099】
ここで、第2区間は、図9に示されるように、符号82で示される区間である。つまり、第2区間82は、左右方向13の長さが画像記録可能範囲Gであり、前後方向12の長さが範囲Fに対応するライン数から範囲Hに対応するライン数を除いた範囲Iである領域である。なお、図9においては、記録用紙19上の一部の第2区間82のみが示されている。また、閾値は、第2区間82がカラーが多い領域とカラーが少ない領域との何れの領域であるかを設定するための値であり、ステップSB5において説明された閾値と同値であっても異値であってもよい。
【0100】
ステップSB6において、第2区間82内のカラードットの割合が閾値より大きい場合(SB6:Yes)、ステップSB9が実行され、閾値以下の場合(SB5:No)、ステップSB7が実行される。
【0101】
ステップSB7において、マイクロコンピュータ130は、ライン数Nから記録ヘッド65のヘッド長分の第1印刷データをMパスのデータとする。つまり、本実施形態において、記録部24が記録用紙19に当該データを画像記録する際、全てのノズル30からインク滴が吐出される。次に、ライン数Nに記録ヘッド65のヘッド長分のライン数を加えた値を、新たなライン数Nとする(SB8)。その後、ステップSB14の判定が実行される。
【0102】
ステップSB9において、マイクロコンピュータ130は、Nラインを先頭として第1区間81に対応する第1印刷データをMパスのデータとする。つまり、本実施形態において、記録部24が記録用紙19に当該データを画像記録する際、第1区間81に対応するノズル30のみからインク滴が吐出される。次に、ライン数Nに第1区間81に対応するライン数を加えた値を、新たなライン数Nとする(SB10)。次に、マイクロコンピュータ130は、パス数Mをインクリメントする(SB11)。そして、ステップSB10で変更されたライン数Nからヘッド長分の第1印刷データを、ステップSB11で変更されたパス数(Mパス)のデータとする(SB12)。つまり、本実施形態において、記録部24が記録用紙19に当該データを画像記録する際、全てのノズル30からインク滴が吐出される。次に、ライン数Nに記録ヘッド65のヘッド長分のライン数を加えた値を、新たなライン数Nとする(SB13)。その後、ステップSB14の判定が実行される。
【0103】
以上より、本実施形態の第1回数の算出方法では、マイクロコンピュータ130は、記録ヘッド65のヘッド長に対応する第1印刷データを、第1区間81に対応するデータと、第2区間82に対応するデータとに分ける。そして、第1区間81に対応するデータにカラードットが少なく、且つ第2区間82に対応するデータにカラードットが多いという条件を具備する場合、マイクロコンピュータ130は、第1区間81、及び第2区間82以降の区間であって記録ヘッド65のヘッド長分の区間の2回に分けて、記録処理を実行する。つまり、マイクロコンピュータ130は、記録ヘッド65のヘッド長に対応する第1印刷データを、2パスに分けて記録処理を実行する。一方、上記条件を具備しない場合、マイクロコンピュータ130は、記録ヘッド65のヘッド長に対応する第1印刷データを2パスに分けることなく、記録処理を実行する。なお、以上の説明においては省略されているが、マイクロコンピュータ130は、カラードットが多い区間に対して記録処理を実行する場合に片方向記録処理を実行し、カラードットが少ない区間に対して記録処理を実行する場合に双方向記録処理を実行する。
【0104】
なお、以上説明された算出方法は一例であり、第1回数及び第2回数は他の方法によって算出されてもよい。例えば、マイクロコンピュータ130は、記録ヘッド65のヘッド長に対応する第1印刷データを複数の区間に分けなくてもよい。つまり、マイクロコンピュータ130は、記録ヘッド65のヘッド長に対応する第1印刷データにカラードットが多い場合に片方向記録処理を実行し、記録ヘッド65のヘッド長に対応する第1印刷データにカラードットが少ない場合に双方向記録処理を実行してもよい。
【0105】
次に、図7のフローチャートに基づいて、マイクロコンピュータ130による第1移動距離及び第2移動距離の算出方法の一例が説明される。第1移動距離は第1印刷データに基づいて算出され、第2移動距離は第2印刷データに基づいて算出される。第1移動距離及び第2移動距離の算出は、基となる印刷データを除いて、同様の方法で算出されてよい。よって、以下においては、第1移動距離の算出が説明され、第2移動距離の算出の説明は省略される。
【0106】
マイクロコンピュータ130は、第1移動距離を0にセットする(SC1)。第1移動距離は、図7のフローチャートにおける処理が実行される過程において増加される。そして、図7のフローチャートにおける処理が終了したときの第1移動距離の値が、ステップSA6におけるマイクロコンピュータ130による第1移動距離の算出結果である。
【0107】
マイクロコンピュータ130は、パス数M毎にステップSC2〜SC4の処理を繰り返す。そして、第1印刷データを記録用紙19に記録させるための最終パスにおいて、ステップSC2〜SC4の処理が実行されると(SC5:Yes)、マイクロコンピュータ130は、その時点における第1移動距離の値を算出結果として、一連の処理を終了する。
【0108】
ステップSC2において、マイクロコンピュータ130は、キャリッジ67の印字前移動が必要か否かを判定する(SC2)。ここで、印字前移動は、片方向記録処理において、ノズル30からインク滴を吐出させることのないキャリッジ67の移動である。
【0109】
印字前移動が必要であると判定された場合(SA2:Yes)、つまり当該パスにおいてノズル30から吐出されるインクが黒以外のカラーを所定割合以上含む場合、第1移動距離に印字前移動においてキャリッジ67が移動される距離を加えた値を、新たな第1移動距離とする(SC3)。次に、ステップSC3で変更された第1移動距離に印字中移動においてキャリッジ67が移動される距離を加えた値を、新たな第1移動距離とする(SC4)。ここで、印字中移動は、片方向記録処理及び双方向記録処理において、ノズル30からインク滴を吐出させながらのキャリッジ67の移動である。
【0110】
一方、印字前移動が不要であると判定された場合(SA2:No)、つまり当該パスにおいてノズル30から吐出されるインクが黒以外のカラーを所定割合未満のみ含む場合、第1移動距離に印字中移動においてキャリッジ67が移動される距離を加えた値を、新たな第1移動距離とする(SC4)。
【0111】
次に、図8のフローチャートに基づいて、マイクロコンピュータ130による第1時間及び第2時間の算出方法の一例が説明される。第1時間は第1印刷データに基づいて算出され、第2時間は第2印刷データに基づいて算出される。第1時間及び第2時間の算出は、基となる印刷データを除いて、同様の方法で算出されてよい。よって、以下においては、第1時間の算出が説明され、第2時間の算出の説明は省略される。
【0112】
マイクロコンピュータ130は、第1時間を0にセットする(SD1)。第1時間は、図8のフローチャートにおける処理が実行される過程において増加される。そして、図8のフローチャートにおける処理終了したときの第1時間の値が、ステップSA9におけるマイクロコンピュータ130による第1時間の算出結果である。
【0113】
マイクロコンピュータ130は、第1給紙トレイ20に保持された状態の記録用紙19の搬送向き15の先端から記録部24による画像記録の開始位置までの長さ(つまり上述した図2に示される区間A1)を当該記録用紙19が搬送されるまでの時間(つまり上述の(A1/V1)の値)を、第1時間に加え、その加算結果を新たな第1時間とする(SD2)。
【0114】
次に、マイクロコンピュータ130は、パス数M毎にステップSD4の処理を繰り返す。そして、第1印刷データを記録用紙19に記録させるための最終パスにおいて、ステップSD4の処理が実行されると(SC5:Yes)、ステップSD5が実行される。
【0115】
ステップSD4において、マイクロコンピュータ130は、記録用紙19が1パスにおいて搬送される区間a2(不図示)を当該記録用紙19が搬送される時間を、第1時間に加え、その加算結果を新たな第1時間とする(SD4)。ここで、第1印刷データが記録用紙19に記録されるために必要なパス数が「m」である場合、区間a2は、上述した区間A2を用いて、a2=A2/mによって求めることができる。
【0116】
ステップSD5において、マイクロコンピュータ130は、画像記録された記録用紙19が画像記録完了位置から排出位置まで搬送される時間(つまり上述の(A3/V1)の値)を、第1時間に加え、その加算結果を新たな第1時間とする。つまり、マイクロコンピュータ130は、ステップSD5の完了時点における第1時間の値を算出結果として、一連の処理を終了する。
【0117】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、ステップSA5、SA14〜SA17の処理において、マイクロコンピュータ130は、記録用紙19への画像記録時にキャリッジ67が移動する回数(第1回数及び第2回数)に基づいて、記録用紙19を給送させる給紙トレイ20、22を決定する。よって、例えばカラーの画像を記録するときのように、データが存在するライン数の多少の判断では、記録用紙19への画像記録に要する時間が短い給紙トレイ20、22を正確に選択することができない場合であっても、記録用紙19への画像記録に要する時間が短い給紙トレイ20、22を正確に選択できる可能性が高くなる。
【0118】
記録用紙19への画像記録時において、キャリッジ67が移動する距離が長い程、記録用紙19への画像記録には多くの時間が必要となる可能性が高い。そして、本実施形態によれば、第1回数及び第2回数が同一である場合であっても、ステップSA8、SA14〜SA17の処理において、マイクロコンピュータ130は、キャリッジ67の画像記録時における移動距離の合計に基づいて、記録用紙19を給送させる給紙トレイ20、22を決定する。これにより、記録用紙19への画像記録に要する時間が短い給紙トレイ20、22を正確に選択できる可能性が高くなる。
【0119】
記録用紙19は、搬送ローラ対54及び排出ローラ対55によって第1給紙トレイ20または第2給紙トレイ22から記録ヘッド65の直下へ搬送され、画像記録される。そして、記録用紙19が、第1給紙トレイ20または第2給紙トレイ22に収容されている時の位置から排出位置まで搬送される場合の時間が短い程、記録用紙19への画像記録の完了までに要する時間が短くなる可能性が高い。そして、本実施形態によれば、第1回数及び第2回数が同一であり、且つ第1移動距離及び第2移動距離が同一である場合であっても、ステップSA11、SA14〜SA17において、マイクロコンピュータ130は、第1給紙トレイ20に収容された記録用紙19の搬送に要する第1時間、及び第2給紙トレイ22に収容された記録用紙19の搬送に要する第2時間に基づいて、記録用紙19を給送させる給紙トレイ20、22を決定する。これにより、記録用紙19への画像記録に要する時間が短い給紙トレイ20、22を正確に選択できる可能性が高くなる。
【0120】
記録用紙19は、搬送ローラ対54及び排出ローラ対55によって第1給紙トレイ20または第2給紙トレイ22から記録ヘッド65の直下へ搬送され、画像記録される。そして、給紙トレイ20、22から記録ヘッド65の直下までの記録用紙19の搬送距離が長い程、記録用紙19への画像記録の完了までに要する時間が長くなる可能性が高い。そして、本実施形態によれば、ステップSA13〜SA17において、マイクロコンピュータ130は、記録用紙19の各給紙トレイ20、22から記録ヘッド65の直下までの搬送距離に基づいて、記録用紙19を給送させる給紙トレイ20、22を決定する。これにより、記録用紙19への画像記録に要する時間が短い給紙トレイ20、22を正確に選択できる可能性が高くなる。
【0121】
[実施例の変形例1]
上述の実施形態において、ステップSA12、SA13が実行されなくてもよい。つまり、第1時間及び第2時間が等しい場合に(SA10:Yes)、ステップSA14の処理が実行されてもよい。
【0122】
また、上述の実施形態において、ステップSA9〜SA13が実行されなくてもよい。つまり、第1移動距離及び第2移動距離が等しい場合に(SA7:Yes)、ステップSA14の処理が実行されてもよい。
【0123】
また、上述の実施形態において、ステップSA6〜SA13が実行されなくてもよい。つまり、第1回数及び第2回数が等しい場合に(SA4:Yes)、ステップSA14の処理が実行されてもよい。
【0124】
[実施例の変形例2]
図10に示されるように、ステップSA3〜SA5と、ステップSA6〜SA8の順序が逆であってもよい。この場合、ステップSA8、SA14〜SA17の処理が、本発明の第4トレイ選択手段に相当する。また、ステップSA5、SA14〜SA17の処理が、本発明の第5トレイ選択手段に相当する。また、ステップSA11、SA14〜SA17の処理が、本発明の第6トレイ選択手段に相当する。
【0125】
変形例2においても、上述の実施形態と同様に、記録用紙19への画像記録に要する時間が短い給紙トレイ20、22を正確に選択できる可能性が高くなる。
【0126】
[実施例の変形例3]
変形例2において、ステップSA12、SA13が実行されなくてもよい。つまり、第1時間及び第2時間が等しい場合に(SA10:Yes)、ステップSA14の処理が実行されてもよい。
【0127】
また、変形例2において、ステップSA9〜SA13が実行されなくてもよい。つまり、第1回数及び第2回数が等しい場合に(SA4:Yes)、ステップSA14の処理が実行されてもよい。
【0128】
また、変形例2において、ステップSA3〜SA5、及びSA9〜SA13が実行されなくてもよい。つまり、第1移動距離及び第2移動距離が等しい場合に(SA7:Yes)、ステップSA14の処理が実行されてもよい。
【符号の説明】
【0129】
1・・・複合機
15・・・搬送向き
17・・・第1給送部
18・・・第2給送部
19・・・記録用紙
20・・・第1給紙トレイ
22・・・第2給紙トレイ
23・・・搬送路
54・・・搬送ローラ対
55・・・排出ローラ対
65・・・記録ヘッド
67・・・キャリッジ
130・・・マイクロコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形のシートを搬送路に沿った第1向きへ搬送する搬送部と、
シートが短辺を上記第1向きの下流端及び上流端として搬送可能に保持される第1トレイと、
上記第1トレイに保持されているシートと同サイズのシートが長辺を上記第1向きの下流端及び上流端として搬送可能に保持される第2トレイと、
上記第1トレイに保持されたシートを上記搬送路へ給送する第1給送部と、
上記第2トレイに保持されたシートを上記搬送路へ給送する第2給送部と、
上記搬送路の上側に設けられており、上記第1向きと直交し且つシートの画像記録面に沿った第2方向へ移動可能なキャリッジと、
上記キャリッジに搭載されており、上記搬送路へ向けて液滴を吐出することによって上記搬送路を搬送されるシートに画像を記録する記録ヘッドと、
上記第1向きに沿った順序でシートに画像を記録するための第1印刷データと、上記第2方向に沿った順序でシートに画像を記録するための第2印刷データと、を作成する作成手段と、
上記搬送部にシートの搬送及び停止を交互に繰り返させる間欠搬送処理、及び上記間欠搬送処理においてシートが停止されている間に、上記キャリッジを往復移動させながら、上記第1印刷データまたは上記第2印刷データに基づいて、上記記録ヘッドに液滴を吐出させる記録処理を実行する制御手段と、
上記第1トレイに保持されているシートに上記第1印刷データを記録するときに上記キャリッジの移動が繰り返される第1回数、及び上記第2トレイに保持されているシートに上記第2印刷データを記録するときに上記キャリッジの移動が繰り返される第2回数を算出する第1算出手段と、
上記第1回数が上記第2回数よりも少ないことを条件として、上記第1給送部に上記第1トレイからシートを給送させ、上記第2回数が上記第1回数よりも少ないことを条件として、上記第2給送部に上記第2トレイからシートを給送させる第1トレイ選択手段と、を備えているインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記第1トレイに保持されているシートに上記第1印刷データを記録するときの上記キャリッジの合計移動距離である第1移動距離、及び上記第2トレイに保持されているシートに上記第2印刷データを記録するときの上記キャリッジの合計移動距離である第2移動距離を算出する第2算出手段と、
上記第1回数及び上記第2回数が同一であることを条件として実行される手段であって、上記第1移動距離が上記第2移動距離よりも短いことを条件として、上記第1給送部に上記第1トレイからシートを給送させ、上記第2移動距離が上記第1移動距離よりも短いことを条件として、上記第2給送部に上記第2トレイからシートを給送させる第2トレイ選択手段と、を更に備えている請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記第1トレイに保持されているシートが画像記録完了までに搬送される距離、及び当該シートの搬送速度に基づいて第1時間を算出し、上記第2トレイに保持されているシートが画像記録完了までに搬送される距離、及び当該シートの搬送速度に基づいて第2時間を算出する第3算出手段と、
上記第1移動距離及び上記第2移動距離が同一であることを条件として実行される手段であって、上記第1時間が上記第2時間よりも短いことを条件として、上記第1給送部に上記第1トレイからシートを給送させ、上記第2時間が上記第1時間よりも短いことを条件として、上記第2給送部に上記第2トレイからシートを給送させる第3トレイ選択手段と、を更に備えている請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
長方形のシートを搬送路に沿った第1向きへ搬送する搬送部と、
シートが短辺を上記第1向きの下流端及び上流端として搬送可能に保持される第1トレイと、
上記第1トレイに保持されているシートと同サイズのシートが長辺を上記第1向きの下流端及び上流端として搬送可能に保持される第2トレイと、
上記第1トレイに保持されたシートを上記搬送路へ給送する第1給送部と、
上記第2トレイに保持されたシートを上記搬送路へ給送する第2給送部と、
上記搬送路の上方に設けられており、上記第1向きと直交し且つシートの画像記録面に沿った第2方向へ移動可能なキャリッジと、
上記キャリッジに搭載されており、上記搬送路へ向けて液滴を吐出することによって上記搬送路を搬送されるシートに画像を記録する記録ヘッドと、
上記第1向きに沿った順序でシートに画像を記録するための第1印刷データと、上記第2方向に沿った順序でシートに画像を記録するための第2印刷データと、を作成する作成手段と、
上記搬送部にシートの搬送及び停止を交互に繰り返させる間欠搬送処理、及び上記間欠搬送処理においてシートが停止されている間に、上記キャリッジを往復移動させながら、上記第1印刷データまたは上記第2印刷データに基づいて、上記記録ヘッドに液滴を吐出させる記録処理を実行する制御手段と、
上記第1トレイに保持されているシートに上記第1印刷データを記録するときの上記キャリッジの合計移動距離である第1移動距離、及び上記第2トレイに保持されているシートに上記第2印刷データを記録するときの上記キャリッジの合計移動距離である第2移動距離を算出する第2算出手段と、
上記第1移動距離が上記第2移動距離よりも短いことを条件として、上記第1給送部に上記第1トレイからシートを給送させ、上記第2移動距離が上記第1移動距離よりも短いことを条件として、上記第2給送部に上記第2トレイからシートを給送させる第4トレイ選択手段と、を備えているインクジェット記録装置。
【請求項5】
上記第1トレイに保持されているシートに上記第1印刷データを記録するときに上記キャリッジの移動が繰り返される第1回数、及び上記第2トレイに保持されているシートに上記第2印刷データを記録するときに上記キャリッジの移動が繰り返される第2回数を算出する第1算出手段と、
上記第1移動距離及び上記第2移動距離が同一であることを条件として実行される手段であって、上記第1回数が上記第2回数よりも少ないことを条件として、上記第1給送部に上記第1トレイからシートを給送させ、上記第2回数が上記第1回数よりも少ないことを条件として、上記第2給送部に上記第2トレイからシートを給送させる第5トレイ選択手段と、を更に備えている請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
上記第1トレイに保持されているシートが画像記録完了までに搬送される距離、及び当該シートの搬送速度に基づいて第1時間を算出し、上記第2トレイに保持されているシートが画像記録完了までに搬送される距離、及び当該シートの搬送速度に基づいて第2時間を算出する第3算出手段と、
上記第1回数及び上記第2回数が同一であることを条件として実行される手段であって、上記第1時間が上記第2時間よりも短いことを条件として、上記第1給送部に上記第1トレイからシートを給送させ、上記第2時間が上記第1時間よりも短いことを条件として、上記第2給送部に上記第2トレイからシートを給送させる第6トレイ選択手段と、を更に備えている請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
上記第1時間及び上記第2時間が同一であることを条件として実行される手段であって、上記第1トレイに保持されているシートが上記搬送路に沿って上記記録ヘッドの直下位置まで搬送されるときの第1搬送距離が、上記第2トレイに保持されているシートが上記搬送路に沿って上記直下位置まで搬送されるときの第2搬送距離よりも短いことを条件として、上記第1給送部に上記第1トレイからシートを給送させ、上記第2搬送距離が、上記第1搬送距離よりも短いことを条件として、上記第2給送部に上記第2トレイからシートを給送させる第7トレイ選択手段を更に備えている請求項3または6に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−218222(P2012−218222A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84004(P2011−84004)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】