説明

インクジェット記録装置

【課題】 記録シートの後端縁が搬送ローラニップを抜けるときに記録シート表面にインク汚れが付着するのを抑制することができる。
【解決手段】 搬送ローラとピンチローラを有する上流側シート搬送手段と、前記上流側シート搬送手段の下流に配設され、液体吐出口配列面を有する記録ヘッドと、該記録ヘッドを支持し往復走査を行うキャリッジと、前記記録ヘッドに対向する位置でシートを支持するプラテンと、を有し、前記ピンチローラは前記搬送ローラの搬送方向下流側に偏った位置において前記搬送ローラに接しているインクジェット記録装置において、シート後端が前記搬送ローラと前記ピンチローラのニップを通過する際のシート搬送時には、前記記録ヘッドのインク吐出口列配置面がシート側端縁の外側に位置するように前記キャリッジを移動させる制御手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置等の記録装置における、記録シートのインク汚れ抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置において、記録シートと記録ヘッドフェイス面との接触による、記録シート表面へのインク汚れ付着を抑制する手段がいくつか提案されている。
特許文献1に開示される発明のように、プラテンに設けた複数の穴からエア吸引を行い、記録シートをプラテンに引き寄せることで記録シートの浮きを抑制し、記録シートと記録ヘッドフェイス面との接触による、記録シート表面へのインク汚れ付着を抑制する構成が提案されている。しかしながら、エア吸引機構は、装置の大型化、高コストのため、比較的小型で安価なインクジェット記録装置への実装は不向きである。
【0003】
特許文献2では、記録ヘッドの上流に位置する搬送ローラと従動のピンチローラの接点を、プラテンの表面より高い位置に配置すると同時に、ピンチローラを搬送ローラの頂点よりもプラテン側にオフセットさせて配置する構成を提案している。これにより、記録シートは、プラテンに対し押し付けられる方向に搬送されるため、プラテン上での紙浮きが抑制され、記録シートと記録ヘッドフェイス面との接触による、記録シートの表面へのインク汚れ付着が抑制される。また、紙浮き抑制のために専用の部品を使用していないので、装置サイズ、コスト的にもインクジェット記録装置に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−39758号公報
【特許文献2】特登録2994392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2で示される構成においては、記録シートの後端縁が搬送ローラとピンチローラの接点(以降搬送ローラニップと呼ぶ)を抜けた瞬間、図3(b)に示すように、プラテン14への押し付け力が無くなると共に、記録シートPの後端縁は、プラテン14の表面より高い位置にある搬送ローラ8の頂点近傍に載る状態となる。
【0006】
ここで、通常、走査中の記録ヘッド13を搭載したキャリッジは、印字時間短縮のため、インク吐出終了後、速やかにキャリッジモータを減速させ、一旦停止した後、直ぐに逆方向の走査を開始する。よって、記録シートPの幅方向の側端部まで一杯に印字をしても、キャリッジの一部が記録シートPの側端部に対向する位置で停止する。また、印字が記録シートPの側端部から所定量内側で終わるようであれば、記録ヘッドフェイス面が記録シートP上で停止する場合もある。一般に記録ヘッド13を保護する部材が、記録ヘッドフェイス面と略同一高さで、記録ヘッドフェイス面の両端部にキャリッジに別体、あるいは一体的に設けられている。そして、記録ヘッドフェイス面や記録ヘッド13の保護部材が記録シートP上で停止した状態で、記録シートPの後端縁が搬送ローラニップを抜けた瞬間、記録シートPは図3で示すように後端付近がプラテン14上面から浮き上がり、記録ヘッドフェイス面や記録ヘッド13の保護部材に接触する。記録ヘッドフェイス面や記録ヘッド13の保護部材にはインクミストが付着しているため、接触した記録シートPの表面にインク汚れが転写する。この現象は、搬送ローラ8の外径が大きいほど、また、インク吐出ノズル列が長くなることにより搬送ローラニップと上流側排紙ローラ22との距離が拡大するほど顕著になる。そのため、記録シートPの表面が記録ヘッドフェイス面や周辺のキャリッジの一部に接触し、記録シートPにインク汚れが付着してしまう。
【0007】
本発明の目的は、画像形成中の記録シート搬送において、記録シートの後端縁が搬送ローラニップを抜ける瞬間に浮き上がることでヘッドフェイス面に接触し、記録シート表面にインク汚れが付着するのを抑制するインクジェット記録装置を提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
搬送ローラと従動ピンチローラ対から成る上流側シート搬送手段と、前記上流側シート搬送手段の下流に配設され、インク吐出ノズル列配置面を含む記録ヘッドと、該記録ヘッドを支持しシート搬送方向とは直行する方向に往復走査を行うキャリッジから成り、シートにインクを吐出することで記録を行う記録手段と、前記搬送ローラと従動ピンチローラの接点より低く、かつ前記記録手段に対向する位置でシートの非記録面を支持するプラテンと、前記記録手段の下流に配設され、シートを搬送すると共に記録の終了したシートを装置外に排出する、排紙ローラと従動拍車対から成る下流側シート搬送手段と、シート後端が、前記上流側シート搬送手段を通過した直後の記録時には、前記上流側シート搬送手段を通過する直前の記録時よりも、前記インク吐出ノズル列の記録使用部分を搬送方向へシフトさせると共に、前記上流側シート搬送手段及び前記下流側シート搬送手段による搬送量を増大させる補正動作手段とを有するインクジェット記録装置において、前記補正手段によりシート後端が前記上流側シート搬送手段を通過する際のシート搬送駆動時には、前記記録ヘッドのインク吐出ノズル列配置面、及び前記キャリッジの一部であって前記記録ヘッドのインク吐出ノズル列配置面と略同一高さの部位が、シート側端縁の外側に位置するよう前記キャリッジを退避させていることを特徴とする。
【0009】
また、別の構成として、搬送ローラと従動ピンチローラ対から成る上流側シート搬送手段と、前記上流側シート搬送手段の下流に配設され、インク吐出ノズル列配置面を含む記録ヘッドと、該記録ヘッドを支持しシート搬送方向とは直行する方向に往復走査を行うキャリッジから成り、シートにインクを吐出することで記録を行う記録手段と、前記搬送ローラと従動ピンチローラの接点より低く、かつ前記記録手段に対向する位置でシートの非記録面を支持するプラテンと、前記記録手段の下流に配設され、シートを搬送すると共に記録の終了したシートを装置外に排出する、排紙ローラと従動拍車対から成る下流側シート搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、シート後端が前記上流側シート搬送手段を通過する前に一旦画像形成が完了し、シート後端が前記上流側シート搬送手段を通過するまでシートを搬送した後に、再度画像形成が開始する場合、シート後端が前記上流側シート搬送手段を通過するまでのシート搬送駆動時には、前記記録ヘッドのインク吐出ノズル列配置面、及び前記キャリッジの一部であって前記記録ヘッドのインク吐出ノズル列配置面と略同一高さの部位が、シート側端縁の外側に位置するよう前記キャリッジを退避させていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
記録シートの後端縁が搬送ローラニップを抜けるときに記録シート表面にインク汚れが付着するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態であるインクジェット記録装置の斜視図である。
【図2】インクジェット記録装置の側断面図である。
【図3】インクジェット記録装置の側断面を示す模式図である。
【図4】インクジェット記録装置のノズルシフトを説明する記録ヘッドフェイス面の模式図である。
【図5】インクジェット記録装置の記録ヘッドを搭載したキャリッジの下方斜視図である。
【図6】インクジェット記録装置の制御ブロック図。
【図7】インクジェット記録装置のノズルシフトを説明するフローチャートである。
【図8】インクジェット記録装置のノズルシフト時の記録ヘッドと記録シートの側端縁との位置関係を示す第1模式図である。
【図9】本発明の第2実施形態であるインクジェット記録装置における、記録シートへの印字画像を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
本発明の記録装置の第1実施形態について説明する。なお、本発明の第1実施形態であるインクジェット記録装置はPCプリンタのみならず、複写機、ファクシミリ機能等を有するマルチファンクションプリンタにも適用することができる。
【0013】
まず、装置全体の概略について説明する。図1は本発明の第1実施形態であるインクジェット記録装置の全体を示す斜視図、図2は側断面図である。
1はインクジェット記録装置である。給紙装置2の圧板3は、給紙装置枠体4に回転可能に支持され、その上面に記録シートの束が積載される。記録シートの給紙時には、駆動源である給紙モータ5によって給紙ローラ6が回転すると共に、圧板3が圧板ばね7により給紙ローラ6側に回転、記録シートの束が給紙ローラ6に圧接される。さらに給紙ローラ6が回転することで、記録シート束の最上面の記録シートのみが分離され、下流へ給送される。給紙装置2によって分離給送された記録シートは、給紙ローラ6のさらなる回転により搬送ローラ8へ給送される。ここで、給紙装置2により分離給送された記録シートの先端が、給紙ローラ6と搬送ローラ8の間に配置されたセンサレバー9を押すことでセンサレバー9を回動させ、さらにシートセンサ10からセンサレバー9が抜けることで記録シートの先端が検出される。また、記録シートの後端検出は、センサレバー9がシートセンサ10に入り込むことで行われる。
【0014】
ピンチローラ12はピンチローラシャフト25及びピンチローラホルダー26を介してピンチローラばね11によって搬送ローラ8に付勢されている。ピンチローラ12は搬送ローラ8の頂点(最も高い点)よりも搬送方向下流側において搬送ローラ8に接している。このようにピンチローラ12が搬送ローラ8の搬送方向下流側に偏った位置において搬送ローラ8に接していることにより記録シートはプラテン14に押しつけられながら搬送される。
【0015】
シートセンサ10によって記録シートの先端が検出されてから、給紙ローラ6によって記録シートは所定量搬送され、記録シート先端は搬送ローラ8とピンチローラ12の当接によって形成される搬送ローラニップに突き当たる。給紙ローラ6によってさらに搬送されることで、記録シートの先端部分が湾曲し、記録シートの先端は搬送ローラニップに押し付けられ斜行矯正動作が終了する。
【0016】
ここで、図3に示されるように、搬送ローラニップはプラテン14の上面より所定距離上方に位置し、かつピンチローラ12の中心を搬送ローラ8の回転中心を通る垂線より下流にオフセットさせている。すなわち、搬送ローラ8とピンチローラ12のニップにおける共通接線はプラテン14の上面に交わる。このような構成によって記録シートはプラテン14の上面に押し付けられ、記録ヘッド13の液体吐出口配列面28(図5)と記録シートとの間隔が一定に保たれる。
【0017】
レジスト動作終了後、記録シートは搬送ローラ8によってプラテン14上に搬送され、記録ヘッド13の液体吐出口配列面28と対向する位置に、プラテン14の上面によって保持される。搬送ローラ8は、駆動源である搬送モータ15によって、搬送ローラ用タイミングベルト16を介して回転される。
【0018】
次いで、プラテン14の上面に支持されている記録シートに、キャリッジ17に搭載された記録ヘッド13からインク滴を吐出しながらキャリッジ17が記録シートの搬送方向に対して交わる方向に走査することで印字が行われる。キャリッジ17は、ガイド軸18及びガイドレール19によって記録シートの搬送方向に対して直交する方向に走査可能に支持されており、キャリッジモータ20からの駆動によりキャリッジ用タイミングベルト21を介して駆動されている。
【0019】
また、記録ヘッド13は微細な液体吐出口(オリフィス)、液路及びこの液路の一部に設けられるエネルギー作用部と、エネルギー作用部にある液体に作用させる液滴形成エネルギーを発生するエネルギー発生手段を備えている。このようなエネルギーを発生するエネルギー発生手段としては、ピエゾ素子等の電気機械変換体を用いた記録方法、レーザ等の電磁波を照射して発熱させ、この発熱による作用で液滴を吐出させるエネルギー発生手段を用いた記録方法、あるいは、発熱抵抗体を有する発熱素子等の電気熱変換体によって液体を加熱して液体を吐出させるエネルギー発生手段を用いた記録方法等がある。
【0020】
その中でも、熱エネルギーによって液体を吐出させるインクジェット記録方法に用いられる記録ヘッドは、記録用の液滴を吐出して吐出用液滴を形成するための液体吐出口(オリフィス)を高密度に配列することができるために、高解像度の記録をすることが可能である。また、その中でも、電気熱変換体をエネルギー発生手段として用いた記録ヘッドは、コンパクト化も容易であり、かつ、最近の半導体分野における技術の進歩と信頼性の向上が著しいIC技術やマイクロ加工技術の長所を十分に活用でき、高密度実装化が容易で、製造コストも安価なことから有利である。
【0021】
そして、印字が進行し、記録シートの後端は、センサレバー9を通過し、搬送ローラニップに近づく。ここで、記録シートの後端が搬送ローラニップを抜ける際に、ピンチローラ12の付勢力によって搬送方向に押し出され、搬送ローラ8、上流排紙ローラ22や下流排紙ローラ23が、それらを駆動するギア列のバックラッシュ分多く回転し、記録シートが意図している所定の搬送量より多く搬送される場合がある。そのため、記録シートの後端が搬送ローラニップを抜けた瞬間に搬送が終了した場合は、ギア列のバックラッシュ分多く搬送された誤差を吸収することができず、搬送精度に大きな誤差が生じる。これを解消するため、ノズルシフトと呼ばれる制御を行う。
【0022】
図3(a)〜(c)は記録シートPの後端位置の違いによる記録シートPの紙浮きを示した図である。図4は上方より記録ヘッド13を透視した図で、27は複数のインク吐出ノズルによって形成されるインク吐出ノズル列である。図5は記録ヘッド13を搭載したキャリッジ17の下方斜視図で、28はインク吐出ノズル列27が形成された記録ヘッドフェイス面(液体吐出口配列面)である。29はインク吐出口配列面28と略同一の高さになるようにキャリッジ17に設けられた記録ヘッド保護部材である。図6はインクジェット記録装置の制御ブロック図、図7はノズルシフトを説明するフローチャートである。
【0023】
図6において、制御手段である制御基板301にはインクジェット記録装置の制御を司り、各種の制御指令を出すCPU310、制御データなどが書き込まれたROM311、記録データ等を展開する領域となるRAM312などが備えられている。
313は記録ヘッド13を駆動するヘッドドライバ、314はキャリッジモータ20、給紙モータ5、搬送モータ15をそれぞれ駆動するための複数のモータドライバである。317はコンピュータ、デジタルカメラ等のホスト装置400とのデータの送受信を行うインターフェースである。
【0024】
次に動作を説明する。
記録シートPの後端が、センサレバー9を抜けシートセンサ10により検出されるまでは、インク吐出ノズル列27のN領域にある吐出口全てを使用してnパスの複数パス記録を行う。この時の記録シートPは図3(a)に示すように、ピンチローラ12のオフセットにより、プラテン14の上面に押し付けられているため、プラテン14上面から浮き上がっていない。ついで図7のステップC21にてシートセンサ10により記録シートの後端が検出された後、記録シートの後端が搬送ローラニップを抜ける前に、印字に使用する吐出口をインク吐出ノズル列27のN領域からS1領域に縮小する(ステップC22、ステップC23)。そして、記録シートPの後端が搬送ローラニップを抜ける搬送の直前に行われる記録のためのキャリッジ17の走査終了後はインク吐出終了位置に関わらず、キャリッジを図8に示す位置に停止させる。図8に示されたキャリッジ17の停止位置では、記録ヘッドの液体吐出口配列面28及び略同一の高さ面である記録ヘッド保護部材29が、記録シートPの側端部より外側に位置している(ステップC24)。次に、キャリッジ17をこの位置に停止させたまま、ギア列のバックラッシュ分多く搬送された誤差を十分吸収するため、S1領域の吐出口によるnパスの記録時の搬送量S1/nに(N領域長さ−S1領域長さ)分を加えた搬送を行う(ステップC25)。
【0025】
これにより、図3(b)で示すように記録シートPの後端縁が搬送ローラニップを抜けた瞬間、記録シートPの後端付近がプラテン14上面から浮き上がっても、インクミストで汚れた記録ヘッドフェイス面28や記録ヘッド保護部材29は、記録シートPの上方には存在しない。よって、記録ヘッドフェイス面28や記録ヘッド保護部材29は、記録シートPの表面に接触せず、記録ヘッドフェイス面28や記録ヘッド保護部材29に付着しているインクミストが記録シートPの表面に転写することはない。また、記録シートPの後端が搬送ローラニップを抜ける搬送終了時には、記録シートPの後端縁は図3(c)で示すように、搬送ローラ8の略頂点から記録シート搬送方向に離間した位置にある。そのため、記録シートPの後端付近はプラテン14上面からあまり浮き上がっておらず、次のキャリッジ17の走査において、記録ヘッドフェイス面28や記録ヘッド保護部材29が記録シートPの表面に接触する可能性は低い。
さらに、キャリッジ17の停止位置を、インク吐出終了位置に関わらず、記録ヘッドフェイス面28及び記録ヘッド保護部材29が、記録シートPの側端部より外側とする動作を、記録シートの後端が搬送ローラニップを抜ける搬送が行われる直前のみに限定することで、印字時間の延長も最小限に抑えることができる。
ついで、記録シートの搬送量のみ(N領域長さ−S1領域長さ)分を加えた搬送を行うと、印字に使用しているインク吐出ノズル列27と、既に印字が行われた部分に搬送方向のずれが生じるため、同時に印字に使用するインク吐出ノズル列27をS2領域に遷移する(ステップC26)。
最後に、印字が終了した記録シートは、下流側排紙ローラ23及び上流側排紙ローラ22と、コイルばねを棒状に設けた拍車ばね31によって拍車ホルダー32に回転可能に支持されていると共に、下流側排紙ローラ23及び上流側排紙ローラ22に付勢されている拍車34によって、排紙トレイ24上に排出される。ここで、下流側排紙ローラ23及び上流側排紙ローラ22は、ギア列等により搬送ローラ8から駆動力を伝達される。また、インクジェット記録装置1の小型化のために薄型化された拍車ホルダー32の反りを抑えるため、金属製の補強板27が設けられている。
【0026】
以上の構成及び作用により、画像形成中の記録シート搬送において、記録シートの後端縁が搬送ローラニップを抜ける瞬間に浮き上がることで記録ヘッドフェイス面に接触し、記録シート表面にインク汚れが付着するのを抑制するインクジェット記録装置を安価で装置サイズを大きくすること無く提供することが可能となる。
【0027】
(第2実施形態)
印字終了後に図9の記録シートPに示すような画像が印字される場合、記録シートPの後端縁が搬送ローラニップを抜ける前に、記録シートPへの画像Aの印字が完了する。その後、記録シートPの後端縁が、搬送ローラニップを抜けるまで、ノズルシフトではなく、画像無し部をスキップする長い紙搬送が行われ、再度画像Bの印字が開始される。この場合、画像Aの印字が完了した後のキャリッジ17の停止位置を、インク吐出終了位置に関わらず、記録ヘッドフェイス面28及び略同一の高さ面である記録ヘッド保護部材29が、記録シートPの側端部より外側とする。
【0028】
これにより、画像Aの印字完了位置から画像Bの印字開始位置までの長い紙搬送が行われ、その途中、記録シートPの後端縁が搬送ローラニップを抜けた瞬間、記録シートPの後端付近がプラテン14上面から浮き上がっても、インクミストで汚れた記録ヘッドフェイス面28や記録ヘッド保護部材29は、記録シートP上には存在しない。そのため、記録シートPの表面に接触することはなく、記録ヘッドフェイス面28や記録ヘッド保護部材29に付着しているインクミストが記録シートPの表面に転写することはない。
【符号の説明】
【0029】
1 インクジェット記録装置
8 搬送ローラ
9 センサレバー
10 シートセンサ
12 ピンチローラ
13 記録ヘッド
14 プラテン
15 搬送モータ
17 キャリッジ
20 キャリッジモータ
21 キャリッジ用タイミングベルト
22 上流側排紙ローラ
23 下流側排紙ローラ
27 インク吐出ノズル列
28 記録ヘッドフェイス面
29 記録ヘッド保護部材
34 拍車
P 記録シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ローラとピンチローラを有する上流側シート搬送手段と、
前記上流側シート搬送手段の下流に配設され、液体を吐出する吐出口が配列された液体吐出口配列面を有する記録ヘッドと、
該記録ヘッドを支持しシート搬送方向とは交わる方向に往復走査を行うキャリッジと、
前記記録ヘッドに対向する位置でシートを支持するプラテンと、
前記キャリッジの下流に配設され、シートを搬送する下流側シート搬送手段と、を有し、前記ピンチローラは前記搬送ローラの搬送方向下流側に偏った位置において前記搬送ローラに接しているインクジェット記録装置において、
シート後端が前記搬送ローラと前記ピンチローラのニップを通過する際のシート搬送時には、前記記録ヘッドのインク吐出口列配置面がシート側端縁の外側に位置するように前記キャリッジを移動させる制御手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、シート後端が前記上流側シート搬送手段を通過する際のシート搬送駆動時には、前記記録ヘッドのインク吐出口列配置面、及び前記キャリッジの一部であって前記記録ヘッドのインク吐出口列配置面と略同一高さの部位がシート側端縁の外側に位置するよう前記キャリッジを移動させる制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記プラテンは前記搬送ローラとピンチローラの接点より低い位置に配置されている請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御手段は、シート後端が、前記搬送ローラと従動ピンチローラの接点を通過した直後の記録のためのキャリッジの走査時には、シート後端が前記接点を通過する直前の記録時よりも、前記インク吐出口の記録使用部分を搬送方向へシフトさせると共に、前記上流側シート搬送手段及び前記下流側シート搬送手段による搬送量を増大させる請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
搬送ローラとピンチローラを有する上流側シート搬送手段と、
前記上流側シート搬送手段の下流に配設され、液体を吐出する吐出口が配列された液体吐出口配列面を有する記録ヘッドと、
該記録ヘッドを支持しシート搬送方向とは交わる方向に往復走査を行うキャリッジと、
前記記録ヘッドに対向する位置でシートを支持するプラテンと、
前記キャリッジの下流に配設され、シートを搬送する下流側シート搬送手段と、を有し、前記ピンチローラは前記搬送ローラの搬送方向下流側に偏った位置において前記搬送ローラに接しているインクジェット記録装置において、
前記搬送ローラと従動ピンチローラの接点より低く、かつ前記記録手段に対向する位置でシートの非記録面を支持するプラテンと、 前記記録手段の下流に配設され、シートを搬送すると共に記録の終了したシートを装置外に排出する、排紙ローラと従動拍車対から成る下流側シート搬送手段と、
を有するインクジェット記録装置において、
シート後端が前記搬送ローラと前記ピンチローラのニップを通過する前に一旦画像形成が完了し、シート後端が前記搬送ローラと前記ピンチローラのニップを通過するまでシートを搬送した後に、再度画像形成が開始する場合、シート後端が前記搬送ローラと前記ピンチローラのニップを通過するまでのシート搬送時には、前記記録ヘッドの液体吐出口列配置面がシート側端縁の外側に位置するよう前記キャリッジを移動させる制御手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、シート後端が前記上流側シート搬送手段を通過する際のシート搬送駆動時には、前記記録ヘッドのインク吐出口列配置面、及び前記キャリッジの一部であって前記記録ヘッドのインク吐出口列配置面と略同一高さの部位がシート側端縁の外側に位置するよう前記キャリッジを移動させる制御手段を有することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−45846(P2012−45846A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191202(P2010−191202)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】