インクジェット記録装置
【課題】記録の際の条件に応じてシート上のインクの乾燥及び定着を行うのにより適した熱量を付与するインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、吐出されたインクの加熱を行うための加熱手段を有している。また、インクジェット記録装置は、記録を行うインクの種類を取得する第1取得手段と、記録データから記録すべき記録画像における記録デューティを取得する第2取得手段とを有している。また、インクジェット記録装置は、第1取得手段によって取得されたインク種類と、第2取得手段によって取得された記録デューティとに基づいて、シートに着弾したインクが加熱される時間の調節を行う調整手段とを有している。
【解決手段】インクジェット記録装置は、吐出されたインクの加熱を行うための加熱手段を有している。また、インクジェット記録装置は、記録を行うインクの種類を取得する第1取得手段と、記録データから記録すべき記録画像における記録デューティを取得する第2取得手段とを有している。また、インクジェット記録装置は、第1取得手段によって取得されたインク種類と、第2取得手段によって取得された記録デューティとに基づいて、シートに着弾したインクが加熱される時間の調節を行う調整手段とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着弾したインクを加熱する加熱手段を有するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置においては、従来、記録の行われたシートを加熱し、シート上に吐出されたインクの乾燥及び定着を行う形式のものがある。そのようなインクジェット記録装置で記録の行われたシートへの加熱が行われる場合に、インクの乾燥及び定着を行わせるのに必要とされる熱量が、シート内で一定でないことがある。このように、インクの乾燥及び定着を行うのに必要とされる熱量がシート内で一定でない場合において、必要とされる熱量に応じてシートを加熱する際の熱量を調節するインクジェット記録装置について、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1には、シートへのインク吐出量によって必要な熱量が異なるため、1ライン中の記録データの黒色部の数量をカウントし、そのカウント値に応じてヒータの設定温度を調節するインクジェット記録装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−142319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シートへのインクの吐出量以外にも、記録の際にシート上のインクの乾燥及び定着を行うのに必要とされる熱量を変化させる要素がある。シートへのインクの吐出量以外の要素によってインクの乾燥及び定着を行うのに必要とされる熱量が異なる場合には、特許文献1に開示されている記録装置のように、インクの吐出量でヒータの設定温度を調節するだけでは不十分であることがある。
【0005】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、記録の際の条件に応じてシート上のインクの乾燥及び定着を行うのにより適した熱量を付与するインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェット記録装置は、シートの搬送と、記録ヘッドを移動させながら複数の吐出口からシートにインクを吐出する記録とを交互に行って画像を形成するインクジェット記録装置であって、シートに着弾したインクの加熱を行う加熱手段と、記録を行うインクの種類に関する情報を取得する第1取得手段と、記録すべき記録画像における記録デューティに関する情報を取得する第2取得手段と、前記第1取得手段によって取得されたインク種類と、前記第2取得手段によって取得された記録デューティとに基づいて、前記シートに着弾したインクが前記加熱手段によって加熱される時間の調節を行う調整手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シート上のインクの乾燥及び定着を行うのに、より適した熱量をインクに付与するので、シートの全体に亘って過度に加熱することを抑えつつ、十分に加熱することができ、記録画像の品質を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一実施形態に係るインクジェット記録装置を模式的に示した平面図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置におけるヒータによる加熱領域の周辺について拡大して模式的に示した断面図である。
【図3】図1のインクジェット記録装置における制御系のブロック図である。
【図4】図1のインクジェット記録装置によって記録された際に、記録されたインク滴への加熱において加熱温度と加熱時間との関係についてインクごとに示したグラフである。
【図5】図1のインクジェット記録装置によって記録された際に、インクの打ち込み量と、インクに必要とされる加熱量との間の関係について示したグラフである。
【図6】図1のインクジェット記録装置によってブラックインクを用いて記録が行われた際に、記録ヘッド内部で、設定された記録モードごとの使用される吐出口の領域について示した説明図である。
【図7】図1のインクジェット記録装置によってブラックインクを用いて記録が行われるときに、記録デューティに応じて記録に適した記録モードを設定する際の制御フローについて示したフローチャートである。
【図8】図1のインクジェット記録装置によってシアンインクを用いて記録が行われた際に、記録ヘッド内部で、設定された記録モードごとの使用される吐出口の領域について示した説明図である。
【図9】図1のインクジェット記録装置によってシアンインクを用いて記録が行われるときに、記録デューティに応じて記録に適した記録モードを設定する際の制御フローについて示したフローチャートである。
【図10】図1のインクジェット記録装置によって記録が行われる際の、各種のデータの流れについて示したブロック図である。
【図11】図1のインクジェット記録装置によって4パス記録によって記録が行われる際の、各パスごとの記録データの全体に対して、それぞれの領域における記録ヘッド内部でのインク吐出を行う吐出口の占める割合について示した説明図である。
【図12】図11(b)のマスクデータが設定された際に、実際にシートへインク打ち込みが行われるときの記録ヘッド内での位置ごとのインク打ち込み量について示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1に、本発明の適用されるインクジェット記録装置100の概略構成を説明するための模式的な平面図を示す。なお、ここに示すインクジェット記録装置100は、インク滴を吐出可能な記録ヘッド101をシートの搬送方向と交差する方向に移動させて記録を行ういわゆるシリアル型のインクジェット記録装置100となっている。インクジェット記録装置100は、シートの搬送を行う搬送動作と、シートの搬送方向に沿って複数形成された吐出口からシートにインクを吐出する記録動作とを交互に行うことで記録を行う。また、本実施形態では、インクジェット記録装置は、記録ヘッド101が走査を行いながらシートにインクを吐出して記録を行うと共に、記録ヘッドが同一領域を複数回走査することで記録を行うマルチパス方式によって記録を行う。
【0011】
図1において、記録ヘッド101は、供給されるインクを複数の吐出口から吐出可能なインクジェット記録ヘッドである。記録ヘッド101は、キャリッジ7に交換可能に搭載されている。キャリッジ7には、不図示のコネクタを介して記録ヘッド101に駆動信号等を伝達するためのコネクタホルダ(電気接続部)が設けられている。キャリッジ7は、シートを搬送する副走査方向と直交した主走査方向(矢印A方向)に延びて記録装置本体に配置されたガイドシャフト9に沿って往復走査を行うことが可能なように、ガイドシャフト9によって貫通されながら支持されている。主走査モータ104により回転駆動されるモータプーリ105と従動プーリ106との間には、キャリッジ102に連結されたタイミングベルト107が架け渡されている。キャリッジ102は、これらの主走査モータ104、プーリ105、106、タイミングベルト107などによって構成された駆動機構によって主走査方向に移動される。
【0012】
プリント用紙等のシート108は、ギアを介して給紙モータ115によってピックアップローラ113が回転されることにより、オートシートフィーダ(ASF)114から一枚ずつ分離されて給紙される。シート108は、そこから搬送ローラ109の回転により矢印Bの副走査方向に搬送されて、記録ヘッド101における吐出口の形成面(吐出口面)と対向する位置(記録部)を通る。搬送ローラ109は、ギアを介して搬送モータ116により回転駆動される。なお、シート108は、記録部において平坦な記録面を形成するように、その裏面がプラテン(不図示)により支持される。
【0013】
上記構成を有するインクジェット記録装置100では、記録ヘッド101がキャリッジ7に搭載された状態でキャリッジ7が図1の矢印A方向に走査しつつ記録ヘッド101からインクが吐出されることで記録が行われる。また、記録ヘッド101の各走査の間に、シートの搬送動作が行われる。
【0014】
また、インクジェット記録装置100は、吐出されたインクの加熱を行うためのヒータ(加熱手段)121を有している。ヒータ121によって記録の行われたシートを加熱することで、シート上におけるインクの乾燥及び定着を促進させることができる。
【0015】
図2は、インクジェット記録装置におけるヒータ121の周辺についての配置を示す模式的な断面図である。加熱手段としてのヒータ121は、輻射熱を反射させるための反射板122によって、その上方が覆われている。ヒータ121から発せられた熱は、反射板122によって一旦反射し、シートが均一に加熱されるようにシートへ向けて発せられる。ヒータ121によってシートに向けて熱が発せられることで、シート上には、インクを加熱するための加熱領域120が形成されている。本実施形態では、記録ヘッド101は、シート上でヒータ121によるインクの加熱の行われる加熱領域120の内部にインクを吐出する。
【0016】
ヒータ121によって加熱される際の、ヒータ121によるシート上のインクに与えられる熱量は、加熱の際の加熱温度と加熱される間の時間の積によって決定される。
【0017】
図2に示されるヒータ121によってシートが加熱されると、シートは全体に亘って一様に加熱される。しかしながら、例えば、インクジェット記録装置100が特性の異なる複数種類のインクを用いて記録を行う場合には、シート上のインクの乾燥、定着を行うのに必要とされる加熱量は、インクの種類ごとに異なる。また、シート内で記録位置ごとに記録デューティが異なる場合には、シート上のインクの乾燥、定着を行うのに必要とされる加熱量は、記録デューティによっても異なる。このように、吐出されるインク滴の条件が異なることにより、シート上のインクが必要とする加熱量がインク滴ごとに異なる場合がある。
【0018】
ところが、仮にシート上のインクへのヒータ121による加熱量が一定である場合には、シート上でインクの乾燥、定着を行うのに必要とされる加熱量が位置ごとに異なるにも関わらず、一様の加熱量によって加熱が行われることになる。これにより、一部のインクに対しては過度に加熱が行われたり、一部のインクに対しては加熱量が不足したりする場合がある。インクの乾燥・定着の後に、シート上のインクに与える熱量が過度に多すぎると、シートに着弾したインクが白濁してしまう可能性がある。また、シート上のインク滴へ与える熱量が少なすぎると、インク滴のシートへの定着が不十分のまま出力される可能性がある。記録後のインク滴が定着しない状態では、シートの記録面に対する擦れがあったときに、その擦れが記録画像を汚してしまい、記録画像の品質を低下させてしまう可能性がある。このように、シート上でのインク滴における耐擦過性が低下してしまうことがある。このため、本実施形態では、吐出口列内での吐出口の位置によって加熱される時間が異なるのを利用し、吐出されるインクの種類、記録デューティに応じて加熱される時間が調節される。
【0019】
本実施形態におけるヒータ121によるシートの加熱領域は、約60mmである。シートは、搬送されながら、加熱領域の内部に位置する部分について、ヒータ121によって加熱される。そのため、記録ヘッドにおけるシートの搬送方向上流側の端部付近から吐出されたインクは、シートに着弾した後に、約60mmの加熱領域の全体に亘って加熱される。すなわち、約60mmの加熱領域を搬送される間に、インク滴の加熱が行われるインク滴が約60mmの加熱領域の全体に亘って加熱される場合には、約30秒の間インク滴が加熱される。一方、記録ヘッド101のa領域(下流側)の端部付近で吐出されたインクがシートに着弾した後に、着弾したインク滴が通過する加熱領域は約40mmである。記録ヘッドにおけるシートの搬送方向下流側の端部付近から吐出されたインクは、シートに着弾した後に、約40mm分の搬送の際に加熱領域内部に位置することになる。従って、記録ヘッド101におけるシートの搬送方向下流側の端部付近から吐出されたインクは、シートに着弾した後に、約40mmの加熱領域内に亘って加熱される。インク滴がシートに着弾した後に40mmの加熱領域に亘って加熱される場合には、約20秒の間インク滴が加熱される。すなわち、約40mmの加熱領域を搬送される間に、インク滴の加熱が行われる。ここでは、シート108は図2の矢印123に示される方向に搬送されるため、記録ヘッド101のa領域はシートの下流側、d領域はシートの上流側とも言うものとする。
【0020】
このように、記録ヘッド101のd領域の上流側端部付近から吐出されたインクが通過する加熱領域は約60mmで、記録ヘッド101のa領域の下流側端部付近から吐出されたインクが通過する加熱領域は40mmである。記録ヘッドの吐出する位置により、シートに吐出された直後のインクが加熱領域を通過し終わるまで加熱される加熱領域には1.5倍程度の差がある。シートにおける単位時間当たりの搬送量が一定である場合には、全加熱領域に対して同条件で加熱できたとすれば1.5倍程度の熱量差を与えることが可能である。
【0021】
本実施形態では、ヒータ121による加熱領域内にある記録ヘッド101を不必要に加熱しないようにするために、記録ヘッド101には、ヒータ121側の一部が断熱材103によって覆われている。
【0022】
図3は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。図3において、記録装置の各部の動作は、ROM201内に格納された制御プログラム及びRAM202に格納された種々のデータなどに基づいてCPU200により制御される。すなわち、CPU200には、記録ヘッド101に設けられた記録素子を駆動させるヘッド駆動回路203、主走査モータ104を駆動する主走査モータ駆動回路204、搬送モータ42を駆動させる搬送モータ駆動回路205などが接続されている。また、ヒータ121の駆動を行うための駆動源であるヒータ駆動回路208がCPU200に接続されている。
【0023】
以下、インク滴が着弾した後に必要とされる加熱量が異なる複数のインク滴が記録ヘッドから吐出されるインクジェット記録装置による記録について説明する。
【0024】
本実施形態では、ブラックのインクBと、シアンのインクCとを吐出可能な記録ヘッドによって記録が行われている。インクBは、シートに着弾した後に比較的高い熱量を加熱されることでシートに定着し、インクCは、比較的低い熱量の加熱によってシートに定着される。そのため、第1取得手段によって記録を行うインクの種類に関する情報が取得される。本実施形態では、CPU200が第1取得手段として機能する。なお、記録の行われるインクの種類は、ユーザーによって取得されても良く、ユーザーが第1取得手段として機能しても良い。
【0025】
本実施形態では、シート上に着弾したインク滴の定着及び乾燥が行われる際には、シート上の加熱領域120内で、60℃の温度が保たれるようにヒータ121による加熱が行われている。また、本実施形態のインクB及びインクCは、記録される際のシート上での記録デューティによって、シートへの定着、乾燥に必要とされる熱量が異なる。従って、第2取得手段によって、記録すべき記録画像の記録データから記録すべき記録画像における記録デューティに関する情報が取得される。本実施形態では、CPU200が第2取得手段として機能する。ここで、記録デューティは、単位面積当たりの記録領域に占めるドット数の割合のことを言うものとする。
【0026】
図4は、インク毎の加熱時間と加熱の際の温度から構成されるシートへの定着及び乾燥に必要とされる熱量を、記録デューティごとに示した図である。比較的高い熱量で定着するインクBが、比較的高い記録デューティの打ち込み量によって記録される場合にインクの定着、乾燥に必要とされる熱量は、プロット210によって表される。比較的低い熱量で定着可能なインクCが、比較的低い記録デューティの打ち込み量によって記録される場合に、インクの定着、乾燥に必要とされる熱量はプロット211によって表される。また比較的低い熱量で定着可能なインクCが比較的高いデューティの打ち込み量によって記録される場合にインクの定着、乾燥に必要とされる熱量は、212に示される。比較的高い熱量が必要なインクBが比較的低いデューティの打ち込み量によって記録される場合にインクの定着、乾燥に必要とされる熱量は、213に示される。
【0027】
図5は、さらに別の表し方によって打ち込み量とインクの種類によって異なるインクの定着、乾燥に必要とされる熱量について示した図である。図5には、縦軸にインク打ち込み量を取り、横軸にインクごとに加熱に必要とされる熱量を取って示したグラフが示されている。シートへの定着及び乾燥に比較的高い熱量が必要とされるインクBでは、インクの打ち込み量によって定着及び乾燥に必要とされる熱量が異なる。本実施形態では、インクBで加熱の際に必要とされる加熱量は、エリア501の範囲内で変動する。同様に、シートへの定着及び乾燥に比較的低い熱量が必要とされるインクCでは、インクの打ち込み量によって定着及び乾燥に必要とされる熱量が異なる。インクCで加熱の際に必要とされる加熱量は、エリア503の範囲内で変動する。
【0028】
本実施形態では、複数種類のインクのうち、インクBがインクの定着及び乾燥に必要とされる熱量の最も高いインクであり、インクCがインクの定着及び乾燥に必要とされる熱量の最も低いインクである。そのため、インクB、インクC以外の種類のインクでは、インクの定着及び乾燥に必要とされる熱量は、インクBとインクCとの間にある。そのため、他の種類のインクについては、インクの加熱に必要とされる熱量は、図5のエリア501とエリア503の間の位置に収まっている。
【0029】
図6は、インクの定着、乾燥に比較的高い熱量が必要とされるインクBを用いて記録する際の記録ヘッドの使用領域について説明するための図である。記録ヘッド101に形成されている吐出口は、説明のために、記録ヘッド内で吐出口の形成されている位置によって、シートの搬送方向に沿って上流側から下流側に、上流エリア(a)、中流エリア(b)、下流エリア(c)に分けられている。図6では、4パス記録が行われる記録ヘッドについて示されている。領域(a)及び領域(c)は、4パス記録が行われる際の、1スキャンで記録に使用される吐出口が占める領域に相当する。領域(b)は、2スキャンで記録に使用される吐出口が占める領域に相当する。
【0030】
また、比較的高い熱量が必要とされるインクBで比較的高デューティに記録が行われる場合には、加熱によって大きな熱量が必要とされる。そのため、本実施形態では、シート上でインクの加熱による加熱量を多くするために、図6の記録ヘッド301におけるシートの搬送方向上流側のエリア(a)のみが用いられて記録が行われる。記録ヘッドにおける上流側でシートに打ち込まれたインク滴は、比較的長い期間に亘って加熱領域の内部を通過する。そのため、記録ヘッドにおける上流側で打ち込まれたインク滴は、加熱領域の内部での加熱による熱量が大きくなる。このことにより、インクBによって高デューティ記録が行われることで多くの加熱による熱量を必要とする領域に対して、大きな熱量による加熱が行われることになる。
【0031】
また、インクBが低デューティによって記録が行われる場合には、記録ヘッド303に示されるように、記録ヘッドの領域(a)、領域(b)、領域(c)の全領域を使用して記録が行われる。記録ヘッドの全領域によって記録を行うことができるので、記録におけるスループットを向上させることができる。
【0032】
また、記録デューティが比較的高デューティである場合でも比較的低デューティである場合でもない場合には、記録ヘッド302に示すように上流側(a)、中流側(b)の領域を使用して記録が行われる。Bインクが、ある程度の高い熱量による加熱を必要としているので、本実施形態では高デューティでも低デューティでもない記録デューティによって記録が行われる場合には、上流側(a)、中流側(b)のみの領域を使用して記録が行われる。
【0033】
図7に、インクのシートへの定着及び乾燥に高い熱量が必要とされるインクBを用いて、本実施形態の加熱熱量制御によって記録が行われる際の、記録ヘッドにおける使用領域の決定を行うためのフローチャートを示す。まず、1スキャン分の記録データが読み込まれる(S601)。それから、本実施形態の加熱熱量制御を行うように設定されているかどうかを判定する(S602)。加熱熱量制御を行うように設定されていない場合には、通常記録モードによって記録が行われる(S609)。本実施形態の加熱熱量制御が行われるように設定されている場合には、インクの定着、乾燥に比較的高い熱量が必要とされるインクBによる記録における記録デューティの計算が行われる(S603)。
【0034】
記録デューティの計算によって得られた記録デューティ値が予め定められている高デューティ閾値より高いかを判定し(S604)、高い場合には高い熱量による加熱の行われる高温定着高デューティ記録モードが設定される(S605)。ここで、高デューティ閾値は、インクのシートへの定着及び乾燥に高い熱量が必要とされるインクBによって記録が行われる際に、高温定着高デューティ記録モードが設定されるかどうかの、記録デューティの閾値とする。記録が行われる際の記録デューティが高デューティ閾値よりも高ければ、高温定着高デューティ記録モードが設定される。この高温定着高デューティ記録モードが設定されたときの使用される吐出口については、図6の記録ヘッド301に示される。
【0035】
また、S603の記録デューティの算出で、記録デューティが低デューティ閾値よりも低かった場合には、高温定着低デューティ記録モードが設定される(S607)。高温定着低デューティ記録モードが設定されたときの使用される吐出口については、図6の記録ヘッド303に示される。ここで、低デューティ閾値は、インクのシートへの定着及び乾燥に高い熱量が必要とされるインクBによって記録が行われる際に、高温定着低デューティ記録モードが設定されるかどうかの、記録デューティの閾値とする。記録が行われる際の記録デューティが低デューティ閾値よりも低ければ、高温定着低デューティ記録モードが設定される。
【0036】
記録デューティが、低デューティ閾値以上、高デューティ閾値以下である場合には、高温定着インク通常記録モードが設定される(S608)。高温定着インク通常モードが設定されたときに使用される吐出口については、図6の記録ヘッド302に示される。すなわち、記録ヘッド302の上流側(a)、中流側(b)の領域を使用して記録が行われる。
【0037】
図8は、インクの定着、乾燥に比較的低い熱量が用いられるインクCを用いて記録する際の記録ヘッドの使用領域について説明するための図である。図6で説明したインクBを用いる記録と同様に、記録の際に用いられる吐出口について、便宜上、記録ヘッド内の位置によって上流エリア(a)、中流エリア(b)、下流エリア(c)に分けられている。図8においても、4パス記録が行われる記録ヘッドについて示されている。上流の端部領域である上流エリア(a)及び下流の端部領域である下流エリア(c)は、1スキャンで記録に使用される吐出口が占める領域に相当する。また、上流エリア(a)、下流エリア(c)以外の領域である中流エリア(b)は、2スキャンで記録に使用される吐出口が占める領域に相当する。
【0038】
低い熱量でシートへ定着可能なインクCによって記録が行われ、そのときの記録が、予め定められた所定の打ち込み量以下の低デューティによる記録である場合には、図8の記録ヘッド401に示されるように、下流側エリア(c)のみを使用して記録が行われる。このことにより、シートに着弾した後のインク滴が加熱領域を通過する際の通過時間を短くし、加熱によりシートに与えられる熱量を低くすることができる。ここでインクの定着、乾燥に比較的低い熱量による加熱が用いられるインクCが低デューティ記録によって記録される場合におけるインク打ち込み量と熱量の関係は、図5のエリア504の領域に該当する。
【0039】
また、インクCがある一定以上の高デューティによって記録される場合には、図8の記録ヘッド403に示されるように、領域(a)、(b)、(c)の全領域を使用して記録が行われる。これにより、記録ヘッドの全領域によって記録を行うことができるので、記録におけるスループットを向上させることができる。その他の条件の場合は、記録ヘッド402に示されるように記録ヘッドの中流側(b)、下流側(c)の領域を使用して記録が行われる。
【0040】
図9に、インクのシートへの定着及び乾燥に比較的低い熱量が必要とされるインクCによって記録が行われる際に、加熱量制御によって記録が行われる際の、記録ヘッドの使用領域の決定を行うためのフローチャートを示す。
【0041】
まず、1スキャン分のデータが読み込まれる(S701)。それから、本実施形態の加熱熱量制御が行われるように設定されているかどうかが判定される(S702)。加熱量制御を行うように設定されていない場合には、通常記録モードによって記録が行われる(S709)。このときに使用される吐出口の領域について図8の記録ヘッド403に示す。
【0042】
加熱量制御が行われるように設定されている場合には、インクCについての記録デューティの計算が行われる(S703)。記録デューティの計算によって得られた記録デューティ値が予め定められている低デューティ閾値よりも低いかどうかが判定され(S704)、低い場合には低温定着低デューティ記録モードが設定される(S705)。この低温定着低デューティ記録モードが設定されたときに使用される吐出口については、図8の記録ヘッド401に示される。
【0043】
記録デューティの計算によって得られた記録デューティ値が予め定められている高デューティ閾値よりも高かった場合には、低温定着インク高デューティ記録モードが設定される(S705)。この低温定着高デューティ記録モードが設定されたときに使用される吐出口の領域については、図8の記録ヘッド403に示される。記録デューティの計算によって得られた記録デューティ値が、低デューティ閾値以上、高デューティ閾値以下である場合には、低温定着インク通常記録モードに設定する(S708)。この低温定着インク通常モードが設定されたときに使用される吐出口については、図8の記録ヘッド402に示される。すなわち、記録ヘッド402の上流側(a)、中流側(b)の領域を使用して記録が行われる。
【0044】
なお、定着に高熱量の加熱を必要とするインクB及び低熱量による加熱で定着するインクC以外の色によって記録が行われる場合には、図6の記録ヘッド304に示されるように、常に全領域(a)、(b)、(c)の吐出口が使用されて記録が行われる。これにより、記録ヘッドの全領域によって記録を行うことができるので、記録におけるスループットを向上させることができる。
【0045】
このように、インクの種類及び記録すべき記録画像の記録デューティに関する情報が取得され、これらのインク種類及び記録デューティに応じて、記録ヘッドにおけるインク吐出の行われる吐出口の位置が決定され、シートに着弾したインクの加熱される時間が調節される。すなわち、取得されたインク種類と、取得された記録デューティとに基づいて、シートに着弾したインクがヒータ121によって加熱される時間の調節が行われる。本実施形態では、CPU200が、ヒータ121によってインクを加熱する時間の調節を行う調整手段として機能する。
【0046】
本実施形態では、記録ヘッドによって加熱領域120の内部にインクが吐出されているので、加熱領域120の内部におけるシート上でのインクの吐出される位置を決定することで、ヒータ121によって加熱される時間の調節を行うことができる。シート上でのインクの吐出された位置が、加熱領域120内部の上流側である程、シートが搬送される際にインク滴が加熱領域内部に留まる時間が長くなる。一方、シート上でのインクの吐出された位置が、加熱領域120内部の下流側である程、インク滴が加熱領域120内部に留まる時間は短くなる。このように、加熱領域120内部でインクの吐出される位置を調節することで、加熱時間を調節することができる。
【0047】
シート上でのインクの吐出される位置は、記録ヘッド内の複数の吐出口のうちの、インクの吐出を行う吐出口を決定することによって、決定を行うことができる。特に本実施形態では、記録ヘッドに形成された複数の吐出口が、領域ごとに複数の吐出口群に区分けされ、複数の吐出口群のうち、インクの吐出を行う吐出口群を決定することで、加熱領域120の内部におけるインクの吐出される位置の決定を行っている。
【0048】
具体的には、インクの種類に基づき、大きな加熱量を必要とするインクを用いて記録を行うときには、小さな加熱量で済むインクを用いて記録が行われるときよりも、上流側の位置からより多くのインクが吐出されるように、インクの吐出される位置が決定される。また、記録デューティの高い記録が行われるときには、記録デューティの低い記録が行われるときよりも、上流側の位置からより多くのインクが吐出されるように、インクの吐出される位置が決定される。
【0049】
次に図10を用いて、定着熱量制御時のデータ生成について説明する。まず、各種設定情報805から設定記録モード、インク別定着温度情報が読み出される。また、各種検出情報806から周囲温度(定着温度)が読み出される。これらの読み出された情報に基づいて、CPU200によって記録条件に適したマスクデータが選択される。記録条件に適したマスクデータが選択されると、選択されたマスクデータと記録すべきイメージデータ802との間の論理積を取る(803)ことで、吐出データ804が生成される。生成された吐出データ804によってヘッド駆動回路203が駆動され、記録ヘッドによってインク滴の吐出が行われて記録が行われる。
【0050】
次に、図11、図12を用いて、上述のように、記録ヘッド101における吐出口の位置を変化させた場合のマスクデータについて説明する。図11には、4パス記録によって記録が行われる場合の、それぞれのパスにおける、記録ヘッド101の内部でのインクの吐出を行う吐出口の割合を、記録ヘッドを4つに分割した領域ごとに示した分布図が示されている。図11に示されるように、本実施形態では複数回の走査のそれぞれでインク吐出の行われる吐出口が間引かれ、同一位置で記録ヘッド101が複数回の走査を行うことで記録が行われる。そして、複数回の走査におけるそれぞれの走査で、記録ヘッド101における複数の吐出口からマスクパターンによってインク吐出を行う吐出口が決定される。
【0051】
ここでは、記録ヘッドの端部同士の間の距離の記録領域に相当するデータ(1パス記録における1スキャン分のデータ)について、4パス記録により4回のスキャンによって記録が行われる場合について説明する。すなわち、1回のスキャンにつき記録ヘッドの端部同士の間の距離の記録領域の1/4のデータ分だけ記録が行われ、それと並行して記録ヘッドの端部同士の間の距離の1/4ずつシートの搬送が行われる。
【0052】
一般には、記録の行われるべき記録データは、記録ヘッド内部のそれぞれの領域に均等に振り分けられる。従って、通常用いられるマスクでは、図11(a)に示されるように、記録ヘッドにおけるインク吐出の行われる吐出口は、シートの搬送方向に沿って均等に配分されている。図11(a)では、4パスの走査のそれぞれにおいて、記録ヘッドの4分割された領域の全てに記録データが全体の25%ずつ配分され、記録ヘッドの4分割された領域の全てで記録データの25%ずつのインク吐出が行われる。
【0053】
これに対して、本実施形態の記録動作においては、シート上に着弾した後にインク滴に必要とされる加熱量に応じて、インクの吐出を行う吐出口の位置について、記録ヘッドの内部で偏りを持たせている。高温定着インクBによって記録が行われる際に高デューティ記録モード(S605)が設定されている場合、図11(b)の902のように、各パスとも記録ヘッド101における上流側に位置する吐出口からのみインク吐出が行われるようなマスクが設定される。このように、記録ヘッド内部でインクの吐出を行う吐出口が設定されることで、記録ヘッド101からシート上に吐出されたインク滴が、シート上に吐出された後に、ヒータ121による加熱領域120の内部に位置する時間が全体的に長くなる。従って、インク滴が全体的に加熱領域の内部で比較的長い時間に亘って加熱され、インク滴の加熱される際の熱量が大きくなる。従って、定着、乾燥に比較的大きな熱量を必要とするインク滴に対して、比較的大きな熱量によって加熱を行うことができる。
【0054】
すなわち、インクの種類に基づき、必要とされる加熱量の大きい種類のインクを用いて記録が行われるときには、小さな加熱量で済む種類のインクを用いるときよりも、上流側の位置からより多くのインクが吐出されるようなマスクパターンが設定される。そして、そのマスクパターンが用いられて、記録ヘッド101内でインクの吐出を行う吐出口の位置が決定される。また、記録画像における記録デューティに基づき、記録デューティの高い記録が行われるときには、記録デューティの低い記録が行われるときよりも、上流側の位置からより多くのインクが吐出されるようなマスクパターンが設定される。そして、そのマスクパターンが用いられて、インクの吐出を行う吐出口の位置が決定される。
【0055】
このように、インク吐出の行う領域を変化させることで、インクに必要とされる加熱時間に応じて、シート上に吐出されたインク滴がヒータ121による加熱領域120を通過する時間を調節することができる。従って、シート上のインク滴全体に与えるヒータ121による加熱量を、より適した加熱量に調節することができる。また、ヒータ121による加熱の際の加熱量を調節するのに記録装置側の構成を変える必要がないので、簡易に加熱量の調整を行うことができる。
【0056】
ただし、図11(b)に示されるように、厳密に記録ヘッド101における上流側の吐出口からのみ記録データの全体における100%分のインク吐出が行われると、各走査で記録される記録画像が他の走査の記録画像と重なる部分が無くなってしまう。このように、記録画像が、1パス記録によって記録される記録画像となってしまうことにより、マルチパスによって記録が行われていることによるメリットが低下する可能性がある。このように記録が行われることにより、記録画像におけるパス毎の境に色ムラが発生する可能性がある。
【0057】
そのため、本実施形態では、厳密には図12における902の分布のように記録データ全体における100%分のインク吐出を記録ヘッドの最も上流側の領域(a)からのみ行うのではなく、その領域よりも下流側の領域からも少量のインクの吐出が行われる。図12には、本実施形態における実際にインク吐出を行う際の、記録ヘッド101における位置ごとの、記録データ全体に対するインク打ち込み量の割合の分布が示されている。また、図12には、比較例として、記録ヘッドの区分けされた領域のそれぞれで均等にインク吐出を行う吐出口が配分されたときの、記録データ全体に対する記録ヘッドの位置ごとのインク打ち込み量の分布が示されている。図12の分布902のように、記録ヘッドにおける最も上流側の領域以外の領域からもインク吐出を行うことで、記録画像におけるパスごとの境界に色ムラが生じることを抑えることができる。記録ヘッドからのインク吐出が分布902のようにマスクパターンが設定されることが望ましい。
【0058】
なお、ここでは、ヒータによる加熱の際に比較的大きい熱量を必要とするインクBによる記録において高デューティ記録モードに設定された際のマスクパターンについて説明した。しかしながら、比較的小さな熱量による加熱でインクがシートに定着するインクCの記録についても、同様にインク吐出の制御を行うことができる。
【0059】
ヒータによる加熱の際に比較的小さい熱量でインクの定着を行うことができるインクCによる記録において低デューティ記録モードに設定された際には、記録ヘッドの最も下流側の領域(c)のみが用いられて記録が行われる。この場合には、図11(c)に示されるように、記録ヘッド101における最も下流側の領域からのみ記録データ全体における100%分のインク吐出が行われるようにマスクが設定される。
【0060】
また、比較的大きな熱量を必要とするインクBのときに記録デューティが低デューティ閾値以上高デューティ閾値以下であれば、図6に示される記録ヘッドにおける最も上流側の領域(a)と真中の領域(b)の吐出口が用いられて記録が行われる。この場合には、図11(d)に示されるように、最も上流側の領域(a)と、真中の領域(b)のそれぞれの領域で33%ずつインク吐出が行われて記録が行われる。また、比較的小さな熱量で定着を行うことができるインクCのときに記録デューティが低デューティ閾値以上高デューティ閾値以下であれば、図8に示される記録ヘッドにおける最も下流側の領域(c)と真中の領域(b)の吐出口が用いられて記録が行われる。この場合には、図11(e)に示されるように、最も下流側の領域(c)と、真中の領域(b)のそれぞれの領域で33%ずつインク吐出が行われて記録が行われる。記録ヘッドの全体が用いられて記録が行われる場合には、図11(a)に示されるように、記録ヘッドの全ての領域で25%ずつのインク吐出が行なわれて記録が行われる。
【0061】
これらの場合にも、実際の記録の際には図12に示されるように、厳密にこれらの数字どおりに記録が行われるのではなく、インクBにおいて高デューティ記録モードが設定されて記録が行われる場合と同様に、0%の領域からの記録が行われることが望ましい。こうすることで、記録画像にバンド状の色ムラが生じることを抑えることができる。
【0062】
なお、本明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わずに用いられる。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広くシート上に画像、模様、パターン等を形成する、またはシートの加工を行う場合も表すものとする。
【0063】
また、「記録装置」とは、プリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置などのプリント機能を有する装置、ならびにインクジェット技術を用いて物品の製造を行なう製造装置を含む。
【0064】
また、「シート」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものを表すものとする。
【0065】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。シート上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成またはシートの加工、或いはインクの処理(例えばシートに付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【符号の説明】
【0066】
101 記録ヘッド
100 インクジェット記録装置
121 ヒータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着弾したインクを加熱する加熱手段を有するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置においては、従来、記録の行われたシートを加熱し、シート上に吐出されたインクの乾燥及び定着を行う形式のものがある。そのようなインクジェット記録装置で記録の行われたシートへの加熱が行われる場合に、インクの乾燥及び定着を行わせるのに必要とされる熱量が、シート内で一定でないことがある。このように、インクの乾燥及び定着を行うのに必要とされる熱量がシート内で一定でない場合において、必要とされる熱量に応じてシートを加熱する際の熱量を調節するインクジェット記録装置について、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1には、シートへのインク吐出量によって必要な熱量が異なるため、1ライン中の記録データの黒色部の数量をカウントし、そのカウント値に応じてヒータの設定温度を調節するインクジェット記録装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−142319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シートへのインクの吐出量以外にも、記録の際にシート上のインクの乾燥及び定着を行うのに必要とされる熱量を変化させる要素がある。シートへのインクの吐出量以外の要素によってインクの乾燥及び定着を行うのに必要とされる熱量が異なる場合には、特許文献1に開示されている記録装置のように、インクの吐出量でヒータの設定温度を調節するだけでは不十分であることがある。
【0005】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、記録の際の条件に応じてシート上のインクの乾燥及び定着を行うのにより適した熱量を付与するインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェット記録装置は、シートの搬送と、記録ヘッドを移動させながら複数の吐出口からシートにインクを吐出する記録とを交互に行って画像を形成するインクジェット記録装置であって、シートに着弾したインクの加熱を行う加熱手段と、記録を行うインクの種類に関する情報を取得する第1取得手段と、記録すべき記録画像における記録デューティに関する情報を取得する第2取得手段と、前記第1取得手段によって取得されたインク種類と、前記第2取得手段によって取得された記録デューティとに基づいて、前記シートに着弾したインクが前記加熱手段によって加熱される時間の調節を行う調整手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シート上のインクの乾燥及び定着を行うのに、より適した熱量をインクに付与するので、シートの全体に亘って過度に加熱することを抑えつつ、十分に加熱することができ、記録画像の品質を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一実施形態に係るインクジェット記録装置を模式的に示した平面図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置におけるヒータによる加熱領域の周辺について拡大して模式的に示した断面図である。
【図3】図1のインクジェット記録装置における制御系のブロック図である。
【図4】図1のインクジェット記録装置によって記録された際に、記録されたインク滴への加熱において加熱温度と加熱時間との関係についてインクごとに示したグラフである。
【図5】図1のインクジェット記録装置によって記録された際に、インクの打ち込み量と、インクに必要とされる加熱量との間の関係について示したグラフである。
【図6】図1のインクジェット記録装置によってブラックインクを用いて記録が行われた際に、記録ヘッド内部で、設定された記録モードごとの使用される吐出口の領域について示した説明図である。
【図7】図1のインクジェット記録装置によってブラックインクを用いて記録が行われるときに、記録デューティに応じて記録に適した記録モードを設定する際の制御フローについて示したフローチャートである。
【図8】図1のインクジェット記録装置によってシアンインクを用いて記録が行われた際に、記録ヘッド内部で、設定された記録モードごとの使用される吐出口の領域について示した説明図である。
【図9】図1のインクジェット記録装置によってシアンインクを用いて記録が行われるときに、記録デューティに応じて記録に適した記録モードを設定する際の制御フローについて示したフローチャートである。
【図10】図1のインクジェット記録装置によって記録が行われる際の、各種のデータの流れについて示したブロック図である。
【図11】図1のインクジェット記録装置によって4パス記録によって記録が行われる際の、各パスごとの記録データの全体に対して、それぞれの領域における記録ヘッド内部でのインク吐出を行う吐出口の占める割合について示した説明図である。
【図12】図11(b)のマスクデータが設定された際に、実際にシートへインク打ち込みが行われるときの記録ヘッド内での位置ごとのインク打ち込み量について示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1に、本発明の適用されるインクジェット記録装置100の概略構成を説明するための模式的な平面図を示す。なお、ここに示すインクジェット記録装置100は、インク滴を吐出可能な記録ヘッド101をシートの搬送方向と交差する方向に移動させて記録を行ういわゆるシリアル型のインクジェット記録装置100となっている。インクジェット記録装置100は、シートの搬送を行う搬送動作と、シートの搬送方向に沿って複数形成された吐出口からシートにインクを吐出する記録動作とを交互に行うことで記録を行う。また、本実施形態では、インクジェット記録装置は、記録ヘッド101が走査を行いながらシートにインクを吐出して記録を行うと共に、記録ヘッドが同一領域を複数回走査することで記録を行うマルチパス方式によって記録を行う。
【0011】
図1において、記録ヘッド101は、供給されるインクを複数の吐出口から吐出可能なインクジェット記録ヘッドである。記録ヘッド101は、キャリッジ7に交換可能に搭載されている。キャリッジ7には、不図示のコネクタを介して記録ヘッド101に駆動信号等を伝達するためのコネクタホルダ(電気接続部)が設けられている。キャリッジ7は、シートを搬送する副走査方向と直交した主走査方向(矢印A方向)に延びて記録装置本体に配置されたガイドシャフト9に沿って往復走査を行うことが可能なように、ガイドシャフト9によって貫通されながら支持されている。主走査モータ104により回転駆動されるモータプーリ105と従動プーリ106との間には、キャリッジ102に連結されたタイミングベルト107が架け渡されている。キャリッジ102は、これらの主走査モータ104、プーリ105、106、タイミングベルト107などによって構成された駆動機構によって主走査方向に移動される。
【0012】
プリント用紙等のシート108は、ギアを介して給紙モータ115によってピックアップローラ113が回転されることにより、オートシートフィーダ(ASF)114から一枚ずつ分離されて給紙される。シート108は、そこから搬送ローラ109の回転により矢印Bの副走査方向に搬送されて、記録ヘッド101における吐出口の形成面(吐出口面)と対向する位置(記録部)を通る。搬送ローラ109は、ギアを介して搬送モータ116により回転駆動される。なお、シート108は、記録部において平坦な記録面を形成するように、その裏面がプラテン(不図示)により支持される。
【0013】
上記構成を有するインクジェット記録装置100では、記録ヘッド101がキャリッジ7に搭載された状態でキャリッジ7が図1の矢印A方向に走査しつつ記録ヘッド101からインクが吐出されることで記録が行われる。また、記録ヘッド101の各走査の間に、シートの搬送動作が行われる。
【0014】
また、インクジェット記録装置100は、吐出されたインクの加熱を行うためのヒータ(加熱手段)121を有している。ヒータ121によって記録の行われたシートを加熱することで、シート上におけるインクの乾燥及び定着を促進させることができる。
【0015】
図2は、インクジェット記録装置におけるヒータ121の周辺についての配置を示す模式的な断面図である。加熱手段としてのヒータ121は、輻射熱を反射させるための反射板122によって、その上方が覆われている。ヒータ121から発せられた熱は、反射板122によって一旦反射し、シートが均一に加熱されるようにシートへ向けて発せられる。ヒータ121によってシートに向けて熱が発せられることで、シート上には、インクを加熱するための加熱領域120が形成されている。本実施形態では、記録ヘッド101は、シート上でヒータ121によるインクの加熱の行われる加熱領域120の内部にインクを吐出する。
【0016】
ヒータ121によって加熱される際の、ヒータ121によるシート上のインクに与えられる熱量は、加熱の際の加熱温度と加熱される間の時間の積によって決定される。
【0017】
図2に示されるヒータ121によってシートが加熱されると、シートは全体に亘って一様に加熱される。しかしながら、例えば、インクジェット記録装置100が特性の異なる複数種類のインクを用いて記録を行う場合には、シート上のインクの乾燥、定着を行うのに必要とされる加熱量は、インクの種類ごとに異なる。また、シート内で記録位置ごとに記録デューティが異なる場合には、シート上のインクの乾燥、定着を行うのに必要とされる加熱量は、記録デューティによっても異なる。このように、吐出されるインク滴の条件が異なることにより、シート上のインクが必要とする加熱量がインク滴ごとに異なる場合がある。
【0018】
ところが、仮にシート上のインクへのヒータ121による加熱量が一定である場合には、シート上でインクの乾燥、定着を行うのに必要とされる加熱量が位置ごとに異なるにも関わらず、一様の加熱量によって加熱が行われることになる。これにより、一部のインクに対しては過度に加熱が行われたり、一部のインクに対しては加熱量が不足したりする場合がある。インクの乾燥・定着の後に、シート上のインクに与える熱量が過度に多すぎると、シートに着弾したインクが白濁してしまう可能性がある。また、シート上のインク滴へ与える熱量が少なすぎると、インク滴のシートへの定着が不十分のまま出力される可能性がある。記録後のインク滴が定着しない状態では、シートの記録面に対する擦れがあったときに、その擦れが記録画像を汚してしまい、記録画像の品質を低下させてしまう可能性がある。このように、シート上でのインク滴における耐擦過性が低下してしまうことがある。このため、本実施形態では、吐出口列内での吐出口の位置によって加熱される時間が異なるのを利用し、吐出されるインクの種類、記録デューティに応じて加熱される時間が調節される。
【0019】
本実施形態におけるヒータ121によるシートの加熱領域は、約60mmである。シートは、搬送されながら、加熱領域の内部に位置する部分について、ヒータ121によって加熱される。そのため、記録ヘッドにおけるシートの搬送方向上流側の端部付近から吐出されたインクは、シートに着弾した後に、約60mmの加熱領域の全体に亘って加熱される。すなわち、約60mmの加熱領域を搬送される間に、インク滴の加熱が行われるインク滴が約60mmの加熱領域の全体に亘って加熱される場合には、約30秒の間インク滴が加熱される。一方、記録ヘッド101のa領域(下流側)の端部付近で吐出されたインクがシートに着弾した後に、着弾したインク滴が通過する加熱領域は約40mmである。記録ヘッドにおけるシートの搬送方向下流側の端部付近から吐出されたインクは、シートに着弾した後に、約40mm分の搬送の際に加熱領域内部に位置することになる。従って、記録ヘッド101におけるシートの搬送方向下流側の端部付近から吐出されたインクは、シートに着弾した後に、約40mmの加熱領域内に亘って加熱される。インク滴がシートに着弾した後に40mmの加熱領域に亘って加熱される場合には、約20秒の間インク滴が加熱される。すなわち、約40mmの加熱領域を搬送される間に、インク滴の加熱が行われる。ここでは、シート108は図2の矢印123に示される方向に搬送されるため、記録ヘッド101のa領域はシートの下流側、d領域はシートの上流側とも言うものとする。
【0020】
このように、記録ヘッド101のd領域の上流側端部付近から吐出されたインクが通過する加熱領域は約60mmで、記録ヘッド101のa領域の下流側端部付近から吐出されたインクが通過する加熱領域は40mmである。記録ヘッドの吐出する位置により、シートに吐出された直後のインクが加熱領域を通過し終わるまで加熱される加熱領域には1.5倍程度の差がある。シートにおける単位時間当たりの搬送量が一定である場合には、全加熱領域に対して同条件で加熱できたとすれば1.5倍程度の熱量差を与えることが可能である。
【0021】
本実施形態では、ヒータ121による加熱領域内にある記録ヘッド101を不必要に加熱しないようにするために、記録ヘッド101には、ヒータ121側の一部が断熱材103によって覆われている。
【0022】
図3は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。図3において、記録装置の各部の動作は、ROM201内に格納された制御プログラム及びRAM202に格納された種々のデータなどに基づいてCPU200により制御される。すなわち、CPU200には、記録ヘッド101に設けられた記録素子を駆動させるヘッド駆動回路203、主走査モータ104を駆動する主走査モータ駆動回路204、搬送モータ42を駆動させる搬送モータ駆動回路205などが接続されている。また、ヒータ121の駆動を行うための駆動源であるヒータ駆動回路208がCPU200に接続されている。
【0023】
以下、インク滴が着弾した後に必要とされる加熱量が異なる複数のインク滴が記録ヘッドから吐出されるインクジェット記録装置による記録について説明する。
【0024】
本実施形態では、ブラックのインクBと、シアンのインクCとを吐出可能な記録ヘッドによって記録が行われている。インクBは、シートに着弾した後に比較的高い熱量を加熱されることでシートに定着し、インクCは、比較的低い熱量の加熱によってシートに定着される。そのため、第1取得手段によって記録を行うインクの種類に関する情報が取得される。本実施形態では、CPU200が第1取得手段として機能する。なお、記録の行われるインクの種類は、ユーザーによって取得されても良く、ユーザーが第1取得手段として機能しても良い。
【0025】
本実施形態では、シート上に着弾したインク滴の定着及び乾燥が行われる際には、シート上の加熱領域120内で、60℃の温度が保たれるようにヒータ121による加熱が行われている。また、本実施形態のインクB及びインクCは、記録される際のシート上での記録デューティによって、シートへの定着、乾燥に必要とされる熱量が異なる。従って、第2取得手段によって、記録すべき記録画像の記録データから記録すべき記録画像における記録デューティに関する情報が取得される。本実施形態では、CPU200が第2取得手段として機能する。ここで、記録デューティは、単位面積当たりの記録領域に占めるドット数の割合のことを言うものとする。
【0026】
図4は、インク毎の加熱時間と加熱の際の温度から構成されるシートへの定着及び乾燥に必要とされる熱量を、記録デューティごとに示した図である。比較的高い熱量で定着するインクBが、比較的高い記録デューティの打ち込み量によって記録される場合にインクの定着、乾燥に必要とされる熱量は、プロット210によって表される。比較的低い熱量で定着可能なインクCが、比較的低い記録デューティの打ち込み量によって記録される場合に、インクの定着、乾燥に必要とされる熱量はプロット211によって表される。また比較的低い熱量で定着可能なインクCが比較的高いデューティの打ち込み量によって記録される場合にインクの定着、乾燥に必要とされる熱量は、212に示される。比較的高い熱量が必要なインクBが比較的低いデューティの打ち込み量によって記録される場合にインクの定着、乾燥に必要とされる熱量は、213に示される。
【0027】
図5は、さらに別の表し方によって打ち込み量とインクの種類によって異なるインクの定着、乾燥に必要とされる熱量について示した図である。図5には、縦軸にインク打ち込み量を取り、横軸にインクごとに加熱に必要とされる熱量を取って示したグラフが示されている。シートへの定着及び乾燥に比較的高い熱量が必要とされるインクBでは、インクの打ち込み量によって定着及び乾燥に必要とされる熱量が異なる。本実施形態では、インクBで加熱の際に必要とされる加熱量は、エリア501の範囲内で変動する。同様に、シートへの定着及び乾燥に比較的低い熱量が必要とされるインクCでは、インクの打ち込み量によって定着及び乾燥に必要とされる熱量が異なる。インクCで加熱の際に必要とされる加熱量は、エリア503の範囲内で変動する。
【0028】
本実施形態では、複数種類のインクのうち、インクBがインクの定着及び乾燥に必要とされる熱量の最も高いインクであり、インクCがインクの定着及び乾燥に必要とされる熱量の最も低いインクである。そのため、インクB、インクC以外の種類のインクでは、インクの定着及び乾燥に必要とされる熱量は、インクBとインクCとの間にある。そのため、他の種類のインクについては、インクの加熱に必要とされる熱量は、図5のエリア501とエリア503の間の位置に収まっている。
【0029】
図6は、インクの定着、乾燥に比較的高い熱量が必要とされるインクBを用いて記録する際の記録ヘッドの使用領域について説明するための図である。記録ヘッド101に形成されている吐出口は、説明のために、記録ヘッド内で吐出口の形成されている位置によって、シートの搬送方向に沿って上流側から下流側に、上流エリア(a)、中流エリア(b)、下流エリア(c)に分けられている。図6では、4パス記録が行われる記録ヘッドについて示されている。領域(a)及び領域(c)は、4パス記録が行われる際の、1スキャンで記録に使用される吐出口が占める領域に相当する。領域(b)は、2スキャンで記録に使用される吐出口が占める領域に相当する。
【0030】
また、比較的高い熱量が必要とされるインクBで比較的高デューティに記録が行われる場合には、加熱によって大きな熱量が必要とされる。そのため、本実施形態では、シート上でインクの加熱による加熱量を多くするために、図6の記録ヘッド301におけるシートの搬送方向上流側のエリア(a)のみが用いられて記録が行われる。記録ヘッドにおける上流側でシートに打ち込まれたインク滴は、比較的長い期間に亘って加熱領域の内部を通過する。そのため、記録ヘッドにおける上流側で打ち込まれたインク滴は、加熱領域の内部での加熱による熱量が大きくなる。このことにより、インクBによって高デューティ記録が行われることで多くの加熱による熱量を必要とする領域に対して、大きな熱量による加熱が行われることになる。
【0031】
また、インクBが低デューティによって記録が行われる場合には、記録ヘッド303に示されるように、記録ヘッドの領域(a)、領域(b)、領域(c)の全領域を使用して記録が行われる。記録ヘッドの全領域によって記録を行うことができるので、記録におけるスループットを向上させることができる。
【0032】
また、記録デューティが比較的高デューティである場合でも比較的低デューティである場合でもない場合には、記録ヘッド302に示すように上流側(a)、中流側(b)の領域を使用して記録が行われる。Bインクが、ある程度の高い熱量による加熱を必要としているので、本実施形態では高デューティでも低デューティでもない記録デューティによって記録が行われる場合には、上流側(a)、中流側(b)のみの領域を使用して記録が行われる。
【0033】
図7に、インクのシートへの定着及び乾燥に高い熱量が必要とされるインクBを用いて、本実施形態の加熱熱量制御によって記録が行われる際の、記録ヘッドにおける使用領域の決定を行うためのフローチャートを示す。まず、1スキャン分の記録データが読み込まれる(S601)。それから、本実施形態の加熱熱量制御を行うように設定されているかどうかを判定する(S602)。加熱熱量制御を行うように設定されていない場合には、通常記録モードによって記録が行われる(S609)。本実施形態の加熱熱量制御が行われるように設定されている場合には、インクの定着、乾燥に比較的高い熱量が必要とされるインクBによる記録における記録デューティの計算が行われる(S603)。
【0034】
記録デューティの計算によって得られた記録デューティ値が予め定められている高デューティ閾値より高いかを判定し(S604)、高い場合には高い熱量による加熱の行われる高温定着高デューティ記録モードが設定される(S605)。ここで、高デューティ閾値は、インクのシートへの定着及び乾燥に高い熱量が必要とされるインクBによって記録が行われる際に、高温定着高デューティ記録モードが設定されるかどうかの、記録デューティの閾値とする。記録が行われる際の記録デューティが高デューティ閾値よりも高ければ、高温定着高デューティ記録モードが設定される。この高温定着高デューティ記録モードが設定されたときの使用される吐出口については、図6の記録ヘッド301に示される。
【0035】
また、S603の記録デューティの算出で、記録デューティが低デューティ閾値よりも低かった場合には、高温定着低デューティ記録モードが設定される(S607)。高温定着低デューティ記録モードが設定されたときの使用される吐出口については、図6の記録ヘッド303に示される。ここで、低デューティ閾値は、インクのシートへの定着及び乾燥に高い熱量が必要とされるインクBによって記録が行われる際に、高温定着低デューティ記録モードが設定されるかどうかの、記録デューティの閾値とする。記録が行われる際の記録デューティが低デューティ閾値よりも低ければ、高温定着低デューティ記録モードが設定される。
【0036】
記録デューティが、低デューティ閾値以上、高デューティ閾値以下である場合には、高温定着インク通常記録モードが設定される(S608)。高温定着インク通常モードが設定されたときに使用される吐出口については、図6の記録ヘッド302に示される。すなわち、記録ヘッド302の上流側(a)、中流側(b)の領域を使用して記録が行われる。
【0037】
図8は、インクの定着、乾燥に比較的低い熱量が用いられるインクCを用いて記録する際の記録ヘッドの使用領域について説明するための図である。図6で説明したインクBを用いる記録と同様に、記録の際に用いられる吐出口について、便宜上、記録ヘッド内の位置によって上流エリア(a)、中流エリア(b)、下流エリア(c)に分けられている。図8においても、4パス記録が行われる記録ヘッドについて示されている。上流の端部領域である上流エリア(a)及び下流の端部領域である下流エリア(c)は、1スキャンで記録に使用される吐出口が占める領域に相当する。また、上流エリア(a)、下流エリア(c)以外の領域である中流エリア(b)は、2スキャンで記録に使用される吐出口が占める領域に相当する。
【0038】
低い熱量でシートへ定着可能なインクCによって記録が行われ、そのときの記録が、予め定められた所定の打ち込み量以下の低デューティによる記録である場合には、図8の記録ヘッド401に示されるように、下流側エリア(c)のみを使用して記録が行われる。このことにより、シートに着弾した後のインク滴が加熱領域を通過する際の通過時間を短くし、加熱によりシートに与えられる熱量を低くすることができる。ここでインクの定着、乾燥に比較的低い熱量による加熱が用いられるインクCが低デューティ記録によって記録される場合におけるインク打ち込み量と熱量の関係は、図5のエリア504の領域に該当する。
【0039】
また、インクCがある一定以上の高デューティによって記録される場合には、図8の記録ヘッド403に示されるように、領域(a)、(b)、(c)の全領域を使用して記録が行われる。これにより、記録ヘッドの全領域によって記録を行うことができるので、記録におけるスループットを向上させることができる。その他の条件の場合は、記録ヘッド402に示されるように記録ヘッドの中流側(b)、下流側(c)の領域を使用して記録が行われる。
【0040】
図9に、インクのシートへの定着及び乾燥に比較的低い熱量が必要とされるインクCによって記録が行われる際に、加熱量制御によって記録が行われる際の、記録ヘッドの使用領域の決定を行うためのフローチャートを示す。
【0041】
まず、1スキャン分のデータが読み込まれる(S701)。それから、本実施形態の加熱熱量制御が行われるように設定されているかどうかが判定される(S702)。加熱量制御を行うように設定されていない場合には、通常記録モードによって記録が行われる(S709)。このときに使用される吐出口の領域について図8の記録ヘッド403に示す。
【0042】
加熱量制御が行われるように設定されている場合には、インクCについての記録デューティの計算が行われる(S703)。記録デューティの計算によって得られた記録デューティ値が予め定められている低デューティ閾値よりも低いかどうかが判定され(S704)、低い場合には低温定着低デューティ記録モードが設定される(S705)。この低温定着低デューティ記録モードが設定されたときに使用される吐出口については、図8の記録ヘッド401に示される。
【0043】
記録デューティの計算によって得られた記録デューティ値が予め定められている高デューティ閾値よりも高かった場合には、低温定着インク高デューティ記録モードが設定される(S705)。この低温定着高デューティ記録モードが設定されたときに使用される吐出口の領域については、図8の記録ヘッド403に示される。記録デューティの計算によって得られた記録デューティ値が、低デューティ閾値以上、高デューティ閾値以下である場合には、低温定着インク通常記録モードに設定する(S708)。この低温定着インク通常モードが設定されたときに使用される吐出口については、図8の記録ヘッド402に示される。すなわち、記録ヘッド402の上流側(a)、中流側(b)の領域を使用して記録が行われる。
【0044】
なお、定着に高熱量の加熱を必要とするインクB及び低熱量による加熱で定着するインクC以外の色によって記録が行われる場合には、図6の記録ヘッド304に示されるように、常に全領域(a)、(b)、(c)の吐出口が使用されて記録が行われる。これにより、記録ヘッドの全領域によって記録を行うことができるので、記録におけるスループットを向上させることができる。
【0045】
このように、インクの種類及び記録すべき記録画像の記録デューティに関する情報が取得され、これらのインク種類及び記録デューティに応じて、記録ヘッドにおけるインク吐出の行われる吐出口の位置が決定され、シートに着弾したインクの加熱される時間が調節される。すなわち、取得されたインク種類と、取得された記録デューティとに基づいて、シートに着弾したインクがヒータ121によって加熱される時間の調節が行われる。本実施形態では、CPU200が、ヒータ121によってインクを加熱する時間の調節を行う調整手段として機能する。
【0046】
本実施形態では、記録ヘッドによって加熱領域120の内部にインクが吐出されているので、加熱領域120の内部におけるシート上でのインクの吐出される位置を決定することで、ヒータ121によって加熱される時間の調節を行うことができる。シート上でのインクの吐出された位置が、加熱領域120内部の上流側である程、シートが搬送される際にインク滴が加熱領域内部に留まる時間が長くなる。一方、シート上でのインクの吐出された位置が、加熱領域120内部の下流側である程、インク滴が加熱領域120内部に留まる時間は短くなる。このように、加熱領域120内部でインクの吐出される位置を調節することで、加熱時間を調節することができる。
【0047】
シート上でのインクの吐出される位置は、記録ヘッド内の複数の吐出口のうちの、インクの吐出を行う吐出口を決定することによって、決定を行うことができる。特に本実施形態では、記録ヘッドに形成された複数の吐出口が、領域ごとに複数の吐出口群に区分けされ、複数の吐出口群のうち、インクの吐出を行う吐出口群を決定することで、加熱領域120の内部におけるインクの吐出される位置の決定を行っている。
【0048】
具体的には、インクの種類に基づき、大きな加熱量を必要とするインクを用いて記録を行うときには、小さな加熱量で済むインクを用いて記録が行われるときよりも、上流側の位置からより多くのインクが吐出されるように、インクの吐出される位置が決定される。また、記録デューティの高い記録が行われるときには、記録デューティの低い記録が行われるときよりも、上流側の位置からより多くのインクが吐出されるように、インクの吐出される位置が決定される。
【0049】
次に図10を用いて、定着熱量制御時のデータ生成について説明する。まず、各種設定情報805から設定記録モード、インク別定着温度情報が読み出される。また、各種検出情報806から周囲温度(定着温度)が読み出される。これらの読み出された情報に基づいて、CPU200によって記録条件に適したマスクデータが選択される。記録条件に適したマスクデータが選択されると、選択されたマスクデータと記録すべきイメージデータ802との間の論理積を取る(803)ことで、吐出データ804が生成される。生成された吐出データ804によってヘッド駆動回路203が駆動され、記録ヘッドによってインク滴の吐出が行われて記録が行われる。
【0050】
次に、図11、図12を用いて、上述のように、記録ヘッド101における吐出口の位置を変化させた場合のマスクデータについて説明する。図11には、4パス記録によって記録が行われる場合の、それぞれのパスにおける、記録ヘッド101の内部でのインクの吐出を行う吐出口の割合を、記録ヘッドを4つに分割した領域ごとに示した分布図が示されている。図11に示されるように、本実施形態では複数回の走査のそれぞれでインク吐出の行われる吐出口が間引かれ、同一位置で記録ヘッド101が複数回の走査を行うことで記録が行われる。そして、複数回の走査におけるそれぞれの走査で、記録ヘッド101における複数の吐出口からマスクパターンによってインク吐出を行う吐出口が決定される。
【0051】
ここでは、記録ヘッドの端部同士の間の距離の記録領域に相当するデータ(1パス記録における1スキャン分のデータ)について、4パス記録により4回のスキャンによって記録が行われる場合について説明する。すなわち、1回のスキャンにつき記録ヘッドの端部同士の間の距離の記録領域の1/4のデータ分だけ記録が行われ、それと並行して記録ヘッドの端部同士の間の距離の1/4ずつシートの搬送が行われる。
【0052】
一般には、記録の行われるべき記録データは、記録ヘッド内部のそれぞれの領域に均等に振り分けられる。従って、通常用いられるマスクでは、図11(a)に示されるように、記録ヘッドにおけるインク吐出の行われる吐出口は、シートの搬送方向に沿って均等に配分されている。図11(a)では、4パスの走査のそれぞれにおいて、記録ヘッドの4分割された領域の全てに記録データが全体の25%ずつ配分され、記録ヘッドの4分割された領域の全てで記録データの25%ずつのインク吐出が行われる。
【0053】
これに対して、本実施形態の記録動作においては、シート上に着弾した後にインク滴に必要とされる加熱量に応じて、インクの吐出を行う吐出口の位置について、記録ヘッドの内部で偏りを持たせている。高温定着インクBによって記録が行われる際に高デューティ記録モード(S605)が設定されている場合、図11(b)の902のように、各パスとも記録ヘッド101における上流側に位置する吐出口からのみインク吐出が行われるようなマスクが設定される。このように、記録ヘッド内部でインクの吐出を行う吐出口が設定されることで、記録ヘッド101からシート上に吐出されたインク滴が、シート上に吐出された後に、ヒータ121による加熱領域120の内部に位置する時間が全体的に長くなる。従って、インク滴が全体的に加熱領域の内部で比較的長い時間に亘って加熱され、インク滴の加熱される際の熱量が大きくなる。従って、定着、乾燥に比較的大きな熱量を必要とするインク滴に対して、比較的大きな熱量によって加熱を行うことができる。
【0054】
すなわち、インクの種類に基づき、必要とされる加熱量の大きい種類のインクを用いて記録が行われるときには、小さな加熱量で済む種類のインクを用いるときよりも、上流側の位置からより多くのインクが吐出されるようなマスクパターンが設定される。そして、そのマスクパターンが用いられて、記録ヘッド101内でインクの吐出を行う吐出口の位置が決定される。また、記録画像における記録デューティに基づき、記録デューティの高い記録が行われるときには、記録デューティの低い記録が行われるときよりも、上流側の位置からより多くのインクが吐出されるようなマスクパターンが設定される。そして、そのマスクパターンが用いられて、インクの吐出を行う吐出口の位置が決定される。
【0055】
このように、インク吐出の行う領域を変化させることで、インクに必要とされる加熱時間に応じて、シート上に吐出されたインク滴がヒータ121による加熱領域120を通過する時間を調節することができる。従って、シート上のインク滴全体に与えるヒータ121による加熱量を、より適した加熱量に調節することができる。また、ヒータ121による加熱の際の加熱量を調節するのに記録装置側の構成を変える必要がないので、簡易に加熱量の調整を行うことができる。
【0056】
ただし、図11(b)に示されるように、厳密に記録ヘッド101における上流側の吐出口からのみ記録データの全体における100%分のインク吐出が行われると、各走査で記録される記録画像が他の走査の記録画像と重なる部分が無くなってしまう。このように、記録画像が、1パス記録によって記録される記録画像となってしまうことにより、マルチパスによって記録が行われていることによるメリットが低下する可能性がある。このように記録が行われることにより、記録画像におけるパス毎の境に色ムラが発生する可能性がある。
【0057】
そのため、本実施形態では、厳密には図12における902の分布のように記録データ全体における100%分のインク吐出を記録ヘッドの最も上流側の領域(a)からのみ行うのではなく、その領域よりも下流側の領域からも少量のインクの吐出が行われる。図12には、本実施形態における実際にインク吐出を行う際の、記録ヘッド101における位置ごとの、記録データ全体に対するインク打ち込み量の割合の分布が示されている。また、図12には、比較例として、記録ヘッドの区分けされた領域のそれぞれで均等にインク吐出を行う吐出口が配分されたときの、記録データ全体に対する記録ヘッドの位置ごとのインク打ち込み量の分布が示されている。図12の分布902のように、記録ヘッドにおける最も上流側の領域以外の領域からもインク吐出を行うことで、記録画像におけるパスごとの境界に色ムラが生じることを抑えることができる。記録ヘッドからのインク吐出が分布902のようにマスクパターンが設定されることが望ましい。
【0058】
なお、ここでは、ヒータによる加熱の際に比較的大きい熱量を必要とするインクBによる記録において高デューティ記録モードに設定された際のマスクパターンについて説明した。しかしながら、比較的小さな熱量による加熱でインクがシートに定着するインクCの記録についても、同様にインク吐出の制御を行うことができる。
【0059】
ヒータによる加熱の際に比較的小さい熱量でインクの定着を行うことができるインクCによる記録において低デューティ記録モードに設定された際には、記録ヘッドの最も下流側の領域(c)のみが用いられて記録が行われる。この場合には、図11(c)に示されるように、記録ヘッド101における最も下流側の領域からのみ記録データ全体における100%分のインク吐出が行われるようにマスクが設定される。
【0060】
また、比較的大きな熱量を必要とするインクBのときに記録デューティが低デューティ閾値以上高デューティ閾値以下であれば、図6に示される記録ヘッドにおける最も上流側の領域(a)と真中の領域(b)の吐出口が用いられて記録が行われる。この場合には、図11(d)に示されるように、最も上流側の領域(a)と、真中の領域(b)のそれぞれの領域で33%ずつインク吐出が行われて記録が行われる。また、比較的小さな熱量で定着を行うことができるインクCのときに記録デューティが低デューティ閾値以上高デューティ閾値以下であれば、図8に示される記録ヘッドにおける最も下流側の領域(c)と真中の領域(b)の吐出口が用いられて記録が行われる。この場合には、図11(e)に示されるように、最も下流側の領域(c)と、真中の領域(b)のそれぞれの領域で33%ずつインク吐出が行われて記録が行われる。記録ヘッドの全体が用いられて記録が行われる場合には、図11(a)に示されるように、記録ヘッドの全ての領域で25%ずつのインク吐出が行なわれて記録が行われる。
【0061】
これらの場合にも、実際の記録の際には図12に示されるように、厳密にこれらの数字どおりに記録が行われるのではなく、インクBにおいて高デューティ記録モードが設定されて記録が行われる場合と同様に、0%の領域からの記録が行われることが望ましい。こうすることで、記録画像にバンド状の色ムラが生じることを抑えることができる。
【0062】
なお、本明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わずに用いられる。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広くシート上に画像、模様、パターン等を形成する、またはシートの加工を行う場合も表すものとする。
【0063】
また、「記録装置」とは、プリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置などのプリント機能を有する装置、ならびにインクジェット技術を用いて物品の製造を行なう製造装置を含む。
【0064】
また、「シート」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものを表すものとする。
【0065】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。シート上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成またはシートの加工、或いはインクの処理(例えばシートに付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【符号の説明】
【0066】
101 記録ヘッド
100 インクジェット記録装置
121 ヒータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの搬送と、記録ヘッドを移動させながら複数の吐出口からシートにインクを吐出する記録とを交互に行って画像を形成するインクジェット記録装置であって、
シートに着弾したインクの加熱を行う加熱手段と、
記録を行うインクの種類に関する情報を取得する第1取得手段と、
記録すべき記録画像における記録デューティに関する情報を取得する第2取得手段と、
前記第1取得手段によって取得されたインク種類と、前記第2取得手段によって取得された記録デューティとに基づいて、前記シートに着弾したインクが前記加熱手段によって加熱される時間の調節を行う調整手段と
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドは、シート上で前記加熱手段により加熱の行われる加熱領域の内部にインクを吐出し、
前記調整手段は、前記加熱領域の内部におけるインクの吐出される位置を決定することで、前記加熱手段によって加熱される時間の調節を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記記録ヘッドの複数の前記吐出口のうち、インクの吐出を行う吐出口を決定することで、前記加熱領域の内部におけるインクの吐出される位置を決定することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドに形成された複数の前記吐出口が、領域ごとに複数の吐出口群に区分けされ、
前記調整手段は、前記複数の吐出口群のうち、インクの吐出を行う吐出口群を決定することで、前記加熱領域の内部におけるインクの吐出される位置を決定することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記第1取得手段によって取得されたインクの種類に基づき、加熱される加熱量の大きい種類のインクを用いて記録が行われるときには、加熱される加熱量の小さい種類のインクを用いて記録が行われるときよりも、前記シートの搬送方向の上流側の位置からより多くのインクが吐出されるように、インクの吐出される位置を決定することを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記インクジェット記録装置は、前記記録ヘッドが走査を行いながらシートにインクを吐出して記録を行うと共に、前記記録ヘッドが同一領域を複数回走査することで記録を行い、複数回の走査のそれぞれでインク吐出の行われる吐出口が間引かれて、複数回の走査によって記録が行われ、
複数回の走査におけるそれぞれの走査で、前記記録ヘッドにおける複数の前記吐出口からマスクパターンによってインク吐出を行う吐出口が決定され、
前記調整手段は、前記第1取得手段によって取得されたインクの種類に基づき、加熱される加熱量の大きい種類のインクを用いて記録が行われるときには、加熱される加熱量の小さい種類のインクを用いて記録が行われるときよりも、前記シートの搬送方向の上流側の位置からより多くのインクが吐出されるようなマスクパターンを設定して、インクの吐出される位置を決定することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記調整手段は、前記第2取得手段によって取得された、前記記録すべき記録画像における前記記録デューティに基づき、前記記録デューティの高い記録が行われるときには、前記記録デューティの低い記録が行われるときよりも、前記シートの搬送方向の上流側の位置からより多くのインクが吐出されるように、インクの吐出される位置を決定することを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記インクジェット記録装置は、前記記録ヘッドが走査を行いながらシートにインクを吐出して記録を行うと共に、前記記録ヘッドが同一領域を複数回走査することで記録を行い、複数回の走査のそれぞれでインク吐出の行われる吐出口が間引かれて、複数回の走査によって記録が行われ、
複数回の走査におけるそれぞれの走査で、前記記録ヘッドにおける複数の前記吐出口からマスクパターンによってインク吐出を行う吐出口が決定され、
前記調整手段は、前記第2取得手段によって取得された、前記記録すべき記録画像における前記記録デューティに基づき、前記記録デューティの高い記録が行われるときには、前記記録デューティの低い記録が行われるときよりも、前記シートの搬送方向の上流側の位置からより多くのインクが吐出されるようなマスクパターンを設定して、インクの吐出される位置を決定することを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項1】
シートの搬送と、記録ヘッドを移動させながら複数の吐出口からシートにインクを吐出する記録とを交互に行って画像を形成するインクジェット記録装置であって、
シートに着弾したインクの加熱を行う加熱手段と、
記録を行うインクの種類に関する情報を取得する第1取得手段と、
記録すべき記録画像における記録デューティに関する情報を取得する第2取得手段と、
前記第1取得手段によって取得されたインク種類と、前記第2取得手段によって取得された記録デューティとに基づいて、前記シートに着弾したインクが前記加熱手段によって加熱される時間の調節を行う調整手段と
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドは、シート上で前記加熱手段により加熱の行われる加熱領域の内部にインクを吐出し、
前記調整手段は、前記加熱領域の内部におけるインクの吐出される位置を決定することで、前記加熱手段によって加熱される時間の調節を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記記録ヘッドの複数の前記吐出口のうち、インクの吐出を行う吐出口を決定することで、前記加熱領域の内部におけるインクの吐出される位置を決定することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドに形成された複数の前記吐出口が、領域ごとに複数の吐出口群に区分けされ、
前記調整手段は、前記複数の吐出口群のうち、インクの吐出を行う吐出口群を決定することで、前記加熱領域の内部におけるインクの吐出される位置を決定することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記第1取得手段によって取得されたインクの種類に基づき、加熱される加熱量の大きい種類のインクを用いて記録が行われるときには、加熱される加熱量の小さい種類のインクを用いて記録が行われるときよりも、前記シートの搬送方向の上流側の位置からより多くのインクが吐出されるように、インクの吐出される位置を決定することを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記インクジェット記録装置は、前記記録ヘッドが走査を行いながらシートにインクを吐出して記録を行うと共に、前記記録ヘッドが同一領域を複数回走査することで記録を行い、複数回の走査のそれぞれでインク吐出の行われる吐出口が間引かれて、複数回の走査によって記録が行われ、
複数回の走査におけるそれぞれの走査で、前記記録ヘッドにおける複数の前記吐出口からマスクパターンによってインク吐出を行う吐出口が決定され、
前記調整手段は、前記第1取得手段によって取得されたインクの種類に基づき、加熱される加熱量の大きい種類のインクを用いて記録が行われるときには、加熱される加熱量の小さい種類のインクを用いて記録が行われるときよりも、前記シートの搬送方向の上流側の位置からより多くのインクが吐出されるようなマスクパターンを設定して、インクの吐出される位置を決定することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記調整手段は、前記第2取得手段によって取得された、前記記録すべき記録画像における前記記録デューティに基づき、前記記録デューティの高い記録が行われるときには、前記記録デューティの低い記録が行われるときよりも、前記シートの搬送方向の上流側の位置からより多くのインクが吐出されるように、インクの吐出される位置を決定することを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記インクジェット記録装置は、前記記録ヘッドが走査を行いながらシートにインクを吐出して記録を行うと共に、前記記録ヘッドが同一領域を複数回走査することで記録を行い、複数回の走査のそれぞれでインク吐出の行われる吐出口が間引かれて、複数回の走査によって記録が行われ、
複数回の走査におけるそれぞれの走査で、前記記録ヘッドにおける複数の前記吐出口からマスクパターンによってインク吐出を行う吐出口が決定され、
前記調整手段は、前記第2取得手段によって取得された、前記記録すべき記録画像における前記記録デューティに基づき、前記記録デューティの高い記録が行われるときには、前記記録デューティの低い記録が行われるときよりも、前記シートの搬送方向の上流側の位置からより多くのインクが吐出されるようなマスクパターンを設定して、インクの吐出される位置を決定することを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−28097(P2013−28097A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166328(P2011−166328)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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