説明

インクジェット記録装置

【課題】キャリッジに設けられたシートと接触可能な部材にインクが付着しても、当該インクによるシートの汚れが防止できるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】移動可能なキャリッジ38と、キャリッジ38の下面側に設けられインク滴を搬送される記録用紙19に吐出する記録ヘッドと、キャリッジ38の下面側に記録ヘッドを挟むように設けられ、下端が記録ヘッド及び搬送される記録用紙19の間に位置する一対のローラ61、62と、記録ヘッドにインク滴を吐出させて、記録用紙19に一対のローラ61、62が当接するように記録用紙19を撓ませるパターンPを形成する形成手段と、パターンPの形成後、キャリッジ38を移動させて一対のローラ61、62のローラ面のクリーニングを実行する第1制御手段とを備える。第1制御手段は、パターンPが形成されてからキャリッジ38が移動されるまでの間、記録用紙19を搬送させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動可能なキャリッジに搭載された記録ヘッドからシートにインク滴を吐出することによって画像記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力信号に基づいてインク滴を吐出してシートに画像記録を行うインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、記録ヘッドを搭載したキャリッジを備える。キャリッジは、シートに対向する位置に配置されており、シートの搬送方向と直交する方向に移動される。シートの移動が停止した状態で、キャリッジが移動方向に移動されると共に、記録ヘッドのノズルからインク滴が吐出される。これにより、シートに画像が記録される。
【0003】
インクジェット記録装置では、搬送されるシートにインクが多量に着弾すると、シートにインクが着弾していないときと比べ、シートが記録ヘッドに近づくように撓むことがある。これにより、シートが記録ヘッドに接触してしまい、シートに記録される画質が悪化したり、ジャムが発生したりするおそれがある。
【0004】
このような問題を防止する手段として、特許文献1には、キャリッジ上に記録媒体押圧部材を備えたインクジェットプリンタが開示されている。当該インクジェットプリンタにおいては、記録媒体押圧部材のコロが、記録媒体(シート)への印字動作直後に、シートを押圧保持する。これにより、シートの撓みを抑制することで、記録ヘッドと接触することが防止可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−61078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、記録媒体押圧部材のコロは、適切な材質の部材が選択されることなどによって、記録媒体へ着弾されたインクが当該コロの表面に付着することがないように構成されている。つまり、当該コロには、記録媒体を介してインクが付着する可能性は少ない。
【0007】
しかしながら、記録媒体押圧部材のコロには、記録媒体を介することなくインクが付着することがある。例えば、記録ヘッドからインク滴を空吐出する所謂フラッシング動作の際に、空間を浮遊するインクミストが発生することがある。また、多くのインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)には、記録ヘッドをキャップ部材で覆った状態でインクを吸引することによって記録ヘッドから気泡や異物を除去するためのメンテナンス機構が設けられている。そして、メンテナンス機構がインクを吸引した際に、キャップ部材に残存するインクが空間を浮遊するインクミストとなることがある。
【0008】
上述したフラッシング動作や、メンテナンス機構によるインクの吸引によって、インクミストが空間に浮遊している状態で、キャリッジが移動方向に移動されると、当該キャリッジの移動によって巻き上げられるインクミストが記録媒体押圧部材のコロに付着するおそれがある。
【0009】
そして、インクが付着した記録媒体押圧部材のコロがシートを押圧すると、シートが当該コロに付着したインクによって汚れてしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、キャリッジに設けられたシートと接触可能な部材にインクが付着しても、当該インクによってシートが汚れることが防止可能なインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明のインクジェット記録装置は、シートを第1方向に搬送する搬送部と、上記搬送部を駆動する第1駆動源と、上記第1方向に搬送されるシートを支持する支持部と、上記支持部に支持されるシートに対して上記支持部と対向して設けられており、上記第1方向と直交する第2方向へ移動可能なキャリッジと、上記キャリッジを駆動する第2駆動源と、上記キャリッジに設けられており、上記支持部に支持されたシートに向けてインク滴を吐出する上記第1方向に沿ったノズル列が上記第2方向に並んで備えられる記録ヘッドと、上記キャリッジの上記第2方向の両側部に上記ノズル列を挟むようにして上記ノズル列と所定距離をおいて設けられており、下端が上記記録ヘッドよりも下側且つ上記支持部よりも上側に位置しており、上記第1方向に沿う軸を中心に回転可能な一対のローラと、上記第1駆動源、上記第2駆動源、及び上記記録ヘッドを制御する制御部と、を備える。上記制御部は、上記第1駆動源を停止させた状態で上記記録ヘッドにインク滴を吐出させて、シートに上記ローラが当接するようにシートを撓ませるパターンを形成する形成手段と、上記パターンが形成された後、上記第1駆動源の停止を維持した状態で上記第2駆動源を駆動して、上記キャリッジを移動させて上記一対のローラのローラ面のクリーニングを実行する第1制御手段と、を備える。
【0012】
(2) 上記第1制御手段は、上記キャリッジを、上記一対のローラの少なくとも一方が、上記パターンと対向する位置または上記パターンから上記第2方向において上記ローラの円周の長さ内で対向する位置を少なくとも通過させると共に、上記ローラの円周の長さ以上に相当する距離を移動させる。
【0013】
(3) 上記制御部は、上記第1制御手段によって上記キャリッジの移動が実行された後、上記第1駆動源を駆動して、上記搬送部にシートを搬送させる第2制御手段と、上記第2制御手段によって上記シートの搬送が実行された後、上記第2駆動源を駆動して、上記キャリッジを移動させて上記一対のローラのローラ面のクリーニングを実行する第3制御手段と、を更に備える。
【0014】
(4) 上記第3制御手段は、上記キャリッジを、上記一対のローラの少なくとも一方が、上記パターンと対向する位置または上記パターンから上記第2方向において上記ローラの円周の長さ内で対向する位置を少なくとも通過させると共に、上記ローラの円周の長さ以上に相当する距離を移動させる。
【0015】
(5) 上記形成手段は、上記パターンを形成した後、上記搬送部によって搬送されるシートよりも上記第2方向において外側の一側部に上記キャリッジを移動させる。上記第1制御手段は、上記キャリッジが上記一側部に移動された後、上記第2駆動源を駆動する。
【0016】
(6) 本発明のインクジェット記録装置は、シートを第1方向に搬送する搬送部と、上記搬送部を駆動する第1駆動源と、上記第1方向に搬送されるシートを支持する支持部と、上記支持部に支持されるシートに対して上記支持部と対向して設けられており、上記第1方向と直交する第2方向へ移動可能なキャリッジと、上記キャリッジを駆動する第2駆動源と、上記キャリッジに設けられており、上記支持部に支持されたシートに向けてインク滴を吐出する上記第1方向に沿ったノズル列が上記第2方向に並んで備えられる記録ヘッドと、上記キャリッジの上記第2方向の両端部に上記ノズル列と所定距離をおいて設けられており、下端が上記記録ヘッドよりも下側且つ上記支持部よりも上側に位置しており、上記第1方向に沿う軸を中心に回転可能な一対のローラと、上記第1駆動源、上記第2駆動源、及び上記記録ヘッドを制御する制御部と、を備える。上記制御部は、上記第1駆動源を停止させた状態で上記記録ヘッドにインク滴を吐出させて、シートに上記ローラが当接するようにシートを撓ませるパターンを形成する形成手段と、上記パターンが形成された後、上記第1駆動源を駆動して、上記搬送部にシートを搬送させる第4制御手段と、上記第4制御手段によって上記シートの搬送が実行された後、上記第2駆動源を駆動して、上記キャリッジを移動させて上記一対のローラのローラ面のクリーニングを実行する第5制御手段と、を備える。
【0017】
(7) 上記形成手段は、上記パターンを形成した後、上記搬送部によって搬送されるシートよりも上記第2方向において外側の一側部に上記キャリッジを移動させる。上記第4制御手段は、上記キャリッジが上記一側部に移動された後、上記第1駆動源を駆動する。
【0018】
(8) 上記制御部は、上記形成手段によって上記パターンが形成されてから当該パターンの乾燥のために要する時間が経過するまでの間、上記第2駆動源の駆動を停止させ、上記所定時間が経過した後に、上記一対のローラのローラ面のクリーニングを実行する。
【0019】
(9) 上記形成手段は、上記パターンを上記第1方向に沿って複数形成する。上記第1制御手段は、複数の上記パターンの内、最後のパターンが形成された後、上記第1駆動源の停止を維持した状態で、上記第2駆動源を駆動して、上記キャリッジを移動させて上記一対のローラのローラ面のクリーニングを実行する。
【0020】
(10) 上記形成手段は、上記パターンを上記第1方向に沿って複数形成する。
【0021】
(11) 本発明のインクジェット記録装置は、上記搬送部によって搬送されるシートよりも上記第2方向において外側に設けられ、上記ノズル列を覆うキャップを有し、上記キャップによって覆われる上記ノズル列のインクを吸引する吸引動作を行う吸引手段を更に備える。上記制御部は、上記吸引動作を制御し、上記吸引動作が行われた後に、上記一対のローラのローラ面のクリーニングを実行する。
【0022】
(12) 上記形成手段は、上記パターンを上記第2方向に沿って複数形成する。
【0023】
(13) 上記形成手段によって形成される複数のパターンのうち、隣接するパターンの間隔は、上記ローラの円周の長さの間隔以上である。
【0024】
(14) 上記形成手段によって形成される複数のパターンのうち、隣接するパターンの間隔は、上記キャリッジの上記第2方向の長さの間隔以上である。
【0025】
(15) 上記形成手段は、上記パターンを、当該パターンの上記第2方向の長さが上記第2方向における上記一対のローラ間の距離よりも小さくなるように形成する。
【0026】
(16) 上記記録ヘッドは、上記ノズル面から、第1サイズのインク滴と、上記第1サイズよりも大きい第2サイズのインク滴と、を吐出可能である。上記形成手段は、上記パターンを、上記第2サイズのインク滴によって形成する。
【0027】
(17) 上記形成手段は、上記パターンを、複数の上記ノズル列を構成する全てのノズルからインク滴を吐出することによって形成する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、制御部によってクリーニングが実行されると、パターンが形成されたシートが撓むことによって、シートとローラとが当接する。その状態で、キャリッジが第2方向に移動されると、ローラに付着したインクは、シートに吸収されて取り除かれる。つまり、本発明によれば、キャリッジに設けられたシートと接触可能なローラにインクが付着しても、制御部によるクリーニングによって、ローラからインクが取り除かれるため、その後のシートへの画像記録時において、当該インクによってシートが汚れることが防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、複合機1の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部2の主要構成を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図である。
【図4】図4は、記録部24の主要構成を模式的に示す正面図である。
【図5】図5は、一対のローラ61、62のローラ面のクリーニングについて説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、一対のローラ61、62のローラ面のクリーニングについて説明するためのフローチャートであり、(A)には変形例3の場合が示されており、(B)には変形例5の場合が示されている。
【図7】図7は、一対のローラ61、62のローラ面のクリーニングについて説明するために記録部24及び記録用紙19を模式的に示す平面図である。
【図8】図8は、一対のローラ61、62のローラ面のクリーニングについて説明するために記録部24及び記録用紙19を模式的に示す平面図であり、(A)には変形例2の場合が示されており、(B)〜(D)には変形例3の場合が示されており、(E)〜(H)には変形例4の場合が示されている。
【図9】図9は、変形例5における一対のローラ61、62のローラ面のクリーニングについて説明するために記録部24及び記録用紙19を模式的に示す平面図である。
【図10】図10は、一対のローラ61、62のローラ面のクリーニングについて説明するために記録部24及び記録用紙19を模式的に示す平面図であり、(A)と(B)には変形例6の場合が示されており、(C)には変形例8の場合が示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態に係る複合機1について説明する。なお、実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが「向き」と表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が「方向」と表現される。また、以下の説明においては、複合機1が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口6が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8が定義され、複合機1を手前側(正面)から見て左右方向9が定義される。
【0031】
[複合機1の外観]
図1を用いて、複合機1の外観について説明する。図1に示されるように、複合機1は、概ね直方体に形成されている。複合機1は、当該複合機1の下部に配置されたプリンタ部2(本発明のインクジェット記録装置の一例)と、上部に配置されたスキャナ部3とを備えている。複合機1は、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能等を有する。プリント機能以外の機能は任意のものである。例えば、本発明に係るインクジェット記録装置が、スキャナ部3が省略されたプリント機能のみを有するプリンタとして実施されてもよい。
【0032】
プリンタ部2は、コンピュータ等の外部情報機器から送信された印刷データに基づいて、記録用紙19(本発明のシートの一例)に画像を記録する。プリンタ部2は、正面に開口6が形成されている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21が、開口6の内側に上下2段に設けられている。スキャナ部3は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。なお、ここでは、スキャナ部3の詳細な説明は省略される。
【0033】
スキャナ部3の正面側の上面には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、各種操作ボタン10や液晶表示部11から構成されている。
【0034】
[給紙ローラ25]
図2に示されるように、プリンタ部2の下部に給紙トレイ20が設けられている。給紙トレイ20の上側に給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25が給紙モータ76(図5参照)から駆動伝達されて回転されることにより給紙トレイ20に収容された記録用紙19のうち最上位置の記録用紙19が後側(以下で説明される搬送路23の側)へ送り出される。
【0035】
[搬送路23]
図2に示されるように、給紙トレイ20の後端部から搬送路23が延出されている。給紙トレイ20に収容された記録用紙19は、搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて記録部24に至り、記録部24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
【0036】
[搬送ローラ対89及び排紙ローラ対92]
図2に示されるように、記録部24よりも後側の搬送路23には、搬送ローラ87及びピンチローラ88よりなる搬送ローラ対89(本発明の搬送部の一例)が設けられている。記録部24よりも前側の搬送路23には、排紙ローラ90及び拍車91よりなる排紙ローラ対92が設けられている。記録用紙19は、搬送路23を図2における破線に沿った方向である搬送方向15(本発明の第1方向に相当)に案内される。記録用紙19は、搬送ローラ対89によってプラテン42上へ搬送される。プラテン42上へ搬送された記録用紙19は、排紙ローラ対92によって排紙トレイ21へ搬送される。
【0037】
搬送ローラ87及び排紙ローラ90は、搬送モータ59(本発明の第1駆動源の一例)の回転駆動力が駆動伝達機構(不図示)を介して伝達されて駆動される。駆動伝達機構は、遊星ギヤなどから構成されている。例えば、搬送モータ59が正転した場合に、記録用紙19を搬送向き15(図2の破線に示される矢印の向き)に搬送させ、搬送モータ59が逆転した場合に、記録用紙19を搬送向き15と逆向きに搬送させる。
【0038】
[記録部24]
図2に示されるように、搬送路23には、記録部24が配置されている。記録部24は、インクジェット方式の記録ヘッド39(本発明の記録ヘッドの一例)と、記録ヘッド39を搭載するキャリッジ38(本発明のキャリッジの一例)とを備えている。キャリッジ38は、プリンタ部2のフレームなどによって、記録用紙19の搬送方向と直交する左右方向9(本発明の第2方向に相当)へ移動可能に支持されている。
【0039】
記録ヘッド39は、キャリッジ38の下面に配置されている。また、記録ヘッド39は、当該記録ヘッド39の下面に配置されると共に、インク滴を吐出する複数個のノズル40を備えている。ノズル40は、前後方向8に沿って複数個設けられている。この複数個のノズル40によって、ノズル40の列が構成される。ノズル40の列は、複数個設けられている。前後方向8に沿って延びた複数個のノズル40の各列は、相互に、左右方向9に並べられて配置されている。シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のインク滴が、複数個のノズル40のそれぞれの列から吐出される。
【0040】
また、記録ヘッド39は、記録ヘッド39の内部に設けられたインク流路の一部を変形させることでノズル40からインク滴を吐出させる圧電素子81(図5参照)を備えている。圧電素子81は、ノズル40のそれぞれに対応して設けられている。圧電素子81は、不図示のドライブ回路を介して後述する制御部130(図5参照)により給電されることで動作する。
【0041】
キャリッジ38が移動される間に、複数個のノズル40から各色インク滴が吐出される。これにより、プラテン42(本発明の支持部の一例)上を搬送される記録用紙19に画像が記録される。プラテン42は、板状の部材であり、搬送路23を搬送方向に沿って搬送される記録用紙19を支持する。プラテン42は、キャリッジ38と当該プラテン42に支持される記録用紙19に対して対向して設けられている。また、記録ヘッド39は、プラテン42に支持された記録用紙19に向けてインク滴を吐出する。
【0042】
図3に示されるように、一対のガイドレール43、44のそれぞれが前後方向8において対向して配置されると共に、左右方向9に延設されている。一対のガイドレール43、44は、プリンタ部2を構成する各部材を支持するフレームの一部である。キャリッジ38は、一対のガイドレール43、44を跨ぐようにして左右方向9に移動可能に載置されている。
【0043】
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動伝達機構46が配設されている。ベルト駆動伝達機構46は、駆動プーリ47と従動プーリ48と無端環状のベルト49とを有する。各プーリ47、48は、ガイドレール44の左右方向9の両端付近に設けられている。各プーリ47、48を架け渡すように、無端環状のベルト49が張架されている。駆動プーリ47の軸に、ガイドレール44の下面に設けられたキャリッジモータ80(図5参照、本発明の第2駆動源の一例)の駆動軸が連結されている。なお、以下において、キャリッジモータはCRモータと記される。CRモータ80の回転駆動力が駆動プーリ47に伝達されると、駆動プーリ47の回転によりベルト49が周運動する。
【0044】
キャリッジ38は、その底面側においてベルト49に連結されている。これにより、ベルト49が周運動すると、キャリッジ38がガイドレール43、44上を左右方向9に移動する。つまり、CRモータ80は、キャリッジ38を駆動する。これにより、キャリッジ38及びキャリッジ38に搭載された記録ヘッド39が左右方向9に移動される。
【0045】
[一対のローラ]
図4に示されるように、キャリッジ38の左右方向9の両側部には、右ローラ61及び左ローラ62よりなる一対のローラ(本発明の一対のローラの一例)が設けられている。また、右ローラ61及び左ローラ62は、キャリッジ38の下面に配置された記録ヘッド39を挟むように設けられている。つまり、右ローラ61は、最も右側に設けられたノズル40の列と当該右ローラ61の中心とを距離X1だけ隔てられてキャリッジ38に設けられている。また、左ローラ62は、最も左側に設けられたノズル40の列と当該左ローラ62の中心とを距離X2だけ隔てられてキャリッジ38に設けられている。なお、右ローラ61及び左ローラ62の前後方向8の長さは、ノズル40の列の前後方向の長さよりも大きい。図2及び図3においては、右ローラ61及び左ローラ62の記載は省略されている。
【0046】
なお、距離X1、X2の長さは適宜決定される。例えば、距離X1は、キャリッジ38が最高速度で移動中に、最も右側に設けられたノズル40の列から吐出されたインク滴が、記録用紙19に着弾する前に、右ローラ61に付着しない範囲で決定される。距離X2についても距離X1と同様である。
【0047】
右ローラ61は、前後方向8(図4の紙面垂直方向)に延びている。右ローラ61は、その前端及び後端を、キャリッジ38に回転可能に軸支されている。左ローラ62は、前後方向8に延びている。左ローラ62は、その前端及び後端を、キャリッジ38に回転可能に軸支されている。つまり、右ローラ61及び左ローラ62は、搬送方向に沿う軸を中心に回転可能である。
【0048】
右ローラ61及び左ローラ62のローラ面の下端は上下方向7において同じ高さに配置されている。詳細には、右ローラ61及び左ローラ62のローラ面の下端は、記録ヘッド39よりも下側且つプラテン42よりも上側に位置している。なお、本実施形態において、右ローラ61及び左ローラ62の直径は等しい。しかし、右ローラ61及び左ローラ62の直径は異なっていてもよい。
【0049】
[リニアエンコーダ52]
図3に示されるように、ガイドレール44には、エンコーダストリップ50が配設されている。ガイドレール44の左右方向9の両端には、ガイドレール44の上面から起立するように一対の支持用リブ33、34が形成されている。エンコーダストリップ50は、その両端部を支持用リブ33、34に係止されて、左右方向9に架設されている。
【0050】
エンコーダストリップ50には、光を透過させる透光部と光を遮断する遮光部とが長手方向に等ピッチで交互に配置されたパターンが記されている。キャリッジ38の上面のエンコーダストリップ50に対応する位置には、光学センサ35が設けられている。エンコーダストリップ50と光学センサ35とによって、キャリッジ38の左右方向9の位置を検知するリニアエンコーダ52が構成される。キャリッジ38が移動されると光学センサ35によってエンコーダストリップ50の透光部と遮光部が検出される毎に、光学センサ35がパルス信号を生成する。光学センサ35によって生成されたパルス信号は、後述する制御部130に出力される。
【0051】
[ロータリーエンコーダ68]
図2に示されるように、搬送ローラ87の回転量を検出するロータリーエンコーダ68が設けられている。ロータリーエンコーダ68は、搬送ローラ87と同軸に設けられて搬送ローラ87と共に回転するエンコーダディスク51と光学センサ60とからなる。エンコーダディスク51には、光が透過される透過部と光が透過されない非透過部とが円周方向に等ピッチで交互に配置されたパターンが形成されている。搬送ローラ87と共にエンコーダディスク51が回転すると、光学センサ60によってロータリーエンコーダ68の透過部と非透過部とが検出される毎にパルス信号が生成される。光学センサ60によって生成されたパルス信号は、後述する制御部130に出力される。
【0052】
[メンテナンス機構53]
図3に示されるように、搬送路23を搬送される記録用紙19が通過しない範囲、つまり搬送される記録用紙19の左右方向9の外側に、メンテナンス機構53(本発明の吸引手段の一例)が配置されている。メンテナンス機構53は、記録ヘッド39のノズル40内のインクの乾燥を防止したり、ノズル40から気泡や異物を吸引除去するものである。
【0053】
メンテナンス機構53は、キャップ55(本発明のキャップの一例)と、キャップ駆動機構(不図示)と、ポンプ(不図示)と、廃液タンク(不図示)と、ポンプチューブ(不図示)などを有する。キャップ55は、キャップ駆動機構によって記録ヘッド39に接離するように上下動される。ポンプは、キャップ55に接続されるチューブを介してノズル40に含まれるインク、気泡、及び異物を吸引する。廃液タンクは、ポンプに接続されるポンプチューブを介して、ポンプによって吸引されたインクなどを貯留する。
【0054】
以下に、メンテナンス機構53によるインクの吸引動作が説明される。インクの吸引動作が実行されると、まずキャリッジ38が右向きに移動されてノズル40がキャップ55の真上に位置される。次に、キャップ55がキャップ駆動機構によって上方に移動される。これにより、キャップ55は、記録ヘッド39から離間した位置から、記録ヘッド39に当接された位置に移動される。その結果、記録ヘッド39の下面に形成されたノズル40が、キャップ55に覆われる。ノズル40がキャップ55に覆われた状態で、ポンプが駆動される。これにより、ノズル40内のインク、気泡、及び異物が吸引される。
【0055】
[制御部130]
以下、図5が参照されて、制御部130(本発明の制御部の一例)の概略構成が説明される。制御部130は、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、ASIC135、及びこれらを相互に接続する内部バス137を備えている。
【0056】
ROM132には、CPU131が後述する停止制御を含む各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域として使用される。また、ROM132またはEEPROM134の少なくとも一方には、後述する一対のローラのクリーニング用のパターンが記憶されている。
【0057】
ASIC135には、各モータ(給紙モータ76、搬送モータ59、及びCRモータ80)を制御する駆動回路が組み込まれている。CPU131から所定のモータに応じた駆動回路に各モータを回転させるための駆動信号が入力されると、駆動信号に応じた駆動電流が駆動回路から対応するモータへ出力される。これにより、対応するモータが所定の回転速度で正転又は逆転する。
【0058】
また、ASIC135には、ロータリーエンコーダ68の光学センサ60、リニアエンコーダ52の光学センサ35、及び圧電素子81などが接続されている。
【0059】
CPU131は、光学センサ35からの検知信号に基づいてキャリッジ38の位置を算出する。また、CPU131は、光学センサ60からのパルス信号に基づいて搬送ローラ87の回転量を算出する。つまり、制御部130は、搬送ローラ87によって搬送されている記録用紙19の搬送量を検知する。
【0060】
また、CPU131は、圧電素子81への給電を制御し、複数のノズル40からインク滴を吐出させる。また、CPU131は、圧電素子81への給電を調整することにより、ノズル40から吐出されるインク滴の大きさを調整する。つまり、記録ヘッド39は、ノズル面から、小サイズ(本発明の第1サイズに相当)のインク滴と、大サイズ(本発明の第2サイズに相当)のインク滴と、の少なくとも2種類のインク滴を、吐出可能である。
【0061】
制御部130は、以下で説明するように、図6に示されるフローチャートにしたがって、搬送モータ59、CRモータ80、及び記録ヘッド39を制御することによって、右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニングを実行する。これにより、本発明が実現される。
【0062】
[右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニング]
以下、図6(A)のフローチャート及び図7に基づいて、右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニング処理が説明される。なお、以下において、図7〜図10は、クリーニング処理を説明するための模式図である。図7〜図10では、本来はキャリッジ38に上方を覆われて視認できないパターンが、キャリッジ38との位置関係を明確にするために、キャリッジ38と重畳された状態で描かれている。
【0063】
ユーザが、操作パネル4の操作ボタン10を操作することによって、右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニングを実行する旨をプリンタ部2に指示する。すると、制御部130は、操作パネル4の液晶表示部11に、記録用紙19を給紙トレイ20にセットしてスタートボタンを押すように促すメッセージを表示させる(SA1)。ここで、スタートボタンは、操作パネル4に設けられている複数の操作ボタン10のうちの一つであり、印刷動作などを開始する際に押下されるボタンである。
【0064】
ユーザがスタートボタンを押下すると(SA2:Yes)、制御部130は、給紙ローラ25を回転させて、給紙トレイ20に収容された記録用紙19を搬送路23へ給送させる。更に、制御部130は、搬送ローラ87を回転させて、搬送路23へ搬送された記録用紙19を記録部24の直下へ搬送させる(SA3)。
【0065】
記録用紙19が記録ヘッド39の直下に搬送されると、制御部130は、ROM132またはEEPROM134に記憶されるパターンの情報を参照して、記録ヘッド39を制御し、記録用紙19に向けてインク滴を吐出させる。本実施形態では、制御部130は、搬送モータ59を停止させた状態で、記録ヘッド39に、複数個のノズル40の一部のノズルから、大サイズのインク滴を吐出させる。これにより、記録用紙19には、図7(A)に示されるような、矩形の黒色のパターンP(本発明のパターンの一例)が形成される(SA4)。すると、図4に破線で示されるように、記録用紙19は、パターンP及びその近傍の部分において撓む。その結果、図4に示されるように、右ローラ61及び左ローラ62が記録用紙19の撓んだ部分と対向したとき、右ローラ61及び左ローラ62は当該撓んだ部分と当接する。つまり、制御部130は、記録ヘッド39にインク滴を吐出させて、記録用紙19に右ローラ61及び左ローラ62が当接するように記録用紙19を撓ませるパターンを形成する。ステップSA4の処理は、本発明の形成手段の一例である。
【0066】
また、本実施形態において、図7(A)に示されるように、制御部130によって形成されるパターンの左右方向9の長さは、右ローラ61及び左ローラ62間の距離よりも小さい。なお、制御部130によって形成されるパターンの左右方向9の長さは、右ローラ61及び左ローラ62間の距離以上であってもよい。
【0067】
なお、上述のステップSA4においては、制御部130は、記録ヘッド39に大サイズのインク滴を吐出させ、矩形の黒色のパターンPを形成させた。しかし、ステップSA4で形成されるパターンPは、矩形且つ黒色で塗りつぶされたパターンに限らない。つまり、パターンPは、記録用紙19が撓むのに十分な量のインクが記録用紙19に着弾されたものであればよい。例えば、パターンPは、円形でもよいし、黒色ではなく赤色などの他の色であってもよいし、グラデーションが施されていてもよい。また、制御部130は、記録ヘッド39に小サイズのインク滴を吐出させてパターンPを形成させてもよい。
【0068】
制御部130は、CRモータ80を駆動して、図7(B)に示されるように、キャリッジ38を右方へ移動させる(SA5)。これにより、左ローラ62が、記録用紙19におけるパターンPの右側近傍と対向する。本実施形態において、前述のパターンPの右側近傍とは、パターンPから左ローラ62の円周の長さ内のことである。なお、制御部130は、キャリッジ38を、左ローラ62がパターンPと対向する位置に移動させてもよい。また、制御部130は、キャリッジ38を、左ローラ62がパターンPの左側近傍と対向する位置に移動させてもよい。
【0069】
制御部130は、クリーニング移動回数iを0に設定する(SA6)。ここで、クリーニング移動回数iは、記憶部に記憶された変数であり、クリーニング処理においてキャリッジ38が左右方向9の片方向に移動された回数を示す。
【0070】
制御部130は、CRモータ80を駆動して、キャリッジ38を右方へ移動させる(SA7)。本実施形態において、ステップSA7におけるキャリッジ38の移動距離は、左ローラ62のローラ面の円周の長さに相当する距離である。なお、ステップSA7におけるキャリッジ38の移動距離は、左ローラ62のローラ面の円周の長さに相当する距離よりも長い距離であってもよい。
【0071】
制御部130は、クリーニング移動回数iをインクリメントして(SA8)、インクリメント後のクリーニング移動回数iがクリーニング設定回数以上であるか否かを判定する(SA9)。ここで、クリーニング設定回数は、記憶部に記憶された定数であり、クリーニング処理においてキャリッジ38が左右方向9の片方向に移動すべき回数を示す。本実施形態においては、クリーニング設定回数は3に設定されるが、3以外の回数に設定されてもよい。
【0072】
クリーニング移動回数iがクリーニング設定回数以上である場合(SA9:Yes)、左ローラ62のローラ面のクリーニング処理は終了する。一方、クリーニング移動回数iがクリーニング設定回数未満である場合(SA9:No)、制御部130は、CRモータ80を駆動して、キャリッジ38を左方へ移動させる(SA10)。本実施形態において、ステップSA10におけるキャリッジ38の移動距離は、左ローラ62のローラ面の円周の長さに相当する距離である。なお、ステップSA10におけるキャリッジ38の移動距離は、左ローラ62のローラ面の円周の長さに相当する距離よりも長い距離であってもよい。
【0073】
次に、制御部130は、ステップSA8、SA9と同様の処理を実行する(SA11、SA12)。但し、ステップSA12において、クリーニング移動回数iがクリーニング設定回数未満である場合(SA12:No)、制御部130は、CRモータ80を駆動して、キャリッジ38を左方ではなく右方へ移動させる(SA7)。
【0074】
つまり、制御部130は、図7(C)に示されるように、クリーニング移動回数iがクリーニング設定回数以上となるまで、キャリッジ38を右方及び左方へ交互に移動させる。つまり、クリーニング移動回数iが1のとき、キャリッジ38は左右方向9のうちの一方の向き(本実施形態では右向き)に移動され、クリーニング移動回数iが2のとき、キャリッジ38は左右方向9に一回往復移動される。本実施形態において、クリーニング設定回数は3であるため、キャリッジ38は、初めに右方へ移動され、次に左方へ移動され、最後に右方へ移動される。そして、最後の右方への移動が完了すると、左ローラ62のローラ面のクリーニング処理は終了する。
【0075】
なお、以上の説明では、左ローラ62のローラ面のクリーニングが実行されているが、右ローラ61のローラ面のクリーニングも、上述した左ローラ62のローラ面のクリーニングと同様にして実行される(SA13)。例えば、ステップSA9、SA12において、クリーニング移動回数iがクリーニング設定回数未満である場合(SA9、SA12:Yes)、制御部130は、図7(D)に示されるように、キャリッジ38を左方へ移動させる。これにより、右ローラ61が、記録用紙19におけるパターンPの左側近傍と対向する。その後、制御部130は、ステップSA6〜SA12と同様の処理を実行する。右ローラ61のローラ面のクリーニングにおいては、SA7に相当する処理は、右ローラ61のローラ面の長さ以上の距離だけキャリッジ38を左に移動する。SA10に相当する処理は、右ローラ61のローラ面の長さ以上の距離だけキャリッジ38を右に移動する。これにより、図7(E)に示されるように、キャリッジ38は右方及び左方へ交互に移動される。その結果、右ローラ61のローラ面はクリーニングされる。
【0076】
以上のように、記録用紙19上にインクによるパターンPが形成されると、パターンPが形成されている部分及びその近傍は上方に撓む(例えば図4)。これにより、右ローラ61及び左ローラ62は、記録用紙19における上方に撓んだ部分と当接可能となる。このような状態で、右ローラ61及び左ローラ62が、パターンPの近傍を左右方向9に往復動されると、右ローラ61及び左ローラ62のローラ面に付着されているインクが、記録用紙19に転写される。その結果、右ローラ61及び左ローラ62のローラ面はクリーニングされる。つまり、制御部130は、パターンPが形成された後、CRモータ80を駆動して、キャリッジ38を移動させて右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニングを実行する。
【0077】
また、以上説明されたステップSA6以降の処理においては、制御部130は、搬送モータ59を駆動して、搬送ローラ対89に記録用紙19を搬送させない。つまり、制御部130は、パターンPが形成されてから、一対のローラ61、62のローラ面のクリーニングのためにCRモータ80が駆動されるまでの間、搬送モータ59を停止させる。換言すると、制御部130は、パターンPが形成されてから、本発明の第1制御手段によってCRモータ80が駆動されるまでの間、搬送モータ59を停止させる。以上より、ステップSA5〜SA12の処理は、本発明の第1制御手段の一例である。
【0078】
[実施形態の効果]
制御部130による右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニングにおいて、記録用紙19上にインクによるパターンPが形成されると(SA4)、パターンPが形成されている部分及びその近傍は、上方に撓む。記録用紙19における上方に撓んだ部分は、右ローラ61及び左ローラ62と当接する。
【0079】
制御部130が記録用紙19上にパターンPを形成した直後(SA4)、キャリッジ38と記録用紙19上のパターンPとは、搬送方向において同位置である。この状態で、制御部130は、記録用紙19を搬送方向に搬送させることなく、キャリッジ38を左右方向9に移動させる(SA6〜SA12)。これにより、キャリッジ38に設けられた右ローラ61及び左ローラ62は、記録用紙19上のパターンPが形成されている部分及びその近傍、つまり記録用紙19における上方に撓んだ部分と当接する。このとき、右ローラ61及び左ローラ62にインクが付着していると、当該インクは、記録用紙19に吸収される。以上より、制御部130によるクリーニングによって、右ローラ61及び左ローラ62のローラ面からインクを取り除くことができる。
【0080】
そして、以上のような処理によって、右ローラ61及び左ローラ62からインクを取り除いておくことによって、その後の画像記録時において記録用紙19が右ローラ61及び左ローラ62と当接しても、右ローラ61及び左ローラ62にはインクが付着していないため、記録用紙19が汚れることが防止可能である。
【0081】
また、本実施形態においては、上述したように、記録用紙19において上方に撓んだ部分が、右ローラ61及び左ローラ62と当接するのであり、記録用紙19において他の部分は右ローラ61及び左ローラ62と当接しない。本実施形態においては、キャリッジ38は、右ローラ61及び左ローラ62と記録用紙19の撓んだ部分とが対向する位置において移動される。よって、右ローラ61及び左ローラ62に付着したインクを取り除く際のキャリッジ38の移動を少なく抑えることができる。
【0082】
また、本実施形態においては、キャリッジ38は右ローラ61及び左ローラ62の円周の長さに相当する距離を移動される。よって、右ローラ61及び左ローラ62の全周に付着したインクを取り除くことができる。
【0083】
また、本実施形態においては、パターンPは右ローラ61及び左ローラ62のローラ面の近傍に形成されるため、クリーニングにおけるキャリッジ38の移動量を少なくすることができる。
【0084】
また、本実施形態においては、パターンPが大サイズのインク滴によって形成されるため、パターンPの形成の際に記録用紙19に着弾されるインク量が多くなる。また、本実施形態においては、パターンPの形成の際に全てのノズルからインク滴が吐出されるため、パターンPの形成の際に記録用紙19に着弾されるインク量が多くなる。以上により、記録用紙19が撓みやすくなり、右ローラ61及び左ローラ62と記録用紙19とが当接しやすくなる。その結果、右ローラ61及び左ローラ62に付着したインクを効率よく取り除くことができる。
【0085】
[変形例1]
上述の実施形態のステップSA5においては、図7(B)に示されるように、パターンPが形成された後、キャリッジ38は、右向きに移動された。この場合、左ローラ62は、パターンPの上側を移動する。このとき、パターンPを構成するインクが乾いておらず、且つインクによって撓んだ記録用紙19が左ローラ62と当接した場合、左ローラ62にインクが付着してしまうおそれがある。
【0086】
そこで、パターンPが形成された後、キャリッジ38は、右ローラ61及び左ローラ62がパターンPと当接しないように、移動されてもよい。例えば、図7(F)〜(H)に示されるように、パターンPが形成された後、制御部130は、搬送モータ59を駆動して、搬送ローラ対89及び排紙ローラ対92に、記録用紙19を搬送向き(前向き)に搬送させる(図7(F))。次に、制御部130は、CRモータ80を駆動して、キャリッジ38を右向きに移動させる(図7(G))。最後に、制御部130は、再び搬送モータ59を駆動して、搬送ローラ89及び排紙ローラ対92に、記録用紙19を搬送向きと逆向き(後向き)に搬送させる(図7(H))。以上より、キャリッジ38は、パターンPと当接することなく、左ローラ62がパターンPの右側近傍と対向する位置に移動される。
【0087】
なお、上述の実施形態では、制御部130は、パターンPが形成された後、CRモータ80が駆動されるまでの間、搬送モータ59を駆動させなかった。しかし、変形例1では、制御部130は、パターンPが形成された後、CRモータ80が駆動されるまでの間に、搬送モータ59を駆動させる。つまり、パターンPが形成された後における搬送モータ59の駆動は、本発明の第4制御手段の一例であり、また第4制御手段による処理の実行後のクリーニングの実行(SA6〜SA13)は、本発明の第5制御手段の一例である。
【0088】
[変形例2]
上述のステップSA5においては、制御部130は、キャリッジ38を移動させることによって、左ローラ62をパターンPの右側近傍またはパターンP自体と対向させた。また、制御部130は、キャリッジ38を移動させることによって、右ローラ61をパターンPの左側近傍またはパターンP自体と対向させた。つまり、制御部130は、キャリッジ38を移動させることによって、右ローラ61または左ローラ62の一方をパターンPの近傍またはパターンP自体と対向させた。
【0089】
しかし、制御部130は、右ローラ61及び左ローラ62の双方をパターンPの近傍またはパターンP自体と対向させてもよい。また、制御部130は、キャリッジ38を移動させることなく、各ローラ61、62をパターンPの近傍またはパターンP自体と対向させてもよい。
【0090】
例えば、ステップSA4において、制御部130は、記録ヘッド39に、複数のノズル列を構成する全てのノズルから、インク滴を吐出させる(図8(A)参照)。すると、パターンPが形成された状態において、右ローラ61はパターンPの右側近傍と対向し、左ローラ62はパターンPの左側近傍と対向する。つまり、右ローラ61及び左ローラ62の双方が、パターンPの近傍と対向する。よって、制御部130は、このままステップSA6以降を実行すればよく、ステップSA5のキャリッジ38の移動を実行する必要はない。
【0091】
[変形例3]
上述の実施形態においては、制御部130は、記録ヘッド39に、1つのパターンPを形成させた(図6(A)のステップSA4、及び図7参照)。しかし、制御部130は、記録ヘッド39に、左右方向9に沿って複数のパターンを形成させてもよい。
【0092】
例えば、変形例3では、記録用紙19に複数のパターンが形成される一例が説明される。つまり、変形例3では、記録用紙19に2つの隣接するパターンP1、P2が形成され(図8(B)参照)、隣接するパターンP1、P2の間隔は、右ローラ61又は左ローラ62の円周の長さの間隔以上である。なお、パターンは3つ以上形成されてもよい。
【0093】
以下、図6(B)のフローチャート及び図8(B)〜(D)に基づいて、変形例3における右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニング処理が説明される。変形例3の処理(図6(B)参照)では、上述の実施形態の処理(図6(A)参照)におけるステップSA4、SA5がステップSB1〜SB3に置換されている。以下、この置換された処理が説明され、上述の実施形態の処理と同様の処理については、その詳細な説明が省略される。
【0094】
ステップSA3が実行されることによって、記録用紙19が記録部24の直下に搬送されると、制御部130は、ROM132またはEEPROM134に記憶されるパターンの情報を参照して、記録ヘッド39に、記録用紙19に向けてインク滴を吐出させる。変形例3でも上述の実施形態と同様に、制御部130は、記録ヘッド39に、各ノズル列の一部のノズルから、大サイズのインク滴を吐出させる。また、変形例3では、上述の実施形態と異なり、記録ヘッド39に形成されているノズルのうち、右端部及び左端部のノズルからインク滴が吐出され、左右方向9の中央部のノズルからはインク滴が吐出されない。これにより、記録用紙19には、図8(B)に示されるような、2つの矩形の黒色のパターンP1、P2が形成される(SB1、SB2)。
【0095】
なお、変形例3では、パターンP1、P2が同時に形成されているが、パターンP1、P2は順番に形成されてもよい。例えば、制御部130は、記録ヘッド39のノズルからインク滴を吐出させてパターンP1を形成させ(SB1)、その後、キャリッジ38を左右方向に移動させてから、ステップSB1と同様にしてパターンP2を形成させてもよい(SB2)。
【0096】
制御部130は、CRモータ80を駆動して、図8(C)に示されるように、キャリッジ38を右方へ移動させる(SB3)。これにより、左ローラ62は、記録用紙19におけるパターンP1、P2の間の領域と対向する。つまり、左ローラ62は、ステップSB1、SB2においてインク滴が吐出されなかった左右方向9の中央部と対向する。以下、ステップSB4において、上述の実施形態と同様の処理が実行される(SA6〜SA13)。つまり、図8(D)に示されるように、キャリッジ38が左右方向9に移動されることによって、左ローラ62がクリーニングされる。なお、ステップSB3において、キャリッジ38が左方へ移動されることにより、右ローラ61が記録用紙19におけるパターンP1、P2の間の領域と対向する。この状態において、キャリッジ38が左右方向9に移動されることによって、右ローラ61がクリーニングされる。
【0097】
以下に変形例3の効果が説明される。記録用紙19における隣接する2つのパターンP1、P2の間の領域では、記録用紙19の撓みは、各パターンP1、P2の撓みによる相乗効果によって大きくなる。変形例3によれば、前記のように撓みが大きくなった領域において、キャリッジ38が移動されることによって、右ローラ61及び左ローラ62と記録用紙19とが当接しやすくなる。これにより、右ローラ61及び左ローラ62に付着したインクを効率よく取り除くことができる。
【0098】
[変形例4]
変形例3では、ステップSB1、SB2で形成された2つのパターンP1、P2の相互の間隔は、右ローラ61及び左ローラ62の円周の長さの間隔以上であった。しかし、図8(E)〜(G)に示されるように、記録用紙19に形成された隣接する2つのパターンP1、P2の間隔は、キャリッジ38の左右方向9の長さの間隔以上であってもよい。なお、変形例4においても、変形例3と同様に、パターンは3つ以上形成されてもよい。
【0099】
以下、図6(B)のフローチャート及び図8(E)〜(G)に基づいて、変形例4における右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニング処理が説明される。変形例4の処理手順は変形例3の処理手順とほぼ同様であるが、ステップSB1〜SB3の処理内容が変形例3とは若干異なる。以下、この異なる処理が説明され、上述の実施形態及び変形例3の処理と同様の処理については、その詳細な説明が省略される。
【0100】
ステップSA3が実行されることによって、記録用紙19が記録部24の直下に搬送されると、制御部130は、記録ヘッド39に、記録用紙19に向けてインク滴を吐出させる。変形例4では、上述の実施形態と同様に、制御部130は、記録ヘッド39に、各ノズル列の一部のノズルから、大サイズのインク滴を吐出させる。これにより、記録用紙19には、図8(E)に示されるように、第1の矩形の黒色のパターンP1が形成される(SB1)。
【0101】
次に、制御部130は、キャリッジ38を右向きに移動させてから、記録ヘッド39のノズルから大サイズのインク滴を吐出させる。これにより、記録用紙19には、図8(E)に示されるように、第2の矩形の黒色のパターンP2が形成される(SB2)。
【0102】
次に、制御部130は、キャリッジ38を左向きに移動させて、キャリッジ38をパターンP1、P2の間に位置させる(図8(F)参照)。以下、上述の実施形態と同様の処理が実行される(SA6〜SA13)。つまり、図8(G)に示されるように、キャリッジ38が2つのパターンP1、P2の間で左右方向9に移動されることによって、右ローラ61及び左ローラ62がクリーニングされる。
【0103】
以下に変形例4の効果が説明される。変形例4によれば、隣接する2つのパターンの間にキャリッジ38が配置されることにより、右ローラ61が2つのパターンのうちの一方の近傍と対向され、左ローラ62が2つのパターンのうちの他方の近傍と対向された状態になる。これにより、右ローラ61及び左ローラ62の双方が、記録用紙19と当接しやすくなる。その結果、右ローラ61及び左ローラ62に付着したインクを効率よく取り除くことができる。
【0104】
[変形例5]
パターンPが左右方向9に沿って複数形成される例として、変形例3、4とは異なる例が変形例5において説明される。変形例5では、図9に示されるように、左右方向9に沿って3つのパターンP0、P1、P2が形成される。
【0105】
以下、図6(C)のフローチャート及び図9に基づいて、変形例5における右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニング処理が説明される。以下、上述の実施形態、変形例3、及び変形例4と異なる処理が説明され、上述の実施形態、変形例3、及び変形例4と同様の処理については、その詳細な説明が省略される。
【0106】
ステップSA3が実行されることによって、記録用紙19が記録部24の直下に搬送されると、制御部130は、パターン数kを0に設定する(SC1)。ここで、パターン数kは、記憶部に記憶された変数であり、クリーニング処理において記録用紙19に実際に形成されたパターンの個数を示す。
【0107】
制御部130は、キャリッジ38をパターンを形成させる位置(図9(A)参照)に移動させる。その後、制御部130は、ROM132またはEEPROM134に記憶されるパターンの情報を参照して、記録ヘッド39に、複数のノズル列を構成する全てのノズルから、記録用紙19に向けてインク滴を吐出させる(SC2)。これにより、記録用紙19にパターンP0が形成される(図9(A)参照)。
【0108】
次に、制御部130は、パターン数kをインクリメントして(SC3)、インクリメント後のパターン数kがパターン設定数以上であるか否かを判定する(SC4)。ここで、パターン設定数は、記憶部に記憶された定数であり、クリーニング処理において記録用紙19に形成されるべきパターンの数を示す。なお、本実施形態においては、パターン設定数は3に設定されるが、3以外の数に設定されてもよい。
【0109】
パターン数kがパターン設定回数以上である場合(SC4:Yes)、後述するステップSC5以降の処理が実行される。一方、パターン数kがパターン設定数未満である場合(SC4:No)、制御部130は、キャリッジ38をパターンを形成させる位置(図9(B)参照)に移動させる。以下、ステップSC4において、パターン数kがパターン設定数以上であると判定されるまで、ステップSC2〜SC4が繰り返し実行される。以上の処理により、記録用紙19には、図9(A)に示されるような3つのパターンP0、P1、P2が形成される。
【0110】
パターン数kがパターン設定回数以上である場合(SC4:Yes)、制御部130は、パターン数kを0に設定する(SC5)。制御部130は、キャリッジ38を、各ローラ61、62がパターンP0の近傍と対向する位置に移動させる(SC6、図9(A)参照)。その後、上述の実施形態のステップSA6〜SA13と同様の処理が実行される(SC7)。つまり、図9(A)に示されるように、キャリッジ38がパターンP0と対向する位置において左右方向9に移動されることによって、右ローラ61及び左ローラ62がクリーニングされる。次のステップSC8、SC9の処理は、上述したステップSC3、SC4と同様の処理である。
【0111】
以下、ステップSC9において、パターン数kがパターン設定数以上であると判定されるまで、ステップSC6〜SC9が繰り返される。つまり、制御部130は、キャリッジ38を、各ローラ61、62がパターンP1の近傍と対向する位置に移動させた上で、各ローラ61、62をクリーニングし(図9(B)参照)、その後、キャリッジ38を、各ローラ61、62がパターンP2の近傍と対向する位置に移動させた上で、各ローラ61、62をクリーニングする(図9(C)参照)。
【0112】
変形例5によれば、キャリッジ38が左右方向9に移動された後、ユーザは、記録用紙19における複数のパターンP0、P1、P2の各々の近傍に付着したインク(例えばインクの付着面積やインクの濃度)を目視することによって、右ローラ61及び左ローラ62に付着したインクが取り除かれたか否かを容易に判断することができる。具体的には、目視によってパターンの近傍にインクが確認される場合、右ローラ61及び左ローラ62のローラ面にインクが残留している可能性があると判断可能である。一方、目視によってパターンの近傍にインクが確認されない場合、右ローラ61及び左ローラ62のローラ面にインクが残留している可能性がないと判断可能である。
【0113】
図9では、パターンP0、P1の近傍にはインク37、41が確認される一方、パターンP2の近傍にはインクが確認されない。つまり、パターンP0、P1の近傍において、各ローラ61、62がクリーニングされていた段階では、各ローラ61、62のローラ面にインクが残留していた。一方、パターンP2の近傍において、各ローラ61、62がクリーニングされていた段階では、各ローラ61、62のローラ面にインクが残留していなかった。
【0114】
[変形例6]
変形例3〜5においては、制御部130は、記録ヘッド39に、左右方向9に沿って複数のパターンを形成させた。しかし、図10(A)に示されるように、制御部130は、記録ヘッド39に、搬送方向(前後方向8)に沿って複数のパターンを形成させてもよい。
【0115】
図10(A)に示されるようなパターンP0、P1、P2が形成され、当該パターンP0、P1、P2の近傍において各ローラ61、62のクリーニングが実行されるためには、図6(C)のフローチャートとほぼ同様な処理が実行されるとよい。具体的には、図6(C)のフローチャートのステップSC2において、制御部130は、1つ目のパターンP0を形成後、キャリッジ38を移動させるのではなく搬送モータ59を駆動して、記録用紙19を搬送向き15に搬送させる。そして、制御部130は、記録ヘッド39にインク滴を吐出させることによって、記録用紙19に2つ目のパターンP1を形成すればよい。
【0116】
これにより、ステップSC2において、制御部130が記録用紙19を搬送向き15に搬送させることによって、パターン数kがパターン設定回数の3以上となったときに(SC4:Yes)、図10(A)に示されるようなパターンP0、P1、P2が記録用紙19に形成されている。なお、各パターンは、搬送向きにP0、P1、P2の順に形成されている。また、パターンの形成が完了したとき、キャリッジ38は、図10(A)に示されるように、最後に形成されたパターンP2と対向している。
【0117】
本実施形態では、次に、ステップSC6において、制御部130は、搬送ローラ対89に、記録用紙19をパターンP0、P1、P2の搬送方向の長さL以内で搬送向き15に搬送させる。なお、上述の記録用紙19の搬送は、長さL以上であってもよい。次に、制御部130は、左ローラ62及びパターンP2の左右方向9の位置が同じとなるように、キャリッジ38を移動させる。これにより、キャリッジ38は、記録用紙19に対して、図10(A)の実線で示された位置から破線で示された位置に移動される。その後、上述の実施形態のステップSA6〜SA13と同様の処理が実行される(SC7)。つまり、図10(B)に実線で示されるように、キャリッジ38がパターンP2の前側と対向する位置において左右方向9に移動されることによって、右ローラ61及び左ローラ62がクリーニングされる。
【0118】
以下、ステップSC9において、パターン数kがパターン設定数以上であると判定されるまで、ステップSC6〜SC9が繰り返される。制御部130は、記録用紙19を搬送向き15と逆向きに搬送させて、左ローラ62をパターンP2とP1との間に位置させた上で、左ローラ62をクリーニングする(図10(B)の破線を参照)。その後、記録用紙19を搬送向き15と逆向きに更に搬送させて、左ローラ62をパターンP1とP0との間に位置させた上で、左ローラ62をクリーニングする(図10(B)の一点鎖線を参照)。
【0119】
以上より、制御部130は、ステップSC2においてパターンP0、P1、P2を形成した後、搬送モータ59を駆動して、搬送ローラ対89に記録用紙19を搬送させる(SC6)。変形例6におけるステップSC6の処理は、本発明の第4制御手段の一例である。
【0120】
また、制御部130は、ステップSC6における記録用紙19の搬送が実行された後、CRモータ80を駆動して、キャリッジ38を移動させて右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニングを実行する(SC7)。つまり、変形例6におけるステップSC7の処理、換言すると変形例6におけるステップSA6〜SA13の処理は、本発明の第5制御手段の一例である。変形例6によれば、パターンが左右方向9に沿って複数形成された変形例5と同様の効果を奏する。
【0121】
[変形例7]
変形例6においては、制御部130は、ステップSC2においてパターンP0、P1、P2を形成した後、搬送モータ59を駆動して、搬送ローラ対89に記録用紙19を搬送させた。ここで、制御部130は、ステップSC2においてパターンP0、P1、P2を形成した後、記録用紙19を搬送させる前(つまり、図10(A)に実線で示される状態)において、キャリッジ38を左右方向9に移動させて、右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニングを実行させてもよい。このような処理は、本発明の第1制御手段の一例である。そして、その後、制御部130は、搬送モータ59を駆動して、搬送ローラ対89に記録用紙19を搬送方向の長さL以内で搬送向きに搬送させてもよい。具体的には、制御部130は、キャリッジ38を、記録用紙19に対して、図10(A)の実線で示された位置から破線で示された位置に移動させてもよい。このような処理は、本発明の第2制御手段の一例である。そして、記録用紙19の搬送後、制御部130は、再びCRモータ80を駆動して、キャリッジ38を左右方向9に移動させて(図10(B)の実線参照)、右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニングを実行させてもよい。このような処理は、本発明の第3制御手段の一例である。
【0122】
以上より、この変形例7においては、制御部130は、キャリッジ38の移動が実行された後、搬送モータ59を駆動して、搬送ローラ対89に記録用紙19を搬送させる(上記の第2制御手段)。また、変形例7においては、制御部130は、記録用紙19の搬送が実行された後、CRモータ80を駆動して、キャリッジ38を移動させる(上記の第3制御手段)。
【0123】
変形例7によれば、搬送される記録用紙19の繊維の流れが左右方向9に沿っている場合、記録用紙19は搬送方向に沿って撓みやすい。このような場合、パターンの搬送方向の端部における記録用紙19の撓みは、パターンの左右方向9の端部における記録用紙19の撓みよりも大きくなる。つまり、パターンの搬送方向の両端部においては、パターンの左右方向9の両端部よりも、右ローラ61及び左ローラ62と記録用紙19とは当接しやすくなる。したがって、搬送される記録用紙19の繊維の流れが左右方向9に沿っている場合でも、右ローラ61及び左ローラ62に付着したインクを効率よく取り除くことができる。
【0124】
[変形例8]
変形例5においては、制御部130は、記録ヘッド39に、左右方向9に沿って複数のパターンを形成させた。また、変形例6においては、制御部130は、記録ヘッド39に、搬送方向(前後方向8)に沿って複数のパターンを形成させた。そして、変形例5と変形例6とは組み合わされてもよい。つまり、制御部130は、記録ヘッド39に、左右方向9及び前後方向8に沿って複数のパターンを形成させてもよい。例えば、制御部130は、図10(C)に示されるような9つのパターンを、記録用紙19に形成させてもよい。
【0125】
変形例8の場合、制御部130は、最も前側のパターン列P00、P01、P02(第1パターン列)に対して変形例5と同様の処理を実行し、次に前後方向8における中央のパターン列P10、P11、P12(第2パターン列)に対して変形例5と同様の処理を実行し、最後に最も後側のパターン列P20、P21、P22(第3パターン列)に対して変形例5と同様の処理を実行する。つまり、制御部130は、各パターン列(第1パターン列、第2パターン列、及び第3パターン列)に対して変形例6と同様の処理を実行する。
【0126】
[変形例9]
制御部130は、上述した右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニング処理を、吸引動作の後で実行してもよい。つまり、制御部130は、メンテナンス機構53及びCRモータ80を制御して、吸引動作を実行する。そして、その後、搬送モータ59、CRモータ80、及び記録ヘッド39を制御して、右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニング処理を実行する。
【0127】
変形例9によれば、メンテナンス機構53がインクを吸引した際に、キャップ55に残存するインクが空間を浮遊するインクミストとなり、当該インクミストが右ローラ61及び左ローラ62に付着する可能性がある。変形例9においては、制御部130が、吸引動作後に右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニングを実行する。これにより、吸引動作によって右ローラ61及び左ローラ62のローラ面にインクミストが付着しても、当該インクミストを右ローラ61及び左ローラ62のローラ面から除去することができる。
【0128】
[変形例10]
制御部130は、パターンを形成した後、当該パターンが乾いてから右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニング処理を実行してもよい。
【0129】
例えば、制御部130は、内部にカウンタ回路を備えておいた上で当該カウンタ回路によって、或いはソフトウェアによって、パターンの形成が完了してからの時間をカウントする。制御部130は、カウントされた時間が予め設定された設定時間を超えていない場合に、CRモータ80の駆動を停止させておく。そして、制御部130は、カウントされた時間が予め設定された設定時間を超えた場合に、CRモータ80を駆動させて、右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニング処理を実行する。なお、設定時間は、記録用紙19に着弾されたインク滴が乾くのに十分な時間が設定される。
【0130】
変形例10によれば、以下の2つの効果のうちの少なくとも一方の効果を奏する。第1の効果は、以下の通りである。つまり、記録用紙19上のパターンを構成するインクが乾いていない状態で右ローラ61及び左ローラ62とパターンとが当接すると、右ローラ61及び左ローラ62にインクが付着する可能性がある。しかし変形例10によれば、上記のような右ローラ61及び左ローラ62へのインクの付着を防止することができる。第2の効果は、以下の通りである。つまり、付着したインクが乾燥した状態の記録用紙19は、付着したインクが乾燥していない状態の記録用紙19よりも、撓み量が大きくなる。よって、右ローラ61及び左ローラ62と記録用紙19とが当接しやすくなる。その結果、右ローラ61及び左ローラ62に付着したインクを効率よく取り除くことができる。
【0131】
[変形例11]
制御部130は、パターンを形成した後、キャリッジ38を搬送路23から退避させてもよい。詳述すると、パターンが形成された後、キャリッジ38は、搬送路23において記録用紙19が通過しない範囲、例えば搬送路23の右端部に配置されたメンテナンス機構53の真上(本発明の一側部の一例)に移動される。つまり、キャリッジ38は、搬送ローラ対89によって搬送される記録用紙19よりも左右方向9において外側に移動される。その後、制御部130は、右ローラ61及び左ローラ62のローラ面のクリーニングを実行するために、CRモータ80を駆動する。
【0132】
変形例11によれば、制御部130が、搬送路23において記録用紙19が通過しない範囲にキャリッジ38を退避させるため、その後に記録用紙19が搬送された場合に、当該記録用紙19が搬送路23で詰まる可能性を低くすることができる。
【0133】
なお、上述した実施形態及び各変形例では、例えば、図6のSA5、SC6において、ひとまず各ローラ61、62がパターンPの近傍と対向する位置にキャリッジ38を移動させることが記載されているが、これに限らない。例えば、各61、62がパターンPの近傍と対向する位置を少なくとも通過するように、キャリッジ38を移動させてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1・・・複合機
2・・・プリンタ部
19・・・記録用紙
38・・・キャリッジ
39・・・記録ヘッド
42・・・プラテン
61・・・右ローラ
62・・・左ローラ
89・・・搬送ローラ対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを第1方向に搬送する搬送部と、
上記搬送部を駆動する第1駆動源と、
上記第1方向に搬送されるシートを支持する支持部と、
上記支持部に支持されるシートに対して上記支持部と対向して設けられており、上記第1方向と直交する第2方向へ移動可能なキャリッジと、
上記キャリッジを駆動する第2駆動源と、
上記キャリッジに設けられており、上記支持部に支持されたシートに向けてインク滴を吐出する上記第1方向に沿ったノズル列が上記第2方向に並んで備えられる記録ヘッドと、
上記キャリッジの上記第2方向の両側部に上記ノズル列を挟むようにして上記ノズル列と所定距離をおいて設けられており、下端が上記記録ヘッドよりも下側且つ上記支持部よりも上側に位置しており、上記第1方向に沿う軸を中心に回転可能な一対のローラと、
上記第1駆動源、上記第2駆動源、及び上記記録ヘッドを制御する制御部と、を備え、
上記制御部は、
上記第1駆動源を停止させた状態で上記記録ヘッドにインク滴を吐出させて、シートに上記ローラが当接するようにシートを撓ませるパターンを形成する形成手段と、
上記パターンが形成された後、上記第1駆動源の停止を維持した状態で上記第2駆動源を駆動して、上記キャリッジを移動させて上記一対のローラのローラ面のクリーニングを実行する第1制御手段と、を備えるインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記第1制御手段は、上記キャリッジを、上記一対のローラの少なくとも一方が、上記パターンと対向する位置または上記パターンから上記第2方向において上記ローラの円周の長さ内で対向する位置を少なくとも通過させると共に、上記ローラの円周の長さ以上に相当する距離を移動させる請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記制御部は、
上記第1制御手段によって上記キャリッジの移動が実行された後、上記第1駆動源を駆動して、上記搬送部にシートを搬送させる第2制御手段と、
上記第2制御手段によって上記シートの搬送が実行された後、上記第2駆動源を駆動して、上記キャリッジを移動させて上記一対のローラのローラ面のクリーニングを実行する第3制御手段と、を更に備える請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
上記第3制御手段は、上記キャリッジを、上記一対のローラの少なくとも一方が、上記パターンと対向する位置または上記パターンから上記第2方向において上記ローラの円周の長さ内で対向する位置を少なくとも通過させると共に、上記ローラの円周の長さ以上に相当する距離を移動させる請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
上記形成手段は、
上記パターンを形成した後、上記搬送部によって搬送されるシートよりも上記第2方向において外側の一側部に上記キャリッジを移動させ、
上記第1制御手段は、
上記キャリッジが上記一側部に移動された後、上記第2駆動源を駆動する請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
シートを第1方向に搬送する搬送部と、
上記搬送部を駆動する第1駆動源と、
上記第1方向に搬送されるシートを支持する支持部と、
上記支持部に支持されるシートに対して上記支持部と対向して設けられており、上記第1方向と直交する第2方向へ移動可能なキャリッジと、
上記キャリッジを駆動する第2駆動源と、
上記キャリッジに設けられており、上記支持部に支持されたシートに向けてインク滴を吐出する上記第1方向に沿ったノズル列が上記第2方向に並んで備えられる記録ヘッドと、
上記キャリッジの上記第2方向の両端部に上記ノズル列と所定距離をおいて設けられており、下端が上記記録ヘッドよりも下側且つ上記支持部よりも上側に位置しており、上記第1方向に沿う軸を中心に回転可能な一対のローラと、
上記第1駆動源、上記第2駆動源、及び上記記録ヘッドを制御する制御部と、を備え、
上記制御部は、
上記第1駆動源を停止させた状態で上記記録ヘッドにインク滴を吐出させて、シートに上記ローラが当接するようにシートを撓ませるパターンを形成する形成手段と、
上記パターンが形成された後、上記第1駆動源を駆動して、上記搬送部にシートを搬送させる第4制御手段と、
上記第4制御手段によって上記シートの搬送が実行された後、上記第2駆動源を駆動して、上記キャリッジを移動させて上記一対のローラのローラ面のクリーニングを実行する第5制御手段と、を備えるインクジェット記録装置。
【請求項7】
上記形成手段は、
上記パターンを形成した後、上記搬送部によって搬送されるシートよりも上記第2方向において外側の一側部に上記キャリッジを移動させ、
上記第4制御手段は、
上記キャリッジが上記一側部に移動された後、上記第1駆動源を駆動する請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
上記制御部は、
上記形成手段によって上記パターンが形成されてから当該パターンの乾燥のために要する時間が経過するまでの間、上記第2駆動源の駆動を停止させ、上記所定時間が経過した後に、上記一対のローラのローラ面のクリーニングを実行する請求項1から7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
上記形成手段は、上記パターンを上記第1方向に沿って複数形成し、
上記第1制御手段は、複数の上記パターンの内、最後のパターンが形成された後、上記第1駆動源の停止を維持した状態で、上記第2駆動源を駆動して、上記キャリッジを移動させて上記一対のローラのローラ面のクリーニングを実行する請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
上記形成手段は、上記パターンを上記第1方向に沿って複数形成する請求項6から8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
上記搬送部によって搬送されるシートよりも上記第2方向において外側に設けられ、上記ノズル列を覆うキャップを有し、上記キャップによって覆われる上記ノズル列のインクを吸引する吸引動作を行う吸引手段を更に備え、
上記制御部は、
上記吸引動作を制御し、上記吸引動作が行われた後に、上記一対のローラのローラ面のクリーニングを実行する請求項1から10のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
上記形成手段は、上記パターンを上記第2方向に沿って複数形成する請求項1から11のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
上記形成手段によって形成される複数のパターンのうち、隣接するパターンの間隔は、上記ローラの円周の長さの間隔以上である請求項12に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
上記形成手段によって形成される複数のパターンのうち、隣接するパターンの間隔は、上記キャリッジの上記第2方向の長さの間隔以上である請求項12に記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
上記形成手段は、
上記パターンを、当該パターンの上記第2方向の長さが上記第2方向における上記一対のローラ間の距離よりも小さくなるように形成する請求項1から14のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項16】
上記記録ヘッドは、
上記ノズル面から、第1サイズのインク滴と、上記第1サイズよりも大きい第2サイズのインク滴と、を吐出可能であり、
上記形成手段は、
上記パターンを、上記第2サイズのインク滴によって形成する請求項1から15のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項17】
上記形成手段は、
上記パターンを、上記ノズル列を構成する全てのノズルからインク滴を吐出することによって形成する請求項1から16のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−35198(P2013−35198A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172564(P2011−172564)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】