説明

インクジェット記録装置

【課題】メンテナンススペースの小型化を図ることができるとともに、メンテナンス時の洗浄液の消費を抑えることができ、かつ、ノズル面のダメージを低減できるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェットヘッド56は、画像記録位置からメンテナンス位置に移動する間に汚れ状態検出装置304によってノズル面57の汚れ状態が検出される。メンテナンス位置には、メンテナンス装置302が設けられる。メンテナンス装置302は、本体フレーム303を湿潤位置に位置させると、洗浄液保持面311Aがノズル面57と対向して配置される。洗浄液保持面311Aの上に洗浄液を供給することにより、ノズル面57が湿潤される。供給した洗浄液は、洗浄液貯留槽314で回収される。本体フレーム303を保湿位置に位置させると、洗浄液貯留槽314の開口314Aとノズル面57と対向して配置され、ノズル面57がキャップされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に係り、特に、インクジェットヘッドのノズル面のメンテナンス技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドは、使用によりノズル面にインクの残渣、紙粉などさまざまな異物が付着する。ノズル面に異物が付着すると、インクの吐出方向にバラツキが生じ、画像品質が劣化する。このため、インクジェットヘッドは、適宜、メンテナンスが行われる。
【0003】
特許文献1には、インクジェットヘッドのメンテナンス方法として、保湿に用いるキャップ部材でノズル面をキャップして洗浄する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、傾斜して配置されたインクジェットヘッドのメンテナンス方法として、ノズルから液体を浸み出させることによってノズル面を湿潤させ、液体が重力によってノズル面を流れる方向の上流側から下流側に向けてノズル面を払拭する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、ノズル面をワイピングする方法として、動作位置と待機位置との間でワイパを移動可能に設け、ワイパが待機位置に位置しているときは、洗浄液に浸漬させる方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、ノズル面の状態を特定し、特定されたノズル面の状態に応じてブレードの清掃能力を変えて、ノズル面を払拭する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−209897号公報
【特許文献2】特開2009−56981号公報
【特許文献3】特開2007−203660号公報
【特許文献4】特開2006−95880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法では、ノズル面の洗浄後、保湿を行う際、新たにキャップ部材へ洗浄液を供給しているので、洗浄液を大量に消費してしまうという欠点がある。
【0009】
また、用紙をドラム搬送するインクジェット記録装置のように、インクジェットヘッドが傾けられて設置されている場合には、洗浄時にノズル面が洗浄液に接触しない状態や、保湿時にノズル面が十分に保湿されない状態が生じるおそれがある。また、洗浄時と保湿時の双方でインクジェットヘッドの内部や、インクジェットヘッドに接続されているエレキ基板が、洗浄液に浸漬してしまうおそれがある。
【0010】
特許文献2の方法では、ノズルから滲み出させたインクを利用してノズル面を払拭しているので、洗浄液を用いた場合と比べて、洗浄効果が劣るという欠点がある。また、ノズル面を保湿するためには、その構成が別途必要になり、装置が大型化するという欠点がある。
【0011】
特許文献3、4の方法も、ノズル面を保湿するためには、その構成が別途必要になり、装置が大型化するという欠点がある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、メンテナンススペースの小型化を図ることができるとともに、メンテナンス時の洗浄液の消費を抑えることができ、かつ、ノズル面のダメージを低減することができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段は、次のとおりである。
【0014】
第1の態様は、記録メディアを搬送する搬送手段と、液体を吐出させるノズルが配列されたノズル面を有するインクジェットヘッドと、前記ノズル面をメンテナンスするメンテナンス装置と、を備え、前記メンテナンス装置は、前記ノズル面に対向して配置されることにより、前記ノズル面との間で洗浄液を保持する洗浄液保持面と、前記洗浄液保持面に連なる面に開口して形成され、前記洗浄液保持面の上に供給された前記洗浄液を回収して貯留するとともに、前記開口が前記ノズル面に対向して配置されることにより、前記ノズル面を保湿する洗浄液貯留槽とを備えるメンテナンス装置本体と、前記洗浄液保持面の上に前記洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記ノズル面が前記洗浄液保持面と対向して配置される湿潤位置と、前記ノズル面が前記開口と対向して配置される保湿位置との間で、前記インクジェットヘッドと前記メンテナンス装置本体とを前記ノズル面と平行な方向に相対的に移動させる移動手段と、前記洗浄液貯留槽内に設けられ、前記メンテナンス装置本体に対して相対的に移動する前記インクジェットヘッドの前記ノズル面に当接されて、前記ノズル面を払拭するブレードと、前記ノズル面に対する前記ブレードの当接圧を調整する当接圧調整手段と、を備える態様である。
【0015】
本態様によれば、インクジェットヘッドを洗浄位置に位置させることにより、ノズル面を洗浄でき、保湿位置に位置させることにより、ノズル面を保湿することができる。洗浄時は、ノズル面と洗浄液保持面とを互いに対向させ、その間に洗浄液を供給することにより、ノズル面を洗浄する。洗浄に供された洗浄液は、洗浄液保持面に連なる面に形成された開口を介して洗浄液貯留槽に流入し、洗浄液貯留槽に貯留される。この洗浄液貯留槽に貯留された洗浄液が、保湿に供される。これにより、洗浄液の消費を抑えることができる。また、インクジェットヘッドが洗浄位置から保湿位置に相対移動する際、ノズル面にブレードが当接され、ノズル面が払拭される。これにより、ノズル面に残留する汚れ等が除去され、よりクリーニング効果を向上させることができる。また、ブレードは、当接圧を調節できるので、ノズル面の汚れ状態等に応じて、当接圧を調整することにより、適切にノズル面をクリーニングすることができる。これにより、ノズル面がダメージを受けるのを防止することができる。また、ノズル面を洗浄する手段と保湿する手段とが一体化されるため、メンテナンススペースの小型化も図ることができる。
【0016】
第2の態様は、上記第1の態様において、前記ノズル面に当接させた際の当接圧が異なる複数の前記ブレードを備え、前記当接圧調整手段が、使用する前記ブレードを切り換えることにより、前記ノズル面に対する前記ブレードの当接圧を調整する態様である。
【0017】
本態様によれば、ブレードを切り換えることにより、当接圧の調整を行うことができる。これにより、簡単に当接圧の調整を行うことができる。
【0018】
第3の態様は、上記第2の態様において、前記各ブレードが、回動自在な軸に取り付けられ、前記当接圧調整手段が、前記軸を回動させて、前記ブレードを切り換える態様である。
【0019】
本態様によれば、各ブレードが軸に取り付けられ、軸を回動させることにより、ブレードの切り替えが行われる。これにより、軸を回動させるだけで、簡単にブレードの切り換えを行うことができる。
【0020】
第4の態様は、上記第3の態様において、前記各ブレードが、前記軸を回動させることにより、前記洗浄液貯留槽に貯留された前記洗浄液中に先端を浸漬できるように取り付けられる態様である。
【0021】
本態様によれば、軸を回動させることにより、ブレードの先端を洗浄液貯留槽に貯留された洗浄液中に浸漬させることができる。これにより、待機中(非動作中)にブレードの洗浄を行うことができる。また、これにより、ノズル面の洗浄効果をより高めることができる。
【0022】
第5の態様は、上記第2から4のいずれか1の態様において、前記各ブレードが、硬度、厚さ、先端の高さ位置、自由長の少なくとも1つが異なることにより、前記ノズル面に当接させた際の当接圧が異なる態様である。
【0023】
本態様によれば、各ブレードの硬度、厚さ、先端の高さ位置(すなわち、オーバーラップ量)、自由長の少なくとも1つを変えて、当接圧の調整が行われる。たとえば、各ブレードの厚さ、先端の高さ位置、自由長は同じで、硬度のみを変えて、当接圧を調整する態様や、各ブレードの硬度、先端の高さ位置、自由長は同じで、厚さのみを変えて、当接圧を調整する態様などが考えられる。
【0024】
第6の態様は、上記第1の態様において、前記ブレードが、回動自在な軸に取り付けられ、前記当接圧調整手段が、前記軸を回動させて、前記ノズル面に対する前記ブレードの傾き角を調整することにより、前記ノズル面に対する前記ブレードの当接圧を調整する態様である。
【0025】
本態様によれば、ノズル面に対するブレードの傾き角を変えることにより、当接圧を変えることができる。これにより、ブレードの傾き角を調整するだけで、簡単に当接圧の調整を行うことができる。
【0026】
第7の態様は、上記第6の態様において、前記ブレードが、前記軸を回動させることにより、前記洗浄液貯留槽に貯留された前記洗浄液中に先端を浸漬できるように取り付けられる態様である。
【0027】
本態様によれば、軸を回動させることにより、ブレードの先端を洗浄液貯留槽に貯留された洗浄液中に浸漬させることができる。これにより、待機中(非動作中)にブレードの洗浄を行うことができる。また、これにより、ノズル面の洗浄効果をより高めることができる。
【0028】
第8の態様は、上記第1の態様において、前記ブレードが、前記ノズル面に対して進退移動自在に設けられ、前記当接圧調整手段が、前記ブレードの先端の高さ位置を調整して、前記ノズル面に対する前記ブレードのオーバーラップ量を調整することにより、前記ノズル面に対する前記ブレードの当接圧を調整する態様である。
【0029】
本態様によれば、ブレードの先端の高さ位置を調整して、ノズル面に対するブレードのオーバーラップ量を変えることにより、ブレードの当接圧を変えることができる。これにより、ブレードの先端の高さ位置を調整するだけで、簡単に当接圧の調整を行うことができる。
【0030】
第9の態様は、上記第1の態様において、前記ブレードが、基端部を保持部材に保持されるとともに、前記保持部材から出没自在に設けられ、前記当接圧調整手段が、前記保持部材からの前記ブレードの突出量を調整して、前記ブレードの自由長を調整することにより、前記ノズル面に対する前記ブレードの当接圧を調整する態様である。
【0031】
本態様によれば、保持部材からのブレードの突出量を変えて、ブレードの自由長を変えることにより、ブレードの当接圧を変えることができる。これにより、ブレードの突出量を調整するだけで、簡単に当接圧の調整を行うことができる。
【0032】
第10の態様は、上記第1から9のいずれか1の態様において、前記ノズル面の汚れ状態を検出する汚れ状態検出手段を更に備え、前記当接圧調整手段が、前記汚れ状態検出手段の検出結果に基づいて、前記ノズル面に対する前記ブレードの当接圧を調整する態様である。
【0033】
本態様によれば、ノズル面の汚れ状態が検出され、その検出結果に応じてブレードの当接圧が調整される。すなわち、汚れの程度が高い程、当接圧が高く設定される。これにより、汚れ状態に応じた適切な当接圧でノズル面を払拭でき、払拭によってノズル面がダメージを受けるのを防止することができる。
【0034】
第11の態様は、上記第1から9のいずれか1の態様において、前記ノズル面の汚れ状態を検出する汚れ状態検出手段と、前記ノズル面の放置時間を計測する放置時間計測手段と、を更に備え、前記当接圧調整手段が、前記汚れ状態検出手段の検出結果と前記放置時間計測手段の計測結果とに基づいて、前記ノズル面に対する前記ブレードの当接圧を調整する態様である。
【0035】
本態様によれば、ノズル面の汚れ状態が検出されるとともに、ノズル面の放置時間(=インクジェットヘッドの動作停止からの経過時間)が計測される。そして、そのノズル面の汚れ状態の検出結果と放置時間の計測結果とに基づいて、ブレードの当接圧が調整される。すなわち、汚れの程度が高いほど、また、放置時間が長いほど、当接圧が高く設定されて、払拭が行われる。これにより、汚れ状態に応じた適切な当接圧でノズル面を払拭でき、払拭によってノズル面がダメージを受けるのを防止することができる。
【0036】
第12の態様は、上記第10又は11の態様において、前記汚れ状態検出手段が、前記ノズル面に付着している最大の液滴のサイズを検出して、前記ノズル面の汚れ状態を検出する態様である。
【0037】
本態様によれば、ノズル面に付着している最大の液滴のサイズを検出して、ノズル面の状態が検出される。これにより、簡単にノズル面の汚れ状態を把握することができる。ノズル面に付着している液滴のサイズの検出は、たとえば、ノズル面を撮像し(たとえば、ラインセンサでスキャニングする。電子カメラでノズル面の全体を撮像する。あるいは、ノズル面を複数ブロックに分割し、ブロックごとに電子カメラで撮像する。)、得られた画像データを解析して、ノズル面に付着している液滴のサイズを検出する。
【0038】
第13の態様は、上記第1から12のいずれか1の態様において、前記搬送手段が、前記記録メディアを周面に巻き付けて回転することにより、前記記録メディアを搬送するドラムで構成され、前記インクジェットヘッドが、前記ノズル面が前記ドラムの周面に対向するように、水平面に対して傾けられて配置され、前記洗浄液保持面が、前記ノズル面に対応して傾けられて形成され、前記洗浄液貯留槽が、前記洗浄液保持面の傾斜の下側に設けられる態様である。
【0039】
本態様によれば、インクジェットヘッドが傾斜して配置される。この場合、洗浄液保持面もノズル面の傾斜に対応して傾斜して設けられる。これにより、ノズル面の全面で洗浄液を保持でき、ノズル面の全面を洗浄することができる。また、洗浄液貯留槽を傾斜の下側に配置することにより、洗浄液を効率よく回収することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、メンテナンススペースの小型化を図ることができる。また、メンテナンス時の洗浄液の消費を抑えることができとともに、メンテナンスによるノズル面のダメージを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図
【図2】インクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【図3】インクジェットヘッドのノズル面の平面透視図
【図4】インクジェットヘッドの移動機構の概略構成図
【図5】メンテナンス装置の概略構成を示す斜視図
【図6】メンテナンス装置の概略構成を示す縦断面図
【図7】ワイパーブレードの支持構造を示す平面図
【図8】ワイパーブレードの動作の説明図
【図9】本体フレームの移動状態の説明図
【図10】ノズル面に付着している最大の液滴のサイズと、ノズル面の放置時間とに基づいてノズル面の汚れ状態を判定する場合の判定基準の一例を示す表
【図11】ワイパーブレードの当接圧切り替え機構の他の例(1)の概略構成図
【図12】ワイパーブレード進退移動装置の概略構成図
【図13】ワイパーブレードの動作の説明図
【図14】ワイパーブレードの当接圧切り替え機構の他の例(2)の概略構成図
【図15】自由長調整装置の概略構成図
【図16】ワイパーブレードの動作の説明図
【図17】ワイパーブレードの当接圧切り替え機構の他の例(3)の概略構成図
【図18】ワイパーブレード切替装置の概略構成図
【図19】待機中のワイパーブレードの状態の説明図
【図20】汚れ状態検出装置の他の設置例を示す図
【図21】メンテナンス装置の他の一例を示す図
【図22】メンテナンス装置の他の一例を示す図
【図23】メンテナンス装置の他の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0043】
《インクジェット記録装置の全体構成》
まず、インクジェット記録装置の全体構成について概説する。
【0044】
図1は、インクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【0045】
このインクジェット記録装置10は、枚葉の用紙(記録メディア)Pに水性UVインク(水性媒体を使用したUV(紫外線)硬化型のインク)を用いてインクジェット方式で画像を記録するインクジェット記録装置であり、主として、用紙Pを給紙する給紙部12と、給紙部12から給紙された用紙Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を付与する処理液付与部14と、処理液付与部14で処理液が付与された用紙Pの乾燥処理を行う処理液乾燥処理部16と、処理液乾燥処理部16で乾燥処理が施された用紙Pの表面に水性UVインクを用いてインクジェット方式で画像を記録する画像記録部18と、画像記録部18で画像が記録された用紙Pの乾燥処理を行うインク乾燥処理部20と、インク乾燥処理部20で乾燥処理された用紙PにUV照射処理(定着処理)を行って画像を定着させるUV照射処理部22と、UV照射処理部22でUV照射処理された用紙Pを排紙する排紙部24とで構成される。
【0046】
〈給紙部〉
給紙部12は、給紙台30に積載された用紙Pを1枚ずつ処理液付与部14に給紙する。給紙部12は、主として、給紙台30と、サッカー装置32と、給紙ローラ対34と、フィーダボード36と、前当て38と、給紙ドラム40とで構成される。
【0047】
用紙Pは、多数枚が積層された束の状態で給紙台30に載置される。給紙台30は、図示しない給紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。給紙台昇降装置は、給紙台30に積載された用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、束の最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、給紙台30を昇降させる。
【0048】
記録メディアとしての用紙Pは、特に限定されないが、一般のオフセット印刷などで使用される汎用の印刷用紙(いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする用紙)を用いることができる。本例では塗工紙が用いられる。塗工紙は、一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙などが好適に用いられる。
【0049】
サッカー装置32は、給紙台30に積載されている用紙Pを上から順に1枚ずつ取り上げて、給紙ローラ対34に給紙する。サッカー装置32は、昇降自在かつ揺動自在に設けられたサクションフット32Aを備え、このサクションフット32Aによって用紙Pの上面を吸着保持して、用紙Pを給紙台30から給紙ローラ対34に移送する。この際、サクションフット32Aは、束の最上位に位置する用紙Pの先端側の上面を吸着保持して、用紙Pを引き上げ、引き上げた用紙Pの先端を給紙ローラ対34を構成する一対のローラ34A、34Bの間に挿入する。
【0050】
給紙ローラ対34は、互いに押圧当接された上下一対のローラ34A、34Bで構成される。上下一対のローラ34A、34Bは、一方が駆動ローラ(ローラ34A)、他方が従動ローラ(ローラ34B)とされ、駆動ローラ(ローラ34A)は、図示しないモータに駆動されて回転する。モータは、用紙Pの給紙に連動して駆動され、サッカー装置32から用紙Pが給紙されると、そのタイミングに合わせて駆動ローラ(ローラ34A)を回転させる。上下一対のローラ34A、34Bの間に挿入された用紙Pは、このローラ34A、34Bにニップされて、ローラ34A、34Bの回転方向(フィーダボード36の設置方向)に送り出される。
【0051】
フィーダボード36は、用紙幅に対応して形成され、給紙ローラ対34から送り出された用紙Pを受けて、前当て38までガイドする。このフィーダボード36は、先端側が下方に向けて傾斜して設置され、その搬送面の上に載置された用紙Pを搬送面に沿って滑らせて前当て38までガイドする。
【0052】
フィーダボード36には、用紙Pを搬送するためのテープフィーダ36Aが幅方向に間隔をおいて複数設置される。テープフィーダ36Aは、無端状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。フィーダボード36の搬送面に載置された用紙Pは、このテープフィーダ36Aによって送りが与えられて、フィーダボード36の上を搬送される。
【0053】
また、フィーダボード36の上には、リテーナ36Bとコロ36Cとが設置される。
【0054】
リテーナ36Bは、用紙Pの搬送面に沿って前後に縦列して複数配置される(本例では2つ)。このリテーナ36Bは、用紙幅に対応した幅を有する板バネで構成され、搬送面に押圧当接されて設置される。テープフィーダ36Aによってフィーダボード36の上を搬送される用紙Pは、このリテーナ36Bを通過することにより、凹凸が矯正される。なお、リテーナ36Bは、フィーダボード36との間に用紙Pを導入しやすくするため、後端部がカールして形成される。
【0055】
コロ36Cは、前後のリテーナ36Bの間に配設される。このコロ36Cは、用紙Pの搬送面に押圧当接されて設置される。前後のリテーナ36Bの間を搬送される用紙Pは、このコロ36Cによって上面が抑えられながら搬送される。
【0056】
前当て38は、用紙Pの姿勢を矯正する。この前当て38は、板状に形成され、用紙Pの搬送方向と直交して配置される。また、図示しないモータに駆動されて、揺動可能に設けられる。フィーダボード36の上を搬送された用紙Pは、その先端が前当て38に当接されて、姿勢が矯正される(いわゆる、スキュー防止)。前当て38は、給紙ドラム40への用紙の給紙に連動して揺動し、姿勢を矯正した用紙Pを給紙ドラム40に受け渡す。
【0057】
給紙ドラム40は、前当て38を介してフィーダボード36から給紙される用紙Pを受け取り、処理液付与部14へと搬送する。給紙ドラム40は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。給紙ドラム40の外周面上には、グリッパ40Aが備えられ、このグリッパ40Aによって用紙Pの先端が把持される。給紙ドラム40は、グリッパ40Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液付与部14へと用紙Pを搬送する。
【0058】
給紙部12は、以上のように構成される。給紙台30の上に積載された用紙Pは、サッカー装置32によって上から順に1枚ずつ引き上げられて、給紙ローラ対34に給紙される。給紙ローラ対34に給紙された用紙Pは、その給紙ローラ対34を構成する上下一対のローラ34A、34Bによって前方に送り出され、フィーダボード36の上に載置される。フィーダボード36の上に載置された用紙Pは、フィーダボード36の搬送面に設けられたテープフィーダ36Aによって搬送される。そして、その搬送過程でリテーナ36Bによってフィーダボード36の搬送面に押し付けられ、凹凸が矯正される。フィーダボード36によって搬送された用紙Pは、先端が前当て38に当接されることにより、傾きが矯正され、その後、給紙ドラム40に受け渡される。そして、その給紙ドラム40によって処理液付与部14へと搬送される。
【0059】
〈処理液付与部〉
処理液付与部14は、用紙Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を付与する。この処理液付与部14は、主として、用紙Pを搬送する処理液付与ドラム42と、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの印刷面に所定の処理液を付与する処理液付与ユニット44とで構成される。
【0060】
処理液付与ドラム42は、給紙部12の給紙ドラム40から用紙Pを受け取り、処理液乾燥処理部16へと用紙Pを搬送する。処理液付与ドラム42は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。処理液付与ドラム42の外周面上には、グリッパ42Aが備えられ、このグリッパ42Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液付与ドラム42は、このグリッパ42Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液乾燥処理部16へと用紙Pを搬送する(1回転で1枚の用紙Pを搬送する。)。処理液付与ドラム42と給紙ドラム40は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0061】
処理液付与ユニット44は、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に処理液をローラ塗布する。この処理液付与ユニット44は、主として、用紙Pに処理液を塗布する塗布ローラ44Aと、処理液が貯留される処理液槽44Bと、処理液槽44Bに貯留された処理液を汲み上げて、塗布ローラ44Aに供給する汲み上げローラ44Cとで構成される。汲み上げローラ44Cは、塗布ローラ44Aに押圧当接して設置されるとともに、一部を処理液槽44Bに貯留された処理液に浸漬させて設置される。この汲み上げローラ44Cは、処理液を計量して汲み上げ、塗布ローラ44Aの周面に一定の厚さで処理液を付与する。塗布ローラ44Aは、用紙幅に対応して設けられ、用紙Pに押圧当接されて、その周面に付与された処理液を用紙Pに塗布する。塗布ローラ44Aは、図示しない当接離間機構に駆動されて、処理液付与ドラム42の周面に当接する当接位置と、処理液付与ドラム42の周面から離間する離間位置との間を移動する。当接離間機構は、用紙Pの通過タイミングに合わせて、塗布ローラ44Aを移動させ、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に処理液を塗布する。
【0062】
なお、本例では、処理液をローラ塗布する構成としているが、処理液を付与する方法は、これに限定されるものではない。この他、インクジェットヘッドを用いて付与する構成やスプレーにより付与する構成を採用することもできる。
【0063】
処理液付与部14は、以上のように構成される。給紙部12の給紙ドラム40から受け渡された用紙Pは、処理液付与ドラム42で受け取られる。処理液付与ドラム42は、用紙Pの先端をグリッパ42Aで把持して、回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けて搬送する。この搬送過程で塗布ローラ44Aが用紙Pの表面に押圧当接され、用紙Pの表面に処理液が塗布される。
【0064】
ここで、この用紙Pの表面に塗布する処理液は、後段の画像記録部18で用紙Pに打滴する水性UVインク中の色材を凝集させる機能を有する処理液が塗布される。このような処理液を用紙Pの表面に塗布して水性UVインクを打滴することにより、汎用の印刷用紙を用いた場合であっても、着弾干渉等を起こすことなく、高品位な印刷を行うことができる。
【0065】
〈処理液乾燥処理部〉
処理液乾燥処理部16は、表面に処理液が付与された用紙Pを乾燥処理する。この処理液乾燥処理部16は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥処理ドラム46と、用紙搬送ガイド48と、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの印刷面に熱風を吹き当てて乾燥させる処理液乾燥処理ユニット50とで構成される。
【0066】
処理液乾燥処理ドラム46は、処理液付与部14の処理液付与ドラム42から用紙Pを受け取り、画像記録部18へと用紙Pを搬送する。処理液乾燥処理ドラム46は、円筒状に組んだ枠体で構成され、図示しないモータに駆動されて回転する。処理液乾燥処理ドラム46の外周面上には、グリッパ46Aが備えられ、このグリッパ46Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液乾燥処理ドラム46は、このグリッパ46Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、画像記録部18と用紙Pを搬送する。なお、本例の処理液乾燥処理ドラム46は、外周面上の2カ所にグリッパ42Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。処理液乾燥処理ドラム46と処理液付与ドラム42は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0067】
用紙搬送ガイド48は、処理液乾燥処理ドラム46による用紙Pの搬送経路に沿って配設され、用紙Pの搬送をガイドする。
【0068】
処理液乾燥処理ユニット50は、処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置され、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に向けて熱風を吹き当てて乾燥処理する。本例では、2台の処理液乾燥処理ユニット50が、処理液乾燥処理ドラム内に配設され、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に向けて熱風を吹き当てる構成とされている。
【0069】
処理液乾燥処理部16は、以上のように構成される。処理液付与部14の処理液付与ドラム42から受け渡された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46で受け取られる。処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの先端をグリッパ46Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。この際、処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの表面(処理液が塗布された面)を内側に向けて搬送する。用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置された処理液乾燥処理ユニット50から熱風が表面に吹き当てられて、乾燥処理される。すなわち、処理液中の溶媒成分が除去される。これにより、用紙Pの表面にインク凝集層が形成される。
【0070】
〈画像記録部〉
画像記録部18は、用紙Pの印刷面にC、M、Y、Kの各色のインク(水性UVインク)の液滴を打滴して、用紙Pの印刷面にカラー画像を描画する。この画像記録部18は、主として、用紙Pを搬送する画像記録ドラム52と、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pを押圧して、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に密着させる用紙押さえローラ54と、用紙PにC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kと、用紙Pに記録された画像を読み取るインラインセンサ58と、インクミストを捕捉するミストフィルタ60と、画像記録ドラム52を冷却するドラム冷却ユニット62と、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kをメンテナンスするメンテナンスユニット(不図示)で構成される。
【0071】
画像記録ドラム52は、処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取り、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。画像記録ドラム52の外周面上には、グリッパ52Aが備えられ、このグリッパ52Aによって用紙Pの先端が把持される。画像記録ドラム52は、このグリッパ52Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。また、画像記録ドラム52は、その周面に多数の吸引穴(図示せず)が所定のパターンで形成される。画像記録ドラム52の周面に巻き掛けられた用紙Pは、この吸引穴から吸引されることにより、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平坦性をもって用紙Pを搬送することができる。
【0072】
なお、この吸引穴からの吸引は一定の範囲でのみ作用する。すなわち、所定の吸引開始位置から所定の吸引終了位置との間でのみ作用する。吸引開始位置は、用紙押さえローラ54の設置位置に設定され、吸引終了位置は、インラインセンサ58の設置位置の下流側に設定される(たとえば、インク乾燥処理部20に用紙を受け渡す位置に設定される。)。すなわち、少なくともインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの設置位置(画像記録位置)とインラインセンサ58の設置位置(画像読取位置)では、用紙Pが画像記録ドラム52の周面に吸着保持されるように設定される。
【0073】
なお、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に吸着保持させる機構は、上記の負圧による吸着方法に限らず、静電吸着による方法を採用することもできる。
【0074】
また、本例の画像記録ドラム52は、外周面上の2カ所にグリッパ52Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。画像記録ドラム52と処理液乾燥処理ドラム46は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0075】
用紙押さえローラ54は、画像記録ドラム52の用紙受取位置(処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取る位置)の近傍に配設される。この用紙押さえローラ54は、ゴムローラで構成され、画像記録ドラム52の周面に押圧当接させて設置される。処理液乾燥処理ドラム46から画像記録ドラム52受け渡された用紙Pは、この用紙押さえローラ54を通過することによりニップされ、画像記録ドラム52の周面に密着させられる。
【0076】
4台のインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。このため、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、傾斜して配置される(水平面に対して傾斜)。
【0077】
各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、用紙幅に対応したラインヘッドで構成され、ノズル面(ノズルが配列される面)が画像記録ドラム52の周面に対向するように配置される(ノズル面も水平面に対して傾斜して配置される。)。各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、ノズル面に形成されたノズル列から、画像記録ドラム52に向けてインクの液滴を吐出することにより、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに画像を記録する。インクジェットヘッドの構成については、後に詳述する。
【0078】
なお、上記のように、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kから吐出させるインクは、水性UVインクが用いられる。水性UVインクは、打滴後に紫外線(UV)を照射することにより、硬化させることができる。
【0079】
インラインセンサ58は、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送方向に対して、最後尾のインクジェットヘッド56Kの下流側に設置され、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kで記録された画像を読み取る。このインラインセンサ58は、たとえば、ラインスキャナで構成され、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pからインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって記録された画像を読み取る。
【0080】
なお、インラインセンサ58の下流側には、インラインセンサ58に近接して接触防止板59が設置される。この接触防止板59は、搬送の不具合等によって用紙Pに浮きが生じた場合に、用紙Pがインラインセンサ58に接触するのを防止する。
【0081】
ミストフィルタ60は、最後尾のインクジェットヘッド56Kとインラインセンサ58との間に配設され、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉する。このように、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉することにより、インラインセンサ58へのインクミストの進入を防止でき、読み取り不良等の発生を防止できる。
【0082】
ドラム冷却ユニット62は、画像記録ドラム52に冷風を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。このドラム冷却ユニット62は、主として、エアコン(図示せず)と、そのエアコンから供給される冷気を画像記録ドラム52の周面に吹き当てるダクト62Aとで構成される。ダクト62Aは、画像記録ドラム52に対して、用紙Pの搬送領域以外の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。本例では、画像記録ドラム52のほぼ上側半分の円弧面に沿って用紙Pが搬送されるので、ダクト62Aは、画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する構成とされている。具体的には、ダクト62Aの吹出口が、画像記録ドラム52のほぼ下側半分を覆うように円弧状に形成され、画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気が吹き当てられる構成とされている。
【0083】
ここで、画像記録ドラム52を冷却する温度は、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度(特にノズル面の温度)との関係で定まり、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度よりも低い温度となるように冷却される。これにより、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに結露が生じるのを防止することができる。すなわち、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kよりも画像記録ドラム52の温度を低くすることにより、画像記録ドラム側に結露を誘発することができ、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに生じる結露(特にノズル面に生じる結露)を防止することができる。
【0084】
メンテナンスユニットは、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kのノズル面の洗浄、保湿等のメンテナンスを行う。メンテナンスユニットは、画像記録ドラム52の軸方向の延長線上に設置される。インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、画像記録ドラム52の軸方向にスライド移動して、メンテナンスユニットの設置位置に移動し、メンテナンスを受ける。したがって、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、画像記録ドラム52の軸方向にスライド移動可能に設けられる。
【0085】
なお、このメンテナンスユニットの構成については、後に詳述する。
【0086】
画像記録部18は、以上のように構成される。処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から受け渡された用紙Pは、画像記録ドラム52で受け取られる。画像記録ドラム52は、用紙Pの先端をグリッパ52Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52に受け渡された用紙Pは、まず、用紙押さえローラ54を通過することにより、画像記録ドラム52の周面に密着される。これと同時に画像記録ドラム52の吸着穴から吸引されて、画像記録ドラム52の外周面上に吸着保持される。用紙Pは、この状態で搬送されて、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kを通過する。そして、その通過時に各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56KからC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が表面に打滴されて、表面にカラー画像が描画される。用紙Pの表面にはインク凝集層が形成されているので、フェザリングやブリーディング等を起こすことなく、高品位な画像を記録することができる。
【0087】
インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって画像が記録された用紙Pは、次いで、インラインセンサ58を通過する。そして、そのインラインセンサ58の通過時に表面に記録された画像が読み取られる。この記録画像の読み取りは必要に応じて行われ、読み取られた画像から吐出不良等の検査が行われる。読み取りを行う際は、画像記録ドラム52に吸着保持された状態で読み取りが行われるので、高精度に読み取りを行うことができる。また、画像記録直後に読み取りが行われるので、たとえば、吐出不良等の異常を直ちに検出することができ、その対応を迅速に行うことができる。これにより、無駄な記録を防止できるとともに、損紙の発生を最小限に抑えることができる。
【0088】
この後、用紙Pは、吸着が解除された後、インク乾燥処理部20へと受け渡される。
【0089】
〈インク乾燥処理部〉
インク乾燥処理部20は、画像記録後の用紙Pを乾燥処理し、用紙Pの表面に残存する液体成分を除去する。インク乾燥処理部20は、画像が記録された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pを乾燥処理するインク乾燥処理ユニット68とで構成される。
【0090】
チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22、排紙部24において共通して使用される用紙搬送機構であり、画像記録部18から受け渡された用紙Pを受け取って、排紙部24まで搬送する。
【0091】
このチェーングリッパ64は、主として、画像記録ドラム52に近接して設置される第1スプロケット64Aと、排紙部24に設置される第2スプロケット64Bと、第1スプロケット64Aと第2スプロケット64Bとに巻き掛けられる無端状のチェーン64Cと、チェーン64Cの走行をガイドする複数のチェーンガイド(図示せず)と、チェーン64Cに一定の間隔をもって取り付けられる複数のグリッパ64Dとで構成される。第1スプロケット64Aと、第2スプロケット64Bと、チェーン64Cと、チェーンガイドとは、それぞれ一対で構成され、用紙Pの幅方向の両側に配設される。グリッパ64Dは、一対で設けられるチェーン64Cに掛け渡されて設置される。
【0092】
第1スプロケット64Aは、画像記録ドラム52から受け渡される用紙Pをグリッパ64Dで受け取ることができるように、画像記録ドラム52に近接して設置される。この第1スプロケット64Aは、図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられるとともに、図示しないモータが連結される。第1スプロケット64A及び第2スプロケット64Bに巻き掛けられるチェーン64Cは、このモータを駆動することにより走行する。
【0093】
第2スプロケット64Bは、画像記録ドラム52から受け取った用紙Pを排紙部24で回収できるように、排紙部24に設置される。すなわち、この第2スプロケット64Bの設置位置が、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送経路の終端とされる。この第2スプロケット64Bは、図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられる。
【0094】
チェーン64Cは、無端状に形成され、第1スプロケット64Aと第2スプロケット64Bとに巻き掛けられる。
【0095】
チェーンガイドは、所定位置に配置されて、チェーン64Cが所定の経路を走行するようにガイドする(=用紙Pが所定の搬送経路を走行して搬送されるようにガイドする。)。本例のインクジェット記録装置10では、第2スプロケット64Bが第1スプロケット64Aよりも高い位置に配設される。このため、チェーン64Cが、途中で傾斜するような走行経路が形成される。具体的には、第1水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第2水平搬送経路70Cとで構成される。
【0096】
第1水平搬送経路70Aは、第1スプロケット64Aと同じ高さに設定され、第1スプロケット64Aに巻き掛けられたチェーン64Cが、水平に走行するように設定される。
【0097】
第2水平搬送経路70Cは、第2スプロケット64Bと同じ高さに設定され、第2スプロケット64Bに巻き掛けられたチェーン64Cが、水平に走行するように設定される。
【0098】
傾斜搬送経路70Bは、第1水平搬送経路70Aと第2水平搬送経路70Cとの間に設定され、第1水平搬送経路70Aと第2水平搬送経路70Cとの間を結ぶように設定される。
【0099】
チェーンガイドは、この第1水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第2水平搬送経路70Cとを形成するように配設される。具体的には、少なくとも第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとの接合ポイント、及び、傾斜搬送経路70Bと第2水平搬送経路70Cとの接合ポイントに配設される。
【0100】
グリッパ64Dは、チェーン64Cに一定の間隔をもって複数取り付けられる。このグリッパ64Dの取り付け間隔は、画像記録ドラム52からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定される。すなわち、画像記録ドラム52から順次受け渡される用紙Pをタイミングを合わせて画像記録ドラム52から受け取ることができるように、画像記録ドラム52からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定される。
【0101】
チェーングリッパ64は、以上のように構成される。上記のように、第1スプロケット64Aに接続されたモータ(図示せず)を駆動すると、チェーン64Cが走行する。チェーン64Cは、画像記録ドラム52の周速度と同じ速度で走行する。また、画像記録ドラム52から受け渡される用紙Pが、各グリッパ64Dで受け取れるようにタイミングが合わせられる。
【0102】
バックテンション付与機構66は、チェーングリッパ64によって先端を把持されながら搬送される用紙Pにバックテンションを付与する。このバックテンション付与機構66は、主として、ガイドプレート72と、そのガイドプレート72に形成される吸引穴(図示せず)から空気を吸引する吸引機構(図示せず)とで構成される。
【0103】
ガイドプレート72は、用紙幅に対応した幅を有する中空状のボックスプレートで構成される。このガイドプレート72は、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送経路(=チェーンの走行経路)に沿って配設される。具体的には、第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとを走行するチェーン64Cに沿って配設され、チェーン64Cから所定距離離間して配設される。チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pは、その裏面(画像が記録されていない側の面)が、このガイドプレート72の上面(チェーン64Cと対向する面:摺接面)の上を摺接しながら搬送される。
【0104】
ガイドプレート72の摺接面(上面)には、多数の吸引穴(図示せず)が所定のパターンで多数形成される。上記のように、ガイドプレート72は、中空のボックスプレートで形成される。吸引機構(図示せず)は、このガイドプレート72の中空部(内部)を吸引する。これにより、摺接面に形成された吸引穴から空気が吸引される。
【0105】
ガイドプレート72の吸引穴から空気が吸引されることにより、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pの裏面が吸引穴に吸引される。これにより、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションが付与される。
【0106】
上記のように、ガイドプレート72は、第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとを走行するチェーン64Cに沿って配設されるので、第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとを搬送されている間、バックテンションが付与される。
【0107】
インク乾燥処理ユニット68は、チェーングリッパ64の内部(特に第1水平搬送経路70Aを構成する部位)に設置され、第1水平搬送経路70Aを搬送される用紙Pに対して乾燥処理を施す。このインク乾燥処理ユニット68は、第1水平搬送経路70Aを搬送される用紙Pの表面に熱風を吹き当てて乾燥処理する。インク乾燥処理ユニット68は、第1水平搬送経路70Aに沿って複数台配置される。この設置数は、インク乾燥処理ユニット68の処理能力や用紙Pの搬送速度(=印刷速度)等に応じて設定される。すなわち、画像記録部18から受け取った用紙Pが第1水平搬送経路70Aを搬送されている間に乾燥させることができるように設定される。したがって、第1水平搬送経路70Aの長さも、このインク乾燥処理ユニット68の能力を考慮して設定される。
【0108】
なお、乾燥処理を行うことにより、インク乾燥処理部20の湿度が上がる。湿度が上がると、効率よく乾燥処理することができなくなるので、インク乾燥処理部20には、インク乾燥処理ユニット68と共に排気手段を設置し、乾燥処理によって発生する湿り空気を強制的に排気することが好ましい。排気手段は、たとえば、排気ダクトをインク乾燥処理部20に設置し、この排気ダクトによってインク乾燥処理部20の空気を排気する構成とすることができる。
【0109】
インク乾燥処理部20は、以上のように構成される。画像記録部18の画像記録ドラム52から受け渡された用紙Pは、チェーングリッパ64で受け取られる。チェーングリッパ64は、用紙Pの先端をグリッパ64Dで把持して、平面状のガイドプレート72に沿わせて用紙Pを搬送する。チェーングリッパ64に受け渡された用紙Pは、まず、第1水平搬送経路70Aを搬送される。この第1水平搬送経路70Aを搬送される過程で用紙Pは、チェーングリッパ64の内部に設置されたインク乾燥処理ユニット68によって乾燥処理が施される。すなわち、表面(画像記録面)に熱風が吹き当てられて、乾燥処理が施される。この際、用紙Pは、バックテンション付与機構66によってバックテンションが付与されながら乾燥処理が施される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら乾燥処理することができる。
【0110】
〈UV照射処理部〉
UV照射処理部22は、水性UVインクを用いて記録された画像に紫外線(UV)を照射して、画像を定着させる。このUV照射処理部22は、主として、乾燥処理された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに紫外線を照射するUV照射ユニット74とで構成される。
【0111】
上記のように、チェーングリッパ64とバックテンション付与機構66は、インク乾燥処理部20及び排紙部24と共に共通して使用される。
【0112】
UV照射ユニット74は、チェーングリッパ64の内部(特に傾斜搬送経路70Bを構成する部位)に設置され、傾斜搬送経路70Bを搬送される用紙Pの表面に紫外線を照射する。このUV照射ユニット74は、紫外線ランプ(UVランプ)を備え、傾斜搬送経路70Bに沿って複数配設される。そして、傾斜搬送経路70Bを搬送される用紙Pの表面に向けて紫外線を照射する。このUV照射ユニット74の設置数は、用紙Pの搬送速度(=印刷速度)等に応じて設定される。すなわち、用紙Pが傾斜搬送経路70Bを搬送されている間に照射した紫外線によって画像を定着させることができるように設定される。したがって、傾斜搬送経路70Bの長さも、この用紙Pの搬送速度等を考慮して設定される。
【0113】
UV照射処理部22は、以上のように構成される。チェーングリッパ64に搬送されてインク乾燥処理部20で乾燥処理が施された用紙Pは、次いで、傾斜搬送経路70Bを搬送される。この傾斜搬送経路70Bを搬送される過程で用紙Pは、チェーングリッパ64の内部に設置されたUV照射ユニット74によりUV照射処理が施される。すなわち、UV照射ユニット74から表面に向けて紫外線が照射される。この際、用紙Pは、バックテンション付与機構66によってバックテンションが付与されながらUV照射処理が施される。これにより、用紙Pの変形を抑えながらUV照射処理を施すことができる。また、UV照射処理部22は、傾斜搬送経路70Bに設置されており、傾斜搬送経路70Bには傾斜したガイドプレート72が設置されているため、たとえ、用紙Pが搬送途中でグリッパ64Dから落下した場合であっても、ガイドプレート72上を滑らせて排出させることができる。
【0114】
〈排紙部〉
排紙部24は、一連の画像記録処理が行われた用紙Pを回収する。この排紙部24は、主として、UV照射された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、用紙Pを積み重ねて回収する排紙台76とで構成される。
【0115】
上記のように、チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20及びUV照射処理部22と共に共通して使用される。チェーングリッパ64は、排紙台76の上で用紙Pを開放し、排紙台76の上に用紙Pをスタックさせる。
【0116】
排紙台76は、チェーングリッパ64から開放された用紙Pを積み重ねて回収する。この排紙台76には、用紙Pが整然と積み重ねられるように、用紙当て(前用紙当て、後用紙当て、横用紙当て等)が備えられる(図示せず)。
【0117】
また、排紙台76は、図示しない排紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。排紙台昇降装置は、排紙台76にスタックされる用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、排紙台76を昇降させる。
【0118】
《制御系》
図2は、本実施の形態のインクジェット記録装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0119】
同図に示すように、インクジェット記録装置10は、システムコントローラ100、通信部102、画像メモリ104、搬送制御部110、給紙制御部112、処理液付与制御部114、処理液乾燥制御部116、画像記録制御部118、インク乾燥制御部120、UV照射制御部122、排紙制御部124、操作部130、表示部132等が備えられる。
【0120】
システムコントローラ100は、インクジェット記録装置10の各部を統括制御する制御手段として機能するとともに、各種演算処理を行う演算手段として機能する。このシステムコントローラ100は、CPU、ROM、RAM等を備えており、所定の制御プログラムに従って動作する。ROMには、このシステムコントローラ100が、実行する制御プログラム、及び、制御に必要な各種データが格納される。
【0121】
通信部102は、所要の通信インターフェースを備え、その通信インターフェースと接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
【0122】
画像メモリ104は、画像データを含む各種データの一時記憶手段として機能し、システムコントローラ100を通じてデータの読み書きが行われる。通信部102を介してホストコンピュータから取り込まれた画像データは、この画像メモリ104に格納される。
【0123】
搬送制御部110は、インクジェット記録装置10における用紙Pの搬送系を制御する。すなわち、給紙部12におけるテープフィーダ36A、前当て38、給紙ドラム40の駆動を制御するとともに、処理液付与部14における処理液付与ドラム42、処理液乾燥処理部16における処理液乾燥処理ドラム46、画像記録部18における画像記録ドラム52の駆動を制御する。また、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22及び排紙部24で共通して用いられるチェーングリッパ64及びバックテンション付与機構66の駆動を制御する。
【0124】
搬送制御部110は、システムコントローラ100からの指令に応じて、搬送系を制御し、給紙部12から排紙部24まで滞りなく用紙Pが搬送されるように制御する。
【0125】
給紙制御部112は、システムコントローラ100からの指令に応じて給紙部12を制御する。具体的には、サッカー装置32及び給紙台昇降機構等の駆動を制御して、給紙台30に積載された用紙Pが、重なることなく1枚ずつ順に給紙されるように制御する。
【0126】
処理液付与制御部114は、システムコントローラ100からの指令に応じて処理液付与部14を制御する。具体的には、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pに処理液が塗布されるように、処理液付与ユニット44の駆動を制御する。
【0127】
処理液乾燥制御部116は、システムコントローラ100からの指令に応じて処理液乾燥処理部16を制御する。具体的には、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pが乾燥処理されるように、処理液乾燥処理ユニット50の駆動を制御する。
【0128】
画像記録制御部118は、システムコントローラ100からの指令に応じて画像記録部18を制御する。具体的には、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに所定の画像が記録されるように、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの駆動を制御する。また、記録された画像が読み取られるように、インラインセンサ58の動作を制御する。
【0129】
インク乾燥制御部120は、システムコントローラ100からの指令に応じてインク乾燥処理部20を制御する。具体的には、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに熱風が送風されるようにインク乾燥処理ユニット68の駆動を制御する。
【0130】
UV照射制御部122は、システムコントローラ100からの指令に応じてUV照射処理部22を制御する。具体的には、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに紫外線が照射されるようにUV照射ユニット74の駆動を制御する。
【0131】
排紙制御部124は、システムコントローラ100からの指令に応じて排紙部24を制御する。具体的には、排紙台昇降機構等の駆動を制御して、排紙台76に用紙Pがスタックされるように制御する。
【0132】
操作部130は、所要の操作手段(たとえば、操作ボタンやキーボード、タッチパネル等)を備え、その操作手段から入力された操作情報をシステムコントローラ100に出力する。システムコントローラ100は、この操作部130から入力された操作情報に応じて各種処理を実行する。
【0133】
表示部132は、所要の表示装置(たとえば、LCDパネル等)を備え、システムコントローラ100からの指令に応じて所要の情報を表示装置に表示させる。
【0134】
上記のように、用紙に記録する画像データは、ホストコンピュータから通信部102を介してインクジェット記録装置10に取り込まれる。取り込まれた画像データは、画像メモリ104に格納される。
【0135】
システムコントローラ100は、この画像メモリ104に格納された画像データに所要の信号処理を施してドットデータを生成する。そして、生成したドットデータに従って画像記録部18の各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの駆動を制御し、その画像データが表す画像を用紙に記録する。
【0136】
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインクの各色のインク量データに変換する処理である(本例では、C、M、Y、Kの各色のインク量データに変換する。)。ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色のインク量データに対して誤差拡散等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。
【0137】
システムコントローラ100は、画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って各色のドットデータを生成する。そして、生成した各色のドットデータに従って、対応するインクジェットヘッドの駆動を制御することにより、画像データが表す画像を用紙に記録する。
【0138】
《全体の画像記録動作》
以上のように構成される本実施の形態のインクジェット記録装置10の作用は、次のとおりである。
【0139】
操作部130を介してシステムコントローラ100に印刷ジョブの開始が指示されると、サイクルアップの処理が行われる。すなわち、安定した動作を行うことができるように、各部で準備動作が行われる。
【0140】
サイクルアップが完了すると、印刷処理が開始される。すなわち、給紙部12から用紙Pが順次給紙される。
【0141】
給紙部12では、給紙台30に積載された用紙Pを上から順に1枚ずつサッカー装置32で給紙する。サッカー装置32から給紙された用紙Pは、給紙ローラ対34を介して1枚ずつフィーダボード36の上に載置される。
【0142】
フィーダボード36の上に載置された用紙Pは、フィーダボード36に備えられたテープフィーダ36Aによって送りが与えられて、フィーダボード36の上を滑りながら給紙ドラム40へと搬送される。この際、順次給紙される用紙Pは、互いに重なることなく1枚ずつフィーダボード36の上を滑りながら給紙ドラム40へと搬送される。また、その搬送過程でリテーナ36Bによって上面がフィーダボード36に向けて押し付けられる。これにより、凹凸が矯正される。
【0143】
フィーダボード36の終端まで搬送された用紙Pは、先端が前当て38に当接された後、給紙ドラム40に受け渡される。これにより、傾きを発生させることなく、一定の姿勢で用紙Pを給紙ドラム40に給紙することができる。
【0144】
給紙ドラム40は、回転しながら用紙Pの先端をグリッパ40Aで把持することにより用紙Pを受け取り、用紙Pを処理液付与部14に向けて搬送する。
【0145】
処理液付与部14に搬送された用紙Pは、給紙ドラム40から処理液付与ドラム42へと受け渡される。
【0146】
処理液付与ドラム42は、回転しながら用紙Pの先端をグリッパ40Aで把持して受け取り、用紙Pを処理液乾燥処理部16に向けて搬送する。用紙Pは、この処理液付与ドラム42によって搬送される過程で表面に塗布ローラ44Aが押圧当接され、表面に処理液が付与(塗布)される。
【0147】
表面に処理液が付与された用紙Pは、処理液付与ドラム42から処理液乾燥処理ドラム46に受け渡される。
【0148】
処理液乾燥処理ドラム46は、回転しながら用紙Pの先端を把持して受け取り、用紙Pを画像記録部18に向けて搬送する。用紙Pは、この処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で処理液乾燥処理ユニット50から送風される熱風が表面に吹き当てられて、乾燥処理される。これにより、処理液中の溶媒成分が除去され、用紙Pの表面(画像記録面)にインク凝集層が形成される。
【0149】
処理液の乾燥処理が施された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46から画像記録ドラム52に受け渡される。
【0150】
画像記録ドラム52は、回転しながら用紙Pの先端を把持して受け取り、用紙Pをインク乾燥処理部20に向けて搬送する。用紙Pは、この画像記録ドラム52によって搬送される過程でインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって表面にC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が打滴され、画像が記録される。また、その搬送過程で記録された画像が、インラインセンサ58によって読み取られる。この際、用紙Pは、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送される。そして、この吸着保持された状態で画像の記録、及び、記録された画像の読み取りが行われる。これにより、高精度に画像を記録することができるとともに、高精度に画像の読み取りを行うことができる。
【0151】
画像が記録された用紙Pは、画像記録ドラム52からチェーングリッパ64に受け渡される。
【0152】
チェーングリッパ64は、走行するチェーン64Cに備えられたグリッパ64Dで用紙Pの先端を把持して、用紙Pを受け取り、排紙部24に向けて搬送する。
【0153】
用紙Pは、このチェーングリッパ64による搬送過程で、まず、インクの乾燥処理が施される。すなわち、第1水平搬送経路70Aに設置されたインク乾燥処理ユニット68から表面に向けて熱風が吹き当てられる。これにより、乾燥処理が施される。この際、用紙Pは、ガイドプレート72によって裏面を吸着保持されながら搬送され、バックテンションが付与される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら、乾燥処理することができる。
【0154】
乾燥処理が終了した用紙P(インク乾燥処理部20を通過した用紙P)は、次いで、UV照射処理が施される。すなわち、傾斜搬送経路70Bに設置されたUV照射ユニット74から表面に向けて紫外線が照射される。これにより、画像を構成するインクが硬化し、画像が用紙Pに定着する。この際、用紙Pは、ガイドプレート72によって裏面を吸着保持されながら搬送され、バックテンションが付与される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら、定着処理することができる。
【0155】
UV照射処理が終了した用紙P(UV照射処理部22を通過した用紙P)は、排紙部24に向けて搬送され、排紙部24においてグリッパ64Dから開放されて、排紙台76の上にスタックされる。
【0156】
以上一連の動作により画像の記録処理が完了する。上記のように、給紙部12から用紙Pが連続的に給紙されるので、各部では、この連続的に給紙される用紙Pを連続的に処理して、画像の記録処理が行われる。
【0157】
以上説明したように、本実施の形態のインクジェット記録装置10によれば、画像が記録された用紙Pを画像記録部18からチェーングリッパ64で受け取り、そのチェーングリッパ64による搬送過程でインクの乾燥処理、UV照射処理が行われる。チェーングリッパ64は、用紙の搬送経路の設定に自由度があり、インク乾燥処理ユニット68及びUV照射ユニット74を高密度に配置することができる。これにより、画像が記録された後の用紙Pを短時間で効率よく乾燥処理でき、インクが用紙Pに浸透する前に乾燥させることができる。これにより、用紙Pの変形を抑えることができる。同様に、UV照射処理時も短時間で効率よく処理することができる。
【0158】
また、画像記録用の搬送手段(本例では画像記録ドラム52)とは別の搬送手段(本例ではチェーングリッパ64)で乾燥処理、UV照射処理を行うので、乾燥処理時やUV照射処理時に発生する熱で画像記録用の搬送手段の温度が上昇するのを抑えることができる。これにより、インクジェットヘッドに結露が生じたり、ノズルの乾燥が促進されたりするのを有効に防止することができる。
【0159】
また、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、乾燥処理及びUV照射処理を行うに際して、用紙Pにバックテンションを付与しながら行う構成としているので、用紙Pの変形を抑えて乾燥処理及びUV照射処理することができる。
【0160】
更に、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、画像記録部18にインラインセンサ58を設置し、画像記録直後に記録画像の読み取りを行う構成としているので、画像の記録結果に基づく吐出不良等の検出を迅速に行うことができる。これにより、吐出不良等が検出された場合の対応を迅速に行うことができ、損紙の発生を効果的に抑制することができる。
【0161】
また、画像記録ドラム52に保持された状態(画像記録時と同じ状態)で画像を読み取る構成としているので、高精度に画像の読み取りを行うことができる。すなわち、画像記録ドラム52から用紙Pを取り外した後に画像の読み取りを行うと、用紙の状態が変化し、高精度に画像の読み取りを行うことができなくなるおそれがあるが、画像記録ドラム52に保持した状態で画像の読み取りを行うことにより、用紙Pの状態を変化させずに、画像を読み取ることができ、高精度に画像の読み取りを行うことができる。特に、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に吸着保持して搬送するので、高精度に画像の読み取りを行うことができる。
【0162】
《インクジェットヘッド》
上記のように、4本のインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、画像記録ドラム52の回転軸を中心とした同心円上に一定の間隔をもって放射状に配置される。このように配置された各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、その下端部に形成されたノズル面57C、57M、57Y、57Kが、画像記録ドラム52の外周面に対向して配置されるとともに、そのノズル面57C、57M、57Y、57Kが、画像記録ドラム52の外周面から所定高さの位置に位置する(画像記録ドラム52の外周面とノズル面57C、57M、57Y、57Kとの間に同じ量のギャップが形成される。)。また、そのノズル面57C、57M、57Y、57Kに形成されたノズル列が、用紙Pの搬送方向と直交して配置される。
【0163】
このように配置されることにより、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、そのノズル面57C、57M、57Y、57Kが、水平面に対して傾斜して配置される。
【0164】
図3は、インクジェットヘッドのノズル面の平面透視図である。
【0165】
なお、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの構成は共通しているので、以下においては、特に区別する場合を除いて、インクジェットヘッド56として、そのノズル面57(57C、57M、57Y、57K)の構成を説明する。
【0166】
同図に示すように、ノズル面57は、長方形状に形成され、その幅方向(メディア搬送方向)の中央部に一定幅を有するノズル形成領域57Aが形成される。
【0167】
ノズル形成領域57Aは、ノズルが形成される領域であり、その表面には所定の撥液処理が施される(たとえば、撥液膜で被覆される)。
【0168】
ここで、図3に示すように、本実施の形態のインクジェットヘッド56は、いわゆるマトリックスヘッドで構成され、ノズルNがノズル形成領域57Aに二次元マトリクス状に配置される。より具体的には、用紙Pの搬送方向に対して所定角度傾斜した方向に複数のノズルNが一定ピッチで配置されたノズルの列が形成されるとともに、そのノズルの列が用紙Pの搬送方向と直交する方向(ヘッドの長手方向)に一定ピッチで多数配列される。このようなノズルの配置構成とすることにより、ヘッドの長手方向(用紙Pの搬送方向と直交する方向)に投影される実質的なノズルNの間隔を狭めることができ、ノズルNの高密度化を図ることができる。なお、マトリックスヘッドでは、このヘッドの長手方向に投影されるノズルの列が実質的なノズル列とされる。
【0169】
《メンテナンスユニットの構成》
上記のように、画像記録部18には、メンテナンスユニットが備えられ、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに対して、ノズル面の洗浄、保湿等のメンテナンスを行うことができる。
【0170】
メンテナンスユニットは、画像記録ドラム52の軸方向の延長線上に配設され、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、このメンテナンスユニットの設置位置に移動して、所要のメンテナンスを受ける。
【0171】
〈インクジェットヘッドの移動機構〉
まず、インクジェットヘッドの移動機構について説明する。
【0172】
図4は、インクジェットヘッドの移動機構の概略構成図である。便宜上、インクジェットヘッド56Yのみ図示している。
【0173】
同図に示すように、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、ヘッド支持フレーム140に取り付けられる。
【0174】
ヘッド支持フレーム140は、画像記録ドラム52の回転軸と直交して設けられた一対のサイドプレート142L、142Rと、その一対のサイドプレート142L、142Rを上端部で連結する連結フレーム144とで構成される。
【0175】
一対のサイドプレート142L、142Rは、板状に形成され、画像記録ドラム52を挟んで互いに対向するように配置される。この一対のサイドプレート142L、142Rの内側には、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kを取り付けるための取付部146C、146M、146Y、146Kが設けられる(図4では、便宜上、取付部146Yのみ図示)。
【0176】
取付部146C、146M、146Y、146Kは、画像記録ドラム52の回転軸を中心とした同心円上に一定の間隔をもって放射状に配置される。各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、その両端に形成された被取付部148Y、148C、148K、148M(図4では、便宜上、被取付部148Yのみ図示)を取付部146C、146M、146Y、146Kに固定することにより、ヘッド支持フレーム140に取り付けられる。ヘッド支持フレーム140に取り付けられた各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、画像記録ドラム52の回転軸を中心とした同心円上に一定の間隔をもって放射状に配置される。
【0177】
ヘッド支持フレーム140は、図示しないガイドレールに摺動自在に支持される。ガイドレールは、インクジェット記録装置10の図示しないフレームに固定されて、画像記録ドラム52の回転軸と平行に配設される。ヘッド支持フレーム140は、図示しないリニア駆動機構(たとえば、送りネジ機構など)に駆動されて、ガイドレール上を摺動し、図4に実線で示す「第1の位置」と図4に破線で示す「第2の位置」との間を移動する。
【0178】
ここで、「第1の位置」は、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに対して画像の記録処理を行うことができる位置に設定される。ヘッド支持フレーム140を「第1の位置」に位置させると、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは「画像記録位置」に配置され、画像記録ドラム52の周囲に配置される。
【0179】
一方、「第2の位置」は、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに対してメンテナンスユニットでメンテナンスを行うことができる位置に設定される。ヘッド支持フレーム140を「第2の位置」に位置させると、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは「メンテナンス位置」に配置され、メンテナンスユニットの設置位置に配置される。
【0180】
〈メンテナンスユニットの構成〉
メンテナンスユニットは、メンテナンス位置に位置した各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに対して洗浄、保湿等のメンテナンスを行う。
【0181】
メンテナンスユニット300は、主として、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kのメンテナンス(洗浄、保湿)を行うンテナンス装置302C、302M、302Y、302Kと、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kのノズル面の汚れ状態を検出する汚れ状態検出装置304C、304M、304Y、304Kとで構成される。
【0182】
[メンテナンス装置]
メンテナンス装置302C、302M、302Y、302Kは、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに個別に設けられ、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kのノズル面57C、57M、57Y、57Kを個別に洗浄、保湿する。
【0183】
各メンテナンス装置302C、302M、302Y、302Kは、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの移動経路上に配置され、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kがメンテナンス位置に位置したときの各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの下部位置に配置される。
【0184】
このメンテナンス装置302C、302M、302Y、302Kの設置位置には、ドレーンパン306が設置される。各メンテナンス装置302C、302M、302Y、302Kは、このドレーンパン306の内側に収容配置される。
【0185】
各メンテナンス装置302C、302M、302Y、302Kは、このドレーンパン306の内側において、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kのノズル面57のメンテナンスを行う。
【0186】
なお、各メンテナンス装置302C、302M、302Y、302Kの構成は共通しているので、以下においては、符号302でメンテナンス装置を示して、その構成を説明する。
【0187】
図5、図6は、それぞれメンテナンス装置の概略構成を示す斜視図と縦断面図である。なお、便宜上、インクジェットヘッド56は、模式的に示している。
【0188】
同図に示すように、メンテナンス装置302は、インクジェットヘッド56の幅(長手方向の長さ)に対応する幅を有するブロック状の本体フレーム303を備える。
【0189】
本体フレーム303は、インクジェットヘッド56のノズル面57との間で洗浄液を膜状に保持してノズル面57を湿潤させる機能と、ノズル面57をキャップして保湿する機能とを備え、ノズル面57との間で洗浄液を保持する洗浄液保持部311と、ノズル面57をキャップするキャップ部312とで構成される。洗浄液保持部311とキャップ部312とは、インクジェットヘッド56の長手方向と直交する方向に連ねて並列して設けられる。
【0190】
洗浄液保持部311には、その上端部にノズル面57との間で洗浄液を膜状に保持する洗浄液保持面311Aが形成される。
【0191】
洗浄液保持面311Aは、インクジェットヘッド56のノズル面57と平行に形成される。したがって、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、傾斜面として形成される。すなわち、本実施の形態のインクジェット記録装置10は、インクジェットヘッド56が画像記録ドラム52の周囲に傾斜して配置されるため、洗浄液保持面311Aも傾斜して形成される。
【0192】
洗浄液保持面311Aの幅方向の長さ(インクジェットヘッド56の長手方向と平行な方向の長さ)は、インクジェットヘッド56の幅方向の長さ(長手方向と平行な方向の長さ)に対応して形成される。
【0193】
洗浄液保持面311Aの傾斜方向上側の端部近傍には、洗浄液流出口313Bが形成される。洗浄液流出口313Bは、洗浄液保持面311Aの幅方向(傾斜方向と直交する方向)に沿って、一定の間隔で多数形成される。
【0194】
各洗浄液流出口313Bは、本体フレーム303に形成された洗浄液供給路313Aに連通される。洗浄液供給路313Aは、洗浄液供給口313Cに連通される。洗浄液供給口313Cから洗浄液を供給することにより、各洗浄液流出口313Bから洗浄液が流出する。そして、この洗浄液流出口313Bから洗浄液が流出することにより、洗浄液保持面311Aの上に洗浄液が供給される。
【0195】
インクジェットヘッド56のノズル面57を洗浄液保持面311Aに対向させた状態で洗浄液流出口313Bから洗浄液を流出させると、洗浄液は、ノズル面57の撥液性を利用して濡れ広がり、ノズル面57と洗浄液保持面311Aとの間に液膜を形成しながら、洗浄液保持面311Aの上を滑り落ちる。
【0196】
なお、このように洗浄液が、ノズル面57と洗浄液保持面311Aとの間に液膜を形成しながら滑り落ちるようにするため、ノズル面の表面性(接触角)、洗浄液保持面の表面性(接触角)、洗浄液の物性(粘度)、洗浄液の流速(単位時間あたりの供給量)、洗浄液流出口の形状、サイズ等が最適化される。
【0197】
洗浄液供給口313Cには、洗浄液供給ユニット324から洗浄液が供給される。洗浄液供給ユニット324は、洗浄液を貯留する洗浄液タンク324Aと、洗浄液タンク324Aと洗浄液供給口313Cとを繋ぐ洗浄液供給配管324Bと、洗浄液供給配管324Bを介して洗浄液タンク324Aから洗浄液供給口313Cに洗浄液を送液する洗浄液供給ポンプ324Cと、洗浄液供給配管324Bの途中に設けられ、洗浄液供給配管324Bの管路を開閉する洗浄液供給バルブ324Dとで構成される。
【0198】
洗浄液供給バルブ324Dを開いた状態で洗浄液供給ポンプ324Cを駆動することにより、洗浄液供給配管324Bを介して洗浄液タンク324Aから洗浄液供給口313Cに洗浄液が供給される。そして、この洗浄液供給ポンプ324Cの駆動を制御することにより、洗浄液の供給量が制御される。
【0199】
上記のように、キャップ部312は、洗浄液保持部311に連ねて設けられ、洗浄液保持面311Aの傾斜方向の下側に設けられる。このキャップ部312には、洗浄液保持面311Aを流れ落ちた洗浄液を回収して貯留する洗浄液貯留槽314が設けられる。
【0200】
洗浄液貯留槽314は、洗浄液保持面311Aに連なる面(洗浄液保持面311Aの傾斜方向下側に連続する面)に開口して形成され、所定深さをもって凹状に形成される。したがって、その上面(開口314Aが形成される面)は、傾斜して形成される(インクジェットヘッド56のノズル面57と平行に形成される。)。
【0201】
洗浄液貯留槽314の開口314Aは、ノズル形成領域(ノズル面57の中でノズルが形成される領域)に対応して形成され、インクジェットヘッド56のノズル面57に形成されたノズルを、その内側に収容可能に形成される。すなわち、キャップ部312は、ノズル面57をキャップ可能に形成される。
【0202】
洗浄液貯留槽314の底面には、排液口314Bが形成される。排液口314Bには、排液バルブ315が設けられる。
【0203】
洗浄液保持面311Aを流れ落ちた洗浄液は、開口314Aを介して洗浄液貯留槽314に流れ込み、洗浄液貯留槽314に貯留される。洗浄液貯留槽314に貯留された洗浄液は、排液バルブ315を開くことにより、排液口314Bから排液される。
【0204】
排液口314Bから排液された洗浄液は、ドレーンパン306で回収される。ドレーンパン306で回収された洗浄液は、ドレーンパン306に接続された排液配管308を介して排液タンク310に回収される。
【0205】
洗浄液貯留槽314の内部には、インクジェットヘッド56のノズル面57を払拭するワイパーブレード360が設けられる。
【0206】
ワイパーブレード360は、板状の弾性部材で構成され、所定の厚さをもって形成される。ワイパーブレード360に適用される弾性材の素材としては、たとえば、NBR(ニトリルゴム)、シリコンゴム、EPDM(エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム)などのゴム材や、スチレン系、オレフィン系、ポリエステル系などの熱可撓性エストラマー等を用いることができる。また、ワイパーブレード360の厚さは、たとえば、1mm程度とすることができる。
【0207】
ワイパーブレード360は、洗浄液貯留槽314の内側において、洗浄液の流れ方向における最上流側(洗浄液保持面311A側)に配置され、インクジェットヘッド56の長手方向に沿って配置される。
【0208】
ワイパーブレード360の幅(インクジェットヘッド56の長手方向の長さ)は、インクジェットヘッド56の長手方向の長さ対応して形成され、少なくとも、インクジェットヘッド56の長手方向におけるノズル形成領域の長さ以上に形成される。
【0209】
ワイパーブレード360は、洗浄液貯留槽314の内部に配置されるワイパーブレード支持軸362に支持されて、洗浄液貯留槽314の内側に配置される。
【0210】
図7は、ワイパーブレードの支持構造を示す平面図である。
【0211】
同図に示すように、ワイパーブレード360は、基端部(インクジェットヘッド56のノズル面57に接触させる部分の反対側の端部)をワイパーブレード支持軸362によって支持されて、洗浄液貯留槽314の内側に配置される。
【0212】
ワイパーブレード支持軸362は、インクジェットヘッド56のノズル面57と平行に配設され、両端部を軸受364に支持されて、回動自在に設けられる。したがって、このワイパーブレード支持軸362を回動させることにより、ワイパーブレード360の位置を変えることができるとともに、ノズル面57に対する傾斜角度を変えることができる(図8参照)。
【0213】
ワイパーブレード支持軸362の一端には、ワイパーブレード駆動モータ366が連結される。ワイパーブレード支持軸362は、このワイパーブレード駆動モータ366を駆動することにより回動する。これにより、ワイパーブレード360の位置及び傾斜角度を変更することができる。
【0214】
ワイパーブレード駆動モータ366は、たとえば、ステッピングモータで構成され、パルス信号によりワイパーブレード360の位置及び傾斜角度を容易に変更することができる。
【0215】
本体フレーム303は、図示しないガイドレールに摺動自在に支持される。ガイドレールは、図示しないフレームに固定されて、インクジェットヘッド56のノズル面57の傾斜方向と平行な方向(洗浄液保持面311Aの傾斜方向と平行な方向)に沿って配設される。
【0216】
フレームには、図示しないリニア駆動機構(たとえば、送りネジ機構など)が設けられている。本体フレーム303は、このリニア駆動機構に駆動されて、ガイドレール上を摺動し、図7に示すように、「湿潤位置」と「保湿位置」との間を移動する。
【0217】
ここで、「湿潤位置」は、図9(a)に示すように、メンテナンス位置に位置したインクジェットヘッド56に対して、洗浄液保持面311Aがインクジェットヘッド56のノズル面57に対向する位置に設定される。
【0218】
一方、「保湿位置」は、図9(b)に示すように、メンテナンス位置に位置したインクジェットヘッド56に対して、洗浄液貯留槽314の開口314Aがインクジェットヘッド56のノズル面57に対向する位置に設定される。
【0219】
したがって、本体フレーム303を湿潤位置に位置させると、洗浄液保持面311Aがインクジェットヘッド56のノズル面57に対向し、保湿位置に位置させると、洗浄液貯留槽314の開口314Aがインクジェットヘッド56のノズル面57に対向する。また、ワイパーブレード360を所定の作動領域(ワイパーブレード360の先端が、インクジェットヘッド56のノズル面57に当接する領域)に位置させた状態で本体フレーム303を湿潤位置から保湿位置に移動させると、その移動過程でインクジェットヘッド56のノズル面57にワイパーブレード360の先端が当接し、インクジェットヘッド56のノズル面57が、ワイパーブレード360によって払拭される。
【0220】
また、本体フレーム303は、図示しない昇降装置によって昇降自在に設けられる。メンテナンス装置302は、この昇降装置によって本体フレーム303を昇降させることにより、ノズル面57と洗浄液保持面311Aとの間に形成する隙間(クリアランス)の量を調整することができる。
【0221】
メンテナンス装置302は、以上のように構成される。
【0222】
メンテナンス位置に位置したインクジェットヘッド56に対して、本体フレーム303を湿潤位置に位置させると、洗浄液保持面311Aがインクジェットヘッド56のノズル面57に対向して配置される。この状態で洗浄液流出口313Bから洗浄液を流出させると、ノズル面57と洗浄液保持面311Aとの間に液膜が形成され、ノズル面57が湿潤される。
【0223】
この際、洗浄液は、ノズル面57の撥液性を利用して濡れ広がり、ノズル面57と洗浄液保持面311Aとの間に液膜を形成しながら、洗浄液保持面311Aの上を滑り落ちる。洗浄液保持面311Aの上を滑り落ちた洗浄液は、洗浄液貯留槽314で回収される。
【0224】
ワイパーブレード360を所定の作動領域に位置させ、本体フレーム303を湿潤位置から保湿位置に移動させると、その移動過程でインクジェットヘッド56のノズル面57にワイパーブレード360の先端が当接し、インクジェットヘッド56のノズル面57が、ワイパーブレード360によって払拭される。
【0225】
本体フレーム303が保湿位置に移動すると、インクジェットヘッド56のノズル面57が、洗浄液貯留槽314でキャップされる。上記のように、洗浄液貯留槽314には、洗浄液が貯留されている。洗浄液貯留槽314でキャップされたノズル面57は、この洗浄液貯留槽314に貯留された洗浄液で保湿される。
【0226】
ここで、上記のように、ワイパーブレード360は、回動可能に設けられており、ノズル面57に対する傾斜角度(当接角度)を変えて当接させることができる。ノズル面57に対する傾斜角度を変えると、ノズル面57に対するワイパーブレード360の当接圧力を変えることができる。
【0227】
たとえば、図8(b)に示すように、ノズル面57に対してワイパーブレード360が直角になる姿勢を基準とすると、この状態から洗浄液保持面311Aの方向にワイパーブレード360を傾斜させると(同図(a))、ワイパーブレード360の当接圧は高くなり、逆に、洗浄液保持面311Aとは反対方向にワイパーブレード360を傾斜させると(同図(c))、ワイパーブレード360の当接圧は低くなる。
【0228】
すなわち、図8(a)に示すように、基準状態から洗浄液保持面311Aの方向にワイパーブレード360を傾斜させると(ワイパーブレード360に対するインクジェットヘッド56の相対的な移動方向に対して、ワイパーブレード360をインクジェットヘッド56の移動方向上流側に傾斜させると)、ノズル面57に対するワイパーブレード360の接触面積が小さくなり(いわゆるエッジでノズル面に当接)、当接圧が増加する。
【0229】
一方、図8(c)に示すように、基準状態から洗浄液保持面311Aとは反対方向にワイパーブレード360を傾斜させると(ワイパーブレード360に対するインクジェットヘッド56の相対的な移動方向に対して、ワイパーブレード360をインクジェットヘッド56の移動方向下流側に傾斜させると)、ノズル面57に対するワイパーブレード360の接触面積が大きくなり(いわゆる腹でノズル面に当接する)、当接圧が減少する。
【0230】
このように、ノズル面57に対するワイパーブレード360の傾斜角度(当接角度)を変えることにより、ノズル面57に対するワイパーブレード360の当接圧力を変えることができる。
【0231】
したがって、ノズル面57の汚れ状態に応じてワイパーブレード360の当接圧力を変えることにより、適切にノズル面57を払拭することができる。これにより、過度な当接圧での払拭により、ノズル面57がダメージを受けるのを防止することができる。この汚れ状態に応じた当接圧の制御については、後に詳述する。
【0232】
なお、本実施の形態では、ワイパーブレード360の当接圧(当接角度)を3段階に設定できる構成とする。すなわち、図8(a)に示す当接圧「高」の状態と、図8(b)に示す当接圧「中」の状態と、図8(c)に示す当接圧「低」の3段階に設定できるものとする。
【0233】
また、ワイパーブレード360は、通常、待機位置に位置する。待機位置は、図9に示すように、ワイパーブレード360の先端が鉛直下向きに向く位置に設定される。これにより、ノズル面57の移動経路上からワイパーブレード360が退避するとともに、ワイパーブレード360の先端が、洗浄液貯留槽314に貯留された洗浄液中に浸漬される。
【0234】
このように、待機中、ワイパーブレード360の先端を洗浄液貯留槽314に貯留された洗浄液中に浸漬させることにより、払拭時にワイパーブレード360に付着した汚れを除去することができ、より効果的にノズル面57を払拭することができる。
【0235】
[汚れ状態検出装置]
汚れ状態検出装置304C、304M、304Y、304Kは、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kのノズル面57の汚れ状態を検出する。汚れ状態検出装置304C、304M、304Y、304Kは、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kごとに個別に設けられる。
【0236】
図4に示すように、汚れ状態検出装置304(304C、304M、304Y、304K)は、画像記録位置とメンテナンス位置との間を移動する各インクジェットヘッド56の移動経路上に配置される。
【0237】
本実施の形態のインクジェット記録装置10において、汚れ状態検出装置304は、ラインスキャナで構成される。インクジェットヘッド56は、画像記録位置からメンテナンス位置に移動する過程で、この汚れ状態検出装置304によってノズル面57の状態が読み取られる(ノズル面57の画像が撮像される。)。
【0238】
読み取られた画像データは、システムコントローラ100に出力される。システムコントローラ100は、汚れ状態検出装置304で読み取られた画像を解析し、ノズル面57の汚れ状態を判別する。
【0239】
ここで、ノズル面57に付着している液滴を画像処理により抽出し、抽出された液滴のうち最大の液滴を特定する。そして、その最大の液滴のサイズ(直径)を計測し、計測されたサイズに基づいて、ノズル面57の汚れ状態を判別する。たとえば、最大液滴のサイズを大(たとえば、100μm以上)、中(たとえば、10〜100μm)、小(たとえば、10μm以下)の3段階に分け、計測された最大液滴のサイズが、どのレベルに属するかを判定し、その判定結果に基づいて、汚れ状態を特定する。すなわち、最大液滴のサイズが大きいほど汚れの程度が高いと判断できるので、計測された最大液滴のサイズが大きいほど汚れの程度が高いと判定する。上記の場合、最大液滴のサイズが大の場合、汚れの程度が高、最大液滴のサイズが中の場合、汚れの程度が中、最大液滴のサイズが小の場合、汚れの程度が低となる。
【0240】
システムコントローラ100は、検出されたノズル面57の汚れ状態に応じて、ワイパーブレード360の当接圧力を設定し、ノズル面57を払拭する。
【0241】
《メンテナンスユニットを用いたメンテナンス方法》
次に、上記のメンテナンスユニット300を用いたインクジェットヘッド56のノズル面57のメンテナンス方法について説明する。
【0242】
なお、待機中、本体フレーム303は、湿潤位置に位置し、ワイパーブレード360は、待機位置に位置する。
【0243】
インクジェットヘッド56のノズル面57のメンテナンスは、メンテナンスの実行指令に基づいて実施される。
【0244】
メンテナンスの実行指令は、たとえば、累積印刷枚数が規定枚数に達した場合や、累積運転時間が規定時間に達した場合、インクジェット記録装置10の運転終了時などに発生される。また、オペレータによるメンテナンス実行指令に基づいて発生される。
【0245】
システムコントローラ100にメンテナンスの実行指令が入力されると、システムコントローラ100は、まず、インクジェットヘッド56を画像記録位置からメンテナンス位置に移動させる。
【0246】
インクジェットヘッド56を画像記録位置からメンテナンス位置に移動すると、その移動過程でノズル面57の状態が汚れ状態検出装置304によって読み取られる。すなわち、ノズル面57の画像が撮像される。
【0247】
得られたノズル面57の画像データは、システムコントローラ100に入力される。システムコントローラ100は、得られた画像データに基づいて、ノズル面57の汚れ状態を特定する。そして、特定した汚れ状態に基づいて、ワイパーブレード360の当接圧を設定する。
【0248】
ここで、上記のように、ノズル面57の汚れ状態は、ノズル面57に付着している液滴の最大液滴サイズに基づいて特定される。すなわち、最大液滴サイズが「大」に属する場合は、汚れ状態を「高」とする。また、最大液滴サイズが「中」に属する場合は、汚れ状態を「中」とする。また、最大液滴サイズが「小」に属する場合は、汚れ状態を「小」とする。
【0249】
特定された汚れ状態に基づいて、ワイパーブレード360の当接圧が設定される。すなわち、汚れ状態「高」の場合は、ワイパーブレード360の当接圧を「高」に設定する(図8(a)参照)。また、汚れ状態「中」の場合は、ワイパーブレード360の当接圧を「中」に設定する(図8(b)参照)。また、汚れ状態「小」の場合は、ワイパーブレード360の当接圧を「低」に設定する(図8(b)参照)。
【0250】
インクジェットヘッド56が、メンテナンス位置に移動すると、インクジェットヘッド56のノズル面57とメンテナンス装置302の洗浄液保持面311Aとが対向して配置される。システムコントローラ100は、本体フレーム303を上下方向に移動させて、洗浄液保持面311Aとノズル面57とのクリアランスを調整する。
【0251】
クリアランスの調整が完了すると、洗浄液供給ユニット324が駆動され、洗浄液の供給が開始される。これにより、洗浄液流出口313Bから洗浄液保持面311Aの上に洗浄液が流出する。
【0252】
洗浄液保持面311Aの上に流出した洗浄液は、ノズル面57の撥液性を利用して濡れ広がり、ノズル面57と洗浄液保持面311Aとの間に液膜を形成しながら、洗浄液保持面311Aの上を滑り落ちる。これにより、ノズル面57が湿潤される。
【0253】
洗浄液の供給は一定時間継続して行われる。供給開始から一定時間経過すると、洗浄液の供給が停止される。
【0254】
ここで、上記のように、洗浄液流出口313Bから洗浄液保持面311Aの上に流出した洗浄液は、ノズル面57との間に液膜を形成しながら洗浄液保持面311Aの上を滑り落ちる。この滑り落ちた洗浄液は、洗浄液貯留槽314の開口314Aから洗浄液貯留槽314に流れ込み、洗浄液貯留槽314に貯留される。
【0255】
洗浄液の供給が停止されると、ワイパーブレード駆動モータ366が駆動され、ワイパーブレード360が、待機位置から所定の作動領域に移動する。
【0256】
ここで、上記のように、ワイパーブレード360は、ノズル面57の汚れ状態に応じた当接圧が設定されている。したがって、ワイパーブレード360は、設定された当接圧に対応する傾斜角度に設定される。たとえば、設定された当接圧が「高」の場合は、当接圧が「高」になる傾斜角度に設定される(図8(a)参照)。また、設定された当接圧が「中」の場合は、当接圧が「中」になる傾斜角度に設定される(図8(b)参照)。また、設定された当接圧が「低」の場合は、当接圧が「低」になる傾斜角度に設定される(図8(c)参照)。
【0257】
ワイパーブレード駆動モータ366が駆動され、ワイパーブレード360が、設定された当接圧に対応する傾斜角度に設定されると、本体フレーム303のリニア駆動機構(不図示)が駆動される。これにより、本体フレーム303が湿潤位置から保湿位置に向けて移動する。
【0258】
本体フレーム303が、湿潤位置から保湿位置に向けて移動すると、その移動過程でワイパーブレード360がノズル面57に当接する。これにより、ノズル面57が払拭される。
【0259】
この際、ワイパーブレード360は、ノズル面57の汚れ状態に応じた当接圧で当接されるため、必要以上の負荷がノズル面57にかかるのを防止することができる。これにより、ノズル面57にダメージを与えることなく、ノズル面57を払拭することができる。また、これにより、ノズル面57の寿命を延ばすことができる。
【0260】
本体フレーム303が、保湿位置に到達すると、本体フレーム303のリニア駆動機構(不図示)の駆動が停止される。これにより、洗浄液貯留槽314の開口314Aが
ノズル面57に対向して配置される。そして、この洗浄液貯留槽314の開口314Aがノズル面57に開口314Aに対向して配置されることにより、ノズル面57が洗浄液貯留槽314に覆われ、ノズル面57が洗浄液貯留槽314でキャップされる。
【0261】
ここで、上記のように、洗浄液貯留槽314には、ノズル面57の湿潤時に供給した洗浄液が回収され、貯留されている。ノズル面57は、この洗浄液貯留槽314に貯留された洗浄液で保湿され、乾燥が防止される。
【0262】
以上一連の工程でノズル面57のメンテナンスが完了する。インクジェットヘッド56は、次のジョブの実行指令があるまで保湿状態で待機する。これにより、ノズルの目詰まり等を生じさせることなく、インクジェットヘッド56を待機させることができる。
【0263】
このように、本実施の形態のメンテナンスユニットによれば、ノズル面57の洗浄、保湿を一体で行うことができるので、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0264】
また、洗浄に供した洗浄液を利用してノズル面を保湿するので、洗浄液の消費も抑えることができる。
【0265】
更に、ノズル面57の汚れ状態に応じてワイパーブレード360の当接圧を設定しているので、過度な負荷を与えることなくノズル面57を払拭することができる。これにより、ノズル面57が受けるダメージを抑えることができ、ノズル面57に形成される撥液膜の寿命も延ばすことができる。
【0266】
なお、上記の実施の形態では、ノズル面の汚れ状態を検出するに際して、ノズル面に付着している最大の液滴を検出し、その最大の液滴のサイズに基づいて、ノズル面の汚れ状態を検出する構成としているが、ノズル面の汚れ状態を検出する方法は、これに限定されるものではない。たとえば、ノズル面に付着している最大の液滴のサイズと、ノズル面の放置時間(=インクジェットヘッドの動作停止からの経過時間)とに基づいて、ノズル面の汚れ状態を検出する構成とすることもできる。すなわち、ノズル面に付着している最大の液滴のサイズが同じ場合であっても、ノズル面の放置時間が長くなれば、その分、汚れは落ちにくくなる。したがって、ノズル面に付着している最大の液滴のサイズが大きくなるほど、また、ノズル面の放置時間が長くなるほど、汚れ状態が大きいと判定するようにする。
【0267】
図10は、ノズル面に付着している最大の液滴のサイズと、ノズル面の放置時間とに基づいてノズル面の汚れ状態を判定する場合の判定基準の一例を示す表である。
【0268】
同図に示すように、ノズル面に付着している最大の液滴のサイズDが大きくなるほど、また、ノズル面の放置時間Tが長くなるほど、汚れ状態が大きいと判定するように設定される。
【0269】
ノズル面に付着している最大の液滴のサイズと、ノズル面の放置時間とに基づいてノズル面の汚れ状態を判定する場合、この表をテーブルとして保持する(たとえば、システムコントローラ100のROM等に格納)。システムコントローラ100は、ノズル面57の放置時間を計測し(たとえば、タイマ等で計測)、計測された放置時間と、ノズル面に付着している最大の液滴のサイズとに基づいて、この表を参照して、ノズル面の汚れ状態を特定する。これにより、より適切にノズル面の汚れ状態を把握することができる。また、これにより、より適切な当接圧に設定して、ノズル面を払拭することができる。
【0270】
なお、本実施の形態では、ノズル面の汚れ状態を3段階に分けて特定する構成としているが、更に詳細に特定できるようにすることもできる。同様に、ワイパーブレードの当接圧についても、更に詳細に設定できるように構成することもできる。
【0271】
また、本実施の形態では、本体フレーム303を湿潤位置から保湿位置に移動させる際、常にノズル面をワイパーブレードで払拭する構成としているが、汚れ状態が少ない場合は、ワイパーブレードで払拭せずに移動させることもできる。すなわち、汚れ状態が少ない場合は、ワイパーブレード360を待機位置に位置させた状態で本体フレーム303を湿潤位置から保湿位置に移動させる。この場合、湿潤過程でノズル面に付着している汚れを洗い流す。すなわち、本実施の形態のメンテナンス装置では、洗浄液保持面311Aが傾斜面とされているため、洗浄液保持面311Aの上に洗浄液を供給すると、洗浄液が洗浄液保持面311Aに沿って流れ落ちる。この洗浄液の流れを利用することで、ノズル面に付着する汚れを洗い流すことができる。これにより、ノズル面にダメージを与えずにノズル面を洗浄することができる。
【0272】
《ワイパーブレードの当接圧の切り替え機構の他の実施の形態》
上記のように、ノズル面の汚れ状態に応じて、ワイパーブレードの当接圧を切り換えることにより、ノズル面が受けるダメージを低減させることができる。
【0273】
以下においては、ワイパーブレードの当接圧を切り換えるための切り替え機構の他の例について説明する。
【0274】
〈ワイパーブレードの当接圧切り替え機構の他の例(1)〉
本例では、ノズル面に対してワイパーブレードを進退移動可能に設け、ノズル面に対するワイパーブレードのオーバーラップ量を変えることにより、ノズル面に対するワイパーブレードの当接圧を切り換える。
【0275】
図11は、ワイパーブレードの当接圧切り替え機構の他の例(1)の概略構成図である。
【0276】
ワイパーブレード360は、ワイパーブレード進退移動装置400によって昇降自在に設けられる。そして、このワイパーブレード進退移動装置400によって昇降させることにより、インクジェットヘッド56のノズル面57に対して進退移動し、オーバーラップ量が調整される。
【0277】
図12は、ワイパーブレード進退移動装置の概略構成図である。
【0278】
同図に示すように、ワイパーブレード360の下端部には、昇降フレーム402が取り付けられる。昇降フレーム402は、矩形の板状に形成され、ワイパーブレード進退移動装置本体フレーム404に保持される。
【0279】
ワイパーブレード進退移動装置本体フレーム404は、矩形の板状に形成され、上面部にスリット406が形成される。スリット406は、昇降フレーム402の形状に対応して形成され、昇降フレーム402を収容可能に形成される。昇降フレーム402は、このスリット406に収容されて、保持される。
【0280】
スリット406の底部には、幅方向の両端にガイド穴408が形成される。一方、昇降フレーム402の下面には、ガイド穴408に対応してガイドロッド410が突出して形成される。スリット406に収容された昇降フレーム402は、このガイドロッド410が、ガイド穴408に挿入される。そして、このガイド穴408にガイドロッド410がガイドされることにより、昇降フレーム402はスリット406内を昇降自在に設けられる。
【0281】
スリット406の内部には、幅方向の両端部に引っ張りバネ412が配置される。引っ張りバネ412の一端は、スリット406の底面に固定され、他端は、昇降フレーム402の下面に固定される。昇降フレーム402は、この引っ張りバネ412によって、スリット406内に没する方向に付勢される。
【0282】
また、スリット406の内部には、幅方向のほぼ中央位置に偏芯カム414が配置される。偏芯カム414は、ワイパーブレード進退移動装置本体フレーム404に回転自在に設けられたカム軸416に偏芯して取り付けられて、回転自在に設けられる。昇降フレーム402は、この偏芯カム414の周面に下面が係合する。
【0283】
カム軸416には、図13に示すように、ワイパーブレード進退移動装置本体フレーム404に取り付けられたワイパーブレード昇降用モータ418が接続される。カム軸416は、このワイパーブレード昇降用モータ418を駆動することにより回転(偏芯回転)する。
【0284】
図13に示すように、ワイパーブレード昇降用モータ418を駆動してカム軸416を回転させると、偏芯カム414が偏芯回転する。これにより、昇降フレーム402の下面が、偏芯カム414に押されて、昇降フレーム402が昇降移動する。そして、この昇降フレーム402が昇降移動ことにより、ワイパーブレード360が昇降移動する。
【0285】
このように、ワイパーブレード360を昇降移動可能に構成し、ノズル面57に対してワイパーブレード360を進退移動可能(ワイパーブレード360の先端の高さ位置を調整可能)にすることにより、ノズル面57に対するワイパーブレード360の先端のオーバーラップ量を調整することができる。
【0286】
ノズル面57に対するワイパーブレード360の先端のオーバーラップ量を変えることにより、ノズル面57に対するワイパーブレード360の当接圧を変えることができる。すなわち、オーバーラップ量を大きくすれば、当接圧を高くすることができ、オーバーラップ量を小さくすれば、当接圧を低くすることができる。
【0287】
ワイパーブレード昇降用モータ418は、たとえば、ステッピングモータで構成し、パルス信号によりワイパーブレード360の位置を調整できるように構成する。たとえば、図13に示すように、3段階で高さ調整可能とし、当接圧を低(同図(a))、中(同図(b))、高(同図(c))と調整できるように構成する。
【0288】
なお、本例では、いわゆるカム機構でワイパーブレード360を昇降させる構成としているが、ワイパーブレード360を昇降させる構成は、これに限定されるものではない。たとえば、リニア駆動可能なアクチュエータを用いてワイパーブレード360を昇降移動させるようにしてもよい。
【0289】
また、本態様においても、ワイパーブレード360は、待機中、洗浄液貯留槽314に貯留された洗浄液中に先端を浸漬させることが好ましい。これにより、待機中にワイパーブレード360の洗浄を行うことができる。ワイパーブレード360の先端を洗浄液中に浸漬させる態様は、上記実施の形態のように、たとえば、ワイパーブレード360を軸回りに回転させて、ワイパーブレード360の先端を洗浄液中に浸漬させる。
【0290】
〈ワイパーブレードの当接圧切り替え機構の他の例(2)〉
本例では、ワイパーブレードの自由長を変えて、ワイパーブレードの当接圧を切り換える。
【0291】
図14は、ワイパーブレードの当接圧切り替え機構の他の例(2)の概略構成図である。
【0292】
ワイパーブレード360は、自由長調整装置430によって自由長が調整される。すなわち、先端から下端側の保持部までの長さ(自由長)が調整される。
【0293】
図15は、自由長調整装置の概略構成図である。
【0294】
同図に示すように、ワイパーブレード360の下端部には、昇降フレーム432が取り付けられる。昇降フレーム432は、矩形の板状に形成され、ワイパーブレードホルダ434に保持される。
【0295】
ワイパーブレードホルダ434は、矩形の板状に形成され、上面部に凹部436が形成される。凹部436は、昇降フレーム432の形状に対応して形成され、昇降フレーム432を収容可能に形成される。昇降フレーム432は、この凹部436に収容されて、保持される。
【0296】
凹部436の開口部には、図16に示すように、一対のサポート板437が設けられる。一対のサポート板437は、ワイパーブレード360を挟んで配置される。
【0297】
凹部436の底部には、幅方向の両端にガイド穴438が形成される。一方、昇降フレーム432の下面には、ガイド穴438に対応してガイドロッド440が突出して形成される。凹部436に収容された昇降フレーム432は、このガイドロッド440が、ガイド穴438に挿入される。そして、このガイド穴438にガイドロッド440がガイドされることにより、昇降フレーム432は、凹部436内を昇降自在に設けられる。ワイパーブレード360は、この昇降フレーム432が凹部436内を昇降することにより昇降する。この際、一対のサポート板437の間を昇降する。
【0298】
凹部436の内部には、幅方向の両端部に引っ張りバネ442が配置される。引っ張りバネ442の一端は、凹部436の底面に固定され、他端は、昇降フレーム432の下面に固定される。昇降フレーム432は、この引っ張りバネ442によって、凹部436内に没する方向に付勢される。
【0299】
また、凹部436の内部には、幅方向のほぼ中央位置に偏芯カム444が配置される。偏芯カム444は、ワイパーブレードホルダ434に回転自在に設けられたカム軸446に偏芯して取り付けられて、回転自在に設けられる。昇降フレーム432は、この偏芯カム444の周面に下面が係合する。
【0300】
カム軸446には、図16に示すように、ワイパーブレードホルダ434に取り付けられたワイパーブレード昇降用モータ448が接続される。カム軸446は、このワイパーブレード昇降用モータ448を駆動することにより回転(偏芯回転)する。
【0301】
図16に示すように、ワイパーブレード昇降用モータ448を駆動してカム軸446を回転させると、偏芯カム444が偏芯回転する。これにより、昇降フレーム402の下面が、偏芯カム414に押されて、昇降フレーム402が昇降移動する。そして、この昇降フレーム432が昇降移動ことにより、ワイパーブレード360が、一対のサポート板437の間から出没する。
【0302】
このように、ワイパーブレード360を一対のサポート板437の間から出没可能に構成することにより、ワイパーブレード360の自由長(サポート板437からの突出量)を調整することができる。
【0303】
ワイパーブレード360の自由長を変えることにより、ノズル面57に対するワイパーブレード360の当接圧を変えることができる。すなわち、自由長を長くすれば、当接圧を低くすることができ、自由長を短くすれば、当接圧を高くすることができる。
【0304】
ワイパーブレード昇降用モータ448は、たとえば、ステッピングモータで構成し、パルス信号によりワイパーブレード360の突出量を調整できるように構成する。たとえば、図13に示すように、3段階でワイパーブレード360の突出量を調整可能する。図13に示す例では、突出量を大(同図(a)、たとえば、自由長:6mm)、中(同図(b)、たとえば、自由長:8mm)、小(同図(c)、たとえば、自由長:10mm)の3段階で調整できるように構成している。したがって、汚れ状態に応じて突出量を変えれば、汚れ状態に応じて当接力を変えることができ、ノズル面57を適切に払拭することができる。
【0305】
なお、本例では、いわゆるカム機構で昇降フレーム432を昇降させ、一対のサポート板437の間からワイパーブレード360を出没させる構成としているが、ワイパーブレード360をサポート板437の間から出没させる構成は、これに限定されるものではない。たとえば、リニア駆動可能なアクチュエータを用いてワイパーブレード360を昇降移動させて、一対のサポート板437の間から出没させるようにしてもよい。
【0306】
また、上記の例では、一対のサポート板437でワイパーブレード360を挟んでワイパーブレード360の下端を保持する構成としているが、ノズル面57の移動方向に対して下流側にのみサポート板を配置して、ワイパーブレード360の下端を保持する構成としてもよい。この場合も同様に当接圧を調整することができる。
【0307】
なお、本例のように、ワイパーブレード360の自由長を変えて当接圧を変える場合は、オーバーラップ量(ワイパーブレード360の高さ位置)は一定にすることが好ましい。この場合、たとえば、ワイパーブレード360の高さ調整機構を別途設ける。
【0308】
また、本態様においても、ワイパーブレード360は、待機中、洗浄液貯留槽314に貯留された洗浄液中に先端を浸漬させることが好ましい。これにより、待機中にワイパーブレード360の洗浄を行うことができる。ワイパーブレード360の先端を洗浄液中に浸漬させる態様は、上記実施の形態のように、たとえば、ワイパーブレード360を軸回りに回転させて、ワイパーブレード360の先端を洗浄液中に浸漬させる。
【0309】
〈ワイパーブレードの当接圧切り替え機構の他の例(3)〉
本例では、使用するワイパーブレードを切り換えて、ワイパーブレードの当接圧を切り換える。
【0310】
図17は、ワイパーブレードの当接圧切り替え機構の他の例(3)の概略構成図である。
【0311】
同図に示すように、3つのワイパーブレード360A、360B、360Cを備え、ワイパーブレード切替装置460によって使用するワイパーブレードを切り換える。この3つのワイパーブレード360A、360B、360Cは、それぞれノズル面に当接させた際の当接圧が異なるように構成される。本例では、各ワイパーブレードの厚さを変えて、当接圧を変えている。すなわち、各ワイパーブレード360A、360B、360Cは、厚さのみが異なり、それ以外の構成(たとえば、材質、自由長等)は、すべて同じに形成される。同じ条件で当接させた場合(オーバーラップ量を共通とした場合)、厚さが厚いほど当接圧は大きくなる。本例では、ワイパーブレード360A、ワイパーブレード360B、ワイパーブレード360Cの順で厚さが厚くなる。したがって、ワイパーブレード360A、ワイパーブレード360B、ワイパーブレード360Cの順でノズル面57に当接させた際の当接圧が高くなる。
【0312】
図18は、ワイパーブレード切替装置の概略構成図である。
【0313】
同図に示すように、3つのワイパーブレード360A、360B、360Cは、基端部をワイパーブレード支持軸462によって支持されて、洗浄液貯留槽314の内側に配置される。3つのワイパーブレード360A、360B、360Cは、ワイパーブレード支持軸462に一定の角度間隔で取り付けられる。
【0314】
ワイパーブレード支持軸462は、インクジェットヘッド56のノズル面57と平行に配設され、両端部を軸受464に支持されて、洗浄液貯留槽314の内側に回動自在に設けられる。したがって、このワイパーブレード支持軸462を回動させることにより、ワイパーブレード360A、360B、360Cの位置を変えることができる。
【0315】
ワイパーブレード支持軸462の一端には、ワイパーブレード切替モータ466が連結される。ワイパーブレード支持軸462は、このワイパーブレード切替モータ466を駆動することにより回動する。これにより、使用するワイパーブレードを切り換えることができる。
【0316】
ワイパーブレード切替モータ466は、たとえば、ステッピングモータで構成し、パルス信号により使用するワイパーブレードを選択できるように構成する。上記のように、本例では、ワイパーブレード360A(当接圧:低)、ワイパーブレード360B(当接圧:中)、ワイパーブレード360C(当接圧:高)の順でノズル面57に当接させた際の当接圧が高くなる。したがって、ノズル面57の汚れ状態に応じて、使用するワイパーブレードを切り換えることにより、汚れ状態に応じて当接力を変えることができ、ノズル面57を適切に払拭することができる。
【0317】
なお、図19に示すように、ワイパーブレード360A〜360Cは、待機中(不使用時)、洗浄液貯留槽314に貯留された洗浄液の中に先端を浸漬させておくことが好ましい。これにより、待機中にワイパーブレード360A〜360Cをクリーニングすることができる。
【0318】
本例では、各ワイパーブレードの厚さを変えて、当接圧を変えているが、上記のように、各ワイパーブレードの当接圧を変える方法は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、ワイパーブレード厚さ、先端の高さ位置(すなわち、オーバーラップ量)、自由長を変えて、各ワイパーブレードの当接圧を変えるようにしてもよい。また、これらを組み合わせて各ワイパーブレードの当接圧を変えるようにしてもよい。
【0319】
また、本例では、各ワイパーブレードをワイパーブレード支持軸462に取り付け、ワイパーブレード支持軸462を回転させることにより、使用するワイパーブレードを切り替える構成としているが、使用するワイパーブレードを切り替える方法は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、各ワイパーブレードをノズル面に対して個別に進退移動可能に設け、選択した1つのワイパーブレードのみをノズル面に向けて突出させることにより、選択したワイパーブレードのみがノズル面に当接するように構成してもよい。
【0320】
《ノズル面の汚れ状態を検出する方法の他の実施の形態》
上記実施の形態では、画像記録位置とメンテナンス位置との間を移動する各インクジェットヘッド56の移動経路上にラインスキャナからなる汚れ状態検出装置304を配置し、画像解析により、ノズル面57の汚れ状態を検出(特定、把握)する構成としているが、ノズル面57の汚れ状態を検出する方法は、これに限定されるものではない。
【0321】
たとえば、図20に示すように、メンテナンス装置302に撮像部470を設け、メンテナンス装置302でノズル面57を撮像して、ノズル面57の汚れ状態を検出するようにしてもよい。図20に示す例では、洗浄液保持部311とキャップ部312との間に撮像部470を設けている。撮像部470は、洗浄液保持面311Aと連なる面に凹部470Aが形成され、この凹部470Aにカバーガラス472を介して汚れ状態検出装置474が設置される。汚れ状態検出装置474は、ラインスキャナで構成され、ノズル面57に沿って配設される。メンテナンス装置302は、湿潤位置と保湿位置との間を移動する過程でノズル面57が汚れ状態検出装置474で読み取られる(撮像される)。
【0322】
また、上記実施の形態では、汚れ状態検出装置をラインスキャナで構成し、ラインスキャナでノズル面57を読み取る(撮像)する構成としているが、ノズル面57の全面を撮像できるカメラを用いて撮像する構成とすることもできる。
【0323】
また、ノズル面57の撮影画像からノズル面57の汚れ状態を特定するのではなく、ノズル面57の放置時間からノズル面57の汚れ状態を特定するようにしてもよい。この他、ノズル面57を一度ワイパーブレードで払拭し、その時のワイパーブレードの抵抗を測定し、その結果に基づいてノズル面57の汚れ状態を特定するようにしてもよい。
【0324】
《メンテナンス装置の他の実施の形態》
上記実施の形態では、ノズル面が傾斜して配置されたインクジェットヘッドをメンテナンスする場合を例に説明したが、図21に示すように、ノズル面が水平に設置されたインクジェットヘッドをメンテナンスする場合にも同様に本発明を適用することができる。
【0325】
また、メンテナンス装置302は、洗浄液保持面311Aとインクジェットヘッド56のノズル面57との間のクリアランスを0mmより大きく2mm以下とすることが好ましい(より好ましくは、0.1mm以上0.5mm以下)。洗浄液保持面311Aとノズル面57との間のクリアランスを上記範囲とすることにより、洗浄液が、洗浄液保持面311Aとノズル面57との間を濡れ拡がりながら移動する。
【0326】
また、洗浄液貯留槽314の上面部とノズル面57との間のクリアランスは、可能な限り短くすることが好ましい。洗浄液貯留槽314の上面部とノズル面57との間のクリアランスを短くすることで、洗浄液貯留槽314に蓄えられた洗浄液が揮発し、洗浄液貯留槽314内を高湿度に維持することができる。この洗浄液貯留槽314の上面部とノズル面57との間のクリアランスは、0mmより大きく2mm以下とすることが好ましい(より好ましくは、0.5mmより大きく1.5mm以下)。
【0327】
なお、洗浄液保持面311Aと洗浄液貯留槽314の上面とは、必ずしも同一の面を構成する必要はなく、連続して形成されていればよい。すなわち、洗浄液保持面311Aを流れる洗浄液を洗浄液貯留槽314に回収できる構成であればよい。したがって、洗浄液保持面311Aと洗浄液貯留槽314の上面とは段状に形成されていてもよい。ただし、洗浄液貯留槽314の上面は、洗浄液保持面311Aよりも低く形成する必要がある。
【0328】
また、洗浄液貯留槽314の開口は、インクジェットヘッド56のノズル面57の面積と同じ、あるいは、それ以上であることが好ましい。洗浄液貯留槽314の開口をノズル面57の面積以上とすることで、ノズル面57の全面を効率よく保湿することができる。
【0329】
また、図22、図23に示すように、洗浄液貯留槽314の開口314Aの周囲にパッキン(シール部材)480を設けるようにしてもよい。保湿時、パッキン480をインクジェットヘッド56のノズル面57に接触させることで、ノズル面57の保湿性能を向上させることができる。
【0330】
また、上記実施の形態では、メンテナンス位置に位置したインクジェットヘッドに対して、メンテナンス装置側を移動させて、ノズル面が洗浄液保持面と対向する位置と、ノズル面が洗浄液貯留槽の開口と対向する位置との間を移動させているが、インクジェットヘッド側を移動(長手方向と直交する方向に移動)させて、ノズル面が洗浄液保持面と対向する位置と、ノズル面が洗浄液貯留槽の開口と対向する位置との間を移動させるようにしてもよい。
【0331】
《その他の実施の形態》
本発明の適用範囲は、用紙上にカラー画像を形成するインクジェット記録装置に限定されない。たとえば、樹脂粒子や金属粒子を含有する機能性液体により、所定のパターン(マスクパターン、配線パターン)を形成するパターン形成装置なと、インクジェット方式により媒体上に液体を噴射させる液体吐出装置に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0332】
10…インクジェット記録装置、12…給紙部、14…処理液付与部、16…処理液乾燥処理部、18…画像記録部、20…インク乾燥処理部、22…UV照射処理部、24…排紙部、30…給紙台、32…サッカー装置、32A…サクションフット、34…給紙ローラ対、34A、34B…ローラ、36…フィーダボード、36A…テープフィーダ、36B…リテーナ、36C…コロ、38…前当て、40…給紙ドラム、40A…グリッパ、42…処理液付与ドラム、42A…グリッパ、44…処理液付与ユニット、44A…塗布ローラ、44B…処理液槽、44C…汲み上げローラ、46…処理液乾燥処理ドラム、46A…グリッパ、48…用紙搬送ガイド、50…処理液乾燥処理ユニット、52…画像記録ドラム、52A…グリッパ、54…用紙押さえローラ、56(56C、56M、56Y、56K)…インクジェットヘッド、57(57C、57M、57Y,57K)…インクジェットヘッドのノズル面、58…インラインセンサ、59…接触防止板、60…ミストフィルタ、62…ドラム冷却ユニット、62A…ダクト、64…チェーングリッパ、64A…第1スプロケット、64B…第2スプロケット、64C…チェーン、64D…グリッパ、66…バックテンション付与機構、68…インク乾燥処理ユニット、70A…第1水平搬送経路、70B…傾斜搬送経路、70C…第2水平搬送経路、72…ガイドプレート、74…UV照射ユニット、76…排紙台、100…システムコントローラ、102…通信部、104…画像メモリ、110…搬送制御部、112…給紙制御部、114…処理液付与制御部、116…処理液乾燥制御部、118…画像記録制御部、120…インク乾燥制御部、122…UV照射制御部、124…排紙制御部、130…操作部、132…表示部、140…ヘッド支持フレーム、142L、142R…サイドプレート、144…連結フレーム、146C、146M、146Y、146K…取付部、148Y、148C、148K、148M…被取付部、300…メンテナンスユニット、302(302C、302M、302Y、302K)…メンテナンス装置、303…本体フレーム、304(304C、304M、304Y、304K)…汚れ状態検出装置、306…ドレーンパン。308…排液配管、310…排液タンク、311…洗浄液保持部、311A…洗浄液保持面、312…キャップ部、313A…洗浄液供給路、313B…洗浄液流出口、313C…洗浄液供給口、314…洗浄液貯留槽、314A…洗浄液貯留槽の開口、314B…洗浄液貯留槽の排液口、315…排液バルブ、324…洗浄液供給ユニット、324A…洗浄液タンク、324B…洗浄液供給配管、324C…洗浄液供給ポンプ、324D…洗浄液供給バルブ、360、360A、360B、360C…ワイパーブレード、362…ワイパーブレード支持軸、364…軸受、366…ワイパーブレード駆動モータ、400…ワイパーブレード進退移動装置、402…昇降フレーム、404…ワイパーブレード進退移動装置本体フレーム、406…スリット、408…ガイド穴、410…ガイドロッド、412…引っ張りバネ、414…偏芯カム、416…カム軸、418…ワイパーブレード昇降用モータ、430…自由長調整装置、432…昇降フレーム、434…ワイパーブレードホルダ、436…凹部、437…サポート板、438…ガイド穴、440…ガイドロッド、442…引っ張りバネ、444…偏芯カム、446…カム軸、448…ワイパーブレード昇降用モータ、460…ワイパーブレード切替装置、462…ワイパーブレード支持軸、464…軸受、466…ワイパーブレード切替モータ、470…撮像部、470A…凹部、472…カバーガラス、474…汚れ状態検出装置、480…パッキン、P…用紙(記録メディア)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録メディアを搬送する搬送手段と、
液体を吐出させるノズルが配列されたノズル面を有するインクジェットヘッドと、
前記ノズル面をメンテナンスするメンテナンス装置と、
を備え、
前記メンテナンス装置は、
前記ノズル面に対向して配置されることにより、前記ノズル面との間で洗浄液を保持する洗浄液保持面と、前記洗浄液保持面に連なる面に開口して形成され、前記洗浄液保持面の上に供給された前記洗浄液を回収して貯留するとともに、前記開口が前記ノズル面に対向して配置されることにより、前記ノズル面を保湿する洗浄液貯留槽とを備えるメンテナンス装置本体と、
前記洗浄液保持面の上に前記洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
前記ノズル面が前記洗浄液保持面と対向して配置される湿潤位置と、前記ノズル面が前記開口と対向して配置される保湿位置との間で、前記インクジェットヘッドと前記メンテナンス装置本体とを前記ノズル面と平行な方向に相対的に移動させる移動手段と、
前記洗浄液貯留槽内に設けられ、前記メンテナンス装置本体に対して相対的に移動する前記インクジェットヘッドの前記ノズル面に当接されて、前記ノズル面を払拭するブレードと、
前記ノズル面に対する前記ブレードの当接圧を調整する当接圧調整手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記ノズル面に当接させた際の当接圧が異なる複数の前記ブレードを備え、
前記当接圧調整手段は、使用する前記ブレードを切り換えることにより、前記ノズル面に対する前記ブレードの当接圧を調整することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記各ブレードは、回動自在な軸に取り付けられ、
前記当接圧調整手段は、前記軸を回動させて、前記ブレードを切り換えることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記各ブレードは、前記軸を回動させることにより、前記洗浄液貯留槽に貯留された前記洗浄液中に先端を浸漬できるように取り付けられることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記各ブレードは、硬度、厚さ、先端の高さ位置、自由長の少なくとも1つが異なることにより、前記ノズル面に当接させた際の当接圧が異なることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記ブレードは、回動自在な軸に取り付けられ、
前記当接圧調整手段は、前記軸を回動させて、前記ノズル面に対する前記ブレードの傾き角を調整することにより、前記ノズル面に対する前記ブレードの当接圧を調整することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記ブレードは、前記軸を回動させることにより、前記洗浄液貯留槽に貯留された前記洗浄液中に先端を浸漬できるように取り付けられることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記ブレードは、前記ノズル面に対して進退移動自在に設けられ、
前記当接圧調整手段は、前記ブレードの先端の高さ位置を調整して、前記ノズル面に対する前記ブレードのオーバーラップ量を調整することにより、前記ノズル面に対する前記ブレードの当接圧を調整することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記ブレードは、基端部を保持部材に保持されるとともに、前記保持部材から出没自在に設けられ、
前記当接圧調整手段は、前記保持部材からの前記ブレードの突出量を調整して、前記ブレードの自由長を調整することにより、前記ノズル面に対する前記ブレードの当接圧を調整することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記ノズル面の汚れ状態を検出する汚れ状態検出手段を更に備え、
前記当接圧調整手段は、前記汚れ状態検出手段の検出結果に基づいて、前記ノズル面に対する前記ブレードの当接圧を調整することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記ノズル面の汚れ状態を検出する汚れ状態検出手段と、
前記ノズル面の放置時間を計測する放置時間計測手段と、
を更に備え、前記当接圧調整手段は、前記汚れ状態検出手段の検出結果と前記放置時間計測手段の計測結果とに基づいて、前記ノズル面に対する前記ブレードの当接圧を調整することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記汚れ状態検出手段は、前記ノズル面に付着している最大の液滴のサイズを検出して、前記ノズル面の汚れ状態を検出することを特徴とする請求項10又は11に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記搬送手段は、前記記録メディアを周面に巻き付けて回転することにより、前記記録メディアを搬送するドラムで構成され、
前記インクジェットヘッドは、前記ノズル面が前記ドラムの周面に対向するように、水平面に対して傾けられて配置され、
前記洗浄液保持面は、前記ノズル面に対応して傾けられて形成され、
前記洗浄液貯留槽は、前記洗浄液保持面の傾斜の下側に設けられることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−67087(P2013−67087A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207639(P2011−207639)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】