説明

インクジェット記録装置

【課題】少量の補力液でオリフィス及びインク室を充分洗浄可能なインクジェット記録装
置を提供する。
【解決手段】振動源取付け軸とオリフィスの間に形成されたインク室が備えられているノ
ズルから噴出されたインク粒子に文字信号を帯電させる帯電電極と帯電されたインク粒子
を偏向させるための偏向電極により文字の形成を行ない、文字形成に用いられないインク
粒子は、ガターに捕らえられ、本体に戻され再利用される連続型のインクジェット記録装
置において、前記インク室に流体拡散板流体拡散板が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット記録装置のノズルは、インク噴出を停止する場合はノズルのインプット側のインクを補力液に電磁弁を介して切替えて、オリフィス及びインク室を洗浄して終了するが、特開2001-138509(以下、「特許文献1」という)で公開しているように、ノズル内のインク室が大きく、シール部近傍が流れにくいため大量の補力液で洗浄するものや特開平6-340087(以下、「特許文献2」という)で公開しているように、ノズルフィルターとノズル間に流路ガイドを設けてインク室内の一部は補力液で洗浄が容易であるが、シール部近傍が流れ難いため大量の補力液で洗浄するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−138509号公報
【特許文献2】特開6−340087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術の前者においては、少量の補力液ではインク室内のシール部近傍の流れ難い部分を充分に洗浄することが出来ない、また後者においてはシール材と流路ガイドに挟まれているフィルタのシール部近傍の流れ難い部分を充分に洗浄することが出来ない、そのため停止してから次にインクを噴出するまでの間に洗浄出来なかったインクがオリフィス孔まで来て固着しオリフィス孔を塞いで、次にインクを噴出する場合に稀にインクが正常に噴出出来ない場合が考えられる。また、インク室を充分に洗浄するためには、大量な補力液が必要になる問題がある。
【0005】
本発明の目的は少量の補力液でオリフィス及びインク室を充分洗浄可能なインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、例えば、振動源取付け軸とオリフィスの間に形成されたインク室が備えられているノズルから噴出されたインク粒子に文字信号を帯電させる帯電電極と帯電されたインク粒子を偏向させるための偏向電極により文字の形成を行ない、文字形成に用いられないインク粒子は、ガターに捕らえられ、本体に戻され再利用される連続型のインクジェット記録装置において、前記インク室に流体拡散板流体拡散板が配置されているとの構成をとる。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明によれば、少量の補力液でオリフィス及びインク室を充分洗浄し、停止してから次にインクを噴出する場合にインクが正常に噴出することが出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施例にかかるノズルの断面図である。
【図2】本実施の形態にかかるインクジェット記録装置の経路図である。
【図3】本実施例にかかる流体拡散板の斜視図である。
【図4】流体拡散板のないノズルの流体流れ図である。
【図5】流体拡散板のないノズルのシール板斜視図である。
【図6】本実施の形態にかかるインクジェット記録装置の経路図である。
【図7】他の実施例にかかる流体拡散板に関する図である。
【図8】他の実施例にかかる流体拡散板の構成図である。
【図9】他の実施例にかかるノズルの流体流れ図および流体拡散板の斜視図である。
【図10】他の実施例にかかるノズルの流体流れ図および流体拡散板の斜視図である。
【図11】他の実施例にかかるノズルの流体流れ図および流体拡散板の斜視図である。
【図12】他の実施例にかかるノズルの流体流れ図および流体拡散板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1は本発明のノズル断面図、図2は本発明のノズルの流体流れ拡大図、図3は本発明の流体拡散板斜視図、図4は流体拡散板のないノズルの流体流れ拡大図、図5は流体拡散板のないノズルのシール板斜視図、図6は配管図、図7〜図8はその他の実施例の流体拡散板構成図、図9〜図12はその他の実施例ノズルの流体流れ拡大図を示す。
【0010】
本発明の構成について説明する。メインインク容器1内にインク2aが充填されており、インク2aと供給弁3、供給ポンプ4、メインフィルタ5、調圧弁6、三方弁7のインク入口、ノズル8は、それぞれインク供給管9で接続されており、またインク粒子10を回収するためのガター11と回収ポンプ12、メインインク容器1は、インク回収管13で接続されている。補力液容器15内に補力液16が充填されており、補力液16と補力液ポンプ17、洗浄弁18、三方弁7の補力液入口は、それぞれ補力液補給管19で接続されている。
【0011】
ノズル8は、振動源23と電力供給端子22を振動源取付け軸24aと振動源固定用ナット21aで挟み込み、その先端にオリフィス26がねじで取付けられている。流体拡散板25はインクのシールを兼ね中央部には遮へい部があり、流体拡散板25の周縁部付近には複数個の開口部形成されており、流体拡散板25は、振動源取付け軸24aとオリフィス26に挟み込まれている。振動源取付け軸24aの中心とオリフィス26の中心にはそれぞれインク又は補力液を
搬送させるための流路である振動源取付け軸流路28,オリフィス29がそれぞれ設けられている。
【0012】
次に動作について説明する。メインインク容器1内に充填されたインク2aは、三方弁7のインク側を開くことにより、供給ポンプ4によりインク供給管9を通りメインフィルタ5で不純物が除去され、調圧弁6により任意の圧力に調圧され、ノズル8に供給される。この供給されたインクは、ノズル8内の振動源23の振動により液柱に腹と節を作り、ノズル8に取付けられたオリフィス26先端より噴出し、インクの表面張力によりインク粒子10になる。このインク粒子10は、帯電電極(図示せず)により文字情報に合った電荷量が帯電されて、偏向電極(図示せず)により偏向し、被印字物(図示せず)に印字する。
【0013】
また印字に使用されないインク粒子10は、ガター11に入り、回収ポンプ12によりメインインク容器1に回収される。インク噴出を停止する場合は洗浄弁18を開放にし、三方弁7をインク側ポートから補力液側ポートに切替えてノズル8から補力液を噴出してガター11を介してメイン容器1に回収する、以上の動作によりノズル8内のインクを補力液で洗浄することが出来る。その後、洗浄弁18を閉じて終了する。
【0014】
図4の流体拡散板25のない従来のノズル8構成では円盤状のシール板27はインクのシール専用であり、オリフィス26端面とダイヤフラム部24bで囲まれたインク室30内のシール板27近傍の洗浄性は考慮されておらず、三方弁7がインクから補力液に切替わっても補力液はインク室30内の中央付近を流れ、シール板27側の洗浄が困難で大量の補力液を使用する問題がある。
【0015】
本発明では、図2のようにインクのシールを兼ねた中央部には遮へい部があり、外側部
には穴が開いている流体拡散板25を振動源取付け軸24aとオリフィス26に挟まれるように配置しているため、三方弁7によりインクから補力液に切替わった補力液は、流体拡散板25の遮へい部のある中央部から周縁部に形成された開口部側に流れを変え、開口部を通過してオリフィス26の流路29側へ流れるため、補力液30がインク室30内のほぼ全ての壁面上を通過することになる。以上により少量の補力液でノズル8のインク室30内の隅々まで洗浄出来る効果がある。
【0016】
図7、図8は他の実施例の流体拡散板構成図を示したものである。図7に示す例1は流体拡散板を複数の部品で構成したものである。流体拡散板25Aは、それぞれ中央部から周縁部付近に達する開口部252,254がそれぞれ形成されているシール板251とシール板253とに拡散板255を挟み込んで構成されている。拡散板255には、拡散板255の中央部を囲むように複数の開口部256,256…が形成されており、開口部256,256…は、開口部252と開口部254とに連通するように形成されている。
【0017】
ただし、拡散板255における開口部256,256…の開口の仕方はこれに限らず、シール板251とシール板253で拡散板255をはさみあわせた場合に開口部256,256…の一部が、シール板251とシール板253のそれぞれのシール部257,258に遮蔽されるものであってもよい。
【0018】
そして、シール板251とシール板253の材質は樹脂又はゴム、拡散板255は金属または樹脂で構成されている。そして、流体拡散板25Aを構成するにあたっては、例えば、シール板251とシール板253を拡散板255に焼付け、或いは、接着剤や両面テープにより貼り付けることとしてもよい。
【0019】
また、流体拡散板は、図8(a)に示す流体拡散板25Bのように、中央部から周縁部付近に達する開口部261が開口されたシール板262に、網目状に複数の開口が形成された拡散板263をはめ込んで形成することとしてもよい。
【0020】
またさらに、流体拡散板は、図8(b)に示す流体拡散板25Cのように、周縁部付近に開口部264,264…が開口された拡散板265をシール板262の開口部261にはめ込んで形成することとしてもよい。
【0021】
また、流体拡散板は、図9に示す流体拡散板25Dのように樹脂又はゴム等の弾性部材で成形されているとともに、中央部付近に開口部266,266…を開口させたものを用いてもよい。
【0022】
図10から図12は、更にその他の実施例ノズルの流体流れを示したものである。図10に示す流体拡散板27Aはインクのシールと拡散を単体で行うものであり、中央部にはオリフィス流路29に対応した径のインク室30Aが形成されている。流体拡散板27は、一様な厚みになるように形成されており、振動源取付け軸24aとオリフィス26に挟みこまれている。インク室30Aは、オリフィス流路29の径に対応するように形成されている。
【0023】
更に図11を用いて他の実施例について説明する。流体拡散板27Aもインクのシールと拡散を単体で行うものであり、オリフィス側の面の中央付近にはオリフィス側に向かって突出する突出部272が形成されており、突出部272には、新同軸取付け流路28とオリフィス流路29に対応するインク室30Bが形成されており、インク室30Bの径はオリフィス流路29の径に対応するように形成されている。
【0024】
図12に開示の実施例においては、振動取付け軸24aとオリフィス26の間に、平板状の底面部280の周縁部にオリフィス26側に延在する壁部281が設けられている流体拡散板27Cが備えられている。底面部280の中央部には新同軸取付け流路28とオリフィス流路29に対応するインク室30Bが形成されており、インク室30Bの径はオリフィス流路29の径に対応するように形成されている。
【0025】
図9〜図12の実施例においても、インク室内を拡販させるインク流れ31が形成され、少量の補力液でノズル8のインク室30内の隅々まで洗浄でき、インク室によどみが生じないようになっている。
【0026】
なお、図10〜図12においては、取付け軸流路28の径がオリフィス流路29の径より小さく形成されているが、オリフィス流路29の径を取付け軸流路28の径よりも小さく形成することとしても良い。
【符号の説明】
【0027】
1…メインインク容器、2a … インク、3… 供給弁、4…供給ポンプ、5…メインフィ
ルタ、6… 調圧弁、7…三方弁、8…ノズルボデー、9…インク供給管、10… インク
粒子、11… ガター、12… 回収ポンプ、 13… インク回収管、14…循環ポンプ、
15…循環弁、16…補力液、17…補力ポンプ、18… 洗浄弁、19…補力液補給管
、20… 補力液容器、21a…振動源固定ナット、21b…振動源固定ナット溝部、22
…電源供給端子、23…振動源、24a、24c、24d…振動源取付け軸、24b…ダ
イヤフラム部、25…流体拡散板、26…オリフィス、27…シール板、28…振動源取
付け軸流路、29…オリフィス流路、30…インク室、31…インク流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源取付け軸とオリフィスの間に形成されたインク室が備えられているノズルから噴
出されたインク粒子に文字信号を帯電させる帯電電極と帯電されたインク粒子を偏向させ
るための偏向電極により文字の形成を行ない、文字形成に用いられないインク粒子は、ガ
ターに捕らえられ、本体に戻され再利用される連続型のインクジェット記録装置において

前記インク室に流体拡散板流体拡散板が配置されていることを特徴とするインクジェッ
ト記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、前記流体拡散板流体拡散板は中央
部には遮へい部が備えられているとともに、外縁部付近には開口部が形成されていること
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、前記流体拡散板は網目状に開口部
が形成されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェット記録装置において、前記流体拡散板流体拡散板は樹脂
、或いは金属で形成されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、前記流体拡散板流体拡散板は一様
な厚みで、前記インク室を囲んでいる振動板部と前記オリフィス端面部のシール部以外は
凹部状であることを特徴とするインクジェット記録装置
【請求項6】
振動源取付け軸とオリフィスが備えられているノズルから噴出されたインク粒子に文字
信号を帯電させる帯電電極と帯電されたインク粒子を偏向させるための偏向電極により文
字の形成を行ない、文字形成に用いられないインク粒子は、ガターに捕らえられ、本体に
戻され再利用される連続型のインクジェット記録装置において、
前記振動原取り付け軸には、インクを流すための振動源取付け軸流路が形成され、前記
オリフィスには、前記振動源取付け流路から流れてくるインクを流すためのオリフィス流
路が形成され、前記オリフィス経路の径は前記振動源取付け軸流路の径と同径ではないと
ともに、前記振動原取り付け軸と前記オリフィスの間には、前記振動源取付け軸流路と前
記オリフィス流路に対応するようにインク室が形成された流体拡散板が備えられているこ
とを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェット記録装置において、前記シール板は凸形で中央部に開
口部が形成されているとともに、内径側でシールすることを特徴としたインクジェット記
録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−82228(P2013−82228A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−267766(P2012−267766)
【出願日】平成24年12月7日(2012.12.7)
【分割の表示】特願2008−189280(P2008−189280)の分割
【原出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】