説明

インクセット、インクカートリッジ並びにインクジェット記録用インクカートリッジ

【課題】 極めて高い画像の耐久性を有する、インクセット、インクカートリッジ並びにインクジェット記録用インクカートリッジを提供すること。
【解決手段】 同一色相領域であるインク組成物を2種以上有してなるインクセットであり、前記インク組成物が少なくとも染料を含み、かつ、前記インク組成物の少なくとも1種に、質量平均分子量3000以上の、抗酸化性重合体、会合促進性重合体、およびアミン性重合体から選ばれる重合体を少なくとも一種含有するインクセットにおいて、前記インクセットが同一色相領域であるインク組成物をn種有してなり、且つ、n番目のインク組成物の色濃度をa、該インク組成物中に含まれる前記重合体の含有量をb(b≧0)としたときに、各インク組成物の色濃度(各々a〜a)と該インク組成物に含まれる前記重合体の含有量(各々b〜b)とが、a<a・・・<a、且つ、b>b≧・・・≧bを満たすことを特徴とするインクセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の耐久性に優れたインクセット、インクカートリッジ並びにインクジェット記録用インクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターの普及に伴い、インクジェットプリンターがオフィスだけでなく家庭で紙、フィルム、布等に印字するために広く利用されている。
インクジェット記録方法には、ピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式がある。これらのインクジェット記録用インク組成物としては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インクが用いられる。これらのインクのうち、製造、取り扱い性・臭気・安全性等の点から水性インクが主流となっている。
【0003】
これらのインクジェット記録用インクに用いられる着色剤に対しては、溶剤に対する溶解性が高いこと、高濃度記録が可能であること、色相が良好であること、光、熱、空気、水や薬品に対する堅牢性に優れていること、受像材料に対して定着性が良く滲みにくいこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性がないこと、純度が高いこと、さらには、安価に入手できることが要求されている。しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たす着色剤を捜し求めることは、極めて難しい。
既にインクジェット用として様々な染料や顔料が提案され、実際に使用されているが、未だに全ての要求を満足する着色剤は、発見されていないのが現状である。カラーインデックス(C.I.)番号が付与されているような、従来からよく知られている染料や顔料では、インクジェット記録用インクに要求される色相と堅牢性とを両立させることは難しい。
【0004】
堅牢性を向上させる染料として下記の特許文献1に記載の芳香族アミンと5員複素環アミンから誘導されるアゾ染料が提案されている。しかし、これらの染料はイエロ−およびシアンの領域に好ましくない色相を有しているために、色再現性を悪化させる問題を有していた。
下記の特許文献2および特許文献3には、色相と光堅牢性の両立を目的としたインクジェット記録用インクが開示されている。しかし、各公報で用いている色素は、水溶性インクとして用いる場合には、水への溶解性が不十分である。また各公報に記載の色素をインクジェット用水溶性インクとして用いると、湿熱堅牢性にも問題が生じる。
これらの問題を解決する手段として、下記の特許文献4に記載の化合物およびインク組成物が提案されている。また、さらに色相や光堅牢性を改良するためにピラゾリルアニリンアゾ色素を用いたインクジェット記録用インクについて記載されている(下記の特許文献5)。しかしながらこれらのインクジェット記録用インクでは、色再現性、出力画像の堅牢性のいずれも不十分であった。
【0005】
一般に顔料インクでは、耐久性や耐水性に優れるものの、画像の光沢感や高濃度部での画像のなめらかさに問題があることがわかっている。これを回避するために、顔料の粒子サイズを小さくしたり、顔料表面を樹脂でコートしたりする技術が当該分野では先行技術として知られている。
しかしながら、画像の光沢感が高濃度部でも十分に得られるレベルまで顔料粒子を細かくすると、顔料自体の耐久性が染料と同等レベルまで低下してしまうことがわかっている。
インクジェットによる画像記録では、写真と異なりC,M,Y以外の色相のインクを自由に選択することが可能である。これまでもEPSON社よりダークイエローインク(染料)やブルーインク、レッドインク(いずれも顔料)が搭載されたシステムが発表、発売されている。また、CANON社よりレッドインク(染料)が搭載されたシステムも発表、発売された。
これらのインクは、インクジェット記録最大の弱点である「単位面積あたりのインク容量」を抑制しつつ、高濃度かつ高画質の画像を得るために開発されてきた。しかしながら、インクジェット記録が写真感光材料による画像形成と異なる最大の点は、ブラックインクを印刷による画像記録同様に使用できることである。
このため、各社ではブラックインクとして、濃度の異なるインクを染料ならびに顔料を含めて、何種類か併用したインクセットを形成したシステムを発表、発売している。
これまで、ドキュメントにおける文字の印画には、黒顔料としてカーボンブラックが一般的に使用されてきた。しかしながら、カーボンブラックは高画質な写真画像形成には不利であり、写真画質を達成するためには、高品位の黒染料を使用することが望まれている。
【0006】
本発明者らは、染料を用いるインクジェット記録用インクについて検討を進めてきた(例えば、特開2004−107638号、特開2004−83697号、特許文献6及び7の各明細書)。当該分野でも画像堅牢性アップに関して、種々の検討がなされている。2003年10月に、セイコーエプソン社から発売された染料インクによるインクジェットシステムは「つよインク」というコンセプトで染料インクの高耐久化を図っている。特に、空気中に微量存在するオゾンガスによる褪色、すなわち染料の耐オゾン性アップに関しては種々の検討がなされている。しかしながら、多孔質メディア上に画像形成した場合に、顔料に匹敵する安定性を有する水溶性染料インクは、未だに得られていないのが現状である。
【特許文献1】特開昭55−161856号公報
【特許文献2】特開昭61−36362号公報
【特許文献3】特開平2−212566号公報
【特許文献4】特表平11−504958号公報
【特許文献5】特開2003−231850号公報
【特許文献6】特開2004−83609号公報
【特許文献7】特開2004−83610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、極めて高い画像の耐久性を有し、高画質の画像が得られるインクセット、インクカートリッジ並びにインクジェット記録用インクカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、顔料に匹敵する耐候性を有する水溶性染料インクについて開発を進めてきたところ、ある種の重合体を添加することで、飛躍的に耐候性、特に耐オゾン性が向上することを知見した。しかしながら、重合体はすべて有効であるわけではなく、各種染料に応じて有効なものが異なっているとともに、濃度の高いインク、すなわち固形分濃度の高いインクに多量添加すると、粘度アップ等、インク物性面での問題点が生じ、耐オゾン性改良の効果も少なく、むしろブロンズやビーディングなどの問題が生じることが分かってきた。
また、高画質化を狙って、同じ色相で濃淡を表現する、色濃度の異なるインク組成物を使用するシステムが当該分野では一般的であるが、色濃度の低いインク組成物で印字する領域ほど、画像堅牢性が劣るということも分かってきた。
【0009】
本発明の課題は、以下の手段により解決することができる。
(1) 同一色相領域であるインク組成物を2種以上有してなるインクセットであり、前記インク組成物が少なくとも染料を含み、かつ、前記インク組成物の少なくとも1種に、質量平均分子量3000以上の抗酸化性重合体を少なくとも一種含有するインクセットにおいて、前記インクセットが同一色相領域であるインク組成物をn種有してなり、且つ、n番目のインク組成物の色濃度をa、該インク組成物中に含まれる前記抗酸化性重合体の含有量をb(b≧0)としたときに、各インク組成物の色濃度(各々a〜a)と該インク組成物に含まれる前記抗酸化性重合体の含有量(各々b〜b)とが、a<a・・・<a、且つ、b>b≧・・・≧bを満たすことを特徴とするインクセット。
(2)同一色相領域であるインク組成物を2種以上有してなるインクセットであり、前記インク組成物が少なくとも染料を含み、かつ、前記インク組成物の少なくとも1種に、質量平均分子量3000以上の会合促進性重合体を少なくとも一種含有するインクセットにおいて、前記インクセットが同一色相領域であるインク組成物をn種有してなり、且つ、n番目のインク組成物の色濃度をa、該インク組成物中に含まれる前記会合促進性重合体の含有量をb(b≧0)としたときに、各インク組成物の色濃度(各々a〜a)と該インク組成物に含まれる前記会合促進性重合体の含有量(各々b〜b)とが、a<a・・・<a、且つ、b>b≧・・・≧bを満たすことを特徴とするインクセット。
(3)同一色相領域であるインク組成物を2種以上有してなるインクセットであり、前記インク組成物が少なくとも染料を含み、かつ、前記インク組成物の少なくとも1種に、質量平均分子量3000以上のアミン性重合体を少なくとも一種含有するインクセットにおいて、前記インクセットが同一色相領域であるインク組成物をn種有してなり、且つ、n番目のインク組成物の色濃度をa、該インク組成物中に含まれる前記アミン性重合体の含有量をb(b≧0)としたときに、各インク組成物の色濃度(各々a〜a)と該インク組成物に含まれる前記アミン性重合体の含有量(各々b〜b)とが、a<a・・・<a、且つ、b>b≧・・・≧bを満たすことを特徴とするインクセット。
(4)前記抗酸化性重合体、会合促進性重合体、及びアミン性重合体が、ポリマー分散物であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れかに記載のインクセット。
(5)前記抗酸化性重合体、会合促進性重合体、及びアミン性重合体のガラス転移温度(Tg)が、−50〜100℃の範囲にあることを特徴とする上記(4)に記載のインクセット。
(6)前記抗酸化性重合体、会合促進性重合体、及びアミン性重合体が、水溶性ポリマーであることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れかに記載のインクセット。
(7)前記染料が、芳香族複素環基を少なくとも2つ以上有する染料を含むことを特徴とする上記(1)〜(6)の何れかに記載のインクセット。
(8)色濃度の低いインク組成物から形成された画像の方が、色濃度の高いインク組成物から形成された画像に比べて、光堅牢性に優れたものであることを特徴とする上記(1)〜(7)の何れかに記載のインクセット。
(9)色濃度の低いインク組成物に含まれる染料の方が、色濃度の高いインク組成物に含まれる染料に比べて、光堅牢性に優れたものであることを特徴とする上記(1)〜(8)の何れかに記載のインクセット。
(10)上記(1)〜(9)の何れかに記載のインクセットを含有することを特徴とするインクカートリッジ。
(11)上記(1)〜(9)の何れかに記載のインクセットを含有することを特徴とするインクジェット記録用インクカートリッジ。
(12)前記インクジェット記録用インクカートリッジのインク装填室内の圧力が、インク使用前は大気圧よりも低圧に保たれていることを特徴とする上記(11)記載のインクジェット記録用インクカートリッジ。
(13)前記インクジェット記録用インクカートリッジ内にスポンジを含むことを特徴とする上記(11)または(12)記載のインクジェット記録用インクカートリッジ。
(14)前記スポンジはウレタン系ポリマーからなることを特徴とする上記(11)〜(13)の何れかに記載のインクジェット記録用インクカートリッジ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の重合体を用い、インクセットのインク組成物における該重合体の濃度を、色濃度の高低を基準として相対的に規定することにより、耐オゾン性、更には熱堅牢性及び光堅牢性にも優れた極めて高い画像の耐久性を有し、高画質の画像が得られるインクセット、インクカートリッジ並びにインクジェット記録用インクカートリッジを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のインクセットは、同一色相領域であるインク組成物を2種以上有してなる。前記インク組成物は少なくとも染料を含み、かつ、前記インクセットに含まれるインク組成物の少なくとも1種に、質量平均分子量3000以上の、抗酸化性重合体、会合促進性重合体、またはアミン性重合体(これら3種の重合体を総称して「本発明の重合体」ともいう)から選ばれる重合体を少なくとも一種含有することを特徴とする。
インク組成物中に、抗酸化性重合体、会合促進性重合体、またはアミン性重合体を含むことにより、本発明の重合体を含まない場合よりも染料の耐オゾン分解性を極めて高くすることができる。
【0012】
(インク組成物)
以下、本発明のインクセットに含まれるインク組成物について説明する。
【0013】
本発明において、抗酸化性重合体とは、質量平均分子量が3000以上であって、かつインク組成物に含まれることにより、その印画画像のオゾン分解速度が、この抗酸化性重合体を含まないインク組成物による印画画像のオゾン分解速度に対して、1/5以下に低減させる機能を有するものである。
【0014】
本発明において、会合促進性重合体とは、質量平均分子量が3000以上であって、上記耐オゾン分解性に加えて、会合促進性を有することを特徴とする。会合促進性重合体の「会合促進性」とは、染料の会合性を促進する機能を意味し、染料が単独で希薄溶液になっている場合と、会合促進性重合体と互いに相互作用している場合で、以下の「会合促進性の有無を判断する基準」に記載のように、染料の吸収スペクトルが大きく変化するような相互作用を有する場合を意味する。
【0015】
本発明における会合促進性の有無を判断する基準:
0.01mmol/lの染料溶液を光路長1cmのセルを使用して測定したときの染料単独溶液と、ここに固形分で50mg/lの含有量となるように会合促進性重合体が共存したときの溶液で、染料の分子吸光係数(ε)の比が1.2以上(前記比は、染料単独溶液の場合をε0、前記共存の場合をε1としたときに、ε0/ε1の値である。)になり、かつスペクトルのλmax値が5nm以上変化する場合に会合促進性が存在すると定義する。ここで、λmax値の変化は、高波長側でも低波長側でもよい。
【0016】
本発明において、アミン性重合体とは、アミン性窒素原子を含む重合体を意味する。
アミン性窒素原子とは、重合体分子中で塩基性を発現可能な窒素原子のことである。アミン性窒素原子としては、下記のような化合物等に含まれる窒素原子を挙げることができる。本発明に用いるアミン性重合体は、下記のようなアミン性窒素原子を含む化合物の残基がモノマー単位に置換されていることが好ましい。
【0017】
(1)1級アミン、2級アミン、3級アミン、または4級アンモニウムイオンを形成している化合物等のアミン化合物
(2)ヒドラジン、セミカルバジド、チオセミカルバジド、スルホヒドラジド、ホスホヒドラジド等のヒドラジン化合物
(3)ヒドロキシルアミン、カルボニルオキシアミン等のヒドロキシルアミン化合物
(4)ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾールやその縮合多環芳香族複素環化合物に含まれる5員芳香族複素環化合物(ローンペアが共役系に属さない窒素原子がアミン性窒素原子である)
(5)ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン環等の6員芳香族複素環化合物
(6)アミジン、グアニジン等の化合物(それらに含まれる、イミノ基と共役した窒素原子がアミン性窒素原子である)
【0018】
また、アミン性重合体に含まれるアミン性窒素原子を含む化合物の残基が置換されるモノマー単位としては、後述の本発明の重合体のモノマー群に記載のものが挙げられる。
【0019】
本発明の重合体のある1種は、他の2種と上記技術範囲が独立であってよいが、他の1種以上と上記技術範囲を併有していることが好ましい。
【0020】
本発明において、T2(本発明の重合体を含まないインク組成物による印画画像のオゾン分解速度)/T1(本発明の重合体を含むインク組成物による印画画像のオゾン分解速度)をオゾン分解速度比と称すると、本発明のオゾン分解速度比(T2/T1)は、1/5以下が好ましい。オゾン分解速度比(T2/T1)は、以下(1)〜(4)により求められる値と定義される。
(1)多孔質メディア上に本発明の重合体を含むインク組成物を用いて、濃度の異なるC、M、Y単色の、もしくはグレーのパターン画像を印画する。
(2)このうち、ステータスAフィルターを用いて測定したB、G、RおよびDvisの反射濃度が、1.0±0.1となる画像を選び、その画像を5ppmのオゾンガス濃度に保たれたチャンバー中に保存する。
(3)保存した画像を一定時間ごとに取り出して濃度測定し、濃度が初期濃度に対して80%になるまでの時間を測定して、その時間をT1とする。
(4)重合体を含まないインク組成物に対しても上記と同様に測定してT2を求める。
【0021】
前述のように、本発明の重合体を有するインク組成物は、オゾン分解速度比(T2/T1)が1/5以下、好ましくは1/1000〜1/5であり、更に好ましくは1/100〜1/10である。
【0022】
上記(1)で、多孔質メディアとは、インクジェット用の高速印字に適応するように開発された、シリカやアルミナ等の無機質微粒子や、ポリマー微粒子により形成された多孔質微粒子層が表面層に付与された受像メディアのことであり、種々のものが挙げられるが、上記オゾン分解速度比の測定では同じ受像メディアを用いれば、特に制限されない。
このような受像メディアとしては、例えば、特開平10−119423号や同10−217601号公報等では、微細な無機顔料粒子及び水溶性樹脂を含有し、高い空隙率を有する色材受容層が支持体上に設けられたインクジェット記録用シートが提案されている。市販されている受像メディアの例としては、セイコーエプソン社の写真用紙、キャノン社のプロフォトペーパー、富士写真フイルム社製の画彩など、様々な製品が上市されている。
これらの多孔質メディア、特に、無機顔料微粒子としてシリカを用いた多孔質構造からなる色材受容層を設けたインクジェット記録用シートは、その構成によりインク吸収性に優れ、高解像度の画像を形成し得る高いインク受容性能を有し且つ高光沢を示すことができる。
【0023】
多孔質メディアは、多孔質であるが故に、そこに形成された画像は非常に広い比表面積の場に存在し、空気に広く曝されることになる。このために空気中の微量ガス、特にオゾンによる、記録画像の酸化による分解が普通紙に比べて早くなる。従って、上述の多孔質メディアに印画された画像では、多くの空隙を有することから、空気中のオゾンガスによって記録画像が褪色し易いのであるが、本発明は本発明の重合体を用いることにより、その褪色速度を極めて遅くすることができるのである。
【0024】
本発明の重合体において、質量平均分子量は3000以上であり、3000〜10000000が好ましく、更に好ましくは、4000〜1000000、特に好ましくは5000〜100000である。
本発明の重合体は、水溶性ポリマーとしてインク中に均一溶液として存在するものであってもよいし、ポリマー分散物、例えば、水不溶性ポリマーが水分散物として存在するものであってもよい。
【0025】
本発明の重合体の1つがポリマー分散物由来である場合、本発明の目的のためには、このポリマー分散物由来の重合体が印画後に、メディア上において堅い粒子状態ではなく、粒子間で互いに相互作用して、ある程度均一な層状態を形成することが好ましい。このため、ポリマー分散物由来の本発明の重合体のガラス転移温度(Tg)は、一定の好ましい範囲にあることが必要である。本発明では、この分散物に含まれる本発明の重合体のガラス転移温度(Tg)は、−50〜100℃の範囲にあることが好ましく、特に好ましくは−30〜80℃、最も好ましくは、−20〜50℃である。
【0026】
本発明の重合体の構造乃至特性は、上記各条件に反しない限り制限はなく、いかなる重合体を単独使用しても組み合わせて使用してもよいが、好適には透明又は半透明で、かつ無色のものである。
本発明の重合体としては、天然のものでも合成されたものでも、それらの併用、すなわち半合成されたものでもよい。
本発明の重合体としては、例えば、ビニル重合型ポリマー、縮重合型ポリマー、開環重合型ポリマー等種々のものが利用できる。また、これらの重合様式が組み合わさって合成されたポリマーも同様に使用できる。また、本発明の重合体はホモポリマー(単独重合体)であっても、コポリマー(共重合体)であってもよい。
本発明の重合体として、具体的にはフィルムを形成可能なポリマー、例えば、ゼラチン類、ゴム類、ポリ(ビニルアルコール)類(ここで類は、ポリ(ビニルアルコール)単独重合体及びその共重合体を含む概念である。以下も同様。)、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピロリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)類、ポリ(メチルメタクリル酸)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。
本発明の重合体は、水又は有機溶媒溶液又はエマルションから印画画像に対して被覆形成してもよい
【0027】
本発明の重合体の合成に用いるモノマーとしては、特に制限はなく、通常のラジカル重合又はイオン重合法で重合可能なものであれば、好適に用いることができる。好ましく用いることができるモノマーとして、下記に示すモノマー群(a)〜(i)から独立かつ自由に組み合わせて選択することができる。例えば、同一群内で単独または組み合わせて用いても、異なる群間(2以上)で各々の群において単独または組み合わせて選択したものを組み合わせて用いてもよい。
【0028】
−モノマー群(a)〜(i)−
(a)共役ジエン類:1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエン等。
(b)オレフィン類:エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、6−ヒドロキシ−1−ヘキセン、4−ペンテン酸、8−ノネン酸メチル、ビニルスルホン酸、トリメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,2,5−トリビニルシクロヘキサン等。
【0029】
(c)α,β−不飽和カルボン酸エステル類:アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート等)、置換アルキルアクリレート(例えば、2−クロロエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート等)、アルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリ−レート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等)、置換アルキルメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、2−アセトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(ポリオキシプロピレンの付加モル数=2ないし100のもの)、3−N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、クロロ−3−N,N,N−トリメチルアンモニオプロピルメタクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、4−オキシスルホブチルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート等)、不飽和ジカルボン酸の誘導体(例えば、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジブチル等)、多官能エステル類(例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラメタクリレート等)。
【0030】
(d)β−不飽和カルボン酸のアミド類:例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、イタコン酸ジアミド、N−メチルマレイミド、2−アクリルアミド−メチルプロパンスルホン酸、メチレンビスアクリルアミド、ジメタクリロイルピペラジン等
(e)不飽和ニトリル類:アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(f)スチレン及びその誘導体:スチレン、ビニルトルエン、p−tertブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−スチレンスルホン酸ナトリウム塩、p−スチレンスルフィン酸カリウム塩、p−アミノメチルスチレン、1,4−ジビニルベンゼン等。
(g)ビニルエーテル類:メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル等。
(h)ビニルエステル類:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルクロロ酢酸ビニル等。
(i)その他の重合性単量体:N−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリン、ジビニルスルホン等。
【0031】
本発明の重合体の合成に用いられる好ましいモノマーの具体例を以下に列挙するが、これに限定されるものではない。
【0032】
【化1】

【0033】
【化2】

【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

【0037】
【化6】

【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
【化9】

【0041】
上記モノマー単位を重合して得られる本発明の重合体に関して、好ましいものを下記に示すが、本発明におけるインク組成物はもちろんこれによって限定されるものではない。なお、共重合体は、モル比で示した。
【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
【化14】

【0047】
【化15】

【0048】
【化16】

【0049】
【化17】

【0050】
【化18】

【0051】
【化19】

【0052】
本発明では、インク組成物中に媒体を含有させることができ、媒体として溶媒を用いた場合は特にインクジェット記録用インク(以下、単に「インク」ともいう)として好適である。係るインクは、媒体として、親油性媒体や水性媒体を用いて、それらの中に、本発明の染料を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。本発明におけるインク組成物には、媒体を除いたインク用組成物も含まれる。必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有される。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インク組成物の場合にはインク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0053】
本発明におけるインク組成物は水系のインクであることが好ましく、上記のように本発明の重合体が水溶性ポリマーであるものはそのまま使用することができる。また、本発明の重合体が油溶性ポリマーであっても、乳化重合により得られるポリマー分散物として、ラテックス分散物を使用することができるし、油溶性ポリマーを溶媒に溶解した後に乳化分散させ、その分散物をインク組成物に使用することも可能である。
【0054】
(インクセット)
前記のように本発明のインクセットは、同一色相領域であるインク組成物を2種以上有してなり、前記インク組成物の少なくとも一種に本発明の重合体を有する。
更に本発明では、前記インクセットが同一色相領域であるインク組成物をn種有してなり、且つ、n番目のインク組成物の色濃度をa、該インク組成物中に含まれる本発明の重合体の含有量をb(b≧0)としたときに、各インク組成物の色濃度(各々a〜a)と該インク組成物に含まれる前記抗酸化性重合体の含有量(各々b〜b)とが、a<a・・・<a、且つ、b>b≧・・・≧bを満たす。より好ましくは、各インク組成物の色濃度と該インク組成物に含まれる前記抗酸化性重合体の含有量とが、a<a・・・<a、且つ、b>b>・・・>bを満たす。
ここで同一色相領域であるインク組成物とは、当業者であれば一義的にその領域を定めることができるが、例えばシアンならばシアンインクとして、マゼンタならばマゼンタインクとして、イエローならばイエローインクとして、ブラックならばブラックインクとして、その色相を発する染料を含む各種インク組成物を表す。
また、色濃度とは、インクを水で2000倍希釈し、光路長1mmのセルで分光スペクトル測定を行なったときのλmax部におけるAbsの順に並べたときの濃度を表わす。
【0055】
本発明に従い、重合体の濃度を色濃度の低いインク組成物ほど高くすることによる作用効果としては、以下のことが考えられる。低濃度側のインク組成物は画像の低濃度部を形成されるのに使用される。一般的に画像の低濃度部ほど褪色反応を受けやすく、本発明の重合体をより多く含有させることにより、褪色効果がより有効に発揮されると考えられる。一方、高濃度側のインクほど、染料そのものの固形分としての添加量が多く、本発明の重合体含有量が少ない方が画像形成において、ブロンズやビーディング等の好ましくない副作用を生じることなく、本発明の効果に有効に作用するものと推測される。
【0056】
本発明の重合体のインク組成物への添加量としては、広い範囲が選択可能である。好ましくはインク組成物全体に対して、重合体の固形分換算で0.001〜50質量%、さらに好ましくは0.01〜20質量%、特に好ましくは0.05〜10質量%である。
また本発明のインクセットに含まれるインク組成物中の、本発明の重合体の含有比は、色濃度の高いインク組成物/色濃度の低いインク組成物として、0〜99/100(質量比)が好ましく、さらに好ましくは0〜90/100である。
また本発明のインクセットのインク組成物における色濃度は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば色濃度の低いインク組成物は、該インク組成物中、0.01〜10質量%の染料濃度である。
【0057】
また、本発明によれば、(1)色濃度の低いインク組成物から形成された画像の方が、色濃度の高いインク組成物から形成された画像に比べて、光堅牢性に優れたものであるのが好ましい。また、(2)色濃度の低いインク組成物に含まれる染料の方が、色濃度の高いインク組成物に含まれる染料に比べて、光堅牢性に優れたものであることが好ましい。前記(1)の理由としては、前述のように、色濃度の低いインク組成物で形成された低濃度部の画像ほど、光褪色においても顕著にその劣化が目立つからである。したがって、前記(2)のように、前記(1)の目的を達成するために、色濃度の低いインク組成物に、より光堅牢性に優れた染料を使用することが好ましい。
【0058】
なお本発明でいう光堅牢性とは、下記条件によって得られた値を意味する。
光堅牢性は印字直後の画像濃度Ciを反射濃度計(X-rite 310)にて測定した後、アトラス社製ウェザーメーターを用い画像にキセノン光(8万5千ルックス)を20日照射した後、再び画像濃度Cfを測定し染料残存率Cf/Ci*100を求め評価を行う。染料残像率について反射濃度が0.7、1.0、1.5の3点にて評価し、いずれの濃度でも染料残存率が高い場合を、「光堅牢性に優れたもの」として評価する。
【0059】
インク組成物に使用される染料としては、特に制限されるべきものではなく、種々のものが使用できる。当該分野で使用される染料としては、直接染料、間接染料、食品用染料、写真用染料など種々のものを使用することができる。以下にその具体例を列挙する。
【0060】
本発明のインクセットは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク組成物、シアン色調インク組成物、及びイエロー色調インク組成物を用いることができる。また、ブラック色調インク組成物も用いることができる。そして同一色相であるインク組成物を2種以上含んで本発明のインクセットとすることができる。好ましくは、インクジェット記録用インクセットである。また、本発明は、本発明のインクセットを含有するインクカートリッジ、好ましくはインクジェット記録用インクカートリッジを提供するものである。
【0061】
適用できるイエロー色素としては、任意のものを使用することができる。
例えばカップリング成分(以降カプラー成分と呼ぶ)としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロンやピリドン等のようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ色素;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン色素;例えばベンジリデン色素やモノメチンオキソノール色素等のようなメチン色素;例えばナフトキノン色素、アントラキノン色素等のようなキノン系色素などがあり、これ以外の色素種としてはキノフタロン色素、ニトロ・ニトロソ色素、アクリジン色素、アクリジノン色素等を挙げることができる。
【0062】
適用できるマゼンタ色素としては、任意のものを使用することができる。
例えばカップリング成分(以降カプラー成分と呼ぶ)としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラジンのようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ色素;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン色素;アントラピリドン色素をあげることができる。
【0063】
適用できるシアン色素としては、任意のものを使用することができる。
例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ色素;例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾールのようなヘテロ環類などを有するアゾメチン色素;シアニン色素、オキソノール色素、メロシアニン色素などのようなポリメチン色素;ジフェニルメタン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素などのようなカルボニウム色素;フタロシアニン色素;アントラキノン色素;インジゴ・チオインジゴ色素などを挙げることができる。
【0064】
適用できるブラック色素としては、任意のものを使用することができる。
例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ色素;例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾールのようなヘテロ環類などを有するアゾメチン色素;シアニン色素、オキソノール色素、メロシアニン色素などのようなポリメチン色素;ジフェニルメタン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素などのようなカルボニウム色素、これらが種々組み合わさったビスアゾ、トリスアゾ染料などのポリクロモフォア染料を挙げることができる。
【0065】
これらの各色素は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエロー、シアン等の各色を呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。上記ポリマーカチオンは、本発明の重合体であっても別のものであってもよい。
【0066】
本発明では特に、耐光褪色性に優れた、複素環を有する染料(複素環染料ともいう)を好ましく使用する。複素環染料としては、芳香族複素環基を少なくとも2つ以上有するものが好ましい。また、複素環染料としては、染料の発色をつかさどるπ電子系に複素環が寄与する構造の染料が好ましい。中でも、π電子系に2つ以上の複素環基が存在するタイプの染料が、最も好ましく使用できる。複素環染料としては、アゾ染料、フタロシアニン染料などが好ましい。
芳香族複素環基とは、芳香族性をもつ6π((4n+2)π)電子系中にヘテロ原子を含む環を意味し(nは1以上の整数)を意味し、その好ましい例を挙げると、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール等の基、またはそれらの誘導体の基が挙げられる。
【0067】
また、インク組成物に用いる染料は、酸化電位が、1.0V(vs SCE)よりも貴である染料を含むことが好ましい。酸化電位は貴であるほど好ましく、酸化電位が1.10V(vs SCE)よりも貴であるものがより好ましく、1.15V(vs SCE)よりも貴であるものが、最も好ましい。インク組成物がこのような酸化電位を有する染料を本発明の重合体と併用することにより、経時褪色が更に低減されて、経時安定性、耐ガス性、耐光性、耐熱性、耐水性等の画像堅牢性が更に改善される。
【0068】
本発明において使用する染料の酸化電位の値(Eox)は当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP.Delahay著「New Instrumental Methods in Electrochemistry」(1954年 Interscience Publishers社刊)やA.J.Bard他著「Electrochemical Methods」(1980年 JohnWiley & Sons社刊)、藤嶋昭他著「電気化学測定法」(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
【0069】
具体的に酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10−2〜1×10−6モル/リットル溶解して、サイクリックボルタンメトリー等を用いてSCE(標準飽和カロメル電極)に対する値として測定する。この値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を入れて電位の再現性を保証することができる。
なお、電位を一義的に規定する為、本発明では、0.1モル/リットルの過塩素酸テトラプロピルアンモニウムを支持電解質として含むジメチルホルムアミド中(染料の濃度は0.001モル/リットル)で測定した値(vs SCE)を染料の酸化電位とする。
【0070】
Eoxの値は試料から電極への電子の移りやすさを表わし、その値が大きい(酸化電位が貴である)ほど試料から電極への電子の移りにくい、言い換えれば、酸化されにくいことを表す。化合物の構造との関連では、電子求引性基を導入することにより酸化電位はより貴となり、電子供与性基を導入することにより酸化電位はより卑となる。本発明では、求電子剤であるオゾンとの反応性を下げるために、染料骨格に電子求引性基を導入して酸化電位をより貴とすることが望ましい。
【0071】
インク組成物に用いられる耐光褪色性等の堅牢性に優れた染料の例としては、特開2004−83609号公報、特開2004−83610号公報に記載の染料を挙げることができる。
【0072】
本発明に用いられる染料として、例えば、好ましいものは下記に示すものが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
(イエロー染料)
一般式(1) (A−N=N−B)n−L
一般式(1)中、AおよびBはそれぞれ独立して、置換されていてもよい複素環基を表す。Lは水素原子、単なる結合または2価の連結基を表す。nは1または2を表す。但し、nが1の場合にはLは水素原子を表し、A、B共に1価の複素環基である。nが2の場合にはLは単なる結合または2価の連結基を表し、A、Bの一方が1価の複素環基であり、他方が2価の複素環基である。nが2の場合にはAは同じでも異なっていてもよく、またBも同じでも異なっていてもよい。
【0073】
前記一般式(1)において、Aで表される複素環としては、5−ピラゾロン、ピラゾール、トリアゾール、オキサゾロン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、ピリドン、ピリジン、ローダニン、ピラゾリジンジオン、ピラゾロピリドン、メルドラム酸およびこれらの複素環にさらに炭化水素芳香環や複素環が縮環した縮合複素環が好ましい。中でも5−ピラゾロン、5−アミノピラゾール、ピリドン、2,6−ジアミノピリジン、ピラゾロアゾール類が好ましく、5−アミノピラゾール、2−ヒドロキシ−6−ピリドン、ピラゾロトリアゾールが特に好ましい。
【0074】
Bで表される複素環としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンゾイソチアゾール、チアジアゾール、ベンゾイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。中でもピリジン、キノリン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンゾイソチアゾール、チアジアゾール、ベンゾイソオキサゾールが好ましく、キノリン、チオフェン、ピラゾール、チアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ベンゾチアゾール、チアジアゾールがさらに好ましく、ピラゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、イミダゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾールが特に好ましい。
【0075】
AおよびBに置換する置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基もしくは下記のイオン性親水性基が例として挙げられる。
Lが表す2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、複素環残基、−CO−、−SOn−(nは0、1、2)、−NR−(Rは水素原子、アルキル基、アリール基を表す)、−O−、およびこれらの連結基を組み合わせた二価の基であり、さらにそれらはA及びBに置換する置換基で挙げた置換基もしくはイオン性親水性基を有していても良い。
【0076】
(シアン染料)
一般式(2)
【0077】
【化20】

【0078】
一般式(2)中、X21、X22、X23およびX24はそれぞれ独立に−SO−Z2、−SO2−Z2、−SO2NR2122、スルホ基、−CONR2122、または−COOR21を表す。
2はそれぞれ独立にアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基を表す。これらの基は、更に他の基で置換されていてもよい。R21、R22はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基を表す。これらの基は、更に他の基で置換されていてもよい。Y21、Y22、Y23およびY24はそれぞれ独立に、一価の置換基を表す。
21〜a24、b21〜b24は、それぞれX21〜X24およびY21〜Y24の置換基数を表す。a21〜a24はそれぞれ独立に0〜4の数を表すが、全てが同時に0になることはない。b21〜b24はそれぞれ独立に0〜4の数を表す。なお、a21〜a24およびb21〜b24が2以上の数を表す時、複数のX21〜X24、およびY21〜Y24はそれぞれそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Mは水素原子、金属原子またはその酸化物、水酸化物もしくはハロゲン化物である。
一般式(2)において、X21、X22、X23およびX24は、それぞれ独立に、−SO−Z2、−SO2−Z2、−SO2NR2122、スルホ基、−CONR2122、または−CO221を表す。これらの置換基の中でも、−SO−Z2、−SO2−Z2、−SO2NR2122および−CONR2122が好ましく、特に−SO2−Z2および−SO2NR2122が好ましく、−SO2−Z2が最も好ましい。ここで、その置換基数を表すa21〜a24のいずれかが2以上の数を表す場合、X21〜X24の内、複数存在するものは同一でも異なっていても良く、それぞれ独立に上記のいずれかの基を表す。また、X21、X22、X23およびX24は、それぞれ全く同じ置換基であってもよく、あるいは例えばX21、X22、X23およびX24が全て−SO2−Z2であり、かつ各Z2は異なるものを含む場合のように、同じ種類の置換基であるが部分的に互いに異なる置換基であってもよく、あるいは互いに異なる置換基を、例えば−SO2−Z2と−SO2NR2122を含んでいてもよい。
【0079】
上記Z2は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基を表す。好ましくは、アルキル基、アリール基、複素環基であり、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、置換複素環基が最も好ましい。
【0080】
上記R21、R22は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基を表す。なかでも、水素原子、アルキル基、アリール基、および複素環基が好ましく、その中でも水素原子、置換アルキル基、置換アリール基、および置換複素環基がさらに好ましい。但し、R21、R22がいずれも水素原子であることは好ましくない。
【0081】
21、R22およびZ2が表すアルキル基としては、炭素原子数が1〜30のアルキル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルキル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。更に置換基を有していてもよく、その例としては、後述のZ2、R21、R22、Y21、Y22、Y23およびY24が更に置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。なお、アルキル基の炭素原子数は置換基の炭素原子を含まず、他の基についても同様である。
【0082】
21、R22およびZ2が表すシクロアルキル基としては、炭素原子数が5〜30のシクロアルキル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。更に置換基を有していてもよく、その例としては、後述のZ2、R21、R22、Y21、Y22、Y23およびY24が更に置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。なかでも、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、およびスルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
【0083】
21、R22およびZ2が表すアルケニル基としては、炭素原子数が2〜30のアルケニル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルケニル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。更に置換基を有していてもよく、その例としては、後述のZ2、R21、R22、Y21、Y22、Y23およびY24が更に置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。なかでも、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していてもよい。
【0084】
21、R22およびZ2が表すアラルキル基としては、炭素原子数が7〜30のアラルキル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアラルキル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。更に置換基を有していてもよく、その例としては、後述のZ2、R21、R22、Y21、Y22、Y23およびY24が更に置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。なかでも、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していてもよい。
【0085】
21、R22およびZ2が表すアリール基としては、炭素原子数が6〜30のアリール基が好ましい。更に置換基を有していてもよく、その例としては、後述のZ2、R21、R22、Y21、Y22、Y23およびY24が更に置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。なかでも、染料の酸化電位を貴とし堅牢性を向上させるので電子吸引性基が特に好ましい。電子吸引性基としては、ハメットの置換基定数σp値が正のものが挙げられる。なかでも、ハロゲン原子、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホ基、4級アンモニウム基が好ましく、シアノ基、カルボキシル基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホ基、4級アンモニウム基が更に好ましい。
【0086】
21、R22およびZ2が表す複素環基としては、5員または6員環のものが好ましく、それらは更に縮環していてもよい。また、芳香族複素環であっても非芳香族複素環であっても良い。以下にR21、R22およびZ2で表される複素環基を、置換位置を省略して複素環の形で例示するが、置換位置は限定されるものではなく、例えばピリジンであれば、2位、3位、4位で置換することが可能である。ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。なかでも、芳香族複素環基が好ましく、その好ましい例を先と同様に例示すると、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾールが挙げられる。それらは置換基を有していても良く、置換基の例としては、後述のZ2、R21、R22、Y21、Y22、Y23およびY24が更に置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。好ましい置換基は前記アリール基の置換基と、更に好ましい置換基は、前記アリール基の更に好ましい置換基とそれぞれ同じである。
【0087】
21、Y22、Y23およびY24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシル基、またはスルホ基を挙げる事ができ、各々はさらに置換基を有していてもよい。
なかでも、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、およびスルホ基が好ましく、特に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基およびスルホ基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0088】
2、R21、R22、Y21、Y22、Y23およびY24が更に置換基を有することが可能な基であるときは、以下に挙げる置換基を更に有してもよい。
炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数7〜18の直鎖または分岐鎖アラルキル基、炭素数2〜12の直鎖または分岐鎖アルケニル基、炭素数2〜12の直鎖または分岐鎖アルキニル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐鎖シクロアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐鎖シクロアルケニル基(以上の各基は分岐鎖を有するものが染料の溶解性およびインクの安定性を向上させる理由から好ましく、不斉炭素を有するものが特に好ましい。以上の各基の具体例:例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、sec-ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、複素環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メタンスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルバモイルフェノキシ、3−メトキシカルバモイル)、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル、オクタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基および4級アンモニウム基)が挙げられる。
【0089】
イオン性親水性基の数としては、フタロシアニン系染料1分子中少なくとも2個有することが好ましく、スルホ基および/またはカルボキシル基を少なくとも2個有することが特に好ましい。
【0090】
21〜a24およびb21〜b24は、それぞれX21〜X24およびY21〜Y24の置換基数を表す。a21〜a24は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表すが、全てが同時に0になることはない。b21〜b24は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。なお、a21〜a24およびb21〜b24のいずれかが2以上の整数であるときは、X21〜X24およびY21〜Y24のいずれかは複数個存在することになり、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0091】
21とb21は、a21+b21=4の関係を満たす。特に好ましいのは、a21が1または2を表し、b21が3または2を表す組み合わせであり、そのなかでも、a21が1を表し、b21が3を表す組み合わせが最も好ましい。
【0092】
22とb22、a23とb23、a24とb24の各組み合わせにおいても、a21とb21の組み合わせと同様の関係であり、好ましい組み合わせも同様である。
【0093】
Mは、水素原子、金属元素またはその酸化物、水酸化物もしくはハロゲン化物を表す。
Mとして好ましいものは、水素原子の他に、金属元素として、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。酸化物としては、VO、GeO等が好ましく挙げられる。
また、水酸化物としては、Si(OH)2、Cr(OH)2、Sn(OH)2等が好ましく挙げられる。さらに、ハロゲン化物としては、AlCl、SiCl2、VCl、VCl2、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が挙げられる。なかでも、Cu、Ni、Zn、Al等が好ましく、Cuが最も好ましい。
また、L(2価の連結基)を介してPc(フタロシアニン環)が2量体(例えば、Pc−M−L-M−Pc)または3量体を形成してもよく、その時のMはそれぞれ同一であっても異なるものであってもよい。
【0094】
Lで表される2価の連結基は、オキシ基−O−、チオ基−S−、カルボニル基−CO−、スルホニル基−SO2−、イミノ基−NH−、メチレン基−CH2−、およびこれらを組み合わせて形成される基が好ましい。
【0095】
前記一般式(2)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0096】
前記一般式(2)で表されるフタロシアニン染料のなかでも、前記一般式(2−1)で表される構造のフタロシアニン染料が更に好ましい。以下に一般式(2−1)で表されるフタロシアニン染料について詳しく述べる。
【0097】
一般式(2−1)
【0098】
【化21】

【0099】
一般式(2−1)において、X51〜X54およびY51〜Y58、M1は一般式(2)の中のX21〜X24およびY21〜Y24、Mとそれぞれ同義である。a51〜a54はそれぞれ独立に1または2の整数を表し、好ましくは4≦a51+a52+a53+a54≦6を満たし、特に好ましくはa51=a52=a53=a54=1のときである。
51、X52、X53およびX54は、それぞれ全く同じ置換基であってもよく、あるいは例えばX51、X52、X53およびX54が全て−SO2−Z5であり、かつ各Z5は異なるものを含む場合のように、同じ種類の置換基であるが部分的に互いに異なる置換基であってもよく、あるいは互いに異なる置換基を、例えば−SO2−Z5と−SO2NR5152を含んでいてもよい。
【0100】
一般式(2−1)で表されるフタロシアニン染料のなかでも、特に好ましい置換基の組み合わせは、以下の通りである。
51〜X54としては、それぞれ独立に、−SO−Z5、−SO2−Z5、−SO2NR5152または−CONR5152が好ましく、特に−SO2−Z5または−SO2NR5152が好ましく、−SO2−Z5が最も好ましい。
【0101】
5は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、複素環基及びこれらの基に更に他の基が置換されたものが好ましく、そのなかでも、置換アルキル基、置換アリール基、置換複素環基が最も好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、置換基中に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が好ましい。また、会合性を高め堅牢性を向上させるという理由から、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基が置換基中に有する場合が好ましい。
【0102】
51、R52は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基及びこれらの基に更に他の基が置換されたものが好ましく、そのなかでも、水素原子、置換アルキル基、置換アリール基、置換複素環基がより好ましい。ただしR51、R52が共に水素原子であることは好ましくない。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、置換基中に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が好ましい。また、会合性を高め堅牢性を向上させるという理由から、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基が置換基中に有する場合が好ましい。
【0103】
51〜Y58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、およびスルホ基が好ましく、特に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、またはスルホ基であることが好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0104】
51〜a54は、それぞれ独立に、1または2であることが好ましく、全てが1であることが特に好ましい。
【0105】
1は、水素原子、金属元素またはその酸化物、水酸化物もしくはハロゲン化物を表し、特にCu、Ni、Zn、Alが好ましく、なかでも特に特にCuが最も好ましい。
【0106】
前記一般式(2−1)で表されるフタロシアニン染料が水溶性である場合には、イオン性親水性基を有することが好ましい。
【0107】
イオン性親水性基の数としては、フタロシアニン系染料1分子中に少なくとも2個有することが好ましく、スルホ基および/またはカルボキシル基を少なくとも2個有することが特に好ましい。
【0108】
前記一般式(2−1)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0109】
本発明のフタロシアニン染料の化学構造としては、スルフィニル基、スルホニル基、スルファモイル基のような電子吸引性基を、フタロシアニンの4つの各ベンゼン環に少なくとも一つずつ、フタロシアニン骨格全体の置換基のσp値の合計で1.6以上となるように導入することが好ましい。
【0110】
(マゼンタ染料)
一般式(3)
【0111】
【化22】

【0112】
一般式(3)において、A31は5員複素環基を表す。
31およびB32は各々=CR31−、−CR32=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子、他方が=CR31−または−CR32=を表す。R35およびR36は各々独立に水素原子または置換基を表し、該置換基は脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表し、該各置換基の水素原子は置換されていても良い。
【0113】
3、R31およびR32は各々独立して、水素原子または置換基を示し、該置換基は、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、ヘテロ環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロ環スルフィニル基、スルファモイル基、またはスルホ基を表し、該各置換基の水素原子は置換されていても良い。
31とR35、あるいはR35とR36が結合して5〜6員環を形成しても良い。
一般式(3)において、A31は5員複素環基を表すが、複素環のヘテロ原子の例には、N、O、およびSを挙げることができる。好ましくは含窒素5員複素環であり、複素環に脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。A31の好ましい複素環の例には、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環を挙げる事ができる。各複素環基は更に置換基を有していても良い。中でも下記一般式(a)から(g)で表されるピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、トリアゾール環が好ましい。
【0114】
上記一般式(a)から(g)において、R307からR322は一般式(3)におけるG3、R31、R32と同じ置換基を表す。
一般式(a)から(f)のうち、好ましいのは一般式(a)、(b)で表されるピラゾール環、イソチアゾール環であり、最も好ましいのは一般式(a)で表されるピラゾール環である。
【0115】
【化23】

【0116】
一般式(3)において、B31およびB32は各々=CR31−および−CR32=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子、他方が=CR31−または−CR32=を表すが、各々=CR31−、−CR32=を表すものがより好ましい。
【0117】
35およびR36は各々独立に水素原子または置換基を表し、該置換基は脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表し、該各置換基の水素原子は置換されていても良い。
【0118】
35、R36は好ましくは、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキルまたはアリールスルホニル基を挙げる事ができる。さらに好ましくは水素原子、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキルまたはアリールスルホニル基である。最も好ましくは、水素原子、アリール基、複素環基である。該各置換基の水素原子は置換されていても良い。ただし、R35およびR36が同時に水素原子であることはない。
【0119】
3、R31およびR32は各々独立して、水素原子または置換基を示し、該置換基は、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、ヘテロ環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロ環スルフィニル基、スルファモイル基、またはスルホ基を表し、該各置換基の水素原子は置換されていても良い。
【0120】
3としては水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールチオ基、またはヘテロ環チオ基が好ましく、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アミノ基またはアシルアミノ基であり、中でも水素原子、アミノ基(好ましくは、アニリノ基)、アシルアミノ基が最も好ましい。該各置換基の水素原子は置換されていても良い。
【0121】
31、R32として好ましいものは、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基を挙げる事ができる。該各置換基の水素原子は置換されていても良い。
31とR35、あるいはR35とR36が結合して5〜6員環を形成しても良い。
【0122】
31が置換基を有する場合、またはR31、R32、R35、R36またはG3の置換基が更に置換基を有する場合の置換基としては、上記G3、R31、R32で挙げた置換基を挙げる事ができる。
【0123】
本発明の染料が水溶性染料である場合には、A31、R31、R32、R35、R36、G3上のいずれかの位置に置換基としてさらにイオン性親水性基を有することが好ましい。
【0124】
上記置換基について説明する。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
【0125】
脂肪族基はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基および置換アラルキル基を意味する。本明細書で、「置換アルキル基」等に用いる「置換」とは、「アルキル基」等に存在する水素原子が上記G3、R31、R32で挙げた置換基等で置換されていることを示す。
【0126】
脂肪族基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜16であることがさらに好ましい。アラルキル基および置換アラルキル基のアリール部分はフェニル基またはナフチル基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。脂肪族基の例には、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、およびアリル基を挙げることができる。
【0127】
芳香族基はアリール基および置換アリール基を意味する。アリール基は、フェニル基またはナフチル基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。芳香族基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6から16がさらに好ましい。
芳香族基の例には、フェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、o−クロロフェニル基およびm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニル基が含まれる。
【0128】
複素環基には、置換複素環基が含まれる。複素環基は、複素環に脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。前記複素環基としては、5員または6員環の複素環基が好ましい。前記置換基の例には、脂肪族基、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アシルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、イオン性親水性基などが含まれる。前記複素環基の例には、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基および2−フリル基が含まれる。
【0129】
カルバモイル基には、置換カルバモイル基が含まれる。前記置換基の例には、アルキル基が含まれる。前記カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基およびジメチルカルバモイル基が含まれる。
【0130】
アルコキシカルボニル基には、置換アルコキシカルボニル基が含まれる。前記アルコキシカルボニル基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基が含まれる。
【0131】
アリールオキシカルボニル基には、置換アリールオキシカルボニル基が含まれる。前記アリールオキシカルボニル基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニル基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル基が含まれる。
【0132】
ヘテロ環オキシカルボニル基には、置換ヘテロ環オキシカルボニル基が含まれる。ヘテロ環としては、前記複素環基で記載の複素環が挙げられる。前記ヘテロ環オキシカルボニル基としては、炭素原子数が2〜20のヘテロ環オキシカルボニル基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記ヘテロ環オキシカルボニル基の例には、2−ピリジルオキシカルボニル基が含まれる。
【0133】
アシル基には、置換アシル基が含まれる。前記アシル基としては、炭素原子数が1〜20のアシル基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アシル基の例には、アセチル基およびベンゾイル基が含まれる。
【0134】
アルコキシ基には、置換アルコキシ基が含まれる。前記アルコキシ基としては、炭素原子数が1〜20のアルコキシ基が好ましい。前記置換基の例には、アルコキシ基、ヒドロキシル基、およびイオン性親水性基が含まれる。前記アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基および3−カルボキシプロポキシ基が含まれる。
【0135】
アリールオキシ基には、置換アリールオキシ基が含まれる。前記アリールオキシ基としては、炭素原子数が6〜20のアリールオキシ基が好ましい。前記置換基の例には、アルコキシ基、およびイオン性親水性基が含まれる。前記アリールオキシ基の例には、フェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基およびo−メトキシフェノキシ基が含まれる。
【0136】
ヘテロ環オキシ基には、置換ヘテロ環オキシ基が含まれる。ヘテロ環としては、前記複素環基で記載の複素環が挙げられる。前記ヘテロ環オキシ基としては、炭素原子数が2〜20のヘテロ環オキシ基が好ましい。前記置換基の例には、アルキル基、アルコキシ基、およびイオン性親水性基が含まれる。前記ヘテロ環オキシ基の例には、3−ピリジルオキシ基、3−チエニルオキシ基が含まれる。
【0137】
シリルオキシ基としては、炭素原子数が1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基が好ましい。前記シリルオキシ基の例には、トリメチルシリルオキシ、ジフェニルメチルシリルオキシが含まれる。
【0138】
アシルオキシ基には、置換アシルオキシ基が含まれる。前記アシルオキシ基としては、炭素原子数1〜20のアシルオキシ基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アシルオキシ基の例には、アセトキシ基およびベンゾイルオキシ基が含まれる。
【0139】
カルバモイルオキシ基には、置換カルバモイルオキシ基が含まれる。前記置換基の例には、アルキル基が含まれる。前記カルバモイルオキシ基の例には、N−メチルカルバモイルオキシ基が含まれる。
【0140】
アルコキシカルボニルオキシ基には、置換アルコキシカルボニルオキシ基が含まれる。前記アルコキシカルボニルオキシ基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。前記アルコキシカルボニルオキシ基の例には、メトキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基が含まれる。
【0141】
アリールオキシカルボニルオキシ基には、置換アリールオキシカルボニルオキシ基が含まれる。前記アリールオキシカルボニルオキシ基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。前記アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ基が含まれる。
【0142】
アミノ基には、置換アミノ基が含まれる。該置換基としてはアルキル基、アリール基または複素環基が含まれ、アルキル基、アリール基および複素環基はさらに置換基を有していてもよい。アルキルアミノ基には、置換アルキルアミノ基が含まれる。アルキルアミノ基としては、炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アルキルアミノ基の例には、メチルアミノ基およびジエチルアミノ基が含まれる。
【0143】
アリールアミノ基には、置換アリールアミノ基が含まれる。前記アリールアミノ基としては、炭素原子数が6〜20のアリールアミノ基が好ましい。前記置換基の例としては、ハロゲン原子、およびイオン性親水性基が含まれる。前記アリールアミノ基の例としては、フェニルアミノ基および2−クロロフェニルアミノ基が含まれる。
【0144】
ヘテロ環アミノ基には、置換ヘテロ環アミノ基が含まれる。ヘテロ環としては、前記複素環基で記載の複素環が挙げられる。前記ヘテロ環アミノ基としては、炭素数2〜20個のヘテロ環アミノ基が好ましい。前記置換基の例としては、アルキル基、ハロゲン原子、およびイオン性親水性基が含まれる。
【0145】
アシルアミノ基には、置換アシルアミノ基が含まれる。前記アシルアミノ基としては、炭素原子数が2〜20のアシルアミノ基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アシルアミノ基の例には、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、N−フェニルアセチルアミノおよび3,5−ジスルホベンゾイルアミノ基が含まれる。
【0146】
ウレイド基には、置換ウレイド基が含まれる。前記ウレイド基としては、炭素原子数が1〜20のウレイド基が好ましい。前記置換基の例には、アルキル基およびアリール基が含まれる。前記ウレイド基の例には、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基および3−フェニルウレイド基が含まれる。
【0147】
スルファモイルアミノ基には、置換スルファモイルアミノ基が含まれる。前記置換基の例には、アルキル基が含まれる。前記スルファモイルアミノ基の例には、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ基が含まれる。
【0148】
アルコキシカルボニルアミノ基には、置換アルコキシカルボニルアミノ基が含まれる。前記アルコキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アルコキシカルボニルアミノ基の例には、エトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0149】
アリールオキシカルボニルアミノ基には、置換アリールオキシカルボニルアミノ基が含まれる。前記アリールオキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0150】
アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基には、置換アルキルスルホニルアミノ基及び置換アリールスルホニルアミノ基が含まれる。前記アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基としては、炭素原子数が1〜20のアルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基の例には、メチルスルホニルアミノ基、N−フェニル−メチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、および3−カルボキシフェニルスルホニルアミノ基が含まれる。
【0151】
ヘテロ環スルホニルアミノ基には、置換ヘテロ環スルホニルアミノ基が含まれる。ヘテロ環としては、前記複素環基で記載の複素環が挙げられる。前記ヘテロ環スルホニルアミノ基としては、炭素原子数が1〜12のヘテロ環スルホニルアミノ基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記ヘテロ環スルホニルアミノ基の例には、2−チエニルスルホニルアミノ基、3−ピリジルスルホニルアミノ基が含まれる。
【0152】
アルキルチオ基、アリールチオ基及びヘテロ環チオ基には、置換アルキルチオ基、置換アリールチオ基及び置換ヘテロ環チオ基が含まれる。ヘテロ環としては、前記複素環基で記載の複素環が挙げられる。前記アルキルチオ基、アリールチオ基及びヘテロ環チオ基としては、炭素原子数が1から20のものが好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アルキルチオ基、アリールチオ基及びヘテロ環チオ基の例には、メチルチオ基、フェニルチオ基、2−ピリジルチオ基が含まれる。
【0153】
アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基には、置換アルキルスルホニル基および置換アリールスルホニル基が含まれる。アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基の例としては、それぞれメチルスルホニル基およびフェニルスルホニル基をあげる事ができる。
【0154】
ヘテロ環スルホニル基には、置換ヘテロ環スルホニル基が含まれる。ヘテロ環としては、前記複素環基で記載の複素環が挙げられる。前記ヘテロ環スルホニル基としては、炭素原子数が1〜20のヘテロ環スルホニル基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記ヘテロ環スルホニル基の例には、2−チエニルスルホニル基、3−ピリジルスルホニル基が含まれる。
【0155】
アルキルスルフィニル基およびアリールスルフィニル基には、置換アルキルスルフィニル基および置換アリールスルフィニル基が含まれる。アルキルスルフィニル基およびアリールスルフィニル基の例としては、それぞれメチルスルフィニル基およびフェニルスルフィニル基をあげる事ができる。
【0156】
ヘテロ環スルフィニル基には、置換ヘテロ環スルフィニル基が含まれる。ヘテロ環としては、前記複素環基で記載の複素環が挙げられる。前記ヘテロ環スルフィニル基としては、炭素原子数が1〜20のヘテロ環スルフィニル基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記ヘテロ環スルフィニル基の例には、4−ピリジルスルフィニル基が含まれる。
【0157】
スルファモイル基には、置換スルファモイル基が含まれる。前記置換基の例には、アルキル基が含まれる。前記スルファモイル基の例には、ジメチルスルファモイル基およびジ−(2−ヒドロキシエチル)スルファモイル基が含まれる。
【0158】
(ブラック染料)
一般式(4):A1−N=N−A2−N=N−A3
式中、A1、A2およびA3は、各々独立に、置換されていてもよい芳香族基または置換されていてもよい複素環基を表す。A1およびA3は一価の基であり、A2は二価の基である。
一般式(4)で表されるアゾ染料は、特に下記一般式(4−1)で表される染料であることが好ましい。
一般式(4−1);
【0159】
【化24】

【0160】
上記一般式(4−1)中、T1およびT2は、各々=CR12−および−CR13=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子、他方が=CR12−または−CR13=を表す。
【0161】
1、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、複素環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルもしくはアリールチオ基、複素環チオ基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、スルファモイル基、またはスルホ基を表し、各基は更に置換されていてもよい。
【0162】
10、R11は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、スルファモイル基を表し、各基は更に置換基を有していてもよい。
また、R12とR10、あるいはR10とR11が結合して5乃至6員環を形成してもよい。
1及びA2は一般式(4)と同義である。
【0163】
一般式(4−1)で表されるアゾ染料は、さらに下記一般式(4−2−1)または下記一般式(4−2−2)で表される染料であることが好ましい。
【0164】
【化25】

【0165】
上記一般式(4−2−1)および一般式(4−2−2)中、R14およびR15は、一般式(4−1)のR12と同義である。A1、R10、R11、T1、T2、およびV1は、一般式(4−1)と同義である。
【0166】
ここで、一般式(4)、一般式(4−1)、一般式(4−2−1)および一般式(4−2−2)(以下、一般式(4−2−1)と一般式(4−2−2)とをまとめて表すときには一般式(4−2)と記載する。)の説明において使用される用語(置換基)について説明する。
【0167】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
【0168】
脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基および置換アラルキル基を意味する。脂肪族基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜16であることがさらに好ましい。アラルキル基および置換アラルキル基のアリール部分はフェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。脂肪族基の例には、メチル、エチル、ブチル、イソプロピル、t−ブチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、シアノエチル、トリフルオロメチル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、シクロヘキシル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、およびアリル基を挙げることができる。
【0169】
1価の芳香族基はアリール基および置換アリール基を意味する。アリール基は、フェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。1価の芳香族基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜16がさらに好ましい。1価の芳香族基の例には、フェニル、p−トリル、p−メトキシフェニル、o−クロロフェニルおよびm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニルが含まれる。2価の芳香族基は、これらの1価の芳香族基を2価にしたものであり、その例としてフェニレン、p−トリレン、p−メトキシフェニレン、o−クロロフェニレンおよびm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニレン、ナフチレンなどが含まれる。
【0170】
複素環基には、置換基を有する複素環基および無置換の複素環基が含まれる。複素環に脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。複素環基としては、5員または6員環の複素環基が好ましく、複素環のヘテロ原子としてはN、O、およびSをあげることができる。上記置換基の例には、脂肪族基、ハロゲン原子、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アシルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、イオン性親水性基などが含まれる。1価の複素環基の例には、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基および2−フリル基が含まれる。2価の複素環基は、前記の1価の複素環中の水素原子を取り除いて結合手になった基である。
【0171】
カルバモイル基には、置換基を有するカルバモイル基および無置換のカルバモイル基が含まれる。前記置換基の例には、アルキル基が含まれる。前記カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基およびジメチルカルバモイル基が含まれる。
【0172】
アルコキシカルボニル基には、置換基を有するアルコキシカルボニル基および無置換のアルコキシカルボニル基が含まれる。アルコキシカルボニル基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基が含まれる。
【0173】
アリールオキシカルボニル基には、置換基を有するアリールオキシカルボニル基および無置換のアリールオキシカルボニル基が含まれる。アリールオキシカルボニル基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニル基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル基が含まれる。
【0174】
複素環オキシカルボニル基には、置換基を有する複素環オキシカボニル基および無置換の複素環オキシカルボニル基が含まれる。複素環オキシカルボニル基としては、炭素原子数が2〜20の複素環オキシカルボニル基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記複素環オキシカルボニル基の例には、2−ピリジルオキシカルボニル基が含まれる。
アシル基には、置換基を有するアシル基および無置換のアシル基が含まれる。アシル基としては、炭素原子数が1〜20のアシル基が好ましい。上記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。上記アシル基の例には、アセチル基およびベンゾイル基が含まれる。
【0175】
アルコキシ基には、置換基を有するアルコキシ基および無置換のアルコキシ基が含まれる。アルコキシ基としては、炭素原子数が1〜20のアルコキシ基が好ましい。置換基の例には、アルコキシ基、ヒドロキシル基、およびイオン性親水性基が含まれる。上記アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基および3−カルボキシプロポキシ基が含まれる。
【0176】
アリールオキシ基には、置換基を有するアリールオキシ基および無置換のアリールオキシ基が含まれる。アリールオキシ基としては、炭素原子数が6〜20のアリールオキシ基が好ましい。上記置換基の例には、アルコキシ基およびイオン性親水性基が含まれる。上記アリールオキシ基の例には、フェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基およびo−メトキシフェノキシ基が含まれる。
【0177】
複素環オキシ基には、置換基を有する複素環オキシ基および無置換の複素環オキシ基が含まれる。上記複素環オキシ基としては、炭素原子数が2〜20の複素環オキシ基が好ましい。上記置換基の例には、アルキル基、アルコキシ基、およびイオン性親水性基が含まれる。上記複素環オキシ基の例には、3−ピリジルオキシ基、3−チエニルオキシ基が含まれる。
【0178】
シリルオキシ基としては、炭素原子数が1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基が好ましい。シリルオキシ基の例には、トリメチルシリルオキシ、ジフェニルメチルシリルオキシが含まれる。
【0179】
アシルオキシ基には、置換基を有するアシルオキシ基および無置換のアシルオキシ基が含まれる。アシルオキシ基としては、炭素原子数1〜20のアシルオキシ基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシルオキシ基の例には、アセトキシ基およびベンゾイルオキシ基が含まれる。
【0180】
カルバモイルオキシ基には、置換基を有するカルバモイルオキシ基および無置換のカルバモイルオキシ基が含まれる。前記置換基の例には、アルキル基が含まれる。カルバモイルオキシ基の例には、N−メチルカルバモイルオキシ基が含まれる。
【0181】
アルコキシカルボニルオキシ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルオキシ基および無置換のアルコキシカルボニルオキシ基が含まれる。アルコキシカルボニルオキシ基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。アルコキシカルボニルオキシ基の例には、メトキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基が含まれる。
【0182】
アリールオキシカルボニルオキシ基には、置換基を有するアリールオキシカルボニルオキシ基および無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が含まれる。アリールオキシカルボニルオキシ基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ基が含まれる。
【0183】
アミノ基には、アルキル基、アリール基または複素環基で置換されたアミノ基が含まれ、アルキル基、アリール基および複素環基はさらに置換基を有していてもよい。アルキルアミノ基としては、炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキルアミノ基の例には、メチルアミノ基およびジエチルアミノ基が含まれる。
アリールアミノ基には、置換基を有するアリールアミノ基および無置換のアリールアミノ基が含まれる。アリールアミノ基としては、炭素原子数が6〜20のアリールアミノ基が好ましい。置換基の例としては、ハロゲン原子、およびイオン性親水性基が含まれる。アリールアミノ基の例としては、アニリノ基および2−クロロフェニルアミノ基が含まれる。
複素環アミノ基には、置換基を有する複素環アミノ基および無置換の複素環アミノ基が含まれる。複素環アミノ基としては、炭素数2〜20個の複素環アミノ基が好ましい。置換基の例としては、アルキル基、ハロゲン原子、およびイオン性親水性基が含まれる。
【0184】
アシルアミノ基には、置換基を有するアシルアミノ基および無置換基のアシルアミノ基が含まれる。アシルアミノ基としては、炭素原子数が2〜20のアシルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシルアミノ基の例には、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、N−フェニルアセチルアミノおよび3,5−ジスルホベンゾイルアミノ基が含まれる。
【0185】
ウレイド基には、置換基を有するウレイド基および無置換のウレイド基が含まれる。ウレイド基としては、炭素原子数が1〜20のウレイド基が好ましい。置換基の例には、アルキル基およびアリール基が含まれる。ウレイド基の例には、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基および3−フェニルウレイド基が含まれる。
【0186】
スルファモイルアミノ基には、置換基を有するスルファモイルアミノ基および無置換のスルファモイルアミノ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。スルファモイルアミノ基の例には、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ基が含まれる。
【0187】
アルコキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルアミノ基および無置換のアルコキシカルボニルアミノ基が含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、エトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0188】
アリールオキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアリールオキシカボニルアミノ基および無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0189】
アルキル及びアリールスルホニルアミノ基には、置換基を有するアルキル及びアリールスルホニルアミノ基、および無置換のアルキル及びアリールスルホニルアミノ基が含まれる。スルホニルアミノ基としては、炭素原子数が1〜20のスルホニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。これらスルホニルアミノ基の例には、メチルスルホニルアミノ基、N−フェニル−メチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、および3−カルボキシフェニルスルホニルアミノ基が含まれる。
【0190】
複素環スルホニルアミノ基には、置換基を有する複素環スルホニルアミノ基および無置換の複素環スルホニルアミノ基が含まれる。複素環スルホニルアミノ基としては、炭素原子数が1〜12の複素環スルホニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。複素環スルホニルアミノ基の例には、2−チオフェンスルホニルアミノ基、3−ピリジンスルホニルアミノ基が含まれる。
【0191】
複素環スルホニル基には、置換基を有する複素環スルホニル基および無置換の複素環スルホニル基が含まれる。複素環スルホニル基としては、炭素原子数が1〜20の複素環スルホニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。複素環スルホニル基の例には、2−チオフェンスルホニル基、3−ピリジンスルホニル基が含まれる。
【0192】
複素環スルフィニル基には、置換基を有する複素環スルフィニル基および無置換の複素環スルフィニル基が含まれる。複素環スルフィニル基としては、炭素原子数が1〜20の複素環スルフィニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。複素環スルフィニル基の例には、4−ピリジンスルフィニル基が含まれる。
【0193】
アルキル、アリール及び複素環チオ基には、置換基を有するアルキル、アリール及び複素環チオ基と無置換のアルキル、アリール及び複素環チオ基が含まれる。アルキル、アリール及び複素環チオ基としては、炭素原子数が1から20のものが好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキル、アリール及び複素環チオ基の例には、メチルチオ基、フェニルチオ基、2−ピリジルチオ基が含まれる。
【0194】
アルキル及びアリールスルホニル基には、置換基を有するアルキル及びアリールスルホニル基、無置換のアルキル及びアリールスルホニル基が含まれる。アルキル及びアリールスルホニル基の例としては、それぞれメチルスルホニル基およびフェニルスルホニル基を挙げることができる。
【0195】
アルキル及びアリールスルフィニル基には、置換基を有するアルキル及びアリールスルフィニル基、無置換のアルキル及びアリールスルフィニル基が含まれる。アルキル及びアリールスルフィニル基の例としては、それぞれメチルスルフィニル基及びフェニルスルフィニル基を挙げることができる。
【0196】
スルファモイル基には、置換基を有するスルファモイル基および無置換のスルファモイル基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。スルファモイル基の例には、ジメチルスルファモイル基およびジ−(2−ヒドロキシエチル)スルファモイル基が含まれる。
【0197】
一般式(1)〜(4)の染料を水溶性染料として使用する場合には、分子内にイオン性親水性基を少なくとも1つ有することが好ましい。イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基および4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、およびスルホ基が好ましく、中でもカルボキシル基、スルホ基が好ましい。特に少なくとも1つはカルボキシル基である事が最も好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。対イオンの中でもアルカリ金属塩が好ましい。
【0198】
本発明のインクセットをインクジェット記録に使用する場合、インクのすべてもしくは一部は、インクカートリッジに充填されていることが好ましい。このインクカートリッジとしては、スポンジを利用して連続的にインクを供給するタイプのもの、プランジャーポンプ形式でインクを供給するもの等、種々のものが使用可能であるが、本発明のインク組成物に対しては、初期状態ではインクカートリッジ内部が、大気圧よりも低圧に保たれているものが好ましい。
【0199】
大気圧としては、通常、980〜1040hPaの範囲で変動することが考えられるため、カートリッジ内部の圧力としては、600〜980hPa、好ましくは700〜960hPa、特に好ましくは、800〜950hPaに保たれていることが好ましい。
【0200】
インクカートリッジ内にスポンジを充填し、その圧力を利用して、連続的にインク供給するタイプのカートリッジの場合、そのスポンジの材質としては、ウレタン系ポリマーが好ましく使用される。
【0201】
本発明におけるインク組成物には、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料等の水溶性染料を用いることもできる。なかでも好ましいものとしては、
C.I.ダイレクトレッド2、4、9、23、26、31、39、62、63、72、75、76、79、80、81、83、84、89、92、95、111、173、184、207、211、212、214、218、21、223、224、225、226、227、232、233、240、241、242、243、247
C.I.ダイレクトバイオレット7、9、47、48、51、66、90、93、94、95、98、100、101
C.I.ダイレクトイエロー8、9、11、12、27、28、29、33、35、39、41、44、50、53、58、59、68、86、87、93、95、96、98、100、106、108、109、110、130、132、142、144、161、163
C.I.ダイレクトブルー1、10、15、22、25、55、67、68、71、76、77、78、80、84、86、87、90、98、106、108、109、151、156、158、159、160、168、189、192、193、194、199、200、201、202、203、207、211、213、214、218、225、229、236、237、244、248、249、251、252、264、270、280、288、289、291
C.I.ダイレクトブラック9、17、19、22、32、51、56、62、69、77、80、91、94、97、108、112、113、114、117、118、121、122、125、132、146、154、166、168、173、199
C.I.アシッドレッド35、42、52、57、62、80、82、111、114、118、119、127、128、131、143、151、154、158、249、254、257、261、263、266、289、299、301、305、336、337、361、396、397
C.I.アシッドバイオレット5、34、43、47、48、90、103、126
C.I.アシッドイエロー17、19、23、25、39、40、42、44、49、50、61、64、76、79、110、127、135、143、151、159、169、174、190、195、196、197、199、218、219、222、227
C.I.アシッドブルー9、25、40、41、62、72、76、78、80、82、92、106、112、113、120、127:1、129、138、143、175、181、205、207、220、221、230、232、247、258、260、264、271、277、278、279、280、288、290、326
C.I.アシッドブラック7、24、29、48、52:1、172
C.I.リアクティブレッド3、13、17、19、21、22、23、24、29、35、37、40、41、43、45、49、55
C.I.リアクティブバイオレット1、3、4、5、6、7、8、9、16、17、22、23、24、26、27、33、34
C.I.リアクティブイエロー2、3、13、14、15、17、18、23、24、25、26、27、29、35、37、41、42
C.I.リアクティブブルー2、3、5、8、10、13、14、15、17、18、19、21、25、26、27、28、29、38
C.I.リアクティブブラック4、5、8、14、21、23、26、31、32、34
C.I.ベーシックレッド12、13、14、15、18、22、23、24、25、27、29、35、36、38、39、45、46
C.I.ベーシックバイオレット1、2、3、7、10、15、16、20、21、25、27、28、35、37、39、40、48
C.I.ベーシックイエロー1、2、4、11、13、14、15、19、21、23、24、25、28、29、32、36、39、40
C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、9、22、26、41、45、46、47、54、57、60、62、65、66、69、71
C.I.ベーシックブラック8、等が挙げられる。
【0202】
さらに、本発明におけるインク組成物は、顔料を染料と共に併用することもできる。
本発明に用いることのできる顔料としては、市販のものの他、各種文献に記載されている公知のものが利用できる。文献に関してはカラーインデックス(The Society of Dyers and Colourists編)、「改訂新版顔料便覧」日本顔料技術協会編(1989年刊)、「最新顔料応用技術」CMC出版(1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版(1984年刊)、W.Herbst,K.Hunger共著によるIndustrial Organic Pigments(VCH Verlagsgesellschaft、1993年刊)等がある。具体的には、有機顔料ではアゾ顔料(アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料)、多環式顔料(フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、インジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等)、染付けレーキ顔料(酸性または塩基性染料のレーキ顔料)、アジン顔料等があり、無機顔料では、黄色顔料のC.I.Pigment Yellow 34,37,42,53など、赤系顔料のC.I.Pigment Red 101,108など、青系顔料のC.I.Pigment Blue 27,29,17:1など、ブラック系顔料のC.I.Pigment Black 7,マグネタイトなど、白系顔料のC.I.Pigment White 4,6,18,21などを挙げることができる。
【0203】
画像形成用に好ましい色調を持つ顔料としては、青ないしシアン顔料ではフタロシアニン顔料、アントラキノン系のインダントロン顔料(たとえばC.I.Pigment Blue 60など)、染め付けレーキ顔料系のトリアリールカルボニウム顔料が好ましく、特にフタロシアニン顔料(好ましい例としては、C.I. Pigment Blue 15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6などの銅フタロシアニン、モノクロロないし低塩素化銅フタロシアニン、アルニウムフタロシアニンでは欧州特許860475号に記載の顔料、C.I.Pigment Blue 16である無金属フタロシアニン、中心金属がZn、Ni、Tiであるフタロシアニンなど、中でも好ましいものはC.I. Pigment Blue 15:3、同15:4、アルミニウムフタロシアニン)が最も好ましい。
【0204】
赤ないし紫色の顔料では、アゾ顔料(好ましい例としては、C.I.Pigment Red 3、同5、同11、同22、同38、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同49:1、同52:1、同53:1、同57:1、同63:2、同144、同146、同184)など、中でも好ましいものはC.I.Pigment Red 57:1、同146、同184)、キナクリドン系顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Red 122、同192、同202、同207、同209、C.I.Pigment Violet 19、同42、なかでも好ましいものはC.I.Pigment Red 122)、染め付けレーキ顔料系のトリアリールカルボニウム顔料(好ましい例としてはキサンテン系のC.I.Pigment Red 81:1、C.I.Pigment Violet 1、同2、同3、同27、同39)、ジオキサジン系顔料(例えばC.I.Pigment Violet 23、同37)、ジケトピロロピロール系顔料(例えばC.I.Pigment Red 254)、ペリレン顔料(例えばC.I.Pigment Violet 29)、アントラキノン系顔料(例えばC.I.Pigment Violet 5:1、同31、同33)、チオインジゴ系(例えばC.I.Pigment Red 38、同88)が好ましく用いられる。
【0205】
黄色顔料としては、アゾ顔料(好ましい例としてはモノアゾ顔料系のC.I.Pigment Yellow 1,3,74,98、ジスアゾ顔料系のC.I.Pigment Yellow 12,13,14,16,17,83、総合アゾ系のC.I.Pigment Yellow 93,94,95,128,155、ベンズイミダゾロン系のC.I.Pigment Yellow 120,151,154,156,180など、なかでも好ましいものはベンジジン系化合物を原料に使用しなもの)、イソインドリン・イソインドリノン系顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Yellow 109,110,137,139など)、キノフタロン顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Yellow 138など)、フラパントロン顔料(例えばC.I.Pigment Yellow 24など)が好ましく用いられる。
【0206】
ブラック顔料としては、無機顔料(好ましくは例としてはカーボンブラック、マグネタイト)やアニリンブラックを好ましいものとして挙げることができる。
この他、オレンジ顔料(C.I.Pigment Orange 13,16など)や緑顔料(C.I.Pigment Green 7など)を使用してもよい。
【0207】
本発明におけるインク組成物に使用できる顔料は、上述の裸の顔料であってもよいし、表面処理を施された顔料でもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート、ジアゾニウム塩から生じるラジカルなど)を顔料表面に結合させる方法などが考えられ、次の文献や特許に記載されている。
(1)金属石鹸の性質と応用(幸書房)
(2)印刷インキ印刷(CMC出版 1984)
(3)最新顔料応用技術(CMC出版 1986)
(4)米国特許5,554,739号、同5,571,311号
(5)特開平9−151342号、同10−140065号、同10−292143号、同11−166145号
特に、上記(4)の米国特許に記載されたジアゾニウム塩をカーボンブラックに作用させて調製された自己分散性顔料や、上記(5)の日本特許に記載された方法で調製されたカプセル化顔料は、インク中に余分な分散剤を使用することなく分散安定性が得られるため特に有効である。
【0208】
本発明で用いるインク組成物においては、顔料はさらに分散剤を用いて分散されていてもよい。分散剤は、用いる顔料に合わせて公知の種々のもの、例えば界面活性剤型の低分子分散剤や高分子型分散剤を用いることができる。分散剤の例としては特開平3−69949号、欧州特許549486号等に記載のものを挙げることができる。また、分散剤を使用する際に分散剤の顔料への吸着を促進するためにシナジストと呼ばれる顔料誘導体を添加してもよい。
本発明に使用できる顔料の粒径は、分散後で0.01〜10μmの範囲であることが好ましく、0.05〜1μmであることが更に好ましい。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造時に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、縦型あるいは横型のアジテーターミル、アトライター、コロイドミル、ボールミル、3本ロールミル、パールミル、スーパーミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、ダイナトロン、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986)に記載がある。
【0209】
本発明においてインク組成物に用いられる水溶性染料としては特開2002−371214号公報に記載のマゼンタ染料、特開2002−309118号公報に記載のフタロシアニン染料、特開2003−12952号及び同2003−12956号公報中の水溶性フタロシアニン染料等に記載の染料を用いることも好ましい。
【0210】
本発明で用いられるインク組成物は、水性媒体中に染料を含有させることによって作製することができる。この染料を含有させる手段としては、好ましくは、溶解および/または分散させることが挙げられる。本発明における「水性媒体」とは、水、もしくは水に必要に応じて水混和性有機溶剤などの溶剤を添加したものを意味する。
【0211】
本発明において用いることができる上記水混和性有機溶剤は、当該分野ではインクジェット記録用インクの乾燥防止剤、浸透促進剤、湿潤剤などの機能を有する材料であり、主に高沸点の水混和性有機溶媒が使用される。このような化合物としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングルコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)およびその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が挙げられる。尚、前記水混和性有機溶剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0212】
この中でも、アルコール系溶媒が特に好ましい。また、本発明ではインク組成物に沸点150℃以上の水混和性有機溶剤を含むことが好ましく、例えば、上記した中から選択される2−ピロリドン等が挙げられる。
これらの水混和性有機溶剤は、総量でインク組成物中に5〜60質量%含有することが好ましく、特に好ましくは10〜45質量%である。
【0213】
本発明においてインク組成物を調液する際には、前記染料が水溶性の場合、まず水に溶解することが好ましい。そのあと、各種溶剤や添加物を添加し、溶解、混合して均一なインク組成物とする。
このときの溶解方法としては、攪拌による溶解、超音波照射による溶解、振とうによる溶解等種々の方法が使用可能である。中でも特に攪拌法が好ましく使用される。攪拌を行う場合、当該分野では公知の流動攪拌や反転アジターやディゾルバを利用した剪断力を利用した攪拌など、種々の方式が利用可能である。一方では、磁気攪拌子のように、容器底面との剪断力を利用した攪拌法も好ましく利用できる。
【0214】
本発明では、インク組成物に界面活性剤を含有させ、その液物性を調整することで、その吐出安定性を向上させ、画像の耐水性の向上や印字した滲みの防止などに優れた効果を持たせることができる。
界面活性剤としては、例えばドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルオキシスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、セチルピリジニウムクロライド、トリメチルセチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤や、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤などが挙げられる。中でも特にノニオン系界面活性剤が好ましく使用される。
【0215】
界面活性剤の含有量はインク組成物に対して0.001〜20質量%、好ましくは0.005〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量である。
【0216】
前記染料が油溶性染料の場合は、該油溶性染料を高沸点有機溶媒中に溶解させ、水性媒体中に乳化分散させることによって調製することができる。
本発明のインク組成物に用いられる高沸点有機溶媒の沸点は150℃以上であるが、好ましくは170℃以上である。
例えば、フタル酸エステル類(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロへキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、デシルフタレート、ビス(2,4−ジ−tert−アミルフェニル)イソフタレート、ビス(1,1−ジエチルプロピル)フタレート)、リン酸又はホスホンのエステル類(例えば、ジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ジオクチルブチルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルフェニルホスフェート)、安息香酸エステル酸(例えば、2−エチルヘキシルベンゾエート、2,4−ジクロロベンゾエート、ドデシルベンゾエート、2−エチルヘキシル−p−ヒドロキシベンゾエート)、アミド類(例えば、N,N−ジエチルドデカンアミド、N,N−ジエチルラウリルアミド)、アルコール類またはフェノール類(イソステアリルアルコール、2,4−ジ−tert−アミルフェノールなど)、脂肪族エステル類(例えば、コハク酸ジブトキシエチル、コハク酸ジ−2−エチルヘキシル、テトラデカン酸2−ヘキシルデシル、クエン酸トリブチル、ジエチルアゼレート、イソステアリルラクテート、トリオクチルシトレート)、アニリン誘導体(N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−tert−オクチルアニリンなど)、塩素化パラフィン類(塩素含有量10%〜80%のパラフィン類)、トリメシン酸エステル類(例えば、トリメシン酸トリブチル)、ドデシルベンゼン、ジイソプロピルナフタレン、フェノール類(例えば、2,4−ジ−tert−アミルフェノール、4−ドデシルオキシフェノール、4−ドデシルオキシカルボニルフェノール、4−(4−ドデシルオキシフェニルスルホニル)フェノール)、カルボン酸類(例えば、2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ酪酸、2−エトキシオクタンデカン酸)、アルキルリン酸類(例えば、ジ−2(エチルヘキシル)リン酸、ジフェニルリン酸)などが挙げられる。高沸点有機溶媒は油溶性染料に対して質量比で0.01〜3倍量、好ましくは0.01〜1.0倍量で使用できる。
これらの高沸点有機溶媒は単独で使用しても、数種の混合〔例えばトリクレジルホスフェートとジブチルフタレート、トリオクチルホスフェートとジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジブチルフタレートとポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)〕で使用してもよい。
【0217】
本発明におけるインク組成物において用いられる高沸点有機溶媒の前記以外の化合物例及び/またはこれら高沸点有機溶媒の合成方法は例えば米国特許第2,322,027号、同第2,533,514号、同第2,772,163号、同第2,835,579号、同第3,594,171号、同第3,676,137号、同第3,689,271号、同第3,700,454号、同第3,748,141号、同第3,764,336号、同第3,765,897号、同第3,912,515号、同第3,936,303号、同第4,004,928号、同第4,080,209号、同第4,127,413号、同第4,193,802号、同第4,207,393号、同第4,220,711号、同第4,239,851号、同第4,278,757号、同第4,353,979号、同第4,363,873号、同第4,430,421号、同第4,430,422号、同第4,464,464号、同第4,483,918号、同第4,540,657号、同第4,684,606号、同第4,728,599号、同第4,745,049号、同第4,935,321号、同第5,013,639号、欧州特許第276,319A号、同第286,253A号、同第289,820A号、同第309,158A号、同第309,159A号、同第309,160A号、同第509,311A号、同第510,576A号、東独特許第147,009号、同第157,147号、同第159,573号、同第225,240A号、英国特許第2,091,124A号、特開昭48−47335号、同50−26530号、同51−25133号、同51−26036号、同51−27921号、同51−27922号、同51−149028号、同52−46816号、同53−1520号、同53−1521号、同53−15127号、同53−146622号、同54−91325号、同54−106228号、同54−118246号、同55−59464号、同56−64333号、同56−81836号、同59−204041号、同61−84641号、同62−118345号、同62−247364号、同63−167357号、同63−214744号、同63−301941号、同64−9452号、同64−9454号、同64−68745号、特開平1−101543号、同1−102454号、同2−792号、同2−4239号、同2−43541号、同4−29237号、同4−30165号、同4−232946号、同4−346338号等に記載されている。
上記高沸点有機溶媒は、油溶性染料に対し、質量比で0.01〜3.0倍量、好ましくは0.01〜1.0倍量で使用する。
【0218】
本発明のインク組成物では油溶性染料や高沸点有機溶媒は、水性媒体中に乳化分散して用いられる。乳化分散の際、乳化性の観点から場合によっては低沸点有機溶媒を用いることができる。低沸点有機溶媒としては、常圧で沸点約30℃以上150℃以下の有機溶媒である。例えばエステル類(例えばエチルアセテート、ブチルアセテート、エチルプロピオネート、β−エトキシエチルアセテート、メチルセロソルブアセテート)、アルコール類(例えばイソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、セカンダリーブチルアルコール)、ケトン類(例えばメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、アミド類(例えばジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン)、エーテル類(例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン)等が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0219】
乳化分散は、高沸点有機溶媒と場合によっては低沸点有機溶媒の混合溶媒に染料を溶かした油相を、水を主体とした水相中に分散し、油相の微小油滴を作るために行われる。この際、水相、油相のいずれか又は両方に、界面活性剤、湿潤剤、染料安定化剤、乳化安定剤、防腐剤、防黴剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。
乳化法としては水相中に油相を添加する方法が一般的であるが、油相中に水相を滴下して行く、いわゆる転相乳化法も好ましく用いることができる。なお、染料が水溶性で、添加剤が油溶性の場合にも前記乳化法を適用し得る。
【0220】
乳化分散する際には、種々の界面活性剤を用いることができる。例えば脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。更に、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。
【0221】
また、乳化直後の安定化を図る目的で、上記界面活性剤と併用して水溶性ポリマーを添加することもできる。この水溶性ポリマーは、本発明の重合体であることが好ましいが、本発明の重合体とは別のものであってもよい。水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドやこれらの共重合体が好ましく用いられる。また多糖類、カゼイン、ゼラチン等の天然水溶性ポリマーを用いるのも好ましい。さらに染料分散物の安定化のためには実質的に水性媒体中に溶解しないアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニルエステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、オレフィン類、スチレン類、ビニルエーテル類、アクリロニトリル類の重合により得られるポリビニルやポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリカーボネート等も併用することができる。これらのポリマーは−SO、−COOを含有していること好ましい。これらの実質的に水性媒体中に溶解しないポリマーを併用する場合、高沸点有機溶媒の20質量%以下用いられることが好ましく、10質量%以下で用いられることがより好ましい。
【0222】
乳化分散により油溶性染料や高沸点有機溶媒を分散させて水性インクとする場合、特に重要なのはその粒子サイズのコントロールである。インクジェットにより画像を形成した際の、色純度や濃度を高めるには平均粒子サイズを小さくすることが必須である。体積平均粒径で好ましくは1μm以下、より好ましくは5〜100nmである。
前記分散粒子の体積平均粒径および粒度分布の測定方法には静的光散乱法、動的光散乱法、遠心沈降法のほか、実験化学講座第4版の417〜418ページに記載されている方法を用いるなど、公知の方法で容易に測定することができる。例えば、インク中の粒子濃度が0.1〜1質量%になるように蒸留水で希釈して、市販の体積平均粒径測定機(例えば、マイクロトラックUPA(日機装(株)製))で容易に測定できる。更に、レーザードップラー効果を利用した動的光散乱法は、小サイズまで粒径測定が可能であり特に好ましい。
体積平均粒径とは粒子体積で重み付けした平均粒径であり、粒子の集合において、個々の粒子の直径にその粒子の体積を乗じたものの総和を粒子の総体積で割ったものである。体積平均粒径については「高分子ラテックスの化学(室井 宗一著 高分子刊行会)」の119ページに記載がある。
【0223】
また、粗大粒子の存在も印刷性能に非常に大きな役割を示すことが明らかになった。即ち、粗大粒子がヘッドのノズルを詰まらせる、あるいは詰まらないまでも汚れを形成することによってインクの不吐出や吐出のヨレを生じ、印刷性能に重大な影響を与えることが分かった。これを防止するためには、インクにした時にインク1μl中で5μm以上の粒子を10個以下、1μm以上の粒子を1000個以下に抑えることが重要である。
これらの粗大粒子を除去する方法としては、公知の遠心分離法、精密濾過法等を用いることができる。これらの分離手段は乳化分散直後に行ってもよいし、乳化分散物に湿潤剤や界面活性剤等の各種添加剤を加えた後、インクカートリッジに充填する直前でもよい。
平均粒子サイズを小さくし、且つ粗大粒子を無くす有効な手段として、機械的な乳化装置を用いることができる。
【0224】
乳化装置としては、簡単なスターラーやインペラー撹拌方式、インライン撹拌方式、コロイドミル等のミル方式、超音波方式など公知の装置を用いることができるが、高圧ホモジナイザーの使用は特に好ましいものである。
高圧ホモジナイザーは、米国特許4533254号、特開平6−47264号等に詳細な機構が記載されているが、市販の装置としては、ゴーリンホモジナイザー(A.P.V GAULIN INC.)、マイクロフルイダイザー(MICROFLUIDEX INC.)、アルティマイザー(株式会社スギノマシン)等がある。
また、近年になって米国特許5720551号に記載されているような、超高圧ジェット流内で微粒子化する機構を備えた高圧ホモジナイザーは本発明の乳化分散に特に有効である。この超高圧ジェット流を用いた乳化装置の例として、DeBEE2000(BEE INTERNATIONAL LTD.)があげられる。
【0225】
高圧乳化分散装置で乳化する際の圧力は50MPa以上であり、好ましくは60MPa以上、更に好ましくは180MPa以上である。
例えば、撹拌乳化機で乳化した後、高圧ホモジナイザーを通す等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのは特に好ましい方法である。また、一度これらの乳化装置で乳化分散した後、湿潤剤や界面活性剤等の添加剤を添加した後、カートリッジにインクを充填する間に再度高圧ホモジナイザーを通過させる方法も好ましい方法である。
高沸点有機溶媒に加えて低沸点有機溶媒を含む場合、乳化物の安定性及び安全衛生上の観点から低沸点溶媒を除去するのが好ましい。低沸点溶媒を除去する方法は溶媒の種類に応じて各種の公知の方法を用いることができる。即ち、蒸発法、真空蒸発法、限外濾過法等である。この低沸点有機溶剤の除去工程は乳化直後、できるだけ速やかに行うのが好ましい。
【0226】
なお、インクジェット用インクの調製方法については、特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号の各公報に詳細が記載されていて、本発明のインク組成物の調製にも利用できる。
【0227】
本発明で使用されるインク組成物には、インクに種々の機能を付与するための機能性成分を含有させることができる。例えば、機能性成分としては、前記した各種溶媒、インクの噴射口での乾操による目詰まりを防止するための乾燥防止剤、インクを紙によりよく浸透させるための浸透促進剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、分散剤、分散安定剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤、消泡剤、キレート剤等の各種添加剤が挙げられ、本発明のインク組成物は、これらを適宜選択して適量使用することができる。これら機能性成分は一種の化合物で一つ又は二つ以上の機能を発揮し得るものも含む。従って、以下の機能性成分の配合割合において、機能が重複する場合の機能性成分の取り扱いは、その化合物を各機能性成分に独立に算入させるものとする。
【0228】
本発明に使用される乾燥防止剤としては水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。具体的な例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチルー2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥防止剤は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%含有することが好ましい。
【0229】
本発明に使用される浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク中に10〜30質量%含有すれば充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
【0230】
本発明で画像の保存性を向上させるために使用される紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンゾオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0231】
本発明では、画像の保存性を向上させるために使用される酸化防止剤として、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
【0232】
本発明に使用される防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよびその塩等が挙げられる。これらはインク中に0.02〜5.00質量%使用するのが好ましい。
尚、これらの詳細については「防菌防黴剤事典」(日本防菌防黴学会事典編集委員会編)等に記載されている。
また、防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは、インク中に0.02〜5.00質量%使用するのが好ましい。
【0233】
本発明に使用されるpH調整剤はpH調節、分散安定性付与などの点で好適に使用することができ、25℃でのインクのpHが8〜11に調整されていることが好ましい。pHが8未満である場合は染料の溶解性が低下してノズルが詰まりやすく、11を超えると耐水性が劣化する傾向がある。pH調製剤としては、塩基性のものとして有機塩基、無機アルカリ等が、酸性のものとして有機酸、無機酸等が挙げられる。
塩基性化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸1水素ナトリウムなどの無機化合物やアンモニア水、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ピペリジン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロウンデセン、ピリジン、キノリン、ピコリン、ルチジン、コリジン等の有機塩基を使用することも可能である。
酸性化合物としては、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム等の無機化合物や、酢酸、酒石酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サッカリン酸、フタル酸、ピコリン酸、キノリン酸等の有機化合物を使用することもできる。
【0234】
本発明で使用されるインク組成物の伝導度は0.01〜10S/mの範囲である。中でも好ましい範囲は伝導度が0.05〜5S/mの範囲である。
伝導度の測定方法は、市販の飽和塩化カリウムを用いた電極法により測定可能である。
伝導度は主に水系溶液中のイオン濃度によってコントロール可能である。塩濃度が高い場合、限外濾過膜などを用いて脱塩することができる。また、塩等を加えて伝導度調節する場合、種々の有機物塩や無機物塩を添加することにより調節することができる。
無機物塩としては、ハロゲン化物カリウム、ハロゲン化物ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸1水素ナトリウム、ホウ酸、リン酸2水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム等の無機化合物や、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、サッカリン酸カリウム、フタル酸カリウム、ピコリン酸ナトリウム等の有機化合物を使用することもできる。
また、後述される水性媒体の成分を選定することによっても伝導度を調整し得る。
【0235】
本発明で使用されるインク組成物の粘度は、25℃において1〜30mPa・sであることが好ましい。更に好ましくは2〜15mPa・sであり、特に好ましくは2〜10mPa・sである。30mPa・sを超えると記録画像の定着速度が遅くなり、吐出性能も低下する。1mPa・s未満では、記録画像がにじむために品位が低下する。
粘度の調製はインク溶剤の添加量で任意に調製可能である。インク溶剤として例えば、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどがある。
また、粘度調整剤を使用してもよい。粘度調整剤としては、例えば、セルロース類、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーやノニオン系界面活性剤等が挙げられる。更に詳しくは、「粘度調製技術」(技術情報協会、1999年)第9章、及び「インクジェットプリンタ用ケミカルズ(98増補)−材料の開発動向・展望調査−」(シーエムシー、1997年)162〜174頁に記載されている。
【0236】
液体の粘度測定法はJISのZ8803に詳細に記載されているが、市販品の粘度計にて簡便に測定することができる。例えば、回転式では東京計器のB型粘度計、E型粘度計がある。本発明では山一電機の振動式VM−100A−L型により25℃にて測定した。粘度の単位はパスカル秒(Pa・s)であるが、通常はミリパスカル秒(mPa・s)を用いる。
【0237】
本発明で使用されるインク組成物の表面張力は動的・静的表面張力のいずれも、25℃において20〜50mN/mであることが好ましく、20〜40mN/mであることが更に好ましい。表面張力が50mN/mを超えると吐出安定性、混色時のにじみ、ひげ等印字品質が著しく低下する。また、インクの表面張力を20mN/m以下にすると吐出時、ハード表面へのインクの付着等により印字不良となる場合がある。
表面張力を調整する目的で、前記カチオン、アニオン、ノニオン系並びにベタイン系の各種界面活性剤を添加することができる。また、界面活性剤は2種以上を併用することができる。
【0238】
静的表面張力測定法としては、毛細管上昇法、滴下法、吊環法等が知られているが、本発明においては、静的表面張力測定法として、垂直板法を用いている。
ガラスまたは白金の薄い板を液体中に一部分浸して垂直に吊るすと、液体と板との接する長さに沿って液体の表面張力が下向きに働く。この力を上向きの力で釣り合わせて表面張力を測定することが出来る。
【0239】
また、動的表面張力測定法としては、例えば、「新実験化学講座、第18巻、界面とコロイド」[(株)丸善、p.69〜90(1977)]に記載されるように、振動ジェット法、メニスカス落下法、最大泡圧法などが知られており、さらに、特開平3−2064号公報に記載されるような液膜破壊法が知られているが、本発明においては、動的表面張力測定法として、バブルプレッシャー差圧法を用いている。以下、その測定原理と方法について説明する。
【0240】
撹拌して均一となった溶液中で気泡を生成すると、新たな気−液界面が生成され、溶液中の界面活性剤分子が水の表面に一定速度で集まってくる。バブルレート(気泡の生成速度)を変化させたとき、生成速度が遅くなれば、より多くの界面活性剤分子が泡の表面に集まってくるため、泡がはじける直前の最大泡圧が小さくなり、バブルレートに対する最大泡圧(表面張力)が検出出来る。好ましい動的表面張力測定としては、大小二本のプローブを用いて溶液中で気泡を生成させ、二本のプローブの最大泡圧状態での差圧を測定し、動的表面張力を算出する方法を挙げることができる。
【0241】
本発明において用いられるインク組成物中における不揮発性成分は、インク組成物の全量の10〜70質量%であることがインク組成物の吐出安定性やプリント画質、画像の各種堅牢性や印字後の画像の滲みと印字面のべたつき低減の点で好ましく、20〜60質量%であることがインク組成物の吐出安定性や印字後の画像の滲みの低減の点でさらに好ましい。
ここで、不揮発性成分とは、1気圧のもとでの沸点が150℃以上の液体や固体成分、高分子量成分(本発明の重合体を含む)を意味する。インク組成物の不揮発性成分は、染料、高沸点溶媒、必要により添加されるポリマーラテックス、界面活性剤、染料安定化剤、防黴剤、緩衝剤などであり、これら不揮発性成分の多くは、本発明の重合体や染料安定化剤以外ではインク組成物の分散安定性を低下させ、また印字後にも受像材料上に存在するため、受像紙材料の染料の会合による安定化を阻害し、画像部の各種堅牢性や高湿度条件下での画像の滲みを悪化させる性質を有している。
【0242】
本発明で使用されるインク組成物には、高分子量成分を含有することができる。ここで高分子量成分とは、インク組成物中に含まれている数平均分子量が5000以上のすべての高分子化合物を指す。これらの高分子化合物としては水性媒体中に実質的に溶解する水溶性高分子化合物や、ポリマーラテックス、ポリマーエマルジョンなどの水分散性高分子化合物、さらには補助溶剤として使用する多価アルコールに溶解するアルコール可溶性高分子化合物などが挙げられるが、実質的にインク組成物中に均一に溶解又は分散するものであれば、いずれも本発明における高分子化合物に含まれる。
【0243】
水溶性高分子化合物の具体例としては、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド誘導体等の水溶性高分子、多糖類、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチンなどの天然水溶性高分子、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドやこれらの共重合体などの水性アクリル樹脂、水性アルキッド樹脂,分子内に−SO、−COO基を有し、実質的に水性媒体中に溶解する水溶性高分子化合物が挙げられる。
また、ポリマーラテックスとしては、スチレン−ブタジエンラテックス、スチレン−アクリルラテックスやポリウレタンラテックスなどが挙げられる。さらに、ポリマーエマルジョンとしては、アクリルエマルジョンなどが挙げられる。
これらの水溶性高分子化合物は単独でも2種以上併用して用いることもできる。
【0244】
水溶性高分子化合物は、すでに述べたように粘度調整剤として、吐出特性の良好な粘度領域にインク組成物の粘度を調節するために使用されるが、その添加量が多いとインク組成物の粘度が高くなってインク組成物の吐出安定性が低下し、インク組成物が経時したときに沈殿物によってノズルがつまり易くなる。
粘度調整剤の高分子化合物の添加量は、添加する化合物の分子量にもよるが(高分子量のものほど添加量は少なくて済む)、インク組成物全量に対して添加量を0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは0〜1質量%である。
この粘度調整剤の高分子化合物は、本発明の重合体であることができるが、本発明の重合体とは別のものであってもよい。
【0245】
また本発明では分散剤、分散安定剤として上述のカチオン、アニオン、ノニオン系並びにベタイン系の各種界面活性剤、消泡剤としてフッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も必要に応じて使用することができる。
【0246】
本発明に好適に用いられる印字媒体である反射型メディアについて更に説明する。反射型メディアとしては、記録紙及び記録フィルム等が挙げられる。記録紙及び記録フィルムにおける支持体はLBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等からなり、必要に応じて従来の公知の顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、カチオン剤、紙力増強剤等の添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機等の各種装置で製造されたもの等が使用可能である。支持体としては、これらの支持体の他に合成紙、プラスチックフィルムシートのいずれであってもよく、支持体の厚みは10〜250μm、坪量は10〜250g/mが望ましい。
支持体にそのまま受像層及びバックコート層を設けて本発明のインクセットの受像材料としてもよいし、デンプン、ポリビニルアルコール等でサイズプレスやアンカーコート層を設けた後、受像層及びバックコート層を設けて受像材料としてもよい。さらに支持体には、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置により平坦化処理を行ってもよい。
支持体としては、両面をポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブテンおよびそれらのコポリマー)やポリエチレンテレフタレートでラミネートした紙およびプラスチックフイルムがより好ましく用いられる。ポリオレフィン中に、白色顔料(例、酸化チタン、酸化亜鉛)または色味付け染料(例、コバルトブルー、群青、酸化ネオジウム)を添加することが好ましい。
【0247】
支持体上に設けられる受像層には、多孔質材料や水性バインダーが含有される。また、受像層には顔料を含むのが好ましく、顔料としては、白色顔料が好ましい。白色顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等の無機白色顔料、スチレン系ピグメント、アクリル系ピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。特に好ましくは、多孔性の白色無機顔料がよく、特に細孔面積が大きい合成非晶質シリカ等が好適である。合成非晶質シリカは、乾式製造法(気相法)によって得られる無水珪酸及び湿式製造法によって得られる含水珪酸のいずれも使用可能である。
【0248】
上記顔料を受像層に含有する記録紙としては、具体的には、特開平10−81064号、同10−119423、同10−157277、同10−217601、同11−348409、特開2001−138621、同2000−43401、同2000−211235、同2000−309157、同2001−96897、同2001−138627、特開平11−91242、同8−2087、同8−2090、同8−2091、同8−2093、同8−174992、同11−192777、特開2001−301314などに開示されたものを用いることができる。
【0249】
受像層に含有される水性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド誘導体等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。これらの水性バインダーは単独または2種以上併用して用いることができる。本発明においては、これらの中でも特にポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールが顔料に対する付着性、インク受容層の耐剥離性の点で好適である。
【0250】
受像層は、顔料及び水性バインダーの他に媒染剤、耐水化剤、耐光性向上剤、耐ガス性向上剤、界面活性剤、硬膜剤その他の添加剤を含有することができる。
【0251】
受像層中に添加する媒染剤は、不動化されていることが好ましい。そのためには、ポリマー媒染剤が好ましく用いられる。
ポリマー媒染剤については、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430号、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号の各明細書に記載がある。特開平1−161236号公報の212〜215頁に記載のポリマー媒染剤を含有する受像材料が特に好ましい。同公報記載のポリマー媒染剤を用いると、優れた画質の画像が得られ、かつ画像の耐光性が改善される。
【0252】
耐水化剤は、画像の耐水化に有効であり、これらの耐水化剤としては、特にカチオン樹脂が望ましい。このようなカチオン樹脂としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン、ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、カチオンポリアクリルアミド等が挙げられる。これらのカチオン樹脂の含有量は、インク受容層の全固形分に対して1〜15質量%が好ましく、特に3〜10質量%であることが好ましい。
【0253】
耐光性向上剤、耐ガス性向上剤としては、フェノール化合物、ヒンダードフェノール化合物、チオエーテル化合物、チオ尿素化合物、チオシアン酸化合物、アミン化合物、ヒンダードアミン化合物、TEMPO化合物、ヒドラジン化合物、ヒドラジド化合物、アミジン化合物、ビニル基含有化合物、エステル化合物、アミド化合物、エーテル化合物、アルコール化合物、スルフィン酸化合物、糖類、水溶性還元性化合物、有機酸、無機酸、ヒドロキシ基含有有機酸、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物、複素環化合物、水溶性金属塩、有機金属化合物、金属錯体等があげられる。
これらの具体的な化合物例としては、特開平10−182621号、特開2001−260519号、特開2000−260519号、特公平4−34953号、特公平4−34513号、特公平4−34512号、特開平11−170686号、特開昭60−67190号、特開平7−276808号、特開2000−94829号、特表平8−512258号、特開平11−321090号等に記載のものがあげられる。
【0254】
界面活性剤は、塗布助剤、剥離性改良剤、スベリ性改良剤あるいは帯電防止剤として機能する。界面活性剤については、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載がある。
界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機フルオロ化合物の例には、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)および固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれる。有機フルオロ化合物については、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭61−20994号、同62−135826号の各公報に記載がある。
【0255】
硬膜剤としては特開平1−161236号公報の222頁、特開平9−263036号、特開平10−119423号、特開2001−310547号に記載されている材料などを用いることができる。
【0256】
その他の受像層に添加される添加剤としては、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、pH調整剤、マット剤等が挙げられる。尚、インク受容層は1層でも2層でもよい。
【0257】
記録紙及び記録フィルムには、バックコート層を設けることもでき、この層に添加可能な成分としては、白色顔料、水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0258】
バックコート層に含有される水性バインダーとしては、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0259】
インクジェット記録紙及び記録フィルムの構成層(バック層を含む)には、ポリマー微粒子分散物を添加してもよい。ポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止のような膜物性改良等の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、同62−136648号、同62−110066号の各公報に記載がある。ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマー微粒子分散物をバック層に添加しても、カールを防止できる。
【0260】
本発明のインクセットは、インクジェット記録以外の用途に使用することもできる。例えば、ディスプレイ画像用材料、室内装飾材料の画像形成材料および屋外装飾材料の画像形成材料などに使用が可能である。
【0261】
ディスプレイ画像用材料としては、ポスター、壁紙、装飾小物(置物や人形など)、商業宣伝用チラシ、包装紙、ラッピング材料、紙袋、ビニール袋、パッケージ材料、看板、交通機関(自動車、バス、電車など)の側面に描画や添付した画像、ロゴ入りの洋服、等各種の物を指す。本発明のインクセットをディスプレイ画像の形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像の他、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能なパターンをすべて含む。
【0262】
室内装飾材料としては、壁紙、装飾小物(置物や人形など)、照明器具の部材、家具の部材、床や天井のデザイン部材等各種の物を指す。本発明のインクセットを画像形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像の他、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能な染料によるパターンをすべて含む。
【0263】
屋外装飾材料としては、壁材、ルーフィング材、看板、ガーデニング材料屋外装飾小物(置物や人形など)、屋外照明器具の部材等各種の物を指す。本発明のインクセットを画像形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像のみならず、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能なインク組成物によるパターンをすべて含む。
【0264】
以上のような用途において、パターンが形成されるメディアとしては、紙、繊維、布(不織布も含む)、プラスチック、金属、セラミックス等種々の物を挙げることができる。染色形態としては、媒染、捺染、もしくは反応性基を導入した反応性染料の形で色素を固定化することもできる。この中で、好ましくは媒染形態で染色されることが好ましい。
【0265】
本発明で使用されるインク組成物の製造では、染料などの添加物の溶解工程等に超音波振動を加えることもできる。
超音波振動とは、インク組成物が記録ヘッドで加えられる圧力によって気泡を発生することを防止するため、記録ヘッドで受けるエネルギーと同等かそれ以上の超音波エネルギーを予めインク組成物の製造工程中に加えて気泡を除去しておくものである。
超音波振動は、通常、振動数20kHz以上、好ましくは40kHz以上、より好ましくは50kHzの超音波である。また超音波振動により液に加えられるエネルギーは、通常、2×10J/m以上、好ましくは5×10J/m以上、より好ましくは1×10J/m以上である。また、超音波振動の付与時間としては、通常、10分〜1時間程度である。
超音波振動を加える工程は、染料を媒体に投入以降であれば何時行っても効果を示す。完成後のインクを一旦保存した後に超音波振動を加えても効果を示す。しかし、染料を媒体中に溶解及び/又は分散する際に超音波振動を付加することが、気泡除去の効果がより大きく、尚且つ超音波振動により色素の媒体への溶解及び/又は分散が促進されるので好ましい。
即ち、上記少なくとも超音波振動を加える工程は、染料を媒体中に溶解及び/又は分散する工程中でもその工程後であってもいずれの場合にも行うことができる。換言すれば、上記少なくとも超音波振動を加える工程は、インク組成物調製後に製品となるまでの間に任意に1回以上行うことができる。
実施の形態としては媒体中に溶解及び/又は分散する工程は、前記染料を全媒体の一部分の媒体に溶解する工程と、残余の媒体を混合する工程とを有することが好ましく、上記少なくともいずれかの工程に超音波振動を加えることが好ましく、染料を全媒体の一部分の媒体に溶解する工程に少なくとも超音波振動を加えることが更に好ましい。
上記残余の溶媒を混合する工程は、単独工程でも複数工程でもよい。
また、本発明によるインク組成物製造に加熱脱気あるいは減圧脱気を併用することは、インク組成物中の気泡除去の効果を上げるので好ましい。加熱脱気工程あるいは減圧脱気工程は、残余の媒体を混合する工程と同時またはその後に実施することが好ましい。
超音波振動を加える工程における、超音波振動発生手段としては、超音波分散機等の公知の装置が挙げられる。
【0266】
インク組成物を作製する際には、さらに調液した後に行われる、濾過により固形分であるゴミを除く工程が重要である。この作業には濾過フィルターを使用するが、このときの濾過フィルターとは、有効径が1μm以下、好ましくは0.3μm以下0.05μm以上、特に好ましくは0.3μm以下0.25μm以上のフィルターを用いる。フィルターの材質としては種々のものが使用できるが、特に水溶性染料のインクの場合には、水系の溶媒用に作製されたフィルターを用いるのが好ましい。中でも特にゴミの出にくい、ポリマー材料で作製されたフィルターを用いるのが好ましい。濾過法としては送液によりフィルターを通過させてもよいし、加圧濾過、減圧濾過のいずれの方法も利用可能である。
この濾過後には溶液中に空気を取り込むことが多い。この空気に起因する泡もインクジェット記録において画像の乱れの原因となることが多いため、前述の脱泡工程を別途設けることが好ましい。脱泡の方法としては、濾過後の溶液を静置してもよいし、市販の装置などを用いた超音波脱泡や減圧脱泡等種々の方法が利用可能である。超音波による脱泡の場合は、好ましくは30秒〜2時間、より好ましくは5分〜1時間程度脱泡操作を行うとよい。
これらの作業は、作業時におけるゴミの混入を防ぐため、クリーンルームもしくはクリーンベンチなどのスペースを利用して行うことが好ましい。本発明では特にクリーン度としてクラス1000以下のスペースにおいてこの作業を行うことが好ましい。ここで「クリーン度」とは、ダストカウンターにより測定される値を指す。
【0267】
本発明におけるインク組成物の記録材料上への打滴体積は0.1pl以上100pl以下である。打滴体積の好ましい範囲は0.5pl以上50pl以下であり、特に好ましい範囲は2pl以上50pl以下である。
【0268】
本発明では、本発明のインクセットを使用して、インクジェットプリンターにより画像記録を行う方法であれば、インクジェットの記録方式に制限はなく、公知の方式、例えば静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット)方式等に用いられる。
インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。インクの打滴体積の制御は主にプリントヘッドにより行われる。
【0269】
例えばサーマルインクジェット方式の場合、プリントヘッドの構造で打滴体積を制御することが可能である。すなわち、インク室、加熱部、ノズルの大きさを変えることにより、所望のサイズで打滴することができる。またサーマルインクジェット方式であっても、加熱部やノズルの大きさが異なる複数のプリントヘッドを持たせることで、複数サイズの打滴を実現することも可能である。
ピエゾ素子を用いたドロップオンデマンド方式の場合、サーマルインクジェット方式と同様にプリントヘッドの構造上打滴体積を変えることも可能であるが、後述するようにピエゾ素子を駆動する駆動信号の波形を制御することにより、同じ構造のプリントヘッドで複数のサイズの打滴を行うことができる。
【0270】
インク組成物を、記録材料へ打滴するときの吐出周波数は1kHz以上であることが好ましい。
写真のように、高画質の画像を記録するためには、小さいインク滴で鮮鋭度の高い画像を再現するため、打滴密度を600dpi(1インチあたりのドット数)以上とする必要がある。
一方、インクを複数のノズルを有するヘッドで打滴するにあたり、記録紙とヘッドが互いに直交する方向に移動して記録するタイプでは同時に駆動できるヘッドの数は数十から200程度であり、ラインヘッドと呼ばれるヘッドが固定されたタイプでも数百であるという制約がある。これは駆動電力に制約があることや、ヘッドでの発熱が画像に影響を及ぼすため、多数のヘッドノズルを同時に駆動できないためである。
ここで駆動周波数を高くすることにより、記録速度を上げることが可能である。
打滴周波数を制御するには、サーマルインクジェット方式の場合、ヘッドを加熱するヘッド駆動信号の周波数を制御することで可能である。
ピエゾ方式の場合、ピエゾを駆動する信号の周波数を制御することで可能である。
ピエゾヘッドの駆動に関して説明する。プリントすべき画像信号はプリンタ制御部により、打滴サイズ、打滴速度、打滴周波数が決定され、プリントヘッドを駆動する信号が作成される。駆動信号はプリントヘッドに供給される。ピエゾを駆動する信号により打滴サイズ、打滴速度、打滴周波数が制御される。ここで打滴サイズと打滴速度は駆動波形の形状と振幅で決定され、周波数は信号の繰返し周期で決定される。
この打滴周波数を10kHzに設定すると、100マイクロ秒ごとにヘッドは駆動され、400マイクロ秒で1ラインの記録が終了する。記録紙の移動速度を400マイクロ秒に1/600インチすなわち約42ミクロン移動するように設定することにより、1.2秒に1枚の速度でプリントすることが出来る。
【0271】
本発明に用いる印刷装置の構成、プリンタの構成に関しては、たとえば特開平11−170527に開示されるような様態が好適である。また、インクカートリッジに関しては、たとえば特開平5−229133に開示されるものが好適である。吸引およびその際に印字ヘッドを覆うキャップ等の構成に関しては、たとえば特開平7−276671に開示されるものが好適である。また、ヘッド近傍には特開平9−277552に開示されるような気泡を排除するためのフィルターを備えることが好適である。
また、ノズルの表面は特開2002−292878号公報に記載されるような撥水処理を施すことが好適である。用途としては、コンピューターと接続されるプリンタであってもよいし、写真をプリントすることに特化した装置であってもよい。
本発明に適用されるインクジェット記録方法は、インクを記録材料へ打滴するときの平均打滴速度が2m/sec以上、好ましくは5m/sec以上であることが好ましい。
打滴速度を制御するには、ヘッドを駆動する波形の形状と振幅を制御することにより行う。
また複数の駆動波形を使い分けることにより、同じヘッドで複数のサイズの打滴を行うことができる。
【実施例】
【0272】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、以下の例で用いる染料を以下に示す。
【0273】
【化26】

【0274】
(実施例1)
下記の成分に抵抗値18MΩ以上の超純水を加え1リッターとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過して、色濃度の異なるマゼンタ用インク(M−101)およびライトマゼンタ用インク(LM−101)を調製した。尚、配合量は、調製後のインク濃度を示す。
【0275】
〔マゼンタインク(M−101)処方〕
(固形分) 配合量
マゼンタ色素(MD−1) 30g/l
尿素 15g/l
プロキセル(AVECIA(株) 製) 5g/l
(液体成分)
ジエチレングリコール(DEG) 115g/l
グリセリン(GR) 145g/l
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TGB) 135g/l
トリエタノールアミン 8g/l
サーフィノールSTG(日信化学工業(株) 製) 10g/l
【0276】
〔ライトマゼンタインク(LM−101処方〕
(固形分)
マゼンタ色素(MD−1) 10g/l
尿素 10g/l
プロキセル(AVECIA(株) 製) 5g/l
(液体成分)
ジエチレングリコール(DEG) 105g/l
グリセリン(GR) 125g/l
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TGB) 105g/l
トリエタノールアミン 8g/l
サーフィノールSTG(日信化学工業(株) 製) 10g/l
【0277】
マゼンタ用インク(M−101)およびライトマゼンタ用インク(LM−101)からなるインクセットを101とする。この101に対して、下記表1の通りに添加物を加えた以外は、全く同じ組成のインクによるインクセット102〜116をそれぞれ作製した。
【0278】
【表1】

【0279】
これらのインクをセイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−G800のマゼンタインクカートリッジ、ライトマゼンタインクカートリッジにそれぞれ装填し、その他の色のインクはPM−G800のインクを用いて、階段状に濃度の変化したマゼンタの単色画像を印字させた。受像シートは富士写真フイルム(株)製インクジェットペーパー写真画質出力用メディア「画彩」に画像を印刷し、吐出安定性ならびに画像堅牢性の評価を行った。
【0280】
<インク吐出安定性評価法>
インクの吐出安定性に関しては、以下の方法により行った。
インクカートリッジを装填したプリンタを、下記4条件の環境下に48時間放置した。その後、A4サイズに編集したSCIDの標準画像No.5を20枚出力した。
画像出力後、ノズルチェックパターンを印字させ、M,LMのチェックパターンを観察し、下記の評価を行った。
【0281】
(1)環境条件:
40℃−80%RH
40℃−20%RH
5℃−80%RH
5℃−20%RH
(2)ノズルチェックパターンの評価基準:
A:すべてのノズルで不吐出なし
B:不吐出ノズル5個以下
C:不吐出ノズル5個以上
D:不吐出がひどく、ほとんど印字できない
【0282】
<画像堅牢性評価実験法>
画像保存性については、階段状に濃度が変化した、ステップ状のマゼンタ単色画像印字サンプルを作製し、以下の評価を行った。
(1)光堅牢性は印字直後の画像濃度CiをX−rite 310にて測定した後、アトラス社製ウェザーメーターを用い画像にキセノン光(8万5千ルックス)を20日照射した後、再び画像濃度Cfを測定し染料残存率(100×Cf/Ci)を求め評価を行った。染料残像率について反射濃度が0.7、1.0、1.5の3点にて評価し、いずれの濃度でも染料残存率が75%以上の場合をA、2点が75%未満の場合をB、全ての濃度で75%未満の場合をCとした。
(2)熱堅牢性については、80℃70%RHの条件下に20日間、試料を保存する前後での濃度を、X−rite 310にて測定し染料残存率を求め評価した。染料残像率について反射濃度が0.7、1.0、1.5の3点にて評価し、いずれの濃度でも染料残存率が90%以上の場合をA、2点が90%未満の場合をB、全ての濃度で90%未満の場合をCとした。
(3)耐オゾン性については、前記画像を形成したメディアを、オゾンガス濃度が5ppmに設定されたボックス内に7日間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。尚、前記反射濃度は0.7、1.0、1.5の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。
何れの濃度でも色素残存率が80%以上の場合をA、少なくとも1点が80%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をC、すべての濃度で50%未満の場合をDとして、4段階で評価した。
得られた結果を表2に示す。
【0283】
【表2】

【0284】
本発明のインクセットでは、吐出安定性を劣化させることなく、光堅牢性ならびに耐オゾン性に大きな進歩が認められていることがわかる。
【0285】
(実施例2)
次に、カートリッジを変更した場合における、吐出安定性に関して試験した。実施例1のインクセットの各インクを、CL−760のカートリッジに充填する際に、800hPaまで減圧状態にした上で吐出口を密閉したもの(X)と、大気圧条件下で密閉したもの(Y)をそれぞれ作製した。また、使用するスポンジとして、ウレタン樹脂からなるスポンジと、ポリエチレンからなるスポンジを用いたものをそれぞれ作製した。
【0286】
<吐出安定性試験法>
吐出安定性については、カートリッジをプリンターにセットし、全ノズルからのインクの吐出を確認した後、プリンタを35℃80%RH、35℃10%RH、10℃80%RH、10℃20%RHの4条件で、カートリッジを交換しながら、A4サイズでマゼンタの階段パターンが印字された単色画像を合計200枚出力し、以下の基準で評価した。
A:全環境条件で印刷開始から終了まで印字の乱れ無し
B:1つの環境条件で印字の乱れのある出力が発生する
C:2つ以上の環境条件で印字の乱れのある出力が発生する
【0287】
【表3】

【0288】
表3の結果から、(1)減圧状態にした上で吐出口を密閉したもの(X)とウレタン樹脂からなるスポンジ(ウレタン)の組み合わせ、(2)大気圧条件下で密閉したもの(Y)とウレタンの組み合わせ、またはXとポリエチレンからなるスポンジ(ポリエチレン)の組み合わせ、(3)Yとポリエチレンの組み合わせの順に吐出安定性に優れることが分かる。
【0289】
(実施例3)
下記の成分に抵抗値18MΩ以上の超純水を加え1リッターとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過して、色濃度の異なるシアン用インク(C−201)ならびにライトシアン用インク(LC−201)を調製した。尚、配合量は、調製後のインク濃度を示す。
【0290】
〔シアンインク(C−201)処方〕
(固形分) 配合量
シアン色素(CD−1) 50g/l
尿素 25g/l
プロキセル(AVECIA(株) 製) 5g/l
(液体成分)
ジエチレングリコール(DEG) 120g/l
グリセリン(GR) 135g/l
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TGB) 110g/l
2−ピロリドン(PRD) 30g/l
トリエタノールアミン 8g/l
サーフィノールSTG(日信化学工業(株) 製) 10g/l
〔ライトシアンインク(LC−201)処方〕
(固形分) 配合量
シアン色素(CD−1) 17g/l
尿素 15g/l
プロキセル(AVECIA(株) 製) 5g/l
(液体成分)
ジエチレングリコール(DEG) 110g/l
グリセリン(GR) 135g/l
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TGB) 100g/l
2−ピロリドン(PRD) 20g/l
トリエタノールアミン 8g/l
サーフィノールSTG(日信化学工業(株) 製) 10g/l
【0291】
シアン用インク(C−201)およびライトシアン用インク(LC−201)からなるインクセットを201とする。この201に対して、下記表4の通りに添加物を加えた以外は、全く同じ組成のインクによるインクセット202〜216をそれぞれ作製した。
【0292】
【表4】

【0293】
これらのインクをセイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−G800のシアンインクカートリッジ、ライトシアンインクカートリッジにそれぞれ装填し、その他の色のインクはPM−G800のインクを用いて、階段状に濃度の変化したシアンの単色画像を印字させた。受像シートは富士写真フイルム(株)製インクジェットペーパー写真画質出力用メディア「画彩」に画像を印刷し、吐出安定性ならびに画像堅牢性の評価を行った。
【0294】
<インク吐出安定性評価法>
インクの吐出安定性に関しては、以下の方法により行った。
インクカートリッジを装填したプリンタを、下記4条件の環境下に48時間放置した。その後、A4サイズに編集したSCIDの標準画像No.5を20枚出力した。
画像出力後、ノズルチェックパターンを印字させ、C,LCのチェックパターンを観察し、下記の評価を行った。
【0295】
(1)環境条件:
40℃−80%RH
40℃−20%RH
5℃−80%RH
5℃−20%RH
(2)ノズルチェックパターンの評価基準:
A:すべてのノズルで不吐出なし
B:不吐出ノズル5個以下
C:不吐出ノズル5個以上
【0296】
<画像堅牢性評価実験法>
画像保存性については、階段状に濃度が変化した、ステップ状のシアン単色画像印字サンプルを作製し、以下の評価を行った。
(1)光堅牢性は印字直後の画像濃度CiをX−rite 310にて測定した後、アトラス社製ウェザーメーターを用い画像にキセノン光(8万5千ルックス)を20日照射した後、再び画像濃度Cfを測定し染料残存率(100×Cf/Ci)を求め評価を行った。染料残像率について反射濃度が0.7、1.0、1.5の3点にて評価し、いずれの濃度でも染料残存率が90%以上の場合をA、2点が90%未満の場合をB、全ての濃度で90%未満の場合をCとした。
(2)熱堅牢性については、80℃70%RHの条件下に20日間、試料を保存する前後での濃度を、X−rite 310にて測定し染料残存率を求め評価した。染料残像率について反射濃度が0.7、1.0、1.5の3点にて評価し、いずれの濃度でも染料残存率が90%以上の場合をA、2点が90%未満の場合をB、全ての濃度で90%未満の場合をCとした。
(3)耐オゾン性については、前記画像を形成したメディアを、オゾンガス濃度が5ppmに設定されたボックス内に5日間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。尚、前記反射濃度は0.7、1.0、1.5の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。
何れの濃度でも色素残存率が80%以上の場合をA、少なくとも1点が80%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をC、すべての濃度で50%未満の場合をDとして、4段階で評価した。
得られた結果を表5に示す。
【0297】
【表5】

【0298】
本発明のこのインクセットにおいても、吐出安定性を劣化させることなく、光堅牢性ならびに耐オゾン性に大きな進歩が認められていることがわかる。
【0299】
(実施例3)
下記の成分に抵抗値18MΩ以上の超純水を加え1リッターとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過して、色濃度の異なるマゼンタ用インク(M−301)およびフォトマゼンタ用インク(LM−301)を調製した。尚、配合量は、調製後のインク濃度を示す。
【0300】
〔マゼンタインク(M−301)処方〕
(固形分) 配合量
マゼンタ色素(MD−2) 30g/l
尿素 25g/l
プロキセル(AVECIA(株) 製) 5g/l
(液体成分)
ジエチレングリコール(DEG) 65g/l
グリセリン(GR) 95g/l
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TGB) 55g/l
イソプロパノール(IPA) 30g/l
トリエタノールアミン 8g/l
サーフィノールSTG(日信化学工業(株) 製) 10g/l
【0301】
〔フォトマゼンタインク(LM−301処方〕
(固形分) 配合量
マゼンタ色素(MD−2) 10g/l
尿素 20g/l
プロキセル(AVECIA(株) 製) 5g/l
(液体成分)
ジエチレングリコール(DEG) 60g/l
グリセリン(GR) 90g/l
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TGB) 45g/l
イソプロパノール(IPA) 30g/l
トリエタノールアミン 8g/l
サーフィノールSTG(日信化学工業(株) 製) 10g/l
【0302】
マゼンタ用インク(M−301)およびフォトマゼンタ用インク(LM−301)からなるインクセットを301とする。この301に対して、下記表6の通りに添加物を加えた以外は、全く同じ組成のインクによるインクセット302〜316をそれぞれ作製した。
【0303】
【表6】

【0304】
これらのインクをキャノン社製インクジェットプリンターPIXUS 990iのマゼンタインクカートリッジ、フォトマゼンタインクカートリッジにそれぞれ装填し、その他の色のインクはPIXUS 990iのインクを用いて、階段状に濃度の変化したマゼンタの単色画像を印字させた。受像シートは富士写真フイルム(株)製インクジェットペーパー写真画質出力用メディア「画彩」に画像を印刷し、吐出安定性ならびに画像堅牢性の評価を行った。
【0305】
<インク吐出安定性評価法>
インクの吐出安定性に関しては、以下の方法により行った。
インクカートリッジを装填したプリンタを、下記4条件の環境下に48時間放置した。その後、A4サイズに編集したSCIDの標準画像No.5を20枚出力した。
画像出力後、ノズルチェックパターンを印字させ、M,LMのチェックパターンを観察し、下記の評価を行った。
【0306】
(1)環境条件:
40℃−80%RH
40℃−20%RH
5℃−80%RH
5℃−20%RH
(2)ノズルチェックパターンの評価基準:
A:すべてのノズルで不吐出なし
B:不吐出ノズル5個以下
C:不吐出ノズル5個以上
【0307】
<画像堅牢性評価実験法>
画像保存性については、階段状に濃度が変化した、ステップ状のマゼンタ単色画像印字サンプルを作製し、以下の評価を行った。
(1)光堅牢性は印字直後の画像濃度CiをX−rite 310にて測定した後、アトラス社製ウェザーメーターを用い画像にキセノン光(8万5千ルックス)を20日照射した後、再び画像濃度Cfを測定し染料残存率(100×Cf/Ci)を求め評価を行った。染料残像率について反射濃度が0.7、1.0、1.5の3点にて評価し、いずれの濃度でも染料残存率が75%以上の場合をA、2点が75%未満の場合をB、全ての濃度で75%未満の場合をCとした。
(2)熱堅牢性については、80℃70%RHの条件下に20日間、試料を保存する前後での濃度を、X−rite 310にて測定し染料残存率を求め評価した。染料残像率について反射濃度が0.7、1.0、1.5の3点にて評価し、いずれの濃度でも染料残存率が80%以上の場合をA、2点が80%未満の場合をB、全ての濃度で80%未満の場合をCとした。
(3)耐オゾン性については、前記画像を形成したメディアを、オゾンガス濃度が5ppmに設定されたボックス内に7日間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。尚、前記反射濃度は0.7、1.0、1.5の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。
何れの濃度でも色素残存率が80%以上の場合をA、少なくとも1点が80%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をC、すべての濃度で30%未満の場合をDとして、4段階で評価した。
得られた結果を表7に示す。
【0308】
【表7】

【0309】
本発明のこのインクセットにおいても、吐出安定性を劣化させることなく、光堅牢性ならびに耐オゾン性に大きな進歩が認められていることがわかる。
【0310】
(実施例4)
下記の成分に抵抗値18MΩ以上の超純水を加え1リッターとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過して、色濃度の異なるシアン用インク(C−401)ならびにライトシアン用インク(LC−401)を調製した。尚、配合量は、調製後のインク濃度を示す。
【0311】
〔シアンインク(C−401)処方〕
(固形分) 配合量
シアン色素(CD−2) 50g/l
尿素 25g/l
プロキセル 5g/l
(液体成分)
ジエチレングリコール(DEG) 65g/l
グリセリン(GR) 100g/l
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TGB) 55g/l
イソプロパノール(IPA) 30g/l
2−ピロリドン(PRD) 15g/l
トリエタノールアミン 8g/l
サーフィノールSTG 10g/l
〔ライトシアンインク(LC−401)処方〕
(固形分) 配合量
シアン色素(CD−2) 17g/l
尿素 15g/l
プロキセル 5g/l
(液体成分)
ジエチレングリコール(DEG) 50g/l
グリセリン(GR) 90g/l
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TGB) 45g/l
イソプロパノール(IPA) 30g/l
2−ピロリドン(PRD) 10g/l
トリエタノールアミン 8g/l
サーフィノールSTG 10g/l
【0312】
シアン用インク(C−401)およびライトシアン用インク(LC−401)からなるインクセットを401とする。この401に対して、下記表8の通りに添加物を加えた以外は、全く同じ組成のインクによるインクセット402〜416をそれぞれ作製した。
【0313】
【表8】

【0314】
これらのインクをキャノン社製インクジェットプリンターPIXUS 990iのシアンインクカートリッジ、フォトシアンインクカートリッジにそれぞれ装填し、その他の色のインクはPIXUS 990iのインクを用いて、階段状に濃度の変化したシアンの単色画像を印字させた。受像シートは富士写真フイルム(株)製インクジェットペーパー写真画質出力用メディア「画彩」に画像を印刷し、吐出安定性ならびに画像堅牢性の評価を行った。
【0315】
<インク吐出安定性評価法>
インクの吐出安定性に関しては、以下の方法により行った。
インクカートリッジを装填したプリンタを、下記4条件の環境下に48時間放置した。その後、A4サイズに編集したSCIDの標準画像No.5を20枚出力した。
画像出力後、ノズルチェックパターンを印字させ、C,LCのチェックパターンを観察し、下記の評価を行った。
【0316】
(1)環境条件:
40℃−80%RH
40℃−20%RH
5℃−80%RH
5℃−20%RH
(2)ノズルチェックパターンの評価基準:
A:すべてのノズルで不吐出なし
B:不吐出ノズル5個以下
C:不吐出ノズル5個以上
【0317】
<画像堅牢性評価実験法>
画像保存性については、階段状に濃度が変化した、ステップ状のシアン単色画像印字サンプルを作製し、以下の評価を行った。
(1)光堅牢性は印字直後の画像濃度CiをX−rite 310にて測定した後、アトラス社製ウェザーメーターを用い画像にキセノン光(8万5千ルックス)を20日照射した後、再び画像濃度Cfを測定し染料残存率(100×Cf/Ci)を求め評価を行った。染料残像率について反射濃度が0.7、1.0、1.5の3点にて評価し、いずれの濃度でも染料残存率が90%以上の場合をA、2点が90%未満の場合をB、全ての濃度で90%未満の場合をCとした。
(2)熱堅牢性については、80℃70%RHの条件下に20日間、試料を保存する前後での濃度を、X−rite 310にて測定し染料残存率を求め評価した。染料残像率について反射濃度が0.7、1.0、1.5の3点にて評価し、いずれの濃度でも染料残存率が90%以上の場合をA、2点が90%未満の場合をB、全ての濃度で90%未満の場合をCとした。
(3)耐オゾン性については、前記画像を形成したメディアを、オゾンガス濃度が5ppmに設定されたボックス内に5日間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。尚、前記反射濃度は0.7、1.0、1.5の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。
何れの濃度でも色素残存率が80%以上の場合をA、少なくとも1点が80%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をC、すべての濃度で30%未満の場合をDとして、4段階で評価した。
得られた結果を表9に示す。
【0318】
【表9】

【0319】
本発明のこのインクセットにおいても、吐出安定性を劣化させることなく、光堅牢性ならびに耐オゾン性に大きな進歩が認められていることがわかる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一色相領域であるインク組成物を2種以上有してなるインクセットであり、前記インク組成物が少なくとも染料を含み、かつ、前記インク組成物の少なくとも1種に、質量平均分子量3000以上の抗酸化性重合体を少なくとも一種含有するインクセットにおいて、前記インクセットが同一色相領域であるインク組成物をn種有してなり、且つ、n番目のインク組成物の色濃度をa、該インク組成物中に含まれる前記抗酸化性重合体の含有量をb(b≧0)としたときに、各インク組成物の色濃度(各々a〜a)と該インク組成物に含まれる前記抗酸化性重合体の含有量(各々b〜b)とが、a<a・・・<a、且つ、b>b≧・・・≧bを満たすことを特徴とするインクセット。
【請求項2】
同一色相領域であるインク組成物を2種以上有してなるインクセットであり、前記インク組成物が少なくとも染料を含み、かつ、前記インク組成物の少なくとも1種に、質量平均分子量3000以上の会合促進性重合体を少なくとも一種含有するインクセットにおいて、前記インクセットが同一色相領域であるインク組成物をn種有してなり、且つ、n番目のインク組成物の色濃度をa、該インク組成物中に含まれる前記会合促進性重合体の含有量をb(b≧0)としたときに、各インク組成物の色濃度(各々a〜a)と該インク組成物に含まれる前記会合促進性重合体の含有量(各々b〜b)とが、a<a・・・<a、且つ、b>b≧・・・≧bを満たすことを特徴とするインクセット。
【請求項3】
同一色相領域であるインク組成物を2種以上有してなるインクセットであり、前記インク組成物が少なくとも染料を含み、かつ、前記インク組成物の少なくとも1種に、質量平均分子量3000以上のアミン性重合体を少なくとも一種含有するインクセットにおいて、前記インクセットが同一色相領域であるインク組成物をn種有してなり、且つ、n番目のインク組成物の色濃度をa、該インク組成物中に含まれる前記アミン性重合体の含有量をb(b≧0)としたときに、各インク組成物の色濃度(各々a〜a)と該インク組成物に含まれる前記アミン性重合体の含有量(各々b〜b)とが、a<a・・・<a、且つ、b>b≧・・・≧bを満たすことを特徴とするインクセット。
【請求項4】
前記抗酸化性重合体、会合促進性重合体、及びアミン性重合体が、ポリマー分散物であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクセット。
【請求項5】
前記抗酸化性重合体、会合促進性重合体、及びアミン性重合体のガラス転移温度(Tg)が、−50〜100℃の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載のインクセット。
【請求項6】
前記抗酸化性重合体、会合促進性重合体、及びアミン性重合体が、水溶性ポリマーであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクセット。
【請求項7】
前記染料が、芳香族複素環基を少なくとも2つ以上有する染料を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のインクセット。
【請求項8】
色濃度の低いインク組成物から形成された画像の方が、色濃度の高いインク組成物から形成された画像に比べて、光堅牢性に優れたものであることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のインクセット。
【請求項9】
色濃度の低いインク組成物に含まれる染料の方が、色濃度の高いインク組成物に含まれる染料に比べて、光堅牢性に優れたものであることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のインクセット。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載のインクセットを含有することを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項11】
請求項1〜9の何れかに記載のインクセットを含有することを特徴とするインクジェット記録用インクカートリッジ。
【請求項12】
前記インクジェット記録用インクカートリッジのインク装填室内の圧力が、インク使用前は大気圧よりも低圧に保たれていることを特徴とする請求項11記載のインクジェット記録用インクカートリッジ。
【請求項13】
前記インクジェット記録用インクカートリッジ内にスポンジを含むことを特徴とする請求項11または12記載のインクジェット記録用インクカートリッジ。
【請求項14】
前記スポンジはウレタン系ポリマーからなることを特徴とする請求項11〜13の何れかに記載のインクジェット記録用インクカートリッジ。


【公開番号】特開2006−89669(P2006−89669A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279035(P2004−279035)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】