説明

インクセットおよびこれを用いた液滴吐出装置

【課題】顔料インクおよび染料インクが混合された場合であっても、顔料インクに含まれる顔料の分散性が良好なインクセットを提供する。
【解決手段】インクセットは、水、顔料および前記顔料の対イオンとして第1金属イオンを含有する第1インクと、水、下記一般式(1)で表される染料および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する第2インクと、を有し、前記第1金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセットおよびこれを用いた液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、色材として顔料または染料を含有するインクが知られている。色材として顔料を含有する顔料インクは、滲みが少なく、耐水性や耐光性が良好であるという点から、特に、文字等の記録に好ましく用いられる。また、色材として染料を含有する染料インクは、光沢性および発色性が良好であり、色彩が鮮明であるという点から、特に、画像等の記録に好ましく用いられる。
【0003】
上記のような特性を備えた顔料インクおよび染料インクを併用すると、被記録媒体に記録される文字および画像の両方の記録品質が優れたものとなる。このような理由から、近年、顔料インクおよび染料インクの両方を備えたインクセットが広く用いられている。
【0004】
ところで、顔料インクおよび染料インクを備えたインクセットをインクジェット記録装置に適用した場合に、インクを吐出するためのノズル孔を備えたノズル面において、顔料インクおよび染料インクが混合される場合がある。このような場合、顔料インク中の顔料の分散性が染料インクによって破壊され、顔料が凝集する場合がある。特に、ノズル面をクリーニングするために設けられたワイプ部材によってノズル面をクリーニングした際に、顔料の凝集物によってノズル孔が塞がれて、インクの吐出安定性を低下させてしまう場合があった。また、ノズル面に付着した顔料の凝集物が記録媒体上に落下してしまうという不具合が発生することがあった。
【0005】
このような顔料の凝集を低減させるために、特許文献1には、染料インクにラクタム構造を有するポリマーを添加することが記載されている。また、特許文献2には、顔料インクおよび染料インクに含まれるカウンターイオン(対イオン)の量を規定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−84136号公報
【特許文献2】特開2006−2094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術では、顔料インク及び染料インクが混合された際に、顔料の分散破壊を十分に抑制することができず、顔料の凝集が起こる場合があった。特に、耐候性(例えば、耐光性および耐ガス性)等の特性を向上させるために改良された特定の染料を含有する染料インクを用いた場合に、当該染料インクと顔料インクとが混合されると、顔料の分散性が著しく低下する場合があった。
【0008】
本発明のいくつかの態様にかかる目的の1つは、顔料インクおよび染料インクが混合された場合であっても、顔料インクに含まれる顔料の分散性が良好なインクセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]
本発明に係るインクセットの一態様は、
水、顔料および前記顔料の対イオンとして第1金属イオンを含有する第1インクと、
水、下記一般式(1)で表される染料および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する第2インクと、
を有し、
下記(条件1)または(条件2)に記載の前記第1金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]は、下記(条件3)または(条件4)に記載の前記第2金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]よりも大きい。
(条件1)前記第1金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件2)前記第1金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
(条件3)前記第2金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件4)前記第2金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
【0011】
【化1】

(式(1)中、
破線で表される環A乃至Dは、それぞれ独立にポルフィラジン環に縮環したベンゼン環又は6員環の含窒素複素芳香環を表し、含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.00を超えて3.00以下であり、残りはベンゼン環であり、
EはC2−C12アルキレンを表し、
Xは、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、C1−C6アルコキシ基、アミノ基、モノC1−C4アルキルアミノ基、ジC1−C4アルキルアミノ基、モノC6−C10アリールアミノ基、ジC6−C10アリールアミノ基、C1−C3アルキルカルボニルアミノ基、ウレイド基、C1−C6アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、C1−C6アルキルスルホニル基、及びC1−C6アルキルチオ基よりなる群から選択される1種類又は2種類以上の置換基を有しても良い、スルホアニリノ基、カルボキシアニリノ基、ホスホノアニリノ基、スルホナフチルアミノ基、カルボキシナフチルアミノ基又はホスホノナフチルアミノ基であり、
Rは水素原子;スルホ基;カルボキシ基;リン酸基;スルファモイル基;カルバモイル基;ヒドロキシ基;C1−C6アルコキシ基;アミノ基;モノC1−C6アルキルアミノ基;ジC1−C6アルキルアミノ基;モノアリールアミノ基;ジアリールアミノ基;C1−C3アルキルカルボニルアミノ基;ウレイド基;C1−C6アルキル基;ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子;C1−C6アルキルスルホニル基;又はアルキルチオ基;を表し、
基Fはフェニル基;又は、6員含窒素複素芳香環基;を表し、
aは1以上6以下の整数を表し、
bは平均値で0.00以上3.90未満であり、
cは平均値で0.10以上4.00未満であり、
且つb及びcの和は、平均値で1.00以上4.00未満である。)
適用例1のインクセットによれば、第1インクおよび第2インクが混合された場合であっても、第1インクに含まれる顔料の分散性が良好である。
【0012】
[適用例2]
適用例1において、
前記第1金属イオンは、ナトリウムイオンおよびリチウムイオンの少なくとも一方であることができる。
【0013】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記第2金属イオンは、カリウムイオンおよびナトリウムイオンの少なくとも一方であることができる。
【0014】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記一般式(1)において、
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環がそれぞれ独立に、2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環;若しくは、2位及び3位で縮環したピラジン環であり、
Eが直鎖C2−C4アルキレンであり、
Xが、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、C1−C6アルコキシ基、アミノ基、モノC1−C4アルキルアミノ基、ジC1−C4アルキルアミノ基、C1−C3アルキルカルボニルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、C1−C6アルキルスルホニル基、及びC1−C6アルキルチオ基よりなる群から選択される1種類又は2種類の置換基を、0乃至2つ有しても良い、スルホアニリノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びスルファモイル基よりなる群から選択される1種類又は2種類の置換基を0乃至2つ有しても良いカルボキシアニリノ基;ホスホノアニリノ基;若しくは、置換基として、スルホ基及びヒドロキシ基から選択される1種類又は2種類の置換基を0乃至2つ有しても良いスルホナフチルアミノ基;であり、
Rが水素原子;スルホ基;カルボキシ基;C1−C6アルコキシ基;C1−C6アルキル基;又はハロゲン原子;であり、
基Fがフェニル基;又は、Rが水素原子であるピリジル基;であり、
aが1又は2の整数であることができる。
【0015】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか1例において、
前記一般式(1)において、
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で縮環したピリジン環であり、
Eが、エチレンであり、
Xが、置換基としてスルホ基を0又は1つ有しても良いスルホアニリノ基;若しくは、置換基としてスルホ基を2つ有する、スルホナフチルアミノ基であり、
Rが水素原子、スルホ基、又はカルボキシ基であり、
基Fがフェニル基、又は、Rが水素原子であるピリジル基であり、
aが1の整数であり、
bが平均値で0.00以上3.90未満であり、
cが平均値で0.10以上4.00未満であり、
且つb及びcの和は、平均値で1.00以上4.00未満であることができる。
【0016】
[適用例6]
本発明に係る液滴吐出装置の一態様は、
適用例1ないし適用例5のいずれか1例に記載の第1インクおよび第2インクを備えるインクセットと、
前記第1インクおよび前記第2インクを吐出するためのノズル孔を備えたノズル面と、
前記ノズル面を払拭するためのワイプ部材と、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態におけるプリンターの構成を示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドに設けられたノズルの配列を示す概略図。
【図3】本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドの内部構成を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0019】
なお、本発明において、スルホ基、カルボキシ基等の酸性官能基は、特に断りがない限り、遊離酸の形態で表す。
【0020】
本発明において、「Cv−Cwアルキル(基)」(vおよびwは、それぞれ整数である。)とは、v〜w個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。例えば、C1−C4アルキルは、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基のことをいう。アルキル基は、特に断りがない限り、直鎖または分岐鎖のいずれの構造であってもよい。
【0021】
また、「Cv−Cwアルコキシ(基)」、「Cv−Cwアルキルアミノ(基)」、「Cv−Cwアリールアミノ(基)」、「Cv−Cwアルキルカルボニルアミノ(基)」、「Cv−Cwアルキルスルホニル(基)」、「Cv−Cwアルキルチオ(基)」も、「Cv−Cwアルキル(基)」と同様に、v〜w個の炭素原子を含む基を示し、特に断りがない限り、直鎖または分岐鎖のいずれの構造であってもよい。
【0022】
1.インクセット
本発明の一実施形態に係るインクセットは、水、顔料および前記顔料の対イオンとして第1金属イオンを含有する第1インクと、水、下記一般式(1)で表される染料および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する第2インクと、を有し、下記(条件1)または(条件2)に記載の前記第1金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]は、下記(条件3)または(条件4)に記載の前記第2金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]よりも大きいことを特徴とする。
(条件1)前記第1金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件2)前記第1金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
(条件3)前記第2金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件4)前記第2金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
第1金属イオンの極限当量伝導率が、第2金属イオンの極限当量伝導率よりも大きいと、第1インクと第2インクとが混合された際に、第1インクに含有されている顔料の分散性が低下しにくくなる。これにより、本実施形態に係るインクセットを後述する液滴吐出装置に用いた際にも、ノズルの詰まり等による吐出不良の発生を低減することができる。一方、第1金属イオンの極限当量伝導率が、第2金属イオンの極限当量伝導率以下であると、第1インクおよび第2インクが混合された際に、第1インクに含まれる顔料の分散性が低下して、顔料の凝集等が発生する場合がある。
【0023】
金属イオンの極限当量伝導率(Limiting equivalent conductivity;S・cm/eq)とは、無限希釈状態における固有値であり、イオン独立移動の法則で定義される値として知られている。即ち、イオン独立移動の法則において、無限希釈状態における電解質の極限モル伝導率は、陽イオン及び陰イオンの極限モル伝導率の和として表される。無限希釈状態とは、電解質(イオン)が存在しないことを意味するのではなく、溶液中での陽イオン−陰イオン間距離が無限大であり、陽イオンと陰イオンとが相互に影響を及ぼさないことを意味している。なお、金属イオンの当量伝導率(S・cm/eq)とは、当該金属イオンの極限モル伝導率(S・cm/mol)を当該金属イオンの価数で割ったものをいう。
【0024】
金属イオンの極限当量伝導率は、既知のものが多く、具体的には、25℃における極限当量伝導率(S・cm/eq)は、カリウムイオン(K)で73.5、ナトリウムイオン(Na)で50.1、リチウムイオン(Li)で38.7、である(電気化学協会「電気化学便覧 第4版」)。また、金属イオンの極限当量伝導率は、実験的に求めることも可能であり、当量伝導率の濃度変化を測定し、適当な方法を用いて濃度ゼロへの外挿を行うことによって決定することができる。
【0025】
また、第1金属イオンが、2種以上の金属イオンからなる場合には、第1金属イオンの極限当量伝導率を平均の極限当量伝導率とする。平均の極限当量伝導率とは、顔料の対イオンとしてインクに含まれる金属イオンの極限当量伝導率の平均値を示すものである。例えば、m個のXイオンと、n個のYイオンと、の平均の極限当量伝導率は、[(Xイオンの極限当量伝導率)×m+(Yイオンの極限当量伝導率)×n]/(m+n)、により求められる。なお、第2金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合にも、第1金属イオンと同様にして、平均の極限当量伝導率を求めることができる。
【0026】
極限当量伝導率の関係が顔料の凝集に影響する理由については、詳細は明らかになっていないが、以下のメカニズムによるものと考えられる。
【0027】
例えば、第1金属イオンの極限当量伝導率に比べて、第2金属イオンの極限当量伝導率が大きいと、第1インクおよび第2インクが混合された際に、顔料粒子の周囲の導電率が高くなる。つまり、顔料粒子は、極限当量伝導率の高い金属イオンと出会いやすくなる。その結果、顔料周囲の電気二重層が収縮することにより、顔料粒子の粒子間距離が縮まり、顔料の凝集が発生すると考えられる。
【0028】
一方、第1金属イオンの極限当量伝導率に比べて、第2金属イオンの極限当量伝導率が小さいと、顔料粒子の周囲の導電率は上昇しにくい。このような理由から、顔料の凝集が発生しにくくなると考えられる。
【0029】
第1インクは、顔料と第1金属イオンの金属塩を含む。これにより、顔料の分散性が改善し、顔料の凝集が発生しにくくなる。
【0030】
第2インクは、一般式(1)で示される染料と第2金属イオンの金属塩を含む。これにより、染料の溶解性が改善する。
【0031】
1.1.第1インク
本実施形態に係るインクセットは、第1インクを有する。以下、第1インクに含まれる成分について、詳細に説明する。
【0032】
1.1.1.顔料
第1インクは、顔料を含有する。顔料としては、公知の顔料を用いることができるが、自己分散型の顔料であることが好ましい。自己分散型の顔料とは、分散剤なしに水性媒体中に分散することが可能な顔料である。ここで、「分散剤なしに水性媒体中に分散」とは、顔料を分散させるための分散剤を用いなくても、その表面の親水基により、水性媒体中に安定に存在している状態をいう。自己分散型の顔料を用いると、顔料を分散させるための分散剤の使用量を低減できるので、分散剤に起因するインクの発泡を低減でき、吐出安定性の良好なインクが調製しやすい。
【0033】
自己分散型の顔料は、その顔料表面に親水基を有することができる。顔料表面の親水基は、−OM、−COOM、−CO−、−SOM、−SOM、−SONH、−RSOM、−POHM、−PO、−SONHCOR、−NH、および−NR(式中のMは、水素原子、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム、置換基を有していてもよいフェニル基、または有機アンモニウムを表し、Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表す)からなる群から選択される一以上の親水基であることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係る第1インクは、顔料と第1金属イオンの金属塩を含み、第1インクに含まれる顔料は実質的に第1金属イオンの金属塩からなることが好ましい。上述したように、第1インクに含まれる顔料が金属塩構造を有していると、顔料の分散性が改善し、顔料の凝集が発生しにくくなる。
【0035】
顔料の対イオンとして第1インクに含まれる第1金属イオンとしては、カリウムイオンおよびナトリウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。これにより、第1インク中における顔料の分散性を向上させることができる。
【0036】
顔料は、例えば、物理的処理または化学的処理を施すことで、前記親水基を顔料の表面に結合(グラフト)させることにより製造される。前記物理的処理としては、例えば真空プラズマ処理等が例示できる。また前記化学的処理としては、例えば水中で酸化剤により酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法等が例示できる。
【0037】
第1インクをブラック色のインク(以下、「顔料ブラックインク」ともいう。)として用いる場合には、顔料は、次亜ハロゲン酸および/または次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、オゾンによる酸化処理、または過硫酸および/または過硫酸塩による酸化処理により表面処理されたものであることが、高発色という点で好ましい。
【0038】
第1インクをブラック色以外のカラーのインク(以下、「顔料カラーインク」ともいう。)として用いる場合には、顔料は、その表面にフェニル基を介して上記親水基を有するものであることが、高発色という点で好ましい。顔料表面にフェニル基を介して親水基を結合させる表面処理手段としては、種々の公知の表面処理手段を適用することができ、スルファニル酸、p−アミノ安息香酸、4−アミノサリチル酸等を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介して親水基を結合させる方法等が例示できる。
【0039】
顔料ブラックインクに用いられる顔料は、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックの好ましい具体例としては、No.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B(以上三菱化学(株)製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、Printex 30、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250(以上エボニックデグサ社製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700(以上コロンビアカーボン社製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12(キャボット社製)等が挙げられる。これらのカーボンブラックは一種または二種以上の混合物として用いても良い。
【0040】
また、顔料カラーインクに用いられる顔料としては、カラーインデックスに記載されているピグメントレッド、ピグメントバイオレット、ピグメントブルー等の顔料の他、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、縮合環系等の顔料が例示できる。また、橙色228号、405号、青色1号、404号等の有機顔料や酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クローム等の無機顔料が挙げられ、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド1,3,5,8,9,16,17,19,22,38,57:1,90,112,122,123,127、146,184、C.I.ピグメントバイオレッド1,3,5:1,16,19,23,38、C.I.ピグメントブルー1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,16が挙げられる。
【0041】
また、顔料として市販品を利用することも可能であり、例えば、マイクロジェットCW1(オリヱント化学工業株式会社製)、CAB−O−JET250C、CAB−O−JET260M(以上キャボット社製)等が挙げられる。
【0042】
顔料の含有量は、第1インク組成物の全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0043】
また、顔料は、インクの保存安定性やノズルの目詰まり防止等の観点から、その平均粒径が50〜250nmの範囲であることが好ましい。
【0044】
1.1.2.水
本実施形態に係るインク組成物は、水を含有する。水は、上述した顔料を分散もしくは溶解させる主溶媒として機能する。
【0045】
水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液およびこれを用いたインクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0046】
本実施形態に係る第1インクに含有される水は、第1インクの全質量に対して、50質量%以上であることが好ましい。
【0047】
1.1.3.その他の成分
本実施形態に係る第1インクは、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0048】
これらの中でも、ノニオン系界面活性剤は、インクの被記録媒体に対する浸透性および定着性を向上できるとともに、インクジェット記録方法によって被記録媒体上に付着させたインクの液滴の形状を真円に近いものとすることができるので、好ましく用いることができる。
【0049】
また、ノニオン系界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤は、表面張力および界面張力を適正に保つ能力に優れており、かつ起泡性がほとんどないという特性を有する点から、より好ましく用いることができる。アセチレングリコール系界面活性剤としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、または3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は市販品も利用することができ、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
界面活性剤を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0051】
本実施形態に係る第1インクは、浸透促進剤を含有することができる。浸透促進剤は、被記録媒体に対するインクの濡れ性をさらに向上させて均一に塗らす作用を備える。これにより、形成された画像のインクの濃淡ムラや滲みをさらに低減させることができ、画像の発色濃度を一層向上させることができる。浸透促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0052】
浸透促進剤としては、例えば、グリコールエーテル類が挙げられる。グリコールエーテル類は、浸透促進剤としての効果に特に優れる。グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態に係る第1インクに含まれる成分との相溶性に優れている点から、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを好ましく用いることができる。
【0053】
浸透促進剤を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0054】
本実施形態に係る第1インクは、保湿剤を含有することができる。保湿剤としては、例えば、1,2−アルカンジオール類、多価アルコール類、ピロリドン誘導体、尿素類等が挙げられる。保湿剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0055】
1,2−アルカンジオール類は、被記録媒体に対するインクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れているため、被記録媒体上に優れた画像を形成することができる。1,2−アルカンジオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。1,2−アルカンジオール類を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0056】
多価アルコール類は、第1インクをインクジェット記録装置に用いた場合に、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール類を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0057】
ピロリドン誘導体は、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。ピロリドン誘導体としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。ピロリドン誘導体を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0058】
尿素類は、第1インクをインクジェット記録装置に用いた場合に、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。尿素類としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等が挙げられる。尿素類を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0059】
本実施形態に係る第1インクは、pH調整剤を含有することができる。pH調整剤は、第1インクのpH値の調整を容易にすることができる。pH調製剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0060】
pH調整剤としては、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸等)、無機塩基(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリ−iso−プロパノールアミン)、有機酸(例えば、アジピン酸、クエン酸、コハク酸等)等が挙げられる。
【0061】
pH調整剤としては、上記の中でも、有機酸および有機塩基の少なくとも一方を用いることが好ましい。特に、有機酸と有機塩基とを組み合わせて使用する場合には、無機酸と無機塩基、無機酸と有機塩基、有機酸と無機塩基の組み合わせよりもpH緩衝能力が高い。そのため、有機酸と有機塩基とを組み合わせて使用した場合には、pH値の変動を抑制する効果が一層向上して、所望のpHに設定しやすいという効果を奏する。
【0062】
本実施形態に係る第1インクは、さらに、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を含有することができる。本実施形態に係る第1インクは、これらの化合物を含有していると、その特性がさらに向上する場合がある。
【0063】
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
【0064】
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0065】
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)等が挙げられる。
【0066】
1.2.第2インク
本実施形態に係るインクセットは、第2インクを有する。第2インクでは、前述した第1インクに含まれる成分のうち顔料以外の成分を同様に用いることができるので、同様に用いられる成分については、その説明を省略する。
【0067】
1.2.1.染料
(a)染料
本実施形態に係る第2インクは、下記一般式(1)で表される染料(以下、「第1染料」ともいう。)および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する。第1染料は、ポルフィラジン系化合物である。すなわち、テトラベンゾポルフィラジン(通常、フタロシアニンと呼ばれているもの)の4つのベンゾ(ベンゼン)環0個を超えて3個以下を含窒素複素芳香環に置き換えたものである。
【0068】
第1染料は、光の照射を受けたり、大気中のガス(特に、オゾン)に晒されたりしても、分解しにくい性質を備えている。そのため、第2インクを用いて形成された画像は、耐光性、耐ガス性(特に、耐オゾン性)に優れ、光や大気の影響による変色や退色を起こしにくい。また、第1染料は、インク中で分解しにくい性質を備える。そのため、第2インクは、保存安定性に優れたものとなる。
【0069】
なお、耐ガス性等の性能を改良した金属フタロシアニン染料を含むインクを高Duty印刷に用いると、記録された画像に赤浮き現象(いわゆる、ブロンズ現象)が生じることが知られている。しかしながら、第1染料は、耐ガス性に優れているのにもかかわらず、インクに使用された際に記録された画像がブロンズ現象を生じにくいという優れた性質を備えているため好ましく用いることができる。
【0070】
第1染料の含有量は、第2インクの全質量に対して、好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。第1染料の含有量が上記範囲内にあると、記録される画像の発色濃度を向上させたり、耐光性および耐ガス性を向上させたりすることができる。
【0071】
【化1】

【0072】
前記式(1)中、破線で表される環A乃至D(環A、B、C及びDの4つの環)における含窒素複素芳香環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環及びピリダジン環等の窒素原子を1又は2個含む含窒素複素芳香環が挙げられる。これらの中ではピリジン環又はピラジン環が好ましく、ピリジン環がより好ましい。含窒素複素芳香環の個数が増えるにしたがって、耐オゾン性は向上するが、ブロンズ性は生じやすくなる傾向にあり、含窒素複素芳季環の個数は耐オゾン性とブロンズ性を考慮しながら適宜調節し、バランスの良い比率を選択すれば良い。含窒素複素芳香環の個数は複素環の種類にもよるので一概には言えないが、通常平均値で、0.00を超えて3.00以下、好ましくは0.20以上2.00以下、より好ましくは0.50以上1.75以下,更に好ましくは0.75以上1.50以下の範囲である。残りの環A乃至Dはベンゼン環であり、環A乃至Dにおけるベンゼン環は、同様に、通常平均値で、1.00以上4.00未満、好ましくは2.00以上3.80以下、より好ましくは2.25以上3.50以下、更に好ましくは2.50以上3.25以下である。なお、本発明のポルフィラジン系化合物は、環A乃至Dの含窒素複素芳香環の個数を平均値で表していることから明らかなように,複数の化合物の混合物である。
【0073】
また、本明細書においては特に断りの無い限り、該含窒素複素芳香環の個数は、小数点以下3桁目を四捨五入して2桁目までを記載する。但し、例えば含窒素複素芳香環や個数が1.375、ベンゼン環の個数が2.625のとき、両者を四捨五入すると前者が1.38、後者が2.63となり、両者の合計が環A乃至Dの合計の4.00を超えてしまう。このような場合には、便宜上、含窒素複素芳香環側の小数点以下3桁目は切り捨て、ベンゼン環側のみ四捨五入することにより、前者を1.37、後者を2.63として記載する。また、式(1)におけるb及びcについても、後述する通り、原則として小数点以下3桁目を四捨五入して2桁目までを記載するが、同様の場合においては、b側の小数点以下3桁目を切り捨て、c側のみ四捨五入して記載する。
【0074】
前記式(1)中、Eにおけるアルキレンとしては、直鎖、分岐鎖又は環状アルキレンが挙げられ、直鎖又は環状が好ましく、直鎖がより好ましい。炭素数の範囲は、通常C2−C12、好ましくはC2−C6、より好ましくはC2−C4、さらに好ましくはC2−C3である。Eの具体例としてはエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、へプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン等の直鎖のもの;2−メチルエチレン等の分岐鎖のもの;シクロプロピレンジイル、1,2−又は1,3−シクロペンチレンジイル、1,2−、1,3−又は1,4−等の各シクロヘキシレンジイル等の環状のもの;等が挙げられる。好ましくはエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、又はヘキシレンであり、より好ましくはエチレン、プロピレン、又はブチレンであり、さらに好ましくはエチレン又はプロピレンであり、特に好ましくはエチレンである。
【0075】
前記式(1)中、Xは、スルホアニリノ基、カルボキシアニリノ基、ホスホノアニリノ基、スルホナフチルアミノ基、カルボキシナフチルアミノ基又はホスホノナフチルアミノ基を表す。これらのアニリノ基及びナフチルアミノ基におけるスルホ、カルボキシ及びホスホノの置換数は、いずれも1つである。Xの具体例としては、2−スルホアニリノ、3−スルホアニリノ、4−スルホアニリノといったスルホアニリノ基;2−カルボキシアニリノ、3−カルボキシアニリノ、4−カルボキシアニリノといったカルボキシアニリノ基;2−ホスホノアニリノ、3−ホスホノアニリノ、4−ホスホノアニリノといったホスホノアニリノ基;3−スルホ−1−ナフチルアミノ、6−スルホ−1−ナフチルアミノ、8−スルホ−1−ナフチルアミノ、1−スルホ−2−ナフチルアミノ、3−スルホ−2−ナフチルアミノ、4−スルホ−2−ナフチルアミノ、5−スルホ−2−ナフチルアミノ、6−スルホ−2−ナフチルアミノ、7−スルホ−2−ナフチルアミノ、8−スルホ−2−ナフチルアミノ等の、スルホナフチルアミノ基;等が挙げられる。なお「ホスホノ」はリン酸基[−P(O)(OH)]を意味する。これらの中でもXとしては、スルホアニリノ基、カルボキシアニリノ基,ホスホノアニリノ基、又はスルホナフチルアミノ基が好ましく、スルホアニリノ基が特に好ましい。
【0076】
Xにおける前記スルホアニリノ基、カルボキシアニリノ基、ホスホノアニリノ基、スルホナフチルアミノ基、カルボキシナフチルアミノ基又はホスホノナフチルアミノ基は、置換基として、スルホ基;カルボキシ基;リン酸基;スルファモイル基;カルバモイル基;ヒドロキシ基;C1−C6アルコキシ基;アミノ基;モノC1−C4アルキルアミノ基;ジC1−C4アルキルアミノ基;モノアリールアミノ基;ジアリールアミノ基;C1−C3アルキルカルボニルアミノ基;ウレイド基;C1−C6アルキル基;ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子;C1−C6アルキルスルホニル基;及びC1−C6アルキルチオ基;よりなる群から選択される1種類又は2種類以上の基をさらに有する。ここで挙げた、スルホ基からC1−C6アルキルチオ基までの20基の群を、以下、「20基の置換基の群」と簡略して記載する。前記20基の置換基の群から選択される基のXにおける置換数は、通常0〜4つ、好ましくは0〜3つ、より好ましくは0〜2つ、さらに好ましくは0又は1つである。前記20基の置換基の群から選択される基の置換位置は、特に制限されないが、該アニリノ基及びナフチルアミノ基における炭素原子、すなわち前者であればベンゼン環上、後者であればナフタレン環上に置換するのが好ましい。
【0077】
前記20基の置換基の群におけるC1−C6アルコキシ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のものが挙げられ、直鎖又は分岐鎖のものが好ましく、直鎖のものがより好ましい。炭素数の範囲としては通常C1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3のものが挙げられる。具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、n−へキシロキシといった直鎖のもの;イソプロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、イソペンチロキシ、イソへキシロキシ等の分岐鎖のもの;シクロプロポキシ、シクロペントキシ、シクロへキシロキシ等の環状のもの;等が挙げられる。このうちではメトキシ又はエトキシが好ましく、メトキシが特に好ましい。
【0078】
前記20基の置換基の群におけるモノC1−C4アルキルアミノ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、その炭素数の範囲は、通常C1−C4、好ましくはC1−C3である。具体例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、n−ブチルアミノといった直鎖のもの;イソプロピルアミノ、イソブチルアミノ、sec−ブチルアミノ、t−ブチルアミノといった分岐鎖のもの;等が挙げられる。これらの中ではメチルアミノが好ましい。
【0079】
前記20基の置換基の群におけるジC1−C4アルキルアミノ基としては、前記モノアルキルアミノ基で挙げたアルキル部分を、独立に2つ有するジアルキルアミノ基が挙げられる。具体例としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ等が挙げられる。これらの中ではジメチルアミノが好ましい。
【0080】
前記20基の置換基の群におけるモノアリールアミノ基としては、モノC6−C10芳香族アミノ基、好ましくはフェニルアミノ基又はナフチルアミノ基、より好ましくはフェニルアミノ基が挙げられる。
【0081】
前記20基の置換基の群におけるジアリールアミノ基としては、前記モノアリールアミノ基で挙げたアリールを、独立に2つ有するジアリールアミノ基が挙げられる。好ましくは同一のアリール、より好ましくはフェニルを2つ有するものが挙げられ、具体例としてはジフェニルアミノが挙げられる。
【0082】
前記20基の置換基の群におけるC1−C3アルキルカルボニルアミノ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、メチルカルボニルアミノ(アセチルアミノ)、エチルカルボニルアミノ、n−プロピルカルボニルアミノといった直鎖のもの;イソプロピルカルボニルアミノといった分岐鎖のもの;が挙げられる。これらの中ではアセチルアミノが好ましい。
【0083】
前記20基の置換基の群におけるC1−C6アルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3アルキル基が挙げられる。これらの中でも、直鎖又は分岐鎖のものが好ましく、直鎖のものがより好ましい。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−へキシルといった直鎖のもの;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、イソへキシル等の分岐鎖のもの;シクロプロピル、シクロペンチル、シクロへキシル等の環状のもの;等が挙げられる。これらの中ではメチルが好ましい。
【0084】
前記20基の置換基の群におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0085】
前記20基の置換基の群におけるC1−C6アルキルスルホニル基としては、直鎖又は分岐鎖のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3アルキルスルホニル基が挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、メタンスルホニル(メチルスルホニル)、エタンスルホニル(エチルスルホニル)、n−プロパンスルホニル(n−プロピルスルホニル)、n−ブチルスルホニル、n−ペンチルスルホニル、n−へキシルスルホニル等の直鎖のもの;イソプロピルスルホニル、イソブチルスルホニル等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。これらの中ではメチルスルホニルが好ましい。
【0086】
前記20基の置換基の群におけるC1−C6アルキルチオ基としては、直鎖又は分岐鎖のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3アルキルチオ基が挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、n−ブチルチオ、n−ペンチルチオ、n−へキシルチオ等の直鎖のもの;イソプロピルチオ、イソブチルチオ、t−ブチルチオ、イソペンチルチオ、イソへキシルチオ等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。これらの中ではメチルチオが好ましい。
【0087】
Xがスルホアニリノ基のとき、前記20基の置換基の群のうち、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、C1−C6アルコキシ基、アミノ基、モノC1−C4アルキルアミノ基、ジC1−C4アルキルアミノ基、C1−C3アルキルカルボニルアミノ基、C1−C6アルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子、C1−C6アルキルスルホニル基、及びC1−C6アルキルチオ基が好ましく、スルホ基が特に好ましい。
【0088】
Xがカルボキシアニリノ基のとき、前記20基の置換基の群のうち、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びスルファモイル基が好ましい。
【0089】
Xがホスホノアニリノ基のとき、前記20基の置換基の群から選択される基は、有しないものが好ましい。
【0090】
Xがスルホナフチルアミノ基のとき、前記20基の置換基の群のうち、スルホ基、及びヒドロキシ基が好ましい。
【0091】
Xがカルボキシナフチルアミノ基、又はホスホノナフチルアミノ基のとき、前記20基の置換基の群から選択される基は、有しないものが好ましい。
【0092】
前記式(1)におけるXの具体例としては、2−スルホアニリノ、3−スルホアニリノ、4−スルホアニリノ、2,4−ジスルホアニリノ、2,5−ジスルホアニリノ等のスルホアニリノ基がさらに0又は1つのスルホ基を有するもの;2−カルボキシ−4−スルホアニリノ、2−カルボキシ−5−スルホアニリノ等の、スルホアニリノ基がさらに1つのカルボキシ基を有するもの(又は、カルボキシアニリノ基がさらに1つのスルホ基を有するもの);4−メトキシ−2−スルホアニリノ、4−エトキシ−2−スルホアニリノ、4−エトキシ−6−スルホアニリノ等の、スルホアニリノ基がさらに1つのC1−C6アルコキシ基を有するもの;3−アミノ−4−スルホアニリノ等の、スルホアニリノ基がさらに1つのアミノ基を有するもの;4−メチルアミノ−5−スルホアニリノ等の、スルホアニリノ基がさらに1つのモノC1−C4アルキルアミノ基を有するもの;4−ジメチルアミノ−5−スルホアニリノ等の、スルホアニリノ基がさらに1つのジC1−C4アルキルアミノ基を有するもの;2−メチル−5−スルホアニリノ、3−メチル−6−スルホアニリノ等の、スルホアニリノ基がさらに1つのC1−C6アルキル基を有するもの;4−アニリノ−3−スルホアニリノ等の、スルホアニリノ基がさらに1つのアリールアミノ基を有するもの;4−アセチルアミノ−2−スルホアニリノ等の、スルホアニリノ基がさらに1つのC1−C3アルキルカルボニルアミノ基を有するもの;2−クロロ−5−スルホアニリノ、3,5−ジクロロ−4−スルホアニリノ等の、スルホアニリノ基がさらに1又は2つのハロゲン原子を有するもの;4−メチルスルホニル−2−スルホアニリノ、4−メチルスルホニル−5−スルホアニリノ、4−へキシルスルホニル−2−スルホアニリノ等の、スルホアニリノ基がさらに1つのC1−C6アルキルスルホニル基を有するもの;4−メチルチオ−2−スルホアニリノ、4−へキシルチオ−2−スルホアニリノ等の、スルホアニリノ基がさらに1つのC1−C6アルキルチオ基を有するもの;3−カルボキシ−4−ヒドロキシ−5−スルホアニリノ、2−ヒドロキシ−5−ニトロ−3−スルホアニリノ、2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホアニリノ、3−メチル−6−メトキシ−4−スルホアニリノ、2−ヒドロキシ−3−アセチルアミノ−5−スルホアニリノ等の、スルホアニリノ基が前記20基の置換基の群から選択される2種類の基を、さらに2つ有するもの;2−カルボキシアニリノ、3−カルボキシアニリノ、4−カルボキシアニリノ、3,5−ジカルボキシアニリノ等の、カルボキシアニリノ基がさらに0又は1つのカルボキシ基を有するもの;4−スルファモイル−2−カルボキシアニリノ等の、カルボキシアニリノ基がさらに1つのスルファモイル基を有するもの;3−カルボキシ−4−ヒドロキシアニリノ等の、カルボキシアニリノ基がさらに1つのヒドロキシ基を有するもの;4−ヒドロキシ−3−スルホ−5−カルボキシアニリノ等の、カルボキシアニリノ基が前記20基の置換基の群から選択される2種類の基を、さらに2つ有するもの;2−ホスホノアニリノ、3−ホスホノアニリノ、4−ホスホノアニリノ等のホスホノアニリノ基;4,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、1,5−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、3,6−ジスルホ−1−ナフチルアミノ、5,7−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、6,8−ジスルホ2−ナフチルアミノ、3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミノ、3,6,8−トリスルホ−2−ナフチルアミノ等の、スルホナフチルアミノ基がさらに1又は2つのスルホ基を有するもの;5−ヒドロキシ−7−スルホ−2−ナフチルアミノ等の、スルホナフチルアミノ基がさらに1つのヒドロキシ基を有するもの;3,6−ジスルホ−8−ヒドロキシ−1−ナフチルアミノ、8−クロロ−3,6−ジスルホナフタレン−1−イルアミノ、6−ニトロ−4,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノ等の、スルホナフチルアミノ基が前記20基の置換基の群から選択される2種類の基を、さらに2つ有するもの;等があげられる。これらのうち、2−スルホアニリノ、3−スルホアニリノ、4−スルホアニリノ、2,4−ジスルホアニリノ、2,5−ジスルホアニリノ、3,6−ジスルホ−1−ナフチルアミノ、5,7−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、6,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミノが好ましく、4−スルホアニリノ、2,5−ジスルホアニリノ、又は3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミノがより好ましく、2,5−ジスルホアニリノがさらに好ましい。
【0093】
前記式(1)中、Rは、水素原子、スルホ基;カルボキシ基;リン酸基;スルファモイル基;カルバモイル基;ヒドロキシ基;C1−C6アルコキシ基;アミノ基;モノC1−C6アルキルアミノ基;ジC1−C6アルキルアミノ基;モノC6−C10アリールアミノ基;ジC6−C10アリールアミノ基;C1−C3アルキルカルボニルアミノ基;ウレイド基;C1−C6アルキル基;ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子;C1−C6アルキルスルホニル基;又は、アルキルチオ基;を表す。
【0094】
前記RにおけるC1−C6アルコキシ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3アルキル基が挙げられる。これらの中でも直鎖又は分岐鎖のものが好ましく、直鎖のものがより好ましい。具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、n−へキシロキシといった直鎖のもの;イソプロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、イソペンチロキシ、イソへキシロキシ等の分岐鎖のもの;シクロプロポキシ、シクロペントキシ、シクロへキシロキシ等の環状のもの;等が挙げられる。これらの中ではメトキシ又はエトキシが好ましく、メトキシが特に好ましい。
【0095】
前記RにおけるモノCl−C4アルキルアミノ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、その炭素数の範囲は通常C1−C4、好ましくはC1−C3である。具体例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、n−ブチルアミノ等の直鎖のもの;イソプロピルアミノ、イソブチルアミノ、sec−ブチルアミノ、t−ブチルアミノ等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
【0096】
前記RにおけるジC1−C4アルキルアミノ基としては、前記モノアルキルアミノ基で挙げたアルキル部分を、独立に2つ有するジアルキルアミノ基が挙げられる。具体例としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ等が挙げられる。
【0097】
前記RにおけるモノC6−C10アリールアミノ基としては、モノC6−C10芳香族アミノ基、好ましくはフェニルアミノ基又はナフチルアミノ基、より好ましくはフェニルアミノ基が挙げられる。
【0098】
前記RにおけるジC6−C10アリールアミノ基としては、前記モノアリールアミノ基で挙げたアリールを、独立に2つ有するジアリ−ルアミノ基が挙げられる。好ましくは同一のアリール、より好ましくはフェニルを2つ有するものが挙げられ、具体例としてはジフェニルアミノが挙げられる。
【0099】
前記RにおけるC1−C3アルキルカルボニルアミノ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、メチルカルボニルアミノ(アセチルアミノ)、エチルカルボニルアミノ、n−プロピルカルボニルアミノといった直鎖のもの;イソプロピルカルボニルアミノといった分岐鎖のもの;が挙げられる。
【0100】
前記RにおけるC1−C6アルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3アルキル基が挙げられる。これらの中でも直鎖又は分岐鎖のものが好ましく、直鎖のものがより好ましい。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−へキシルといった直鎖のもの;イソプロピル、イソブチル、Ssec−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、イソへキシル等の分岐鎖のもの;シクロプロピル、シクロペンチル、シクロへキシル等の環状のもの;等が挙げられる。これらの中ではメチルが好ましい。
【0101】
前記Rにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0102】
前記RにおけるC1−C6アルキルスルホニル基としては、直鎖又は分岐鎖のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3アルキルスルホニル基が挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、メタンスルホニル(メチルスルホニル)、エタンスルホニル(エチルスルホニル)、n−プロパンスルホニル(n−プロピルスルホニル)、n−ブチルスルホニル、n−ペンチルスルホニル、n−へキシルスルホニル等の直鎖のもの;イソプロピルスルホニル、イソブチルスルホニル等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
【0103】
前記RにおけるC1−C6アルキルチオ基としては、直鎖又は分岐鎖のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはCl−C3アルキルチオ基が挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、n−ブチルチオ、n−ペンチルチオ、n−へキシルチオ等の直鎖のもの;イソプロピルチオ、イソブチルチオ、t−ブチルチオ、イソペンチルチオ、イソへキシルチオ等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
【0104】
前記式(1)中、基Fは、フェニル基;又は、6員含窒素複素芳香環基;を表す。6員含窒素複素芳香環基としては、窒素原子を1つ含む含窒素複素芳香環基が挙げられる。具体例としては、ピリジルが挙げられる。該6員含窒素複素芳香環における、「a」でその数を表されるアルキレンとの結合位置は特に制限されないが、窒素原子に隣接する炭素原子で結合するのが好ましい。すなわち、基Fがピリジルのとき、窒素原子の置換位置を1位として、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジルが挙げられ、窒素原子に隣接する炭素原子で結合するもの、すなわち2−ピリジルが好ましい。
【0105】
前記式(1)中、基Fがフェニル基のとき、前記Rのうち、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルキル基、ハロゲン原子が好ましく、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、メトキシ基、メチル基、フッ素原子、塩素原子がより好ましく、水素原子、スルホ基、カルボキシ基がさらに好ましい。
【0106】
前記式(1)中、基Fが6員含窒素複素芳香環基のとき、前記Rのうち、水素原子、又はハロゲン原子が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0107】
前記式(1)中、基FにおけるRの置換位置は特に制限されない。基Fがフェニル基のとき、「(CH)a」との結合位置を1位として、Rの置換位置は2位、3位、又は4位が挙げられ、4位が好ましい。また、基Fが6員含窒素複素芳香環基、好ましくはピリジルのとき、「(CH)a」及びRの結合位置は、ピリジン環の窒素原子を1位として、前者が2位、後者が3位、4位、5位、又ほ6位の組み合わせが挙げられ、前者が2位、後者が4位の組み合わせが好ましい。
【0108】
前記式(1)中、aは、「(CH)」の繰返し数、すなわちアルキレンの長さを表し、通常1−6の整数、好ましくは1−4、より好ましくは1−3、さらに好ましくは1−2、特に好ましくは1の整数である。
【0109】
前記式(1)におけるb、c、並びにb及びcの和は、いずれも平均値である。bは0.00以上3.90未満であり、cは0.10以上4.00未満であり、b及びcの和は平均値で1.00以上4.00未満である。このとき、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環は、平均値で0.00を超えて3.00以下、同様にベンゼン環は1.00以上4.00未満である。好ましくは、A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.20以上2.00以下、ベンゼン環が2.00以上3.80以下のとき、bが0.00以上3.40以下であり、cが0.40以上2.00以下、b及びcの和は、2.00以上3.80以下である。より好ましくは、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.50以上1.75以下、ベンゼン環が2.25以上3.50以下のとき、bが0.35以上3.05以下であり、cが0.45以上1.90以下、b及びcの和は、2.25以上3.50以下である。更に好ましくは、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.75以上1.50以下、ベンゼン環が2.50以上3.25以下のとき、bが0.70以上2.75以下であり、cが0.50以上1.80以下、b及びcの和は、2.50以上3.25以下である。bが大きくなるにつれて、耐オゾン性は向上する傾向にあるが、ブロンズが生じやすくなる傾向にあり、耐オゾン性とブロンズ性を考慮しながら、b、cの数を適宜調節し、バランスの良い比率を選択すれば良い。
【0110】
なお、b及びcでそれぞれの置換数を表される非置換スルファモイル基及び置換スルファモイル基はいずれも、環A乃至Dがベンゼン環である場合に、該ベンゼン環上に置換する基であり、環A乃至Dが6員環の含窒素複素芳香環である場合には置換しない。なお、本明細書においては、b、c、並びに、b及びcの和は、いずれも小数点以下3桁目を四捨五入して、2桁目までを記載する。
【0111】
上記環A乃至D、E、X、R、基F、a、b及びcにおいて、好ましいもの同士を組合せた化合物はより好ましく、より好ましいもの同士を組合せた化合物はさらに好ましい。さらに好ましいもの同士、好ましいものとより好ましいものの組合せ等についても同様である。
【0112】
一般式(1)で表される染料は、分子内に有するスルホ、カルボキシ及びホスホノ等を利用して塩を形成できる。塩を形成するとき、分子内のスルホ基、カルボキシ基及びホスホノ基等は、金属、アンモニア又は有機塩基等の各カチオンと塩を形成することが好ましい。
【0113】
金属としてはアルカリ金属やアルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
【0114】
有機塩基としては、特に有機アミンが挙げられ、例えばメチルアミン、エチルアミン等のC1−C3アルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノノールアミン等のモノ−、ジ−又はトリ−C1−C4アルカノールアミン類が挙げられる。
【0115】
本実施形態に係る第2インクは、一般式(1)で表される染料と第2金属イオンの金属塩を含み、第2インクに含まれる染料は実質的に第2金属イオンの金属塩からなることが好ましい。これにより、染料の溶解性が改善するためである。
【0116】
第1染料の対イオンとして第2インクに含まれる第2金属イオンとしては、ナトリウムイオンおよびリチウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。これにより、第2インク中における第1染料の溶解性を向上させることができる。
【0117】
第1染料として、特に好ましい化合物は、下記(イ)〜(へ)の組み合わせを有する化合物である。(イ)環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環としては、それぞれ独立に、2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環;若しくは、2位及び3位で縮環したピラジン環が好ましい。(ロ)Eとしては、直鎖C2−C4アルキレンが好ましい。(ハ)Xとしては、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、C1−C6アルコキシ基、アミノ基、モノC1−C4アルキルアミノ基、ジC1−C4アルキルアミノ基、C1−C3アルキルカルボニルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、C1−C6アルキルスルホニル基及びアルキルチオ基より成る群から選択される1種類又は2種類の置換基を、0乃至2つ有しても良い、スルホアニリノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びスルファモイル基よりなる群から選択される1種類又は2種類の置換基を0乃至2つ有しても良いカルボキシアニリノ基;ホスホノアニリノ基;若しくは、置換基として、スルホ基及びヒドロキシ基から選択される1種類又は2種類の置換基を0乃至2つ有しても良いスルホナフチルアミノ基;が好ましい。(ニ)Rとしては、水素原子;スルホ基;カルボキシ基;C1−C6アルコキシ基;C1−C6アルキル基;又はハロゲン原子;がこのましい。(ホ)基Fとしては、フェニル基;又は、Rが水素原子であるピリジル基が好ましい。(へ)aとしては、1又は2が好ましい。
【0118】
第1染料における、環A乃至D、E、X、R、及び基Fの具体例、a、b及びcの数を下記表1〜表4に示す。下記の例は、第1染料を具体的に説明するために代表例を示すものであり、第1染料は下記の例に限定されるものではない。また、環A乃至Dの含窒素複素芳香環がピリジン環のとき、後記するように窒素原子の位置異性体等が存在し、第1染料の合成の際には、異性体の混合物として得られる。これら異性体は単難が困難であり、また分析による異性体の特定も困難である。このため通常混合物のまま使用する。本発明の第1染料は、このような混合物をも含むものである。本明細書においては、これらの異性体等を区別することなく、構造式で表示する場合は、便宜的に代表的な一つの構造式を記載する。なお、表中のb及びcの数については、煩雑さを避けるため、小数点以下2桁目を四捨五入して1桁目までを記載した。なお、表1〜表4中、「2,3−ピリド」は2位及び3位でポルフィラジン環に縮環したピリジン環を、「ベンゾ」はポルフィラジン環に縮環したベンゼン環を、「2−ピリジル」は、ピリジン環の窒素原子を1位として、「(CH)a」との結合位置が2位であることを、それぞれ意味する。また、Rにおける「4−クロロ」等については、基Fがフェニル基のときは「(CH)a」との結合位置を1位とした場合;基Fがピリジルのときはピリジン環の窒素原子を1位とした場合;におけるRの置換位置をそれぞれ表す。
【0119】
【表1】

【0120】
【表2】

【0121】
【表3】

【0122】
【表4】

【0123】
第1染料は、通常、他の色素を配合することなく第2インクに用いることができるが、場合により、本発明の効果を阻害しない範囲で公知のシアン系色素と配合して使用してもよい。公知のシアン系色素と配合して使用する場合、配合する色素としてはC.I.ナンバーが付与されているトリフェニルメタン系色素やフタロシアニン系色素などを用いることができるが、フタロシアニン系色素が好ましい。
【0124】
(b)染料の合成方法
以下、第1染料の製造方法を説明する。第1染料は、下記式(2)で表されるポルフィラジン化合物と、下記式(3)で表される有機アミンとを、アンモニア存在下で反応させることにより得ることができる。下記式(2)で表されるポルフィラジン化合物は、いずれも公知の方法又はそれに準じて、下記式(4)で表される化合物を合成した後、これをクロロスルホニル化することにより得ることができる。
【0125】
【化2】

【0126】
【化3】

【0127】
即ち、下記式(4)で表される化合物は、例えば、国際公開第2007/091631号及び国際公開第2007/116933号パンフレットに開示された公知の方法に準じて合成することができる。これらの公知文献は、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の個数が1未満の化合物に関する製造方法を開示していない。しかし、公知のニトリル法又はワイラー法にて合成を行う際に、反応原料として使用する含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体と、フタル酸誘導体の配合比率を変化させることにより、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の個数が1未満である式(4)で表される化合物も合成することができる。なお、得られる式(4)で表される化合物は、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の置換位置、及び含窒素複素芳香環中の窒素原子の置換位置に関する位置異性体の混合物となることも、前記公知文献に記載の通りである。
【0128】
【化4】

【0129】
式(4)中、環A乃至Dは前記式(1)におけるのと同じ意味を表す。
【0130】
式(2)で表されるポルフィラジン化合物は、式(4)で表される化合物の合成と同じ前記国際公開パンフレットに開示された公知の方法に従って、式(4)で表される化合物をクロロスルホニル化することにより得ることができる。式(2)におけるクロロスルホニル基は、環A乃至Dにおけるベンゼン環上に導入され、環A乃至Dが含窒素複素芳香環基に相当する場合には導入されない。ベンゼン環上には通常1つのクロロスルホニル基が導入されるので、式(2)におけるnの数は、環A乃至Dにおけるベンゼン環の数以下である。従って、式(2)におけるクロロスルホニル基の数「n」は、式(2)で表されるポルフィラジン化合物のベンゼン環の数に対応して1.00以上4.00未満である。式(2)で表されるポルフィラジン化合物の別の合成方法としては、予めスルホ基を有するスルホフタル酸とキノリン酸等の含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体とを縮合閉環させることにより、スルホ基を有するポルフィラジン化合物を合成し、その後、該スルホ基を、塩化チオニル等の適当な塩素化剤でクロロスルホニル基へと変換する方法が挙げられる。この場合、合成原料であるスルホフタル酸のスルホ基の置換位置が3位のものと4位のものとを選択することにより、式(2)で表されるポルフィラジン化合物上に導入されるスルホ基の置換位置を制御することができる。即ち、3−スルホフタル酸を用いれば下記式(5)における「α」位に、又、4−スルホフタル酸を用いれば同様に「β」位に、それぞれ選択的にスルホ基を導入することができる。なお本明細書においては特に断りの無い限り、「ポルフィラジン環のα位」又は「ポルフィラジン環のβ位」との用語は、下記式(5)における相当する位置を意味する。
【0131】
【化5】

【0132】
一方、前記式(3)で表される有機アミンも、公知の方法で製造することができる。例えば、Xに対応する置換アニリン又は置換ナフチルアミン類0.9〜1.2モルと、2,4,6−トリクロロ−S−トリアジン(シアヌルクロライド)1モルを、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物により、反応液をおおよそpH1〜5に調整し、0〜40℃、2〜12時間の条件下に反応させて、1次縮合物を得る。次いで、「HN−(CH)a−F−R」なるアミン0.9〜1.5モルを加え、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物により、反応液をおおよそpH5〜10に調整し、5〜80℃、0.5〜12時間反応させることにより2次縮合物を得る。得られた2次縮合物1モルと、Eに対応するアルキレンジアミン類(「HN−E−NH」なるアミン)1〜50モルとを、おおよそpH9〜12、5〜90℃、0.5〜8時間反応させることにより、前記式(4)で表される有機アミンが得られる。各縮合反応のpH調整には、通常水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;等が用いられる。なお、縮合の順序はシアヌルクロライドと縮合する各種化合物の反応性に応じて適宜決めるのが良く、前記の順序に限定されない。
【0133】
式(2)で表されるポルフィラジン化合物と、式(3)で表される有機アミンとの反応は、アンモニア存在下に、水溶媒中で、おおよそpH8〜10、5〜70℃、1〜20時間反応させることにより行われ、目的の式(1)で表される第1染料が得られる。反応に用いられる「アンモニア」は、通常アンモニア水を意味する。しかし、中和や分解により、アンモニアを発生する化学物質であれば、これを用いることができる。アンモニアを発生する化学物質としては、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩の様に中和によりアンモニアを発生するもの;尿素等の熱分解によりアンモニアを発生するもの;アンモニアガス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。該「アンモニア」としてはアンモニア水が好ましく、市販品として入手できる濃アンモニア水(通常は、およそ28%のアンモニア水として市販されている)、又はこれを必要に応じて水により希釈して使用すれば良い。
【0134】
式(3)で表される有機アミンの使用量は、通常式(2)で表されるポルフィラジン化合物1モルに対して、理論値[目的とする第1染料におけるcの値を得るのに必要な、計算上の式(3)で表される有機アミンのモル数]の1モル以上であるが、用いる有機アミンの反応性、反応条件により異なり、これらに限定されるものではない。通常は前記理論値の1〜3モル、好ましくは1〜2モル程度である。
【0135】
また、第1染料は、前記式(2)と、式(3)で表される化合物とから特に無水条件を必要としない反応条件下にて合成される。このため、式(2)におけるクロロスルホニル基が一部、反応系内に混在する水により加水分解を受けてスルホン酸へと変換された化合物が副生し、この結果、該副生物が、第1染料に混入することが理論上考えられる。しかしながら、質量分析において、無置換スルファモイル基とスルホ基とを識別することは困難であり、本発明において式(3)で表される有機アミンと反応させたもの以外の式(2)におけるクロロスルホニル基については、全て無置換スルファモイル基へと変換されたものとして記載する。
【0136】
さらに、第1染料の一部では、2価の連結基(L)を介して、銅ポルフィラジン環(Pz)が2量体(例えばPz−L−Pz)又は3量体を形成した不純物が副生し、反応生成物中に混入することもある。前記Lで表される2価の連結基としては−SO−、−SO−NH−SO−等があり、3量体の場合にはこれら2つのLが組み合わされた副生成物が形成される場合もある。
【0137】
上記のようにして得られる第1染料は、その合成反応における最終工程の反応液から、酸析又は塩析等により析出する固体を濾過分離等により、固体として単離することができる。塩析は、例えば酸性〜アルカリ性、好ましくはpHl〜11の範囲で行うことが好ましい。塩析の際の温度は特に限定されないが、通常40〜80℃、好ましくは50〜70℃に加熱後、塩化ナトリウム等を加えて塩析するのが好ましい。
【0138】
前記の方法で合成される第1染料は、遊離酸又はその塩として得られる。第1染料を遊離酸として単離する方法としては、例えば酸析が挙げられる。また、塩として単離する方法としては、塩析するか、塩析によって所望の塩が得られないときには、例えば得られた塩を遊離酸に変換した後、所望の有機又は無機の塩基を加えて造塩する方法、又は公知の塩交換法等が挙げられる。
【0139】
例として、一般式(1)で表される染料をリチウム塩とする方法を以下に説明する。式(2)で表されるポルフィラジン化合物と、式(3)で表される有機アミンとを反応させた後、塩化ナトリウムを添加して、塩析および濾過分取を行うことで、一般式(1)ので表される染料のナトリウム塩を得る。次に、ナトリウム塩に水および塩酸を添加し酸析および濾過分取を行うことで、一般式(1)で表される染料の遊離酸を得る。さらに、遊離酸に水および水酸化リチウムを添加することで、一般式(1)ので表される染料のリチウム塩を得ることができる。また、リチウム塩とする異なる方法としては、一般式(1)で表される染料のナトリウム塩と、塩化リチウムと、を用いた塩交換反応が挙げられる。
【0140】
1.3.各インクの物性
本実施形態に係るインクセットをインクジェット記録装置に用いる場合において、各インク(第1インクおよび第2インク)の20℃における粘度は、それぞれ、2mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上6mPa・s以下であることがより好ましい。各インクは、20℃における粘度が上記範囲内にあると、ノズルから適量吐出され、飛行曲がりを起こすことや飛散することを一層低減できるので、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。各インクの粘度は、振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持することで測定できる。
【0141】
2.液滴吐出装置
本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置は、上述した第1インクおよび第2インクを備えるインクセットと、第1インクおよび第2インクを吐出するためのノズル孔を備えたノズル面と、ノズル面を払拭するためのワイプ部材と、を有する。
【0142】
以下、本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置について、図1〜図3を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る液滴吐出装置として、インクジェットプリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例示する。
【0143】
図1は、本実施形態におけるプリンター1の構成を示す斜視図である。なお、このプリンター1は、シリアルプリンターを表している。
【0144】
図1に示すように、プリンター1は、インクジェットヘッド2を搭載すると共にインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、インクジェットヘッド2の下方に配設され被記録媒体6が搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を被記録媒体6の媒体幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、被記録媒体6を媒体送り方向に搬送する媒体送り機構8と、を有するものである。加えて、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する制御装置CONTを有している。なお、上記媒体幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記媒体送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
【0145】
インクカートリッジ3は、本実施形態のようにキャリッジ4に装着するものに限らず、これに替えて例えば、プリンター1の筐体側に装着しインク供給チューブを介してインクジェットヘッド2に供給するタイプのものであってもよい。インクカートリッジ3には、それぞれ、第1インク、第2インク、第3インク、第4インクが収容されている。プリンター1のインクセットは、第1インク、第2インク、第3インクおよび第4インクからなる。第3インクおよび第4インクは、第1インクおよび第2インクの少なくとも一方と同様の組成のインクであってもよいし、第1インクおよび第2インクと異なる組成のインクであってもよい。
【0146】
キャリッジ4は、主走査方向に架設された支持部材であるガイドロッド9に支持された状態で取り付けられたものである。また、キャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するものである。
【0147】
リニアエンコーダ10は、キャリッジ4の主走査方向上における位置を信号で検出するものである。この検出された信号は、位置情報として制御装置CONTに送信されるようになっている。制御装置CONTは、このリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいてインクジェットヘッド2の走査位置を認識し、インクジェットヘッド2による記録動作(吐出動作)などを制御するようになっている。また、制御装置CONTは、キャリッジ4の移動速度を可変制御可能な構成となっている。
【0148】
図2は、本実施形態におけるインクジェットヘッド2に設けられたノズル孔17の配列を示す概略図である。
【0149】
図2に示すように、インクジェットヘッド2は、インクを吐出する複数のノズル孔17が設けられたノズル面21Aを有する。インクの吐出面でもあるノズル面21Aには、複数のノズル孔17ごとにノズル列16が形成されている。各ノズル列16においては、例えば異なる組成のインクを吐出可能になっている。本実施形態ではインクの組成に対応して4列、即ちノズル列16(第1インク)、ノズル列16(第2インク)、ノズル列16(第3インク)、およびノズル列16(第4インク)が設けられている。各ノズル列16は、例えば180個のノズル孔17によって構成されている。
【0150】
図3は、本実施形態におけるインクジェットヘッド2の内部構成を示す部分断面図である。
【0151】
図3に示すように、インクジェットヘッド2は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22と、を備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21と、を備えると共に、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31と、を形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33と、を備える。ヘッド本体18には、固定部材26と共に駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28と、が形成される。
【0152】
上記構成、即ちピエゾ式のインクジェットヘッド2によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19が圧力室31に接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル孔17から、インクが吐出される。
【0153】
図1に戻り、インクジェットヘッド2の移動範囲のうちプラテン5の外側の領域には、インクジェットヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、メンテナンスユニット11が設けられている。メンテナンスユニット11は、印字動作以外でインクジェットヘッド2をキャップ部材12でキャッピングしてインクの蒸発を抑制する保湿動作と、インクジェットヘッド2の各ノズル孔17からインクをキャップ部材12に予備吐出させることで増粘インクによるノズル孔17の目詰まり防止やノズル孔17のメニスカスを調整してインクジェットヘッド2から正常にインクを吐出させるフラッシング動作と、キャップ部材12でインクジェットヘッド2をキャッピングした後に不図示の吸引ポンプを駆動させて各ノズル孔17から粘性が高くなったインクや付着したゴミ等を強制吸引してメニスカスを調整し、インクジェットヘッド2から正常にインクを吐出させる吸引動作(ヘッドクリーニング)と、インクジェットヘッド2のノズル面21A(図2参照)をワイプ部材13で払拭(ワイピング)することでノズル孔17近傍に付着したインクや増粘したインク等を除去したり、ノズル孔17のメニスカスを破壊してメニスカスを再調整させるパージ処理を行うワイピング動作と、を実行する構成となっている。
【0154】
第1インクおよび第2インクは、上述した組成からなる。そのため、第1インクおよび第2インクがワイピングによってノズル面21Aで混合されても、顔料の凝集が生じにくくなるので、顔料の凝集物によるノズル孔17の詰まり等を低減できる。その結果、プリンター1は、吐出安定性に良好なものとなる。
【0155】
3.実施例
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0156】
3.1.染料の合成
(製造例1)
後述の工程1〜5により、染料A〜Cの合成を行った。以下、「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。また、反応、晶析等の各操作は、特に断りの無い限り、いずれも撹拌下に行った。また、合成反応に使用した、「商品名 レオコール(登録商標)TD−90、及びTD−50」は、いずれもライオン株式会社製の界面活性剤である。なお、1回の合成反応で目的とする化合物の必要量が得られなかったときは、必要量が得られるまで、同じ反応を繰り返して行った。
【0157】
なお、製造例にて合成した染料は、全て前記のように異性体等を含む混合物であり、収量についても該異性体等を含む。また、特に断りの無い限り、染料における非置換及び置換スルファモイル基の置換位置は、いずれもポルフィラジン環のα位及びβ位に置換したものの混合物である。
【0158】
(工程1)
上記式(4)における環A乃至Dのうち1.20が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り2.80がベンゼン環で表される化合物の合成。
【0159】
スルホラン375部に、無水フタル酸31.11部、キノリン酸15.04部、尿素108部、塩化銅(II)10.1部、及びモリブデン酸アンモニウム1.5部を加え、200℃まで昇温し、同温度で5時間反応させた。反応終了後65℃まで冷却し、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)50部を加え、析出固体を濾過分離した。得られた固体をDMF50部で洗浄し、ウェットケーキ75.1部を得た。得られたウェットケーキをDMF450部に加え、110℃に昇温し、同温度で一時間反応させた。析出固体を濾過分離し、水200部で洗浄しウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを5%塩酸450部中に加え、60℃に昇温し、同温度で1時間撹拌した。析出固体を濾過分離し、水200部で洗浄しウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを5%アンモニア水450部中に加え、60℃で1時間撹拌し、析出固体を濾過分離し、水200部で洗浄し、ウェットケーキ78.6部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、目的化合物24.9部を青色固体として得た。
【0160】
(工程2)
上記式(2)における環A乃至Dのうち1.20が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り2.80がベンゼン環であり、nが2.80である化合物の合成。
【0161】
室温下、クロロスルホン酸46.2部中に、60℃を超えないように上記「工程1」で得た式(4)の化合物5.8部を徐々に加えた後、140℃で4時間反応させた。得られた反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間で滴下し、70℃でさらに3時間反応させた。反応液を30℃以下に冷却し、氷水800部中にゆっくりと注ぎ、析出固体を濾過分離し、冷水200部で洗浄することにより、目的化合物のウェットケーキ38.2部を得た。
【0162】
(工程3)
下記式(6)で表される有機アミンの合成。
【0163】
【化6】

【0164】
氷水100部中に塩化シアヌル18.4部、レオコールTD−90(0.05部)を加え10℃以下で30分間攪拌した。次に2,5−ジスルホアニリン(純度88.4%の市販品を使用)31.7部を加え10%水酸化ナトリウム水溶液でpH2.0〜3.0としながら0〜10℃で2時間、25〜30℃で1時間反応を行った。次に反応液にべンジルアミン10.9部加え、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0〜8.0としながら25〜30℃で1時間、30〜40度で1時間反応を行い、2次縮合物を含む反応液を得た。
【0165】
氷120部にエチレンジアミン60.1部を加えた水溶液に上記のようにして得た2次縮合物を含む反応液を徐々に加え、室温で1時間攪拌した。この溶液に氷150部、濃塩酸200部を加え、pH1.0に調整した。このとき液量は700部であった。この反応液に塩化ナトリウム140部を加え、一晩攪拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ70.0部を得た。得られたウェットケーキを水280部に加え、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0として溶解させた。このとき液量は360部であった。この溶液を濃塩酸でpH1.0に調整し、塩化ナトリウム70部を加え、1晩撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ60.3部を得た。得られたウェットケーキをメタノール255部、水45部の混合溶媒中に加え、50℃で1時間撹拌した後、析出固体を濾過分離しウェットケーキ50.3部を得た。得られたウェットケーキを乾燥させ、目的とする式(6)で表される有機アミン15.3部の白色粉末を得た。
【0166】
(工程4)
下記式(7)で表される染料[下記式(7)における環A乃至Dのうち1.20が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り2.80がベンゼン環である染料]の合成。
【0167】
【化7】

【0168】
氷水200部中に上記「工程2」で得たウェットケーキ38.2部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、「工程3」で得た式(6)の有機アミン7.4部を28%アンモニア水1.5部及び水40部の混合液に溶解した溶液をこの懸濁液に加え、28%アンモニア水でpH9.0を保持しながら反応させた。同pHを保持したまま、20℃まで昇温し、同温度でさらに一晩反応させた。この時の液量は300部であった。
【0169】
反応液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム55.0部を加え10分撹拝した後、濃塩酸にてpH1.0に調整し、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ27.1部を得た。得られたウェットケーキを水191部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0に調整することにより溶液とした。このときの液量は270部であった。この溶液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム54部を加え30分攪拌した後、濃塩酸にてpH4.0に調整し、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ21.4部を得た。得られたウェットケーキにイソプロピルアルコール160部及び水40部の混合液に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ15.7部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、上記式(7)の染料(遊離酸)11.2部を青色粉末として得た。
【0170】
(工程5)式(7)の染料からなる塩の調製
上記のようにして得られた式(7)の染料を常法により処理し、染料A(式(7)の染料のリチウム塩)、染料B(式(7)の染料のナトリウム塩)、染料C(式(7)の染料のカリウム塩)、染料D(式(7)の染料のリチウム塩とナトリウム塩の混合塩)、染料E(式(7)の染料のリチウム塩とカリウム塩の混合塩)を得た。
【0171】
3.2.インクの調製
3.2.1.顔料インクの調製
(1)顔料分散液の調製
顔料としてブラック顔料20質量部、およびイオン交換水80質量部を加えて、混合攪拌した後、サンドミル(安川製作所株式会社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径1.5mm)と共に6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータで分離することにより、顔料分散液を得た。
【0172】
(2)顔料インクの調製
次に、表5に示す配合量で各成分を混合攪拌し、孔径10μmのメンブレンフィルターで加圧濾過を行って、顔料インクAおよび顔料インクBを得た。なお、表5に記載されている単位は、質量%である。
【0173】
また、各顔料インクの粘度を振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持することで測定した。各顔料インクの粘度を表5に併せて記載する。
【0174】
3.2.2.染料インクの調製
表5に示す配合量で各成分を混合攪拌し、孔径1.0μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過を行って、染料インクA、染料インクBおよび染料インクCを得た。
【0175】
また、各染料インクの粘度を振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持することで測定した。各染料インクの粘度を表5に併せて記載する。
【0176】
【表5】

【0177】
表5中の各成分は、以下の通りである。ブラック顔料Aは、エボニックデグザ株式会社製、商品名Printex 30を常法により処理し、カリウム塩としたものを用いた。また、ブラック顔料Bは、エボニックデグザ株式会社製、商品名Printex 30を常法により処理し、ナトリウム塩としたものを用いた。
(顔料)
・ブラック顔料A(カリウム塩)
・ブラック顔料B(ナトリウム塩)
(染料)
・染料A(上記式(7)で表される化合物のリチウム塩)
・染料B(上記式(7)で表される化合物のナトリウム塩)
・染料C(上記式(7)で表される化合物のカリウム塩)
・染料D(上記式(7)で表される化合物のリチウム塩とナトリウム塩の混合塩;Li:Na=8:2)
・染料E(上記式(7)で表される化合物のリチウム塩とカリウム塩の混合塩;Li:K=5:5)
(浸透促進剤)
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル
(保湿剤)
・1,2−ヘキサンジオール
・グリセリン
・トリエチレングリコール
・トリメチロールプロパン
・2−ピロリドン
(界面活性剤)
・アセチレングリコール系界面活性剤A(商品名「オルフィン E1010」、日信化学工業株式会社製)
・アセチレングリコール系界面活性剤B(商品名「サーフィノール 104」、Air Products and Chemicals. Inc.社製)
(pH調整剤)
・トリエタノールアミン
・水酸化カリウム
(水)
・イオン交換水
【0178】
3.3.評価試験
3.3.1.導電率の測定
各顔料インクおよび各染料インクの20℃における導電率を、導電率計DS−52(商品名、株式会社堀場製作所)によって測定した。測定結果を表5に併せて示す。
【0179】
3.3.2.吐出安定性の評価
インクジェットプリンターPX−B500(商品名、セイコーエプソン株式会社製)のノズル列に、各顔料インクおよび各染料インクを充填した。そして、これらのインクのうち、顔料インク1種および染料インク1種を選択して、(a)選択した顔料インクおよび染料インクを用いたチェック印字、(b)ノズル面の吸引動作(ヘッドクリーニング)およびノズル面のワイピング、(c)選択した顔料インクおよび染料インクを用いたチェック印字、(d)インクジェットプリンターの24時間放置、という(a)〜(d)の各操作をこの順に10サイクル行った。
【0180】
その後、選択した顔料インクおよび染料インクをノズルから吐出させて、チェック印字を行い、ノズル抜けおよびインクの飛行曲がりの有無を確認することにより、吐出安定性の評価を行った。評価結果を表6に示す。また、評価基準の分類については、以下のとおりである。
「○」:ノズル抜けおよびインクの飛行曲がりがない
「×」:ノズル抜けまたはインクの飛行曲がりが発生
【0181】
3.4.評価結果
以上の評価試験の結果を表6に示す。
【0182】
【表6】

【0183】
表6の実施例1〜4のインクセットは、いずれも顔料インクに含まれる金属イオン(第1金属イオン)の極限当量伝導率が染料インクに含まれる金属イオン(第2金属イオン)の極限当量伝導率よりも大きい。そのため、吐出安定性試験により、ノズル抜けや飛行曲がりがないことが示された。これにより、顔料インクおよび染料インクが混合されても、顔料の凝集が生じにくいことが示された。
【0184】
一方、表6の比較例1〜4のインクセットは、いずれも顔料インクに含まれる金属イオン(第1金属イオン)の極限当量伝導率が染料インクに含まれる金属イオン(第2金属イオン)の極限当量伝導率以下である。そのため、吐出安定性試験において、ノズル抜けや飛行曲がりが発生した。これにより、顔料インクおよび染料インクの混合により、顔料の凝集が生じていることが示された。なお、顔料の凝集は、ノズル面のワイピング時に多く発生したほか、染料インクの吐出時における染料インクの飛沫が顔料インクを吐出するノズル孔に付着することによっても発生した。
【0185】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0186】
1…プリンター、2…インクジェットヘッド、3…インクカートリッジ、4…キャリッジ、5…プラテン、6…被記録媒体、7…キャリッジ移動機構、8…媒体送り機構、9…ガイドロッド、10…リニアエンコーダ、11…メンテナンスユニット、12…キャップ部材、13…ワイプ部材、16…ノズル列、17…ノズル孔、18…ヘッド本体、19…振動板、20…流路基板、21…ノズル基板、21A…ノズル面、22…流路形成ユニット、23…収容空間、24…駆動ユニット、25…圧電素子、26…固定部材、27…ケーブル、28…内部流路、29…共通インク室、30…インク供給口、31…圧力室、32…島部、33…コンプライアンス部、CONT…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、顔料および前記顔料の対イオンとして第1金属イオンを含有する第1インクと、
水、下記一般式(1)で表される染料および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する第2インクと、
を有し、
下記(条件1)または(条件2)に記載の前記第1金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]は、下記(条件3)または(条件4)に記載の前記第2金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]よりも大きい、インクセット。
(条件1)前記第1金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件2)前記第1金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
(条件3)前記第2金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件4)前記第2金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
【化1】

(式(1)中、
破線で表される環A乃至Dは、それぞれ独立にポルフィラジン環に縮環したベンゼン環又は6員環の含窒素複素芳香環を表し、含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.00を超えて3.00以下であり、残りはベンゼン環であり、
EはC2−C12アルキレンを表し、
Xは、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、C1−C6アルコキシ基、アミノ基、モノC1−C4アルキルアミノ基、ジC1−C4アルキルアミノ基、モノC6−C10アリールアミノ基、ジC6−C10アリールアミノ基、C1−C3アルキルカルボニルアミノ基、ウレイド基、C1−C6アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、C1−C6アルキルスルホニル基、及びC1−C6アルキルチオ基よりなる群から選択される1種類又は2種類以上の置換基を有しても良い、スルホアニリノ基、カルボキシアニリノ基、ホスホノアニリノ基、スルホナフチルアミノ基、カルボキシナフチルアミノ基又はホスホノナフチルアミノ基であり、
Rは水素原子;スルホ基;カルボキシ基;リン酸基;スルファモイル基;カルバモイル基;ヒドロキシ基;C1−C6アルコキシ基;アミノ基;モノC1−C6アルキルアミノ基;ジC1−C6アルキルアミノ基;モノアリールアミノ基;ジアリールアミノ基;C1−C3アルキルカルボニルアミノ基;ウレイド基;C1−C6アルキル基;ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子;C1−C6アルキルスルホニル基;又はアルキルチオ基;を表し、
基Fはフェニル基;又は、6員含窒素複素芳香環基;を表し、
aは1以上6以下の整数を表し、
bは平均値で0.00以上3.90未満であり、
cは平均値で0.10以上4.00未満であり、
且つb及びcの和は、平均値で1.00以上4.00未満である。)
【請求項2】
請求項1において、
前記第1金属イオンは、ナトリウムイオンおよびリチウムイオンの少なくとも一方である、インクセット。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第2金属イオンは、カリウムイオンおよびナトリウムイオンの少なくとも一方である、インクセット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記一般式(1)において、
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環がそれぞれ独立に、2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環;若しくは、2位及び3位で縮環したピラジン環であり、
Eが直鎖C2−C4アルキレンであり、
Xが、置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、C1−C6アルコキシ基、アミノ基、モノC1−C4アルキルアミノ基、ジC1−C4アルキルアミノ基、C1−C3アルキルカルボニルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、C1−C6アルキルスルホニル基、及びC1−C6アルキルチオ基よりなる群から選択される1種類又は2種類の置換基を、0乃至2つ有しても良い、スルホアニリノ基;置換基として、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びスルファモイル基よりなる群から選択される1種類又は2種類の置換基を0乃至2つ有しても良いカルボキシアニリノ基;ホスホノアニリノ基;若しくは、置換基として、スルホ基及びヒドロキシ基から選択される1種類又は2種類の置換基を0乃至2つ有しても良いスルホナフチルアミノ基;であり、
Rが水素原子;スルホ基;カルボキシ基;C1−C6アルコキシ基;C1−C6アルキル基;又はハロゲン原子;であり、
基Fがフェニル基;又は、Rが水素原子であるピリジル基;であり、
aが1又は2の整数である、インクセット。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記一般式(1)において、
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で縮環したピリジン環であり、
Eが、エチレンであり、
Xが、置換基としてスルホ基を0又は1つ有しても良いスルホアニリノ基;若しくは、置換基としてスルホ基を2つ有する、スルホナフチルアミノ基であり、
Rが水素原子、スルホ基、又はカルボキシ基であり、
基Fがフェニル基、又は、Rが水素原子であるピリジル基であり、
aが1の整数であり、
bが平均値で0.00以上3.90未満であり、
cが平均値で0.10以上4.00未満であり、
且つb及びcの和は、平均値で1.00以上4.00未満である、インクセット。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の第1インクおよび第2インクを備えるインクセットと、
前記第1インクおよび前記第2インクを吐出するためのノズル孔を備えたノズル面と、
前記ノズル面を払拭するためのワイプ部材と、
を有する、液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−10824(P2013−10824A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142973(P2011−142973)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】