説明

インクタンク

【課題】
インクタンクの装着が確実に認識され、インク残量が少なくなった時に不要な点滅をせず、また不要な光路を設けて製造コストを高めることなく、更にはインクタンクの誤脱着を防止できるインクタンクを提供することである。
【解決手段】発信部105を有するインクタンク1において、前記発信部105は可視光線より長い波長の電磁波を発信する発信素子であって、より好ましくは赤外線を発信する発信素子であることを特徴とするインクタンク1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクカートリッジとも言われるインクタンクに関し、詳しくは、インクジェットプリンタに用いられるインクタンク自らの状態(インク残量等の状態表示)をプリンタに報知する報知手段を備えたインクタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタのインクタンク内のインク残量はPCを介してモニタ上で確認する手法が知られている。近年、デジタルカメラの普及に伴って、パーソナルコンピュータ(PC)を介さない「ノンPC記録」が行われている。これらは、デジタルカメラと記録装置としてのプリンタとを直接接続する場合や、デジタルカメラに着脱可能に用いられる情報記憶媒体であるカードタイプの情報記憶媒体を直接プリンタに装着してデータ転送を行う場合等である。上記ノンPC記録を行う場合においても、プリンタがインクタンク内のインク残量を把握し、ユーザーが印刷を開始する前に、予め新しいインクタンクの交換をユーザーに報知する必要性も出てきている。
【0003】
このような市場に報知手段として可視光(以下単に「発光」ともいう)を採用したインクタンクが実用化されている。この可視光報知手段としては、以下の公知資料がある。例えば、特許文献1では、個々のインクタンクにLED発光部を設けると共に、キャリッジやインクタンクに開口を設けている。このLED発光部の遅い点滅発光、早い点滅発光或は点灯の可視光をこの開口を通過させてプリンタの受光部へ「投光」する技術が開示されている。また、特許文献1には、記録装置に設けられた受光部がキャリッジに搭載された個々のインクタンクから発光される発光を検知して、個々のインクタンクのキャリッジ上での搭載位置を特定する技術も開示されている。
【0004】
また特許文献2には、特許文献1と同様のLED発光部が設けられ、特許文献1の「開口」に変えて、可視光が拡散する前にプリンタの受光部へ導くための「光路」を必要とする技術が開示されている。特許文献2には、「例えば、インク残量が少なくなり、それを検知して発光体を点灯すると、その光がインクタンクに設けられた光路を通って、インクタンクの構成部材である操作部などの変位部材の端部に導かれ、その部分を発光させることができる。特定の光路部材により、発光体を点灯すると、その光はインクタンクに設けられた光路を通って、インクタンクの構成部材である操作部などの変位部材の端部に導かれ、その部分を発光させることができる。」と記載されている。
【0005】
【特許文献1】特許3793216号公報
【特許文献2】特開2007−112150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示されている開口をインクタンクのレバーに設けると、強度が低下してレバーが折れることがあった。また、特許文献2に開示されている光路は、インクタンクの部品数やコストを増加させ、ユーザーにとっては無駄な負担となる。また、特許文献2の光路部材は、屈折率の異なる二つの材料を貼り合わせた部材クラッドによって構成されているため、極めて高価であってインクタンクの製造コストを押し上げる要因になっている。逆に、特許文献1、2の開口や光路を採用しないと、発光部周辺のインクタンクを構成する部材やその樹脂材質により、可視光発光部の発光が散乱または屈折して、受光部が判定するために必要な光量が受光部に十分届かないという新たな課題が発生する。
【0007】
また、特許文献1は、複数のインクタンクとプリンタ側との情報交換をバス接続によって行うため、プリンタ使用開始時に、同梱されている各インクタンク1個ずつをキャリッジへ装着すると、正常に各位置に装着されていても、或は、装着位置が間違って装着されていても、全てのインクタンクが点灯することになる。つまり、この可視光報知部の発光は、その装着間違いが許容され、却ってユーザーに正常に装着されたような誤解を与えるという問題がある。
【0008】
特許文献1によれば、この初期装着後、インクタンクの装着位置確認がプリンタ内の受光部で確認される。このとき、誤装着されていると、間違ったインクタンクのインク供給口がキャリッジ側のインク吸引口と接触して本来のインクではないインクが供給される。この後本来のインクが供給されるとこの部分で混色が発生する。特許文献1はこの現象を問題視していない。ところが、顔料系ブラックインク(以下、「PGBK」という)と染料系カラーインク(以下、「DC」という)を同じプリンタで使用する際、「PGBK」と「DC」が混色すると、顔料インクの微小粒が凝集しインクジェットヘッドノズルを閉塞させる原因となることがある。市場にあるプリンタは、この誤装着を防止するため、「PGBK」を収納するインクタンクは、「DC」を収納するインクタンクよりも大きな形状にして誤装着の問題を回避している。
【0009】
一方、この可視光報知部を採用したインクタンクは、インク残量がかなり多い状態で廃棄されているという実態がある。この原因を調査したところ以下のことが判明した。即ち、市場では、特許文献1の如く、インク残量が少なくなった初期段階にプリンタがインクタンクの可視光報知部に遅い点滅(交換時の早い点滅と異なる)の信号を送り、この信号に従ってインクタンクが点滅発光をする。このため、ユーザーは遅い点滅発光の段階でインクタンクの異常と判断し、早い点滅と間違えてインクタンクを交換してしまうことが多々発生しているということであった。従って、現状では、プリンタにより指示されて発光するインクタンクの可視光報知部は、ユーザーにとって誤解を生じさせ、環境にとっても不適であるという新たな課題を生じさせている。
【0010】
本発明の目的は、上記の如く、可視光報知部を採用したインクタンクが結果的にもたらしている新たな課題の少なくも1つを解決することにある。本発明の主たる目的は、強度劣化をもたらす開口や高価な光路部材を使用せずとも、インクタンクの状態をプリンタが正確に判定できるための新規な報知部を備えたインクタンクを提供することである。
【0011】
また、本発明の別の目的は、インクタンクの可視光報知部が、誤装着されたにもかかわらず正常装着表示をする課題を解決し、本来の装着がユーザーによって行われ、その精度がユーザーにあることを再認識できるようにし、誤装着があった場合はプリンタの認識が確実にできるようにしたインクタンク及び交換用インクタンクを提供することである。また、本発明の他の目的は、インク残量が多量にあるにもかかわらずインクタンクの可視光報知部がインクタンクの交換を誤誘導することなく、交換を正確に行える交換用インクタンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を新たに見出し、鋭意検討し、その結果、本発明を完成したのである。即ち、報知手段として、波長が長いほど屈折しにくく且つ散乱しにくい電磁波に着目し、可視光より波長の長い電磁波は、可視光よりも屈折しにくく且つ散乱しにくいという性質を用いたものである。例えば、可視光線では透過しない薄い布や煙、あるいは半透明な樹脂性フィルムや板なども赤外線は透過する。従って、発信素子と受信部の間に透明又は半透明な樹脂部材が存在するインクタンクであっても、可視光よりも長い波長の電磁波を発信する発信素子を使うことによって電磁波が受信部に到達し易いという研究結果に基づいて完成したものである。本発明のインクタンクは下記のとおりである。
(1)可視光線より長い波長の電磁波を発信する発信部が備えられることを特徴とするインクタンク。
(2)前記電磁波が赤外線であることを特徴とする上記(1)に記載のインクタンク。
(3)前記インクタンクが、交換用インクタンクである上記(1)または(2)に記載のインクタンク。
【発明の効果】
【0013】
本発明(1)によれば、可視光線より長い波長の電磁波を発信する発信素子を供えたインクタンクよって、強度劣化をもたらす開口や高価な光路部材を使用せずとも、インクタンクの状態をプリンタが正確に判定できるための新規な報知部を備えたインクタンクの提供が可能となる。
【0014】
本発明(2)によれば、(1)の発明の可視光線より長い波長の光を赤外線に限定することによって、インクタンクの可視光報知部が誤装着されたにもかかわらず正常装着表示をする課題を解決し、本来の装着がユーザーによって行われ、その精度がユーザーにあることを再認識できるようにし、誤装着があった場合はプリンタの認識が確実にできる。
【0015】
本発明(3)によれば、インク残量が多量にあるにもかかわらずインクタンクの交換を誤誘導することなく、交換を正確に行える交換用インクタンクを提供できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のインクタンクの1実施形態について図面を参照して説明するが、本発
明はこの事例に限られるものではない。
【0017】
本発明のインクタンク1は上面3a、底面3b、前面3c、後面3d及びそれらをつなぐ1対の側面3e及び3fからなる概ね箱型の容器であり、容器内部にはインクが収納される。上面3aには大気を導入する大気孔4及び大気孔4を密封する大気孔ゴム栓30とインク充填孔5及びインク充填孔を密封するゴム栓31、底面3bには記録装置(不図示、以下同じ)へインクを供給するインク供給口6が形成されシール材7が装填されている。底面3bと前面3cの稜部領域は本例では、傾斜面3gとして形成されている。この傾斜面3gには記録装置のホルダ100に備えられたコネクタと接続する複数の接点8を備えた情報記憶媒体が配置され、前記情報記憶媒体の上部近傍に赤外線を発信する発信素子105が配置されている。発信素子105は、インクタンク1が記録装置に装着され接点8がコネクタと接触した時に、矢印LaまたはLbの方向に赤外線を発信し受信部Sa又はSbで赤外線を受信する。後面3dの上部には本インクタンク1を記録装置のホルダ100に係止固定するための、弾性復帰可能な剛性を有する第2係止部材10が形成されている。ここで、稜部領域とは、斜面でなくて前面あるいは底面あるいは、側面のいずれでも良いが、底面3bと前面3cの稜部近傍をいう。
【0018】
第2係止部材10は、図2に示す位置関係を満足し、図に示したように、後面に第2係止部材の支持部10aを、上面側には上面側アーム部10bを、前面側にはラッチ爪10cとその上方に操作部10dとさらにこれらの上方に戻り防止突起10eが前面側アーム部10fに設けられていて、図に示されるように、これらは箱型容器の外形に沿って一部の接触を除いては小型容器から離間している。ここで、2つの屈曲部を、後面側屈曲部10g、前面側屈曲部10hとする。従って、この第2係止部材10は後面の上部10aに基点(本発明の支持部の一例)と、後面3dの一部から上面3aの全体及び前面3cの一部に沿って延在するアーム部を有し、その先端は前面3cの下部の傾斜面3gより手前で且つホルダ第2係止部104と係合できる位置まで伸びている構成をもつ。このホルダ第2係止部104は本例では突起であるが周知の開口や凹部でも良く、上記第2係止部材の係止は周知のラッチ爪としたが、ホルダ第2係止部104の構成に対応して、係合できるものであればどのような構成でも良い。尚、後面3dの下方にはホルダに形成されたホルダ第1係止部材101と係合する第1係止部材9が設けられている。このホルダ第1係止部101は本例では突起であるが周知の開口や凹部でも良く、上記第1係止部材は周知の突起としたが、ホルダ第1係止部101の構成に対応して、係合できるものであればどのような構成(たとえば後面に位置する第2係止部材の支持部10aを上面の中央部分に移動し、この第2係止部材の逆の構成にするか、特許文献1,2のラッチレバー構成そのもの等)でも良く、前記アーム部を下方まで延長して、ここに設けても良い。
【0019】
さらに、上壁3aの中央部には上面アーム部10bを下方から支持する突部11が、前面10cの上方には移動阻止部材13が、第2係止部材10の先端部近傍には記録装置のホルダ第2係止部材104と係合する外向き(箱型容器から見て)のラッチ爪10cが、第2係止部材10のラッチ爪10c近傍の上部には本インクタンク1の着脱のための操作部材10dが強度を高めることと操作面を確保するために前面略直方体状の形状に形成されている。ここで、突起11は箱型容器の上面に設けたが、上面アーム部自体が持っていても良く、これら両者がそれぞれ持っていても良い。無論突起形状でなく、厚みを変化させた滑らかな形状でも良い。
【0020】
インクタンク1を記録装置のホルダ100に挿入する手順は、まず第1係止部材9をホルダ第1係止部材101に係止させ、続いて上面側アーム部10bの前面3c側を下方へ押し込み、情報記憶媒体の接点8とホルダ100のコネクタ103を接触させた状態でラッチ爪10cとホルダ第2係止部材104を係止させる。
【0021】
記録装置での走査時のインクタンク1の激しい動きやインクタンク装着時における正常位置からのわずかな傾きやずれなどによって、コネクタ104と情報記憶媒体8の接点との接続は、接触不良となることがある。この振動があっても本実施例においては、上記アーム部の構成があるので、情報記憶媒体の接点8は傾斜面3gに配置することによって、接点8は縦及び横の両方向からコネクタ103に対して押圧力を受けることが可能となり、コネクタ103と情報記憶媒体の接点8との接続がより一層確実となる。情報記憶媒体の接点8を前面3cに配置した場合は、横方向からの押圧力を受けるが、本実施例においては、上記アーム部の構成があるので、縦方向の移動をより確実に阻止できる。従って、本発明の上記載置面としては、縦及び横の両方向からの押圧力を受けやすくするため傾斜面が好ましく、複数の接点8を備える情報記憶媒体は傾斜面3gに配置されることが好ましい。
【0022】
第2係止部材10は後面の上部10aに支持部を有し後面3dと上面3aの稜部近傍で屈曲して上面に沿って延在し、上面3aと前面3cの稜部近傍で再度屈曲し前面3cに沿って延在し、その先端は前面下部の傾斜面3gより手前で且つホルダ第2係止部材104と係合できる位置まで伸びている。第2係止部材10は、インクタンクの稜部で上面3a、後面3cに沿って屈曲することによって、概ね箱型のインクタンクの形状を保持でき、これを製品化する際に嵩張らない簡潔な包装形態に仕上げることができるので好ましい。
【0023】
前面の頂部近傍には移動阻止部材13が容器の全幅に渡って板状突起として形成されている。この移動阻止部材13は容器の幅の少なくとも中央に存在することが好ましいが、後述する戻り防止突起10eの構成次第ではあるが、全幅でなくともよい。また前面アーム部10fの前面10c側の上部には、戻り防止突起10eが移動阻止部材13より下方に位置するように形成されている。このように形成することによって、インクタンクの脱着に際し、ホルダ第2係止係止部材104とラッチ爪10cの係止を外すと、前面アーム部10fは上面アーム部10bの板バネ的な復元力によって上方に引き上げられるが、移動阻止部材13に戻り防止爪10cが係合されて、上面アーム部10bと上面3aとは、それ以上離れることはなく、第2係止部材10を摘んでインクタンク1全体をホルダ100から引き出すことができるという効果がある。同時に、これらの構成によって、過度の負荷が上向きにかかってもこれらの係合関係は外れることが無いので、ラッチ爪が損傷することが無い。本実施例の場合、移動阻止部材13が容器の全幅に渡って板状突起として形成されているので、第2係止部材10(後面の上部10aに基点(本発明の支持部の一例)と、後面3dの一部から上面3aの全体及び前面3cの一部に沿って延在するアーム部を有し、その先端は前面3cの下部の傾斜面3gより手前で且つホルダ第2係止部104と係合できる位置まで伸びている構成をもつ)は、側面からスライドして装着される部材であることが好ましい。
【0024】
上壁3aには第2係止部材10を下方で支持する突部11が形成されている。インクタンク1は記録装置のホルダへ装着時に第2係止部材10の上面側アーム部10bを下方に押しながら装着される。その際、突部11の頂部を支点として、上面側アーム部10bの前面側は下方への押圧力を受け、図3に示すように側面側アーム部10fが下方へ移動して、ラッチ爪10cがホルダの第2係止部材104に係止される。インクタンク1の着脱時において、突部11の位置は、後面3d側に近づくほど上面側アーム部10の縦方向に移動する部分が長くなるために、ラッチ爪10cとホルダ第2係止部材104との係止力(弾性復帰力)は小さくなり、また前面側アーム部10fの横方向への移動距離は小さくなる。逆に突部11の位置が前面3c側に近づくほど上面側アーム部10の縦方向に移動する部分が短くなるために、ラッチ爪10cとホルダ第2係止部材104との係止力(弾性復帰力)は大きくなり、また前面側アーム部10fの前面側への移動距離は大きくなる。突部11の上面3b上の位置はどこであってもよく、また突部11は複数あってもよい。支持部の位置や数は上述を考慮して決定する設計事項である。
【0025】
また突部11は無くてもよい。突部11がない場合は、インクタンク1がホルダ100に装着された状態においては上面アーム部10bとインクタンク1の移動阻止部材13の上部とが接触しその接触部が突部の役割を果たすが、設計段階で突部の位置を調整することが好ましいので、突部11を設けることが好ましい。
【0026】
本インクタンク1を記録装置のホルダ100へ装着した状態において、記録装置のホルダ100のホルダ第2係止部材側にインクタンク1の前面3c側の底面3bを押し上げるようにポップアップバネが設けられている場合には、このポップアップバネによる下方からの押圧力を、ラッチ爪10cから上面アーム部10bおよび支持部10aに伝達され第2係止部材全体に分散されて受けることになり、ポップアップバネによる応力が一点に集中しないため第2係止部材の折損などの不具合が起こり難く、それによって安定的にインクタンク1をホルダ100に保持できる。
【0027】
剛性を有する材料(プラスチックや板材金属でも良い)からなる上面アーム部10bは板バネ的な性質を有する。図3に示すように、インクタンク1が記録装置のホルダ100に装着されラッチ爪10cとホルダ第2係止部材104が係止された状態において、上面アーム部10bの板バネ的な性質により、ラッチ爪10cには上向き(図3のA)の係止力(弾性復帰力)が作用している。そのため、傾斜面3gにおいてホルダ100のコネクタ104には接点8に対して上向きの押圧力が働くことになる。
【0028】
突部11の高さhは、高いほど前面アーム部10fの上下の移動距離が長くなるのでラッチ爪10cとホルダ第2係止部材104を係止させ易いが、上面アーム部10bが上壁3aから離れるので、第2係止部材10がインクタンクに固定し難くなる。また、高さhが低いほど前面アーム部10fの上下の移動距離が短くなるのでラッチ爪10cとホルダ第2係止部材104を係止できる範囲が狭くなり操作し難くなるが、上面アーム部10bが上壁3aと近接しているので、第2係止部材10はインクタンクに固定し易い。従って、高さhは0.2mm〜10mmであるが、より好ましくは1〜5mmである。
【0029】
図4は、ホルダに装着前において上面側アーム部10bが、前面側の方が後面側より高い場合の、上面アーム部10bと前面アーム部10cの装着前後の状態を示している。装着前が図4の(10b−10e)であり装着後が(10b’―10e’)である。突部11は後面近傍に形成されており、図4のO点は突部11の位置を示す。係止前後における第2係止部材10の移動距離は、下方にL4、左方にL3である。第2係止部材は弾性復帰力のある部材なので、係止後(10b’―10e’)の状態においては上方にL4、右方にL3の力が働いている。即ち、傾斜面3gにおける接点8とコネクタ103は、第2係止部材によって、少なくとも上方にL4、右方にL3の力で押圧される。ホルダに装着前において上面側アーム部10bが上面3aと平行の状態にある場合、装着前後において図4の(10b’―10e’)から(10b’’―10e’’)に移動する。即ち、係止前後における第2係止部材の移動距離は、下方にL4、右方にL3であって、第2係止部材は係止後(10b’’―10e’’)の状態においては第2係止部材の弾性復帰力によって上方(接点8とコネクタの接触圧を強める方向)にL4、左方(接点8とコネクタの接触圧を弱める方向)にL3の力が働く。従って、本インクタンク1においては、上面アーム部10bと上面3aとの間隔が、前面3a近傍の方が後面3d近傍よりも大きいことが好ましい。
【0030】
前面アーム部10fのラッチ爪10cの上方にインクタンクの着脱のための操作部10dが形成されている。操作部10dは、前面アーム部10fの外側向きに形成された面状体であって、外側へ突起した直方体形状の方が指で操作し易いので好ましい。第2係止部材基部10aにおいて、第2係止部材10と後面10dとが、インクタンク1から取り外し可能に勘合して形成されている。本インクタンク1を製品として包装する際、第2係止部材10をインクタンク1から分離することによって、より自由な形状に包装できるという利点がある。
【0031】
上記の如く、可視光線より長い波長の電磁波を発信する発信部を備えたインクタンクであり、前記電磁波が赤外線である交換用インクタンクであるので、強度劣化をもたらす開口や高価な光路部材を使用せずとも、インクタンクの状態をプリンタが正確に判定でき、インクタンクの可視光報知部が、インクタンクが誤装着されたにもかかわらず正常装着表示をする課題を解決し、本来の装着がユーザーによって行われ、その精度がユーザーにあることを再認識できるようにし、誤装着があった場合はプリンタの認識が確実にできる。また、交換用インクタンクとしても、インク残量が多量にあるにもかかわらずインクタンクの交換を誤誘導することなく、交換を正確に行える。
【0032】
(比較例1〜5)
まず、光路付のキヤノン社製インクタンク(BCI−7eY、BCI−7eM、BCI−7eC、BCI−7eB及びBCI−9BK:以下、C社タンク)、に夫々装着されている可視光報知部であるLED(抵抗値162.5Ω)が貼り付けられたICチップを光路無しのプレジール社製インクタンク(PLE―C07EY、PLE―C07EM、PLE―C07EC、PLE―C07EB及びPLE―C07E9BK:以下、PL社タンク)に装備されているICチップと付け替えた。次に、パソコンに接続されたC社製プリンタiP4500の電源を入れ、このプリンタに上記ICチップを付け替えたプレジール社製インクタンクを装着し、パソコン画面で、このプリンタの受光部がその発光を受光してインクタンクの認識ができる個数と認識ができない不良個数を確認した。この装着を5回繰り返して比較例1〜5とした。結果を以下に示す。なお、全てのタンクが装着を認識された場合はインクがなくなるまで印刷を継続し、インクが少なくなったときの可視光報知部であるLEDの遅い点滅とインクがなくなった時の早い点滅を確認した。この可視光報知部であるLEDの遅い点滅の際に、一般ユーザーが間違って交換するという誤脱着の可能性があることも確認した。

可視光線LEDを備えたインクタンクの装着時の認識不良率は次の通りである。

認識不良の個数 認識良の個数
(比較例1) 1 4
(比較例2) 1 4
(比較例3) 1 4
(比較例4) 2 3
(比較例5) 2 3
不良率 7/25

【0033】
(実施例1〜5)
上記(比較例1〜5)において用いた可視光報知部としてのLED発光部を、本発明発信部の具体例としての赤外線発信部(抵抗値162.5Ω)に替えた以外は同様にして、インクタンクをプリンタiP4500に装着し、パソコン画面で、インクタンクの認識不良個数を確認した。尚、受信部は、赤外線専用に変更せずにこのプリンタに装備されている受光部をそのまま用いた。これを5回繰り返して実施例1〜5とした。結果を以下に示す。なお、各実施例において全てのタンク(5色)が装着を認識された場合はインクがなくなるまで印刷を継続し、インクが少なくなったときの可視光発光部の遅い点滅やインクがなくなった時の早い点滅が可視光で確認されることが無いので、比較例1〜5のような遅い点滅の際に、一般ユーザーが間違って交換するという誤脱着の原因を根本的に解決できた。
赤外線発信部を備えたインクタンクの装着時の認識不良率は次のとおりである。

認識不良個数 認識良個数
(実施例1) 0 5
(実施例2) 0 5
(実施例3) 0 5
(実施例4) 0 5
(実施例5) 0 5
不良率 0/25

【0034】
上記の結果より明らかなように、光路のないインクタンクであっても、本発明はプリンタへの装着時の認識不良を改善できた。本発明は、発信部からの方向性がある赤外線を用いた場合は、部材透過も可能で、指向性に優れているため、プリンタの受信部をその方向到達点に設置するだけで確実な検出が可能である。また、同一の電圧でも十分な検知ができる利点と、逆に赤外線発信部の出力を低下しても検出が可能となるので、インクタンクのコストを下げることも可能となる。また、本実施例では、インクタンクの赤外線発信部という構成だけで、市場にある受光部付の既存のプリンタに対しても交換タンクとして実用できるものである。

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のインクタンク1の斜視図である。
【図2】本発明のインクタンク1の側面透視図である。
【図3】本発明のインクタンクをホルダに装着した状態の側面透視図である。
【図4】本発明のインクタンクの第2係止部材の上面側アーム部と前面側ア−ム部10fの装着前後における移動状態の一例を示す模式図である。
【図5】本発明のインクタンク1aの側面透視図である。
【図6】本発明のインクタンク1aの平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 インクタンク
2 インク室
3a 上面
3b 底面
3c 前面
3d 後面
3g 傾斜面、載置面
105 赤外線発信素子
h 突部11の高さ
L1 前面と前面アーム部との距離
L2 ホルダ装着後の前面と前面アーム部との距離
L3 横方向アーム部移動距離
L4 縦方向アーム部移動距離
Sa、Sb 受信部
La、Lb 受信部への入射波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光線より長い波長の電磁波を発信する発信部が備えられることを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
前記電磁波が赤外線であることを特徴とする請求項1に記載のインクタンク。
【請求項3】
前記インクタンクが、交換用インクタンクである請求項1または2に記載のインクタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−143036(P2010−143036A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321708(P2008−321708)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(397025587)エステー産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】