インクタンク
【課題】インク供給に不具合が生じることが無く、保管、物流中および装着時に、インク供給口と大気連通口から外部へのインク漏出が生じないインクタンクを提供する。
【解決手段】インクタンクに、大気連通口とインク供給口とを塞ぐシール部材の一端と接続された突出部を設けて、突出部の近傍に大気連通口を設け、インク供給口はシール部材の突出部と接続されていない他端部によって塞ぐ。
【解決手段】インクタンクに、大気連通口とインク供給口とを塞ぐシール部材の一端と接続された突出部を設けて、突出部の近傍に大気連通口を設け、インク供給口はシール部材の突出部と接続されていない他端部によって塞ぐ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に対しインク等を吐出させて記録を行うインクジェット記録装置において用いられるインクタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来インクジェット記録装置では、記録媒体を横切って往復運動するキャリッジに搭載された記録ヘッドが記録媒体を横切って運動するにつれて、インクを吐出して記録媒体上にイメージまたは文字を形成する所謂シリアルスキャン方式が一般的である。記録ヘッドへのインクの補給はインクタンクが行うが、記録装置や記録媒体のサイズ、また連続記録時間等を考慮し様々なタイプのインクタンクが考案されている。小型のインクジェット記録装置においては、キャリッジにインクタンクを搭載する方式である所謂オンキャリッジタイプと呼ばれるものが一般に用いられており、このようなインクタンクは、スポンジにインクを含ませて負圧を発生させる形式等を採用している。スポンジにインクを含ませてインクタンク内に負圧を発生させる場合、インクタンクにはインク供給口の他に大気と連通する大気連通口が設けられるのが一般的である。このようにインクタンクに大気と連通した部分が複数あることで、インクタンクの保管および物流中にインク漏れが生じることが懸念されていた。
【0003】
そこで、特許文献1に開示されるインクタンクでは、インクタンクのインク供給口と大気連通口とを同一のシール部材で塞ぐことで、保管、物流中にインク漏れしないことと、シール部材が、インク供給口より大気連通口を先に開封する構成について開示している。さらに、シール部材の一部が包装部材と一体化する構成についても開示している。
【0004】
交換型のインクタンクでは、インクタンクを記録ヘッドに連結したときに、インクが記録ヘッド側へ供給され易いようにするために、スポンジに含まれた状態でインク供給口近傍でインクが密に保持され、大気連通口の側ではインクが疎になるようにしてある。従来、このようなインクカートリッジは、シール部材の引き剥がしによるユーザーの開封の仕方によって、インク供給口の方が先に開封されてしまうことがあった。このように、インク供給口側を大気連通口側に先行して開封した場合、内圧が気温や気圧の変化によって大気圧よりも高くなっているとインク供給口からインクが飛散し、ユーザーの衣服や手を汚してしまうことがある。また、このような問題は、インクと共に空気などの気体がインクカートリッジ本体内に密封されているものにあっても同様であり、その気体の膨張圧によってインク供給口からインクが飛散するおそれがある。そのため、このようなインクタンクにおいては開封手順を守ることが重要となっている。
【0005】
従来の構成のインクタンク形態を図14および図15に示し、構成について詳細に説明する。図14はインクタンクの外観斜視図であり、図15は図14におけるA−A線の側面断面図である。インクタンク1は、フタ部材2とハコ部材3を結合することでインクを収納する容器を構成する。この、インクタンク1は記録ヘッドと連結して記録用インクを供給するインク供給口6や、大気連通口7を有する。またインクタンク1は、記録用インクを吸収保持する負圧発生部材8を収納し、仕切り壁4により仕切られ底面との間の隙間5により連通し記録用インクを収容するインク収容部13を備えている。そしてインクジェット記録装置に装着される以前の、保管および物流中に、インク供給口6と大気連通口7から外部へのインク漏出防止、およびインクの蒸発防止のために、インク供給口6と大気連通口7にシール部材10を取り付けることで塞いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−025640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような従来のインクタンクには以下のような課題がある。その課題は、インク供給口6と大気連通口7を塞ぐシール部材10の材質が柔軟性ある場合と剛性がある場合によって異なる。以下、各場合による課題を説明する。
【0008】
(柔軟性のあるシール部材)
図16は、柔軟性のあるシール部材を剥離しない状態での装着不具合を示したものである。柔軟性のあるシール部材の場合は、通常の開封手順である大気連通口7側よりシール部材10を剥離し、大気連通口7を開口した後にインク供給口6を開口する開封が可能である。よって、インクの漏れや飛び散りを防止することができる。しかし、図16に示すようにシール部材10の剥離を完全に行わない状態、または剥離されない状態でインクジェット記録装置に装着することが可能である。そのため、インク供給に不具合が生じて、結果として記録の不具合となる。
【0009】
(剛性のあるシール部材)
図17は、剛性のあるシール部材を剥離しない状態での装着不具合を示したものであり、図18(a)、(b)は、剛性のあるシール部材を剥離する過程を示した図である。剛性のあるシール部材の場合は、シール部材が干渉することで記録ヘッドに装着することができない。そのため、柔軟性のあるシール部材を用いた時のような不具合が生じることは無い。しかしシール部材に剛性があることで、図18(a)の開封前の状態から、図18(b)の開封初期の状態で、大気連通口7とインク供給口6とをほぼ同時に開口してしまうことが考えられる。大気連通口7とインク供給口6とをほぼ同時に開口した場合、インクの漏れが生じたり、インクが飛び散ってしまう虞がある。
【0010】
このように従来の構成では、シール部材の未開封装着による記録不具合とシール部材の開封手順を両立させることが難しい。
【0011】
また、特許文献1ではインクタンクがパッケージで包装される構成においても開示されており、この手法は上記の課題に対して有効である。しかし、昨今のインクタンクでは包装部材自体が用いられない場合もあり、新しい手段が求められている。
【0012】
よって本発明は、インク供給に不具合が生じることが無く、保管、物流中および装着時に、インク供給口と大気連通口から外部へのインク漏出が生じないインクタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのため本発明のインクタンクは、インクおよび該インクを吸収保持する負圧発生部材を収納する収納容器と、前記収納容器から前記インクを導出するインク供給口と、前記収納容器の内部と大気とを連通する大気連通口と、該大気連通口と前記インク供給口とを塞ぐシール部材と、を備え、記録装置の取付け部に取付けて用いられるインクタンクにおいて、前記取付け部へ取り付けた際に、前記取付け部と近接して対向する面に、分離可能な突出部が突設され、前記突出部は前記シール部材の一端と接続され、前記突出部を分離することで、前記シール部材によって塞がれている前記大気連通口と前記インク供給口とが、順次開封されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のインクタンクは、インクおよび該インクを吸収保持する負圧発生部材を収納する収納容器と、前記収納容器から前記インクを導出するインク供給口と、該インク供給口を塞ぐシール部材と、前記収納容器の内部と大気とを連通可能な大気連通口と、を備え、記録装置の取付け部に取付けて用いられるインクタンクにおいて、前記取付け部へ取り付けた際に、前記取付け部と近接して対向する面に、分離可能な突出部が突設され、前記突出部は前記シール部材の一端と接続され、前記突出部を分離することで、前記大気連通口は開封され、その後、前記インク供給口が開封されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インクタンクには、記録装置の取付け部へ取り付けた際に、取付け部と近接して対向する面に、分離可能な突出部が突設されている。そして、その突出部はシール部材の一端と接続され、突出部を分離することで、シール部材によって塞がれている大気連通口とインク供給口とが、順次開封される。
【0016】
これによって、インク供給に不具合が生じることが無く、保管、物流中および装着時に、インク供給口と大気連通口から外部へのインク漏出が生じないインクタンクを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係るインクタンクの外観斜視図である。
【図2】図1におけるA−A線の側面断面図である。
【図3】図2における領域Bの拡大図である。
【図4】インク供給口側のシール部材を示した図である。
【図5】第2の実施形態のインクタンクの外観斜視図である。
【図6】図5におけるA−A線の側面断面図である。
【図7】図6における領域Cの拡大図である。
【図8】図8はインクタンクを上面から見た図である。
【図9】第3実施形態に係るインクタンクの外観斜視図である。
【図10】図9における側面断面の拡大図である。
【図11】(a)は図10における領域Dの拡大図であり、(b)は突出部を分離し大気連通口が形成された領域Dの拡大図である。
【図12】未開封のインクタンクを記録装置に取り付ける様子を示した図である。
【図13】(a)から(d)は、シール部材の開封手順を示した図である。
【図14】従来の構成のインクタンクの外観斜視図である。
【図15】図14におけるA−A線の側面断面図である。
【図16】柔軟性のあるシール部材を剥離しない状態の装着不具合を示した図である。
【図17】剛性のあるシール部材を剥離しない状態の装着不具合を示した図である。
【図18】(a)、(b)は剛性のあるシール部材を剥離する過程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
図1および図2は、本発明の第1の実施形態に係るインクタンクを示す図であり、図1はインクタンクの外観斜視図であり、図2は図1におけるA−A線の側面断面図である。また、図3は図2における領域Bの拡大図であり、図4はインク供給口側のシール部材を示した図である。
【0019】
図1から図4に示すように、インクタンク1は、フタ部材2とハコ部材3とを結合することでインクを収納する収納容器を構成している。インクタンク1は、記録用インクを吸収保持する負圧発生部材8を収納する収納部14と、その収納部14と仕切り壁4により仕切られ、底面との間の隙間5で連通した、記録用インクを収容するインク収容部13とを備えている。さらに、インクタンク1は、容器外壁より突出し分離可能な板状の突出部2aと、記録ヘッドと連結して記録装置側へインクを導出するインク供給口6と、大気をインクタンク内に取り入れ可能な大気連通口7とを有している。この突出部2aと外壁との付け根の部分には、突出部2aの板厚に対して半分以上を切り欠いた切り欠き部11が設けられており、この突出部2aは、切り欠き部11が設けられた反対の面でシール部材10と結合される。そして、記録装置に装着される以前の、保管、物流中に、インク供給口6と大気連通口7からのインク漏出防止、およびインクの蒸発防止のために、インク供給口6と大気連通口7とをシール部材10にて塞いでいる。シール部材10の突出部2aと結合される反対の端部は、図4に示すように端部の形状を開口部の形状に合わせて塞いでいる。このようにシール部材10の端部形状を塞ぐ開口部の形状と合わせることで、開口部側のシール部材10の端部をつまめなくしている。開口部側シール部材10の端部をつまめなくすることで、シール部材10が開口部側から剥離されるのを防止している。
【0020】
図12は、未開封のインクタンク1を記録装置に取り付ける様子を示した図であり、図13(a)から(d)は、インクタンク1におけるシール部材10の開封手順を示した図である。図13(a)はインクタンク1の未開封の初期状態を示し、図13(b)は突出部2aを分離した状態、図13(c)は突出部2aを引っ張り、シール部材10の一部を剥離し、大気連通口7が開口した状態を示している。また、図13(d)はシール部材10を全て剥離しインク供給口6が開口した状態を示している。
【0021】
本実施形態のインクタンク1では、突出部2aは、記録装置のインクタンク取付け部に近接して対向する位置に突設されている。取り付けの際には、まず突出部2aを分離した後に、シール部材10を引っ張り、シール部材10を剥離させて開封を行う。つまり、未開封の場合はインクタンク1に突出部2aが残り、図12に示すように突出部2aが記録装置のインクタンク取付け部20と干渉することで、インクタンク1の装着を行うことができない。これによって、インクタンク未開封での装着を防止することができる。また、シール部材10として薄く柔軟性のある材質を用いても未開封状態で取り付けてしまうことがない。また、大気連通口7は、突出部2aの近傍に設けられているため、突出部2aの分離直後に開封され、インク供給口6は、その後に開封される。このように、シール部材10で塞がれた大気連通口7とインク供給口6とを、順次開封するという開封手順を守ることが可能になり、インクタンクの保管、物流中および開封時にインクの漏れやインク飛び散りを防止し、ユーザーの衣服や手を汚すことを防止できる。
【0022】
このように、インクタンクに、大気連通口とインク供給口とを塞ぐシール部材の一端と接続された突出部を設けて、突出部の近傍に大気連通口を設け、インク供給口はシール部材の突出部と接続されていない他端部によって塞ぐ。これによって、インク供給に不具合が生じることが無く、保管、物流中および装着時に、インク供給口と大気連通口から外部へのインク漏出が生じないインクタンクを実現することができた。
【0023】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0024】
図5、図6、図7および図8は、本実施形態に係るインクタンクを示す図である。図5はインクタンクの外観斜視図であり、図6は図5におけるA−A線の側面断面図である。図7は図6における領域Cの拡大図である。図8はインクタンク1を上面から見た図である。第1の実施形態では、突出部2aと大気連通口7とが別々に構成された例であったが、本実施形態のインクタンクにおいては、大気連通口7の一部が突出部2a内に構成されている。
【0025】
本実施形態のインクタンクは、突出部2aと大気と連通可能な大気連通口7の一部とが一体化されている。つまり、突出部2aの内部に収納部14と連通した空間が設けられており、突出部2aを分離すると、大気連通口7が開封される構成になっている。突出部2aの分離とともに大気連通口7が開封されるため、第1の実施形態の構成よりも確実な開封手順の遵守が可能となる。また、突出部2aの分離と共に大気連通口7が最初に開封されるため、インク供給口6との開封時間差を最大にすることが可能となるため、よりインクタンク内圧と外気圧との差をなくした状態での開封が可能となる。
【0026】
このように、インクタンクにシール部材の一端と接続された突出部を設けて、その突出部は、分離とともに大気連通口の開封が行われるように構成され、インク供給口はシール部材の突出部と接続されていない他端部によって塞ぐ。これによって、インク供給に不具合が生じることが無く、保管、物流中および装着時に、インク供給口と大気連通口から外部へのインク漏出が生じないインクタンクを実現することができた。
【0027】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では、特徴的な構成についてのみ説明する。
【0028】
図9、図10および図11(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係るインクタンクを示す図である。図9はインクタンクの外観斜視図であり、図10は図9における側面断面の拡大図である。図11(a)は図10における領域Dの拡大図である。また、図11(b)は突出部2aを分離し大気連通口7が形成された領域Dの拡大図である。本実施形態も第2の実施形態と同様に、突出部2aを分離することで大気連通口7が開封される構成となっている。
【0029】
本実施形態の場合は、第2の実施形態と同等の効果が得られる構成をより簡略化して実施することが可能となる。
【0030】
このように、インクタンクにシール部材の一端と接続された突出部を設けて、その突出部は、分離とともに大気連通口の開封が行われるように構成され、インク供給口はシール部材の突出部と接続されていない他端部によって塞ぐ。これによって、インク供給に不具合が生じることが無く、保管、物流中および装着時に、インク供給口と大気連通口から外部へのインク漏出が生じないインクタンクを実現することができた。
【符号の説明】
【0031】
1 インクタンク
2 フタ部材
3 ハコ部材
6 インク供給口
7 大気連通口
8 負圧発生部材
10 シール部材
11 切り欠き部
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に対しインク等を吐出させて記録を行うインクジェット記録装置において用いられるインクタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来インクジェット記録装置では、記録媒体を横切って往復運動するキャリッジに搭載された記録ヘッドが記録媒体を横切って運動するにつれて、インクを吐出して記録媒体上にイメージまたは文字を形成する所謂シリアルスキャン方式が一般的である。記録ヘッドへのインクの補給はインクタンクが行うが、記録装置や記録媒体のサイズ、また連続記録時間等を考慮し様々なタイプのインクタンクが考案されている。小型のインクジェット記録装置においては、キャリッジにインクタンクを搭載する方式である所謂オンキャリッジタイプと呼ばれるものが一般に用いられており、このようなインクタンクは、スポンジにインクを含ませて負圧を発生させる形式等を採用している。スポンジにインクを含ませてインクタンク内に負圧を発生させる場合、インクタンクにはインク供給口の他に大気と連通する大気連通口が設けられるのが一般的である。このようにインクタンクに大気と連通した部分が複数あることで、インクタンクの保管および物流中にインク漏れが生じることが懸念されていた。
【0003】
そこで、特許文献1に開示されるインクタンクでは、インクタンクのインク供給口と大気連通口とを同一のシール部材で塞ぐことで、保管、物流中にインク漏れしないことと、シール部材が、インク供給口より大気連通口を先に開封する構成について開示している。さらに、シール部材の一部が包装部材と一体化する構成についても開示している。
【0004】
交換型のインクタンクでは、インクタンクを記録ヘッドに連結したときに、インクが記録ヘッド側へ供給され易いようにするために、スポンジに含まれた状態でインク供給口近傍でインクが密に保持され、大気連通口の側ではインクが疎になるようにしてある。従来、このようなインクカートリッジは、シール部材の引き剥がしによるユーザーの開封の仕方によって、インク供給口の方が先に開封されてしまうことがあった。このように、インク供給口側を大気連通口側に先行して開封した場合、内圧が気温や気圧の変化によって大気圧よりも高くなっているとインク供給口からインクが飛散し、ユーザーの衣服や手を汚してしまうことがある。また、このような問題は、インクと共に空気などの気体がインクカートリッジ本体内に密封されているものにあっても同様であり、その気体の膨張圧によってインク供給口からインクが飛散するおそれがある。そのため、このようなインクタンクにおいては開封手順を守ることが重要となっている。
【0005】
従来の構成のインクタンク形態を図14および図15に示し、構成について詳細に説明する。図14はインクタンクの外観斜視図であり、図15は図14におけるA−A線の側面断面図である。インクタンク1は、フタ部材2とハコ部材3を結合することでインクを収納する容器を構成する。この、インクタンク1は記録ヘッドと連結して記録用インクを供給するインク供給口6や、大気連通口7を有する。またインクタンク1は、記録用インクを吸収保持する負圧発生部材8を収納し、仕切り壁4により仕切られ底面との間の隙間5により連通し記録用インクを収容するインク収容部13を備えている。そしてインクジェット記録装置に装着される以前の、保管および物流中に、インク供給口6と大気連通口7から外部へのインク漏出防止、およびインクの蒸発防止のために、インク供給口6と大気連通口7にシール部材10を取り付けることで塞いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−025640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような従来のインクタンクには以下のような課題がある。その課題は、インク供給口6と大気連通口7を塞ぐシール部材10の材質が柔軟性ある場合と剛性がある場合によって異なる。以下、各場合による課題を説明する。
【0008】
(柔軟性のあるシール部材)
図16は、柔軟性のあるシール部材を剥離しない状態での装着不具合を示したものである。柔軟性のあるシール部材の場合は、通常の開封手順である大気連通口7側よりシール部材10を剥離し、大気連通口7を開口した後にインク供給口6を開口する開封が可能である。よって、インクの漏れや飛び散りを防止することができる。しかし、図16に示すようにシール部材10の剥離を完全に行わない状態、または剥離されない状態でインクジェット記録装置に装着することが可能である。そのため、インク供給に不具合が生じて、結果として記録の不具合となる。
【0009】
(剛性のあるシール部材)
図17は、剛性のあるシール部材を剥離しない状態での装着不具合を示したものであり、図18(a)、(b)は、剛性のあるシール部材を剥離する過程を示した図である。剛性のあるシール部材の場合は、シール部材が干渉することで記録ヘッドに装着することができない。そのため、柔軟性のあるシール部材を用いた時のような不具合が生じることは無い。しかしシール部材に剛性があることで、図18(a)の開封前の状態から、図18(b)の開封初期の状態で、大気連通口7とインク供給口6とをほぼ同時に開口してしまうことが考えられる。大気連通口7とインク供給口6とをほぼ同時に開口した場合、インクの漏れが生じたり、インクが飛び散ってしまう虞がある。
【0010】
このように従来の構成では、シール部材の未開封装着による記録不具合とシール部材の開封手順を両立させることが難しい。
【0011】
また、特許文献1ではインクタンクがパッケージで包装される構成においても開示されており、この手法は上記の課題に対して有効である。しかし、昨今のインクタンクでは包装部材自体が用いられない場合もあり、新しい手段が求められている。
【0012】
よって本発明は、インク供給に不具合が生じることが無く、保管、物流中および装着時に、インク供給口と大気連通口から外部へのインク漏出が生じないインクタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのため本発明のインクタンクは、インクおよび該インクを吸収保持する負圧発生部材を収納する収納容器と、前記収納容器から前記インクを導出するインク供給口と、前記収納容器の内部と大気とを連通する大気連通口と、該大気連通口と前記インク供給口とを塞ぐシール部材と、を備え、記録装置の取付け部に取付けて用いられるインクタンクにおいて、前記取付け部へ取り付けた際に、前記取付け部と近接して対向する面に、分離可能な突出部が突設され、前記突出部は前記シール部材の一端と接続され、前記突出部を分離することで、前記シール部材によって塞がれている前記大気連通口と前記インク供給口とが、順次開封されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のインクタンクは、インクおよび該インクを吸収保持する負圧発生部材を収納する収納容器と、前記収納容器から前記インクを導出するインク供給口と、該インク供給口を塞ぐシール部材と、前記収納容器の内部と大気とを連通可能な大気連通口と、を備え、記録装置の取付け部に取付けて用いられるインクタンクにおいて、前記取付け部へ取り付けた際に、前記取付け部と近接して対向する面に、分離可能な突出部が突設され、前記突出部は前記シール部材の一端と接続され、前記突出部を分離することで、前記大気連通口は開封され、その後、前記インク供給口が開封されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インクタンクには、記録装置の取付け部へ取り付けた際に、取付け部と近接して対向する面に、分離可能な突出部が突設されている。そして、その突出部はシール部材の一端と接続され、突出部を分離することで、シール部材によって塞がれている大気連通口とインク供給口とが、順次開封される。
【0016】
これによって、インク供給に不具合が生じることが無く、保管、物流中および装着時に、インク供給口と大気連通口から外部へのインク漏出が生じないインクタンクを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係るインクタンクの外観斜視図である。
【図2】図1におけるA−A線の側面断面図である。
【図3】図2における領域Bの拡大図である。
【図4】インク供給口側のシール部材を示した図である。
【図5】第2の実施形態のインクタンクの外観斜視図である。
【図6】図5におけるA−A線の側面断面図である。
【図7】図6における領域Cの拡大図である。
【図8】図8はインクタンクを上面から見た図である。
【図9】第3実施形態に係るインクタンクの外観斜視図である。
【図10】図9における側面断面の拡大図である。
【図11】(a)は図10における領域Dの拡大図であり、(b)は突出部を分離し大気連通口が形成された領域Dの拡大図である。
【図12】未開封のインクタンクを記録装置に取り付ける様子を示した図である。
【図13】(a)から(d)は、シール部材の開封手順を示した図である。
【図14】従来の構成のインクタンクの外観斜視図である。
【図15】図14におけるA−A線の側面断面図である。
【図16】柔軟性のあるシール部材を剥離しない状態の装着不具合を示した図である。
【図17】剛性のあるシール部材を剥離しない状態の装着不具合を示した図である。
【図18】(a)、(b)は剛性のあるシール部材を剥離する過程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
図1および図2は、本発明の第1の実施形態に係るインクタンクを示す図であり、図1はインクタンクの外観斜視図であり、図2は図1におけるA−A線の側面断面図である。また、図3は図2における領域Bの拡大図であり、図4はインク供給口側のシール部材を示した図である。
【0019】
図1から図4に示すように、インクタンク1は、フタ部材2とハコ部材3とを結合することでインクを収納する収納容器を構成している。インクタンク1は、記録用インクを吸収保持する負圧発生部材8を収納する収納部14と、その収納部14と仕切り壁4により仕切られ、底面との間の隙間5で連通した、記録用インクを収容するインク収容部13とを備えている。さらに、インクタンク1は、容器外壁より突出し分離可能な板状の突出部2aと、記録ヘッドと連結して記録装置側へインクを導出するインク供給口6と、大気をインクタンク内に取り入れ可能な大気連通口7とを有している。この突出部2aと外壁との付け根の部分には、突出部2aの板厚に対して半分以上を切り欠いた切り欠き部11が設けられており、この突出部2aは、切り欠き部11が設けられた反対の面でシール部材10と結合される。そして、記録装置に装着される以前の、保管、物流中に、インク供給口6と大気連通口7からのインク漏出防止、およびインクの蒸発防止のために、インク供給口6と大気連通口7とをシール部材10にて塞いでいる。シール部材10の突出部2aと結合される反対の端部は、図4に示すように端部の形状を開口部の形状に合わせて塞いでいる。このようにシール部材10の端部形状を塞ぐ開口部の形状と合わせることで、開口部側のシール部材10の端部をつまめなくしている。開口部側シール部材10の端部をつまめなくすることで、シール部材10が開口部側から剥離されるのを防止している。
【0020】
図12は、未開封のインクタンク1を記録装置に取り付ける様子を示した図であり、図13(a)から(d)は、インクタンク1におけるシール部材10の開封手順を示した図である。図13(a)はインクタンク1の未開封の初期状態を示し、図13(b)は突出部2aを分離した状態、図13(c)は突出部2aを引っ張り、シール部材10の一部を剥離し、大気連通口7が開口した状態を示している。また、図13(d)はシール部材10を全て剥離しインク供給口6が開口した状態を示している。
【0021】
本実施形態のインクタンク1では、突出部2aは、記録装置のインクタンク取付け部に近接して対向する位置に突設されている。取り付けの際には、まず突出部2aを分離した後に、シール部材10を引っ張り、シール部材10を剥離させて開封を行う。つまり、未開封の場合はインクタンク1に突出部2aが残り、図12に示すように突出部2aが記録装置のインクタンク取付け部20と干渉することで、インクタンク1の装着を行うことができない。これによって、インクタンク未開封での装着を防止することができる。また、シール部材10として薄く柔軟性のある材質を用いても未開封状態で取り付けてしまうことがない。また、大気連通口7は、突出部2aの近傍に設けられているため、突出部2aの分離直後に開封され、インク供給口6は、その後に開封される。このように、シール部材10で塞がれた大気連通口7とインク供給口6とを、順次開封するという開封手順を守ることが可能になり、インクタンクの保管、物流中および開封時にインクの漏れやインク飛び散りを防止し、ユーザーの衣服や手を汚すことを防止できる。
【0022】
このように、インクタンクに、大気連通口とインク供給口とを塞ぐシール部材の一端と接続された突出部を設けて、突出部の近傍に大気連通口を設け、インク供給口はシール部材の突出部と接続されていない他端部によって塞ぐ。これによって、インク供給に不具合が生じることが無く、保管、物流中および装着時に、インク供給口と大気連通口から外部へのインク漏出が生じないインクタンクを実現することができた。
【0023】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0024】
図5、図6、図7および図8は、本実施形態に係るインクタンクを示す図である。図5はインクタンクの外観斜視図であり、図6は図5におけるA−A線の側面断面図である。図7は図6における領域Cの拡大図である。図8はインクタンク1を上面から見た図である。第1の実施形態では、突出部2aと大気連通口7とが別々に構成された例であったが、本実施形態のインクタンクにおいては、大気連通口7の一部が突出部2a内に構成されている。
【0025】
本実施形態のインクタンクは、突出部2aと大気と連通可能な大気連通口7の一部とが一体化されている。つまり、突出部2aの内部に収納部14と連通した空間が設けられており、突出部2aを分離すると、大気連通口7が開封される構成になっている。突出部2aの分離とともに大気連通口7が開封されるため、第1の実施形態の構成よりも確実な開封手順の遵守が可能となる。また、突出部2aの分離と共に大気連通口7が最初に開封されるため、インク供給口6との開封時間差を最大にすることが可能となるため、よりインクタンク内圧と外気圧との差をなくした状態での開封が可能となる。
【0026】
このように、インクタンクにシール部材の一端と接続された突出部を設けて、その突出部は、分離とともに大気連通口の開封が行われるように構成され、インク供給口はシール部材の突出部と接続されていない他端部によって塞ぐ。これによって、インク供給に不具合が生じることが無く、保管、物流中および装着時に、インク供給口と大気連通口から外部へのインク漏出が生じないインクタンクを実現することができた。
【0027】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では、特徴的な構成についてのみ説明する。
【0028】
図9、図10および図11(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係るインクタンクを示す図である。図9はインクタンクの外観斜視図であり、図10は図9における側面断面の拡大図である。図11(a)は図10における領域Dの拡大図である。また、図11(b)は突出部2aを分離し大気連通口7が形成された領域Dの拡大図である。本実施形態も第2の実施形態と同様に、突出部2aを分離することで大気連通口7が開封される構成となっている。
【0029】
本実施形態の場合は、第2の実施形態と同等の効果が得られる構成をより簡略化して実施することが可能となる。
【0030】
このように、インクタンクにシール部材の一端と接続された突出部を設けて、その突出部は、分離とともに大気連通口の開封が行われるように構成され、インク供給口はシール部材の突出部と接続されていない他端部によって塞ぐ。これによって、インク供給に不具合が生じることが無く、保管、物流中および装着時に、インク供給口と大気連通口から外部へのインク漏出が生じないインクタンクを実現することができた。
【符号の説明】
【0031】
1 インクタンク
2 フタ部材
3 ハコ部材
6 インク供給口
7 大気連通口
8 負圧発生部材
10 シール部材
11 切り欠き部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクおよび該インクを吸収保持する負圧発生部材を収納する収納容器と、前記収納容器から前記インクを導出するインク供給口と、前記収納容器の内部と大気とを連通する大気連通口と、該大気連通口と前記インク供給口とを塞ぐシール部材と、を備え、記録装置の取付け部に取付けて用いられるインクタンクにおいて、
前記取付け部へ取り付けた際に、前記取付け部と近接して対向する面に、分離可能な突出部が突設され、
前記突出部は前記シール部材の一端と接続され、
前記突出部を分離することで、前記シール部材によって塞がれている前記大気連通口と前記インク供給口とが、順次開封されることを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
前記大気連通口と前記インク供給口とは、前記大気連通口、前記インク供給口の順に開封されることを特徴とする請求項1に記載のインクタンク。
【請求項3】
前記突出部は突設された付け根の部分に、切り欠き部を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクタンク。
【請求項4】
インクおよび該インクを吸収保持する負圧発生部材を収納する収納容器と、前記収納容器から前記インクを導出するインク供給口と、該インク供給口を塞ぐシール部材と、前記収納容器の内部と大気とを連通可能な大気連通口と、を備え、記録装置の取付け部に取付けて用いられるインクタンクにおいて、
前記取付け部へ取り付けた際に、前記取付け部と近接して対向する面に、分離可能な突出部が突設され、
前記突出部は前記シール部材の一端と接続され、
前記突出部を分離することで、前記大気連通口は開封され、その後、前記インク供給口が開封されることを特徴とするインクタンク。
【請求項1】
インクおよび該インクを吸収保持する負圧発生部材を収納する収納容器と、前記収納容器から前記インクを導出するインク供給口と、前記収納容器の内部と大気とを連通する大気連通口と、該大気連通口と前記インク供給口とを塞ぐシール部材と、を備え、記録装置の取付け部に取付けて用いられるインクタンクにおいて、
前記取付け部へ取り付けた際に、前記取付け部と近接して対向する面に、分離可能な突出部が突設され、
前記突出部は前記シール部材の一端と接続され、
前記突出部を分離することで、前記シール部材によって塞がれている前記大気連通口と前記インク供給口とが、順次開封されることを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
前記大気連通口と前記インク供給口とは、前記大気連通口、前記インク供給口の順に開封されることを特徴とする請求項1に記載のインクタンク。
【請求項3】
前記突出部は突設された付け根の部分に、切り欠き部を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクタンク。
【請求項4】
インクおよび該インクを吸収保持する負圧発生部材を収納する収納容器と、前記収納容器から前記インクを導出するインク供給口と、該インク供給口を塞ぐシール部材と、前記収納容器の内部と大気とを連通可能な大気連通口と、を備え、記録装置の取付け部に取付けて用いられるインクタンクにおいて、
前記取付け部へ取り付けた際に、前記取付け部と近接して対向する面に、分離可能な突出部が突設され、
前記突出部は前記シール部材の一端と接続され、
前記突出部を分離することで、前記大気連通口は開封され、その後、前記インク供給口が開封されることを特徴とするインクタンク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−201045(P2011−201045A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68182(P2010−68182)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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