説明

インク供給システム

【課題】インクパックからのインク漏れを確実に防止するインク供給システムを提供する。
【解決手段】
インク供給システムは、追加インクタンクと、インクを一時貯留するとともにプリンタヘッド15bへ供給する中間カートリッジ40とを有し、中間カートリッジ40が、厚み方向に膨張および収縮可能でインクを貯留可能な中間インクパック51と、中間インクパック51の膨張および収縮による厚みを基に、中間インクパック51のインク貯留状態を検出する検出爪部56aとを備え、中間インクパック51が、中間インクパック51へインクを流入させる上流側継手53fと、中間インクパック51からインクを流出させるヘッド側継手53bと、中間インクパック51における上流側継手53f近傍の左右方向への膨張を規制する上流側膨張規制金具54fと、ヘッド側継手53b近傍の左右方向への膨張を規制するヘッド側膨張規制金具54bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ装置に搭載されて、プリンタヘッドにインクを供給するインク供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタヘッドからインクを吐出させて印刷媒体に印刷を施すプリンタ装置(インクジェットプリンタ)として、従来種々の構成のものが知られている。例えば、シート状の印刷媒体をプラテン上で支持するとともに、プラテンの上側の印刷媒体に対向する位置にプリンタヘッドを設けて、このプリンタヘッドを左右に往復移動させる作動と印刷媒体をこれに対して垂直な方向に相対移動させる作動とを組み合わせて行いながらプリンタヘッドからインクを吐出する制御を行い、印刷媒体の表面に所望の印刷を施すプリンタ装置がある。このようなプリンタ装置には、一般的に、プリンタヘッドから吐出されるインクが貯留されたインクカートリッジが搭載されている。
【0003】
ところで、近年、左右幅の広い印刷媒体に対して印刷を行いたいという要求があり、この要求に応えるべくプリンタ装置の大型化が図られており、それに伴って単位時間あたりのプリンタヘッドにおけるインク吐出量(インク消費量)が増大する傾向にある。そのため、例えば大型のプリンタ装置により印刷を行う場合、比較的短時間のうちにインクカートリッジのインクが消費されるので、短いサイクルで頻繁にインクカートリッジを交換する必要があり、交換に要する手間が増大するという問題が顕著に発生しやすい。このようなことから、インクカートリッジの容量を増大させたり、またはインクカートリッジとは別に大容量の追加インクタンクを設けることにより、インクカートリッジの交換サイクルを延ばして(交換頻度を減らして)手間を省く構成が開発されている。例えば特許文献1の図1に開示された構成において、容量を増大させたインクパック27を用いることにより、インクカートリッジ23の交換頻度を減らして、例えば夜間における無人運転が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−273027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に開示された構成では、印刷時、可撓性フィルムからなるサブタンク34(インクパック)には所定量のインクが充填されて、図2(a)に示すように膨張した状態となっている。この状態で、記録ヘッド12におけるインクの消費に応じてサブタンク34から記録ヘッド12へインクが供給され、サブタンク34のインクが減少していくと、図2(b)に示すように収縮した状態となる。つまり、サブタンク34の膨張および収縮を検出することで、サブタンク34におけるインク貯留状態を検出できる構成となっており、下限量に達したと判断された場合には、インクパック27からサブタンク34にインクが供給され、サブタンク34は再び膨張する。このように、サブタンク34は膨張および収縮を繰り返すが、特に膨張時にはサブタンク34と第1インク供給チューブ35との接続部分、およびサブタンク34と第2インク供給チューブ45との接続部分に力が集中的に作用しやすい。そのため、上記の各接続部分において、可撓性フィルムからなるサブタンク34は、膨張時に作用する力に耐え切れず亀裂が入ることがあり、その亀裂部分からインクが漏れ出すという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成追加でありながら、可撓性を有したインクパックからのインク漏れを確実に防止可能なインク供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るインク供給システムは、インクが貯留された上流側インク貯留部(例えば、実施形態における追加インクタンク24)と、前記上流側インク貯留部から供給されたインクを一時貯留するとともに、貯留したインクを所望の印刷を施すプリンタヘッドへ供給する下流側インク貯留部(例えば、実施形態における中間カートリッジ40)とを有し、前記下流側インク貯留部が、扁平な袋状に形成されてその厚み方向に膨張および収縮可能でインクを貯留可能なインクパック(例えば、実施形態における中間インクパック51)と、前記インクパックの膨張および収縮による厚みを基に、前記インクパックにおけるインクの貯留状態を検出する貯留状態検出手段(例えば、実施形態における検出爪部56a)とを備え、前記インクパックが、前記インクパックの縁部に接合されるとともに、前記インクパックの外部と内部とをインクが流入および流出可能に接続する接続部材と、前記インクパックにおける前記接続部材近傍を前記厚み方向に挟持して前記接続部材近傍の前記厚み方向への膨張を規制する膨張規制部材とを備える。
【0008】
なお、前記接続部材が、前記上流側インク貯留部に繋がれた上流側インク供給路(例えば、実施形態における第1供給チューブ27、内部供給チューブ59)と前記インクパックの内部とを接続し、前記上流側インク供給路から前記インクパックへインクを流入させる上流側接続部材(例えば、実施形態における上流側継手53f)と、前記プリンタヘッドに繋がれたヘッド側インク供給路と前記インクパックの内部とを接続し、前記インクパックから前記ヘッド側インク供給路へインクを流出させるヘッド側接続部材(例えば、実施形態におけるヘッド側継手53b)とからなり、前記膨張規制部材が、前記上流側接続部材近傍を前記厚み方向に挟持して前記上流側接続部材近傍の前記厚み方向への膨張を規制する上流側膨張規制部材(例えば、実施形態における上流側膨張規制金具54f)と、前記ヘッド側接続部材近傍を前記厚み方向に挟持して前記ヘッド側接続部材近傍の前記厚み方向への膨張を規制するヘッド側膨張規制部材(例えば、実施形態におけるヘッド側膨張規制金具54b)とからなることが好ましい。
【0009】
また、前記上流側膨張規制部材および前記ヘッド側膨張規制部材のそれぞれは、前記厚み方向に所定間隙を有して対向した対向挟持部(例えば、実施形態における挟持板58b)が形成されたことが好ましい。
【0010】
上述のインク供給システムにおいて、前記下流側インク貯留部が、前記インクパックを収容保持するケース部材(例えば、実施形態における収容筐体41)を備え、前記インクパックのうち前記上流側接続部材および前記上流側膨張規制部材が取り付けられた部分が前記ケース部材内において変位可能となって、前記インクパックの扁平な面の一方が前記ケース部材に固定されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るインク供給システムは、インクパックにおける接続部材近傍を厚み方向に挟持して膨張を規制する膨張規制部材を備えて構成される。そのため、インクパックにインクが充填されて膨張したときに、接続部材近傍に位置したインクパックは厚み方向への膨張が規制される。よって、インクパックと接続部材とが接合された部分に集中的に力が作用することがないので、この部分のインクパックに亀裂が生じてインク漏れが発生することを確実に防止可能である。また、従来の構成に対して、単に膨張規制部材を追加すれば良いので、設計変更等をすることなく簡易に上記効果を達成できる。
【0012】
なお、接続部材が、インクパックへインクを流入させる上流側接続部材と、インクパックからインクを流出させるヘッド側接続部材とからなり、膨張規制部材が、上流側接続部材近傍を厚み方向に挟持して膨張を規制する上流側膨張規制部材と、ヘッド側接続部材近傍を厚み方向に挟持して膨張を規制するヘッド側膨張規制部材とからなる構成が好ましい。この構成によれば、インクパックにインクを流入させる上流側接続部材と、インクを流出させるヘッド側接続部材とを、インクパックに接合させて設けた場合においても、上流側接続部材近傍およびヘッド側接続部材近傍のインクパックの膨張が規制できるので、インクパックに亀裂が生じてインク漏れが発生することを防止可能である。
【0013】
また、上流側膨張規制部材およびヘッド側膨張規制部材は、厚み方向に所定間隙を有して対向した対向挟持部が形成されたことが好ましい。このような構成とした場合、例えば板状の金属材料を折り曲げるという簡易な方法により上流側膨張規制部材およびヘッド側膨張規制部材を形成することができるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0014】
さらに、インクパックのうち上流側接続部材および上流側膨張規制部材が取り付けられた部分が、ケース部材内において変位可能な構成が好ましい。インクパックは、ケース部材に収容されて固定されており、インクが供給されて厚み方向に膨張すると周縁部には内側に向けて力が作用する。そこで、上記のように変位可能な構成とした場合、周縁部を変位(移動)させることにより内側に向けて作用する力を吸収できるので、周縁部に位置した上流側接続部材に集中的に力が作用することを防止できる。そのため、上流側接続部材近傍のインクパックに亀裂が入り、インク漏れが発生することを防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るインク供給システムを適用したプリンタ装置の正面図である。
【図2】図1中のII−II部分(中間カートリッジ)の断面図である。
【図3】図2中のIII−III部分の断面図である。
【図4】図2中のIV−IV部分の断面図である。
【図5】図2中のV−V部分の断面図である。
【図6】別の実施形態に係る中間カートリッジの断面図(一部省略)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。まず、図1〜5を参照しながら、本発明に係るインク供給システムを適用したプリンタ装置10の全体構成について説明する。なお、説明の便宜上、各図面において矢印方向でプリンタ装置10の前後、左右、および上下方向を示し、以下この方向を用いて説明を行う。
【0017】
プリンタ装置10は、図1に示すように、左右の支持脚11a,11bを有した支持脚11と、支持脚11により支持された中央ボディ部12と、中央ボディ部12の左側に設けられた左ボディ部13と、中央ボディ部12の右側に設けられた右ボディ部14と、左右ボディ部13,14を繋ぐとともに中央ボディ部12の上側に離間して平行に延びた上ボディ部15とを備えて構成される。中央ボディ部12の上面には、左右に延びた平板状のプラテン12aが露出して設けられている。
【0018】
左ボディ部13の前面側には、操作スイッチ類や表示装置類等から構成された操作部13aが設けられている。また、左ボディ部13の内部には、プリンタ装置10の各構成部に作動信号を出力して作動制御を行うコントローラ13bが設けられている。上ボディ部15の内部前面側には、左右に延びたガイドレール15aが設けられおり、下方に向けてインクを吐出する複数のプリンタヘッド15bを搭載したキャリッジ15cが、このガイドレール15aに対して左右へ往復移動可能に取り付けられている。
【0019】
上記プリンタヘッド15bは、以下に説明するインク供給システム20により、内部が微負圧に維持されながらインクが途切れることなく安定供給されるように構成されている。それでは、インク供給システム20の構成について説明する。
【0020】
インク供給システム20は、追加インクタンク24と中間カートリッジ40とから構成される。追加インクタンク24は、例えば約2リットルのインクを貯留可能な上流側インクパック25と、この上流側インクパック25を収容保持する保持ケース26とから構成されており、載置台21の上部に固定された保持枠23に着脱自在に搭載されている。そのため、上流側インクパック25のインクが消費されて空になった場合には、保持枠23から追加インクタンク24を取り外して保持ケース26を開き、空の上流側インクパック25を新たな上流側インクパック25と交換することにより、インク補充が完了する。また、追加インクタンク24の下方には、上流側インクパック25と中間カートリッジ40とを繋ぐ第1供給チューブ27が配設されている。なお、載置台21と右ボディ部14とは連結部材22により繋がれており、載置台21の転倒防止が図られている。
【0021】
中間カートリッジ40は、図2に示すように、箱状の収容筐体41と、この収容筐体41に収容保持されたインクパックアッセンブリ50とから構成されており、右ボディ部14の上部に固定された断面視略コの字状のカートリッジ受容部16に前後に挿入されて保持される。この中間カートリッジ40は、カートリッジ受容部16に保持された状態で、プリンタヘッド15bに対して水頭差が例えば20〜50cm程度となっている。このように水頭差に幅があるのは、上流側インクパック25におけるインクの貯留状態に応じて水頭差が変化するためで、上流側インクパック25にインクが満杯近く貯留された状態では50cm程度、インクがほとんど貯留されていない状態では20cm程度となっている。なお、後述するように、中間カートリッジ40は、水頭差により追加インクタンク24から第1供給チューブ27を経由して供給されたインクを一時的に貯留することで、追加インクタンク24に貯留されたインクの有無を検出する機能を有している。
【0022】
収容筐体41は、右側に向けて開放した箱状に形成されており、インクパックアッセンブリ50(後述する中間インクパック51)に貯留されたインクの種類等が記憶されたICチップ42が前後に挿入されている。また、収容筐体41の前方上面には導入継手43が固定されており、この導入継手43に第1供給チューブ27の一端が接続されている。さらに、収容筐体41の左側底面(後述する検出爪部56aと対向する面)には、検出爪部56aに対応した位置に、左右に貫通した検出用開口41aが形成されている(図5参照)。また、収容筐体41には、図示しない発光素子および受光素子が取り付けられており、収容筐体41の外方に検出爪部56aが突出しているか否かを光学的に検出可能となっている。
【0023】
インクパックアッセンブリ50は、中間インクパック51、上流側継手53f、ヘッド側継手53b、上流側膨張規制金具54f、ヘッド側膨張規制金具54b、エンド検出板56および内部供給チューブ59から構成される。
【0024】
中間インクパック51は、例えばナイロン、アルミニウムおよびポリエチレン等が積層された可撓性を有した薄膜状のパックフィルム52を2枚重ね、その周囲を熱溶着させて扁平な袋状とすることにより形成される。この中間インクパック51は、内部にインクが貯留されていない状態においては略長方形となっていて、内部に貯留されたインク量に応じて左右に膨張または収縮するようになっている。なお、図2において、中間インクパック51のうち熱溶着された部分に2重ハッチングを施している。
【0025】
上流側継手53fは、図3に示すように、中間インクパック51の前端部分における例えば上下中央部分に取り付けられている。詳しく説明すると、上流側継手53fは、その後部が断面視略菱形に形成されて、2枚のパックフィルム52に挟持されて溶着されている。上流側継手53fの前部には、内部供給チューブ59が接続されている。内部供給チューブ59は、収容筐体41内において輪ができる程度に長さに十分余裕を持たせた状態で、導入継手43と上流側継手53fとに接続されている。
【0026】
ヘッド側継手53bは、中間インクパック51の後端部分における例えば上下中央部分に取り付けられている。また、ヘッド側継手53bは、前部が上流側継手53fと同様に断面視略菱形に形成されて2枚のパックフィルム52に挟持されて溶着され、一方で後部は後方に突出し、収容筐体41に固定されている。中間カートリッジ40がカートリッジ受容部16に対して後方に挿入されると、カートリッジ受容部16に設けられた突起状のインク供給端子17がヘッド側継手53bに対して後方から挿入される。これにより、中間インクパック51に貯留されたインクが、このインク供給端子17から図示しない第2供給チューブを経由してプリンタヘッド15bに供給されるようになっている。
【0027】
上流側膨張規制金具54fとヘッド側膨張規制金具54bとは、同一構成となっているため、ここでは図4を参照しながらヘッド側膨張規制金具54bを例に挙げて説明する。ヘッド側膨張規制金具54bは、例えば金属製板材を断面視U字状(二股状)に折り曲げて形成され、図4に示すように、左右に対向した挟持板58b同士の間隔が例えば約2mmになるように形成されている。ヘッド側膨張規制金具54bの内側に位置した中間インクパック51には、保護テープ55bが巻かれている。中間インクパック51にインクが充填された状態において、中間インクパック51は左右に例えば約1.2mmの隙間(インクが流動可能な隙間)が形成される。
【0028】
エンド検出板56は、中間インクパック51の膨張または収縮に伴う変形に耐えうる剛性を有した平板状部材を用いて形成され、その左面が中間インクパック51の略中央部分(具体的には、保護テープ55fと保護テープ55bとの間の領域)に貼り付けられている(図2参照)。また、エンド検出板56の後方下部には、左方に延びる検出爪部56aが形成されている(図5参照)。
【0029】
また、図2に示すように、エンド検出板56には、上下に突出した突起部56cが形成されている。この突起部56cは、中間インクパック51にエンド検出板56が貼り付けられる際に、位置決めとして利用される。例えば、突起部56cの形状に合わせて形成された治具(図示せず)を用いて、中間インクパック51の所定位置にエンド検出板56が貼り付けられる。このようにして貼り付けられたエンド検出板56は、収容筐体41の内壁に対して隙間を有して接触しない構成となっている。そのため、中間インクパック51の膨張および収縮に応じてエンド検出板56が左右に移動したとき、突起部56cと収容筐体41の内壁とが接触することがなく、後述するニアエンド状態を高精度に検出できる。
【0030】
このように構成される追加インクタンク24および中間カートリッジ40は、例えば、マゼンタ、イエロー、シアンおよびブラックの複数の色から構成される。そして、対応する色の追加インクタンク24と中間カートリッジ40とが、第1供給チューブ27により接続されている。
【0031】
以上ここまで、プリンタ装置10の全体構成について説明した。以下においては、本発明に係るインク供給システム20のうちの中間カートリッジ40の組立構成について説明する。
【0032】
まず、中間インクパック51に対するヘッド側膨張規制金具54bの取付構成について説明する。中間インクパック51の後端部近傍に、ヘッド側膨張規制金具54bよりも若干前後幅の広い保護テープ55bを帯状に巻き付ける。そして、保護テープ55bが巻かれた部分を挟持板58b同士の隙間に挿入して、中間インクパック51の後端部近傍をヘッド側膨張規制金具54bにより左右に挟持させる。ここで、中間インクパック51に保護テープ55bを巻き付けておくことにより、仮にヘッド側膨張規制金具54bの加工時に発生したバリやカエリが除去されず残っていたとしても、このバリ等により中間インクパック51が傷付けられることを防止できる。一方、上流側膨張規制金具54fは、上述のヘッド側膨張規制金具54bと同様にして、中間インクパック51の前端部近傍に巻かれた保護テープ55fを覆うように取り付けられて、中間インクパック51の前端部近傍を左右に挟持している。
【0033】
次に、収容筐体41に対するインクパックアッセンブリ50の取付構成について説明する。図2に示すように、エンド検出板56を右側に位置させた状態で、収容筐体41に対してインクパックアッセンブリ50を収容し、インクパックアッセンブリ50のうちで後端部分から保護テープ55fの後端部分に至る範囲(図2の矢印Aで示す範囲)を、収容筐体41の左側底面に貼り付けて固定する。一方、インクパックアッセンブリ50のうちで前端部分から保護テープ55fの後端部分に至る範囲(図2の矢印Bで示す範囲)を、収容筐体41の左側底面に貼り付けることなく前後に変形可能なフリーな状態としておく。
【0034】
このようにして、収容筐体41にインクパックアッセンブリ50が取り付けられて構成された中間カートリッジ40の右側面は、図示しない板状の蓋部材により覆われている。上記の上流側膨張規制金具54fおよびヘッド側膨張規制金具54bの右面には、例えばスポンジ状のクッション部材(図示せず)が取り付けられている。そのため、例えば搬送中に振動等により中間カートリッジ40が揺すられたとしても、フリーとなって取り付けられた上流側膨張規制金具54fと蓋部材とが直接接触することを防ぐことができ、これらの部材の破損を防止可能である。
【0035】
以上ここまで、中間カートリッジ40の組立構成について説明した。以下においては、本発明に係るインク供給システム20の作動について、追加インクタンク24(上流側インクパック25)にインクが貯留されている場合と、インクが全て供給されて空となった場合とに分けて説明する。
【0036】
まず、追加インクタンク24にインクが貯留されている場合について説明する。この場合、追加インクタンク24のインクは、水頭差により自動的に、第1供給チューブ27および内部供給チューブ59を経由して、上流側継手53fから中間インクパック51に供給される。この状態で、プリンタヘッド15bから例えば印刷媒体Mに向けてインクが吐出されて印刷が行われると、その吐出量に応じて、中間インクパック51に充填されたインクが、ヘッド側継手53bから第2供給チューブを経由してプリンタヘッド15bに供給されるようになっている。なお、上流側インクパック25に満杯(例えば2リットル)のインクが貯留されている場合、中間インクパック51の内部には最大で5kPa程度の水頭差による圧力が作用する。
【0037】
上記のように、追加インクタンク24にインクが貯留されている場合、中間インクパック51にはインクが供給されて右方へ膨張する。このとき、中間インクパック51のうちで、上流側膨張規制金具54fにより左右に挟持された部分および上流側膨張規制金具54fよりも前方に位置した部分は、上流側膨張規制金具54fにより左右への膨張が規制され(図3参照)、また、中間インクパック51のうちで、ヘッド側膨張規制金具54bにより左右に挟持された部分およびヘッド側膨張規制金具54bよりも後方に位置した部分は、ヘッド側膨張規制金具54bにより左右への膨張が規制される(図4参照)。
【0038】
そのために、中間インクパック51にインクが充填された状態において、従来のように上流側継手53f(ヘッド側継手53b)の部分に、上流側継手53f(ヘッド側継手53b継手)とパックフィルム52との熱溶着を剥がすような力が集中的に作用することを防止でき、パックフィルム52に亀裂が入ることを確実に防ぐことが可能である。本実施例のように大容量の追加インクタンク24を搭載することにより、上流側インクパック25の交換サイクルが長くなり、中間インクパック51が長期間に亘って膨張した状態となる場合においても、上流側継手53f部分およびヘッド側継手53b部分の膨張が規制されるので、インク漏れの発生を確実に防止可能である。
【0039】
このように、中間インクパック51にインクが充填されると、エンド検出板56が貼り付けられた部分が右方に膨張し、それに伴ってエンド検出板56が右方に移動されて、検出爪部56aの先端が収容筐体41の内側に位置する(図5参照)。よって、このときは、検出爪部56aが収容筐体41から左方へ突出していないことが受光部において検出され、追加インクタンク24に十分インクが貯留されていると判断されて警告等が行われず印刷が継続される。
【0040】
ところで、中間インクパック51が右方に膨張すると、それに伴って上流側継手53fおよび上流側膨張規制金具54fには後方に引っ張られる力が作用する。このとき、上述のように、インクパックアッセンブリ50のうちで前端部分から保護テープ55fの後端部分に至る範囲(図2の矢印Bで示す範囲)が、前後に変形(移動)可能となっている。そのため、上記の後方に引っ張られる力が作用した場合に、矢印Bで示す範囲が後方に移動してその力を吸収することができる。よって、中間インクパック51に上記の力が作用して損傷することを防止でき、インク漏れを一層効果的に防止可能である。また、内部供給チューブ59は、長さに十分余裕を持たせた状態で導入継手43と上流側継手53fとに接続されているので、内部供給チューブ59と導入継手43との接続部分、および内部供給チューブ59と上流側継手53fとの接続部分に、接続を離そうとする無理な力が作用することがない。
【0041】
次に、追加インクタンク24のインクが全て供給されて空となった場合について説明する。
【0042】
上述のように、プリンタヘッド15bにおけるインクの吐出に応じて、中間インクパック51からプリンタヘッド15bへのインク供給、および上流側インクパック25から中間インクパック51へのインク供給が繰り返して行われると、ある時点において、上流側インクパック25のインクが空となる。そうすると、上流側インクパック25から中間インクパック51へのインク供給が行われないまま、中間インクパック51からプリンタヘッド15bへのインク供給が行われるので、中間インクパック51に貯留されたインクが減少していく。それに伴って、膨張していた中間インクパック51は左方へ収縮するとともに、中間インクパック51に固定されたエンド検出板56が徐々に左方へ移動していく。
【0043】
ここで、中間インクパック51に貯留されたインクが例えば9g程度にまで減少した時点(ニアエンド状態)で、図5に示すように、収容筐体41から左方に検出爪部56aが突出するように構成されている(2点鎖線で示す検出爪部56b)。そのため、この突出した検出爪部56bを受光素子により光学的に検出することにより、中間インクパック51がニアエンド状態であること、すなわち上流側インクパック25が空であることが検出される。このとき、コントローラ13bは、操作部13aに例えば「インクパックを交換して下さい」等の警告を表示させる。この表示に基づき作業者は上流側インクパック25を交換するが、この交換作業は、中間インクパック51に貯留された9g程度のインクが消費される間に行うことができる。そのため、作業者は、プリンタ装置10の稼動を一旦停止させることなく、上流側インクパック25の交換作業を行うことができる。
【0044】
上述の実施形態においては、中間インクパック51が、インク貯留量に応じて左右へ膨張または収縮する向きでプリンタ装置10に搭載された構成例を説明したが、この構成に限定されるものではない。中間インクパック51は、例えばインク貯留量が増大して上方へ膨張し、反対に減少して下方へ収縮する向きでプリンタ装置10に搭載される構成でも良い。
【0045】
また、上述の実施形態においては、上流側膨張規制金具54fとヘッド側膨張規制金具54bとに分けた構成を例示して説明したが、この構成に限定されない。例えば、中間インクパック51の前後寸法に応じて、上流側膨張規制金具54fとヘッド側膨張規制金具54bとの下端部同士を連結して、1つの膨張規制金具として形成することも可能である。このようにした場合、部品点数の減少によるコスト低減や、中間インクパック51に装着する際に前後方向への位置調整が容易となる等の効果がある。
【0046】
上述の実施形態においては、上下に真っ直ぐ延びた上流側膨張規制金具54f(ヘッド側膨張規制金具54b)を例示して説明したが、この形状に限定されない。中間インクパック51に取り付けられたときに、上流側継手53f(ヘッド側継手53b)を囲むような形状であれば良く、例えば図2に2点鎖線で示す上流側膨張規制金具54mのように、略「F」字状に形成しても良い。
【0047】
また、上述の実施形態においては、中間インクパック51に上流側継手53fおよびヘッド側継手53bを溶着した構成を示して説明したが、この構成に限定されない。例えば、上流側継手53fおよびヘッド側継手53bの一方が、中間インクパック51と一体的に形成されてこの部分に亀裂が入る虞がない場合、上流側継手53fおよびヘッド側継手53bの他方近傍のみに膨張規制金具を取り付けると良い。
【0048】
上述の実施形態においては、断面視U字状に形成された上流側膨張規制金具54fおよびヘッド側膨張規制金具54bを例示したが、この形状に限定されない。例えば、断面視ロの字状に形成しても良い。
【0049】
上述の実施形態では、収容筐体41内において輪ができる程度に長さに十分余裕を持たせた内部供給チューブ59を例示したが、この構成に限られるものではない。例えば、収容筐体41内において輪を形成することなく、長さに若干の余裕を持たせて導入継手43と上流側継手53fとを接続した構成でも良い。
【0050】
上述の実施形態において、真っ直ぐな内部供給チューブ59を用いた構成例について説明したが、これに代えて例えばコイル状に巻かれて伸縮自在なチューブ(スパイラルチューブ)を用いて構成しても良い。
【0051】
また、上述の中間カートリッジ40を、図6(a)および(b)に示す中間カートリッジ70のように構成することも可能である。中間カートリッジ70は、収容筐体41に前後に延びる長穴41bが形成されており、この長穴41bに対して導入継手43が前後に移動可能に取り付けられている。また、内部供給チューブ59に代えて、L字状に折曲された例えば金属製の内部供給パイプ71が用いられ、導入継手43と上流側継手53fとに接続されている。この構成により、中間インクパック51が膨張したとき(図6(a)参照)、上流側継手53fは後方に移動するが、導入継手43、内部供給パイプ71および上流側継手53fが一体となって後方に移動する。これとは反対に中間インクパック51が収縮したとき(図6(b)参照)、上流側継手53fは前方に移動するが、導入継手43、内部供給パイプ71および上流側継手53fが一体となって前方に移動する。そのため、内部供給パイプ71と導入継手43との接続部分、および内部供給パイプ71と上流側継手53fとの接続部分に、接続を離そうとする無理な力が作用することがない。
【0052】
上述の実施形態においては、本発明を適用したプリンタ装置の一例として、一軸印刷媒体移動、一軸プリンタヘッド移動タイプのプリンタ装置10に適用した構成例について説明したが、本発明はこの構成に限定して適用されるものではない。例えば、二軸プリンタヘッド移動タイプのプリンタ装置や、二軸印刷媒体移動タイプのプリンタ装置にも適用することができる。また、使用するインクについても、紫外線硬化型インクや水性インクなど種々のインクを用いたプリンタ装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
15b プリンタヘッド
20 インク供給システム
24 追加インクタンク(上流側インク貯留部)
27 第1供給チューブ(上流側インク供給路)
40 中間カートリッジ(下流側インク貯留部)
41 収容筐体(ケース部材)
51 中間インクパック(インクパック)
53b ヘッド側継手(接続部材、ヘッド側接続部材)
53f 上流側継手(接続部材、上流側接続部材)
54b ヘッド側膨張規制金具(膨張規制部材、ヘッド側膨張規制部材)
54f 上流側膨張規制金具(膨張規制部材、上流側膨張規制部材)
56a 検出爪部(貯留状態検出手段)
58b 挟持板(対向挟持部)
59 内部供給チューブ(上流側インク供給路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが貯留された上流側インク貯留部と、
前記上流側インク貯留部から供給されたインクを一時貯留するとともに、貯留したインクを所望の印刷を施すプリンタヘッドへ供給する下流側インク貯留部とを有したインク供給システムであって、
前記下流側インク貯留部が、
扁平な袋状に形成されてその厚み方向に膨張および収縮可能でインクを貯留可能なインクパックと、
前記インクパックの膨張および収縮による厚みを基に、前記インクパックにおけるインクの貯留状態を検出する貯留状態検出手段とを備え、
前記インクパックが、
前記インクパックの縁部に接合されるとともに、前記インクパックの外部と内部とをインクが流入および流出可能に接続する接続部材と、
前記インクパックにおける前記接続部材近傍を前記厚み方向に挟持して前記接続部材近傍の前記厚み方向への膨張を規制する膨張規制部材とを備えたことを特徴とするインク供給システム。
【請求項2】
前記接続部材が、
前記上流側インク貯留部に繋がれた上流側インク供給路と前記インクパックの内部とを接続し、前記上流側インク供給路から前記インクパックへインクを流入させる上流側接続部材と、
前記プリンタヘッドに繋がれたヘッド側インク供給路と前記インクパックの内部とを接続し、前記インクパックから前記ヘッド側インク供給路へインクを流出させるヘッド側接続部材とからなり、
前記膨張規制部材が、
前記上流側接続部材近傍を前記厚み方向に挟持して前記上流側接続部材近傍の前記厚み方向への膨張を規制する上流側膨張規制部材と、
前記ヘッド側接続部材近傍を前記厚み方向に挟持して前記ヘッド側接続部材近傍の前記厚み方向への膨張を規制するヘッド側膨張規制部材とからなることを特徴とする請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項3】
前記上流側膨張規制部材および前記ヘッド側膨張規制部材のそれぞれは、前記厚み方向
に所定間隙を有して対向した対向挟持部が形成されたことを特徴とする請求項2に記載のインク供給システム。
【請求項4】
前記下流側インク貯留部が、前記インクパックを収容保持するケース部材を備え、
前記インクパックのうち前記上流側接続部材および前記上流側膨張規制部材が取り付けられた部分が前記ケース部材内において変位可能となって、前記インクパックの扁平な面の一方が前記ケース部材に固定されたことを特徴とする請求項2または3に記載のインク供給システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate