説明

インク受容性粒子、及び記録装置

【課題】画像の滲みや濃度ムラを抑制し、高画質化を実現可能なインク受容性粒子及びこれを用いた記録装置を提供する。
【解決手段】形状係数SF1が146以下のインク受容性粒子16とし、また、中間転写体12と、インク受容性粒子16を中間転写体12上に層状に供給する粒子供給装置18と、中間転写体12上に供給されたインク受容性粒子16によるインク受容性粒子層16A上にインク滴20Aを付与するインクジェット記録ヘッド20と、このインク滴20Aの付与されたインク受容性粒子層16Aを記録媒体8へ転写及び定着する転写定着装置22と、を備えた記録装置10に適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク受容性粒子、及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを利用した画像やデータ等の記録の一つとして、インクジェット記録方式がある。インクジェット記録方式の原理は、ノズル、スリット、或いは多孔質フィルム等から液体或いは溶融固体インクを吐出し、紙、布、フィルム等に記録を行うものである。インクを吐出する方法については、静電誘引力を利用してインクを吐出させる、いわゆる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用してインクを吐出させる、いわゆる圧力パルス方式、高熱により気泡を形成、成長させることにより生じる圧力を利用してインクを吐出させる、いわゆる熱インクジェット方式等、各種の方式が提案されており、これらの方式により、極めて高精細の画像やデータの記録物を得ることができる。
【0003】
このインクジェット記録方式も含め、インクを利用した記録方式では、浸透媒体や非浸透媒体などの多様な記録媒体に対し高画質で記録を行うために、中間体に記録した後、記録媒体に転写する方式が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、中間転写体上に、液体と接触することで増粘する粒子を付着させた後に、この粒子上にインクを付与する。インクを付与された粒子はインクの水分を吸収して膨潤し、粘度が上昇した状態となり、この粘度の上昇した粒子を被転写体へ転写させている。
【特許文献1】特開2001−10114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
中間転写体上に供給される粒子上にインクが付与されるので、この粒子にはインクを充分に吸収する吸液性能が要求されるが、付与されたインクはこの粒子間にも保持されることから、粒子間に保持されるインク量が不均一であると、画質劣化が発生する場合があった。
【0006】
本発明の課題は、画像の滲みや濃度ムラを抑制し、高画質化を実現可能なインク受容性粒子、及びこれを用いた記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
【0008】
請求項1に係る発明は、インクを受容するインク受容性粒子であって、形状係数SF1が146以下であることを特徴とするインク受容性粒子である。
請求項2に係る発明は、前記形状係数SF1が100より大きいことを特徴とする請求項1に記載のインク受容性粒子である。
請求項3に係る発明は、粒度分布GSDが1.6以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインク受容性粒子である。
【0009】
請求項4に係る発明は、中間転写体と、形状係数SF1が146以下であると共にインクを受容するインク受容性粒子を、前記中間転写体上に層状に供給する供給手段と、前記中間転写体上に供給された前記インク受容性粒子の層にインクを付与するインク付与手段と、前記インク受容性粒子の層を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された前記インク受容性粒子の層を定着する定着手段と、を有することを特徴とする記録装置である。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記中間転写体上に供給された前記インク受容性粒子の層における粒子密度を増加させる粒子密度増加手段を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の記録装置である。
請求項6に係る発明は、前記粒子密度増加手段は、前記中間転写体上に供給された前記インク受容性粒子の層に振動を付与することによって前記粒子密度を増加させることを特徴とする請求項5に記載の記録装置である。
【0011】
請求項7に係る発明は、形状係数SF1が146以下であると共にインクを受容するインク受容性粒子を、記録媒体上に層状に供給する供給手段と、前記記録媒体上に供給された前記インク受容性粒子の層にインクを付与するインク付与手段と、前記記録媒体上の前記インク受容性粒子の層を定着する定着手段と、を有することを特徴とする記録装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、画像の滲みや濃度ムラが抑制され、高画質化が図れる、という効果を奏する。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、インク受容製粒子の吸液力が向上し、高画質化が図れる、という効果を奏する。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、画像の滲みや濃度ムラが更に抑制され、さらなる高画質化が図れる、という効果を奏する。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、画像の滲みや濃度ムラが抑制され、高画質化が図れる、という効果を奏する。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、濃度ムラや画像欠けが更に抑制され、さらなる高画質化が図れる、という効果を奏する。
【0017】
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、簡易な構成で更なる高画質化が図れる、という効果を奏する。
【0018】
請求項7に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、画像の滲みや濃度ムラが抑制され、高画質化が図れる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同じ作用・機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0020】
本実施形態に係る記録装置10は、図1及び図2に示すように、例えば、無端ベルト状の中間転写体12、中間転写体12表面を帯電させる帯電装置28、中間転写体12上の帯電された領域にインク受容性粒子16を供給し粒子層を形成する粒子供給装置18、粒子層の粒子密度を増加させるための密度増加装置15と、粒子層上にインク滴を吐出し画像を形成するインクジェット記録ヘッド20、記録媒体8を中間転写体12と重ね合わせ、圧力及び熱を加えることにより記録媒体8上にインク受容性粒子層を転写及び定着する転写定着装置22を含んで構成されている。そして、粒子供給装置18には、供給管19Aを介してインク受容性粒子収納カートリッジ19が脱着可能に連結されている。
【0021】
本実施の形態で用いられるインク受容性粒子16は、詳細は後述するが、インクが当該粒子と接触したとき、インク成分を受容するものである。ここで、インク受容性とは、インク成分の少なくとも一部(少なくとも液体成分)を保持することを示す。そして、インク受容性粒子は、例えば、全単量体成分に対して極性基を持つ極性単量体の比率が10mol%以上100mol%以下の有機樹脂を少なくとも含んで構成されている。具体的には、インク受容性粒子は、例えば、上記有機樹脂を含んで構成される粒子(以下、親水性有機粒子と称する。)を有する構成が挙げられる(以下、この親水性有機粒子を含んで構成される粒子を「母粒子」と称する)。
【0022】
インク受容性粒子16は、母粒子を親水性有機粒子単独の粒子(一次粒子)で構成した形態でもよいし、母粒子を少なくとも親水性有機粒子が集合した複合体粒子で構成した形態であってもよい。
具体的には、例えば、図5に示すように、インク受容性粒子16は、親水性有機粒子201A単独の粒子(一次粒子)で構成された母粒子201と、母粒子201に付着された無機粒子202と、を有する形態が挙げられる。母粒子201を親水性有機粒子201A単独の粒子(一次粒子)で構成した形態の場合、インク受容性粒子16がインクを受容する際、インクがインク受容性粒子16に付着すると、インク受容性粒子16間の間隙にインクが捕獲(トラップ)されると共に、少なくともインクの液体成分が親水性有機粒子201Aによって吸液される。
【0023】
また、図6に示すように、インク受容性粒子16は、親水性有機粒子201Aと無機粒子201Bとが複合化された複合体粒子の母粒子201と、母粒子201に付着された無機粒子202と、を有する形態も挙げられる。なお、この複合体粒子の母粒子201は各粒子間の空隙により空隙構造が形成される。この場合、インク受容性粒子16がインクを受容する際、まず、インクがインク受容性粒子16に付着すると、インク受容性粒子16間の間隙にインクがトラップ(捕獲)されると共に、少なくともインクの液体成分が、この複合体粒子としてのインク受容性粒子16を構成する各粒子(少なくとも親水性有機粒子)間の空隙(以下、粒子間空隙をトラップ構造と称する場合がある)により捕獲(トラップ)される。このとき、インクの成分のうち記録材は、インク受容性粒子16表面に付着又はトラップ構造により捕獲(トラップ)される。このようにして、インク受容性粒子16はインクを受容する。そして、インクを受容したインク受容性粒子16が記録媒体8に転写されることで、記録が行われる。
【0024】
このトラップ構造によるインク液体成分の捕獲(トラップ)は、粒子間の空隙(物理的な粒子壁構造)による物理的及び/又は化学的な捕獲である。
【0025】
そして、母粒子201を少なくとも親水性有機粒子201Aが集合した複合体粒子で構成した形態を適用することで、当該複合体粒子を構成する粒子間の空隙(物理的な粒子壁構造)による捕獲(トラップ)に加え、親水性有機粒子201Aによってインク液体成分が吸液・保持される。
【0026】
また、インク受容性粒子16が記録媒体8に転写された後には、インク受容性粒子16を構成する親水性有機粒子201Aの成分は、インクに含まれる記録材の結着樹脂や被覆樹脂としても機能する。さらに、インク受容性粒子16が複合体粒子の場合、そのトラップ構造に記録材をトラップする。特に、インク受容性粒子16を構成する親水性有機粒子201Aの成分としては、透明樹脂を適用することが望ましい。
【0027】
なお、記録材として顔料等の不溶成分、分散粒子状物を用いたインク(例えば顔料インク)の定着性(耐擦性)を改善するためにはインクに多量の樹脂添加が必要だが、インク(その処理液含む)中に多量のポリマーを添加すると、インク吐出手段のノズル目詰り等の信頼性が悪化してしまう。これに対し、上記構成では、インク受容性粒子16を構成する有機樹脂成分が当該樹脂の機能を果たすことも可能である。
【0028】
ここで、「前記複合体粒子を構成する粒子間の空隙、及びインク受容製粒子間の空隙」、即ち「トラップ構造」は、少なくとも液体を捕獲し得る物理的な粒子壁構造である。そして、この空隙の大きさは、最大口径で、0.1μm以上5μm以下であることが望ましく、より望ましくは0.3μm以上1μm以下である。特に、空隙の大きさは、記録材、特に例えば体積平均粒径100nmの顔料をトラップし得る大きさであることがよい。なお、最大開口径が50nm未満の微細孔が存在してもよい。また、空隙や毛細管は粒子内部で通じていることがよい。
【0029】
この空隙の大きさは、次のようにして求める。粒子表面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置に読み取り、2値化処理により空隙を検出し、空隙の大きさ、及び、分布を解析することで求めることが可能である。
【0030】
このように、トラップ構造は、インクの成分のうち液体成分のみならず、記録材もトラップすることがよい。インク液体成分と共に記録材、特に顔料をトラップ構造に捕獲(トラップ)させると、インク受容性粒子内部に記録材が偏在することなく保持・固定される。なお、インクの液体成分は、主にインク溶媒や分散媒(ビヒクル液体)である。
【0031】
ここで、本実施の形態におけるインク受容性粒子16の粒径は、球換算平均直径が0.1μm〜100μmであることが好ましく、より好ましくは1.0μm〜20μm、さらに好ましくは3μm〜15μmである。ここで、球換算平均直径は次のように求められる。粒子サイズによって最適方法は異なるが、例えば粒子を液体中に分散し光散乱原理で粒径を求める、粒子の投影像を画像処理で求める等多種の方法が利用できる。汎用的に使用できる方法としては、マイクロトラックUPA法やコールターカウンター法が挙げられる。
【0032】
また、本実施の形態におけるインク受容性粒子16の形状係数SF1は、100以上146以下の範囲内であり、100より大きく(100を含まない)140以下の範囲内であることがより望ましく、105以上 135以下の範囲内であることが更に好ましい。
【0033】
なお、本実施の形態におけるインク受容性粒子16の粒径、形状係数SF1、及び後述する粒度分布は、何れについても、詳細には、上記説明した母粒子201の粒径、形状係数、及び粒度分布を示している。なお、インク受容性粒子16が図6に示すような複合粒子として構成されている場合には、この複合体粒子としての母粒子201の粒径、形状係数、及び粒度分布を示すものとする。
【0034】
インク受容性粒子16の形状係数SF1が100以上146以下であると、該範囲を超える場合に比べてインク受容性粒子16の形状が均一になるため、中間転写体12に供給されたインク受容性粒子16によるインク受容性粒子層16Aの厚み及びインク受容性粒子層16Aを構成するインク受容性粒子16同士の間隙の大きさがより均一となる。このため、詳細は後述する作用の欄で説明するが、インク受容性粒子層16A上に供給されたインクがインク受容性粒子16同士の間隙へ均一に浸透され、結果的に画像滲みや濃度ムラ、及び画像欠落の発生が抑制される。
【0035】
また、このインク受容性粒子16の形状係数SF1が100を超える値である、すなわち100ではない値である方が、形状係数SF1が100である場合に比べて、インク受容性粒子16同士の間隙が大きくなり、吸液面積を増加させることができ、インクの吸液性向上の観点からは好ましい。
【0036】
ここで上記形状係数SF1は、下記式(1)により求められる。
SF1=(ML/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(1)
上記式(1)中、MLはインク受容性粒子16の絶対最大長、Aはインク受容性粒子16の投影面積を各々示す。SF1は、主に顕微鏡画像または走査電子顕微鏡画像を画像解析装置によって解析することにより数値化される。SF1は100に近づくほど真球とみなされ、数値が大きくなるほど粒子の最大長さと最小長さに大きな差を有し、不定形になることを意味する。
【0037】
前記SF1は、主に顕微鏡画像または走査電子顕微鏡(SEM)画像を、画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、例えば、以下のようにして算出することができる。すなわち、スライドガラス表面に散布したインク受容性粒子16の光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のインク受容性粒子16の最大長と投影面積を求め、上記式(1)によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0038】
このインク受容性粒子16の粒度分布GSDは、1,6以下が好ましく、1.4以下がより好ましく、1.3以下が更に好ましい。前記粒度分布GSDが上記範囲内であると、インク受容性粒子層16Aを構成するインク受容性粒子16同士の間隙の大きさがより均一となる。このため、詳細は後述する作用の欄で説明するが、インク受容性粒子層16A上に供給されたインクがインク受容性粒子16同士の間隙へ均一に浸透され、結果的に画像滲みや濃度ムラの発生が抑制される。
【0039】
なお、粒度分布は、粒子が溶解せず且つ屈折率既知であってその値が粒子と異なり、可視光を透過するような溶媒に粒子を分散させ、例えばLS 13 320(ベックマンコールター社製)などの光散乱式の粒度測定機によって測定された粒度分布を、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、個々のインク受容性粒子16の体積について小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を、体積平均粒子径D16vと定義し、累積50%となる粒径を、体積平均粒子径D50vと定義する。同様に、累積84%となる粒径を、体積平均粒子径D84v、と定義する。この際、粒度分布(GSD)はD84v/D16vとして定義される。これらの関係式を用いて、粒度分布(GSD)を算出する。
【0040】
帯電装置28の上流側には、離型剤14Dを供給して離型層14Aを形成する離型剤供給装置14が配置される。
【0041】
帯電装置28により表面に電荷を形成した中間転写体12の表面は粒子供給装置18にてインク受容性粒子16を層として形成され、粒子層上には各色ごとのインクジェット記録ヘッド20すなわちインクジェット記録ヘッド20K、インクジェット記録ヘッド20C、インクジェット記録ヘッド20M、及びインクジェット記録ヘッド20Y各々から各色のインク滴が吐出されカラー画像が形成される。
【0042】
表面にカラー画像が形成された粒子層は転写定着装置(転写定着ロール)22にて記録媒体8にカラー画像ごと転写される。転写定着装置22の下流には、中間転写体12表面に残留しているインク受容性粒子16の除去、粒子以外の異物(記録媒体8の紙粉等)の中間転写体付着物の除去を行うためのクリーニング装置24が配置されている。
【0043】
カラー画像を転写された記録媒体8はそのまま搬出され、中間転写体12は再度帯電装置28で表面に電荷を形成される。このとき、記録媒体8に転写されたインク受容性粒子はインク滴20Aを吸収・保持するので速やかに搬出が可能でされる。
【0044】
また、必要に応じて、クリーニング装置24と離型剤供給装置14の間(以下、AとBとの間とは特記がない限り、いずれも含まない間を意味する)に、中間転写体12表面に残留する電荷を除去する為の除電装置29を配置してもよい。
【0045】
本実施形態においては、中間転写体12は、厚さ1mmのポリイミドフィルムのベース層の上に厚さ400μmのエチレンプロピレンゴム(EPDM)の表面層が形成されている。ここでは表面抵抗値が1013Ω/□程度、体積抵抗値が1012Ω・cm程度(半導電性)であることが望ましい。
【0046】
中間転写体12が周動され、まず離型剤供給装置14により中間転写体12表面に離型層14Aが形成される。離型剤供給装置14の供給ロール14Cにより中間転写体12表面に離型剤14Dが供給され、ブレード14Bで層厚を規定する。
【0047】
このとき、連続的に画像形成及びプリントを行う目的で、離型剤供給装置14を中間転写体12に連続的に接触するようにしてもよいし、中間転写体12から離間する構成としてもよい。
【0048】
離型剤供給装置14に、独立した液体供給システム(図示せず)より離型剤14Dを供給して、離型剤14Dの供給がとぎれないようにしてもよい。
【0049】
次に、帯電装置28によって正の電荷を中間転写体12表面に付与することにより、中間転写体12表面に正の電荷が帯電される。ここでは、粒子供給装置18の供給ロール18Aと中間転写体12表面とで形成しうる電界による静電力により、インク受容性粒子16が中間転写体12表面に供給/吸着可能な電位を形成すればよい。
【0050】
本実施形態においては、帯電装置28を用いて、帯電装置28と中間転写体12を挟んで配置されている従動ロール31(グラウンドに接続)間に電圧を印加し、中間転写体12表面を帯電させる構成としている。
【0051】
帯電装置28は、ステンレスを材料とする棒状の外周面に、導電性付与材を分散させた弾性層(発泡ウレタン樹脂)を形成し、体積抵抗率10Ω・cm以上10Ω・cm以下程度に調整したロール形状の部材とする。さらに、弾性層の表面を厚さ5μm以上100μm以下の撥水撥油性の被覆層(例えば四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)で構成)で被覆する。
【0052】
帯電装置28にはDC電源が接続され、従動ロール31はフレームグランドに電気的に接続されている。帯電装置28は、従動ロール31との間で中間転写体12を挟みつつ従動し、押圧位置では、接地された従動ロール31との間に所定の電位差が生じるため、中間転写体12の表面に電荷を与えることができる。ここでは帯電装置28により中間転写体12表面に例えば電圧1kvを印加し、中間転写体12表面を帯電させる。
【0053】
また、帯電装置28をコロトロン等で構成してもよい。
【0054】
次に粒子供給装置18により、中間転写体12表面にインク受容性粒子16が供給されると、中間転写体12上にはインク受容性粒子16による粒子層であるインク受容性粒子層16Aが形成される。粒子供給装置18は、インク受容性粒子16が収容される容器の、中間転写体12と向い合う部分に供給ロール18Aが配され、供給ロール18Aに押圧するように帯電ブレード18Bが配される。この帯電ブレード18Bは供給ロール18A表面に供給するインク受容性粒子16の層厚を規制する機能も併せ持つ。
【0055】
供給ロール18A(導電性ロール)にインク受容性粒子16を供給し、帯電ブレード18B(導電性ブレード)でインク受容性粒子層16Aを規制するとともに中間転写体12表面の電荷と逆極性である負に帯電する。供給ロール18Aはアルミ製の中実ロール、帯電ブレード18Bは圧力をかけるためにウレタンゴムが獲り付けられた金属板(SUSなど)を用いることができる。帯電ブレード18Bはドクターブレード方式で供給ロール18Aと接する。
【0056】
帯電されたインク受容性粒子16は供給ロール18A表面に例えば1層の粒子層を形成し、中間転写体12表面と対向する部位に搬送され、これと近接すると供給ロール18Aと中間転写体12表面との電位差により形成された電界により、帯電したインク受容性粒子16は静電力により中間転写体12表面に移動する。
【0057】
この時、中間転写体12表面に1層の粒子層を形成するように中間転写体12の移動速度と供給ロール18Aの回転速度を相対的に設定する(周速比)。この周速比は、中間転写体12の帯電量やインク受容性粒子16の帯電量、供給ロール18Aと中間転写体12の位置関係等、他のパラメータに依存する。
【0058】
上記の、1層のインク受容性粒子層16Aを形成する周速比を基準に、供給ロール18Aの周速を相対的に早くすることにより、中間転写体12上に供給される粒子数を増加させることができる。転写される画像濃度が低い(インク打ち込み量が少ない(例えば0.1g/m以上1.5g/m以下))場合には、層厚を必要最小限の厚さ(例えば、1μm以上5μm以下)とし、また、画像濃度が高い(インク打ち込み量が多い(例えば4g/m以上15g/m以下))場合には、インク液体成分(溶媒や分散媒)を保持可能である充分な層厚(例えば10μm以上25μm以下)となるように制御することが望ましい。
【0059】
例えば、インク打ち込み量が少ない文字画像等の場合、中間転写体上の1層のインク受容性粒子層に対して像形成を行った場合、インク中の画像形成材(顔料)は中間転写体上のインク受容性粒子層表面に捕獲され、深さ方向に対して分布が少なくなるように、インク受容性粒子表面や内部の粒子空隙に固定される。
【0060】
例えば、最終的な画像となる画像層16Bの上に保護層となる粒子層16Cを設けたい場合には、インク受容性粒子層16Aを3層程度の厚みとし、最上層にインクで像形成を行えば((図4(A)参照)、像形成を行わない2層分の粒子層16Cが転写定着後には保護層となり画像層16Bの上に形成される(図4(B)参照)。
【0061】
あるいは2次色や3次色の画像等、インク打ち込み量が高い画像を形成する場合には、インク受容性粒子層を、インク液体成分(溶媒や分散媒)が保持可能で、記録材(例えば顔料)が捕獲され、最下層まで到達しない充分な粒子数となるようにインク受容性粒子16を積層させる。この場合には、転写定着後の画像層表面に画像形成材(顔料)は露出せず、像形成を行わないインク受容性粒子16は画像表面に保護層として形成されてもよい。
【0062】
次に、密度増加装置15がインク受容性粒子層16Aに対して、振動を付与する。本実施形態では、密度増加装置15としては、例えば、筐体に超音波に発生する超音波振動子を内蔵した装置が適用されている。超音波振動子としては、ピエゾ素子(例えば、ジルコン酸チタン酸鉛:PZTなど)などが挙げられる。
【0063】
この密度増加装置15は、中間転写体12外周面と対向して、インク受容性粒子層16Aに非接触で設けられてもよいし、接触して設けてもよい。また、中間転写体12の内周面と対向するように、非接触或いは接触して配設されてもよい。本実施形態では、密度増加装置15をインク受容性粒子層16Aと非接触で、中間転写体12外周面と対向して設けられている。
【0064】
なお、本実施の形態では、密度増加装置15は、中間転写体12上に供給されたインク受容性粒子16によるインク受容性粒子層16Aに振動を付与することで密度を増加させる場合を説明するが、圧力を付与することにより密度を増加させる構成であってもよい。
この場合には、密度増加装置15として、押圧ローラを適用し、この押圧ローラをインク受容性粒子層16Aの表面側から押し付けることで、圧力を付与する構成とすればよい。
【0065】
次に、インクジェット記録ヘッド20がインク受容性粒子層16Aにインク滴20Aを付与する。インクジェット記録ヘッド20は所定の画像情報に基づき、所定の位置にインク滴20Aを付与する。
【0066】
最後に、転写定着装置22により記録媒体8と中間転写体12を挟み込んで、インク受容性粒子層16Aに圧力と熱を加える事で、記録媒体8上にインク受容性粒子層16Aが転写される。
【0067】
転写定着装置22は加熱源を内蔵する加熱ロール22Aと、中間転写体12を挟んで対向する加圧ロール22Bとから構成され、加熱ロール22A及び加圧ロール22Bは接して接触部を形成する。加熱ロール22A及び加圧ロール22Bには、アルミコアの外表面にシリコーンゴムを被覆し、更にその上をPFAチューブにて被覆された物を使用することができる。
【0068】
加熱ロール22Aと加圧ロール22Bの接触部において、ヒーターによりインク受容性粒子層16Aが加熱され、かつ圧力が加わる為、記録媒体8にインク受容性粒子層16Aが転写されると共に定着される。
【0069】
このとき、非画像部におけるインク受容性粒子16を構成する有機樹脂粒子がガラス転移温度(Tg)以上に加熱されることにより軟化し(あるいは溶融され)、圧力により中間転写体12表面に形成された離型層14Aからインク受容性粒子層16Aが離形され、記録媒体8上に転写定着される。そして、圧力により中間転写体12表面に形成された離型層14Aからインク受容性粒子層16Aが離形され、記録媒体8上に転写される。この時、加熱によって転写定着性が向上する。本実施形態では加熱ロール22Aの表面を160℃に制御している。この時、インク受容性粒子層16Aに保持されたインク液体成分(溶媒や分散媒)は、転写後もそのままインク受容性粒子層16A内に保持され、定着される。また転写定着装置22より前に、中間転写体12に予備加熱を行ってもよい。
【0070】
なお、記録媒体8としては、浸透媒体(例えば、普通紙や、インクジェットコート紙等)、非浸透媒体(例えば、アート紙、樹脂フィルムなど)、いずれも適用することができる。また、記録媒体は、これらに限られず、その他、半導体基板など工業製品も含まれる。
【0071】
以下、本実施形態に係る記録装置10の画像形成のプロセスをより詳細に説明する。本実施形態に係る記録装置10では、図2に示すように、中間転写体12の表面には離型剤供給装置14にて離型層14Aが形成される。中間転写体12の素材がアルミやPETベースであれば特に離型層14Aを形成することが望ましい。あるいはフッ素樹脂・シリコーンゴム系の素材を用いて、中間転写体12の表面自体に離形性を持たせるようにしてもよい。
【0072】
次に帯電装置28にて中間転写体12の表面をインク受容性粒子16と逆の極性に帯電させる。これにより、粒子供給装置18の供給ロール18Aにて供給されるインク受容性粒子16を静電的に吸着させ、中間転写体12の表面にインク受容性粒子16の層が形成される。
【0073】
次いで中間転写体12の表面に粒子供給装置18の供給ロール18Aにてインク受容性粒子16を層状に供給する。例えば、中間転写体12上に形成されたインク受容性粒子層16Aはインク受容性粒子16が3層程度重なった厚みとなるように形成される。すなわち、上記のように帯電ブレード18Bと供給ロール18Aの空隙によってインク受容性粒子層16Aを所望の厚さに制御することで記録媒体8に転写されるインク受容性粒子層16Aの厚さが制御される。あるいは供給ロール18Aと中間転写体12の周速比によって制御してもよい。
【0074】
次に、形成されたインク受容性粒子層16Aに対し、その表面側から密度増加装置15へ振動を付与する。具体的には、密度増加装置15は、中間転写体12の搬送に伴って密度増加装置15に向かい合う領域に搬送されてきたインク受容性粒子層16Aへ、超音波によって振動を付与する。
【0075】
インク受容性粒子層16Aは、振動が付与されると、粒子層中で粒子も振動し余分な空隙がインク受容性粒子層16Aで埋められて、粒子間空隙が微細化され、インク受容性粒子層16A中の粒子密度が増加される。これに加え、インク受容性粒子16を複合体粒子で構成すると、その複合体粒子が解体し個々の粒子にばらけて、粒子層中での余分な空隙がインク受容性粒子層16Aで埋められて、よりインク受容性粒子層16A中の粒子密度が増加される。このときに、併せて、インク受容性粒子16間の間隙が均一な大きさとなるように調整されることとなる。
【0076】
インク受容性粒子層16A中の粒子密度が増加され、粒子間空隙が微細化されると、粒子間の空隙による吸液力(即ち毛細管力)が上昇すると共に、粒子間の空隙によるインクの保持性が向上される。
【0077】
また、密度増加装置15によって振動が付与されることで、インク受容性粒子層16Aの厚みのばらつき及び間隙の大きさのバラツキが抑制され、画質のムラの低減、光沢ムラが向上されると共に、当該層中のインク受容性粒子16間の空隙の大きさのばらつきが抑制されて、インクが付与された領域でインクが留まりやすくなり、インクの広がりが抑制される。
【0078】
ここで、密度増加装置15による振動周波数は、2kHz以上100kHz以下の範囲が望ましく、より望ましくは、5kHz以上50kHz以下であり、さらに望ましくは10kHz以下40kHz以下である。
【0079】
また、密度増加装置15にも、そのインク受容性粒子層16Aと接する表面がインク受容性粒子16の帯電極性と同極性で帯電されるように、電圧が印加されている。具体的には、インク受容性粒子16が負極性に帯電されているときは、密度増加装置15に負極性に帯電され、インク受容性粒子16が正極性に帯電されているときは、密度増加装置15に正極性に帯電される。
【0080】
このように帯電するように電圧を印加されると、密度増加装置15がインク受容性粒子層16Aへ振動を付与するとき、密度増加装置15表面とインク受容性粒子16とが静電的に反発作用が働く。
【0081】
次に、密度増加装置15によって刺激が付与されたインク受容性粒子層16A上に、圧電式(ピエゾ)、サーマル式などにより駆動される各色のインクジェット記録ヘッド20によってインク滴20Aが吐出され、インク受容性粒子層16Aに画像層16Bが形成される。インクジェット記録ヘッド20から吐出されたインク滴20Aは、インク受容性粒子層16Aに打ち込まれ、インクの液体成分はインク受容性粒子16間の空隙及びインク受容性粒子16を構成する空隙に速やかに吸収されるともに、記録材(例えば顔料)もインク受容性粒子16(構成する粒子)表面、インク受容性粒子16の間、或いはインク受容性粒子16を構成する粒子間の空隙に捕獲される。
【0082】
このときインク滴20Aに含まれるインク液体成分(溶媒や分散媒)はインク受容性粒子層16Aに浸透するが、顔料等の記録材はインク受容性粒子層16Aの表面又は粒子間空隙に捕獲される。すなわち、インク液体成分(溶媒や分散媒)はインク受容性粒子層16Aの裏面まで浸透させてもよいが、顔料等の記録材はインク受容性粒子層16Aの裏面には浸透しない。これにより、記録媒体8に転写した際には顔料等の記録材が浸透していない粒子層16Cが画像層16Bの上に層を形成するため、この粒子層16Cが画像層16Bの表面を封じ込める保護層となり、表面に記録材(例えば顔料などの色材)が露出しない画像が形成される。
【0083】
ここで、インク受容性粒子層16Aを構成する複数のインク受容性粒子16の形状係数SF1は、上記説明したように、形状係数SF1は、100以上146以下の範囲内とされている。
このため、従来技術のように、形状係数SF1が146を超える値である場合には、図7(A)及び図7(B)に示すように、中間転写体12上に供給されたインク受容性粒子17は、形状が不均一であったり、真球状からよりかけ離れた形状とされていることから、インク受容性粒子17間の間隙の大きさが不均一となる。このため、このインク受容性粒子17による粒子層17Aに供給されたインク滴20Aの、インク受容性粒子17の間に保持される量にばらつきが生じ、画像濃度ムラが発生したり、本来付与される印字領域(図7中、矢印Xによって示される領域参照)以外の領域(図7中、矢印Yによって示される領域参照)にまでインク滴20Aがにじんだり、画像抜けが発生したりする場合がある。
【0084】
一方、本実施の形態のインク受容性粒子層16Aにおいては、上記説明したように、インク受容性粒子16の形状係数SF1は、100以上146以下の範囲内とされていることから、図3(A)及び図3(B)に示すように、中間転写体12上に供給されたインク受容性粒子16は、形状係数SF1値が146を超える値である場合に比べて、より真球状に近い形状であることから、インク受容性粒子層16Aを構成するインク受容性粒子16間の間隙の大きさがより均一となる。このため、インク受容性粒子16によるインク受容性粒子層16Aに供給されたインク滴20Aの、インク受容性粒子16の間に保持される量にばらつきが発生することが抑制され、画像濃度ムラの発生が抑制される。また、インク受容性粒子16間の間隙の大きさが従来技術に比べて均一であることから、インク受容性粒子層16Aに付与されたインク滴20Aが均一にインク受容性粒子16間に保持され、印字領域(図3(B)中、矢印Xによって示される領域参照)以外の領域にまでインク滴20Aが滲んだり、画像欠けが発生することが抑制される。
【0085】
さらに、密度増加装置15によって、インク受容性粒子層16Aは、インクジェット記録ヘッド20によってインク滴20Aが付与される前に、中間転写体12上において密度を増加された状態とされていることから、インク滴20Aがインク受容性粒子16間の間隙に略均一な量保持され、さらなる画質劣化が抑制される。
【0086】
次いで、図2に示すように、画像層16Bの形成されたインク受容性粒子層16Aが中間転写体12から記録媒体8上に転写/定着されることにより、記録媒体8上にカラー画像が形成される。中間転写体12上のインク受容性粒子層16Aはヒーターなどの加熱手段にて加熱された転写定着装置(転写定着ロール)22によって、加熱・加圧され記録媒体8上に転写される。
【0087】
このとき後述のように加熱・加圧を調節することで画像表面の凸凹を調整し、光沢度を制御してもよい。また冷却剥離を行って光沢度を制御してもよい。
【0088】
インク受容性粒子層16Aが剥離した後の中間転写体12表面に残った残留粒子16Dはクリーニング装置24にて回収され(図1参照)、中間転写体12の表面は再度帯電装置28にて帯電され、インク受容性粒子16が供給されインク受容性粒子層16Aが形成される。
【0089】
ここで、図4には、本発明に係る画像形成に用いられるインク受容性粒子層16Aが示されている。図4(A)に示すように、中間転写体12の表面には離型層14Aが形成される。
【0090】
次いで中間転写体12の表面に粒子供給装置18にてインク受容性粒子16を層として形成する。前述のように形成されたインク受容性粒子層16Aはインク受容性粒子16が3層程度重なった厚みが望ましい。インク受容性粒子層16Aを所望の厚さに制御することで記録媒体8に転写されるインク受容性粒子層16Aの厚さを制御する。このときインク受容性粒子層16Aの表面はインク滴20Aの吐出による画像形成(画像層16Bの形成)に支障がない程度に均されている。
【0091】
また、吐出されたインク滴20Aに含まれる顔料等の記録材は図4(A)のようにインク受容性粒子層16Aの1/3以上半分以下程度まで浸透し、その下には顔料等の記録材の浸透していない粒子層16Cが残存している。
【0092】
転写定着装置(転写定着ロール)22による加熱・加圧転写で記録媒体8上に形成されたインク受容性粒子層16Aは図4(B)のように画像層16B上にインクを含まない粒子層16Cが存在するので、画像層16Bが直接表面に現れず一種の保護層としての働きをする。このため少なくとも定着後のインク受容性粒子16は透明である必要がある。
【0093】
粒子層16Cは転写定着装置(転写定着ロール)22によって加熱・加圧されるので表面を平らにすることが可能であり、画像表面の光沢度を加熱・加圧によって制御することもできる。
【0094】
また加熱によってインク受容性粒子16内部に捕獲されていたインク液体成分(溶媒や分散媒)の乾燥を促進させるようにしてもよい。
【0095】
インク受容性粒子層16Aに受容/保持されたインク液体成分(溶媒や分散媒)は、転写定着後もインク受容性粒子層16A内に保持され、自然乾燥にて除去される。
【0096】
上記の工程を経て、画像形成が終了する。中間転写体12については、インク受容性粒子16を記録媒体8に転写した後、中間転写体12上に残留した残留粒子16Dや、記録媒体8から離脱した紙粉の如く異物が存在する場合には、クリーニング装置24により除去してもよい。
【0097】
また、クリーニング装置24の下流に、除電装置29を配置してもよい。例えば、除電装置29として半導電性又は導電性ロールを使用して、従動ロール31(接地)と挟み込んで、中間転写体12表面に±3kV、500Hz程度の電圧を印加して、中間転写体12表面を除電する。
【0098】
上記の帯電電圧や、粒子層厚、定着温度等、その他の各種装置的条件は、インク受容性粒子16あるいはインクの組成、インクの吐出量等によって最適条件が決定される為、それぞれにおいて最適化する。
【0099】
<各構成要素>
次に、実施形態の各ステップの構成要素について詳しく説明する。
【0100】
<中間転写体>
インク受容性粒子層が形成される中間転写体12は実施形態のようにベルト状でも、あるいは円筒状(ドラム状)でもよい。中間転写体表面にインク受容性粒子を静電力により供給保持する為には、中間転写体外周面が半導電性あるいは絶縁性の粒子保持特性を有する必要がある。中間転写体表面の電気的特性として、半導電性の場合は表面抵抗率が1010Ω/□以上1014Ω/□以下、体積抵抗率が10Ω・cm以上1013Ω・cm以下、絶縁性の場合には表面抵抗率が1014Ω/□以上、体積抵抗率が1013Ω・cm以上の部材を用いる。
【0101】
ベルト形状の場合、基材としては、装置内におけるベルト回転駆動が可能で、必要な機械強度を持ち、特に転写/定着時に熱を使用する場合には、必要な耐熱性を持つものであればよい。具体的には、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ステンレス等が使用される。
【0102】
ドラム形状の場合、基材としてはアルミやステンレス等が考えられる。
【0103】
なお、転写定着装置(転写定着ロール)22における定着工程において電磁誘導による加熱方式を発揮するためには、転写定着装置(転写定着ロール)22ではなく中間転写体12に発熱層を形成してもよい。発熱層には電磁誘導作用を生じる金属が用いられる。例えばニッケル、鉄、銅、アルミニウム、クロム等が選択可能である。
【0104】
<粒子供給プロセス>
まず、離型剤供給装置14により、インク受容性粒子16供給前に中間転写体12表面に離型剤14Dによる離型層14Aを形成する。
【0105】
離型層14Aの供給方法は、離型剤14Dを内蔵し離型剤供給部材に離型剤14Dを供給し、供給部材により中間転写体12表面に離型剤14Dを供給することで離型層14Aを形成する方法や、離型剤14Dを含浸した供給部材により中間転写体12表面に離型層14Aを形成する方法等が使用される。
【0106】
離型剤14Dとしてはシリコーン系オイル、フッ素系オイル、ポリアルキレングリコール、界面活性剤等の離型材料が挙げられる。
【0107】
シリコーン系オイルとしては、例えば、ストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイルが挙げられる。
ストレートシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。
変性シリコーンオイルとしては、例えばメチルスチリル変性オイル、アルキル変性オイル、高級脂肪酸エステル変性オイル、フッ素変性オイル、アミノ変性オイルが挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、ポリブチレングリコールが挙げられるが、これらの中もポリプロピレングリコールが望ましい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられるが、これらの中でもノニオン性界面活性剤が望ましい。
【0108】
離型剤14Dの粘度は、例えば5mPa・s以上200mPa・s以下が望ましく、より望ましくは5mPa・s以上100mPa・s以下、さらに望ましくは5mPa・s以上50mPa・s以下である。
【0109】
なお、粘度の測定は次のようにして行われる。レオマット115(Contraves製)を測定装置として用いて、得られたインクの粘度を測定した。その測定は、試料を測定容器に入れ、所定の方法で装置に装着し、測定温度は40℃、せん断速度は1400s−1の条件で行った。
【0110】
離型剤14Dの表面張力は、例えば40mN/m以下(望ましくは30mN/m以下、より望ましくは25mN/m以下)の範囲が挙げられる。
【0111】
なお、表面張力の測定は次のようにして行われる。23±0.5℃、55±5%RHの環境において、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用いて、得られた試料の表面張力を測定した。
【0112】
離型剤14Dの沸点は、例えば760mmHg下で250℃以上(望ましくは300℃以上、より望ましくは350℃以上)の範囲が挙げられる。
【0113】
なお、沸点の測定は次のようにして行われる。JIS K2254に準じて測定を行い、その初留点を沸点として用いた。
【0114】
次に、帯電装置28にて中間転写体12の表面をインク受容性粒子16と逆の極性に帯電させる。そして、帯電された中間転写体12の表面にインク受容性粒子層16Aを形成する。このときインク受容性粒子層16Aを形成する方法は一般的な電子写真のトナーを感光体に供給する方法を応用できる。すなわち、予め中間転写体12表面に一般的な電子写真の帯電方式(帯電装置28による帯電など)により、電荷を供給する。インク受容性粒子16は中間転写体12表面の電荷と逆極性に摩擦帯電(1成分摩擦帯電方式や、2成分方式)させる。
【0115】
供給ロール18Aに保持されたインク受容性粒子16は中間転写体12の表面と電界を形成し、静電力により中間転写体12上に移動/供給され、保持される。このとき、インク受容性粒子層16Aに形成される画像層16Bの厚みにより(打ち込まれるインク量に合わせて)、インク受容性粒子層16Aの厚さをコントロールしてもよい。この際、インク受容性粒子16の帯電量の絶対値としては、5μc/g以上50μc/g以下の範囲が望ましい。
【0116】
ここで、インク受容性粒子層16Aの厚さは、1μm以上100μm以下が望ましく、より望ましくは1μm以上50μm以下、さらに望ましくは5μm以上25μm以下である。また、インク受容性粒子層中の空隙率(即ち、インク受容性粒子間空隙率+インク受容性粒子内空隙率(トラップ構造))は、10%以上80%以下であることが望ましく、より望ましくは30%以上70%以下、さらに望ましくは40%以上60%以下である。
【0117】
以下、1成分供給(現像)方式相当の粒子供給プロセスについて説明する。
【0118】
供給ロール18Aにインク受容性粒子16を供給し、帯電ブレード18Bで粒子層の厚みを規制するとともに帯電する。
【0119】
帯電ブレード18Bは供給ロール18A表面におけるインク受容性粒子16の層厚を規制する働きを持ち、例えば、供給ロール18Aへの圧力を変化させて、供給ロール18A表面のインク受容性粒子16の層厚を変化させる。例えば、供給ロール18A表面上のインク受容性粒子16層厚を例えば1層とし、中間転写体12の表面上に形成されるインク受容性粒子16層厚を概1層に形成する。また、帯電ブレード18Bの押圧力を低く制御し、供給ロール18A表面上に形成されるインク受容性粒子16層厚を増加させ、中間転写体12表面上に形成されるインク受容性粒子層厚を増加させてもよい。
【0120】
他の方法として、中間転写体12表面上に例えば1層の粒子層を形成する供給ロール18Aと中間転写体12の周速を1とした場合、供給ロール18Aの周速を速くして中間転写体12上に供給されるインク受容性粒子16の数を増加させ、中間転写体12上のインク受容性粒子層厚を増加させるよう制御することができる。また上記方法を組み合わせて制御することも可能である。上記構成では例えばインク受容性粒子16を負に帯電し、中間転写体12の表面を正に帯電させている。
【0121】
このようにインク受容性粒子層の層厚を制御することにより、インク受容性粒子層の消費量を抑えつつ、表面が保護層で覆われたパターンを形成することができる。
【0122】
帯電装置28における帯電ロールとしてはアルミニウム、ステンレススチール等を材料とする棒状又はパイプ状部材の外周面に導電性付与材を分散させた弾性層を形成し、体積抵抗率10Ω・cm以上10Ω・cm以下程度に調整したφ10mm以上25mm以下のロールなどが使用できる。
【0123】
弾性層は、ウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、シリコーン系ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、ポリノルボーネンゴム等の樹脂材料が単独又は二種以上の混合物として使用され、望ましい材料としては発泡ウレタン樹脂がある。
【0124】
上記発泡ウレタン樹脂としては、ウレタン系樹脂に中空ガラスビーズや熱膨張型マイクロカプセル等の中空体を混合分散して独立気泡構造を付与したものが望ましい。
【0125】
さらに、弾性層の表面を厚さ5μm以上100μm以下の撥水性の被覆層で被覆してもよい。
【0126】
帯電装置28にはDC電源が接続され、従動ロール31はフレームグランドに電気的に接続されている。帯電装置28は、従動ロール31との間で中間転写体12を挟みつつ従動し、押圧位置では、接地された従動ロール31との間に所定の電位差が生じる。
【0127】
<密度増加プロセス>
次に、形成されたインク受容性粒子層16Aに対し、密度増加装置15によってインク受容性粒子層16Aの粒子密度を増加させる。
【0128】
密度増加装置15としては、上述のように、筐体に超音波振動子を内蔵した装置を用いても良いが、この装置に限られず、偏芯回転部材(例えば、偏芯カムなど)などのタッピング部材を適用してもよい。タッピング部材は、インク受容性粒子層16Aに接触するように中間転写体12上に対向して設けて、直接振動を付与する。また、タッピング部材を中間転写体12の内周面側に設ける場合、中間転写体12の内周面と接触するようにタッピング部材を設けて、中間転写体12を振動させ、この振動によりインク受容性粒子層16Aへ振動を付与する。
【0129】
なお、密度増加装置15として圧力を付与する装置を用いる場合には、この密度増加装置15によってインク受容性粒子層16Aに付与される圧力は、10Pa以上10Pa以下が望ましく、より望ましくは、10Pa以上10Pa以下であり、さらに望ましくは10Pa以上10Pa以下である。
【0130】
<マーキングプロセス>
中間転写体12の表面に形成され、圧力が付与されたインク受容性粒子16の層(インク受容性粒子層16A)に、画像信号に基づいてインクジェット記録ヘッド20からインク滴20Aが吐出され、画像が形成される。インクジェット記録ヘッド20から吐出されたインク滴20Aは、インク受容性粒子層16Aに打ち込まれ、インク滴20Aはインク受容性粒子16内に形成された粒子間空隙により速やかに吸収され、記録材(例えば、顔料)はインク受容性粒子16表面又はインク受容性粒子16を構成する粒子間空隙に捕獲(トラップ)される。
【0131】
この場合、インク受容性粒子層16Aの表面に多くの記録材(例えば顔料)を捕獲(トラップ)することが望ましい。インク受容性粒子16内の粒子間空隙がフィルターの効果を発揮し、インク受容性粒子層16A表面に記録材(例えば顔料)をトラップすると共に、インク受容性粒子16内の粒子間空隙に捕獲(トラップ)され固定されることにより発現される。
【0132】
インク受容性粒子層16Aの表面及びインク受容性粒子16内の粒子間空隙に記録材(例えば顔料)を確実にトラップさせるために、インクとインク受容性粒子16を反応させることにより、記録材(例えば顔料)を速やかに不溶化(凝集)させる方法を採用してもよい。具体的には、上記反応はインクと多価金属塩との反応や、pH反応型を応用することが可能である。
【0133】
また、記録媒体の幅と同等又はそれ以上の幅を持つライン型インクジェット記録ヘッドが望ましいが、従来のスキャン型のインクジェット記録ヘッドを用いて、中間転写体上に形成された粒子層に順次画像を形成してもよい。インクジェット記録ヘッド20のインク吐出手段は、圧電素子駆動型、発熱素子駆動型等、インク吐出可能な手段であれば制限はない。インク自体も従来の染料を色材としたインクを用いることができるが、顔料インクが望ましい。
【0134】
<転写プロセス>
インク滴20Aを受容し、画像が形成されたインク受容性粒子層16Aは、記録媒体8に転写及び定着される事により、記録媒体8上に画像を形成する。上記転写と定着は別のプロセスにて行われてもよいが、望ましくは転写と定着を実質的に同時に行う方式がよい。定着はインク受容性粒子層16Aを加熱あるいは加圧することのいずれかの方法、あるいは加熱と加圧の両方を用いる方法等あるが、望ましくは加熱/加圧を実質的に同時に行う方式がよい。
【0135】
また、加熱/加圧を制御することで、インク受容性粒子層16Aの表面物性を制御し、グロス(光沢度)を制御することが可能である。また加熱/加圧した後、画像(インク受容性粒子層16A)が転写された記録媒体8を中間転写体12から剥離するときに、インク受容性粒子層16Aが冷却された後に剥離されてもよい。冷却方法は、自然冷却や空冷等の強制冷却などが考えられる。これらのプロセスに対しては、中間転写体12としてはベルト形状が望ましい。
【0136】
インク画像は中間転写体12上に形成されたインク受容性粒子16層の表層部に形成され(記録材(顔料)がインク受容性粒子層16Aの表面にトラップされる)、記録媒体8に転写される事により、インク画像がインク受容性粒子16の粒子層16Cにより保護されるように形成されることがよい。
【0137】
インク受容性粒子16層に受容/保持されたインク液体成分(溶媒や分散媒)は、転写定着後もインク受容性粒子16層内に保持され、自然乾燥にて除去される。
【0138】
<クリーニングプロセス>
中間転写体12表面をリフレッシュして繰返し使用を可能にするために表面をクリーニング装置24でクリーニングする工程が必要である。クリーニング装置24はクリーニング部と粒子搬送回収部(図示せず)から成り立っており、上記クリーニングにより、中間転写体12表面に残留しているインク受容性粒子16(残留粒子16D)の除去、粒子以外の異物(記録媒体8の紙粉等)といった中間転写体12の表面に付着した付着物の除去を行う。また、回収した残留粒子16Dは再利用してもよい。
【0139】
<除電プロセス>
離型層14Aを形成する前に除電装置29を用いて中間転写体12の表面を除電するようにしてもよい。
【0140】
以上説明した本実施形態に係る記録装置10では、中間転写体12表面に離型剤供給装置14により離型剤14Dを供給して離型層14Aを形成した後、帯電装置28により中間転写体表面を帯電させる。次に、中間転写体12の離型層が形成及び帯電された領域に粒子供給装置18よりインク受容性粒子16を供給させ粒子層を形成する。そして、密度増加装置15により、インク受容性粒子層16Aに振動を付与して粒子密度を増加させた後、インクジェット記録ヘッド20により粒子層上にインク滴を吐出し画像を形成する。これによりインク受容性粒子16にインクを受容させる。次に、記録媒体8を中間転写体12と重ね合わせ、転写定着装置22により圧力及び熱を加えることにより記録媒体8上にインク受容性粒子層を転写及び定着する。
【0141】
以下、本実施形態で好適に適用するインク受容性粒子16について詳細に説明する。以下、符号は省略して説明する。
【0142】
インク受容性粒子16は、上記説明したように、インクが当該粒子と接触したとき、インク成分を受容するものである。
【0143】
以下、インク受容性粒子16についてさらに詳細に説明する。インク受容性粒子16は、上述のように母粒子201を親水性有機粒子201A単独の粒子(一次粒子)で構成した形態であってもよく、母粒子201を少なくとも親水性有機粒子201Aが集合した複合体粒子で構成した形態あってもよい。そして、複合体粒子を構成する親水性有機粒子201A以外の粒子としては無機粒子202や多孔質粒子(図示省略)などが挙げられる。無論、母粒子201は複数の親水性有機粒子201Aのみが集合した複合体粒子で構成してもよい。
【0144】
インク受容性粒子16の具体的な構成としては、例えば、図5に示すように、親水性有機粒子201A単独の粒子(一次粒子)で構成した母粒子201と、母粒子201に付着された無機粒子202と、を有するインク受容性粒子16の形態が挙げられる。また、図6に示すように、親水性有機粒子201Aと無機粒子202とが複合化された複合体粒子の母粒子201と、母粒子201に付着された無機粒子202と、を有するインク受容性粒子16の形態も挙げられる。なお、この複合体粒子の母粒子は各粒子間の空隙により空隙構造が形成される。
【0145】
ここで、母粒子201を一次粒子で構成する場合、親水性有機粒子201Aと無機粒子202との質量比率(親水性有機粒子:無機粒子)は、質量比で99.9:0.1以上95:5以下の範囲内であり、好ましくは、99.9:0.1以上97.5:2.5以下の範囲内であり、更に好ましくは、99.5:0.5以上98:2以下の範囲内である。
また、母粒子201を複合体粒子で構成する場合、親水性有機粒子201Aと他の粒子との質量比率(親水性有機粒子:他の粒子)は、例えば、他の粒子が無機粒子202の場合、5:1乃至1:10の範囲であることが挙げられる。
【0146】
また、母粒子201の粒径は、球換算平均粒径が例えば0.1μm以上50μm以下(望ましくは0.5μm以上25μm以下、より望ましくは1μm以上10μm以下)の範囲が挙げられる。
【0147】
また、母粒子201を複合体粒子で構成する場合、そのBET比表面積(N)が例えば1m/g以上750m/g以下の範囲であることが挙げられる。
【0148】
そして、母粒子201を複合体粒子で構成する場合、複合体粒子は、例えば、粒子が半焼結状態で造粒されることで得られる。半焼結状態とは、粒子形状がある程度の残っており、当該粒子間で空隙を保持している状態を示す。なお、複合体粒子は、トラップ構造にインク液体成分がトラップされたとき、粒子の少なくとも一部が解離する、即ち複合体粒子が解体され、これを構成する粒子が、ばらけていてもよい。
【0149】
次に、親水性有機粒子201Aについて説明する。親水性有機粒子201Aは、例えば、全単量体成分に対する極性単量体の比率が10mol%以上100mol%以下であり、望ましくは20mol%以上90mol%以下であり、さらに望ましくは30mol%以上70mol%以下である有機樹脂を含んで構成されている。具体的には、親水性有機粒子201Aは、上記極性単量体の比率の有機樹脂(以下、吸水性樹脂と称する)を含んで構成されることがよい。
【0150】
ここで、極性単量体とは、極性基としてエチレンオキサイド基、カルボン酸、スルホン酸、置換若しくは未置換のアミノ基、水酸基、アンモニウム基及びこれらの塩を含む単量体である。例えば、正帯電性付与の場合、例えば(置換)アミノ基、アンモニウム基、(置換)ピリジン基やそのアミン塩、4級アンモニウム塩等の造塩化構造の単量体であることが望ましい。負帯電付与の場合、カルボン酸(塩)、スルホン酸(塩)等の有機酸(塩)構造の単量体であることが望ましい。
【0151】
なお、極性単量体の比率は、次のようにして求める。まず質量分析、NMR,IRなどの分析手法から有機成分の構成を特定する。その後、JIS K0070又はJIS K2501に準拠して、有機成分の酸価、塩基価を測定する。有機成分の構成、及び、酸価/塩基価から極性単量体の比率を計算で求めることができる。以下同様である。
【0152】
親水性有機粒子201Aは例えば吸液性樹脂で構成される。吸液したインク液体成分(例えば水、水性溶媒)が樹脂(ポリマー)の可塑剤として作用するため、軟化して定着性に寄与することが可能である
【0153】
吸液性樹脂は弱吸液性樹脂であることが好適である。この弱吸液性樹脂とは、例えば液体として水を吸収する場合、樹脂質量に対して数%(≒5%)から数百%(≒500%)、望ましくは5%以上150%以下程度の吸液が可能な親液性樹脂を意味する。
【0154】
吸液性樹脂は、例えば、親水性単量体の単独重合体、或いは親水性単量体と疎水性単量体との両単量体から構成された共重合体で構成することができるが、弱吸水性樹脂とするためには当該共重合体が望ましい。なお、単量体だけでなく、ポリマー/オリゴマー構造などのユニットをスタートに他のユニットを共重合させるグラフト共重合体やブロック共重合体でもよい。
【0155】
ここで、親水性単量体としては、−OH、−EOユニット(エチレンオキサイド基)、−COOM(Mは例えば水素、Na、Li、K等のアルカリ金属、アンモニア、有機アミン類等である。)、−SOM(Mは例えば水素、Na、Li、K等のアルカリ金属、アンモニア、有機アミン類等)、−NR(Rは例えば、H、アルキル、フェニル等である。)、−NRX(Rは例えば、H、アルキル、フェニル等であり、Xは例えば、ハロゲン、硫酸根、カルボン酸等の酸アニオン類、BF、等々である。)等を含む単量体が挙げられる。具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、不飽和カルボン酸、クロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。また、親水性ユニットもしくは単量体としては、セルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、でんぷん誘導体、単糖類・多糖類誘導体、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、等の重合性カルボン酸類やこれらの(部分)中和塩類、ビニルアルコール類、ビニルピロリドン、ビニルピリジンやアミノ(メタ)アクリレート及びジメチルアミノ(メタ)アクリレートの如き誘導体、更にはこれらのオニウム塩類、アクリルアミドやイソプロピルアクリルアミド等のアミド類、ポリエチレンオキサイド鎖含有ビニル化合物類、水酸基含有ビニル化合物類、多官能カルボン酸と多価アルコールから構成されるポリエステル類、特にトリメリット酸の如き3官能以上の酸を構成成分として含有し末端カルボン酸や水酸基を多く含む分岐ポリエステル、ポリエチレングリコール構造を含むポリエステル、等も挙げられる。
【0156】
疎水性単量体としては、疎水性基を有する単量体が挙げられ、具体的には、例えばオレフィン(エチレン、ブタジエン等)、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられる。疎水性ユニットもしくは単量体としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等、及びこれらの誘導体も挙げられる。
【0157】
この親水性単量体と疎水性単量体との共重合体である吸液性樹脂として、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン/(メタ)アクリル酸/(無水)マレイン酸類共重合体、エチレン/プロピレン等のオレフィン系ポリマー(又はこの変性体、又は共重合によるカルボン酸ユニット導入物)、トリメリット酸等で酸価を向上した分岐ポリエステル、ポリアミド等が好適に挙げられる。
【0158】
吸液性樹脂には、例えば、中和塩構造(例えばカルボン酸など)を含むことが挙げられる。このカルボン酸などの中和塩構造は、カチオン(例えばNa,Li等の一価金属カチオン等)を含むインクを吸液したとき、当該カチオンとの相互作用で、アイオノマーを形成する。
【0159】
吸液性樹脂には、置換或いは未置換アミノ基や、置換或いは未置換ピリジン基を含むことも望ましい。当該基は、殺菌効果や、アニオン基を有する記録材(例えば顔料や染料)との相互作用を及ぼす。
【0160】
ここで、吸液性樹脂において、親水性ユニット(親水性単量体)と疎水性ユニット(親水性単量体)とのモル比(親水性単量体:疎水性単量体)は、例えば5:95乃至70:30が挙げられる。
【0161】
また、吸収性樹脂は、インクから供給されるイオンによりイオン架橋してもよい。具体的には、吸水性樹脂中が(メタ)アクリル酸やマレイン酸等のカルボン酸を含む共重合体やカルボン酸を有する(分岐)ポリエステル等、樹脂中にカルボン酸を含むユニットを存在させることができる。樹脂中のカルボン酸と水性インク等の液体から供給されるアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、有機アミン・オニウムカチオン等とでイオン架橋や酸・塩基相互作用等が生じる。
【0162】
吸液性樹脂及び疎水性有機粒子を構成する非吸液性樹脂(以下、まとめて有機樹脂と称する)の共通の特性について説明する。
【0163】
吸液性樹脂は、直鎖構造でもよいが、分嵯構造がよい。また、吸液性樹脂は、非架橋もしくは低架橋であることが望ましい。また、吸液性樹脂は直鎖構造のランダム共重合体やブロック共重合体でもよいが、分岐構造の重合体(分岐構造のランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を含む)が更に好適に使用できる。例えば、重縮合で合成されるポリエステルの場合、分岐構造で末端基を増加させることができる。この分岐構造は、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリレート類等のいわゆる架橋剤を合成時に添加したり(例えば1%未満の添加)、架橋剤と共に開始剤を多量添加することで合成することが一般的な手法の一つである。
【0164】
吸液性樹脂には、更には低分子の4級アンモニウム塩類や有機ホウ酸塩類、サリチル酸誘導体の造塩化合物類等、電子写真トナー用帯電制御剤を吸液性樹脂に添加してもよい。導電性の制御は酸化スズや酸化チタン等の導電性(ここで、導電性とは例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する。以下、他も特記がない限り同様である。)、半導電性(ここで、半導電性とは例えば体積抵抗率が10Ωcm以上1013Ωcm以下を意味する。以下、他も特記がない限り同様である。)の無機物質添加が有効である。
【0165】
吸液性樹脂は、非結晶樹脂であることがよく、そのガラス転移温度(Tg)は、例えば40℃以上90℃以下が挙げられる。ガラス転移温度(及び融点)は、ASTMD3418−8に準拠して測定された主体極大ピークより求めた。主体極大ピークの測定には、パーキンエルマー社製のDSC−7を用いることができる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行った。
【0166】
吸液性樹脂の重量平均分子量は、5,000以上であり、好ましくは10,000以上1,000,000以下、さらに好ましくは10,000以上500,000以下である。重量平均分子量は、以下の条件で行ったものである。例えば、GPCは「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)装置」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、IR検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
【0167】
吸液性樹脂の酸価は、例えばカルボン酸基(−COOH)換算で50mgKOH/g以上777mgKOH/g以下が挙げられる。このカルボン酸基(−COOH)換算での酸価の測定は次のように行った。
【0168】
酸価は、JIS K0070に従って行い、中和滴定法を用いた測定で行った。即ち、適当量の試料を分取し、溶剤(ジエチルエーテル/エタノール混合液)100ml、及び、指示薬(フェノールフタレイン溶液)数滴を加え、水浴上で試料が溶けるまで充分に振り混ぜる。これに、0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の紅色が30秒間続いた時を終点とした。酸価をA、試料量をS(g)、滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液をB(ml)、fを0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクターとした時、A=(B×f×5.611)/Sとして算出した。
【0169】
以上説明した吸液性樹脂は、いずれの形態であっても極性単量体の比率を上記範囲に制御して使用される。
【0170】
親水性有機粒子201Aの粒径は、その一次粒子を母粒子201とする場合、球換算平均粒径が例えば0.1μm以上50μm以下(望ましくは0.5μm以上25μm以下、より望ましくは1μm以上10μm以下)の範囲が挙げられる。一方、複合体粒子を構成する場合、例えば球換算平均粒径で10nm以上30μm以下(望ましくは50nm以上10μm以下、より望ましくは0.1μm以上5μm以下)の範囲が挙げられる。
【0171】
親水性有機粒子201Aのインク受容性粒子16全体に対する比率は、例えば質量比で75%以上望ましくは85%以上であり、より望ましくは90%以上99%以下)の範囲が挙げられる。
【0172】
次に、親水性有機粒子201Aと共に複合粒子を構成する無機粒子202、及び母粒子201に付着させる無機粒子202について説明する。無機粒子202としては、非多孔質粒子、多孔質粒子のいずれも使用することができる。無機粒子としては、無色、淡色或いは白色の粒子(例えば、コロイダル・シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ等)が挙げられる。これら無機粒子は、表面処理(部分疎水化処理、特定官能基導入処理等)を施されてもよい。例えば、シリカの場合には、シリカの水酸基をトリメチルクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシランなどのシリル化剤で処理してアルキル基を導入する。シリル化剤によって脱塩酸が生じ、反応が進む。この際、アミンを添加すると塩酸を塩酸塩にして反応を促進することもできる。疎水性基としてアルキル基やフェニル基を有するシランカップリング剤やチタネート系、ジルコネート系等のカップリング剤の処理量や処理条件を制御することでコントロールできる。また、脂肪族アルコール類や高級脂肪酸及び同誘導体類での表面処理も可能である。また、(置換)アミノ基や四級アンモニウム塩構造を有するシランカップリング剤等のカチオン性官能基を有するカップリング剤類、フルオロシランの様なフッ素系官能基を有するカップリング剤、その他カルボン酸等のアニオン性官能基を有するカップリング剤類での表面処理も可能である。なお、これらの無機粒子202は、親水性有機粒子201A内部に含まれる、所謂内添されていてもよい。
【0173】
また、複合体粒子を構成する無機粒子202の粒径は、例えば体積平均一次粒径で5nm以上100nm以下、より望ましくは10nm以上50μm以下の範囲が挙げられる。一方、母粒子201に付着させる無機粒子202の粒径は、例えば球換算平均粒径で10nm以上1μm以下(望ましくは10nm以上0.1μm以下、より望ましくは10nm以上0.05μm以下)の範囲が挙げられる。
【0174】
次に、インク受容性粒子16のその他添加剤について説明する。まず、インク受容性粒子16には、インクの成分を凝集又は増粘させる成分を含むことが望ましい。
【0175】
この機能を有する成分は、上記吸液性樹脂粒子を構成する樹脂(樹脂吸水性樹脂)の官能基として含んでもよいし、化合物として含んでもよい。当該官能基としては、例えば、カルボン酸、多価金属カチオン、ポリアミン類等などが挙げられる。
【0176】
また、当該化合物としては、無機電解質、有機酸、無機酸、有機アミンなどの凝集剤が好適に挙げられる。
【0177】
無機電解質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン及び、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、及び、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
【0178】
具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸カリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム等のアルカリ金属類の塩、及び、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等の多価金属類の塩等が挙げられる。
【0179】
有機酸としては、具体的にはアルギニン酸、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、システイン、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、マレイン酸、マロン酸、リシン、リンゴ酸、及び、一般式(1)で表される化合物、これら化合物の誘導体などが挙げられる。
【0180】
【化1】

【0181】
ここで、式中、Xは、O、CO、NH、NR、S、又はSOを表す。Rはアルキル基を表し、Rとして望ましくは、CH,C、COHである。Rはアルキル基を表し、Rとして望ましくは、CH,C、COHである。なお、Rは式中に含んでいてもよいし、含んでいなくても構わない。Xとして望ましくは、CO、NH、NR,Oであり、より望ましくは、CO、NH、Oである。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアミン類を表す。Mとして望ましくは、H、Li、Na、K、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等であり、より望ましくは、H、Na,Kであり、更に望ましくは、水素原子である。nは、3以上7以下の整数である。nとして望ましくは、複素環が6員環又は5員環となる場合であり、より望ましくは、5員環の場合である。mは、1又は2である。一般式(1)で表される化合物は、複素環であれば、飽和環であっても不飽和環であってもよい。lは、1以上5以下の整数である。
【0182】
一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、フラン、ピロール、ピロリン、ピロリドン、ピロン、ピロール、チオフェン、インドール、ピリジン、キノリン構造を有し、更に官能基としてカルボキシル基を有する化合物が挙げられる。具体的には、2−ピロリドン−5−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−カルボン酸、フランカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2,5−ジメチル−3−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、4−ブタノリド−3−カルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、2−ピロン−6−カルボン酸、4−ピロン−2−カルボン酸、5−ヒドロキシ−4−ピロン−5−カルボン酸、4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、チオフェンカルボン酸、2−ピロールカルボン酸、2,3−ジメチルピロール−4−カルボン酸、2,4,5−トリメチルピロール−3−プロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−インドールカルボン酸、2,5−ジオキソ−4−メチル−3−ピロリン−3−プロピオン酸、2−ピロリジンカルボン酸、4−ヒドロキシプロリン、1−メチルピロリジン−2−カルボン酸、5−カルボキシ−1−メチルピロリジン−2−酢酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジントリカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸、1,2,5,6−テトラヒドロ−1−メチルニコチン酸、2−キノリンカルボン酸、4−キノリンカルボン酸、2−フェニル−4−キノリンカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、6−メトキシ−4−キノリンカルボン酸等の化合物が挙げられる。
【0183】
有機酸としては、望ましくは、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、フタル酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。より望ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。さらに望ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、フランカルボン酸、クマリン酸、若しくは、これらの化合物誘導体、又は、これらの塩である。
【0184】
有機アミン化合物としては、1級、2級、3級及び4級アミン及びそれらの塩のいずれであっても構わない。具体例としては、テトラアルキルアンモニウム、アルキルアミン、ベンザルコニウム、アルキルピリジウム、イミダゾリウム、ポリアミン、及び、それらの誘導体、又は、塩等が挙げられる。具体的には、アミルアミン、ブチルアミン、プロパノールアミン、プロピルアミン、エタノールアミン、エチルエタノールアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチルメチルアミン、エチルベンジルアミン、エチレンジアミン、オクチルアミン、オレイルアミン、シクロオクチルアミン、シクロブチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、ジ2−エチルヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジプロピルアミン、ジヘキシルアミン、ジペンチルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルエチレンジアミン、ジメチルオクチルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ジメチルヘキシルアミン、アミノ−ブタノール、アミノ−プロパノール、アミノ−プロパンジオール、N−アセチルアミノエタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)−エタノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチルアミン、セチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリイソペンチルアミン、トリエタノールアミン、トリオクチルアミン、トリチルアミン、ビス(2−アミノエチル)1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ビス(トリメチルシリル)アミン、ブチルアミン、ブチルイソプロピルアミン、プロパンジアミン、プロピルジアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、2−メチル−シクロヘキシルアミン、メチル−プロピルアミン、メチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、ラウリルアミン、ノニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレシジアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムク口ライド、ステアラミドメチルビリジウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体等が挙げられる。
【0185】
より望ましくは、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、エタノールアミン、プロパンジアミン、プロピルアミンなどが使用される。
【0186】
これら凝集剤の中でも、多価金属塩(Ca(NO)、Mg(NO)、Al(OH)、ポリ塩化アルミニウム等)が好適に用いられる。
【0187】
凝集剤は単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。また、凝集剤の含有量としては、0.01質量%以上30質量%以下であることが望ましい。より望ましくは、0.1質量%以上15質量%以下であり、更に望ましくは、1質量%以上15質量%以下である。
【0188】
インク受容性粒子16には、離型剤が含まれていることがよい。離型剤は、上記吸液性樹脂に含ませてもよいし、親水性有機樹脂粒子と共に離型剤の粒子を複合化して含ませてもよい。
【0189】
この離型剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス;及びそれらの変性物などが挙げられる。これらの中でも結晶性化合物を適用することがよい。
【0190】
本実施の形態のインク受容性粒子16は、下記方法により作製される。
具体的には、まず、下記方法によって母粒子201を調整する。インク受容性粒子16が母粒子201を親水性有機粒子201A単独の粒子(一次粒子)で構成した形態である場合には、親水性有機粒子201Aを構成する樹脂、必要に応じてその他の添加剤等を、これらの材料を溶解する溶媒に溶解した樹脂溶液を調整し、この調整した樹脂溶液またはスラリーを微細液滴化して熱風とともに乾燥させる噴霧乾燥(スプレードライ)法、樹脂粗粉を凝集、圧着、分散、または摩擦を利用した細密粒子加工(メカノフュージョン、ハイブリダイゼーション)法等を用いることで母粒子201を得る方法や、該樹脂溶液を凍結乾燥させた樹脂固形物をエクストルーダにより溶融し冷却した後にジェットミルにて粉砕して気流分級機にて分級処理を施すことにより母粒子201を得る方法が挙げられる。
【0191】
また、母粒子201が複数の親水性有機粒子201Aの集合体である複合粒子として構成される場合には、親水性有機粒子201Aを構成する樹脂、必要に応じてその他の添加剤等を、これらの材料を溶媒中にて乳化または分散した液体を調整し、この調整した液体を微細液滴化して熱風とともに乾燥させる噴霧乾燥(スプレードライ)法等を用いることにより母粒子201を得る方法が挙げられる。
【0192】
上述のようにして母粒子201を調整することで、上記説明したように、形状係数SF1が、100以上146以下の範囲内となり、また、粒度分布が1.6以下となるように、容易に調整される。
【0193】
さらに、下記方法によって、さらに、母粒子201に無機粒子202等が添加されることにより、本実施の形態のインク受容性粒子16が調整される。
具体的には、母粒子201を構成する樹脂、必要に応じてその他の添加剤等を、これらの材料を溶媒中にて乳化または分散した液体を調整し、この調整した液体にさらに無機粒子を分散させた液体を微細液滴化して熱風とともに乾燥させる噴霧乾燥(スプレードライ)法や、樹脂粗粉に無機粒子を混合し圧着、分散、または摩擦を利用した細密粒子加工(メカノフュージョン、ハイブリダイゼーション)法等を用いることによって、インク受容性粒子16が調整される。
【0194】
次に、上記実施形態で適用されるインクについて詳細に説明する。インクは水性インクが使用される。水性インク(以下、単にインクと称する)は、記録材に加え、インク溶媒(例えば、水、水溶性有機溶媒)を含んでいる。また、必要に応じて、その他、添加剤を含んでいてもよい。
【0195】
まず、記録材について説明する。記録材としては、主に色材が挙げられる。色材としては、染料、顔料のいずれも用いることができるが、顔料であることがよい。顔料としては有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料ではファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用してもよい。また、本発明のために、新規に合成した顔料でも構わない。
【0196】
また、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等を顔料として使用することも可能である。
【0197】
黒色顔料の具体例としては、Raven7000,Raven5750,Raven5250,Raven5000 ULTRAII,Raven 3500,Raven2000,Raven1500,Raven1250,Raven1200,Raven1190 ULTRAII,Raven1170,Raven1255,Raven1080,Raven1060(以上コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R,Regal330R,Regal660R,Mogul L,Black Pearls L,Monarch 700,Monarch 800,Monarch 880,Monarch 900,Monarch 1000,Monarch 1100,Monarch 1300,Monarch 1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black 18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex35,Printex U,Printex V,Printex140U,Printex140V,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black4(以上デグッサ社製)、No.25,No.33,No.40,No.47,No.52,No.900,No.2300,MCF−88,MA600,MA7,MA8,MA100(以上三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0198】
シアン色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Blue−1,−2,−3,−15,−15:1,−15:2,−15:3,−15:4,−16,−22,−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0199】
マゼンタ色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red−5,−7,−12,−48,−48:1,−57,−112,−122,−123,−146,−168,−177,−184,−202, C.I.Pigment Violet −19等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0200】
黄色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Yellow−1,−2,−3,−12,−13,−14,−16,−17,−73,−74,−75,−83,−93,−95,−97,−98,−114,−128,−129,−138,−151,−154,−180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0201】
ここで、色材として顔料を使用した場合には、併せて顔料分散剤を用いることが望ましい。使用可能な顔料分散剤としては、高分子分散剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0202】
高分子分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体が好適に用いられる。親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体としては、縮合系重合体と付加重合体とが使用できる。縮合系重合体としては、公知のポリエステル系分散剤が挙げられる。付加重合体としては、α,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の付加重合体が挙げられる。親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体と疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体を組み合わせて共重合することにより目的の高分子分散剤が得られる。また、親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の単独重合体も用いることができる。
【0203】
親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、りん酸基等を有する単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロオキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0204】
疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
【0205】
高分子分散剤として用いられる、望ましい共重合体の例としては、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。また、これらの重合体に、ポリオキシエチレン基、水酸基を有する単量体を共重合させてもよい。
【0206】
上記高分子分散剤としては、例えば重量平均分子量で2000以上50000以下のものが挙げられる。
【0207】
これら顔料分散剤は、単独で用いても、二種類以上を併用しても構わない。顔料分散剤の添加量は、顔料により大きく異なるため一概には言えないが、一般に顔料に対し、合計で0.1質量%以上100質量%以下が挙げられる。
【0208】
色材として水に自己分散可能な顔料を用いることもできる。水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤が存在しなくとも水中で分散する顔料のことを指す。具体的には、通常のいわゆる顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより、水に自己分散可能な顔料が得られる。
【0209】
また、水に自己分散可能な顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−300、IJX−157、IJX−253、IJX−266、IJX−273、IJX−444、IJX−55、Cabot260、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2等の市販の自己分散顔料等も使用できる。
【0210】
自己分散顔料としては、その表面に官能基として少なくともスルホン酸、スルホン酸塩、カルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料であることが望ましい。より望ましくは、表面に官能基として少なくともカルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料である。
【0211】
更に、樹脂により被覆された顔料等を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販のマイクロカプセル顔料だけでなく、本発明のために試作されたマイクロカプセル顔料等を使用することもできる。
【0212】
また、高分子物質を上記顔料に物理的に吸着又は化学的に結合させた樹脂分散型顔料を用いることもできる。
【0213】
記録材としては、その他、親水性のアニオン染料、直接染料、カチオン染料、反応性染料、高分子染料等や油溶性染料等の染料類、染料で着色したワックス粉・樹脂粉類やエマルション類、蛍光染料や蛍光顔料、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フェライトやマグネタイトに代表される強磁性体等の磁性体類、酸化チタン、酸化亜鉛に代表される半導体や光触媒類、その他有機、無機の電子材料粒子類などが挙げられる。
【0214】
記録材の含有量(濃度)は、例えばインクに対して5質量%以上30質量%以下が挙げられる。
【0215】
記録材の体積平均粒径は、例えば10nm以上1000nm以下であることが挙げられる。
【0216】
記録材の体積平均粒径とは、記録材そのものの粒径、又は記録材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒径をいう。体積平均粒径の測定装置には、マイクロトラックUPA粒度分析計 9340 ( Leeds&Northrup社製 )を用いた。その測定は、インク4mlを測定セルに入れ、所定の測定法に従って行った。なお、測定時の入力値として、粘度にはインクの粘度を、分散粒子の密度は記録材の密度とした。
【0217】
次に、水溶性有機溶媒について説明する。水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
【0218】
水溶性有機溶媒の具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2−へキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、キシリトールなどの糖アルコール類、キシロース、グルコース、ガラクトースなどの糖類等が挙げられる。
【0219】
多価アルコール類誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0220】
含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0221】
水溶性有機溶媒としては、その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0222】
水溶性有機溶媒は、少なくとも1種類以上使用してもよい。水溶性有機溶媒の含有量としては、例えば1質量%以上70質量%以下が挙げられる。
【0223】
次に、水について説明する。水としては、特に不純物が混入することを防止するため、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水を使用することが望ましい。
【0224】
次に、その他の添加剤について説明する。インクには、界面活性剤を添加することができる。
【0225】
これら界面活性剤の種類としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、望ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が用いられる。
【0226】
以下、界面活性剤の具体例を列挙する。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が使用でき、望ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等が用いられる。
【0227】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアルカノールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物等が挙げられ、望ましくは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物が用いられる。
【0228】
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用できる。
【0229】
これらの界面活性剤は単独で使用しても混合して使用してもよい。また界面活性剤の親水性/疎水性バランス(HLB)は、溶解性等を考慮すると3以上20以下の範囲であることが望ましい。
【0230】
これらの界面活性剤の添加量は、0.001質量%以上5質量%以下が望ましく、0.01質量%以上3質量%以下が特に望ましい。
【0231】
また、インクには、その他、浸透性を調整する目的で浸透剤、インク吐出性改善等の特性制御を目的でポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等や、導電率、pHを調整するために水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属類の化合物等、その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤等も添加することができる。
【0232】
次に、インクの好適な特性について説明する。まず、インクの表面張力は、20mN/m以上45mN/m以下であることが挙げられる。
【0233】
ここで、表面張力としては、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値を採用した。
【0234】
インクの粘度は、1.5mPa・s以上30mPa・s以下であることが挙げられる。
【0235】
ここで、粘度としては、レオマット115(Contraves製)を測定装置として用いて、測定温度は23℃、せん断速度は1400s−1の条件で測定した値を採用した。
【0236】
なお、インクは、上記構成に限定されるものではない。記録材以外に、例えば、液晶材料、電子材料など機能性材料を含むものであってもよい。
【0237】
以上、実施形態においては、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクジェット記録ヘッド20から画像データに基づいて選択的にインク滴20Aが吐出されてフルカラーの画像が記録媒体8に記録されるようになっているが、記録媒体上への文字や画像の記録に限定されるものではない。すなわち、工業的に用いられる液滴吐出(噴射)装置全般に対して、本実施の形態に係る装置が適用される。
【0238】
なお、本実施の形態では、中間転写体12上にインク受容性粒子16を供給して中間転写体12上に供給されたインク受容性粒子層16A上にインク滴20Aを付与する形態を説明したが、記録媒体8上にインク受容性粒子16を直接供給して記録媒体8上に供給されたインク受容性粒子層16A上にインク滴20Aを付与する形態であってもよい。この場合には、中間転写体12を従来公知の画像形成装置の中間転写ベルトとして構成し、この中間転写ベルト上に記録媒体8を搬送する従来公知の方法を用いると共に、上記転写定着装置22を、記録媒体8上のインク受容性粒子層16Aを記録媒体8へ定着させる定着装置として用いればよい。
【実施例】
【0239】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0240】
なお、実施例において、形状係数SF1の測定、体積平均粒子径の測定、及び粒度分布GSDの測定は、各々以下の方法を用いて測定した。
【0241】
―形状係数SF1の測定―
形状係数SF1は、顕微鏡画像または走査電子顕微鏡(SEM)画像を、画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、例えば、以下のようにして算出することができる。すなわち、スライドガラス表面に散布したインク受容性粒子16の光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のインク受容性粒子16の最大長と投影面積を求め、上記式(1)によって計算し、その平均値を求めることにより得た(SF1=(ML/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(1))。
【0242】
―体積平均粒子径の測定―
実施例における母粒子の体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で測定した。
【0243】
―粒度分布GSDの測定―
粒度分布は、LS 13 320(ベックマンコールター社製)を用いて乾式法によって測定した。この測定した粒度分布を、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、個々のインク受容性粒子16の体積について小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を、体積平均粒子径D16vと定義し、累積50%となる粒径を、体積平均粒子径D50vと定義する。同様に、累積84%となる粒径を、体積平均粒子径D84v、と定義する。この際、粒度分布(GSD)はD84v/D16vとして定義される。これらの関係式を用いて、粒度分布(GSD)を算出した。
【0244】
<インク受容性粒子の調整>
【0245】
―インク受容性粒子A1―
・スチレン/nブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(Mw=40000、極性単量体比率45mol%、水酸化ナトリウムにより部分中和)100部に、水/IPA溶液(水 90重量部に対して、イソプロピルアルコール(IPA)10重量部)、に溶解した樹脂溶液を調製した。
【0246】
この調製した樹脂溶液を、噴霧乾燥装置(BUCHI社製、ミニスプレードライヤーB290型)に供給して、噴霧乾燥することにより、体積平均粒子径7μm、形状係数SF1が105、粒度分布GSDが1.5であり、表面に凹みを有する形状(電子顕微鏡による観察の結果)の母粒子A1を得た。
【0247】
この噴霧乾燥の条件は、使用スプレーガン口径が0.7mm、入口温度が150℃、アスピレーター設定が100%、ポンプ設定が20%、噴霧フローが35mm、であった。
【0248】
さらに、この母粒子A1に、表面疎水処理シリカ粒子(Aerosil OX50(体積平均粒径≒40nm)2重量部を加えて攪拌混合(サンプルミルにて約30秒間)することによって、母粒子A1にシリカ粒子の外添されたインク受容性粒子A1を調整した。
【0249】
―インク受容性粒子A2−
【0250】
上記インク受容性粒子A1で得た母粒子A1について、さらに気流分級機に掛け分級処理を施し、体積平均粒子径6.5μm、形状係数SF1が104、粒度分布GSDが1.3の母粒子A2を得た。

【0251】
さらに、この母粒子A2に、表面疎水処理シリカ粒子(Aerosil OX50(体積平均粒径≒40nm)2重量部を加えて攪拌混合(サンプルミルにて約30秒間)することによって、母粒子A2にシリカ粒子の外添されたインク受容性粒子A2を調整した。
【0252】
―インク受容性粒子A3―
・スチレン/nブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(Mw=40000、極性単量体比率45mol%、水酸化ナトリウムにより部分中和)100部に、水/IPA溶液(水80重量部に対して、イソプロピルアルコール(IPA)20重量部)、に乳化した樹脂エマルション液を調製した。
この調製した樹脂エマルション液を、噴霧乾燥装置(BUCHI社製、ミニスプレードライヤーB290型)に供給して噴霧乾燥した。
この噴霧乾燥の条件は、使用スプレーガン口径が0.7mm、入口温度が150℃、アスピレーター設定が100%、ポンプ設定が20%、噴霧フローが35mmであった。
さらに、気流分級機に掛け分級処理を施し、体積平均粒子径7μm、形状係数SF1が115、粒度分布GSDが1.35の母粒子A3を得た。
さらに、この母粒子A3に、表面疎水処理シリカ粒子(Aerosil OX50(体積平均粒径≒40nm)2重量部を加えて攪拌混合(サンプルミルにて約30秒間)することによって、母粒子A3にシリカ粒子の外添されたインク受容性粒子A3を調整した。
【0253】
―インク受容性粒子A4―
上記インク受容性粒子A3において、噴霧乾燥装置にて噴霧乾燥した後、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製、NHS−0型)にて回転数12000rpm、処理時間3min.にて処理し、さらに気流分級機に掛け分級処理を施し、体積平均粒子径7μm、形状係数SF1が102、粒度分布GSDが1.25の母粒子A4を得た。
さらに、この母粒子A4に、表面疎水処理シリカ粒子(Aerosil OX50(体積平均粒径≒40nm)2重量部を加えて攪拌混合(サンプルミルにて約30秒間)することによって、母粒子A4にシリカ粒子の外添されたインク受容性粒子A4を調整した。
【0254】
―インク受容性粒子A5―
・スチレン/nブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(Mw=40000、極性単量体比率45mol%、水酸化ナトリウムにより部分中和)100部に、水/IPA溶液(水75重量部に対して、イソプロピルアルコール(IPA)25重量部)、に乳化した樹脂エマルション液を調製した。
この調製した樹脂エマルション液を、噴霧乾燥装置(BUCHI社製、ミニスプレードライヤーB290型)に供給して噴霧乾燥することにより、体積平均粒子径7.5μm、形状係数SF1が128、粒度分布GSDが1.55であり、複合体粒子構造を有する(電子顕微鏡による観察の結果)の母粒子A5を得た。
この噴霧乾燥の条件は、使用スプレーガン口径が0.7mm、入口温度が150℃、アスピレーター設定が100%、ポンプ設定が25%、噴霧フローが35mmであった。
さらに、この母粒子A5に、表面疎水処理シリカ粒子(Aerosil OX50(体積平均粒径≒40nm)2重量部を加えて攪拌混合(サンプルミルにて約30秒間)することによって、母粒子A5にシリカ粒子の外添されたインク受容性粒子A5を調整した。
【0255】
―インク受容性粒子A6―
上記インク受容性粒子A5において、噴霧乾燥装置にて噴霧乾燥した後、さらに気流分級機に掛け分級処理を施し、体積平均粒子径7μm、形状係数SF1が130、粒度分布GSDが1.3の母粒子A6を得た。
さらに、この母粒子A6に、表面疎水処理シリカ粒子(Aerosil OX50(体積平均粒径≒40nm)2重量部を加えて攪拌混合(サンプルミルにて約30秒間)することによって、母粒子A6にシリカ粒子の外添されたインク受容性粒子A6を調整した。
【0256】
―インク受容性粒子A7―
・スチレン/nブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(Mw=40000、極性単量体比率45mol%、水酸化ナトリウムにより部分中和)100部に、水/IPA溶液(水90重量部に対して、イソプロピルアルコール(IPA)10重量部)、に溶解した樹脂溶液を調製した。
この調製した樹脂溶液について凍結乾燥処理を行った。この凍結乾燥処理は、凍結乾燥機(東京理化器械社製、FDU−1200、PFR−1000)を用い、−30℃で1時間予備凍結した後、5×10−4Torr、−40℃の下、6時間乾燥することにより行った。
樹脂溶液を凍結乾燥処理することによって得られた樹脂固形物を、ジェットミルを用いて粉砕した後、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製、NHS−0型)にて回転数12000rpm、処理時間2min.にて処理し、さらに気流分級機に掛け分級処理を施し、体積平均粒子径8μm、形状係数SF1が138、粒度分布GSDが1.4の母粒子A7を得た。
さらに、この母粒子A7に、表面疎水処理シリカ粒子(Aerosil OX50(体積平均粒径≒40nm)2重量部を加えて攪拌混合(サンプルミルにて約30秒間)することによって、母粒子A7にシリカ粒子の外添されたインク受容性粒子A7を調整した。
【0257】
―インク受容性粒子A8―
・スチレン/nブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(Mw=40000、極性単量体比率45mol%、水酸化ナトリウムにより部分中和)100部に、水/IPA溶液(水75重量部に対して、イソプロピルアルコール(IPA)25重量部)、に乳化した樹脂エマルション液を調製した。
この調製した樹脂エマルション液について凍結乾燥処理を行った。この凍結乾燥処理は、凍結乾燥機(東京理化器械社製、FDU−1200、PFR−1000)を用い、−30℃で1時間予備凍結した後、5×10−4Torr、−40℃の下、6時間乾燥することにより行った。
樹脂溶液を凍結乾燥処理することによって得られた樹脂固形物を、ジェットミルを用いて粉砕した後、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製、NHS−0型)にて回転数12000rpm、処理時間1min.にて処理し、体積平均粒子径16μm、形状係数SF1が146、粒度分布GSDが1.7の母粒子A8を得た。
さらに、この母粒子A8に、表面疎水処理シリカ粒子(Aerosil OX50(体積平均粒径≒40nm)2重量部を加えて攪拌混合(サンプルミルにて約30秒間)することによって、母粒子A8にシリカ粒子の外添されたインク受容性粒子A8を調整した。
【0258】
―インク受容性粒子A9―
・スチレン/nブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(Mw=40000、極性単量体比率45mol%、水酸化ナトリウムにより部分中和)100部に、水/IPA溶液(水50重量部に対して、イソプロピルアルコール(IPA)50重量部)、に溶解した樹脂溶液を調製した。
この調製した樹脂溶液を、噴霧乾燥装置(BUCHI社製、ミニスプレードライヤーB290型)に供給して噴霧乾燥することにより、体積平均粒子径12μm、形状係数SF1が100、粒度分布GSDが1.55の母粒子A9を得た。
この噴霧乾燥の条件は、使用スプレーガン口径が0.7mm、入口温度が150℃、アスピレーター設定が100%、ポンプ設定が25%、噴霧フローが40mmであった。
さらに、この母粒子A9に、表面疎水処理シリカ粒子(Aerosil OX50(体積平均粒径≒40nm)2重量部を加えて攪拌混合(サンプルミルにて約30秒間)することによって、母粒子A9にシリカ粒子の外添されたインク受容性粒子A9を調整した。
【0259】
―インク受容性粒子B1―
上記インク受容性粒子A1で調整した樹脂溶液について凍結乾燥処理を行った。
この凍結乾燥処理は、凍結乾燥機(東京理化器械社製、FDU−1200、PFR−1000)を用い、−30℃で1時間予備凍結した後、5×10−4Torr、−40℃の下、6時間乾燥することにより行った。
【0260】
樹脂溶液を凍結乾燥処理することによって得られた樹脂固形物を、ジェットミル機で粉砕し、更に、気流式分級機で分級した。これにより母粒子B1を得た。このインク受容性粒子B1の体積平均粒子径は7.5μm、形状係数SF1が148、粒度分布GSDが1.6であり、電子顕微鏡にて観察したところ、板状の不定形の粒子であることが観察された。
【0261】
さらに、この母粒子B1に、表面疎水処理シリカ粒子(Aerosil OX50(体積平均粒径≒40nm)2重量部を加えて攪拌混合(サンプルミルにて約30秒間)することによって、母粒子B1にシリカ粒子の外添されたインク受容性粒子B1を調整した。
【0262】
―インク受容性粒子B2―
上記インク受容性粒子A5で調整した樹脂溶液について凍結乾燥処理を行った。
この凍結乾燥処理は、凍結乾燥機(東京理化器械社製、FDU−1200、PFR−1000)を用い、−30℃で1時間予備凍結した後、5×10−4Torr、−40℃の下、6時間乾燥することにより行った。
樹脂溶液を凍結乾燥処理することによって得られた樹脂固形物を、ジェットミル機で粉砕し、更に気流式分級機で分級した。これにより母粒子B2を得た。このインク受容性粒子B2の体積平均粒子径は13.5μm、形状係数SF1が155、粒度分布GSDが1.8であり、電子顕微鏡にて観察したところ、板状の不定形の粒子であることが観察された。
さらに、この母粒子B2に、表面疎水処理シリカ粒子(Aerosil OX50(体積平均粒径≒40nm)2重量部を加えて攪拌混合(サンプルミルにて約30秒間)することによって、母粒子B2にシリカ粒子の外添されたインク受容性粒子B2を調整した。
【0263】
上記調整した母粒子及びインク受容性粒子を下記表1に示した。
【0264】
【表1】



【0265】
インクとしては、下記インクを用いた。
−インク−
・カーボンブラック(CB):5質量部
・スチレン/n−ブチルメタクリレート/メタクリル酸:1.5質量部
・グリセリン:20質量部
・トリエチレングリコール:5質量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:2質量部
・オルフィンE1010 (日信化学社製):1.5質量部
・水:残部
以上材料を混合し、液体を得た。この液体の表面張力は32.5mN/mであった。
【0266】
(実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例2)
表1に示すインク受容性粒子A1〜A9、及びインク受容性粒子B1〜B2各々を適用した、上記実施形態と、密度増加装置が設けられていない以外は同じ構成の記録装置(図1〜図3参照:但し、記録ヘッドはブラックの一色のみ)を用いて、画像形成を行い、下記評価を行った。
なお、実施例1〜実施例9では、インク受容性粒子A1〜インク受容性粒子A9を各々用いた。また、比較例1〜比較例2では、インク受容性粒子B1〜インク受容性粒子B2を各々用いた。
評価結果を表2に示した。
【0267】
(実施例10)
記録装置として、図1に示すように、密度増加装置が設けられた記録装置を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0268】
なお、密度増加装置としては、1kHz以上200kHz以下の範囲で出力可能な超音波振動子を筐体中に内蔵した装置を適用し、これにインク受容性粒子と同様の負の帯電極性となるように負の電圧を印加するものを用いた。
【0269】
(比較例3)
記録装置として、図1に示すように、実施例10と同じ密度増加装置が設けられた記録装置を用いた以外は、比較例2と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0270】
なお、実施例1〜10、及び比較例1〜3において、記録媒体としては、OKトップコートN紙(王子製紙社製)を用いた。またインク受容性粒子及びインクとしては、上記調整したものを用いた。
【0271】
(評価)
―乾燥時間―
乾燥時間は、以下のようにして評価を行った。
上記評価装置を用いて、中間転写体上の離型剤による離型層の層厚(離型剤の塗布量)を1μm、また粒子によって多少異なるが、中間転写体上のインク受容性粒子による粒子層の層厚(インク受容性粒子の供給量)を、20〜40μm、インク受容性粒子の散布量が7〜10g/mとなるように粒子を散布した。そして、インクの吐出量を4.5g/mとなるようにインクを吐出してベタ画像を形成した。中間転写体上のインクの付与された粒子層における、インクの付与された領域に、上記記録媒体を置いて、この記録媒体を介し 金属製の円筒状芯金の表面にシリコーンゴムを弾性層としたローラ(φ2.5cm)を2×10Paの荷重で0.5秒間押し当てる処理を行い、粒子層にインクが吐出(付与)されてから、記録媒体側にインクが転写されなくなるまでに要した時間を乾燥時間として測定した。評価基準を下記に示した。
【0272】
G0:乾燥時間が0.3秒未満
G1:乾燥時間が0.3秒以上1秒未満
G2:乾燥時間が1秒以上3秒未満
G3:乾燥時間が3秒以上
【0273】
−濃度ムラ−
濃度ムラは、次にようにして評価を行った。上記評価装置を用いて、中間転写体上の離型剤による離型層の層厚(離型剤の塗布量)を1μm、また粒子によって多少異なるが、中間転写体上のインク受容性粒子による粒子層の層厚(インク受容性粒子の供給量)を、20〜40μm、インク受容性粒子の散布量が7〜10g/m、インクの吐出量を4.5g/mとなるようにインクを吐出してベタ画像を記録媒体に形成した。
このベタ画像の形成された記録媒体上のベタ画像について、光学濃度計(X−Rite Mode404(X−Rite社製))を用いて、ベタ画像上の任意の5カ所について光学濃度を測定し、画像濃度の標準偏差を求めた。評価基準を下記に示した。
【0274】
G0:標準偏差が0.03以下
G1:標準偏差が0.03を超える値であり且つ0.07以下
G2:標準偏差が0.07を超える値
【0275】
−画像欠陥−
画像欠陥は、次にようにして評価を行った。上記評価装置を用いて、中間転写体上の離型剤による離型層の層厚(離型剤の塗布量)を1μm、中間転写体上のインク受容性粒子による粒子層の層厚(インク受容性粒子の供給量)を、20〜40μm、インク受容性粒子の散布量が7〜10g/m、インクの吐出量を1200×1200dpi(dpi:1インチ当たりのドット数)の画像面積密度で1画素当り2pLとし、線状の画像を形成した。
この線状の画像の形成された記録媒体上の線上の画像について、目視及び顕微鏡(倍率1000倍)による拡大画像の双方について画質欠陥の有無を判断した。評価基準を下記に示した。
【0276】
G0:目視及び拡大画像の双方について、画質欠陥が見られない。
G1:拡大画像では線状画像について一部欠落が見られるが、目視では判別不可能。
G2:拡大画像では線状画像について欠落が見られ、目視においては一部判別が可能。
G3:拡大画像及び目視の双方において、同じ画質欠陥が見られる。
【0277】
−滲み−
滲みは、次にようにして評価を行った。1dotラインパターンを印字し、ラインの滲み具合を予め定めた限度見本を参照し、官能評価を行った。
評価基準は以下の通りである。
【0278】
G0:拡大画像として画像部分を確認しても、滲みが確認されない。
G1:拡大画像として画像部分を確認した場合、滲みを確認することが可能だが、目視では判別不能であり、許容範囲内のもの
G2:目視において画像部に滲みが認識されるが、許容範囲内のもの
G3:目視において画像部に滲みが認識され、その程度が激しく、許容範囲外のもの
【0279】
【表2】




【0280】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、乾燥時間、滲み、画像ムラ・光沢ムラが
共に優れることがわかる。また、実施例において、母粒子の形状係数が、100に近いほどより乾燥時間が長い傾向にあるという評価結果が得られた。
さらに、実施例1〜9と実施例10との比較結果、及び比較例1及び比較例2と比較例3との比較結果から、評価装置に密度増加装置を設けた構成であるほうが、画質が良いという評価結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0281】
【図1】本実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【図2】本実施形態に係る記録装置の主要部を示す構成図である。
【図3】(A)(B)本実施形態に係るインク受容性粒子が中間転写体に層状に供給された状態を模式的に示す上面図及び断面図である。
【図4】(A)(B)本実施形態に係るインク受容性粒子が中間転写体上に層状に供給された状態、及び記録媒体上に転写された状態の各々を模式的に示す断面図である。
【図5】本実施形態に係るインク受容性粒子の一例を示す模式図である。
【図6】本実施形態に係るインク受容性粒子の一例を示す模式図である。
【図7】(A)(B)従来の方式に係るインク受容性粒子が中間転写体に層状に供給された状態を模式的に示す上面図及び断面図である。
【符号の説明】
【0282】
10 記録装置
12 中間転写体
15 密度増加装置
16 インク受容性粒子
18 粒子供給装置
20 インクジェット記録ヘッド
20K インクジェット記録ヘッド
20C インクジェット記録ヘッド
20M インクジェット記録ヘッド
20Y インクジェット記録ヘッド
22 転写定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを受容するインク受容性粒子であって、形状係数SF1が146以下であることを特徴とするインク受容性粒子。
【請求項2】
前記形状係数SF1が100より大きいことを特徴とする請求項1に記載のインク受容性粒子。
【請求項3】
粒度分布GSDが1.6以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインク受容性粒子。
【請求項4】
中間転写体と、
形状係数SF1が146以下であると共にインクを受容するインク受容性粒子を、前記中間転写体上に層状に供給する供給手段と、
前記中間転写体上に供給された前記インク受容性粒子の層にインクを付与するインク付与手段と、
前記インク受容性粒子の層を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記インク受容性粒子の層を定着する定着手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項5】
前記中間転写体上に供給された前記インク受容性粒子の層における粒子密度を増加させる粒子密度増加手段を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記粒子密度増加手段は、前記中間転写体上に供給された前記インク受容性粒子の層に振動を付与することによって前記粒子密度を増加させることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
形状係数SF1が146以下であると共にインクを受容するインク受容性粒子を、記録媒体上に層状に供給する供給手段と、
前記記録媒体上に供給された前記インク受容性粒子の層にインクを付与するインク付与手段と、
前記記録媒体上の前記インク受容性粒子の層を定着する定着手段と、
を有することを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−190375(P2009−190375A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36428(P2008−36428)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】