説明

インク吐出式印字装置

【課題】インクの予備吐出回数を低減させつつ、印字品位を向上させることができる吐出式印字装置を提供する。
【解決手段】インクを吐出する複数の吐出口22を有するインクカートリッジ20を用いて記録材である小切手に対して印字を行う場合に、小切手における印字可能領域13内で、実際に画像が印字される印字領域14を主走査方向において小切手1枚毎に画素単位でオフセットし、オフセットされた印字領域14に画像が印字されるように複数の吐出口22からのインクの吐出を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送されるシートに対してインクを吐出して印字を行うインク吐出式印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の原稿(以下「原稿」と記す)の搬送路上に画像読取部と印字部とを配置し、搬送される原稿に記録されている画像を画像読取部において読み取らせ、印字部において原稿に印字を行う画像読取装置が知られている。
【0003】
画像読取部は、例えば、光電変換技術を用いて原稿の画像を読み取り、読み取った画像データは、画像読取装置と通信自在に接続された端末に送出され、又は、記録媒体に記録される。印字部は、画像読取部の前方と後方のいずれか一方又は両方に配置され、搬送される原稿に対して付加情報を印字する。付加情報としては、通し番号、画像読取部で読み取られて記録された画像情報に対して付加された検索用番号、読取処理済みマーク等が挙げられ、必要な付加情報が画像読取装置の操作部(不図示)で任意に指定される。
【0004】
このような画像読取装置では、動作時の静音化や装置全体の小型化等を実現するために、近年、印字部の中心的な構成要素である印字装置として、インク吐出式印字装置が広く用いられるようになってきている。インク吐出式印字装置は、複数の微細なインク吐出口(ノズル)が配列された記録ヘッドを備え、印字位置を通過する際の原稿の搬送速度に同期して各吐出口からのインク吐出を選択的に制御することによって、原稿の所定位置に必要な付加情報を印字する。
【0005】
このような記録ヘッドでは、吐出口の内方への気泡や塵埃が混入した場合やインク溶剤の蒸発によってインクの粘度が大きくなった場合に、インクの吐出不良が生じることがある。そこで、適時、吐出不良原因を除去する処理(吐出回復処理)を実行して、インクをリフレッシュさせている。
【0006】
吐出回復処理の方法の1つとして、一定時間毎に又は印字動作に先立って、全ての吐出口からインクを複数回吐出する予備吐出を行う方法が知られている。この予備吐出は、給紙動作を行う前等の原稿が印字部に存在しないときに行われ、搬送路が吐出されたインクによって汚されることのないように、吐出口の対向位置には予備吐出の際のインク受けとしてインク吸収体等が配置される。
【0007】
しかしながら、予備吐出は、原稿への印字とは無関係にインクを消費してしまうため、頻繁に行うと、インクカートリッジの寿命を縮める原因となってしまう。そこで、インクの消費量を低減させる種々の手法が提案されており、一例として、予備吐出の回数を制御する方法が知られている。例えば、原稿に対するインク吐出を行ったときの各吐出口からのインク吐出回数を計数し、インク吐出の多かった吐出口からは予備吐出におけるインク吐出回数を減らす方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、原稿へのインク吐出回数と予備吐出でのインク吐出回数の合計が各吐出口で均一となるようにすることで、予備吐出でのインク吐出回数を低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−338134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来技術では、使用頻度の低い吐出口からの予備吐出の回数が多くなるため、使用頻度の低い吐出口が多くある場合、予備吐出の回数を少なくすることができず、原稿には印字されない無駄なインクを多く消費してしまうことになる。
【0010】
また、予備吐出時の吐出口からインク吸収体への飛翔距離は、通常、原稿への飛翔距離よりも長いため、空気中を浮遊するインクミストの量が多くなり、このインクミストによって印字部周辺の搬送路が汚れやすくなる。よって、上記従来技術において予備吐出に使用されるインク量を十分に低減することができない場合には、インクミストにより搬送路が汚れてしまう。
【0011】
さらに、従来技術では予備吐出によって印字品位を改善しているため、吐出回復処理の頻度を少なくすると、印字品質が低下してしまうという問題がある。
【0012】
本発明は、インクの予備吐出回数を低減させつつ、印字品位を向上させることができるインク吐出式印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るインク吐出式印字装置は、インクを吐出する複数の吐出口を有する記録ヘッドを備え、前記複数の吐出口からインクを記録材に対して吐出して前記記録材に印字を行うインク吐出式印字装置であって、前記記録材に印字する画像の印字画像データを生成する印字画像データ生成手段と、前記印字画像データ生成手段が生成した前記印字画像データを前記画像として前記記録材に印字する際の印字領域を決定する印字領域決定手段と、前記印字領域決定手段が判定した印字領域を前記記録ヘッドの主走査方向に画素単位でオフセットさせるオフセット手段と、前記オフセット手段が前記印字領域をオフセットする画素数であるオフセット値を設定するオフセット値設定手段と、前記オフセット値設定手段により決定されたオフセット値で前記オフセット手段によりオフセットされた印字領域に前記画像が印字されるように前記複数の吐出口からのインクの吐出を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、原稿への印字時に全ての吐出口からのインク吐出回数が均一に近くなるように、印字する文字位置等が制御される。これにより、インクの予備吐出回数数を低減させることができると共に、印字品位を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るインク吐出式印字装置を印字部として備える文字情報読取装置の概略構造を示す斜視図である。
【図2】図1の文字情報読取装置の印字部に装着されるインクカートリッジの概略の構造を示す斜視図である。
【図3】図2のインクカートリッジが有する印字ヘッドの概略の構成を示す斜視図である。
【図4】図2のインクカートリッジにより小切手(1枚目の小切手)に印字された文字の一例を示す図である。
【図5】図2のインクカートリッジにより2枚目の小切手に印字された文字の例を示す図である。
【図6】図2のインクカートリッジにより3枚目の小切手に印字された文字の例を示す図である。
【図7】小切手上で図2のインクカートリッジにより印字される印字画像の座標を示す図である。
【図8】図2のインクカートリッジにより小切手に印字される印字領域をオフセットする方法のフローチャートである。
【図9】小切手にビットマップ画像を印字する場合の印字画素領域の設定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、本発明に係るインク吐出式印字装置を印字部として備え、原稿であり記録材でもある小切手が有する文字情報を読み取り、小切手に印字部により印字を行う文字情報読取装置を例示するものとする。
【0017】
<文字情報読取装置の概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係る文字情報読取装置の概略構造を示す斜視図である。文字情報読取装置7は、シート状の記録材である小切手を載置するシート載置台1と、小切手の束を1枚ずつ給紙する給紙装置9と、搬送される小切手の有無を検知するシート検知センサ8とを有している。また、文字情報読取装置7は、小切手に印字されている文字情報を読み取るMICRリーダ2と、小切手に対して文字等の所定の情報を印字する印字部3とを有している。
【0018】
更に、文字情報読取装置7は、小切手の搬送路の両側に配置されて小切手の両面の画像を読み取る画像読取センサ4と、小切手の仕分けを行う仕分け部5と、排紙される小切手を収納する収納部6a,6bとを有している。なお、本実施形態において、「印字」とは、文字のみを印字することに限られず、画像を印刷することをも含むものとする。
【0019】
文字情報読取装置7では、シート載置台1に載置された小切手の束から小切手を1枚ずつ給紙装置9で給紙、搬送し、MICRリーダ2で文字情報を読み取った後、印字部3で小切手の裏面に「いつ、どこの銀行で小切手が受け付けられたか」等の情報を印字する。その後、画像読取センサ4で小切手の画像を読み取り、MICRリーダ2で読み取った情報に基づいて、収納部6a,6bのいずれかに排紙するように仕分けを行う。例えば、収納部6a,6bの使い方としては、文字情報の読み取りに成功した小切手は収納部6aへ、文字情報を読み取れなかった小切手や重送された小切手は収納部6bへと、分別するような使用方法が可能である。
【0020】
文字情報読取装置7を構成する各種の駆動部品等(構成要素)の動作制御は、制御部(不図示)により行われる。制御部は、CPUと、プログラム等を格納したROMと、記憶媒体としてのRAM等を備え、CPUが、ROMに格納されたプログラムをRAMの作業領域に展開し、実行することにより、文字情報読取装置7全体の動作が制御される。
【0021】
<インクカートリッジの構成と印字例>
図2は、印字部3に装着されるインクカートリッジ(記録ヘッド)の概略構造を示す斜視図である。インクカートリッジ20は、インク吐出式の印字ヘッド21と、文字情報読取装置7に装着された際に文字情報読取装置7に設けられている端子と接続され、文字情報読取装置7からの駆動信号等を受信するヘッド電極23とを有している。
【0022】
図3は、印字ヘッド21の概略構成を示す斜視図である。印字ヘッド21は、インクを吐出する多数の吐出口22が1列に並べられた構造となっている。なお、高解像度の印字が可能となるように、多数の吐出口22が複数列に並んだ構造となっていてもよい。本実施形態では、印字ヘッド21では、合計160個の吐出口22が、約1/2inchの長さ範囲に、300dpiのピッチで配置されている。
【0023】
インクカートリッジ20は、印字部3において、吐出口22の列の長手方向(主走査方向)が小切手の搬送方向と直交する方向となるように、且つ、吐出口22が搬送路に向かってインクを吐出できるように、着脱自在に配置される。小切手が印字部3を通過しているときに、主走査方向の1列分の画像データに対応するインクが吐出口22から同時に吐出され、小切手に文字等が印字される。また、一定速度で搬送される小切手に対して、1列の吐出口22から一定の時間間隔で(小切手の搬送に同期させて)、順次、インクの吐出を行うことで、小切手に文字等が印字される。
【0024】
図4は、インクカートリッジ20により小切手に印字された文字の一例を示す図である。本実施形態では、1文字の高さ(主走査方向での長さ)を最大40dotとしており、大文字アルファベットでは印字画素領域11a,11b,11c,11dをそれぞれ38dot、非印字画素領域12a,12b,12c,12dをそれぞれ2dotとしている。よって、印字可能領域13は、縦方向が最大で160dotとなり、1dotに1個の吐出口22を対応させている。
【0025】
なお、非印字画素領域12a〜12dの2dotは、図4のように、文字列を複数行同時に印字する場合に、文字列と文字列の間隔を空けて見やすくするために設けている。また、印字部3では、文字列以外にも、指定したビットマップ画像を印字することができる。例えば、ビットマップ画像を印字する場合、縦方向が最大で160dotのサイズで印字が可能である。また、図4の文字列とビットマップ画像とを合成して印字する等することもできる。
【0026】
図4のような文字列のみの印字を長期間繰り返すと、吐出口22のうち非印字画素領域12a〜12dに対応する吐出口ではインクを吐出しないため、これらの吐出口の表面付近が乾燥しやすくなり、インクの粘性が大きくなりやすい。そのため、印字設定を変更する等して、非印字画素領域12a〜12dに対応する吐出口からインクを吐出しようとすると、かすれや不吐出が発生する可能性が高くなる。そこで、本実施形態では、このような印字不良を解消するために、以下の通りに印字制御を行う。
【0027】
<印字制御>
最初に、図4に示したように1枚目の小切手に印字を行う。1枚目の小切手への印字が終了した時点で、160個の吐出口22のうち、インクを吐出しなかった吐出口は、非印字画素領域12a〜12dに対応する計8dot分である。
【0028】
2枚目の小切手への印字の際には、1枚目の小切手に対して印字画素領域11a〜11dを全て1dotだけ下方向へオフセットする。図5は、インクカートリッジ20により2枚目の小切手に印字された文字の例を示す図である。このオフセットにより、印字画素領域11aの上側に新たに1dot分の非印字画素領域12eが生成され、非印字画素領域12dは2dot分から1dot分に狭まる。160個の吐出口22のうち、2枚目の小切手において非印字画素領域12a〜12eに対応する吐出口は、1枚目と同じ8dot分である。しかし、1dotのオフセットが行われているため、1枚目及び2枚目の小切手を合わせたときにインクを吐出していない吐出口は4dot分になる。なお、図5において、2枚目の小切手の搬送方向と平行に示された実線は、実際に印字された線ではなく、1枚目の小切手では印字を行ったが、2枚目の小切手では印字を行っていない画素領域を示している。
【0029】
3枚目の小切手への印字の際は、2枚目の小切手に対して印字画素領域11a〜11dを全て1dotだけ下方向へオフセットする。図6は、インクカートリッジ20により3枚目の小切手に印字された文字の例を示す図である。図6に示されるように、このオフセットにより、印字画素領域11aの上側の非印字画素領域12eは1dot分から2dot分に広がるが、非印字画素領域12dは消滅する。したがって、160個の吐出口22のうち、3枚目の小切手において非印字画素領域12a〜12c,12eに対応する吐出口は、1枚目及び2枚目の小切手と同じ8dot分である。しかし、1枚目〜3枚目の小切手を合わせたときには、160個の全ての吐出口22からインクが吐出されたことになる。なお、図6において、小切手の搬送方向と平行に示された実線は実際に印字された線ではなく、1枚目又は2枚目の小切手では印字を行ったが、3枚目の小切手では印字を行っていない画素領域を示している。
【0030】
このようにして、小切手毎に印字画素領域11a〜11dを画素単位(dot単位)でオフセットし、そのときのオフセット量を変更することで、吐出口22のそれぞれのインク吐出回数のばらつきを小さくすることができる。
【0031】
<印字領域14のオフセット方法>
図7は、小切手上でインクカートリッジ20により印字される印字画像の座標を示す図である。印字可能領域13の左上を原点(0,0)とし、印字の際の主走査方向である1列の吐出口22から同時にインクを吐出する方向をX方向とし、印字の際の副走査方向である小切手の搬送方向をY方向とする。
【0032】
小切手に対する印字可能領域13を、印字領域14と非印字領域15とに分ける。印字領域は、印字画素領域11a〜11d及び非印字画素領域12a〜12cからなり、非印字領域15は、図4に示される非印字画素領域12dである。つまり、文字情報読取装置7が備える制御部(CPU)は、印字領域決定手段として、実際に小切手に印字される文字列を包含する最小面積の矩形領域を印字領域14とする。
【0033】
一定速度で小切手を搬送しながら、X方向での吐出口22からのインク吐出を一定時間間隔で繰り返すことにより、副走査方向に印字が行われる。このとき、印字領域14の画像サイズを、原点(0,0)、点(0,b)、点(a,b)、点(a,0)により囲まれるサイズ(縦:a、横:b)とする。
【0034】
本実施形態では、前述の通り、1文字あたりの主走査方向の印字画素領域は38dot、非印字画素領域は2dotである。そのため、図7に示されるように、印字領域14を158dot、非印字領域15を2dot(=印字可能領域13の160dot−印字領域14の158dot)とする。この印字領域14を主走査方向でオフセット(移動)し、非印字領域15の位置を変更することで、印字不良の発生を回避する。
【0035】
図8は、小切手に印字される印字領域14をオフセットする方法のフローチャートである。ここで、図8に示される処理は、文字情報読取装置7が備える制御部(CPU)によって行われる。「オフセット値」とは、印字領域14をオフセットさせる画素数を指すものとする。また、「オフセット方向」とは印字領域14をオフセットする方向であり、X方向(主走査方向(図7参照))の正方向(図7において下へ向かう方向)と負方向(図7において上へ向かう方向)とがある。
【0036】
1枚目の小切手の給紙前に、CPUは、オフセット値を0にクリアし(ステップS101)、オフセット方向をX方向(主走査方向)の正方向に設定する(ステップS102)。次に、印字領域14のオフセットは印字可能領域13の領域内において行う必要があるため、CPUは、オフセット値が取り得る範囲(オフセット可能な画素数の範囲)を定める第1の閾値と第2の閾値を設定する(ステップS103)。
【0037】
第1の閾値及び第2の閾値は、それぞれ、印字領域14をオフセットすることができる画素数の下限値及び上限値である。1枚目の小切手に対する印字の際には、図7を参照して説明した通り、印字領域14の原点は印字可能領域13の原点でもあるため、X方向の負方向へオフセット可能な画素数は0dotとなる。よって、第1の閾値は0(dot)に設定される。また、本実施形態では、非印字領域15は2dotであるので、第2の閾値は2(dot)に設定される。よって、印字領域14をオフセット可能な画素数は0dot以上2dot以下となる。これらステップS101〜S103が、1枚目の小切手を給紙するまでに行う初期化処理に相当する。なお、本実施形態では、ステップS101でクリアされるオフセット値が第1の閾値と同じであるが、ステップS101は、1枚目の小切手に対する印字位置を初期化するものであり、オフセット値を第1の閾値に設定する処理ではない。
【0038】
次に、1枚目の小切手が給紙されると、CPUは、MICRリーダ2でMICR情報を読み取り、印字画像データ生成手段として、MICR情報や日時等から印字文字列を決定し、決定した印字文字列から印字画像データを生成する(ステップS104)。なお、CPUは、ROM等に予め内蔵されているビットマップフォントデータから印字文字列に対応するデータにアクセスし、ビットマップ画像をRAM上に展開し、印字画像データとする。
【0039】
1文字のサイズは、X方向では38dotに固定されているため、印字画像データの生成が完了すると同時に、印字領域14を確定することができるので、CPUは、印字領域14を印字可能領域13内にオフセットする(ステップS105)。ここで、1枚目の小切手では、オフセット値=0であるため、実質的にオフセットは行われない。2枚目以降の小切手に対して、CPUは、オフセット値設定手段として機能し、後述するようにオフセット値を変更していく。CPUは、小切手が印字部3へ搬送されてくるまでの間にステップS105までの処理を済ませる。
【0040】
小切手が印字部3に到達すると、CPUは、印字可能領域13内にオフセットした印字画像データを小切手に印字する(ステップS106)。印字画像データの先頭から末尾へと印字が行われるように、搬送される小切手の印字位置に合わせて、順次、主走査方向の1ライン毎に吐出口22からインクを吐出する。ステップS106で1枚目の小切手に対する処理が終了すると、CPUは、次に、2枚目の小切手のために印字領域14のオフセットの準備を始め、現在のオフセット方向がX方向の正方向であるか否かを判断する(ステップS107)。
【0041】
現在のオフセット方向が正方向の場合(S107で“YES”)、CPUは、オフセット値設定手段として、現在のオフセット値に1を加算する(ステップS108)。これにより、直前に印字が行われた小切手に対する印字領域14から主走査方向の正方向に1画素分だけずれた領域が印字領域14となり、直前に印字が行われた小切手に対してインクを吐出しなかった吐出口からインクを吐出することができる。
【0042】
一方、オフセット方向が負方向の場合(S107で“NO”)、CPUは、オフセット値設定手段として、オフセット値から1を減算する(ステップS109)。この場合も、直前に印字が行われた小切手に対する印字領域14から主走査方向の負方向に1画素分だけずれた領域が印字領域14となり、直前に印字が行われた小切手に対してインクを吐出しなかった吐出口からインクを吐出することができる。
【0043】
オフセット値が大き過ぎてしまうこと又はオフセット値が小さ過ぎてしまうことにより印字画像データが印字可能領域13の領域外に設定されることを防止する必要がある。そのため、ステップS108,S109の後、CPUは、オフセット値が第1の閾値以上、第2の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS110)。
【0044】
オフセット値が第1の閾値以上、第2の閾値以下である場合(ステップS110で“YES”)、CPUは、処理をステップS104に戻す。オフセット値が第1の閾値未満の場合、すなわち、本実施形態ではオフセット値が“−1”の場合(ステップS110で“NO,オフセット値<第1の閾値”)、CPUは、オフセット方向を反転させる(ステップS113)。続いて、CPUは、オフセット値を第1の閾値(=0)にセットし(ステップS114)、その後処理をステップS104へ戻す。オフセット値が第2の閾値より大きい場合、すなわち、本実施形態ではオフセット値が“3”の場合(ステップS110で“NO,オフセット値>第2の閾値”)、CPUは、オフセット方向を反転させる(ステップS111)。続いて、CPUは、オフセット値を第2の閾値(=2)にセットし(ステップS112)、その後、処理をステップS104へ戻す。
【0045】
ステップS110〜114により、オフセット値が第2の閾値より大きくなる場合及び第1の閾値より小さくなる場合がなくなり、印字画像データが印字可能領域13外に設定されることがない。なお、処理がステップS104に戻された後は、CPUは、設定されたオフセット値で、2枚目以降の小切手の処理を1枚目の小切手の場合と同様に行う。
【0046】
以上の通り、本実施形態では、小切手1枚毎に印字画像データの印字領域14をオフセットする。例えば、第1の閾値が0、第2の閾値が2の場合、オフセット値の変化は「0,1,2,2,1,0」,・・・,「0,1,2,2,1,0」となり、「」内では同じオフセット値で2回の印字が行われることになる。こうして、全ての吐出口22からのインク吐出回数を均一に近くすることができる。
【0047】
上記の図8を参照して説明した印字領域14の設定方法では、印字内容として文字のみを考慮したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。例えば、指定したビットマップ画像を印字する場合やビットマップ画像と文字とを混在させて印字する場合にも本発明を適用することができる。
【0048】
印字内容が文字のみの場合、上述の通り、固定サイズのフォントデータを展開して印字画像データを生成した。これにより、印字画素領域11a〜11dと非印字画素領域12a〜12cとからなる印字領域14のオフセット値を印字可能領域13に対して設定することができた。しかし、ビットマップ画像を印字する場合の印字画素領域は固定サイズではないため、印字画像データの作成前に印字領域を判定することができない。そのため、1枚目の小切手に対する印字画像データを作成した後に、印字領域を判定する。
【0049】
図9は、小切手にビットマップ画像を印字する場合の印字画素領域の設定例を示す図である。印字可能領域13のうち、ビットマップ画像を包含する最小面積の矩形領域が印字領域14として設定されており、印字領域14が100dot、非印字領域15aが20dot、非印字領域15bが40dotとなっている。この印字画像データを使ってオフセット値を設定する場合、負方向には最大で20dot(第1の閾値=−20)、正方向(下に向かう方向)には最大で40dot(第2の閾値=+40)のオフセット値を設定することができる。
【0050】
図9の場合のように印字可能領域13全体に対して印字領域14が小さいときには、設定可能なオフセット値が主走査方向で異なることがあり、この場合、印字される位置の主走査方向でのばらつきが大きくなってしまう。そこで、印字可能領域13の領域内に別途、印字領域14が収まるように印字を行いたい領域を指定印字領域16として指定し、指定印字領域16の領域内で印字領域14に対してオフセット値を設けて、印字を行うようにすればよい。例えば、第1の閾値=−20、第2の閾値=+20に設定する。このような印字領域指定は、画像読取装置の操作部(不図示)から行う構成とすることができる。
【0051】
以上に説明した通り、本実施形態によれば、小切手等の原稿へ印字を行う際に、全ての吐出口からの吐出数が、極力、均一になるように印字文字の位置を制御するため、印字速度を低下させずに印字品位を維持もしくは向上させることができる。また、使用しない吐出口が少なくなるため、予備吐出の実行頻度を少なくすることができ、予備吐出を行うノズルの数を少なくすることもできる。これにより、無駄なインク消費量を少なくすることができ、インクカートリッジのランニングコスト低減させることができる。更に、予備吐出に消費されるインク量が低減されることで、予備吐出の際に発生するインクミストによる搬送路の汚れを抑制することができる。
【0052】
<その他の実施形態>
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。さらに、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0053】
本発明は以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0054】
なお、上述した各実施形態では、インクを吐出する印字装置を例示して説明したが、本発明は、インク以外の液体を複数の液体噴射口から噴射する液体噴射ヘッドを有し、シート材に液体を噴射してシート材に印刷を施す液体噴射装置にも適用することができる。この液体噴射装置では、液体噴射ヘッドをシート材の面方向に走行させて液体を噴射させる印刷方式を採用してもよいし、液体噴射ヘッドによる印刷領域にシート材を供給して印刷を行う方式を採用してもよい。
【0055】
例えば、本発明は、液体を噴射する複数の液体噴射口を有する液体噴射ヘッドを備え、複数の液体噴射口から液体をシート材に対して噴射してシート材に印刷を行う液体噴射装置であって、シート材に印刷するための画像データを作成する画像データ生成手段と、画像データ生成手段が作成した画像データを画像としてシート材に印刷する際の印刷領域を決定する印刷領域決定手段と、印字領域決定手段が判定した印字領域を記録ヘッドの主走査方向に画素単位でオフセットさせるオフセット手段と、オフセット手段が印刷領域をオフセットする画素数であるオフセット値を設定するオフセット値設定手段と、オフセット値設定手段により決定されたオフセット値でオフセット手段によりオフセットされた印刷領域に画像が印字されるように複数の噴射口からの液体の噴射を制御する制御手段とを有する液体噴射装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
3 印字部(インク吐出式印字装置)
7 文字情報読取装置
10 小切手
11a,11b,11c,11d 印字画素領域
12a,12b,12c,12d,12e 非印字画素領域
13 印字可能領域
14,14A 印字領域
15,15a,15b 非印字領域
20 インクカートリッジ
21 印字ヘッド
22 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数の吐出口を有する記録ヘッドを備え、前記複数の吐出口からインクを記録材に対して吐出して前記記録材に印字を行うインク吐出式印字装置であって、
前記記録材に印字する画像の印字画像データを作成する印字画像データ生成手段と、
前記印字画像データ生成手段が作成した前記印字画像データを前記画像として前記記録材に印字する際の印字領域を決定する印字領域決定手段と、
前記印字領域決定手段が判定した印字領域を前記記録ヘッドの主走査方向に画素単位でオフセットさせるオフセット手段と、
前記オフセット手段が前記印字領域をオフセットする画素数であるオフセット値を設定するオフセット値設定手段と、
前記オフセット値設定手段により決定されたオフセット値で前記オフセット手段によりオフセットされた印字領域に前記画像が印字されるように前記複数の吐出口からのインクの吐出を制御する制御手段とを有することを特徴とするインク吐出式印字装置。
【請求項2】
前記オフセット値設定手段は、前記記録材の1枚毎に前記印字領域をオフセットする画素数を決定することを特徴とする請求項1記載のインク吐出式印字装置。
【請求項3】
前記オフセット値設定手段は、前記オフセット手段により前記印字領域が前記記録ヘッドによる印字が可能な印字可能領域の領域内でオフセットされるように、第1の閾値以上、第2の閾値以下となる前記オフセット値を設定することを特徴とする請求項1又は2記載のインク吐出式印字装置。
【請求項4】
前記オフセット値設定手段は、前記オフセットを行う方向が前記主走査方向の正方向であるときには、前記記録材の1枚毎に前記オフセット値を1ずつ加算し、前記オフセット値が前記第2の閾値を超える場合には、前記主走査方向においてオフセットを行う方向を反転させ、且つ、前記オフセット値を前記第2の閾値に設定し、
前記オフセットを行う方向が前記主走査方向の負方向であるときには、前記記録材の1枚毎に前記オフセット値を1ずつ減算し、前記オフセット値が前記第1の閾値よりも小さい場合には、前記主走査方向においてオフセットを行う方向を反転させ、且つ、前記オフセット値を前記第1の閾値に設定することを特徴とする請求項3記載のインク吐出式印字装置。
【請求項5】
前記記録材に印字する画像が文字の場合、
前記印字画像データ生成手段は、固定サイズのフォントデータを展開して印字画像データを作成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインク吐出式印字装置。
【請求項6】
前記印字領域決定手段は、1枚の前記記録材に印字される画像を包含する最小面積の矩形領域を前記印字領域として決定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインク吐出式印字装置。
【請求項7】
前記印字領域決定手段が決定した印字領域を前記オフセット手段によりオフセットさせる領域を、前記記録ヘッドによる印字が可能な印字可能領域の領域内において指定する印字領域指定手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインク吐出式印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−218270(P2012−218270A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85279(P2011−85279)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】