説明

インク吐出装置

【課題】濃色インクが淡色ノズル孔に付着して汚れるのを抑制できるようにする。
【解決手段】コイルバネ75が、カラーインク室55Bの、第1方向に沿って黒色インク室55Aと反対側の部分でかつ第2方向において吸引キャップ55の一端部側に位置する隅部Cの近傍において、吸引キャップ55を第3方向に沿って付勢する。これにより、吸引キャップ55はノズル面30から離れる際に、黒色インク室55A側がカラーインク室55B側よりも第3方向においてノズル面30からの距離が離れるように傾斜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出ヘッドのノズル面に設けられた複数のノズル孔から噴出されるインクの液滴によって、紙などの吐出対象に対し所望の印刷を行うインク吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク吐出装置は、ノズル面を備えた吐出ヘッドを有している。例えば、ノズル面には複数のノズル孔が設けられており、濃色ノズル孔から噴出される濃色インクの液滴や淡色ノズル孔から噴出される淡色インクの液滴によって、紙などの吐出対象に対し、所望の印刷が行われる。このような印刷動作を繰り返すとき、前回印刷から次の印刷までの時間間隔が長く空いた場合等においては、ノズル孔の目詰まりが起こる場合がある。この目詰まりを解消するために、インク吐出装置の装置本体にはメンテナンス装置が設けられている。
【0003】
メンテナンス装置は、吸引キャップと、吸引手段とを備えている。吸引キャップは吐出ヘッドのノズル面に密着する。吸引キャップがノズル面に密着した状態で、吸引キャップに設けた吸引口に吸引手段が接続され、吸引口を介し吸引手段が吸引を行うことで、ノズルに詰まったインク固形物等が除去される(いわゆる吸引パージ処理)。
【0004】
上記吸引パージ処理においては、吸引キャップ内に排出されたインクを吸引除去するために、吸引キャップをノズル面から離間させ、密着状態を解除した状態で吸引手段が吸引を行う。
【0005】
従来、吸引キャップをキャリッジに対して傾斜可能な構造としたインク吐出装置が提唱されている(例えば、特許文献1参照)。このインク吐出装置では、吸引キャップの一端部側が開放するように吸引キャップを傾斜させて、ノズル面に付着したインクを吸引キャップの一端部側に集めて、吸引キャップ内のインクを吸引する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−9576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般にインク吐出装置においては、製造時における取り付け誤差等により、吐出ヘッドにおけるノズル面の取り付け位置にはばらつきがある。このばらつきを許容しつつ上記吸引キャップのノズル面への密着を確保するために、吸引キャップが所定の遊びを有して3次元的に揺動自在に装置本体に配置された構造が考えられる。また、吸引キャップがノズル面に密着した状態で、濃色ノズル孔と淡色ノズル孔とを別々の空間で覆うことができるように、吸引キャップに仕切壁が設けられた構成が考えられる。
【0008】
しかしながら、上記のように吸引キャップが3次元的に自在に揺動するような構造とした場合には、インクが仕切壁を越えて隣のキャップ室に混入するおそれがある。このとき、例えば濃色インクが淡色インク室側に入り込んだ場合、淡色インク室内が濃色インクによって汚れてしまう。このようなキャップ室内の汚れは、キャップ室内のインクの吸引だけでは完全に除去することができない。その結果、キャップ室内が濃色インクで汚れた状態で、再度吸引パージ処理が実行された場合、汚れた吸引キャップがノズル面に密着して濃色インクが淡色ノズル孔に付着し、淡色ノズル孔を汚すおそれがあった。
【0009】
本発明の目的は、ノズル面の取り付け位置のばらつきを許容するためにキャップ体が揺動可能となっている構造において、濃色インクが淡色ノズル孔に付着して汚れるのを抑制することができるインク吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1発明のインク吐出装置は、濃色インクの液滴を噴出する濃色ノズル孔、及び、淡色インクの液滴を噴出する淡色ノズル孔を含む、複数のノズル孔を設けたノズル面を備えた吐出ヘッドと、前記ノズル面へ密着させて前記複数のノズル孔を覆う吸引キャップ、及び、前記吸引キャップに設けた吸引口に接続された吸引手段、を備えたメンテナンス装置と、前記メンテナンス装置が設けられる装置本体と、を有するインク吐出装置であって、前記吸引キャップは、前記ノズル面に密着した状態において、前記ノズル面と前記吸引キャップにより画成される内部空間を、前記ノズル面に沿う第1方向一方側に位置し前記濃色ノズル孔に対向する濃色インク室と、前記第1方向他方側に位置し前記淡色ノズル孔に対向する淡色インク室と、に仕切る仕切壁を備え、さらに、前記吸引キャップは、前記装置本体に対し、前記第1方向、前記第1方向と直交し且つ前記ノズル面に沿う第2方向、及び、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向、のそれぞれにおいて、所定の遊びを有して揺動自在に配置され、前記メンテナンス装置は、前記淡色インク室の、前記第1方向に沿って前記濃色インク室と反対側の部分でかつ前記第2方向において前記吸引キャップの一端部側に位置する隅部の近傍において、前記吸引キャップを前記第3方向に沿って付勢する付勢手段を有することを特徴とする。
【0011】
一般に、製造時における取り付け誤差等により、吐出ヘッドにおけるノズル面の取り付け位置にはばらつきがある。このばらつきを許容しつつ上記吸引キャップのノズル面への密着を確保するために、本願第1発明では、吸引キャップが、所定の遊びを有しており、第1方向、第1方向と直交し且つノズル面に沿う第2方向、及び、第1方向及び第2方向に直交する第3方向のそれぞれに対し、3次元的に揺動自在に装置本体に配置されている。また、本願第1発明は、吸引キャップが仕切壁を有しており、吸引キャップがノズル面に密着した状態では、濃色ノズル孔と淡色ノズル孔とを別々の空間で覆うことができる。
【0012】
しかしながら、本願第1発明においては、上記のように吸引キャップが3方向に自在に揺動するように構成されるので、インクが仕切壁を越えるおそれがある。このとき、例えば濃色インクが淡色インク室側に入り込んだ場合、淡色インク室内が濃色インクによって汚れてしまう。このような汚れは、インクを吸引するだけでは完全に除去することができない。その結果、淡色インク室内が濃色インクで汚れた状態で、再度パージ処理が実行された場合、汚れた吸引キャップがノズル面に密着して濃色インクが淡色ノズル孔に付着し、淡色ノズル孔を汚すおそれがある。
【0013】
そこで本願第1発明においては、付勢手段が、淡色インク室の、第1方向に沿って濃色インク室と反対側の部分でかつ第2方向において吸引キャップの一端部側に位置する隅部の近傍において、吸引キャップを第3方向に沿って付勢する。淡色インク室の濃色インク室と反対側の隅部を付勢することにより、吸引キャップはノズル面から離れる際に、濃色インク室側が淡色インク室側よりも第3方向においてノズル面からの距離が離れるように傾斜する。これにより、仮にインクが仕切壁を越えた場合でも、上述のように濃色インクが淡色インク室側に入り込むのではなく、淡色インクが濃色インク室側に入り込むようにすることができる。その結果、淡色インクが濃色インクに混入したとしても、濃色インクの色合いへの影響は小さく、濃色インクが淡色インクに混入する場合に比べて、インクの色合いへの影響を大幅に小さくすることができる。したがって、濃色インクが淡色ノズル孔に付着して汚れるのを抑制することができる。
【0014】
第2発明のインク吐出装置は、上記第1発明において、前記吸引口は、前記吸引キャップの前記第2方向における前記一端部側に設けられ、前記吸引キャップは、前記ノズル面から離れる際に、前記他端部側が前記一端部側よりも前記第3方向において前記ノズル面からの距離が離れて傾くように構成されていることを特徴とする。
【0015】
パージ処理が終了した後は、吸引キャップがノズル面から第3方向に沿って離される。このとき、パージ処理が終了した直後は吸引キャップの内部空間にはインクが貯まっており、吸引キャップが傾いた状態でノズル面から離れていく場合には、表面張力の作用により、吸引キャップの底面とノズル面との第3方向に沿った離間距離が大きい部分より離間距離が小さい部分へとインクが流れる傾向となる。
【0016】
本願第2発明においては、上述したように、付勢手段が吸引キャップの第2方向における一端部側を付勢することにより、第3方向に沿った上記離間距離は、吸引キャップの他端部側よりも一端部側の方が短くなる。したがって、上述したインクの流れは、吸引キャップの他端部側から一端部側へと生じることになる。そして、本願第2発明においては、吸引口は、吸引キャップの第2方向における一端部側に設けられる。これにより、表面張力の作用により吸引キャップの他端部側から一端部側へと流れ集まるインクを、効率的に吸引することができる。
【0017】
第3発明のインク吐出装置は、上記第1又は第2発明において、前記メンテナンス装置は、前記吸引キャップを支持する外枠部と、前記外枠部を取り付けるためのメンテナンスベースを有し、前記外枠部は、前記メンテナンスベースに対し、前記遊びを有して前記第1〜第3方向のそれぞれに揺動自在に配置されており、前記付勢手段は、前記メンテナンスベースと前記外枠部の底部との間に設けられていることを特徴とする。
【0018】
これにより、外枠部を介して吸引キャップを3次元的に揺動自在に支持することができ、ノズル面の汚れを効率的に抑制できる構成を、確実に実現することができる。
【0019】
第4発明のインク吐出装置は、上記第3発明において、前記外枠部は、前記第1方向一方側及び他方側にそれぞれ突出した突出部を備え、前記メンテナンスベースは、前記外枠部が、前記第2方向に沿った両側へ移動するのを規制するとともに、前記第3方向に沿って前記吸引キャップが前記ノズル面に密着する密着位置と前記吸引キャップが前記ノズル面から離間する離間位置との間を前記外枠部が移動するように、前記突出部を案内する溝部を備えており、前記溝部は、前記第2方向に沿う溝幅寸法が、前記第3方向に沿った前記離間位置から前記密着位置に向けて拡開形状となるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
これにより、吸引キャップが第3方向に沿ってノズル面へと密着する側へ移動したときには、より多くの揺動を可能として確実にノズル面の取り付け位置のばらつきを許容するとともに、それ以外の状態では揺動を小さく押さえ、吸引キャップの安定的な支持を図ることができる。
【0021】
第5発明のインク吐出装置は、上記第3又は第4発明において、前記吐出ヘッドを前記第1方向に沿って移動可能に支持するキャリッジを有し、前記キャリッジは、前記吸引キャップが前記ノズル面へ密着する際の当該吸引キャップの姿勢を規定するための当接部を備え、前記外枠部は、前記当接部に当接される被当接部を備えることを特徴とする。
【0022】
本願第5発明においては、キャリッジによって吐出ヘッドが第1方向に沿って移動可能に支持される。このような構成においては、メンテナンス装置による上記パージ動作等のメンテナンスを実行するときには、キャリッジによって吐出ヘッドがメンテナンス装置へと運搬される。キャリッジには当接部が設けられており、メンテナンス装置の外枠部に設けられた被当接部が上記当接部に当接することにより、吸引キャップの姿勢を規定することができる。これにより、ノズル面の取り付け位置がばらついていたとしても、キャリッジの当接部による上記当接機能によって吸引キャップの姿勢が調整され、ノズル面と吸引キャップとを適正な対向関係で正しく密着させることができる。
【0023】
第6発明のインク吐出装置は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記濃色インクは、ブラックインクであり、前記淡色インクは、カラーインクであることを特徴とする。
【0024】
カラーインクが黒色インクに混入したとしても、黒色インクの色合いへの影響は小さいが、黒色インクがカラーインクに混入した場合には、カラーインクの色合いへの影響は大きい。したがって、本願第6発明においては、付勢手段が吸引キャップを第3方向に沿って付勢し、カラーインクが黒色インク室側に入り込むようにすることで、インクの色合いへの影響を小さくし、ノズル面の汚れを確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ノズル面の取り付け位置のばらつきを許容するためにキャップ体が揺動可能となっている構造において、濃色インクが淡色ノズル孔に付着して汚れるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】プリンタの主要構成を表す平面図である。
【図2】キャリッジの底面側の構造を表す下面図である。
【図3】メンテナンス装置の主要構成を表す平面図である。
【図4】メンテナンス装置の主要構成を表す斜視図である。
【図5】溝部の拡開形状を表す概略図である。
【図6】メンテナンス装置の側面構造を模式的に表す側面図である。
【図7】キャップ位置の移動動作を模式的に表す側面図である。
【図8】キャップの姿勢変化を模式的に表す側面図である。
【図9】吸引キャップがノズル面から離間する状態を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、吐出ヘッドから記録用紙に対してインクを噴射することにより、記録用紙に所望の文字や画像などを印刷するプリンタに、本発明を適用したものである。
【0028】
図1を用いて、本発明のインク吐出装置の一実施形態であるプリンタ2の概略構造について説明する。
【0029】
プリンタ2の装置本体2Aには、印刷ユニット24が設けられている。この印刷ユニット24は、インクジェット方式の吐出ヘッド39と、この吐出ヘッド39を底面側に搭載するキャリッジ38とを備えている。キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向(図1の上側から下側方向)と直交する主走査方向(図1の左右方向)へスライド可能に支持されている。
【0030】
キャリッジ38の上記搬送方向両側には、一対のガイドレール43,44が配置されている。ガイドレール43,44は、記録用紙の搬送方向に所定距離を隔てられて対向しており、且つ主走査方向に沿って延設されている。ガイドレール43,44は、プリンタ2の筐体内に設けられ、プリンタ2を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。キャリッジ38は、ガイドレール43,44を跨ぐように上記主走査方向に摺動可能に載置されている。
【0031】
ガイドレール44の搬送方向上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43,44に担持されたキャリッジ38は、縁部45を後述する狭持部材21,22(図2参照)により摺動可能に狭持している。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、且つ、主走査方向に摺動することができる。
【0032】
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動伝達機構46が配設されている。ベルト駆動伝達機構46は、駆動プーリ47と、従動プーリ48と、無端環状のベルト49とを有する。
【0033】
駆動プーリ47及び従動プーリ48は、主走査方向の両端付近にそれぞれ設けられている。駆動プーリ47と従動プーリ48の間に、無端環状のベルト49が張架されている。駆動プーリ47の軸に、プリンタ2の内部に設けられたキャリッジモータ(図示省略)の駆動軸が連結されている。キャリッジモータの回転駆動力が駆動プーリ47に伝達されると、駆動プーリ47の回転によりベルト49が周運動する。
【0034】
キャリッジ38は、その底面側においてベルト49に連結されている。したがって、ベルト49の周運動に基づいて、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43,44上をスライドする。このようにして、キャリッジモータはキャリッジ38を移動させる。このようなキャリッジ38に吐出ヘッド39が搭載されて、吐出ヘッド39が主走査方向に往復動される。
【0035】
吐出ヘッド39の下側には、吐出ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38のスライド範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に亘って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいものであり、記録用紙の両端は常にプラテン42の上を通過する。
【0036】
プリンタ2の装置本体2Aにおける、記録用紙が通過しない範囲、すなわち吐出ヘッド39による印刷領域の外側には、メンテナンス装置51が配設されている。メンテナンス装置51は、図1においてプラテン42の右端部に配置されている。インクジェット方式の吐出ヘッド39においては、前回印刷から次の印刷までの時間間隔が長く空いた場合等においては、ノズル孔40(図2参照)の目詰まりが起こる場合がある。このため、メンテナンス装置51は、吐出ヘッド39のノズル孔40内のインクの乾燥を防止したり、ノズル孔40から気泡や異物を吸引除去することにより、目詰まりを防止する。本実施形態では、印刷を行わない場合は、キャリッジ38はメンテナンス装置51上に配置される。つまり、キャリッジ38は、次の印刷指示があるまで、メンテナンス装置51上で待機する。なお、メンテナンス装置51については、後に詳述する。
【0037】
図2を用いて、キャリッジ38の底面側の構造について説明する。
【0038】
図2に示すように、吐出ヘッド39は、キャリッジ38の底面に配置されており、吐出ヘッド39のノズル面30がキャリッジ38の下面に露出されている。このノズル面30には複数のノズル孔40が設けられている。プリンタ2の内部に配置されたインクカートリッジから各色のインクが吐出ヘッド39へ供給される。キャリッジ38は、インクカートリッジから吐出ヘッド39に供給される4色のインクをそれぞれ貯留する4つのサブタンク23a〜23dを内部に搭載している。各サブタンク23a〜23dが貯留するインク色は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローである。上記ノズル孔40は、サブタンク23aより供給される黒色インクの液滴を噴出する黒色ノズル孔40aと、サブタンク23b〜23dより供給されるカラーインクの液滴を噴出するカラーノズル孔40bとで構成されている。キャリッジ38が主走査方向に往復する間に、吐出ヘッド39のノズル40から各色インクが微小なインク滴として選択的に吐出される。これにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に印刷が行われる。
【0039】
またキャリッジ38は、前述したように、ガイドレール44の縁部45を挟持する狭持部材21,22を底面側に備えている。これら狭持部材21,22のうち、挟持部材21はキャリッジ38に対して固定された固定式の挟持部材であるが、挟持部材22はキャリッジ38に対して可動する可動式の挟持部材となっている。これは、一般にプリンタ2においては、製造時における取り付け誤差等により、吐出ヘッド39におけるノズル面30の取り付け位置にばらつきが生じる場合があり、このばらつきにより記録用紙の搬送方向と吐出ヘッド39のノズル40の並列方向(ノズル40の図2中上下方向の並列方向)とが平行とならない場合があるからである。したがって、上記可動式の挟持部材22の位置を調整することで、キャリッジ38の姿勢を調整して記録用紙の搬送方向とノズル40の上記並列方向とを平行にしつつ、吐出ヘッド39を主走査方向に往復動することが可能となっている。
【0040】
なお、上記黒色インク、カラーインク、黒色ノズル孔40a、及びカラーノズル孔40bが、特許請求の範囲に記載の、濃色インク、淡色インク、濃色ノズル孔、及び淡色ノズル孔にそれぞれ相当する。
【0041】
次に、図3乃至図5を用いてメンテナンス装置51について説明する。
【0042】
メンテナンス装置51は、吸引キャップ55と、排気キャップ56と、これら吸引キャップ55及び排気キャップ56を支持する外枠部50と、この外枠部50を取り付けるためのメンテナンスベース57と、切替バルブ63と、カム機構60などにより構成されている。
【0043】
吸引キャップ55は、キャリッジ38がメンテナンス装置51の直上に設定されたキャッピング位置(後述の図6において二点鎖線で示す位置)に移動された際に、吐出ヘッド39のノズル面30へ密着して複数のノズル孔40を覆うためのものである。図3及び図4に示すように、吸引キャップ55は、その外周部分に外周部58を備えている。この外周部58の内側には、ノズル面30に密着した状態において、ノズル面30と吸引キャップ55により画成される内部空間を、ノズル面30に沿う主走査方向一方側(図3及び図4中左側)に位置し上記黒色ノズル孔40aに対向する黒色インク室55Aと、上記主走査方向他方側(図3及び図4中右側)に位置し上記カラーノズル孔40bに対向するカラーインク室55Bとに仕切る仕切壁52が設けられている。なお、上記ノズル面に沿う主走査方向が、特許請求の範囲に記載の第1方向に相当する。以下適宜、当該方向を「第1方向」と呼称する。
【0044】
上記黒色インク室55A及びカラーインク室55B内における、上記第1方向と直交し且つノズル面30に沿う搬送方向一端部側(図3中下端側)には、外周部58の内側に吸引口53,54がそれぞれ設けられている。これら吸引口53,54には吸引手段としてのポンプ(図示省略)が接続されている。なお、上記第1方向と直交し且つノズル面30に沿う搬送方向が、特許請求の範囲に記載の第2方向に相当する。以下適宜、当該方向を「第2方向」と呼称する。
【0045】
吸引キャップ55を支持する外枠部50は、メンテナンスベース57に対し、当該外枠部50の下部とメンテナンスベース57の底面との間に設けられた複数のコイルバネ65を介して上下方向へ弾性的に支持されている(後述の図6及び図7参照)。この外枠部50の弾性支持により、吸引キャップ55は、メンテナンスベース57、言い換えれば装置本体2Aに対し、上記第1方向、この第1方向と直交し且つノズル面30に沿う上記第2方向、及び、これら第1方向及び第2方向に直交する鉛直方向のそれぞれにおいて、所定の遊びを有して揺動自在に配置されている。なお、上記鉛直方向が、特許請求の範囲に記載の第3方向に相当する。以下適宜、当該方向を「第3方向」と呼称する。
【0046】
また排気キャップ56は、吐出ヘッド39に連通するサブタンク23a〜23dと繋がる排出口の開口面71(図2参照)に密着し、ノズル孔40よりも上流側のインク流路から気泡を吸引し排出するためのものである。
【0047】
上記のように吸引キャップ55を揺動自在な構成としたのは、前述したように、製造時における取り付け誤差等により吐出ヘッド39におけるノズル面30の取り付け位置にばらつきが生じる場合があり、このばらつきを許容しつつ、上記吸引キャップ55のノズル面30への密着を確保するためである。
【0048】
なお、図3に示すように、外枠部50は、上記第1方向の一方側(図3中左側)及び他方側(図3中右側)にそれぞれ突出した突出部72,73を備えている。一方、メンテナンスベース57は、外枠部50が上記第2方向に沿った両側へ移動するのを規制するとともに、上記第3方向に沿って吸引キャップ55がノズル面30に密着する密着位置と吸引キャップ55がノズル面30から離間する離間位置との間を外枠部50が移動するように、上記突出部72,73を案内する溝部74を、上記第1方向の一方側及び他方側にそれぞれ備えている。この溝部74は、図5に示すように、上側の上記第2方向に沿う溝幅寸法L2が下側の溝幅寸法L1より大きくなっており、上記第3方向に沿った上記離間位置から密着位置に向けて拡開形状となるように構成されている。
【0049】
また図3及び図4に示すように、メンテナンス装置51は、カラーインク室55Bの、上記第1方向に沿って黒色インク室55Aと反対側の部分でかつ上記第2方向において吸引キャップ55の一端部側に位置する隅部Cの近傍において、吸引キャップ55を上記第3方向に沿って上側に付勢するコイルバネ75を有している。このコイルバネ75は、メンテナンスベース57と外枠部50の底部との間に設けられている。なお、このコイルバネ75が、特許請求の範囲に記載の付勢手段に相当する。
【0050】
カム機構60は、外枠部50の下側に設けられている。カム機構60は、スライドカム11と、第2ピニオンギヤ15と、第3ピニオンギヤ16と、第1ラックギヤ17と、第2ラックギヤ18とにより構成されている。カム機構60は、上記スライドカム11によって、吸引キャップ55をノズル面30へ密着した密着位置及びノズル面30から離間した離間位置に保持可能である。
【0051】
次に、図6及び図7を用いて、カム機構60による吸引キャップ55の上記密着位置及び離間位置の間における移動動作について説明する。
【0052】
外枠部50を弾性支持する前述のコイルバネ65が自然長である場合、つまり外枠部50に外力が加えられていない状態では、吸引キャップ55は吐出ヘッド39から離間した上記離間位置に配置されている(図6及び図7(A)参照)。外枠部50が、上記スライドカム11によって上向きに押されると、コイルバネ65が伸び、吸引キャップ55は、上記離間位置から吐出ヘッド39に密着してノズル面30を覆う上記密着位置(図7(C)参照)に移動する。
【0053】
なお、実際には吸引キャップ55が密着位置以外の位置にあるときは、上述したコイルバネ75の付勢力によって傾斜した姿勢となるが、煩雑防止のため、図6及び図7においては吸引キャップ55が水平姿勢のまま移動動作を行うものとして説明する。なお、コイルバネ75の付勢力による吸引キャップ55の姿勢変化については後述する(図8参照)。
【0054】
メンテナンスベース57の下側には切替バルブ63が取り付けられている。切替バルブ63は、チューブ継手64を有している。チューブ継手64は、吸引キャップ55の各吸引口53、54と排気キャップ56に接続されている。チューブ継手64に図示しないチューブの一端が接続されており、当該チューブの他端が上記ポンプに接続されている。吸引キャップ55が密着位置に移動してノズル面30を覆った状態で、少なくとも吸引口53、54の一方とポンプ、もしくは、ポンプと排気キャップ56が連通するように、切替バルブ63で調整する。このとき、少なくとも吸引口53、54の一方とポンプとが連通した状態でポンプが駆動すると、ノズル孔40内のインクはポンプによって強制的に吸引されて排出される。このような動作は吸引パージ処理と呼ばれる。
【0055】
図6に示すように、キャリッジ38には、吸引キャップ55がノズル面30へ密着する際の当該吸引キャップ55の姿勢を規定するための当接部37が突出して設けられている。一方、外枠部50の内周面側には、キャリッジ38が備えた上記当接部37に当接される凹状の被当接部59が設けられている。
【0056】
スライドカム11は、キャリッジ38の主走査方向と直交する上記第2方向へ移動可能に支持されている。スライドカム11は、外枠部50の下面に当接されるガイド面を有する。図6に示すように、ガイド面は、高位置の第1ガイド面111及び低位置の第2ガイド面112と、第1ガイド面111と第2ガイド面112を連結する傾斜面113とにより構成されている。
【0057】
図7(A)に示すように、第2ガイド面112のみが外枠部50の下面とメンテナンスベース57の上面との間隙に入り込み、第2ガイド面112と吸引キャップ55の下面が当接している場合、吸引キャップ55は離間位置に保持される。
【0058】
スライドカム11が図示しない駆動源から駆動伝達されて第2方向一方側(図7中右側)へ摺動すると、図7(B)に示すように、第2ガイド面112に加えて傾斜面113が外枠部50とメンテナンスベース57の上面との間隙に入り込む。これにより、第2ガイド面112が外枠部50の下面から離れ、傾斜面113が外枠部50の下面に当接する。その結果、吸引キャップ55は、傾斜面113の高さに応じて、離間位置から密着位置へ向かって移動される。
【0059】
スライドカム11が上記駆動源から駆動伝達されて更に第2方向一方側(図7中右側)へ摺動すると、図7(C)に示すように、第2ガイド面112及び傾斜面113に加えて第1ガイド面111が外枠部50の下面とメンテナンスベース57の上面との間隙に入り込む。これにより、傾斜面113が外枠部50の下面から離れ、第1ガイド面111が外枠部50の下面に当接する。その結果、吸引キャップ55は密着位置に保持される。このようにして、スライドカム11が移動することによって、吸引キャップ55が離間位置と密着位置とに移動される。
【0060】
次に、図8を用いてコイルバネ75の付勢力による吸引キャップ55の姿勢変化について説明する。なお、図8の(A)、(B)、(C)のスライドカム11の状態は、図7の(A)、(B)、(C)に対応している。
【0061】
図8(A)に示すように、吸引キャップ55が離間位置に保持されている状態では、外枠部50は、吸引口53,54側の隅部に設けられたコイルバネ75の付勢力によって、第2方向においては、吸引口53,54側がその反対側よりも第3方向上側となるように傾斜する。また、第1方向においては、吸引キャップ55は、黒色インク室55Aと反対側の部分に位置する隅部に設けたコイルバネ75の付勢力によって、カラーインク室55B側が黒色インク室55A側よりも第3方向上側となるように傾斜する。
【0062】
スライドカム11が第2方向一方側(図8中右側)へ摺動すると、図8(B)に示すように、吸引キャップ55は、傾斜面113の高さに応じて、離間位置から密着位置へ向かって移動される。このときも、吸引キャップ55は、コイルバネ75の付勢力によって、第2方向においては吸引口53,54側がその反対側よりも第3方向上側となるように、第1方向においては、カラーインク室55B側が黒色インク室55A側よりも第3方向上側となるように傾斜する。なお、このときの傾斜角度は上記図8(A)よりも緩やかとなっている。
【0063】
スライドカム11が更に第2方向一方側(図8中右側)へ摺動すると、図8(C)に示すように、吸引キャップ55は密着位置に保持される。このとき、外枠部50及び吸引キャップ55は、コイルバネ75の付勢力による高さ位置と、スライドカム11の第1ガイド面111の高さ位置とが略同一となり、第1方向及び第2方向のいずれにおいても、略水平となる。したがって、吸引キャップ55はノズル面30へ密着することが可能である。
【0064】
以上から分かるように、パージ処理が終了した後に、吸引キャップ55がノズル面30から離間する際には、図8(C)に示す状態から図8(B)に示す状態へと移行し、その後、図8(A)に示す状態となる。すなわち、吸引キャップ55がノズル面30から離間する際には、黒色インク室55A側がカラーインク室55B側よりも第3方向においてノズル面30からの距離が離れるように傾斜すると共に、吸引キャップ55の他端部側(吸引口53,54と反対側)の方が一端部側(吸引口53,54側)よりもノズル面30からの距離が離れるように傾斜する。
【0065】
吸引キャップ55がこのような姿勢となることによる効果を、図9を用いて説明する。
【0066】
上述したように、本実施形態においては、吸引キャップ55が第1方向、第2方向、及び第3方向の3方向に自在に揺動するように構成されるので、インクが仕切壁52を越えるおそれがある。このとき、例えば黒色インクが黒色インク室55A側からカラーインク室55B側に入り込んだ場合、カラーインク室55B内が黒色インクによって汚れてしまう。このようなキャップ室内の汚れは、キャップ室内のインクの吸引だけでは完全に除去することができない。その結果、キャップ室内が黒色インクで汚れた状態で、再度吸引パージ処理が実行された場合、汚れた吸引キャップ55がノズル面30に密着して黒色インクがカラーノズル孔40bに付着し、カラーノズル孔40bを汚すおそれがある。
【0067】
本実施形態においては、上述したように、コイルバネ75が、カラーインク室55Bの、第1方向(図9中左右方向)に沿って黒色インク室55Aと反対側の部分でかつ第2方向(図9中紙面に垂直な方向)において吸引キャップ55の一端部側に位置する隅部Cの近傍において、吸引キャップ55を第3方向(図9中上下方向)に沿って付勢する。これにより、図9に示すように、吸引キャップ55はノズル面30から離れる際に、黒色インク室55A側がカラーインク室55B側よりも第3方向においてノズル面30からの距離が離れるように傾斜する。これにより、インクが仕切壁52を越えた場合でも、上述のように黒色インクがカラーインク室55B側に入り込むのではなく、カラーインクが黒色インク室55A側に入り込むようにすることができる。その結果、カラーインクが黒色インクに混入したとしても、黒色インクの色合いへの影響は小さく、黒色インクがカラーインクに混入する場合に比べて、インクの色合いへの影響を大幅に小さくすることができる。したがって、カラーノズル孔40bが黒色インクにより汚れるのを抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では特に、次のような効果も得ることができる。すなわち、吸引パージ処理が終了した後は、吸引キャップ55がノズル面30から第3方向に沿って離される。このとき、パージ処理が終了した直後は吸引キャップ55の内部空間にはインクが貯まっており、吸引キャップ55が傾いた状態でノズル面30から離れていく場合には、表面張力の作用により、吸引キャップ55の底面とノズル面30との第3方向に沿った離間距離が大きい部分より離間距離が小さい部分へとインクが流れる傾向となる。本実施形態においては、上述したように、コイルバネ75が吸引キャップ55の第2方向における一端部側を付勢することにより、第3方向に沿った上記離間距離は、吸引キャップ55の他端部側よりも一端部側の方が短くなる。したがって、上述したインクの流れは、吸引キャップ55の他端部側から一端部側へと生じることになる。そして、吸引口53,54は、吸引キャップ55の第2方向における一端部側に設けられる。これにより、表面張力の作用により吸引キャップ55の他端部側から一端部側へと流れ集まるインクを、効率的に吸引することができる。
【0069】
また、本実施形態では特に、吸引キャップ55を支持する外枠部50と、この外枠部50を取り付けるためのメンテナンスベース57とを設け、コイルバネ75をメンテナンスベース57と外枠部50の底部との間に設けることにより、外枠部50がメンテナンスベース57に対し、所定の遊びを有して第1方向、第2方向、及び第3方向のそれぞれに揺動自在に配置されている。これにより、外枠部50を介して吸引キャップ55を3次元的に揺動自在に支持することができ、ノズル面30の汚れを効率的に抑制できる構成を、確実に実現することができる。
【0070】
また、本実施形態では特に、メンテナンスベース57は、外枠部50が、第2方向に沿った両側へ移動するのを規制するとともに、第3方向に沿って吸引キャップ55がノズル面30に密着する密着位置と吸引キャップ55がノズル面30から離間する離間位置との間を外枠部50が移動するように、突出部72,73を案内する溝部74を備えており、この溝部74は、図5に示すように、第2方向に沿う溝幅寸法が、第3方向に沿った吸引キャップ55の離間位置から密着位置(図7参照)に向かう向き、即ち、第3方向の上側に向けて拡開形状となるように構成されている。これにより、吸引キャップ55が第3方向に沿ってノズル面30へと密着する側へ移動したときには、より多くの揺動を可能として確実にノズル面30の取り付け位置のばらつきを許容するとともに、それ以外の状態では揺動を小さく押さえ、吸引キャップ55の安定的な支持を図ることができる。
【0071】
また、本実施形態では特に、キャリッジ38によって吐出ヘッド39が主走査方向に沿って移動可能に支持される。このような構成においては、メンテナンス装置51による上記パージ動作等のメンテナンスを実行するときには、キャリッジ38によって吐出ヘッド39がメンテナンス装置51へと運搬される。キャリッジ38には当接部37が設けられており、メンテナンス装置51の外枠部50に設けられた被当接部59が上記当接部37に当接することにより、吸引キャップ55の姿勢を規定することができる。これにより、ノズル面30の取り付け位置がばらついていたとしても、キャリッジ38の当接部37による上記当接機能によって吸引キャップ55の姿勢が調整され、ノズル面30と吸引キャップ55とを適正な対向関係で正しく密着させることができる。
【0072】
なお、上記実施形態では、4色インク(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を用いるプリンタを例示したが、これに限らず、3色インク(シアン、マゼンタ、イエロー)を用いるプリンタに本発明を適用してもよい。この場合、濃色インクをシアン又はマゼンタ、淡色インクをイエローとし、上記実施形態と同様の構成とすればよい。また、本発明は、紙やシートに印刷するものに限らず、基板等を印刷するインク吐出装置に適用してもよい。
【0073】
なお、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0074】
2 プリンタ(インク吐出装置)
2A 装置本体
30 ノズル面
37 当接部
38 キャリッジ
39 吐出ヘッド
40a 黒色ノズル孔(濃色ノズル孔)
40b カラーノズル孔(淡色ノズル孔)
40 ノズル孔
50 外枠部
51 メンテナンス装置
52 仕切壁
53,54 吸引口
55 吸引キャップ
55A 黒色インク室
55B カラーインク室
57 メンテナンスベース
59 被当接部
72,73 突出部
74 溝部
75 コイルバネ(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃色インクの液滴を噴出する濃色ノズル孔、及び、淡色インクの液滴を噴出する淡色ノズル孔を含む、複数のノズル孔を設けたノズル面を備えた吐出ヘッドと、
前記ノズル面へ密着させて前記複数のノズル孔を覆う吸引キャップ、及び、前記吸引キャップに設けた吸引口に接続された吸引手段、を備えたメンテナンス装置と、
前記メンテナンス装置が設けられる装置本体と、
を有するインク吐出装置であって、
前記吸引キャップは、
前記ノズル面に密着した状態において、前記ノズル面と前記吸引キャップにより画成される内部空間を、前記ノズル面に沿う第1方向一方側に位置し前記濃色ノズル孔に対向する濃色インク室と、前記第1方向他方側に位置し前記淡色ノズル孔に対向する淡色インク室と、に仕切る仕切壁を備え、
さらに、前記吸引キャップは、
前記装置本体に対し、前記第1方向、前記第1方向と直交し且つ前記ノズル面に沿う第2方向、及び、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向、のそれぞれにおいて、所定の遊びを有して揺動自在に配置され、
前記メンテナンス装置は、
前記淡色インク室の、前記第1方向に沿って前記濃色インク室と反対側の部分でかつ前記第2方向において前記吸引キャップの一端部側に位置する隅部の近傍において、前記吸引キャップを前記第3方向に沿って付勢する付勢手段を有する
ことを特徴とするインク吐出装置。
【請求項2】
前記吸引口は、
前記吸引キャップの前記第2方向における前記一端部側に設けられ、
前記吸引キャップは、
前記ノズル面から離れる際に、前記他端部側が前記一端部側よりも前記第3方向において前記ノズル面からの距離が離れて傾くように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のインク吐出装置。
【請求項3】
前記メンテナンス装置は、
前記吸引キャップを支持する外枠部と、
前記外枠部を取り付けるためのメンテナンスベースを有し、
前記外枠部は、
前記メンテナンスベースに対し、前記遊びを有して前記第1〜第3方向のそれぞれに揺動自在に配置されており、
前記付勢手段は、
前記メンテナンスベースと前記外枠部の底部との間に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインク吐出装置。
【請求項4】
前記外枠部は、
前記第1方向一方側及び他方側にそれぞれ突出した突出部を備え、
前記メンテナンスベースは、
前記外枠部が、前記第2方向に沿った両側へ移動するのを規制とともに、前記第3方向に沿って前記吸引キャップが前記ノズル面に密着する密着位置と前記吸引キャップが前記ノズル面から離間する離間位置との間を前記外枠部が移動するように、前記突出部を案内する溝部を備えており、
前記溝部は、前記第2方向に沿う溝幅寸法が、前記第3方向に沿った前記離間位置から前記密着位置に向けて拡開形状となるように構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のインク吐出装置。
【請求項5】
前記吐出ヘッドを前記第1方向に沿って移動可能に支持するキャリッジを有し、
前記キャリッジは、
前記吸引キャップが前記ノズル面へ密着する際の当該吸引キャップの姿勢を規定するための当接部を備え、
前記外枠部は、
前記当接部に当接される被当接部を備える
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のインク吐出装置。
【請求項6】
前記濃色インクは、ブラックインクであり、前記淡色インクは、カラーインクである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のインク吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−884(P2012−884A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138304(P2010−138304)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】