説明

インク組成物、及びインクジェット記録方法

【課題】活性エネルギー線の照射等に対して感度が高く硬化性が良好であり、耐溶剤性に優れ、硬化によって形成された硬化物が被記録媒体から剥がれることがないインク組成物を提供し、該インク組成物を用い被記録媒体に良好な画像を形成するインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表されるオキセタン化合物、(B)重合開始剤、および、(C)ビニルエーテル化合物、またはエポキシ化合物の少なくとも1種の化合物 を含むインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン重合性化合物を用いた活性エネルギー線の照射等によって硬化するインク組成物、それを用いたインクジェット記録方法に関し、詳しくは、活性エネルギー線の照射等に対して、高感度で硬化し、形成された硬化物が充分な柔軟性を有するインク組成物、インクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり、結果的に製造コストが高価になるなどの問題がある。また熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、ランニングコストが高く、かつ廃材が出るなどの問題がある。
一方、インクジェット方式は、安価な装置で、且つ、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
【0003】
プラスチックなどの非吸水性の被記録媒体への印字適性を有するインクジェット用インクとして、紫外線(UV)照射により硬化するUVインクが知られており(例えば、特許文献1〜3参照)、溶剤系インクに比べて有機溶剤を揮発させるための時間や設備が不要であるなどの利点がある。このようなインクを用いた場合の硬化には、モノマー成分のラジカル重合を利用した系が汎用されている。また近年カチオン重合性化合物を用いた紫外線硬化型インクジェット用インクも提案されているが、特に感度が高く、硬化性が良好で、安定に吐出できる低粘度なインクを設計することは容易ではない。このような問題点を解決するべく、ビシクロ環またはトリシクロ環構造などの脂肪族縮環構造を有するカチオン重合性基を有するオキセタン化合物を含むインクジェット用インクが提案されている(例えば、特許文献4〜7参照)が、硬化感度と耐溶剤性とに優れたインク組成物としてはまだ十分とは言えず、またインクジェット用インクとして用いた際の吐出安定性の観点でも改良の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−183927号公報
【特許文献2】特開2003−246818号公報
【特許文献3】特開2003−292855号公報
【特許文献4】特開2004−250434号公報
【特許文献5】特開2007−137926号公報
【特許文献6】特開2007−211099号公報
【特許文献7】特開2008−13646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、活性エネルギー線の照射に対して感度が高く硬化性が良好であり、耐溶剤性に優れ、硬化によって形成された硬化物が被記録媒体から剥がれることがないインク組成物を提供することにある。さらには、該インク組成物を用い被記録媒体に良好な画像を形成するインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定構造のオキセタン化合物、光重合開始剤、およびビニルエーテル化合物、またはエポキシ化合物の少なくとも1種の化合物 を含むインク組成物により、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0007】
<1>(A)下記一般式(1)で表されるオキセタン化合物、(B)重合開始剤、および、(C)ビニルエーテル化合物、またはエポキシ化合物の少なくとも1種の化合物 を含むインク組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
前記一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立にオキセタン骨格を有する基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは0〜2の整数を表し、(m+n)は2または3である。Aは、環を形成する元素が炭素原子のみからなる脂肪族ビシクロ環またはトリシクロ環を含む(m+n)価の基を表す。
【0010】
<2>前記一般式(1)におけるAが、下記(2)で表される骨格を含む(m+n)価の基である<1>に記載のインク組成物。
【0011】
【化2】

【0012】
<3>前記(A)一般式(1)で表されるオキセタン化合物が、下記一般式(3)または一般式(4)で表される化合物である<1>または<2>に記載のインク組成物。
【0013】
【化3】

【0014】
一般式(3)、および一般式(4)中、RからRはそれぞれ独立にオキセタン骨格を有する基を表す。
【0015】
<4>(A)一般式(1)で表されるオキセタン化合物の含有量が、重合性化合物の全質量に対して10質量%以上50質量%未満である<1>から<3>のいずれか1項に記載のインク組成物。
<5>インクジェット記録用インクである<1>から<4>のいずれか1項に記載のインク組成物。
<6>活性エネルギー線の照射によって硬化する<1>から<5>のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0016】
<7>(a)被記録媒体上に、<1>から<6>のいずれか1項に記載のインク組成物を吐出する工程、及び(b)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して、該インク組成物を硬化する工程、を含むインクジェット記録方法。
【0017】
本発明において用いるオキセタン化合物は、一般式(1)で表されるが、脂環であるビシクロ環、またはトリシクロ環とオキセタン骨格とを連結する酸素原子が上記脂環を構成する炭素原子と直接結合しているため硬化性が向上し、耐溶剤性に優れ、しかも脂環構造を有しているので、活性エネルギー線の照射等により硬化したインクは柔軟性に富んでいるものと推定される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、活性エネルギー線の照射に対して感度が高く、硬化性が良好であり、耐溶剤性に優れ、硬化によって形成された硬化物が被記録媒体から剥がれることがないインク組成物を提供することができる。さらには、該インク組成物を用いて被記録媒体に良好な画像を形成するインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のインク組成物は、(A)下記一般式(1)で表されるオキセタン化合物(以下、適宜、「特定重合性化合物A」と称する)、(B)重合開始剤、および(C)ビニルエーテル化合物、またはエポキシ化合物の少なくとも1種の化合物(以下、適宜、「特定重合性化合物C」と称する)を含有する。
まず、本発明のインク組成物を構成する上記した個々の化合物について詳述する。
【0020】
<(A)一般式(1)で表されるオキセタン化合物=特定重合性化合物A>
本発明のインク組成物は、(A)下記一般式(1)で表されるオキセタン化合物(特定重合性化合物A)を含む。
【0021】
【化4】

【0022】
前記一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立にオキセタン骨格を有する基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは0〜2の整数を表し、(m+n)は2または3である。Aは、環を形成する元素が炭素原子のみからなる脂肪族のビシクロ環またはトリシクロ環を含む(m+n)価の基である。
【0023】
一般式(1)において、Aは(m+n)価の基であり、Aで表される連結基に含まれる環は、環を形成する元素が炭素原子のみからなる脂肪族ビシクロ環、または脂肪族トリシクロ環である。
本発明において、「ビシクロ環」及び「トリシクロ環」とは、縮環部分を有する脂肪族環状構造であり、該環状構造を鎖式構造まで開くのに必要な環状構造中の原子間結合の切断数が、3回である場合が「トリシクロ環」、2回である場合が「ビシクロ環」である。そのような環構造からなる分子骨格を、本発明においては「トリシクロ環骨格」及び「ビシクロ環骨格」と称する。縮環とは複数の環が少なくとも1つの結合を共有する環構造であり、例えば2つの環が結合を共有しないビシクロヘキシル骨格(下記構造)などは含まない。
【0024】
【化5】

【0025】
一般式(1)のAにおけるビシクロ環又はトリシクロ環は、任意の置換基を有してもよく、例えば、炭素数1〜12の範囲にあるアルキル基、炭素数1〜12の範囲にあるアリル基、炭素数6〜12の範囲にあるアリール基、炭素数1〜12の範囲にあるアルコキシ基、および炭素数1〜12の範囲にあるアルコキシカルボニル基、さらに水酸基、ハロゲン原子などが挙げられ、これらの中でも、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
【0026】
ビシクロ環又はトリシクロ環が有する置換基が互いに連結して更なる縮合環構造(例えばテトラシクロ環等)を形成していてもよいが、分子量および脆性の点からビシクロ環、トリシクロ環であることが好ましく、ビシクロ環、トリシクロ環であると硬化感度が向上し、また耐溶剤性が良好であり好ましい。
特定重合性化合物Aに含まれるビシクロ環及びトリシクロ環から選ばれる環を含む構造としては、具体的には以下が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0027】
【化6】

【0028】
特定重合性化合物Aを表す一般式(I)において、連結基Aに含まれるビシクロ環及びトリシクロ環としては、下記(2)で表される環構造であるか、または部分構造として下記(2)を含む構造であることが好ましい。該構造には性能上の妨げにならない任意の置換基を有していてもよい。導入可能な置換基の好ましい具体例としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基などが挙げられる。これらの置換基は互いに結合してさらなる環構造を構成していてもよい。
下記(2)で表される縮環構造は、例えばDiels−Alder反応などにより安価な化合物から形成できるため、合成の簡便性やコスト面からも有利である。
【0029】
【化7】

【0030】
一般式(1)において、Rはオキセタンを部分構造として有する基を表す。Rの具体例としてはオキセタン環構造を含む炭素数1〜12のアルキル基、炭素数9〜15のアリール基、炭素数1〜12のアシル基が挙げられる。さらにRは任意の置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアリル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、および水酸基などが挙げられ、これらの中でも、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。(R−O)で表されるオキセタン環を有する基はビシクロ環骨格、またはトリシクロ環骨格に直接結合しており、本発明の特定重合性化合物において必須の部位である。この基があることにより、所望の硬化性と柔軟性を両立することが可能となる。
一般式(1)中、mは(R−O)で表されるオキセタン骨格を有する基の数を表し、mは1以上3以下の整数である。
【0031】
の具体的を以下の基が挙げるが、これらに限るものではない。
【0032】
【化8】

【0033】
一般式(1)において、Rはオキセタンを部分構造として有する基を表す。Rの具体例としてはオキセタン環構造を含む炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数1〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜12のアシル基などが挙げられる。
は任意の置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアリル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、および水酸基などが挙げられ、これらの中でも、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。一般式(1)中、nはRで表されるオキセタン骨格を有する基の数を表し、nは0以上2以下の整数である。(m+n)は2または3である。すなわち本発明の特定重合性化合物Aは分子内に2または3個のオキセタン環を有する。m、nの組み合わせとして特に好ましくは、m=n=1の場合、およびm=2、n=0の場合である。
【0034】
の具体例を以下の基が挙げるが、これらに限るものではない。
【0035】
【化9】

【0036】
さらに本発明の特定重合性化合物Aは、下記一般式(3)または一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。一般式(3)または一般式(4)で表される化合物とすることで硬化性と脆性の両立の観点で良好となる。また骨格部分がDiels-Alder反応などにより簡便に合成可能であるため大量製造適性がよく、特にコスト面で有利となる。
【0037】
【化10】

【0038】
一般式(3)、および一般式(4)中、R〜Rはそれぞれ独立にオキセタン骨格を有する基を表す。一般式(3)、および一般式(4)において、結合の間から出ている直線は、直線を挟むいずれの原子に結合していてもよいことを示す。一般式(3)又は一般式(4)で示される特定重合性化合物Aは、位置異性体混合物であってもよい。R〜Rとして好ましい例は、前記一般式(I)におけるRで挙げた具体例及び好ましい例と同様である。
【0039】
本発明の特定重合性化合物Aの分子量は、好ましくは100〜800、より好ましくは150〜650、特に好ましくは200〜500である。本発明の特定重合性化合物は、常温(25℃)で液体であることが好ましいが、他の重合性化合物に溶解して使用する形態もありうるため、固体であってもよい。
【0040】
以下に、本発明の特定重合性化合物Aの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
結合の間から出ている直線は直線を挟むいずれの原子に結合していてもよいことを示す。特定重合性化合物Aは位置異性体混合物であってもよい。
【0041】
【化11】

【0042】
特定重合性化合物Aのインク組成物中の含有量は、インク組成物の全固形分に対し、10質量%〜50質量%が好ましく、15質量%〜35質量%がより好ましい。この範囲内とすることで、硬化性が向上し、耐溶剤性が良好となり、また脆性にも問題のない膜を形成することが可能となる。
【0043】
<(B)重合開始剤>
本発明のインク組成物には、活性エネルギー線(放射線)の照射により酸を発生する(B)重合開始剤を含有する。本発明に用いうる重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどの照射により酸を発生する化合物を適宜選択して使用することができる。
本発明のインク組成物においては、先に述べたように、紫外線照射が好適なことから、紫外線に感応性を有する重合開始剤を選択することが好ましい。
【0044】
このような重合開始剤としては、放射線の照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。本発明のインク組成物に用いることのできる重合開始剤の種類、具体的化合物、および好ましい例としては、特開2008−13646号公報の段落番号〔0066〕〜〔0122〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
【0045】
本発明に使用しうる光カチオン重合開始剤として好ましい化合物として、下記式(b1)、(b2)、(b3)で表される化合物を挙げることができる。
【0046】
【化12】

【0047】
式(b1)において、R201、R202、及びR203は、各々独立に有機基を表す。Xは、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF、PF、SbFや以下に示す基などが挙げられ、好ましくはBF、PF、SbFである。
【0048】
本発明に用いうる光カチオン重合開始剤の好ましい化合物例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
【化13】

【0050】
【化14】

【0051】
【化15】

【0052】
【化16】

【0053】
【化17】

【0054】
(B)重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
インク組成物中の(B)重合開始剤の含有量は、インク組成物の全固形分に対して、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。この範囲内とすることで硬化性が向上し、硬化したとき被記録媒体上での剥がれが防止できる。
【0055】
(増感剤)
本発明のインク組成物には、さらに、重合硬化を促進させる増感剤を添加してもよく、増感剤としてはアントラセン化合物を用いることが好ましい。該アントラセン化合物は置換基を有していてもよい。
【0056】
前記アントラセンが置換基を有する場合、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、などが挙げられ、中でも特に、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。また、アントラセンの置換基の個数は、1〜4個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましい。特に、1置換の場合の置換基の位置としては9位であることが好ましく、2置換の場合の置換基の位置としては9、10位であることが好ましい。
この中でも特に、2置換の場合の9、10位である、9,10−置換アントラセン化合物であることが好ましい。
【0057】
本発明おいては、アントラセン以外の化合物も増感色素を添加してもよく、アントラセンと併用することも単独で用いることも可能である。本発明に係るアントラセン以外の増感剤としては、以下に列挙する化合物類に属しており、且つ350nm〜450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
【0058】
例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル、等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン、等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン、等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー、等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン、等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン、等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム、等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、等)、等が挙げられる。
【0059】
本発明のインク組成物には更に、共増感剤として、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を加えてもよい。
【0060】
共増感剤の例としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0061】
共増感剤の別の例としては、チオールおよびスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0062】
また、共増感剤の別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特願平6−191605号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
【0063】
<(C)ビニルエーテル化合物、またはエポキシ化合物の少なくとも1種の化合物=特定重合性化合物C>
本発明のインク組成物は、(C)ビニルエーテル化合物、またはエポキシ化合物の少なくとも1種の化合物(特定重合性化合物C)を含む。特定重合性化合物Cであるビニルエーテル化合物、およびエポキシ化合物としては、例えば、特開平6−9714号公報、特開2001−31892号公報、同2001−40068号公報、同2001−55507号公報、同2001−310938号公報、同2001−310937号公報、同2001−220526号公報などの各公報に記載されている単官能および多官能のビニルエーテル化合物およびエポキシ化合物が挙げられる。
【0064】
ビニルエーテル化合物としては、単官能、多官能のいずれのものも用いることができ、具体的化合物、及び好ましい例としては、特開2008−13646号公報の段落番号〔0042〕〜〔0044〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
このなかでも、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0065】
単官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0066】
また、多官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
上述した多官能ビニルエーテル化合物のうち、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物がより好ましい。
【0067】
本発明の重合性組成物Cに用いることのできるエポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、及び、脂肪族エポキシドなどが挙げられ、この中でも脂環式エポキシドが硬化性の観点で好ましい。
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
本発明の重合性組成物Cに用いることのできるエポキシドの種類、具体的化合物、好ましい例としては、特開2008−13646号公報の段落番号〔0037〕〜〔0040〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
【0068】
単官能エポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0069】
また、多官能エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等があげられる。
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドがより好ましい。
【0070】
本発明のインク組成物には、特定重合性化合物Cとして、ビニルエーテル化合物またはエポキシ化合物を1種用いても、2種以上を併用してもよい。また、ビニルエーテル化合物とエポキシ化合物とを併用してもよい。
インク組成物中における特定重合性化合物Cの含有量は、インク組成物の全固形分に対して、10〜80質量%が好ましく、より好ましくは15〜70質量%、更に好ましくは25〜55質量%である。この範囲内とすることにより硬化性と脆性の両立の観点で良好となる。
【0071】
(その他の重合性化合物)
本発明のインク組成物には、特定重合性化合物A、特定重合性化合物C以外の他の重合性化合物を、必要に応じて使用することができる。上記以外の重合性化合物としては、活性エネルギー線の照射により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されている特定重合性化合物Aに含まれない他のオキセタン化合物などが挙げられる。
【0072】
特定重合性化合物Aに含まれない他のオキセタン化合物としては、単官能、多官能のいずれも用いることができ、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。本発明における特定重合性化合物に併用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、インク組成物等に適用した場合において、硬化後の組成物と被記録媒体との高い密着性を得ることができる。本発明の重合性組成物に用いることのできるオキセタン化合物の種類、具体的化合物、および好ましい例としては、特開2008−13646号公報の段落番号〔0045〕〜〔0062〕に記載の特定重合性化合物Aに含まれない化合物などを挙げることができる。
【0073】
本発明のインク組成物において、特定重合性化合物A、および特定重合性化合物Cにこれ以外の重合性化合物が併用される場合、特定重合性化合物Aの含有比率は、重合性化合物の総量に対して、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、15質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。即ち、全重合性化合物中、特定重合性化合物Aがこの範囲にあれば、本発明のインク組成物における、高感度や優れた膜性、耐溶剤性などの効果を奏しうる。
また特定重合性化合物Cの含有比率は、重合性化合物の総量に対して、10質量%以上85質量%以下であることが好ましく、15質量%以上75質量%以下であることが好ましい。
【0074】
さらに、本発明のインク組成物には上記した他に、必要に応じて顔料や染料などの着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物界面活性剤、重合禁止剤、などを添加することができる。以下祥述する。
【0075】
(着色剤)
本発明のインク組成物には、目的に応じて着色剤を含有することができる。また、本発明のインク組成物においては、着色剤を添加することで、可視画像を形成しうるインク組成物とすることができる。
本発明のインク組成物に用いることのできる着色剤は、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の色材、(顔料、染料)を適宜選択して用いることができる。例えば、耐候性に優れた画像を形成する場合には、顔料が好ましい。また、染料としては、水溶性染料および油溶性染料のいずれも使用できるが、油溶性染料が好ましい。
【0076】
(顔料)
まず、本発明のインク組成物における着色剤として好ましく使用される顔料について述べる。着色剤として顔料を用いた場合、インク組成物を使用して形成された着色画像は耐光性に優れたものとなる。
前記顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料および無機顔料、または顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
本発明において使用できる有機顔料および無機顔料の具体例としては、特開2008−13646号公報の段落番号〔0126〕〜〔0131〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
【0077】
顔料の分散には、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、ルーブリゾール社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0078】
インク組成物において、顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じたりするためである。このような観点から、分散媒としては、重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低いカチオン重合性モノマーを選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0079】
インク組成物中の顔料粒子の体積平均粒径は、0.02〜0.60μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.10μmである。また、最大粒径は3μm以下が好ましく、さらに好ましくは1μm以下であり、そのような範囲となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
【0080】
(染料)
染料としては、従来公知の化合物(染料)から適宜選択して使用することができる。具体的には、特開2002−114930号公報の段落番号〔0023〕〜〔0089〕、特開2008−13646号公報の段落番号〔0136〕〜〔0140〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
【0081】
前記着色剤はインク組成物中、インク組成物の全質量に対して0.05〜20質量%添加されることが好ましく、0.2〜10質量%がより好ましい。着色剤として油溶性染料を用いた場合には、インク組成物の全質量(溶媒を含む)に対して、0.2〜6質量%が特に好ましい。
【0082】
−紫外線吸収剤−
本発明のインク組成物には、得られる硬化物、或いは、画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を添加することができる。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
【0083】
−酸化防止剤−
本発明のインク組成物には、安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
【0084】
−褪色防止剤−
本発明のインク組成物には、各種の有機系および金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式および化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
【0085】
−導電性塩類−
本発明のインク組成物は、特にインクジェット記録用インク組成物に用いる場合は、射出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0086】
−溶剤−
本発明のインク組成物には、被記録媒体等の固体表面と、硬化物や形成された画像との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性悪化が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0087】
−高分子化合物−
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、または「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0088】
−界面活性剤−
本発明のインク組成物には、公知の界面活性剤を含有させることが好ましい。公知の界面活性剤としては、例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。具体的には、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記公知の界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)および固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0089】
−重合禁止剤−
重合禁止剤としては、フェノール系水酸基含有化合物、およびキノン類、N−オキシド化合物類、ピペリジン−1−オキシルフリーラジカル化合物類、ピロリジン−1−オキシルフリーラジカル化合物類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、およびカチオン染料類からなる群より選択される化合物が好適に挙げられる。
【0090】
具体的には、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル等のハイドロキノンモノアルキルエーテル、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のヒンダートフェノールが好ましい。
重合禁止剤のインク組成物中における含有量としては、インク組成物の総量(全質量)に対して、50〜30000ppmが好ましく、100〜10000ppmがより好ましく、100〜3000ppmがより好ましい。
【0091】
この他にも、本発明のインク組成物には、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
前記タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
【0092】
<インク組成物の好ましい物性>
本発明のインク組成物は、インクジェット記録に適用する場合、吐出性を考慮し、吐出時の温度におけるインク粘度が、5〜30mPa・sであることが好ましく、7〜20mPa・sが更に好ましい。このため、前記範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。
また、室温(25〜30℃)でのインク組成物の粘度は、7〜120mPa・sが好ましく、10〜80mPa・sが更に好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となり、更にインク液滴着弾時のドット滲みを抑えることができ、その結果として画質を改善することができる。
【0093】
本発明のインク組成物の表面張力は、20〜40mN/mであることが好ましく、20〜30mN/mであることが更に好ましい。また、本発明のインク組成物を、ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲みおよび浸透の観点から、前記表面張力は20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では30mN/m以下であることが好ましい。
【0094】
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用のインクとして好適に用いることができる。インクジェット記録方式には特に制限はなく、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出する電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出する音響型インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、発生した圧力を利用するサーマル型インクジェット方式、等のいずれであってもよい。なお、前記インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
本発明のインク組成物は、前記のうち、ピエゾ素子を用いたドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)のインクジェット記録用インクとして好適である。
【0095】
<インクジェット記録方法>
次に、本発明の画像記録方法に好適に採用され得るインクジェット記録方法について、以下説明する。
【0096】
本発明における画像形成方法としては、(a)被記録媒体上に、本発明のインク組成物を吐出する工程、及び(b)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して、インク組成物を硬化する工程、を含むインクジェット記録方法であることが好ましい。
【0097】
・システム
インクを吐出するインクジェット記録システムとしては、特開2002−11860号公報に示すような形態が一例としてあげられるが、これに限定されるものではなく、他の形態であってもよい。
【0098】
・インク保持手段
インクを保持する手段としては、公知のインクカートリッジに充填することが好ましく、特開平5−16377号公報に開示されるように変形可能な容器に収納し、タンクとなすことも可能である。また特開平5−16382号公報に開示されるように、サブタンクを有するとインクをヘッドへの供給が更に安定する。また特開平8−174860号公報に開示されるように、インク供給室の圧力が低下した場合に、弁の移動によりインクを供給する形態のカートリッジを用いることも可能である。これらのインク保持手段でヘッド内のメニスカスを適切に保つための負圧付与方法としては、インク保持手段の高さすなわち水頭圧による方法、またインク流路中に設けたフィルタの毛細管力による方法、また、ポンプ等により圧力を制御する方法、また、特開昭50−74341号公報に開示されるようにインクをインク吸収体に保持し、この毛細管力により負圧を付与する方法等が適切である。
【0099】
・インク供給路
インクをこれらインク保持手段からヘッドに供給する方法として、ヘッドユニットに直接保持手段を連結する方法でもよいし、チューブ等の流路により連結する方法でもよい。これらインク保持手段および流路は、インクに対して良好な濡れ性を持つような素材であること、もしくは表面処理が施されていることが好ましい。
【0100】
・ヘッド
インクを打滴する方法としては、特開平5−104725号公報に開示されるように、連続的にインク滴を吐出させ、画像に応じて滴を偏向して被記録材に着弾させるか、させないかを選択制御する方法であってもよいし、所謂オンデマンド方式を呼ばれる、画像として必要な部分にのみインク滴を吐出させる方式であってもよい。オンデマンド方式は、特開平5−16349に開示されるように、圧電素子等を用いて構造体の変形によりインク圧を発生させ、吐出させる方式であってもよいし、特開平1−234255に開示されるように、熱エネルギーによる気化にともなう膨張により発生する圧力で吐出する方式であってもよい。また特開2001−277466号公報に開示されるように、電界により被記録材への吐出を制御する方式であってもよい。
【0101】
インクジェット記録方法においては、本発明のインク組成物を用いて被記録媒体に画像記録を行なうが、その際に使用するインク吐出ノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ノズルはたとえば特開平5−31908号公報に記載されるような形態が適用可能である。なお、このとき複数色のインクを吐出させるため、ノズルは特開2002−316420号公報に記載されるように、複数列に構成されることにより、高速にカラー画像を形成することが可能となり、さらに複数のノズル列を有するヘッドユニットを複数配置することにより更に高速化が可能である。
【0102】
さらにノズルを特開昭63−160849号公報に記載されるように画像の幅と同等以上の幅分配置し、所謂ラインヘッドとなし、これらのノズルからの打滴と同時に被記録材を移動させることにより、高速に画像を形成することが可能となる。
またノズルの表面は、特開平5−116327号公報に開示されるような表面処理を施すことにより、ノズル表面へのインク滴の飛沫の付着、およびインク滴の付着を防ぐことが可能となる。
【0103】
このような処理を施しても、なお汚れが付着する場合があり、このため、特開平6−71904号公報に開示されるように、ブレードにより清掃を行うことが好ましい。
また、ノズルから各色のインクが均等に吐出されるとは限らず、特定のインクは長時間吐出されない場合もありうる。このようなときに、メニスカスを安定に保つために、特開平11−157102号公報に開示されるように、画像領域外で適宜インクを吐出させ、ヘッドに新しいインクを補給することにより、インク物性を適性値に維持することが好ましい。
【0104】
また、このような処置を施してもなお気泡がヘッド内に侵入もしくはヘッド内で発生することがある。このような場合は、特開平11−334092号公報に記載されるように、ヘッド外より強制的にインクを吸引することにより、物性の変化したインクを廃棄するとともに、気泡もヘッド外に排出することができる。更に長時間打滴しない場合は特開平11−138830号公報に開示されるように、キャップでノズル表面を覆うことによりノズル表面を保護することができる。これらの措置を講じてもなお吐出しない場合がありうる。
ノズルの一部が吐出しない状態で画像をプリントすると、画像にムラが発生する等の問題が発生する。このようなことを避けるため、特開平2000−343686号公報に開示されるように、吐出しないことを検出して処置をとることが有効である。
【0105】
ヘッドユニットを特開平6−115099号公報に記載されるように機械的に移動させ、これと同期させて被記録材を直交方向に間欠的に移動させることにより重畳打滴を行うと、被記録材の間欠的な移動の精度不良にともなうムラを見えにくくする効果があり、高画質を実現することが可能となる。このとき、ヘッドの移動速度、被記録材の移動量、ノズル数の関係を適宜設定することにより、画質と記録速度の関係を好ましい関係に設定することが可能となる。
【0106】
また、逆にヘッドを固定し、被記録材を機械的に所定方向に往復移動するとともに、それと直交方向に間欠移動させることにより、同様の効果を得ることが可能である。
【0107】
・温度制御
インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましく、一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。
【0108】
インクジェット記録方法においては、上記インク組成物を40〜80℃に加熱して、インク組成物の粘度を30mPa・s以下、好ましくは20mPa・s以下に下げた後、射出することが好ましく、この方法を用いることにより高い射出安定性を実現することができる。一般に、放射線硬化型インク組成物では、概して水性インクより粘度が高いため、印字時の温度変動による粘度変動幅が大きい。このインク組成物の粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴射出速度に対して大きな影響を与え、これにより画質劣化を引き起こすため、印字時のインク組成物温度はできるだけ一定に保つことが必要である。このためにはインク温度検出手段と、インク加熱手段、および検出されたインク温度に応じて加熱を制御する制御手段を有することが好ましい。
【0109】
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
あるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御する手段を有することも好適である。
【0110】
インク組成物温度の制御幅は設定温度±5℃とすることが好ましく、より好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0111】
・露光
光源としては、一般的に用いられる水銀灯、メタルハライドランプ等を用いてもよいし、発光ダイオード、半導体レーザ、蛍光灯等を用いることができる。また熱陰極管、冷陰極管、電子線、X線等、インクの重合反応が進行する光源、電磁波等を用いることができ、これらが活性エネルギー線源となる。
【0112】
メタルハライドランプを用いる場合、ランプは10〜1000W/cmのものを使用し、被記録材面で1mW/cm〜100W/cmの照度であることが好ましい。
また、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等では放電にともない、オゾンが発生するため、排気手段を有することが好ましい。排気手段は、インク吐出時に発生するインクミストの回収を兼ねるべく配置してあることが好適である。
【0113】
次に活性エネルギー線の好ましい照射条件について述べる。基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間をおいて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。国際公開99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明においては、これらの照射方法を用いることが可能である。
【0114】
硬化させるための活性エネルギー線がインク吐出ノズルに照射されると、ノズル面表面に付着したインクミスト等が固化し、インク吐出の妨げとなる可能性があるため、ノズルへの照射を最小限にとどめるため、遮光等の措置を施すことが好ましい。具体的には、ノズルプレートへの照射を防止する隔壁を設ける、あるいは迷光を低減するべく被記録材への入射角を限定するための手段を設ける等が好適である。
【0115】
また本発明では、着弾から照射までの時間を0.01〜0.5秒とすることが望ましく、好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒後に放射線を照射することにある。このように着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾インクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。上記説明したインクジェット記録方法と本発明のインク組成物とを併せて用いることにより、大きな相乗効果をもたらすことになる。このような記録方法を取ることで、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことが出来、画質が向上する。
【0116】
・システムパラメータ
画像を形成するうえで、被記録材上でのインク着弾径は10〜500μmの間にあることが好適であり、このためには吐出時のインク滴の直径は5〜250μmであることが好ましく、このときのノズル径は15〜100μmであることが好ましい。
画像を形成するためには1インチあたりの画素数が50〜2400dpiであることが好ましく、そのためには、ヘッドのノズル密度は10〜2400dpiであることが好ましい。ここで、ヘッドのノズル密度は低くとも、被記録材の搬送方向に対して傾ける、あるいは複数のヘッドユニットを相対的にずらして配置することにより、ノズル間隔の大きいヘッドで高密度の着弾を実現することが可能である。また上記のようにヘッドもしくは被記録材の往復移動により、低ノズルピッチでヘッドが移動するごとに被記録材を所定量搬送させ、インク滴を異なる位置に着弾させることにより、高密度の画像記録を実現することができる。
【0117】
被記録材へのインク打滴量としては、良好な階調を表現するためには0.05〜25g/mの間で任意量に制御できることが好適であり、これを実現するためにヘッドからの吐出インク滴の大きさ、およびまたは数量を制御することが好ましい。
【0118】
ヘッドと被記録材の間隔に関しては、広すぎるとヘッドもしくは被記録材の移動に伴う空気の流れでインク滴の飛翔が乱れ、着弾位置精度が低下する。逆に間隔が狭いと、被記録材の凹凸、搬送機構に起因する振動等によりヘッドと被記録材が接触する危険性があり、0.5〜2mm程度に維持されることが好ましい。
【0119】
・インクセット
インクは単色であってもよいし、シアン、マゼンタ、イエローのカラーであってもよいし、さらにブラックを加えた4色、あるいはさらに特色と呼ばれるこれら以外の特定色のインクを用いてもよい。色材は、染料であってもよいし、顔料であってもよい。これらのインクの打滴順は、明度の低い順に着弾するように打滴させてもよいし、明度の高い順に着弾させてもよいし、画像記録品質上好適な順に打滴させることが好ましい。
【0120】
明度の高い色から順に重ねていくと、下部のインクまで活性エネルギー線が到達しやすく、硬化感度の阻害、残留モノマーの増加および臭気の発生、密着性の劣化が生じにくい。また、照射は全色を射出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
記録するべき画像信号は、たとえば特開平6−210905号公報に記載されるように、良好な色再現を得るべく信号処理を施すことが好ましい。
【0121】
また、本発明のインク組成物は、インクジェット記録用途以外に、三次元造形用途などにも利用可能であり、缶印刷用途や食品用途にも利用できる。これらの用途については公知の方法を利用して画像形成することができ、例えば特許第2679586号公報などの記載を参照することができる。
【0122】
−被記録媒体−
本発明のインク組成物を用いて記録される被記録媒体としてはインク浸透性の被記録媒体、および、インク非浸透性の被記録媒体をともに使用することができる。インク浸透性の被記録媒体は、普通紙、インクジェット専用紙、コート紙、電子写真共用紙、布、不織布、多孔質膜、高分子吸収体等が挙げられる。これらについては特開2001−1891549号公報などに「被記録材」として記載されている。
【0123】
前記インク非浸透性の被記録媒体としては、アート紙、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器、木材等が挙げられる。加えて各機能を付加する為に、これら材質を複数組み合わせ複合化した基材を使用することもできる。
【0124】
前記合成樹脂としてはいかなる合成樹脂も用いることができるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、および、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル;ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、および、ポリプロピレン等のポリオレフィン;並びに、アクリル樹脂、ポリカーボネート、および、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等や、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリイミド、セロハン、および、セルロイド等が挙げられる。
【0125】
前記合成樹脂を用いた基材の形状(厚み)は、フィルム状でもよいし、カード状またはブロック状でもよく、特に限定されることなく所望の目的に応じて適宜選定することができる。また、これら合成樹脂は透明であってもよいし、不透明であってもよい。前記合成樹脂の使用形態としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状で用いることが好ましい態様の一つであり、各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができる。各種プラスチック製のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、および、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを挙げることができる。
【0126】
前記樹脂コート紙としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム、および、紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体が挙げられ、前記紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体が特に好ましい。
【実施例】
【0127】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0128】
(合成例)
特定重合性化合物(1−1)の合成スキームを下記に示す。
i)メシル基を有するオキセタン化合物(1−1b)の合成
3−エチル−3−オキセタンメタノール(下記1−1a、東京化成工業社製)87.1g(0.75mol)の酢酸エチル250mL溶液を0℃に冷却し、メタンスルホニルクロリド(東京化成工業社製)90.2g(0.79mol)を攪拌しながら添加し、続いてピリジン(和光純薬工業社製)89.0g(11.3mol)を内温0℃〜15℃の範囲を維持しながら滴下した。滴下終了後、25℃にて4時間攪拌した後0℃に冷却し、蒸留水350mLを加えて再び25℃に昇温して10分間攪拌した。反応液を分液漏斗に移して水層を除去し、有機層を0.5mol/Lの塩酸200mL、および続いて飽和食塩水200mLで2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し溶媒を減圧留去して、化合物(1−1b)の粗製物(黄色液体)を122g(収率83%)得た。得られた化合物(1−1b)は精製をせずに、そのまま特定重合性化合物A(1−1)の合成に用いた。
【0129】
ii)特定重合性化合物Aの(1−1)の合成
J.Org.Chem.41;1976;1229に記載の方法で合成したジオール体(非光学活性体)1−1c 10.5g(0.074mol)のジメチルスルホキシド100mL溶液を0℃に冷却し、カリウムt−ブトキシド(和光純薬工業(株)社製)18.2g(0.162mol)を5分の1ずつ5回に分けて添加した後、室温(約25℃)にて20分間攪拌した。この液を35℃まで昇温し、上記合成例にて得た(1−1b) 31.6g(0.163mol)を内温を35℃〜55℃の範囲に維持しながら滴下し、滴下終了後60℃で30分間攪拌した。反応液を蒸留水200mLに注ぎ、酢酸エチル150mLで抽出し、水100mLおよび飽和食塩水100mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して化合物(1−1)を含む粗製物を得た。得られた粗製物をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、化合物(1−1)11.5g(収率46%)を無色透明液体として得た。
得られたものが特定重合性化合物Aに相当し、下記構造の化合物1−1(位置および立体異性体混合物)であることはH‐NMR(CDCl、300MHz)により確認した。H‐NMRのδ:0.91(t、6H)、1.2−1.8(m、10H)、2.4−2.7(m、2H)、3.5−4.2(m、14H)
【0130】
【化18】

【0131】
(顔料分散体の作製)
C.I.ピグメントレッド 122(チバスペシャリティーケミカルズ社製 クロモフタールジェット マゼンタ DMQ)20質量%、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン(特定重合性化合物A、および特定重合性化合物C以外の重合性化合物 東亞合成社製 OXT−211)72質量%、および分散剤(ルーブリゾール社製 SOLSPERSE32000)8質量%を、この組成比でボールミルに入れて、直径0.6mmのジルコニアビーズを使用して、16時間分散して顔料分散体を得た。
【0132】
〔実施例1〕
作製した顔料分散体、特定重合性化合物A、特定重合性化合物C、重合開始剤、および増感色素等が以下の組成となるように混合し、高速水冷式撹拌機により撹拌し、UVインクジェット用マゼンタインク組成物を得た。
・着色剤:C.I.ピグメントレッド 122(チバスペシャリティーケミカルズ社製 クロモフタールジェット マゼンタ DMQ) 5.0部
・分散剤:(ルーブリゾール社製Solsperse32000) 2.0部
・特定重合性化合物Aである化合物(1−1) 25.0部
・光カチオン重合開始剤(下記構造 B−1):(トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム ヘキサフルオロホスフェイト) 5.0部
・増感色素:9,10−ブトキシアントラセン(川崎化成工業社製) 3.0部
・特定重合性化合物Cであるエポキシ化合物:リモネンジオキサイド(ダイセル化学工業社製 セロキサイド3000) 35.0部
・他の重合性化合物(東亞合成社製 OXT−211) 40.0部
【0133】
【化19】

【0134】
〔実施例2〜6、比較例1〜3〕
実施例1の処方において、特定重合性化合物A、特定重合性化合物C、およびその他の重合性化合物の種類と量を表1に記載の組成に変更する以外は、実施例1のインク組成物の調整と同様にして、実施例2から実施例6、比較例1から比較例3のインク組成物を調整した。
【0135】
【表1】

【0136】
表1の実施例2〜6、および比較例1〜3で用いた化合物は以下の通りである。
・1−6:特定重合性化合物Aに例示した1−6
・1−8:特定重合性化合物Aに例示した1−8
・C−1:特開2004−250434号公報に記載されている縮環構造を有するオキセタン化合物であり、本発明の特定重合性化合物Aには該当しない。構造は下記に示す。
・OXT−221:ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亜合成(株)社製) 本発明の特定重合性化合物Aには該当しない。
・DVE−3:トリエチレングリコールジビニルエーテル(ISP Europe社製)
セロキサイド3000、およびDVE−3は、本発明の特定重合性化合物Cに該当する。
【0137】
【化20】

【0138】
実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例3で得られたインク組成物を用いて下記の印字、露光をし、感度、吐出安定性、および脆性に関して下記の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0139】
(印字、露光)
各インク組成物をピエゾ方式のインクジェットヘッドを用いて打滴を行った。ヘッドは25.4mmあたり150のノズル密度で、318ノズルを有しており、これを2個ノズル列方向にノズル間隔の1/2ずらして固定することにより、被記録媒体上にはノズル配列方向に25.4mmあたり300滴打滴される。
【0140】
ヘッドおよびインクは、ヘッド内に温水を循環させることにより吐出部分近辺が50±0.5℃となるように制御されている。ヘッドからのインク吐出は、ヘッドに付与されるピエゾ駆動信号により制御され、1滴あたり6〜42plの吐出が可能であって、本実施例ではヘッドの下1mmの位置で被記録媒体であるメディアが搬送されながらヘッドより打滴される。搬送速度は50〜200mm/sの範囲で設定可能である。またピエゾ駆動周波数は最大4.6kHzまでが可能であって、これらの設定により打滴量を制御することができる。
搬送速度90mm/s、駆動周波数1.9kHzとすることにより、24plにインク吐出量を制御し、10g/mの打滴を行い、ベタ印字画像を得た。
【0141】
メディアは打滴された後、露光部に搬送され紫外発光ダイオード(UV−LED)により露光した。UV−LEDは日亜化学製NCCU033(商品名)を用いた。本LEDは1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、被記録媒体であるメディア表面で0.3W/cmのパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、および露光時間はメディアの搬送速度およびヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。本実施例では着弾後、約0.5秒後に露光される。メディアとの距離および搬送速度の設定に応じて、メディア上の露光エネルギーを0.01〜15J/cmの間で調整することができる。本実施例では搬送速度により露光エネルギーを調整した。これら露光パワー、露光エネルギーの測定にはウシオ電機製スペクトロラディオメータURS−40D(商品名)を用い、波長220〜400nmの間を積分した値を用いた。本評価では被記録媒体であるメディアとして、PETフィルムまたはポリ塩化ビニル製のシートを使用し、印字及び露光テストは23℃、R.H.60%の環境で実施した。硬化した画像の厚みは19μmであった。
【0142】
(1.感度の評価)
各インク組成物を、上記装置を用いてポリ塩化ビニル製のシートに印刷し、搬送速度を変えることにより積算露光量を調整し、インクを硬化させ印刷物を得た。硬化における露光エネルギーを光量積算計(EIT社製UV Power MAP)により測定した。硬化性は印刷物の表面べとつきの有無を指蝕で判断し、べとつきがなくなる最小の積算露光量を下記基準により評価した。
A:100mJ/cm未満
B:100mJ/cm以上 250mJ/cm未満
C:250mJ/cm以上 400mJ/cm未満
D:400mJ/cm以上 700mJ/cm未満
E:700mJ/cm以上
実用的には感度の評価がB以上であることが必要であり、Aであることが特に好ましい。
【0143】
(2.脆性の評価)
各インク組成物を175μmPETに印刷したサンプルを2穴パンチ(MAX社製TypeC、商品名)で打ち抜き、打ち抜かれた円状表面の状態を観察し、以下の基準により評価した。
ランク5:全く剥がれが認められない。
ランク4:一部、周囲が欠ける。
ランク3:周囲が一部剥がれる。
ランク2:周囲が剥がれる。
ランク1:表面がぼろぼろに剥がれる。
実用的には脆性の評価が3以上であることが必要であり、4以上であることが好ましく、5であることがより好ましい。
【0144】
(3.硬化膜の耐溶剤性評価)
上記インクジェット記録方法に従い、平均膜厚が12μmでA6サイズのベタ画像の描画行った。硬化膜を、イソプロピルアルコールを十分に含ませた綿棒で5往復擦り、硬化膜の剥がれ具合を評価した。評価基準は以下の通りである。
A:硬化膜が全く剥がれない。
B:綿棒が薄く着色する。
C:硬化膜の上面が剥がれ、インク面の色が薄くなる。
D:硬化膜が下部まで剥がれ、支持体が露出する。
【0145】
【表2】

【0146】
表2に記載の結果より、本発明の特定重合性化合物を含有するインク組成物である実施例1〜実施例6のインク組成物は、感度、脆性、耐溶剤性のいずれも良好であることがわかる。これに対し本発明を用いない比較例1〜比較例3は、実施例に比べ特に耐溶剤性に劣り、比較例2および比較例3はさらに感度も低いことがわかる。
また実施例1と実施例3とを対比すると実施例1の方が感度が高く、本発明の特定重合性化合物のうち一般式(3)で示される構造を有する化合物を用いることによって、さらに好ましい結果が得られることがわかる。
さらに実施例1と実施例4、および実施例5との対比より、特定重合性化合物の含有量が好ましい範囲にある場合、感度、脆性、耐溶剤性のいずれにおいても良好な結果が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表されるオキセタン化合物、(B)重合開始剤、および、(C)ビニルエーテル化合物、またはエポキシ化合物の少なくとも1種の化合物 を含むインク組成物。
【化1】


前記一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立にオキセタン骨格を有する基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは0〜2の整数を表し、(m+n)は2または3である。Aは、環を形成する元素が炭素原子のみからなる脂肪族ビシクロ環またはトリシクロ環を含む(m+n)価の基を表す。
【請求項2】
前記一般式(1)におけるAが、下記(2)で表される骨格を含む(m+n)価の基である請求項1に記載のインク組成物。
【化2】

【請求項3】
前記(A)一般式(1)で表されるオキセタン化合物が、下記一般式(3)または一般式(4)で表される化合物である請求項1または請求項2に記載のインク組成物。
【化3】


一般式(3)、および一般式(4)中、RからRはそれぞれ独立にオキセタン骨格を有する基を表す。
【請求項4】
(A)一般式(1)で表されるオキセタン化合物の含有量が、重合性化合物の全質量に対して10質量%以上50質量%未満である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項5】
インクジェット記録用インクである請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項6】
活性エネルギー線の照射によって硬化する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項7】
(a)被記録媒体上に、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のインク組成物を吐出する工程、及び(b)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して、該インク組成物を硬化する工程、を含むインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2010−235640(P2010−235640A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81811(P2009−81811)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】