説明

インク袋、インク袋収納ケース、およびインクカートリッジ

【課題】 インクジェットプリンターのインクカートリッジにおいて、インク袋固定の脱着簡略化と高い位置決め精度の両立することを目的とする。
【解決手段】 一端にインク供給口を備え、かつ可撓性を有するインク袋、そのインク袋を収納するケース、それらを備えるインクカートリッジにおいて、インク袋に少なくともひとつの固定板を有し、固定板を介してケースに高精度の位置決めし、固定する構成のインクカートリッジを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンターにインクを供給するインク袋、インク袋収納ケースおよびそのインク袋を搭載するインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは大量印刷、幅広化、高速化の要求に対応するために、インクジェットヘッドから独立したインク供給源を設け、インク供給源よりチューブを介してインクを供給する方式を採用し、インク供給源としてインク袋が用いられることがある。
【0003】
前記のような構成のインクジェットプリンターの一例として、インク袋をハードケースに収納してインクカートリッジを構成すると共に、インク袋の一端に設けられたインク供給口をチューブに接続し、チューブを介してインクをインクジェットヘッドまで導入し、インクジェットヘッドまでインクを供給する構成が挙げられ、さらにインクカートリッジとインクジェットヘッドの間にサブタンクを設け、インク袋のインクが尽きても直ちにインクジェットヘッドへのインクの供給が停止しない構成も可能である。
【0004】
このようなインク供給形態を構成すると、インクジェットプリンターにおけるインクカートリッジの収納位置の選択可能範囲が増すと共に、インクジェットプリンターへの大量印刷、幅広化、高速化の要求に応えるインクカートリッジの容量の拡大も容易となり、結果としてインクカートリッジの大型化、長大化が採られるようになった。
【0005】
ところで、このようなインクカートリッジには特許第3381789号に見られるように、インク袋のインク取出口をケースの固定溝形状に合わせた嵌合部を持ちインク取出口を高精度に位置決めするものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3381789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
密閉型のインク袋を使用するインクカートリッジは収納していたインクがなくなると、インク袋とケースを含むインクカートリッジ全体を廃棄していた。しかし、インクがなくなったインク袋は再利用不可能だが、インクカートリッジのケースは再利用できるだけの機能を維持しており、ランニングコスト低減や省資源の観点から再利用可能な部品は繰返し使用できることが望まれた。しかし、インク袋は振動や落下を受けてもケースから脱落しないように強固に両面テープで固定されており、その結果、インク袋をケースから外すことは手間と困難をともなうという問題があった。さらにインクが充填されたインク袋は形が定まらない状態であるが、ケースに対して所定の位置決め精度で取り付けないとインク袋がシワになったり歪んだりして最後までインクを消費することができなくなってしまい、結果としてインクを無駄にすることになる。またインク袋にはインク袋内のインク残量を検知するためにインクエンド検出板を有しており、ケースに対してインク袋を高精度に位置決めできないと、インクエンド検出も機能しなくなる恐れがある。これらもケースの再利用の問題となっていた。
【0008】
本発明は前記問題に対し、インク袋固定について脱着の簡略化と高い位置決め精度を両立する構造を採用することで、ケースを再利用しインク袋のみを交換可能とするインク袋収納ケース、インク袋およびそのインク袋を搭載したインクカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のインク袋は、インクを貯蔵する可撓性を有する密閉袋と、前記密閉袋の一端に外部にインクを供給するインク供給口と、を有するインク袋において、前記密閉袋の一方の面であって前記密閉袋の長手方向の中央を含む位置に固定され、外部に配置された位置決め面と対向することで位置決めするスライド面を有し少なくとも前記位置決め面と前記スライド面とを対向させることで少なくとも1方向の位置決めが可能な固定板を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のインク袋収納ケースは、上述インク袋を格納するインク袋格納ケースであって、上述インク袋のインク供給口を固定する口固定部と、上述インク袋のスライド面と対向する位置決め面と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のインクカートリッジは、上述インク袋収納ケースに上述インク袋を格納したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の固定板をインク袋に設けることにより、ケースの再利用にともなうインク袋交換において、インク袋をケースに対して高精度な位置決め、固定機能と脱着作業の省力化を両立するインクカートリッジを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インクカートリッジを分解した状態の斜視図である。
【図2】インクカートリッジの断面図である。
【図3】別の例のインクカートリッジを分解した状態の斜視図である。
【図4】別の例のインクカートリッジの断面図である。
【図5】固定板の例を示す斜視図である。
【図6】図6(a)は、別の例の固定板別の上方からの外観図である。図6(b)は、別の例の固定板別の下方からの外観図である。図6(c)は、別の例の固定板別の側方からの外観図である。
【図7】さらに別の固定板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態の概要]
次に本発明の実施の形態を説明する。インクカートリッジは、インク袋をケースに取付けた状態のときはケース外部にインクを供給可能にしつつ、インク袋は固定板を介してケースに固定、収納している。固定板はインク袋長手方向の略中央に位置しており、インク袋の姿勢を安定させインク消費量にともなうインク袋の収縮における形状変化のバラツキを小さくする機能がある。インク袋は一端にインク供給口を備え、かつ可撓性を有する。さらにインク袋の固定板とは反対の略平面にインク残量を検知するためのインクエンド検出板を有している。インクカートリッジのケースはメインケースとサブケースの少なくとも二体で構成されており、メインケースとサブケースを分離可能である。またはサブケースはメインケースと一体化されており、サブケースがメインケース上を移動可能な構造でも良い。なお、サブケースはメインケースとインク袋の嵌合部の固定をするため、少なくともインク供給口と固定板を覆う範囲だけの大きさがあればよい。したがって、サブケースはメインケースより小さくても良く、さらにインク供給口付近、固定板付近ごとに複数のサブケースで構成しても良い。
【0015】
固定板はメインケースと嵌合可能な構造が必要となるが、固定板は使用済みインク袋と共に再利用されないため極力単純な構造が望ましい。このような固定板は低コストで生産できる。したがって、固定板は板金または樹脂製の板を抜き加工しただけの平面的な形状がよい。しかし、固定板はインク袋と共に廃棄されるため環境問題の観点から、インク袋と固定板は同系統の材料より構成されていることが望ましい。インク袋は少なくともポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、共重合体エチレンビニルアルコールの樹脂の少なくとも一種類を含む樹脂フィルムより構成されているため、固定板も同種の樹脂製の板が理想的である。インク袋は複数の異なる樹脂層が含まれて構成されている場合は、その内の一つの樹脂で固定板を構成することが好ましい。
【0016】
インク袋はメインケースに位置決め、固定されており、サブケースを外すことによってメインケースからインク袋を取り外せる状態になる。インク袋はメインケースと、(1)インク袋の一端のインク供給口に設けられた嵌合構造と、メインケースの溝構造による嵌合、(2)インク袋の略中央に位置する固定板に設けられた嵌合構造と、メインケースの溝構造による嵌合、(3)インク袋尾部に設けられた穴と、メインケースの一部であるインク袋尾部の穴を引掛ける突起を有しインク袋の尾部をインク袋の長手方向に引き伸ばす方向に引っ張る引き込み構造を含む固定、これらの三箇所で固定されている。したがって固定板の位置はインク袋一端のインク供給口とインク袋他端の尾部の中間であるインク袋長手方向の略中央が望ましい。
【0017】
インクジェットプリンターの使用にともないインク袋内のインクを消費し、インク袋の体積が徐々に小さくなり、これに従いインクエンド検出板が移動する。インク袋内のインクがなくなるときに達したインクエンド検出板の位置をインクジェットプリンターに設けられたインクエンド検出機構が検知し、インクジェットプリンターはインクエンドを検出する。インクジェットプリンターはインクエンドに達したインク袋を検出すると同時に、オペレーションパネルやインクエンド通知手段によってインクエンドの通知とインクエンドに達したインク袋の交換を促す。
【0018】
インク袋を取り外すときは、まずインクカートリッジを構成している部品をインクジェットプリンターから取り外す。インクジェットプリンターから取り外したインクカートリッジは最初にサブケースを取り外す。次にインク尾部の固定を解除し、インク袋全体をインク供給口方向にたわませることにより固定板、インク供給口の順に固定部を外すことができる。これによりインク袋に取り付けられた固定板とインクエンド検出板と共にインク袋がメインケースから取り外せる状態になる。
【0019】
新しいインク袋を取付けるときは、インク袋を取り外す時と逆の手順となる。最初にインク供給口の嵌合構造とメインケースの溝構造を嵌合させ、次に固定板の嵌合構造とメインケースの溝構造を略嵌合させ、最後にインク袋尾部の穴を引き込み構造により固定すると共にインク袋が引き伸ばされ固定板の嵌合が完了する。最後にサブケースをメインケースに取り付け、インクカートリッジのインク袋交換が完了する。
【0020】
なお、新しいインク袋にはあらかじめ固定板とインクエンド検出板が取り付けられており、インク袋またはインク袋と一体化された部品上に収納されているインクの種類、色、容量などインク情報が記載されている。さらに収納されているインクの種類、色、容量などインク情報が表示されているインク情報表示部を複数持ち、少なくともひとつのインク情報表示部はインク袋から分離可能な構造となっており、インク袋を収納するケースに取り付け可能な構造としてもよい。これによりインクカートリッジをインクジェットプリンター取り付け後であってもインク袋に収納されているインクの種類などインク情報を確認可能となっている。
【0021】
さらにインク袋には収納しているインクの種類、色、容量などインク情報が電気、磁気、物理形状的に記録されているインク情報記録部を添付しても良い。インク情報記録部はメインケースとサブケースを分離したときに嵌合、固定される構造を持ちケースと一体化可能となっており、インクカートリッジ挿入時にインクジェットプリンターへインク情報を伝達できる。また、ひとつのインク袋とひとつのインク情報記録部の組合せに限らず、複数のインク袋とひとつのインク情報記録部の組合せとしても良い。
【0022】
あるいはインクカートリッジのケースの一部はインクジェットプリンターと一体化しており、インク袋交換時はインクカートリッジをインクジェットプリンターより引き出し、ケースをインクジェットプリンターに保持させたままインク袋を交換する構造としても良い。
【0023】
[実施の形態の詳細]
図1は本発明を適用したインクカートリッジの分解した状態の一実施形態の斜視図を、図2は図1で示した一実施形態の断面図を示す。インク袋10は、インクを封入する可撓性を持った材料で構成された扁平形状の袋である密閉袋11を含む。インク袋10は密閉容器であり、インクが充填されているときには膨らんだ状態で、インクが減少すると、それにあわせてインク袋10は収縮する。インク袋10の一端は、インクを出し入れするインク供給口12が備わっている。これは密閉袋11の一端にインクを排出する機能を持ち樹脂成型品で構成されたインク供給口12を熱溶着などの方法で一体化したものである。
【0024】
図示されていない検出機構を用いてインクエンドを検出する検出板14がインク袋10の表面に取付けられている。インク袋10内のインクの容量に応じてインク袋10は収縮するが、それに合わせて検出板14も移動する。インク袋10内のインクが減少し、検出板14が所定の位置に達した事を検知することで、インクカートリッジのエンプティを検出する。検出板14は、両面テープあるいは接着剤を用いてインク袋10の一方側の面に密着させて貼り付けることが好ましい。本実施例では検出板14は固定板20に対して対向する位置からずれた位置にあり、インク袋10をインク袋収納ケース30取り付け時に固定板20のスライド面がインク袋収納ケース30の位置決め面との位置決めの確認を容易にしている。しかし検出板14と固定板20を対向する位置に配置しても機能上は問題ない。
【0025】
インク袋10は1枚の単層または2枚以上の多層樹脂フィルムの周辺部を熱溶着して袋状にしたものである。また、インク袋10はアルミフィルムを含む多層樹脂フィルムや複数種類の樹脂より構成してもよい。溶着部はインク袋10の周囲にインク漏れしないように十分な強度となる幅で溶着されている。
【0026】
インク袋10上の検出板14取り付面と密閉袋11を挟む面に両面テープあるいは接着剤を用いて固定板20が取り付けられている。固定板20はインク袋10の面に密着しており、インク袋10とは容易に分離できない密着強度を有している。固定板20はインク袋10長手方向となるX方向の略中央にあり、インク袋10に対して所定の位置にあるように組み立てられており、固定板20の位置を基準にインク袋10の位置出しが可能となっている。また固定板20はインク袋10の姿勢が水平、垂直となっても支持できるだけの剛性を備えている。固定板20は射出成形による樹脂部品としてもよいが、樹脂板を打ち抜いて製造する方法のほうが好ましい。
【0027】
固定孔13はインク袋10長手方向となるX方向のインク供給口12と異なる端部にあり、インク袋短手方向となるY方向に2個設けてある。2個の固定孔13の位置はインク袋10の長手方向中心軸を対称軸とする対称位置にあり、固定孔13にバネ32とバネ固定部31を介して付勢することによりインク袋10が短手方向となるY方向に歪むことなく長手方向中心軸に対称形状の姿勢を維持できる。また実施例の固定孔13の形状は四角形や異形状でも良いが、バネ固定部31を介して付勢されるため破損しにくい形状が望ましい。固定孔13の望ましい形状として円形状があげられる。さらにインク袋10のインク供給口12と固定孔13はX方向とY方向に直交するZ方向の位置が等しくなるように位置決めするのが望ましい。
【0028】
インク袋収納ケース30はインク袋10を収納可能な形状と、インク袋10を固定する機能をそなえている。一般的なインクカートリッジはインク袋10を露出しない構造となっているが、インクの量を目視で確認できるようにインク袋収納ケース30の一部を切り欠いてもよい。インク袋10のインク供給口12近傍はインク供給口12に設けられた溝部と、インク袋収納ケース30上に設けられた口固定部33が勘合することでインク袋収納ケース30に対してX方向の位置決めと固定がされる。
【0029】
インク袋収納ケース30は固定板20を位置決めするための位置決め面となるa1面50、a2面51、a3面52、a4面53が設けられており、対向する位置に固定板20のスライド面となるb1面60、b2面61、b3面62、b4面63が位置する構造となっている。実施例では固定板20は略長方形状の板であり、広大面のうちの一面となるb1面60がインク袋収納ケース30上のa1面50に対向し、−Z方向の位置決めとなる。さらにもうひとつの広大面となるb2面61がインク袋10取り付面となり、b2面61上には図示していない両面テープが設けられており、固定板20とインク袋10を強固に固定している。また固定板20とインク袋10の固定に接着剤や加熱溶融する材料を用いてもよい。さらにインク袋収納ケース30内側の広大面となる位置決め面a1面50と、a1面50の周囲4辺に位置する壁面のうちインク袋10の長手方向と平行なa4面53がある。a3面53はa1面50とa4面53に直角な面であり、その結果、a1面50とb1面60が、a2面51とb2面61が対となって、インク袋収納ケース30と固定板20を図の上下方向となるZ方向の位置決めを可能としている。さらにY方向と直角をなす二組のa4面53とb4面63が対向し、インク袋10の短手方向となるY方向の位置決めを実現している。またインク袋収納ケース30のa3面52と固定板20のb3面62が対向し、インク袋10長手方向の一方向だけとなる+X方向の位置を規制することができる。本実施例ではa1面50とa2面51と、b1面60とb2面61が平行をなし、a1面50とa3面52と、a1面50とa4面53と、b1面60とb3面62と、b1面60とb4面63とが直角をなし、さらにa3面52とa4面53と、b3面62とb4面63も直角をなす関係にある。
【0030】
図3は本発明を適用したインクカートリッジを分解した状態のもうひとつの実施形態の斜視図を、図4は図3で示したもうひとつの実施形態の断面図を示す。インク袋110は密閉袋111、インク供給口112、固定板120より構成されている。なお、図3、図4では検出板を図示していないが、検出板を設けてもよい。図1に示した実施例と異なる点は固定板120が平板状ではなくインク袋収納ケース130側に凸となるふたつの腕部121を持つコの字型断面の構造となっており、腕部121の根元にはインク袋110の長手方向となるX方向に切り欠きがある。固定板120にはインク袋110を支えるだけの強度や剛性が必要となり、射出成形による樹脂部品、樹脂板を打ちぬいた後に加熱して曲げる製法が望ましい。または固定板120は金属板を打ちぬき、曲げ加工した製法でも製造可能である。
【0031】
インク袋収納ケース130は固定板120を位置決めするための位置決め面となるa11面150、a12面151、a13面152、a14面153、a15面154を持ち、対向する位置に固定板120の非腕部の広大面のうちインク袋収納ケース130に対向するスライド面のb11面160、腕部121上の切り欠きを構成する面のうちb11面160に平行かつ向かい合う向きにあるb12面161、腕部121上の切り欠きを構成する面のうちb11面160と直角をなすb13面162、腕部121の外側に位置するb14面163、腕部121の内側に位置しb14面163と表裏の関係にあるb15面164を備えている。固定板120のb11面160とは反対側のもうひとつの広大面がインク袋110取り付面となり、図示していない両面テープ、または接着剤や加熱溶融する材料を用いて固定板120とインク袋110を強固に固定している。
【0032】
一方インク袋収納ケース130には位置決め面a11面150上に長方形状の穴がふたつ設けてあり、穴の壁面はa13面152、a14面153、a15面154と残りの1面より構成されている。a14面153はインク袋長手方向のX方向に平行かつインク袋収納ケース130の外側寄りに位置している面であり、a15面154はa14面153と平行かつ対向する位置にある面である。またa13面152はa14面153に直角かつインク袋110の固定孔113寄りの壁面である。
【0033】
本実施形態ではa11面150とb11面160が、a12面151とb12面161が対となって、インク袋収納ケース130と固定板120を図の上下方向となるZ方向の位置決めを可能としている。さらに二組のa14面153とb14面163が、a15面154とb15面164が対向し、インク袋10の短手方向となるY方向の位置決めを実現している。またインク袋収納ケース130のa13面152と固定板120のb13面162が対向し、インク袋110長手方向の一方向だけとなる+X方向の位置を規制することができる。
【0034】
本実形態ではa11面150とa12面151と、b11面160とb12面161が平行をなし、a11面150とa13面152と、a11面150とa14面153と、a11面150とa15面154と、b11面160とb13面162と、b11面160とb14面163と、b11面160とb15面164が直角をなし、さらにa13面152とa14面153と、a13面152とa15面154と、b13面162とb14面163と、b13面162とb15面164が直角をなす関係にある。
【0035】
図5は固定板220の第三の実施形態の斜視図である。固定板220は平板状の形状であるが、広大面のうち図示していないインク袋収納ケースに接する広大なスライド面となるb21面260を正面にしたときT字型をしており、かつZ方向と直角の関係にある。またb21面260を正面にしたときに線対称軸と平行となる向きをX方向、線対称軸と直角となる向きをY方向とする。X方向のうち幅の狭い一端の2角にはXY平面上に面取りb265が施されている。固定板220のb21面260の裏側にはb21面260と平行となるb22面261があるが、b22面261はb21面260より面積が小さく線対称軸を含む単一の面より構成されている。さらにb22面261は図示していないインク袋と接する面となる。b22面261を除く残りの面積は両端にふたつのb27面266より構成されており、b27面266は面取りb265寄りの板厚が薄くなるようにb22面261に対して傾斜している。また側面のふたつのb24面263は固定板220のY方向の両端の面であり、その形状はb21面260とb27面266は平行でないため略台形となる。さらにふたつのb25面264はb22面261のY方向の両端の面である。
【0036】
本実施形態ではスライド面となるb21面260とb22面261と、b24面263とb25面264が平行をなし、b21面260とb24面263が直角をなす関係にある。b26面265は固定板220が+X方向へ移動するときの案内として機能する。またb24面263を正面にしたときにb21面260に対してb27面266は平行でない角をなす傾斜面となっている。b27面266はb26面265と同様に案内を目的とした機能も実現できるが、b27面266と平行な角となる傾斜面の位置決め面またはひとつ以上の突起部と対向させることで+X方向とY方向の位置決めと固定を実現可能である。さらにb22面261とb27面266が同一面となってb21面260と平行でない角をなす傾斜面とし、+X方向とY方向の位置決めと固定を実現することも可能である。また本実形態のような固定板220は射出成形による製法が望ましい。また、本実施形態では、Y方向の幅が狭い部分すなわちb25面264の対で挟まれている部分と、幅の広い部分b24面263の対で挟まれている部分があり、その境界部分は固定板220を固定するための係合部に含まれている。
【0037】
図6(a)は固定板の第四の実施形態の斜視図であり、図6(b)は第四の実施形態の固定板の別の角度から見た斜視図であり、図6(c)は第四の実施形態の固定板の側方から見た正面図である。固定板320は広大面のうち図示していないインク袋に接する一面となるb32面361に対してb33面362、b34面363が互いに直角をなす関係にある。しかし固定板320のb32面361の裏面は平面ではなく、複数の線状の突起部先端を結んだ仮想平面よりなるb31面360となっている。固定板320の位置決めと固定を実現する形状は平面以外の形状でも実現可能であり、所定の形状の突起部または複数の突起部先端を結んだ仮想線、仮想面、あるいは所定の形状の曲面部でも可能である。固定板320を射出成形によって製造する場合、大きな面積の平面を作成するのは難しいため、b31面360のように複数の線状の突起部先端を結んだ仮想平面とすることで、固定板320の歩留まりや製造コストの低減を実現できる。また、ケースとの接触抵抗を少なくでき、スライドが容易となる。
【0038】
図7は固定板の第五の実施形態の斜視図である。固定板420は平板状の形状であり、広大面のうち図示していないインク袋収納ケースに接する一面となるb41面460と、裏側の面となるもうひとつの広大面のb42面461に二つのスライド穴422が設けられている。二つのスライド穴422の壁面は長方形状となっており、4壁面より構成されている。図示していないインク袋の長手方向はX方向、短手方向はY方向、それぞれに直交する向きをZ方向とする。二つのスライド穴422の壁面のうちX方向に平行で固定板420の内側に位置する二つの面をb44面463とし、二つのスライド穴422の壁面のうちb44面463に直交し図示していないインク袋のインク供給口よりに位置するb43面462とする。b41面460に対向するインク袋収納ケースの位置決め面上にはスライド穴422の壁面であるb43面462、b44面463との対向面を設けた凸形状が備えられており、二組の対向面によって固定板420のインク袋収納ケースのX方向、Y方向の位置決めが可能となる。Z方向の位置決めはインク袋収納ケースを第1の実施形態と類似の形状にしても実現可能であるが、インク袋収納ケースからのフック状構造にスライド穴422を通して固定することによっても実現可能である。
【0039】
なお、図中では二つのスライド穴422は固定板420に対して対称形状、対称位置となっているが、固定板420の向きを管理するために非対称形状や非対称位置としてもよい。さらに複数種類のスライド穴422の形状と位置を設定して適合するインク袋収納ケースとの組合せを設けることにより、適切なインク袋とインク袋収納ケースの組合せに制限することができる。これによりインクジェットプリンターに適合しないインク袋の内容物を制限でき、機械的な誤挿入防止機能が実現できる。またスライド穴422の形状は長方形状以外の半円形状、三角形状などX方向、Y方向のいずれかまたは両方の位置決め可能な形状であればよい。
【0040】
本実施形態の固定板420は射出成形の他に板状の樹脂または金属の抜き加工によって製造することが望ましい。
【符号の説明】
【0041】
10 インク袋
11 密閉袋
12 インク供給口
13 固定孔
14 検出板
20 固定板
30 インク袋収納ケース
31 バネ固定部
32 バネ
33 口固定部
50 a1面
51 a2面
52 a3面
53 a4面
60 b1面
61 b2面
62 b3面
63 b4面
110 インク袋
111 密閉袋
112 インク供給口
113 固定孔
114 検出板
120 固定板
121 腕部
130 インク袋収納ケース
131 バネ固定部
132 バネ
133 口固定部
150 a11面
151 a12面
152 a13面
153 a14面
154 a15面
160 b11面
161 b12面
162 b13面
163 b14面
164 b15面
220 固定板
260 b21面
261 b22面
262 b23面
263 b24面
264 b25面
265 b26面
266 b27面
320 固定板
360 b31面
361 b32面
362 b33面
363 b34面
420 固定板
422 位置決め穴
460 b41面
461 b42面
462 b43面
463 b44面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯蔵する可撓性を有する密閉袋と、前記密閉袋の一端に外部にインクを供給するインク供給口と、を有するインク袋において、
前記密閉袋の一方の面であって前記密閉袋の長手方向の中央を含む位置に固定され、外部に配置された位置決め面と対向することで位置決めするスライド面を有し、前記位置決め面と前記スライド面とを対向させることで少なくとも1方向の位置決めが可能な固定板を有することを特徴とするインク袋。
【請求項2】
前記固定板は外部に配置されたフックに係合するための係合部を有することを特徴とする請求項1のインク袋。
【請求項3】
前記固定板の幅は少なくとも幅広部と幅狭部の2段階の幅を有するし、前記係合部は前記幅広部と前記幅狭部の境界部を含むことを特徴とする請求項2に記載のインク袋。
【請求項4】
前記固定板は、前記固定板の厚み方向に直角に位置する腕部を有し、該腕部には外部に配置された凹部に系合する凸部を有することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のインク袋。
【請求項5】
前記密閉袋の他端の封止部に設けられ、外部に配置された爪を掛ける固定孔を有することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のインク袋。
【請求項6】
前記固定孔は少なくとも2箇所設けられ、夫々の前記固定孔から前記インク供給口までの距離が等しいことを特徴とする請求項5に記載のインク袋。
【請求項7】
前記固定孔は前記密閉袋の前記長手方向に沿った中心軸に対して対称位置にあることを特徴とする請求項6に記載のインク袋。
【請求項8】
前記密閉袋の前記一方の面に対向する他方の面であって前記固定板に対して前記密閉袋を挟む位置に固定され、前記密閉袋の変形に連動し、外部に設けられた検出器によって位置が検出される検出板を有することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載のインク袋。
【請求項9】
前記密閉袋と前記固定板と前記検出板の材料が同種の材料より構成されていることを特徴とする請求項8に記載のインク袋。
【請求項10】
インクを貯蔵する可撓性を有する密閉袋と、前記密閉袋の一端に外部にインクを供給するインク供給口と、前記密閉袋の一方の面であって前記密閉袋の長手方向の中央を含む位置に固定され、外部に配置された位置決め面と対向することで位置決めするスライド面を有し、前記位置決め面と前記スライド面とを対向させることで少なくとも1方向の位置決めが可能な固定板、を有するインク袋を格納するインク袋格納ケースであって、
前記インク供給口を固定する口固定部と、
前記位置決め面と、
を有するインク袋格納ケース。
【請求項11】
前記密閉袋の他端に接続され、前記密閉袋を前記口固定部から離れる方向に付勢するバネを接続するバネ固定部を有することを特徴とする請求項10に記載のインク袋格納ケース。
【請求項12】
前記密閉袋の他方の面であって前記固定板に対して前記密閉袋を挟む位置に固定され、前記密閉袋の変形に連動し、外部に設けられた検出器によって検出することで位置が検出される検出板を有し、
前記検出器から検出可能に前記検出板の位置検出部が露出する開口を有することを特徴とする請求項10または請求項11に記載のインク袋格納ケース。
【請求項13】
請求項1から請求項9の何れか1項に記載のインク袋と、請求項10から請求項12の何れか1項に記載のインク袋収納ケースと、を有することを特徴とするインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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